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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-27
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】水素透過装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/22 20060101AFI20220128BHJP
   B01D 63/08 20060101ALI20220128BHJP
   B01D 71/02 20060101ALI20220128BHJP
   C01B 3/56 20060101ALI20220128BHJP
【FI】
B01D53/22
B01D63/08
B01D71/02 500
C01B3/56 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020156701
(22)【出願日】2020-09-17
(65)【公開番号】P2021049520
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2020-10-14
(31)【優先権主張番号】P 2019170949
(32)【優先日】2019-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516003609
【氏名又は名称】株式会社ハイドロネクスト
(73)【特許権者】
【識別番号】519256075
【氏名又は名称】株式会社三和プレス
(73)【特許権者】
【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
(74)【代理人】
【識別番号】100166073
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 秀治
(72)【発明者】
【氏名】森迫 和宣
(72)【発明者】
【氏名】永井 正章
(72)【発明者】
【氏名】横山 朋樹
(72)【発明者】
【氏名】松本 佳久
【審査官】高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/011619(WO,A1)
【文献】特開2019-005684(JP,A)
【文献】特開2004-167381(JP,A)
【文献】特開2010-042397(JP,A)
【文献】特開2017-189765(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0243660(US,A1)
【文献】特開2011-189335(JP,A)
【文献】特開2012-246207(JP,A)
【文献】特開2010-201304(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00 - 71/82
C01B 3/00 - 6/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料気体の供給側である1次側円筒体と、透過気体の取出側である2次側円筒体との間に、水素透過金属膜を有する水素透過装置であって、
1次側円筒体には、
原料気体供給路を形成する原料供給管と、
2次側に透過しない原料気体を排出する原料気体排出路と、
前記原料供給管の先端側に中心部に噴出孔を有する略円形状の開孔板を有し、
該開孔板の噴出孔の直径が、原料供給管の内径の4分の1であることを特徴とする、水素透過装置。
【請求項2】
前記開孔板の噴出孔が、1次側から2次側に向けて、テーパ形状を有することを特徴とする、請求項1に記載の水素透過装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素透過装置に関し、特に水素透過金属膜により水素を透過させるのに適した技術に関する。
【背景技術】
【0002】
水素透過に関する技術として、特許文献1に記載の水素分離装置が知られている。
該水素分離装置は、特許文献1の段落0008に記載されているように、水素を透過する非パラジウム系金属又は非パラジウム系金属を主たる金属とする合金により形成された水素透過膜と、水素を含む原料気体を水素透過膜の一次側の表面に供給するための原料気体供給流路と、水素透過膜の二次側の表面へ透過した水素を回収するための水素回収流路と、原料気体供給流路から供給された原料気体を水素透過膜の一次側の表面に沿って分配するための所定の幅の流路を形成するために、水素透過膜の一次側の表面から所定の幅だけ離隔して配置された流路形成部とを備えたものである。
【0003】
該特許文献1の段落0045には、流配フランジ60を設けることで、高い水素透過度が得られることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-5684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、流配フランジとは全く別の手段によって高い水素透過度が得られる手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の課題を解決するための手段は、下記のとおりである。
【0007】
第1に、
原料気体の供給側である1次側と、透過気体の取出側である2次側との間に、水素透過金属膜を有する水素透過装置であって、
1次側には、
原料気体供給路を形成する原料供給管と、
2次側に透過しない原料気体を排出する原料気体排出路と、
前記原料供給管の先端側と組み合う開孔板を有し、
該開孔板の噴出孔の大きさが、原料供給管より小さいことを特徴とする、水素透過装置。
ここで、噴出孔の大きさとは、噴出孔が円の場合には直径のことをいう。
従って、噴出孔が円の場合には、噴出孔の直径が、原料供給管の内径より小さい場合が該当する。
