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特許7016174粉末成形装置、粉末成形用金型および焼結体作製方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-27
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】粉末成形装置、粉末成形用金型および焼結体作製方法
(51)【国際特許分類】
   B30B 11/00 20060101AFI20220128BHJP
   B30B 11/02 20060101ALI20220128BHJP
   B22F 3/03 20060101ALI20220128BHJP
   B22F 3/035 20060101ALI20220128BHJP
   B22F 3/02 20060101ALI20220128BHJP
【FI】
B30B11/00 R
B30B11/02 F
B22F3/03
B22F3/035 D
B22F3/02 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019103185
(22)【出願日】2019-05-31
(65)【公開番号】P2020196025
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2020-02-04
(73)【特許権者】
【識別番号】592064394
【氏名又は名称】小林工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 清光
【審査官】石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-187682(JP,A)
【文献】特開平10-071497(JP,A)
【文献】特開2016-049536(JP,A)
【文献】特許第5261833(JP,B2)
【文献】特開2008-221340(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 11/00
B30B 11/02
B22F 3/03
B22F 3/035
B22F 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に当接することにより粉末成形体の側面形状に応じたキャビティを形成する複数の分割金型と、前記複数の分割金型を相対的に並進させるための金型駆動機構と、前記複数の分割金型により形成される前記キャビティに上方向および下方向のそれぞれから挿入される上パンチおよび下パンチと、前記上パンチおよび前記下パンチのそれぞれを昇降させるための昇降駆動機構と、を備えた粉末成形装置であって、
前記複数の分割金型のそれぞれが、前記分割金型の上下方向から見たときに前記分割金型の並進方向に対して傾斜し、かつ、上下方向に延在している傾斜分割面と、傾斜分割面の外側縁に連され、右方向および左方向のそれぞれに延在し、かつ、前記分割金型の並進方向に対して垂直な垂直分割面と、を有する分割面と、前記傾斜分割面の内側縁に連設され、前記キャビティを画定する画定面と、を有しているか、又は、
前記複数の分割金型のそれぞれが、前記分割金型の上下方向から見たときに前記分割金型の並進方向に対して傾斜し、かつ、上下方向に延在している傾斜分割面と、該傾斜分割面の下縁側に設けられ、かつ、前記分割金型の並進方向に対して垂直な垂直分割面と、を有する分割面と、前記傾斜分割面及び前記垂直分割面の内側縁に配置され、前記キャビティを画定する画定面と、を有しており、
前記複数の分割金型のそれぞれが、前記分割面のうち前記垂直分割面において相互に当接する一方、前記傾斜分割面において1~30μmの範囲に含まれる間隔で相互に離間した状態で相互に当接することにより前記キャビティを形成するように構成されていることを特徴とする粉末成形装置。
【請求項2】
請求項1記載の粉末成形装置において、
前記複数の分割金型のそれぞれの前記分割面が、前記傾斜分割面および前記垂直分割面に加えて、並進方向に対して平行な平行面をさらに有し、
