(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-27
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】医療情報提供システム、サーバ、端末装置、医療情報提供方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 10/00 20180101AFI20220128BHJP
A61J 3/00 20060101ALI20220128BHJP
【FI】
G16H10/00
A61J3/00 310K
(21)【出願番号】P 2016016165
(22)【出願日】2016-01-29
【審査請求日】2019-01-22
【審判番号】
【審判請求日】2020-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】596079138
【氏名又は名称】東日本メディコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127384
【氏名又は名称】坊野 康博
(72)【発明者】
【氏名】野本 禎
【合議体】
【審判長】高瀬 勤
【審判官】吉田 誠
【審判官】中野 浩昌
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-225019(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0290619(US,A1)
【文献】特開2005-108027(JP,A)
【文献】国際公開第2009/034941(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H10/00
A61J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークを介して通信可能に構成された端末装置及びサーバを含む医療情報提供システムであって、
前記端末装置は、
特定の対象となる包装された医薬品または包装から取り出された医薬品を被写体とする画像を取得する画像取得手段と、
前記サーバに前記画像及び当該画像の撮像時のパラメータを送信して前記被写体の特定を要求することにより得られる特定結果を取得する特定結果取得手段と、
前記特定結果取得手段によって取得された前記包装された医薬品または包装から取り出された医薬品の特定結果を
、ライブビュー表示されている前記医薬品の画像に関連付けて、AR(Augmented Reality)によって表示することにより提示する特定結果提示手段と、を備え、
前記サーバは、
前記端末装置において取得された前記画像及び当該画像の撮像時のパラメータから、当該画像の被写体となっている包装された医薬品または包装から取り出された医薬品の外観を表す情報を検出し、検出された外観を表す情報に基づいて、候補となる複数の医薬品の名称及び外観情報を含むデータから、当該画像の被写体である前記包装された医薬品または包装から取り出された医薬品を特定する特定実行手段を備え、
前記外観情報は、前記包装された医薬品及び包装から取り出された医薬品の画像、図面及び寸法を表す数値の少なくともいずれかを含むことを特徴とする医療情報提供システム。
【請求項2】
前記サーバは、
候補となる複数の医薬品の名称と、当該複数の医薬品の立体的形状を識別する情報及び当該医薬品に関する文字情報を少なくとも含む前記外観情報とを記憶する医薬品データベースを備え、
前記特定実行手段は、前記画像の被写体がいずれの医薬品であるかを特定するための特定基準に基づいて、前記医薬品データベースに記憶されたデータから、前記端末装置において取得された前記画像の被写体である前記包装された医薬品または包装から取り出された医薬品を特定
し、
前記医薬品データベースに記憶されたデータは、医薬品メーカーまたは行政機関のサーバにアクセスすることにより更新または新規に登録されると共に、前記医薬品データベースに記憶されたデータが更新される場合、既存のデータを破棄することなく、旧態の医薬品のデータとして保持しつつ、新たなデータを追加することを特徴とする請求項1に記載の医療情報提供システム。
【請求項3】
前記画像の被写体がいずれの医薬品であるかを特定するための複数の特定基準が設定され、
前記特定実行手段は、前記複数の特定基準の少なくともいずれかに基づいて、前記画像の被写体である前記包装された医薬品または包装から取り出された医薬品を特定する
と共に、前記複数の特定基準には優先順位が設定され、前記優先順位の順番で、前記画像の被写体である前記包装された医薬品または包装から取り出された医薬品を特定することを特徴とする請求項1または2に記載の医療情報提供システム。
【請求項4】
前記複数の特定基準には、医薬品または医薬品の包装に刻印若しくは印字される文字の認識結果に基づく基準が含まれることを特徴とする請求項3に記載の医療情報提供システム。
【請求項5】
前記複数の特定基準には、候補となる医薬品または医薬品の包装の形態及び色と前記画像の被写体との一致度合いに基づく基準が含まれることを特徴とする請求項3または4に記載の医療情報提供システム。
【請求項6】
前記複数の特定基準には、候補となる医薬品または医薬品の包装の寸法と前記画像から認識される被写体の寸法との一致度合いに基づく基準が含まれることを特徴とする請求項3から5のいずれか1項に記載の医療情報提供システム。
【請求項7】
前記複数の特定基準には、候補となる医薬品または医薬品の包装の画像または図面と取得された前記画像との一致度合いに基づく基準が含まれることを特徴とする請求項3から6のいずれか1項に記載の医療情報提供システム。
【請求項8】
前記特定実行手段は、候補となる複数の医薬品の名称及び外観情報を含むデータにおいて、前記特定基準に一致する度合いが設定値より高い複数の医薬品を前記画像の被写体である前記包装された医薬品または包装から取り出された医薬品として特定することを特徴とする請求項2から7のいずれか1項に記載の医療情報提供システム。
