(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-26
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】プログレッシブキャビティポンプにおけるギャップ形状の調整
(51)【国際特許分類】
F04C 2/107 20060101AFI20220127BHJP
【FI】
F04C2/107
(21)【出願番号】P 2019538395
(86)(22)【出願日】2018-01-16
(86)【国際出願番号】 EP2018050986
(87)【国際公開番号】W WO2018130718
(87)【国際公開日】2018-07-19
【審査請求日】2020-02-28
(31)【優先権主張番号】102017100715.6
(32)【優先日】2017-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518285555
【氏名又は名称】フォーゲルザンク・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Vogelsang GmbH & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】パウル・クランペ
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・ロルフェス
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-001876(JP,A)
【文献】国際公開第2015/124918(WO,A1)
【文献】特開2009-047153(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102014117483(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 2/107
F04C 14/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体を充填した液体を輸送するためのプログレッシブキャビティポンプ(1)であって、
前記プログレッシブキャビティポンプ(1)は、
・螺旋回転子(4)と、
・入口(10)と出口(12)を有する固定子(2)であって、前記回転子(4)は、固定子(2)の長手方向軸(L
1)の周りに回転可能に配置され、かつ前記回転子(4)に対応する螺旋状の内壁(8)を備える、前記固定子(2)と、を有し、
前記回転子(4)は、前記出口(12)または入口(10)に向かってテーパになる形状、好ましくは円錐形、および/または可変偏心度(e
1,e
2)を備え、
前記回転子(4)および固定子(2)は、互いに対して配置され、液体を輸送するために少なくとも1つのチャンバ(5)が形成されるように実施され、かつ前記チャンバ(5)は、狭窄部(7)、特にシールライン(D)によって遮断され、
前記プログレッシブキャビティポンプ(1)は、
・駆動シャフト(26)および駆動モータ(36)であって、前記回転子(4)は、前記駆動シャフト(26)によって前記駆動モータ(36)に連結される、駆動シャフト(26)および駆動モータ(36)を有し、
前記回転子(4)と固定子(2)の相対的な軸方向位置を調整するための調整装置を有し、
前記調整装置(39)は、前記回転子(4)と固定子(2)との間(7)の前記狭窄部を拡大するために実施され、
前記回転子(4)は、軸方向に変位可能であり、前記調整装置(39)は、前記回転子(4)と固定子(2)との間の前記狭窄部を少なくとも部分的に拡大するために、前記回転子(4)を軸方向に変位させるように構成され、
a)前記駆動モータ(36)および前記駆動シャフト(26)を含む前記回転子(4)の駆動系(25)は、前記回転子(4)と一緒に変位可能であり、または
b)前記駆動シャフト(26)と前記駆動モータ(36)との間に配置されたギアボックス(34)によって、前記回転子(4)は、前記駆動シャフト(26)と一緒に、前記駆動モータ(36)に対して変位可能であり、前記ギアボックス(34)は、前記駆動シャフト(26)を軸方向に変位させることを可能にする、
ことを特徴とする、
プログレッシブキャビティポンプ。
【請求項2】
前記調整装置(39)は、前記回転子(4)と固定子(2)との間に漏れギャップ(S)が形成される程度まで前記回転子と固定子との間の前記狭窄部(7)を拡大するように設定される請求項1に記載のプログレッシブキャビティポンプ。
【請求項3】
前記調整装置(39)は、1つまたは複数の所定の動作パラメータに応じて前記狭窄部(7)の拡大を実行するように設定されている請求項1または2に記載のプログレッシブキャビティポンプ。
【請求項4】
前記動作パラメータの1つは、前記固定子(2)および/または前記回転子(4)の温度である請求項3に記載のプログレッシブキャビティポンプ。
【請求項5】
前記動作パラメータの1つは、輸送される液体の量である請求項3または4に記載のプログレッシブキャビティポンプ。
【請求項6】
前記動作パラメータのうちの1つは、前記固定子(2)の前記入口(10)における液レベルである請求項3、4、または5に記載のプログレッシブキャビティポンプ。
【請求項7】
前記駆動モータ(36)は、静止しており変位不可能である請求項1ないし6のうちいずれか1項に記載のプログレッシブキャビティポンプ。
【請求項8】
前記駆動シャフト(26)は、前記駆動モータ(36)の駆動シャフト(32)に接続されている請求項1ないし7のうちいずれか1項に記載のプログレッシブキャビティポンプ。
【請求項9】
前記駆動シャフト(32)は、前記ギアボックス(34)の少なくとも1つの出力ギア(68)において軸方向に変位可能に支持されている請求項8に記載のプログレッシブキャビティポンプ。
【請求項10】
前記固定子(2)は、軸方向に変位可能に支持され、前記調整装置(39)は、前記回転子(4)と固定子(2)との間の前記狭窄部(7)を少なくとも部分的に拡大するために、前記固定子(2)を軸方向に変位させるように設定される請求項1ないし
9のうちいずれか1項に記載のプログレッシブキャビティポンプ。
【請求項11】
前記駆動シャフト(26)は、少なくとも2つの部分を有し、前記回転子(4)を軸方向に変位させるために前記駆動シャフト(26)を伸縮させることを可能にする拡張部材(80)を備える請求項1ないし
10のうちいずれか1項に記載のプログレッシブキャビティポンプ。
【請求項12】
前記固定子の前記長手方向軸(L
1)は、動作中に実質的に垂直に配向され、前記固定子(2)の前記出口(12)は、上部にある請求項1ないし
11のうちいずれか1項に記載のプログレッシブキャビティポンプ。
【請求項13】
前記固定子(2)は、少なくとも前記内壁(8)の領域において柔軟な材料、エラストマから形成されている請求項1ないし
12のうちいずれか1項に記載のプログレッシブキャビティポンプ。
【請求項14】
前記調整装置は、
・前記回転子を回転させるための駆動モータの始動手順の開始前または停止手順の間または終了後に、前記回転子と固定子との間の前記狭窄部を拡大するため、および
・前記駆動モータの始動手順中に開始する前に前記回転子と固定子との間の前記狭窄部を収縮させるため、
実装されている請求項1ないし
13のうちいずれか1項に記載のプログレッシブキャビティポンプ。
【請求項15】
前記調整装置は、圧力信号を受信するための入力インターフェースを備え、前記圧力信号に応じて前記回転子と固定子との間の前記狭窄部を拡大または収縮させるように実装される請求項1ないし
14のうちいずれか1項に記載のプログレッシブキャビティポンプ。
【請求項16】
