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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-27
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】バサルト長繊維製造装置
(51)【国際特許分類】
   C03B 37/02 20060101AFI20220128BHJP
   F23D 11/04 20060101ALI20220128BHJP
   F23K 5/14 20060101ALI20220128BHJP
【FI】
C03B37/02 Z
F23D11/04 613B
F23K5/14 501
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021143817
(22)【出願日】2021-09-03
【審査請求日】2021-10-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596127565
【氏名又は名称】日本環境保全株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】518456373
【氏名又は名称】株式会社大瀧商店
(74)【代理人】
【識別番号】110002963
【氏名又は名称】特許業務法人MTS国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古渡 周作
(72)【発明者】
【氏名】大瀧 吉宏
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-293574(JP,A)
【文献】特開2006-347845(JP,A)
【文献】特開2015-113275(JP,A)
【文献】特表2005-528317(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0179779(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104692646(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-1570203(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 37/00-37/16
C03C 13/06
C03C 25/00-25/70
C03B 5/00-5/44
D01F 9/00-9/32
F23D 11/04-11/08
F23K 5/14-5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融処理装置と、この溶融処理装置からの溶融スラグを繊維化して巻き取るバサルト長繊維化装置と、を有してなり、
前記溶融処理装置は、燃焼室を形成する炉本体と、前記燃焼室内に長手方向に傾斜して配置され、傾斜方向下端から被処理物が溶融して形成された溶融スラグを流下させる溝状の炉床と、前記炉床の傾斜方向の上端に被処理物を供給する被処理物投入装置と、前記炉本体の天井部に設けられ、前記炉床に燃料の燃焼による火炎を吹きつけるバーナと、を有し、
前記被処理物は、玄武岩原石を、粒径30μmを超えて40mm以下に破砕して形成された破砕原石であり、前記被処理物投入装置は、破砕原石を炉内に投入可能に構成され、前記炉床は、その長手方向上端側から順に、炉内に投入された破砕原石を受け、且つ、溶融スラグを傾斜によって流下させる破砕原石溶融部、この破砕原石溶融部に隣接して設けられ、前記破砕原石溶融部の溶融スラグ流下端部から流下する溶融スラグを受け止めて、一定量貯留する湯だまり部、及び、前記湯だまり部の下流側端部位置で、前記湯だまり部の底面から立上り、且つ、前記溶融スラグ流下端部よりも低い高さの堰部を含んで構成され、
