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特許7015963患者インターフェースのためのヘッドギア
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-26
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】患者インターフェースのためのヘッドギア
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/06 20060101AFI20220207BHJP
【FI】
A61M16/06 A
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021509769
(86)(22)【出願日】2019-08-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-27
(86)【国際出願番号】 AU2019050874
(87)【国際公開番号】W WO2020037360
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-06-21
(31)【優先権主張番号】62/764,995
(32)【優先日】2018-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500046450
【氏名又は名称】レスメド・プロプライエタリー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】エミリー・エリザベス・ブランチ
(72)【発明者】
【氏名】ミキエル・コーイ
(72)【発明者】
【氏名】スチュワート・ジョセフ・ワグナー
(72)【発明者】
【氏名】ハドリー・ホワイト
(72)【発明者】
【氏名】ポール・デリック・ワトソン
(72)【発明者】
【氏名】ライアン・マイケル・カークパトリック
【審査官】小野田 達志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/124152(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0099113(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者インターフェースであって、
周囲空気圧力よりも少なくとも6cmH高い治療圧力へ加圧可能であるプレナムチャンバであって、前記プレナムチャンバは、治療圧力における空気流れを患者の呼吸のために受容するようなサイズおよび構造にされたプレナムチャンバ入口ポートを含む、プレナムチャンバと
使用時において前記患者の呼吸サイクル全体において空気流れを周囲空気圧力よりも少なくとも6cmH高い治療圧力において密閉送達するために、前記患者の気道への入口を包囲する前記患者の面の領域に対してシールを形成するように構築および配置されたシール形成構造であって、前記シール形成構造は、前記シール形成構造の中に穴を有し、これにより、前記治療圧力における空気流れが少なくとも前記患者の鼻孔への入口に送達され、前記シール形成構造は、使用時において患者の呼吸サイクル全体において前記治療圧力を前記プレナムチャンバ内に維持するように構築および配置される、シール形成構造と、
前記シール形成構造を患者頭部上の治療的に有効な位置に保持するための力を提供する位置決めおよび安定化構造であって、前記位置決めおよび安定化構造は、
-患者頭部上部上の接続ポートから空気流れを受容し、空気流れを前記シール形成構造を介して前記患者の気道の入口へ送達させるための一対のガス送達管であって、一対の前記ガス送達管のそれぞれは、使用時に前記患者頭部の上耳底点の上方の前記患者頭部の少なくとも一領域と接触するように構築および配置され、前記ガス送達管それぞれは、
前記ガス送達管の長さに沿って中空内部を規定する管壁と、
前記管壁へ接続されたタブであって、前記タブは、使用時に前記患者頭部の上耳底点の上方に配置されるように構成される、タブと、
前記タブに形成されたスリットであって、前記スリットは使用時において前記管壁から間隔を空けて後方に配置され、前記スリットは上端および下端を含む、スリットと、
を含み、
前記スリットの前記上端は、前記スリットの前記下端よりも前記管壁からさらに間隔を空けて配置され、前記スリットは、前記スリットの前記上端と前記スリットの前記下端との間において弓状である
対のガス送達管と、
使用時において前記患者頭部の後頭骨の下側に配置されるか前記患者頭部の後頭骨に配置される前記患者頭部の領域と接触するように構築および配置されるストラップであって、前記ストラップは、前記スリットへかつ前記スリット間に接続されるように構成される、ストラップと、
を含む、
位置決めおよび安定化構造と、
前記患者が呼気したガスが連続的に前記プレナムチャンバ内部から周囲へ連続的に流れることを可能にする通気構造であって、前記通気構造は、使用時に前記プレナムチャンバ内の前記治療圧力を維持するようなサイズおよび形状にされる、通気構造と、
を含み、
前記患者インターフェースは、前記プレナムチャンバ入口ポートを通じた加圧空気流れが無い場合に前記患者が自身の口腔を通じて雰囲気から呼吸することを可能にするように構成されるか、前記患者インターフェースは、前記患者の口腔を露出させたままにするように構成される
者インターフェース。
【請求項2】
前記タブそれぞれは、前記管壁それぞれと共に一体形成される、請求項1に記載の患者インターフェース。
【請求項3】
前記タブそれぞれは、上縁および下縁を有し、前記上縁は、前記下縁よりも長尺である、請求項1または2に記載の患者インターフェース。
【請求項4】
前記スリットの前記下端は、前記管壁から少なくとも5mmだけ間隔を空けて配置される、請求項1~3のいずれか一項に記載の患者インターフェース。
【請求項5】
前記スリットの前記下端は、前記管壁から少なくとも7mmだけ間隔を空けて配置される、請求項4に記載の患者インターフェース。
【請求項6】
前記スリットの前記下端は、前記管壁から少なくとも8mmだけ間隔を空けて配置される、請求項5に記載の患者インターフェース。
【請求項7】
前記スリットの前記上端は、前記管壁から少なくとも8mmだけ間隔を空けて配置される、請求項1~6のいずれか一項に記載の患者インターフェース。
【請求項8】
前記スリットの前記上端は、前記管壁から少なくとも10mmだけ間隔を空けて配置される、請求項7に記載の患者インターフェース。
【請求項9】
前記スリットの前記上端は、前記管壁から少なくとも12mmだけ間隔を空けて配置される、請求項8に記載の患者インターフェース。
【請求項10】
前記スリットに沿った中点は、前記管壁から5mm~30mmの範囲の間隔だけ空けて配置される、請求項1~9のいずれか一項に記載の患者インターフェース。
【請求項11】
前記中点と前記管壁との前記間隔は、7~20mmの範囲内である、請求項10に記載の患者インターフェース。
【請求項12】
前記中点と前記管壁との前記間隔は、8~15mmの範囲内である、請求項11に記載の患者インターフェース。
【請求項13】
前記中点と前記管壁との前記間隔は、9~11mmの範囲内である、請求項12に記載の患者インターフェース。
【請求項14】
記ガス送達管それぞれは、使用時において前記ガス送達管それぞれ前記タブの上方に配置される延長可能な管部と、使用時において前記ガス送達管それぞれ前記タブの下方に配置される延長不可能な管部と、を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の患者インターフェース。
【請求項15】
記タそれぞれは、前記延長不可能な管部において前記ガス送達管それぞれ前記管壁へ接合される、請求項14に記載の患者インターフェース。
【請求項16】
記スリットそれぞれは、前記ストラップが患者頭部周囲においてアンカー固定されたストラップアンカー領域のスリットからの方向に対して垂直に方向付けられる、請求項1から15のいずれか一項に記載の患者インターフェース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1 関連出願の相互参照
本出願は、2018年8月20日に出願されたオーストラリア国仮出願番号62/764,995の利益をクレームするもので、その内容を参照により本明細書に包含する。
【0002】
本特許文書の開示の一部は、著作権保護が与えられる内容を含む。著作権所有者は、何者かが本特許文書または本特許開示をファックスにより再生しても、特許庁の特許ファイルまたは記録に記載されるものであれば目的のものであれば異論は無いが、その他の目的については全ての著作権を保持する。
【背景技術】
【0003】
2 技術の背景
2.1 技術の分野
本技術は、呼吸関連疾患のスクリーニング、診断、監視、治療、予防および改善のうち1つ以上に関する。本技術はまた、医療デバイスまたは装置と、その使用とに関する。
【0004】
2.2 関連技術の説明
2.2.1 ヒトの呼吸器系およびその疾患
身体の呼吸器系は、ガス交換を促進させる。鼻および口腔は、患者の気道への入口を形成する。
【0005】
これらの気道は、一連の分岐する管を含み、これらの管は、肺の奥深くに進むほど狭く、短くかつ多数になる。肺の主要な機能はガス交換であり、空気から酸素を静脈血中へ取り入れさせ、二酸化炭素を退出させる。気管は、右および左の主気管支に分かれ、これらの主気管支はさらに分かれて、最終的に終末細気管支となる。気管支は、伝導のための気道を構成するものであり、ガス交換には関与しない。気道がさらに分割されると呼吸細気管支となり、最終的には肺胞となる。肺の肺胞領域においてガス交換が行われ、この領域を呼吸領域と呼ぶ。以下を参照されたい:「Respiratory Physiology」, by John B. West, Lippincott Williams & Wilkins, 9th edition published 2012。
【0006】
一定範囲の呼吸器疾患が存在している。特定の疾患は、特定の発症(例えば、無呼吸、呼吸低下および過呼吸)によって特徴付けられ得る。
【0007】
呼吸器疾患の例には、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)、チェーン・ストークス呼吸(CSR)、呼吸不全、肥満過換気症候群(OHS)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、神経筋疾患(NMD)および胸壁疾患が含まれる。
【0008】
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は、睡眠呼吸障害(SDB)の1つの形態であり、睡眠時の上通気道の閉鎖または閉塞などの発症によって特徴付けられる。これは異常に小さい上気道と、舌の領域の筋緊張の通常の喪失、睡眠時の軟口蓋および後口咽頭壁の正常損失の組み合わせの結果である。このような状態に起因して、罹患患者の呼吸停止が典型的には30~120秒にわたり、ときには一晩に200~300回も呼吸が停止する。その結果、日中の眠気が過度になり、心血管疾患および脳損傷の原因になり得る。この症候は一般的な疾患であり、特に中年の過体重の男性に多いが、患者に自覚症状は無い。特許文献1(Sullivan)を参照されたい。
【0009】
チェーン・ストークス呼吸(CSR)は、別の形態の睡眠呼吸障害である。CSRは、患者の呼吸調節器の疾患であり、CSRサイクルとして知られる換気の漸増および漸減が交互に周期的に続く。CSRは、動脈血の脱酸素および再曝気の繰り返しによって特徴付けられる。反復低酸素症のため、CSRは有害であり得る。患者によっては、CCRは、重症不眠、交感神経活動の増加、および後負荷の増加の原因となる、反復性睡眠覚醒を随伴する。特許文献2(Berthon-Jones)を参照されたい。
【0010】
呼吸不全とは、呼吸器障害の総称であり、患者の需要を満たすための充分な酸素吸気または充分なCO呼気を肺が行うことができていないことを指す。呼吸不全は、以下の疾患のうちいくつかまたは全てを包含し得る。
【0011】
呼吸不全(一種の呼吸不全)の患者は、運動時に異常な息切れを経験することがある。
【0012】
肥満過換気症候群(OHS)は、低換気の原因が他に明確に無い状態における、重症肥満および覚醒時慢性高炭酸ガス血症の組み合わせとして定義される。症状には、呼吸困難、起床時の頭痛と過剰な日中の眠気が含まれる。
【0013】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、特定の共通する特性を有する下気道疾患のグループのうちのいずれも包含する。これには空気の動きに対する抵抗の増加、呼吸の呼気相の延長および肺における正常な弾性の減少が含まれる。COPDの例として、気腫および慢性気管支炎がある。COPDの原因としては、慢性喫煙(第一危険因子)、職業被ばく、空気汚染および遺伝因子がある。症状を挙げると、労作時の呼吸困難、慢性咳および痰生成がある。
【0014】
神経筋疾患(NMD)は、内在筋病理を直接介してまたは神経病理を間接的に介して筋肉機能を損なう多数の疾病および病気を包含する広範な用語である。NMD患者の中には、進行性の筋肉障害によって特徴付けられる者もあり、結果的に歩行不可能、車椅子への束縛、嚥下困難、呼吸筋力低下に繋がり、最終的には呼吸不全による死亡に繋がる。神経筋肉障害は、以下の急速進行性と緩徐進行性とに区分され得る:(i)急速進行性障害:数ヶ月かけて悪化する筋肉障害によって特徴付けられ、数年内に死亡に繋がる(例えば、ティーンエージャーにおける筋萎縮性側索硬化症(ALS)およびデュシェンヌ筋ジストロフィー(DMD));(ii)可変性または緩徐進行性障害:数年かけて悪化する筋肉障害によって特徴付けられ、平均余命が若干低減するだけである(例えば、肢帯、顔面肩甲上腕型および筋強直性筋ジストロフィー)。NMDにおける呼吸不全症状を以下に挙げる:全身衰弱の増加、嚥下障害、労作および安静時の呼吸困難、疲労、眠気、起床時の頭痛、および集中および気分の変化の困難。
【0015】
胸壁障害は、胸郭変形の1つのグループであり、呼吸筋肉と胸郭との間の連結の無効性の原因となる。これらの障害は、拘束性障害によって主に特徴付けられ、長期の炭酸過剰性呼吸不全の可能性を共有する。脊柱側弯症および/または脊柱後側弯症は、重篤な呼吸不全を発症することがある。呼吸不全の症状を以下に挙げる:労作時の呼吸困難、末梢浮腫、起座呼吸、反復性胸部感染症、起床時の頭痛、疲労、睡眠の質の低下、および食欲不振。
【0016】
このような状態を治療または改善するために、一定範囲の治療が用いられている。さらに、その他の点では健常人も、呼吸器疾患の予防治療を有利に利用することができる。しかし、これらにおいては、複数の欠陥がある。
【0017】
2.2.2 治療法
多様な療法(例えば、持続的気道陽圧(CPAP)治療法、非侵襲的換気(NIV)および侵襲的換気(IV))が上記の呼吸器疾患の1つ以上の治療のために用いられている。
【0018】
持続的気道陽圧(CPAP)療法が、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)の治療において用いられている。その作用機構としては、例えば軟口蓋および舌を押して後口咽頭壁へ前進または後退させることにより、持続陽圧呼吸療法が空気スプリントとして機能し、これにより上気道の閉鎖を防止し得る。CPAP治療によるOSAの治療は自発的なものであり得るため、このような患者が治療の提供に用いられるデバイスについて以下のうち1つ以上に気づいた場合、患者が治療を遵守しないことを選択する可能性がある:不快、使用困難、高価、美観的な魅力の無さ。
【0019】
非侵襲的換気(NIV)は、換気補助を上気道を通じて患者へ提供して、呼吸機能の一部または全体を行うことにより患者の呼吸の補助および/または身体中の適切な酸素レベルの維持を提供する。換気補助が、非侵襲的患者インターフェースを介して提供される。NIVは、OHS、COPD、NMD、および胸壁障害などの形態のCSRおよび呼吸不全の治療に用いられている。いくつかの形態において、これらの治療の快適性および有効性が向上し得る。
【0020】
侵襲的換気(IV)は、自身で有効に呼吸することができなくなった患者に対して換気補助を提供し、気管切開管を用いて提供され得る。いくつかの形態において、これらの治療の快適性および有効性が向上し得る。
【0021】
2.2.3 治療システム
これらの治療は、治療システムまたはデバイスによって提供され得る。このようなシステムおよびデバイスは、疾患を治療することなくスクリーニング、診断、または監視するためにも、用いられ得る。
【0022】
治療システムは、呼吸圧力治療デバイス(RPTデバイス)、空気回路、加湿器、患者インターフェース、およびデータ管理を含み得る。
【0023】
別の形態の治療システムとして、下顎再位置決めデバイスがある。
【0024】
2.2.3.1 患者インターフェース
患者インターフェースは、例えば気道入口への空気流れを提供することにより呼吸装具へのインターフェースを装着者へ提供するために、用いられ得る。空気流れは、鼻および/または口腔へのマスク、口腔への管、または患者気管への気管切開管を介して提供され得る。適用される療法に応じて、患者インターフェースは、例えば患者の顔の領域との密閉部を形成し得、これにより、療法実行のための雰囲気圧力と共に充分な分散の圧力において(例えば、例えば雰囲気圧力に対して約10cmHOの陽圧において)ガス送達を促進する。酸素送達などの他の治療形態において、患者インターフェースは、約10cmHOの陽圧において気道へのガス供給の送達を促進するのに充分な密閉を含まない場合がある。
【0025】
特定の他のマスクシステムは、本分野において機能的に不適切であり得る。例えば、純然たる装飾目的のマスクの場合、適切な圧力を維持することができない場合がある。水中水泳またはダイビングに用いられるマスクシステムは、外部からのより高い圧力からの水侵入から保護することと、周囲よりも高い圧力において内部の空気を維持しないこととを行うように、構成され得る。
【0026】
特定のマスクは、本技術において臨床的に好ましく無い場合があり得る(例えば、マスクが鼻を介して気流を遮断し、口を介した気流のみを通過させる場合)。
【0027】
特定のマスクにおいて、患者がマスク構造の一部を口に挿入し、唇を介して密閉状態を生成および維持しなければならない場合、本技術において不快であるかまたは非実際的である場合がある。
【0028】
特定のマスクは、睡眠時(例えば、横向きにベッドに寝て枕の上に頭を置いた状態で睡眠する場合)における使用においては非実際的である場合がある。
【0029】
患者インターフェースの設計においては、複数の課題がある。顔は、複雑な三次元形状を有する。鼻および頭のサイズおよび形状は、個人によって大きく異なる。頭部には骨、軟骨および軟組織が含まれるため、顔の異なる領域は、機械的力に対して異なる反応を示す。すなわち、顎部または下顎は、頭蓋骨の他の骨に相対して動き得る。頭部全体は、呼吸治療期間を通じて動き得る。
【0030】
これらの課題に起因して、いくつかのマスクの場合、特に装着時間が長い場合または患者がシステムに不慣れである場合、押しつけがましい、美観的に望ましくない、コストが高い、フィット感が悪い、使用が困難、および不快感があるなどの理由のうち1つ以上がある。誤ったサイズのマスクが用いられた場合、コンプライアンスの低下、快適性の低下および患者予後の低下に繋がり得る。飛行士専用のマスク、個人用保護装具(例えば、フィルターマスク)、SCUBAマスクの一部として設計されたマスク、または麻酔投与用マスクは、その元々の用途には耐えられるものの、このようなマスクの場合、長時間(例えば、数時間)にわたって装着するには望ましくないほど不快な場合がある。このような不快感に起因して、治療に対する患者のコンプライアンスが低下する可能性がある。これは、マスクを睡眠時に装着する必要がある場合、特に当てはまる。
【0031】
CPAP治療は、患者が治療を承諾している場合、特定の呼吸疾患の治療においては極めて効果的である。マスクが不快である場合または使用が難しい場合、患者は、治療を承諾しない場合がある。患者はマスクを定期的に洗浄するよう推奨されることが多いため、マスクの清浄が難しい(例えば、組立または分解が困難である場合)、患者は、マスクを清浄することができず、患者のコンプライアンスに影響が出る場合がある。
【0032】
他の用途(例えば、飛行士)用のマスクの場合、睡眠呼吸障害の治療の使用には不適である場合があるため、睡眠呼吸障害の治療の使用のために設計されたマスクは、他の用途に適している場合がある。
【0033】
これらの理由のめ、睡眠時のCPAP送達のための患者インターフェースは、明瞭な分野を形成する。
【0034】
2.2.3.1.1 シール形成構造
患者インターフェースはシール形成構造を含み得る。患者インターフェースは、患者の顔と直接接触するため、シール形成構造の形状および構成は、患者インターフェースの有効性および快適性に直接影響を持ち得る。
【0035】
患者インターフェースは、使用時にシール形成構造を顔と係合させる場所の設計意図に従って、部分的に特徴付けられ得る。患者インターフェースの一形態において、シール形成構造は、左鼻孔の周囲にシールを形成するための第1のサブ部分と、右鼻孔の周囲にシールを形成するための第2のサブ部分とを含み得る。患者インターフェースの一形態において、シール形成構造は、使用時において双方の鼻孔を包囲する単一の要素を含み得る。このような単一の要素は、例えば顔の上唇領域および鼻ブリッジ領域上に載置されるように、設計され得る。患者インターフェースの一形態において、シール形成構造は、使用時に例えば顔の下唇領域上にシールを形成することにより口領域を包囲する要素を含み得る。患者インターフェースの一形態において、シール形成構造は、使用時に双方の鼻孔および口領域を包囲する単一の要素を含み得る。これらの異なる種類の患者インターフェースは、その製造業者によって鼻マスク、フルフェイスマスク、鼻枕、鼻パフおよび口鼻マスクなどの多様な名称によって公知であり得る。
【0036】
患者の顔の一領域において有効であり得るシール形成構造は、例えば患者の顔の異なる形状、構造、変化性および感受性領域に起因して、別の領域において不適切であり得る。例えば、患者の前額上に載置される水泳用ゴーグルの密閉部は、患者の鼻上における使用には不適切である場合がある。
【0037】
特定のシール形成構造は、広範囲の異なる顔形状およびサイズに対して1つの設計が適合し、快適でありかつ有効になるように、大量製造用に設計され得る。密閉部を形成するためには、患者の顔の形状と、大量製造された患者インターフェースのシール形成構造との間の不整合がある範囲まで、一方または双方を適合させる必要がある。
【0038】
1つの種類のシール形成構造は、患者インターフェースの周囲を包囲して延び、シール形成構造が患者の顔に対向して係合している状態で力が患者インターフェースへ付加された際、患者の顔を密閉することを意図する。このシール形成構造は、空気または流体充填クッションを含み得るか、または、ゴムなどのエラストマーによって構成された弾力性のある密閉要素の成形されたかまたは形成された表面を含み得る。この種のシール形成構造により、フィット感が不適切である場合、シール形成構造と顔との間に隙間が発生し、密閉を達成するには、患者インターフェースを顔に押しつけるためにさらなる力が必要になる。
【0039】
別の種類のシール形成構造は、陽圧がマスク内に付加された際に患者の顔に対して自己気密作用を提供するように、マスクの周囲の周辺に配置された薄材のフラップシールを使用する。先述の種類のシール形成部分と同様に、顔とマスクとの間の整合が良くない場合、密閉を達成するために必要なさらなる力が必要になり得るか、またはマスクから漏洩が発生し得る。さらに、シール形成構造の形状が患者の形状と整合しない場合、使用時においてシール形成部分に折り目または座屈が発生し、漏洩の原因になる。
【0040】
別の種類のシール形成構造は、例えば鼻孔中へ挿入される摩擦嵌め要素を含み得るが、これらのシール形成部分を不快であると感じる患者も存在する。
【0041】
別の形態のシール形成構造は、密閉を達成するために接着部を用い得る。患者の中には、常に接着部を自身の顔に貼り付けるかまたは取り外すことが不便であると感じる患者もいる。
【0042】
一定範囲の患者インターフェースシール形成構造の技術について、(ResMed Limitedへ譲渡された以下の特許出願:特許文献3;特許文献4;特許文献5)に開示がある。
【0043】
鼻枕の一形態が、Puritan Bennettによって製造されたAdam回路において見受けられる。別の鼻枕または鼻パフが、Puritan-Bennett Corporationへ譲渡された特許文献6(Trimbleら)の主題になっている。
【0044】
ResMed Limitedは、鼻枕を用いた以下の製品を製造している:SWIFT(登録商標)鼻枕マスク、SWIFT(登録商標)II鼻枕マスク、SWIFT(登録商標)LT鼻枕マスク、SWIFT(登録商標)FX鼻枕マスクおよびMIRAGELIBERTY(登録商標)フルフェイスマスク。ResMed Limitedへ譲渡された以下の特許出願において、鼻枕マスクの実施例についての記載がある:特許文献7(特に、ResMed LimitedのSWIFT(登録商標)鼻枕の様相を記載)、特許文献8(特に、ResMed LimitedのSWIFT(登録商標)LT鼻枕の様相を記載);特許文献9および特許文献10(特に、ResMed LimitedのMIRAGE LIBERTY(登録商標)フルフェイス型マスクの様相を記載);特許文献11(特に、ResMed LimitedのSWIFT(登録商標)FX鼻枕の様相を記載)。
【0045】
2.2.3.1.2 位置決めおよび安定化
陽圧空気治療に用いられる患者インターフェースのシール形成構造は、密閉を妨害する空気圧力の対応する力を受ける。そのため、シール形成構造を位置決めすることと、顔の適切な部分に対して密閉を維持することとを行うために、多様な技術が用いられている。
【0046】
1つの技術において、接着部が用いられる。例えば、米国特許出願公開US2010/0000534号を参照されたい。しかし、接着部を用いた場合、不快感がある場合がある。
【0047】
別の技術において、1つ以上のストラップおよび/または安定化ハーネスが用いられる。多数のこのようなハーネスの場合、フィット感が悪い、かさばる、不快および扱いにくいなどの点のうち1つ以上が当てはまる。
【0048】
2.2.3.1.3 加圧空気用導管
一種の治療システムにおいて、加圧空気の流れは、空気回路中の導管を通じて患者インターフェースへ提供される。この導管は、患者インターフェースが使用時に患者の顔上に位置決めされているときに導管が患者インターフェースから前方において患者の顔から離隔方向に延びるように、患者インターフェースへ流体接続する。これはときどき、「エレファントトランク」型のインターフェースとも呼ばれ得る。
【0049】
患者の中には、このようなインターフェースを目障りと感じる者もおり、その結果装着を止めた場合、患者コンプライアンスが低下する。さらに、患者の顔の前方において導管をインターフェースを接続した場合、寝具と絡まり易くなる可能性がある。
【0050】
2.2.3.1.4 シール形成構造の位置決め/安定化に用いられる加圧空気用導管
これらの問題に対処しようとする別の種類の治療システムに含まれる患者インターフェースにおいては、患者気道への加圧空気の送達を担う管が、患者インターフェースのシール形成部分を患者の顔の適切な部分へ位置決めおよび安定配置するためのヘッドギアの一部としても機能する。この種の患者インターフェースは、「ヘッドギアチュービング」または「導管ヘッドギア」を用いたものとも呼ばれ得る。このような患者インターフェースを用いると、呼吸圧力治療デバイスからの加圧空気流れを提供する空気回路中の導管を患者の顔の前方以外の位置にある患者インターフェースへ提供することができる。このような治療システムの一例について、特許文献12に開示がある。本明細書中、同文献の内容を参考のため援用する。同文献において、導管は、使用時において患者頭部の上部上に位置決めされたポートを通じて患者インターフェース中の管へ接続する。
【0051】
Philips社のDreamWear(登録商標)マスクは、このようなヘッドギアチュービングを含む。DreamWear(登録商標)ヘッドギア管の長さは調節できない。そのため、DreamWear(登録商標)ヘッドギアは、顔の大きさが異なる患者に対応するために、3つの異なるサイズで供給される。異なるサイズの数が多くなると、ヘッドギアの製造の際の複雑度およびコストの増大に繋がり得、パッケージング大型化に繋がり得る。さらに、別個のサイズのマスクを供給した場合、頭部サイズが異なる患者に対応できる範囲が制限され得る。一定数の患者に対し、長さ調節が不可能な個別のサイズを強制的に選択するよう要求した場合、患者自身が「完璧だ」と思うフィット感を達成することができない可能性が高くなり得る。
【0052】
ヘッドギアチュービングを用いた患者インターフェースを用いると、いくつかの利点が得られ得る(例えば、(目障りかつ不快になる場合があり得るような)患者の顔前方において患者インターフェースへ接続する導管を回避すること)。しかし、ヘッドギアチュービングを用いた患者インターフェースは、患者が眠っているときに患者が長時間装着する場合に、患者の顔との有効なシールを形成しつつ快適であることが望ましい。
【0053】
2.2.3.2 呼吸圧力治療(RPT)デバイス
呼吸圧力治療(RPT)デバイスは、例えばデバイスを作動させて気道へのインターフェースへの空気送達流れを生成することにより、上記した複数の治療のうち1つ以上の送達に個別的に、またはシステムの一部として用いられ得る。この空気流れは、加圧され得る。RPTデバイスの例を挙げると、CPAPデバイスおよび人工呼吸器がある。
【0054】
空気圧生成器は、広範な用途(例えば、工業規模換気システム)において公知である。しかし、医療用途のための空気圧生成器は、より一般的な空気圧生成器(例えば、医療機器の信頼性要件、サイズ要件および重量要件)では満足できない特定の要件を有する。加えて、医療治療向けに設計されたデバイスであっても、以下のうち1つ以上に関連して欠陥を免れない場合がある:快適性、ノイズ、使いやすさ、有効性、サイズ、重量、製造可能性、コストおよび信頼性。
【0055】
特定のRPTデバイスの特殊な要件の一例として、音響ノイズがある。
【0056】