【請求項9】
前記特定実行手段は、候補となる複数の医薬品の名称及び外観情報を含むデータにおいて、前記特定基準に一致する度合いが最も高い医薬品を前記画像の被写体である前記包装された医薬品または包装から取り出された医薬品として特定することを特徴とする請求項2から7のいずれか1項に記載の医療情報提供システム。
【請求項10】
他の装置から送信された特定の対象となる包装された医薬品または包装から取り出された医薬品を被写体とする画像及び当該画像の撮像時のパラメータから、当該画像の被写体となっている包装された医薬品または包装から取り出された医薬品の外観を表す情報を検出し、検出された外観を表す情報に基づいて、候補となる複数の医薬品の名称及び外観情報を含むデータから、当該画像の被写体である前記包装された医薬品または包装から取り出された医薬品を特定する特定実行手段
と、
候補となる複数の医薬品の名称と、当該複数の医薬品の立体的形状を識別する情報及び当該医薬品に関する文字情報を少なくとも含む前記外観情報とを記憶する医薬品データベースと、を備え、
前記特定実行手段は、前記画像の被写体がいずれの医薬品であるかを特定するための特定基準に基づいて、前記医薬品データベースに記憶されたデータから、前記端末装置において取得された前記画像の被写体である前記包装された医薬品または包装から取り出された医薬品を特定し、
前記医薬品データベースに記憶されたデータは、医薬品メーカーまたは行政機関のサーバにアクセスすることにより更新または新規に登録されると共に、前記医薬品データベースに記憶されたデータが更新される場合、既存のデータを破棄することなく、旧態の医薬品のデータとして保持しつつ、新たなデータを追加し、
前記外観情報は、前記包装された医薬品及び包装から取り出された医薬品の画像、図面及び寸法を表す数値の少なくともいずれかを含むことを特徴とするサーバ。
【請求項11】
特定の対象となる包装された医薬品または包装から取り出された医薬品を被写体とする画像を取得する画像取得手段と、
前記包装された医薬品または包装から取り出された医薬品の画像及び当該画像の撮像時のパラメータから、当該画像の被写体となっている包装された医薬品または包装から取り出された医薬品の外観を表す情報を検出し、検出された外観を表す情報を基に当該画像の被写体である前記包装された医薬品または包装から取り出された医薬品を特定する機能を有する他の装置に前記画像及び当該画像の撮像に関するパラメータを送信して前記被写体の特定を要求することにより得られる特定結果を取得する特定結果取得手段と、
前記特定結果取得手段によって取得された前記包装された医薬品または包装から取り出された医薬品の特定結果を
、ライブビュー表示されている前記医薬品の画像に関連付けて、AR(Augmented Reality)によって表示することにより提示する特定結果提示手段と、
を備えることを特徴とする端末装置。
【請求項12】
特定の対象となる包装された医薬品または包装から取り出された医薬品を被写体とする画像を取得する画像取得手段と、
前記画像取得手段によって取得された前記画像及び当該画像の撮像時のパラメータから、当該画像の被写体となっている包装された医薬品または包装から取り出された医薬品の外観を表す情報を検出し、検出された外観を表す情報に基づいて、候補となる複数の医薬品の名称及び外観情報を含むデータから、当該画像の被写体である前記包装された医薬品または包装から取り出された医薬品を特定する特定実行手段と、
前記特定実行手段によって特定された前記包装された医薬品または包装から取り出された医薬品の特定結果を
、ライブビュー表示されている前記医薬品の画像に関連付けて、AR(Augmented Reality)によって表示することにより提示する特定結果提示手段と、
を備え、
前記外観情報は、前記包装された医薬品及び包装から取り出された医薬品の画像、図面及び寸法を表す数値の少なくともいずれかを含むことを特徴とする端末装置。
【請求項13】
コンピュータにおいて実行される医療情報提供方法であって、
前記コンピュータは、
候補となる複数の医薬品の名称と、当該複数の医薬品の立体的形状を識別する情報及び当該医薬品に関する文字情報を少なくとも含む外観情報とを記憶する医薬品データベースを備え、
特定の対象となる包装された医薬品または包装から取り出された医薬品を被写体とする画像及び当該画像の撮像時のパラメータから、当該画像の被写体となっている包装された医薬品または包装から取り出された医薬品の外観を表す情報を検出し、検出された外観を表す情報に基づいて、候補となる複数の医薬品の名称及び外観情報を含むデータから、当該画像の被写体である前記包装された医薬品または包装から取り出された医薬品を特定する特定実行ステップを含み、
前記特定実行ステップでは、前記画像の被写体がいずれの医薬品であるかを特定するための特定基準に基づいて、前記医薬品データベースに記憶されたデータから、前記画像の被写体である前記包装された医薬品または包装から取り出された医薬品を特定し、
前記医薬品データベースに記憶されたデータは、医薬品メーカーまたは行政機関のサーバにアクセスすることにより更新または新規に登録されると共に、前記医薬品データベースに記憶されたデータが更新される場合、既存のデータを破棄することなく、旧態の医薬品のデータとして保持しつつ、新たなデータを追加し、
前記外観情報は、前記包装された医薬品及び包装から取り出された医薬品の画像、図面及び寸法を表す数値の少なくともいずれかを含むことを特徴とする医療情報提供方法。
【請求項14】
候補となる複数の医薬品の名称と、当該複数の医薬品の立体的形状を識別する情報及び当該医薬品に関する文字情報を少なくとも含む外観情報とを記憶する医薬品データベースを備えるコンピュータに、