前記複数の分割金型のそれぞれが、前記分割面のうち前記垂直分割面において相互に当接する一方、前記傾斜分割面に加えて前記平行面において1~30μmの範囲に含まれる間隔で相互に離間した状態で相互に当接することにより前記キャビティを形成するように構成されていることを特徴とする粉末成形装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の粉末成形装置において、
前記複数の分割金型のうち少なくとも1 つの分割金型の前記画定面から、当該少なくとも1つの分割金型の並進方向に突出し、前記成形体に凹部または貫通孔を形成するための凸部が設けられていることを特徴とする粉末成形装置。
【請求項4】
相対的に並進して相互に当接することにより粉末成形体の側面形状に応じたキャビティを形成する複数の分割金型を用いて粉末成形体を製造する粉末成形体作製方法であって、
前記複数の分割金型のそれぞれが、前記分割金型の上下方向から見たときに前記分割金型の並進方向に対して傾斜し、かつ、上下方向に延在している傾斜分割面と、傾斜分割面の外側縁に連され、右方向および左方向のそれぞれに延在し、かつ、前記分割金型の並進方向に対して垂直な垂直分割面と、を有する分割面と、前記傾斜分割面の内側縁に連設され、前記キャビティを画定する画定面と、を有しているか、又は、
前記複数の分割金型のそれぞれが、前記分割金型の上下方向から見たときに前記分割金型の並進方向に対して傾斜し、かつ、上下方向に延在している傾斜分割面と、該傾斜分割面の下縁側に設けられ、かつ、前記分割金型の並進方向に対して垂直な垂直分割面と、を有する分割面と、前記傾斜分割面及び前記垂直分割面の内側縁に配置され、前記キャビティを画定する画定面と、を有しており、
前記複数の分割金型のそれぞれが、前記分割面のうち前記垂直分割面において相互に当接する一方、前記傾斜分割面において1~30μmの範囲に含まれる間隔で相互に離間した状態で相互に当接することにより前記キャビティを形成するように構成されていることを特徴とする粉末成形体作製方法。
【請求項5】
相対的に並進して相互に当接することにより粉末成形体または焼結体の側面形状に応じたキャビティを形成する複数の分割金型を備えた金型であって、
前記複数の分割金型のそれぞれが、前記分割金型の上下方向から見たときに前記分割金型の並進方向に対して傾斜し、かつ、上下方向に延在している傾斜分割面と、傾斜分割面の外側縁に連され、右方向および左方向のそれぞれに延在し、かつ、前記分割金型の並進方向に対して垂直な垂直分割面と、を有する分割面と、前記傾斜分割面の内側縁に連設され、前記キャビティを画定する画定面と、を有しているか、又は、
前記複数の分割金型のそれぞれが、前記分割金型の上下方向から見たときに前記分割金型の並進方向に対して傾斜し、かつ、上下方向に延在している傾斜分割面と、該傾斜分割面の下縁側に設けられ、かつ、前記分割金型の並進方向に対して垂直な垂直分割面と、を有する分割面と、前記傾斜分割面及び前記垂直分割面の内側縁に配置され、前記キャビティを画定する画定面と、を有しており、
前記複数の分割金型のそれぞれが、前記分割面のうち前記垂直分割面において相互に当接する一方、前記傾斜分割面において1~30μmの範囲に含まれる間隔で相互に離間した状態で相互に当接することにより前記キャビティを形成するように構成されていることを特徴とする金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型を用いて粉末成形体を作製する技術および粉末成形体を焼結することにより焼結体を作製する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
粉末冶金法による切削インサートの作製にあたり、当該インサートの厚み方向または厚み直角方向に2つに分割されている金型を用いて原料粉末を成形する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
金型(臼)は、当該稜線に沿ってインサートの厚み方向(上下方向)または厚み直角方向(横方向)について2つの分割金型(分割臼)に分割されている。すなわち、分割金型の分割面は、インサートの厚み方向に対して傾斜している傾斜分割面を含んでいる。
【0004】
