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特許7016200ゴム製品用RFIDタグ及びゴム製品用RFIDタグの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-27
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】ゴム製品用RFIDタグ及びゴム製品用RFIDタグの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/077 20060101AFI20220128BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20220128BHJP
   H01Q 7/00 20060101ALI20220128BHJP
   H01Q 19/02 20060101ALI20220128BHJP
   H01Q 1/22 20060101ALN20220128BHJP
【FI】
G06K19/077 232
G06K19/077 264
G06K19/077 296
B60C19/00 J
H01Q7/00
H01Q19/02
H01Q1/22 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021549680
(86)(22)【出願日】2021-02-12
(86)【国際出願番号】 JP2021005159
【審査請求日】2021-09-03
(31)【優先権主張番号】P 2020183072
(32)【優先日】2020-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514174213
【氏名又は名称】株式会社フェニックスソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】100154966
【弁理士】
【氏名又は名称】海野 徹
(72)【発明者】
【氏名】杉村 詩朗
(72)【発明者】
【氏名】庭田 達次
【審査官】殿川 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-172166(JP,A)
【文献】特開2005-085089(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/00-19/18
B60C 19/00
H01Q 7/00
H01Q 19/02
H01Q 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結合トランスと、前記結合トランスの2次側に接続されたRFチップと、前記RFチップが搭載されたプリント基板と、アンテナとを備えており、
前記アンテナはコイル部と、前記コイル部の一方の端部からのびる第1エレメントと、前記コイル部の他方の端部から前記第1エレメントよりも短く且つ前記第1エレメントと平行にのびる第2エレメントとを備えており、
前記コイル部の巻き線数が前記結合トランスの2次側の巻き線数よりも少なく、
前記コイル部の素線間の隙間で前記プリント基板を保持することで前記コイル部が前記結合トランスの1次側を構成することを特徴とするゴム製品用RFIDタグ。
【請求項2】
カーボンブラックを含有するゴム製品用であることを特徴とする請求項1に記載のゴム製品用RFIDタグ。
【請求項3】
前記プリント基板の表裏両面に絶縁層を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のゴム製品用RFIDタグ。
【請求項4】
前記コイル部、前記第1エレメント及び前記第2エレメントが一本の導線から成ることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のゴム製品用RFIDタグ。
【請求項5】
前記結合トランスの2次側のコイルの軸心と、前記コイル部の軸心とが一致していることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のゴム製品用RFIDタグ。
【請求項6】
通信周波数における電波の波長をλとしたとき、前記第1エレメントと前記第2エレメントと前記コイル部とからなる部分の電気長がλ/4であることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のゴム製品用RFIDタグ。