特定の対象となる包装された医薬品または包装から取り出された医薬品を被写体とする画像及び当該画像の撮像時のパラメータから、当該画像の被写体となっている包装された医薬品または包装から取り出された医薬品の外観を表す情報を検出し、検出された外観を表す情報に基づいて、候補となる複数の医薬品の名称及び外観情報を含むデータから、当該画像の被写体である前記包装された医薬品または包装から取り出された医薬品を特定する特定実行機能を実現させ、
前記特定実行機能は、前記画像の被写体がいずれの医薬品であるかを特定するための特定基準に基づいて、前記医薬品データベースに記憶されたデータから、前記画像の被写体である前記包装された医薬品または包装から取り出された医薬品を特定し、
前記医薬品データベースに記憶されたデータは、医薬品メーカーまたは行政機関のサーバにアクセスすることにより更新または新規に登録されると共に、前記医薬品データベースに記憶されたデータが更新される場合、既存のデータを破棄することなく、旧態の医薬品のデータとして保持しつつ、新たなデータを追加し、
前記外観情報は、前記包装された医薬品及び包装から取り出された医薬品の画像、図面及び寸法を表す数値の少なくともいずれかを含むことを特徴とするプログラム。
【請求項15】
コンピュータに、
特定の対象となる包装された医薬品または包装から取り出された医薬品を被写体とする画像を取得する画像取得機能と、
前記包装された医薬品または包装から取り出された医薬品の画像及び当該画像の撮像時のパラメータから、当該画像の被写体となっている包装された医薬品または包装から取り出された医薬品の外観を表す情報を検出し、検出された外観を表す情報を基に当該画像の被写体である前記包装された医薬品または包装から取り出された医薬品を特定する機能を有する他の装置に前記画像及び当該画像の撮像に関するパラメータを送信して前記被写体の特定を要求することにより得られる特定結果を取得する特定結果取得機能と、
前記特定結果取得機能によって取得された前記包装された医薬品または包装から取り出された医薬品の特定結果を
、ライブビュー表示されている前記医薬品の画像に関連付けて、AR(Augmented Reality)によって表示することにより提示する特定結果提示機能と、
を実現させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療情報を提供する医療情報提供システム、サーバ、端末装置、医療情報提供方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薬剤師による調剤時や患者による医薬品の服用時等に、医薬品を誤認することを防ぐため、医薬品のヒートシールに医薬品名を印刷したり、薬袋あるいは薬剤情報提供文書等に医薬品の写真及び医薬品情報を印刷したりしている。
例えば、特許文献1には、薬袋または服薬指導箋に薬剤の名称、写真あるいは薬用量を印刷する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、医薬品のヒートシールに医薬品名を印刷したり、薬袋や服薬指導箋等に医薬品に関する情報を印刷したりしても、薬剤師や患者が医薬品を誤認することがある。例えば、包装から取り出してピルケースに入れられた錠剤(裸錠)等は、実物を見ただけで薬剤を判別することが困難となる。これは、患者持参薬等について、薬剤を見極めるための鑑別を正確に行う上で問題となる。また、医薬品のヒートシール等に印刷された名称を見た場合でも、類似する名称の薬剤を取り違えることもあり得る。なお、従来、1次元または2次元のバーコードを薬袋や服薬指導箋等に印刷し、薬剤が保管された調剤棚に付されたバーコードと薬袋等に印刷されたバーコードとを読み取ることにより、調剤時に薬剤の照合を行う技術が提案されているものの、包装から取り出した裸錠を判別することはできない。
このように、従来の技術においては、医薬品が誤認され、医薬品の取り違えや誤った服用等が発生する可能性があった。
【0005】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、医薬品の誤認をより適切に防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ネットワークを介して通信可能に構成された端末装置及びサーバを含む医療情報提供システムであって、
前記端末装置は、
特定の対象となる医薬品を被写体とする画像を取得する画像取得手段と、
前記サーバに前記被写体の特定を要求することにより得られる特定結果を取得する特定結果取得手段と、
前記特定結果取得手段によって取得された前記医薬品の特定結果を提示する特定結果提示手段と、を備え、
前記サーバは、
前記端末装置において取得された前記画像に基づいて、候補となる複数の医薬品の名称及び外観情報を含むデータから、当該画像の被写体である医薬品を特定する特定実行手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、医薬品の誤認をより適切に防ぐことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る医療情報提供システムのシステム構成を示す図である。
【
図2】医療情報提供システムに含まれる各装置の具体的構成を示すブロック図である。
【
図3】端末装置の機能を示す模式図であり、
図3(A)は医薬品の実物の画像を撮像する機能を示す模式図、
図3(B)は医薬品の特定結果を表示する機能を示す模式図である。
【
図4】医薬品DBのデータ内容を示す模式図である。
【
図5】特定実行部における医薬品の特定処理例を示す模式図である。
【
図6】端末装置が実行する医薬品特定要求処理の流れを説明するフローチャートである。
【
図7】医薬品DBサーバが実行する医薬品特定処理の流れを説明するフローチャートである。
【
図8】医療情報提供システムを単体の情報処理装置によって実現する場合の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[医療情報提供システム1のシステム構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る医療情報提供システム1のシステム構成を示す図である。
