(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-27
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】接合システム及び接合方法
(51)【国際特許分類】
B29C 65/02 20060101AFI20220128BHJP
B29C 65/04 20060101ALI20220128BHJP
B29C 65/08 20060101ALI20220128BHJP
B29C 65/78 20060101ALI20220128BHJP
【FI】
B29C65/02
B29C65/04
B29C65/08
B29C65/78
(21)【出願番号】P 2019509745
(86)(22)【出願日】2018-03-23
(86)【国際出願番号】 JP2018011930
(87)【国際公開番号】W WO2018181073
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2020-12-10
(31)【優先権主張番号】P 2017065548
(32)【優先日】2017-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構革新的新構造材料等研究開発のうち、熱可塑性CFRPの開発及び構造設計・応用加工技術の開発に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】591159055
【氏名又は名称】株式会社トヨタカスタマイジング&ディベロップメント
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】古屋敷 研治
(72)【発明者】
【氏名】湯地 浩志
(72)【発明者】
【氏名】平脇 聡志
(72)【発明者】
【氏名】山森 嘉則
(72)【発明者】
【氏名】森 隆行
(72)【発明者】
【氏名】岩野 吉宏
(72)【発明者】
【氏名】天岡 和昭
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特表平03-502789(JP,A)
【文献】特開平07-227907(JP,A)
【文献】特開2016-168598(JP,A)
【文献】特開平03-184830(JP,A)
【文献】特開2005-329436(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102008038014(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/00-65/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接合基材が配置される配置面を有する受け治具と、
前記配置面との間に接合基材を挟みこんで
超音波溶着又は電磁誘導加熱溶着により溶着する接合装置と、
前記接合装置が取付けられた多関節ロボットと、
前記多関節ロボット及び前記接合装置を制御する制御部と、
前記受け治具を動作させる動作装置と、
を備える接合システム。
【請求項2】
接合基材が配置される配置面を有する受け治具と、
前記配置面との間に接合基材を挟みこんで溶着する接合装置と、
前記接合装置が取付けられた多関節ロボットと、
前記多関節ロボット及び前記接合装置を制御する制御部と、
前記受け治具を回転動作させる動作装置と、
を備える接合システム。
【請求項3】
前記配置面は、複数の接合受け面を含んで構成されており、
前記制御部は、前記複数の接合受け面において接合基材を溶着するように前記多関節ロボット及び前記接合装置を制御する、
請求項1又は請求項2に記載の接合システム。
【請求項4】
前記配置面の温度を調節する温調装置をさらに備える、
請求項1又は請求項2に記載の接合システム。
【請求項5】
前記配置面は、複数の接合受け面を含んで構成されており、
前記複数の接合受け面の温度を調節する温調装置をさらに備える、
請求項1又は請求項2に記載の接合システム。
【請求項6】
接合基材が配置される配置面を有する受け治具と、
前記配置面との間に接合基材を挟みこんで
超音波溶着又は電磁誘導加熱溶着により溶着する接合装置と、
前記接合装置が取付けられた多関節ロボットと、
前記多関節ロボット及び前記接合装置を制御する制御部と、