デバイスの設計者には、無数の選択肢が提示され得る。設計基準同士が対立することが多くあるため、特定の設計選択肢が慣例からほど遠くなるかあるいは避けられないことがある。さらに、特定の態様の快適性および有効性は、1つ以上のパラメータの些細な変更から大きく影響を受ける可能性もある。
【0057】
2.2.3.3 加湿器
空気流れの送達を加湿無しで行った場合、気道の乾燥に繋がり得る。加湿器をRPTデバイスおよび患者インターフェースと共に用いた場合、加湿ガスが生成されるため、鼻粘膜の乾燥が最小化され、患者気道の快適性が増加する。加えて、より冷涼な気候においては、概して患者インターフェースの周囲の顔領域へ温風を付加すると、冷風の場合よりも快適性が高まる。
【0058】
一定範囲の人工的加湿機器およびシステムが公知であるが、医療加湿器の特殊な要件を満たせていない。
【0059】
医療加湿器は、典型的には患者が(例えば病院において)睡眠時または安静時にあるときに、必要な場合に周囲空気に相対して空気流れの湿度および/または温度を増加させるように、用いられる。枕元に置かれる医療加湿器は、小型である場合がある。医療加湿器は、患者へ送達される空気流れの加湿および/または加熱のみを行うように構成され得、患者の周囲の加湿および/または加熱は行わない。例えば、部屋ベースのシステム(例えば、サウナ、エアコン、または蒸発冷却器)は、呼吸により患者体内に取り込まれる空気も加湿し得るものの、これらのシステムの場合、部屋全体も加湿および/または加熱するため、占有者にとって不快になり得る。さらに、医療加湿器の場合、工業用加湿器よりも安全面での制約がより厳しい場合もある。
【0060】
多数の医療加湿器が公知であるものの、このような医療加湿器の場合、1つ以上の欠陥を被り得る。すなわち、このような医療加湿器の場合、加湿が不適切なものもあれば、患者にとって使用が困難または不便であるものもある。
【0061】
2.2.3.4 データ管理
臨床的理由により、呼吸治療が処方された患者が「コンプライアンスを遵守している」(例えば、患者が自身のRPTデバイスを1つ以上の「コンプライアンスルール」に則っているか)を決定するためのデータを入手する場合がある。CPAP治療についてのコンプライアンスルールの一例として、患者がコンプライアンスを遵守しているとみなすためには、患者が連続30日間のうち少なくとも21日間にわたってRPTデバイスを一晩あたり少なくとも4時間にわたって使用する必要がある。患者のコンプライアンスを決定するためには、RPTデバイスのプロバイダ(例えば、ヘルスケアプロバイダ)は、RPTデバイスを用いた患者の治療を記述するデータを手作業で入手し、所定期間にわたる使用率を計算し、これをコンプライアンスルールと比較し得る。ヘルスケアプロバイダが患者が自身のRPTデバイスをコンプライアンスルールに則って使用したと決定すると、当該ヘルスケアプロバイダは、患者がコンプライアンスを遵守している旨を第三者に通知し得る。
【0062】
患者の治療において、治療データの第三者または外部システムへの通信から恩恵を受ける他の態様があり得る。
【0063】
このようなデータを通信および管理するための既存のプロセスの場合、高コスト、時間がかかること、エラーの発生し易さのうち1つ以上が発生し得る。
【0064】
2.2.3.5 下顎の再位置決め
下顎再位置決めデバイス(MRD)または下顎前方固定デバイス(MAD)は、睡眠時無呼吸およびいびきの治療選択肢の1つである。これは、歯科医または他の供給業者から利用可能である調節可能な口腔用器具であり、下顎部(下顎)を睡眠時に前方位置に保持する。MRDは、取り外し可能なデバイスであり、患者の睡眠前に口腔内に挿入され、睡眠後に取り外される。そのため、MRDは、常時装着用途を想定した設計はされていない。MRDは、カスタム仕様にしてもよいし、あるいは、標準形態で製造してもよく、患者の歯に適合するように設計された咬合印象部位を含む。この下顎からの機械的突出部は、舌の後ろ側の空間を拡張させ、咽頭壁上へ張力を付加して、気道崩壊を低減させ、口蓋振動を低減させる。
【0065】
特定の実施例において、下顎前方固定デバイスは、上顎または上顎骨上の歯と係合するかまたは嵌め合うように意図された上側スプリントと、上顎または下顎上の歯と係合するかまたは嵌め合うように意図された下側スプリントとを含み得る。上側スプリントおよび下側スプリントは、一対の接続ロッドを介して相互に横方向に接続される。この1組の接続ロッドは、上側スプリントおよび下側スプリント上において対称に固定される。
【0066】
このような設計において、接続ロッドの長さは、MRDが患者の口腔中に配置されたときに下顎が前方位置に保持されるように、選択される。接続ロッドの長さは、下顎の突出レベルを変化させるように、調節され得る。歯科医は、突出レベルを下顎に合わせて決定することができ、その結果、接続ロッドの長さが決定される。
【0067】
下顎を上顎骨に対して前方に押し出すように構成されているMRDもあれば、ResMed Narval CC(登録商標)MRDなどの他のMRDのように、下顎を前方位置に保持するように設計されているものもある。このデバイスにより、歯科的副作用および側頭/下顎間の関節(TMJ)の副作用も低下または最小化される。そのため、このデバイスは、歯のうち1つ以上の任意の移動を最小化または回避するように構成される。
【0068】
2.2.3.6 通気技術
いくつかの形態の治療システムは、吐き出された二酸化炭素を押し出すための通気部を含み得る。この通気部により、患者インターフェースの内部空間(例えば、プレナムチャンバ)から患者インターフェースの外部(例えば、周囲)へのガス流れが可能になり得る。
【0069】
この通気部は、オリフィスを含み得、マスク使用時において、ガスがオリフィスを通じて流れ得る。多数のこのような通気部の場合、音がうるさい。他の場合、使用時において閉塞し得るため、押し出しが不十分になる。いくつかの通気部の場合、例えば音または気流集中に起因して、患者1000と同床者1100の睡眠を妨げる場合がある。
【0070】
ResMed Limitedは、複数の向上したマスク通気技術を開発している。下記を参照されたい:特許文献13;特許文献14;特許文献15;特許文献16;特許文献17。
従来のマスクのノイズの表(ISO17510-2:2007、1mにおける10cmHO圧力)
【0071】
【表1】
【0072】
(*試料1個のみをISO3744に指定の試験方法を用いてCPAPモードにおいて10cmHOにて測定)
多様な対象の音圧値を以下に羅列する
【0073】
【表2】
【0074】
2.2.4 スクリーニング、診断システムおよびモニタリングシステム
睡眠ポリグラフ(PSG)は、心肺疾患の診断および監視のための従来のシステムであり、典型的には、システム適用のために専門家臨床スタッフを必要とすることが多い。PSGにおいては、多様な身体信号(例えば、脳波検査(EEG)、心電図検査(ECG)、電気眼球図記録(EOG)、筋電図描画法(EMG))を記録するために、典型的には15~20個の接触覚センサを人体上に配置する。睡眠時呼吸障害のPSGのめには、患者を専門病院において二晩にわたって観察する必要があった。すなわち、第一夜は純然たる診断のためであり、第二夜は、臨床医による治療パラメータのタイトレーションのために必要であった。そのため、PSGは高コストであり、利便性も低い。睡眠呼吸障害のスクリーニング/診断/監視は家庭において特に不向きである。
【0075】
一般に、スクリーニングおよび診断は、疾患の兆候と症状によって疾患を特定することである。通常、スクリーニングは、患者のSDBがさらなる調査を求める程であるかないかを示す真/偽結果を出すいっぽう、診断は、臨床で実行可能な情報を出すことが多い。スクリーニングおよび診断は、一回性手続きになる傾向であることに反して、疾患の経過をモニタリングすることは無限定に続けられる。いくつかのスクリーニング/診断システムは、スクリーニング/診断にのみ適合されているが、いくつかはモニタリングにも使用することができる。
【0076】
臨床専門家は、患者のスクリーニング、診断またはモニタリングをPSG信号の視覚的観察に基づいて適切に行い得る。しかし、臨床専門家が居ないまたは臨床専門家への支払いができない状況がある。患者の状態について臨床専門家によって意見が異なる場合がある。さらに、或る臨床専門家は、時期によって異なる基準を適用し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0077】
【文献】米国特許第4944310号明細書
【文献】米国特許第6532959号明細書
【文献】国際公開第1998/004310号
【文献】国際公開第2006/074513号
【文献】国際公開第2010/135785号
【文献】米国特許第4782832号明細書
【文献】国際公開第2004/073778号
【文献】米国特許出願公開第2009/0044808号明細書
【文献】国際公開第2005/063328号
【文献】国際公開第2006/130903号
【文献】国際公開第2009/052560号
【文献】米国特許出願公開第2007/0246043号明細書
【文献】国際公開第1998/034、665号
【文献】国際公開第2000/078、381号
【文献】米国特許第6、581、594号明細書
【文献】米国特許出願公開第2009/0050156号明細書
【文献】米国特許出願公開第2009/0044808号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0078】
3 技術の簡単な説明
本技術は、呼吸器疾患のスクリーニング、診断、モニタリング、改善、治療または予防において用いられる医療機器の提供に関連し、これらの医療機器は、向上した快適性、コスト、有効性、使い易さおよび製造可能性のうち1つ以上を有する。
【0079】
本技術の第1の態様は、呼吸器疾患のスクリーニング、診断、監視、改善、治療または予防に用いられる装置に関連する。
【0080】
本技術の別の態様は、呼吸障害のスクリーニング、診断、監視、改善、治療または予防において用いられる方法に関連する。
【0081】
本技術の特定の形態の一態様は、呼吸治療についての患者のコンプライアンスを向上させる方法および/または装置を提供することである。
【0082】
本技術の一態様は、加圧された呼吸可能なガスの供給を患者気道の入口へ送達させるための患者インターフェースを含む。
【0083】
本技術の別の態様は、プレナムチャンバ、シール形成構造、および位置決めおよび安定化構造を含み得る患者インターフェースに関する。患者インターフェースは、通気構造をさらに含み得る。患者は、患者の口腔を露出させたママにするようにさらに構成され得、あるいは、シール形成構造が患者の鼻と口の周囲を密閉するように構成される場合には、患者インターフェースは、プレナムチャンバ入口ポートを通じた加圧空気流れが無い場合に患者が自身の口腔を通じて雰囲気から呼吸することを可能にするようにさらに構成され得る。
【0084】
本技術の別の態様は、プレナムチャンバ、シール形成構造、通気構造、およびシール形成構造を患者頭部上の治療的に有効な位置に保持するための位置決めおよび安定化構造を含む患者インターフェースに関する。接続ポートから空気流れを受容し、空気流れをシール形成構造を介して患者の気道の入口へ送達させるための少なくとも1つのガス送達管であって、当該ガス送達管は、使用時に患者頭部の上耳底点の上方の患者頭部の少なくとも一領域と接触するように構築および配置される、少なくとも1つのガス送達管を含む、位置決めおよび安定化構造。
【0085】
本技術の一態様によれば、シール形成構造を患者頭部上の治療的に有効な位置に保持するための力を提供する位置決めおよび安定化構造が提供され、当該シール形成構造は、使
用時において前記患者の呼吸サイクル全体において空気流れを周囲空気圧力よりも少なくとも6cmH高い治療圧力において密閉送達するために、患者の気道への入口を包囲する患者の顔の領域とのシールを形成するように構築および配置され、当該位置決めおよび安定化構造は:
患者頭部上部上の接続ポートから空気流れを受容し、空気流れをシール形成構造を介して患者の気道の入口へ送達させるための少なくとも1つのガス送達管であって、前記ガス送達管は、使用時に患者頭部の上耳底点の上方の患者頭部の少なくとも一領域と接触するように構築および配置される、少なくとも1つのガス送達管を含み、前記ガス送達管は:
内部から空気を前記シール形成構造へ流動させることが可能な中空内部を規定する管壁であって、前記管壁は、前記ガス送達管の長さを変化させるために伸長するように構成された延長可能部を有し、
前記延長可能部の引張り剛性(extension stiffness)は、0.2~0.35N/mmの範囲内である、管壁を含む、ガス送達管を含む。
【0086】
前述の段落のいずれかの態様のいずれかの実施例において:(a)延伸可能部分の引張り剛性(extension stiffness)は、0.25~0.3N/mmの範囲内になる;(b)一対のガス送達管は、使用中に患者に対向するように構成された一対の管の側の中心線に沿って測定される、500~535mmの範囲内になる、組合せ未延伸長さを含む;(c)該組合せ未延伸長さは、510~525mmの範囲内になる;(d)該組合せ未延伸長さは、512~522mmの範囲内になる;(e)一対のガス送達管は、使用中に患者に対向するように構成された一対の管の側の中心線に沿って測定される、460~500mmの範囲内になる、組合せ未延伸長さを含む;(f)該組合せ未延伸長さは、470~490mmの範囲内になる;(g)該組合せ未延伸長さは、475~485mmの範囲内になる;(h)ガス送達管は、クッションモジュールと共に患者頭部周囲にループを形成し、ループは、ガス送達管の側部の中心線に沿って測定される非伸長長さと、使用時において510~610mmの範囲内において患者に対向するように構成されたクッションモジュールとを有し;(i)該ループの未延伸長さは、528~548mmの範囲内になる;(j)該ループの未延伸長さは、535~541mmの範囲内になる;(k)該ループの未延伸長さは、534~554mmの範囲内になる;(l)該ループの未延伸長さは、539~549mmの範囲内になる;(m)該ループの未延伸長さは、541~561mmの範囲内になる;(n)該ループの未延伸長さは、546~556mmの範囲内になる;(o)該ループの未延伸長さは、564~584mmの範囲内になる;(p)該ループの未延伸長さは、571~581mmの範囲内になる;(q)該ループの未延伸長さは、577~597mmの範囲内になる;および/または(r)該ループの未延伸長さは、582~592mmの範囲内になる。
【0087】
本技術の一態様によれば、シール形成構造を患者頭部上の治療的に有効な位置に保持するための力を提供する位置決めおよび安定化構造が提供され、当該シール形成構造は、使用時において前記患者の呼吸サイクル全体において空気流れを周囲空気圧力よりも少なくとも6cmH高い治療圧力において密閉送達するために、患者の気道への入口を包囲する患者の顔の領域とのシールを形成するように構築および配置され、当該位置決めおよび安定化構造は:患者頭部上部上の接続ポートから空気流れを受容し、空気流れをシール形成構造を介して患者の気道の入口へ送達させるための少なくとも1つのガス送達管であって、前記少なくとも1つのガス送達管は、使用時に患者頭部の上耳底点の上方の患者頭部の少なくとも一領域と接触するように構築および配置される、少なくとも1つのガス送達管を含み、前記少なくとも1つのガス送達管は:使用時に患者頭部の上領域に載置されるように構成された上側管部であって、上側管部は:使用時に患者頭部の矢状面またはその近隣において患者頭部の上部に載置されるように構成された第1の端部と;使用時に患者頭部の側部に載置されるように構成された第2の端部と;第1の端部と第2の端部との間の硬質部であって、硬質部は、使用時における第1の端部と第2の端部との間の相対運動に
対して上および/または下方向においてよりも前および/または後方向においてより高い抵抗を提供するように構成される、硬質部と;を含む、上側管部と、上側管部の第2の端部とシール形成構造との間に接続される下側管部と、を含む、ガス送達管を含む。
【0088】
前述の段落のいずれかの態様のいずれかの実施例において:(a)各上側管部は、2つの硬質部を含み;(b)硬質部は、使用時に前方に来るように構成された上側管部の側部および使用時に後方に来るように構成された上側管部の側部のうち片方または双方に設けられ;(c)上側管部は、延長可能部を含み;(d)延長可能部は、ガス送達管の管壁内に形成された延長可能な蛇腹構造を含み;(e)延長可能な蛇腹構造は、複数の折り目を管壁内に含んで、複数の隆起部および複数の溝部を交互に形成し;(f)硬質部は、複数の接続部を管壁内に含み、複数の接続部それぞれにより、一対の隣接する隆起部を接続させ;かつ/または、(g)硬質部は、上側管部と一体形成される。
【0089】
本技術の一態様によれば、シール形成構造を患者頭部上の治療的に有効な位置に保持するための力を提供する位置決めおよび安定化構造が提供され、当該シール形成構造は、使用時において前記患者の呼吸サイクル全体において空気流れを周囲空気圧力よりも少なくとも6cmH高い治療圧力において密閉送達するために、患者の気道への入口を包囲する患者の顔の領域とのシールを形成するように構築および配置され、当該位置決めおよび安定化構造は:患者頭部上部上の接続ポートから空気流れを受容し、空気流れをシール形成構造を介して患者の気道の入口へ送達させるための少なくとも1つのガス送達管を含み、前記ガス送達管は、使用時に患者頭部の上耳底点の上方の患者頭部の少なくとも一領域と接触するように構築および配置され、前記少なくとも1つのガス送達管は、延長可能な蛇腹構造を有する管壁を含み、前記延長可能な蛇腹構造は:複数の隆起部および複数の溝部が交互に形成されている管壁内の複数の折り目であって、前記折り目は、少なくとも部分的に展開可能であるため、隆起部の分離を増大させて、延長可能な蛇腹構造を細長形状にすることができる、複数の折り目と、管壁へ設けられた1つ以上の隆起部接続部であって、1つ以上の隆起部接続部それぞれは、複数の隆起部の2つ以上の隣接する隆起部を接続させ、隆起部の分離に耐えるように構成される、1つ以上の隆起部接続部と、を含む、延長可能な蛇腹構造を含む、ガス送達管を含む。
【0090】
前述の段落のいずれかの態様のいずれかの実施例において:(a)各一対の隣接する隆起部は、1つ以上の隆起部接続部の少なくとも1つの隆起部接続部によって接続され;(b)一対以上の隣接する隆起部は、2つの隆起部接続部によって接続され;(c)各一対の隣接する隆起部は、2つの隆起部接続部によって接続され;(d)隆起部接続部のうち1つ以上は、使用時に前方を向くように構成されたガス送達管の側部上に配置され;(e)隆起部接続部のうち1つ以上は、使用時に後方を向くように構成されたガス送達管の側部上に配置され;(f)隆起部接続部はそれぞれ、使用時に下方を向くように構成されたガス送達管の側部と、使用時に上方を向くように構成されたガス送達管の側部との間に中心において間隔を空けて配置され;(g)各一対の隣接する隆起部は、使用時に前方を向くように構成されたガス送達管の側部上に配置された隆起部接続部のうち1つによって接続され;(h)各一対の隣接する隆起部は、後方を向くように構成されたガス送達管の側部上に配置された隆起部接続部のうちの1つにより接続され;(i)ガス送達管は、外面を有する延長不可能部を含み、複数の溝部はそれぞれ、延長不可能部の外面に対する窪みとして形成され;(j)ガス送達管は、外面を有する延長不可能部を含み、複数の隆起部はそれぞれ、延長不可能部の外面に対して隆起され;(k)複数の溝部はそれぞれ、各一対の隆起部接続部間に配置され、一対の隆起部接続部の各隆起部接続部は、各溝部の各端部に配置され;(l)複数の溝部はそれぞれ、溝部深さを含み、複数の隆起部接続部はそれぞれ、隆起部接続部の高さを含み、各それぞれの溝部の溝部深さは、各溝部の端部に配置された各一対の隆起部接続部それぞれの隆起部接続部の高さに等しく;(m)各隆起部接続部は、管壁の一体形成された部位であり;(n)複数の隆起部、複数の溝部および複数の隆起部接続部は、一体形成され;(o)複数の隆起部はそれぞれ、各隆起部の中心の曲線状の隆起部位を含み;(p)複数の溝部はそれぞれ、各溝部の中心の曲線状の溝部位を含み;(q)複数の隆起部はそれぞれ、各隆起部の反対端部に設けられた一対の直線状隆起部位を含み;(r)複数の隆起部接続部はそれぞれ、隆起部の直線状隆起部位において各隣接する対の隆起部へ接続し;(s)延長可能な蛇腹構造におけるガス送達管の断面は、幅および高さを有し、幅は、使用時において前方向-後方向において実質的に整列され、幅は、高さよりも大きく;(t)幅は、高さの少なくとも2倍であり;および/または(u)位置決めおよび安定化構造は、接続ポートとシール形成構造との間に流体接続された2つのガス送達管を含み、各ガス送達管は、使用時に患者の頬領域のうち1つにおいて伸長し、2つのガス送達管は、患者頭部の異なる側部上に設けられる。
【0091】
本技術の一態様によれば、シール形成構造を患者頭部上の治療的に有効な位置に保持するための力を提供する位置決めおよび安定化構造が提供され、当該シール形成構造は、使用時において前記患者の呼吸サイクル全体において空気流れを周囲空気圧力よりも少なくとも6cmH高い治療圧力において密閉送達するために、患者の気道への入口を包囲する患者の顔の領域とのシールを形成するように構築および配置され、当該位置決めおよび安定化構造は:患者頭部上部上の接続ポートから空気流れを受容し、空気流れをシール形成構造を介して患者の気道の入口へ送達させるための少なくとも1つのガス送達管を含み、前記ガス送達管は、使用時に患者頭部の上耳底点の上方の患者頭部の少なくとも一領域と接触するように構築および配置され、前記少なくとも1つのガス送達管は、中空内部を有しかつガス送達管の長さに沿って設けられた延長可能な蛇腹構造を有する管壁を含み、前記延長可能な蛇腹構造は:前記ガス送達管の非患者接触側に沿った第1の交互の一連の隆起部および溝部と、前記ガス送達管の患者接触側に沿った第2の交互の一連の隆起部および溝部とが形成されている、前記管壁内の複数の折り目であって、前記第1の交互の一連の隆起部および溝部の引張り剛性は、前記第2の交互の一連の隆起部および溝部よりも低くなっている、複数の折り目を含む、延長可能な蛇腹構造を含む、ガス送達管を含む。
【0092】
実施例において、(a)複数の折り目により、ガス送達管の内部において内部隆起部および内部溝部が形成されて、第1の交互の一連の隆起部および溝部と、第2の交互の一連の隆起部および溝部とが形成され;(b)第1の交互の一連のものの内部溝部はそれぞれ、第2の交互の一連のものの内部溝部のうち各1つの反対側においてガス送達管の内部にわたって設けられて、複数の対向する溝部対が形成され、各対向する溝部対は、第1の内部溝部であって、第1の交互の一連のものの1つの内部溝部である、第1の内部溝部と;第2の内部溝部であって、第2の交互の一連のものの1つの内部溝部である第2の内部溝部とを含む。第1の内部溝部の溝部深さは、第2の内部溝部よりも大きく;(c)管壁において、各対向する溝部対の第2の内部溝部のベースにおける材料厚さは、各対向する溝部対の第1の内部溝部のベースにおける材料厚さよりも大きく;(d)第2の交互の一連のものの各内部溝部のベースにおける管壁の材料厚さは、ガス送達管の長さに沿って接続ポートに近接する第1の端部から第2の端部にかけて低減し;(e)第1の交互の一連のものの各内部溝部のベースにおける管壁の材料厚さは、ガス送達管の長さに沿って実質的に一定であり;(f)第1および第2の交互の一連の内部隆起部および内部溝部の内部溝部の溝部深さは、ガス送達管の長さに沿って接続ポートに隣接する第1の端部から第2の端部にかけて低減し;および/または(g)各対向する溝部対の第1の内部溝部は、非患者接触側と患者接触側との間のガス送達管の側部において、各対向する溝部対の第2の内部溝部へ接合される。
【0093】
本技術の一態様によれば、シール形成構造を患者頭部上の治療的に有効な位置に保持するための力を提供する位置決めおよび安定化構造が提供され、当該シール形成構造は、使用時において前記患者の呼吸サイクル全体において空気流れを周囲空気圧力よりも少なくとも6cmH高い治療圧力において密閉送達するために、患者の気道への入口を包囲する患者の顔の領域とのシールを形成するように構築および配置され、当該位置決めおよび安定化構造は:患者頭部上部上の接続ポートから空気流れを受容し、空気流れをシール形成構造を介して患者の気道の入口へ送達させるための一対のガス送達管であって、前記一対のガス送達管のそれぞれは、使用時に患者頭部の上耳底点の上方の患者頭部の少なくとも一領域と接触するように構築および配置される、一対のガス送達管を含み、それぞれのガス送達管は:ガス送達管の長さに沿って中空内部を規定する管壁;管壁へ接続されたタブであって、タブは、使用時に患者頭部の上耳底点の上方に配置されるように構成される、タブ;およびタブ中に形成されたスリットであって、スリットは、使用時において管壁から間隔を空けて後方に配置され、スリットは、上端および下端を含み、スリットの上端は、スリットの下端よりも管壁からさらに間隔を空けて配置される、スリットを含む、ガス送達管と、使用時において患者頭部の後頭骨の下側に配置されるかまたは患者頭部の後頭骨に配置される患者頭部の領域と接触するように構築および配置されるストラップであって、ストラップは、スリットへかつスリット間に接続されるように構成される、ストラップを含む。
【0094】
前述の段落のいずれかの態様のいずれかの実施例において:(a)各タブは、各管壁と共に一体形成され;(b)各タブは、上縁および下縁を有し、上縁は、下縁よりも長尺であり;(c)スリットの下端は、管壁から少なくとも5mmだけ間隔を空けて配置され;(d)スリットの下端は、管壁から少なくとも7mmだけ間隔を空けて配置され;(e)スリットの下端は、管壁から8mm以上だけ間隔を空けて配置され;(f)スリットの上端は、管壁から少なくとも8mmだけ間隔を空けて配置され;(g)スリットの上端は、管壁から少なくとも10mmだけ間隔を空けて配置され;(h)スリットの上端は、管壁から12mm以上だけ間隔を空けて配置され;(i)スリットに沿った中点は、管壁から5mm~30mmの範囲の間隔だけ空けて配置され;(j)間隔は、7mm~20mmの範囲内であり;(k)間隔は、8mm~15mmの範囲内であり;(l)間隔は、9~11mmの範囲内であり;(m)各ガス送達管は、使用時において各ガス送達管のタブの上方に配置される延長可能な管部と、使用時において各ガス送達管のタブの下方に配置される延長不可能な管部;とを含み(n)各タブは、延長不可能な管部において各ガス送達管の管壁へ接合され;(o)各スリットは、上端と下端との間において弓状であり;(p)各スリットは、上端と下端との間において直線状であり;かつ/または(q)各スリットは、ストラップが患者頭部周囲においてアンカー固定されるストラップアンカー領域のスリットからの方向に対して垂直に方向付けられる。
【0095】
本技術の一態様によれば、シール形成構造を患者頭部上の治療的に有効な位置に保持するための力を提供する位置決めおよび安定化構造が提供され、当該シール形成構造は、使用時において前記患者の呼吸サイクル全体において空気流れを周囲空気圧力よりも少なくとも6cmH高い治療圧力において密閉送達するために、患者の気道への入口を包囲する患者の顔の領域とのシールを形成するように構築および配置され、当該位置決めおよび安定化構造は:患者頭部上部上の接続ポートから空気流れを受容し、空気流れをシール形成構造を介して患者の気道の入口へ送達させるための一対のガス送達管であって、前記一対のガス送達管のそれぞれは、使用時に患者頭部の上耳底点の上方の患者頭部の少なくとも一領域と接触するように構築および配置される、一対のガス送達管を含み、それぞれのガス送達管は:使用時において、患者頭部の上部からシール形成構造へ患者の眼および耳間において延びる経路に沿って患者頭部上に配置されるように構成された管壁;管壁へ接続されたタブであって、タブは、使用時に患者頭部の上耳底点の上方に配置されるように構成される、タブ;および前記タブ中に形成されかつ使用時において前記管壁の経路のスリット隣接部から後方に間隔を空けて配置されるスリットであって、前記スリットは、使用時において後上方-前下方方位を有し、前記スリット隣接部において前記管壁の経路の接線と共に斜角を形成する、スリットを含む、ガス送達管と、使用時において患者頭部の後頭骨の下側に配置されるかまたは患者頭部の後頭骨に配置される患者頭部の領域と接触するように構築および配置されるストラップであって、ストラップは、スリットへかつスリット間に接続されるように構成される、ストラップを含む。
【0096】
前述の段落のいずれかの態様のいずれかの実施例において:(a)各タブは、管壁のそれぞれと一体形成され;(b)各タブは、上縁および下縁を有し使用時に、上縁は、下縁よりも長尺であり;(c)各ガス送達管は、使用時において各ガス送達管のタブの上方にある延長可能な管部と、使用時において各ガス送達管のタブの下方にある延長不可能な管部とを含み;(d)各タブは、延長不可能な管部において各ガス送達管の管壁へ接続され;(e)各スリットは、スリットの上端と下端との間において弓状であり;(f)各スリットは、スリットの上端と下端との間において直線状であり;(g)スリットの下端は、管壁から少なくとも5mmだけ間隔を空けて配置され;(h)スリットの下端は、管壁から少なくとも7mm間隔を空けて配置され、(i)スリットの下端は、管壁から8mm以上だけ間隔を空けて配置され;(j)スリットの上端は、管壁から少なくとも8mmだけ間隔を空けて配置され;(k)スリットの上端は、管壁から少なくとも10mmだけ間隔を空けて配置され;(l)スリットの上端は、管壁から12mm以上だけ間隔を空けて配置され;(m)斜角は、10~20度の範囲内であり;(n)斜角は、12~18度の範囲内であり;および/または(o)各スリットは、ストラップが患者頭部周囲においてアンカー固定されたストラップアンカー領域のスリットからの方向に対して垂直に方向付けられる。
【0097】
