(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-27
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】ドライアイススノー噴射装置
(51)【国際特許分類】
B24C 1/00 20060101AFI20220128BHJP
B08B 7/00 20060101ALI20220128BHJP
C01B 32/50 20170101ALI20220128BHJP
【FI】
B24C1/00 A
B08B7/00
C01B32/50
(21)【出願番号】P 2017201134
(22)【出願日】2017-10-17
【審査請求日】2019-10-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000126115
【氏名又は名称】エア・ウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 晃和
(72)【発明者】
【氏名】奥村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】馬込 峻一
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-105837(JP,A)
【文献】特開2011-183538(JP,A)
【文献】特開2001-179634(JP,A)
【文献】特開2013-078735(JP,A)
【文献】特開2002-143731(JP,A)
【文献】特開2008-001575(JP,A)
【文献】特開2003-245619(JP,A)
【文献】特開2007-160244(JP,A)
【文献】特開2005-271095(JP,A)
【文献】実開平05-049258(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2006/0011734(US,A1)
【文献】特開2003-206122(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24C 1/00
B08B 7/00
C01B 32/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空断熱容器である液化炭酸ガス貯蔵容器と、
前記液化炭酸ガス貯蔵容器に連結された二酸化炭素供給路と、
前記二酸化炭素供給路内を通過する液化炭酸ガスを冷却して過冷却状態にする冷却機構と、
前記二酸化炭素供給路において前記冷却機構より下流側に設けられ、前記二酸化炭素供給路を絞る絞り部材を内蔵する絞り機構と、
前記二酸化炭素供給路の末端に設けられた噴射ノズルと、
前記噴射ノズルに接続され、推進ガスを供給する推進ガス供給路と、
前記絞り機構の外側から前記絞り部材を加熱する加熱機構とを備え、
前記加熱機構は、前記絞り機構の外周に気体を吹き付けることにより前記絞り部材を加熱し、
前記加熱機構は、前記推進ガス供給路から分岐した分岐流路と接続されており、
前記気体は、前記分岐流路から供給され、
前記加熱機構によって前記絞り部材を加熱することにより、前記二酸化炭素供給路における前記絞り機構の前記絞り部材の直後の位置にて生成したドライアイススノーによって前記二酸化炭素供給路が閉塞することを抑制する、ドライアイススノー噴射装置。
【請求項2】
真空断熱容器である液化炭酸ガス貯蔵容器と、
前記液化炭酸ガス貯蔵容器に連結された二酸化炭素供給路と、
前記二酸化炭素供給路内を通過する液化炭酸ガスを冷却して過冷却状態にする冷却機構と、
前記二酸化炭素供給路において前記冷却機構より下流側に設けられ、前記二酸化炭素供給路を絞る絞り部材を内蔵する絞り機構と、
前記二酸化炭素供給路の末端に設けられた噴射ノズルと、
前記噴射ノズルに接続され、推進ガスを供給する推進ガス供給路と、
前記絞り機構の外側から前記絞り部材を加熱する加熱機構とを備え、
前記加熱機構は、前記絞り機構の外周に常温の気体を吹き付けることにより前記絞り部材を加熱
し、
前記加熱機構によって前記絞り部材を加熱することにより、前記二酸化炭素供給路における前記絞り機構の前記絞り部材の直後の位置にて生成したドライアイススノーによって前記二酸化炭素供給路が閉塞することを抑制する、ドライアイススノー噴射装置。
【請求項3】
前記加熱機構は、前記推進ガス供給路から分岐した分岐流路と接続されており、
前記気体は、前記分岐流路から供給される、請求項2に記載のドライアイススノー噴射装置。