前記受け治具を動作させる動作装置と、
を備える接合システムによって、熱可塑性樹脂材料を含む接合基材を接合する接合方法。
【請求項7】
接合基材が配置される配置面を有する受け治具と、
前記配置面との間に接合基材を挟みこんで溶着する接合装置と、
前記接合装置が取付けられた多関節ロボットと、
前記多関節ロボット及び前記接合装置を制御する制御部と、
前記受け治具を回転動作させる動作装置と、
を備える接合システムによって、熱可塑性樹脂材料を含む接合基材を接合する接合方法。
【請求項8】
前記配置面は、複数の接合受け面を含んで構成されており、
前記制御部は、前記複数の接合受け面において接合基材を溶着するように前記多関節ロボット及び前記接合装置を制御する、
請求項6又は請求項7に記載の接合方法。
【請求項9】
前記接合システムは、前記配置面の温度を調節する温調装置をさらに備える、
請求項6又は請求項7に記載の接合方法。
【請求項10】
前記配置面は、複数の接合受け面を含んで構成されており、
前記接合システムは、前記複数の接合受け面の温度を調節する温調装置をさらに備える、
請求項6又は請求項7に記載の接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、接合システム及び接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2015-093482号公報、特許5687801号公報、特開2015-120335号公報には、樹脂材料の接合に関する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来技術は、1方向接合のため、試験片など平面形状は接合できる。しかし、3次元形状を有し、多方向接合が必要となる樹脂部品(例えば、自動車用大物樹脂部品)をどのように接合し、製造するかを述べるには至っていない。
また、3次元形状を有した自動車用大物樹脂部品を接合する技術として接着剤を用いたものが存在する。しかし、接着剤のコストや硬化までの治具占有時間により必ずしも生産性に優れた手法ではなかった。
【0004】
公知技術から想定される接合設備は、両側アクセスのCガンタイプの接合装置200(
図8参照)が考えられるが、以下の課題が存在する。
すなわち、Cガンタイプだとツールアクセス性が悪く、所謂「ふところが深い」部品中央部は接合が困難となる。また、アンダーカット形状部位などへの接合はできず、形状制約が多い。また、このような部位への対応として、部品にあらかじめ穴あけ加工を施し、1打点ごとにブラインドリベットを打ち込むなど加工費と作業時間を増大させて対応せざるを得ない。また、Cガンタイプのため多関節ロボット30として可搬重量が大きなものが必要となり、設備投資額も高額となる。また、可動スピードが遅くなることも想定される。
【0005】
本開示は上記事実を考慮し、熱可塑性樹脂材料部品を溶着により接合する場合において生産性に優れる接合システム及び接合方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様に係る接合システムは、接合基材が配置される配置面を有する受け治具と、前記配置面との間に接合基材を挟みこんで溶着する接合装置と、前記接合装置が取付けられた多関節ロボットと、前記多関節ロボット及び前記接合装置を制御する制御部と、を備える。
【0007】
本開示の第1の態様に係る接合システムでは、受け治具の配置面に接合基材が配置される。他方、配置面との間に接合基材を挟みこんで溶着する接合装置が多関節ロボット30に取付けられている。そして、制御部によって、多関節ロボット及び接合装置が制御されることで、接合基材90が接合される。このため、接合基材に対し、接合装置を片側からアクセスさせることで接合を行うことができる。よって、生産性が向上する。
【0008】
本開示の第2の態様に係る接合システムは、第1の態様に係る接合システムにおいて、前記配置面は、複数の接合受け面を含んで構成されており、前記制御部は、前記複数の接合受け面において接合基材を溶着するように前記多関節ロボット及び前記接合装置を制御する。
【0009】
本開示の第3の態様に係る接合システムは、第1の態様に係る接合システムにおいて、前記配置面の温度を調節する温調装置をさらに備える。
【0010】
本開示の第4の態様に係る接合システムは、第1の態様に係る接合システムにおいて、前記配置面は、複数の接合受け面を含んで構成されており、前記複数の接合受け面の温度を調節する温調装置をさらに備える。