本技術の一態様によれば、シール形成構造を患者頭部上の治療的に有効な位置に保持するための力を提供する位置決めおよび安定化構造が提供され、当該シール形成構造は、使用時において前記患者の呼吸サイクル全体において空気流れを周囲空気圧力よりも少なくとも6cmH高い治療圧力において密閉送達するために、患者の気道への入口を包囲する患者の顔の領域とのシールを形成するように構築および配置され、当該位置決めおよび安定化構造は:患者頭部上部上の接続ポートから空気流れを受容し、空気流れをシール形成構造を介して患者の気道の入口へ送達させるための一対のガス送達管であって、前記一対のガス送達管のそれぞれは、使用時に患者頭部の上耳底点の上方の患者頭部の少なくとも一領域と接触するように構築および配置される、一対のガス送達管を含み、それぞれのガス送達管は:患者頭部の上部からシール形成構造にかけて患者の眼と耳との間に延びて患者頭部上に載置されるように構成された管壁;管壁へ接続されたタブであって、使用時において患者頭部の上耳底点の上方に配置される、タブ;前記タブ中に形成されかつ使用時において前記管壁の後方に配置されるアイレット;前記タブ内に形成されかつアイレットの後方に配置されるトラフを含む、ガス送達管と、使用時において患者頭部の後頭骨の下側に配置されるかまたは患者頭部の後頭骨に配置される患者頭部の領域と接触するように構築および配置されたストラップであって、ストラップは、一対のガス送達管のアイレットへ接続し一対のガス送達管のアイレット間に接続することと、使用時においてタブ中に形成されるトラフ内に配置されることとを行うように構成される、ストラップを含む。
【0098】
前述の段落のいずれかの態様のいずれかの実施例において:(a)トラフは、タブ中においてアイレットとタブの後側との間に形成され;(b)タブは、外方を向く表面を含み、トラフは、外方を向く表面に対する窪みとして形成される実質的に平面状表面を含み;(c)トラフは、タブの他の部位と比較して材料厚さが小さなタブの一部により形成され;(d)トラフは、ストラップの幅とほぼ等しい長さを含み;かつ/または、(e)アイレットは、スリットの形態をとる。
【0099】
本技術の一態様によれば、以下を含む患者インターフェースが提供される。
周囲空気圧力よりも少なくとも6cmH高い治療圧力へ加圧可能であるプレナムチャンバであって、前記プレナムチャンバは、治療圧力における空気流れを患者の呼吸のために受容するようなサイズおよび構造にされたプレナムチャンバ入口ポートを含む、プレナムチャンバと、患者の気道への入口を包囲する患者の面の領域に対してシールを形成するように構築および配置されたシール形成構造であって、前記シール形成構造は、その中に穴を有し、これにより、上記治療圧力における空気流れが少なくとも患者の鼻孔への入口に送達され、シール形成構造は、使用時において患者の呼吸サイクル全体において上記治療圧力をプレナムチャンバ内に維持するように構築および配置される、シール形成構造と;上記の態様のいずれか一つによる位置決めおよび安定化構造;および患者が呼気したガスが連続的にプレナムチャンバ内部から周囲へ連続的に流れることを可能にする通気構造であって、前記通気構造は、使用時にプレナムチャンバ内の治療圧力を維持するようなサイズおよび形状にされる、通気構造;当該患者インターフェースは、プレナムチャンバ入口ポートを通じた加圧空気流れが無い場合に患者が自身の口腔を通じて雰囲気から呼吸することを可能にするように構成されるか、あるいは、患者インターフェースは、患者の口腔を露出させたままにするように構成される。
【0100】
本技術の特定の形態の別の態様は、呼吸疾患の治療のためのシステムである。本システムは、本技術の他の態様のうちいずれか1つ以上による患者インターフェースと、空気回路と、陽圧における空気源とを含む。
【0101】
本技術の一形態の別の態様は、意図される装着者の形状に対して相補的である周辺形状と共に成形または他の場合に構築された患者インターフェースである。
【0102】
本技術の特定の形態の別の態様は、患者インターフェースである。この患者インターフェースは、使用時に患者の口腔を露出させるように構成されたシール形成構造を含む。
【0103】
本技術の特定の形態の別の態様は、患者インターフェースである。この患者インターフェースは、使用時にシール形成構造の一部が口腔に進入することが無いように構成されたシール形成構造を含む。
【0104】
本技術の特定の形態の別の態様は、患者インターフェースである。この患者インターフェースは、シール形成構造が患者の気道の内部に延びないように構成されたシール形成構造を含む。
【0105】
本技術の特定の形態の別の態様は、患者インターフェースである。この患者インターフェースは、使用時にシール形成構造がオトガイ隆起領域の下側に延びないように構成されたシール形成構造を含む。
【0106】
本技術の特定の形態の別の態様は、使用時に患者の眼を露出させるように構築および配置された患者インターフェースである。
【0107】
本技術の特定の形態の別の態様は、停電時に患者が周囲空気を呼吸することを可能にするように構築および配置された患者インターフェースである。
【0108】
本技術の特定の形態の別の態様は、患者インターフェースである。この患者インターフェースは、患者の鼻の鼻ブリッジ領域と接触すること無く患者の鼻の下側上にシールを形成するように構成されたシール形成構造を含む。
【0109】
本技術の特定の形態の別の態様は、患者インターフェースである。この患者インターフェースは、通気部およびプレナムチャンバを含む。患者インターフェースは、プレナムチャンバ内部からのガスが通気部を介して周囲へ移動することができるように、構築および配置される。
【0110】
本技術の特定の形態の別の態様は、患者インターフェースである。この患者インターフェースは、患者が患者インターフェースの使用時に横向きまたは側臥位睡眠位置にて快適に横たわることができるように、構築および配置される。
【0111】
本技術の特定の形態の別の態様は、患者インターフェースである。この患者インターフェースは、患者が患者インターフェースの使用時に仰臥位睡眠位置にて快適に横たわることができるように、構築および配置される。
【0112】
本技術の特定の形態の別の態様は、患者インターフェースである。この患者インターフェースは、患者が患者インターフェースの使用時に腹臥位睡眠位置にて快適に横たわることができるように、構築および配置される。
【0113】
本技術の特定の形態の一態様は、例えば医療トレーニングを受けたことの無い人、あまり器用ではない人や洞察力の欠いた人、またはこの種の医療デバイスの使用経験が限られた人にとって使い易い医療デバイスである。
【0114】
本技術の一形態の一態様は、患者の家庭において例えば石けん水などによって洗浄することが可能な患者インターフェースであり、特殊な清浄器具は不要である。
【0115】
もちろん、上記態様の一部は、本技術の下位態様を形成し得る。また、下位態様および/または態様のうち多様な1つを多様に組み合わせることができ、本技術のさらなる態様または下位態様も構成し得る。
【0116】
本技術の他の特徴は、以下の詳細な説明、要約、図面および特許請求の範囲中に含まれる情報に鑑みれば明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0117】
4 図面の簡単な説明
本技術を、添付図面中に非限定的に一実施例として例示する。図面中、類似の参照符号は、以下の類似の要素を含む:
4.1 治療システム
図1A】患者インターフェース3000を装着している患者1000を含むシステムを示す。このシステムは、鼻枕の形態をとり、RPTデバイス4000から供給される陽圧の空気を受容する。RPTデバイス4000からの空気は、加湿器5000によって加湿され、空気回路4170に沿って患者1000へと移動する。同床者1100も図示される。患者は、仰臥位睡眠位置において睡眠している。
図1B】患者インターフェース3000を装着している患者1000を含むシステムを示す。このシステムは、鼻マスクの形態をとり、RPTデバイス4000から供給される陽圧の空気を受容する。RPTデバイスからの空気は、加湿器5000によって加湿され、空気回路4170に沿って患者1000へと移動する。
図1C】患者インターフェース3000を装着している患者1000を含むシステムを含む。患者インターフェース3000は、フルフェイスマスクをとり、陽圧の空気供給をRPTデバイス4000から受容する。RPTデバイスからの空気は、加湿器5000によって加湿され、空気回路4170に沿って患者1000へと移動する。患者は、側臥位睡眠位置において睡眠している。4.2 呼吸システムおよび顔の解剖学的構造
図2A】鼻腔および口腔、喉頭、声帯ひだ、食道、気管、気管支、肺、肺胞嚢、心臓および横隔膜を含むヒト呼吸器系の概要を示す。
図2B】鼻腔、鼻骨、外側鼻軟骨、大鼻翼軟骨、鼻穴、上唇、下唇、喉頭、硬口蓋、軟口蓋、口咽頭、舌、喉頭蓋、声帯ひだ、食道および気管を含むヒトの上気道の図である。
図2C】上唇、上唇紅、下唇紅、下唇、口の幅、内眼角、鼻翼、鼻唇溝および口角点を含む表面解剖学的構造のいくつかの特徴を含む顔の正面図である。上側、下側、ラジアル内方およびラジアル外方の方向も記載される。
図2D】眉間、セリオン、鼻尖点、鼻下点、上唇、下唇、スプラメントン、鼻堤、鼻翼頂上点、上耳底点および下耳底点を含む表面解剖学的構造のいくつかの特徴を含む頭部の側面図である。上側および下側と、前方および後方との方向も記載される。
図2E】頭部のさらなる側面図である。フランクフォート水平および鼻唇角の大まかな位置が記載されている。冠状面も記載される。
図2F】鼻唇溝、下唇、上唇紅、鼻孔、鼻下点、鼻柱、鼻尖点、鼻孔の主軸および正中矢状面を含むいくつかの特徴を含む鼻の底面図である。
図2G】鼻の表面的特徴の側面図である。
図2H】外側鼻軟骨、鼻中隔軟骨、大鼻翼軟骨、小鼻翼軟骨、鼻種子軟骨、鼻骨、表皮、脂肪組織、上顎骨の前頭突起および線維性脂肪組織を含む鼻の皮下構造を示す。
図2I】正中矢状面からおよそ数ミリメートルの位置における鼻の中間切開を示し、特に鼻中隔軟骨および大鼻翼軟骨の内側脚を示す。
図2J】前頭骨、鼻骨および頬骨を含む頭蓋骨の骨正面図である。鼻甲介が上顎骨および下顎骨と共に図示されている。
図2K】頭蓋骨を頭部表面の外形およびいくつかの筋肉と共に示す側面図である。以下の骨が図示されている:前頭骨、蝶形骨、鼻骨、頬骨、上顎骨、下顎骨、頭頂骨、側頭骨および後頭骨。オトガイ隆起が図示されている。以下の筋肉が図示されている:顎二腹筋、咬筋、胸鎖乳突筋および僧帽筋。
図2L】鼻の前外側を示す。4.3 患者インターフェース
図3A】本技術の一形態による鼻マスクの形態の患者インターフェースを示す。
図3B】構造を1つの点において切断した模式的断面図である。この点における外向き法線が図示される。この点における曲率は、正の符号と、3Cに示す曲率の大きさと比較して比較的大きな大きさとを有する。
図3C】構造を1つの点において切断した模式的断面図である。この点における外向き法線が図示される。この点における曲率は、正の符号と、図3Bに示す曲率の大きさと比較して比較的小さな大きさとを有する。
図3D】構造を1つの点において切断した模式的断面図である。この点における外向き法線が図示される。この点における曲率の値はゼロである。
図3E】構造を1つの点において切断した模式的断面図である。この点における外向き法線が図示される。この点における曲率は、負の符号と、図3Fに示す曲率の大きさと比較して比較的小さな大きさとを有する。
図3F】構造を1つの点において切断した模式的断面図である。この点における外向き法線が図示される。この点における曲率は、負の符号と、図3Eに示す曲率の大きさと比較して比較的大きな大きさとを有する。
図3G】2つの枕を含むマスク用クッションを示す。クッションの外面が図示される。表面の縁部が図示される。ドーム領域および鞍状領域が図示される。
図3H】マスク用クッションを示す。クッションの外面が図示される。表面の縁部が図示される。点Aと点Bとの間の表面上の経路が図示される。AとBとの間の直線距離が図示される。2つの鞍状領域およびドーム領域が図示される。
図3I】構造の表面を示し、この表面中には一次元穴が開いている。図示の平面曲線は、一次元穴の境界を形成する。
図3J図3Iの構造を通じた断面図である。図示の表面は、図3Iの構造中の二次元穴を境界付ける。
図3K】二次元穴および一次元穴を含む図3Iの構造の斜視図である。また、図3Iの構造中の二次元穴を境界付ける表面が図示される。
図3L】クッションとしての可膨張性ブラダーを有するマスクを示す。
図3M図3Lのマスクの断面図であり、ブラダーの内面を示す。内面により、マスク中の二次元穴が境界付けられる。
図3N図3Lのマスクを通じたさらなる断面を示す。内面も図示される。
図3O】左手の法則を示す。
図3P】右手の法則を示す。
図3Q】左耳螺旋を含む左耳を示す。
図3R】右耳螺旋を含む右耳を示す。
図3S】右手螺旋を示す。
図3T】マスクの異なる領域内の密閉膜の縁部によって規定された空間曲線のねじれのサインを含むマスクの図である。
図3U】正中矢状面および中央接触面を示す、プレナムチャンバ3200の図である。
図3V図3Uのプレナムチャンバの後方の図である。図中の方向は、中央接触面に対して垂直である。図3V中、正中矢状面により、プレナムチャンバが左手側および右手側に二等分される。
図3W図3Vのプレナムチャンバを通じた断面図であり、この断面は、図3Vに示す正中矢状面においてとられる。「中央接触」面が図示される。中央接触面は、正中矢状面に対して垂直である。中央接触面の方位は、腱の方位に対応する。この腱は、正中矢状面上に載置され、正中矢状面上の2点(すなわち、上点および下点)においてプレナムチャンバのクッションのみと接触する。この領域におけるクッションのジオメトリに応じて、中央接触面は、上点および下点双方に接し得る。
図3X図3Uのプレナムチャンバ3200が顔面上の使用位置にある状態を示す。プレナムチャンバ3200の正中矢状面は、プレナムチャンバが使用位置にあるとき、顔の正中矢状面と概して一致する。中央接触面は、プレナムチャンバが使用位置にあるとき、「顔の面」に概して対応する。図3Xにおいて、プレナムチャンバ3200は鼻マスクのものであり、上点はほぼセリオン上に載置され、下点は上唇上に載置される。4.4 RPTデバイス
図4A】本技術の一形態によるRPTデバイスを示す。
図4B】本技術の一形態によるRPTデバイスの空気圧経路の模式図である。上流および下流の方向が、送風機および患者インターフェースに対して示される。任意の特定の瞬間における実際の流れ方向に関係無く、送風機は患者インターフェースの上流にあるものとして規定され、患者インターフェースは送風機の下流にあるものとして規定される。送風機と患者インターフェースとの間の空気圧経路内に配置されたアイテムは、送風機の下流および患者インターフェースの上流にある。4.5 加湿器
図5A】本技術の1つの形態による加湿器の等角図を示す。
図5B】本技術の1つの形態による加湿器の等角図を示し、加湿器リザーバ5110が加湿器リザーバドック5130から取り外された様子を示す。4.6 呼吸波形
図6A】睡眠時のヒトの典型的な呼吸波形のモデルを示す。4.7 スクリーニング、診断およびモニタリングシステム
図7A】睡眠ポリグラフ(PSG)を受けている患者を示す。患者は、仰臥位睡眠位置において睡眠している。
図7B】患者の状態の監視のための監視装置を示す。患者は、仰臥位睡眠位置において睡眠している。4.8 本技術の特定の実施例
図8A】患者1000着用時における本技術の一実施例による患者インターフェース3000の斜視図である。
図8B図8Aに示す患者インターフェース3000を示す正面図である。
図8C図8Aに示す患者インターフェース3000を示す側面図である。
図8D図8Aに示す患者インターフェース3000を示す別の側面図である。
図9A】孤立状態にある図8Aに示す患者インターフェース3000の斜視図である。
図9B】孤立状態にある図8Aに示す患者インターフェース3000の後方斜視図である。
図9C】孤立状態にある図8Aに示す患者インターフェース3000の上面図である。
図10A】本技術の一例による位置決めおよび安定化構造3300のコンポーネントの平面図を示す。
図10B図10Aの位置決めおよび安定化構造3300の一部の断面B-Bを示す。
図10C図10Aの位置決めおよび安定化構造3300の延長不可能部の断面C-Cを示す。
図10D図10Aの位置決めおよび安定化構造3300の延長可能部の一部の平面図を示す。
図10E図10Dの位置決めおよび安定化構造3300の延長可能部の断面E-Eを示す。
図10F図10Aの位置決めおよび安定化構造3300の延長可能部の一部の正面図を示す。
図10G図10Aの位置決めおよび安定化構造3300の延長可能部が直線状構成をとる様子の正面図である。
図10H図10Gに示す延長可能部が曲線状構成をとる様子の正面図である。
図10I図10Gに示す延長可能部が曲線状構成をとる様子の斜視図である。
図10J図10Gに示す延長可能部が曲線状構成をとる様子の上面図である。
図11A図10Aの位置決めおよび安定化構造3300のタブの側面図である。
図11B図10Aの位置決めおよび安定化構造3300のタブの別の側面図である。
図11C図11Aのタブの斜視図である。
図12A】患者1000着用時における本技術の別の実施例による患者インターフェース3000の斜視図である。
図12B】孤立状態にある図12Aの患者インターフェース3000の斜視図である。
図12C図12Aの患者インターフェース3000の正面図である。
図12D図12Aの患者インターフェース3000の背面図である。
図12E図12Aの患者インターフェース3000の平面図である。
図12F図12Aの患者インターフェース3000の側面図である。
図13】本技術の別の実施例による患者インターフェース3000の位置決めおよび安定化構造3300の一部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0118】
5 本技術の実施例の詳細な説明
本技術についてさらに詳細に説明する前に、本技術は、本明細書中に記載される異なり得る特定の実施例に限定されるのではないことが理解されるべきである。本開示中に用いられる用語は、本明細書中に記載される特定の実施例を説明する目的のためのものであり、限定的なものではないことも理解されるべきである。
【0119】
以下の記載は、1つ以上の共通の特性および/または特徴を共有し得る多様な実施例に関連して提供される。任意の1つの実施例の1つ以上の特徴は、別の実施例または他の実施例の1つ以上の特徴と組み合わせることが可能であることが理解されるべきである。加えて、これらの実施例のうちのいずれかにおける任意の単一の特徴または特徴の組み合わせは、さらなる実施例を構成し得る。
【0120】
5.1 治療法
図1Aに示すような一形態において、本技術は、呼吸器疾患の治療方法を含む。本方法は、患者1000の気道の入口へ陽圧を付加するステップを含む。
【0121】
本技術の特定の実施例において、陽圧における空気供給が鼻孔の片方または双方を介して患者の鼻通路へ提供される。
【0122】
本技術の特定の実施例において、口呼吸が制限されるか、限定されるかまたは妨げられる。
【0123】
5.2 治療システム
1つの形態において、本技術は、呼吸障害の治療のための装置またはデバイスを含む。装置またはデバイスは、加圧空気を患者インターフェース3000への空気回路4170を介して患者1000へ供給するRPTデバイス4000を含み得る。図1A図1Bおよび図1Cは、患者インターフェース3000をRPTデバイス4000および加湿器5000と共に用いる治療システムを示す。
5.3 患者インターフェース
【0124】
図3Aを参照すると、本技術の一態様による非侵襲的患者インターフェース3000は、以下の機能様態を含む:シール形成構造3100、プレナムチャンバ3200、位置決めおよび安定化構造3300、通気部3400、空気回路4170への接続のための一形態の接続ポート3600、および前額支持部3700。いくつかの形態において、機能様態が、1つ以上の物理的コンポーネントによって提供され得る。いくつかの形態において、1つの物理的コンポーネントは、1つ以上の機能様態を提供し得る。使用時において、シール形成構造3100は、気道への陽圧での空気供給を促進するように、患者の気道の入口を包囲するように配置される。
【0125】
図8A図9Cに示したように、本技術の一様態による非侵襲的患者インターフェース3000は、以下の機能態様を含む:シール形成構造3100、プレナムチャンバ3200、位置決めおよび安定化構造3300、通気部3400、および空気回路(例えば、図1A図1Cに示す空気回路4170)への接続のための一形態の接続ポート3600。本例において、シール形成構造3100およびプレナムチャンバ3200は、クッションモジュール3150によって提供される。
【0126】
患者インターフェースが最低レベルの陽圧を快適に気道へ送達できない場合、患者インターフェースは呼吸圧力治療に不適切であり得る。
【0127】
本技術の一形態による患者インターフェース3000は、周囲に対して少なくとも6cmHOの陽圧で空気供給を提供できるように構築および配置される。
【0128】
本技術の一形態による患者インターフェース3000は、周囲に対して少なくとも10cmHOの陽圧で空気供給を提供できるように構築および配置される。
【0129】
本技術の一形態による患者インターフェース3000は、周囲に対して少なくとも20cmHOの陽圧で空気供給を提供できるように構築および配置される。
【0130】
5.3.1 シール形成構造
本技術の一形態において、シール形成構造3100は、目標シール形成領域を提供し、クッション機能をさらに提供し得る。目標シール形成領域は、シール形成構造3100において密閉が発生し得る領域である。密閉が実際に発生する領域(すなわち、実際の密閉面)は、一定範囲の要素(例えば、顔面上の患者インターフェースの配置位置、位置決めおよび安定化構造における張力、および患者の顔の形状)に応じて、所与の治療セッションにおいて患者によって日々変化し得る。
【0131】
一形態において、目標シール形成領域が、シール形成構造3100の外面上に配置される。
【0132】
本技術の特定の形態において、シール形成構造3100は、生体適合性材料(例えば、シリコーンゴム)から構成される。
【0133】
本技術によるシール形成構造3100は、柔らかく、可撓性でありかつ弾力性のある材料(例えば、シリコーン)から構成され得る。
【0134】
本技術の特定の形態において、1つよりも多くのシール形成構造3100を含むシステムが提供される。各シール形成構造3100は、異なるサイズおよび/または形状範囲に対応するように構成される。例えば、システムは、小さなサイズの頭ではなく大きなサイズの頭に適したシール形成構造3100の一形態および大きなサイズの頭ではなく小さなサイズの頭に適した別のものを含み得る。
【0135】
5.3.1.1 密閉機構
一形態において、シール形成構造3100は、圧力アシスト密閉機構を用いるシーリングフランジを含む。使用時において、シーリングフランジは、プレナムチャンバ3200内のシステム陽圧に容易に応答してその下側上に作用して、面と緊密な密閉係合を形成させ得る。圧力アシスト機構は、位置決めおよび安定化構造における弾性張力と共に作用し得る。
【0136】
一形態において、シール形成構造3100は、シーリングフランジおよび支持フランジを含む。シーリングフランジは、厚さが約1mm未満(例えば、約0.25mm~約0.45mm)の比較的肉薄の部材を含む。この部材は、プレナムチャンバ3200の縁部長さの周囲に延びる。支持フランジは、シーリングフランジよりも比較的肉厚であり得る。支持フランジは、シーリングフランジと、プレナムチャンバ3200の周縁部との間に配置され、周辺長さの周囲の少なくとも一部に延びる。支持フランジは、バネ様要素であるかまたはバネ様要素を含み、シーリングフランジを使用時に座屈しないように支持するよう機能する。
【0137】
一形態において、シール形成構造は、圧縮密閉部またはガスケット密閉部を含み得る。使用時において、圧縮密閉部またはガスケット密閉部は、例えば位置決めおよび安定化構造における弾性張力に起因して圧縮状態となるように、構築および配置される。
【0138】
一形態において、シール形成構造は、張力部を含む。使用時において、張力部は、例えばシーリングフランジの隣接領域により、ぴんと張られた状態で保持される。
【0139】
一形態において、シール形成構造は、粘着面または接着面を有しかつ/または他の表面に比べて高い摩擦係数を有する領域を含む。
【0140】
本技術の特定の形態において、シール形成構造は、圧力アシストシーリングフランジ、圧縮密閉部、ガスケット密閉部、張力部、および粘着面または接着面を有する部位のうち1つ以上を含み得る。
【0141】
5.3.1.2 鼻梁または鼻堤領域
一形態において、非侵襲的患者インターフェース3000は、使用時に患者の顔の鼻梁領域上にまたは鼻堤領域上に密閉を形成するシール形成構造を含む。
【0142】
一形態において、シール形成構造は、使用時において患者の顔の鼻梁領域上または鼻堤領域上にシールを形成するように構築されたサドル状領域を含む。
【0143】
5.3.1.3 上唇領域
一形態において、非侵襲的患者インターフェース3000は、患者の顔の上唇領域(すなわち、上唇)上に使用時に密閉を形成するシール形成構造を含む。
【0144】
一形態において、シール形成構造は、使用時において患者の顔の上唇領域上にシールを形成するように構築されたサドル状領域を含む。
【0145】
5.3.1.4 顎領域
一形態において、非侵襲的患者インターフェース3000は、使用時に患者の顔の顎領域上に密閉を形成するシール形成構造を含む。
【0146】
一形態において、シール形成構造は、使用時において患者の顔の顎領域上にシールを形成するように構築されたサドル状領域を含む。
【0147】
5.3.1.5 前額領域
一形態において、シール形成構造は、シール使用時において患者の顔の前額領域上にシールを形成する。このような形態において、プレナムチャンバは、使用時において眼を被覆し得る。
【0148】
5.3.1.6 鼻枕
一形態において、非侵襲的患者インターフェース3000のシール形成構造3100は、一対の鼻パフまたは鼻枕を含む。各鼻パフまたは鼻枕は、患者の鼻の各鼻孔とのシールを形成するように構成および配置される。図12A図12Fは、枕クッションモジュール3160によって提供されるシール形成構造3100を有する患者インターフェース3000を示す。枕クッションモジュール3160は、一対の鼻枕3165を含む。本例において、図8A図9Cに示すものと同じ位置決め構造3300は、枕クッションモジュール3160と患者の鼻との密閉接触を保持するために用いられる。クレードルクッションモジュール3150について述べた位置決めおよび安定化構造3300と同じコンセプトおよび特徴が、枕クッションモジュール3160(または別の種類のクッションモジュール(例えば、フルフェイスクッションモジュール、口腔鼻クッションモジュール、超コンパクト型フルフェイスクッションモジュール、鼻クッションモジュール))と共に用いられるように構成された位置決めおよび安定化構造3300に適用され得る。
【0149】
本技術の一態様による鼻枕3165は、円錐台を含む。円錐台のうち少なくとも一部は、患者の鼻の下側、柄部、円錐台の下側上の可撓性領域上に密閉を形成し、円錐台を柄部へ接続させる。加えて、本技術の鼻枕が接続される構造は、柄部のベースに隣接する可撓性領域を含む。可撓性領域は、自在接合構造を促進するように機能し得る。自在接合構造は、円錐台の変位および角度双方と、鼻枕が接続される構造との相互移動に対応する。例えば、円錐台は、柄部が接続された構造に向かって軸方向に変位し得る。
【0150】
5.3.1.7 鼻クレードル
一形態において、例えば、図8A図9Cに示すように、シール形成構造3100は、使用時に鼻孔の周囲の鼻下側および任意選択的に患者1000の上唇とシールを形成するように構成される。この種のシール形成構造は、「クレードルクッション」または「サブ鼻マスク」とも呼ばれ得る。シール形成構造の形状は、患者の鼻の下側に整合するかまたは患者の鼻の下側を近密に追随するように構成され得る(すなわち、シール形成構造のプロファイルおよび角度は、患者の鼻唇角度と実質的に平行であり得る)。鼻クレードルクッションの一形態において、シール形成構造は、2つのオリフィスを規定するブリッジ部位を含む。これら2つのオリフィスはそれぞれ、使用時に空気または呼吸可能なガスを患者鼻孔のうち異なる1つへ供給する。ブリッジ部位は、使用時に患者の鼻柱と接触するかまたは患者の鼻柱をシールするように、構成され得る。本技術のいくつかの形態において、シール形成構造3100は、患者の鼻の鼻ブリッジ領域と接触すること無く患者の鼻の下側とのシールを形成するように、構成される。いくつかの例において、患者インターフェースは、PCT出願第PCT/AU2018/050289号(出願日:2018年3月29日)に記載のようなクレードルクッションの形態をとるシール形成構造3100を含み得る。本明細書中、同文献全体を参考のため援用する。
【0151】
5.3.1.8 鼻マスククッション
一形態において、非侵襲的患者インターフェース3000は、使用時において患者の顔の上唇領域(すなわち、上唇)、鼻ブリッジ領域、および頬領域上に密閉を形成するシール形成部分を含む。例えば図1Bに示した患者インターフェース3000がこの場合である。このシール形成部分は、空気供給または呼吸可能なガスを単一のオリフィスを介して患者1000の双方の鼻孔へ送達させる。この種のシール形成構造は、「鼻クッション」または「鼻マスク」とも呼ばれ得る。本技術のいくつかの実施例において、図8A図9Cに示す位置決めおよび安定化構造3300は、鼻クッションを患者の顔上の密閉位置に保持するために利用され得る。
【0152】
5.3.1.9 フルフェイスマスククッション
一形態において、患者インターフェース3000は、患者の顔の顎領域、鼻ブリッジ領域、および頬領域上に密閉を形成するシール形成部分を含む。例えば図1Cに示した患者インターフェース3000がこの場合である。このシール形成部分は、空気供給または呼吸可能なガスを単一のオリフィスを通じて患者1000の双方の鼻孔および口腔へ送達させる。この種のシール形成構造は、「フルフェイスマスク」とも呼ばれ得る。本技術のいくつかの実施例において、図8A図9Cに示す位置決めおよび安定化構造3300は、フルフェイスクッションを患者の顔上の密閉位置に保持するために利用され得る。
【0153】
5.3.1.10口腔鼻マスククッション