【請求項4】
前記絞り機構の外周に、前記加熱機構から前記絞り機構に吹き付けられた前記気体と前記絞り機構との接触面積を増やすフィンが設けられている、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のドライアイススノー噴射装置。
【請求項5】
前記絞り部材がオリフィス板である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のドライアイススノー噴射装置。
【請求項6】
前記加熱機構が電熱ヒータである、請求項1に記載のドライアイススノー噴射装置。
【請求項7】
前記加熱機構が熱交換器である、請求項1に記載のドライアイススノー噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライアイススノー噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば電子部品の洗浄には、洗浄後の乾燥が不要であるなどの理由から、ドライアイスの粒子を吹き付けて電子部品の表面に付着した異物などを除去するドライアイススノー噴射装置が利用されている。
【0003】
ドライアイススノー噴射装置の構成を開示した先行文献として、実用新案登録公報第2557383号(特許文献1)がある。特許文献1に記載されたドライアイススノー噴射装置は、液化炭酸ガスが充填された液化炭酸ガス貯蔵容器からの供給ライン、および、噴射用ガスが充填された噴射用ガス容器の供給ラインの、各々が接続された液化炭酸ガス供給ノズルに、アダプタを介して接続された本体ノズルを有する。
【0004】
特許文献1に記載のドライアイススノー噴射装置においては、液化炭酸ガス貯蔵容器から供給された液化炭酸ガスが、液化炭酸ガス供給ノズルに設けられた絞り部材である微小オリフィスから本体ノズルの筒部に噴射されて断熱膨張することによって冷却されてドライアイス粒子となり、本体ノズルからドライアイススノーとして噴射される。液化炭酸ガス貯蔵容器としては、ボンベが用いられている。ボンベから約7MPaGの圧力の液化炭酸ガスが供給される。
【0005】
ボンベを用いて液化炭酸ガスを供給する場合、ボンベ中の約半分の液化炭酸ガスを使用した時点で残りの炭酸ガスが気化した状態となって使用することができなくなるため、液化炭酸ガスの使用効率がよくない。
【0006】
液化炭酸ガス貯蔵容器として、ボンベの代わりにLGC(Liquid Gas Container)を用いた場合、供給される液化炭酸ガスの圧力は2.5MPaG以下となり、液化炭酸ガスの液温は-10.6℃以下となる。液化炭酸ガスの液温が常温より低いため、液化炭酸ガスは、液化炭酸ガス貯蔵容器から本体ノズルに輸送されるまでの間に外部からの受熱により昇温して一部が気化した気液混合状態となる。気液混合状態で絞り部材に液化炭酸ガスが供給された場合、ドライアイススノーの生成が不安定となる。
【0007】
そこで、冷却機構を備えるドライアイススノー噴射装置が開発されている。冷却機構を備えるドライアイススノー噴射装置の構成を開示した先行文献として、特開2010-105837号公報(特許文献2)がある。
【0008】
特許文献2に記載されたドライアイス製造装置においては、液化炭酸ガスを貯留する貯留容器から液化炭酸ガスを供給する供給管とドライアイス生成ノズルとの間に断熱された熱交換チャンバーが設けられている。供給管の途中から分岐した分岐供給路に連結された噴出ノズルから交換チャンバー内に液化炭酸ガスを噴出させて、熱交換チャンバー内に収納されて冷却管を有する過冷却熱交換器を冷却し、冷却管を流通する液化炭酸ガスを過冷却状態にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】実用新案登録公報第2557383号
【文献】特開2010-105837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ドライアイススノー噴射装置に強い洗浄力が求められる場合には、ドライアイスの粒径を大きくして、ドライアイスの粒子の洗浄対象物への衝撃力を大きくすることが必要となる。ドライアイスの粒径を大きくするためには、スノー生成空間となるスノー生成流路を広くする必要があり、スノー生成流路を広くすると、絞り部材の直後の位置でドライアイススノーが発生しやすくなる。
【0011】