【0011】
本開示の第5の態様に係る接合システムは、第1~第4の何れかの態様に係る接合システムにおいて、受け治具を動作させる動作装置をさらに備える。
【0012】
本開示の第6の態様に係る接合方法は、接合基材が配置される配置面を有する受け治具と、前記配置面との間に接合基材を挟みこんで溶着する接合装置と、前記接合装置が取付けられた多関節ロボットと、前記多関節ロボット及び前記接合装置を制御する制御部と、を備える接合システムによって、熱可塑性樹脂材料を含む接合基材を接合する接合方法である。
【0013】
本開示の第7の態様に係る接合方法は、第6の態様に係る接合方法において、前記配置面は、複数の接合受け面を含んで構成されており、前記制御部は、前記複数の接合受け面において接合基材を溶着するように前記多関節ロボット及び前記接合装置を制御する。
【0014】
本開示の第8の態様に係る接合方法は、第6の態様に係る接合方法において、前記接合システムは、前記配置面の温度を調節する温調装置をさらに備える。
【0015】
本開示の第9の態様に係る接合方法は、第6の態様に係る接合方法において、前記配置面は、複数の接合受け面を含んで構成されており、前記接合システムは、前記複数の接合受け面の温度を調節する温調装置をさらに備える。
【0016】
本開示の第10の態様に係る接合方法は、第6~第9の何れかの態様に係る接合方法において、前記接合システムは、受け治具を動作させる動作装置をさらに備える。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本開示に係る接合システム及び接合方法は、熱可塑性樹脂材料部品を溶着により接合する場合において生産性に優れる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1A】本実施形態の接合システムにおける受け治具10を示す拡大断面図である。
【
図1B】本実施形態の接合システムにより接合基材を接合している様子を示す拡大断面図である。
【
図2】本実施形態の接合システムの全体構成を示す図である。
【
図5】本実施形態の接合装置の他の態様、すなわち電磁誘導加熱溶着の場合の接合装置を示す拡大図である。
【
図6】接合基材90の間に導電性付与部材を挟んだ状態を示す模式図である。
【
図7】受け治具と複数の接合基材との関係を示す図である。
【
図8】従来技術のCガンタイプの接合装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、
図1A~
図7を用いて、本開示の実施形態に係る接合システムS及び接合方法について説明する。
【0020】
図2には、本実施形態の接合システムSの全体構成が示されている。
図2に示されるように、本実施形態の接合システムSは、多関節ロボット30と、接合装置20と、受け治具10と、動作装置50と、制御部40と、を備えている。
なお、接合システムSによる接合の対象となる接合基材90には、熱可塑性樹脂材料が含まれる。すなわち、例えば、熱可塑性樹脂材料からなる接合基材90同士の接合であってもよいし、熱可塑性樹脂材料からなる接合基材と金属材料からなる接合基材との接合であってもよい。樹脂材料としては、例えば、炭素繊維強化樹脂、ガラス繊維強化樹脂などの繊維強化樹脂でもよいし、それ以外の樹脂でもよい。
【0021】
(多関節ロボット30)
多関節ロボット30は、多関節を備える垂直多関節ロボットである。多関節ロボット30の軸数は、例えば4~7軸であるが、それ以外の軸数でもよい。多関節ロボット30の手首部には、接合装置20が取付けられている。多関節ロボット30は、接合装置20の重量や、接合時に発生する荷重に耐えうるように構成されている。
【0022】
(接合装置20)
接合装置20は、受け治具10との間に接合基材90を挟みこんで、接合基材90を溶着により接合する装置である(
図1A、
図1B参照)。接合装置20の接合方法は、接合基材90に対して面直加圧接合するものが望ましく、例えば超音波溶着、電磁誘導加熱溶着が望ましい。
なお、振動溶着は加振方向が一方向に限られることから、接合面が2次元以上の形状を有する接合基材90の接合は出来ない。また、一方向の構造の部品においても振幅分、部品クリアランスを設けるなどレイアウト制約が多く、適さない。よって、本開示の「接合装置」には、振動溶着を行うものは含まない。