別の形態において、患者インターフェース3000は、鼻シール形成構造と、口腔シール形成構造とを含む。鼻シール形成構造は、鼻クッションまたは鼻クレードルクッションの形態をとり、口腔シール形成構造は、使用時に患者口腔周囲にシールを形成するように構成される(これは、「口腔クッション」または「口腔マスク」とも呼ばれ得る)。このようなマスクにおいて、空気または呼吸可能なガスは、使用時に別個のオリフィスを通じて患者の鼻孔および患者の口腔へ供給される。この種のシール形成構造3100は、「口腔鼻クッション」または「超コンパクト型のフルフェイスクッション」と呼ばれ得る。一形態において、鼻シール形成構造および口腔シール形成構造は、単一のコンポーネントとして一体形成される。いくつかの例において、患者インターフェースは、米国特許出願第62/649,376号に記載のようなクレードルクッションの形態のシール形成構造3100を含み得る。本明細書中、同文献全体を参考のため援用する。
【0154】
プレナムチャンバ3200は、使用時に密閉が形成される領域において平均的な人の顔の表面外形に対して相補的である形状の周囲を有する。使用時において、プレナムチャンバ3200の周辺縁部は、顔の隣接する表面に近接して位置決めされる。顔との実際の接触は、シール形成構造3100によって提供される。シール形成構造3100は、使用時においてプレナムチャンバ3200の縁部全体の周りに延び得る。いくつかの形態において、プレナムチャンバ3200およびシール形成構造3100は、単一の均質的材料ピースから形成される。
【0155】
図8A図9Cに示す患者インターフェース3000のような、本技術のいくつかの形態において、プレナムチャンバ3200は、使用時において患者の眼を被覆しない。換言すると、眼は、プレナムチャンバによって規定される加圧空間外にある。このような形態の場合、押しつけがさが低減しかつ/またはより着用者の快適性が増すことが多いため、治療コンプライアンスが向上し得る。
【0156】
本技術の特定の形態において、プレナムチャンバ3200は、透明材料(例えば、透明ポリカーボネート)から構築される。透明材料の利用により、患者インターフェースの押しつけがましさが低減され得、治療へのコンプライアンスの向上が補助され得る。透明材料の利用により、臨床医が患者インターフェースの配置様態および機能を確認することが補助され得る。
【0157】
本技術の特定の形態において、プレナムチャンバ3200は、半透明材料から構成される。半透明材料を用いることにより、患者インターフェースの押しつけがましさを低減することができ、治療へのコンプライアンスの向上を補助することができる。
【0158】
5.3.2 位置決めおよび安定化構造
本技術の患者インターフェース3000のシール形成構造3100は、使用時において位置決めおよび安定化構造3300によって密閉位置において保持され得る。位置決めおよび安定化構造3300は、患者インターフェースを3000密閉位置において保持するために患者の頭部に係合することから、「ヘッドギア」とも呼ばれることができる。
【0159】
一形態において、位置決めおよび安定化構造3300により、顔から浮き上がるためのプレナムチャンバ3200中の陽圧の効果に打ち勝つのに少なくとも充分な保持力が得られる。
【0160】
一形態において、位置決めおよび安定化構造3300により、患者インターフェース3000上への引力に打ち勝つだけの保持力が得られる。
【0161】
一形態において、位置決めおよび安定化構造3300により、患者インターフェース3000上への破壊的作用の可能性(例えば、管引き摺りまたは患者インターフェースとの不慮の干渉に起因するもの)を解消するための安全マージンとして保持力が得られる。
【0162】
本技術の一形態において、患者が睡眠時に装着されるように構成された位置決めおよび安定化構造3300が提供される。一実施例において、位置決めおよび安定化構造3300は、装置の感知される嵩または実際の嵩を低減するように、目立たない外形または断面厚さを有する。一実施例において、位置決めおよび安定化構造3300は、矩形断面を有する少なくとも1つのストラップを含む。一実施例において、位置決めおよび安定化構造3300は、少なくとも1つの平坦ストラップを含む。
【0163】
本技術の一形態において、患者が患者の頭部の後部領域を枕に載せた状態で仰臥位睡眠位置において寝る際の妨げとなるような過度に大きいまたは嵩張るサイズにならないように構成された位置決めおよび安定化構造3300が提供される。
【0164】
本技術の一形態において、患者が患者の頭部の側部領域を枕に載せた状態で側臥位睡眠位置において寝る際の妨げとなるような過度に大きいまたは嵩張るサイズにならないように構成された位置決めおよび安定化構造3300が提供される。
【0165】
本技術の一形態において、位置決めおよび安定化構造3300は、位置決めおよび安定化構造3300の前方部位と位置決めおよび安定化構造3300の後方部位との間に配置された分離部位を備える。この分離部位は、圧縮に耐えず、例えば可撓性またはぺらぺらのストラップであり得る。結合解除部は、患者が頭を枕に載せて横たわったときに結合解除部の存在により後部への力が位置決めおよび安定化構造3300に沿って伝達されてシールが妨害される事態を回避できるように、構築および配置される。
【0166】
本技術の一形態において、位置決めおよび安定化構造3300は、布地患者接触層、発泡材料内側層および布地外側層の積層物から構成されたストラップ3310を含む。一形態において、発泡材料は、湿気(例えば、汗)がストラップ3310を通過できるような多孔性である。ストラップ3310は呼吸可能であり得るため、ストラップを通じて水蒸気を送ることが可能になる。一形態において、布地外側層は、フック材料部分と係合するループ材料を含む。
【0167】
本技術の特定の形態において、位置決めおよび安定化構造3300は、伸張可能である(例えば、弾力性と共に伸張可能である)ストラップを含む。例えば、ストラップは、使用時にはピンと張った状態にされて、シール形成構造を患者の顔の一部と密着させる力を方向付けるように、構成され得、いくつかの実施例においては、他のストラップまたは他の構造との組合せで構成され得る。一実施例において、ストラップは、タイとして構成され得る。
【0168】
タイは、張力に抵抗するように設計された構造として理解され得る。使用時に、タイは、張力下にある位置決めおよび安定化構造3300の部分である。いくつかのタイは、上記するように、この張力の結果得られる弾力を付加する。タイは、シール形成構造3100を患者頭部上の治療的に有効な位置に維持するように機能し得る。
【0169】
本技術の一形態において、位置決めおよび安定化構造は第1のタイを含み、第1のタイは、使用時においてその下縁部の少なくとも一部が上を通過して患者の頭の上耳底点へ移動し、後頭骨を被覆することなく頭頂骨および/または前頭骨の一部を被覆するように、構築および配置される。第1のタイは、例えばクレードルクッション、鼻枕、鼻クッション、フルフェイスクッションまたは口腔鼻クッションを含む患者インターフェースの一部として設けられ得る。例えば、図8A図9Cに示すように、位置決めおよび安定化構造3300は、患者頭部上部上方に載置される管3350の形態の第1のタイを含む。
【0170】
鼻専用マスクまたはフルフェイスマスクに適した本技術の一形態において、位置決めおよび安定化構造3300は、第2のタイを含む。第2のタイは、使用時においてその上縁部の少なくとも一部が患者頭部の下側の下耳底点の下側を通過し、患者頭部の後頭骨を被覆するかまたは患者頭部の後頭骨の下側に載置されるように、構築および配置される。第2のタイは、例えばクレードルクッション、鼻枕、フルフェイスクッション、鼻クッションまたは口腔鼻クッションを含む患者インターフェースの一部として設けられ得る。図8A図9Cに示すように、位置決めおよび安定化構造3300は、患者頭部の後面に対向して配置されるストラップ3310の形態の第2のタイを含む。
【0171】
鼻専用マスクまたはフルフェイスマスクまたは口腔鼻マスクに適した本技術の一形態において、位置決めおよび安定化構造3300は、患者頸部の後面に対してアンカー固定されるように構成された第3のタイを含む。さらに、いくつかの形態において位置決めおよび安定化構造は、第2のタイおよび第3のタイが相違に離隔方向に移動する傾向を低減させるように第2のタイおよび第3のタイを相互接続させるように構築および配置された第4のタイを含む。
【0172】
本技術の特定の形態において、位置決めおよび安定化構造3300は、屈曲可能であり例えば非剛性であるストラップを含む。本態様の利点として、患者が睡眠時に体を横たえたときにストラップがより快適になっている点がある。図8A図9Cに示すように、位置決めおよび安定化構造3300は、屈曲可能なストラップ3310を含む。ストラップ3310は、バックストラップ(backstrap)としてみなされ得る。ストラップ3310は、十分に可撓性であるため、(使用時において張力下にある場合でも)患者頭部の後部周囲を通過して患者頭部に対して快適に配置される。
【0173】
本技術の特定の形態において、1つよりも多くの位置決めおよび安定化構造3300を含むシステムが提供される。各位置決めおよび安定化構造3300は、異なるサイズおよび/または形状範囲に対応するための保持力を提供するように構成される。例えば、システムは、小さなサイズの頭ではなく大きなサイズの頭に適しかつ大きなサイズの頭ではなく小さなサイズの別の頭に適した位置決めおよび安定化構造3300の一形態を含み得る。
【0174】
5.3.2.1 ヘッドギアチュービング
本技術のいくつかの形態において、位置決めおよび安定化構造3300は、空気回路4170の部分を形成する導管から受容された加圧空気を例えばプレナムチャンバ3200およびシール形成構造3100を通じてRPTデバイスから患者の気道へ送達させる1つ以上の管3350を含む。図8A図9Cに示す本技術の形態において、位置決めおよび安定化構造3300は、空気回路4170からシール形成構造3100へ空気を送達させる2つの管3350を含む。これらの管3350は、患者インターフェースのシール形成構造3100が患者の顔の適切な部分(例えば、鼻および/または口腔)に位置決めおよび安定配置するための患者インターフェース3000の位置決めおよび安定化構造3300の一体部分である。その結果、加圧空気流れを提供する空気回路4170の導管を、人によっては目障りになり得る患者の顔の前方以外の位置において患者インターフェースの接続ポート3600へ接続することが可能になる。一対の管3350は、(以下に述べる)いくつかの利点を有するが、いくつかの例において、位置決めおよび安定化構造3300は、患者頭部の片側上のみに載置されるように構成された単一の管3350のみを含む。ストラップまたは他の安定化コンポーネントを単一の管3350の上端とシール形成構造3100との間の患者頭部の他方側へ設けると、シール形成構造3100上の力の均衡が可能になる。
【0175】
加圧空気を空気回路4170から患者の気道へ送達させるために空気をヘッドギアチュービング3350を通じて収容および移動させることが可能であるため、位置決めおよび安定化構造3300は、可膨張性のものとして記述され得る。可膨張性の位置決めおよび安定化構造3300は、位置決めおよび安定化構造3300の全コンポーネントを膨張可能とすることを必要としないことが理解される。例えば、図8A図9Cおよび図12A図12Fに示す例において、位置決めおよび安定化構造3300は、膨張可能であるヘッドギア管材3350と、膨張不可能であるストラップ3310とを含む。
【0176】
本技術の特定の形態において、患者インターフェース3000は、患者頭部の上部、側部または後部の近隣に配置される接続ポート3600を含み得る。例えば、図8A図9Cに示す本技術の形態において、接続ポート3600は、患者頭部上部の上に配置される。本例において、患者インターフェース3000は、接続ポート3600が設けられたエルボー3610を含む。エルボー3610は、位置決めおよび安定化構造3300に対して回転可能であり得、接続ポート3600へ接続された導管の動きを位置決めおよび安定化構造3300から連結解除させる。追加的にまたは代替的に、接続ポート3600へ接続された導管は、エルボー3610に対して回転し得る。図示の例において、エルボー3610は、空気回路4170の導管を接続することが可能なスイベル型導管コネクタを含み、これにより、この導管をエルボー3610に対して長手方向軸の周囲に回転させることができる。接続ポート3600は、例えば図10Aおよび10Bに示すような流体接続開口部3390を含み得る。いくつかの例において、空気回路4170は、流体接続開口部3390へ接続し得る。エルボー3610は、流体接続開口部へまたは流体接続開口部中に受容されるリングへ回転可能に接続し得る。
【0177】
接続ポートが患者の顔の前方に配置されていない患者インターフェースの場合、導管が顔前方の患者インターフェースへ接続されている場合に目障りかつ不快と感じる患者が存在するため、有利であり得る。例えば、顔前方の患者インターフェースへ接続する導管は、特に使用時に導管が患者インターフェースから下方に延びている場合、寝具またはベッドリネンと絡まり易い場合がある。使用時において接続ポートが患者頭部の上方の近隣に配置された患者インターフェースを用いた本技術の形態によれば、患者が以下の位置のうち1つ以上において横たわるかまたは眠った場合により容易またはより快適になり得る:側方または横方向位置、仰臥位位置(すなわち、顔を上に向けた仰向けの状態)、および腹臥位位置(すなわち、顔を下向きにしたうつぶせの状態)。さらに、導管を患者インターフェース前方に接続した場合、管引き摺りとして知られる問題が悪化し得る。管引き摺りにおいては、導管から患者インターフェースに対して望ましくない牽引力が発生し得、その結果、顔から引きずり下ろされる原因となる。
【0178】
図8A図9Cおよび図12A図12Fに示す本技術の形態において、位置決めおよび安定化構造3300は、2つの管3350を含む。各管3350は、使用時に患者頭部の異なる側部上に配置され、各頬領域を通じて(患者頭部上の上耳底点の上方の)各耳の上方から患者1000の頭部の上部のエルボー3610へ延びる。この技術形態の場合、患者が横向きに寝ており、管のうち1つが圧縮されて当該管に沿ったガス流れが遮断または部分的に遮断された場合に、その他の管が開口したままであり、加圧ガスを患者に供給できるため、有利であり得る。技術の他の実施例において、患者インターフェース3000は、異なる数の管(例えば、1つの管または3つ以上の管)を含み得る。患者インターフェースが1つの管3350を有する一例において、単一の管3350は、使用時に患者頭部の片側(例えば、一方の頬領域上に)配置され、ストラップは、位置決めおよび安定化構造3300の部分を形成し、患者インターフェース3000を患者頭部上に固定することを支援するために、使用時に患者頭部の他方側(例えば、他方の領域上)に配置される。
【0179】
図8A図9Cおよび図12A図12Fに示す本技術の形態において、これら2本の管3350は、上端において相互に流体接続され、接続ポート3600へ流体接続される。一実施形態において、これら2つの管は一体形成され、他の実施形態において、これらの管は、別個のコンポーネントであり、使用時に相互接続され、例えば洗浄または保存時には接続解除され得る。別個の管が用いられる場合、これらの管は相互に間接的に接続され得、例えば、それぞれ、管3350へそれぞれ流体接続可能な2本の導管アームと、接続ポート3600として機能しかつ使用時に空気回路4170へ接続可能な第3の導管アームまたは開口部とを有するT型導管へ接続され得る。接続ポート3600は、流体接続開口部3390内に受容されたエルボー3610を2つの一体形成管3350の中心に含み得る。エルボー3610は、流体接続開口部3390中のリング中に受容され本明細書中、同文献全体を参考のため援用する、リング内において回転するように構成され得る。流体接続開口部3390を接続ポート3600そのものとしてみなしてもよい。
【0180】
これらの管3350は、エラストマー材料(例えば、シリコーン)などの半剛性材料によって形成され得る。例えば、図10Aに示すように、左側の延長不可能な管部3363から右側の延長不可能な管部3363にかけての管3350を、単一の均質の材料ピース(例えば、シリコーン)から(例えば成形により)形成することができ得る。これらの管は、自然な事前形成された形状を持ち得、管へ力が付加された場合に屈曲または移動して別の形状をとり得る。例えば、これらの管は、頭部上部と鼻または口領域との間の患者頭部の外形に似た形状の弧状または曲線状を概してとり得る。
【0181】
いくつかの例において、位置決めおよび安定化構造3300は、スリーブ3364を管3350の周囲に含み得る。例えば、図8A図8Dに示すように、スリーブ3364は、延長不可能な管部3363へ設けられる。いくつかの例において、患者インターフェース3000は、スリーブ3364を含まない場合があり得、他の例において、患者インターフェース3000は、管3350のより多くの部分または全体を被覆するスリーブ3364を含み得る。スリーブ3364は、管3350の曲線形状にフィットするように形成され得る。いくつかの例において、スリーブ3364は、滑らかな織物から形成される。カバリングが全く無い管3350と比較して、スリーブ3364は、患者の顔に対してより快適であり得る。
【0182】
その内容の全体を本明細書に包含する、米国特許第6,044,844号に記載のように、管3350は、使用時に圧壊した場合(例えば、患者の顔と枕との間において圧壊した場合)において、管を通過する呼吸可能なガスの流れを回避するために、圧壊にも耐え得る。管中の加圧ガスは、使用時の管3350の圧壊を回避するかまたは少なくとも制限するためのスプリントとして機能し得るため、圧壊に耐える管は、全ての場合において必要なわけではない。圧壊に耐える管を用いると、単一の管3350のみが存在する場合において、有利であり得る。なぜならば、使用時に単一の管が遮断されると、ガス流れが制限され、治療が停止するかまたはその有効性が低下するからである。
【0183】
本技術の特定の形態において、管3350の1つ以上の部位は、1つ以上の硬質化要素または補剛要素によって硬質化され得る。剛化要素の例を以下に挙げる:管3350のうち、他の部分よりも比較的肉厚の部分、管3350のうち、他の部分を形成する材料よりも比較的高剛性の材料から形成された部分、および管の一部の内部、外部に取り付けられたかまたは埋設された剛性部材。このような剛化要素を用いた場合、使用時における位置決めおよび安定化構造3300の機能様態の制御が支援される(例えば、管3350に力が付加された場合に管3350が変形する可能性が高い場合、管3350に力が付加された場合に管3350の形状が維持される可能性が高い場合)。このような剛化要素を管3350内のどこに配置するかを選択することにより、患者インターフェース3000の装着時における快適性の促進が支援され得、使用時におけるシール形成構造3100における良好なシール維持が支援され得る。剛化要素または補剛要素は、位置決めおよび安定化構造3300内に配置され得る。位置決めおよび安定化構造3300は、比較的高重量のシール形成構造(例えば、フルフェイスまたは口鼻クッションアセンブリ)を支持するように構成される。
【0184】
図8A図9Cおよび図12A図12Fに示す本技術の形態中の管3350の長さは、それぞれ15~30cm(例えば、それぞれ20~27cm)である。一例において、管それぞれの長さは、約26cmである。別の例において管それぞれの長さは、約23cmである。管の長さは、典型的な患者の頭部の寸法に適するように選択される(例えば、頭部の側部を下方に延びおよび患者の頬領域上に延びる概して弧状の経路(例えば、図8A図9Cまたは図12A図12Fに示すように)をたどる際に管3350の上端が管3350の下端がクレードルクッションモジュール3150(または枕クッションモジュール3160)へ接続する患者の気道への開口部の近隣の領域へ配置される頭部の上部の近隣の領域間の距離)。以下により詳細に述べるように、患者インターフェース3000は、本技術のいくつかの形態において管3350の長さを変化させることができかつ上記長さが収縮、伸長または中立状態の管へ適用され得るように、構成される。管3350の長さは、患者インターフェース3000中の他のコンポーネントの長さ(例えば、管3350の上端が接続されるT字型導管のアーム長さおよび/またはプレナムチャンバ3200のサイズ)に依存することが理解される。
【0185】
5.3.2.1.1 ヘッドギアコンポーネントの位置決め
各管3350は、患者頭部上部上の接続ポート3600からの気流を受容し、この気流を患者の気道入口においてシール形成構造へ送達させるように、構成され得る。図8A図9Cおよび図12A図12Fの例において、少なくとも1つの管3350は、患者の頬領域上および患者の耳上の接続ポート3600からシール形成構造3100間に延びる(すなわち、使用時に患者頭部の上顎領域を覆うクッションモジュールへ接続する管3350の一部と、患者頭部上の上耳底点の上方の患者頭部の領域を覆う管3350の一部との間)。1つ以上の管3350はそれぞれ、患者の蝶形骨および/または側頭骨ならびに患者の前頭骨および頭頂骨の片方または双方上にも載置され得る。接続ポート3600およびエルボー3610は、使用時において患者の頭頂骨、前頭骨またはこれらの間の接合部上に配置され得る。
【0186】
図8A図9Cおよび図12A図12Fに示す本技術の例示的形態は、管3350を有する。これらの管3350は、患者頭部の上部周囲において、頭部上部上のエルボー3610へ接続する管3350の上端から、矢状面の湾曲が相対的に少ない状態でストラップ3310が管3350へ接続する地点へ曲線状に延びる。後方ヘッドギアストラップ3310が管3350へ接続する地点と、鼻下側の患者の気道の前方のクレードルクッションモジュール3150と接続する管3350の下端との間において、管3350は、患者の耳と眼との間において頬領域にわたって前方に曲線状に延びる。管3350のこの部分の湾曲部の半径は、60~100mmの範囲内(例えば、70~90mm(例えば、80mm))であり得る。管3350の下端と、後方ヘッドギアストラップ3310が管3350へ接続する管3350の部分とは、65~90°の範囲(例えば、75~80°)の角度に対し得る。ストラップ3310の上方の管3350の部位中に存在する実際の曲率と、ストラップ3310の下方の管3350の部位中に存在する実際の曲率とは、患者セットアップに依存し、実際は、患者の頭部の形状およびサイズならびに患者の選好に応じて異なる。
【0187】
患者インターフェース3000を個々の患者にフィットさせる程度は、管3350の長さの変更によって変更することができ、代替的にまたは追加的には、患者頭部上の患者インターフェース3000の位置、または患者の頭部上のそれらの部分の位置の変更によって変更することができる。例えば、位置決めおよび安定化構造3300の部分を患者頭部上の後方方向または前方方向に移動させることにより、特定の長さの管3350を有する患者インターフェース3000を患者によりフィットするように調節することができる。例えば、患者の頭部上の管3350の接合部をさらに前方(すなわち、前方方向)に移動させると、特定の長さの管3350を有する患者インターフェース3000を、管3350の接合部をさらに後方に(すなわち、後方方向)に配置した場合よりもより大きな頭部にフィットさせることが可能になる。ほとんどの患者の場合、管3350の接合部が前方に配置された場合、管3350の上部は、管3350の接合部が後方に配置された場合よりも、患者の頭部のより小さな部分上に配置される。
【0188】
本技術の特定の形態において、患者インターフェース3000は、接続ポート3600を患者頭部の上部にわたる一定範囲の位置に配置することが可能なように、構成され、これにより、患者インターフェース3000を個々の患者の快適性またはフィット感に適した位置に配置することが可能になる。患者頭部上の接続ポート3600の位置と無関係にシール形成構造3100が患者の顔との有効なシールを形成するようにこれを達成することが可能な1つの方法として、患者インターフェース3000の上部の動きを患者インターフェース3000の下部から結合解除させる方法がある。このような分離は、例えばヘッドギア管3350の部品を患者インターフェース3000の他の部品に相対して容易に移動または撓むことを可能にする機構を用いて、達成することができる。以下、このような機構について説明する。
【0189】
本技術の特定の形態において、患者インターフェース3000は、接続ポート3600が患者頭部の上点に概ね配置されるように、構成される。接続ポート3600は、矢状面内に配置され得、冠状面に平行な面内の上耳底点と共にアラインされ得る。上耳底点を図2D中に示す。以下に述べるように、本技術のいくつかの形態において、位置決めおよび安定化構造3300は、異なる位置で装着されるように構成され、すなわち、接続ポート3600は、上耳底点から前方20mmまたは後方20mm周囲までの矢状面内の患者頭部の上部の近隣に配置され得る。
【0190】
本技術のいくつかの例において、接続ポート3600は、矢状面内に配置され得、前頭骨と頭頂骨との間において接合部と整列される。接続ポート3600は、おおよそ冠状縫合および矢状縫合の接合部上に位置決めされ得る。この構成において、管3350の上部を冠状縫合の一部上かつ/または冠状縫合の一部に沿って配置することができる。しかし、上記したように、患者は、患者インターフェース3000のフィット感の調節のために、接続ポート3600前方または後方に移動させることができる。
【0191】
管3350を最上点の若干前方(例えば、冠状縫合またはその近隣)において患者の頭部上に配置することによる利点として、使用時において管3350が後方向に乗り上げる危険性を低減できる点がある。多数の患者において、冠状縫合が矢状縫合と出会う位置において、凹部または「ディボット」が存在し得る。管3350がこのディボット内に配置されている場合、位置決めおよび安定化構造3300は、特に安定し得る。そのため、いくつかの例において、管3350は、曲線状になって冠状縫合上に配置されるような適切な曲率および/または能力と共に構成される。
【0192】
上記したように、本技術のいくつかの例において、患者インターフェース3000は、クレードルクッションの形態のシール形成構造3100を含む。シール形成構造3100は、概して鼻の下側に配置され、鼻の下周囲部をシールする。位置決めおよび安定化構造3300は、シール形成構造3100を鼻下側の患者の顔中に(後および上方向(例えば、後上方の方向)を有するシーリング力ベクトルにより)牽引するような構造および配置にされ得る。後上方の方向へのシーリング力ベクトルにより、患者の鼻の下周囲部および患者の顔の前方面双方に対して患者の鼻および上唇のいずれかの側部上において良好にシールを形成するシール形成構造3100が促進され得る。
【0193】
いくつかの例において、使用時において、位置決めおよび安定化構造3300は、およそ35°の角度において患者のフランクフルト水平に対して後上方の方向を有するシーリング力ベクトルを付加し得る。管3350の上部(例えば、ストラップ3310の上方の管3350の部位)は、垂直方向に方向付けられ得、後方ヘッドギアストラップ3310は、およそ35°の角度において患者のフランクフルト水平に対して管3350から後下方方向に延び得る。この特定のセットアップにおいて、ストラップ3310と、(ストラップ3310が管3350へ接続される)管3350の上部との間において、125°の角度が形成される。
【0194】
図8Dは、患者が患者インターフェース3000を着用している様子の側面図である。ストラップ3310が管3350へ接続される位置の近隣において患者それぞれの耳の上方の点3308上に作用する特定の力を図8D中に示す。管3350の上部から、ヘッドギア張力に起因する力3301が点3308へ付加され得る。力3301は、実質的に垂直方向を有し得る。(例えば、シール形成構造3100と後方ヘッドギアストラップ3310への接続との間の)管3350の下部から、力3303が(管3350の上部から付加される垂直力3301に対して前下方向においておよそ125°の角度において)この点3308上へ付加され得る。シール形成構造3100を鼻の下側の患者の顔内へ牽引させるシーリング力に対し、力3303は、大きさが等しくかつ方向が反対であり得る。力の均衡をとるために、管3350の上部から付加される垂直力3301に対し、ストラップ3310からの力3302が後下方方向においておよそ125°の角度において付加される。そのため、患者の耳の上方の各管3350に沿って点3308へ付加される前下方力3303と、ストラップ3310から付加される後下方力3302との間の角度はおよそ110°になる。
【0195】
位置決めおよび安定化構造3300をクレードルクッションと共に用いる場合、多くの患者について、35°のシーリング力ベクトルが最適と考えられ得る。さらに、上記した位置決めおよび安定化構造3300の各部から付加される力の方向は、理想的なものとみなされ得る。しかし、実際は、ヘッドギアの各部から付加される力の実際の方向は、各患者の特定の解剖学的構造および選好に対応するために異なることが理解される。
【0196】
例えば、多くの例において、位置決めおよび安定化構造3300は、管3350の上部が最上点の若干前方において患者頭部上に配置されるように、構成され得る。その結果、いくつかの患者の場合、管3350は、頭蓋骨の冠状縫合またはその近隣にある若干の凹部内に配置されるように、垂直方向に(例えば、冠状面に)整列されるのではなく若干前方に角度を付けて配置される場合がある。そのような例において、ストラップ3310における張力を患者が調節して、力のバランスをとり、最適なシーリング力ベクトルを達成することができる。
【0197】
いくつかの例において、位置決めおよび安定化構造3300は、シール形成構造3100上に後上方の方向において上唇と鼻柱との間に形成される角度(例えば、鼻唇角度を形成する表面)を二等分する角度において力を付加するように、構成され得る。
【0198】
本技術の特定の例において、管3350は、患者の耳の上方および近隣の位置においてストラップ3310を受容するように構成される。患者頭部に対して高すぎる位置においてストラップ3310が管3350へ接続されると、ストラップ3310は、患者の頭部後部上に乗り上げる傾向になり得る。さらに、ストラップ3310は、ヘッドギア管3350の上部に対して大きすぎる角度を形成する場合もあり、その結果、患者がストラップ3310を過度に締める必要性に繋がり得、その場合、位置決めおよび安定化構造3300中の張力が過度になり得、ストラップ3310が患者の頭部後部に乗り上げる可能性も高くなる。そのため、ストラップ3310と管3350との間の接続をできるだけ低くしつつ患者の耳上部から十分に間隔を空けて配置すると、ストラップ3310の締結時において管3350が引っ張られて患者の耳と接触することが無くなるため、有利である。
