(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-26
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】カバー要素を備えるセンサ装置、及びカバー要素を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
G01S 7/481 20060101AFI20220127BHJP
G01S 7/497 20060101ALI20220127BHJP
G01S 17/931 20200101ALI20220127BHJP
【FI】
G01S7/481 Z
G01S7/497
G01S17/931
(21)【出願番号】P 2020558937
(86)(22)【出願日】2019-04-23
(86)【国際出願番号】 EP2019060332
(87)【国際公開番号】W WO2019206885
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2020-11-19
(31)【優先権主張番号】102018109884.7
(32)【優先日】2018-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591018763
【氏名又は名称】ベバスト エスエー
【氏名又は名称原語表記】Webasto SE
【住所又は居所原語表記】Kraillinger Strasse 5,82131 Stockdorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キリアス アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】クラマー アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】レグラー ディルク
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-215242(JP,A)
【文献】登録実用新案第3117480(JP,U)
【文献】特開平05-157830(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102011115829(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/51
G01S 13/00-13/95
G01S 17/00-17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のセンサ装置であって、
前記センサ装置は、
測定信号を決定するために、測定方向に電磁放射を放出するセンサ素子(20)と、
前記測定方向における前記センサ素子(20)の前方に配置され、前記電磁放射を透過する射出成形されたプラスチック部品であり、車外に面する外側面及び該センサ素子(20)に面する内側面を有するカバー要素(18)と、
導体トラック(34)を含む加熱手段とを備え、
前記導体トラック(34)は、前記カバー要素(18)の射出成形中に該カバー要素(18)の前記内側面に形成されたフィルム(32)に設けられ、
前記フィルム(32)と前記導体トラック(34)とにより、射出成形されたカバー要素(18)のインサートが形成され、
前記導体トラック(34)は、前記フィルム(32)の前記センサ素子(20)とは反対側の面に設けられて
おり、
前記フィルム(32)には、前記導体トラック(34)とは反対側の面に反射防止コーティング(36)が施されている
ことを特徴とする自動車のセンサ装置。
【請求項2】
請求項
1において、
前記反射防止コーティング(36)は、特定の波長スペクトル外の波長を有する電磁放射を反射する
ことを特徴とする自動車のセンサ装置。
【請求項3】
請求項
1又は
2において、
前記反射防止コーティング(36)には、表面構造が設けられている
ことを特徴とする自動車のセンサ装置。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか1項において、
前記カバー要素(18)の前記プラスチック部品は、ポリカーボネート樹脂によって作られている
ことを特徴とする自動車のセンサ装置。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項において、
前記フィルム(32)は、ポリカーボネート樹脂を含有する
ことを特徴とする自動車のセンサ装置。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1項において、
前記カバー要素(18)の外側面には、保護コーティング(30)が施されている
ことを特徴とする自動車のセンサ装置。
【請求項7】
請求項
6において、
前記保護コーティング(30)は、前記カバー要素のプラスチック材料よりも屈折率が小さい
