(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-27
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】索状体制動装置
(51)【国際特許分類】
F16D 63/00 20060101AFI20220128BHJP
F16H 25/12 20060101ALI20220128BHJP
F16D 41/18 20060101ALI20220128BHJP
F16D 67/02 20060101ALI20220128BHJP
F16D 65/16 20060101ALI20220128BHJP
F16D 125/36 20120101ALN20220128BHJP
F16D 127/02 20120101ALN20220128BHJP
F16D 125/50 20120101ALN20220128BHJP
F16D 127/06 20120101ALN20220128BHJP
【FI】
F16D63/00 H
F16H25/12 A
F16D41/18 A
F16D63/00 R
F16D67/02 K
F16D65/16
F16D125:36
F16D127:02
F16D125:50
F16D127:06
(21)【出願番号】P 2018063534
(22)【出願日】2018-03-29
【審査請求日】2021-03-12
(73)【特許権者】
【識別番号】507418692
【氏名又は名称】トヨフレックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100170070
【氏名又は名称】坂田 ゆかり
(72)【発明者】
【氏名】近野 一郎
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-068174(JP,A)
【文献】特開平10-169674(JP,A)
【文献】特開2016-102528(JP,A)
【文献】特開2018-035596(JP,A)
【文献】登録実用新案第3069442(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 9/24-9/388
F16D 41/00-47/06
F16D 49/00-71/04
F16H 19/00-37/16
F16H 49/00
F16D 125/36
F16D 125/50
F16D 127/02
F16D 127/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上板と下板とを有する箱状のハウジングと、
前記ハウジングの内部に、前記上板に隣接するように設けられたプーリであって、略円筒形状の第1筒状部を有し、軸線まわりに回転可能に設けられたプーリと、
前記第1筒状部の外周面に当接する索状体と、
前記ハウジングの内部に、前記軸線まわりに回転可能かつ軸方向に移動可能に設けられたシャフト部材と、
径方向外側に向けて突出するように前記シャフト部材に設けられたピンと、
前記プーリに固定され、かつ前記第1筒状部の中空部に設けられたロータであって、略円筒形状の第2筒状部を有し、前記第2筒状部の内部に前記シャフト部材が回転可能に挿入され、前記第2筒状部に前記ピンが挿入されるカム溝が周方向に対して傾いて形成されたロータと、
前記シャフト部材に固定され、かつ前記中空部に設けられた略円板形状のシャフトプレートであって、前記下板側の面に当該面と略直交する方向に突出する鋸歯状の第1突起が複数形成されたシャフトプレートと、
前記シャフトプレートに隣接して前記シャフトプレートと略平行に設けられたクラッチプレートであって、前記シャフトプレートと対向する面に、前記第1突起と噛み合い可能な鋸歯状の第2突起が複数形成された略円板形状のクラッチプレートと、
前記下板と前記クラッチプレートとの間に設けられた制動部と、
前記シャフト部材と前記ハウジングとの間に設けられ、前記シャフト部材に下向きの力を付勢する弾性部材と、
を備え、
通常状態では、前記弾性部材の付勢力により前記ピンが前記カム溝の下端に位置し、前記シャフトプレートと前記クラッチプレートとが当接し、前記弾性部材が前記シャフトプレートを前記クラッチプレートに向けて押圧し、前記第1突起と前記第2突起とが噛み合って前記制動部が前記プーリの回転を制動し、
前記索状体を移動させることで前記プーリ及び前記ロータを第1方向に回転させると、前記弾性部材の付勢力に抗して前記カム溝に沿って前記ピンが上方向に移動し、前記シャフト部材及び前記シャフトプレートが上方向に移動し、前記シャフトプレートが前記クラッチプレートから離れて前記プーリが回転可能となる
ことを特徴とする索状体制動装置。
【請求項2】
前記制動部は、
前記上板に形成された孔に挿入され、かつ、前記シャフト部材が内部に挿入された軸受であって、前記シャフト部材と回転位相が一致した状態で前記ハウジングに対して回転可能な軸受と、
中心軸が前記軸線と異なるように前記クラッチプレートの下側に設けられた略円板形状のプラネタリシャフト部と、
中心軸が前記軸線と略一致するように前記プラネタリシャフト部の下側に設けられ、前記下板に軸支された軸部と、
