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特許7016121杭孔充填物採取装置および杭孔充填物の採取方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-27
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】杭孔充填物採取装置および杭孔充填物の採取方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/50 20060101AFI20220128BHJP
   E02D 1/04 20060101ALI20220128BHJP
【FI】
E02D5/50
E02D1/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018180506
(22)【出願日】2018-09-26
(65)【公開番号】P2020051094
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2020-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000228660
【氏名又は名称】日本コンクリート工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592005825
【氏名又は名称】佐藤鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】千種 信之
(72)【発明者】
【氏名】児玉 貴之
(72)【発明者】
【氏名】後藤 祐一
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-048508(JP,A)
【文献】特開2010-222799(JP,A)
【文献】特開2013-002096(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/50
E02D 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭孔から未固結状態の杭孔充填物を採取する杭孔充填物採取装置であって、
杭孔に挿入可能な複数の採取ユニットと、
流体を供給する流体圧ポンプと、
この流体圧ポンプに接続された第1の流体圧ラインおよび第2の流体圧ラインと、を具備し、
各採取ユニットは、前記杭孔充填物を収容可能な採取室と、前記採取室に設けられた採取口と、前記採取室に移動可能に設けられ前記採取口を開閉可能な開閉部と、前記第1の流体圧ラインおよび前記第2の流体圧ラインと接続され、前記開閉部を移動させる流体圧シリンダである駆動装置と、前記各流体圧ラインと前記駆動装置との連通状態を切り替える切換手段と、を有し、
前記流体圧ポンプより流体が前記各流体圧ラインに供給され、前記切換手段によって前記各流体圧ラインと前記駆動装置との連通状態が操作されることで、前記第1の流体圧ラインまたは前記第2の流体圧ラインを通って供給される流体により前記各採取ユニットの任意の前記駆動装置個別に駆動可能で前記各開閉部が独立して移動して前記採取口を開閉可能である
ことを特徴とする杭孔充填物採取装置
【請求項2】
前記採取ユニットは、前記採取室に設けられその採取室内に収容された杭孔充填物を排出するための排出口を有し、
前記排出口は、前記採取ユニットの杭孔への挿入方向を前記採取ユニットの上下方向とした場合に、前記採取口より下側に配置されている
ことを特徴とする請求項記載の杭孔充填物採取装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の杭孔充填物採取装置を用いた杭孔充填物の採取方法であって、
地中に設けられた杭孔に杭孔充填材を築造し、
少なくとも1つの前記採取ユニットにおける前記採取口が前記杭孔内における所定位置に配置されるように未固結状態の杭孔充填物に前記採取ユニットの少なくとも一部を埋没させ、
前記駆動装置の駆動により前記採取ユニットの前記開閉部を移動させて前記採取口を開口し、
その採取口から未固結状態の杭孔充填物が前記採取室内に流入し、
前記駆動装置の駆動によりその採取ユニットの前記開閉部を移動させて前記採取口を閉塞する
