(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-27
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】鉄道用信号保安システム及び制御方法
(51)【国際特許分類】
B61L 27/00 20220101AFI20220128BHJP
B61L 19/06 20060101ALI20220128BHJP
【FI】
B61L27/00 K
B61L19/06
(21)【出願番号】P 2017161915
(22)【出願日】2017-08-25
【審査請求日】2020-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001292
【氏名又は名称】株式会社京三製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【氏名又は名称】井上 一
(72)【発明者】
【氏名】藤井 勝紀
(72)【発明者】
【氏名】植田 寛
(72)【発明者】
【氏名】横山 祐人
(72)【発明者】
【氏名】藤村 信広
(72)【発明者】
【氏名】西中 唯史
【審査官】今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-036259(JP,A)
【文献】特開2009-217488(JP,A)
【文献】特開2004-276665(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 27/00
B61L 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信フィールドとして、監理装置から論理装置への指示が設定される指示部と、前記論理装置から前記監理装置への応答が設定される応答部と、信号保安処理の実行モードである通常モードにおいて授受するデータそれぞれの格納位置が割り付けられた通信情報部とを少なくとも含む通信フレームを、前記監理装置および複数の前記論理装置の間で周回させる通信方式で通信接続されて構成された鉄道用信号保安システムであって、
前記論理装置は、
受信した前記通信フレーム中の前記指示部に含まれるモード切替指示がローディング(以下「LD」と略称する)を行う際のデータ管理モードへの切替指示に設定されていた場合に、動作モードを前記データ管理モードへ切り替える制御を行うモード切替ステップと、
前記モード切替ステップでの切り替えが完了した場合に、
受信した前記通信フレーム中の前記応答部
にモード切替完了応答を設定して
当該通信フレームを送信する制御を行うモード切替完了応答ステップと、
受信した前記通信フレーム中の前記指示部にLD指示が設定されていた場合に、前記通常モードにおいて授受するデータそれぞれの格納位置をLDプログラム又はLDデータ(以下「LD情報」という)の格納位置として割り付けを変更したデータ管理モード用割り付けが適用されていると判断して、当該通信フレーム中の前記通信情報部に格納されている前記LD情報を取得する制御を行うLDステップと、
前記LD情報の取得が完了した場合に、
受信した前記通信フレーム中の前記応答部
に取得完了応答を設定して
当該通信フレームを送信する制御を行うLD完了応答ステップと、
を実行し、
前記監理装置は、
前記モード切替指示を前記データ管理モードへの切替指示に設定して前記通信フレームを送信する制御を行うモード切替指示ステップと、
受信した前記通信フレーム中の
前記指示部に前記データ管理モードへの切替指示が設定されてあり、且つ、当該通信フレーム中の前記応答部
に前記モード切替完了応答が設定されていた場合に、
前記データ管理モードへの切替指示と前記LD指示
とを前記指示部に設定するとともに、前記データ管理モード用割り付けに基づいて前記通信情報部に前記LD情報を格納して前記通信フレームを送信する制御を行うLD指示ステップと、
を実行する、
鉄道用信号保安システム。
【請求項2】
通信フィールドとして、監理装置から論理装置への指示が設定される指示部と、前記論理装置から前記監理装置への応答が設定される応答部と、信号保安処理の実行モードである通常モードにおいて授受するデータそれぞれの格納位置が割り付けられた通信情報部とを少なくとも含む通信フレームを、前記監理装置および複数の前記論理装置の間で周回させる通信方式で通信接続されて構成された鉄道用信号保安システムの制御方法であって、
前記論理装置は、
受信した前記通信フレーム中の前記指示部に含まれるモード切替指示がローディング(以下「LD」と略称する)を行う際のデータ管理モードへの切替指示に設定されていた場合に、動作モードを前記データ管理モードへ切り替える制御を行うモード切替ステップと、
前記モード切替ステップでの切り替えが完了した場合に、
受信した前記通信フレーム中の前記応答部
にモード切替完了応答を設定して
当該通信フレームを送信する制御を行うモード切替完了応答ステップと、
受信した前記通信フレーム中の前記指示部にLD指示が設定されていた場合に、前記通常モードにおいて授受するデータそれぞれの格納位置をLDプログラム又はLDデータ(以下「LD情報」という)の格納位置として割り付けを変更したデータ管理モード用割り付けが適用されていると判断して、当該通信フレーム中の前記通信情報部に格納されている前記LD情報を取得する制御を行うLDステップと、
前記LD情報の取得が完了した場合に、
受信した前記通信フレーム中の前記応答部
に取得完了応答を設定して
当該通信フレームを送信する制御を行うLD完了応答ステップと、
を実行し、
前記監理装置は、
前記モード切替指示を前記データ管理モードへの切替指示に設定して前記通信フレームを送信する制御を行うモード切替指示ステップと、
受信した前記通信フレーム中の
前記指示部に前記データ管理モードへの切替指示が設定されてあり、且つ、当該通信フレーム中の前記応答部に前記モード切替完了応答が設定されていた場合に、
前記データ管理モードへの切替指示と前記LD指示
とを前記指示部に設定するとともに、前記データ管理モード用割り付けに基づいて前記通信情報部に前記LD情報を格納して前記通信フレームを送信する制御を行うLD指示ステップと、
を実行する、
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道用信号保安システム等に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道における電子連動装置やCTC(Centralized Traffic Control)、ATC(Automatic Train Control)等の信号保安システムは、概括すると、LAN(Local Area Network)に複数の論理装置が接続された構成を有している。論理装置は、信号保安システム上、論理部とも呼ばれるが、本明細書では1つの論理部のことを1台の論理装置とみなして説明する。論理装置には様々な種類があり、各論理装置は、その役割に応じて、また電子連動装置やCTC、ATC等に応じて、特有の機能を有して構成されている。但し、何れの論理装置にも共通していえることが、その論理装置固有の機能を実現するためのプログラム及びデータを記憶しており、当該プログラム及びデータに基づきCPU(Central Processing Unit)が演算制御を行っている点である。これらのプログラムやデータは機能の改善や信号保安設備の改修等に応じて更新(交換ともいえる)される場合がある。論理装置に記憶されているプログラムやデータを更新したり、新たに書き込むことを、ローディングと呼んで説明する。