前記バーナは、前記破砕原石溶融部上の破砕原石に向けて火炎を吹き付けるようにされたことを特徴とするバサルト長繊維製造装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記湯だまり部は、前記溶融スラグ流下端部側の溶融スラグ流入端面が、鉛直面に対して0~15度の傾斜をもって構成されたことを特徴とするバサルト長繊維製造装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記湯だまり部は、前記溶融スラグ流下端部側の溶融スラグ流下面の幅方向中央に、前記溶融スラグ流下面と直交する横方向断面が凹円弧状の溶融スラグ流下ガイドが上下方向に設けられていることを特徴とするバサルト長繊維製造装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
前記バーナは液体燃料燃焼型であり、燃料噴射ノズルと、この燃料噴射ノズルを同軸的に囲み、且つ、先端に、該燃料噴射ノズルの噴射方向の先方に位置する混合流体噴射口を備えた筒状部材であって、基端側から燃焼用空気が供給されるエアパイプと、このエアパイプを同軸的に囲んで配置され、先端に、前記混合流体噴射口の噴射方向の先方に位置する出力開口を備え、且つ、前記エアパイプの外側に、前記出力開口に向かう螺旋流を形成するように、基端側の側面から空気が供給される旋回流形成パイプと、を有して構成されたことを特徴とするバサルト長繊維製造装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
エマルジョン燃焼用混合器と、混合液体を貯留するための燃料タンクと、この燃料タンクから前記エマルジョン燃焼用混合器に前記混合液体を供給するための第1の混合液体供給部と、前記エマルジョン燃焼用混合器で混合された混合液体を前記燃料タンクに還流するための混合液体還流部と、前記燃料タンクから前記バーナに混合液体を供給するための第2の混合液体供給部と、を有するエマルジョン燃焼用混合液体供給システムを備え、
前記エマルジョン燃焼用混合器は、略筒状体で一方の端部である入口端から他方の端部である出口端に液体燃料及び水を混合してなる混合液体が一方向に流される管状部と、
前記管状部の内側を前記入口端の側と前記出口端の側とに隔てるように前記管状部の内側に配置され、且つ、前記入口端の側及び前記出口端の側に連通する複数の貫通孔が形成された撹拌機と、を含み、
前記管状部は、内径が前記入口端の側から前記出口端の側に向かって小さくなる形状で前記撹拌機よりも前記出口端の側に配置された出口側縮径テーパ部と、該出口側縮径テー
パ部よりも前記出口端の側の内周面に同軸的に形成された出口側内周溝部と、を有することを特徴とするバサルト長繊維製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高耐熱性吸音材等に用いられるバサルト長繊維の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、玄武岩を原料とし、該玄武岩を粉砕する工程と、該粉砕物を洗浄する工程と、該洗浄物を溶融する工程と、該溶融物を繊維化する工程と、該繊維を引き揃え、巻き取る工程とからなり、該溶融する工程における溶融物の温度が1400~1650℃であり、且つ溶融物の粘度をηとするとlogηが2.15~2.35dPa・sであることを特徴とするバサルト長繊維の製造方法が開示されている。
【0003】
又、特許文献2には、燃焼室内に傾斜した溝状の炉床部を有し、該炉床部の傾斜方向上端から灰投入装置によって灰を投入し、第1のバーナにより炉床部上の灰を効率よく加熱溶融し、炉床部の傾斜方向下端を第2のバーナで加熱することによって、該下端に溶融スラグが固化堆積しないようにした灰処理装置が開示されている。
【0004】
上記特許文献1には、発明が解決しようとする課題として、「バサルト繊維は天然原料を使用するため製造コストは市販ガラス繊維と比べて低い。しかし原石(中温度用(B))はSiO2が少ないため、高温溶融物の粘性が低く、20μm以下の繊維径を有する長繊維の製造が可能であるが、750℃以上でガラス相が結晶化するため耐熱性に劣る。一方原石(高温度用(A))は~850℃において結晶化は一部進行するものの、ガラス相も残存するため高耐熱性であるが、高温の粘性が高く、量産時において溶融温度を高くする必要があり、その結果、エネルギー費の増大となる。」と記載されている。