【0199】
5.3.2.1.2 ヘッドギア管の流体接続
2本の管3350は、その下端においてプレナムチャンバ3200へ流体接続される。図8A図9Cおよび図12A図12Fの例において、管3350により、クレードルクッションモジュール3150およびシール形成構造3100との流体接続が形成される。本技術の特定の形態において、管3350と、クレードルクッションモジュール3150との間の接続は、患者が2つの剛性コンポーネントを信頼性の高い様態で容易に接続することができるような2つの剛性コンポーネントの接続により、達成される。「確認可能なクリック音」や類似の音による触覚フィードバックを用いると、患者によって使用が容易であり得、また、管が正しくクレードルクッションモジュール3150へ接続されたことを患者が知ることもできる。一形態において、管3350はシリコーンから形成され、シリコーン管3350のそれぞれの下端は、例えばポリプロピレン、ポリカーボネート、ナイロンなどから形成された剛性コネクタへオーバーモールドされる。剛性コネクタは、クレードルクッションモジュール3150上の雌噛み合いフィーチャへ接続するように構成された雄噛み合いフィーチャを含み得る。あるいは、剛性コネクタは、クレードルクッションモジュール3150上の雄噛み合いフィーチャへ接続するように構成された雌噛み合いフィーチャを含み得る。管3350をクレードルクッションモジュール3150へ接続させる様態は、管3350と鼻クッションモジュール3150または別のプレナムチャンバ3200またはシール形成構造3100との間の接続にも適用可能であり得る。
【0200】
別の実施形態において、圧縮シールは、各管3350をクレードルクッションモジュール3150へ接続させるために用いられる。例えば、弾性の可撓性(例えば、シリコーン)管3350を剛性コネクタ無しで用いる場合、管3350を若干圧縮して直径を低減させて、プレナムチャンバ3200中のポート中に押し込むことができるようにする必要があり得、シリコーンの固有の弾性により管3350を外方に押圧して、管3350をポート中に気密にシールする。管3350とポートとの間の係合が剛性対剛性型の係合である場合、周辺シーリングフランジなどの圧力活性シールが用いられ得る。加圧ガスが管3350を通じて供給されると、シーリングフランジは、管と、プレナムチャンバ3200のポートの内周面との間の接合に対して推進されて、両者間のシールを促進させる。ポートが柔軟であり、剛性コネクタが管3350へ提供されると、上記したような圧力活性シールは、接続が気密であることを確認するためにも用いられ得る。別の例において、各管3350は、弾性的に可撓性(例えば、シリコーン)材料から形成され、剛性コネクタへオーバーモールドされるため、この弾性的に可撓性材料が剛性コネクタ上にフィットされかつこの弾性的に可撓性材料自身がガスケットとして機能して、管3350と気流通路周囲のクレードルクッションモジュール3150との接続をクレードルクッションモジュール3150のプレナムチャンバ3200中への管3350からシールすることができる。
【0201】
本技術のいくつかの形態において、同様の接続機構が、接続ポート3600を規定するかまたは接続ポート3600へ接続可能なT字型の上部材により管3350へ流体接続する際に用いられ得る。一実施形態において、接続ポート3600において接続されたスイベルエルボーは回転可能であるため、この回転により、管3350の挿入先であるポートのサイズを増減させるポートサイズ調節機構を駆動させ、圧縮力の増減を通じて管のフィットを向上させ、意図しない漏洩を低減させる。
【0202】
5.3.2.1.3 延長可能な蛇腹構造
患者インターフェース3000は、1つ以上の延長可能な管部を含み得る。いくつかの例において、延長可能な管部は、延長可能な蛇腹構造3362を含む。患者インターフェース3000は、位置決めおよび安定化構造3300を含み得る。位置決めおよび安定化構造3300は、延長可能な蛇腹構造3362を有する管壁3352を含む少なくとも1つのガス送達管を含む。例えば、図8A図9Cおよび図12A図12Fに示す患者インターフェース3000は、管3350を含み、管3350の上部には、それぞれが延長可能な蛇腹構造3362の形態をした延長可能な管部が設けられる。
【0203】
各延長可能な蛇腹構造3362は、管3350の延長可能部を形成するために、1つ以上の折部、プリーツ、コルゲーションまたはベローズを有する管3350の一部を含み得る。図8A図9Cに示す例において、延長可能な蛇腹構造3362はそれぞれ、延長可能な蛇腹構造の形態をとる。延長可能な蛇腹構造3362は、エルボー3610および接続ポート3600によって分離される。延長可能な蛇腹構造3362は、長さが変更可能である。詳細には、各延長可能な蛇腹構造3362は、各管3350の長さを変化させるために、伸長または収縮することが可能である。
【0204】
いくつかの例において、各ガス送達管3350は、延長可能な蛇腹構造3362において、幅および高さを有する断面を含み得る。上記幅は、上記高さよりも大きく、使用時において前方向-後方向と実質的に整列される。例えば、図8A図8Cに示す患者インターフェース3000は、各々が断面幅が断面高さよりも大きな延長可能な蛇腹構造3362を含む。上記幅は、図示の患者1000の前方向および後方向と整列された寸法である。本例において、上記幅は、上記高さよりもおよそ2倍大きい。すなわち、本例において、上記幅は、延長可能な蛇腹構造3362の高さに沿って低減する。各延長可能な蛇腹構造3362の上端または中間端において、延長可能な蛇腹構造3362を形成する管壁の幅は、比較的大きく、内部においてスイベルエルボー3610が管3350中に受容されるリングと同様のサイズである。各延長可能な蛇腹構造3362の下縁または側縁において、管壁の幅は、比較的小さく、延長不可能な管部3363の幅と同様のサイズである。エルボー3610への接続のより大きな管サイズと延長不可能な管部3363のより小さな管サイズとの間の幅が変化する延長可能な蛇腹構造3362により、滑らかかつ連続した管3350が得られるため、快適性が増しかつ/または美観も増す(その結果、患者の治療へのコンプライアンスが向上し得る)。
【0205】
5.3.2.1.3.1 可屈曲性
本技術のいくつかの例において、位置決めおよび安定化構造3300の一部は、いくつかの方向またはその周囲あるいはいくつかの軸またはその周囲における屈曲により耐えるように、構成される。
【0206】
例えば、図8A図9Cに示す位置決めおよび安定化構造3300の各管3350の上部は、直交方向よりも特定の方向においてより屈曲可能であり得る。位置決めおよび安定化構造3300の各ガス送達管3350は、使用時において(図8A図8Cに示すように)患者頭部の上領域上に載置されるように構成される上側管部3304を含み得る。図示の例において、上側管部3304は、延長可能な蛇腹構造3362を含む。本技術の他の例において、上側管部3304は、別の延長可能な管構造(例えば、PCT特許公開第WO2017/124155に開示される選択肢のうちの1つ)本明細書中、同文献それぞれの内容全体を参考のため援用する)を含み得るか、または延長不可能であり得る。
【0207】
上側管部3304は、第1の端部3305および第2の端部3306を含み得る。本例において、第1の端部3305は、およそ患者の頭部の矢状面(例えば、患者の頭部のおよそ上部および中心)において、患者の頭部の上部上に載置または配置されるように構成される。第2の端部3306は、第1の端部3305から患者の頭部上に横手方向(例えば、患者の頭部側部のより近く)に載置されるように、構成される。いくつかの例において、上側管部3304がそれほど長尺ではない場合、第2の端部3306は、第1の端部3305に対して横方向に配置され得るが、特に第1の端部3305の下側には配置されない場合がある。他の例において、上側管部3304がより長尺である場合、第2の端部3306は、第1の端部3305に対して横方向および下方双方において配置され得る。図13は、位置決めおよび安定化構造3300の別の例の一部を示す。図8A図9Cおよび図13の位置決めおよび安定化構造は、複数の軸周囲において屈曲することが可能である。例えば、図13中の位置決めおよび安定化構造3300は、患者頭部上を下方にドレープ状に延びることができ、前方向および後方向において曲線状になることも可能である。図13に示すように、上側管部3304は、2本の軸周囲において屈曲される。
【0208】
上側管部3304は、第1の端部3305と第2の端部3306との間の1つ以上の硬質部も含み得る。これらの硬質部(単数または複数)は、第1の端部3305と第2の端部3306との間の相対運動に対する抵抗が上方向および/または下方向においてよりも前方向および/または後方向においてより高くなるように、構成され得る。
【0209】
患者が位置決めおよび安定化構造3300を着用すると、垂直方向における屈曲に対する上側管部3304の抵抗が比較的低くなり得るため、第2の端部3306は、第1の端部3305に対して下方に移動することができる。その結果、上側管部3304が患者頭部の上部上から患者頭部の側部にかけて下方に「ドレープ状に」延びることが可能になり、有利である。比較的高い可屈曲性および上方向/下方向は、上側管部3304を患者頭部の曲率に適合させることが可能になる点において有利であり得る。
【0210】
さらに、上側管部3304は、水平方向における屈曲に対して比較的高い抵抗を有し得るため、第1の端部3305が第2の端部3306に対して前方および/または後方に不意に移動することが無くなる。その結果、上側管部3304を患者頭部上方の所望の位置に保持することが可能になり、有利である。上側管部3304および特に接続ポート3600は、前方向および/または後方向への屈曲に対する抵抗がより低いため、使用時において患者頭部上部に沿って前方または後方に乗り上げる可能性がより低くなり得る。上側管部3304の前方または後方の動きに対するこのような抵抗があると、空気回路4170から患者の頭頂部への接続が有る場合に患者インターフェース3000にとって特に有利である(すなわち、管抗力が、上側管部3304上に直接作用し得る)。
【0211】
いくつかの例において、上側管部3304は、屈曲への有利な抵抗を固有に提供する形状を含み得る。例えば、上側管部3304は、矩形の断面を含み得、この断面の平行な長辺の1つが、患者の頭部表面に載置されるように構成される。矩形断面の長辺により、長辺に対して平行方向において(例えば、使用時において前方向および/または後方向において)上側管部の屈曲に対して比較的高い抵抗が得られる。しかし、矩形/台形断面の短辺からは、上側管部3304の屈曲および短辺に対して平行方向(例えば、使用時における下方向および/または上方向)においてそのような高い抵抗は得られない。上側管部3304の断面は、完璧な矩形ではない場合があり得ることが理解される。例えば、角部および/または短辺を曲線状にすることができる。
【0212】
硬質部は、管3350の管壁によって形成されるかまたは管3350の管壁へ提供される1つ以上の剛化構造により、形成され得る。図8A図10Jに示す例において、硬質部は、管壁内の折り目によって形成された隣接する隆起部の分離に耐えるように構成された複数の隆起部接続部3370により、形成される。詳細には、硬質部は、上側管部3304の側部および上側管部3304の後側双方に沿った一連の隆起部接続部3370によって形成される。管3350の前側および後側双方上に硬質部を含む管3350は、管3350の前側および後側双方への屈曲に対してより高い抵抗を有し得るため、有利である。しかし、いくつかの例において、剛直性に応じて硬質部を片側のみに設けた方が双方向への屈曲に対する抵抗を十分にすることが可能になり得るため、硬質部は、管3350の前側または後側のみへ設けられる。
【0213】
いくつかの例において、管3350の硬質部は、上側管部3304の延長可能部へ設けられ得る。図8A図10Jに示す例において、延長可能部は、以下にさらに詳述するように、管3350の管壁中に形成された延長可能な蛇腹構造3362と、複数の隆起部3372および複数の溝部3373を含む延長可能な蛇腹構造3362とを含む。本例において、硬質部は、管壁中に形成された複数の隆起部接続部3370を含み、複数の隆起部接続部3370はそれぞれ、一対の隣接する隆起部3372へ接続する。以下、隆起部接続部3370の硬質化効果について、さらに詳述する。
【0214】
本技術の他の例において、患者インターフェース3000は、隆起部接続部以外の構造によって形成された硬質部を有する管3350を含み得る。いくつかの例において、管3350の部位(例えば、前部および/または後部)は、1つ以上の剛化要素によって硬質化された硬質部を含み得る。管3350は、管壁内に埋設された管3350よりも剛直性が高い1つ以上の剛性付与コンポーネントにより、剛性付与され得る。例えば、管壁は、管壁部よりも硬質の材料から形成された細長の棒またはロッドへオーバーモールドされ得る。他の例において、管壁の硬質部は、管壁のジオメトリのさらなる特徴により得られ得る。一例において、管壁は、管3350の前側および/または後側においてより大きな材料厚さを含み得る。別の例において、管壁は、管3350の硬質部においてより小さな溝部深さ(または隆起部高さ)を含み得る。
【0215】
5.3.2.1.3.2 隆起部および溝部
各延長可能な管部を形成する延長可能な蛇腹構造3362は、図10D図10Jに示すように、複数の隆起部3372および複数の溝部3373を含む。隆起部3372および溝部3373を各管3350の壁内に交互に形成して、蛇腹構造を形成する。交互の一連の隆起部および溝部は、溝部が各一対の隆起部間に設けられかつ隆起部が各一対の溝部(例えば、隆起部、溝部、隆起部、溝部)間に設けられる一連のものを指すものとして、理解される。
【0216】
交互の隆起部3372および溝部3373の機能は、個別に折り畳むかまたは展開することができるしあるいは協働して延長可能な蛇腹構造3362およびよって各管3350を短尺化または長尺化させることもできるなどである。大きな溝部深さ(または隆起部高さ)により、より延長可能な管3350が得られ得る。管3350へ張力が付加されると、延長可能な蛇腹構造3362の隆起部3372および溝部3373は、相互に離隔方向に引き離されて、その結果管壁が直線状になり、管3350が延長される。本例において、延長可能な蛇腹構造3362は、元々の(例えば、非伸長の)長さへ付勢される。ヘッドギアの張力が解放されると、隆起部3372および溝部3373が付勢されて、各延長可能な蛇腹構造3362および管3350が元々の長さを有する元々の構成へ戻る。
【0217】
隆起部3372および溝部3373により、長さの変更が促進されるだけでなく、各管3350の延長可能な蛇腹構造3362の形状の変化も促進され得る。本技術のいくつかの例において、第1の一連の交互の隆起部3372および溝部3373が、延長可能な蛇腹構造3362内の管3350の第1の側部(例えば、患者接触側)へ設けられ、第2の一連の交互の隆起部3372および溝部3373が、管3350の第2の反対側(例えば、非患者接触側)へ設けられる。隆起部3372および溝部3373は、管3350の異なる側部上において異なる度だけ相互に移動することが可能であるため、延長可能な蛇腹構造3362により、管3350の屈曲が促進され得る。例えば、管3350の第1の側部上において、隆起部3372および溝部3373が接触し得る一方、管3350の第2の側部上において、隆起部3372および溝部3373は膨張し得るため、その結果、管3350は延長可能な蛇腹構造3362内において屈曲する。あるいは、第1の側部および第2の側部双方上の隆起部3372および溝部3373は使用時に膨張し得る一方、第1の側部上の隆起部3372および溝部3373は若干しか膨張し得ないため、管3350は、第1の側部の方向において屈曲する(例えば、曲線状になる)ことができ、例えば長さを伸長させつつ患者頭部に適合または患者頭部を包囲(例えば、ドレープ状に被覆する)ことができる。
【0218】
いくつかの例において、第1の交互の一連の隆起部3372および溝部3373は、第2の交互の一連の隆起部3372および溝部3373よりも、引張り剛性をより低くすることができ得る(例えば、単位長さの変更の達成に必要な力を低くすることができ得る)。延長可能な蛇腹構造3362の非患者接触側の引張り剛性が低いため、管3350のアウトボード側を伸長させて延長可能な蛇腹構造3362中の管3350のインボード側よりも長い円弧長さを被覆することにより、使用時における管3350における屈曲/曲率を有利に促進することが可能になり得る。第1および第2の交互の一連の隆起部3372および溝部3373双方の引張り剛性は相互に異なり得るものの、延長可能な蛇腹構造3362の所望の全体的な引張り剛性を達成するように、それぞれの引張り剛性を選択することができる。
【0219】
隆起部3372および溝部3373はそれぞれ、管3350の長手方向軸の大部分(例えば、管3350の側部の全体またはほとんど全体)の周囲において管壁の一部に沿って形成され得る。その結果、延長可能な蛇腹構造3362を複数の軸周囲において屈曲させることが可能になり得る。図10H図10Jおよび図13に示すように、本技術の例による延長可能な蛇腹構造3362により、管3350を複数の軸において得ることが可能になり得る。図10Hおよび図10Iにおいて、延長可能な蛇腹構造3362が(例えば、患者頭部上にドレープ状に広がるように)上方向-下方向において屈曲する様子が図示され、図10Jにおいて、延長可能な蛇腹構造3362が前方向-後方向において(例えば、管3350を異なる位置において患者頭部上部上に配置できるように)屈曲する様子が図示され、図13において、延長可能な蛇腹構造10Jが上-下方向および前方向-後方向双方において同時に屈曲する様子が図示される。
【0220】
いくつかの例において、隆起部3372および溝部3373はそれぞれ、実質的に直線状である。他の例において、隆起部3372および/または溝部3373は、1つ以上の弓状部を含み得る。
【0221】
図10Dに示すように、各隆起部3372は、中央の曲線状の隆起部位3374を含む。すなわち、各隆起部3372は、高精度部をその中心に含む。しかし、各隆起部3372の端部において、直線状隆起部位3375が設けられる。そのため、隆起部3372はそれぞれ、隆起部3372の反対端部に設けられた一対の直線状隆起部位3375を含む。
【0222】
同様に、各溝部3373は、曲線状の溝部位3376を各溝部の中央に含む。そのため、各溝部3373の中心は高精度となる。さらに、各溝部3373の端部において、直線状溝部位3377が設けられる。溝部3373はそれぞれ、溝部3373の反対端部に設けられた一対の直線状溝部位3377を含む。曲線状の溝部位3376はそれぞれ、一対の隣接する隆起部3372の曲率(詳細には、曲線状の隆起部位3374の曲率)と整合するかまたは一対の隣接する隆起部3372の曲率(詳細には、曲線状の隆起部位3374の曲率)によって規定される曲率を含み得る。
【0223】
隆起部接続部3370はそれぞれ、一対の隆起部3372の直線状隆起部位3375において各隣接する対の隆起部3372へ接続する。直線状溝部位3377はそれぞれ、(各直線状溝部位3377の場合と同様に、管3350の上側または下側にあるかに応じて)いずれかの側部の隣接する直線状隆起部位3375間において直線状溝部位3377の上方または下方の管3350および隆起部接続部3370の長さに沿って規定され得る。
【0224】
延長可能な蛇腹構造3362は、隆起部3372および溝部3373をガス送達管3350の外部に含む一方、延長可能な蛇腹構造3362を形成する折り目によっても、(例えば、波状形状(例えば、正弦状形状、方形波他の波形)を管壁中に形成する折り目によって)隆起部および溝部がガス送達管3350の内部に形成され得る。図10Bは、管壁内に形成された特定の波状形状を示す。図10Bに示すように、延長可能な蛇腹構造3362は、内部隆起部3382および内部溝部3383を形成する折り目を含む。詳細には、管壁内の折り目により、管3350の内部において、第1の交互の一連の内部隆起部3382aおよび内部溝部3383aが管3350の非患者接触側に沿って形成される。さらに、これらの折り目により、第2の交互の一連の内部隆起部3382bおよび内部溝部3383bが管3350の患者接触側に沿って形成される。
【0225】
第1の交互の一連のものの各内部溝部3383aは、第2の交互の一連のものの各内部溝部3383bの反対側において管3350の内部にわたって設けられ得、複数の対向する溝部対を形成する。すなわち、管3350の非患者接触側上の各内部溝部3383aを、患者接触側の反対側の内部溝部3383bと対にすることができ得る。図10Bに示すように、各対向する溝部対は、第1の内部溝部3383aおよび第2の内部溝部3383bを含む。本例において、第1の内部溝部3383aの溝部深さは、第2の内部溝部3383bよりも大きい。各対向する溝部対において第1の内部溝部3383aの溝部深さをより大きくすることにより、第1の交互の一連の隆起部および溝部の引張り剛性は、第2の交互の一連のものよりも低くなる。本技術の他の例において、第1の交互の一連のものを形成する隆起部および溝部の比較的低い剛直性は、第2の交互の一連の隆起部および溝部の硬質化により、可能になり得る。一例において、(以下に別個に記載の)隆起部接続部3370は、隣接する隆起部の対へ接続するように、管壁へ設けられる。別の例において、第2の交互の一連の隆起部および溝部は、第1の交互の一連ものよりも硬質の材料(例えば、剛直性がより高い異なる材料または(シリコーンから形成された管の場合は)デュロメータがより高いシリコーンの領域)によって形成される。さらなる例において、第2の交互の一連の隆起部および溝部は、剛化コンポーネントにより硬質化され得る。
【0226】
図示の例において、管3350の管壁は、各対向する溝部対の第2の内部溝部3383bのベースにおける材料厚さが各溝部対の第1の内部溝部3383aのベースにおける材料厚さよりも大きい。溝部対それぞれの第2の内部溝部3383bの基盤を形成する材料厚さが大きいほど、第2の内部溝部3383bの溝部深さが小さくなる。溝部深さが小さくなると、延長可能な蛇腹構造3362の(第2の交互の一連の隆起部および溝部を有する側の)伸長可能性が低下する。
【0227】
図10Bに示すように、第2の交互の一連のものの各内部溝部3383bのベースにおける管壁の材料厚さは、管3350の長さに沿って接続ポート3600の近隣の第1の端部から第2の端部にかけて小さくなる。さらに、第1の交互の一連のものの各内部溝部3383aのベースにおける管壁の材料厚さは、管3350の長さに沿って実質的に一定である。第1のおよび第2の交互の一連の内部隆起部3382および内部溝部3383の内部溝部3383aおよび3383bの溝部深さは、ガス送達管3350の長さに沿って接続ポート3600に隣接する第1の端部から第2の端部にかけて低下する。溝部深さが管3350の両側において延長可能な蛇腹構造3362の長さに沿って低下すると、より大きな接続ポート3600とより小さな延長不可能な管部3363との間の管3350のサイズ変更が促進される。溝部深さは、第1の端部においてよりも第2の端部において概して小さいものの、各対向する溝部対について、延長可能な蛇腹構造3362の第2の患者接触側の第2の内部溝部3383bの溝部深さは、第1の非患者接触側の反対側の第1の内部溝部3383aの溝部深さよりも小さい。
【0228】
本例において、各対向する溝部対の第1の内部溝部3383aは、各対向する溝部対の第2の内部溝部3383bへ非患者接触側と患者接触側との間の管3350の側部において接合される。すなわち、管3350は、管壁の内部周囲までずっと溝状にされる。そのため、各対向する溝部対の第1の内部溝部3383aおよび第2の内部溝部3383bは連続する。同様に、第1の交互の一連の内部隆起部3382aおよび内部溝部3383aの各内部隆起部3382aは、第2の交互の一連内部隆起部3382bおよび内部溝部3383bの反対側の内部隆起部3382bと連続する。
【0229】
5.3.2.1.3.3 隆起部接続部
図10D図10Jに示すように、延長可能な蛇腹構造3362は、ガス送達管3350の管壁へ設けられた複数の隆起部接続部3370も含む。隆起部接続部3370はそれぞれ、一対の隣接する隆起部3372へ接続する。隆起部接続部3370はそれぞれ、管壁の一体形成された部位を含み得る。各隆起部接続部3370は、管壁中へ形成され得る。各隆起部接続部3370は、2つ以上の隣接する隆起部3372へ接続し、隆起部3372の分離に耐えるように構成される。隆起部接続部3370は、隆起部3372の分離は回避できないが、延長可能な蛇腹構造3362の剛直性を増大させ得る。
【0230】
隆起部接続部3370の1つの機能として、延長可能な蛇腹構造3362の伸長能力を低減させることがある。延長可能な蛇腹構造3362は、伸長するものとして意図され、長さ延長可能な管3350に関連する利点もあるものの、延長可能な管3350の延長可能性が過度になると、患者にとって快適かつ確実な使用が困難になり得る。そのため、隆起部接続部3370は、延長可能な蛇腹構造3362の長さ伸長能力は抑制するが、伸長そのものを妨げることはしない。図示の例において、隆起部接続部3370は、隆起部3372および溝部3373と共に、延長可能な蛇腹構造3362を形成する。延長可能な蛇腹構造3362により、管3350の長さまでの十分な伸長が促進されて、位置決めおよび安定化構造3300が(十分な張力およびシーリング力を達成できないほど可撓性になること無く)一定範囲の患者頭部サイズに適合する能力が向上される。
【0231】
延長可能な蛇腹構造3362の各一対の隣接する隆起部3372は、少なくとも1つの隆起部接続部3370によって接続され得る。代替的にまたは追加的に、一対以上の隣接する隆起部3372は、2つの隆起部接続部3370により接続され得る。図10D図10Jに示すように、延長可能な蛇腹構造3362の各一対の隣接する隆起部3372は、2つの隆起部接続部3370によって接続される。隆起部接続部3370はそれぞれ、ガス送達管3350の下側(例えば、患者接触側)とガス送達管3350の上側(例えば、上方および/または外方を向く側)との間において中心において間隔を空けて配置され得る。
【0232】
隆起部接続部3370の別の機能として、延長可能な蛇腹構造3362の硬質化を局所的に行うことを可能にする点がある。延長可能な蛇腹構造3362の硬質化を局所的に行うと、1つの軸周囲において容易に屈曲できかつ異なる軸周囲における屈曲に対して特定の抵抗を有することを意図するヘッドギア管3350にとって有利であり得る。
【0233】
いくつかの例において、管3350の他方側よりも屈曲しないように構成された管3350の一方側上の隆起部3372と溝部3373との間において、隆起部接続部3370が設けられる。1つ以上の隆起部接続部3370は、ガス送達管3350の前方を向く側上に配置され得る。代替的にまたは追加的に、1つ以上の隆起部接続部3370は、ガス送達管3350の後方を向く側上に配置され得る。
【0234】
図示の例において、図10D図10Jに示すように、隆起部接続部3370は、延長可能な蛇腹構造3362の前側および後側の隆起部3372間において、位置決めおよび安定化構造3300へ設けられる。すなわち、各一対の隣接する隆起部3372は、ガス送達管3350の前方を向く側に配置された隆起部接続部3370により接続される。さらに、各一対の隣接する隆起部3372は、ガス送達管3350の後方を向く側に配置された隆起部接続部3370により接続される。
【0235】
本例において、隆起部接続部3370は前側および後側に設けられるため、隆起部接続部3370から、前方向および後方向に屈曲する延長可能な蛇腹構造3362に対し、(上方向および下方向における屈曲よりも)より大きな抵抗が提供される。このようにすると有利である理由として、延長可能な蛇腹構造3362が屈曲して患者頭部の上面および側面にフィットすることができる能力が維持される点がある。このような屈曲能力により、管3350は、患者頭部上に下方にドレープ状に延びて、快適にフィットすることが可能になる。一方、延長可能な蛇腹構造3362が前方向および後方向に屈曲する能力が低下すると、位置決めおよび安定化構造3300の最上部が使用時において前方または後方に移動するかまたは乗り上げる傾向が低下し得、その場合、患者インターフェース3000の安定性に妥協が生じ得る。
【0236】
隆起部接続部3370を設けることによる利点として、(延長可能な管部が屈曲することが有利な特定の軸周囲において延長可能な蛇腹構造3362が屈曲する能力を過度に妥協させること無く)延長可能な蛇腹構造3362の伸長可能性が制限される点がある。
【0237】
本技術のいくつかの例において、隆起部接続部3370によって提供される別の機能として、延長可能な蛇腹構造3362の捩れに対する抵抗が高くなる点がある。接続ポート3600が延長可能な蛇腹構造3362間に設けられるため、いくつかの状況における管抗力が、延長可能な蛇腹構造3362の捩れを誘発させるような様態で管3350に作用する可能性がある。管3350は目立たない形状(例えば、ほぼ矩形の断面)であるため、捩れに対する抵抗が得られ得るが、隆起部接続部3370からも、さらなる捻り抵抗が有利に得られる。隆起部接続部3370により、延長可能な蛇腹構造3362の前側および後側は硬質化され得、管3350の捩れの可能性を低下させる硬質化部として機能する。
【0238】
本技術のいくつかの例において、延長可能な蛇腹構造3362の溝部3373は、ガス送達管3350の外面に対する窪みとして形成され得る。他の例において、延長可能な蛇腹構造3362の隆起部3372は、管壁の外方を向く表面に対して隆起状にされ得、溝部3373は、隆起状隆起部3372間の空間によって形成され得る。図10D図10Jに示すように、溝部3373は、管3350の外面に対する窪みとして形成される。溝部3373の凹部形状の起点となる管3350の外面は、延長不可能な管部3363の外面と連続し得る。溝部3373を管3350の外面に対する窪みとして形成することによる利点として、隆起部3372が延長不可能な管部3363の外面を超えて外方に突出しない点がある。隆起部が外方に突出すると、患者にとって不快になり得る。
【0239】