前記調整装置は、体積信号を受信するための入力インターフェースを備え、前記体積信号に応じて前記回転子と固定子との間の前記狭窄部を拡大するように実装され、輸送手順の開始以降に輸送された体積が特定の体積に対応することを知らせる体積信号の値に対して、前記回転子と固定子との間の前記狭窄部が拡大されるようにし、そのようにして、前記固定子の前記出口からの体積のそれ以上の輸送は起こらない請求項1ないし
15のうちいずれか1項に記載のプログレッシブキャビティポンプ。
【請求項17】
前記調整装置は、前記回転子が前記固定子に対して回転している間に、前記固定子(2)に対する前記回転子(4)の軸方向位置を調整するように構成されていることを特徴とする請求項1ないし
16のうちいずれか1項に記載のプログレッシブキャビティポンプ。
【請求項18】
請求項1ないし
17のうち少なくともいずれか1項に記載の固体を充填した液体を輸送するためのプログレッシブキャビティポンプ(1)を動作させるための方法であって、
前記プログレッシブキャビティポンプ(1)は、
・螺旋回転子(4)と、
・入口(10)と出口(12)を有する固定子(2)であって、前記回転子(4)は、固定子(2)の長手方向軸(L
1)の周りに回転可能に配置され、かつ前記回転子(4)に対応する螺旋状の内壁(8)を備える、前記固定子(2)と、を有し、
前記回転子(4)は、前記出口(12)または入口(10)に向かってテーパになる形状、好ましくは円錐形、および/または可変偏心度(e
1,e
2)を備え、
前記回転子(4)および固定子(2)は、互いに対して配置され、液体を輸送するために少なくとも1つのチャンバ(5)が形成されるように実施され、かつ前記チャンバ(5)は、狭窄部(7)、特にシールライン(D)によって遮断され、
前記プログレッシブキャビティポンプ(1)は、
・駆動シャフト(26)および駆動モータ(36)であって、前記回転子(4)は、前記駆動シャフト(26)によって前記駆動モータ(36)に連結される、駆動シャフト(26)および駆動モータ(36)を有し、
前記回転子(4)と固定子(2)の相対的な軸方向位置を調整するための調整装置を有し、
前記調整装置(39)は、前記回転子(4)と固定子(2)との間(7)の前記狭窄部を拡大するために実施され、
前記回転子(4)は、軸方向に変位可能であり、前記調整装置(39)は、前記回転子(4)と固定子(2)との間の前記狭窄部を少なくとも部分的に拡大するために、前記回転子(4)を軸方向に変位させるように構成され、
a)前記駆動モータ(36)および前記駆動シャフト(26)を含む前記回転子(4)の駆動系(25)は、前記回転子(4)と一緒に変位可能であり、または
b)前記駆動シャフト(26)と前記駆動モータ(36)との間に配置されたギアボックス(34)によって、前記回転子(4)は、前記駆動シャフト(26)と一緒に、前記駆動モータ(36)に対して変位可能であり、前記ギアボックス(34)は、前記駆動シャフト(26)を軸方向に変位させることを可能にする、
ことを特徴とし、
前記方法は、
・液体を輸送するために前記回転子(4)を駆動するステップと、
・前記調整装置(39)を用いて、前記回転子(4)と固定子(2)を互いに軸方向に変位させることにより、前記回転子(4)と固定子(2)の間の前記狭窄部(7)を拡大させるステップと、
・前記調整装置を用いて、前記回転子(4)と固定子(2)を互いに対して軸方向に変位させることにより、前記固定子(2)の半径方向のプリテンションを設定するステップと、
を含む方法。
【請求項19】
前記狭窄部(7)を拡大させる前記ステップは、
・前記回転子(4)と固定子(2)との間の漏れギャップ(S)を調整するステップ
を含む請求項
18に記載の方法。
【請求項20】
前記方法は、
・前記回転子(4)および/または前記固定子(2)の温度を測定するステップと、
・前記測定された温度に応じて、前記回転子(4)と固定子(2)を軸方向に相対的に変位させるステップと、
をさらに含む請求項
18または
19に記載の方法。
【請求項21】
前記方法は、
・前記固定子(2)の前記入口(10)における液レベルを決定するステップと、
・前記決定された液レベルに応じて、前記回転子(4)と固定子(2)を軸方向に相対的に変位させるステップと、
をさらに含む請求項
18ないし
20のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記方法は、
・前記回転子(4)の1回転当たりに輸送される液体量を決定するステップと、
・前記決定された液体量に応じて、前記回転子(4)と固定子(2)を軸方向に相対的に変位させるステップと、
をさらに含む請求項
18ないし
21のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記方法は、
・前記回転子を回転させるための駆動モータの始動の開始時に、前記回転子と固定子との間の前記狭窄部を拡大させるステップと、
・前記駆動モータの始動手順を開始した後、前記回転子と固定子との間の前記狭窄部を収縮させるステップと、
を特徴とする請求項
18ないし
22のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記方法は、
・圧力を圧力センサによって捕捉するステップと、
・前記回転子と固定子との間の前記狭窄部を前記圧力に応じて拡大または収縮させるステップと、
を特徴とする請求項
18ないし
23のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記方法は、
・特定の体積を捕捉するステップと、
・前記特定の体積に応じて、前記回転子と固定子との間の前記狭窄部を拡大または収縮させるステップと、
を特徴とする請求項
18ないし
24のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記方法は、
前記回転子が前記固定子に対して前記液体を輸送するための回転運動で回転軸の周りに駆動されながら、前記回転子を回転軸に沿って軸方向に前記固定子に対して調整するステップ
を特徴とする請求項
18ないし
25のうちいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、螺旋状の回転子と、入口と出口とを有する固定子とを有し、固体を充填した流体を輸送するためのプログレッシブキャビティポンプに関する。これは、回転子が固定子の長手方向軸を中心に回転可能に配置され、回転子に対応する螺旋状の内壁を備える。回転子は、出口または入口に向かってテーパ形状、好ましくは円錐形、および/または可変偏心度を備える。回転子および固定子は、互いに対して配置され、液体を輸送するために少なくとも1つのチャンバが形成され、そしてチャンバが狭窄部、特にシールラインによって遮断されるように実施される。本発明はさらに、そのようなプログレッシブキャビティポンプを作動させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記の種類のプログレッシブキャビティポンプは、数年前から知られており、特に固体、研磨液、または一般液体を充填した液体を穏やかに輸送し計量するために使用されている。前記ポンプは、固定子の対応する二重または多重始動チャンバ内に配置され、その中で回転する単一または多重始動ヘリカル回転子を使用する。プログレッシブキャビティポンプのネジは、スクリュ回転軸を中心に回転し、次に、典型的には、平行長手固定子軸を中心に回転し、円形経路上偏心案内され、スクリュの回転運動を生じる。そこから、用語“偏心”は、プログレッシブキャビティポンプのために派生している。これにより、プログレッシブキャビティポンプのスクリュは、駆動モータと回転子との間の各端部にカルダン継手を有するシャフトによって形成された偏心シャフトによって駆動されることが多い。したがって、回転子の外側プロファイルと固定子の内側プロファイルとを設計することによって、狭窄部、特に少なくとも1つのチャンバ、好ましくは複数のチャンバのうちの個々のチャンバを互いに密封するシールラインが生じる。回転子と固定子は互いに直接接触してシールラインを形成することができ、または狭窄部内のチャンバを分離するシールギャップを有することができる。それによって、回転子は、典型的には、単一の螺旋として、固定子は、2倍のピッチを有する二重螺旋として実施され、その結果、個々のチャンバの密封がもたらされる。
