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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-27
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】圧電センサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/16 20060101AFI20220128BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20220128BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20220128BHJP
   H01L 41/047 20060101ALI20220128BHJP
【FI】
G01L1/16 B
A61B5/00 101R
A61B5/11 100
H01L41/047
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021511998
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(86)【国際出願番号】 JP2020014016
(87)【国際公開番号】W WO2020203771
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-02-19
(31)【優先権主張番号】P 2019068025
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】304036754
【氏名又は名称】国立大学法人山形大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】特許業務法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊木 大介
(72)【発明者】
【氏名】東海林 純一
(72)【発明者】
【氏名】時任 静士
【審査官】森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特許第5831542(JP,B2)
【文献】特許第5839091(JP,B2)
【文献】特許第5887911(JP,B2)
【文献】特許第5895615(JP,B2)
【文献】特許第6226079(JP,B2)
【文献】特許第5044196(JP,B2)
【文献】欧州特許第2291626(EP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/16
A61B 5/00
A61B 5/11
H01L 41/047
本件特許出願に対応する国際特許出願PCT/JP2020/014016の調査結果、及び、対応欧州出願の追加調査報告の結果が利用された。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の場所における生体からの圧力変化を検出する圧電センサであって、
互いに間隔を空けて配置され、面状に拡がるように形成された一対の電極と、
前記一対の電極の間に配置され、圧力変化に応じて電荷を生じる感圧層と、
前記一対の電極にそれぞれ接続され、生体の圧力変化に応じて前記一対の電極から供給される電気信号を出力するための一対の端子と
を備え、
前記一対の電極のうち少なくとも一方の電極は、前記一対の端子に向かって延びる縁部が前記感圧層に対して外側に張り出すように配置され、前記電気信号が前記縁部を伝搬して前記一対の端子から出力される圧電センサ。
【請求項2】
前記一対の電極は、それぞれ、前記縁部が前記感圧層に対して外側に張り出すように配置される請求項1に記載の圧電センサ。
【請求項3】
前記少なくとも一方の電極は、前記縁部が全周にわたって前記感圧層に対して外側に張り出すように配置される請求項1または2に記載の圧電センサ。
【請求項4】
前記一対の電極は、長尺形状を有し、
前記少なくとも一方の電極は、長手方向に対して交差する方向に前記感圧層と重なる部分を延びる切れ込みにより互いに分割された複数の検出部を有する請求項1~3のいずれか一項に記載の圧電センサ。
【請求項5】
前記複数の検出部は、前記長手方向に延びる切れ込みによりさらに分割して配置された請求項4に記載の圧電センサ。
