(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-26
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】加工工具
(51)【国際特許分類】
B23B 51/06 20060101AFI20220127BHJP
B23B 29/12 20060101ALI20220127BHJP
B23D 77/02 20060101ALI20220127BHJP
B23Q 11/10 20060101ALI20220127BHJP
【FI】
B23B51/06 A
B23B29/12 Z
B23D77/02
B23Q11/10 D
(21)【出願番号】P 2019523107
(86)(22)【出願日】2017-07-21
(86)【国際出願番号】 EP2017068551
(87)【国際公開番号】W WO2018077495
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2019-07-18
(31)【優先権主張番号】102016120595.8
(32)【優先日】2016-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】512178927
【氏名又は名称】コメット ドイチェラント ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビアル、ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】シュナイダー、リコ
(72)【発明者】
【氏名】シュミッド、フランク
(72)【発明者】
【氏名】エーデルマン、カールハインツ
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0047879(US,A1)
【文献】特開2016-147326(JP,A)
【文献】特開2016-147367(JP,A)
【文献】特開昭57-089511(JP,A)
【文献】実開昭57-100417(JP,U)
【文献】特開2010-012523(JP,A)
【文献】実開昭59-171010(JP,U)
【文献】特開昭53-148091(JP,A)
【文献】実開昭57-028811(JP,U)
【文献】特開昭60-259303(JP,A)
【文献】特開2000-190122(JP,A)
【文献】特開2007-030048(JP,A)
【文献】特表2011-505263(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0283786(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0260558(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0285749(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0091771(US,A1)
【文献】特開2008-194775(JP,A)
【文献】特開平08-215914(JP,A)
【文献】国際公開第2015/110132(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0298221(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 27/00-29/34
B23B 35/00-49/06
B23B 51/00-51/14
B23C 1/00-9/00
B23D 1/00-13/06
B23D 37/00-43/08
B23D 67/00-81/00
B23Q 11/00-13/00
B28D 1/00-7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸(12)を中心に回転可能であり、前記中心軸(12)の方向に延びる本体(14)と、前記本体(14)に固定された少なくとも1つの切削要素(16、18)と、前記中心軸(12)の外側で前記本体(14)に沿って延在し、前記中心軸(12)が通る、前記本体(14)のコア(38)によって内側に区画された少なくとも1つの切屑除去チャネル(24)とを備え、前記切屑除去チャネル(24)は、前記コア(38)に隣接する切屑用スペース外側壁(22)により、少なくとも長手セクションに沿って外方向で閉じられており、前記切屑用スペース外側壁(22)と、前記コア(38)の少なくとも一部が付加製
