(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-26
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】脈管の管腔/腔内にガイドワイヤを片手で挿入するための挿入デバイス
(51)【国際特許分類】
A61M 25/09 20060101AFI20220127BHJP
【FI】
A61M25/09 530
(21)【出願番号】P 2019546766
(86)(22)【出願日】2017-11-10
(86)【国際出願番号】 US2017061046
(87)【国際公開番号】W WO2018089758
(87)【国際公開日】2018-05-17
【審査請求日】2020-11-09
(32)【優先日】2016-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519166659
【氏名又は名称】イーブイエイ・イノベーションズ
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100137039
【氏名又は名称】田上 靖子
(72)【発明者】
【氏名】ストーン,ダニエル・ビー
(72)【発明者】
【氏名】パノッツォ,ジェフリー・エイ
【審査官】竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-515771(JP,A)
【文献】特開2008-023128(JP,A)
【文献】特開2014-212906(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドワイヤを片手で挿入するためのデバイスであって、
本体と、アクチュエータキャリッジと、を備え、
前記本体は、
前記本体に形成される把持部と、
前記本体によって画定される案内路と、
前記本体に形成される、シリンジのための取付部と、
を有し、
前記シリンジは、プランジャと、プランジャフランジと、前記プランジャを貫通するガイドワイヤ通路と、前記プランジャを貫通する前記ガイドワイヤ通路と同一直線上の中空針とを有し、
前記取付部は、シリンジのバレルを受け入れて保持するように適合され、
前記アクチュエータキャリッジは、
前記本体の前記案内路に沿って摺動可能であり、
前記アクチュエータキャリッジに、
トリガと、
シリンジの前記プランジャフランジを把持するように適合されたフランジ拘束部と、
前記アクチュエータキャリッジ上に取り付けられた実質的に環状のカセットを支持するように適合されたワイヤガイド送給取付部であって、
前記プランジャフランジと結合し、前記ガイドワイヤを、前記シリンジの前記プランジャを貫通する前記ガイドワイヤ通路内に方向付けるように適合された案内具と、
前記実質的に環状のカセットと前記案内具との間のワイヤ送給面と、
が取り付けられた、ワイヤガイド送給取付部と、
前記実質的に環状のカセットと結合するように適合された受け部と、
が取り付けられており、
前記ワイヤ送給面及び前記トリガは、前記把持部が片方の手の複数本の指によって係合されているとき、前記片方の手の1本の指が、前記片方の手の1本の指と前記ワイヤ送給面との間で前記ワイヤと係合可能であり、前記片方の手の別の1本の指が、前記アクチュエータキャリッジの前記トリガを後方及び/又は前方に押圧可能であるように、前記把持部に対して配置されており、
前記把持部が片方の手の複数本の指によって係合されているとき、前記片方の手の1本の指は、前記片方の手の1本の指と前記ワイヤ送給面との間で前記ワイヤと係合することによって前記シリンジを通じて前記ワイヤを前進させ、前記ワイヤの先端が受ける抵抗の度合いを感知することが可能であり、前記片方の手の
別の1本の指は、前記片方の手の複数本の指が前記把持部に係合し続けた状態で、前記
アクチュエータキャリッジの前記トリガを後方及び/又は前方に押圧し、前記プランジャを後方及び/又は前方に引くことが可能
である、ガイドワイヤを片手で挿入するためのデバイス。
【請求項2】
前記実質的に環状のカセットと結合するように適合された前記受け部は、前記フランジ拘束部から後方に離間され、前記環状のカセットの出口を、前記ワイヤ送給面、前記案内具、及び前記シリンジの前記プランジャを貫通する前記ガイドワイヤ通路と実質的に一直線上に保持する、請求項1に記載のガイドワイヤを片手で挿入するためのデバイス。
【請求項3】
前記案内路は前記本体の内部にある、請求項2に記載のガイドワイヤを片手で挿入するためのデバイス。
【請求項4】
前記案内路は、前記本体の外面に形成される、請求項2に記載のガイドワイヤを片手で挿入するためのデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、2017年11月10日に出願された国際出願PCT/US2017/61046の国内移行出願である。PCT/US2017/61046は、2016年11月10日に出願された米国仮特許出願第62/420,269号に基づく優先権を主張する。本出願は、この米国仮特許出願の優先権が主張され、この米国仮特許出願の開示は参照により援用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