【0003】
スクリュポンプは、円錐ネジと円錐圧力シェルを含む、独国特許第2632716号から公知である。前記実施形態では、スクリュは、約30°の円錐角の円錐度を有し、これにより、輸送圧力の増加は短いスクリュ長さで達成されることが意図されている。これにより、圧力シェルがスリーブ内で軸方向に変位可能に案内されるという点で、スクリュと圧力シェルとは互いに対して軸方向に調整可能である。これにより、圧力シェルがポンプ内の圧力シェルのリング構成要素に対する液体圧力の影響下で移動するという点で、圧力が一定に保たれるように意図されている。しかしながら、体系的には、出口での圧力の増加は、垂直方向の変位、ひいては圧力シェルのスクリュに対する押圧を引き起こすことしかできない。前記既知のシステムのさらなる欠点は、このシステムの目的が、円錐形のポンプギャップの輸送方向における断面積の減少によって発生する増大した圧力の一定性のためだけに設計されており、他の影響パラメータに依存して軸方向の移動を許さないことである。
【0004】
円錐形の固定子および回転子を含むスクリュポンプもまた、オーストリア特許第223042号から知られている。回転子と出力軸との間に挿入されたネジ付きスリーブによって、前記スクリュポンプの回転子は、ポンプが停止している間に使用者が工具を用いて手動で手の穴を通してスリーブを回転させるという点で、固定子に対して軸方向に調整することができる。これにより、固定子の膨張または回転子および/または固定子の磨耗によって引き起こされる、固定子と回転子との間の焼付きおよび過剰な隙間の両方を補償することができる。
【0005】
プログレッシブキャビティポンプは、回転子と固定子との間のギャップ形状は、固定子のプリテンションを調整することによって変化させることができる、独国特許出願公開第102015112248A1号から知られている。プリテンションを増大させることは、エラストマ構成要素として実施される固定子の圧縮をもたらし、それによってギャップ形状を減少させることができる。しかしながら、前記プログレッシブキャビティポンプの不利な点は、その幾何学的形状のために固定子のエラストマ厚さが円周方向と長手方向の両方で変化し、それ故に、増加したプリテンションは、不均一な弾性変形をもたらすことである。したがって、プログレッシブキャビティポンプの信頼性のある動作は保証されず、局所的に増加した磨耗は、前記調整に関連する不均一なギャップ形状によって引き起こされる可能性がある。
【0006】
円錐形のプログレッシブキャビティポンプもまた、プログレッシブキャビティポンプとして知られているので、摩耗の場合には、簡単な組み立てと固定子に対する回転子の調整との両方を可能にする。そのような1つのプログレッシブキャビティポンプは、例えば、国際公開第2010/100134A2号から知られている。この文献は、個々のチャンバがすべて同じ体積を有するように実施された、摩耗を防止または補償するための円錐形回転子を有するプログレッシブキャビティポンプを提案している。運転中に磨耗の兆候、特にキャビテーションとして知られるものが発生した場合、チャンバ体積が再び同じ大きさになりシールが達成されるように、固定子に対して回転子を軸方向に移動させることが可能である。
【0007】
上記の既知の解決策の不利な点は、上記の解決策が、回転子を移動させることによって固定子の既存の摩耗を補償することしかできないことである。従来技術から知られているスクリュポンプおよびプログレッシブキャビティポンプは、それ自体で摩耗の発生を防ぐことはできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、既存の磨耗を補償するためだけでなく磨耗の発生を低減し、それによって、プログレッシブキャビティポンプの耐用年数を延ばし、保守作業を低減するための、上述のタイプのプログレッシブキャビティポンプを開示することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、回転子と固定子との間のギャップ形状を最適化するように構成された、回転子と固定子との相対的な軸方向位置を調整するための調整装置を有するという点、前記装置が回転子と固定子との間の狭窄部を拡大するように構成されているという点で、上述のタイプのプログレッシブキャビティポンプによって達成される。
【0010】
本発明は、ギャップ形状、すなわちチャンバを隔てる狭窄部の形状がシールを十分に実施するために重要であり、その結果、ポンピングが可能であり、そしてプログレッシブキャビティポンプの作動中に摩擦が生じ、それによって、個々の構成要素、特に、回転子と固定子が加熱され、次いで、材料の膨張により回転子と固定子との間のプリテンションが増大するか、または狭窄部が小さくなりすぎるという洞察に基づく。増加したプリテンションはそれからさらなる磨耗をもたらす。
【0011】
本発明は、動作中に狭窄部が拡大され、それによって、ギャップ形状を動作条件に適合させることができ、したがって、最適化することができれば、すべての摩耗を防止または低減できることを認識する。したがって、本発明は、回転子と固定子との間の狭窄部を拡大するために実施される調節装置を提案する。狭窄部がさらに拡大すると、より低いプリテンションで接触するか、または接触がなくなり、それによって、回転子と固定子との間の摩擦が減少し、ひいては摩耗が減少する。液体を圧送するとき、追加の冷却効果が生じ、その結果、プリテンションが減少したときに部品は再び冷却することができる。それによって、例えば、乾燥状態で摩擦を低く保つために、プログレッシブキャビティポンプを起動するときに、より大きなギャップを調整することも可能である。体積効率および摩擦損失を考慮に入れて、最適な全体効率に調整することによって、省エネ方式でプログレッシブキャビティポンプを動作させることも可能である。しかしながら、狭窄部をわずかに拡大することは、剪断に敏感な媒体にとって有利である。したがって、プログレッシブキャビティポンプは、搬送される媒体に対して本発明によって調整することができる。
【0012】
回転子は、出口または入口に向かってテーパになる形状を含む。形状は、回転子を囲むエンベロープによって決まる。形状は、円錐形であるのが好ましい。したがって、回転子は、出口または入口の方向に小さくなる直径を有する。回転子は、好ましくは直線的にテーパになっている。しかしながら、回転子は、2次、3次、4次等の所定の関数に従ってテーパ形状を有することも好ましい。次いで、直径は、漸進的または漸減的に減少する。回転子の負荷に応じて、これは過度の磨耗を防ぐのに有利である。回転子が入口または出口に向かってテーパになるかどうかの選択は、特に、構造境界条件に依存し、そしてアセンブリの種類に依存してなされるべきである。テーパの方向は、回転子が固定子に挿入される方向を決定する。
【0013】
代替的にまたは付加的に、回転子は、入口または出口の方向に変化する偏心を含む。偏心は、好ましくは直線的に変化する、すなわち、直線的に増加または減少する。しかしながら、回転子は、2次、3次、または4次関数などの所定の関数に従って偏心を含むことも好ましい。偏心は、その後、漸進的または漸減的に減少する。
【0014】
両方の場合において、固定子は回転子に適合されており、したがって、対応する内側外形を含む。
【0015】
