(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-27
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】挟持具
(51)【国際特許分類】
A47J 45/07 20060101AFI20220128BHJP
A47J 45/10 20060101ALI20220128BHJP
A47J 27/00 20060101ALI20220128BHJP
B25B 7/02 20060101ALN20220128BHJP
【FI】
A47J45/07 A
A47J45/10 A
A47J27/00 101Z
B25B7/02
(21)【出願番号】P 2018245361
(22)【出願日】2018-12-27
【審査請求日】2020-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】591128970
【氏名又は名称】プリンス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084102
【氏名又は名称】近藤 彰
(72)【発明者】
【氏名】高野 信雄
【審査官】山本 崇昭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第01991307(US,A)
【文献】米国特許第02608891(US,A)
【文献】国際公開第2017/194521(WO,A1)
【文献】実開昭58-173465(JP,U)
【文献】米国特許第01775335(US,A)
【文献】米国特許第05862552(US,A)
【文献】米国特許第07065819(US,B1)
【文献】実公昭46-025037(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00-27/13
A47J 27/20-29/06
A47J 33/00-36/42
A47J 45/00-45/10
B25B 1/00-11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の挟持体の中間部分を交差枢結して、基方を把持柄とし先方を挟持部としてなる開閉挟持構造において、
各把持柄
をU状又はコ状断面に形成し、外方把持柄の開口部分に対して内方把持柄の開口部分を下方側から噛み合わせて枢結し、
各把持柄の両側面部を先方に延設して、二股で且つ挟持面が、それぞれ閉じた把持柄軸方向に対して下方側と、前記下方側より上方側となるように
挟持部を形成し、
把持柄に開口付勢部材を付設すると共に、外方把持柄の側面部を貫通するストッパー軸を設けて、前記側面部に前記ストッパー軸が把持柄軸方向前後にスライド可能となる長孔を形成し、内方把持柄の側面部の前記長孔と対応する位置に、長孔と一致してストッパー軸がスライド可能で且つ一端からストッパー軸が離脱できるようにした係止溝を設け、把持柄を閉じた際に開口阻止する構成のロック機構を備えてなることを特徴とする挟持具。
【請求項2】
内方把持柄先方の挟持部の二股の一方を、前面部を備えたコ状の挟持部としてなる請求項1記載の挟持具。
【請求項3】
各挟持部における挟持個所の基方を、非挟持間隙に形成してなる請求項1又は2記載の挟持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、持ち手を備えない鍋などの加熱調理容器、加熱皿等の種々の物品を挟持して持ち上げる挟持具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
持ち手を備えない鍋や加熱皿等のような加熱調理容器を移動し或いはコンロから持ち上げるに際しては、鍋等の縁部を挟持する挟持部を備えた挟持具を使用する。例えば特許文献1には、持ち手部の先端面に対して持ち手軸方向にスライド移動する挟圧機構を備えたスライド挟圧板を設けた器具が開示されている。前記器具はスライド挟圧板と持ち手部先端面とで鍋上縁の側面を挟持する構成となっている。
【0003】
また一対の挟持体の中間部分を交差枢結して、基方を把持柄とし先方を挟持部としている「やっとこ」と称されてペンチ型の挟持具(鍋掴みと称されている)が知られている。特に特許文献2にはペンチ型の挟持構造を採用すると共に、挟持部を把持柄の軸方向より下向きにして、前記特許文献1と同様に、挟持部で鍋上縁の側面を挟持する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1,2に開示されている鍋掴み用の挟持具は、挟持部の挟持面方向が持ち手方向(持ち手の長尺軸方向)に対して下方に曲がった位置に形成されているので、前記した通り片手鍋同様の形態となるが、浅い容器に多く見られるような容器縁部が鍔状に形成されている容器に対して使用する場合は、挟持部で鍔状縁部を挟持することになって持ち手部が略鉛直方向になり、内容物を収納している鍋は重量があり持ち難くなる。