造により、粉末材料によって一体部品として形成され、少なくとも複数の部分において空間的に湾曲するように延在する少なくとも1つの冷却材チャネル(44)が前記コア(38)を通
り、
前記本体(14)は、前記切屑用スペース外側壁(22)を含み、成形鋼部として付加製造されている、回転切削動作用工作機械における使用のための、加工工具。
【請求項2】
前記切屑用スペース外側壁(22)が、閉じられるように前記中心軸(12)を取り囲む、前記本体(14)の外面(42)の一部を形成する、請求項1に記載の加工工具。
【請求項3】
前記切屑用スペース外側壁(22)が、選択的レーザー溶融法により、粉末材料によって形成される、請求項1または2に記載の加工工具。
【請求項4】
前記切屑用スペース外側壁(22)の壁厚が、円周方向において変化する、請求項1~3のいずれか1項に記載の加工工具。
【請求項5】
前記切屑除去チャネル(24)が、コイル状に巻かれ、またはねじられるように、前記本体(14)に沿って延在する請求項1~4のいずれか1項に記載の加工工具。
【請求項6】
前記切屑除去チャネル(24)の経路は、後方に向かって拡大する断面サイズを有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の加工工具。
【請求項7】
前記切屑除去チャネル(24)が、円形形状とは異なる断面形状を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の加工工具。
【請求項8】
複数の切屑除去チャネル(24)が、異なる経路を有するように、前記本体(14)において配置される請求項1~7のいずれか1項に記載の加工工具。
【請求項9】
関連している切屑除去チャネル(24)の外方向に開放した切屑導入外形(32)の領域内に前記切削要素(16、18)が配置されている、請求項1~8のいずれか1項に記載の加工工具。
【請求項10】
前記切屑除去チャネル(24)が、前記切屑用スペース外側壁(22)と隔てられた切屑排出口(34)を備える、請求項1~9のいずれか1項に記載の加工工具。
【請求項11】
前記冷却材チャネル(44)が、複数の排出孔(46、48)を形成するように、端部において分岐する、請求項1~10のいずれか1項に記載の加工工具。
【請求項12】
前記切削要素(16、18)が、はんだ付け、糊付け、クランプ、ねじ締め、もしくは焼結によって前記本体(14)に直接的に接続されるか、または、カートリッジによって前記本体(14)に間接的に保持される、請求項1~11のいずれか1項に記載の加工工具。
【請求項13】
前記本体が、前端壁を備え、当該前端壁が少なくとも1つの前記切屑除去チャネルの断面領域を被覆する、請求項1~12のいずれか1項に記載の加工工具。
【請求項14】
前記前端壁が、前記切削要素に対して端ギャップを区画し、前記端ギャップは前記切屑除去チャネルに通じる、請求項13に記載の加工工具。
【請求項15】
前記端ギャップが、0.2mm以上1.0mm以下の範囲内のクリアランスを有する請求項14に記載の加工工具。
【請求項16】
前記切削要素が前記前端壁を越えて前方に突出する端切削エッジを有し、前記端切削エッジの突出が0.1mm以上0.8mm以下の範囲内である、請求項13~15のいずれか1項に記載の加工工具。
【請求項17】
前記切削要素が、径方向外側を向くラジアル切削エッジまたは円柱状の研削ベベルを有し、ラジアルギャップが、前記切屑用スペース外側壁と前記切削要素との間で隔てられている、請求項13~16のいずれか1項に記載の加工工具。
【請求項18】
前記切屑用スペース外側壁が、当該工具の回転方向における前記切削要素の上流に、径方向外側に突出する壁突起を備える、請求項1~17のいずれか1項に記載の加工工具。
【請求項19】
前記少なくとも1つの冷却材チャネルが、前記切屑除去チャネルに通じ、かつ、切屑除去方向に配向されている、流出口の開口までアーチ状に曲がって延在する、請求項1~18のいずれか1項に記載の加工工具。
【請求項20】
前記少なくとも1つの切屑除去チャネルがらせん形態であるように前記中心軸を中心に延在する、請求項1~19のいずれか1項に記載の加工工具。
【請求項21】
前記切削要素が前記中心軸に対して所定のシャフト角度で斜めに傾斜された、請求項1~20のいずれか1項に記載の加工工具。
【請求項22】
前記本体の前記外面の直径が前端部において拡大されている、請求項2~21のいずれか1項に記載の加工工具。
【請求項23】
少なくとも1つの切削要素(16、18)が、前記中心軸まで径方向内側に延在する端切削エッジを有する、請求項1~22のいずれか1項に記載の加工工具。