液化炭酸ガスを絞り部材にて等エンタルピー変化により相変化させてドライアイススノーを発生させる場合、低温の液化炭酸ガスの方が、高温の液化炭酸ガスに比較して、固体相であるドライアイスの発生割合が高くなる。そのため、過冷却された低温の液化炭酸ガスを用いて粒径の大きいドライアイススノーを発生させる場合、絞り部材の直後の位置にてドライアイススノーが過剰に生成され、絞り機構の2次側の二酸化炭素供給路の内部で詰りが生じて、継続的に安定してドライアイススノーを噴射することが困難となる。
【0012】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであって、低温の液化炭酸ガスを用いて粒径の大きなドライアイススノーを継続的に安定して噴射することができる、ドライアイススノー噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に基づくドライアイススノー噴射装置は、液化炭酸ガス貯蔵容器と、二酸化炭素供給路と、冷却機構と、絞り機構と、噴射ノズルと、推進ガス供給路と、加熱機構とを備える。液化炭酸ガス貯蔵容器は、真空断熱容器である。二酸化炭素供給路は、液化炭酸ガス貯蔵容器に連結されている。冷却機構は、二酸化炭素供給路内を通過する液化炭酸ガスを冷却して過冷却状態にする。絞り機構は、二酸化炭素供給路に設けられ、二酸化炭素供給路を絞る絞り部材を内蔵する。噴射ノズルは、二酸化炭素供給路の末端に設けられている。推進ガス供給路は、噴射ノズルに接続され、推進ガスを供給する。加熱機構は、絞り機構の外側から絞り部材を加熱する。
【0014】
本発明の一形態においては、加熱機構は、絞り機構の外周に気体を吹き付けることにより絞り部材を加熱する。
【0015】
本発明の一形態においては、加熱機構は、推進ガス供給路から分岐した分岐流路と接続されている。上記気体は、分岐流路から供給される。
【0016】
本発明の一形態においては、絞り機構の外周にフィンが設けられている。
本発明の一形態においては、絞り部材がオリフィス板である。
【0017】
本発明の一形態においては、加熱機構が電熱ヒータである。
本発明の一形態においては、加熱機構が熱交換器である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、低温の液化炭酸ガスを用いて粒径の大きなドライアイススノーを継続的に安定して噴射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態1に係るドライアイススノー噴射装置の構成を示す断面図である。
【
図2】炭酸ガスのエンタルピー線図を示すグラフである。
【
図3】加熱機構による絞り部材の加熱を行なわずに混合ガスを感圧紙に吹き付けた場合の感圧紙の状態を示す写真である。
【
図4】加熱機構による絞り部材の加熱を行ないつつ混合ガスを感圧紙に吹き付けた場合の感圧紙の状態を示す写真である。
【
図5】本発明の実施形態2に係るドライアイススノー噴射装置の絞り機構の周囲を示す側面図である。
【
図6】
図5のドライアイススノー噴射装置の絞り機構を矢印VI方向から見た底面図である。
【
図7】本発明の実施形態3に係るドライアイススノー噴射装置の絞り機構の周囲を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の各実施形態に係るドライアイススノー噴射装置について図面を参照して説明する。以下の実施形態の説明においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0021】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るドライアイススノー噴射装置の構成を示す断面図である。
図1に示すように、本発明の実施形態1に係るドライアイススノー噴射装置100は、液化炭酸ガス貯蔵容器110と、二酸化炭素供給路120と、冷却機構130と、絞り機構150と、噴射ノズル160と、推進ガス供給路171と、加熱機構190とを備える。
【0022】
液化炭酸ガス貯蔵容器110は、真空断熱容器である。具体的には、液化炭酸ガス貯蔵容器110は、LGCである。液化炭酸ガス貯蔵容器110に充填されている液化炭酸ガスの圧力は、たとえば、0.6MPaG以上2.5MPaG以下である。
【0023】
なお、本明細書において、「真空断熱容器」とは、容器の少なくとも一部に設けられた真空空間によって容器内と容器外との間の熱の出入りを抑制可能な容器を意味する。液化炭酸ガス貯蔵容器110は、真空断熱容器に準ずる簡易断熱された容器でもよい。
【0024】
