(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-27
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】中性脂肪及びコレステロール低減用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 36/752 20060101AFI20220128BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20220128BHJP
A61K 131/00 20060101ALN20220128BHJP
【FI】
A61K36/752
A61P3/06
A61K131:00
(21)【出願番号】P 2017191634
(22)【出願日】2017-09-29
【審査請求日】2020-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】312017444
【氏名又は名称】ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507234438
【氏名又は名称】広島県公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼寺 恒慈
(72)【発明者】
【氏名】田井 章博
【審査官】柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-003873(JP,A)
【文献】特開2006-182777(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/752
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘスペリジナーゼ処理された柑橘類の果皮抽出物を有効成分として含有する血中中性脂肪低減用組成物。
【請求項2】
前記果皮抽出物の含有量が固形分として0.5~15質量%である請求項1に記載の血中中性脂肪低減用組成物。
【請求項3】
ヘスペリジナーゼ処理された柑橘類の果皮抽出物を有効成分として含有し、該果皮抽出物の含有量が固形分として0.1~2質量%である肝中性脂肪低減用組成物。
【請求項4】
ヘスペリジナーゼ処理された柑橘類の果皮抽出物を有効成分として含有する血中コレステロール低減用組成物。
【請求項5】
前記果皮抽出物の含有量が固形分として7質量%以上である請求項4に記載の血中コレステロール低減用組成物。
【請求項6】
ヘスペリジナーゼ処理された柑橘類の果皮抽出物を有効成分として含有し、該果皮抽出物の含有量が固形分として7質量%以上であるHDLコレステロール増加用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、β-グルコシダーゼ処理された柑橘類の果皮抽出物を有効成分として含有する中性脂肪及びコレステロール低減用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、高カロリ食、飲酒・喫煙、運動不足、ストレス等の生活習慣が原因で生ずる病気として、肥満、高血圧、高血糖、高脂血症等の生活習慣病が知られている。これらの生活習慣病は、心筋梗塞、脳梗塞等の成人病の原因とされる動脈硬化症の危険因子として知られ、社会的に重大な問題となっている。一般に、動脈硬化症の危険因子である生活習慣病のうち複数種類の生活習慣病を併発している症状をメタボリック症候群という。より具体的には、内臓脂肪蓄積等の中心性肥満の症状がある他に、高血圧、高血糖、高中性脂肪血症及び低HDLコレステロール血症のうち2つ以上の症状に該当する場合をいう。体内における中性脂肪及びコレステロール等の脂質代謝の改善は、食生活の改善、適度な運動以外に根本的な治療法が確立されていないのが現状である。
【0003】
従来より、特許文献1に開示されるように、副作用を伴うことがない天然成分由来の柑橘類からの極性溶媒抽出物が体内の脂質代謝において、血中又は肝臓中の中性脂肪及びコレステロールレベルを低減させる作用を有することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、天然成分を有効成分として利用する方法では、依然として脂質代謝を改善する効果が不十分であるという問題があった。
本発明の目的とするところは、優れた脂質代謝改善作用を有する中性脂肪及びコレステロール低減用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、β-グルコシダーゼ処理された柑橘類の果皮抽出物を有効成分として使用することにより、優れた中性脂肪及びコレステロールの低減効果等を発揮できることを見出したことに基づくものである。