【請求項7】
プリント基板上に結合トランスの2次側のコイルを左右方向に複数個配置するステップと、
左右方向に配置された複数個の前記2次側のコイルの前側と後側に開口を設けるステップと、
左右方向に配置された複数個の前記2次側のコイルの間に切り込みを入れるステップと
コイル部と、前記コイル部の一方の端部からのびる第1エレメントと、前記コイル部の他方の端部から前記第1エレメントよりも短く且つ前記第1エレメントと平行にのびる第2エレメントとを備えるアンテナを用いて、前記前側の開口を利用して前記コイル部の素線間の隙間に前記2次側のコイルを挿入することで前記コイル部を前記結合トランスの1次側とするステップを備えることを特徴とするゴム製品用RFIDタグの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型で量産性及び耐久性に優れたゴム製品用RFIDタグ及びゴム製品用RFIDタグの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
RFID(Radio Frequency Identification)システムで使用するRFIDタグにはアンテナ及びRFチップが格納されており、リーダ・ライタのアンテナから送信された搬送波をアンテナで受信し、RFチップに記録されている識別データ等を反射波に乗せてリーダ・ライタへ返送することにより、非接触で交信する仕組みになっている。
RFIDタグを例えば自動車等の車両のタイヤに貼り付けたり埋め込んだりすることでタイヤの固有情報の管理や、タイヤの製造、流通及びメンテナンス等の履歴を管理することができる。当然、タイヤ以外のゴム製品にRFIDタグを取り付けたり埋め込んだりした場合にも当該製品の管理に役立てることができる。
【0003】
特許文献1のRFIDタグ内蔵タイヤにはICチップに接続される第1のアンテナと、第1のアンテナに電磁界結合される第2のアンテナとを備えており、第2のアンテナを導電性のカーカスプライコードと電磁界結合させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-132291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
RFIDタグをタイヤに取り付ける場合には走行中のタイヤの変形によってRFIDタグが破損するという問題がある。また、タイヤに含まれるカーボンブラックの自由電子が電波を受けることでマイナスからプラスに電荷が移動し、これに伴い電流がプラスからマイナスに流れることでインピーダンスや比誘電率が変化するという問題がある。
特許文献1では第1のアンテナと第2のアンテナとを電磁界結合させており、第2のアンテナの信号源インピーダンスが高いため、カーボンブラックの影響を受けてインピーダンスや比誘電率の変化の影響を受けやすいという問題がある。
また、第2のアンテナが電磁界結合部から左右方向にのびる一対の延長部を備えているため、タイヤが変形した際に左右の延長部が電磁界結合部を中心にして左右方向に引張られ、破損するおそれがある。
【0006】
また、従来の半波長ダイポールアンテナを用いたRFIDタグはサイズが大きいという問題や、仮にアンテナの素子を折り曲げて小形化するメアンダラインアンテナを用いたとしてもカーボンブラックの影響で有効メアンダ長を定めることが困難という問題がある。
このような問題はRFIDタグをタイヤ以外のゴム製品、特にカーボンブラック等のRFIDタグの通信性能に影響を及ぼす材料を含有するゴム製品に使用した場合にも生じ得る。
【0007】
本発明はこのような問題を考慮して小型で量産性及び耐久性に優れたゴム製品用RFIDタグ及びゴム製品用RFIDタグの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のゴム製品用RFIDタグは、結合トランスと、前記結合トランスの2次側に接続されたRFチップと、前記RFチップが搭載されたプリント基板と、アンテナとを備えており、前記アンテナはコイル部と、前記コイル部の一方の端部からのびる第1エレメントと、前記コイル部の他方の端部から前記第1エレメントよりも短く且つ前記第1エレメントと平行にのびる第2エレメントとを備えており、前記コイル部の巻き線数が前記結合トランスの2次側の巻き線数よりも少なく、前記コイル部の素線間の隙間で前記プリント基板を保持することで前記コイル部が前記結合トランスの1次側を構成することを特徴とする。