【0023】
図4に、接合装置20の接合方法が超音波溶着である場合の構成を示す。
図4に示されるように、接合装置20の先端部22(ホーン)による超音波振動と加圧力Pによって、熱可塑性樹脂からなる接合基材90を溶融し、接合する。
【0024】
他方、
図5に、接合装置20の接合方法が電磁誘導加熱溶着である場合の構成を示す。
図5に示されるように、コイル26に高周波電流を流すことにより、電気伝導性を有する接合基材90(ここでは例えば、金属材料の基材96)に誘導電流を発生させて加熱し、熱可塑性樹脂材料の基材92を溶融させる。そしてローラ28による加圧力Pにより、基材92と基材96とを接合する。なお、金属材料の基材96と樹脂材料の基材92との上下関係は逆でもよい。
【0025】
また、接合装置20の接合方法が電磁誘導加熱溶着である場合であって、接合の対象となる接合基材90が電気伝導性を有しない樹脂材料のみの場合は、
図6に示すように、導電性を有するフィラーや金属メッシュなどの導電性付与部材80を接合基材90の間に挟んで接合する。
【0026】
(受け治具10)
受け治具10は、接合基材90が配置(セット)される配置面12を備えている。
図1Bに示されるように、配置面12に接合基材90を配置し、配置面12と接合装置20の先端部22(ホーン)との間に接合基材90(92、96)を挟み込んだ状態で接合する。このように、接合基材90の片側からのアクセスで接合を実現することができる。
【0027】
図4に示されるように、接合装置20には、荷重センサ、先端位置制御手段、及びサーモカメラ24が設けられている。荷重センサは、先端部22の接合基材90への圧力Pを検知する。先端位置制御手段は、デバイス先端の位置(矢印D参照)を制御する。サーモカメラ24は、接合基材90の表面温度を測定する。
【0028】
他方、
図1Aや
図1Bに示されるように、受け治具10には、熱電対などの温度センサ62が内蔵されている。温度センサ62は、受け治具10の温度を検知する。温度センサ62は、受け治具10における接合が行われる部分、すなわち各接合受け面15(15A、15B、15C、
図1A参照)に対応してそれぞれ設けられている。これにより、各接合受け面15それぞれの温度を検知することができる。
【0029】
以上のように各部の温度を計測することができるように構成されているので、接合基材90が充分に溶け込むように接合装置20を制御でき、高い接合品質が得られることを保証できる。
【0030】
(温調装置64)
また、受け治具10には、温調装置64が設けられている。温調装置64は、受け治具10の温度を調節する装置である。
【0031】
温調装置64の構成は様々考えられるが、本実施形態では受け治具10の内部に、媒体が流れる回路が形成されている。回路に加熱媒体を流すことで受け治具10を加熱することができ、回路に冷却媒体を流すことで受け治具10を冷却することができる。回路に流す媒体としては、水や油、空気などが考えられる。なお、温調装置64は、受け治具10の内部に埋め込まれたカートリッジヒータであってもよい。
【0032】
図1Aや
図1Bに示されるように、温調装置64は、各接合受け面15(15A、15B、15C)に対応して設けられており、各接合受け面15(15A、15B、15C)の温度を個別に調節できるように構成されている。
【0033】
(動作装置50)
動作装置50は、受け治具10に回転等の動作をさせる装置である。動作装置50は、多関節ロボット30と連動(連携)するように制御される。これにより、多関節ロボット30のリーチが補われ、また、接合時間の短縮が可能となる。
【0034】
本実施形態では、
図3に示されるように、架台52と受け治具10との間に旋回ベアリング54が設けられている。これにより、受け治具10が上下方向の軸P周りに回転可能となっている。また、回転中心となる軸Pから距離が離れた部分にはスプリング内蔵式ボールローラ56が設けられている。これにより、回転時のモーメントやたわみに耐えうるようになっている。
【0035】
(制御部40)
制御部40は、多関節ロボット30、接合装置20、動作装置50、及び温調装置64に接続されており、これら多関節ロボット30、接合装置20、動作装置50、及び温調装置64を制御する。
【0036】