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様では、β-グルコシダーゼ処理された柑橘類の果皮抽出物を有効成分として含有する血中中性脂肪低減用組成物が提供される。前記果皮抽出物の含有量が固形分として0.5~15質量%であってもよい。
【0008】
本発明の別の態様では、β-グルコシダーゼ処理された柑橘類の果皮抽出物を有効成分として含有し、該果皮抽出物の含有量が固形分として0.1~2質量%である肝中性脂肪低減用組成物が提供される。
【0009】
本発明の別の態様では、β-グルコシダーゼ処理された柑橘類の果皮抽出物を有効成分として含有する血中コレステロール低減用組成物が提供される。前記果皮抽出物の含有量が固形分として7質量%以上であってもよい。
【0010】
本発明の別の態様では、β-グルコシダーゼ処理された柑橘類の果皮抽出物を有効成分として含有し、該果皮抽出物の含有量が固形分として7質量%以上であるHDLコレステロール増加用組成物が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、優れた脂質代謝改善作用を発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】試験例2の血中中性脂肪低減作用を示すグラフ。
【
図2】試験例2の肝中性脂肪低減作用を示すグラフ。
【
図3】試験例2の血中コレステロール低減作用を示すグラフ。
【
図4】試験例2のHDLコレステロール増加作用を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
以下、本発明の血中中性脂肪低減用組成物を具体化した第1実施形態を説明する。本実施形態の血中中性脂肪低減用組成物は、有効成分としてβ-グルコシダーゼ処理された柑橘類の果皮抽出物を含有する。本実施形態の柑橘類の果皮抽出物における柑橘類の種類としては、特に限定されず、例えばレモン、ライム、シークワサー、スダチ、ユズ、ダイダイ、カボス等の香酸柑橘類、グレープフルーツ、ネーブルオレンジ、バレンシアオレンジ、サワーオレンジ、ハッサク、温州ミカン、イヨカン、ポンカン、あま夏等が挙げられる。これらの素材は、1種類のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中で、エリオシトリン等のポリフェノールを多く含有するとともに、血中中性脂肪低減作用に優れるレモンが好ましい。
【0014】
果皮抽出物を得るための素材としては、果皮(アルベド、フラベド)を含む素材であれば適宜採用することができ、果皮そのものの他、果皮を含む材料として、果実、果実から果汁を得た後の果実の搾汁残渣を使用してもよい。果実の搾汁残渣は、果皮、じょうのう膜、さのうの一部、果汁の一部、種子等が含まれる。
【0015】
柑橘類の果皮抽出物は、果皮を含む材料を粉砕処理し、抽出溶媒を加えて、固形分を除去することにより得られる。粉砕処理は、公知の粉砕機、例えば微粉砕機、石臼式摩砕機、剪断式粉砕機、クラッシャー等を用いることができる。抽出溶媒としては、水、親水性有機溶媒、又は含水親水性有機溶媒が挙げられる。親水性有機溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどの低級アルコール、グリセリン、氷酢酸、アセトン、酢酸エチル等が挙げられる。これらの親水性有機溶媒を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、エリオシトリン等のポリフェノールの抽出効率、生体への適用性に優れる観点から水、エタノールが好ましく、水がより好ましい。溶媒の使用容量は、果皮を含む材料の質量に対して好ましくは0.5~20倍量、より好ましくは1~10倍量である。水の使用容量が0.5倍量以上の場合には、目的成分の抽出率をより向上させることができる。一方、水の使用容量が20倍量以下の場合には、濃縮等の工程の処理時間をより短縮することができ、作業性をより向上させることができる。抽出時間は、溶媒の種類等により適宜設定されるが、溶解成分を抽出溶媒中に十分に移行させるために、好ましくは30分以上、より好ましくは1時間以上である。
【0016】
抽出溶媒として水が用いられる場合、水抽出処理時の温度は、抽出効率及び成分の安定性の観点から、好ましくは4~40℃、より好ましくは20~25℃である。抽出処理後の固液分離には、遠心分離や膜分離などの公知の分離方法が採用可能であるが、簡便であることから遠心分離が好適に採用される。なお、遠心分離や膜分離の前に、必要に応じてメッシュ濾過もしくはデカンテーションにより、大きな固形物を予め除去しておくことが好ましい。得られた粉砕物は、例えば裏ごし機(フィニッシャー)を用いて固形分を除去してもよい。得られた抽出物は、必要により、減圧濃縮等の方法を用いて濃縮処理してもよい。