また、図10D図10Jに示すように、隆起部接続部3370の外方を向く表面は、管の長手方向軸に対して隆起部3372よりも外方に突出しない。さらに、隆起部接続部3370はそれぞれ、隣接する隆起部3372の外方を向く表面と連続する外方を向く表面を含む。例えば屈曲および/または捩れ抵抗の増大のために隆起部接続部3370を管3350の長手方向軸に対して隆起部3372よりも外方に突出させると、本技術のいくつかの例においてそうなっているが、美観が若干損なわれ得る。
【0240】
さらに、図10D図10Jに示すように、複数の溝部3373はそれぞれ、各一対の隆起部接続部3370間に配置される。各それぞれの隆起部接続部3370は、各溝部3373の各端部に配置される。さらに、複数の溝部3373はそれぞれ、溝部深さを含み、複数の隆起部接続部3370はそれぞれ、隆起部接続部の高さを含む。隆起部接続部3370および溝部3373の各組において、溝部深さは、隆起部接続部の高さに等しい。すなわち、各溝部3373の溝部深さは、各溝部3373の端部に配置された各一対の隆起部接続部3370の各隆起部接続部3370の隆起部接続部の高さに等しい。そのため、溝部3373は、隆起部接続部3370の外面、隆起部3372および管3350の管壁に対する窪みとして形成される。
【0241】
隆起部接続部3370は、図示の例に示すように、比較的狭くかつリブ状であり得る。あるいは、隆起部接続部3370は、(例えば、管3350の延長可能部の前側および後側のより大部分を占有するように)より肉厚であり得る。
【0242】
図示の例において、隆起部接続部3370は、管3350の外側に設けられる。すなわち、隆起部接続部3370は、(管3350内の中空内部を規定する内側ではなく)管壁の外側の隆起部3372へ接続する。他の例において、隆起部接続部3370は、管3350の管壁の内側へ設けられ得る。延長可能な蛇腹構造3362を形成する管壁内の折り目により、管壁の内側において、管壁の外側に形成された一連の隆起部3372および溝部3373と逆の一連の交互の隆起部および溝部が形成され得る。すなわち、管壁の外側の隆起部3372を形成する折り目により、管壁の内部周囲において溝部が形成され得る。同様に、管壁の外側の溝部3373を形成する折り目により、隆起部が管壁の内側に形成され得る。
【0243】
隆起部接続部3370は、管3350の外側または内側の隣接する隆起部間において接続して、隆起部の分離に耐え得る。隆起部接続部3370を管3350の外側に設けた位置決めおよび安定化構造3300の例において、管の外部の隆起部3372が接続される。これらの隆起部3372を分離するにはより大きな張力が必要になる一方、管の内部の隆起部は、より自由に分離可能である。同様に、隆起部接続部3370により管3350の内部の隆起部を接続させる位置決めおよび安定化構造3300の別の例において、管壁の内部の隆起部の場合、分離により大きな力が必要となる一方、管外部の隆起部は、より自由に分離可能である。いくつかの例において、隆起部接続部3370により、内部隆起部および外部隆起部の組み合わせが接続される。
【0244】
本技術のいくつかの例において、単一の隆起部接続部3370により、複数の隆起部3372が接続される。他の例において、各隆起部接続部3370により、単一の対の隣接する隆起部3372のみが接続される。いくつかの例において、1つ以上の隆起部接続部3370は、隣接しない隆起部3372(例えば、第1の隆起部および最後の隆起部、第2の隆起部毎)へ接続し得る。
【0245】
5.3.2.1.4 延長不可能なヘッドギア管材
患者インターフェース3000は、1つ以上の延長不可能な管部3363を含み得る。例えば、図8A図9Cに示す患者インターフェース3000は、管3350を含む。管3350の下部に、延長不可能な管部3363が設けられる。延長不可能な管部3363は、患者の頬上に載置されるように構成され、患者の頬骨の下側において患者の顔と接触するように構成され得る。各延長不可能な管部3363は、曲線上において各ヘッドギア管3350間の接続から下方に延びた後、患者の頬骨を回避するように、部分的に前方向および部分的に中間方向においてシール形成構造3100へ伸長し得る。
【0246】
患者インターフェース3000の位置決めおよび安定化構造3300は、患者の頬骨上に載置されないため、有利である。患者の顔のうち頬骨の下方の領域は、肉付きがより多いことが一般的であるため、患者は、ヘッドギア管3350がこれらの顔領域上に載置された状態により耐えることができる。さらに、患者の顔の頬骨領域は、比較的移動または変形ができないため、延長不可能な管部3363は、肉付きの良い頬領域に対してしっかりと載置される。さらに、患者の頬骨により、ヘッドギア管3350の下部が頬骨から患者の眼へ乗り上げる事態の回避を支援することができる。延長不可能な管部3363が頬骨下の患者の頬にぴったりとフィットすると、患者の頬骨の硬度および突出により、ヘッドギア管3350が患者の眼に乗り上げる(その結果安定性に影響が発生しおよび/または患者の視界が遮られる)事態に対する障壁を得ることができる。
【0247】
管3350の延長不可能な管部3363の断面形状は、例えば米国特許第6,044,844号に記載のような円形、楕円形、卵形、D字型形状、または角丸長方形であり得る。患者の顔または頭部の他の部分に対向かつ接触する側上の管の平坦な表面を示す断面形状は、例えば円形断面を持つ管の場合よりも、より快適に装着され得る。
【0248】
管3350の断面幅および/または高さは、8~25mm(例えば、10~20mm)であり得る。管がD字型断面を有するいくつかの形態において、例えば図10Cに示すヘッドギアチュービング3350の長手方向断面の場合、管の幅は、15~25mm(例えば20mm)であり、高さは8~15mm(例えば10mm)である。高さは、使用時に患者の顔から離隔方向に延長する管の寸法(すなわち、患者と接触する側3348と、患者と接触しない側3349の最外部との間の距離)とみなされ得、幅は、患者頭部の表面にわたる寸法とみなされ得る。管3350を形成する材料の断面厚さは、0.8~1.6mm(例えば、1.0~1.5mm(例えば1.3mm))であり得る。
【0249】
D字型の断面管3350は、患者と接触する側3348の側面に位置する曲線状縁部3347を有する。患者の皮膚と接触するかまたは患者の皮膚の近隣にある曲線状縁部により、患者インターフェース3000の装着時の快適性が増すことと、患者の皮膚上の跡残りまたは炎症が回避されることとが支援される。管をD字型断面プロファイルにすると、他の形状の外形の場合より、座屈にも強くなる。
【0250】
管3350の延長不可能な管部3363のD字型断面のさらなる利点として、使用時において患者の顔の前方に載置される延長不可能な管部3363が、水平方向よりも垂直方向においてより屈曲に耐える点がある。延長不可能な管部3363はD字型断面であるため、管部がD字型形状の長軸に対して垂直な屈曲よりもD字型形状の長軸に対して平行な屈曲により良好に耐えることが可能になる。このようにすると、シール形成構3100へ必要なシーリング力を提供するために延長可能な蛇腹構造3362から延長不可能な管部3363上へ付加される垂直力をシール形成構造3100へ移動させるための剛直性を垂直方向に保持しつつ、延長不可能な管部3363が患者の顔の前方周囲から内方に曲線状にシール形成構3100へより容易に屈曲することが可能になるため、有利である。
【0251】
患者の顔の前方周囲において内方に屈曲可能であるため、延長不可能な管部3363が患者の頬骨の下側の患者の頬にぴったりとフィットすることが可能になる。上記においてより詳細に述べたように、患者の頬骨の下側にぴったりと載置された延長不可能な管部3363により、延長不可能な管部3363が患者の頬上に緩い状態で載置されるかまたは患者の頬骨の上方に載置された場合よりも、より安定したシールを得ることが可能になる。
【0252】
他の例において、延長不可能な管部3363は、矩形状断面を含み得る。矩形断面により、D字型断面と同様の利点が得られ得る。詳細には、矩形断面により、延長不可能な管部3363は、矩形断面の短辺に対して平行な方向における屈曲に対してより高い抵抗を得ることができ得る。他の例において、延長不可能な管部3363は、楕円または長円形状の断面を含み得るため、同様の利点が得られる。
【0253】
本技術のいくつかの例において、延長不可能な管部3363は、クレードルクッションモジュール3150へ低角度から接続する。上記したように、ヘッドギア3350は、患者頭部の側部を下方に伸長した後、前方向および中間方向に曲線状に延びて、患者の顔の前方のクレードルクッションモジュール3150へ接続し得る。管3350は、クレードルクッションモジュール3150へ接続される前は、いくつかの例において、クレードルクッションモジュール3150との接続と同じ垂直位置またはクレードルクッションモジュール3150との接続の下側の位置まで伸長し得る。すなわち、管3350は、少なくとも部分的に上方向の突出した後、クレードルクッションモジュール3150へ接続され得る。管3350の一部は、クレードルクッションモジュール3150および/またはシール形成構造3100.の下方に配置され得る。管3350は患者の顔の前方において下方に配置されるため、患者の頬骨の下側の患者の顔との接触が促進される。
【0254】
5.3.2.2 ヘッドギアのサイジングおよび剛直性
位置決めおよび安定化構造3300のサイズは、本技術の異なる例間によって異なり得る。患者インターフェース3000に対して異なるサイズ選択肢を提供することにより、より多くの患者への対応が可能になり得る。患者頭部周囲のループは、一対のヘッドギア管3350と、管3350の下端間に接続されたクレードルクッションモジュール3150(または枕クッションモジュール3160または他のシール形成構造3100)とによって形成され得る。このループのサイズは、異なるサイズ患者インターフェース3000に対応できるよう、異なり得る。
【0255】
一例において、管3350およびクレードルクッションモジュール3150によって形成されたループの未延伸長さは、ループの患者対向側の中心線に沿って測定され、510~610mmの範囲内であり得る。いくつかの例において、このループの非伸長長さは、525~600mmの範囲内であり得る。いくつかの例において、このループの長さは、535~590mmの範囲内であり得る。
【0256】
いくつかの特定の例において、上記したループの未延伸長さは、528~548mmの範囲内であり得る(例えば、535~541mmの範囲内(例えば、約538mm))。さらなる特定の例において、このループの長さは、534~554mmの範囲内であり得る(例えば、539~549mmの範囲内(例えば、例における約544mmまたは約547mm))。さらなる特定の例において、このループの非伸長長さは、541~561mmの範囲内であり得る(例えば、546~556mmの範囲内(例えば、約551mm))。
【0257】
他の特定の例において、上記ループの未延伸長さは、564~584mmの範囲内であり得る(例えば、571~581mmの範囲内(例えば、約574または約579mm))。さらなる例において、このループの非伸長長さは、577~597mmの範囲内であり得る(例えば、582~592mm(例えば、約583mmまたは約587mm))。
【0258】
詳細には、位置決めおよび安定化構造3300を異なるサイズにできるようにするために、ガス送達管3350の長さは変更可能であり得る。いくつかの例において、管3350の患者対向側の中心線に沿って測定される管3350の非伸長長さは、500~535mmの範囲内であり得る(例えば、510~525mm(例えば、512~522mm(例えば、約517mm)))。さらなる例において、管3350の非伸長長さは、460~500mmの範囲内であり得る(例えば、470~490mmの範囲内(例えば、475~485mmの範囲内(例えば、約481mm))。
【0259】
上記においてさらに詳述したように、本技術のいくつかの例において、ヘッドギア管3350は、延長可能部(例えば、延長可能な蛇腹構造3362)を含む。本技術のいくつかの例において、ガス送達管3350の延長可能部(例えば、位置決めおよび安定化構造3300の片側の単一の蛇腹部)は、(伸長部の)剛直性を2~3.5N/10mmの範囲内で含み得る((例えば、0.2~0.35N/mm))。詳細な例において、延長可能部の剛直性は、2.5~3N/10mmの範囲内であり得る(例えば、0.25~0.3N/mm)。一例において、延長可能部の剛直性は、およそ2.75N/10mmであり得る(例えば、0.275N/mm)。本技術のさらなる例において、管3350の延長可能部を長さを10mmだけ伸長させるために必要な張力は2.5N~3Nであり得、長さを20mmだけ伸長させるために必要な張力は5N~5.5Nであり得る。本技術による患者インターフェース3000の多様な例において、これらの開示の剛直性のいずれかが、上記したサイズ(例えば、長さ)のうちいずれかを有する管3350へ提供され得ることが理解される。
【0260】
5.3.2.3 ヘッドギアストラップ
本技術の特定の形態において、位置決めおよび安定化構造3300は、少なくとも1つのヘッドギアストラップを含む。これらのヘッドギアストラップは、管3350に加えて、密閉位置のシール形成構造3100を患者の気道への入口に対して位置決めおよび安定配置するように機能する。図8A図9Cに示すように、患者インターフェース3000は、位置決めおよび安定化構造3300の一部を形成するストラップ3310を含む。ストラップ3310は、例えば後ストラップまたは後方ヘッドギアストラップとして公知であり得る。本技術の他の例において、1つ以上のさらなるストラップが設けられ得る。例えば、フルフェイスまたは口腔鼻クッションモジュールを有する本技術の実施例による患者インターフェース3000は、患者頸部後部上に載置されるように構成された第2の下側ストラップを有し得る。
【0261】
5.3.2.3.1 ストラップ
図8A図9Cに示す例において、位置決めおよび安定化構造3300のストラップ3310は、患者頭部の各側部上に配置されかつ患者頭部の後方を通過する(例えば、使用時に患者頭部の後頭骨の後部を覆うかまたは被覆する)2本の管3350間に接続される。ストラップ3310は、患者の耳の上方の各管へ接続する。他の実施形態において、例えば口鼻患者インターフェースの一部として、位置決めおよび安定化構造3300は、ストラップ3310と類似している上側ストラップおよび少なくとも1つの追加の下側ヘッドギアストラップを含む。これらの下側ヘッドギアストラップは、管間および/またはクッションモジュール間を接続し、患者の耳の下側を通過し、患者頭部の後ろ側を通過する。このような下側ヘッドギアストラップは、上側ストラップ(例えば、ストラップ3310に類似するもの)へも接続され得る。
【0262】
本技術の特定の形態において、位置決めおよび安定化構造3300は、ヘッドギアストラップをヘッドギア管3350へ接続させるための機構を含む。ヘッドギアストラップは、ヘッドギア管3350へ直接的または間接的に接続され得る。図8A図9Cに示す患者インターフェース3000の場合、例えばストラップ3310へ接続するように構成されたタブ3320は、各ヘッドギア管3350から外方に概して後方方向に突出する。これらのタブ3320は、ストラップ3310の端部を受容するための穴部を内部に有する。
【0263】
本技術のいくつかの形態において、ストラップ3310は調節可能である。例えば、図8A図9Cに示す患者インターフェースの場合、ストラップ3310は、使用時に各タブ3320中のアイレットの形態の穴部を通じてねじ込まれる。タブ3320間のストラップ3310の長さは、より多数またはより少数のストラップ3310をタブ3320の片方または双方を通じて引くことにより、調節され得る。ストラップ3310を例えばフックアンドループ締結手段を用いてタブ3320中のアイレットを通過させることにより、後ストラップ3310を自身へ固定することができる。そのため、ストラップ3310は、異なる頭部サイズにフィットするように調節することができる。本技術のいくつかの形態において、ストラップ3310のヘッドギア管3350または患者頭部に相対する角度は、異なる位置における患者頭部周囲にフィットするように調節することができる。このような調節可能性により、位置決めおよび安定化構造3300が異なる頭部形状およびサイズに対応することが支援される。
【0264】
本技術のいくつかの形態において、ストラップ3310は、タブ3320の位置においてヘッドギア管3350を少なくとも部分的に後方(例えば、後方)方向に牽引するための力をヘッドギア管3350へ付与する。ストラップ3310は、ヘッドギア管3350を少なくとも部分的に内方(例えば、後方)方向に牽引するための力もヘッドギア管へ付与し得る。この力の大きさは、タブ3320間のストラップ3310の長さを変更することにより、調節され得る。
【0265】
図8A図9Cに示す形態などの本技術のいくつかの実施例において、ストラップ3310からヘッドギア管3350へ付加される力の方向を変更してもよい。この方向は、ストラップ3310のヘッドギア管3350または患者頭部に相対する角度を調節することにより変更してもよい。本技術のいくつかの形態において、ストラップ3310からヘッドギア管3350へ力が付与される位置は、ストラップ3310がヘッドギア管3350へ固定される位置を調節することにより、変更され得る。
【0266】
ストラップ3310からヘッドギア管3350へ付加される力の大きさおよび方向を調節することが可能であると、位置決めおよび安定化構造3300が一定範囲の頭部サイズおよび頭部形状に対応することが可能になるため、有利であり得る。ストラップ3310により、ヘッドギア管3350中の力のバランスが保持され得、これにより、快適性を保持しつつ、ヘッドギアが自身の形状を維持することおよび患者の顔に対する有効シールを得ることが支援され得る。
【0267】
本技術のいくつかの形態において、患者による装着時において、タブ3320の近隣のヘッドギア管3350上の点は、ヘッドギア管3350の張力に起因して、一部の実施例では、ヘッドギアが患者頭部へ固定された状態を保持する機能を持つ(以下にさらに詳述する)付勢機構に起因して、概して上方の(例えば、上方)力をヘッドギア管3350の上部から受容する。さらに、タブ3320の近隣のヘッドギア管3350上の点は、シール形成構造3100を上方に推進させて患者の鼻内へと移動させる機能を持つ付勢機構から発生した概して前方の(例えば、前方)かつ下方(例えば、下方)の力を受容し得る。確実なフィットおよび有効なシールに必要な力の方向および大きさは、例えば頭部形状およびサイズの差に起因して異なり得る頭部上の位置決めおよび安定化構造3300の位置に基づいて、患者間において異なり得る。本技術のいくつかの形態において、後方ヘッドギアストラップ3310が調節可能であるため、有効なソールを維持しつつ位置決めおよび安定化構造3300を快適な位置に保持するように、一定範囲の頭部形状およびサイズに対して力のバランスをとることが可能になる。
【0268】
例えば、後方(例えば、後方)方向においてヘッドギア管3350のうちタブ3320の近隣の部位上にかかる力を増やすために、タブ3320中のスロットを通じてより多数のストラップ3310を牽引することによりストラップ3310を調節することができる。これにより、ストラップ3310の長さを短くすることができ、とくに、ストラップ3310が弾性である場合、ヘッドギア管3350に対して後方(例えば、後方)方向により大きな力が付加される。同様に、一定範囲の頭部形状およびサイズに対してヘッドギア管3350のうちタブ3320の近隣の部位上に作用する力の垂直成分および水平成分双方のバランスをとるために、ストラップ3310の角度を必要に応じて調節することができる。
【0269】
ストラップ3310は、矩形断面をその長さの一部または全体に沿って含み得る。さらに、ストラップ3310は、快適性向上と、ヘッドギアストラップによる患者の跡または炎症の危険性の低減とを提供する、1つ以上の曲線状縁部が含まれているプロファイルを有し得る。本技術の特定の形態において、位置決めおよび安定化構造3300は、屈曲可能であり例えば非剛性であるストラップ3310を含む。本態様の利点として、患者が睡眠時に体を横たえたときにストラップ3310がより快適になっている点がある。
【0270】
本技術の特定の形態において、位置決めおよび安定化構造3300は、スプリットによって分離された2つ以上のストラップバンドを含むストラップ3310を含む。例えば、図8A図9Cおよび図12A図12Fに示すように、ストラップ3310は、使用時において患者頭部の後部に対して配置されるように構成されたスプリット3313を含む。患者インターフェース設計によっては、分割ストラップ3310により、患者インターフェース3000が特に安定した様態で患者頭部上にアンカー固定され得る。患者頭部の後部は、ジオメトリが複雑であり得、ストラップ3310中にスプリット3313を設けることにより、ストラップを患者頭部後部へより良く適合させることを支援することが可能になり得る。
【0271】
5.3.2.3.2 アイレット
上記したように、ガス送達管はそれぞれ、ストラップとの接続のためのアイレットを含み得る。いくつかの例において、アイレットは、円形であり得る。他の例において、アイレットは、細長形状であり得る。あるいは、アイレットは、曲線状側および直線状側を有し得る。アイレットは、例えばD字型形状であり得る。図8A図9Cに示す例示的患者インターフェース3000中のアイレットは、スリット3322の形態をとる。本例において、一対のガス送達管3350から、ストラップ3310を接続させることが可能な一対のスリット3322が得られる。すなわち、ストラップ3310は、アイレット間に接続され得る。ストラップ3310は、使用時において患者頭部の後頭骨の下側に配置されるかまたは患者頭部の後頭骨に配置される患者頭部の領域と接触するように構築および配置され得る。本例において、スリット3322は、管3350の管壁へ接続されたタブ3320中に形成される。
【0272】
本技術のいくつかの例において、アイレットは、各々が70mm~150mmである各管3350上に、管3350に沿って一対の管3350の中心(例えば、接続ポート3600)から配置され得る。さらなる例において、各アイレットは、一対の管3350の中心から約110mm~130mm間において各管3350に沿って配置され得る。特定の例において、アイレットは、接続ポート3600から約120mm~125mm間において各管3350に沿って配置され得る。スリット3322を有する図示の位置決めおよび安定化構造3300の場合において、これらのスリットの中点は、一対のガス送達管3350の中心から約120~125mmにおいて配置される。
【0273】
図8A図9Cに示す例示的患者インターフェース3000は、単一の後方ヘッドギアストラップ3310を含む。この後方ヘッドギアストラップ3310は、スリット3322間を通過し、部分的に下方方向および部分的に後方向において力を管3350へ付加する際に必要であることが多い。管3350上へ力を必要な方向において付加するために、ストラップ3310により、患者頭部後部周囲の下方を包囲する必要がある。典型的には、患者頭部後部は一般的には、下方に曲線状に延びて、頭蓋骨の後頭骨を前方方向において(頭部が患者頸部と接合される位置まで)被覆する。
【0274】
ストラップ3310が患者頭部後部周囲の下方に十分に載置されない場合(例えば、(患者頭部の後面が前方向へ曲線状に延びて、部分的に下方向を向く)患者頭部の最後部点の下側に来なかった場合)、使用時においてストラップ3310が患者頭部後部に乗り上げる危険性がある。ストラップ3310が患者頭部の最後部点の上方に乗り上げると、ストラップ3310は、患者頭部のうち部分的に上方向を向く領域上に載置され得る。このような事態が発生した場合、ストラップ3310中の張力によりストラップをさらに上方に牽引することが可能になり、その場合、位置決めおよび安定化構造3300からシール形成構造3100への必要なシーリング力ベクトルの提供の失敗に繋がり得(その後、患者の顔に対するシールに妥協が生じ得、患者が患者インターフェース3000を再着用する必要が生じ得る)。
【0275】
図11A図11Cに示すように、ガス送達管3350はそれぞれ、管3350の長さに沿って(例えば、導管を形成する)中空内部を規定する管壁3352を含み得る。加圧された気流は、接続ポート3600から、管壁3352内の中空内部を通じて、シール形成構造3100へ送達されるように送られ得る。
【0276】
図11A図11Cに示す例において、管3350は、タブ3320を含む。本例において、位置決めおよび安定化構造3300のタブ3320はそれぞれ、管3350の各管壁3352と一体形成される。あるいは、タブ3320は、別個の部品であり得、管3350と共に組み立てられる。例えば、タブ3320に含まれ得る別個のコンポーネントは、管3350へ移動可能に接続することにより、タブ3320の位置および/または角度の調節を可能にする。タブ3320を管壁3352と一体形成することにより、必要な組立作業が低減するため、位置決めおよび安定化構造3300の使い易さの向上が得られ得る。さらに、一体形成されたタブ3320により、タブ3320と管壁3352との間のシームレス接続が可能になり得、患者の不快感の原因になり得る接続の可能性が低下する。
【0277】
図示の例において、管3350はそれぞれ、延長可能な蛇腹構造3362の形態をとる延長可能な管部を含む。各タブ3320は、延長可能な管部の下方のガス送達管3350の管壁3352へ接合される。詳細には、各タブ3320は、延長可能な管部の下方の延長不可能な管部3363において、ガス送達管3350の管壁3352へ接合される。いくつかの例において、タブ3320はそれぞれ、管3350の長さに沿って延長可能な管部の端部から間隔を空けて配置された上縁3331を有し得る。他の例において、タブ3320は、延長可能な管部の下端またはその近隣において管壁3352と出会う上縁3331を有し得る。
【0278】
図11A図11Cに示す例において、管3350のスリット3322は、タブ3320中に形成される。他の例において、スリット3322は、管壁3352内に直接形成してもよいし、あるいは、位置決めおよび安定化構造3300の別の部位または位置決めおよび安定化構造3300へ接続されるように構成された別個のコンポーネント内に形成してもよい。
【0279】
スリット3322はそれぞれ、使用時において各管3350の管壁から後方に間隔を空けて配置され得る。詳細には、各スリット3322は、管壁3352のスリット隣接部3355から後方に間隔を空けて各スリット3322に並んで配置され得る。管壁3352のスリット隣接部3355は、管壁3352のうちタブ3320が接続される部分であり得る。より詳細には、管壁3352のスリット隣接部3355は、管壁3352のうちスリット3322に最も隣接する部位であり得る。いくつかの例において、スリット3322は、管壁3352の長さ全体に対して後方に間隔を空けて配置され得る。スリット3322は、使用時において患者頭部の上耳底点の上方に配置され得る。
【0280】
図8A図8Cに示すように、管壁3352はそれぞれ、患者の眼と耳との間を通過する経路3353に沿って患者頭部上に載置されるように構成される。経路3353の一部が、図11Aおよび図11Bに図示される。いくつかの例において、経路3353は、一般的には患者頭部の表面上の経路であり、この経路上にこの経路に沿って管壁3350が載置される。さらに、経路3353は、管3350を通じて流れるガスが患者頭部上部からシール形成構造3100へ移動するよう誘導する経路であり得る。実際には、いくつかの例において経路3353は面に制限されない場合があるため、経路3353は、3次元空間中の曲線(例えば、空間曲線)を含み得る。図示の例において、管3350は、横方向におよび下方において患者頭部側部上に延びた後、下方、前方および中間方向に延びて、クレードルクッションモジュール3150と接続する。
【0281】
図11A図11Cに示すように、スリット3322はそれぞれ、上端3326および下端3327を含む。上端3326および下端3327はそれぞれ、第1の端部および第2の端部としてみなされ得る。本例において、上端3326は、下端3327よりも管壁3352のスリット隣接部3355からさらに間隔を空けて配置される。図11Aに示すように、スリット3322の上端3326は、図中にSEにより示される間隔を空けて管壁3352から配置される。スリット3322の下端3327は、IEにより示される間隔だけ管壁3352から空けて配置される。図示のように、間隔SEは間隔IEよりも大きいため、上端3326は、下端3327よりも管壁3352からさらに間隔を空けて配置される。位置決めおよび安定化構造3300を含む患者インターフェース3000を患者が着用すると、上端3326は、下端3327に対して後方に間隔を空けて配置される。文脈に明記無き限り、スリットまたはアイレットの端部が当該スリットまたはアイレットの別の端部よりもさらに管壁から間隔を空けて配置されるものとして記載されている場合、この記載の間隔は、管壁のうち当該スリットまたはアイレットに対して一般的に隣接または最近接する部位(例えば、スリットに隣接するかまたはアイレットに隣接する部位)として理解されるべきである。
【0282】
図11Bに示すように、スリット3322は、管3350の方位に対して管壁3352のスリット隣接部3355において角度と共に方向付けられる。スリット3322はまた、経路3353に対して管壁3352のスリット隣接部3355において角度と共に方向付けられる。本例において、スリット3322は、上端3326と下端3327との間の弓状である。スリット3322はそれぞれ、曲線状の細長形状を有する。他の例において、各スリット3322は、上端3326と下端3327との間で直線状であり得る。スリット3322を曲線状の弓状形状にすることにより、有利なことにストラップ3310をスリットを通じてスリット3322内の中心へ延ばすことができ、また、スリット3322がスリット3322を通じて延びるストラップ3310の角度の一定の変動に耐えることも(ストラップ3310がスリット3322の一端へ向かうにつれて束状になる事態を引き起こすこと無く)可能になり得る。
【0283】