これにより、それぞれの分割金型の分割面を構成する傾斜分割面が相互にテーパ嵌合することによるくさび効果によって分割金型の位置ずれの防止、分割金型同士の容易かつ正確な位置合わせ、および、成形圧による分割金型の離反抑制が図られている。また、分割金型の分割面を構成する傾斜分割面がインサート厚み方向に平行な面に置換された場合と比較して、分割金型同士の当接面積の増大が図られ、分割金型同士の組み合わせ時に分割面に加わる単位面積当たりの圧力の低減、ひいては当該分割面における各分割金型の疲労および摩耗の抑制が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5261833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、複数の割金型同士が組み合わせられてキャビティが形成される際に、各分割金型の分割面を構成する傾斜分割面が当接した後、なおも各分割金型が並進可能である場合、複数の分割金型のうち少なくとも1つが傾斜分割面に案内される形で並進方向とは異なる方向に位置ずれを起こす可能性がある。
【0007】
例えば、図11Aに示されているように、金型X0が、2つの分割金型X1、X2のそれぞれに横方向に分割されている場合について考察する。
【0008】
第1分割金型X1の画定面X12が、並進方向に略垂直な第1画定面X121と、一の側縁において当該第1画定面X121の一の側縁に連続し、並進方向に略平行な第2画定面X122と、により構成されている。第1分割金型X1の第1分割面X11が、第1画定面X121の他の側縁に連続し、並進方向に対して傾斜している傾斜分割面により構成されている。第1分割金型X1の第2分割面X13が、第2画定面X122の他の側縁に連続し、並進方向に対して傾斜している傾斜分割面により構成されている。
【0009】
同様に、第2分割金型X2の画定面X22が、並進方向に略垂直な第1画定面X221と、一の側縁において当該第1画定面X221の一の側縁に連続し、並進方向に略平行な第2画定面X222と、により構成されている。第2分割金型X2の第1分割面X21が、第2画定面X222の他の側縁に連続し、並進方向に対して傾斜している傾斜分割面により構成されている。第2分割金型X2の第2分割面X23が、第1画定面X221の他の側縁に連続し、並進方向に対して傾斜している傾斜分割面により構成されている。
【0010】
この場合、各分割金型の製造誤差等の原因により、各分割金型X1、X2が相互に近接するように横方向に駆動された際、分割面X11およびX21同士が当接し、かつ、分割面X13およびX23同士が当接した後、各分割金型X1、X2が同方向に駆動されうる・このため、図11Bに示されているように一方の分割金型X1が他方の分割金型X2の傾斜分割面に案内されるようにわずかではあるが並進方向に対して垂直な方向に並進する。このため、インサートの成形精度の許容しがたい低下を招来してしまう可能性がある。
【0011】
そこで、本発明は、各分割金型の分割面を構成する傾斜分割面に由来する、分割金型同士の本来的な並進方向とは異なる方向への相対並進の防止による粉末成形体および焼結体の成形精度の向上を図り得る方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、相互に当接することにより粉末成形体の側面形状に応じたキャビティを形成する複数の分割金型と、前記複数の分割金型を相対的に並進させるための金型駆動機構と、前記複数の分割金型により形成される前記キャビティに上方向および下方向のそれぞれから挿入される上パンチおよび下パンチと、前記上パンチおよび前記下パンチのそれぞれを昇降させるための昇降駆動機構と、を備え、前記複数の分割金型のそれぞれが、並進方向に対して傾斜している傾斜分割面と、前記傾斜分割面の右縁および左縁のそれぞれに連接され、右方向および左方向のそれぞれに延在し、かつ、並進方向に対して垂直な垂直分割面と、を有する分割面と、前記キャビティを画定する画定面と、を有している粉末成形装置に関する。
【0013】
本発明の粉末成形装置は、前記複数の分割金型のそれぞれが、前記分割面のうち前記垂直分割面において相互に当接する一方、前記傾斜分割面において1~30μmの範囲に含まれる間隔で相互に離間した状態で相互に当接することにより前記キャビティを形成するように構成されていることを特徴とする。
【0014】