望ましくない圧力の増加を防ぐために、搬送方向におけるテーパおよび/または回転子の偏心の変化が、搬送方向におけるギャップ断面積の著しい減少をもたらさないようにごくわずかであることが基本的に好ましい。これは、例えば、両側の縦断面においてエンベロープ端部を中心とする2本の線が互いに20°未満、好ましくは10°未満、特に、5°未満の円錐角を形成するようにテーパにすることを選択することによって達成することができる。テーパによって生じる固定子の出口におけるギャップ断面積と固定子の入口におけるギャップ断面積との間の面積の差は、固定子の入口におけるギャップ断面積の10%未満、好ましくは5%未満であることが特に好ましい。
【0016】
一定の直径で変化する偏心のために、軸方向にシフトすることによって狭窄部を拡大することも可能である。このようにして、より小さな偏心を有する回転子のセグメントを、より大きな偏心を有する固定子のセグメントにすることができ、それによって狭窄部が拡大される。また、テーパ回転子と偏心量の異なる回転子との組み合わせも好ましい。
【0017】
好ましい実施形態では、調整装置は、回転子と固定子との間に漏れギャップが生じる程度に回転子と固定子との間の狭窄部を拡大するように設定されている。この場合、狭窄部は、回転子と固定子との間の接触によってではなく、むしろわずかなギャップ、すなわち漏れギャップによって形成され、それにもかかわらず、ある程度のシールを提供する。この場合、輸送速度は確かに低下するが、回転子と固定子との間の物理的接触、および前記構成要素間の液膜がないため、追加の冷却が起こり、磨耗がさらに減少する。そのような漏れギャップは、動作中に連続的に存在するのではなく、むしろ例外的な負荷の間またはその後にのみ設定されることが考えられる。
【0018】
調整装置は、1つまたは複数の所定の動作パラメータに応じて狭窄部の拡大を実行するように設定されることがさらに好ましい。例えば、狭窄部の拡大は、一定の動作期間の後に自動的に調整されることが考えられる。駆動モータの消費電力を測定し、消費電力が増加したときに狭窄部を拡大することも考えられる。狭窄部の拡大は、複数の動作パラメータに応じて行われることが好ましい。単一の動作パラメータのみを使用することも考えられ、また好ましいが、複数の動作パラメータを使用することによって、摩耗をより効果的に低減することができる。
【0019】
動作パラメータの1つ、固定子および/または回転子の温度が特に好ましい。固定子の温度は測定されるのが好ましい。このために、プログレッシブキャビティポンプは、好ましくは、固定子内または固定子上に配置され、固定子の温度を測定する少なくとも1つのセンサを備える。特に効果的に摩耗を減らすことができるように、温度は好ましくは複数の場所で測定される。狭窄部の連続的な拡大は、温度に応じて行われるのが好ましい。あるいは、1つまたは複数の閾値が予め決定され、そして1つまたは複数の閾値を超える場合、狭窄部の段階的な拡大が行われる。
【0020】
動作パラメータの1つ、好ましくはさらに1つは、輸送される液体の量である。輸送される液体の量は、好ましくは一回転当たりの液体の量である。一回転あたりの液体の輸送量が減少すれば、これはより多くの気体または空気が輸送されていることを意味する。気体または空気が輸送されるとき、媒体がプログレッシブキャビティポンプに及ぼす冷却効果は、液体を輸送するときよりも小さい。したがって、この場合、摩耗を防ぐために狭窄部を拡大することが好ましい。このために、流量計を固定子の入口または出口に配置することも考えられる。
【0021】
さらなる好ましい実施形態によれば、動作パラメータのうちの1つは、固定子の入口における液レベルである。ここでは液体センサまたは複数の液体センサを設けるのが好ましい。閾値として特定の充填レベルのみを測定することが好ましい可能性がある。あるいは、固定子入口で充填レベルを連続的に測定することも好ましい。固定子入口に低い液レベルがあると、プログレッシブキャビティポンプが空になる可能性が高くなり、それによって、摩擦も大きくなり、プログレッシブキャビティポンプの冷却が少なくなる。これは、次に急速な加熱、ひいては材料の膨張をもたらし、それによって、狭窄部はさらに収縮し、プリテンションが増大する可能性がある。したがって、固定子の入口で低液レベルが測定される場合、回転子と固定子との間の狭窄部が拡大されることが好ましい。
【0022】
さらに考えられるパラメータは出口での圧力である。前記パラメータが等しいかまたは減少すると同時にトルクが増加する場合、これは、回転子と固定子との間の摩擦が増加していることの指標であり、したがって固定子材料の膨張の指標である。そのような場合、ギャップ形状を修正された境界条件に適合させるために狭窄部を拡大することも好ましい。
【0023】
さらに好ましい実施形態では、固定子は軸方向に変位可能に支持され、調整装置は、回転子と固定子との間の狭窄部を少なくとも部分的に拡大するために固定子を軸方向に変位させるように設定される。回転子は、典型的には、駆動部に結合され、固定子は回転方向に固定的に支持されている。摩耗の場合には、固定子は、典型的には、回転子よりも柔らかい材料でできているので、固定子を最初に交換しなければならない。このため、固定子は容易に交換可能に配置されなければならないので、本実施形態では、回転子と固定子との間の狭窄部を少なくとも部分的に拡大するために、固定子を軸方向に変位可能に支持することが提案される。このために、調整装置は、固定子を移動させるために固定子に結合されるのが好ましい。このために、調整装置は、この理由のために設けられた固定子の駆動部に結合することができる。このような固定子の駆動部は、好ましい実施形態では、油圧駆動部、ラックアンドピニオン駆動部、チェーン駆動部、スピンドル駆動部などとして実施される。固定子の駆動部は、固定子の軸方向位置を保持できるように実施されることが好ましい。これは、固定子の駆動部が設計上自己遮断的であるという点で好ましくは実施される。
【0024】
さらに好ましい実施形態では、回転子は、軸方向に変位可能に支持され、調整装置は、回転子と固定子との間の狭窄部を少なくとも部分的に拡大するために回転子を軸方向に変位させるように設定される。2つの変位の組み合わせが可能であり好ましいこと、すなわち、回転子と固定子の両方が軸方向に変位していることが理解されるべきである。それによって、変位の絶対距離を小さく保つことが可能である。
【0025】
変形例では、駆動モータと駆動シャフトとを含む回転子の駆動系は、回転子と一緒に移動可能である。回転子は、典型的にはシャフトによって、典型的には電気モータとして実施される駆動モータに連結されている。回転子は、固定子の中心軸の周りに偏心的に回転するので、すなわちその中心軸は、固定子の中心軸の周りに円形の経路を描くので、そのような駆動シャフトは、偏心トルク伝達を許容するために、典型的には、少なくとも1つのカルダン継手または可撓性ロッドも含む。本実施形態では、駆動系の一部として、駆動モータと駆動シャフトの両方が、回転子と共に変位するように支持されている。これにより、駆動系の設計が単純化され、例えば、固定子に関して上述したように、この理由のために駆動部が設けられている駆動モータ用の線形軸受けが提供される。
【0026】
上述の変形例に加えて実施可能なさらなる変形例では、回転子と駆動シャフトとが一緒になって駆動モータに対して変位可能である。本変形例では、駆動シャフトと駆動モータとの間にギアボックスが配置され、駆動シャフトの軸方向の変位を許容することが好ましい。例えば、ギアボックスのギアは、軸方向変位が可能になるように実施される。本変形例では、駆動モータの構成は単純化されているが、ギアボックスの設計は前述の実施形態よりも困難である。それによるさらなる利点は、変位可能な構成要素の質量がより少ないことである。駆動モータを別に支持することもさらに可能である。
【0027】