脈管の管腔内へのガイドワイヤ、特に、かなりの長さの中心ラインの挿入は、多くの場合、患者が苦痛を抱えている中で極めて迅速に達成しなくてはならないが、これまで利用可能である一般的な実用的処置の多くは、撮像デバイス、通常は超音波診断装置、及び付随するそれとの協調による支援の使用を必要とするか、又はガイドワイヤを挿入する外科医から、ガイドワイヤの進行に関する感触及び手応えの重大な感覚を奪い、これにより、脈管/腔の1つの壁のみを貫通する、脈管/腔内へのガイドワイヤの成功した適切な挿入と、脈管/腔の反対側の壁を貫通すること又はワイヤを所望の場所に方向付ける際の重大な転回をし損なうこと等により引き起こされる失敗との致命的な差異が生じる可能性があるため、特に技術的に困難で時間のかかる処置となり得る。いずれの状況も、特に、銃創、急激な失血、又はワイヤを脈管若しくは腔内に迅速かつ正確に挿入することが必須となる任意の他の状況の場合に、有害転帰につながり得る。本発明は、ワイヤが脈管/腔内に適切に前進しているときと、ワイヤが所望の進路から逸れようとしているときとの双方を知るための感触及び手応えの重大な感覚を保持しながら、医師が片方の手を用いてガイドワイヤを脈管/腔内に導入し、これを所望の経路に沿って前進させ、他方の手を超音波診断装置等の他の機器を制御するために空けておくことを可能にするデバイスに関する。他方の手を他のデバイスのために空けておきながら、先端が受けている抵抗の厳密な量を知覚することが可能であることは、ガイドワイヤの適切な導入に絶対的に不可欠である可能性があり、文字通り生死を分ける可能性がある。この処置は、動脈及び他の循環血管内への中心ラインの配置に適用可能であり、かなりの長さのガイドワイヤを、多岐にわたる治療的理由で生体における他の臓器内に導入することが望ましい、より一般的でない処置にも適用可能である。逆行性挿管が必要とされる場合はほとんど常に緊急を要するため、これは特に逆行性挿管において有用である。
【課題を解決するための手段】
【0003】
これらの問題に対処するために、以前に多くの試みがなされてきた。医師がガイドワイヤを脈管/腔内に前進させることを可能にするために、出口において固定具を有するカセット内に巻かれたガイドワイヤを対象とする多数の特許が存在する。しかしながら、これらの試みは、完全に成功であるとみなすことはできない。特に、従来技術によるデバイスが、片手の挿入及び誘導を可能にするために特許請求されている場合、これらは多くの場合に、操作者の手と導入されているワイヤとの間に、歯車装置、駆動輪、又は他のデバイスを導入し、これにより、ガイドワイヤが遭遇する抵抗の厳密な量に対する感触をつかむ操作者の感覚が悪化することとなっていた。本発明では、ガイドワイヤは、臨床医の親指との接触により前進し、臨床医が、遭遇する抵抗の量を評価する一方で、手の残りの部分を用いて針の前進を制御し、シリンジのプランジャを要求通りに操作し、他方の手を、超音波プローブ又はトランスデューサを操作するために空けておくことを可能にする。
【0004】
本発明は、脈管の管腔又は他の腔内にガイドワイヤを片手で挿入するためのデバイスを提供することによってこの問題に対処する。このデバイスは、本体であって、後方に削られているハンドルと、上記本体によって画定される案内路と、シリンジのバレルを受け入れ、保持するように適合された、上記本体上に装着されたクリップとを有する本体と;シリンジであって、バレル及び指掛けフランジを有し、上記シリンジは上記クリップによって保持され、プランジャフランジ及びプランジャを貫通するガイドワイヤ通路を有するプランジャと、上記プランジャを通る上記ガイドワイヤ通路と同一線上の中空針とを有する、シリンジと;上記本体の上記案内路に沿って摺動可能なアクチュエータキャリッジであって、トリガと、上記シリンジの上記プランジャの上記プランジャフランジを把持するように適合されたフランジ拘束部と、上記シリンジの上記プランジャ上に装着された概ね環状のカセットであって、それらの間に、上記概ね環状のカセットと結合するように適合された受け部を有するワイヤ送給部モジュールが装着されている、概ね環状のカセットと、後側ワイヤ制御チューブと、前側ワイヤ制御チューブと、上記後側ワイヤ制御チューブ及び上記前側ワイヤ制御チューブ間のワイヤ送給面とが取り付けられたアクチュエータキャリッジとを備え、上記ハンドル、上記トリガ及び上記送給面は、ハンドルが片方の手の複数本の指によって把持されると、上記片方の手の1本の指が、トリガ及び上記シリンジのプランジャを後方に押圧して、わずかな圧力差を生成し、上記針が適切に位置決めされているとき、液体であれ、又はガスであれ、流体が上記針を通じて上記シリンジ内に流れることを可能にし(多くの場合「フラッシュバック」と呼ばれる現象)、又は必要に応じて、流体を上記針を通じて引き出す一方で、上記片方の手の1本の指は、上記指と上記送給面との間でワイヤと係合することによって上記シリンジを通じてワイヤを前進及び後退させることができ、上記ワイヤの先端が遭遇する抵抗を検知するように配置される。下方向に延びるハンドルを有する本発明の実施形態を、「ピストル型把持部」固定具と呼ぶ。多くの場合に、ピストル型把持部固定具は、臨床医の手が「サムズアップ(thumbs-up)」の姿勢をとった状態で親指の先端がワイヤと係合する、下方に面するワイヤ送給面を有することになる。
【0005】
多くの場合に、本発明のデバイスは、上記指掛けフランジと結合し、上記ガイドワイヤを上記シリンジのプランジャを通る上記ガイドワイヤ通路内に方向付けるように適合された前側ワイヤモジュールが取り付けられた標準化されたガイドワイヤカセットと;上記概ね環状のカセットと上記前側案内具との間のワイヤ送給面と、バレル、プランジャフランジ及びプランジャを貫通するガイドワイヤ通路を有するプランジャ、並びに上記プランジャを通る上記ガイドワイヤ通路と同一線上の中空針を有するライン挿入シリンジと共に用いられるスタンドアロンデバイスとして提供される。そのような場合、本発明は、脈管の管腔/腔内に、概ね環状のカセット内に配置されたガイドワイヤを、シリンジを通じて挿入するためのデバイスを含むことになり、このデバイスは、本体であって、後方に削られたハンドルと、上記本体によって画定される案内路と、シリンジのバレルを受け入れ、保持するように適合された、上記本体上に装着されたクリップとを有する本体と;上記本体の上記案内路に沿って摺動可能なアクチュエータキャリッジであって、トリガと、上記シリンジの上記プランジャのプランジャフランジを把持するように適合されたフランジ拘束部と、上記概ね環状のカセットと結合するように適合された受け部が取り付けられた、アクチュエータキャリッジとを備え、上記ハンドル、上記トリガ及び上記送給面は、ハンドルが片方の手の複数本の指によって把持されると、上記片方の手の1本の指が、上記シリンジのトリガを後方に押圧して、わずかな圧力差を生成し、上記針が適切に位置決めされているとき、流体が上記針を通じて上記シリンジ内に流れることを可能にし(多くの場合「フラッシュバック」と呼ばれる現象)、又は必要な場合、流体を上記針を通じて引き出す一方で、上記片方の手の親指は、上記片方の手の親指とワイヤ送給面との間でワイヤと係合することによって上記シリンジを通じて上記ワイヤを前進及び後退させることができ、上記ワイヤの先端が遭遇する抵抗を検知するように配置される。