【請求項24】
前記本体が異なる直径を有する、軸方向に段差を有する外形を有し、少なくとも1つの切削要素が前記段差を有する外形の領域内に配置される、請求項1~23のいずれか1項に記載の加工工具。
【請求項25】
前記加工工具が、ソリッドドリリング工具、リボーリング工具、カウンターボーリング工具、またはリーマー工具である、請求項1~24のいずれか1項に記載の加工工具。
【請求項26】
回転切削動作用工作機械における使用のための加工工具の製造方法であって、前記加工工具は、中心軸(12)を中心に回転可能であり、前記中心軸(12)の方向に延びる本体(14)と、前記本体(14)に固定された少なくとも1つの切削要素(16、18)と、前記中心軸(12)の外側で前記本体(14)に沿って延在し、前記中心軸(12)が通る、前記本体(14)のコア(38)によって内側に区画された少なくとも1つの切屑除去チャネル(24)とを備え、前記切屑除去チャネル(24)は、前記コア(38)に隣接する切屑用スペース外側壁(22)により、少なくとも長手セクションに沿って外方向で閉じられており、少なくとも複数の部分において空間的に湾曲するように延在する少なくとも1つの冷却材チャネル(44)が前記コア(38)を通り、前記製造方法は、前記切屑用スペース外側壁(22)と、前記コア(38)の少なくとも一部を付加製造プロセスにより、粉末材料によって一体部品として形成する工程を含み、前記工程において、前記切屑用スペース外側壁(22)を含む前記本体(14)を成形鋼部として付加製造する、加工工具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中心軸を中心に回転可能であり、中心軸の方向に伸びる本体と、本体に固定された少なくとも1つの切削要素と、中心軸の外側で本体に沿って延在し、中心軸が通る、本体のコアによって内側に区画された少なくとも1つの切屑除去チャネルとを備える、回転切削動作用工作機械における使用のための、特には、ソリッドドリリング工具、リボーリング工具、カウンターボーリング工具、またはリーマー工具である、加工工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の加工工具、例えば、ソリッドドリル工具、リボーリング工具、カウンターボーリング工具、またはリーマー工具においては、切屑溝は径方向外側に開いている。遠心力の結果として、切屑は孔壁に対して投げ飛ばされ、この壁を損傷し、および/または部品における凹部内に残留し得る。さらに、本体の安定性が、開いた切屑用スペースによって低下する。基本的には、閉鎖され、さらにねじられた切屑用スペースはミーリングによって作ることは可能でない。必要であれば、非常に短い工具を実現できるかもしれないが、その外形は、利用可能な加工工具に応じて変わってくる。より長い工具はドリリングによって製造することが可能であるが、切屑用スペースをねじることはここでは実現可能ではない。
【発明の概要】
【0003】
次に、本発明の目的は、特に切屑の選択的除去のために、かつ一般的には高水準の製造品質を実現するために、上記欠点がないようにし、かつ、安定性の向上と、可変的な断面幾何学的形態とを可能にするために従来技術において知られている加工工具をさらに改善することである。本発明のさらなる目的は、切屑が孔に再び落ちないようにすることである。
【0004】
この目的を達成するために、請求項1に示す構成の組み合わせを提案する。本発明の効果的な実施形態および展開形態は従属請求項において見出すことが可能である。
【0005】
本発明は、切屑除去チャネルの少なくとも1つの軸部が環状に区画されているという前提に基づいている。したがって、本発明によれば、切屑除去チャネルが、コアに隣接し、かつコアと一体に形成された本体の切屑用スペース外側壁により、少なくとも長手方向部分に亘って径方向外側に環状に閉じていることを提案している。本体の剛性は、閉鎖された断面を有する切屑除去チャネルによって増加する。同時に、切屑が、切屑除去チャネルからランダムに流出すること、および、製造品質を低下させることを防止する。
【0006】
効果的には、切屑用スペース外側壁は、全体的に均質な工具本体が実現されるように、閉鎖されるように中心軸を取り囲む本体の外面の一部を形成する。
【0007】