【0006】
また挟持部の挟持面方向が把持柄の軸方向と一致している通常のペンチ型の挟持具は、鍔状縁部を挟持して使用する場合は特に支障はないが、鍔部を備えない通常の深型容器に対しては、鍋上縁の側面を上方から挟持して持ち上げることとなり、把持部の持ち替えが必要となり操作性に課題がある。更にオーブン等の前記容器を使用する際には使用することができず、他の用具を使用する必要がある。
【0007】
そこで本発明は、持ち手方向を替えることなく鍋上縁側面の挟持並びに鍔状縁部の挟持も可能な新規な挟持具を提案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1記載に係る挟持具は、一対の挟持体の中間部分を交差枢結して、基方を把持柄とし先方を挟持部としてなる開閉挟持構造において、各把持柄をU状又はコ状断面に形成し、外方把持柄の開口部分に対して内方把持柄の開口部分を下方側から噛み合わせて枢結し、各把持柄の両側面部を先方に延設して、二股で且つ挟持面が、それぞれ閉じた把持柄軸方向に対して下方側と、前記下方側より上方側となるように挟持部を形成し、把持柄に開口付勢部材を付設すると共に、外方把持柄の側面部を貫通するストッパー軸を設けて、前記側面部に前記ストッパー軸が把持柄軸方向前後にスライド可能となる長孔を形成し、内方把持柄の側面部の前記長孔と対応する位置に、長孔と一致してストッパー軸がスライド可能で且つ一端からストッパー軸が離脱できるようにした係止溝を設け、把持柄を閉じた際に開口阻止する構成のロック機構を備えてなることを特徴とするものである。
【0009】
而して通常のペンチ型の周知の挟持工具と同様な操作で挟持作業を行うもので、鍋上縁の側面等に対して、下方側に形成した挟持部(下方挟持部)で挟持すると、把持柄を鍋の側方に突出位置での挟持持ち上げ・運搬(鍋掴み)を行うことができ、浅い鍋や加熱皿の鍔状縁部に対しては上方側に形成した挟持部(上方挟持部)で挟持すると、前記同様に把持柄を挟持対象物の側方に突出位置での挟持持ち上げ・運搬を行うことができる。
【0010】
尚前記下方挟持部は、閉じた把持柄軸方向に対して略下方直角方向から斜め下方を含み、上方挟持部は、閉じた把持柄軸方向に対して前方延長方向から斜め上方をふくみ、当該角度(方向)は、所望の鍋掴み時の把持柄方向に対応して定められる。
【0011】
また本発明の挟持具は、把持柄をU状又はコ状断面に形成し、開口部分を噛み合わせて枢結し、把持柄の側面部を延設して挟持部を形成してなるもので、挟持部が左右側面で形成され、安定した挟持作業を実現する。
【0012】
また本発明の請求項2記載に係る挟持具は、更に一方の把持柄内に他方把持柄を嵌合して噛み合わせ、内方側の把持柄に、前面部を備えたコ状の挟持部を設けてなるもので、外方側の把持柄は内方側の把持柄を嵌合することで強度補強がなされ、内方側の把持柄の先端がコ状に形成した挟持部で連結されるので、把持柄の強度が高められる。
【0013】
また本発明の請求項3記載に係る挟持具は、挟持部における挟持個所の基方を、非挟持間隙に形成してなるもので、鍋等の縁部がカール形状(巻縁)であっても、当該箇所を非挟持間隙に逃がし、安定した挟持持ち上げ・運搬(鍋掴み)を実現する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の構成は上記のとおりで、移動や持ち上げ対象物の挟持位置が上縁側面或いは鍔状縁部であったとしても、把持柄を持ち替えることなく単一器具での挟持部の選択使用によって、把持柄を挟持対象物の側方に突出した状態(片手鍋と同様な状態)で挟持持ち上げ・運搬(鍋掴み)を実現できたものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態を示す全体斜視図(把持部を閉じた状態)。
【
図6】同使用状態の説明図(上方挟持部での鍋掴み)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に本発明の実施形態について説明する。実施形態に示した挟持具は、一対の挟持体A,Bの中間部分を交差枢結(枢結軸5)して、各基方を把持柄(外方把持柄1,内方把持柄2)とし、各先方を挟持部(外方挟持受部3,内方挟圧部4)としてなる開閉挟持構造の器具であって、把持柄(外方把持柄1,内方把持柄2)は断面コ状としたもので、上方とする外方把持柄1の側面部11内に、下方となる内方把持柄2の側面部21を嵌合して噛み合わせ状態で開閉操作可能としたものである。