図1に示すように、医療情報提供システム1は、端末装置10と、医薬品データベースサーバ(医薬品DBサーバ)20と、を含んで構成され、端末装置10と医薬品DBサーバ20とは、ネットワーク30によって通信可能に構成されている。
端末装置10は、スマートフォン、携帯電話機、タブレット端末あるいはPC(Personal Computer)等の撮像機能を備えた情報処理装置によって構成される。端末装置10は、医薬品の実物の画像を撮像し、医薬品DBサーバ20に対して、撮像された医薬品を特定するための特定要求を送信する。特定要求には、医薬品の実物の画像データが含まれている。そして、端末装置10は、医薬品DBサーバ20から医薬品の特定結果を受信し、受信した特定結果を表示する。
【0010】
医薬品DBサーバ20は、PCあるいはサーバ専用装置等の情報処理装置によって構成される。医薬品DBサーバ20は、各種医薬品について、医薬品の名称と、医薬品の外観に関する情報(以下、「外観情報」と呼ぶ。)と、医薬品の薬剤情報とが対応付けて格納された医薬品データベース(医薬品DB)を備えている。医薬品の名称には、一般名及び商品名が含まれる。また、医薬品の外観情報には、医薬品の立体的形状を識別する情報(少なくとも上面、正面及び側面の画像や、3面図あるいは6面図や、厚み、直径、長さ、幅等の数値データ及び剤型や、割線の有無等)と、薬剤表面に刻印・印字される記号(剤型識別コード等)と、薬剤表面またはヒートシールに刻印・印字される医薬品の名称と、薬剤の色とが含まれる。医薬品の薬剤情報には、用法・用量、効能・効果、組成・性状及び服用上の注意事項等、薬剤の添付文書等に記載された薬剤に関する各種情報が含まれる。医薬品DBサーバ20は、端末装置10から医薬品の特定要求を受け付け、医薬品の画像データを基に医薬品DBに格納されている医薬品の外観情報を検索し、最も一致度が高い医薬品を特定する。そして、医薬品DBサーバ20は、特定結果を端末装置10に送信する。このとき、特定結果として、医薬品DBサーバ20から端末装置10に医薬品の名称を送信することや、医薬品の名称及び薬剤情報を送信することが可能である。
なお、医薬品メーカーまたは行政機関による医薬品の名称、医薬品の外観情報及び薬剤情報の更新に対応して、医薬品DBの内容は逐次更新される。
【0011】
ネットワーク30は、インターネットやVPN(Virtual Private Network)等の通信ネットワークによって構成され、端末装置10及び医薬品DBサーバ20によって送受信される情報を伝達する。
【0012】
[各装置の具体的構成]
次に、医療情報提供システム1における各装置の具体的構成について説明する。
図2は、医療情報提供システム1に含まれる各装置の具体的構成を示すブロック図である。
【0013】
[端末装置10の具体的構成]
図2に示すように、医療情報提供システム1において、端末装置10は、ハードウェア構成として、各種演算処理を行う制御部11と、各種情報を記憶する記憶部12と、タッチパネル等により実現される入力部13と、ディスプレイを含む表示部14と、ネットワークを介して他の装置との間で行う通信を制御する通信部15と、包装された医薬品あるいは医薬品の実物の画像等を撮像する撮像部16とを備える。このような端末装置10は、各種プログラムが記憶部12にインストールされており、制御部11がこれらプログラムに従い動作することで、医薬品の特定要求機能を発揮する。
また、端末装置10は、このようなハードウェア構成において、後述する医薬品特定要求処理のためのプログラムを実行することにより、制御部11に、撮像支援部11aと、画像データ取得部11bと、医薬品特定要求部11cと、特定結果取得部11dと、特定結果提示部11eとを形成する。さらに、端末装置10は、記憶部12に、画像データ記憶部12aを形成する。
図3は、端末装置10の機能を示す模式図であり、
図3(A)は医薬品の実物の画像を撮像する機能を示す模式図、
図3(B)は医薬品の特定結果を表示する機能を示す模式図である。
以下、
図3を適宜参照しながら、端末装置10の機能について説明する。
【0014】
画像データ記憶部12aには、端末装置10において撮像された医薬品の実物の画像のデータや、他の装置において撮像された医薬品の実物の画像のデータが記憶される。これら医薬品の実物の画像のデータには、撮像時の合焦距離、レンズの焦点距離、絞り、ホワイトバランス等の各種パラメータを含むことができる。
【0015】
撮像支援部11aは、端末装置10において、ユーザ(患者あるいは薬剤師等)が医薬品の実物の画像を撮像する際に、撮像を支援するための補助枠を表示する。この補助枠は、医薬品の実物の撮像画像から、その医薬品の外観的特徴を認識するために適した被写体の大きさ、撮影方向等をガイドするための枠である。
図3(A)に示すように、撮像支援部11aは、1つの医薬品の実物の画像を撮像する際に、被写体の撮影方向等を異ならせた補助枠を順次表示し、ユーザに各補助枠に医薬品の実物の画像を当て嵌めて撮影するよう促すことができる。なお、補助枠の形は錠剤あるいはカプセル等で異なるものとしてもよく、例えばユーザが被写体となる医薬品のタイプを入力して補助枠を切り換えること等が可能である。
【0016】
画像データ取得部11bは、端末装置10において撮像された医薬品の実物の画像のデータを取得し、画像データ記憶部12aに記憶する。また、画像データ取得部11bは、他の装置において撮像された医薬品の実物の画像のデータを、通信部15等を介して取得し、画像データ記憶部12aに記憶する。このとき、画像データ取得部11bは、医薬品の実物の画像が撮像された際の各種パラメータ(撮像時の合焦距離、レンズの焦点距離、絞り、ホワイトバランス等)が取得可能な場合、これらのパラメータを併せて取得し、Exif形式のデータ等として、医薬品の実物の画像のデータに含めて記憶する。
【0017】
