(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-27
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】整体用ブロック
(51)【国際特許分類】
A61F 5/01 20060101AFI20220128BHJP
【FI】
A61F5/01 N
(21)【出願番号】P 2018075705
(22)【出願日】2018-04-10
【審査請求日】2021-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】516071837
【氏名又は名称】伊藤 哲
(74)【代理人】
【識別番号】100119792
【氏名又は名称】熊崎 陽一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 哲
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3191108(JP,U)
【文献】米国特許第04210317(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/01-5/02
A61H 15/00
A61H 39/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
台上で伏臥位になった患者に使用する整体用ブロックであって、
当該整体用ブロックを前記台上に載置するための載置面と、
前記載置面から上方に突出しており、当該整体用ブロックを前記台上に載置した際に前記患者の側胸部の側方に位置し、前記患者の肘を曲げた状態の上腕を乗せるための上腕乗せ部と、
当該整体用ブロックを前記台上に載置した際に、前記上腕乗せ部から前記患者の腋窩部の側方に向けて下り勾配に形成されており、前記上腕乗せ部に支持された前記上腕を山から谷に向けて転動させることにより、前記上腕を自然に内旋した状態にさせる上腕転動部と、
前記上腕転動部の前記谷から延出しており、前記上腕転動部を転動して内旋した状態の前記上腕を支持するための上腕支持部と、
を備えたことを特徴とする整体用ブロック。
【請求項2】
台上で伏臥位になった患者に使用する整体用ブロックであって、
当該整体用ブロックを前記台上に載置するための載置面と、
前記載置面から上方に突出しており、当該整体用ブロックを前記台上に載置した際に前記患者の頸部の側方に位置し、前記患者の肘を曲げた状態の上腕を乗せるための上腕乗せ部と、
当該整体用ブロックを前記台上に載置した際に、前記上腕乗せ部から前記患者の側胸部の側方に向けて下り勾配に形成されており、前記上腕乗せ部に支持された前記上腕を山から谷に向けて転動させることにより、前記上腕を自然に外旋した状態にさせる上腕転動部と、
前記上腕転動部の前記谷から延出しており、前記上腕転動部を転動して外旋した状態の前記上腕を支持するための上腕支持部と、
を備えたことを特徴とする整体用ブロック。
【請求項3】
前記上腕が前記上腕支持部によって支持された状態で、前記患者の前記側胸部に沿って前記台上を腰部の方向へ移動させることにより、前記患者の両肩を結ぶ線に対する前記上腕の角度を変更可能に構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の整体用ブロック。
【請求項4】
前記上腕転動部のうち、少なくとも前記上腕が転動する部分は、合成皮革または天然皮革により形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の整体用ブロック。
【請求項5】
前記上腕支持部は、前記上腕転動部の前記谷に向けて下り勾配に形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の整体用ブロック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者を主として伏臥位の姿勢にして使用する整体用ブロックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、骨盤のずれを矯正する整体用ブロックが知られている(特許文献1)。この整体用ブロックは、施術台の上で仰臥姿勢になった患者に使用するものであり、外方に凸の曲面に形成された施術面を有する。そして、その施術面を、患者の骨盤を構成している左右の腸骨のうち、一方の腸骨の腸骨稜近傍に、臀部の方から押し当てて使用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、患者の筋肉の緊張や精神的な緊張をほぐすために行う整体が知られている。この種の整体では、患者の体を指圧したり、頸部、上肢、腰部および下肢などを捻ったりする際に、患者が痛みを感じることが多く、患者の負担が大きかった。