また、カーボンブラックを含有するゴム製品用であることを特徴とする。
また、前記プリント基板の表裏両面に絶縁層を備えることを特徴とする。
また、前記コイル部、前記第1エレメント及び前記第2エレメントが一本の導線から成ることを特徴とする。
また、前記結合トランスの2次側のコイルの軸心と、前記コイル部の軸心とが一致していることを特徴とする。
また、通信周波数における電波の波長をλとしたとき、前記第1エレメントと前記第2エレメントと前記コイル部とからなる部分の電気長がλ/4であることを特徴とする。
【0009】
本発明のゴム製品用RFIDタグの製造方法は、プリント基板上に結合トランスの2次側のコイルを左右方向に複数個配置するステップと、左右方向に配置された複数個の前記2次側のコイルの前側と後側に開口を設けるステップと、左右方向に配置された複数個の前記2次側のコイルの間に切り込みを入れるステップと、コイル部と、前記コイル部の一方の端部からのびる第1エレメントと、前記コイル部の他方の端部から前記第1エレメントよりも短く且つ前記第1エレメントと平行にのびる第2エレメントとを備えるアンテナを用いて、前記前側の開口を利用して前記コイル部の素線間の隙間に前記2次側のコイルを挿入することで前記コイル部を前記結合トランスの1次側とするステップを備えることを特徴とする
【発明の効果】
【0010】
本発明のゴム製品用RFIDタグではコイル部の隙間にプリント基板を保持することで結合トランスを構成する。したがってゴム製品用RFIDタグの量産性を高めることができる。
また、本発明ではアンテナとして機能する第1エレメントと第2エレメントが平行にのびるのでRFIDタグが破損し難くなり耐久性に優れると共に従来の半波長ダイポールアンテナと比較して小型のRFIDタグを得られる。
また、本発明では1次側となるコイル部の巻き線数を2次側のコイルの巻き線数よりも少なくすることで1次側の入力を低インピーダンスにし、結合トランスで2次側を高インピーダンスに変換してRFチップの入力インピーダンスと整合させる。1次側のインピーダンスを低くすることで、例えばRFIDタグをカーボンブラック等を含んだゴム製品に使用した場合でもカーボンブラック等による影響を抑えることができる。
プリント基板の表裏両面に絶縁層を設けることでコイル部と2次側のコイルとが電気的に接続される事態を防止できる。
コイル部、第1エレメント及び第2エレメントを一本の導線を屈曲させて成ることにすればアンテナの製造が容易になり、且つコイル部、第1エレメント及び第2エレメント相互の電気的接続の信頼性が高まる。
結合トランスの2次側のコイルの軸心とコイル部の軸心とを一致させることで結合トランスの効率を高めることができる。
第1エレメントと第2エレメントとコイル部とからなる部分の電気長をλ/4にすればアンテナの長さが最短になり、ゴム製品用RFIDタグを更に小型化できる。
【0011】
本発明のゴム製品用RFIDタグの製造方法によれば前側の開口を利用してコイルの隙間に2次側のコイルを容易に挿入できるので製造効率を高めることができる。
また、2次側のコイル間の切り込みと前後の開口を利用して所定サイズのプリント基板を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】アンテナの平面図(a)、底面図(b)、側面図(c)、変形例(d)及び変形例(e)
図2】プリント基板にRFチップと2次側のコイルを搭載した状態を示す平面図(a)、RFチップ及び接続箇所を封止した状態を示す平面図(b)、底面図(c)及び側面図(d)
図3】コイル部の隙間にプリント基板を挿入する前の状態を示す平面図(a)、底面図(b)及び側面図(c)
図4】コイル部の隙間にプリント基板を挿入した後の状態を示す平面図(a)、底面図(b)及び側面図(c)
図5】ゴム製品用RFIDタグの等価回路図
図6】ゴム製品用RFIDタグの表裏両面をゴムシートで被覆した状態を示す縦断面図
図7】ゴム製品用RFIDタグをタイヤに取り付けた状態を示す縦断面図
図8】ゴム製品用RFIDタグの製造方法を示す平面図(a)~(c)
図9】ゴム製品用RFIDタグの製造方法を示す平面図(a)及び(b)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のゴム製品用RFIDタグ1の実施の形態について図面を用いて説明する。