【0003】
特許文献1には、鉄道用信号保安システムの一種である電子連動装置について、各論理装置のデータ(連動データ)を、LANを介して監理装置(モニタ・試験部3)から送信されたデータに更新する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許文献1の技術は、データのローディングのみを対象としており、プログラムのローディングは想定していない。また、特許文献1の技術は、LANに接続された全ての論理装置用のデータを同時に送信し、各論理装置では、当該データを受信する全装置一括ローディングと呼べる技術である。
【0006】
論理装置のプログラムは、データに比べてサイズが大きい。このため、特許文献1の技術を利用してプログラムをローディングする場合、全ての論理装置用のプログラムを同時に送信するため、プログラムの送信データ量が多く、ローディングに非常に時間を要するため、現実的ではなかった。
【0007】
また、一般的に、プログラムの更新頻度はデータに比べて低い(逆にいうと、データの更新頻度がプログラムに比べて高い)。そのため、従来においては、データのローディングのみを対象としていた。例えば、特許文献1に記載されている電子連動装置の場合、例えば、各駅で共通して使用する連動機能などを共通の標準プログラムとして実装しておき、駅毎に異なる連動条件等を連動データとして個々の連動装置に与えるといった運用においては、多くの場合、プログラムを更新することなく連動データの更新のみを行えば対応できるからである。
【0008】
プログラムの更新を行う場合には、保守作業員が機器室に出向き、論理装置の制御ボード(CPUボードとも呼ばれる)を回収した後、制御ボードに実装されたプログラムを更新する作業を行い、再び機器室にて制御ボードを論理装置に装着するといった一連の作業を行っていた。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、鉄道用信号保安システムにおいて、ローディングに要する時間を短縮することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための第1の発明は、
通信フィールドとして、監理装置から論理装置への指示が設定される指示部と、前記論理装置から前記監理装置への応答が設定される応答部と、信号保安処理の実行モードである通常モードにおいて授受するデータそれぞれの格納位置が割り付けられた通信情報部とを少なくとも含む通信フレームを、前記監理装置および複数の前記論理装置の間で周回させる通信方式で通信接続されて構成された鉄道用信号保安システムであって、
前記論理装置は、
受信した前記通信フレーム中の前記指示部に含まれるモード切替指示がローディング(以下「LD」と略称する)を行う際のデータ管理モードへの切替指示に設定されていた場合に、動作モードを前記データ管理モードへ切り替える制御を行うモード切替ステップと、
前記モード切替ステップでの切り替えが完了した場合に、前記応答部に、モード切替完了応答を設定して前記通信フレームを送信する制御を行うモード切替完了応答ステップと、
受信した前記通信フレーム中の前記指示部にLD指示が設定されていた場合に、前記通常モードにおいて授受するデータそれぞれの格納位置をLDプログラム又はLDデータ(以下「LD情報」という)の格納位置として割り付けを変更したデータ管理モード用割り付けが適用されていると判断して、当該通信フレーム中の前記通信情報部に格納されている前記LD情報を取得する制御を行うLDステップと、
前記LD情報の取得が完了した場合に、前記応答部に、取得完了応答を設定して前記通信フレームを送信する制御を行うLD完了応答ステップと、
を実行し、
前記監理装置は、
前記モード切替指示を前記データ管理モードへの切替指示に設定して前記通信フレームを送信する制御を行うモード切替指示ステップと、
受信した前記通信フレーム中の前記応答部に、前記モード切替完了応答が設定されていた場合に、前記LD指示を前記指示部に設定するとともに、前記データ管理モード用割り付けに基づいて前記通信情報部に前記LD情報を格納して前記通信フレームを送信する制御を行うLD指示ステップと、
を実行する、
鉄道用信号保安システムである。
【0011】
他の発明として、
通信フィールドとして、監理装置から論理装置への指示が設定される指示部と、前記論理装置から前記監理装置への応答が設定される応答部と、信号保安処理の実行モードである通常モードにおいて授受するデータそれぞれの格納位置が割り付けられた通信情報部とを少なくとも含む通信フレームを、前記監理装置および複数の前記論理装置の間で周回させる通信方式で通信接続されて構成された鉄道用信号保安システムの制御方法であって、
前記論理装置は、
受信した前記通信フレーム中の前記指示部に含まれるモード切替指示がローディング(以下「LD」と略称する)を行う際のデータ管理モードへの切替指示に設定されていた場合に、動作モードを前記データ管理モードへ切り替える制御を行うモード切替ステップと、
前記モード切替ステップでの切り替えが完了した場合に、前記応答部に、モード切替完了応答を設定して前記通信フレームを送信する制御を行うモード切替完了応答ステップと、
受信した前記通信フレーム中の前記指示部にLD指示が設定されていた場合に、前記通常モードにおいて授受するデータそれぞれの格納位置をLDプログラム又はLDデータ(以下「LD情報」という)の格納位置として割り付けを変更したデータ管理モード用割り付けが適用されていると判断して、当該通信フレーム中の前記通信情報部に格納されている前記LD情報を取得する制御を行うLDステップと、
前記LD情報の取得が完了した場合に、前記応答部に、取得完了応答を設定して前記通信フレームを送信する制御を行うLD完了応答ステップと、
を実行し、
前記監理装置は、
前記モード切替指示を前記データ管理モードへの切替指示に設定して前記通信フレームを送信する制御を行うモード切替指示ステップと、
受信した前記通信フレーム中の前記応答部に、前記モード切替完了応答が設定されていた場合に、前記LD指示を前記指示部に設定するとともに、前記データ管理モード用割り付けに基づいて前記通信情報部に前記LD情報を格納して前記通信フレームを送信する制御を行うLD指示ステップと、
を実行する、
制御方法を構成しても良い。