ことを特徴とする自動車のセンサ装置。
【請求項8】
自動車のセンサ装置であって、
前記センサ装置は、
測定信号を決定するために、測定方向に電磁放射を放出するセンサ素子(20)と、
前記測定方向における前記センサ素子(20)の前方に配置され、前記電磁放射を透過する射出成形されたプラスチック部品であり、車外に面する外側面及び該センサ素子(20)に面する内側面を有するカバー要素(18)と、
導体トラック(34)を含む加熱手段とを備え、
前記導体トラック(34)は、前記カバー要素(18)の射出成形中に該カバー要素(18)の前記内側面に形成されたフィルム(32)に設けられ、
前記フィルム(32)と前記導体トラック(34)とにより、射出成形されたカバー要素(18)のインサートが形成され、
前記導体トラック(34)は、前記フィルム(32)の前記センサ素子(20)とは反対側の面に設けられており、
前記カバー要素(18)は、車両のルーフの外皮要素である
ことを特徴とする自動車のセンサ装置。
【請求項9】
請求項1~
7のいずれか1項において、
前記カバー要素(18)は、車両前部又は車両後部の外皮要素である
ことを特徴とする自動車のセンサ装置。
【請求項10】
自動車のセンサ装置(16)のカバー要素(18)の製造方法であって、
第1面と第2面とを有するフィルム(32)を供給する工程と、
前記フィルム(32)の第1面に導体トラック(34)を設ける工程と、
射出成形金型(58)の金型キャビティ(56)に、前記導体トラック(34)が設けられた前記フィルム(32)を導入する工程と、
前記射出成形金型(58)の前記金型キャビティ(56)にプラスチック材料を充填する工程と、
前記金型キャビティ(56)内に充填された前記プラスチック材料を硬化させて、前記フィルム(32)が表面に設けられた前記カバー要素(18)を形成する工程と、
前記フィルム(32)を表面に有する前記カバー要素(18)を脱型する工程と、を備える
ことを特徴とする自動車のセンサ装置(16)のカバー要素(18)の製造方法。
【請求項11】
請求項1
0において、
前記フィルム(32)の第2面に、反射防止コーティング(36)を施す工程を備える
ことを特徴とする自動車のセンサ装置(16)のカバー要素(18)を製造するための方法。
【請求項12】
請求項1
1において、
前記反射防止コーティング(36)を構造化する、特にプラズマエッチングする工程を備える
ことを特徴とする自動車のセンサ装置(16)のカバー要素(18)を製造するための方法。
【請求項13】
請求項1
1又は1
2において、
前記反射防止コーティング(36)を施す工程は、
前記フィルム(32)が第1ローラ(38)から巻き出される工程と、
前記第1ローラ(38)から巻き出された後、第2ローラ(42)に巻き取られる工程と、を含む
ことを特徴とする自動車のセンサ装置(16)のカバー要素(18)を製造するための方法。
【請求項14】
請求項1
3において、
前記導体トラック(34)を設ける工程は、
前記フィルム(32)が前記第2ローラ(42)から巻き出される工程を含む
ことを特徴とする自動車のセンサ装置(16)のカバー要素(18)を製造するための方法。
【請求項15】
請求項1
0~1
4のいずれか1項において、
前記カバー要素(18)を脱型する工程の後に、
前記カバー要素(18)の前記フィルム(32)とは反対側の面に保護コーティング(30)を施す工程を備える
ことを特徴とする自動車のセンサ装置(16)のカバー要素(18)を製造するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載された特徴を備えた自動車用センサ装置、及びセンサ装置のカバー要素を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のセンサ装置は実務上知られており、車外の状況を監視するために自動車に用いることができる。この目的のためセンサ装置は、例えば1つ以上の特定の方向にレーザ放射の形で電磁放射を放出するセンサ素子を備え、車両のシステムが、道路のコース、交通状況などの車外の状況を検出し、処理することを可能にする。センサ素子は、例えば、車両のルーフ領域又は車両の前側端領域に配置され、センサ素子から放出される電磁放射に対する透過性を有するカバー要素の裏側に配置される。カバー要素は、プラスチック材料により形成される。悪天候時においてもカバー要素が電磁放射に対する透過性を維持し、さらに除氷できるようにするために、カバー要素のセンサ素子に面する内側には、加熱手段としての導体トラックが配置されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来のセンサ装置では、加熱手段としての導体トラックが、カバー要素の内側面に露出している。これにより、導体トラックが湿度などの環境条件に曝され、それらの機能に影響を与える可能性がある。