特に好ましい実施形態では、切屑用スペース外側壁は、付加製造プロセスにより、特に、選択的レーザー溶融法により、粉末材料によって形成される。付加製造プロセスのおかげで、アブレーション製造プロセスを使用して実現可能でない自由度が切屑用スペースの設計において存在している。切屑用スペースのサイズおよび形状は、最適化された、切屑の幾何学的形態および切屑除去を実現するために可変的に適合させることが可能である。特に、切屑用スペースの種々のピッチおよび切屑用スペース内の変更可能なピッチは実現することが簡単である。これらの代替案は、工具の長さにわたる、断面に対する変更を含むが、比較的長い工具も製造することが可能である。
【0008】
この関係で、切屑用スペース外側壁と、コアの少なくとも一部が付加プロセスにおいて一部品として一体的に形成される場合にも効果的である。よって、本体の均質な切削部を3Dプリント部品として作ることが可能である。
【0009】
さらなる機能的適合のために、円周方向でみると切屑用スペース外側壁の壁厚が可変である場合に効果的である。
【0010】
最適化された切屑除去のために、切屑除去チャネルは、コイル状に巻かれ、またはねじられるように、本体に沿って、任意には、可変のピッチを伴って、延在することが可能である。
【0011】
さらなる改善形態において、切屑除去チャネルの経路は、可変であり、好ましくは後方に向かって拡大する断面サイズを有する。
【0012】
切屑の除去をサポートし、閉塞がないようにするために、切屑除去チャネルが、円形でない断面形状を有していることが想定される。
【0013】
異ならせて配置された切削要素に関して、複数の切屑除去チャネルが、異なる経路を有するように、特に、異なるピッチを有するように、本体において配置される場合にも効果的であり得る。
【0014】
切屑の流入を妨げることのないように、関連している切屑除去チャネルの外方向に開いている切屑導入外形の領域内に切削要素が配置されている場合に効果的である。
【0015】
切屑除去チャネルが、切屑用スペース外側壁と隔てられた切屑排出口を備える場合にも好適である。
【0016】
特に効果的な実施形態では、少なくとも1つの冷却材チャネルがコアを通る。
【0017】
冷却材の供給を工具の幾何学的形態に、特に、切屑用スペースの経路に、適合させるために、少なくとも部分的に空間的に湾曲するように冷却材チャネルが延在する場合に効果的である。
【0018】
例えば、締め付けねじの領域において、冷却潤滑剤の使用を最適化し、構造的な弱点がないようにするために、冷却材チャネルが、複数の排出孔を形成するように、端部において分岐することが好適である。
【0019】
基本的には、切削要素が、はんだ付け、糊付け、クランプ、ねじ締め、もしくは焼結によって本体に直接的に接続されるか、または、カートリッジによって本体に間接的に保持されることが可能である。
【0020】
本発明の具体的な態様は、本体が、好ましくは、ラジアル面に位置し、供給方向の前方に配向された前端壁を備え、該端壁が少なくとも1つの切屑除去チャネルの断面領域を被覆するというものである。その結果、端面の被覆は、工具を撤収する際に望ましくない方法で切屑が切屑除去チャネルから再び落ちないようにするので、残留切屑はもう加工物に残留しない。便宜上、切屑除去チャネルの50%超の断面領域を被覆すべきである。一般に、閉鎖された切屑チャネル形状が孔壁を切屑から保護し、したがって、表面粗さが低減するという利点も存在している。
【0021】
関連したさらなる改善形態では、端壁は、切削要素に対して、切屑除去チャネルに通じる端ギャップを区画し、よって、発生した切屑は、その根元のそばでギャップを通って切屑除去チャネルへと流れなければならないが、全体の片としてはそこからもう流出できない。
【0022】
端ギャップのクリアランスは、供給速度および切屑厚によって決まってくるものであり、効果的には、0.2mm以上1.0mm以下の範囲内であるべきである。
【0023】
エンドカバーおよび/または端壁と、加工物のベースとの間の衝突を防ぐが、確かな切屑流入を確実にするために、切削要素は、端壁を越えて前方に突出する端切削エッジを有するべきであり、端切削エッジの突出は効果的には、0.1mm以上0.8mm以下の範囲内である。
【0024】
孔壁上の案内またはその加工のために、切削要素が、径方向外側を向くラジアルカッターまたは円柱状の研削ベベルを備えており、ラジアルギャップが、切屑用スペース外側壁と切削要素との間で隔てられている場合に効果的である。端ギャップとラジアルギャップは併せて、角度が付けられたギャップ開口を形成する。
【0025】
効果的には、切屑用スペース外側壁は、工具の回転方向における切削要素の上流に、径方向外側に突出する壁突起を有する。よって、発生した切屑は、切屑除去チャネルの内部に流入し、エッジに沿ってさらに外方向に案内されない。
【0026】