そこで、本願発明者は、鋭意研究の結果、患者の負担が小さく、患者の筋肉の緊張や精神的な緊張をほぐすことができる施術を開発した。この施術は、伏臥位になった患者の上腕を内旋または外旋させた状態で行うが、患者が伏臥位の状態で自身の上腕を上手く内旋または外旋させることができないことがあった。また、患者が内旋または外旋という意味を理解し難い場合に、上腕を上手く内旋または外旋させることが難しいこともあった。さらに、内旋または外旋した上腕が施術中に内旋または外旋する前の状態に戻ってしまうこともあった。
【0005】
そこで、本発明は、上述した諸問題を解決するために創出されたものであって、伏臥位になった患者の上腕を自然と内旋または外旋させることができ、かつ、上腕が内旋または外旋した状態を維持することができる整体用ブロックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するため、本願の請求項1に係る発明は、
台(60)上で伏臥位になった患者(P)に使用する整体用ブロック(1)であって、
当該整体用ブロックを前記台上に載置するための載置面(18)と、
前記載置面から上方に突出しており、当該整体用ブロックを前記台上に載置した際に前記患者の側胸部(B)の側方に位置し、前記患者の肘(E)を曲げた状態の上腕(J)を乗せるための上腕乗せ部(10)と、
当該整体用ブロックを前記台上に載置した際に、前記上腕乗せ部から前記患者の腋窩部(S)の側方に向けて下り勾配に形成されており、前記上腕乗せ部に支持された前記上腕を山(11a)から谷(11b)に向けて転動させることにより、前記上腕を自然に内旋した状態にさせる上腕転動部(11)と、
前記上腕転動部の前記谷から延出しており、前記上腕転動部を転動して内旋した状態の前記上腕を支持するための上腕支持部(12)と、
を備えたという技術的手段を有する。
【0007】
また、本願の請求項2に係る発明は、
台(60)上で伏臥位になった患者(P)に使用する整体用ブロック(1)であって、
当該整体用ブロックを前記台上に載置するための載置面(18)と、
前記載置面から上方に突出しており、当該整体用ブロックを前記台上に載置した際に前記患者の頸部(N)の側方に位置し、前記患者の肘(E)を曲げた状態の上腕(J)を乗せるための上腕乗せ部(10)と、
当該整体用ブロックを前記台上に載置した際に、前記上腕乗せ部から前記患者の側胸部の側方に向けて下り勾配に形成されており、前記上腕乗せ部に支持された前記上腕を山(11a)から谷(11b)に向けて転動させることにより、前記上腕を自然に外旋した状態にさせる上腕転動部(11)と、
前記上腕転動部の前記谷から延出しており、前記上腕転動部を転動して外旋した状態の前記上腕を支持するための上腕支持部(12)と、
を備えたという技術的手段を有する。
【0008】
また、本願の請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の整体用ブロック(1)において、
前記上腕(J)が前記上腕支持部(12)によって支持された状態で、前記患者(P)の前記側胸部(B)に沿って前記台上を腰部(W)の方向へ移動させることにより、前記患者の両肩を結ぶ線(L1)に対する前記上腕の角度(θ)を変更可能に構成されているという技術的手段を有する。
【0009】
また、本願の請求項4に係る発明は、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の整体用ブロック(1)において、
前記上腕転動部(11)のうち、少なくとも前記上腕(J)が転動する部分は、合成皮革または天然皮革により形成されているという技術的手段を有する。
【0010】
さらに、本願の請求項5に係る発明は、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の整体用ブロック(1)において、