【0017】
次に、上記のように得られた柑橘類の果皮抽出物がβ-グルコシダーゼ処理される。β-グルコシダーゼ処理により、血中中性脂肪低減作用を向上させる。β-グルコシダーゼは、フラバノン配糖体のグルコシド結合を切断する処理である。β-グルコシダーゼとして具体的には、ヘスペリジナーゼ、セロビアーゼ、ゲンチオビアーゼ、ルチノシダーゼ等を挙げることができる。β-グルコシダーゼ処理は、抽出液にβ-グルコシダーゼを添加する、あるいは、β-グルコシダーゼ活性を有する酵素を担体に担持させ、これを接触させる処理を挙げることができる。担体としては、セルロース等の多糖類、アルギン酸カルシウムやゼラチン等のゲル状担体、ポリビニルアルコールやポリスチレン等の有機系担体、多孔質ガラスや多孔質セラミック等の無機多孔質を用いることができる。β-グルコシダーゼの使用量としては、適宜設定されるが、例えばヘスペリジナーゼ力価85U/g以上のヘスペリジナーゼを使用する場合、反応溶液中において、好ましくは0.0001~0.8質量%、より好ましくは0.0003~0.03質量%である。基質濃度を基準とする場合、β-グルコシダーゼの使用量としては、基質濃度の好ましくは1/300~30倍量、より好ましくは1/100~1倍量である。
【0018】
β-グルコシダーゼ処理の温度は、酵素の種類にもよるが、好ましくは10~70℃の範囲、より好ましくは30~60℃である。処理時間としては、処理液中の基質又は反応生成物を指標とすることにより適宜設定されるが、好ましくは10分~24時間、より好ましくは30分~2時間である。基質及び反応生成物として、例えばエリオシトリン(エリオジクチオール7-ルチノシド)及びエリオジクチオール7-O-グルコシドを挙げることができる。β-グルコシダーゼ処理終了後に、例えば、100℃に加熱してβ-グルコシダーゼを失活又は除去することが好ましい。得られたβ-グルコシダーゼ処理された果皮抽出物は、そのまま血中中性脂肪低減用組成物として適用してもよいが、摂取の容易性、保存安定性に優れる観点から、減圧濃縮、凍結乾燥等の方法を用いて粉末化して使用されることが好ましい。
【0019】
本実施形態の血中中性脂肪低減用組成物は、上述した有効成分により優れた血中中性脂肪低減作用を発揮する。よって、本実施形態の血中中性脂肪低減用組成物は、血中中性脂肪低減作用の発揮を目的とした飲食品、医薬品、医薬部外品等の各分野に好ましく適用することができる。上述した有効成分をそのまま血中中性脂肪低減用組成物として構成してもよく、食生活の改善を目的とした飲食品に有効成分を配合して飲食品自体を血中中性脂肪低減用組成物として構成してもよい。
【0020】
飲食品を血中中性脂肪低減用組成物として構成する場合、飲食品中における有効成分の含有量は、固形分として好ましくは0.5~15質量%、より好ましくは1~6質量%である。飲食品に含まれる有効成分の含有量が、かかる配合量範囲内の場合、血中中性脂肪低減作用をより向上させる。
【0021】
血中中性脂肪低減用組成物に適用される飲食品は、特に限定されず、一般食品、健康食品、機能性食品、栄養補助食品、サプリメント、特定保健用食品、機能性表示食品、病者用食品、特に、高脂血症患者の食事用食品等、あらゆる食品に適用することができる。
【0022】
本実施形態の血中中性脂肪低減用組成物を、医薬品として使用する場合は、服用(経口摂取)により投与する場合の他、血管内投与、経腸投与、経皮投与、腹腔内投与等のあらゆる投与方法を採用することが可能である。剤形としては、特に限定されないが、例えば、散剤、粉剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、丸剤、坐剤、液剤、注射剤等として構成してもよい。また、添加剤として賦形剤、基剤、乳化剤、溶剤、安定剤等を配合してもよい。
【0023】
本実施形態の血中中性脂肪低減用組成物によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態の血中中性脂肪低減用組成物では、β-グルコシダーゼ処理された柑橘類の果皮抽出物を有効成分として含有する。したがって、優れた血中中性脂肪低減作用を発揮することができる。
【0024】
(2)飲食品を血中中性脂肪低減用組成物として構成する場合、飲食品中における有効成分(柑橘類の果皮抽出物)の含有量は、固形分として0.5~15質量%である。したがって、かかる飲食品の摂取により、より優れた血中中性脂肪低減作用を発揮することができる。
【0025】
(3)有効成分の原料として、柑橘類の果実から果汁を搾汁した後の搾汁残渣を使用する場合、効率的に有効成分を得ることができる。さらに、前記搾汁残渣は、前記柑橘類の果汁を含む飲料品等を製造する際に大量に廃棄されるものであることから、極めて安価に入手することができるうえ、食品リサイクル法の観点からもより好ましい。