【0005】
即ち、バサルト繊維の天然原料は、安価であるが、これを理想的に溶融しようとすると、量産時において溶融温度を高くし、その結果、エネルギーコストの増大となってしまうという問題点がある。
【0006】
特許文献1記載の発明は、玄武岩原石に対し、その溶融条件を選定して耐熱性に優れたバサルト長繊維を製造するようにしたものであり、同時に、玄武岩原石に対して、網目状形成体、ガラス修飾体となる酸化物の選定とその添加量の最適化により、結晶化及び固着を抑制して、耐熱性を向上させていて、酸化物の選定及びその添加が必ず必要となり、この点においてコスト増の問題点が残る。更に、溶融する工程における溶融物の温度は、1340℃~1610℃、好ましくは1530℃~1550℃がよい、即ち、高温に維持する必要があるとしていて、この点においても、燃料コストが従来と比べて十分には低下しないという問題点が残る。
【0007】
更に、火炎により原石を加熱する場合、繊維が連続することなく短くなり易く、バサルト長繊維の歩留まりが低いので、従来は、化石燃料の燃焼による、バサルト長繊維製造のための溶融炉はほとんど用いられていなかった。
【0008】
低コストで、且つ、高温に維持制御がし易い溶融炉は特許文献2に、液体燃料製造装置は特許文献3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2006-347845号公報
【文献】特開平10-73229号公報
【文献】特開2010-247080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、酸化物の添加や高コストの溶融炉を用いることなく、低コストで、バサルト長繊維を製造するためのバサルト長繊維製造装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記特許文献2に記載された灰処理装置の運転の経験から、火炎を用いて鉱物を溶融する場合、破砕時や、搬送中の破砕原石相互の衝突等により発生した粒径30μm以下の微粒子が火炎により瞬間的に溶融されて舞い上がることを知悉している。
【0012】
また、本発明者は、舞い上がった溶融微粒子は、火炎から離間するので空中で温度低下し、高温が維持されていて異なる液相の溶融スラグ上に舞い降りて付着し、繊維形成時の繊維の途中に入り込んで、繊維がそこから途切れるので長繊維製造の歩留まりが低下するのではないかと推定した。
【0013】
詳細には、バサルト長繊維の直径は、1μm以下が理想的であるが、上述のように舞い上がった溶融微粒子は粒径30μm近くのものがあり、繊維化過程で、白金ロジウム板を通過するときに溶融スラグとともに細長く変形され、その長さは粒径の100倍以上となり、繊維の長手方向に割り込む形となり、そこで繊維が途切れてしまうことになる。
【0014】
更に、本発明者は、鋭意研究の結果、溶融微粒子が溶融スラグに溶け込んで同一相となり、繊維に異物として混入しないようにした炉構造の発明に到達した。
【0015】
この発明は、溶融処理装置と、この溶融処理装置からの溶融スラグを繊維化して巻き取るバサルト長繊維化装置と、を有してなり、前記溶融処理装置は、燃焼室を形成する炉本体と、前記燃焼室内に長手方向に傾斜して配置され、傾斜方向下端から被処理物が溶融して形成された溶融スラグを流下させる溝状の炉床と、前記炉床の傾斜方向の上端に被処理物を供給する被処理物投入装置と、前記炉本体の天井部に設けられ、前記炉床に燃料の燃焼による火炎を吹きつけるバーナと、を有し、前記被処理物は、玄武岩原石を、粒径30μmを超えて40mm以下に破砕して形成された破砕原石であり、前記被処理物投入装置は、破砕原石を炉内に投入可能に構成され、前記炉床は、その長手方向上端側から順に、炉内に投入された破砕原石を受け、且つ、溶融スラグを傾斜によって流下させる破砕原石溶融部、この破砕原石溶融部に隣接して設けられ、前記破砕原石溶融部の溶融スラグ流下端部から流下する溶融スラグを受け止めて、一定量貯留する湯だまり部、及び、前記湯だまり部の下流側端部位置で、前記湯だまり部の底面から立上り、且つ、前記溶融スラグ流下端部よりも低い高さの堰部を含んで構成され、前記バーナは、前記破砕原石溶融部上の破砕原石に向けて火炎を吹き付けるようにされたことを特徴とするバサルト長繊維製造装置により、上記課題を解決するものである。