医薬品特定要求部11cは、画像データ取得部11bによって取得された医薬品の実物の画像のデータを対象として、被写体となっている医薬品を特定するための特定要求を医薬品DBサーバ20に送信する。このとき、医薬品特定要求部11cから送信される特定要求には、撮影時の各種パラメータを含む医薬品の実物の画像のデータが含まれている。
【0018】
特定結果取得部11dは、医薬品DBサーバ20から送信された医薬品の特定結果を受信する。このとき受信される医薬品の特定結果は、医薬品特定要求部11cから送信された特定要求における医薬品の実物の画像の被写体が、いずれの医薬品であるかを示す情報(即ち、医薬品の一般名称及び商品名)を少なくとも含んでいる。また、医薬品の特定結果として、医薬品の薬剤情報を含めることとしてもよい。さらに、医薬品の特定結果を、最も一致度が高い1つの医薬品とすることの他、該当する可能性のある複数の医薬品及びそれらの可能性の度合い(パーセンテージ)とすることも可能である。
【0019】
特定結果提示部11eは、特定結果取得部11dによって受信された医薬品の特定結果を、表示部14のディスプレイに表示することにより、ユーザに提示する。例えば、
図3(B)に示すように、医薬品の特定結果として、医薬品の実物の画像から吹き出しの形式で医薬品名及び薬剤情報を表示することができる。
図3(B)に示す例では、特定された医薬品名として「ZZZ錠 10mg」が表示され、特定された薬剤情報として、薬剤の「剤型」、「薬剤コード(記号)」、「用法・用量」、「効能・効果」、「組成・性状」等が表示されている。なお、特定結果提示部11eが、医薬品の特定結果を音声によってユーザに提示することとしてもよい。また、特定結果提示部11eが、医薬品の特定結果を紙等の印刷媒体に印刷してユーザに提示することとしてもよい。
【0020】
[医薬品DBサーバ20の具体的構成]
図2に示すように、医療情報提供システム1において、医薬品DBサーバ20は、ハードウェア構成として、各種演算処理を行う制御部21と、各種情報を記憶する記憶部22と、キーボード等により実現される入力部23と、ディスプレイを含む表示部24と、ネットワークを介して他の装置との間で行う通信を制御する通信部25とを備える。このような医薬品DBサーバ20は、各種プログラムが記憶部22にインストールされており、制御部21がこれらプログラムに従い動作することで、医薬品の特定機能を発揮する。
また、医薬品DBサーバ20は、このようなハードウェア構成において、後述する医薬品特定処理のためのプログラムが実行されることにより、制御部21に、特定要求受信部21aと、特定実行部21bと、特定結果送信部21cと、データベース管理部21dとが実現される。また、医薬品DBサーバ20の記憶部22には、医薬品DB22aが記憶されている。
【0021】
図4は、医薬品DB22aのデータ内容を示す模式図である。
図4に示すように、医薬品DBには、医薬品の名称(一般名及び商品名)と、医薬品の外観情報と、医薬品の薬剤情報とが対応付けて記憶されている。なお、
図4においては、データベース内のデータを一部省略して示している。
医薬品の名称は、医薬品の成分を表す一般名及びその医薬品に付された商品名を含んでいる。
医薬品の外観情報は、医薬品の立体的形状を識別する情報(薬剤または薬剤の包装の少なくとも上面、正面及び側面の画像や、3面図あるいは6面図や、寸法を表す厚み、直径、長さ、幅等の数値データ及び剤型や、割線の有無等)と、薬剤表面に刻印・印字される記号(剤型識別コード等)と、薬剤表面や、ヒートシールまたは分包紙(漢方薬の銀紙等)等の包装に刻印・印字される医薬品の名称(印字名称)と、薬剤の色と、包装の材質(紙、ビニール、銀紙)及び色とを含んでいる。
医薬品の薬剤情報は、用法・用量、効能・効果、組成・性状及び服用上の注意事項等、薬剤の添付文書等に記載された薬剤に関する各種情報を含んでいる。
【0022】
図2に戻り、特定要求受信部21aは、端末装置10の医薬品特定要求部11cから送信された医薬品を特定するための特定要求を受信し、特定要求に含まれる医薬品の実物の画像のデータ及び撮影時の各種パラメータを抽出する。
【0023】
特定実行部21bは、特定要求受信部21aによって受信された特定要求に含まれる医薬品の実物の画像のデータ及び撮影時の各種パラメータに基づいて、医薬品DB22aを検索し、医薬品の実物の画像の被写体が該当する可能性のある医薬品を抽出する。そして、特定実行部21bは、医薬品の実物の画像の被写体と一致度が最も高い医薬品を特定する。
図5は、特定実行部21bにおける医薬品の特定処理例を示す模式図である。
図5に示すように、特定実行部21bは、薬剤または薬剤の包装における文字の検出、薬剤または薬剤の包装の形態及び色の検出、薬剤または薬剤の包装の寸法の検出、あるいは、薬剤の画像のマッチングによって、医薬品の実物の画像の被写体を特定する。
【0024】
具体的には、特定実行部21bは、以下の特定基準に従って、医薬品の実物の画像の被写体がいずれの医薬品であるかを特定する。
即ち、特定実行部21bは、
図5(A)に示すように、特定要求に含まれる医薬品の実物の画像のデータにおいて、薬剤表面に刻印・印字される記号(例えば、
図5(A)における薬剤裏面の「ZZZ」)あるいは薬剤表面、ヒートシールまたは分包紙に刻印・印字される医薬品の名称(例えば、
図5(A)における薬剤上面の「C-XXX」)を検出し、医薬品DBにおいて対応する文字データを有する医薬品を、被写体となっている医薬品が該当する可能性のある医薬品として特定する(特定基準(1))。
【0025】
また、特定実行部21bは、
図5(B)に示すように、特定要求に含まれる医薬品の実物の画像のデータから、被写体となっている医薬品の剤型(錠剤あるいはカプセル等)、割線の有無、薬剤の色、包装の材質及び色等の形態及び色(例えば、
図5(B)における認識結果「錠剤・白色・割線あり」)を検出し、医薬品DBにおいて対応する形態及び色を有する医薬品を、被写体となっている医薬品が該当する可能性のある医薬品として特定する(特定基準(2))。
【0026】