ことを特徴とする杭孔充填物の採取方法。
【請求項4】
一の前記採取ユニットにて杭孔内における一の採取位置の杭孔充填物を採取した後、
前記杭孔充填物採取装置が杭孔内に挿入されたままの状態で、他の前記採取ユニットにて杭孔内における他の採取位置の杭孔充填物を採取する
ことを特徴とする請求項記載の杭孔充填物の採取方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭孔内に充填された未固結状態の杭孔充填物を採取するための杭孔充填物採取装置、および、杭孔充填物の採取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
既製コンクリート杭等の杭の施工においては、地中に形成された杭孔内にセメントミルクや、セメントミルクと地中の土砂とが混合撹拌されたものであるソイルセメント等の杭孔充填物を築造して、その杭孔充填物が未固結状態のうちに、杭を地中の所定位置に配置されるように杭孔内に設置した後、杭孔充填物が固結し杭と杭孔充填物とが一体化されることで、支持力が発現する。
【0003】
杭の支持力を確保するためには、杭の根固め部(底部)および杭孔内における杭周部の杭孔充填物の強度管理が重要である。
【0004】
また、根固め部や杭周部の強度を管理するには、杭が設置される杭孔内の原位置において、専用の採取装置を用いて、未固化状態の杭孔充填物を試料として採取し、地上にて圧縮強度等の品質を確認する必要がある。
【0005】
杭孔内から未固化状態の杭孔充填物を採取する技術としては、例えば特許文献1には、杭孔の掘削および杭孔充填物の築造後に、掘削装置の掘削具(オーガヘッド)と取り替えられて、杭孔から未固化状態の杭孔充填物を採取する構成の採取装置が記載されている。
【0006】
また、特許文献2には、掘削装置に組み込まれ、杭孔の掘削および杭孔充填物の築造後に直ちに未固化状態の杭孔充填物を採取する構成の採取装置が記載されている。
【0007】
さらに、特許文献3には、複数の採取容器を有し、同時に杭孔内の複数箇所から未固化状態の杭孔充填物を採取可能な採取装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2012-237192号公報
【文献】特開2014-47531号公報
【文献】特開2017-179855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
現在、建築工事においては根固め部範囲のみ杭孔充填物を採取し、土木工事においては杭周部範囲のみ杭孔充填物を採取して、品質確認することが一般的である。
【0010】
しかしながら、今後、1つの杭孔内において、異なる深度にて複数種類のセメント配合の杭孔充填物を採取し、それぞれ品質確認する必要性が高まることも想定される。
【0011】
特許文献1および特許文献2の構成では、採取口や採取容器が1箇所のみで、杭孔内において1箇所のみから杭孔充填物を採取するものであるため、1つの杭孔において異なる深度の複数の箇所から杭孔充填物を採取する場合には、採取装置で採取した杭孔充填物を回収し、再度杭孔充填物を採取する作業を繰り返す必要がある。
【0012】
このような採取作業の繰り返しにより作業時間が長くなると、杭孔充填物の固結が進行して、杭孔充填物をスムーズに採取できなくなる可能性がある。
【0013】
また、特許文献3の構成では、複数の採取口が同時に開閉されるため、単に杭孔内における複数箇所から杭孔充填物を採取できるだけであり、任意の複数の深度にて杭孔充填物を採取できるものではない。
【0014】
したがって、杭孔内において任意の複数の採取位置から容易に杭孔充填物を採取できる技術が求められていた。
【0015】