【0006】
本発明の代替的な実施形態は、脈管の管腔/腔内にガイドワイヤを片手で挿入するためのデバイスを提供することによってこの問題に対処する。このデバイスは、本体であって、上記本体上に画定される把持部と、上記本体によって画定される案内路と、シリンジのバレルを受け入れ、保持するように適合された、上記本体に装着されたクリップと有する本体と;シリンジであって、バレル及び指掛けフランジを有し、上記シリンジは上記クリップによって保持され、プランジャフランジ及び中を通るガイドワイヤ通路を有するプランジャと、上記プランジャを通る上記ガイドワイヤ通路と同一線上の中空針とを有する、シリンジと;上記本体の上記案内路に沿って摺動可能なアクチュエータキャリッジであって、トリガと、上記シリンジの上記プランジャのプランジャフランジを把持するように適合されたフランジ拘束部と、上記シリンジの上記プランジャ上に装着された概ね環状のカセットであって、それらの間に、上記概ね環状のカセットと結合するように適合された受け部を有するワイヤ送給部モジュールが装着されている、概ね環状のカセットと、後側ワイヤ制御チューブと、前側ワイヤ制御チューブと、上記後側ワイヤ制御チューブ及び上記前側ワイヤ制御チューブ間のワイヤ送給面とが取り付けられたアクチュエータキャリッジとを備え、上記把持部、上記トリガ及び上記送給面は、上記把持部が片方の手の複数本の指によって把持されると、上記片方の手の1本の指が、トリガ及び上記シリンジのプランジャを後方に押圧して、わずかな圧力差を生成し、上記針が適切に位置決めされているとき、流体が上記針を通じて上記シリンジ内に流れることを可能にし(多くの場合「フラッシュバック」と呼ばれる現象)、又は必要な場合、流体を上記針を通じて引き出す一方で、上記片方の手の指は、上記指と上記ワイヤ送給面との間でワイヤと係合することによって上記シリンジを通じて上記ワイヤを前進及び後退させることができ、上記ワイヤの先端が遭遇する抵抗を検知するように配置される。本体の周りに画定された把持部を有する本発明の実施形態を、「柄型ハンドル(hilt-handle)」固定具と呼ぶ。多くの場合、臨床医は、柄型ハンドル固定具を好ましいと感じる。なぜなら、ワイヤの送給面を上方に面するように向けて、指の腹の平坦部を用いてワイヤを前進させ、ワイヤが脈管の管腔に沿って前進している間に遭遇している抵抗に対する優れた触知性フィードバック臨床医に与えることができるようにこれらのデバイスを構成することが容易であるためである。
【0007】
好ましいカセットは、参照によりその全体が本明細書に援用される、1992年6月30日に発行されたFleckによる米国特許第5,125,906号、「Hand-Held Device for Feeding a Spring Wire Guide」において示されているものに実質的に類似している。
【0008】
操作者が、デバイスを保持している手の指、通常は親指を用いてワイヤを操作し、同じ手の1本の指を用いてプランジャを操作することができることが特に重要である。トリガ上の同じ手の1本の指を用いてプランジャを操作することができることにより、医師は、シリンジのプランジャを後方に押圧し、わずかな圧力差を生成することが可能になり、これにより医師は、針の先端が脈管又は他の構造に入ったときに、フラッシュバック、すなわち、シリンジ内への血液又は他の流体若しくは物質の進入を検知することが可能になる。同時に、超音波診断の使用により、医師は、針の先端が適切に配置されたときにこれを確認することが可能になる。固定具を把持しながら操作することができることにより、医師は、ワイヤを前進させるのに必要な力の量を厳密に感知する一方で、他方の手を、超音波診断等の撮像又は感知デバイスを操作するために空けておくことが可能になり、それによって、針の場所を可視化し、その後、ガイドワイヤの先端が患者の中に前進する際にこの先端の場所を可視化することができる。
片手のセルジンガー技法
上記で示唆したように、本発明の存在理由は、臨床医が、針の配置及びガイドワイヤの操作の双方のために片方の手のみを用いてセルジンガー技法を実施する一方で、他方の手を用いて超音波診断装置等の可視化デバイスを位置決めできるようにすることであり、これにより、必要に応じて他の機能を行うように助手を手の空いた状態にしておきながら、針/ガイドワイヤが管腔に入る際に、臨床医が、針/ガイドワイヤを最適に見るために、超音波診断装置が適切に配置されていることを確保することを可能にする。多くの場合に、中心ラインが必要とされる場合、絶対的に時間厳守であり、臨床医が最小の遅延でラインを挿入することができることが最も重要となる。片方の手のみを用いてシリンジ及びガイドワイヤを操作し、ガイドワイヤにおける良好な触覚的感覚を保持しながら、セルジンガー技法を実施する、信頼性があり、好都合で実用的な方法はこれまで利用可能でなかったと考えられている。
【0009】
セルジンガー技法では、ベベル針を有するシリンジが身体内に挿入され、ベベルは、ガイドワイヤがシリンジの孔を出るとき、当該の身体通路の長手方向軸に概ね平行に向けられるか、又はガイドワイヤが何らかの他の身体構造内に導入される場合、何らかの既知の他の向きに向けられるように、ベベルの先端部が最初に皮膚に入るような方式で向きを付けられている。身体形態が許す場合、通常、シリンジの針は、皮膚の表面と約45°の角度を成し、ベベルの先端部が皮膚に最初に係合することが好ましい。よく知られているように、針が皮膚に入ると、臨床医は、シリンジのバレル内への血液、空気、他の体液、又は更には組織のフラッシュバックにより、身体通路内に針の孔が入ったことを検出することができるように、わずかな負の圧力を加える。本発明の固定具は、臨床医が、片方の手で、シリンジのプランジャをわずかに引き戻すことによってこの負の圧力を加えることを可能にするのに対し、従来の技法では、2つの手の使用は幾分扱いにくく、不器用になり得る。多くの場合、臨床医は、固定具を保持している手の単一の指、おそらくは人差し指を用いてプランジャを操作することができる。