【0016】
ここで、玄武岩原石を、粒径30μmを超えて40mm以下に破砕するのは、粒径が30μm以下の時、火炎によって溶融して舞い上がる微粒子が増大し、40mmを超える場合は、破砕原石の内側まで溶融するのに時間がかかり、燃料コストが増大してしまうからである。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、被処理物である玄武岩原石を、粒径30μmを超えて40mm以下に破砕し、これを傾斜した炉床上で、バーナにより火炎を吹き付けて溶融し、流下する溶融スラグを湯だまり部で一定量貯留し、湯だまり部の貯留の間に、溶融スラグに付着した溶融微粒子が一体的な溶融状態になり、その下端側から堰部を越えて流下した溶融スラグを線維化して巻き取るので、繊維が短く途切れる、いわゆるぶつ切りになることなく、高い歩留まりでバサルト長繊維を製造することができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施例に係る、バサルト長繊維製造装置を示す断面図
図2】同実施例における湯だまり部を拡大して示す図
図3図2のIII-III線に沿う拡大断面図
図4図2のIV-IV線に沿う拡大断面図
図5図1のバサルト長繊維製造装置におけるバーナを拡大して示す断面図
図6】実施例に係るバサルト長繊維製造装置の湯だまり部における溶融スラグの流れを示す模式図
図7】実施例に係るバサルト長繊維製造装置に液体燃料を供給するためのエマルジョン燃焼用混合液体供給システムを模式的に示す正面図
図8】同平面図
図9】同エマルジョン燃焼用混合液体供給システムにおけるエマルジョン燃焼用混合器を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
[実施例1]
この実施例1に係るバサルト長繊維製造装置10は、図1に示されるように、溶融処理装置20と、この溶融処理装置20からの溶融スラグを長繊維化して巻き取るバサルト長繊維化装置30と、から構成されている。
【0020】
溶融処理装置20は、燃焼室22Aを形成する炉本体22と、燃焼室22A内に長手方向に傾斜して配置され、傾斜方向下端から被処理物が溶融して形成された溶融スラグを流下させる溝状の炉床40と、炉床40の傾斜方向の上端に被処理物であるバサルト原石を供給する被処理物投入装置としての破砕原石投入装置24と、炉本体22の天井部22Bに設けられ、炉床40に燃料の燃焼による火炎を吹き付けるバーナ50と、を有している。
【0021】
図1の符号22Cは観察窓を、24は破砕原石投入装置を、24A、24Bは破砕原石投入装置24を構成するホッパー及びホッパー開閉シリンダをそれぞれ示す。
【0022】
炉床40は、燃焼室22A内に投入された破砕原石を受け、且つ、溶融スラグを、傾斜によって流下させる破砕原石溶融部41、破砕原石溶融部41から流下する溶融スラグを受け止めて、一定量貯留する湯だまり部42、及び、湯だまり部42の下流側端部位置で、湯だまり部42の底面42Aから立ち上がり、且つ、破砕原石溶融部41の溶融スラグ流下端部41Aよりも低い高さの堰部44を含んで構成されている。
【0023】
図2に拡大して示されるように、湯だまり部42は、堰部44の反対側(上流側)に溶融スラグ流下端部41Aから底面42Aに至る溶融スラグ流下面42Cを有し、この溶融スラグ流下面42Cは、鉛直面VSに対して0度を超え15度以下の傾斜をもって構成されている。15度を超えると湯だまり部42内での撹拌が不充分となる。
【0024】
なお、炉床40は、図3に拡大して示されるように、凹円弧状底面40Aとされ、この凹円弧状底面40Aによって、溶融スラグが炉床40の中央部に集まって流下し易くするようにしている。
【0025】
更に、図4に示されるように、溶融スラグ流下面42Cの幅方向中央には、溶融スラグ流下面42Cと直交する横方向断面が凹円弧状となる、溶融スラグ流下ガイド43が上下方向に設けられている。