【0026】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態の血中中性脂肪低減用組成物は、血中中性脂肪が高い患者に適用するのみならず、健常者が血中中性脂肪の上昇を予防するための予防剤として摂取してもよい。また、ヒト以外の動物に投与してもよい。
【0027】
(第2実施形態)
以下、本発明の肝中性脂肪低減用組成物を具体化した第2実施形態を説明する。なお、第2実施形態について、下記の記載以外は、第1実施形態の血中中性脂肪低減用組成物と同様の構成を適用することができる。本実施形態の肝中性脂肪低減用組成物に含有される有効成分としては、第1実施形態欄と同様の成分を適用することができる。
【0028】
本実施形態の肝中性脂肪低減用組成物は、上述した有効成分により優れた肝中性脂肪低減作用を発揮する。よって、本実施形態の肝中性脂肪低減用組成物は、肝中性脂肪低減作用の発揮を目的とした飲食品の分野に適用することができる。上述した有効成分をそのまま肝中性脂肪低減用組成物として構成してもよく、食生活の改善を目的とした飲食品に有効成分を配合して飲食品自体を肝中性脂肪低減用組成物として構成してもよい。
【0029】
飲食品中における有効成分の含有量は、固形分として0.1~2質量%、好ましくは0.5~1.5質量%である。飲食品に含まれる有効成分の含有量が、かかる配合量範囲内の場合、肝中性脂肪低減作用をより向上させる。
【0030】
本実施形態の肝中性脂肪低減用組成物によれば、以下のような効果を得ることができる。
(4)本実施形態の肝中性脂肪低減用組成物では、β-グルコシダーゼ処理された柑橘類の果皮抽出物を有効成分として含有する。したがって、優れた肝中性脂肪低減作用を発揮することができる。
【0031】
(5)飲食品中における有効成分(柑橘類の果皮抽出物)の含有量は、固形分として0.1~2質量%である。したがって、かかる飲食品の摂取により、より優れた肝中性脂肪低減作用を発揮することができる。
【0032】
(6)有効成分の原料として、柑橘類の果実から果汁を搾汁した後の搾汁残渣を使用する場合、効率的に有効成分を得ることができる。さらに、前記搾汁残渣は、前記柑橘類の果汁を含む飲料品等を製造する際に大量に廃棄されるものであることから、極めて安価に入手することができるうえ、食品リサイクル法の観点からもより好ましい。
【0033】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態の肝中性脂肪低減用組成物は、肝中性脂肪が高い患者に適用するのみならず、健常者が肝中性脂肪の上昇を予防するための予防剤として摂取してもよい。また、ヒト以外の動物に投与してもよい。
【0034】
(第3実施形態)
以下、本発明の血中コレステロール低減用組成物を具体化した第3実施形態を説明する。なお、第3実施形態について、下記の記載以外は、第1実施形態の血中中性脂肪低減用組成物と同様の構成を適用することができる。本実施形態の血中コレステロール低減用組成物に含有される有効成分としては、第1実施形態欄と同様の成分を適用することができる。
【0035】
本実施形態の血中コレステロール低減用組成物は、上述した有効成分により優れた血中コレステロール低減作用を発揮する。なお、血中コレステロールは、血清中の総コレステロール量を示す。よって、本実施形態の血中コレステロール低減用組成物は、血中コレステロール低減作用の発揮を目的とした飲食品、医薬品、医薬部外品等の各分野に好ましく適用することができる。上述した有効成分をそのまま血中コレステロール低減用組成物として構成してもよく、食生活の改善を目的とした飲食品に有効成分を配合して飲食品自体を血中コレステロール低減用組成物として構成してもよい。
【0036】
飲食品を血中コレステロール低減用組成物として構成する場合、飲食品中における有効成分の含有量は、固形分として好ましくは7質量%以上、より好ましくは8~20質量%、さらに好ましくは9~15質量%である。飲食品に含まれる有効成分の含有量が、かかる配合量範囲内の場合、血中コレステロール低減作用をより向上させる。
【0037】
本実施形態の血中コレステロール低減用組成物によれば、以下のような効果を得ることができる。
(7)本実施形態の血中コレステロール低減用組成物では、β-グルコシダーゼ処理された柑橘類の果皮抽出物を有効成分として含有する。したがって、優れた血中コレステロール低減作用を発揮することができる。
【0038】
(8)飲食品を血中コレステロール低減用組成物として構成する場合、飲食品中における有効成分(柑橘類の果皮抽出物)の含有量は、固形分として7質量%以上である。したがって、かかる飲食品の摂取により、より優れた血中コレステロール低減作用を発揮することができる。