【0010】
空気塞栓症が生じ得る場合、本発明の固定具の使用は、その虞を著しく低減する。なぜなら、針を安定化するのに必要な労力がより少なく、シリンジが針から除去される場合の従来の技法におけるように指を用いて針の孔内への空気の通路を封止する必要がないためである。更に、ガイドワイヤは通常、シリンジに事前に接合されるので、そうでなければ緊急を要する処置の喧騒の中で必要とされた場合があるガイドワイヤの探索も、ガイドワイヤへの挿入も必要ない。
【0011】
ガイドワイヤが針の孔を通過している際、臨床医は、より迅速に超音波診断装置を用いて、ガイドワイヤが脈管の管腔又は他の所望の場所に入り、そこにとどまっていることを確認することも可能でありながら、ワイヤが遭遇する抵抗の量を知覚する能力を高めることができる。これは、臨床医がガイドワイヤをわずかに引き出して脈管の管腔内でガイドワイヤの向きを変えようとする不測の事態を回避するため、極めて重要であり得る。特に、そのような引き出しが適切に扱われない場合、特にガイドワイヤが先端において湾曲しているとき、又は何らかの他の理由で曲げられているときに、ガイドワイヤが針上のベベルによって切断され得る可能性がある。多くの場合、当然ながら、ガイドワイヤが、脈管壁の不慮の穿孔に対して保護するために「J」形状の先端を有することが慣例的である。
【0012】
ガイドワイヤが適切に位置決めされた後、従来の処置において、臨床医は、片手でガイドワイヤを制止し、他方の手で針を後退させる。対照的に、本発明の固定具では、臨床医は、固定具を後方に動かし、針のベベルが身体を出るときにガイドワイヤを制止するように他方の手を使い始めるだけでよい。なぜなら、周囲の組織の把持力は、多くの場合、特に、入口点の上に軽い制止力がかかっている場合、固定具が引き込まれている間、ガイドワイヤを適所に保持するのに十分であるためである。
【0013】
ガイドワイヤが適切に位置決めされ、ガイドワイヤを挿入する手段が取り去られると、本発明の固定具を用いる臨床医は、通常、従来の処置に従って進行する。
現時点では、Arrow/Teleflexが、片方の手で挿入されるように適合された、末梢カテーテル型の「Endurance」長期留置末梢カテーテルを提供している。teleflex.com/usa/product-areas/vascular-access/vascular-access-catheters/peripheral-access/arrow-endurance-extended-dwell-peripheral-catheter-system/におけるArrow/Teleflexのウェブサイトを参照されたい。カテーテル挿入固定具の型は、広告通り、末梢カテーテルに適しているが、中心ライン、又はそのためのガイドワイヤの挿入に容易に適用可能でないと考えられる。なぜなら、カテーテルのチューブは、ガイドワイヤが、ガイドワイヤスライダを後方に押圧することによって針を通って前進され得る間、挿入処置中に針の周りに配置され、スライダの介在は、場合によってはワイヤの操作中に臨床医の触知性フィードバックに干渉する可能性があるためである。このため、明らかに、この方式で現在提供されているカテーテルの最大長さは約8cmである一方で、中心ラインの配置のために用いられるガイドワイヤは、多くの場合、50cm以上の長さを有することに留意されたい。本発明の処置では、ガイドワイヤが脈管内又は他の身体構造内に挿入されると、固定具が除去され、中心ラインがガイドワイヤを通じて脈管内に通され、それによって、無限長の中心ラインの使用が可能になる。特に、中心ラインが鼠径部を通じて挿入され、心臓又は冠状動脈の領域内に延びなくてはならない場合、1メートルを大きく超える長さを有するガイドワイヤを用いることが極めて一般的である。
【0014】
本発明の他の態様及び利点は、以下の詳細な説明及び特許請求項に記載される。
本発明は、添付の図面を参照して以下で詳細に説明される。図面において、同様の番号は類似の部品を示す。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の挿入デバイスの部分的に展開された概略等角斜視図であり、ガイドワイヤ送給部モジュールの取り付け前に適所にあるシリンジのプランジャを示す。
【
図2】本発明の挿入デバイスの展開された概略等角斜視図である。
【
図3】本発明の挿入デバイスの展開された概略等角斜視図であり、シリンジの指掛けフランジを適所に長手方向に固定しながら、シリンジを本体上に保持する、指掛けフランジ保持クリップの詳細を示す。
【
図4】本体の正面におけるシリンジ保持リングの詳細を示す。
【
図5】本体の正面におけるシリンジ保持リングの詳細を示す。
【
図6】本体の背面におけるシリンジ保持クリップの詳細を示す。
【
図7】本体の背面におけるシリンジ保持クリップの詳細を示す。
【
図8】本発明の挿入デバイスと共に用いるのに適したワイヤガイド送給部モジュールの概略等角斜視図である。
【
図9】ワイヤ操作中の触覚を向上させるのに好ましい中間の凸部を特に示す
図8のワイヤガイド送給部モジュールの詳細を示す。
【
図10】ワイヤ操作中の触覚を向上させるのに好ましい中間の凸部を特に示す
図8のワイヤガイド送給部モジュールの詳細を示す。
【
図11】ワイヤ操作中の触覚を向上させるのに好ましい中間の凸部を特に示す
図8のワイヤガイド送給部モジュールの詳細を示す。
【
図12】ワイヤ操作中の触覚を向上させるのに好ましい中間の凸部を特に示す
図8のワイヤガイド送給部モジュールの詳細を示す。
【
図13】ワイヤ操作中の触覚を向上させるのに好ましい中間の凸部を特に示す
図8のワイヤガイド送給部モジュールの詳細を示す。
【
図14】カセットが、シリンジのプランジャ上への装着を助長しにくいサイズであるときに、シリンジではなくアクチュエータキャリッジ上にワイヤガイド送給部及び大きなカセットを装着することを可能にする、ワイヤガイド送給部装着用固定具又は保持具に装着されているときの
図8~
図13のワイヤガイド送給部の底面を示す。
【
図15】カセットが、シリンジのプランジャ上への装着を助長しにくいサイズであるときに、シリンジではなくアクチュエータキャリッジ上にワイヤガイド送給部及び大きなカセットを装着することを可能にする、ワイヤガイド送給部装着用固定具又は保持具に装着されているときの