【0004】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、加熱手段の高い機能的信頼性が確保された、最先端の技術に基づいて構成されたセンサ装置を提供すること及びそのようなセンサ装置のカバー要素を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、前記の課題は請求項1の特徴を有するセンサ装置によって解決される。
【0006】
本発明に係るセンサ装置のカバー要素は、センサ素子の前方に配置され、前記センサ素子の放出する電磁放射を透過し、その内側面、言い換えればセンサ素子側の面にフィルムを備え、前記フィルムは、前記センサ素子とは反対側の面に導体トラックを備え、前記導体トラックは、例えば前記フィルムに保護されることにより、環境条件又は天候条件に曝されないようになっている。前記導体トラックは、前記カバー要素の除氷が必要な可能性があって車外に面する、前記カバー要素の外側面の近くに配置されている。
【0007】
本発明に係るセンサ装置の好ましい実施形態において、前記センサ装置により検出される測定信号の品質を向上させ、前記センサ素子から放出される前記電磁放射が前記カバー要素によって妨げられることなく透過するようにするため、前記フィルムの前記導体トラックとは反対側の面、つまり前記センサ素子側の面には反射防止コーティングが施されている。
【0008】
前記フィルムが前記カバー要素に設けられる前に、前記フィルムに施される前記反射防止コーティングは、特に本発明に係るセンサ装置に使用される電磁放射に特異的に作用する。例えば、前記反射防止コーティングは、ポリシロキサンを原料とする材料から形成される。あるいは、前記反射防止コーティングは、イリジウム化合物から形成されていてもよい。
【0009】
前記反射防止コーティングは、特定の波長スペクトル外の波長を持つ電磁波をより反射する。前記反射防止コーティングが反射を防止する前記波長スペクトルは、前記センサ素子が放出する電磁放射の波長を含んでいる。
【0010】
前記反射防止コーティングは、その有効性を高めるための表面構造を有すると有利である。前記表面構造は、例えばプラズマエッチングにより生成された小さな円錐状の密な配列からなるナノ構造である、モスアイ構造を有することができる。
【0011】
本発明に係るセンサ装置の前記カバー要素は、特に、ポリカーボネート樹脂又は用途に適した別の材料によって形成することができる。
【0012】
したがって、本発明に係るセンサ装置の好ましい実施形態において、前記センサ装置の前記フィルムは、ポリカーボネート樹脂を含むか、又はポリカーボネート樹脂から成形される。
【0013】
本発明に係るセンサ装置の好ましい実施形態において、前記カバー要素には、損傷及び摩耗から該カバー要素を保護できるように、車外に面する外側面に保護コーティングが施されている。1層又は2層が塗布された塗料系により施された前記保護コーティングは、傷、天候、及び/又は化学物質から保護することができる。使用される前記塗料系は、熱硬化性塗料系又は紫外線照射によって硬化する塗料系であってもよい。前記塗料系は、スプレーで塗布してもよく、フローコーティングで塗布してもよい。
【0014】
前記保護コーティングの屈折率は、射出成形された前記カバー要素のプラスチック材料の屈折率よりも小さくなっていると有利である。これにより、前記カバー要素の透過作用を改良することができる。
【0015】
本発明に係るセンサ装置の実施形態において、前記センサ装置は、基本的に自動車の任意の場所に配置することができ、また目的に合わせた設計をすることができる。例えば、前記センサ装置は車両のルーフに組み込まれ、当該車両の自動運転又は半自動運転のためのシステムの一部を構成してもよい。この場合、前記カバー要素は車両のルーフの外皮要素、すなわち、特に車体に対して相対的に不動である固定ルーフ部分を形成してもよい。一方で、前記センサ装置はドームのようにして前記車両のルーフに配置されてもよい。この場合、前記カバー要素は、前記センサ装置のハウジングの少なくとも一部を形成し、前記センサ素子を収容する。
【0016】
本発明に係るセンサ装置の実施形態において、前記カバー要素は、車両前部又は車両後部の外皮要素を形成している。この場合、前記センサ装置は、距離制御システム、駐車支援システム、及び/又は当該車両の別の安全機能の一部であってもよい。
【0017】
自動車のセンサ装置におけるカバー要素を製造する方法であって、
第1面及び第2面を有するフィルムを提供する工程と、
前記フィルムの第1面に導体トラックを設ける工程と、
前記導体トラックが設けられた前記フィルムを射出成形金型の金型キャビティに導入する工程と、
前記射出成形金型の前記金型キャビティにプラスチック材料を充填する工程と、
前記金型キャビティ内で前記プラスチック材料を硬化させ、前記フィルムを有する前記カバー要素を形成する工程と、
前記フィルムを有する前記カバー要素を脱型する工程と、
を備える。
【0018】