【請求項6】
前記一対の端子は、前記一対の電極において短手方向に延びる縁部に接続される請求項4または5に記載の圧電センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、圧電センサに係り、特に、所定の場所における心拍および呼吸に起因して生体から生じる圧力変化を検出する圧電センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、心拍および呼吸などに起因して生体から生じる圧力変化を検出する圧電センサが実用化されている。例えば、圧電センサを病院のベッドに配置することにより、生体からの圧力変化を継時的に検出して、生体の状態を容易に把握することができる。
【0003】
このような圧電センサとしては、例えば、複数の圧電素子を配置したものが提案されている。複数の圧電素子を配置することで生体の部分的な圧力変化を検出して、生体の状態を精細に把握することができる。しかしながら、それぞれの圧電素子からの電気信号を別々の演算回路で解析するなど、装置構成が複雑化するといった問題があった。
【0004】
そこで、構成を簡単化する技術として、例えば、特許文献1には、何れの位置においても生体信号を精度良く測定することができる圧電センサ構造体が提案されている。この圧電センサ構造体は、電極がベッドの幅方向に面状に拡がるように形成されているため、広い面積における圧力変化を簡単な構成で検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-33497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の圧電センサ構造体は、電極の全面にわたるように感圧層を配置するため、生体の圧力変化に応じて生じた電気信号が電極を伝搬して端子まで到達する間に、感圧層との間で静電結合などが生じて、その波形が変化するおそれがあった。
【0007】
この発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、電極を伝搬する電気信号に対する感圧層の影響を抑制する圧電センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る圧電センサは、所定の場所における生体からの圧力変化を検出する圧電センサであって、互いに間隔を空けて配置され、面状に拡がるように形成された一対の電極と、一対の電極の間に配置され、圧力変化に応じて電荷を生じる感圧層と、一対の電極にそれぞれ接続され、生体の圧力変化に応じて一対の電極から供給される電気信号を出力するための一対の端子とを備え、一対の電極のうち少なくとも一方の電極は、一対の端子に向かって延びる縁部が感圧層に対して外側に張り出すように配置され、電気信号が縁部を伝搬して一対の端子から出力されるである。
【0009】
ここで、一対の電極は、それぞれ、縁部が感圧層に対して外側に張り出すように配置されることが好ましい。
【0010】
また、少なくとも一方の電極は、縁部が全周にわたって感圧層に対して外側に張り出すように配置されることが好ましい。
【0011】
また、一対の電極は、長尺形状を有し、少なくとも一方の電極は、長手方向に対して交差する方向に感圧層と重なる部分を延びる切れ込みにより互いに分割された複数の検出部を有することが好ましい。
【0012】
また、複数の検出部は、長手方向に延びる切れ込みによりさらに分割して配置することができる。
【0013】
また、一対の端子は、一対の電極において短手方向に延びる縁部に接続することができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、一対の電極のうち少なくとも一方の電極は、一対の端子に向かって延びる縁部が感圧層に対して外側に張り出すように配置され、電気信号が縁部を伝搬して一対の端子から出力されるので、電極を伝搬する電気信号に対する感圧層の影響を抑制する圧電センサを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】この発明の実施の形態1に係る圧電センサを備えた生体情報解析装置の構成を示し、(a)は平面図、(b)は図1(a)のA-A線断面図である。
図2】寝床に圧電センサを配置した様子を示す図である。
図3】実施の形態2に係る圧電センサの構成を示し、(a)は平面図、(b)は図3(a)のB-B線断面図である。