【0012】
第1の発明等によれば、通信フレームにおける、通常モードにおいて授受するデータの格納位置として割り付けられていた格納位置が、データ管理モードでは、LD情報の格納位置として割り付けが変更されるため、LD情報のローディングに要する時間を短縮することができる。すなわち、通常モードでは授受するが、データ管理モードでは授受しないデータの格納位置を、データ管理モード用に開放することにより、LD情報の格納位置として割り付け可能なデータ長を増加させることができる。そのため、1回の通信フレームで送信できるLD情報のデータ量が増加し、その結果、LDプログラムといったサイズの大きいLD情報の送信に要する時間を短縮できる。
【0013】
また、論理装置が、監理装置からのモード切替指示に対するデータ管理モードへの切り替え、そのモード切替完了応答の送信、監理装置からのLD情報の取得、その取得完了応答の送信、といった手順を踏むことによって、ローディングに際して、LANを介した監理装置と各論理装置との間の通信にフェールセーフ性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図5】ピンポイントローディングを行う際の通信フレームの設定例。
【
図6】動作モード別の通信フレームの割り付けの一例。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[システム構成]
図1は、本実施形態の鉄道用信号保安システム1の構成図である。
図1に示すように、鉄道用信号保安システム1は、1台の監理装置10と、複数台の論理装置20とが、LAN(Local Area Network)30に接続されて構成される。この鉄道用信号保安システム1では、通信フィールドとして固定長の通信フレーム40(
図4~
図6参照)を、監理装置10及び各論理装置20の間でLAN30を介して所定周期で周回させる通信方式で通信接続されている。また、監理装置10及び各論理装置20の間の通信は、本実施形態の技術によってフェールセーフ性が確保される。
【0016】
鉄道用信号保安システム1は、電子連動装置やATC(Automatic Train Control)、CTC(Centralized Traffic Control)のシステムとして実現することができる。鉄道用信号保安システム1を電子連動装置とした場合、監理装置10及び論理装置20の各装置は、連動論理部や進路制御論理部、現場機器論理部に該当し、LAN30は、Ei-W(連動ワイヤ)に該当する。また、ATCシステムとした場合、監理装置10及び論理装置20の各装置は、ATC論理部に該当し、LAN30は、ATC-W(ATCワイヤ)に該当する。また、CTCシステムとした場合、監理装置10及び論理装置20の各装置は、CTC中央装置やCTC駅装置に該当し、LAN30は、CTC-W(CTCワイヤ)に該当する。このように、監理装置10及び論理装置20の各装置は、信号保安に係る固有の機能を有する複数種別の装置によって構成されている。
【0017】
[モード]
論理装置20の動作モードには、実装された現用メインプログラムに従って信号保安に係る当該装置固有の処理を行う通常モードと、信号保安に係る処理を停止し、実装している現用メインプログラムの更新(以下、「ローディング」或いは「LD」という)等を行う保守モードと、がある。メインプログラムに従った信号保安処理をメイン処理といい、モードの切り替えを含むメイン処理の上位の処理のことを管理処理という。管理処理は、LAN30を介した監理装置10からの指示に従って実行制御される。
【0018】
[ローディング]
ローディングについて説明する。保守モードは、更に詳細なモードとして、ローディングを行う際のモードであるデータ管理モードを含む複数のモードを含んでいる。論理装置20は、保守モードに遷移した後、保守モードの下位モードであるデータ管理モードに更に遷移することで、ローディングを行うことが可能となる。
【0019】
図2は、ローディングの概要図である。論理装置20は、信号保安に係るメイン処理を実行するための現用メインプログラム124と、ローディングの実行を制御する管理処理を実行するための管理プログラム122とを、ROM(Read Only Memory)の所定領域に記憶している。この現用メインプログラム124を、監理装置10からLAN30を介して受信した新たなプログラムに更新するローディングについて示している。
【0020】
すなわち、論理装置20は、データ管理モードに遷移した状態において、監理装置10から送信されてくる新規メインプログラム126を取得(受信)する(
図2の(1))。取得した新規メインプログラム126は、RAM(Random Access Memory)の所定領域に一時的に格納する。そして、エラーチェック等によって新規メインプログラム126を正常に受信したことを確認した後、取得完了応答を監理装置10に送信する(
図2の(2))。その後、監理装置10から、プログラムの書き換えを承認する承認指示を受信すると(
図2の(3))、ROMに記憶している現用メインプログラム124を、RAMに記憶している新規メインプログラム126に書き換える(
図2の(4))。そして、RAMに一時的に格納していた新規メインプログラム126を消去する(
図2の(5))。
【0021】
[ピンポイントローディング]
ローディングは、同一のLAN30に接続されている任意の論理装置20を対象に実行することができる。例えば、プログラムローディングであれば、複数の論理装置20のうち、装置種別が同一の一又は複数の装置に対して同時に行うことができる。装置種別が同一の装置とは、信号保安に係る機能として同一の機能を有する装置であり、つまり、信号保安処理を行うために実装している現用メインプログラム124が同一の装置のことである。
【0022】
図3は、ピンポイントローディングの概要図であり、プログラムローディングを行う場合の例を示している。
図3において、LAN30に接続されている4台の論理装置20(第1~第4論理装置20a~20d)のうち、第1論理装置20a、及び、第2論理装置20bは、装置種別が“種別α”であり、第3論理装置20cは、装置種別が“種別β”であり、第4論理装置20dは、装置種別が“種別γ”である。
【0023】
この場合、
図3(a)に示すように、1回分のピンポイントローディングで、装置種別がともに“種別α”である第1論理装置20a、及び、第2論理装置20bの2台の装置を対象(第1対象とする)とすることができる。すなわち、監理装置10は、全ての論理装置20(第1~第4論理装置20a~20d)を保守モードに遷移させ、更に、全ての論理装置20をデータ管理モードに遷移させる。次いで、第1論理装置20a及び第2論理装置20bを、ピンポイントローディングの対象とする対象論理装置として指定する。
【0024】