二酸化炭素供給路120は、液化炭酸ガス貯蔵容器110に連結されている。二酸化炭素供給路120の上流側の先端が液化炭酸ガス貯蔵容器110に連結されており、二酸化炭素供給路120の下流側の末端が噴射ノズル160に連結されている。本実施形態においては、二酸化炭素供給路120は、金属製の配管121と樹脂製のチューブ122とから構成されている。
【0025】
配管121の上流側の先端が液化炭酸ガス貯蔵容器110に連結されており、配管121の下流側の末端が絞り部材151に連結されている。配管121の途中に、配管121を開閉する第1開閉弁140が設けられている。液化炭酸ガス貯蔵容器110と第1開閉弁140との間に位置する配管121に冷却機構130が設けられている。冷却機構130が設けられている部分以外の配管121は、断熱材129で被覆されている。
【0026】
チューブ122の上流側の先端が絞り部材151に連結されており、チューブ122の下流側の末端には開口部123が設けられている。チューブ122の下流側は、噴射ノズル160の内部に位置している。噴射ノズル160の外部に位置している部分のチューブ122は、断熱材129で被覆されている。
【0027】
冷却機構130は、二酸化炭素供給路120内を通過する液化炭酸ガスを冷却して過冷却状態にする。冷却機構130は、絞り機構150に到達した際の液化炭酸ガスが液体のみで構成されている状態となるように、液化炭酸ガスを過冷却する。冷却機構130として、冷凍機または過冷却熱交換器などを用いることができる。
【0028】
絞り機構150は、二酸化炭素供給路120に設けられ、二酸化炭素供給路120を絞る絞り部材151を内蔵する。本実施形態においては、絞り部材151は、オリフィス板であるが、オリフィス板に限られず、ニードル弁などでもよい。絞り機構150は、絞り部材151を内蔵した継手である。
【0029】
噴射ノズル160は、二酸化炭素供給路120の末端に設けられている。噴射ノズル160の末端には、噴射口161が設けられている。噴射ノズル160の外周部に、推進ガス供給路171が接続される接続口162が、設けられている。
【0030】
推進ガス供給路171は、噴射ノズル160に接続され、推進ガスを供給する。推進ガス供給路171の上流側の先端が、推進ガスとなるたとえば窒素ガスまたはドライエアを貯蔵しているガス貯蔵容器170に連結されており、推進ガス供給路171の下流側の末端が噴射ノズル160の接続口162に接続されている。
【0031】
推進ガス供給路171には、たとえば電熱ヒータからなる加熱器180が設けられている。加熱器180は、推進ガス供給路171を通過する推進ガスを加熱する。本実施形態においては、推進ガス供給路171から分岐した分岐流路172が設けられている。分岐流路172は、推進ガス供給路171の加熱器180より上流側の位置から分岐している。
【0032】
分岐流路172の下流側の末端に、分岐流路172を開閉する第2開閉弁141が設けられている。分岐流路172は、第2開閉弁141を介して加熱機構190と接続されている。
【0033】
加熱機構190は、絞り機構150の外側から絞り部材151を加熱する。本実施形態においては、加熱機構190は、絞り機構150の外周に気体を吹き付けることにより絞り部材151を加熱する。具体的には、加熱機構190は、ノズルで構成されている。加熱機構190は、絞り機構150に気体を吹き付ける吹付孔191を有している。加熱機構190から絞り機構150に吹き付けられる気体は、分岐流路172から供給され、たとえば、常温の窒素ガスまたはドライエアである。
【0034】
以下、本発明の実施形態1に係るドライアイススノー噴射装置100の動作について説明する。
【0035】
第1開閉弁140が開かれることにより、液化炭酸ガス貯蔵容器110から二酸化炭素供給路120内に流入した液化炭酸ガスは、冷却機構130によって冷却されて過冷却状態となり、二酸化炭素供給路120を通過する際の受熱により気化した炭酸ガスが液化される。絞り機構150に到達した際の液化炭酸ガスは、液体のみで構成されている。
【0036】
絞り機構150の絞り部材151を通過した液化炭酸ガスは、断熱膨張して冷却される。その結果、ドライアイススノーが生成される。ドライアイススノーを含む炭酸ガスは、噴射ノズル160に導入される。
【0037】
ここで、絞り機構150の絞り部材151を通過してドライアイススノーが生成される際の炭酸ガスの相変化について説明する。
図2は、炭酸ガスのエンタルピー線図を示すグラフである。
図2においては、縦軸に絶対圧力、横軸にエンタルピーを示している。