【0039】
(9)有効成分の原料として、柑橘類の果実から果汁を搾汁した後の搾汁残渣を使用する場合、効率的に有効成分を得ることができる。さらに、前記搾汁残渣は、前記柑橘類の果汁を含む飲料品等を製造する際に大量に廃棄されるものであることから、極めて安価に入手することができるうえ、食品リサイクル法の観点からもより好ましい。
【0040】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態の血中コレステロール低減用組成物は、血中コレステロールが高い患者に適用するのみならず、健常者が血中コレステロールの上昇を予防するための予防剤として摂取してもよい。また、ヒト以外の動物に投与してもよい。
【0041】
(第4実施形態)
以下、本発明のHDL(高密度リポタンパク質)コレステロール増加用組成物を具体化した第4実施形態を説明する。なお、第4実施形態について、下記の記載以外は、第1実施形態の血中中性脂肪低減用組成物と同様の構成を適用することができる。本実施形態のHDLコレステロール増加用組成物に含有される有効成分としては、第1実施形態欄と同様の成分を適用することができる。
【0042】
本実施形態のHDLコレステロール増加用組成物は、上述した有効成分により優れたHDLコレステロール増加作用を発揮する。なお、HDLコレステロールは、血清中のHDLコレステロール量を示す。また、HDLコレステロールの増加は、血清中の総コレステロール中におけるHDLコレステロールの割合(質量比)の増加を示す。よって、本実施形態のHDLコレステロール増加用組成物は、HDLコレステロール増加作用の発揮を目的とした飲食品の分野に適用することができる。上述した有効成分をそのままHDLコレステロール増加用組成物として構成してもよく、食生活の改善を目的とした飲食品に有効成分を配合して飲食品自体をHDLコレステロール増加用組成物として構成してもよい。
【0043】
飲食品中における有効成分の含有量は、固形分として7質量%以上、好ましくは8~20質量%、より好ましくは9~15質量%である。飲食品に含まれる有効成分の含有量が、かかる配合量範囲内の場合、HDLコレステロール増加作用をより向上させる。
【0044】
本実施形態のHDLコレステロール増加用組成物によれば、以下のような効果を得ることができる。
(10)本実施形態のHDLコレステロール増加用組成物では、β-グルコシダーゼ処理された柑橘類の果皮抽出物を有効成分として含有する。したがって、優れたHDLコレステロール増加作用を発揮することができる。
【0045】
(11)飲食品中における有効成分(柑橘類の果皮抽出物)の含有量は、固形分として7質量%以上である。したがって、かかる飲食品の摂取により、より優れたHDLコレステロール増加作用を発揮することができる。
【0046】
(12)有効成分の原料として、柑橘類の果実から果汁を搾汁した後の搾汁残渣を使用する場合、効率的に有効成分を得ることができる。さらに、前記搾汁残渣は、前記柑橘類の果汁を含む飲料品等を製造する際に大量に廃棄されるものであることから、極めて安価に入手することができるうえ、食品リサイクル法の観点からもより好ましい。
【0047】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態のHDLコレステロール増加用組成物は、HDLコレステロールが低い患者に適用するのみならず、健常者がHDLコレステロールの低下を予防するための予防剤として摂取してもよい。また、ヒト以外の動物に投与してもよい。
【実施例】
【0048】
以下に試験例を挙げ、前記実施形態をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
有効成分として、β-グルコシダーゼ処理された柑橘類の果皮抽出物を調製し、血中中性脂肪低減作用、肝中性脂肪低減作用、血中コレステロール低減作用、及びHDLコレステロール増加作用について評価した。
【0049】
<試験例1:有効成分の調製>
レモンをインライン搾汁機(FMC社製)で搾汁した後の搾汁残渣(果皮部分)を有効成分の原料として使用した。粉砕処理した搾汁残渣に、質量比で2倍の水を加え、常温(25℃)で2時間、撹拌しながら抽出処理した。得られた抽出処理液を、遠心分離により固液分離し、上清を減圧濃縮し、次いで凍結乾燥して粉末状の果皮抽出物を得た。得られた粉末状の果皮抽出物を比較例で使用の果皮抽出物とした。
【0050】