図4】実施の形態3に係る圧電センサの構成を示し、(a)は平面図、(b)は図4(a)のC-C線断面図である。
図5】実施の形態4に係る圧電センサの構成を示す図である。
図6】実施の形態5に係る圧電センサの構成を示す図である。
図7】実施例1の圧電センサを押圧したときの電気信号の強度変化を示すグラフである。
図8】比較例1の圧電センサを押圧したときの電気信号の強度変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1
図1(a)および(b)に、この発明の実施の形態1に係る圧電センサを備えた生体情報解析装置の構成を示す。この生体情報解析装置は、圧電センサ1と、解析部2とを有する。
【0017】
圧電センサ1は、所定の場所における生体からの圧力変化を検出するもので、一対の電極3aおよび3bと、感圧層4と、一対の端子5aおよび5bとを有する。ここで、圧力変化は、生体全体から加わる大きな圧力変化だけでなく、生体表面の振動などの小さな圧力変化も含むものである。
電極3aおよび3bは、互いに間隔を空けて配置され、同形状の長尺な矩形状に形成されている。電極3aおよび3bは、例えば、金属材料および有機導電性材料などの導電性材料から構成することができる。
【0018】
感圧層4は、圧力変化に応じて電荷を生じるもので、電極3aおよび3bの間に配置されている。感圧層4は、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)およびポリ(ビニリデン-トリフルオロエチレン)共重合体(P(VDF-TrFE))などの強誘電性を有する材料から構成することができる。また、感圧層4は、ポリ乳酸およびポリ尿素などの材料、および多孔質フィルムを帯電させたエレクトレット材料などから構成することもできる。
【0019】
ここで、感圧層4は、電極3aおよび3bより小さな面積で形成されている。具体的には、電極3aおよび3bにおいて長手方向に延びる2の縁部6aおよび6bと、短手方向に延びる2つの縁部6cおよび6dとが感圧層4に対して外側に張り出すように配置、すなわち電極3aおよび3bの縁部6a~6dが全周にわたって感圧層4に対して外側に張り出すように配置されている。これにより、電極3aおよび3bは、電極3aおよび3bの積層方向において感圧層4と重なる部分に感圧層4と電気的に接続された検出部7が配置され、その検出部7の周りを囲むように感圧層4と重ならない縁部6a~6dが配置されることになる。
なお、検出部7は、最も幅広く形成された部分が10cm以上の幅を有するように面状に拡がるように形成することが好ましい。
【0020】
端子5aおよび5bは、電極3aおよび3bにそれぞれ接続され、生体の圧力変化に応じて電極3aおよび3bから供給される電気信号を解析部2に順次出力する。
解析部2は、端子5aおよび5bから出力される電気信号に基づいて、生体の生体情報を解析するものである。解析部2は、例えば、電気信号の周波数に基づいて、心拍数、呼吸数および体動などの生体情報を算出することができる。
【0021】
次に、実施の形態1の動作について説明する。
まず、図2に示すように、生体Sが横になるための所定の場所、例えばベッドなどの寝床Lに圧電センサ1が配置される。圧電センサ1は、寝床Lを幅方向にわたるような長尺形状に形成されているため、生体Sから生じる圧力変化を確実に検出することができる。
【0022】
図1(a)および(b)に示すように、生体Sから生じる圧力変化が圧電センサ1に加わると、生体Sから生じる圧力変化に応じた電気信号が検出部7から供給される。この電気信号は、生体Sから生じる圧力変化が加えられた押圧位置から端子5aおよび5bまで電極3aおよび3bを伝搬することになる。ここで、電極3aおよび3bにおいて検出部7を伝搬した電気信号は、検出部7と感圧層4との間で生じる静電結合の影響で、その強度が大きく減衰するおそれがある。特に、検出部7において端子5aおよび5bから遠い押圧位置P2が押圧された場合に、端子5aおよび5bに近い押圧位置P1が押圧された場合と比較して、電気信号の伝搬距離が長いため感圧層4との間で生じる静電結合の影響をより大きく受けることになる。
【0023】