また、噴出孔の形状としては、円の他に、三角形、四角形、五角形等の多角形や星型多角形等の各種形状が採用することができる。
ここで、多角形や星型多角形の場合に、「噴出孔の大きさが、原料供給管より小さい」とは、多角形や星型多角形の形状自体が、原料供給管の内径を形成する円内に収まることをいう。
【0008】
第2に、
原料気体の供給側である1次側と、透過気体の取出側である2次側との間に、水素透過金属膜を有する水素透過装置であって、
1次側には、
原料気体供給路を形成する原料供給管と、
2次側に透過しない原料気体を排出する原料気体排出路と、
前記原料供給管の先端側と組み合う開孔板を有し、
該開孔板の噴出孔の直径が、原料供給管の内径より小さいことを特徴とする、水素透過装置。
【0009】
第3に、
前記開孔板の噴出孔が、1次側から2次側に向けて、テーパ形状を有することを特徴とする、前記第1または第2に記載の水素透過装置。
ここで、テーパ形状を有するとは、1次側から2次側に向けて、噴出孔の形状が徐々に小さくなるようにテーパを形成する他に、1次側から2次側に向けて、噴出孔の形状が徐々に大きくなるようにテーパを形成する場合も含まれる。
前記テーパを形成する場合の噴出孔の形状は、加工性を考慮すると、円の場合が望ましいが、三角形、四角形、五角形等の多角形や星型多角形等の各種形状の場合であっても、採用することができる。
【0010】
第4に、
前記開孔板の噴出孔の直径が、原料供給管の内径の2分の1以下、望ましくは3分の1以下、より望ましくは4分の1程度であることを特徴とする、前記第2または第3に記載の水素透過装置。
ここで、4分の1程度とは、4分の1の値に加えて、実質的に4分の1の場合と同等の作用効果を有する範囲を含むことを意味している。
【0011】
水素透過金属膜としては、水素を透過する性質を有する、V、Nb、Taなどの5族元素の純金属や、合金により形成される5類金属であれば良いが、純バナジウムが望ましい。
また、水素透過金属膜の両表面には、触媒としてパラジウムまたはパラジウム系合金をスパッタリングすることが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、水素透過性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施例1に係る要部の縦断面図である。
図2】本発明の実施例1に係る全体の縦断面図である。
図3】本発明の実施例1に係る1次側の斜視図である。
図4】本発明の実施例1に係る全体の縦断面の斜視図である。
図5】比較例に係る要部の縦断面図である。
図6】比較例に係る全体の縦断面の斜視図である。
図7】試験例の結果を流量で示すグラフである。
図8】試験例の結果を透過係数で示すグラフである。
図9】本発明の実施例2に係る噴出孔の部分の縦断面図である。
図10】本発明の実施例3に係る噴出孔の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を参照しつつ具体的に説明する。
ここで、添付図面において同一の部材には同一符号を付しており、また重複した説明は省略されている。
なお、ここでの説明は本発明が実施される一形態であることから、本発明は該当形態に限定されるものではない。
【0015】
[実施例1]
【0016】
本発明に係る水素透過装置の一例は、図1に要部を示すとおり、水素含有ガス等の原料気体の供給側である1次側円筒体10と、透過気体である水素の取出側である2次側円筒体20との間に、純バナジウムによる水素透過金属膜30を有するものである。
該水素透過金属膜30の両面には、触媒としてパラジウム銀(Pd-25%Ag)がスパッタリングされている。
【0017】
1次側円筒体10の先端側には、1次側フランジ11が一体となって形成されている。
2次側円筒体20の先端側には、2次側フランジ21が一体となって形成されている。
【0018】
1次側フランジ11及び2次側フランジ21の内周面側には、凹部が各々形成されている。
1次側の凹部には、銅による1次側ガスケット12が位置している。
2次側の凹部には、銅による2次側ガスケット22が位置している。
なお、ガスケットの素材としては、銅に限定されず、ステンレス等の他の素材で形成することもできる。
【0019】
1次側ガスケット12と2次側ガスケット22との間には、水素透過金属膜30が位置している。
該水素透過金属膜30の直径は、1次側ガスケット12及び2次側ガスケット22の外径より、わずかに大きく、ガスケットで挟み込まれて密閉性が保たれた状態で、水素透過金属膜30の外周縁部が1次側ガスケット12及び2次側ガスケット22の外周端から僅かにはみ出すように形成されている。
1次側ガスケット12及び2次側ガスケット22による挟み込みは、図示は省略するが、1次側フランジ11及び2次側フランジ21に形成された4個の貫通穴に、ボルトを通してナットで締め付けることで行われている。
【0020】
前記1次側円筒体10の内部には、図1及び図2に示すとおり、原料気体供給路を形成する原料供給管13が配置されている。
該原料供給路13の先端側には、図3に示すとおり、中心部に円状の噴出孔15を有する略円形状の開孔板14が組み合わせられている。
【0021】
前記噴出孔15の直径は、図1及び図2に示すとおり、原料供給管13の内径の4分の1のサイズで形成されている。
本実施例1では、原料供給管13の内径が4.4mmであり、噴出孔15の孔径が1.1mmとなるように形成されている。
また、1次側円筒体10及び2次側円筒体20の内径は、30mmである。
【0022】
図3に示すように、前記開孔板14の外周は、1次側円筒体10の内径より小さく切欠状により原料気体排出路16aを形成する部分と、1次側フランジ11の凹部に収まる部分である接続縁部14aとを有している。
該接続縁部14aの一部は、図示は省略するが、1次側フランジ11に形成された凹部に溶接されている。
該原料気体排出路16aは、図1及び図2に示すように、1次側円筒体10と原料供給管13との間に形成された原料気体排出路16bに通じている。