図1図4に示すようにゴム製品用RFIDタグ1はRFチップ10、プリント基板20、アンテナ30及び結合トランス40を備える。なお、以下の説明においてゴム製品用RFIDタグ1を単に「RFIDタグ1」と表記する場合がある。
【0014】
RFチップ10は後述する結合トランス40の2次側に接続される。RFチップ10としては市販品を使用することができるが、120℃程度の加硫温度に耐性を有するものを用いることが好ましい。
図2(a)に示すようにプリント基板20の表面にエポキシ系ダイボンド材等の接着剤を用いてRFチップ10が搭載される。
更にプリント基板20の表面に結合トランス40の2次側のコイル41が形成されている。2次側のコイル41の2つの端子のうち一方の端子はRFチップ10の端子にワイヤーボンディングにより接続されている。2次側のコイル41の他方の端子は図2(a)及び(c)に示すようにスルーホール21を介してプリント基板20の裏面に至り、更にスルーホール22を介してプリント基板20の表面に至り、RFチップ10の端子にワイヤーボンディングにより接続されている。本実施の形態では2次側のコイル41の巻き数は約4(実際には3.96)である。2次側のコイル41は蒸着等で形成される平面状のコイルに限られず、導線によるコイルでもよい。図2(b)に示すようにRFチップ10及び接続箇所は絶縁層27で封止しておくのが好ましい。
図2(d)に示すようにプリント基板20の表面、すなわちRFチップ10と2次側のコイル41の表面は絶縁層23で封止される。また、プリント基板20の裏面も絶縁層23で封止される。絶縁層23としてはエポキシ樹脂、アクリル系樹脂(アクリル樹脂及び誘導体を主成分とした樹脂)、ウレタン樹脂等の絶縁性樹脂を使用することができる。
【0015】
アンテナ30はリーダ・ライタからの搬送波を受信し、また、反射波をリーダ・ライタに返信するために設けられる。
アンテナ30はコイル部31、第1エレメント32及び第2エレメント33を備えている。アンテナ30の素線の素材としては銅線、鉄線、真鍮線等の金属線を使用すればよい。
【0016】
コイル部31は結合トランス40の1次側として機能する。コイル部31の巻き線数は2次側の巻き線数よりも少なくする必要がある。本実施の形態ではコイル部31を構成する素線の巻き線数は1.5であり、素線間に隙間31aが形成されている。なお、コイル部31に外力を付加していない状態で素線間が自然に開いており、この開いた箇所を隙間31aにしてもよいし、或いは図1(d)に示すようにコイル部31に外力を付加していない状態では素線間がほぼ密着しており、コイル部31に上下方向(軸心方向)の外力を付加することで素線間を弾性的に開き、この開いた箇所を隙間31aにしてもよい。平面視した場合のコイル部31の直径は2次側のコイル41の外径と同一又は僅かに大きいのが好ましい。
【0017】
第1エレメント32はコイル部31の一方の端部からのびる部材である。RFIDタグ1の通信周波数における電波の波長をλとしたとき、第1エレメント32の電気長をλ/4,λ/2,(3/4)λ,(5/8)λのいずれかにすると、第1エレメント32の共振周波数をRFIDタグ1の通信周波数λと一致させることができるので好ましい。
第2エレメント33はコイル部31の他方の端部から第1エレメント32よりも短く且つ第1エレメント32と平行にのびる部材である。
一例として、第1エレメント32を波長の約0.185λとし、第2エレメント33を波長の約0.046λ長とし、第1エレメント32、第2エレメント33及びコイル部31の総延長を約λ/4にすることにより、アンテナ30を概ね最短にすることができる。
【0018】
本実施の形態ではコイル部31、第1エレメント32及び第2エレメント33を一本の導線を屈曲させて形成している。これによりアンテナ30の製造が容易になり、且つコイル部31、第1エレメント32及び第2エレメント33相互の電気的接続の信頼性が高まるが、これに限らず複数本の導線の端部同士を接合してアンテナ30を形成してもよい。
図1(e)に示すように第1エレメント32及び第2エレメント33の端部を折り返すことにすればRFIDタグ1をゴム製品に取り付けた場合、両エレメント32,33の端部がゴム製品に突き刺さったり、ゴム製品を切り裂いたりする事態を防止でき、更にRFIDタグ1が破損する事態を防止できる。