前記上腕支持部(10)は、前記上腕転動部(11)の前記谷(11b)に向けて下り勾配に形成されているという技術的手段を有する。
なお、上記各括弧内の各符号は、後述する実施形態との対応関係を示すものであり、本願発明の権利範囲を制限するものではない。
【発明の効果】
【0011】
(請求項1に係る発明の作用)
整体用ブロックを台上に載置するときは、上腕乗せ部が患者の側胸部の側方に位置し、上腕転動部が患者の腋窩部の側方に向けて下り勾配となるようにする。そして、患者に対して整体用の施術を行う者(以下、施術者という)が、患者の肘を曲げた状態の上腕を上腕乗せ部に乗せ、その後、患者が上腕および肩の力を抜くと、上腕が上腕乗せ部から上腕転動部の谷に向けて転動し、上腕が自然に内旋した状態になる。そして、内旋した上腕は、上腕支持部によって支持される。
(請求項1に係る発明の効果)
伏臥位になった患者の上腕を自然と内旋させることができ、かつ、上腕が内旋した状態を維持することができる整体用ブロックを提供することができる。
【0012】
(請求項2に係る発明の作用)
整体用ブロックを台上に載置するときは、上腕乗せ部が患者の頸部の側方に位置し、上腕転動部が患者の側胸部の側方に向けて下り勾配となるようにする。そして、施術者が、患者の肘を曲げた状態の上腕を上腕乗せ部に乗せ、その後、患者が上腕および肩の力を抜くと、上腕が上腕乗せ部から上腕転動部の谷に向けて転動し、上腕が自然に外旋した状態になる。そして、外旋した上腕は、上腕支持部によって支持される。
(請求項2に係る発明の効果)
伏臥位になった患者の上腕を自然と外旋させることができ、かつ、上腕が外旋した状態を維持することができる整体用ブロックを提供することができる。
【0013】
(請求項3に係る発明の効果)
本願の請求項3に係る発明を実施すれば、上腕転動部のうち、少なくとも上腕が転動する部分は、合成皮革または天然皮革により形成されているため、上腕と上腕転動部との摩擦を大きくすることができる。
したがって、上腕が上腕転動部を滑り落ちないようにすることができるため、上腕を転動させて確実に内旋または外旋させることができる。
【0014】
(請求項4に係る発明の効果)
本願の請求項4に係る発明を実施すれば、上腕支持部は、上腕転動部の谷に向けて下り勾配に形成されているため、上腕を上腕支持部から動かないように安定した状態で支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る整体用ブロックの左側面図である。
【
図6】
図1に示す整体用ブロックを正面の左斜め上方から見た斜視図である。
【
図7】
図4に示す整体用ブロックのA-A矢視断面図である。
【
図8】本発明の実施形態において使用する補助ブロックの平面図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る整体用ブロックの使用方法を説明する説明図であって、上腕が内旋する前の状態を示す。
【
図11】本発明の実施形態に係る整体用ブロックの使用方法を説明する説明図であって、上腕が内旋した状態を示す。
【
図12】上腕が内旋する過程を示す模式図であり、(a)は上腕が内旋する前の状態を示し、(b)は上腕が内旋した状態を示す。
【
図13】上腕が外旋する過程を示す模式図であり、(a)は上腕が外旋する前の状態を示し、(b)は上腕が外旋した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態に係る整体用ブロックについて図を参照しつつ説明する。
[整体用ブロックの構造]
図1ないし
図6に示すように、本実施形態の整体用ブロック1は、施術者が、施術台60の上で伏臥位になった患者P(
図10,
図11)に整体用の施術を行う際に使用する整体用ブロックである。整体用ブロック1は、整体用ブロック1を施術台60(
図10,
図11)の上に載置するための載置面18(
図5)と、載置面18から上方に突出した上腕乗せ部10(
図1~
図4,
図6)と、上腕乗せ部10から患者Pの腋窩部S(
図10)の側方に向けて下り勾配に形成された上腕転動部11(
図1~
図4,
図6)と、上腕転動部11の谷11bから延出した上腕支持部12(
図1,
図4,
図6)とを備える。なお、施術台60が本発明の台の一例である。施術台60は、整体院で用いる専用の台以外のベッドなどでも良い。