一変形例では、またはそれに加えて、駆動シャフトは少なくとも2つの部分を有し、回転子を軸方向に変位させるために駆動シャフトを長くしたり短くしたりすることを可能にする拡張部材を含む。本実施例の駆動シャフトは、伸縮自在に設計することができ、自動的に長くすることができ、あるいは回転子を変位させるための別の駆動部を回転子に設けることができる。例えば、油圧駆動の拡張部材を駆動シャフトに配置し、油圧を加えることによって軸方向の調整を可能にすることが考えられる。液圧拡張部材の代わりに、例えばスピンドル駆動の意味で、機械的に作用する拡張部材を設けることもできる。
【0028】
代替的にまたは付加的に、別個の駆動ユニットが回転子用に設けられており、拡張部材が受動的であり変位可能である間に回転子を軸方向に変位させる。それによって、設計はさらに単純化される。
【0029】
さらなる好ましい実施形態によれば、固定子の長手方向軸は動作中に実質的に垂直または直立に向けられ、固定子の出口は上部に配置される。これからさらなる利点が生じる。1つは、回転子と固定子との間の狭窄部またはプリテンションが回転子の追加重量によって下部固定子領域で狭窄したり増加したりしないことである。更なる利点は、ギャップの形状が漏れギャップの程度まで変化すると、液体が入口の方向に下方に流れることで追加の冷却効果が達成されるという点で生じる。本変形例では、液体だけでなく気体も輸送されている場合、液体は常に接触点の領域、すなわち、シールラインの領域に存在することが有利であり、したがって、大部分の気体を輸送するときでさえ、シールラインの冷却が確実にされる。それにより、加熱して摩擦およびプリテンションを増大させること、あるいは狭窄部が過度に収縮することが防止される。これにより、さらに磨耗を防ぐことができる。垂直配置はさらにスペースを節約し、プログレッシブキャビティポンプは既存のシステムに特に容易に設置することができる。垂直配置は、狭窄部を拡大することができるという点で可能になる。
【0030】
さらに好ましい実施形態では、固定子は、少なくとも内壁の領域において柔軟な材料、特にエラストマから形成されている。これにより、固定子の製造が簡単になり、固定子と回転子との間に良好なシールが得られる。変形例では、固定子の内壁は、実質的に均一に厚いエラストマ材料の層で被覆されていてもよい。他の変形例では、固定子全体がエラストマ材料で形成され、安定化のための外部カフを備える。
【0031】
さらに好ましい実施形態によれば、調整装置は、駆動モータの始動手順中に開始する前に、回転子と固定子との間の狭窄部を収縮させるために、始動手順を開始する前、または回転子を回転させるための駆動モータの停止手順中または停止手順後に、回転子と固定子との間の狭窄部を拡大するように構成されている。本実施形態によれば、回転子と固定子との間の狭窄部は、プログレッシブキャビティポンプの輸送手順の開始中、すなわち、固定子に対する回転子の回転運動を生成する駆動モータを始動させる間またはその後に、拡大狭窄部から細長狭窄部に調整される。これにより、プログレッシブキャビティポンプは、当初の高い内部漏れ流から減少した漏れ流まで調整される。前記調整運動は、プログレッシブキャビティポンプの輸送量および/または輸送圧力を急激に増大させることにつながり、それはプログレッシブキャビティポンプおよび接続されたラインに高負荷を生じさせるが、開始期間にわたって連続的に増大する。前記開始期間は、1秒~複数秒までの範囲であり得る。本実施形態は、速度を制御するための可変周波数駆動を有さず、むしろ始動時に公称速度まで直ちに増加する駆動モータが使用される場合に特に有利である。
【0032】
前記制御の目的のために、回転子と固定子との間の狭窄部を輸送手順の各端部で拡大することができ、それにより、前記狭窄部が後続の搬送手順の開始のために狭窄部が拡大状態にあるか、または搬送手順の開始時に駆動モータの始動前に、対応する狭窄部の拡大が実行され、その後、前記拡大を実行した後に前記駆動モータを開始する。両方の方法において、駆動モータが始動されたとき、固定子と回転子との間に収縮した狭窄部または直接接触さえも存在せず、始動からすぐに高い輸送量および高い輸送圧力を直ちに生じさせる。
【0033】
調整装置が圧力信号を受信するための入力インターフェースを含み、圧力信号に応じて回転子と固定子との間の狭窄部を拡大または縮小するように実施されているとさらに好ましい。本改良形態によれば、潜在的には基本的には電子コントローラとして実施される対応するコントローラを含む調整装置は、圧力信号に応じて回転子と固定子との間の狭窄部の変化を実行するために実施される。これにより、圧力信号は、入口側の圧力、固定子内の圧力、または固定子の出口側の圧力、すなわち、特にプログレッシブキャビティポンプの圧力側の圧力とすることができる。このように、正確に圧力を調整することができ、さらにそれに応じて狭窄部を調整することによって所定の圧力曲線を実際の圧力曲線として設定することができる。本発明によれば、前記設定または制御は、回転子と固定子との間の延長部を伸縮させることによって実行され、回転子および固定子の速度を潜在的に制御することと比較して実質的により正確、より自発的、そしてより応答的に調整または制御することができる。本実施形態は、過圧保護を提供するために特に使用することもできる。この場合、特定の圧力に達するかまたは特定の圧力を超えると、回転子と固定子との間の狭窄部が拡大し、それによって、特定の最大圧力を超える圧力の上昇が防止される。
【0034】
本発明によるプログレッシブキャビティポンプは、調節装置が体積信号を受信するための入力インターフェースを含み、体積信号に応じて回転子と固定子との間の狭窄部を拡大するように実施されることでさらに改良することができる。その結果、体積信号の値に対して、搬送手順の開始以降に搬送された体積が特定の体積に対応することを知らせるために、回転子と固定子との間の狭窄部が拡大され、固定子の出口からの体積のそれ以上の搬送は起こらない。本実施形態によれば、調整装置は、体積信号を受信するように実施される。前記体積信号は、基本的に、プログレッシブキャビティポンプによって輸送されるべき特定の体積を特徴付けることができる。これは、一体型移送手順の開始から終了まで、すなわち、プログレッシブキャビティポンプの一定の動作において、特定の体積がプログレッシブキャビティポンプによって移送されることになることを意味する。本発明者らは、そのような特定の輸送量の正確な調量が、慣性およびランオン効果のために、回転子を駆動する駆動モータを制御および調整することによって十分に達成され得ないことを基本的に認識した。代わりに、本発明によれば、回転子と固定子との間の狭窄部は、正確な計量がそれによって調整されかつ制御され得るように調整される。これは特に、所望の体積、すなわち指定された体積値に達すると、それ以上の体積がプログレッシブキャビティポンプによって移送されないように狭窄部が拡大されることを意味する。回転子と固定子との間の狭窄部の調節または制御は、所望の特定体積のごく一部のみが輸送されるべきであるときに、回転子と固定子との間の狭窄部の拡大が設定されるように特に行われ得る。このようにして、輸送体積は1段階または2段階でまたは連続的に減少する。それによって、実際の体積は対応する体積計によって捕捉されることができ、あるいはプログレッシブキャビティポンプの回転数および輸送期間にわたる回転子と固定子との間の狭窄部の寸法から計算することができる。指定された値の信号は、体積信号として調整装置によって捕捉することができ、または調整装置に入力することができる。この場合、回転子と固定子との間の狭窄部のための操作量の計算は、調整装置内で行われ、内部計算または追加的に実際値を調整装置に入力することによって実施することができる。調節装置内で操作量を直接計算することを可能にするために、体積信号は、指定された値と実際の値とから導出された差信号であってもよい。調整装置は、回転子が固定子に対して回転している間に固定子に対する回転子の相対軸方向位置を調整するために実施されることがさらに好ましい。ポンプの運転中に軸方向に調整するための本実施形態は、例えば、外部からアクセス可能または操作可能な調整装置によって実施することができる。調整装置は、エネルギー駆動型アクチュエータとして実施することができ、したがって、回転子と固定子との間で軸方向に調整するために、例えば、油圧式、空圧式、または電気駆動式アクチュエータをポンプに設けることで回転中の調整を可能にする。