当該構成の粉末成形装置によれば、キャビティが形成される際、各分割金型が並進駆動され、当該各分割金型の分割面を構成する垂直分割面同士が相互に当接する。その一方、各分割金型の分割面を構成する傾斜分割面同士が間隙をおいて相互に離間している。このため、複数の分割金型が、その分割面を構成する傾斜分割面において相互に当接する一方で、並進方向とは異なる方向に相対的に並進するように駆動される状況が確実に回避される。また、傾斜分割面同士の間隙が1~30μmの範囲に含まれており、平均粒径が当該間隙と同程度または大きい原料粉末がキャビティから当該間隙にはみ出る事態が抑制される。これにより、当該状況の出現に由来する複数の分割金型の本来的な並進方向とは異なる方向に相対的な並進(位置ずれ)が生じることが確実に防止され、キャビティの成形精度、ひいては粉末成形体の形状精度の向上が図られる。
【0015】
本発明の焼結体作製方法および複数の分割金型を有する本発明の金型についても同様の理由により、粉末成形体の形状精度の向上が図られる。
【0016】
同様の理由により、前記複数の分割金型のそれぞれの前記分割面が、前記傾斜分割面および前記垂直分割面に加えて、並進方向に対して平行な平行面をさらに有している場合、前記複数の分割金型のそれぞれが、前記分割面のうち前記垂直分割面において相互に当接する一方、前記傾斜分割面に加えて前記平行面において1~30μmの範囲に含まれる間隔で相互に離間した状態で相互に当接することにより前記キャビティを形成するように構成されていることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態としての粉末成形装置の構成に関する説明図。
図2】本発明の第1実施形態としての金型の構成に関する説明図。
図3】本発明の第1実施形態としての金型の機能に関する説明図。
図4】本発明の第1実施形態としての粉末成形体の製造方法に関する説明図。
図5】本発明の第2実施形態としての金型の構成に関する説明図。
図6A】本発明の第2実施形態としての金型の機能に関する説明図。
図6B】本発明の第2実施形態としての金型の機能に関する説明図。
図7】本発明の第3実施形態としての金型の構成に関する説明図。
図8】本発明の第2実施形態としての粉末成形体の製造方法に関する説明図。
図9A】本発明の第4実施形態としての金型の構成に関する説明図。
図9B】本発明の第5実施形態としての金型の構成に関する説明図。
図10A】本発明の第6実施形態としての金型の構成に関する説明図。
図10B】本発明の第7実施形態としての金型の構成に関する説明図。
図11A】先行技術における金型の構成に関する説明図。
図11B】先行技術における金型の機能に関する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
(金型の構成)
図2に示されている本発明の第1実施形態としての金型10は、第1分割金型11と第2分割金型12とからなる。
【0019】
第1分割金型11は、第1分割面111、画定面112および第2分割面113を有している。
【0020】
第1分割面111は、垂直分割面1111および傾斜分割面1112により構成されている。垂直分割面1111は、外側縁において第1分割金型11の一方の側面に連続し、かつ、第1分割金型11の並進方向(第2分割金型12に接近する方向を前方とする前後方向)に対して垂直な姿勢で上下方向に延在している。傾斜分割面1112は、外側縁において垂直分割面1111の内側縁に連続し、かつ、第1分割金型11の並進方向に対して傾斜した姿勢で上下方向に延在している。
【0021】
画定面112は、垂直画定面1121および平行画定面1122により構成されている。垂直画定面1121は、一の側縁において傾斜分割面1112の内側縁に連続し、かつ、第1分割金型11の並進方向に対して垂直な姿勢で上下方向に延在している。垂直画定面1121は、平坦部分と、当該平坦部分から成形体P2の主面形状に合わせて側面が略台形状に局所的に隆起している隆起部分とを有している。当該隆起部分の形状はさまざまに変更されてもよく、当該隆起部分が省略されてもよい。当該隆起部分に代えてまたは加えて、垂直画定面1121は、局所的に陥没しているまたは凹んでいる陥没部分を有していてもよい。当該陥没部分の形状はさまざまに変更されてもよい。垂直画定面1121(または隆起部分)の中央部には、第1分割金型11の並進方向に突出する凸部1124が設けられている。凸部1124が省略されていてもよい。平行画定面1122は、一の側縁において垂直画定面1121の他の側縁に連続し、かつ、第1分割金型11の並進方向に対して平行な姿勢で上下方向に延在している。平行画定面1122は、平坦部分と、当該平坦部分から成形体P2の側面形状に合わせて側面が略台形状に局所的に隆起している隆起部分とを有している。当該隆起部分が省略されても良い。