図8~
図13のワイヤガイド送給部の底面を示す。
【
図22】
図14~
図21のワイヤガイド送給部装着用固定具又は保持具において
図8~
図13のワイヤガイド送給部を保持するための保持機構を適合させるための爪の詳細を示す概略図である。
【
図23】本体上の嵌合クリップの真上のシリンジと、作動キャリッジとを有する本発明の挿入デバイスの概略等角斜視図である。
【
図24】ワイヤガイド送給部の挿入前の作動キャリッジ上へのワイヤガイド送給部装着用固定具の装着を示す、ワイヤガイド送給部装着用固定具の概略等角斜視図である。
【
図25】ワイヤガイド送給部モジュールの挿入前の作動キャリッジ上への保持具の誤った装着を防ぐ装着機構の詳細を示す、
図24のワイヤガイド送給部装着用固定具の拡大概略等角斜視図である。
【
図26】操作者が確実にかつ迅速にシリンジを挿入デバイスに装着することを可能にするように構成された、本発明の代替的な挿入デバイスを示す概略等角斜視図である。
【
図27】シリンジ上の指掛けフランジと、本体におけるその嵌合溝との相互作用を示す、
図26の概略等角斜視図の詳細図である。
【
図28A】プランジャフランジと、プランジャフランジクリップとの相互作用を示す、
図26の概略等角斜視図の詳細図である。
【
図29】ワイヤ制御面を、ワイヤ制御面が上方を向いた状態でトリガ機構の上に位置決めし、ワイヤが、上記の実施形態のように指の先端ではなく、指の平坦部によってより容易に係合されるようになっているために、多くの臨床医が人間工学的に好ましいと考える場合がある本発明の代替的な実施形態を示す。
【
図30】ワイヤ制御面を、ワイヤ制御面が上方を向いた状態でトリガ機構の上に位置決めし、ワイヤが、上記の実施形態のように指の先端ではなく、指の平坦部によってより容易に係合されるようになっているために、多くの臨床医が人間工学的に好ましいと考える場合がある本発明の代替的な実施形態を示す。
【
図41】
図29及び
図30の実施形態のためのバレル、プランジャ及びガイドワイヤアタッチメントの固定を示す詳細図である。
【
図42】
図29及び
図30の実施形態のためのバレル、プランジャ及びガイドワイヤアタッチメントの固定を示す詳細図である。
【
図43】
図29及び
図30の実施形態のためのバレル、プランジャ及びガイドワイヤアタッチメントの固定を示す詳細図である。
【
図44】
図29及び
図30の実施形態のためのバレル、プランジャ及びガイドワイヤアタッチメントの固定を示す詳細図であり、指掛けフランジ66が本来の位置にある指掛けフランジスロット68を示す、
図41の詳細
図である。
【
図45】
図29及び
図30の実施形態のためのバレル、プランジャ及びガイドワイヤアタッチメントの固定を示す詳細図である。
【
図46】
図29及び
図30の実施形態のためのバレル、プランジャ及びガイドワイヤアタッチメントの固定を示す詳細図である。
【
図47】
図29及び
図30の実施形態のためのバレル、プランジャ及びガイドワイヤアタッチメントの固定を示す詳細図である。
【
図48】
図29及び
図30の実施形態のためのバレル、プランジャ及びガイドワイヤアタッチメントの固定を示す詳細図であり、特に、
図39における指掛けフランジスロット68の詳細
図である。
【
図49】
図29及び
図30の実施形態のためのバレル、プランジャ及びガイドワイヤアタッチメントの固定を示す詳細図である。
【
図50】
図29及び
図30の実施形態のためのバレル、プランジャ及びガイドワイヤアタッチメントの固定を示す詳細図である。
【
図51】
図29及び
図30の実施形態のためのバレル、プランジャ及びガイドワイヤアタッチメントの固定を示す詳細図である。
【
図52】
図29及び
図30の実施形態のためのバレル、プランジャ及びガイドワイヤアタッチメントの固定を示す詳細図である。
【
図53】
図29及び
図30の実施形態のためのバレル、プランジャ及びガイドワイヤアタッチメントの固定を示す詳細図である。
【
図54】
図29及び
図30の実施形態のためのバレル、プランジャ及びガイドワイヤアタッチメントの固定を示す詳細図である。
【
図55】
図29及び
図30の実施形態のためのバレル、プランジャ及びガイドワイヤアタッチメントの固定を示す詳細図である。
【
図56】指リングを後方に引き込むことによって吸引をシリンジバレルにどのように供給することができるか、を示し、これは通常、臨床医が新たな開始が望ましいと感じるときに、身体の外でシリンジを用いてのみ行われるべきである。
【
図57】指リングを前方に動かすことによってシリンジのプランジャをどのように前進させることができるかを示し、これは通常、臨床医が新たな開始が望ましいと感じるときに、身体の外でシリンジを用いてのみ行われるべきである。
【
図58】「柄型ハンドル」構成を有する本発明の実施形態を示す。
【
図59】セルジンガー法の開始時に通常通りスライダが前進した状態の、
図58の本発明の柄型ハンドル実施形態を示す。これに対し、
図58では、スライダは、シリンジ内にわずかな真空を引き起こすように引き込まれており、医師が、針が液体充填領域に入ったときを判断することを可能にする一方で、もう片方の手で、針が適切に位置決めされたことを確認するための超音波診断装置を操作することを可能にする。
【
図68】シリンジのバレル上のフランジの確実で、しっかりと付着した、定位置にスナップ係合された配置を確保するための装着特徴を示す詳細図である。
【
図69】シリンジのバレル上のフランジの確実で、しっかりと付着した、定位置にスナップ係合された配置を確保するための装着特徴を示す詳細図である。
【
図70】シリンジのバレル上のフランジの確実で、しっかりと付着した、定位置にスナップ係合された配置を確保するための装着特徴を示す詳細図である。
【
図71】シリンジのバレル上のフランジの確実で、しっかりと付着した、定位置にスナップ係合された配置を確保するための装着特徴を示す詳細図であり、指掛けフランジ66が本来の位置にある指掛けフランジスロット68を示す、
図68の詳細
図である。
【