続いて、監理装置10は、第1対象用の新規メインプログラム126aを送信する。論理装置20は、自論理装置が対象論理装置と指定されている場合に、監理装置10から送信される新規メインプログラム126aを受信(取得)する。すなわち、対象論理装置と指定されている第1論理装置20a、及び、第2論理装置20bが、送信されてくる第1対象用の新規メインプログラム126aを受信し、記憶している現用メインプログラム124を更新するローディングを行い、対象論理装置と指定されていない第3論理装置20c、及び、第4論理装置20dは、特に処理を行わずにそのまま待機する。
【0025】
また、他のピンポイントローディングとして、
図3(b)に示すように、装置種別が“種別γ”である第4論理装置20dのみを対象(第2対象とする)としたピンポイントローディングを行うことができる。すなわち、監理装置10は、全ての論理装置20(第1~第4論理装置20a~20d)を保守モードに遷移させ、更に、全ての論理装置20をデータ管理モードに遷移させる。次いで、ピンポイントローディングの対象とする第4論理装置20dを、対象論理装置として指定する。
図3(a)に示したようなピンポイントローディングに引き続いて、
図3(b)に示すようなピンポイントローディングを行う場合には、既に全ての論理装置20がデータ管理モードに遷移されているため、データ管理モードに遷移させるステップは省略することができ、直ちに、対象論理装置を指定することができる。
【0026】
続いて、監理装置10は、第2対象用の新規メインプログラム126bを送信する。そして、対象論理装置として指定されている第4論理装置20dが、送信されてくる第2対象用の新規メインプログラム126bを受信(取得)し、記憶している現用メインプログラム124を更新するローディングを行う。対象論理装置として指定されていない第1~第3論理装置20a~20cは、特に処理を行わずにそのまま待機する。
【0027】
[通信フレーム]
図4は、通信フレーム40のフォーマットの概要図である。
図4(a)に示すように、通信フレーム40は、指示部42と、応答部44と、通信情報部46とを通信フィールドとして備えており、各部の配置位置やビット長が定められた固定フォーマットとなっている。なお、
図4では、指示部42、応答部44、及び、通信情報部46の通信フィールドをそれぞれ1つずつに連続して纏めて配置する構成としているが、この例に限らず、連続せずに分割して配置することとしてもよい。例えば、指示部42を複数に分割して、通信フレーム40に配置するといった構成である。
【0028】
指示部42は、監理装置10が使用する通信フィールドであり、監理装置10から論理装置20への指示が設定される。具体的には、
図4(b)に示すように、指示部42は、論理装置20への指示の内容を指定する指示内容部42aと、指示の対象となる論理装置20を指定する指示宛先部42bとを有する。
【0029】
指示内容部42aは、通常モードや保守モード、データ管理モードといった各モードが割り当てられた複数のビットを有し、モードの切り替えを指示するモード切替指示用ビットと、LD(ローディング)指示や承認指示といった各モードにおいて実行する各処理が割り当てられた複数のビットを有する処理指示用ビットとを有する。
【0030】
指示宛先部42bは、第1装置用、第2装置用といった全ての論理装置20それぞれに割り当てられた複数の装置用ビットを有し、各装置用ビットは、モード切替指示用ビットで指示されたモード切り替えの対象であることを指定するモード指示宛先ビットと、処理指示用ビットで指示された処理の対象であることを指定する処理指示宛先ビットとを有する。
【0031】
このように、指示宛先部42bとして論理装置20別の装置用ビットが設けられていることで、論理装置20それぞれに対する個別の指示が可能となる。具体的には、遷移させたいモードが通常モード或いは保守モードならば、指示内容部42aのモード切替指示用ビットにおいてそのモード(通常モード又は保守モード)に割り当てられているビットを“1”に設定することで、全ての論理装置20を一斉にそのモードに遷移させることができ、遷移させたいモードがそれ以外のモード(データ管理モード等)ならば、モード切替指示用ビットにおいてそのモードが割り当てられているビットを“1”に設定するとともに、指示宛先部42bにおいて対象とする論理装置用のモード指示宛先ビットを“1”に設定することで、対象とする論理装置20をそのモードに遷移させることができる。
【0032】
また、論理装置20に対する処理の指示についても同様に、指示内容部42aの処理指示用ビットにおいて、行わせたい処理が割り当てられているビットを“1”に設定し、指示宛先部42bにおいて、対象とする論理装置用の処理指示宛先ビットを“1”に設定することで実現できる。1回の通信フレーム40の送信によって、複数の論理装置20を対象として共通の同じ指示を指定することができる。
【0033】
図5は、一部の論理装置20についてのみローディングを行わせるピンポイントローディングを行う場合に、通信フレーム40の指示部42に設定されるビットの遷移を示す図である。先ず、
図5(a)に示すように、指示内容部42aのモード切替指示用ビットにおいて、保守モードが割り当てられたビットを“1”に設定した通信フレーム40を送信することで、全ての論理装置20を保守モードに遷移させることができる。以降、保守モードを継続させることから、モード切替指示用ビットの保守モードが割り当てられたビットは継続して“1”に設定する。
【0034】
次いで、
図5(b)に示すように、指示内容部42aのモード切替指示用ビットにおいて、保守モード及びデータ管理モードが割り当てられた各ビットを“1”に設定し、指示宛先部42bにおいて、全ての論理装置用のモード指示宛先ビットを“1”に設定した通信フレーム40を送信することで、全ての論理装置20をデータ管理モードへ遷移させることができる。以降、データ管理モードを継続させることから、指示内容部42aのモード切替指示用ビットにおいて、保守モード及びデータ管理モードが割り当てられた各ビットは継続して“1”に設定する。
【0035】
その後、
図5(c)に示すように、指示内容部42aのモード切替指示用ビットにおいて、保守モード及びデータ管理モードが割り当てられた各ビットの設定は“1”のまま、処理指示用ビットにおいて、LD指示が割り当てられたビットを“1”に設定し、指示宛先部42bにおいて、ローディングの対象とする論理装置用の処理指示宛先ビットの設定を“1”とした通信フレーム40を送信することで、ローディングの対象論理装置を指定することができ、対象論理装置として指定した論理装置20にのみローディングを行わせることができる。
【0036】
ローディングを行う場合には、指示部42の設定は
図5(a)~(c)に示したように変化していくため、論理装置20側で指示部42の設定を確認することで、ローディングに係る通信のフェールセーフ性を高めることになる。例えば、