本発明はこのような点に鑑みなされたもので、杭孔内における任意の複数の採取位置から容易に杭孔充填物を採取できる杭孔充填物採取装置、および、杭孔充填物の採取方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1に記載された杭孔充填物採取装置は、杭孔から未固結状態の杭孔充填物を採取する杭孔充填物採取装置であって、杭孔に挿入可能な複数の採取ユニットと、流体を供給する流体圧ポンプと、この流体圧ポンプに接続された第1の流体圧ラインおよび第2の流体圧ラインと、を具備し、各採取ユニットは、前記杭孔充填物を収容可能な採取室と、前記採取室に設けられた採取口と、前記採取室に移動可能に設けられ前記採取口を開閉可能な開閉部と、前記第1の流体圧ラインおよび前記第2の流体圧ラインと接続され、前記開閉部を移動させる流体圧シリンダである駆動装置と、前記各流体圧ラインと前記駆動装置との連通状態を切り替える切換手段と、を有し、前記流体圧ポンプより流体が前記各流体圧ラインに供給され、前記切換手段によって前記各流体圧ラインと前記駆動装置との連通状態が操作されることで、前記第1の流体圧ラインまたは前記第2の流体圧ラインを通って供給される流体により前記各採取ユニットの任意の前記駆動装置個別に駆動可能で前記各開閉部が独立して移動して前記採取口を開閉可能であるものである。
【0017】
求項に記載された杭孔充填物採取装置は、請求項記載の杭孔充填物採取装置において、前記採取ユニットは、前記採取室に設けられその採取室内に収容された杭孔充填物を排出するための排出口を有し、前記排出口は、前記採取ユニットの杭孔への挿入方向を前記採取ユニットの上下方向とした場合に、前記採取口より下側に配置されているものである。
【0018】
請求項に記載された杭孔充填物の採取方法は、請求項1または2記載の杭孔充填物採取装置を用いた杭孔充填物の採取方法であって、地中に設けられた杭孔に杭孔充填材を築造し、少なくとも1つの前記採取ユニットにおける前記採取口が前記杭孔内における所定位置に配置されるように未固結状態の杭孔充填物に前記採取ユニットの少なくとも一部を埋没させ、前記駆動装置の駆動により前記採取ユニットの前記開閉部を移動させて前記採取口を開口し、その採取口から未固結状態の杭孔充填物が前記採取室内に流入し、前記駆動装置の駆動によりその採取ユニットの前記開閉部を移動させて前記採取口を閉塞するものである。
【0019】
請求項に記載された杭孔充填物の採取方法は、請求項記載の杭孔充填物の採取方法において、一の前記採取ユニットにて杭孔内における一の採取位置の杭孔充填物を採取した後、前記杭孔充填物採取装置が杭孔内に挿入されたままの状態で、他の前記採取ユニットにて杭孔内における他の採取位置の杭孔充填物を採取するものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、各採取ユニットの駆動装置が個別に駆動可能で各開閉部が独立して移動可能であるため、杭孔内における任意の複数の採取位置から容易に杭孔充填物を採取できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施の形態に係る杭孔充填物採取装置の構成を示す断面図である。
図2】同上杭孔充填物採取装置の第1の採取ユニットの採取口の開口状態を示す模式図である。
図3】同上杭孔充填物採取装置の第1の採取ユニットの採取口の閉塞状態を示す模式図である。
図4】同上杭孔充填物採取装置の第2の採取ユニットの採取口の開口状態を示す模式図である。
図5】同上杭孔充填物採取装置の第2の採取ユニットの採取口の閉塞状態を示す模式図である。
図6】同上杭孔充填物採取装置により杭孔充填物を採取する際の動作説明図である。
図7図6に続く動作説明図である。
図8図7に続く動作説明図である。
図9図8に続く動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施の形態の構成について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0023】
図1において、1は杭孔充填物採取装置であり、地中に設けられた杭孔2に挿入され、その杭孔2内に充填されて築造された未固結状態のセメントミルクやソイルセメント等の杭孔充填物3を採取するものである。
【0024】
この杭孔充填物採取装置1は、例えばオーガ等の掘削装置の先端に掘削ビットに換えて取り付けられる取付部4と、この取付部4に接続された複数(例えば2つ)の採取ユニット5,6とを具備している。なお、以下においては、杭孔充填物採取装置1が杭孔2に挿入された状態を基準に上下方向とする。すなわち、杭孔2に挿入された状態において一方向(挿入方向)である軸方向を上下方向とする。
【0025】