例えば、制御部40は、サーモカメラ24で検知された接合基材90の表面温度、及び温度センサ62で検知された受け治具10の温度に基づいて、接合装置20を制御する。また、制御部40は、荷重センサで検知された接合基材90への圧力Pに基づいて、接合装置20を制御する。これにより、溶着品質を安定化することができる。
【0037】
また例えば、制御部40は、温調装置64を制御することで、溶着前に接合受け面15を加熱する。これにより、接合受け面15に接触する接合基材90が加熱されて、接合基材90の溶融状態が促進し、また溶融状態が保持される。
【0038】
また例えば、制御部40は、溶着後に接合受け面15を冷却する。これにより、接合受け面15に接触する接合基材90が冷却されて、接合する部分に隣接する部分への熱影響が抑えられる。よって、溶着品質が安定化すると共に向上する。
【0039】
(受け治具の具体的構造)
図1Aには、受け治具10の形状の一例が示されている。
図1Aに示されるように、配置面12は、単純な平面ではなく、立体的な形状となっている。
具体的には、配置面12は、法線方向を上方へ向けた第1水平面12Aを含んで構成されている。第1水平面12Aの端部からは斜め上方へ延びる第1傾斜面12Bが形成されている。第1傾斜面12Bは、その法線方向を斜め上方(
図1Aにおける上方かつ右方の斜め上方)へ向けている。第1傾斜面12Bの上端からは第2水平面12Cが形成されている。第2水平面12Cの端部(
図1Aの左端)からは法線方向を斜め下方に向けた第2傾斜面12Dが形成されており、第2傾斜面12Dの上端から鉛直面12Eを介して第3水平面12Fが形成されている。
【0040】
接合工程は、第1水平面12A、第1傾斜面12B及び第3水平面12Fのそれぞれにおいて行われる。
具体的には、まず、第1傾斜面12Bにおいて、第1接合基材92と第2接合基材94とが溶着される。第1傾斜面12Bにおいて接合が行われる部分を特に第1接合受け面15Aという(
図1A参照)。
次に、第3水平面12Fにおいて、第1接合基材92と第3接合基材96とが溶着される。第3水平面12Fにおいて接合が行われる部分を特に第2接合受け面15Bという。
最後に、第1水平面12Aにおいて、第1接合基材92と第3接合基材96とが溶着される。第1水平面12Aにおいて接合が行われる部分を特に第3接合受け面15Cという。
【0041】
すなわち、接合する順序は、まず第1接合受け面15Aで接合し、次に第2接合受け面15Bで接合し、最後に第3接合受け面15Cで接合する。第1接合受け面15Aで接合するときには、受け治具10に第1接合基材92及び第2接合基材94を配置した状態とし、第3接合基材96は受け治具10には配置しない。第1接合受け面15Aで接合した後、第3接合基材96を
図1Bに示されるように配置して残りの接合を行う。なお、必要に応じて、クランプ70(
図1B参照)などにより接合基材90を固定しながら接合を行う。
【0042】
図1Bに示される断面構造は、似た構造を保ちながら紙面に垂直な方向に延びている。よって、第1接合基材92、第2接合基材94及び第3接合基材96により、紙面に垂直な方向に延びる閉断面構造が形成される。
【0043】
したがって、各接合部分について、その延在方向(紙面に垂直な方向)に沿って連続的又は断続的に接合をする。例えば、接合方法が超音波溶着の場合は、接合部分の延在方向に沿って断続的に接合装置20の先端部22を当接させ、接合を行う。
【0044】
なお、
図7には、本開示の接合システムにより自動車の樹脂製フレームを製造する様子が概略図で示されている。このように、本開示の接合システムによれば、1つの受け治具10により複数の接合基材90を接合することができ、生産性が向上する。
【0045】
<作用・効果>
次に、本実施形態の接合システムの作用及び効果について説明する。
【0046】
本実施形態に係る接合システムSでは、受け治具10の配置面12に接合基材90が配置される。他方、配置面12との間に接合基材90を挟みこんで溶着する接合装置20が多関節ロボット30に取付けられている。そして、制御部40によって、多関節ロボット30及び接合装置20が制御されることで、接合基材90が接合される。
このため、接合基材90に対し、接合装置20を片側からアクセスさせることで接合を行うことができる。
さらにこのため、例えば多関節ロボットにCガンタイプのデバイスを取付けて接合する場合と比較して、可搬重量の小さい多関節ロボットを用いることができ、設備投資も低減できる。また、Cガンタイプと比較して、接合装置がコンパクトになるため、動作スピードを速くすることができる。