該原料気体排出路16bは、図2に示すように、1次側円筒体10の後端側に接続された原料気体排出管17による原料気体排出路16cに通じている。
【0023】
図1に示すように、2次側フランジ21の凹部には、2次側ガスケット22と共に、円形状のメタルフィルター23と円形状の孔有支持板24が、水素透過金属膜30側から順に配置されている。
該孔有支持板24には、水素透過金属膜30を透過した水素が通過するための複数の透過気体通過孔25が形成されている。
【0024】
図1及び図2に示すように、2次側円筒体20の内部には、前記透過気体通過孔25を通過した水素が流れ込む透過気体取出路26bが形成されている。
図2に示すように、該2次側円筒体20の後端側には、内径4.4mmの透過気体取出管27が接続されている。
【0025】
該透過気体取出管27の内部には、透過気体取出路26cが形成されている。
該当化気体取出路26cは、透過気体取出路26bに通じている。
【0026】
次に、前記の水素透過装置の作用について説明する。
【0027】
図1から図4に示すとおり、水素を含有する気体は、原料供給管13から調整された圧力で供給される。
供給された気体は、図1に示すとおり、原料供給管13先端部分で、開孔板14によって流路が制限されているので、そのまま流れることなく、原料供給管13の内径より小さい直径の噴出孔15から水素透過金属膜30側に噴出する際に、流速が早められることになる。
【0028】
早い流速で噴出した気体は、水素透過金属膜30の中心部付近に当たってから、水素透過金属膜30の外縁側に流れ出す。
この際、一部の水素分子が乖離して水素原子となって水素透過金属膜30に入り込み、圧力差により2次側に進み、最後には水素透過金属膜30を透過する。
【0029】
図2及び図4に示すとおり、1次側において、水素透過金属膜30に入り込まない気体は、開孔板14の外周縁に形成された原料気体排出路16aを通り、更に、原料気体排出路16b、原料気体排出路16cを通って、排出される。
【0030】
2次側において、水素透過金属膜30を透過した理論純度100パーセントの水素は、図1に示すとおり、メタルフィルター23及び孔有支持板24の透過気体通過孔25を通る。
透過気体通過孔25を通った超高純度の水素は、図2及び図4に示すとおり、透過気体取出路26b,26cを通り、容器(図示は省略)に分離回収される。
【0031】
[比較例]
【0032】
図5図6に示すとおり、原料供給管13の内径と等しく孔径が4.4mmの供給管径噴出孔18を設けた水素透過装置を準備した。
該比較例の水素透過装置は、供給管径噴出孔18の孔径以外は、前記実施例の水素透過装置と同様の構成なので、説明は省略する。
【0033】
[比較試験]
【0034】
前記実施例の水素透過装置と、前記比較例の水素透過装置について、同一の条件で、水素透過試験を行った。
試験結果について、流量を図7に、透過係数を図8に示す。
【0035】
結果を考察すると、比較例の4.4mm孔よりも、実施例の1.1mm孔の方が、良好なデータを示し、孔径を小さくすることが有効であることが確認された。
【0036】
[実施例2]
【0037】
図9に示すとおり、本実施例2における開孔板14の円状の噴出孔15は、実施例1の噴出孔15と異なり、原料供給管13が取り付けられている原料気体の供給側である1次側から、透過気体の取出側である2次側に向けて、テーパ形状を有するように形成されている。
すなわち、本実施例2の場合は、円状の噴出孔15の直径が、テーパ状に変化するように形成されている。
【0038】
図9中、(A)は、円状の噴出孔15について、1次側から2次側に向けて、径が徐々に小さくなるようにテーパを形成したもので、1次側の孔径を3.1mm、2次側の孔径を1.1mmに形成したものである。
図9中、(B)は、円状の噴出孔15について、1次側から2次側に向けて、径が徐々に大きくなるようにテーパを形成したもので、1次側の孔径を1.1mm、2次側の孔径を3.1mmに形成したものである。
【0039】
本実施例2による円状の噴出孔15によると、径がテーパ状に変化するように形成されているので、流速が早まるだけでなく、乱流や速度変化等により、噴出孔15通過後の気流の変化が多面的に引き起こされ、より効果的に水素透過金属膜30(図1参照)に噴出される。
[実施例3]
【0040】
図10に示すとおり、本実施例3における開孔板14の噴出孔15の形状は、実施例1における円状の噴出孔15(図3参照)と異なるものであるが、該開孔板14の噴出孔15の大きさが、原料供給管13(図1図3参照)の内径より小さいという特徴は、実施例1と共通するものである。
【0041】
図10中、(A)は、星型5角形の形状の噴出孔15の部分を拡大して示すもの、全体が直径1.1mmの円内に収まるように形成されている。
図10中、(B)は、6角形の形状の噴出孔15の部分を拡大して示すもの、全体が直径1.1mmの円内に収まるように形成されている。
【0042】
本実施例3による多角形や星型多角形による噴出孔15によると、形状自体が円形と異なる形状で形成されているので、流速が早まるだけでなく、乱流や部分的な速度変化等により、噴出孔15通過後の気流の変化がより多面的に引き起こされ、より一層効果的に水素透過金属膜30(図1参照)に噴出される。
【符号の説明】
【0043】
10 1次側円筒体
11 1次側フランジ
12 1次側ガスケット
13 原料供給管
14 開孔板
14a 接続縁部
15 噴出孔
16a,16b,16c 原料気体排出路
17 原料気体排出管
18 供給管径噴出孔
20 2次側円筒体
21 2次側フランジ
22 2次側ガスケット
23 メタルフィルター
24 孔有支持板
25 透過気体通過孔
26b,26c 透過気体取出路
27 透過気体取出管
30 水素透過金属膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10