【0026】
バサルト長繊維化装置30は、上方に流下してきた溶融スラグを繊維状に分離して下方に流下させる白金ロジウム板31と、この白金ロジウム板31から繊維状に押し出された溶融スラグを引き出して下方に導く繊維引出しガイド32と、繊維引出しガイド32を通過して形成されたバサルト長繊維を揃える引揃え機33と、揃えられたバサルト長繊維を巻き取るための巻取り機35とを備えて構成されている。
【0027】
又、バーナ50は、破砕原石溶融部41上の破砕原石に向けて火炎を吹き付けるように構成されている。図1における符号50Aは点火用のバーナを、符号22Dは立壁をそれぞれ示す。
【0028】
図5に示されるように、バーナ50は液体燃料噴射型であり、燃料噴射ノズル52と、この燃料噴射ノズル52を同軸的に囲み、且つ、先端に該燃料噴射ノズル52の噴射方向の先方位置で混合流体噴射口54を備えた筒状部材であって、基端側から燃焼用空気が供給されるエアパイプ56と、このエアパイプ56を同軸的に囲んで配置され、先端が混合流体噴射口54の噴射方向の先方の出力開口58とされ、且つ、エアパイプ56の外側に、出力開口58に向う螺旋流を形成するように基端側の外側面から空気が供給される旋回流形成パイプ60と、を含んで構成されている。
【0029】
燃料噴射ノズル52はエアパイプ56内にその基端側から挿入固定されている燃料パイプ62の先端に設けられている。又この燃料パイプ62には、燃料タンク63からの燃料が、燃料ポンプ64により、バルブ66を介して加圧供給されるようになっている。
【0030】
又、エアパイプ56には、その基端周壁に形成されたエアポート56Aに、エアポンプ68からバルブ70を介して圧縮空気が供給されるようになっている。
【0031】
又、旋回流形成パイプ60には、エアパイプ56の軸方向略中間位置に相当する部位で、側方から吹き込みパイプ72が、エアパイプ56の中心とオフセットして接続され、該吹き込みパイプ72、エアポンプ74からの圧縮空気が供給されることによって、エアパイプ56の外周に沿って、旋回流が形成されるようになっている。
【0032】
ここで、エアパイプ56は多段構成とされ、先端の混合流体噴射口54を備えた先端チップ55及び基端部分を除き、複数のモジュールパイプ56Bを、必要に応じて接続してその軸方向長さを調整できるようにされている。図5の符号57Aは各モジュールパイプ56Bの先端に形成された雄ねじ部、57Bは該雄ねじ部57Aに螺合するように、各モジュールパイプ56B及び先端チップ55の基端側に形成された雌ねじ部をそれぞれ示す。
【0033】
混合流体噴射口54は、先方に拡大するテーパ状に形成され、これによって該混合流体噴射口54から、燃料と空気の混合流体が拡散しつつ噴射されるようになっている。
【0034】
バーナ50に対して、燃料タンク63から供給される燃料は、液体燃料と水とを混合してなるエマルジョン燃焼用混合液体であり、エマルジョン燃焼用混合液体供給システム80において製造される。
【0035】
エマルジョン燃焼用混合液体供給システム80は、図7乃至9に示されるように、エマルジョン燃焼用混合器81と、混合液体を貯留するための燃料タンク63と、燃料タンク63からエマルジョン燃焼用混合器81に混合液体を供給するための第1の混合液体供給部82と、エマルジョン燃焼用混合器81で混合された混合液体を燃料タンク63に還流するための混合液体還流部83と、燃料タンク63からバーナ50に混合液体を供給するための第2の混合液体供給部84と、を有している。
【0036】
更に、エマルジョン燃焼用混合液体供給システム80は、(水と混合される前の) 液体燃料を貯留するための液体燃料貯留タンク85と、液体燃料貯留タンク85から燃料タンク63へ液体燃料を供給するための液体燃料供給部86と、燃料タンク63へ水を供給するための水供給部87と、を有している。
【0037】
図7の符号63Aは、燃料タンク63の底面、符号83C、86A、87Aは、混合液体還流部83、液体燃料供給部86、水供給部87の、それぞれの燃料タンク63内への吐出部を示す。また符号88は燃料タンク63内の液位を検出するためのフロートセンサを示す。
【0038】