【0022】
第2分割面113は、垂直分割面1131および傾斜分割面1132により構成されている。垂直分割面1131は、外側縁において第1分割金型11の他方の側面に連続し、かつ、第1分割金型11の並進方向に対して垂直な姿勢で上下方向に延在している。傾斜分割面1132は、外側縁において垂直分割面1131の内側縁に連続し、かつ、第1分割金型11の並進方向に対して傾斜した姿勢で上下方向に延在している。
【0023】
第2分割金型12は、第1分割面121、画定面122および第2分割面123を有している。
【0024】
第1分割面121は、垂直分割面1211および傾斜分割面1212により構成されている。垂直分割面1211は、外側縁において第2分割金型12の一方の側面に連続し、かつ、第2分割金型12の並進方向(第1分割金型11に接近する方向を前方とする前後方向)に対して垂直な姿勢で上下方向に延在している。傾斜分割面1212は、外側縁において垂直分割面1211の内側縁に連続し、かつ、第2分割金型12の並進方向に対して傾斜した姿勢で上下方向に延在している。
【0025】
画定面122は、垂直画定面1221および平行画定面1222により構成されている。垂直画定面1221は、一の側縁において傾斜分割面1212の内側縁に連続し、かつ、第1分割金型11の並進方向に対して垂直な姿勢で上下方向に延在している。垂直画定面1221は、平坦部分と、当該平坦部分から成形体P2の主面形状に合わせて側面が略台形状に局所的に隆起している隆起部分とを有している。当該隆起部分の形状はさまざまに変更されてもよく、当該隆起部分が省略されてもよい。当該隆起部分に代えてまたは加えて、垂直画定面1221は、局所的に陥没しているまたは凹んでいる陥没部分を有していてもよい。当該陥没部分の形状はさまざまに変更されてもよい。垂直画定面1221(または隆起部分)の中央部には、第1分割金型11の並進方向に突出する凸部1124が設けられている。凸部1124が省略されていてもよい。平行画定面1222は、一の側縁において垂直画定面1221の他の側縁に連続し、かつ、第1分割金型11の並進方向に対して平行な姿勢で上下方向に延在している。平行画定面1222は、平坦部分と、当該平坦部分から成形体P2の側面形状に合わせて側面が略台形状に局所的に隆起している隆起部分とを有している。当該隆起部分が省略されても良い。
【0026】
第2分割面123は、垂直分割面1231および傾斜分割面1232により構成されている。垂直分割面1231は、外側縁において第2分割金型12の他方の側面に連続し、かつ、第2分割金型12の並進方向に対して垂直な姿勢で上下方向に延在している。傾斜分割面1232は、外側縁において垂直分割面1231の内側縁に連続し、かつ、第2分割金型12の並進方向に対して傾斜した姿勢で上下方向に延在している。
【0027】
第1分割金型11および第2分割金型12が、図3に示されているように分割面111、121のうち垂直分割面1111、1131、1211、1231において相互に当接する。その一方、第1分割金型11および第2分割金型12が、傾斜分割面1112、1132、1212、1232において1~30μmの範囲に含まれる間隔dをおいて相互に離間している。このような状態で第1分割金型11および第2分割金型12が相互に当接することにより、成形体P2の主面および側面の一部(または側面の全部)の形状に応じた形状を有するキャビティ100を形成するように構成されている。
【0028】
相互に当接した傾斜分割面1112および1212のそれぞれの内側縁と、相互に当接した傾斜分割面1132および1232のそれぞれの内側縁と、により、それぞれ、成形体P2の稜線またはエッジ部分が形成される。
【0029】
このため、複数の分割金型11、12が、その分割面111、121を構成する傾斜分割面1112、1212において相互に当接する一方で、並進方向とは異なる方向に位置ずれが生じるように駆動される状況が確実に回避される。また、傾斜分割面1112および1212同士の間隙dおよび傾斜分割面1132および1232同士の間隙dが1~30μmの範囲に含まれており、平均粒径が当該間隙と同程度または大きい原料粉末がキャビティ100から当該間隙dにはみ出る事態が抑制される。これにより、当該状況の出現に由来する複数の分割金型11、12の並進方向とは異なる方向への相対的な位置ずれが生じることが確実に防止され、キャビティ100の成形精度、ひいては粉末成形体P2の形状精度の向上が図られる。