図72】シリンジのバレル上のフランジの確実で、しっかりと付着した、定位置にスナップ係合された配置を確保するための装着特徴を示す詳細図である。
【
図73】シリンジのバレル上のフランジの確実で、しっかりと付着した、定位置にスナップ係合された配置を確保するための装着特徴を示す詳細図である。
【
図74】シリンジのバレル上のフランジの確実で、しっかりと付着した、定位置にスナップ係合された配置を確保するための装着特徴を示す詳細図である。
【
図75】シリンジのバレル上のフランジの確実で、しっかりと付着した、定位置にスナップ係合された配置を確保するための装着特徴を示す詳細図である。
【
図76】シリンジのバレル上のフランジの確実で、しっかりと付着した、定位置にスナップ係合された配置を確保するための装着特徴を示す詳細図であり、特に、
図67における指掛けフランジスロット68の詳細
図である。
【
図77】シリンジのプランジャ上のフランジの確実で、しっかりと付着した、定位置にスナップ係合された配置を確保するための装着特徴を示す詳細図である。
【
図78】シリンジのプランジャ上のフランジの確実で、しっかりと付着した、定位置にスナップ係合された配置を確保するための装着特徴を示す詳細図である。
【
図79】シリンジのプランジャ上のフランジの確実で、しっかりと付着した、定位置にスナップ係合された配置を確保するための装着特徴を示す詳細図である。
【
図80】シリンジのプランジャ上のフランジの確実で、しっかりと付着した、定位置にスナップ係合された配置を確保するための装着特徴を示す詳細図である。
【
図81】シリンジのプランジャ上のフランジの確実で、しっかりと付着した、定位置にスナップ係合された配置を確保するための装着特徴を示す詳細図である。
【
図82】シリンジのプランジャ上のフランジの確実で、しっかりと付着した、定位置にスナップ係合された配置を確保するための装着特徴を示す詳細図である。
【
図83】シリンジのプランジャ上のフランジの確実で、しっかりと付着した、定位置にスナップ係合された配置を確保するための装着特徴を示す詳細図である。
【
図84】スライダが後方位置にある本発明の固定具を示す下側斜視図である。
【
図85】スライダが前方位置にある本発明の固定具を示す下側斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、いくつかの実施形態及び多数の例を参照して以下で詳細に説明される。そのような論考は説明のためのものにすぎない。添付の特許請求の範囲に示される本発明の趣旨及び範囲内の特定の例に対する変更は、当業者には容易に明らかとなろう。本明細書において用いられる用語は、すぐ下に示す例示的な定義に一致する通常の意味を与えられる。
【0017】
本明細書に示す様々な範囲に関して、挙げられる任意の上限は、当然ながら、選択された部分的範囲の任意の下限と組み合わせることができる。
「から本質的になる」という移行語は、請求項の範囲を、指定された材料又はステップ、及び特許請求される発明の「基本的な及び新規の特性に実質的に影響を及ぼさないもの」に限定する。物クレームについて本明細書において用いられるとき、「から本質的になる」及び類似の用語は、挙げられた構成要素を指し、物の基本的な及び新規の特性を実質的に変更する他の構成要素を排除する。別段の指示がない限り、又は容易に明らかでない限り、物が、挙げられた構成要素の重量の90%以上から構成されるとき、挙げられた構成要素から本質的になる。すなわち、この用語は、10%を超える、挙げられていない構成要素を除外する。
【0018】
図1~
図8において、挿入デバイス10は、ガイドワイヤ12の片手の挿入を可能にするように適合される。ガイドワイヤ12は、一般に、出口開口部16を有する概ね環状のカセット14内に配置される。挿入デバイス10は、中を通って画定される長手方向に延びる案内路24を有する本体22を備える。長手方向に延びる案内路24内を摺動するアクチュエータ28は、トリガ26を装着され、このトリガ26は、本体22の下側前方部分32に画定された長手方向に延びるスロット30内を摺動する。本体22に取り付けられた後方に延びるハンドル34は、高度に切削されている。
【0019】
ガイドワイヤ12は、概ね環状のカセット14から、カセットに装着されたワイヤガイド送給部モジュール36を通じて、出口16において引き出すことができる。ワイヤガイド送給部モジュール36は、概ね環状のカセット14の出口16と結合するように適合された受け部38と、中を通って画定される後側チューブ41を有する後側ワイヤガイド39と、後側チューブ41と前側チューブ42との間に送給面44が画定された前側チューブ42を備える前側案内具40とを備える。好ましくは、ガイドワイヤ12の扱い及び制御を容易にし、促進するための中間の隆起又は凸部46が送給面44上に画定される。前側案内具40は、挿入デバイス10の本体22の上に画定された溝56内に担持されるシリンジ54のプランジャ52のガイドワイヤ通路50を貫通し、ガイドワイヤ通路50内に摩擦により保持することが可能な円錐アダプタ48に嵌まるように適合される。シリンジ54は、シリンジ54のバレル62を把持する前側リング58及びバレルクリップ60によって適所に保持される。シリンジ54のバレル62の長手方向の移動は、バレルクリップ60のすぐ後方に配置される指掛けフランジ係止部64によって拘束され、指掛けフランジ66は、指掛けフランジ係止部64とバレルクリップ60との間に拘束される。指掛けフランジ66は指掛けフランジスロット68内に収まる。プランジャフランジ70は、プランジャヘッダ72を介してプランジャ52に結合される。アクチュエータ28上に装着されたプランジャフランジクリップ74は、溝77を画定するアーム76及び78間にプランジャフランジ70を把持し、それによって、プランジャ52は、トリガ26の操作によってバレル62内を前進又は後退させることができる。
図6及び
図7に示すように、バレルクリップ60の弾性アーム80及び82は、バレル62の円周の180度を超えて取り巻き、バレル62を挿入デバイス10の本体22の上の溝56内に下方に押圧する一方、前側リング58は、バレル62の横手方向及び長手方向の動きの双方を更に制止する。