【0017】
図5に示すように、整体用ブロック1の載置面18は、縦長の矩形の平面に形成されている。詳しくは、
図10に示すように、載置面18は、整体用ブロック1を施術台60の上で伏臥位になった患者Pの体側近傍に載置したときに、長辺18a(
図5)が体側に沿った状態となるように形成されている。上腕乗せ部10は、山形に形成されており、患者Pの右肘E(
図10)を曲げた状態の上腕Jを乗せることができる形状および大きさに形成されている。本実施形態では、上腕乗せ部10は、上方に円弧状に膨らんだ丸みを帯びた形状に形成されているため、患者Pは、上腕Jが上腕乗せ部10に乗った際に上腕Jに痛みを感じない。
【0018】
上腕転動部11は、上腕乗せ部10に支持された上腕Jを山11a(
図1,
図6)から谷11bに向けて転動させることにより、上腕Jが自然に内旋した状態になるように形成されている。詳しくは、上腕転動部11は、平面から見て略矩形で略平面状に形成されている(
図4)。また、上腕転動部11は、上腕乗せ部10と連続形成されており、載置面18に対して略45度の下り勾配を有する。また、上腕転動部11の山11aから谷11bまでの長さは、内旋していない状態の上腕Jが、山11aから谷11bまで転動することにより、自然と内旋した状態になる長さに設定されている。本実施形態では、上腕乗せ部10および上腕転動部11から成る部分は、先端が尖った一般的な四角錐ではなく、四角錐の頂部を、上方に膨らんだ円弧状に形成した形状を呈している。
【0019】
上腕支持部12は、上腕転動部11を転動して内旋した状態の上腕Jを支持するためのものであり、上腕Jを支持することができる大きさに形成されている。詳しくは、上腕転動部11は、平面から見て略矩形で略平面状に形成されている。また、上腕支持部12は、上腕転動部11の谷11bから患者Pの腋窩部Sの側方に向けて連続形成されている。また、上腕支持部12は、腋窩部Sの側方から上腕転動部11の谷11bに向けて下り勾配に形成されている。つまり、上腕支持部12は、腋窩部Sの側方に位置する山12aから谷12bに向けて下り勾配に形成されている。これにより、上腕支持部12に支持された上腕Jが、上腕支持部12の山12aの方へ移動することなく、安定した状態で支持することができる。また、上腕転動部11の谷11bと、上腕支持部12の谷12bとの境界部分は、縦断面が下向きの円弧状に形成されており、内旋した上腕Jの外周面がフィットする形状に形成されている。これにより、上腕Jを内旋した状態で支持することができる。また、患者Pは、上腕支持部12によって支持されている部分に痛みを感じない。
【0020】
また、
図1および
図3に示すように、整体用ブロック1の背面部14は、背面から見て略矩形で略平面状に形成されている。また、背面部14は、載置面18に対して略90度の角度を成している。背面部14と上腕乗せ部10との境界には、円弧部13が形成されている。また、
図1および
図2に示すように、上腕支持部12と載置面18との間に形成された正面部15は、正面から見て略矩形で略平面状に形成されており、載置面18に対して略90度の角度を成している。また、上腕支持部12と正面部15との境界である境界部12cは、Rに形成されており、丸みを帯びている。このように、整体用ブロック1のうち、載置面18から上方の部分には、尖った部分が存在しないため、整体用ブロック1が患者Pに当接した際に、患者Pが痛みを感じることがない。
【0021】
左側部16および右側部17は、それぞれ側面から見て略平面状に形成されている。左側部16および右側部17のうち、背面部14に近く、かつ、載置面18に近い部分には、整体用ブロック1を操作したり移動させたりする際に、手で掴むためのバンド30が取付けられている。
図4および
図5に示すように、バンド30は、平面から見て略逆U字形状に形成されており、その両端31,31は、それぞれ留め具32によって左側部16および右側部17に固定されている。本実施形態では、留め具32は金属製であり、丸皿形状の頭部と、その頭部の裏面から突出したピンとを有する画鋲形状に形成されている。
【0022】