図5(c)に示すように、処理指示用ビットのLD指示が割り当てられたビットが“1”に設定されているにも関わらず、モード切替指示用ビットの保守モードが割り当てられたビットが“1”に設定されていない通信フレーム40を論理装置20が受信した場合には、通信上の問題が生じたと判断して、受信した通信フレーム40を無視する。これにより、ビット値に変化が生じたエラーと言える通信フレーム40を排除して、フェールセーフ性を確保したローディングを実現することができる。
【0037】
図4に戻る。通信フレーム40の応答部44は、論理装置20が使用する通信フィールドであり、監理装置10からの指示に対する論理装置20から監理装置10への応答(アンサ)が設定される。本実施形態の鉄道用信号保安システム1では、フェールセーフな通信を実現するため、監理装置10からの指示それぞれに対して、論理装置20は、指示を受信してその指示に従った動作を完了したこと(例えば、モード遷移や処理の実行を完了したこと)を通知する応答(アンサ)を、監理装置10に送信することになっている。応答部44は、この応答を設定するための通信フィールドである。
【0038】
すなわち、応答部44は、
図4(c)に示すように、第1装置用、第2装置用といった全ての論理装置20それぞれに割り当てられた複数の装置用ビットを有し、各装置用ビットには、指示内容部42aの各指示ビットそれぞれに対応する応答用ビットが含まれる。具体的には、応答用ビットには、モード切替指示に応答するための各モードの応答用ビットを有するモード切替応答用ビットと、各モードにおいて実行する各処理の完了応答をするための処理応答用ビットとが含まれる。
【0039】
通信フレーム40の通信情報部46は、監理装置10と各論理装置20との間で送受信(授受)される通信情報が格納される通信フィールドである。本実施形態では、動作モードに応じて、通信情報部46に格納される通信情報(データやプログラム)の格納位置の割り付けが変更される。
【0040】
図6は、通信情報部46の割り付けの一例である。
図6(a)は、通常モード等(通常モード、保守モード等のデータ管理モード以外のモード時)における割り付けを示し、
図6(b)は、データ管理モードにおける割り付けを示している。
【0041】
図6(a)に示すように、通常モードは、現用メインプログラム124に従った信号保安に係るメイン処理を行うモードであるため、通信情報部46には、監理装置10と各論理装置20との間で送受信される信号保安に係る情報が割り付けられる。
図6(a)では、鉄道用信号保安システム1が連動装置の場合の一例を示しており、通信情報部46に、第1論理装置情報、第2論理装置情報といった各論理装置20の出力する情報を割り付けた例を示している。勿論、これは一例であり、鉄道用信号保安システム1を適用するATCやCTCといった他のシステムに応じて、送受信される複数種類の情報の格納位置が、そのサイズに応じて割り付けられる。
【0042】
また、
図6(b)に示すように、データ管理モードは、信号保安に係る処理を停止するモードであり、ローディングを行うためのモードであるため、通信情報部46は、プログラムやデータ等のLD情報の格納位置が割り付けられる。
図6(b)の例では、プログラムがローディングされる場合の例が示されている。
【0043】
ローディングの対象となるプログラムやデータは、サイズが大きい。このため、モードに関わらず通信フレームの割り付けを固定とする場合には、1回の通信フレームの送信によって送信できる情報量(すなわち、通信情報部46の割り付けられた格納位置に格納できるデータやプログラムのサイズ)が小さくなり、プログラムを分割して送信する必要が生じる。例えば、
図6(a)の例で言えば、通信フレーム40中の予備のフィールドを利用してローディングを行う場合が考えられるが、予備のフィールドは、プログラムのサイズに比べて遙かに小さい。そのため、通信フレーム40の送信回数が多くなり、ローディングに時間を要することとなる。しかし、本実施形態のように、データ管理モードにおいては、全ての論理装置20において信号保安に係る処理は停止しているため、送受信されない信号保安に係る情報の格納位置を割り付けず、これに替えて、データ管理モード専用の格納位置を割り付けるようにすることで、1つの通信フレーム40で送信できる情報量を増大させ、データ管理モードにおけるローディングに要する時間を短縮することが可能となる。
【0044】
図7は、モードの切り替えに当たり、通信フレーム40における通信情報部46の割り付けを変更する概要を説明するための図である。論理装置20は、予め、通常モードにおける割り付けを定義した通常モード用割付データ132と、データ管理モードにおける割り付けを定義したデータ管理モード用割付データ134とを含む、モード別の割付データを格納している。そして、これらのモード別の割付データのうち、現在のモードに対応する割付データを現用割付データ130として記憶している。
【0045】
論理装置20は、この現用割付データ130で定義される割り付けが適用されているとして、通信フレーム40の通信情報部46に格納された情報の読み出しや書き込みを行う。現用割付データ130の設定は、監理装置10からのモード切替指示に従ってモードを切り替えた際に、当該指示されたモード用の割付データに更新する。
【0046】
図7においては、LAN30に接続されている2台の論理装置20(すなわち、装置種別が“種別α”である第1論理装置20a、及び、装置種別が“種別β”である第3論理装置20c)のうち、第1論理装置20aに対するピンポイントローディングを行う場合を示している。但し、第1論理装置20a、及び、第3論理装置20cはともに保守モードであり、通常モード用割付データ132を現用割付データ130として記憶している。
【0047】
この場合、先ず、監理装置10が、全ての論理装置20(第1論理装置20a、及び、第3論理装置20c)を対象として、データ管理モードへの切替指示を送信する(
図7の(1))。このモード切替指示は、
図5(b)を参照して説明したように、通信フレーム40において、指示内容部42aのモード切替指示用ビットのうち、保守モード及びデータ管理モードが割り当てられた各ビットを“1”に設定するとともに、全ての論理装置20(第1論理装置20a、及び、第3論理装置20c)用のモード指示宛先ビットを“1”に設定することで実現される。
【0048】
データ管理モードへの切替指示を受信すると、全ての論理装置20(第1論理装置20a、及び、第3論理装置20c)が、現用割付データ130をデータ管理モード用割付データ134に更新する(
図7の(2))。
【0049】
割り付けの更新を完了すると、全ての論理装置20が、データ管理モードへ遷移し(
図7の(3))、データ管理モードへの切替完了応答を監理装置10へ送信する(
図7の(4))。データ管理モードへの切替完了応答は、通信フレーム40において、応答部44の当該論理装置用のモード切替応答用ビットのうち、データ管理モードが割り当てられたビットを“1”に設定することで実現される。監理装置10は、論理装置20からの切替完了応答を受信することで、当該論理装置20が、通信フレーム40の通信情報部46の割り付けをデータ管理モード用の割り付けへの変更を完了し、且つ、データ管理モードに遷移したことを確認する。