切屑除去および搬送容量を改善するために、切屑除去チャネルに通じ、かつ、切屑除去方向に配向されている、すなわち、後方に向かって配向されている、排出口の開口まで、少なくとも1つの冷却材チャネルがアーチ状に曲がって延在する場合に効果的である。
【0027】
切屑の成形を最適化し、切屑の搬送を最適化するために、少なくとも1つの切屑除去チャネルはらせん形態である。したがって、関連した冷却材チャネルが、らせん形態であるように中心軸を中心に延在する場合にも効果的である。
【0028】
加工プロセスに対する改善形態は、中心軸に対して傾斜がついているように所定のシャフト角度だけ、切削要素を傾斜させることによっても実現可能である。
【0029】
孔壁上で動かなくなることがないようにするため、本体の外面の直径が前端部においてのみ拡大し、よって、後方に向かって先細りする場合に効果的である。
【0030】
完全なドリリングプロセスが可能であるように、少なくとも1つの切削要素が、中心軸まで径方向内側に延在する一端切削エッジを備える場合に好適である。
【0031】
より複雑な孔に対する設計上のさらなる代替案は、本体が、異なる直径を有する、軸方向に段差を有する外形を有し、少なくとも1つの切削要素が前記段差を有する外形の領域内に配置されるというものである。
【0032】
本発明は、図面において概略的に示す実施形態を基に以下にさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】径方向に閉じられた切屑除去チャネルを有する、ソリッドドリル用穿孔機工具の側面図である。
【
図3】90°だけ回転させた、
図1による穿孔機工具の側面図である。
【
図5】
図1の線5-5に沿った径方向断面図である。
【
図6】端面で被覆された径方向に閉じられた切屑除去チャネルを有するドリル工具の斜視図である。
【
図7】
図6による、ドリル工具の切削位置の拡大図である。
【
図8】
図7の切削要素の領域における拡大された詳細図である。
【
図9】切屑除去チャネルの領域における、
図6によるドリル工具の断面図である。
【
図10】冷却材チャネルを示した、
図6によるドリル工具の切削部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図面に示したドリル工具10は、中心軸12を中心に回転させることが可能であり、中心軸の方向に伸びる本体14と、180°の角距離を開け、互いに径方向にオフセットするように本体14の前端面に固定された2つの切削要素16、18とを備え、それらの切削要素の下流に、切屑用スペース外側壁22によって径方向外側に閉じられた切屑除去チャネル24がそれぞれのケース内に配置されている。
【0035】
図1ないし
図3において分かるように、本体14は、工作機械のスピンドルにおけるクランプに適したクランプ部26(例えばABSインタフェース)をその後部に有する。したがって、ドリル工具10は、その中心軸12を中心に回転駆動することが可能であり、供給プロセスにおいて中心軸12の方向に移動することが可能である。
【0036】
本体14は、少なくともその外側の円筒状前方シャフト部28において、例えば、選択的レーザー溶融法により、切屑用スペース外側壁22を含み、成形鋼部として付加製造され、または生成的に製造される。この3D成形プロセスでは、薄層の粉末材料が構築プラットフォームに加えられる。その後、粉末材料は、凝固後に固体材料層が形成されるようにレーザーを使用して局所的に再溶融される。上記材料が凝固すると、層厚に応じて構築プラットフォームを下げ、新たな粉末層が加えられる。このようにして、工具も型も使用しなくてよく、高い幾何学的自由度を伴って成形用板紙生地を製造することが可能である。したがって、選択的レーザー溶融法(SLM)は、従来の減算的な加工製造プロセスとの比較では、付加プロセスである。
【0037】
切削要素16、18はそれぞれ、中心軸12に対して略垂直に延在する端切削エッジを有する。図示した実施形態では、切削要素16、18は、締め付けねじ30により、それぞれのインサート座においてインデックス可能なカッターインサートの形態で締め付けられる。しかし、上記切削要素は、PCD切削エッジとして本体14上にはんだ付けすることも可能である。
【0038】
図4において分かるように、端面において開放した切屑導入外形部32は切削要素16、18に隣接し、除去された切屑を個別の切屑除去チャネル24に排出する。その後端において、切屑除去チャネルは、切屑用スペース外側壁22と隔てられた切屑排出口34を備える。上記切屑排出口は、後方に向かって拡大する本体14の円錐部36内にある。
【0039】