【0019】
図3及び図4に示すようにコイル部31の素線間の隙間31aにプリント基板20を挿入することでプリント基板20が保持され、コイル部31が結合トランス40の1次側を構成することになる。コイル部31の軸心と2次側のコイル41の軸心とを一致させるのが好ましい。プリント基板20の表裏両面は絶縁層23で封止されているので、コイル部31と2次側のコイル41とが電気的に接続されることがない。また、プリント基板20を挿入しない部分のコイル部31の素線間にあっては、電気的コイル機能を保持するために、当然絶縁されている。
【0020】
図5はRFIDタグ1をタイヤ等のゴム製品に取り付けた場合の等価回路図である。受信時には第1エレメント32と第2エレメント33で受信した電波が結合トランス40を介してRFチップ10に伝達される。具体的には第1エレメント32と第2エレメント33には電波の反転位相の電流が流れることとなり、1次側のコイル部31に電流が流れて、2次側のコイル41に交流電圧が誘起される。
ここで、RFチップ10のインピーダンスが数kΩから10kΩ程度であるのに対して、第1エレメント32と第2エレメント33の間のインピーダンスは100Ω程度と小さい。第1エレメント32と第2エレメント33の間のインピーダンスが小さいのは、アンテナ30自体のインピーダンスに加えて、ゴム製品に含まれるカーボンブラック等の抵抗成分による影響が大きい。加硫ゴムタイヤは種類によっては数10kΩ・cm程度の抵抗率がある。仮に本発明のRFIDタグ1を加硫ゴムタイヤに埋め込み、RFチップ10の両端子を直接第1エレメント32と第2エレメント33に接続した場合、受信した電波を効率よくRFチップ10に導くことができない。
【0021】
そこで、本発明のRFIDタグ1では結合トランス40の2次側の巻き線数N2と1次側の巻き線数N1との比n(n=N2/N1)を調整している。具体的には、入力インピーダンスZのRFチップ10と、第1エレメント32及び第2エレメント33とを結合トランス40を介して接続した場合、結合トランス40の1次側のインピーダンスはZ/nとなる。したがって、1次側となるコイル部31の巻き線数N1を2次側のコイル41の巻き線数N2よりも少なくすることでnを大きくして1次側の入力を低インピーダンスにし、結合トランス40で2次側を高インピーダンスに変換してRFチップ10の入力インピーダンスZと整合させている。1次側のインピーダンスを低くすることで、例えばRFIDタグ1をカーボンブラック等を含んだゴム製品に使用した場合でもカーボンブラック等による影響を抑えることができる。
ただし、2次側の巻き線数N2を大きくするには結合トランス40の面積などの制約があり、2次側と1次側との巻き線数の比nはRFチップ10の仕様、ゴム製品の材質やカーボンブラック等の含有量等によって適宜調整する必要がある。
【0022】
RFIDタグ1のアンテナ30は第2エレメント33をグランドプレーン、第1エレメント32をアンテナ線としたモノポールアンテナ30と類似した動作となる。RFIDタグ1を加硫ゴム製品に貼り付けたり埋め込んだりした場合には、第2エレメント33が加硫ゴム製品と電気的に接続することによりグランドプレーンがさらに強化されるという利点がある。
また、従来のダイポールアンテナ形式のRFIDタグではRFチップを搭載したプリント基板から左右方向に電気長λ/4の2本のアンテナエレメントがのびている。この構成ではゴム製品が変形し、2本のアンテナエレメントにそれぞれ逆方向の力が加わった場合、アンテナエレメントとプリント基板との接続箇所が破損するおそれがある。これに対して本発明のRFIDタグ1では第1エレメント32と第2エレメント33が同一方向に平行にのびるので第1エレメント32又は第2エレメント33の基部とプリント基板20との接続箇所が破損しにくいという利点や小型化できるという利点もある。
【0023】
図6に示すようにゴム製品用RFIDタグ1の表裏両面をゴムシート50,51で被覆してもよい。具体的には、第1のゴムシート50と第2のゴムシート51との間にRFIDタグ1を配置し、第1のゴムシート50と第2のゴムシート51を圧着することでゴムで被覆したRFIDタグ1を製造できる。