各採取ユニット5,6は、杭孔2に挿入可能な略円柱状のユニット本体7と、このユニット本体7の軸方向(上下方向)の両端部に設けられたフランジ部8とを有している。そして、一の採取ユニット5における上端部に位置するフランジ部8と取付部4のフランジ部9とが連結されることで、取付部4と採取ユニット5とが上下方向に接続される。また、一の採取ユニット5のおける下端部に位置するフランジ部8と、他の採取ユニット6における上端部に位置するフランジ部8とが連結されることで、複数の採取ユニット5,6が上下方向に順次接続される。
【0026】
各採取ユニット5,6は、杭孔充填物3を収容可能な採取室11と、この採取室11の側面に設けられた採取口12と、採取室11に移動可能に設けられ採取口12を開閉可能な開閉部13と、採取室11に設けられ採取室11内に収容された杭孔充填物3を排出するための排出口14と、開閉部13を移動させるための駆動装置としての油圧シリンダ15とを有している。
【0027】
採取室11は、ユニット本体7において上下方向の中心部より下側に設けられた中空状の箇所であり、品質確認に必要な所定量の杭孔充填物3を収容可能である。
【0028】
採取口12は、採取室11において上下方向の中心よりやや上側に設けられた矩形状の開口であり、この採取口12から杭孔2内の未固結の杭孔充填物3が採取口12内へ流入する。
【0029】
開閉部13は、ユニット本体7内において上下方向に摺動可能な円柱状部材である。そして、採取室11に対して上下方向に移動することで、採取口12より上側に位置した上昇状態と、側面視で採取口12に重なって採取口12を閉塞した下降状態とに切り替えられる。すなわち、開閉部13が下降状態から上昇することで採取口12が開放され、開閉部13が上昇状態から下降することで採取口12が閉塞される。
【0030】
排出口14は、採取室11における採取口12より下側に設けられている。具体的には、各採取ユニット5,6のうち、最も下側に配置される採取ユニット6においては、採取室11の底部に配置され、取外可能に設けられた蓋体16を手動で取り外すことで開放される。また、採取ユニット6の上側に配置される採取ユニット5においては、採取室11の側面における採取口12より下側に配置され、取外可能に設けられた蓋体17を手動で取り外すことで開放される。そして、採取室11に杭孔充填物3が収容された状態の杭孔充填物採取装置1を地上に引き上げた後に、各採取ユニット5,6の蓋体16,17をそれぞれ取り外すことで開放状態の排出口14を通って採取室11から杭孔充填物3が排出される。
【0031】
油圧シリンダ15は、各採取室11に対して1つ設けられており、採取ユニット5,6に対して固定して設けられたシリンダ本体18と、このシリンダ本体18に対して進退移動可能なロッド19とを有している。
【0032】
ロッド19の先端には開閉部13が固定されている。すなわち、油圧によってシリンダ本体18に対してロッド19が進退移動することで、そのロッド19とともに開閉部13が上下動し、採取口12が開閉される。
【0033】
ここで、杭孔充填物採取装置1は、油圧シリンダ15に流体としての作動油を所定の圧力で供給する流体供給手段としての作動油供給手段21を具備している。
【0034】
この作動油供給手段21は、図示しない流体圧ポンプとしての油圧ポンプと、各採取ユニット5,6の油圧シリンダ15および油圧ポンプに接続され、油圧ポンプからの作動油を各採取ユニット5,6のシリンダ本体18へ供給するための第1の流体圧ラインとしての第1の油圧ライン22および第2の流体圧ラインとしての第2の油圧ライン23とを有している。
【0035】
また、第1の油圧ライン22におけるシリンダ本体18との接続部24a,24bのうちの採取ユニット5のシリンダ本体18との接続部24a、および、第2の油圧ライン23におけるシリンダ本体18との接続部24c,24dのうちの採取ユニット6のシリンダ本体18との接続部24dには、各油圧ライン22,23とシリンダ本体18との連通状態を切り替える切替手段としてのシーケンスバルブ25,26が設けられている。そして、シーケンスバルブ25,26によって各油圧ライン22,23と各シリンダ本体18との連通状態を操作することで、第1の油圧ライン22または第2の油圧ライン23を通って油圧シリンダ15に供給される流体により任意の油圧シリンダ15が選択的に駆動する。
【0036】
より具体的に説明すると、シーケンスバルブ25,26は、例えば所定以上の圧力が作用することでシリンダ本体18への方向にのみ開通する弁であり、例えばその開口圧力は20MPaに設定されている。
【0037】