【0038】
図2において、炭酸ガスは、領域Aで液体状態であり、領域Bで気体状態であり、領域Cで気液平衡状態であり、領域Dで臨界状態であり、領域Eで固気平衡状態である。領域Aと領域Cとの境界が、飽和液線L1であり、領域A、領域Cおよび領域Bと、領域Eとの境界が、三重点線L2である。
【0039】
液化炭酸ガス貯蔵容器110であるLGCから供給されて冷却機構130によって冷却されて過冷却状態となった液化炭酸ガスは、絞り機構150の絞り部材151を通過する際に、
図2の点P1から点線で示すように等エンタルピー変化により相変化する。この場合、液化炭酸ガスの40%以上50%以下がドライアイススノーとなる。
【0040】
仮にボンベから供給された液化炭酸ガスが、絞り機構150の絞り部材151を通過する際には、
図2の点P2から点線で示すように等エンタルピー変化により相変化する。この場合、液化炭酸ガスの15%以上25%以下がドライアイススノーとなる。
【0041】
よって、液化炭酸ガス貯蔵容器110であるLGCから液化炭酸ガスを供給することにより、ボンベから液化炭酸ガスを供給する場合に比較して、二酸化炭素供給路120における絞り機構150の絞り部材151の直後の位置にて多量のドライアイススノーが生成される。
【0042】
そこで、本実施形態に係るドライアイススノー噴射装置100においては、第2開閉弁141を開いた状態にして加熱機構190によって絞り機構150の外周に気体を吹き付けることにより絞り部材151を加熱する。第2開閉弁141は、第1開閉弁140と連動して開閉する。
【0043】
絞り機構150の絞り部材151を通過した直後の液化炭酸ガスの温度は約-15℃であり、絞り機構150に常温の気体を吹き付けて絞り部材151を加熱することにより、二酸化炭素供給路120における絞り機構150の絞り部材151の直後の位置にて生成したドライアイススノーによって二酸化炭素供給路120が閉塞することを抑制できる。その結果、開口部123から噴射ノズル160内にドライアイススノーを継続的に安定して導入することができる。
【0044】
ガス貯蔵容器170から推進ガス供給路171内に流入した推進ガスは、加熱器180によって加熱された後、噴射ノズル160内のチューブ122の外周側に流入し、開口部123から噴射ノズル160内に導入されたドライアイススノーを含む炭酸ガスと混合された混合ガスの状態で噴射口161から噴射される。混合ガスを被洗浄物に吹き付けることにより、被洗浄物を洗浄することができる。
【0045】
ここで、加熱機構190による絞り部材151の加熱を行なわずに混合ガスを感圧紙に吹き付けた場合と、加熱機構190による絞り部材151の加熱を行ないつつ混合ガスを感圧紙に吹き付けた場合との、ドライアイススノーの吹き付け安定性を確認した実験例について説明する。本実験例においては、感圧紙に対して噴射ノズル160を一定速度で走査しつつ、感圧紙に対して混合ガスを吹き付けた。
【0046】
図3は、加熱機構による絞り部材の加熱を行なわずに混合ガスを感圧紙に吹き付けた場合の感圧紙の状態を示す写真である。
図4は、加熱機構による絞り部材の加熱を行ないつつ混合ガスを感圧紙に吹き付けた場合の感圧紙の状態を示す写真である。
【0047】
図3に示すように、加熱機構190による絞り部材151の加熱を行なわずに混合ガスを感圧紙に吹き付けた場合には、ドライアイススノーが吹き付けられて黒色に変色した部分が斑に存在しており、ドライアイススノーの吹き付けが不安定になっていることが確認できた。
【0048】
図4に示すように、加熱機構190による絞り部材151の加熱を行ないつつ混合ガスを感圧紙に吹き付けた場合には、ドライアイススノーが吹き付けられて黒色に変色した部分が均一に存在しており、ドライアイススノーの吹き付けが安定していることが確認できた。
【0049】
本実施形態に係るドライアイススノー噴射装置100においては、加熱機構190によって絞り機構150の外側から絞り部材151を加熱することにより、二酸化炭素供給路120における絞り機構150の絞り部材151の直後の位置にて生成したドライアイススノーによって二酸化炭素供給路120が閉塞することを抑制できる。その結果、低温の液化炭酸ガスを用いて粒径の大きなドライアイススノーを継続的に安定して噴射することができる。
【0050】
本実施形態に係るドライアイススノー噴射装置100においては、加熱機構190が、絞り機構150の外周に気体を吹き付けることにより絞り部材151を加熱する構成であるため、加熱機構190として電熱ヒータなどを用いた場合に比較して、漏電などのリスクを低減することができる。