図5において最もよく分かるように、本体14は、中心軸12が通り、切屑用スペース外側壁22に向けて径方向外側に伸張する隔壁状コア38を有する。よって、上記コア38は、一体的に形成された切屑用スペース外側壁22が切屑除去チャネル24を径方向外側に閉じている一方で、その2つの側壁40により、切屑除去チャネル24を区画している。その過程で、円形形状と異なる略楕円形断面領域は、切屑の除去のために隔てられる。
【0040】
図5においても分かるように、切屑用スペース外側壁22は面一になるようにコア38の外面に隣接する部分的に円筒状の外側外形を備える可変壁厚を有しており、よって、本体14は閉じられるように中心軸12を取り囲む外面42によって囲まれる。よって、切屑除去チャネル24は完全に環状に閉じられている。その結果、生成された切屑は加工物の自由空間にも、部品の孔壁内にも到達することができず、上記切屑はその全体が、開放した切屑排出口34に案内され、その中で、加工物と隔てられて外方向に移送される。
【0041】
図示された実施形態では、切屑除去チャネル24は本体14を通って直線状に中心軸12外側に延在する。切屑の流れが最適化されることを確実にするために、付加的な構築のおかげで、切屑除去チャネル24のサイズおよび/または形状を、例えば、供給方向とは逆方向に、後方に向かって増大する断面サイズを有するように、かつ、任意的には、可変ピッチでコイル状に巻かれるように、最適化された切屑の幾何学的形態および切屑除去に可変的に適合させることも可能である。切屑用スペースのピッチが互いに異なること、および各切屑用スペース内のピッチが可変であることも想定される。
【0042】
図3および
図5は、工具の最適化された剛性に適合させるように、コア38の壁セクションを通り、空間的に湾曲した経路をたどる2つの冷却材チャネル44を示す。上記冷却材チャネル44は分岐して複数の排出孔46、48を形成する。
図2によって分かるように、冷却材または冷却潤滑剤は、本体12の中央供給チャネル50を介して工具10の後方側に供給される。そこから、湾曲された分岐52は個別の冷却剤チャネル44に向かって延びる。冷却材供給手段のそうした幾何学的に複雑な成形は、実際的には、付加製造プロセスによってのみ可能である。
【0043】
図6ないし
図10に示すドリル工具10では、同一または同様の部分には上述したものと同じ参照符号を付している。ここでは、一体型の3Dプリント部品の形態で付加的に構築された本体14としての正面切削部およびクランプ部26としての円筒状後方シャフトを有するシャンク工具を示す。
【0044】
特徴的な構成は、本体14が、供給方向を向き、端面において2つの切屑除去チャネル24の広い範囲を覆い、よって、作られた孔に切屑が再び落ちないようにする前端壁54を有するというものである。切屑の切屑除去チャネルへの流れを可能にするために、上記端壁54の該当する端ギャップ56は切削要素16、18と隔てられる。
図8によって最もよく分かるように、切屑用スペース外側壁22のラジアルギャップ58は端ギャップ56に隣接している。切削要素16、18の端切削エッジは、1mm未満だけ、端壁54を越えて突出し、円柱状の研削ベベル62がラジアル切削要素に設けられ、孔壁上での案内を可能にする。
【0045】
便宜上、ラジアルギャップ58は、上記切屑用スペース壁22から径方向に突出し、切屑の残留物が通過可能でないようにする壁突起64によって区切られている。前端部66が、後方において隣接する部分68に対して拡大した直径を有していることも好適である(
図6および
図7を参照されたい)。段差をつけられたドリルプロセスの場合、本体が後方に向けて段階的に拡大し、少なくとも1つのさらなる切削要素(図示せず)が段差をつけられた外形の領域内に配置されることも想定される。
【0046】
図7によれば、1つのみを破線で示す切屑除去チャネル24がコイル状に巻かれるように延在することも、切削要素16、18、および切屑排出口の開口34の位置付けから分かる。
図9によっても分かるように、内壁70は円周方向に交錯するように成形される。
【0047】
図10に示すように、中央供給チャネル50から枝分かれする冷却材チャネル44は、それぞれのケース内で、中心軸12を中心としたらせん状になるように、かつ、個々の流出口の開口72に対してアーチ状に曲がるように延在する。該開口は、後方に向かって配向され、個別の切屑除去チャネル24に通じ、その結果、切屑の流れは冷却材の流れによって助長される。
図7は、切削要素16、18が、切削動作を改善するために中心軸に対して所定のシャフト角、例えば、10°だけ、斜めに傾斜していることも示している。