実施例の果皮抽出物は、まず上記と同様に搾汁残渣に水を加えて、室温(25℃)で2時間の抽出処理を行った。次に、得られた抽出処理液を、遠心分離により固液分離し、上清を得た。かかる上清にβ-グルコシダーゼとしてヘスペリジナーゼ製剤(可溶性ヘスペリジナーゼ2号:タイショーテクノス社製、ヘスペリジナーゼ力価85U/g以上、酵素本体配合率1%かつ賦形剤として99%のグラニュー糖を含有する)を0.1質量%添加し、60℃で2時間反応させた。得られた酵素処理液を減圧濃縮し、次いで凍結乾燥して粉末状の果皮抽出物を得た。得られた粉末状の果皮抽出物を実施例で使用の果皮抽出物とした。
【0051】
なお、ヘスペリジナーゼ酵素処理せずに得られた果皮抽出物中のエリオジクチオール-7-O-グルコシドとエリオシトリンの含有量は、それぞれ0.03質量%及び1.40質量%であった。一方、ヘスペリジナーゼ酵素処理して得られた果皮抽出物中のエリオジクチオール-7-O-グルコシドとエリオシトリンの含有量は、それぞれ0.50質量%及び0.34質量%であった。
【0052】
<試験例2:脂質代謝改善作用に関する試験>
(1)試験動物
雄性SDラット(日本エスエルシー社製)4週齢を購入し、1週間の順化後、5週齢より実験に用いた。
【0053】
AIN-93G飼料組成に準拠し、粉末牛脂20質量%及びショ糖30質量%を含む高脂肪・高ショ糖食に、比較例の果皮抽出物を10質量%添加した飼料(比較例飼料)及び実施例の果皮抽出物をそれぞれ1,3,5,10質量%添加した飼料(それぞれ1,3,5,10質量%添加飼料)を調製した。試験期間は12週間で、自由摂食とした。なお、果皮抽出物を添加しない上記高脂肪・高ショ糖食をコントロール飼料とした。
【0054】
(2)血中中性脂肪低減作用
12週間の試験期間経過後、ラット血清中の中性脂肪量について、酵素法を用いるトリグリセライドE-テストワコー(和光純薬工業社製)で測定した。比較例飼料を摂食させた比較例群と1,3,5質量%添加飼料を摂取させた試験群とを比較した(各群n=6)。コントロール飼料を摂取させた試験群の値を100とした場合の相対値を示す。平均値±標準誤差で示し、Student’s t-testを用い有意水準5%で検定した(*p<0.05 vs コントロール試験群)(以下の各試験も同様)。結果を表1及び
図1に示す。
【0055】
【表1】
表1及び
図1に示されるように、実施例の果皮抽出物を添加した飼料を摂取させた各試験群においては、いずれの投与群においても、比較例群に比べて、血中中性脂肪低減作用に優れることが確認された。特に3質量%添加飼料を摂取させた試験群においては、特に優れた血中中性脂肪低減作用が得られた。
【0056】
(3)肝中性脂肪低減作用
12週間の試験期間経過後、ラット肝臓中の中性脂肪量について、酵素法を用いるトリグリセライドE-テストワコー(和光純薬工業社製)で測定した。比較例飼料を摂食させた比較例群と1,3,5質量%添加飼料を摂取させた試験群とを比較した(各群n=6)。コントロール飼料を摂取させた試験群の値を100とした場合の相対値を示す。結果を表2及び
図2に示す。
【0057】
【表2】
表2及び
図2に示されるように、実施例の果皮抽出物を添加した飼料を摂取させた試験群においては、特に1質量%添加飼料を摂取させた試験群において、比較例群に比べて、肝中性脂肪低減作用に優れることが確認された。
【0058】
(4)血中コレステロール低減作用
12週間の試験期間経過後、ラット血清中の総コレステロール量について、酵素法を用いるコレステロールE-テストワコー(和光純薬工業社製)で測定した。比較例飼料を摂食させた比較例群と5,10質量%添加飼料を摂取させた試験群とを比較した(各群n=6)。コントロール飼料を摂取させた試験群の値を100とした場合の相対値を示す。結果を表3及び
図3に示す。
【0059】
【表3】
表3及び
図3に示されるように、実施例の果皮抽出物を添加した飼料を摂取させた試験群においては、特に10質量%添加飼料を摂取させた試験群において、比較例群に比べて、血中コレステロールの低減作用に優れることが確認された。
【0060】
(5)HDLコレステロール増加作用
12週間の試験期間経過後、ラット血清中のHDLコレステロール量について、酵素法を用いるHDL-コレステロールE-テストワコー(和光純薬工業社製)で測定し、総コレステロール量/HDLコレステロール量を求めた。比較例飼料を摂食させた比較例群と5,10質量%添加飼料を摂取させた試験群とを比較した(各群n=6)。コントロール飼料を摂取させた試験群の値を100とした場合の相対値を示す。結果を表4及び
図4に示す。
【0061】
【表4】
表4及び
図4に示されるように、実施例の果皮抽出物を添加した飼料を摂取させた試験群においては、特に10質量%添加飼料を摂取させた試験群において、比較例群に比べて、総コレステロール中におけるHDLコレステロール量の増加作用に優れることが確認された。実施例の果皮抽出物の摂取による血中の総コレステロールレベルの低減作用は、HDLコレステロールレベルの上昇に伴い発揮されるものと考えられる。