図9に示されるように、エマルジョン燃焼用混合器81は、略筒状体で一方の端部である入口端91Aから他方の端部である出口端91Bに液体燃料及び水を混合してなる混合液体が一方向に流される管状部91と、管状部91の内側を入口端91Aの側と出口端91Bの側とに隔てるように管状部91の内側に配置され、且つ、入口端91Aの側及び出口端91Bの側に連通する複数の貫通孔92Aが形成された撹拌機92と、を含み、管状部91は、内径が入口端91Aの側から出口端91Bの側に向かって小さくなる形状で撹拌機92よりも出口端91Bの側に配置された出口側縮径テーパ部91Cと、出口側縮径テーパ部91Cよりも出口端91Bの側の内周面に円周方向に沿って形成された出口側内周溝部91Dと、を有することを特徴としている。尚、図9中の矢印は混合液体が流れる方向を示している。
【0039】
管状部91は、第1部材93、第2部材94、第3部材95及び第4部材96を有して構成されている。これら第1部材93、第2部材94、第3部材95及び第4部材96はいずれも筒状体で、この順で入口端91Aの側から出口端91Bの側に同軸的に並んで配置され、相互に螺合して結合されている。
【0040】
第1部材93の内周面は、入口端91Aの側の小内径部93Aと、第2部材94の側の大内径部93Bと、内径が小内径部から大内径部に(入口端91Aの側から出口端91Bの側に)向かって大きくなる形状で小内径部93A及び大内径部93Bの間に(撹拌機92よりも入口端91Aの側に)配置された入口側拡径テーパ部93Cと、を有している。尚、大内径部93Bの第2部材94側の端部近傍には、第2部材94との結合のための雌ねじが形成されている。又、第1部材93の外周面は、入口端91Aの側の小外径部93Dと、第2部材94の側の大外径部93Eと、を有する段付形状で、小外径部93Dには外部配管等との結合のための雄ねじが形成されている。
【0041】
第2部材94は、内径が第1部材93の小内径部93Aよりも大きく大内径部93Bよりもやや小さい。第2部材94における第1部材93側の端部には撹拌機92が一体に形成されている。尚、第2部材94の外周面における第1部材93側の部分には第1部材93との結合のための雄ねじが形成され、第2部材94の内周面における第3部材95側の端部近傍には第3部材95との結合のための雌ねじが形成されている。
【0042】
第3部材95の内周面における第2部材94側の端部には前記出口側縮径テーパ部91Cが形成されている。又、第3部材95の内周面における出口側縮径テーパ部91Cよりも出口端91B側の部分(出口側縮径テーパ部91Cと出口側内周溝部91Dとの間の部分)は、中間小内径部91Eである。尚、中間小内径部91Eの内径は一定である。又、中間小内径部91Eの内径は、第1部材93の小内径部93Aの内径と等しい。又、第3部材95の外周面における第2部材94側の端部近傍には第2部材94との結合のための雄ねじが形成され、外周面における第4部材96側の部分には第4部材96との結合のための雄ねじが形成されている。
【0043】
第4部材96の内周面は、第3部材95の側の大内径部96Aと、出口端91Bの側の小内径部96Bと、これら大内径部96A及び小内径部96Bの間に(撹拌機92よりも出口端91Bの側に)配置された縮径テーパ部96Cと、を有している。尚、小内径部96Bの内径は、第1部材93の小内径部93Aの内径や第3部材95の中間小内径部91Eの内径と等しい。縮径テーパ部96Cは、前記出口側内周溝部91Dの内周側面に相当し、内径が大内径部96Aの側から小内径部96Bの側に(入口端91Aの側から出口端91Bの側に)向かって小さくなるテーパ形状である。一方、第3部材95における縮径テーパ部96Cに対向する軸方向の端面は軸方向に対して垂直な平面であり、管状部91は、中間小内径部91Eと出口側内周溝部91Dとの境界において内径が入口端91Aの側から出口端91Bの側に不連続に拡大している。尚、大内径部96Aには、第3部材95との結合のための雌ねじが形成されている。又、第4部材96の外周面は、第3部材95の側の大外径部96Dと、出口端91Bの側の小外径部96Eと、を有する段付形状であり、小外径部96Eには外部配管等との結合のための雄ねじが形成されている。