さらにこのため、大物部品中央部などツールアクセス性において、
図1Bのように「ふところが深い部位」も容易に接合できる。
【0047】
また、本実施形態の接合システムSでは、配置面12は、法線方向の異なる複数の接合受け面15(15A、15B、15C)を含んで構成されている。そして、制御部40は、複数の接合受け面15(15A、15B、15C)において接合基材90を溶着するように多関節ロボット30及び接合装置20を制御する。
このため、1つの受け治具10を用い、多方向接合が必要となる接合基材(樹脂部品)を接合することができる。よって、受け治具10の段取替えを低減できる。
【0048】
また、本実施形態の接合システムSは、接合受け面15の温度を調節する温調装置64を備えている。このため、温調装置64により接合受け面15の温度を調節することで、溶着品質を安定化及び向上させることができる。特に、溶着前に加熱することで樹脂溶融状態を促進させ、または保持させることができる。また特に溶着後に溶着部を冷却することで隣接部への熱影響を排除することができる。よって、溶着品質の安定化及び向上が期待できる。
また、温調装置64を備えることで、加熱硬化型の接着剤を併用した接合方法とする場合に、接着剤の硬化促進が可能となり、サイクルタイムの短縮が可能となる。
【0049】
また、本実施形態の接合システムSでは、接合装置20が、先端部22が交換できるように構成されている。このため、接合部の形状に合わせて先端部22を交換することで、多関節ロボット30の可動範囲や特異姿勢への制限を回避でき、一回の受け治具上で接合範囲を広く設定できる。また、受け治具10の段取り替えも低減できる。
【0050】
また、本実施形態の接合システムSでは、受け治具10の材質がアルミニウム合金とされている。このため、接合時に発生する熱の放熱効率が高い。
【0051】
また、本実施形態の接合システムSでは、受け治具10に動作装置50が設けられている。このため、多関節ロボット30の可動範囲や多関節ロボット30の特異姿勢への制限を回避でき、一回の受け治具上で接合範囲を広く設定できる。そして、段取り替えを低減させ、タクトタイムの短縮や複数部品接合を1工程で実現させる。
【0052】
また、本実施形態の接合システムSでは、接合装置20に圧力検知センサが搭載されている。このため、接合基材90に対する圧力を測定することができる。そして、測定結果に基づいて接合装置20を制御することができる。よって、溶着品質が安定化すると共により高い品質管理が可能となる。
【0053】
また、本実施形態の接合システムSでは、接合装置20にサーモカメラを搭載されている。このため、接合基材90の表面温度を測定することができる。また、受け治具10に温度センサ62が内蔵されている。そして、制御部40が測定結果に基づいて接合装置20を制御する。よって、溶着品質が安定化すると共により高い品質管理が可能となる。
【0054】
〔上記実施形態の補足説明〕
なお、上記実施形態では、接合システムSが動作装置50を備えていたが、本開示はこれに限定されず、動作装置を備えていなくてもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、接合システムSが温調装置64を備えていたが、本開示はこれに限定されず、温調装置を備えていなくてもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、受け治具10の材質がアルミニウム合金とされている例を説明したが、本開示はこれに限定されず、受け治具の材質としては様々なものを採用することができる。
【0057】
また、上記実施形態では、受け治具10の配置面12が、法線方向の異なる複数の接合受け面15(15A、15B、15C)を含んで構成されている例を説明したが、本開示の「複数の接合受け面」はこれに限定されない。つまり、複数の接合受け面は、法線方向の異なる複数の接合受け面であることは必ずしも必要ではなく、法線方向が同じの複数の接合受け面であってもよい。
【0058】
日本国特許出願2017-065548の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
【0059】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。