【0050】
その後、監理装置10は、ピンポイントローディングの対象とする第1論理装置20aに対するLD指示を送信することで、対象論理装置を指定する(
図7の(5))。対象論理装置の指定は、通信フレーム40において、指示部42の指示内容部42aにおける処理指示用ビットのうち、LD指示が割り付けられたビットを“1”に設定するとともに、指示宛先部42bにおいて、対象とする論理装置用の処理指示宛先ビットを“1”に設定することで実現される。対象論理装置として指定された第1論理装置20aは、続いて監理装置10から送信されてくるLD情報を受信する。
【0051】
[論理装置]
図8は、論理装置20の内部構成図である。
図8に示すように、論理装置20は、CPU制御ユニット100と、LAN通信制御ユニット200と、I/F(InterFace)制御ユニット300とが、内部バスBを介して通信可能に接続されて構成される。
【0052】
CPU制御ユニット100は、演算制御部110と、記憶部120とを有し、制御ボード或いはCPUボード等と呼ばれるユニットである。演算制御部110は、CPU等のプロセッサを有して構成され、現用メインプログラム124に従って、メインデータ128を用いた信号保安に係るメイン処理と、管理プログラム122に従った管理処理とを順に実行する。詳細には、管理処理とメイン処理とは、実行プロセスとして演算制御部110が実行するものであり、管理処理のプロセス上でメイン処理が実行される形を取る。従って、管理処理がメイン処理を実行するか否かを司ることになる。特に本実施形態では、管理処理は、監理装置10からの指示に従った論理装置20全体の統括制御を行う。例えば、監理装置10からのモード切替指示に従ってモード切り替え、及び、通信フレーム40の割り付けの変更を行ったり、LD指示に従ってローディングを実行したりする。詳細には、
図9を参照して後述する。
【0053】
記憶部120は、ROMやRAMによって実現される。記憶部120には、信号保安に係るメイン処理を実行するための現用メインプログラム124と、メイン処理の実行に用いられるメインデータ128と、ローディングを含む管理処理を実行するための管理プログラム122と、現在適用している通信フレームの割り付けである現用割付データ130と、通常モード用割付データ132及びデータ管理モード用割付データ134を含む動作モード別の通信フレーム40の割り付けを定義した割付データと、が記憶されている。また、監理装置10から取得した新規メインプログラム126を一時的に格納するための領域が確保されている。管理プログラム122や現用メインプログラム124、メインデータ128、現用割付データ130、通常モード用割付データ132、データ管理モード用割付データ134は、例えばフラッシュROMなどの書き換え可能なROMに記憶される。
【0054】
LAN通信制御ユニット200は、LAN30に接続して他装置との通信を行うための制御を行う。
【0055】
I/F制御ユニット300は、入力装置302や表示装置304等のインターフェースを実現するための制御部である。
【0056】
[ローディングの処理手順]
図9は、鉄道用信号保安システム1においてローディングを行う際の処理手順を示す図であり、論理装置20の処理は管理プログラム122に基づいて実行される管理処理である。
図9では、上側から下側に向かう方向を時系列方向とし、左側に監理装置10、中央に第1対象の論理装置20、右側に第2対象の論理装置20の処理を示し、装置間の通信を併せて示している。ここで「第1対象」とは、1回目のローディングの対象となる論理装置20のことを指し、「第2対象」とは、2回目のローディングの対象となる論理装置20のことを指す。
【0057】
先ず、監理装置10が、全ての論理装置20を対象として、保守モードへの切替指示を設定した通信フレーム40を送信する。すなわち、監理装置10は、例えば、
図5(a)に示したように、通信フレーム40に対して、指示部42の指示内容部42aのモード切替指示用ビットにおいて、保守モードが割り当てられたビットを“1”に設定する。
【0058】
各論理装置20は、この切替指示を設定した通信フレーム40を受信すると、指示に従って保守モードへ遷移し、遷移が完了すると、監理装置10へ切替完了応答を設定した通信フレーム40を送信する。具体的には、各論理装置20は、受信した通信フレーム40において、指示内容部42aのモード切替指示用ビットのうち、保守モードが割り当てられたビットが“1”に設定されている場合に、自論理装置に対する保守モードへの切替指示が設定されていると判断し、自論理装置を保守モードへ切り替える。そして、各論理装置20は、保守モードへの遷移を完了すると、通信フレーム40に対して、応答部44の自論理装置用のモード切替応答用ビットのうち、保守モードが割り当てられたビットを“1”に設定する。このときの通信フレーム40は、指示部42が、例えば、
図5(a)に示したような、全ての論理装置20に対して保守モードへの切替指示が設定された状態のままである。応答部44については、保守モードへの遷移が完了した論理装置20用のモード切替応答用ビットのうちの、保守モードが割り当てられたビットが“1”に設定された状態となる。
【0059】
監理装置10は、受信した通信フレーム40において、指示部42が、例えば、
図5(a)に示したような、全ての論理装置20に対して保守モードへの切替指示を設定した状態であり、且つ、応答部44が、全ての論理装置20用のモード切替応答用ビットのうち、保守モードが割り当てられたビットが“1”に設定された状態となっていることを確認することで、全ての論理装置20から、保守モードへの切替指示に対する切替完了応答を受信したことを確認する。この確認が
図9の(A)である。
【0060】
続いて、監理装置10は、全ての論理装置20を対象として、データ管理モードへの切替指示を設定した通信フレーム40を送信する。すなわち、指示部42の指示内容部42aにおいて、モード切替指示用ビットのうち、保守モード及びデータ管理モードが割り当てられた各ビットを“1”に設定し、指示宛先部42bにおいて、全ての論理装置20用のモード指示宛先ビットを“1”に設定した通信フレーム40を送信する。これが、モード切替指示ステップに相当する。
図9の(B)である。
【0061】
各論理装置20は、この切替指示を設定した通信フレーム40を受信すると、現用割付データ130をデータ管理モード用割付データ134に変更し、変更が完了すると、データ管理モードへ遷移する。すなわち、通信フレーム40の指示部42の指示内容部42aのモード切替指示用ビットのうち、保守モード及びデータ管理モードが割り当てられた各ビットが“1”に設定され、且つ、自論理装置用ビットのモード指示宛先ビットが“1”に設定されていることから、データ管理モードへの切替指示が設定されていると判断する。これが、モード切替ステップに相当する。