図11B中図示されるのは、スリット3322の長さ軸3323である。本例において、このスリットは細長状であるため、長さ軸3323は、スリット3322の一般的長さに沿って規定される。弓状スリット3322(例えば、図11A図11Cに示すスリット3322)も、細長状であるため、長さ軸を含み得る。弓状スリット3322の場合、長さ軸3323は、スリット3322の側部の各部に対して平行ではないものの、スリット3322の一端から他端への一般的方向によって規定され得ることが理解される。あるいは、弓状スリット3322の長さ軸3323は、スリット3322の中央部におけるスリット3322の曲率に対する接線によって規定され得る。
【0284】
スリット3322は、使用時において、後上方-前下方の方位を有し得る。すなわち、スリット3322の長さ(例えば、長さ軸3323)は、後上方方向と前下方方向との間に伸長する線に対して平行に整列され得る。この方位により、スリット3322の上端3326は、スリット3322の下端3327に対して後方に間隔を空けて配置される。図11B中図示されるのは、管3350のスリット隣接部3355における経路3353に対する接線3354である。図示のように、スリット3322の長さ軸3323より、経路3353の接線3354と共にスリット角度3321が形成される。本例において、スリット角度3321は、斜角である。斜角は、5~30度の範囲内であり得る。いくつかの例において、斜角は、10~20度の範囲内であり得る。例えば、斜角は、12~18度の範囲内であり得る。特定の例において、斜角は、約13度、15度または17度であり得る。いくつかの例において、スリット3322は、長手方向軸に対して延長可能な蛇腹構造3362の長さに沿って角度付けされ得る。詳細には、スリット3322は、直線状になったときに延長可能な蛇腹構造3362の長手方向軸に対して15~45度の角度において方向付けされ得る。例えば、この角度は、20~40度の範囲内であり得る(例えば、22~35度の範囲内)。特定の例において、この角度は、直線状になったときに延長可能な蛇腹構造3362の長手方向軸に対して約25度~31度であり得る。
【0285】
スリット3322を管壁3352または経路3353に対して後方に角度付けすること(例えば、上端3326を下端3327よりもさらに管壁3352または経路3353から間隔を空けて配置すること)により、患者頭部後部周囲の下方位置からのストラップ3310の受容に対するより良好な適合が可能になり得、有利である。理想的なセットアップにおいて、ストラップ3310は、スリット3322の長さ軸3323に対して垂直な方向においてスリット3322から伸長する。よって、スリット3322をより後方に角度付けすると、スリット3322はより小さな角度からストラップ3310を受容するように角度付けされるため、患者頭部後部周囲に下方に載置されたストラップ3310により良く対応することができる。これと対照的に、スリット3322を垂直方位により近く方向付けると、スリット3322は、患者頭部上のより高い位置からストラップ3310を受容するように角度付けされる。よって、スリット3322を管壁3352および/または経路3353の隣接部に対してより大きな角度において方向付けると、患者頭部後部に乗り上げる(例えば、上方にスライドする)ストラップ3310に対して一定の抵抗を得ることが可能になり得る。
【0286】
ストラップ3310が患者頭部後部上に乗り上げる傾向を低減させるための他の方法が利用可能である(例えば、ストラップ3310内にスプリットを設けることにより、患者がストラップ3310を締結することおよび/またはスリット3322を低位置に設けること)により、スリット3322を後方に回転した角度を管3350へ設けると、ストラップ3310の乗り上げに対してさらなる抵抗を得ることが可能になり得る。いくつかの例において、各スリット3322は、(患者頭部のうち後頭骨の下部上に載置される領域にわたってストラップ3310が載置される方向から)ストラップ3310を受容するように角度付けされ得る。さらなる例において、スリット3322は、ストラップ3310が患者の後頭骨の中央または上部に載置される方向からストラップ3310を受容するように角度付けされ得る。
【0287】
各スリット3322は、ストラップが患者頭部周囲にアンカー固定される相手であるストラップアンカー領域のスリットからの方向へ垂直に方向付けられ得る。ストラップアンカー領域は、患者の後頭骨(例えば、後頭骨の下部)に載置される領域であり得る。いくつかの例において、ストラップアンカー領域は、患者頸部のうち患者の後頭骨の下方に載置される領域であり得る。いくつかの例において、いくつかの例において、ストラップ3310は、患者の僧帽筋上部あるいは患者頸部または頭部のうち後頭骨の下方の一部上に載置され得、スリット3322は、ストラップ3310を対応する方向から受容するように角度付けされ得る。
【0288】
例えば、図8Cに示すように、スリット3322は、患者頭部の最下部の下方の患者頭部の後領域にわたってストラップ3310が載置される方向からストラップ3310を受容するように、十分に後方に角度付けされる。ストラップ3310は、少なくとも部分的に下方向を向く患者頭部の後面上に載置され得、スリット3322は、ストラップ3310をこの場所から受容するように十分に後方に角度付けされ得る。少なくとも部分的に下方向を向く患者頭部の後面上にストラップ3310を載置すると有利な理由として、ストラップ3310の最後部の上方にアイレットが配置される点がある。ストラップ3310へ張力が付加された後、管3350は、部分的に上方の力をストラップ3310上に付与する。すなわち、ストラップ3310が(下方を向く患者頭部の後面へアンカー固定された場合に)乗り上げる可能性が低くなり得る。
【0289】
図11A図11Cを参照して、タブ3320は、上縁3331および下縁3332を含む。本例において、上縁3331は、下縁3332よりも長尺である。上縁3331をより長尺にすることにより、(上縁3331の長さが下縁3332の長さと等しい場合に)タブ3320が向く方向よりもタブ3320がより下方向を向くような、非対称の形状が得られる。スリット3322は、上縁3331と下縁3332との間に実質的に中心を有する。よって、このような非対称形状のタブ3320により、スリット3322は、より下方向を向いて設けられる。タブ3320が下方を向くと、ストラップ3310が患者頭部後部に乗り上げる傾向を低減することができ得、有利である。
【0290】
スリット3322に斜めのスリット角度3321を持たせることに加えて、スリット3322を、ストラップ3310が患者頭部後部に乗り上げる傾向をさらに低減させるだけの十分な間隔だけ管壁3352から間隔を空けて配置さしてもよい。スリットまたは他のアイレットと管壁3352との間の間隔を惜しみなくとることにより、アイレットと患者頭部後部との間の距離を低減することができ得、有利である。アイレットと患者頭部後部との間の距離を比較的短くすることにより、ストラップ3310の長さを短くすることが可能になり得る。ストラップ3310は、横方向において患者頭部の側部に載置され、スリット3322間に延びて、患者頭部の力に対して後方に対向する。このように距離およびストラップ長さを短くすることにより、ストラップ3310のアイレットに対する回転を有利に抑制することが可能になり得、これにより、使用時においてストラップ3310が上方または下方に乗り上げる傾向が低減される。
【0291】
いくつかの例において、スリット3322の下端3327は、管壁3352から少なくとも5mmだけ間隔を空けて配置され得る。さらなる例において、スリット3322の下端3327は、管壁3352から少なくとも7mmだけ間隔を空けて配置され得る。例えば、スリット3322の下端3327は、管壁3352から約8mm以上だけ間隔を空けて配置さ得る。
【0292】
スリット3322の上端3326は、管壁3352から少なくとも8mm間隔を空けて配置され得る。いくつかの例において、スリット3322の上端3326は、管壁3352から少なくとも10mmだけ間隔を空けて配置さ得る。例えば、スリット3322の上端3326は、管壁3352から12mm以上だけ間隔を空けて配置され得る。
【0293】
いくつかの例において、スリットに沿った中点3322は、管壁3352からおよそ5mm~30mmの範囲内の間隔だけ間隔を空けて配置され得る。アイレットと管壁3352との間の間隔を極めて大きくとると、ストラップ3310の安定が増す点において有利であるものの、タブ3320のサイズが増大するため、製造可能性、重量、快適性および美観において課題/問題が生じ得る。間隔を5~30mmの範囲内(例えば、7mm~20mmの範囲内)にすると、後方ヘッドギアストラップ3310の乗り上げを回避する安定性の恩恵に繋がり得、タブ3320のサイズ増大に起因する課題が回避または最小限にされる。さらなる例において、この間隔は、8mm~15mmの範囲内(例えば、9mm~13mmの範囲内)であり得る。いくつかの特定の例において、上記間隔は、約9mm~11mm(例えば、約9.5mmまたは9.75mm)であり得る。
【0294】
5.3.2.3.3 トラフ
図11Cは、位置決めおよび安定化構造3300のタブ3320のうちの1つの拡大斜視図である。図示のように、いくつかの例において、位置決めおよび安定化構造3300のタブ3320に含まれ得るトラフ3324は、タブ中に形成され、スリット3322の後方に配置される。トラフ3324は、ストラップ3310の下側の位置においてタブ3320の本体中に形成され得る。本例において、トラフ3324は、スリット3322とタブ3320の後側3329との間に設けられる。タブ3320は、タブ3320のうち患者から離隔方向を向く側に(例えば、横方向において)、外方を向くタブ表面3328を含み得る。タブ表面3328は、スリット3322の近隣において、実質的に平面状であり得る。トラフ3324は、(タブの3320の他の部位よりも材料厚さが薄い)トラフ3324におけるタブ3320の一部により、形成され得る。そのため、本例において、トラフ3324は、タブ表面3328に対して凹部状にされる。
【0295】
トラフ3324は、スリット3322の長さと実質的に同じ幅を有し得る。すなわち、トラフ3324は、スリットの上端3326の近隣に上端を有し得、スリット3322の下端3327の近隣に下端を有し得る。本例において、トラフ3324は、ストラップ3310と実質的に同じ幅を有する。トラフ3324は、ストラップ3310を受容するように構成される。トラフ3324により、ストラップ3310およびタブ3320の合計厚さが低減される。トラフ3324の位置において、タブ3320は、ストラップ3310の2つの層間に挟まれる(これは、ストラップがスリットを通過しておよび自身の上にループ状に戻るからである)。この位置におけるストラップ3310およびタブ3320の嵩および/または厚さに起因して、患者が横向きに寝たときに圧力点または不快点が発生し得る。トラフ3324により、この位置におけるコンポーネントの積層厚さを有利に低減させることができ得、その結果、横向きに寝たときにこの位置において患者頭部へ付加される圧力が低下し得る。
【0296】
さらに、本例において、トラフ3324は、ストラップ3310の側部に隣接する側部を有する。そのため、トラフ3324の幅は、ストラップ3310の幅と整合する。これにより、ストラップ3310をトラフ3324内において整列させかつ中心に配置された状態を保持することを有利に支援することが可能になり得る。また、ストラップ3310のアラインメントについての視覚的ガイドをユーザへ提供することも可能になり得る。
【0297】
5.3.3 通気部
一形態において、患者インターフェース3000は、吐き出されたガス(例えば、二酸化炭素)の押し出しを可能にするように構成および配置された通気部3400を含む。
【0298】
特定の形態において、通気3400は、プレナムチャンバ内の圧力が雰囲気に対して正であるときにプレナムチャンバ3200の内部から雰囲気への連続的通気流れを可能にするように構成される。通気部3400は、使用時においてプレナムチャンバ内の治療圧力を維持しつつ、通気流量の大きさが呼気されたCOの患者による再呼吸を低減できるだけの充分な大きさになるように、構成される。通気孔3400により、患者の呼吸サイクル全体においてプレナムチャンバ3200の内部から雰囲気への連続的な通気流れが得られ得る。
【0299】
本技術による一形態の通気部3400は、複数の穴(例えば、約20個~約80個の穴または約40個~約60個の穴または約45個~約55個の穴)を含む。
【0300】
通気部3400は、プレナムチャンバ3200内に配置され得る。あるいは、通気部3400は、結合解除構造(例えば、エルボー3610のようなスイベル)内に配置される。図8A図9Cに示す例において、患者インターフェース3000は、複数の通気部3400を含む。詳細には、患者インターフェース3000は、プレナムチャンバ3200中の少なくとも1つの通気孔3400およびエルボー3610中の少なくとも1つの通気孔を含む。より詳細には、プレナムチャンバ3200は、2つの通気孔3400を含む。プレナムチャンバ3200上の各通気孔3400は、孔のアレイを含む。エルボー3610上の通気孔3400も、孔のアレイを含む。患者インターフェース3000の通気孔3400は、治療圧力範囲全体において十分なガス洗い流しを提供するようなサイズおよび構成にされる。
【0301】
患者インターフェース3000に含まれ得るディフューザは、通気孔を通過する気流を拡散させることにより、通気ノイズの低減と通気口から噴出する空気の低減とを行うように構成される。このディフューザは、通気口上のカバーへ設けられ得る。いくつかの例において、通気孔3400は、プレナムチャンバ3200から取り外されるように構成された通気モジュールを含み得る。通気モジュールは、ディフューザを含み得る。
【0302】
5.3.4 結合解除構造(複数または単数)
一形態において、患者インターフェース3000は、少なくとも1つの結合解除構造(例えば、スイベルまたは球窩)を含む。例えば、図8A図9Cに示す患者インターフェース3000は、位置決めおよび安定化構造3300に対して回転するように構成されたエルボー3610を含む。本例において、エルボー3610は、位置決めおよび安定化構造3300中の円形開口部と同心の軸周囲において回転するように構成される。本技術のいくつかの例において、エルボー3610は、位置決めおよび安定化構造3300に対して球窩継手の一部を形成し得る。例えば、部分的に球状内面を有するリングが、位置決めおよび安定化構造3300へ設けられ得、エルボー3610を受容するように構成され得る。エルボー3610は、リングの部分的に球状の内面に対して相補的な部分的に球状の外面を有し得るため、これにより、エルボー3610が複数の軸においてリングに対して回転することが可能になる。
【0303】
5.3.5 接続ポート
接続ポート3600は、空気回路4170への接続を可能にする。図8A図9Cに示す例示的患者インターフェース3000において、エルボー3610は、接続ポート3600の一部を形成する。エルボー3610は、結合解除構造として、位置決めおよび安定化構造3300上の管抗力を低減させるために、空気回路4170の動きを位置決めおよび安定化構造3300から連結解除させる。
【0304】
5.3.6 前額支持部
一形態において、患者インターフェース3000は、前額支持部3700を含む。他の形態において、患者インターフェース3000は、前額部支持部を含まない。有利なことに、図8A図9Cに示す例示的患者インターフェース3000は、(前額部支持部または患者の顔の前方において眼の高さにおいて配置される任意のフレームまたはストラップ部材への接続無く)シール形成構造3100をシーリング位置に保持することが可能な位置決めおよび安定化構造3300を含む。
【0305】
5.3.7 窒息防止弁
一形態において、患者インターフェース3000は、窒息防止弁を含む。いくつかの例において、患者インターフェース3000は、複数の窒息防止弁を含む。例えば、気流が2つの流体接続を介してシール形成構造3100へ提供される場合、2つの窒息防止弁を患者インターフェース3000へ設け、1つをシール形成構造3100への各流体接続に設ければよい。
【0306】
5.3.8 ポート
本技術の一形態において、患者インターフェース3000は、プレナムチャンバ3200内の量へのアクセスを可能にする1つ以上のポートを含む。一形態において、これにより、臨床医が補充酸素を供給することが可能になる。一形態において、これにより、プレナムチャンバ3200内のガス(例えば、圧力)の特性を直接測定することが可能になる。
【0307】
5.4 RPTデバイス
本技術の一態様によるRPTデバイス4000は、機械、空気圧式、および/または電気部品を含み、1つ以上のアルゴリズム4300(例えば全体的にせよ部分的にせよ本明細書に記載の方法のうちいずれか)を実行するように構成される。RPTデバイス4000は、例えば本文書中のいずれかに記載の呼吸状態のうち1つ以上の治療のために患者の気道へ送達される空気流れを生成するように構成され得る。
【0308】
一形態において、RPTデバイス4000は、少なくとも6cmHOまたは少なくとも10cmHOまたは少なくとも20cmHOの陽圧を維持しつつ、空気流れを-20L/分~+150L/分の範囲で送達できるように構築および配置される。
【0309】
RPTデバイスは、外部ハウジング4010を持ち得る。外部ハウジング4010は、上部4012および下部4014の2つの部分によって形成される。さらに、外部ハウジング4010は、1つ以上のパネル(単数または複数)4015を含み得る。RPTデバイス4000は、RPTデバイス4000の1つ以上の内部コンポーネントを支持するシャーシ4016を含む。RPTデバイス4000は、ハンドル4018を含み得る。
【0310】
空気圧RPTデバイス4000の空気圧経路は、1つ以上の空気回路アイテム(例えば、入口空気フィルタ4112、入口マフラー4122、空気を陽圧で供給することが可能な圧力生成器4140(例えば、送風機4142)、出口マフラー4124)ならびに1つ以上の変換器4270(例えば、圧力センサおよび流量センサ)を含み得る。
【0311】
空気経路アイテムのうち1つ以上は、空気圧ブロック4020と呼ばれる取り外し可能な一体構造内に配置され得る。空気圧ブロック4020は、外部ハウジング4010内に配置され得る。一形態において、空気圧ブロック4020は、シャーシ4016によって支持されるかまたはシャーシ4016の一部として形成される。
【0312】
RPTデバイス4000は、電源4210、1つ以上の入力デバイス4220、中央コントローラ、治療デバイスコントローラ、圧力生成器4140、1つ以上の保護回路、メモリ、変換器4270、データ通信インターフェース、および1つ以上の出力デバイスを有することができる。電気部品4200は、シングルプリント回路基板アセンブリ(PCBA)4202上に取り付けられ得る。一代替形態において、RPTデバイス4000は、1つよりも多くのPCBA4202を含み得る。
【0313】
5.4.1 RPTデバイス機械および空気圧式コンポーネント
RPTデバイスは、空気圧コンポーネント4100を含めて、以下のコンポーネントのうち1つ以上を一体ユニット中に含み得る。一代替形態において、以下のコンポーネントのうち1つ以上が、それぞれの別個のユニットとして配置され得る。
【0314】
5.4.1.1 空気フィルタ(単数または複数)
本技術の一形態によるRPTデバイスは、空気フィルタ4110または複数の空気フィルタ4110を含み得る。
【0315】
一形態において、入口空気フィルタ4112は、圧力生成器4140の空気圧経路上流の始まり部に配置される。
【0316】
一形態において、出口空気フィルタ4114(例えば抗菌ファクタ)は、空気圧ブロック4020の出口と、患者インターフェース3000との間に配置される。
【0317】
5.4.1.2 マフラー(単数または複数)
本技術の一形態によるRPTデバイスは、マフラー4120または複数のマフラー4120を含み得る。
【0318】
本技術の一形態において、入口マフラー4122は、空気圧経路内において圧力生成器4140の上方に配置される。
【0319】
本技術の一形態において、出口マフラー4124は、空気圧経路内において圧力生成器4140と患者インターフェース3000との間に配置される。
【0320】
5.4.1.3 圧力生成器
本技術の一形態において、空気の流れまたは供給を陽圧において生成する圧力生成器4140は、制御可能な送風機4142である。例えば、送風機4142は、1つ以上のインペラを備えたブラシレスDCモータ4144を含み得る。インペラが、ボリュート内へ配置され得る。送風機は、空気供給の送達を例えば約120リットル/分までの速度で、約4cmHO~約20cmHOの範囲の陽圧で、または他の形態において約30cmHOまで行うことができる。送風機については、以下の特許または特許出願のうちいずれか1つに記載があり得る。本明細書中、同文献全体を参考のため援用する:米国特許第7,866,944号、米国特許第8,638,014号、米国特許第8,636,479号およびPCT特許出願公開WO2013/020167。
【0321】
圧力生成器4140は、治療デバイスコントローラ4240の制御下にある。
【0322】
他の形態において、圧力生成器4140は、ピストン駆動ポンプ、高圧源(例えば、圧縮空気リザーバ)へ接続された圧力調節器、またはベローズであり得る。
【0323】
5.4.1.4 アンチスピルバック弁
本技術の一形態において、アンチスピルバック弁4160が、加湿器5000と、空気圧ブロック4020との間に配置され得る。アンチスピルバック弁は、水が加湿器5000から上流に(例えば、送風機のモータ4144へ)流れる危険性を低減させるように、構築および配置される。
【0324】
5.4.2 RPTデバイスアルゴリズム
上記したように、本技術のいくつかの形態において、中央制御装置は、非一時的なコンピュータで読出可能な記録媒体(例えば、メモリ)中に記録されたコンピュータプログラムとして表現された1つ以上のアルゴリズムを具現するように構成され得る。このアルゴリズムは、モジュールと呼ばれるグループにグループ付けられることが一般的だ。
【0325】
5.5 空気回路
本技術の一態様による空気回路4170は、使用時において空気流れが2つのコンポーネント(例えば、RPTデバイス4000および患者インターフェース3000)間に移動するように、構築および配置された導管またはチューブである。
【0326】
詳細には、空気回路4170は、空気圧ブロック4020の出口および患者インターフェースと流体接続し得る。空気回路は、空気送達管と呼ばれ得る。いくつかの場合において、吸息および呼気のための回路の別個の肢があり得る。他の場合において、単一の肢が用いられる。
【0327】
いくつかの形態において、空気回路4170は、(例えば空気温度の維持または上昇のために)空気回路中の空気を加熱するように構成された1つ以上の加熱要素を含み得る。加熱要素は、加熱ワイヤ回路の形態をとり得、1つ以上の変換器(例えば、温度センサ)を含み得る。一形態において、加熱ワイヤ回路は、空気回路4170の軸周囲にらせん状に巻かれ得る。加熱要素は、コントローラ(例えば、中央コントローラ)と連通し得る。加熱ワイヤ回路を含む空気回路4170の一実施例について、米国特許出願第8,733,349号に記載がある。本明細書中、同文献全体を参考のため援用する。
【0328】
5.5.1 酸素送達
本技術の一形態において、補充用酸素4180が、空気圧経路における1つ以上のポイント(例えば、空気圧ブロック4020の上流)、空気回路4170および/または患者インターフェース3000へ送達され得る。
【0329】
5.6 加湿器
5.6.1 加湿器の概要
本技術の一形態において、患者へ送達されるべき空気またはガスの絶対湿度を周囲空気に相対して変化させるための加湿器5000が提供される(例えば、図5Aに示すようなもの)。典型的には、加湿器5000は、患者気道へ送達される前に空気流れの(周囲空気に相対する)絶対湿度を増加させかつ温度を増加させるために、用いられる。
【0330】
加湿器5000は、加湿器リザーバ5110と、空気流れを受容する加湿器入口5002と、加湿された空気流れを送達させるための加湿器出口5004とを含み得る。図5Aおよび図5Bに示すようないくつかの形態において、加湿器リザーバ5110の入口および出口はそれぞれ、加湿器入口5002および加湿器出口5004であり得る。加湿器5000は、加湿器ベース5006をさらに含み得る。加湿器ベース5006は、加湿器リザーバ5110を受容するように適合され得、加熱要素5240を含み得る。
【0331】
5.6.1.1 伝導性部位
1つの配置によれば、リザーバ5110は、加熱要素5240からリザーバ5110中の一定量の液体への効率的な熱伝達を可能にするように構成された伝導性部位5120を含む。一形態において、伝導性部位5120はプレートとして配置され得るが、他の形状も適切であり得る。伝導性部位5120の全体または一部は、アルミニウムなどの熱伝導性材料(例えば、厚さおよそ2mm(例えば、1mm、1.5mm、2.5mmまたは3mm))、別の熱伝導金属また何らかのプラスチックによって構成され得る。いくつかの場合において、適切な熱伝導性が、適切なジオメトリのより低伝導性の材料により、達成され得る。
【0332】
5.6.1.2 加湿器リザーバドック
一形態において、加湿器5000は、加湿器リザーバ5110を受容するように構成された(図5Bに示すような)加湿器リザーバドック5130を含み得る。いくつかの配置において、加湿器リザーバドック5130は、ロック機能を含み得る(例えば、リザーバ5110を加湿器リザーバドック5130内に保持するように構成されたロックレバー5135)。
【0333】
5.6.1.3 水位インジケータ
加湿器リザーバ5110は、図5A図5Bに示すような水位インジケータ5150を含み得る。いくつかの形態において、水位インジケータ5150は、加湿器リザーバ5110中の水の量についての1つ以上の兆候を患者1000または介護者などのユーザへ提供し得る。水位インジケータ5150から提供されるこれら1つ以上の兆候は、最大の所定量の水、その任意の一部の通知を含み得る(例えば、25%、50%または75%または量(例えば、200ml、300mlまたは400ml))。
【0334】
5.7 用語集
本技術の開示目的のため、本技術の特定の形態において、以下の定義のうち1つ以上が適用され得る。本技術の他の形態において、別の定義も適用され得る。
【0335】
5.7.1 一般
空気:本技術の特定の形態において、空気は大気を意味し得、本技術の他の形態において、空気は、他の呼吸可能なガスの組み合わせ(例えば、酸素を豊富に含む大気)を意味し得る。
【0336】
雰囲気:本技術の特定の形態において、「雰囲気」という用語は、(i)治療システムまたは患者の外部、および(ii)治療システムまたは患者を直接包囲するものを意味するものとしてとられるべきである。
【0337】
例えば、加湿器に対する雰囲気湿度とは、加湿器を直接包囲する空気の湿度であり得る(例えば、患者が睡眠をとっている部屋の内部の湿度)。このような雰囲気湿度は、患者が睡眠をとっている部屋の外部の湿度と異なる場合がある。
【0338】
別の実施例において、雰囲気圧力は、身体の直接周囲または外部の圧力であり得る。
【0339】
特定の形態において、雰囲気(例えば、音響)ノイズは、例えばRPTデバイスから発生するかまたはマスクまたは患者インターフェースから発生するノイズ以外の、患者の居る部屋の中の背景ノイズレベルとみなすことができる。雰囲気ノイズは、部屋の外の発生源から発生し得る。
【0340】
自動的な気道陽圧(APAP)療法:SDB発症の兆候の存在または不在に応じて、例えば、呼吸間に最小限界と最大限界との間で治療圧力を自動的に調節することが可能なCPAP療法。
【0341】
持続的気道陽圧(CPAP)療法:治療圧力が患者の呼吸サイクルを通じてほぼ一定である呼吸圧療法。いくつかの形態において、気道への入口における圧力は、呼息時において若干上昇し、吸息時において若干低下する。いくつかの形態において、圧力は、患者の異なる呼吸サイクル間において変動する(例えば、部分的な上気道閉塞の兆候の検出に応答して増加され、部分的な上気道閉塞の通知の不在時において低減される)。
【0342】
流量:単位時間あたりに送出される空気の瞬時の量(または質量)。流量とは、瞬間の量を指し得る。場合によっては、流量について言及した場合、スカラー量(すなわち、大きさのみを有する量)を指す。他の場合において、流量について言及した場合、ベクトル量(すなわち、大きさおよび方向両方を持つ量)を指す。流量には、符号Qが付与され得る。「流量」を簡略的に「流れ」もしくは「気流」と呼ぶ場合もある。
【0343】
患者の呼吸の実施例において、流量は、患者の呼吸サイクルの吸気部分に対してノミナルに陽圧であり得るため、患者の呼吸サイクルの呼気部分に対して負であり得る。合計流量Qtは、RPTデバイスから退出する空気の流量である。通気流量Qvは、吐き出されたガスの流出を可能にするために通気孔から退出する空気の流量である。漏洩流量Qlは、患者インターフェースシステムまたは他の場所からの漏洩の流量である。呼吸流量Qrは、患者の呼吸器系中に受容される空気の流量である。
【0344】
加湿器:「加湿器」という単語は、患者の医療呼吸状態を改善するために治療上有益な量の水(HO)蒸気を空気流れへ提供することが可能な物理的構造を備えて構築、配置または構成された加湿装置を意味するものとして解釈される。
【0345】
漏洩:「漏洩」という用語は、意図しない空気流れとしてとられる。一実施例において、漏洩は、マスクと患者の顔との間のシールが不完全であることに起因して発生し得る。別の実施例において、漏洩は、周囲に対する回りエルボーにおいて発生し得る。
【0346】
ノイズ伝導(音響):本文書において、伝導ノイズとは、空気圧式経路(例えば、空気回路および患者インターフェースおよびその内部の空気)によって患者へ搬送されるノイズを指す。一形態において、伝導ノイズは、空気回路の端部における音圧レベルを測定することにより、定量化され得る。
【0347】
ノイズ放射(音響):本文書において、放射ノイズとは、周囲空気によって患者へ搬送されるノイズを指す。一形態において、放射ノイズは、当該対象の音響パワー/圧力レベルをISO3744に従って測定することにより、定量化され得る。
【0348】
ノイズ通気(音響):本文書において、通気ノイズとは、任意の通気(例えば、患者インターフェース中の通気穴)を通じた空気流れにより生成されるノイズを指す。
【0349】
患者:呼吸器疾患に罹患しているかまたはしていない人。
【0350】