そこで、電極3aおよび3bには、押圧位置P2から端子5aおよび5bに向かって延びる縁部6a~6dが形成されている。この縁部6a~6dは、感圧層4に対して外側に張り出すように配置、すなわち積層方向において感圧層4と重ならないように配置されているため、縁部6a~6dを伝搬した電気信号は、検出部7と感圧層4との間で生じる静電結合の影響を受けることなく、端子5aおよび5bまで伝搬することができる。
特に、端子5aおよび5bから遠い押圧位置P2で生じた電気信号が静電結合の影響で減衰することを抑制するため、端子5aおよび5bからの距離に関わらず、全ての電気信号の強度をある程度維持したまま端子5aおよび5bから解析部2に出力することができる。
【0024】
ここで、電極3aおよび3bにおいて全周にわたる縁部6a~6dが、感圧層4に対して外側に張り出すように配置されているため、どの押圧位置P1およびP2を押圧しても縁部6a~6dを介して電気信号を確実に伝搬させることができる。
なお、縁部6a~6dは、例えば、約1cmの幅をそれぞれ有するように形成することができる。
【0025】
このようにして、端子5aおよび5bから解析部2に出力された電気信号は、縁部6a~6dを伝搬した電気信号を含むため、強度が維持されることになる。このため、解析部2は、強度が維持された電気信号に基づいて生体Sの生体情報を算出することにより、生体情報を高精度に算出することができる。特に、心拍に起因する電気信号は、例えば1Hz~10Hzといった比較的高い周波数であるため減衰しやすい傾向を有するが、電気信号の減衰を抑制することで比較的高い周波数を有する生体情報を確実に算出することができる。
【0026】
本実施の形態によれば、電極3aおよび3bは、端子5aおよび5bに向かって延びる縁部6a~6dが感圧層4に対して外側に張り出すように配置されて、電気信号が縁部6a~6dを伝搬して端子5aおよび5bから出力されるため、電極3aおよび3bを伝搬する電気信号に対する感圧層4の影響を抑制することができる。
【0027】
実施の形態2
上記の実施の形態1では、電極3aおよび3bは、縁部6a~6dが全周にわたって感圧層4に対して外側に張り出すように配置されたが、端子5aおよび5bに向かって延びる縁部が感圧層4に対して外側に張り出すように配置されていればよく、これに限られるものではない。
【0028】
例えば、図3に示すように、実施の形態1の感圧層4に換えて感圧層21を配置することができる。この感圧層21は、電極3aおよび3bに対して縁部6b分だけ小さい面積で形成されている。すなわち、電極3aおよび3bは、端子5aおよび5bに向かって延びる縁部6bのみが感圧層21に対して外側に張り出すように配置されている。
なお、端子5bは、縁部6bの延長線上に配置して縁部6bに直接接続されることが好ましい。また、端子5aを縁部6bの延長線上に配置して縁部6bに直接接続することもできる。
【0029】
このような構成により、検出部7において端子5aおよび5bから遠い押圧位置P2が押圧された場合でも、縁部6bを伝搬した電気信号は、感圧層21との静電結合の影響で減衰することを抑制することができ、電気信号の強度を維持したまま端子5aおよび5bから出力することができる。
【0030】
本実施の形態によれば、電極3aおよび3bは、端子5aおよび5bに向かって延びる縁部6bが感圧層21に対して外側に張り出すように配置され、電気信号が縁部6bを伝搬して端子5aおよび5bから出力されるため、電極3aおよび3bを伝搬する電気信号に対する感圧層21の影響を抑制することができる。
【0031】
実施の形態3
上記の実施の形態1および2では、電極3aおよび3bは、互いに対向する縁部が感圧層に対して外側に張り出すように配置されたが、端子5aおよび5bに向かって延びる縁部が感圧層に対して外側に張り出すように配置されていればよく、これに限られるものではない。
【0032】
例えば、図4に示すように、実施の形態2の電極3aおよび3bに換えて電極31aおよび31bを配置することができる。ここで、電極31aは、端子5aおよび5bに向かって延びる縁部6aが感圧層21に対して外側に張り出すように配置されている。一方、電極31bは、端子5aおよび5bに向かって延びる縁部6bが感圧層21に対して外側に張り出すように配置されている。すなわち、電極3aおよび3bは、互いに反対側を向いた縁部6aおよび6bが感圧層21に対して外側に張り出すように配置されている。
なお、端子5aは縁部6aの延長線上に配置して縁部6aに直接接続されることが好ましく、端子5bは縁部6bの延長線上に配置して縁部6bに直接接続されることが好ましい。
【0033】