【0044】
撹拌機92は、入口端91Aの側から出口端91Bの側に向かって外径及び内径が大きくなる略錐面体側面の形状を有している。又、上記のように撹拌機92は、管状部91を構成する第2部材94に一体に形成されており、第2部材94における入口端91Aの側の端部から入口端91Aの側に突出するように設置されている。撹拌機92には、数十個程度(例えば20~80程度)の貫通孔92Aが形成されている。貫通孔92Aの直径は数百μm~数mm程度(例えば0.5~2.0mm程度)である。
【0045】
尚、液体燃料としては、例えば、重油、灯油、軽油、廃油、アルコール又はジメチルエーテル等を用いることができる。
【0046】
エマルジョン燃焼用混合器81は、入口側拡径テーパ部93C、撹拌機92、出口側縮径テーパ部91Cに加え、出口側内周溝部91Dを備えているので液体燃料と水とを充分にエマルジョン状に混合することができる。例えば、界面活性剤や還元水を用いなくても液体燃料と水とをエマルジョン状に充分に混合することが可能である。
【0047】
燃料タンク63に貯留された充分にエマルジョン化された混合液体の一部は、第2の混合液体供給部84を介してバーナ50に供給されて燃焼する。混合液体は、充分にエマルジョン化され液体燃料が極小微粒子となっているので酸素と接触しやすい。従って、COの発生が抑制され、完全燃焼又は完全燃焼に近い燃焼を実現できる。
【0048】
この実施例1において、被処理物である玄武岩原石は、粒径30μmを超えて40mm以下に破砕して形成された破砕原石である。
【0049】
この実施例1において、バーナ50は、1450℃から1500℃の温度により玄武岩破砕原石を溶融するようにセットする。これにより、約1500℃の安定温度で、破砕原石を容易に溶融することができる。
【0050】
炉床40における破砕原石溶融部41に対して、破砕原石投入装置24から間欠的に、破砕原石を破砕原石溶融部41上に投下する。
【0051】
破砕原石溶融部41において、バーナ50からの火炎により、破砕原石が溶融され、溶融スラグとなって流下し、溶融スラグ流下端部41Aから、溶融スラグ流下面42Cに溢流し、湯だまり部42内に貯留される。
【0052】
破砕原石から発生した粒径の小さい微細粒子は火炎により舞い上がり、溶融されて溶融微粒子となり、舞い降りて溶融スラグに付着する。図6に示されるように、湯だまり部42の底面42Aに到達し、ここから、続けて流下してくる後続の溶融スラグMSによって図6の右上に押し上げられ、湯だまり部42内の上方に至った時、堰部44から溢流して、白金ロジウム板31上に至る。
【0053】
この間に、溶融スラグ上面に付着した溶融微粒子が、付着したときには溶融スラグMSよりも低温で湯相が異なっていても、湯だまり部42内で、底面42Aから上方に押し上げられる間に十分に加熱され、湯だまり内の溶融スラグと同一の相になっているので、白金ロジウム板31通過時には、異物の状態が解消されている。
【0054】
特に本実施例では、液体燃料をエマルジョン化した混合液体を用いて、単に液体燃料を燃焼させたり、ガスや電気を用いていないので、低コストで高温度の炉を形成し、破砕原石から発生した粒径の小さい微細粒子をより高温で溶融することができるので、溶融微粒子をより高温にして、より早く溶融スラグと同一の相にすることができる。
【0055】
また、エマルジョン燃料及び燃焼装置により、炉内表面溶融温度を10℃単位で調整できるので、玄武岩に含有するFeの溶融粘度及び玄武岩の溶融粘度が等しくなる1510℃~1520℃に、精密に温度を調整する事により、これらが糸を引くバランスが同体となり長糸が作りやすくなるという効果がある。
【0056】
これは、特に、玄武岩の産地によりFeの含有率が異なる現実に対して、温度によるFeと玄武岩自体の溶融状況を同一粘度になるように制御して対応することができ、効果が極めて大きい。
【0057】
実際のところ液体化石燃料による1300℃以上の温度確保は、例がなく、エマルジョン燃料による1300℃以上の温度確保はCO削減に大きく寄与することができる。
【0058】