【0030】
(粉末成形装置の構成)
図1に示されている本発明の第1実施形態としての粉末成形装置は、図2に示されている本発明の第1実施形態としての金型10を備えている。粉末成形装置は、第1分割金型11および第2分割金型のそれぞれを水平方向に並進させるための第1金型駆動機構110および第2金型駆動機構120と、第1分割金型11および第2分割金型12が当接することにより形成されるキャビティに上方向および下方向のそれぞれから挿入される上パンチ21および下パンチ22と、上パンチ21および下パンチ22のそれぞれを昇降させるための第1昇降駆動機構210および第2昇降駆動機構220と、をさらに備えている。
【0031】
(焼結体作製方法)
本発明の第1実施形態としての粉末成形体の作製方法において、本発明の第1実施形態としての粉末成形装置が用いられる(図1図3参照)。
【0032】
まず、第1分割金型11および第2分割金型12のそれぞれが、第1金型駆動機構110および第2金型駆動機構120のそれぞれにより相互に接近するように並進駆動される。そして、第1分割金型11および第2分割金型12が相互に当接し、キャビティ100の側方が画定面112および122により画定される(図4(1)参照)。下パンチ22が第2昇降駆動機構220により上昇駆動されてキャビティ100に挿入される(図4(1)参照)。キャビティ100の側方および下パンチ22が挿入されるタイミングは、時系列的な先後が逆であってもよく、同時であってもよい。
【0033】
この状態でキャビティ100に原料粉末P1が、例えば粉末供給装置(図示略)により投入される(図4(2)参照)。続いて、上パンチ21が第1昇降駆動機構210により下降駆動されてキャビティ100に挿入され、加圧前の所定の位置に移動する(図4(3)参照)。その後、上パンチ21および下パンチ22が相対的にさらに接近するように、上パンチ21および下パンチ22のうち少なくとも一方が駆動されることにより原料粉末P1が加圧成形される(図4(4)参照)。次に、第1分割金型11および第2分割金型12のそれぞれが、相互に離間するように並進駆動される(図4(5)参照)。なお、第1分割金型11および第2分割金型12が離間する前に上パンチ21が先に上昇駆動されてもよい。その後、上パンチ21および下パンチ22がともに上昇駆動されることにより粉末成形体P2がキャビティ100から取り出される(図4(6)参照)。あるいは、図4(5)の状態から、第1分割金型11および第2分割金型12を取付けるプレートに上下方向の駆動機構を設け、第1分割金型11および第2分割金型12が下降駆動されてもよい。そして、粉末成形体P2が焼結炉において加熱処理または焼結されることにより、焼結体が作製される。
【0034】
(第2実施形態)
(金型の構成)
図5に示されている本発明の第2実施形態としての金型10は、第1実施形態の金型10(図2参照)と比較して、第1分割金型11における第1分割面111および第2分割面113、ならびに、第2分割金型12における第1分割面121および第2分割面123の構成が相違する。第2実施形態の金型10のその他の構成は、第1実施形態の金型10(図2参照)とほぼ同様であるため、当該同様の構成に関しては第1実施形態と同一の符号を付するとともに説明を省略する。
【0035】
第1分割面111は、垂直分割面1111、傾斜分割面11121および平行分割面11122により構成されている。垂直分割面1111は、外側縁において第1分割金型11の一方の側面に連続し、かつ、第1分割金型11の並進方向(第2分割金型12に接近する方向を前方とする前後方向)に対して垂直な姿勢で、第1分割金型11の下部において上下方向に延在している。傾斜分割面11121は、第1分割金型11の一方の側面に連続し、かつ、第1分割金型11の上部において第1分割金型11の並進方向に対して傾斜した姿勢で上下方向に延在している。平行分割面11122は、後端縁において傾斜分割面11121の下縁に連続し、前端縁において垂直分割面1111の上縁に連続し、かつ、第1分割金型11の並進方向に対して平行な姿勢で水平方向に延在している。