【0035】
本発明の第2の検討によれば、上記目的は、本発明の第1の検討に従ったプログレッシブキャビティポンプの上述の好ましい実施形態の少なくとも1つに係るプログレッシブキャビティポンプを動作させる方法によって達成される。その方法は、液体を輸送するために回転子を駆動するステップと、回転子と固定子を互いに対して軸方向に変位させることによって、回転子と固定子の間の狭窄部を拡大するステップと、を有する。本発明の第1の考察に係るプログレッシブキャビティポンプおよび本発明の第2の考察に係る方法は、従属請求項に特に記載されているように、同一かつ類似の好ましい実施形態を有することを理解されたい。これに関して、本発明の第1の考察の上記説明を十分に参照する。
【0036】
この方法は、好ましくは、回転子と固定子間の漏れギャップを調整するステップをさらに含む。漏れギャップの調整は、液体を輸送するための回転子の駆動中に行われることが好ましい。すなわち、回転子と固定子との互いの変位、ならびに漏れギャップの調整は、動作中に、すなわち、動作パラメータが閾値に達するかまたはそれを超えるときに行われることが好ましい。
【0037】
この方法は、好ましくは、回転子および/または固定子の温度を測定するステップと、測定された温度に基づいて、回転子と固定子とを軸方向に相対変位させるステップと、をさらに含む。例えば、所定の閾値温度を超えた場合、回転子と固定子とが互いに対して軸方向に変位し、その結果、その超過に応じて狭窄部が拡大する。このように漏れを低く保つために、温度が下がると、狭窄部の収縮が、プリテンション下で接触するまで行われるようにすることもできる。回転子および/または固定子の温度は、好ましくは、所定の短い時間間隔で連続的に測定されることが好ましい。前記測定に応じて、回転子と固定子との間の移動が動的に行われ、その結果、回転子と固定子との間に存在する狭窄部、したがって、ギャップ形状が常に測定温度と調和し、摩耗を防止できる。
【0038】
この方法は、固定子の入口における液レベルを決定するステップと、決定された液レベルに応じて、回転子と固定子とを軸方向に相対変位させるステップとがさらに好ましい。液レベルは、好ましくは、液体センサによって決定される。液レベルは、最大入口流量の半分のような特定の閾値に対してのみ決定されることが考えられる。決定された液レベルに基づいて、回転子と固定子との相対的な軸方向変位が、好ましくは、所定の固定値によって行われる。それにより狭窄部が拡大され、摩耗が防止される。液レベルが再び上昇すると、狭窄部が再び収縮する、すなわち、より小さなギャップまたは接触が設定され、それによって、最適なギャップ形状および輸送が達成されるようにすることもできる。
【0039】
さらに好ましい実施形態では、この方法は、回転子の1回転当たりの液体の輸送体積を決定するステップと、決定された液体の体積に応じて、回転子と固定子を相対的に軸方向に変位させるステップと、をさらに含む。回転子の1回転当たりの輸送される液体の体積が少ないということは、比較的高い割合の気体が輸送されていることを示している。輸送される気体は、互いに接触している部品間の潤滑を防ぎ、冷却を防ぐ。この場合、比較的多量の気体が輸送され、回転子の1回転あたりの液体が少ない場合には、摩耗を防ぐために狭窄部を拡大することが好ましい。
【0040】
この方法は、回転子を回転させるための駆動モータの始動の開始時に回転子と固定子との間の狭窄部が拡大され、駆動モータの始動を開始した後に回転子と固定子との間の狭窄部が収縮される。本方法の現在の改良により、輸送体積および輸送圧力の急激な増加なしに穏やかな始動挙動が達成される。本改良形態の利点、変形形態例、および考察に関しては、プログレッシブキャビティポンプの対応する実施形態の上記の説明を参照されたい。
【0041】
圧力が圧力センサによって捕捉され、回転子と固定子との間の狭窄部が圧力に応じて拡大または収縮することがさらに好ましい。本方法の本実施形態により、圧力の正確な制御、圧力曲線、または最小および/または最大圧力の順守は、それに応じて回転子と固定子との間の狭窄部が調整されるという点で達成される。これにより、自発的に正確な圧力制御が可能になる。このために、プログレッシブキャビティポンプの対応する設計およびその上記の説明が参照される。
【0042】
特定の体積が捕捉され、特定の体積に応じて回転子と固定子との間の狭窄部が拡大または収縮することがさらに好ましい。本実施形態によれば、プログレッシブキャビティポンプは精密計量ポンプとして制御および調整される。このために、特定の体積がプログレッシブキャビティポンプによって入力または受け取られ、回転子と固定子との間の狭窄部が前記特定の体積に応じて拡大または収縮される。それによって、回転子と固定子との間の狭窄部の拡大または収縮は、指定された体積に達すると輸送体積がゼロに減少するように調整される。これは、狭窄部を対応して拡大することによって行うことができ、あるいはそのような拡大および回転子の回転の停止と併せて行うことができる。特定の体積を達成するために特定の体積のごく一部を輸送する必要があるときにそのような拡大が行われる場合、段階的または連続的な拡大または収縮は、所望の特定の体積への正確な計量を特にもたらすことができる。本実施形態については、プログレッシブキャビティポンプの対応する実施形態の上記説明を再び参照する。
【0043】
本発明は、5つの実施形態の例を使用し、添付の図面を参照して、以下により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】第1の実施形態例に係る、プログレッシブキャビティポンプを通る概略断面図である。
【
図2a】シールラインが設定された長手方向軸線に沿ってプログレッシブキャビティポンプを通る概略断面図である。
【
図2b】
図2aに係る、長手方向軸に垂直な概略的な断面図である。
【
図2c】
図2aに係る、長手方向軸に垂直な概略的な断面図である。
【
図3a】漏れギャップが設定された長手方向軸に沿ってプログレッシブキャビティポンプを通る概略断面図である。
【
図3b】
図3aに係る、長手方向軸に垂直な概略的な断面図である。
【
図3c】
図3aに係る、長手方向軸に垂直な概略的な断面図である。
【
図4】第2の実施形態例に係る、プログレッシブキャビティポンプを通る概略断面図である。
【
図5】第3の実施形態例に係る、プログレッシブキャビティポンプを通る概略断面図である。
【
図6】第4の実施形態例に係る、プログレッシブキャビティポンプを通る概略断面図である。
【
図7】第5の実施形態例に係る、プログレッシブキャビティポンプを通る概略断面図である。
【
図8】プログレッシブキャビティポンプを動作させる方法の一実施形態例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0045】
プログレッシブキャビティポンプ1は、固定子2および回転子4を備える。固定子は、固定子2の内側キャビティ6を通って中央に延びる中心軸L1を有する。固定子2は、キャビティ6の境界を定め、エラストマ材料で形成された内壁8を備える。壁8の内側外形は、二重螺旋を画定するように形成されている。回転子4もまた全体的に螺旋形であり、固定子2の螺旋のピッチは、回転子4に対してピッチの2倍である。したがって、狭窄部7によって分離された個々のチャンバ5が形成される。
【0046】
固定子2は、入口10と出口12とをさらに備える。入口10は、入口パイプ18が接続されている入口フランジ16を備える入口ハウジング14に接続されている。出口12は、さらに出口フランジ22を備える出口ハウジング20を有し、出口フランジ22には出口パイプ24が接続されている。