そして、図2に示すように、油圧ポンプによって第1の油圧ライン22から作動油が供給され、その作動油によって20MPaの圧力が導入されることで、シーケンスバルブ25が開通し、ロッド19がシリンダ本体18内へ挿入されるように押し上げられ開閉部13が上昇して採取ユニット5の採取口12が開口する。なお、採取ユニット6では、第1の油圧ライン22からシリンダ本体18に作動油が流入し、採取口12が閉塞された状態が維持される。
【0038】
一方、図3に示すように、油圧ポンプによって第2の油圧ライン23から作動油が供給され、その作動油によって10MPaの圧力が導入されることで、採取ユニット5ではそのまま作動油がシリンダ本体18内へ流入してロッド19がシリンダ本体18外へ露出するように下方へ押し下げられ、開閉部13が下降して採取口12が閉塞される。なお、採取ユニット6においては、10MPaの油圧ではシーケンスバルブ26が開通しないため、第2の油圧ライン23からシリンダ本体18内に作動油は流入せず採取口12が閉塞された状態が維持される。
【0039】
また、図4に示すように、油圧ポンプによって第2の油圧ライン23から作動油が供給され、その作動油によって20MPaの圧力が導入されることで、シーケンスバルブ26が開通し、ロッド19がシリンダ本体18内へ挿入されるように上方へ押し上げられ開閉部13が上昇して採取ユニット6の採取口12が開口する。なお、採取ユニット5においては、第2の油圧ライン23からシリンダ本体18に作動油が流入するため、採取口12が閉塞された状態が維持される。
【0040】
一方、図5に示すように、油圧ポンプによって第1の油圧ライン22から作動油が供給され、その作動油によって10MPaの圧力が導入されることで、採取ユニット6ではそのまま作動油がシリンダ本体18内へ流入してロッド19がシリンダ本体18外へ露出するように下方へ押し下げられ、開閉部13が下降して採取口12が閉塞される。なお、採取ユニット5においては、10MPaの油圧ではシーケンスバルブ25が開通しないため、第1の油圧ライン22からシリンダ本体18内に作動油は流入せず採取口12が閉塞された状態が維持される。
【0041】
このように、杭孔充填物採取装置1では、各採取ユニット5,6における油圧シリンダ15を個別に駆動可能であり、各開閉部13が独立して移動可能である。
【0042】
次に、上記杭孔充填物採取装置1を用いた杭孔充填物3の採取方法を説明する。
【0043】
まず、掘削装置にて、地中に杭孔2を掘削しその杭孔2にセメントミルク(杭周固定部27)やソイルセメント(根固め部28)等の杭孔充填物3を築造する。
【0044】
掘削装置を杭孔2から引抜いた後、その掘削装置の先端掘削ビットを杭孔充填物採取装置1に交換する。
【0045】
図6に示すように、杭孔2に杭孔充填物採取装置1を挿入し、その杭孔充填物採取装置1を未固結状態の杭孔充填物3に埋没させていく。
【0046】
また、図7に示すように、採取ユニット5の採取口12が杭孔2内における杭周固定部27の所定位置(所定深度)に配置された状態で、第1の油圧ライン22から20MPaで作動油を導入する。この第1の油圧ライン22からの採取ユニット5のシリンダ本体18への作動油の導入によって、ロッド19および開閉部13が上昇し採取ユニット5の採取口12が開口されて、杭周固定部27の杭孔充填物3が採取ユニット5の採取室11へ流入する。
【0047】
採取ユニット5の採取室11に杭孔充填物3を収容した後、第1の油圧ライン22からの作動油の供給を停止するとともに、第2の油圧ライン23から10MPaで作動油を導入する。この第2の油圧ライン23からの採取ユニット5のシリンダ本体18への作動油の導入によって、ロッド19および開閉部13が下降して採取ユニット5の採取口12が閉塞される。
【0048】
採取ユニット5,6の採取口12が閉塞した状態にて、杭孔充填物採取装置1を杭孔2においてさらに深く挿入する。
【0049】
また、図8に示すように、採取ユニット6の採取口12が杭孔2内における根固め部28の所定位置(所定深度)に配置された状態で、第2の油圧ライン23から20MPaで作動油を導入する。この第2の油圧ライン23からの採取ユニット6のシリンダ本体18への作動油の導入によって、ロッド19および開閉部13が上昇し採取ユニット6の採取口12が開口されて、採取ユニット6の採取室11へ杭孔充填物3が流入する。
【0050】