ゴムシート50,51の素材としては一般的な天然ゴムや各種合成ゴムを使用でき、更にブチルゴムシート等の粘着性を有する素材を使用してもよい。RFIDタグ1をゴムシート50,51で被覆することでゴム製品が変形した場合でもRFIDタグ1を構成する各部品が破損したり、部品相互の位置関係がずれたりする事態を防止でき、また、RFIDタグ1に防水性や防塵性を与えることができる。
【0024】
図7はゴムで被覆したRFIDタグ1をゴム製品の一例としてタイヤ60の内側に貼り付けた状態を示している。RFIDタグ1を貼り付ける位置は特に制限されない。RFIDタグ1をタイヤ60の内側に貼り付けてもよいし、タイヤ60のゴムに埋め込んでもよい。また、ゴムで被服していないRFIDタグ1をタイヤ60の内側に貼り付けたり埋め込んだりしてもよい。
RFIDタグ1をタイヤ60に取り付けることによって、第2エレメント33がタイヤ60と電気的に接続され、その結果、タイヤ60がRFIDタグ1のグランドとして機能する。したがって、本発明のRFIDタグ1はタイヤ60等のゴム製品に取り付けた場合も高感度に通信を行うことができる。第2エレメント33とタイヤ60との接続は容量接続であってもよいし直接接続であってもよい。
【0025】
次に、ゴム製品用RFIDタグ1の製造方法を説明する。
図8(a)に示すようにまずプリント基板20上に結合トランス40の2次側のコイル41を左右方向に複数個配置する(ステップA)。
次に図8(b)に示すように複数個の2次側のコイル41の前側と後側に開口24,25を設ける(ステップB)。前側の開口24から後側の開口25までの距離をRFIDタグ1の前後方向の長さと一致させる必要がある。
次に図8(c)に示すように複数個の2次側のコイル41の間に切り込み26を入れる(ステップC)。切り込み26を入れる間隔はRFIDタグ1の左右方向の長さと一致させる必要がある。
ステップA~Cは順序不同であり、また、適当なタイミングで2次側のコイル41にRFチップ10を接続する必要があり、RFチップ10を2次側のコイル41に接続した後はその表面を絶縁層27で覆うのが好ましい。
【0026】
次に図9(a)に示すように前側の開口24を利用してコイル部31の素線間の隙間31aに2次側のコイル41を挿入する。これによりコイル部31が結合トランス40の1次側として機能する。このときに第1エレメント32及び第2エレメント33を前側の開口24の側縁部28に載せて、側縁部28の表面を摺動させながらコイル部31を2次側のコイル41の方に移動させることができる。また、素線間の隙間31aに2次側のコイル41を挿入した状態で第1エレメント32が側縁部28に載った状態になるのでアンテナ30がプリント基板20から脱落するおそれがない。必要に応じてコイル部31とプリント基板20を接着してもよい。
最後に図9(b)に示すように切り込み26でプリント基板20を切断することでゴム製品用RFIDタグ1が完成する。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、小型で量産性及び耐久性に優れたゴム製品用RFIDタグ及びゴム製品用RFIDタグの製造方法であり、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0028】
1 ゴム製品用RFIDタグ
10 RFチップ
20 プリント基板
21 スルーホール
22 スルーホール
23 絶縁層
24 前側の開口
25 後側の開口
26 切り込み
27 絶縁層
28 側縁部
30 アンテナ
31 コイル部
31a 隙間
32 第1エレメント
33 第2エレメント
40 結合トランス
41 2次側のコイル
50 第1のゴムシート
51第2のゴムシート
60 タイヤ
【要約】
小型で量産性及び耐久性に優れたゴム製品用RFIDタグ及びゴム製品用RFIDタグの製造方法を提供する。
本発明のゴム製品用RFIDタグ1は、結合トランス40と、結合トランスの2次側に接続されたRFチップ10と、RFチップが搭載されたプリント基板20と、アンテナ30とを備えており、アンテナはコイル部31と、コイル部の一方の端部からのびる第1エレメント32と、コイル部の他方の端部から第1エレメントよりも短く且つ第1エレメントと平行にのびる第2エレメント33とを備えており、コイル部の巻き線数が結合トランス40の2次側の巻き線数よりも少なく、コイル部の素線間の隙間でプリント基板20を保持することでコイル部が結合トランスの1次側を構成することを特徴とする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9