【0047】
駆動シャフト26は、入口ハウジング14を貫通し、第1のカルダン継手によって回転子4に接続され、第2のカルダン継手30によってギアボックス34の出力シャフト32に接続されている。2つのカルダン継手28,30を有するそのような駆動シャフト26の代わりに、薄い可撓性のシャフトもまた好ましく、偏心駆動を可能にする。ギアボックス34の入力側には、本実施形態例に係る電動機としての駆動モータ36が接続されている。
【0048】
本発明に係るプログレッシブキャビティポンプ1は、最適なギャップ形状を設定するために、回転子4と固定子2との間の狭窄部7を拡大するための調整装置39を備える。本実施形態例(
図1)によれば、調整装置39は、固定子2が軸方向に変位可能に支持されるように実施される。固定子2は、矢印38によって示されるように長手方向軸L
1に沿って変位可能である。このために、固定子2は、入口ハウジング14と出口ハウジング20のセグメントで受け取られ、シール40,42によって密封される。調整装置39は、固定子2を変位させるための係合セグメント44を備え、この目的のために設けられた駆動部に潜在的に接続されている。
【0049】
図2a、
図2b、および
図2c、ならびに
図3a、
図3b、および
図3cは、ギャップ形状の変化、すなわち、概略図を用いた狭窄部7の拡大図を示す。
【0050】
図2a~
図2cは、シールギャップを有するギャップ形状を示しており、そこでは、回転子4と固定子2との間に接触があるが、
図3a~
図3cは、漏れギャップSが設定されるように狭窄部7の拡大図を示す。
図2bは、
図1にも示されているように、長手方向軸線L
1に沿った断面を示している。回転子4は、特に、
図2aおよび
図2cから分かるように、
図2a~
図2cに対して最大上方位置にあり、それぞれ長手方向軸線L
1に垂直な断面を示している。
図2aは、入口10付近の断面図であり、
図2cは、出口12の断面図を示す。特に、
図2aおよび
図2cに見られるように、回転子4の円周面3のセグメントは、固定子2の内壁9と接触する。この接触によって、狭窄部7内にシールラインDが形成される。典型的には、変形が半径方向に生じるように、回転子4が固定子2内で軸方向に位置決めされることが提供される。固定子2は、特にエラストマのような可撓性材料でできている。したがって、半径方向のプリテンションは、シールラインDの領域において固定子4の弾性変形をもたらす。それによって、摩擦は、比較的大きい。摩擦が大きいと摩耗も大きくなる。動作中に、例えば、固定子2の材料の膨張または入熱による材料の膨張により、前記半径方向のプリテンションがさらに増大することが起こり得る。
【0051】
例えば、剪断感応媒体については、シールラインDを形成すると同時に比較的高い半径方向のプリテンションを達成することも好ましく、それにより、媒体は、チャンバ間のシールラインDで明確に分離されそしてほとんど剪断が生じない。
【0052】
全体的に円錐形の形状を有する回転子4を軸方向に調整することによって、狭窄部7を拡大し、それによって、半径方向のプリテンションを減少させること、またはシールラインDの代わりに漏れギャップSを設定することさえ可能である。漏れギャップSもまた密封することを理解されたい。この状態では、回転子4は狭窄部7内の液膜上を浮遊する。狭窄部の拡大は、回転子4が円錐状の拡大方向に、すなわち、
図2a~
図3cに対して左に変位することによって達成される。これにより、狭窄部7がさらに拡大され、漏れギャップSが形成される可能性がある。
【0053】
逆の場合には、狭窄部7をより小さくすること、すなわち、例えば、漏れギャップSをなくしてシールラインを設定するために前記構造をさらに収縮させることも可能である。これは、例えば、高圧で有利になり得る。高圧は、固定子2を半径方向に拡張させ、漏れギャップSを自動的に設定することができる。そのような場合、最適なギャップ形状を維持するためには、円錐形の狭窄部の方向、つまり、
図2a~
図3cに対して右側への軸方向の変位が必要である。
【0054】
本実施形態例(
図2a~
図3c)における偏心量e
1,e
2は一定であり、一方、回転子4の直径D1,D2は出口12の方向に小さくなる。すなわち、e
1とe
2は同一であり、一方、D1はD2より大きい。直径が一定である、すなわち、D1がD2と同一であり、かつ偏心が変化する、すなわちe
1がe
2よりも大きい実施形態も含まれる。それに応じて、軸方向に変位したときの効果も変わる。
【0055】
図4は、
図1に対する変形実施形態例を示しており、類似の要素には同じ参照番号が付されている。この点に関して、第1の実施形態例(
図1)の上記の説明を十分に参照する。狭窄部7内のギャップの幾何学形状に関して、
図2a~
図3cを参照する。
【0056】
第1の実施形態例とは対照的に、本実施形態例(
図4)では、調整装置39は、本実施形態例では、駆動シャフト26、ギアボックス34、および駆動モータ36を含む駆動系25全体を含めて、回転子4が軸方向に変位可能であるように実施される。この点に関して、矢印37は、駆動モータ36も変位されることを示している。このために、ギアボックス34のハウジング46は、固定子2の入口10とは反対側の入口ハウジング14のセグメント48内に変位可能に支持され、シール50によって周囲の領域から密封されている。
【0057】
このために、回転子4を軸方向に移動させるために別個の駆動部52が設けられており、スピンドル駆動部54(概略的にのみ示されている)によって駆動系25を変位させることができるので、回転子4と固定子2との間の狭窄部7が拡大する。必要に応じて、狭窄部7は、漏れギャップSが回転子4と固定子2との間のシールラインDの領域となるように十分に拡大することができる。回転子4と固定子2との間のプリテンションは、輸送された液体が逆圧力を及ぼすので、通常、それによって完全には緩和されない。
【0058】
駆動部52は、信号線56によってこのためにコントローラに接続されることが好ましい。コントローラは、例えば、信号線60によってコントローラ58に組み込まれるかまたは接続されることが好ましい。コントローラは、入力インターフェースを有することが好ましい。これによって、制御または調整データが入力され、前記制御または調整データに応じて制御または調整を実行するために実施される。例えば、指定された体積、または指定された体積と実際の体積との間の差は、前記インターフェースによってコントローラに入力することができる。それによって、インターフェースは、ユーザインターフェースまたはセンサまたはスイッチを接続するためのインターフェースであり得る。コントローラ58は、ギャップ形状を変更すべきかどうか、そしてどの程度まで変更するべきか、すなわち、回転子4と固定子2との間の狭窄部7を拡大すべきかどうかを決定するのに役立つ。本実施形態例では、コントローラ58は、このために固定子2内に配置されたセンサ62に最初に接続されている。センサ62は、温度センサとして実施されており、固定子2の温度を捕捉するのに役立つ。センサ62は、回転子4の温度を捕捉するように配置することもできることを理解されたい。このために、センサ62は、回転子4の外表面を検出することができ、あるいは前記センサまたは追加のセンサを回転子4内に配置することができる。次に、コントローラ58は、センサ62によって測定された温度に基づいて、閾値温度に達したかどうか、そしてそれに基づいて、ギャップ形状を修正するかどうか、そしてどの程度修正するべきかを決定する。前記結果は、ライン60,56を介して調整信号の形で駆動部52に送られ、その結果、駆動系25は、回転子4と固定子2との間の狭窄部7を拡大するために変位される。
【0059】
本実施形態例(