本発明に係るセンサ装置におけるカバー要素を製造する方法において、前記フィルムが前記金型キャビティ内に導入される前に、前記フィルムの第2面に反射防止コーティングを施す工程を備える。前記反射防止コーティングは、前記フィルムの第1面に前記導体トラックを設ける前又は後に施すことができる。
【0019】
本発明に係るセンサ装置におけるカバー要素を製造する方法において、前記導体トラックは任意の方法によって前記フィルムに設けることができる。この方法としては、印刷技術、エンボス技術又は転写技術が採用されてもよい。具体的には、スクリーン印刷技術、ディスペンシング技術、ホットスタンプ技術、転写印刷技術などがあげられる。さらに、前記導体トラックを硬化させるためには、レーザ硬化技術のような適切な硬化技術を採用することができる。
【0020】
本発明に係るセンサ装置におけるカバー要素を製造する方法において、前記反射防止コーティングは、好ましくは、例えばドクターブレード、スクリーン印刷、又は同時押出しにより前記フィルムの第2面の施されてもよい。その後、前記反射防止コーティングは、反射防止効果を高めるために、プラズマエッチング工程などの構造化工程を受けてもよい。
【0021】
さらに、前記導体トラックは、幅の広いフィルムウェブや、フィルムの寸法に対応する、又は金型キャビティに挿入されるフィルムに対応するフィルムカットに設けることができる。
【0022】
カバー要素が射出成形されるとき、前記導体トラックが配置されている側が前記プラスチック材料によりオーバーモールドされるような方法によって、前記フィルム又は前記フィルムカットはオーバーモールドされている。前記反射防止コーティングが施されているフィルムの他方の面は、好ましくは、前記プラスチック材料から開放されたままである。
【0023】
本発明に係るセンサ装置におけるカバー要素を製造する方法は、特に、フィルムが第1ローラから巻き出され、前記反射防止コーティングが前記フィルムの片側に広範囲に塗布されるような方法により設計されている。その後、前記フィルムは第2ローラに巻き取られる。別の工程において、前記フィルムは、次に前記第2ローラから巻き出され、前記導体トラックと、前記反射防止コーティングが設けられた反対側の車両の電気システムに電気的に接続されるための接点とが設けられる。次いで、前記フィルムは、前記導体トラックを有するフィルムカットを生成するようにダイカットされ、その後、特にロボットによって射出成形の金型に挿入され、その金型キャビティ内において前記プラスチック材料とオーバーモールドされる。
【0024】
射出成形金型の金型キャビティからカバー要素を脱型した後、好ましくはカバー要素には、傷つき、天候状況及び化学薬品から保護するために、フィルム又はフィルム積層体とは反対側の面に保護コーティングが設けられている。
【0025】
本発明のさらなる利点及び有利な特徴は、明細書、図面及び特許請求の範囲に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明に係るセンサ装置を天井に備えた車両の透視図である。
【
図3】
図2におけるIII-III線断面図である。
【
図4】カバー要素の製造中の第1工程を示す正面図である。
【
図5】カバー要素の製造中の第2工程を示す正面図である。
【
図6】カバー要素の製造中の第3工程を示す斜視図である。
【
図7】カバー要素の製造中の第4工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明に係るセンサ装置の例示的な実施形態、及びセンサ装置のカバー要素を製造するための方法は、図示的に簡略された方法により図面に例示されており、以下の説明でより詳細に説明される。
【0028】
本実施形態において、
図1では、車内を覆う車両天井12を有するステーションワゴンとして表現された自動車10が示されている。車両天井12の前方、言い換えれば車両前側方向における端部にはフロントガラス14が設けられている。
【0029】
車両天井12は、プラスチック材料の射出成形品であり、本実施形態においてプラスチック材料はポリカーボネート樹脂が用いられている。
【0030】
自動車10は、自動運転又は半自動運転ができるように設計されている。このため、車外を監視するセンサである4つのセンサ装置16が、車両天井12の上に設けられている。これらのセンサ装置16は、レーザ光を電磁放射として用いる、いわゆるLiDAR(ライダ)センサである。
【0031】
各センサ装置16は本質的に同じ構成であり、
図2及び
図3に示すように、各センサ装置16は、センサ素子20が配置されたカバー要素18により形成されるセンサハウジングを備え、センサ素子20は測定方向Xに向けてレーザ光を放出し、このレーザ光はカバー要素18を透過して車外を監視するために使用される。
【0032】