採取ユニット6の採取室11に杭孔充填物3を収容した後、第2の油圧ライン23からの作動油の供給を停止するとともに、第1の油圧ライン22から10MPaで作動油を導入する。この第1の油圧ライン22からの採取ユニット6のシリンダ本体18への作動油の導入によって、ロッド19および開閉部13が下降して採取ユニット6の採取口12が閉塞される。
【0051】
そして、図9に示すように、採取ユニット5,6の採取口12が閉塞した状態にて、杭孔充填物採取装置1を地上へ引き上げ、各採取ユニット5,6に収容された杭孔充填物3を排出口14から排出させて回収する。
【0052】
なお、このように採取した杭孔充填物3は、例えば所定の型枠に注入し、所定材齢まで養生後、脱型および整型し、一軸圧縮強度試験に供して品質確認を行なう。
【0053】
次に、上記一実施の形態の効果を説明する。
【0054】
上記一実施の形態によれば、各採取ユニット5,6の油圧シリンダ15が個別に駆動可能で各開閉部13が独立して移動可能であるため、杭孔2内における任意の複数の採取位置から容易かつ正確に杭孔充填物3を採取できる。すなわち、図6ないし図9に示すように、一度の杭孔2内への挿入によって、例えば杭周固定部27および根固め部28それぞれでの任意の位置で杭孔充填物3を採取できる。
【0055】
そのため、従来のように1箇所ずつでの採取を繰り返す場合に比べて、任意の複数箇所の杭孔充填物3を効率的に採取して作業時間を短縮でき、作業コストの上昇を抑えることができるとともに、回収した際に目視レベルにて不備を発見した場合に、杭孔充填物3の再施工による是正が比較的容易である。
【0056】
また、採取作業の時間を短縮できるため、杭孔充填物3を未固結で流動性を有する状態で回収しやすく、より適切に品質確認の試験に供することができる。
【0057】
さらに、任意の複数の所定位置それぞれで正確に杭孔充填物3を回収でき、例えば図6ないし図9のように杭周固定部271箇所と根固め部281箇所で採取するだけでなく、杭周固定部272箇所で採取する場合や、根固め部282箇所で採取する場合にも適用でき、様々な採取パターンに正確に対応できる。
【0058】
既存の掘削装置に対して先端掘削ビットに取り替えて取付可能であるため、既存の既製コンクリート杭工法(例えばプレボーリング工法)に適用可能である。
【0059】
油圧ポンプと、第1の油圧ライン22および第2の油圧ライン23と、シーケンスバルブ25,26とによって、各油圧シリンダ15を個別に駆動させる構成では、その油圧動作およびデータに基づき、杭孔2内において開閉部13の移動による採取口12の開閉を行なった位置を地上においてリアルタイムに確認できる。
【0060】
採取ユニット5,6は、排出口14が採取口12より下側に配置されているため、採取した杭孔充填物3をスムーズに回収できる。
【0061】
なお、上記一実施の形態では、流体圧回路を利用して採取ユニット5,6の各開閉部13を独立して移動させる構成としたがこのような構成には限定されず、各開閉部13が独立して移動可能な構成であれば適宜変更できる。
【0062】
また、排出口14が採取口12より下側に配置された構成としたが、このような構成には限定されず、排出口14の位置は適宜変更でき、また、採取口12と排出口14とを兼用する構成にしてもよい。
【0063】
杭孔充填物採取装置1は、2つの採取ユニット5,6が軸方向に順次連結された構成としたが、このような構成には限定されず、採取ユニットの数は適宜変更できる。
【0064】
また、杭孔充填物採取装置1は、掘削装置の掘削ビットに換えて取り付けられる構成としたがこのような構成には限定されず、例えば掘削装置における掘削ヘッドとスクリュー軸との間に取り付けられた構成等にしてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 杭孔充填物採取装置
2 杭孔
3 杭孔充填物
5 採取ユニット
6 採取ユニット
11 採取室
12 採取口
13 開閉部
14 排出口
15 駆動装置としての油圧シリンダ
22 第1の流体圧ラインとしての第1の油圧ライン
23 第2の流体圧ラインとしての第2の油圧ライン
25 切替手段としてのシーケンスバルブ
26 切替手段としてのシーケンスバルブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9