さらに、特定実行部21bは、
図5(C)に示すように、特定要求に含まれる医薬品の実物の画像のデータ及び撮影時の各種パラメータから、被写体となっている薬剤または薬剤の包装の寸法(厚み、直径、長さ、幅等の数値)を検出し、医薬品DBにおいて対応する薬剤または薬剤の包装の寸法を有する医薬品を、被写体となっている医薬品が該当する可能性のある医薬品として特定する(特定基準(3))。ここで、薬剤または薬剤の包装の寸法については、医薬品の実物の画像における被写体像のサイズと、撮影時の各種パラメータとに基づいて、実際の寸法を算出することができる。また、ヒートシールに包装された薬剤等、透明な材質で包装されている薬剤の場合、薬剤の包装の寸法と、包装された薬剤の寸法とをそれぞれ算出してもよい。
【0027】
また、特定実行部21bは、
図5(D)に示すように、特定要求に含まれる医薬品の実物の画像のデータを、医薬品DBに記憶されている薬剤または薬剤の包装の上面、正面及び側面の画像や、3面図あるいは6面図とマッチングし、一致度が高い医薬品を被写体となっている医薬品が該当する可能性のある医薬品として特定する(特定基準(4))。本実施形態では、医薬品DBにおいて、医薬品の実物の画像のデータと最も一致度が高い医薬品を、被写体となっている医薬品として特定する。医薬品の実物の画像のデータと医薬品DBに記憶されている薬剤または薬剤の包装の上面、正面及び側面の画像や、3面図あるいは6面図とをマッチングする場合、画像や図面等における特徴点(
図5(D)における破線の丸印部分)の一致する割合に基づいて、一致度を算出することができる。
【0028】
なお、特定実行部21bは、特定基準(1)~(4)のうち、医薬品の実物の画像のデータにおいて利用可能な基準を用いて、被写体となっている医薬品を特定する。この場合、例えば、特定基準(1)または特定基準(4)は、これら単独で医薬品を特定することが可能であり、特定基準(2)及び特定基準(3)は、これらの組み合わせによって医薬品を特定することができる。
【0029】
特定結果送信部21cは、特定実行部21bによる特定結果(特定要求における医薬品の実物の画像の被写体と最も一致度が高い医薬品の一般名称及び商品名)を端末装置10に送信する。なお、医薬品の特定結果として、医薬品の薬剤情報を含めることや、医薬品の特定結果を受信した端末装置10から医薬品の薬剤情報の送信要求が行われた場合に、医薬品の薬剤情報を端末装置10に送信することも可能である。
【0030】
データベース管理部21dは、医薬品DBに記憶されている各医薬品のデータを管理する。例えば、データベース管理部21dは、医薬品メーカーまたは行政機関のサーバに逐次アクセスし、医薬品DBに記憶されている医薬品のデータを逐次更新したり、新しい医薬品のデータを登録したりする。なお、データベース管理部21dは、医薬品の剤型変更等によって、医薬品のデータが更新される場合、既存のデータを破棄することなく、旧態の医薬品のデータとして保持しつつ、新たなデータを追加する。
【0031】
[動作]
次に、医療情報提供システム1の動作を説明する。
[端末装置10の処理]
図6は、端末装置10が実行する医薬品特定要求処理の流れを説明するフローチャートである。
医薬品特定要求処理は、入力部13を介して医薬品特定要求処理の実行が指示入力されることに対応して開始される。
医薬品特定要求処理が開始されると、ステップS1において、画像データ取得部11bは、端末装置10において撮像された医薬品の実物の画像のデータまたは他の装置において撮像された医薬品の実物の画像のデータを取得し、画像データ記憶部12aに記憶する。なお、ステップS1において、端末装置10において医薬品の実物のデータが撮像される場合、撮像支援部11aによって撮影を支援するための補助枠が表示される。
【0032】
ステップS2において、画像データ取得部11bによって取得された医薬品の実物の画像のデータを対象として、被写体となっている医薬品を特定するための特定要求を医薬品DBサーバ20に送信する。
ステップS3において、特定結果取得部11dは、医薬品DBサーバ20から送信された医薬品の特定結果を受信する。
ステップS4において、特定結果提示部11eは、特定結果取得部11dによって受信された医薬品の特定結果を、表示部14のディスプレイに表示することにより、ユーザに提示する。
ステップS4の後、医薬品特定要求処理は終了となる。
【0033】
[医薬品DBサーバ20の処理]
図7は、医薬品DBサーバ20が実行する医薬品特定処理の流れを説明するフローチャートである。
医薬品特定処理は、入力部23を介して医薬品特定処理の実行が指示入力されることに対応して開始される。
ステップS11において、特定要求受信部21aは、端末装置10から送信された医薬品を特定するための特定要求を受信する。このとき受信される特定要求には、撮影時の各種パラメータを含む医薬品の実物の画像のデータが含まれている。
ステップS12において、特定実行部21bは、医薬品を特定するための特定要求に基づいて医薬品DBを検索し、医薬品の実物の画像の被写体が該当する可能性のある医薬品を抽出する。さらに、特定実行部21bは、医薬品の実物の画像の被写体と一致度が最も高い医薬品を特定する。このとき、特定実行部21bは、上述のように、特定基準(1)~(4)に従って、医薬品の実物の画像の被写体がいずれの医薬品であるかを特定する。
【0034】
ステップS13において、特定実行部21bは、特定要求に含まれる医薬品の実物の画像の被写体が、医薬品DBに記憶されているいずれかの医薬品のデータと一致するか否かの判定を行う。
特定要求に含まれる医薬品の実物の画像の被写体が、医薬品DBに記憶されているいずれかの医薬品のデータと一致しない場合、ステップS13においてNOと判定されて、処理はステップS14に移行する。
一方、特定要求に含まれる医薬品の実物の画像の被写体が、医薬品DBに記憶されているいずれかの医薬品のデータと一致する場合、ステップS13においてYESと判定されて、処理はステップS15に移行する。