カバー要素18は、ポリカーボネート樹脂を射出成形したコア22を有し、センサ素子20に面するコア22の内側面24には、フィルム積層体26を有している。車外に面するコア22の外側面28において、ポリカーボネート製のコア22には、傷、天候、及び化学物質から保護するための、塗料系により形成された保護コーティング30が施されている。
【0033】
フィルム積層体26は、ポリカーボネート樹脂から形成されるフィルム32を有し、フィルム32のコア22側の面上には、カバー要素18の加熱手段としての導体トラック34が設けられている。ポリシロキサン化合物からなる反射防止コーティング36が、フィルム32のセンサ素子20側の面に施されている。反射防止コーティング36は、反射防止効果を高めるために構造化されている。具体的には、反射防止コーティング36は、プラズマエッチングにより生成される、いわゆるモスアイ構造を有している。本実施形態において、反射防止コーティング36は、波長域が600nmから1200nmの間の電磁放射に対して、反射防止効果を有している。1200nm以上の波長域及び800nm未満の波長域の電磁放射は、反射防止コーティング36によって反射される。
【0034】
センサ装置16のカバー要素18の製造方法の工程が、簡略化された
図4~
図7によって示されている。
【0035】
第1工程において、第1ローラ38上に巻き取られた100μmから400μmの厚さのフィルム32が、第1ローラ38から巻き出される。コーティングステーション39において、フィルム32の片面には、その後、容器41に貯蔵されたポリシロキサンを原料とする材料40が、反射防止コーティング36を形成するために広範囲に塗布され、塗布された材料40は、ドクターブレード43によってフィルム32上に均一に広げられる。一旦、反射防止コーティング36が形成され、プラズマエッチングにより構造化されると、フィルム32は、反射防止コーティング36とともに第2ローラ42に巻き取られる。第2ローラ42は、次に、別の処理ステーション44において利用される。処理ステーション44において、反射防止コーティング36が施されたフィルム32は第2ローラ42から巻き出され、導体トラック34と接触点とが反射防止コーティング36とは反対側の面に設けられる。本実施形態において、これは転写印刷により行われ、硬化工程にはレーザ放射が用いられる。しかし、代わりとして、導体トラック34は、スクリーン印刷、ディスペンシング、ホットスタンピングなどによって設けられてもよい。接触点を含む導体トラック34と、反射防止コーティング36とが設けられたフィルム32は、次に、第3ローラ46に巻き取られる。第3ローラ46は切断ステーション48において利用され、この切断ステーション48では、導体トラック34と反射防止コーティング36とを有するフィルム32が巻き出され、コンベアベルト50の上に巻き出され、ダイカットツール52に切断され、その結果、当該カバー要素18の上に配置されたフィルム積層体26に対応するフィルムカット54が得られる。
【0036】
フィルムカット54は、搬送ロボットによりコンベアベルト50から取り除かれ、射出成形金型58の金型キャビティ56にインサートとして配置される。射出成形金型58は、第1金型60と第2金型62とによって構成されている。これら2つの射出成形金型58が閉じられているとき、第1金型60と第2金型62とが、金型キャビティ56を規定し制限する。射出成形金型58が開かれているときに、フィルムカット54は第1金型60に固定される。次に、射出成形金型58が金型キャビティ56を形成するように閉じられ、その後、カバー要素18のポリカーボネート製のコア22を形成するために、ゲートランナー64から金型キャビティ56にポリカーボネート樹脂が充填される。
【0037】
金型キャビティ56内のポリカーボネート樹脂を硬化させた後、射出成形金型58を開いて、フィルムカット54、すなわちフィルム積層体26とコア22とからなるカバー要素18を脱型する。
【0038】
最後の工程において、コア22のフィルム積層体26と反対側の面には保護コーティング30が施される。保護コーティング30は、1層又は2層に塗布されてもよい。使用される材料は、熱又は紫外線放射の補助により硬化する塗料系よりなる。この塗料系は、スプレー又はフローコーティングによって塗布される。
【0039】
この結果得られたカバー要素18は、センサ装置16を製造するために用いることができる。
【符号の説明】
【0040】
10 自動車
12 車両天井
14 フロントガラス
16 センサ装置
18 カバー要素
20 センサ素子
22 コア
24 内側面
26 フィルム積層体
28 外側面
30 保護コーティング
32 フィルム
34 導体トラック
36 反射防止コーティング
38 第1ローラ
39 コーティングステーション
40 材料
41 容器
42 第2ローラ
43 ドクターブレード
44 処理ステーション
46 第3ローラ
48 切断ステーション
50 コンベアベルト
52 ダイカットツール
54 フィルムカット
56 金型キャビティ
58 射出成形金型
60 第1金型
62 第2金型
64 ゲートランナー