【0020】
上記の部品の寸法、構成及び向きは、本体22内の案内路24に沿って摺動しているアクチュエータ28が挿入デバイス10の本体22から幾分後退しているとき、ガイドワイヤ12の送給面44、特に中間の隆起46が、ハンドル34を把持する手の指によって好都合に到達可能である一方で、同じ手の別の指がトリガ26を制御するように選択される。(本明細書及び特許請求の範囲を通じて、「指」に言及するとき、手の指、特に任意の指又は親指に言及している。)したがって、ガイドワイヤカセット14内に配置されたガイドワイヤ12は、ハンドル34を把持している手の指の先端が中間の隆起を横切る前方又は後方の移動によってガイドワイヤ12を前方又は後方に押圧する際に、ガイドワイヤ出口開口部16を通じて引き出すことができ、これによって、ガイドワイヤ12は脈管/腔内に前進することができ、操作者は、ガイドワイヤ12が前進しているときに生じる抵抗の度合い又は量を正確に感知することができる。
【0021】
図8は、ワイヤガイド送給部モジュール36がガイドワイヤカセットの出口16に取り付けられた状態で、ガイドワイヤ12が内部に配置されたガイドワイヤカセット14の図であり、ワイヤ12は、前側案内具40における送給面44及び中間の隆起46を横切って前側チューブ42を通り、さらに円錐アダプタ48を通って延びる。
【0022】
図9~
図13は、本明細書においてワイヤガイド送給部モジュール36として説明してきた、Fleckによる米国特許第5,125,906号に記載されているものに実質的に類似している、ばねワイヤガイドを送給するための手持ち式デバイスを示す。
【0023】
多くの場合に、特に、必要とされるワイヤ12の長さが比較的短く、したがってカセット14を比較的軽量にすることができ、このため、前側案内具40、円錐アダプタ48及びプランジャ52間で摩擦力によって適所に保持することが可能であるときには、プランジャ52におけるガイドワイヤ通路50内への円錐アダプタ48の挿入によって、プランジャ52上にワイヤガイド送給部モジュール36を直接装着することが可能となる。しかしながら、いくつかの場合、例えば、カセット14の重量が大きすぎるとき、又はワイヤガイド送給部モジュール36に圧力が加えられ得るとき等、より強固な装着方法が適切である。そのような場合には、
図14~
図22に示すような、アクチュエータ28に装着されることが可能な保持具88を提供する。しかしながら、そのような場合、ワイヤ12がワイヤガイド送給部モジュール36の送給面44における中間の隆起46上を通過するとき、操作者が、ワイヤ12に対し、開かれた、又は実用可能な限り無制限に近いアクセスを有することを確実にすることが必要である。ワイヤガイド送給部モジュール36を、保持具88内に長手方向に差し込み、適切に位置決めされたときに適所にスナップ係合し、それによって、適切な挿入の完了を確認する触覚フィードバックを操作者に提供することができる。
【0024】
図16に示すように、保持具88の右側壁90は、ワイヤガイド送給部モジュール36を位置づけるように設置された位置決め突起92を有する。
図19及び
図20は、ワイヤガイド送給部モジュール36を適所に誘導するのに役立つ、
図20に示すような削られた逃げ面94を有する球の4分の1の形状を概ね有する位置決め突起92の構成を示す。注目すべきことに、突起96は、カセット装着パイロン100の前側面98を支える一方で、突起102は中間の隆起46を支え、突起104は、中間の隆起46が適所に前進するとすぐに、適所にスナップ係合する。
図14~
図22に示す実施形態では、円錐アダプタ48は保持具88内に配置される。代替的な実施形態では、円錐アダプタ48は、保持具88の壁106の前方に配置されてもよい。
図21において、左側壁108が適所にあり、クロスバー110がパイロン100との干渉によって、保持具88内へのワイヤガイド送給部モジュール36の過剰挿入を防いでいる保持具88が示されている。注目すべきことに、側壁90及び108は、操作者が自由にアクセスすることを可能にするために、中間の隆起46に隣接して大きく削がれている。
図22において、クロスバー112がワイヤガイド送給部モジュール36の不適切な挿入を防ぐ一方で、クロスバー110が過剰挿入を防ぎ、突起102及び104が挿入完了を操作者に触覚的に知らせる方法を理解することができる。また、側壁90及び108の内側部分を削ぐことによって、中間の隆起46へのアクセス及びガイドワイヤのその通過が促されることも理解することができる。
【0025】
図23は、シリンジ54が上に配置された、組み立てられた挿入デバイス10を示す。シリンジの前側端120が前側保持リング58によって拘束される一方で、指掛けフランジ66及びバレル62が指掛けフランジ係止部64、指掛けフランジスロット68及びバレルクリップ60によって拘束され、また一方で、プランジャフランジ70がプランジャフランジクリップ74のアーム76及び78によって拘束される方法を理解することができる。
【0026】
図24及び
図25において、アクチュエータ28に装着凹部114及び115が設けられており、それによって、装着アーム118上のピン116及びスラット117を挿入して、保持具88をアクチュエータ28にしっかりと装着することができる。詳細については、
図25に示されている。スラット117は、装着凹部115に挿入するには過度に大きく、過度に広いが、それによって保持具88及びガイドワイヤカセット14の不適切な装着が防がれる。代替的に、挿入デバイス10には、アクチュエータキャリッジ28に永久的に取り付けられる保持具88を設けることができる。
【0027】
図26~
図28Aは、操作者がかなりの緊急性を有して挿入デバイス10、シリンジ54、ワイヤガイド送給部モジュール36及びカセット14を組み立てる必要がある場合がある、緊急治療室等の状況のために意図された本発明の挿入デバイス10の変形形態を示す。保持リング58が保持コーン86と置き換えられている一方で、指掛けフランジ係止部64、バレルクリップ60及びプランジャフランジクリップ74に、シリンジ54の嵌合部分の高速な挿入を促進する外部ガイド64G、60G及び74Gが設けられていることを理解することができる。