【0036】
第2分割面113は、垂直分割面1131、傾斜分割面11321および平行分割面11322により構成されている。垂直分割面1131は、外側縁において第1分割金型11の一方の側面に連続し、かつ、第1分割金型11の並進方向に対して垂直な姿勢で、第1分割金型11の下部において上下方向に延在している。傾斜分割面11321は、第1分割金型11の一方の側面に連続し、かつ、第1分割金型11の上部において第1分割金型11の並進方向に対して傾斜した姿勢で上下方向に延在している。本実施形態では、傾斜分割面11321は、傾斜分割面11121と平行である。平行分割面11322は、後端縁において傾斜分割面11321の下縁に連続し、前端縁において垂直分割面1131の上縁に連続し、かつ、第1分割金型11の並進方向に対して平行な姿勢で水平方向に延在している。
【0037】
第1分割面121は、垂直分割面1211、傾斜分割面12121および平行分割面12122により構成されている。垂直分割面1211は、外側縁において第2分割金型12の一方の側面に連続し、かつ、第2分割金型12の並進方向(第1分割金型11に接近する方向を前方とする前後方向)に対して垂直な姿勢で、第1分割金型11の下部において上下方向に延在している。傾斜分割面12121は、第2分割金型12の一方の側面に連続し、かつ、第1分割金型11の上部において第2分割金型12の並進方向に対して傾斜した姿勢で上下方向に延在している。平行分割面12122は、後端縁において傾斜分割面12121の下縁に連続し、前端縁において垂直分割面1211の上縁に連続し、かつ、第2分割金型12の並進方向に対して平行な姿勢で水平方向に延在している。
【0038】
第2分割面123は、垂直分割面1231、傾斜分割面12321および平行分割面12322により構成されている。垂直分割面1231は、外側縁において第2分割金型12の一方の側面に連続し、かつ、第2分割金型12の並進方向に対して垂直な姿勢で、第1分割金型11の下部において上下方向に延在している。傾斜分割面12321は、第2分割金型12の一方の側面に連続し、かつ、第1分割金型11の上部において第2分割金型12の並進方向に対して傾斜した姿勢で上下方向に延在している。本実施形態では、傾斜分割面12321は、傾斜分割面12121と平行である。平行分割面12322は、後端縁において傾斜分割面12321の下縁に連続し、前端縁において垂直分割面1231の上縁に連続し、かつ、第2分割金型12の並進方向に対して平行な姿勢で水平方向に延在している。
【0039】
図6Aに示されているように、第1分割金型11および第2分割金型12が、分割面111、121のうち垂直分割面1111、1131、1211、1231において相互に当接する。その一方、図6Aおよび図6Bに示されているように、第1分割金型11および第2分割金型12が、傾斜分割面11121、11321、12121、12321において1~30μmの範囲に含まれる間隔d1をおいて相互に離間している。さらに、図6Aに示されているように、第1分割金型11および第2分割金型12が、平行分割面11122、11322、12122、12322において1~30μmの範囲に含まれる間隔d2をおいて相互に離間している。このような状態で第1分割金型11および第2分割金型12が相互に当接することにより、成形体P2の側面の形状に応じた形状を有するキャビティ100を形成するように構成されている。
【0040】
本発明の第2実施形態の金型10を構成要素とする粉末成形装置の構成および焼結体の作製方法は、前述の第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0041】
(第3実施形態)
図7に示されている本発明の第3実施形態としての金型10のように、キャビティ100およびこれを画定する画定面の形状は、本発明の第1実施形態と異なっていてもよい。
【0042】
(焼結体作製方法)
本発明の第2実施形態としての粉末成形体の作製方法において、本発明の第3実施形態としての粉末成形装置が用いられる(図7参照)。
【0043】