【0017】
挟持部(外方挟持受部3,内方挟圧部4)は、下記するように一部を除き、各両側面部11,21をそのまま先方に延設して形成するもので、閉じた把持柄軸方向に対して下方側と、前記下方側より上方側(前方若しくは斜め上方)の上下二つの挟持機能を備えるように形成するものである。
【0018】
外方把持柄1に設けられる外方挟持受部3は、前方と下方の二股形状にして上方挟持受部31と下方挟持受部32に形成し、上方挟持受部31は上端面を上方挟持受面31aとし、前記上方挟持受面31aの基方を、逃がし間隙aが生ずるように凹部31bに形成してなる。
【0019】
また下方挟持受部32は前端面を下方挟持受面32aとし、前記下方挟持受面32aの上方を、逃がし間隙aが生ずるように凹部32bに形成してなる。
【0020】
内方把持柄2に設けられる内方挟圧部4は、前記外方挟持受部3と対応して設けられ、外方挟持受部3の内側位置で把持柄1,2の開閉操作によって挟持作用をなすもので、上方挟圧部41と下方挟圧部42とを備える。
【0021】
上方挟圧部41は、把持柄2の側面部21を延長して形成したもので、下端面を上方挟圧面41aとし、前記上方挟圧面41aの基方を、逃がし間隙aが生ずるように凹部41bに形成してなる。
【0022】
また下方挟圧部42は、側面部21をそのまま延長して形成したものではなく、前面部42aを備えたコ状に形成して、側面部42bを内方把持柄2の側面部21に固着してなるもので、側面部42bの後方端面を下方挟圧面42cとし、前記下方挟圧面42cの上方を、逃がし間隙aが生ずるように凹部42dに形成してなる。
【0023】
尚必要に応じて挟持受面31a,32a及び挟圧面41a,42cにシリコンゴムで被覆する等の適宜な滑り止め処理を施しておくと良い。
【0024】
また把持柄(外方把持柄1,内方把持柄2)には、開口付勢部材を付設すると共にロック機構を設けるもので、開口付勢部材は枢結軸5に巻装したコイルバネ6を巻奏し、コイルバネ6の一方の先端を外方把持柄1の上面部12の内面に当接させ、他端は、内方把持柄2の側面部21を切り起こして形成した係止突部22に係止させてなる。
【0025】
ロック機構は、外方把持柄1の側面部11を貫通するストッパー軸7を設けると共に、側面部11に前記ストッパー軸7が前後方向にスライド可能となる長孔13を形成する。更に内方把持柄2の側面部21には、前記長孔13と対応する位置に、長孔13と一致してストッパー軸7がスライド可能で且つ一端からストッパー軸7が離脱できるようにした係止溝23を設けてなるものである。
【0026】
而して通常のペンチ型の挟持工具と同様な操作で挟持作業を行うもので、
図6に示したように、挟持対象物Cが浅い鍋・加熱皿の鍔状縁部Dに対して本器具を使用する場合は、上方側に形成した挟持部(上方挟持受面31aと上方挟圧面41a)で挟持すると、把持柄1,2を挟持対象物Cの側方に突出位置での鍋掴みを行うことができる。
【0027】
また
図7に示すように鍋Eの上縁側面Fを挟持する場合は、下方側に形成した挟持部(下方挟持受面32aと下方挟圧面42c)を使用するもので、前記と同様に把持柄1,2を鍋Eの側方に突出位置での挟持作業を行うことができ、把持柄1,2の持ち替えを行うことなく、使用対象の鍋形状等に対応して使用することができる。
【0028】
また開口付勢部材(コイルバネ6)を組み込んでいるので、把持柄1,2及び挟持部()外方挟持受部3,内方挟圧部4)は常時開口しているが、器具の収納に際しては、把持柄1,2を閉じた状態でストッパー軸7をスライドさせて係止溝23に係止すると、把持柄は閉じた状態でロックされることになる(
図5参照)。
【符号の説明】
【0029】
A,B 挟持体
C,E 鍋
D 鍔状縁部
F 上縁側面
1 外方把持柄
11 側面部
12 上面部
13 長孔
2 内方把持柄
21 側面部
22 係止突部
23 係止溝
3 外方挟持受部
31 上方挟持受部
31a 上方挟持受面
31b 凹部
32 下方挟持受部
32a 下方挟持受面
32b 凹部
4 内方挟圧部
41 上方挟圧部
41a 上方挟圧面
41b 凹部
42 下方挟圧部
42a 前面部
42b 側面部
42c 下方挟圧面
42d 凹部
5 枢結軸
6 コイルバネ
7 ストッパー軸