このような構成により、検出部7において端子5aおよび5bから遠い押圧位置P2が押圧された場合でも、縁部6aおよび6bを伝搬した電気信号は、感圧層21との静電結合の影響で減衰することを抑制することができ、電気信号の強度を維持したまま端子5aおよび5bから出力することができる。
また、電極3aおよび3bは、互いに反対側の縁部6aおよび6bが感圧層21に対して外側に張り出すように配置されているため、縁部6aと縁部6bが接触して短絡することを防ぐことができる。
【0034】
本実施の形態によれば、電極31aおよび31bは、互いに反対側の縁部6aおよび6bが感圧層21に対して外側に張り出すように配置されているため、縁部6aと縁部6bが接触して電気的な短絡が生じることを防ぐことができる。
【0035】
実施の形態4
上記の実施の形態1~3では、電極3aおよび3bは、積層方向において感圧層4と重なる部分に1つの検出部7が配置されたが、生体Sからの圧力変化を検出できればよく、複数の検出部を配置することもできる。
具体的には、電極3aおよび3bは、長手方向に対して交差する方向に感圧層4と重なる部分を延びる切れ込みにより互いに分割された複数の検出部を配置することができる。
【0036】
例えば、図5に示すように、実施の形態1の電極3aおよび3bにおいて、検出部7に換えて検出部41a,41bおよび41cを配置することができる。この検出部41a~41cは、電極3aおよび3bの長手方向に対して直交する方向に感圧層4と重なる部分を延びる2つの切れ込み42により互いに分割されている。ここで、検出部41a~41cを分割する切れ込み42は、感圧層4の幅より長く延びて感圧層4を完全に横断するように形成されている。
【0037】
このような構成により、生体Sの圧力変化に応じて検出部41a~41cから供給される電気信号は、切れ込み42に遮られて検出部41a~41cの間を伝搬できず、縁部6a~6dを伝搬して端子5aおよび5bまで到達することになる。このように、電気信号が、縁部6a~6dを伝搬して端子5aおよび5bまで到達するため、感圧層4との静電結合の影響で強度が減衰することを確実に抑制することができる。
【0038】
本実施の形態によれば、電極3aおよび3bの検出部41a~41cが、切れ込み42により互いに分割されているため、検出部41a~41cから端子5aおよび5bまで縁部6a~6dを介して電気信号を伝搬させることができ、電気信号に対する感圧層4の影響を確実に抑制することができる。
【0039】
実施の形態5
上記の実施の形態4では、電極3aおよび3bは、長手方向に対して交差する方向に感圧層4と重なる部分を延びる切れ込み42により互いに分割された検出部41a~41cを配置したが、長手方向に延びる切り込みにより互いに分割された複数の検出部を配置することもできる。
【0040】
例えば、図6に示すように、実施の形態4の電極3aおよび3bにおいて、検出部41a~41cに換えて検出部51a,51b,51c,51d,51eおよび51fを配置することができる。この検出部51a~51fは、実施の形態4と同様に切れ込み42により長手方向に互いに分割されると共に、感圧層4と重なる部分を長手方向に延びる切れ込み52により短手方向に互いに分割されている。ここで、検出部51a~51fを分割する切れ込み52は、感圧層4の長手方向の長さより長く延びて感圧層4を完全に縦断するように形成されている。同様に、切れ込み42は、感圧層4の短手方向の幅より長く延びて感圧層4を完全に横断するように形成されている。
【0041】
このような構成により、生体Sの圧力変化に応じて検出部51a~51fから供給される電気信号は、切れ込み42および52に遮られて検出部51a~51fの間を伝搬できず、縁部6a~6dを伝搬して端子5aおよび5bまで到達することになる。このとき、切れ込み52が長手方向に延びるように形成されているため、検出部51a~51cから供給された電気信号は縁部6aを介して伝搬され、検出部51d~51fから供給された電気信号は縁部6bを介して伝搬される。すなわち、検出部51a~51fから最も近い縁部6a~6dを介して電気信号を伝搬させることができ、感圧層4との静電結合の影響で電気信号が減衰することをより確実に抑制することができる。
【0042】
本実施の形態によれば、電極3aおよび3bの検出部51a~51fが、切れ込み42および52により互いに分割されているため、検出部51a~51fから最も近い縁部6a~6dを介して電気信号を伝搬させることができ、電気信号に対する感圧層4の影響をより確実に抑制することができる。