まず、第1分割金型11および第2分割金型12のそれぞれが、第1金型駆動機構110および第2金型駆動機構120のそれぞれにより相互に接近するように並進駆動される。そして、第1分割金型11および第2分割金型12が相互に当接し、キャビティ100の側方が画定面112および122により画定される(図8(1)参照)。下パンチ22が第2昇降駆動機構220により上昇駆動されてキャビティ100に挿入される(図8(1)参照)。この際、下パンチ22の貫通孔222に挿通されているロッド224が、当該下パンチ22の先端部から上方に突き出している。キャビティ100の側方および下パンチ22が挿入されるタイミングは、時系列的な先後が逆であってもよく、同時であってもよい。
【0044】
この状態でキャビティ100に原料粉末P1が、例えば粉末供給装置(図示略)により投入されロッド222を囲むようにキャビティ100に充填される(図8(2)参照)。
【0045】
続いて、上パンチ21が第1昇降駆動機構210により下降駆動されてキャビティ100に挿入され、加圧前の所定の位置に移動する(図8(3)参照)。この際、ロッド222が上パンチ21の受容空間212に挿入される。
【0046】
その後、上パンチ21および下パンチ22が相対的にさらに接近するように、上パンチ21および下パンチ22のうち少なくとも一方が駆動されることにより原料粉末P1が加圧成形される(図8(4)参照)。
【0047】
次に、第1分割金型11および第2分割金型12のそれぞれが、相互に離間するように並進駆動される(図8(5)参照)。なお、第1分割金型11および第2分割金型12が離間する前に上パンチ21が先に上昇駆動されてもよい。
【0048】
そして、上パンチ21および下パンチ22がともに上昇駆動され、ロッド224が下パンチ22に対して相対的に下降駆動されることにより粉末成形体P2がキャビティ100から取り出される(図8(6)参照)。あるいは、図8(5)の状態から、第1分割金型11および第2分割金型12を取付けるプレートに上下方向の駆動機構を設け、第1分割金型11および第2分割金型12を下降駆動してもよい。そして、粉末成形体P2が焼結炉において加熱処理または焼結されることにより、焼結体が作製される。
【0049】
(第4実施形態)
図9Aに示されている本発明の第4実施形態としての金型10のように、傾斜分割面1112、1132、1212、1232が、本発明の第1実施形態のように略平面ではなく、上下方向に延在する線分に沿って折れ曲がったような略屈曲面により構成されていてもよい。
【0050】
(第5実施形態)
図9Bに示されている本発明の第5実施形態としての金型10のように、傾斜分割面1112、1132、1212、1232が、本発明の第1実施形態のように略平面ではなく、上下方向に延在する線分に沿って折れ曲がったような略屈曲面により構成され、かつ、一方の平面に対して折れ曲がった他方の平面が分割金型11、12の並進方向に対して略平行に延在していてもよい。
【0051】
(第6実施形態)
図10Aに示されている本発明の第6実施形態としての金型10のように、第1分割面111、121が垂直分割面1111、1211および傾斜分割面1112、1212により構成されている一方、第2分割面113、123が垂直分割面のみにより構成されていてもよい。
【0052】
(第7実施形態)
図10Bに示されている本発明の第7実施形態としての金型10のように、第6実施形態と同様に、第1分割面111、121が垂直分割面1111、1211および傾斜分割面1112、1212により構成されている一方、第2分割面113、123が垂直分割面のみにより構成されていてもよい。
【0053】
(本発明の他の実施形態)
前記実施形態では金型が2つの分割金型に分割されていたが、他の実施形態として金型が3以上の複数の分割金型に分割されていてもよい。
【符号の説明】
【0054】
10‥金型、11‥第1分割金型、12‥第2分割金型、21‥上パンチ、22‥下パンチ、100‥キャビティ、110‥第1金型駆動機構、120‥第2金型駆動機構、111、121‥第1分割面、112、122‥画定面、113、123‥第2分割面、210‥第1昇降駆動機構、212‥ロッドのための上パンチの受容空間、220‥第2昇降駆動機構、222‥下パンチの貫通孔、224‥ロッド、1111‥垂直分割面、1112‥傾斜分割面、1131‥垂直分割面、1132‥傾斜分割面、1211‥垂直分割面、1212‥傾斜分割面、1231‥垂直分割面、1232‥傾斜分割面、P1‥原料粉末、P2‥粉末成形体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B