図7に示すように、整体用ブロック1は、芯材40と、この芯材40の周面を被覆するカバー41と、ベース板42と、留め具固定部材43とを備える。芯材40は、整体用ブロック1の形状を形作っている部分であり、弾性を有する合成樹脂により形成されている。この実施形態では、芯材40は、硬質ウレタンにより形成されている。カバー41は、合成皮革(たとえば、ポリ塩化ビニールやポリウレタン樹脂などを使った合成皮革)、または、天然皮革など、患者の上腕Jを覆う衣服、または、上腕Jの皮膚との摩擦が大きい材料により形成されている。これにより、患者Pの上腕Jが上腕転動部11の山11aから谷11bへ移動する際に、転動しないで滑り落ちないようにすることができる。したがって、上腕Jを確実に転動させることができるため、上腕Jを自然と内旋させることができる。
ベース板42は、上腕乗せ部10、上腕転動部11および上腕支持部12を支持する部分であり、その底面から見た面積は、載置面18と略同等である。ベース板42は、硬質材料により形成されている。本実施形態では、ベース板42は、ベニヤにより形成されている。留め具固定部材43は、バンド30を固定するための留め具32を固定するためのものであり、左側部16の内面から右側部17の内面に達する幅を有する。各留め具32の各ピンは、留め具固定部材43に打ち込まれている。
【0023】
[補助ブロックの構造]
図8および
図9に示す本実施形態の補助ブロック50は、患者Pに対して整体用ブロック1の補助として使用するものである。補助ブロック50は、略楔形状に形成されている。補助ブロック50は、平面部51と、載置面52と、正面部53と、背面部54と、バンド57とを備える。平面部51は、上方に緩やかに円弧状に膨らんだ形状に形成されており、正面部53は、背面から正面に向けて円弧状に膨らんだ丸みを帯びた形状に形成されている。背面部54は背面から見て略平面に形成されており、載置面52と略90度を成している。左側部55および右側部56は、それぞれ側面から見て略楔形状に形成されている。このように、補助ブロック50は、薄型の楔形状に形成されており、患者Pと施術台60との間に挿入し易く、かつ、挿入した際に患者Pが痛みを感じないように形成されている。左側部55および右側部56のうち、背面部54に近い部分には、補助ブロック50を操作したり移動させたりする際に、手で掴むためのバンド57が取付けられている。
図8に示すように、バンド57は、平面から見て略逆U字形状に形成されており、その両端58,58は、それぞれ留め具59によって左側部55および右側部56に固定されている。
図示しないが、補助ブロック50も整体用ブロック1と同様に、芯材と、この芯材の周面を被覆するカバーと、ベース板と、留め具固定部材とを備える。この実施形態では、芯材は硬質材料により形成されており、カバーは、合成皮革(たとえば、ポリ塩化ビニールやポリウレタン樹脂などを使った合成皮革)、または、天然皮革により形成されている。ベース板はベニヤにより形成されており、留め具固定部材は木材により形成されている。
【0024】
[整体用ブロックの使用方法]
(手順1)
図10および
図11に示すように、施術台60の上面61には、毛布などの敷物71が敷かれている。なお、敷物71は必ずしも敷く必要はない。
また、施術台60の前端からは、患者Pの頭部を支持するための頭部支持体62が突出している。頭部支持体62には、患者Pの下向きになった顔を嵌め込むための穴が上下方向に貫通形成されている。
先ず、
図10に示すように、患者Pに、施術台60の上面61に伏臥位(うつ伏せ)の姿勢で寝てもらう。このとき、患者Pの頭部は頭部支持体62によって支持され、患者Pの下向きになった顔は、頭部支持体62の穴に嵌め込まれる。
図10では、タオル70が頭部支持体62と顔との間に介在されている。なお、タオル70は必ずしも介在させる必要はない。
図10は、整体用ブロック1が施術台60の上にセットされた状態を示すが、整体用ブロック1をセットする前に、患者Pの両腕の肘から下の部分が施術台60から下方に垂れ下がった状態にする。つまり、両腕の各上腕がそれぞれ上面61にて肩から水平に延びており、肘から下の部分が下方に垂れ下がった状態にする。そして、施術者は、患者Pの肩、背、腰、大腿、膝窩、下腿、足底などを押圧し、全身の緊張状態、つまり、筋肉のこわばりをチェックする。このチェックは、患者Pを押圧したときに患者Pが圧痛を感じるか否かに基づいて行う。このとき、患者Pが圧痛を感じた圧痛点を探しておくと、施術後に変化(施術の効果)を確認し易い。
【0025】