図4)では、プログレッシブキャビティポンプ1は、固定子2の入口10における液体の充填レベルを決定するための充填レベルセンサ64をさらに備える。前記センサ64はまた、コントローラ58に接続されている。コントローラ58は、受信した充填レベルに基づいて固定子2に対する回転子4の変位を決定し、駆動系25を調整するために対応する信号を駆動部52に送信する。
【0060】
本実施形態例(
図4)に係るプログレッシブキャビティポンプ1は、固定子2を通る液体の流量を測定する流量センサ66をさらに備える。前記センサ66はまた、コントローラ58に接続され、コントローラ58は、センサ66からの信号および回転子4の速度に基づいて1回転当たりの流量または流量を決定する。前記流量が低い場合、これは比較的大量の気体が輸送されていることを示す。それによって、回転子4と固定子2との間の摩擦が増加し、同時に冷却が減少する。これは通常、材料の拡大を増大させ、ひいては回転子4と固定子2との間のプリテンションを増大させ、その結果、摩耗を増大させる。その場合、ギャップ形状を調整することが好ましい。流量センサ66の代わりに圧力センサ66を設けて、回転子と固定子との間の狭窄部を調整することによって圧力調整を可能にすることもできる。そのような圧力センサによって、最小圧力または最大圧力の維持はまた、狭窄部を調整することによって調整または制御され得る。このような圧力センサも流量センサ66に加えて設けることができることを基本的に理解されたい。圧力センサは、固定子の領域または入口側にも配置することができる。
【0061】
3つのセンサ62,64,66のうちの1つのみが存在する実施形態も好ましいことを理解されたい。さらに、コントローラ58を駆動部52のコントローラおよび/または駆動モータ36のコントローラに統合することもできることを理解されたい。
【0062】
図5は、
図4の実施形態例と基本的に同様のさらなる実施形態例を示している。同一のおよび同様の要素は同一の参照番号でラベル付けされているので、上記の説明を十分に参照する。
図4に関して説明したセンサ62,64,66はまた、
図1、5、6、および7の実施形態の例において、別々にまたは組み合わせて使用することができることを理解されたい。
【0063】
本実施形態例(
図5)によれば、回転子4は、固定子2に対して変位可能に配置されている。しかしながら、本実施形態例においては、駆動モータ36も静止しており、変位可能ではない。全体として、駆動シャフト26は、カルダン継手30を介して駆動モータ36の駆動シャフト32に連結されている。回転子4と駆動シャフト26を変位可能にさせるために、駆動シャフト32は、軸方向に変位可能にギアボックス34の出力ギア68に支持されている。ギア68は、軸方向に変位可能なシャフト-ハブ接続によって出力シャフト32に連結されている。したがって、ギアボックス34は、中空シャフトとして実施されたギア68を備えており、その中でシャフト32を変位させることができる。出力シャフト32は、シール70を通って案内され、駆動入口ハウジング14からギアボックス34内に液体が侵入することはできない。次に、出力シャフト32ひいては回転子4を軸方向に変位させるために、駆動部52(
図4参照)を出力シャフト32の外側セグメント72に配置することができる。
【0064】
それに関して修正されたさらなる実施形態が
図6に示されている。同一のおよび同様の要素は、再び同一の参照番号でラベル付けされているので、上記の説明を完全に参照する。
【0065】
図6による実施形態例では、回転子4も移動可能であり、固定子2は静止しており、入口ハウジング4と出口ハウジング20内に収容されている。本実施形態例によれば、駆動シャフト26は2つの部分で実施され、第1の部分74と第2の部分76とを含む。2つの部分74,76は互いに入れ子式に挿入され、拡張部材80は、2つの部分74,76間の第1の要素74の凹部78内に実装されている。拡張部材80は、シャフト76の第2の部分をシャフト74の第1の部分に対して変位させることによって駆動シャフト26の軸方向長さを調整することを可能にするように働く。拡張部材80を拡張させるかまたは拡張部材80を収縮させることによって、回転子4の変位が可能になる。
【0066】
拡張部材80を受動的な拡張部材として、特に、油圧部材として実装することが考えられる。液圧部材は、回転子4と固定子2との間でほぼ一定のプリテンションを維持するように作用するので、回転子4に作用する予圧力は実質的に一定である。固定子2および/または回転子4の材料が拡大すると、回転子4は
図4に対して左側に撓むことが可能であり、拡張部材80内の油圧部材によって補償される。それによって、駆動部を用いて回転子4および/または固定子2を能動的に調整するのと同様に、過度の摩耗も防止される。油圧部材に作用する圧力は、ポンプ圧力に適合させることができる。
【0067】
図7は最後に、順次プログレッシブキャビティポンプ1の実施形態例を示しており、固定子2に対する回転子4の変位を可能にしている。本実施形態例では、
図1、
図4、および
図5の最初の3つの実施形態例と同様に、駆動シャフト26は、単一部品として実現されている。駆動シャフト26は、カルダン継手30を介して駆動軸32に接続されている。
【0068】
図7に係る実施形態例では、カルダン継手28を回転子4に接続するシャフトスタブ82は、2つの部分に実装され、回転子4に堅固に接続される第1の部分84とカルダン継手に接続される第2の部分86とを含む。部分84および86は、互いに入れ子式に挿入され、
図4に係る拡張部材80に対応する拡張部材80が部分84に設けられている。前記拡張部材80は、能動的でも受動的でもよく、例えば、油圧部材の形態の受動的でもよい。あるいは、駆動部が回転子4の端面88に作用して回転子4を軸方向に変位させるようにしてもよい。
【0069】
図8は、実施形態例1~7のうちの1つに従う上述のプログレッシブキャビティポンプの好ましい実施形態のうちの1つに従ってプログレッシブキャビティポンプを動作させるための方法のシーケンスの例を示す。ステップ100において、プログレッシブキャビティをポンプ1が始動し、回転子4が回転するように誘導される。ステップ102は、回転子4を回転させることによって固定子2の入口10から出口12へ液体を輸送することを示している。輸送ステップ102の間、ステップ104で温度センサによって固定子2の温度が測定される。
【0070】
ステップ106で、測定された温度が1つまたは複数のしきい値と比較される。ステップ108で、次に、閾値、または複数の閾値のうちのどれが閾値を超えたかどうか、閾値を超えていないかどうか、またはプリテンションを判断する。すなわち、固定子に対する回転子の軸方向位置、したがって、ギャップの形状、すなわち、狭窄部7の形状は、ステップ106で決定された閾値と一致する。次に、ステップ108で、液体を輸送し続け、ステップ102に戻るという決定がなされる。そうでなければ、ステップ110において、対応するプリテンションが設定される。ステップ110でギャップ形状が任意に新たに調整された後、シーケンスはステップ102に戻ることができる。
【0071】
例えば、ステップ104において測定された温度が、ステップ106において複数の閾値に対して決定され、各閾値が互いに対する回転子4および固定子2の相対的な軸方向位置に相当することを表すことが考えられる。ステップ110において、106で決定された閾値に対して提供された対応する軸方向位置が次に設定される。同時に、液体はステップ102で輸送され続ける。
【0072】
基本的には、搬送手順の開始時、すなわち、固定子に対する回転子の回転運動を開始する前に、回転子と固定子との間の狭窄部が十分に拡大されて、内部漏れのために輸送速度が全くないかまたは低いだけになる。次いで、所望の輸送速度または所望の輸送圧力がこのようにして達成されるまで、約1.5秒の時間制限された始動手順に従って構造を収縮させる。