【0051】
本実施形態に係るドライアイススノー噴射装置100においては、加熱機構190が、推進ガス供給路171から分岐した分岐流路172と接続され、上記気体が分岐流路172から供給されることにより、加熱機構190の構成を簡易にすることができる。
【0052】
本実施形態に係るドライアイススノー噴射装置100においては、液化炭酸ガス貯蔵容器110として、大型の真空断熱容器であるLGCを用いることにより、液化炭酸ガス貯蔵容器としてボンベを用いた場合に比較して、液化炭酸ガス貯蔵容器の交換頻度を大幅に減らすことができる。
【0053】
本実施形態に係るドライアイススノー噴射装置100においては、加熱器180によって推進ガスを加熱することにより、被洗浄物の汚れの種類および状態に応じて洗浄効果が高まるように推進ガスの温度を調整できるとともに被洗浄物が結露することを抑制できる。
【0054】
本実施形態に係るドライアイススノー噴射装置100においては、絞り部材151がオリフィス板であることにより、絞り部材がニードル弁である場合に比較して、絞り機構150の構成を簡易にすることができる。
【0055】
(実施形態2)
以下、本発明の実施形態2に係るドライアイススノー噴射装置について説明する。なお、本発明の実施形態2に係るドライアイススノー噴射装置は、絞り機構の外周にフィンが設けられている点のみ実施形態1に係るドライアイススノー噴射装置と異なるため、実施形態1に係るドライアイススノー噴射装置と同様である構成については説明を繰り返さない。
【0056】
図5は、本発明の実施形態2に係るドライアイススノー噴射装置の絞り機構の周囲を示す側面図である。
図6は、
図5のドライアイススノー噴射装置の絞り機構を矢印VI方向から見た底面図である。
【0057】
図5および
図6に示すように、本発明の実施形態2に係るドライアイススノー噴射装置においては、絞り機構150の外周にフィン159が設けられている。これにより、絞り機構150の外周の表面積が増えるため、加熱機構190から絞り機構150に吹き付けられた気体と絞り機構150との接触面積を増やすことができる。その結果、加熱機構190による絞り部材151の加熱効率を向上することができるため、加熱機構190の気体の吹き付け量を低減することができる。
【0058】
(実施形態3)
以下、本発明の実施形態3に係るドライアイススノー噴射装置について説明する。なお、本発明の実施形態3に係るドライアイススノー噴射装置は、加熱機構が電熱ヒータである点のみ実施形態1に係るドライアイススノー噴射装置と異なるため、実施形態1に係るドライアイススノー噴射装置と同様である構成については説明を繰り返さない。
【0059】
図7は、本発明の実施形態3に係るドライアイススノー噴射装置の絞り機構の周囲を示す断面図である。
図7に示すように、本発明の実施形態3に係るドライアイススノー噴射装置においては、加熱機構290が電熱ヒータである。加熱機構290は、絞り機構150の外周に接するように設けられている。
【0060】
加熱機構290が電熱ヒータである場合は、加熱機構290による絞り部材151の加熱温度を容易に調整することができる。特に、絞り機構150に常温以上の熱を付与することが可能となる。
【0061】
なお、加熱機構が熱交換器であってもよい。熱交換器は、流体と絞り機構150との熱交換を行なう。流体としては、たとえば、推進ガスを用いることができる。この場合、熱交換器が、推進ガス供給路171から分岐した分岐流路172と接続され、上記流体が分岐流路172から供給されることにより、加熱機構の構成を簡易にすることができる。また、熱交換器を通過した推進ガスが推進ガス供給路171内に戻されるように、ループ状に分岐流路172が構成されている場合、推進ガスを効率よく使用することができる。
【0062】
なお、今回開示した上記実施形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0063】
100 ドライアイススノー噴射装置、110 液化炭酸ガス貯蔵容器、120 二酸化炭素供給路、121 配管、122 チューブ、123 開口部、129 断熱材、130 冷却機構、140 第1開閉弁、141 第2開閉弁、150 絞り機構、151 絞り部材、159 フィン、160 噴射ノズル、161 噴射口、162 接続口、170 ガス貯蔵容器、171 推進ガス供給路、172 分岐流路、180 加熱器、190,290 加熱機構、191 吹付孔。