圧力:単位面積あたりの力。圧力は、多様な単位で表現され得る(例えば、cmHO、g-f/cm、及びヘクトパスカル)。1cmHOは、1g-f/cmに等しく、およそ0.98ヘクトパスカルである。本明細書において、他に明記無き限り、圧力はcmHOの単位で付与される。
【0351】
患者インターフェース中の圧力には記号Pmが付与され、現時点においてマスク圧力Pmが達成すべき目標値を表す治療圧力には記号Ptが付与される。
【0352】
呼吸圧力治療(RPT):雰囲気に対して典型的には陽圧である治療圧力における空気供給の気道入口への付加。
【0353】
人工呼吸器:患者が呼吸動作の一部または全てを行い際に圧力補助を提供する機械的デバイス。
【0354】
5.7.1.1 材料
シリコーンまたはシリコーンエラストマー:合成ゴム。本明細書において、シリコーンについて言及される場合、液体シリコーンゴム(LSR)または圧縮成形シリコーンゴム(CMSR)を指す。市販のLSRの一形態として、Dow Corningによって製造されるSILASTIC(この登録商標下において販売される製品群に含まれる)がある。別のLSR製造業者として、Wackerがある。他に逆の明記無き限り、例示的形態のLSRのASTMD2240によって測定した場合のショアA(またはタイプA)押込み硬さは、約35~約45である。
【0355】
ポリカーボネート:ビスフェノールAカーボネートの熱可塑性ポリマーである。
【0356】
5.7.1.2 機械的特性
弾性:弾性変形時にエネルギーを吸収することおよび除荷時にエネルギーを解放することが可能な材料の能力。
【0357】
弾性のある:除荷時に実質的に全てのエネルギーを解放する。例えば特定のシリコーンおよび熱可塑性エラストマーを含む。
【0358】
硬度:材料自体の変形に抵抗する能力(例えば、ヤング係数または規格化されたサンプルサイズ上において測定された押込硬さスケールによって記述されたもの)。
「軟性」材料は、シリコーンまたは熱可塑性エラストマー(TPE)を含み得、例えば指圧力下において容易に変形し得る。
「硬質」材料は、ポリカーボネート、ポリプロピレン、鋼またはアルミニウムを含み得、例えば指圧力下において容易に変形し得ない。
【0359】
構造または構成要素の剛度(または剛性):構造または構成要素が負荷を受けたときに変形に抵抗する能力。負荷は、力またはモーメントであり得る(例えば、圧縮、伸張、屈曲またはねじれ)。構造または構成要素は、異なる方向において異なる抵抗を提供し得る。
【0360】
フロッピー構造または構成要素:自重を支持させられた際に比較的短期間(例えば、1秒)以内に形状を変化させる(例えば、屈曲する)構造または構成要素。
【0361】
剛性の構造または構成要素:使用時において典型的に遭遇する負荷を受けた際に実質的に形状変化の無い構造または構成要素。このような用途の実施例として、患者インターフェースを例えばおよそ20~30cmHOの圧力の負荷において患者気道入口に対して密閉した様態でセットアップおよび維持することがあり得る。
【0362】
一実施例として、I形ばりは、第2の直交方向と比較した第1の方向において、異なる曲げ剛性(曲げ負荷に対する抵抗)を含み得る。別の実施例において、構造または構成要素は、第1の方向においてはフロッピーであり得、第2の方向においては剛性であり得る。
【0363】
5.7.2 呼吸サイクル
無呼吸:いくつかの定義によれば、無呼吸とは、所定の閾値を下回った流れが例えば10秒間の継続期間にわたって継続した場合に発生したと言われる。閉塞性無呼吸とは、患者の労作にもかかわらず、何らかの気道閉塞により空気の流れが許されないときに発生すると言われる。中枢性無呼吸とは、気道が開通しているにも関わらず呼吸努力の低下または呼吸努力の不在に起因して無呼吸が検出された状態を指すと言われる。混合無呼吸とは、呼吸努力の低下または不在が気道閉塞と同時発生した状態を指すと言われる。
【0364】
5.7.3 解剖学的構造
5.7.3.1 顔の解剖学的構造
翼(Ala):外部の外壁または各鼻穴の「翼」(複数形:alar)
【0365】
Alare:鼻翼上の最外側の点。
【0366】
翼曲率(または鼻翼頂上)点:各翼の曲線状基準線における最後方点であり、翼および頬の結合によって形成される折り目において見受けられる。
【0367】
耳介:耳の視認できる部分全体。
【0368】
(鼻)骨格:鼻の骨格は、鼻骨、上顎骨の前頭突起および前頭骨の鼻部分を含む。
【0369】
(鼻)軟骨格:鼻の軟骨格は、中隔軟骨、外側軟骨、大軟骨および小軟骨を含む。
【0370】
鼻柱:鼻孔を分離する皮膚片であり、鼻尖点から上唇へ延びる。
【0371】
鼻柱角度:鼻穴の中点を通じて引かれる線と、鼻下点と交差しつつフランクフルト水平に対して垂直に引かれる線との間の角度。
【0372】
フランクフォート水平面:眼窩縁の最下側点から左耳点へ延びる線。耳点は、ノッチ上側から耳介の耳珠への最も深い点である。
【0373】
眉間:軟組織中に配置され、前額部の正中矢状において最も顕著な点。
【0374】
外側鼻軟骨:軟骨の概して三角形の板。その上側周縁は鼻骨および上顎骨の前頭突起へ取り付けられ、その下側周縁は大鼻翼軟骨へ接続される。
【0375】
大鼻翼軟骨:軟骨の板であり、外側鼻軟骨の下側に配置される。これは、鼻孔の前方部分の周囲において曲線状になる。その後端は、3つまたは4つの翼の小軟骨を含む強靱な線維膜により、上顎骨の前頭突起へ接続される。
【0376】
鼻孔(鼻穴):概して楕円体の翼穴であり、鼻腔への入口を形成する。鼻孔(nares)の単数形は鼻孔(naris)(鼻穴)である。これらの鼻孔は、鼻中隔によって分離される。
【0377】
鼻唇溝または鼻唇折り目:皮膚の折り目または溝であり、鼻の各側から口腔の角部へ延びて、頬を上唇から分離させる。
【0378】
鼻唇角:鼻柱と上唇との間の角度であり、鼻下点と交差する。
【0379】
下耳底点:耳介の顔の皮膚への取り付けの最低点。
【0380】
上耳底点:耳介の顔の皮膚への取り付けの最高点。
【0381】
鼻尖点:鼻の最も突出した点または先端であり、頭部の部分の残り部分の側面図中に確認され得る。
【0382】
人中:鼻中隔の下側境界から上唇領域中の唇の上部へ延びる正中線溝。
【0383】
ポゴニオン:軟組織上に配置された、顎の最前方中点。
【0384】
(鼻)堤:鼻堤は、鼻の正中線隆起であり、セリオンから鼻尖点へ延びる。
【0385】
矢状面:前方(前)から後方(後)へ続く垂直面である。正中矢状面は、右半分および左半分に分割する矢状面である。
【0386】
セリオン:軟組織上に配置された、前頭鼻骨縫合の領域上の最も凹状の点である。
【0387】
中隔軟骨(鼻):鼻中隔軟骨は、隔膜の一部であり、鼻腔の前部分を分割する。
【0388】
鼻翼最下点:翼ベースの下側周縁における点であり、翼ベースは上(上)唇の皮膚と接合する。
【0389】
鼻下点:軟組織上に配置され、鼻柱が正中矢状における上唇と合体する点。
【0390】
スプラメントン:下唇中点と軟組織ポゴニオンとの間の下唇の正中線中の最も凹状の点。
【0391】
5.7.3.2 頭蓋骨の解剖学的構造
前頭骨:前頭骨は、前額部として知られる領域に対応する大型垂直部分である前頭鱗を含む。
【0392】
下顎骨:下顎骨は、下側顎部を形成する。オトガイ隆起は、顎部の骨隆起であり、顎を形成する。
【0393】
上顎骨:上顎骨は、上側顎部を形成し、下顎骨の下側および眼窩の下側に配置される。上顎骨の前頭突起は、鼻の側部によって上方に突出し、その外側境界の部分を形成する。
【0394】
鼻骨:鼻骨は、2つの小さな長方形骨であり、個人によってサイズおよび形態が異なる。鼻骨は、顔の中間部分および上部分に並んで配置され、その接合により鼻の「ブリッジ」を形成する。
【0395】
鼻根点:前頭骨および2本の鼻骨の交差であり、眼と鼻のブリッジの上側との間に直接設けられた凹領域である。
【0396】
後頭骨:後頭骨は、頭蓋の裏および下側部分に配置される。後頭骨は、楕円穴である大後頭孔を含み、この穴を通じて、頭蓋内腔が椎管と連痛する。大後頭孔の後側の曲面板は、後頭鱗である。
【0397】
眼窩:頭蓋骨中の骨空洞であり、眼球を含む。
【0398】
頭頂骨:頭頂骨は、相互に接合されると頭蓋の頂部および側部を形成する骨である。
【0399】
側頭骨:側頭骨は、頭蓋骨のベースおよび側部上に配置され、こめかみとして知られる顔の部分を支持する。
【0400】
頬骨:顔に含まれる2つの頬骨は、顔の上側部分および外側部分中に配置され、頬の隆起を形成する。
【0401】
5.7.3.3 呼吸器系の解剖学的構造
横隔膜:シート状の筋肉であり、胸郭下部上に延びる。横隔膜は、心臓、肺および肋骨を含む胸腔を腹腔から分離させる。横隔膜が収縮すると、胸腔の容量が増加し、肺中に空気が引き込まれる。
【0402】
喉頭:声帯ひだを収容する喉頭または発声器であり、咽頭の下部(下咽頭)を気管へ接続させる。
【0403】
肺:ヒトにおける呼吸臓器。肺の伝導性ゾーンは、気管、気管支、気管支、および終末細気管支を含む。呼吸領域は、呼吸細気管支、肺胞管および肺胞を含む。
【0404】
鼻腔:鼻腔(または鼻窩)は、顔の中央の鼻の上方および後方の空気が充填された大きな空間である。鼻腔は、鼻中隔と呼ばれる垂直フィンによって2つに分割される。鼻腔の側部には、鼻甲介または鼻介骨と呼ばれる3つの水平伸長物がある。鼻腔の前方には鼻があり、後方は後鼻孔を介して鼻咽頭内に繋がる。
【0405】
咽頭:鼻腔の直接下側(下方)に配置されかつ食道および喉頭の上方に配置された咽喉の部分。咽頭は、従来から以下の3つの部分へ区分される:鼻咽頭(上咽頭)(咽頭の鼻部分)、口咽頭(中咽頭)(咽頭の口部分)、および咽喉(下咽頭)。
【0406】
5.7.4 患者インターフェース
窒息防止弁(AAV):マスクシステムの構成要素またはサブアセンブリであり、フェールセーフ様態での雰囲気中への開口により、患者による過度のCOの再呼吸の危険性を低減させる。
【0407】
エルボー:エルボーは、内部を移動する空気の流れの軸を方向付けて、角度を通じて方向を変化させる構造の実施例である。一形態において、角度はおよそ90度であり得る。別の形態において、角度は、90度超過または未満であり得る。エルボーは、ほぼ円形の断面を持ち得る。別の形態において、エルボーは、楕円または矩形の断面を持ち得る。特定の形態において、エルボーは、噛み合い構成要素に対して例えば約360度で回転可能であり得る。特定の形態において、エルボーは、噛み合いコンポーネントから例えばスナップ接続を介して取り外すことが可能であり得る。特定の形態において、エルボーは、製造時にワンタイムスナップを介して噛み合いコンポーネントへ組み付けることが可能である一方、患者が取り外すことはできない。
【0408】
フレーム:フレームは、ヘッドギアを接続する2つ以上の点間の引張荷重を支持するマスク構造を意味するものとしてとられる。マスクフレームは、マスク中の非気密負荷支持構造であり得る。しかし、いくつかの形態のマスクフレームは、気密であってもよい。
【0409】
ヘッドギア:ヘッドギアは、頭部上において使用されるように設計された、一形態の位置決めおよび安定化構造を意味するものとしてとられる。例えば、ヘッドギアは、患者インターフェースを呼吸治療の送達のために患者の顔上の所定位置に配置および保持するように構成された1つ以上の支柱、タイおよび補剛材の集合を含み得る。いくつかのタイは、柔らかい可撓性の弾性材料(例えば、発泡材料および布地の層状複合材)によって形成される。
【0410】
膜:膜は、典型的には肉薄の要素を意味するものとしてとられ、好適には屈曲に対して実質的に抵抗せずかつ伸縮に対しては抵抗する。
【0411】
プレナムチャンバ:マスクプレナムチャンバは、空間の容積を少なくとも部分的に封入する壁を有する患者インターフェースの一部を意味するものとしてとられ、容積中の空気は、加圧されて使用時において気圧を超える。シェルは、マスクプレナムチャンバの壁の一部を形成し得る。
【0412】
シール:名詞(「シール」)として用いられる場合は構造を指し得、動詞(「密閉(する)」)として用いられる場合はその効果を指し得る。2つの要素は、別個の「シール」要素自体を必要とすることなく両者間において「シール」するかまたは「密閉」効果を得るように、構築および/または配置され得る。
【0413】
シェル:シェルは、屈曲、引っ張りおよび圧縮剛性を有する曲線状の比較的肉薄構造を意味するものとしてとられる。例えば、マスクの曲線状構造壁は、シェルであり得る。いくつかの形態において、シェルはファセットされ得る。いくつかの形態において、シェルは気密であり得る。いくつかの形態において、シェルは気密でない場合もある。
【0414】
補剛材:補剛材は、別の構成要素の剛軟度を少なくとも1つの方向において増加させるように設計された構造構成要素を意味するものとしてとられる。
【0415】
支柱:支柱は、別の構成要素の圧縮抵抗を少なくとも1つの方向において増加させるように設計された構造構成要素を意味するものとしてとられる。
【0416】
スイベル(名詞):構成要素のサブアセンブリであり、共通軸の周囲において好適には独立して好適には低トルク下において回転するように構成される。一形態において、スイベルは、少なくとも360度の角度で回転するように構成され得る。別の形態において、スイベルは、360度未満の角度で回転するように構成され得る。空気送達導管の文脈において用いられる場合、構成要素のサブアセンブリは好適には、一対組み合わせの円筒導管を含む。使用時において、スイベルからの空気流れの漏れはほとんど無い。
【0417】
タイ(名詞):張力に抵抗するように設計された構造。
【0418】
通気部:(名詞):マスクまたは導管の内部の周囲空気への空気流れを可能にする構造であり、吐き出されたガスの臨床的に有効な洗い流しを可能にする。例えば、臨床的に有効な洗い流しにおいては、約10リットル/分~約100リットル/分の流量がマスク設計および治療圧力に応じて用いられ得る。
【0419】
5.7.5 構造の形状
本技術による製品は、1つ以上の三次元機械構造(例えば、マスククッションまたはインペラ)を含み得る。三次元構造は、二次元表面によって制限され得る。これらの表面は、関連付けられた表面の方向、位置、機能または他の何らかの特性を記述するためのラベルを用いて区別され得る。例えば、構造は、前表面、後表面、内面および外面のうち1つ以上を含み得る。別の実施例において、シール形成構造は、顔接触(例えば、外側の)表面と、別個の非顔接触(例えば、下側または内側の)表面を含み得る。別の実施例において、構造は、第1の表面および第2の表面を含み得る。
【0420】
三次元構造の形状および表面の説明を容易にするために、構造の表面を通じた点pにおける断面について先ず検討する。図3B図3Fを参照されたい。図3B図3Fは、表面上における点pにおける断面例と、その結果得られる平面曲線の例とを示す。図3B図3Fは、pにおける外向き法線ベクトルも示す。pにおける外向き法線ベクトルは、表面から離隔方向に延びる。いくつかの実施例において、架空の小さな人が表面上に直立している観点から、この表面について説明する。
【0421】
5.7.5.1 一次元における曲率
pにおける平面曲線の曲率は、符号(例えば、正、負)および大きさ(例えば、pにおいて曲線に接する円形の1/半径)を持つものとして記述され得る。
【0422】
正の曲率:pにおける曲線が外向き法線に向かって曲がる場合、その点における曲率は、正の値を持つものとしてとられる(この架空の小さな人が点pから立ち去る場合、上り坂を歩行する必要がある)。図3B図3Cと比較して比較的大きな正の曲率)および図3C図3Bと比較して比較的小さな正の曲率)を参照されたい。このような曲線を、凹状と呼ぶことが多い。
【0423】
ゼロ曲率:pにおける曲線が直線である場合、曲率はゼロとしてとられる(この架空の小さな人が点pから立ち去る場合、上向きでも下向きでもない水平面を歩行することができる)。図3Dを参照されたい。
【0424】
負の曲率:pにおける曲線が外向き法線から離隔方向に曲がる場合、その点およびその方向における曲率は、負の値を持つものとしてとられる(この架空の小さな人が点pから立ち去る場合、下り坂を歩行する必要がある)。図3E図3Fと比較して比較的小さな負の曲率)および図3F図3Eと比較して比較的大きな負の曲率)を参照されたい。このような曲線は、凸状と呼ばれることが多い。
【0425】
5.7.5.2 二次元表面の曲率
本技術による二次元表面上の所与の点における形状の記述は、複数の垂直断面を含み得る。複数の断面は、外向き法線(「法平面」)を含む面において表面を切断し得、各断面は、異なる方向においてとられ得る。各断面の結果、対応する曲率を有する平面曲線が得られる。その点における異なる曲率は、同一符号または異なる符号を持ち得る。その点における曲率はそれぞれ、(例えば、比較的小さな)大きさを有する。図3B図3F中の平面曲線は、特定の点におけるこのような複数の断面の例であり得る。
【0426】
主要な曲率および方向:曲線の曲率が最大値および最小値をとる法平面の方向を主要な方向と呼ぶ。図3B図3Fの実施例において、最大曲率は図3Bにおいて発生し、最小は図3Fにおいて発生するため、図3Bおよび図3Fは、主要な方向における断面である。pにおける主要な曲率は、主要な方向における曲率である。
【0427】
表面の領域:表面上の連結された点の集合。領域内のこの1組の点は、類似の特性(例えば、曲率または符号)を持ち得る。
【0428】
鞍状領域:(上り坂または下り坂を歩行し得る架空の人が向く方向に応じて)各点において主要な曲率が反対の符号(すなわち、片方が正の符号および他方が負の符号)を有する領域。
【0429】
ドーム領域:各点において主要な曲率が同一符号(双方とも正(「凹状ドーム」)または双方とも負(「凸状ドーム」))を持つ領域。
【0430】
円筒領域:1つの主要な曲率がゼロ(または例えば製造交差内のゼロ)をとり、他方の主要な曲率が非ゼロである領域。
【0431】
平面領域:主要な曲率双方がゼロであるか(または例えば製造交差内のゼロである)表面の領域。
【0432】
表面の縁部:表面または領域の境界または限界。
【0433】
経路:本技術の特定の形態において、「経路」は、数学的-トポロジー的意味合いにおける経路(例えば、表面上におけるf(0)からf(1)への連続空間曲線)を意味するものとしてとられる。本技術の特定の形態において、「経路」は、例えば表面上の1組の点を含むルートまたはコースとして記述され得る。(架空の人の経路は、表面上において歩行する場所であり、庭の経路に類似する)。
【0434】
経路長さ:本技術の特定の形態において、「経路長さ」とは、表面に沿ったf(0)からf(1)への距離(すなわち、表面上の経路に沿った距離)を指すものとしてとられる。表面上の2つの点間において1つよりも多くの経路があり得、このような経路は、異なる経路長さを持ち得る。(架空の人の経路長さは、表面上を経路に沿って歩行する距離である)。
【0435】
直線距離:直線距離は、表面上の2つの点間の距離であるが、表面は考慮しない。平面領域上において、表面上の2つの点間の直線距離と同一の経路長さを有する表縁上の距離がある。非平面表面上において、2つの点間の直線距離と同一の経路長さを有する経路は存在し得ない。(架空の人にとって、直線距離は、「カラスが飛ぶ」距離に対応する)。
【0436】
5.7.5.3 空間曲線
空間曲線:平面曲線と異なり、空間曲線は、任意の特定の平面内に必ずしも存在しない。空間曲線は閉鎖され得る。すなわち、終点を有さない。空間曲線は、三次元空間の一次元ピースとみなされ得る。DNA螺旋の鎖上を歩行している架空の人物は、空間曲線に沿って歩行する。典型的なヒトの左耳は、左手螺旋を含む(図3Qを参照)。典型的なヒトの右耳は、右手螺旋を含む(図3Rを参照)。図3Sは、右手螺旋を示す。構造の縁部(例えば、膜またはインペラの縁部)は、空間曲線をたどり得る。一般的に、空間曲線は、空間曲線上の各点における曲率およびねじれによって記述され得る。ねじれとは、平面から発生する曲線の様態の尺度である。ねじれは、符号および大きさを有する。空間曲線上の点におけるねじれは、当該点における接線ベクトル、法線ベクトルおよび従法線ベクトルに対して特徴付けられ得る。
【0437】
接線単位ベクトル(または単位接線ベクトル):曲線上の各点について、当該点におけるベクトルは、当該点からの方向および大きさを指定する。接線単位ベクトルとは、当該点における曲線と同じ方向を向く単位ベクトルである。架空の人物が曲線に沿って飛行しており、特定の点において自身の車両から落ちた場合、接線ベクトルの方向は、その人物が移動しているはずの方向である。
【0438】
単位法線ベクトル:架空の人物が曲線に沿って移動している場合、この接線ベクトルそのものが変化する。接線ベクトルが変化している方向と同じ方向を向く単位ベクトルは、単位主法線ベクトルと呼ばれる。これは、接線ベクトルに対して垂直である。
【0439】
従法線単位ベクトル:従法線単位ベクトルは、接線ベクトルおよび主法線ベクトル双方に対して垂直である。その方向は、右手の法則(例えば図3Pを参照)または表すあるいは左手の法則(図3O)によって決定され得る。
【0440】
接触平面:単位接線ベクトルおよび単位主法線ベクトルを含む平面。図3Oおよび図3Pを参照されたい。
【0441】
空間曲線のねじれ:空間曲線の点におけるねじれとは、当該点における従法線単位ベクトルの変化速度の大きさである。これは、曲線の接触平面からの逸脱の程度を測定する。平面内にある空間曲線のねじれはゼロである。空間曲線の接触平面からの逸脱が比較的少量である場合、その空間曲線のねじれの大きさは比較的小さい(例えば、緩やかに傾斜する螺旋状経路)。空間曲線の接触平面からの逸脱が比較的大量である場合、その空間曲線のねじれの大きさは比較的大きい(例えば、急勾配に傾斜する螺旋状経路)。図3Sを参照して、T2>T1であるため、図3Sの螺旋の最上部コイルの近隣のねじれの大きさは、図3Sの螺旋の最下部コイルのねじれの大きさよりも大きい。
【0442】
図3Pの右手の法則を参照して、右手従法線の方向に向かって曲がる空間曲線は、右手方向に正のねじれとしてみなされ得る(例えば、図3Sに示すような右手螺旋)。右手従法線方向から離隔方向を向く空間曲線は、右手の負のねじれを持つものとしてみなされ得る(例えば、左手螺旋)。
【0443】
同様に、左手の法則(図3Oを参照)を参照して、左手従法線方向を向く空間曲線は、左手の正のねじれ(例えば、左手螺旋)を持つものとしてみなされ得る。よって、左手の正の方向は、右手の負の方向に相当する。図3Tを参照されたい。
【0444】
5.7.5.4 穴
表面は、一次元穴を持ち得る(例えば、平面曲線または空間曲線によって境界付けられた穴)。穴を含む肉薄構造(例えば、膜)の場合、この構造は、一次元穴を有するものとして記述され得る。例えば、図3Iに示す構造の表面中の一次元穴が平面曲線によって境界付けられる様子を参照されたい。
【0445】
構造は、二次元穴(例えば、表面によって境界付けられた穴)を持ち得る。例えば、可膨張性タイヤは、タイヤ内面によって境界付けられた二次元穴を有する。別の実施例において、空気またはゲルのための空洞を備えたブラダーは、二次元穴を持ち得る。例えば図3Lのクッション、および二次元穴を境界付ける内面が示される図3Mおよび図3Nにおける図3Lの例示的断面を参照されたい。さらに別の実施例において、導管は、(例えばその入口またはその出口において)一次元穴を含み得、導管の内面によって境界付けられた二次元穴を含み得る。図3Kに示す構造を通じておりかつ図示のように表面によって境界付けられた二次元穴も参照されたい。
【0446】
5.8 他の注意事項
他に文脈から明確に分かる場合および一定の範囲の値が提供されていない限り、下限の単位の1/10、当該範囲の上限と下限の間、および記載の範囲の他の任意の記載の値または介入値に対する各介入値は本技術に包含されることが理解される。介入範囲中に独立的に含まれるこれらの介入範囲の上限および下限が記載の範囲における制限を特に超えた場合も、本技術に包含される。記載の範囲がこれらの制限のうち1つまたは双方を含む場合、これらの記載の制限のいずれかまたは双方を超える範囲も、本技術に包含される。
【0447】
さらに、本明細書中に値(単数または複数)が本技術の一部として具現される場合、他に明記無き限り、このような値が近似され得、実際的な技術的実行が許容または要求する範囲まで任意の適切な有効桁までこのような値を用いることが可能であると理解される。
【0448】
他に明記しない限り、本明細書中の全ての技術用語および科学用語は、本技術が属する分野の当業者が一般的に理解するような意味と同じ意味を持つ。本明細書中に記載の方法および材料に類似するかまたは等しい任意の方法および材料を本技術の実践または試験において用いることが可能であるが、限られた数の例示的方法および材料が本明細書中に記載される。
【0449】
特定の材料が構成要素の構築に好適に用いられるものとして記載されているが、特性が類似する明白な代替的材料が代替物として用いられる。さらに、それとは反対に記載無き限り、本明細書中に記載される任意および全ての構成要素は、製造可能なものとして理解されるため、集合的にまたは別個に製造され得る。
【0450】
本明細書中及び添付の特許請求の範囲において用いられるように、単数形である「a」、「an」および「the」は、文脈から明らかにそうでないことが示されない限り、その複数の均等物を含む点に留意されたい。
【0451】
本明細書中に記載される公開文献は全て、これらの公開文献の対象である方法および/または材料の開示および記載、参考のために援用される。本明細書中に記載の公開文献は、本出願の出願日前のその開示内容のみのために提供するものである。本明細書中のいずれの内容も、本技術が先行特許のためにこのような公開文献に先行していないと認めるものと解釈されるべきではない。さらに、記載の公開文献の日付は、実際の公開文献の日付と異なる場合があり、個別に確認が必要であり得る。
【0452】
「comprises」および「comprising」という用語は、要素、構成要素またはステップを非排他的な意味合いで指すものとして解釈されるべきであり、記載の要素、構成要素またはステップが明記されていない他の要素、構成要素またはステップと共に存在、利用または結合され得ることを示す。
【0453】
詳細な説明において用いられる見出しは、読者の便宜のためのものであり、本開示または特許請求の範囲全体において見受けられる内容を制限するために用いられるべきではない。これらの見出しは、特許請求の範囲または特許請求の範囲の制限の範囲の解釈において用いられるべきではない。
【0454】
本明細書中の技術について、特定の実施例を参照して述べてきたが、これらの実施例は本技術の原理および用途を例示したものに過ぎないことが理解されるべきである。いくつかの場合において、用語および記号は、本技術の実施に不要な特定の詳細を示し得る。例えば、「first(第1の)」および「second(第2の)」(など)という用語が用いられるが、他に明記無き限り、これらの用語は任意の順序を示すことを意図しておらず、別個の要素を区別するために用いられる。さらに、本方法におけるプロセスステップについての記載または例示を順序付けて述べる場合があるが、このような順序は不要である。当業者であれば、このような順序が変更可能でありかつ/またはその態様を同時にまたはさらに同期的に行うことが可能であることを認識する。
【0455】
よって、本技術の意図および範囲から逸脱することなく、例示的な実施例において多数の変更例が可能であり、また、他の配置構成が考案され得ることが理解されるべきである。
【符号の説明】
【0456】
5.9 参照符号のリスト
1000 患者
1100 同床者
3000 患者インターフェース
3100 シーリングまたはシール形成構造
3150 クレードルクッションモジュール
3160 枕クッションモジュール
3165 鼻枕
3200 プレナムチャンバ
3300 位置決めおよび安定化構造/ヘッドギア
3301 管上側部からの力
3302 ストラップからの力
3303 シーリング力の張力
3304 上方管部
3305 上側管部の第1の端部
3306 上側管部の第2の端部
3308 タブ横側の点
3310 ストラップ
3313 スプリット
3320 タブ
3321 スリット角度
3322 スリット
3323 スリットの長さ軸
3324 トラフ
3325 ストラップ近隣の管に沿った点
3326 スリット上端
3327 スリット下端
3328 タブ表面
3329 後側
3331 タブ上縁
3332 タブ下縁
3347 曲線状縁部
3348 患者と接触する側
3349 患者と接触しない側
3350 空気送達管
3353 経路
3354 経路に対する接線
3355 スリット隣接部
3362 延長可能な蛇腹構造
3363 延長不可能な管部
3364 スリーブ
3370 隆起部接続部
3372 隆起部
3373 溝部
3374 曲線状の隆起部位
3375 直線状隆起部位
3376 曲線状の溝部位
3377 直線状溝部位
3382 内部隆起部
3383 内部溝部
3390 流体接続開口部
3400 通気部
3600 接続ポート
3610 エルボー
4000 RPTデバイス
4010 外部ハウジング
4012 上部
4014 下部
4015 パネル
4016 シャーシ
4018 ハンドル
4020 空気圧ブロック
4100 空気圧コンポーネント
4110 空気フィルタ
4112 入口空気フィルタ
4122 入口マフラー
4124 出口マフラー
4140 圧力生成器
4142 制御可能な送風機
4144 ブラシレスDCモータ
4170 空気回路
4200 電気コンポーネント
4202 プリント回路基板アセンブリ(PCBA)
4210 電気電源
4220 入力デバイス
4270 変換器
5000 加湿器
5002 加湿器入口
5004 加湿器出口
5006 加湿器ベース
5110 加湿器リザーバ
5130 加湿器リザーバドック
5240 加熱要素
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図2I
図2J
図2K
図2L
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図3I
図3J
図3K
図3L
図3M
図3N
図3O
図3P
図3Q
図3R
図3S
図3T
図3U
図3V
図3W
図3X
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図10F
図10G
図10H
図10I
図10J
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図12C
図12D
図12E
図12F
図13