【0035】
ステップS14において、特定結果送信部21cは、特定要求に含まれる医薬品の実物の画像の被写体が、医薬品DBに記憶されているいずれの医薬品のデータとも一致しない旨を示すエラーメッセージを端末装置10に送信する。
ステップS15において、特定実行部21bは、医薬品DB22aに記憶されている医薬品のデータのうち、医薬品の実物の画像の被写体が該当する可能性のある医薬品を抽出する。
【0036】
ステップS16において、特定実行部21bは、ステップS15において抽出された医薬品のうち、医薬品の実物の画像の被写体と一致度が最も高い医薬品を特定する。
ステップS17において、特定結果送信部21cは、特定実行部21bによる特定結果(特定要求における医薬品の実物の画像の被写体と最も一致度が高い医薬品の一般名称及び商品名)を端末装置10に送信する。
ステップS14及びステップS17の後、医薬品特定処理が繰り返される。
【0037】
このような処理により、医療情報提供システム1においては、端末装置10で医薬品の実物の画像を撮像し、撮影時の各種パラメータと併せて、医薬品DBサーバ20に特定要求を行うことにより、医薬品DBサーバ20において、医薬品の実物の画像から文字あるいは記号、薬剤等の形態及び色、薬剤等の寸法、あるいは、薬剤の画像の特徴等が検出される。そして、医薬品DBサーバ20において、医薬品の実物の画像から検出されたデータを基に、医薬品DB22aが検索され、医薬品の実物の画像の被写体がいずれの医薬品であるかが特定される。即ち、包装された薬剤あるいは裸錠の実物の画像から、その被写体がいずれの医薬品であるかを特定することができる。これにより、例えば、患者持参薬を薬剤師が鑑別する場合に、より正確な鑑別を行うことが可能となる。また、患者は、裸錠とした薬剤がいずれの薬剤であるかを容易に判別することができる。
したがって、薬剤師や患者等において、医薬品の誤認をより適切に防ぐことが可能となる。
【0038】
[変形例1]
上述の実施形態において、特定実行部21bが、医薬品の実物の画像の被写体と一致度が最も高い医薬品を特定する場合、医薬品DBに記憶された各医薬品のデータについて、医薬品の実物の画像の被写体が各特定基準を充足する度合いをスコア化することにより、全ての特定基準の総合スコア(スコアの合計値等)が最も高い医薬品を、被写体となっている医薬品として特定することが可能である。
これにより、多様な観点からの総合的な判断によって、医薬品の実物の画像の被写体がいずれの医薬品であるかを特定することが可能となる。
【0039】
[変形例2]
上述の実施形態において、特定実行部21bが、医薬品の実物の画像の被写体と一致度が最も高い医薬品を特定する場合、各特定基準に優先順位を設定しておき、優先順位の順番で、医薬品の実物の画像の被写体がいずれの医薬品であるかを特定していくことが可能である。
この場合、優先順位の高い特定基準によって、医薬品の実物の画像の被写体を1つの医薬品に特定できなかった場合、次に優先順位の高い特定基準によって医薬品の実物の画像の被写体を特定する。このとき、より優先順位の高い特定基準による特定結果を用いて、次に優先順位の高い特定基準による特定を補助することとしてもよい。例えば、最も優先順位の高い特定基準によって、医薬品の実物の画像の被写体が医薬品X1~X5のいずれかであることが判明している場合に、次に優先順位の高い特定基準によって、医薬品の実物の画像の被写体が医薬品X2,X7のいずれかであると特定された場合、医薬品の実物の画像の被写体を医薬品X2であると特定することができる。
これにより、より効率的に医薬品の実物の画像の被写体がいずれの医薬品であるかを特定することができる。
【0040】
[変形例3]
上述の実施形態においては、クラウド型の医療情報提供システム1を構築し、端末装置10において撮像された医薬品の実物の画像を、医薬品DBサーバ20において、いずれの医薬品であるか特定するものとした。
これに対し、医薬品を特定する機能を端末装置10に備えることにより、医療情報提供システム1の機能を単体の情報処理装置で実現(即ち、スタンドアローン型のシステムとして実現)することとしてもよい。
この場合、医薬品DBサーバ20の医薬品DB22a及び特定実行部21bの機能を端末装置10に備えることとすればよい。
図8は、医療情報提供システム1を単体の情報処理装置によって実現する場合の構成を示す模式図である。
図8においては、
図2に示す医薬品DBサーバ20の主要な機能的構成を端末装置10に備えることにより、端末装置10単体で医療情報提供システム1の機能を実現している。
【0041】
具体的には、端末装置10は、
図2における各機能的構成のうち、撮像支援部11aと、画像データ取得部11bと、特定実行部21bと、特定結果提示部11eと、医薬品DB22aとを備えている。なお、図示しないが、
図2に示す構成と同様に、記憶部12に画像データ記憶部12aを形成し、医薬品の実物の画像のデータを適宜記憶する構成としてもよい。
図8に示す構成とした場合、単体の装置によって医薬品の特定を行うことができるため、ネットワークを使用することなく、薬剤師や患者は、特定対象とする医薬品がいずれの医薬品であるかを簡単に確認することができる。
【0042】
以上のように構成される医療情報提供システム1は、端末装置10と、医薬品DBサーバ20とを備える。端末装置10は、画像データ取得部11bと、特定結果取得部11dと、特定結果提示部11eとを備える。医薬品DBサーバ20は、特定実行部21bを備える。
端末装置10において、画像データ取得部11bは、特定の対象となる医薬品を被写体とする画像を取得する。
特定結果取得部11dは、医薬品DBサーバ20に被写体の特定を要求することにより得られる特定結果を取得する。
特定結果提示部11eは、特定結果取得部11dによって取得された医薬品の特定結果を提示する。
医薬品DBサーバ20において、特定実行部21bは、端末装置10において取得された画像に基づいて、候補となる複数の医薬品の名称及び外観情報を含むデータから、当該画像の被写体である医薬品を特定する。