【0062】
そして、各論理装置20は、データ管理モードへの遷移が完了すると、監理装置10へ、切替完了応答を設定した通信フレーム40を送信する。すなわち、応答部44の自論理装置用のモード切替応答用ビットのうち、保守モード及びデータ管理モードが割り当てられたビットを“1”に設定した通信フレーム40を送信する。これが、モード切替完了応答ステップに相当する。
【0063】
従って、このときの通信フレーム40は、指示部42が、例えば、
図5(b)に示したような、全ての論理装置20に対してデータ管理モードへの切替指示を設定した状態のままであり、応答部44は、データ管理モードへの遷移が完了した論理装置20用のモード切替応答用ビットのうち、保守モード及びデータ管理モードが割り当てられたビットが“1”に設定された状態となる。
【0064】
これにより、監理装置10は、受信した通信フレーム40において、指示部42が、例えば、
図5(b)に示したような、全ての論理装置20に対してデータ管理モードへの切替指示を設定した状態であり、且つ、応答部44が、全ての論理装置20用のモード切替応答用ビットのうち、データ管理モードが割り当てられたビットが“1”に設定された状態となっていることを確認することで、全ての論理装置20が、通信フレーム40の通信情報部46の割り付けに、データ管理モード用割付データ134で定義されるデータ管理モード用割付が適用されていると認識し、且つ、データ管理モードに遷移していることを確認できる。
【0065】
全ての論理装置20においてデータ管理モード用割付が適用されていると認識しており、且つ、全ての論理装置20がデータ管理モードへ遷移したことを確認すると、監理装置10は、第1対象の論理装置20に対してLD指示を設定した通信フレーム40を送信する。すなわち、指示部42の指示内容部42aにおいて、処理指示用ビットのうち、LD指示が割り当てられたビットを“1”に設定するとともに、指示宛先部42bにおいて、第1対象の論理装置用の処理指示宛先ビットを“1”に設定した通信フレームを送信する。この指示部42の設定が、ローディングの対象論理装置を指定する指定情報に相当する。従って、このときの通信フレーム40は、例えば、第1対象の論理装置20が第1論理装置のみであれば、指示部42が、
図5(c)に示した状態となる。
【0066】
第1対象の各論理装置20は、このLD指示が設定された通信フレーム40を受信すると、自論理装置がローディングの対象論理装置と指定されたと認識して、監理装置10へ、指示応答を設定した通信フレーム40を送信する。すなわち、第1対象の各論理装置20は、受信した通信フレーム40の指示部42において、指示内容部42aの処理指示用ビットのうち、LD指示が割り当てられたビットが“1”に設定され、且つ、指示宛先部42bの自論理装置用ビットの処理指示宛先ビットが“1”に設定されていることから、自論理装置が対象論理装置として指定された指定情報が設定されていると判断する。そして、応答部44の自論理装置用の処理応答用ビットのうち、LD応答が割り当てられたビットを“1”に設定した通信フレーム40を送信する。
【0067】
また、第2対象の各論理装置20は、受信した通信フレーム40の指示内容部42aの処理指示用ビットのうち、LD指示が割り当てられたビットが“1”に設定され、且つ、指示宛先部42bの自論理装置用ビットの処理指示宛先ビットが“0”に設定されていることから、自論理装置はローディングの対象論理装置として指定されていないと認識する。
【0068】
監理装置10は、受信した通信フレーム40において、指示部42が、第1対象の論理装置20に対してLD指示を設定した状態であり、且つ、応答部44が、第1対象の全ての論理装置20用の処理応答用ビットのうち、LD応答が割り当てられたビットが“1”に設定された状態となっていることを確認することで、第1対象の全ての論理装置20から、LD指示に対する指示応答を受信したことを確認する。
【0069】
第1対象の全ての論理装置20から、LD指示に対する指示応答を受信したことを確認すると、監理装置10は、第1対象用の新規メインプログラムの送信を開始する。すなわち、指示部42において第1対象の論理装置に対してLD指示を設定した状態のまま、通信情報部46に、データ管理モード用割付に従って第1対象用の新規メインプログラムを格納した通信フレーム40を送信する。これが、LD指示ステップに相当する。
【0070】
従って、このときの通信フレーム40は、指示部42が、例えば、
図5(c)に示したように、指示内容部42aのモード切替指示用ビットのうち、保守モード及びデータ管理モードが割り当てられたビットを“1”に設定したままであり、且つ、処理指示用ビットのうち、LD指示が割り当てられたビットを“1”に設定した状態となり、指示宛先部42bにおいて、第1対象の全ての論理装置20の処理指示宛先ビットを“1”に設定した状態となる。
【0071】
第1対象用の新規メインプログラムの容量(サイズ)が大きい場合、プログラムを分割し、例えば、シーケンス番号を付加して通信フレーム40に格納し、複数回に亘って通信フレーム40の送信を繰り返す。
【0072】
第1対象の各論理装置20は、分割して送信されてくる第1対象用のプログラムを順次受信し、エラーチェック等を行い、シーケンス番号に従って復元して、プログラムを取得する。すなわち、第1対象の論理装置20は、通信フレーム40の通信情報部46の割り付けとしてデータ管理モード用割付が適用されていると判断して、通信情報部46に格納されている情報(この例では第1対象用のプログラム)を取得する。これが、LDステップに相当する。勿論、データローディングの場合であっても同じ手順となる。
【0073】
第1対象の各論理装置20は、ローディング対象の情報(プログラムであれば新規メインプログラムのことであり、以下適宜「LD情報」という。)の取得を完了すると、監理装置10へ取得完了応答を送信する。すなわち、第1対象の各論理装置20は、応答部44の自論理装置用の処理応答用ビットのうち、LD完了応答が割り当てられたビットを“1”に設定した通信フレーム40を送信する。これが、LD完了応答ステップに相当する。
【0074】
このとき、第1対象以外の論理装置20は、ローディングの対象論理装置と指定されていないと認識しているため、特に何もしない。
【0075】
従って、このときの通信フレーム40は、指示部42が、例えば、
図5(c)に示したような、第1対象の論理装置20に対するLD指示を設定した状態のままであり、応答部44が、第1対象用のLD情報の取得が完了した第1対象の各論理装置20の処理応答用ビットのうち、LD完了応答が割り当てられたビットが“1”に設定され、それ以外の各論理装置20の処理応答用ビットのうち、LD完了応答が割り当てられたビットが“0”に設定された状態となる。
【0076】