(手順2)次に、補助ブロック50を右の鎖骨の下に差し込む。詳しくは、載置面52を下にした状態の補助ブロック50を正面部53から右肩と施術台60の上面61との間に差し込み、平面部51が右の鎖骨の下になった状態にする(
図11)。このように補助ブロック50を右の鎖骨の下に差し込むことにより、右肩が頭部の方向へずれて行かないようにすることができる。
【0026】
(手順3)次に、
図10に示すように、施術台60の上面61のうち、患者Pの右側の体側の近傍に整体用ブロック1を載置する。このとき、整体用ブロック1の上腕乗せ部10が右側の体側の近傍に位置し、境界部12cが右肩の肩峰部Kの上端(図では前端)のラインと略一致し、さらに、右側部16が右側の体側と略平行となるように整体用ブロック1の配置位置を調整する。
【0027】
(手順4)次に、
図10に示すように、左手で患者Pの右腕の右肘Eの近傍を掴んで持ち上げ、その右肘Eの近傍部分を整体用ブロック1の上腕乗せ部10に乗せる。続いて、患者Pに右腕および右肩の力を抜いてもらうと、上腕Jが上腕転動部11の山11a(
図1,
図6)から谷11bに向けて転動し、上腕Jが自然と内旋する。また、上腕Jが転動を開始しない場合は、施術者が右肘Eの近傍を上腕転動部11の山11aの方に押し、上腕Jが転動するように補助する。
図12は、上腕Jが内旋する過程を示す模式図であり、(a)は上腕Jが内旋する前の状態を示し、(b)は上腕Jが内旋した状態を示す。上腕乗せ部10によって支持されていた上腕Jは、患者Pが右腕および右肩の力を抜くと、
図12(a)に示すように、矢印F1で示す方向に転動しながら上腕転動部11の山11a(
図1)から谷11bに向けて移動し、上腕Jは自然と内旋した状態になる。そして、
図11および
図12(b)に示すように、内旋した上腕Jは上腕支持部12によって支持された状態になる。上腕支持部12によって支持された上腕Jは、上腕転動部11の谷11bに当接し、かつ、上腕支持部12は、山12aから谷12bに向けて下り勾配になっているため、上腕Jが内旋した状態を維持することができる。
このように、施術者は、患者Pの上腕Jを上腕乗せ部10に乗せた後は、患者Pに右腕および右肩の力を抜いてもらい、上腕Jの右肘Eの近傍を掴んでいた手を離すだけで、上腕Jを上腕転動部11の山11aから谷11bに転動させて自然と内旋した状態にすることができる。また、患者Pの右腕は、上腕Jが内旋した状態で略水平の状態になる。これにより、患者Pの主に全身の表層の筋肉の緊張が取れ、リラックスした状態になる。
【0028】
(手順5)続いて、上腕Jが右肩から水平に延びた状態からあまり変化しないように、整体用ブロック1を少し前後に移動させることによって右肘Eの位置を移動させ、患者Pが一番、筋肉の緊張が取れて圧痛が無くなる位置を探す。具体的には、前述した(1)の段階において、患者の圧痛点を確認している場合は、その圧痛点を再度押圧しながら、圧痛が一番取れる位置を探す。そして、圧痛が一番取れた位置が見付かったときに整体用ブロック1の移動を止める。
このように、整体用ブロック1を移動させ、患者Pが一番、筋肉の緊張が取れて圧痛が一番取れる位置を探しながら患者Pの内旋した上腕Jを移動する。
そして、患者Pの全身を左右に優しく揺らしながら、緊張している箇所を順番に手掌で軽く触れて行く。たとえば、患者Pの仙骨部分に手を当てて、カラダを横方向に揺らす。なお、揺らし方はリズムさえ合っていれば、どのような揺らし方でも良い。
このように、全身を揺らしながら、緊張している箇所を順番に手掌で軽く触れて行くことにより、圧痛が取れた状態を脳に記憶させて定着させることができる。つまり、患者Pの全身の表層の筋肉の緊張がより一層取れ、リラックスした状態にすることができる。また、患者Pの体液の循環を良くすることもできる。
【0029】
(手順6)
図11において、破線L1で示す線は、患者Pの両肩を結ぶ肩ラインであり、破線L2で示す線は、患者Pの頭部Hの中心と腰部Wの中心とを結ぶ中心線であり、肩ラインL1および中心線L2は直交している。破線L3で示す線は、患者Pの右肘Eと右肩の肩峰部Kとを結ぶライン、つまり、上腕Jの延びる方向を示す上腕ラインである。
上腕ラインL3と肩ラインL1とが成す角度θが、45~30度の範囲になるように整体用ブロック1を移動させる。これにより、患者Pの全身の深部の筋肉(いわゆる、インナーマッスル)の緊張が取れる。さらに、頭部や腹部の緊張が取れる。