【0043】
なお、上記の実施の形態1~5では、電極3aおよび3bは、それぞれ、縁部が感圧層4に対して外側に張り出すように配置されたが、電極3aおよび3bのうち少なくとも一方の電極の縁部が感圧層4に対して外側に張り出すように配置されていればよく、これに限られるものではない。
例えば、電極3aの端子5aを解析部2に接続すると共に電極3bの端子5bを接地した場合には、電極3aの縁部のみが感圧層4に対して外側に張り出すように配置し、電極3bは全面が感圧層4と対向するように配置することができる。
【0044】
また、上記の実施の形態1~5では、電極3aおよび3bは、長尺な矩形状に形成されたが、面状に拡がるように形成されていればよく、矩形状に限られるものではない。
また、上記の実施の形態1~5では、電極3aおよび3bは、平面状に拡がるように形成されていたが、立体的に湾曲するように形成することもできる。
【0045】
また、上記の実施の形態1~5では、圧電センサ1は、寝床Lに配置された寝具用として用いられたが、所定の場所における生体Sからの圧力変化を検出できればよく、寝具用に限られるものではない。例えば、圧電センサ1は、生体Sが座る座席に配置される座席用として用いることもできる。
【実施例
【0046】
次に、実施例を示して本発明を具体的に説明する。
【0047】
(実施例1)
導電性接着層付きの銅箔フィルムを幅8.5cm×長さ61cmの大きさで2枚切り出して電極3aおよび3bを作製すると共に、PVDFフィルム(クレハKFポリマー、株式会社クレハ製)を幅6.5cm×長さ60cmの大きさで切り出して感圧層4を作製した。電極3b上に感圧層4を張り合わせた後、感圧層4上に電極3aを張り合わせた。ここで、電極3aおよび3bは、3つの縁部6a,6bおよび6cがそれぞれ1cmだけ感圧層4に対して外側に張り出すように配置した。このため、検出部7は、幅6.5cm×長さ60cmの大きさで形成された。これにより、圧電センサが作製された。
【0048】
(比較例1)
導電性接着層付きの銅箔フィルムを幅6.5cm×長さ60cmの大きさで2枚切り出して一対の電極を作製すると共に、PVDFフィルム(クレハKFポリマー、株式会社クレハ製)を幅8.5cm×長さ61cmの大きさで切り出して感圧層を作製した。一方の電極上に感圧層を張り合わせた後、その感圧層上に他方の電極を張り合わせた。ここで、一対の電極は、全面が感圧層に対向するように配置され、検出部は幅6.5cm×長さ60cmの大きさで形成された。これにより、圧電センサが作製された。
【0049】
(評価方法)
作製された圧電センサに増幅器を介してオシロスコープを接続し、加振器により10Nの予圧を与えた状態でさらに17.5Nで押圧したときの電気信号の強度を計測した。加振器による押圧は、オシロスコープの接続箇所に近い押圧位置P1と、接続箇所から遠い押圧位置P2とをそれぞれ0.25Hz~10Hzの異なる周波数で振動を加えることにより行った。その結果を図7および8に示す。
【0050】
図7および8に示す結果から、3つの縁部6a,6bおよび6cが感圧層4に対して外側に張り出すように配置した実施例1は、電極の全面が感圧層に対向するように配置された比較例1と比較して、電気信号が約3倍の強度で計測され、感圧層の影響で電気信号が減衰するのを抑制できることがわかった。
【0051】
また、比較例1は、押圧位置P1を押圧した電気信号に対して押圧位置P2を押圧した電気信号が6割程度減衰しているのに対して、実施例1は、押圧位置P1を押圧した電気信号に対して押圧位置P2を押圧した電気信号が5割程度の減衰に留められており、オシロスコープの接続箇所から遠い押圧位置P2を押圧したときの電気信号の減衰をより確実に抑制できることがわかった。
さらに、実施例1は、比較例1と比較して、5Hz~10Hzの電気信号の減衰が抑制されており、比較的高い周波数の減衰を抑制できることがわかった。
【符号の説明】
【0052】
1 圧電センサ、2 解析部、3a,3b,31a,31b 電極、4,21 感圧層、5a,5b 端子、6a~6d 縁部、7,41a~41c,51a~51f 検出部、42,52 切れ込み、P1,P2 押圧位置、L 寝床、S 生体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8