監理装置10は、受信した通信フレーム40において、指示部42が、例えば、
図5(c)に示したような、第1対象の論理装置20に対してLD指示を設定した状態であり、且つ、応答部44が、第1対象の全ての論理装置20の処理応答用ビットのうち、LD完了応答が割り当てられたビットが“1”に設定された状態となっていることを確認することで、第1対象の論理装置20の全てから、第1対象用のLD情報の取得完了応答を受信したことを確認する。この確認が
図9の(D)である。
【0077】
第1対象の全ての論理装置20から取得完了応答を受信したことを確認すると、監理装置10は、続いて、第1対象の論理装置20を対象として、承認指示を送信する。すなわち、指示部42の指示内容部42aの処理指示用ビットのうち、承認指示が割り当てられたビットを“1”に設定し、指示宛先部42bにおいて、第1対象の論理装置20用の処理指示宛先ビットを“1”に設定することで、対象論理装置を指定する指定情報を設定した通信フレーム40を送信する。
【0078】
従って、このときの通信フレーム40は、指示部42の指示内容部42aにおいて、モード切替指示用ビットのうち、保守モード及びデータ管理モードが割り当てられたビットが“1”に設定され、処理指示用ビットのうち、承認指示が割り当てられたビットが“1”に設定され、指示宛先部42bにおいて、第1対象の論理装置用の処理指示宛先ビットが“1”に設定された状態となっている。
【0079】
第1対象の論理装置20は、この承認指示を受信すると、プログラムローディングであれば、記憶している現用メインプログラム124を、取得した新規メインプログラム126に更新し、監理装置10へ承認応答を送信する。データローディングであれば、記憶しているメインデータ128を、取得した新規データに更新して、監理装置10へ承認応答を送信する。すなわち、第1対象の論理装置20は、受信した通信フレーム40において、指示部42の指示宛先部42bの自論理装置用の処理指示用ビットが“1”に設定されていることから、自論理装置が対象論理装置として指定された指定情報が設定されていると判断する。また、指示部42の指示内容部42aの処理指示用ビットのうち、承認指示が割り当てられたビットが“1”に設定されていることから、承認指示が設定されていると判断する。そして、第1対象の論理装置20は、LD情報の更新が完了すると、応答部44の自論理装置用の処理応答用ビットのうち、承認応答が割り当てられたビット“1”を設定した通信フレーム40を送信する。
【0080】
一方、監理装置10は、受信した通信フレーム40において、指示部42が、例えば、第1対象の論理装置20に対して承認指示を設定した状態であり、且つ、応答部44が、第1対象の全ての論理装置20の処理応答用ビットのうち、承認応答が割り当てられたビットが“1”に設定された状態となっていることを確認することで、第1対象の論理装置20の全てから、承認応答を受信したことを確認する。この確認が
図9の(E)である。確認後は、続いて、第2対象の論理装置20を対象として、同様に、第2対象の論理装置20を対象論理装置と指定し、第2対象用のLD情報を送信してローディングを行う。
【0081】
[作用効果]
本実施形態の鉄道用信号保安システム1によれば、監理装置10は、対象論理装置を指定してデータ管理モードへの切り替えを指示し、対象論理装置として指定された論理装置20のみが、データ管理モードへの切り替えや、LD情報の取得及び書き換えといったローディングを行うことで、複数の論理装置20のうち、一部又は全ての論理装置20を対象としたローディングを行うといった、ピンポイントローディングが可能となる。
【0082】
また、論理装置20では、監理装置10からのモード切替指示に対するデータ管理モードへの切り替え、そのモード切替完了応答の送信、監理装置からのローディング指示とその応答およびLD情報の取得、その取得完了応答の送信、監理装置10からの承認指示によるLD情報での書き換え、といった手順を踏むことによって、LAN30を介した監理装置10と各論理装置20との通信にフェールセーフ性を確保することができる。
【0083】
[変形例]
なお、本発明の適用可能な実施形態は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能なのは勿論である。
【0084】
(A)LD情報
監理装置10から各論理装置20が取得するLD情報として、現用メインプログラム124に置き換える新規メインプログラム126を取得するプログラムローディングの場合を主に説明したが、メインデータ128に置き換える新規メインデータを取得するデータローディングの場合についても、同様に適用可能である。その場合、プログラムローディングとデータローディングとで更にモードを切り替えることとし、通信情報部46の割り付けを、プログラムローディングとデータローディングとで異なることとしてもよい。
【0085】
また、データローディングの場合、通信フレーム40の通信情報部46に、論理装置それぞれ用のLD情報(データ)を一括して格納して送信するようにしても良い。具体的には、データ管理モード用の通信情報部46における格納位置の割り付けとして、論理装置別に格納位置を割り付けておき、監理装置10は、ピンポイントローディングの対象とした論理装置20それぞれ用のデータを、当該論理装置20用として割り付けられている格納位置に格納する。そして、論理装置20では、データ管理モード用の割り付けに従って、通信フレーム40から、自論理装置用として割り付けられた格納位置に格納されているLD情報を取り出す。
【0086】
(B)データ管理モードへの遷移
上述の実施形態では、ピンポイントローディングを行う際に全ての論理装置20をデータ管理モードへ遷移させることとしたが、ローディングの対象とする論理装置20のみをデータ管理モードに遷移させ、それ以外のローディングの対象としない論理装置20についてはデータ管理モードに遷移させないこととしても良い。この場合、データ管理モードに遷移したか否か、つまりローディングの対象論理装置であるか否かによって、各論理装置20における通信フレーム40の通信情報部46に格納される情報の格納位置の割り付けの認識が異なる。このため、
図10に示すように、データ管理モード用の割り付けとして、通常モード用の割り付けにおいて、予備として用意されている格納位置(つまり、通常モードでは使用されない格納位置)を、LD情報の格納位置として定めるようにすれば良い。
【符号の説明】
【0087】
1 鉄道用信号保安システム
10 監理装置
20 論理装置
100 CPU制御ユニット、110 演算制御部、120 記憶部
122 管理プログラム
124 現用メインプログラム、126 新規メインプログラム
128 メインデータ
130 現用割付データ
132 通常モード用割付データ、134 データ管理モード用割付データ
200 LAN通信制御ユニット
300 I/F制御ユニット、302 入力装置、304 表示装置
30 LAN
40 通信フレーム