従って、白金ロジウム板31を通って繊維状になった時、繊維の長手方向の途中に相の異なる微粒子が発生することがなく、巻取り機35によって巻き取られたバサルト繊維は、長繊維とすることができる。
【0059】
又、長繊維とし、且つ、太さを小さくしても、相の異なる溶融微粒子の影響がないので、更に繊維を細くすることができ、本発明者の実験により、0.6μmの微細なバサルト長繊維を製造することができた。
【0060】
ここで、湯だまり部42内の溶融スラグの滞留時間は、炉床40の破砕原石溶融部41の破砕原石投入量に対応するものであり、又、白金ロジウム板31への溶融スラグの供給量も、同様にして破砕原石溶融部41への破砕原石投下量に対応させることができるので、立ち上がりは、試行錯誤によって決定することになる。
【0061】
なお、上記実施例1において、溶融スラグ流下面42Cには、断面凹円弧状の溶融スラグ流下ガイド43を形成したが、これは、必ずしも設けなくてもよい。但し、溶融スラグ流下ガイド43を設けた場合は、より円滑に、破砕原石溶融部41から流下した溶融スラグを、湯だまり部42の底面42Aに導くことができる。
【0062】
また、本発明のバーナは、湯だまり部42において十分に溶融微粒子と溶融スラグとを同一相に溶融できる設定であれば、必ずしもエマルジョン化した混合燃料を用いることに限定されない。
【0063】
但し、混合燃料を用いた場合は、運転コストを低減させると共に炉内の高温状態を維持制御し易いという利点がある。
【符号の説明】
【0064】
10…バサルト長繊維製造装置
20…溶融処理装置
22…炉本体
22A…燃焼室
22B…天井部
22C…観察窓
22D…立壁
24…破砕原石投入装置(被処理物投入装置)
24A…ホッパー
24B…ホッパー開閉シリンダ
30…バサルト長繊維化装置
31…白金ロジウム板
32…繊維引出しガイド
33…引揃え機
34…平行巻取りガイド
35…巻取り機
40…炉床
40A…凹円弧状底面
41…破砕原石溶融部
41A…溶融スラグ流下端部
42…湯だまり部
42A…底面
42B…溶融スラグ溢湯端部
42C…溶融スラグ流下面
43…溶融スラグ流下ガイド
44…堰部
46…水供給部
50…バーナ
50A…点火用バーナ
52…燃料噴射ノズル
54…混合流体噴射口
55…先端チップ
56…エアパイプ
56A…エアポート
56B…モジュールパイプ
57A…雄ねじ部
57B…雌ねじ部
58…出力開口
60…旋回流形成パイプ
62…燃料パイプ
63…燃料タンク
63A…底面
64…燃料ポンプ
66…バルブ
68…エアポンプ
70…バルブ
72…吹き込みパイプ
74…エアポンプ
80…エマルジョン燃焼用混合液体供給システム
81…エマルジョン燃焼用混合器
82…第1の混合液体供給部
83…混合液体還流部
83C、86A、87A…吐出部
84…第2の混合液体供給部
85…液体燃料貯留タンク
86…液体燃料供給部
87…水供給部
88…フロートセンサ
91…管状部
91A…入口端
91B…出口端
91C…出口側縮径テーパ部
91D…出口側内周溝部
91E…中間小内径部
92…撹拌機
92A…貫通孔
93…第1部材
93A…小内径部
93B…大内径部
93C…入口側拡径テーパ部
93D…小外径部
93E…大外径部
94…第2部材
95…第3部材
96…第4部材
96A…大内径部
96B…小内径部
96C…縮径テーパ部
96D…大外径部
96E…小外径部
BF…バサルト繊維
MS…溶融スラグ
VS…鉛直面
【要約】
【課題】バーナにより溶融された破砕原石の溶融スラグからバサルト繊維にするとき、酸化物の添加や高コストの溶融炉を用いることなく、確実に長繊維とすることができるバサルト長繊維製造装置を提供する。
【解決手段】炉本体22の燃焼室22A内の炉床40を溶融スラグを流下させる傾斜した溝状とし、炉床40の傾斜方向の上端に投入された破砕原石にバーナ50から火炎を吹きつけて溶融スラグとし、これを湯だまり部42に受け止めて、一定量貯留し、その間に舞い上がり、落下した溶融微粒子を溶融スラグに取込ませて、一様に溶融してから、堰部44からの溢流としてバサルト長繊維化装置30に導くようにされたバサルト長繊維製造装置10。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9