これにより、医療情報提供システム1においては、端末装置10で医薬品の実物の画像を撮像し、医薬品DBサーバ20に特定要求を行うことにより、医薬品DBサーバ20において、医薬品の実物の画像の被写体がいずれの医薬品であるかが特定される。
したがって、薬剤師や患者等において、医薬品の誤認をより適切に防ぐことが可能となる。
【0043】
医薬品DBサーバ20は、医薬品DB22aを備える。
医薬品DB22aは、候補となる複数の医薬品の名称と、当該複数の医薬品の立体的形状を識別する情報及び当該医薬品に関する文字情報を少なくとも含む外観情報とを記憶する。
特定実行部21bは、画像の被写体がいずれの医薬品であるかを特定するための特定基準に基づいて、端末装置10において取得された画像の被写体である医薬品を特定する。
これにより、医薬品の立体的形状を識別する情報及び当該医薬品に関する文字情報を利用して、画像の被写体がいずれの医薬品であるかを特定することができる。
【0044】
医療情報提供システム1においては、画像の被写体がいずれの医薬品であるかを特定するための複数の特定基準が設定される。
特定実行部21bは、複数の特定基準の少なくともいずれかに基づいて、画像の被写体である医薬品を特定する。
これにより、複数の特定基準を利用して、より確実に画像の被写体である医薬品を特定することが可能となる。
【0045】
複数の特定基準には、薬剤または薬剤の包装に刻印若しくは印字される文字の認識結果に基づく基準が含まれる。
これにより、薬剤または薬剤の包装に表された文字を利用して、より正確かつ確実に医薬品を特定することが可能となる。
【0046】
複数の特定基準には、候補となる薬剤または薬剤の包装の形態及び色と画像の被写体との一致度合いに基づく基準が含まれる。
これにより、薬剤または薬剤の包装の形態及び色から医薬品を特定することが可能となる。
【0047】
複数の特定基準には、候補となる薬剤または薬剤の包装の寸法と画像から認識される被写体の寸法との一致度合いに基づく基準が含まれる。
これにより、薬剤または薬剤の包装の寸法から医薬品を特定することが可能となる。
【0048】
複数の特定基準には、候補となる薬剤または薬剤の包装の画像または図面と取得された画像との一致度合いに基づく基準が含まれる。
これにより、薬剤または薬剤の包装の画像の特徴から医薬品を特定することが可能となる。
【0049】
特定実行部21bは、候補となる複数の医薬品の名称及び外観情報を含むデータにおいて、特定基準に一致する度合いが設定値より高い複数の医薬品を画像の被写体である医薬品として特定する。
これにより、画像の被写体である医薬品として可能性が高いものをユーザに提示することが可能となる。
【0050】
特定実行部21bは、候補となる複数の医薬品の名称及び外観情報を含むデータにおいて、特定基準に一致する度合いが最も高い医薬品を前記画像の被写体である医薬品として特定する。
これにより、画像の被写体である医薬品を明確にユーザに提示することが可能となる。
【0051】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、医療情報提供システム1において特定の対象とする医薬品には、医薬品に関連する器具(吸引器)等を含めることもできる。
これにより、薬剤等に加え、医薬品に関連して使用される器具等、広範な対象について、その対象物を容易に特定できる。
【0052】
また、上述の実施形態において、医薬品の特定結果を端末装置10において提示する場合、
図3(B)に示すように、医薬品の画像及び特定結果から構成される表示画面によって提示するものとしたが、これに限られない。例えば、端末装置10においてライブビュー表示されている医薬品の画像に関連付けて、AR(Augmented Reality)によって特定結果を表示することとしてもよい。
これにより、特定対象となっている医薬品の実物がいずれであるかをよりわかりやすい形態で示しつつ、医薬品の特定結果を提示することができる。
また、上述の各実施形態及び変形例を適宜組み合わせて、医療情報提供システム1を構成することが可能である。
【0053】
上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実行させることもできる。
換言すると、機能的構成は例示に過ぎず、特に限定されない。即ち、上述した一連の処理を全体として実行できる機能が医療情報提供システム1を構成するいずれかのコンピュータに備えられていれば足り、この機能を実現するためにどのような機能ブロックを用いるのかは特に示した例に限定されない。
また、1つの機能ブロックは、ハードウェア単体で構成してもよいし、ソフトウェア単体で構成してもよいし、それらの組み合わせで構成してもよい。
【0054】
また、上述した一連の処理を実行するためのプログラムを含む記録媒体は、ユーザにプログラムを提供するために装置本体とは別に配布されるリムーバブルメディアにより構成されるだけでなく、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに提供される記録媒体等で構成される。
【0055】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限るものではない。また、本実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0056】
1 医療情報提供システム、10 端末装置、11,21 制御部、11a 撮像支援部、11b 画像データ取得部、11c 医薬品特定要求部、11d 特定結果取得部、11e 特定結果提示部、12,22 記憶部、12a 、画像データ記憶部、13,23 入力部、14,24 表示部、15,25 通信部、16 撮像部、20 医薬品DBサーバ、21a 特定要求受信部、21b 特定実行部、21c 特定結果送信部、21d データベース管理部、22a 医薬品DB、30 ネットワーク