図27は、指掛けフランジ66を、指掛けフランジスロット68に水平方向又は垂直方向に装着することができる方法を示す。同様に、
図28Aは、プランジャフランジ70とプランジャフランジクリップ74との嵌合を示す。
【0028】
図29~
図38は、本発明の柄把持固定具のための製造設計を示す。ここで、同じ機能を実行する部品は、
図1~
図28に示されたピストル型把持固定具の概念設計においてその機能を行う部品と同じ符号を与えられる。2つの設計間の主な差は、
図29~
図38の固定具の本体22に把持部が組み込まれ、環状ワイヤカセット14のためのアダプタ/受け部36が、送給面44が上方を向いた状態に向けられることであり、それによって、固定具10を保持する臨床医が、ガイドワイヤ12が身体内に前進するときにこのガイドワイヤ12が受ける抵抗を評価するための向上した触覚の感触を提供する、シリンジ54のプランジャフランジ70と係合しているアクチュエータ28を人差し指を用いて前進及び後退させながら、指の平坦部を用いてガイドワイヤ12を操作することができることが理解されよう。
【0029】
図29において、上記の実施形態のハンドルは大幅に省かれ、本体22の下で直接配置されるアクチュエータ28に直接接続されるトリガ26のみが残され、片方の手の指がトリガ26を通って延びるとき、その手の親指の腹が、ガイドワイヤ12が上を通される中間の隆起46上に容易に収まり、臨床医が、遭遇する抵抗について良好な触知性感触を保持しながらガイドワイヤ12を前進させることを可能にする。
図29及び
図30の実施形態において、フランジ66及び70が、それぞれスロット68及び74に十分固定される一方で、シリンジ54のバレル62は前側リング58によって固定され、それによってシリンジ54の確実な位置づけを提供することが観察されるべきである。
図29~
図30の実施形態において、手は、剣の柄を把持するがごとく固定具に係合することに留意するべきである。
【0030】
図31~
図37は、本発明の固定具の内部構造の詳細を示す。特に、
図36に示すように、「T」字型の長手方向のチャネル24(
図42も参照)が本体22に形成され、
図40に示すような嵌合する「T」字型の部分25を有するアクチュエータ28を、それに沿って前進及び後退させることができるようになっていることに留意されたい。
図38及び
図39において、固定具は分解されており、構成部品が組み立てられる方法を示す。
【0031】
図41~
図48は、構成部品の他の詳細を示す。本体22上のスライダ/アクチュエータ28の移動を拘束するために、長手方向に延びる案内路24が本体22に形成されることに留意されたい。また、本体22におけるアンダーカットスロット68が、指掛けフランジ66を確実に位置決めするために指掛けフランジ66と係合することに留意されたい。
図49~
図55において、プランジャフランジ70をアクチュエータ28に組み付けるためのアンダーカット溝77を有する保持スロット74の詳細が示されている。ここでもまた、保持スロット74は、プランジャフランジ70を180度をわずかに超えて取り囲み、プランジャフランジ70の、そして程度はより低いがスライダアクチュエータ28の弾性により2つの間の確実な位置決めを可能にすることに留意されたい。また、
図54に示すような長手方向のアンダーカットにも留意されたい。
図42、
図44、
図48に示すように、溝77のアンダーカットは、プランジャフランジ70の従来のカッピングにも適応し、その相対位置を更に固定する。
【0032】
図56及び
図57は、本体22内の長手方向に延びる案内路24に沿ったスライダ/アクチュエータ28の動きを示す下側斜視図であり、
図56は、シリンジ54における部分真空を引き起こすように後方に位置決めされたアクチュエータ28を示す。
【0033】
図58及び
図59は、概ね環状のガイドワイヤカセット14がトンネル95に入るときに、シールド/フード97が概ね環状のガイドワイヤカセット14(図示せず)の不適切な挿入を確実に防ぐ、本発明の更に別の実施形態を示す。
【0034】
図60~
図66において、固定具の内部構造の詳細が示されている。ここで、
図62に示すように、長手方向に延びる案内路24が、スライダ/アクチュエータ28に組み込まれていることに留意されたい。
【0035】
図67において、傾斜路99が、スライダ/アクチュエータ28に戻る、より確実な位置決めのために、ワイヤガイド送給部モジュール36のパイロン100と連動するように嵌合することに留意されたい。
【0036】
図68~
図76において、本体22の構造の詳細が示される。特に、
図71において、指掛けフランジスロット68は、本体22において指掛けフランジ66を確実に位置決めするように指掛けフランジ66を受容するアンダーカット溝67で長手方向にアンダーカットされている一方で、可撓性の壁63は、指掛けフランジスロット68内で指掛けフランジ66を適所により確実に係止するのに役立つ。この実施形態では、T字バー25が本体22に形成される一方で、スロット24がスライダ/アクチュエータ28に形成されることにも留意されたい。
【0037】
図77~
図83において、スライダ/アクチュエータ28の構造の詳細が示される。特に、溝77は、スライダ/アクチュエータ28に対しプランジャフランジ70をより確実に位置決めするように、締まり嵌めでプランジャフランジ70と180°を超えて係合することに留意されたい。
【0038】
図84~
図85において、下側斜視図は、後方位置(
図84)及び前方位置(
図85)にあるスライダ/アクチュエータ28を示す。
本発明が詳細に説明されたが、本発明の趣旨及び範囲内にある変更は、当業者には容易に明らかとなろう。上記の論考、技術分野における関連知識、並びに背景技術及び詳細な説明に関連して上記で論考された参考文献を鑑み、これら全ての開示は、参照により本明細書に援用され、更なる説明は不要と思われる。更に、本発明の態様及び様々な実施形態の部分は、全体的に又は部分的に組み合わせるか又は交換することができることが理解されるべきである。更に、当業者は、上記の説明が例示にすぎず、本発明を限定することを意図したものでないことを理解するであろう。