そして、患者Pの全身を左右に優しく揺らしながら、緊張している箇所を順番に触って行く。たとえば、患者Pの仙骨部分に手を当てて、カラダを横方向に揺らす。なお、揺らし方はリズムさえ合っていれば、どのような揺らし方でも良い。このように、全身を揺らしながら、緊張している箇所を手掌で軽く触れて行くことにより、圧痛が取れた状態を脳に記憶させて定着させることができる。つまり、患者Pの全身の深部の筋肉、さらには、頭部や腹部の緊張がより一層取れ、リラックスした状態にすることができる。また、患者Pの体液の循環を良くすることもできる。
【0030】
[実施形態の効果]
(1)上述した実施形態の整体用ブロック1を実施すれば、上腕乗せ部10に乗せた上腕Jを上腕転動部11の山11aから谷11bに向けて転動させることにより、上腕Jが自然に内旋した状態にすることができる。
したがって、患者Pは、自ら上腕Jを意識的に内旋させる必要がないため、患者Pは、上腕Jをどうやって内旋させるのかを考える必要がない。さらに、患者Pが上腕Jの内旋について理解し難い場合であっても、患者Pに上腕Jおよび肩の力を抜いてもらうだけで上腕Jを自然と内旋させることができるため、広い患者層に適用することができる。
【0031】
(2)しかも、内旋した上腕Jを上腕支持部12によって支持することができるため、上腕Jを支持した状態で整体用ブロック1を移動させても、上腕Jが内旋した状態を維持することができる。
【0032】
(3)また、整体用ブロック1によって上腕Jを支持した状態で整体用ブロック1を移動させ、患者Pが圧痛を一番感じない位置に整体用ブロック1を移動した後に、患者Pを押圧したり手掌で軽く触れたりすることにより、患者Pの筋肉の緊張をほぐし、リラックスした状態にすることができる。
【0033】
(4)さらに、上述した実施形態の整体用ブロック1を実施すれば、上腕転動部11のうち、少なくとも上腕Jが転動する部分は、合成皮革または天然皮革により形成されているため、上腕Jと上腕転動部11のうち、少なくとも上腕Jが転動する部分との摩擦を大きくすることができる。
したがって、上腕Jが上腕転動部11を転動しないで滑り落ちないようにすることができるため、上腕Jを転動させて確実に内旋させることができる。
【0034】
(5)さらに、上述した実施形態の整体用ブロック1を実施すれば、上腕支持部12は、上腕転動部11の谷11bに向けて下り勾配に形成されているため、上腕Jを上腕支持部12から動かないように安定した状態で支持することができる。
【0035】
〈他の実施形態〉
(1)本発明の整体用ブロック1は、上腕を外旋した状態にするために使用することもできる。
図13は、上腕が外旋する過程を示す模式図であり、(a)は上腕が外旋する前の状態を示し、(b)は上腕が外旋した状態を示す。本実施形態の整体用ブロック1が備える上腕乗せ部10は、患者Pの頸部右側の側方に位置し、上腕転動部11が患者の側胸部の側方に向けて下り勾配となるように施術台60の上面61に載置される。
そして、施術者が患者Pの右腕の肘を掴んで持ち上げ、その右腕の上腕Jの肘近傍の部分を整体用ブロック1の上腕乗せ部10に乗せる。続いて、患者Pに右腕および右肩の力を抜いてもらうと、
図13(a)に示すように、上腕Jが上腕転動部11の山11a(
図1,
図6)から谷11bに向けて、矢印F2で示す方向に転動し、上腕Jが自然と外旋する。整体用ブロック1の基本的な使用方法は、前述した実施形態の使用方法と同じである。
【0036】
このように、上腕Jを外旋させて施術を行うことにより、上腕Jを内旋させて施術を行う場合と略同等の効果が期待できる。
【0037】
(2)前述の各実施形態では、整体用ブロック1を使用して患者Pの右腕を内旋または外旋させる場合について説明したが、整体用ブロック1を使用して患者Pの左腕を内旋または外旋させることもできる。
(3)また、本発明の整体用ブロックは、上腕を内旋または外旋した状態にする目的で使用する他、上腕または前腕を支持する目的で使用することもできる。さらに、大腿、膝窩および下腿などを支持する目的で使用することもできる。
【符号の説明】
【0038】
1 整体用ブロック
10 上腕乗せ部
11 上腕転動部
11a 山
11b 谷
12 上腕支持部
12a 山
12b 谷
30 バンド
50 補助ブロック
60 施術台
61 上面
B 側胸部
E 右肘
J 上腕
K 肩峰部
N 頸部
P 患者
S 腋窩部
W 腰部