中央部に孔が形成され、当該孔に前記プラネタリシャフト部が嵌入される略円板形状のプラネタリギアと、
前記下板に設けられ、前記プラネタリギアと噛み合う略円環形状のリングギアと、を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の索状体制動装置。
【請求項3】
前記ハウジングの内部に設けられ、側面に前記索状体が当接する棒状のロープガイドを2本備え、
平面視において前記軸線と前記ロープガイドの中心とを結んだ線は二等辺三角形をなし、
前記二等辺三角形の底辺と略平行かつ前記軸線を通る線と、前記底辺とは、平面視における位置が異なる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の索状体制動装置。
【請求項4】
前記第1筒状部の外周面には、全周にわたって、溝と、前記溝に隣接する略円環形状の2つの凸部と、が形成され、
前記索状体は、前記溝に収容される
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の索状体制動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、索状体制動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、昇降コードが一対の軸によって挟み付けられ、昇降コードの移動によって軸が回転し、軸に接続されたブレーキ部が作動して昇降コードに確実に抵抗を与えることができるブラインドの昇降装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の発明では、ブレーキ装置の軸径が小さく、昇降コード(索状体)と軸の間ですべりが発生しやすいため、索状体の移動を確実に停止させることができないおそれがある。また、特許文献1に記載の発明では、ブレーキ装置の軸が索状体と共に常時回転するため、制動が不要な場合においても索状体が制動されるおそれがある。
【0005】
本発明はこのような事情を鑑みてなされたもので、索状体の移動を確実に停止させるとともに、非制動時には索状体を無負荷で移動させることができる索状体制動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る索状体制動装置は、例えば、上板と下板とを有する箱状のハウジングと、前記ハウジングの内部に、前記上板に隣接するように設けられたプーリであって、略円筒形状の第1筒状部を有し、軸線まわりに回転可能に設けられたプーリと、前記第1筒状部の外周面に当接する索状体と、前記ハウジングの内部に、前記軸線まわりに回転可能かつ軸方向に移動可能に設けられたシャフト部材と、径方向外側に向けて突出するように前記シャフト部材に設けられたピンと、前記プーリに固定され、かつ前記第1筒状部の中空部に設けられたロータであって、略円筒形状の第2筒状部を有し、前記第2筒状部の内部に前記シャフト部材が回転可能に挿入され、前記第2筒状部に前記ピンが挿入されるカム溝が周方向に対して傾いて形成されたロータと、前記シャフト部材に固定され、かつ前記中空部に設けられた略円板形状のシャフトプレートであって、前記下板側の面に当該面と略直交する方向に突出する鋸歯状の第1突起が複数形成されたシャフトプレートと、前記シャフトプレートに隣接して前記シャフトプレートと略平行に設けられたクラッチプレートであって、前記シャフトプレートと対向する面に、前記第1突起と噛み合い可能な鋸歯状の第2突起が複数形成された略円板形状のクラッチプレートと、前記下板と前記クラッチプレートとの間に設けられた制動部と、前記シャフト部材と前記ハウジングとの間に設けられ、前記シャフト部材に下向きの力を付勢する弾性部材と、を備え、通常状態では、前記弾性部材の付勢力により前記ピンが前記カム溝の下端に位置し、前記シャフトプレートと前記クラッチプレートとが当接し、前記弾性部材が前記シャフトプレートを前記クラッチプレートに向けて押圧し、前記第1突起と前記第2突起とが噛み合って前記制動部が前記プーリの回転を制動し、前記索状体を移動させることで前記プーリ及び前記ロータを第1方向に回転させると、前記弾性部材の付勢力に抗して前記カム溝に沿って前記ピンが上方向に移動し、前記シャフト部材及び前記シャフトプレートが上方向に移動し、前記シャフトプレートが前記クラッチプレートから離れて前記プーリが回転可能となることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、弾性部材の付勢力によりピンがカム溝の下端に位置し、シャフトプレートとクラッチプレートとが当接し、弾性部材がシャフトプレートをクラッチプレートに向けて押圧し、シャフトプレートに形成された第1突起とクラッチプレートに形成された第2突起とが噛み合って、制動部がプーリの回転、すなわち索状体の移動を制動する。これにより、索状体の移動を確実に停止させることができる。特に、プーリの内部にシャフトプレートやロータを設けることでプーリを大径化し、索状体とプーリと接触長を確保し、索状体とプーリとの摩擦を大きくし、索状体がプーリに対して滑らないようにする。これにより、プーリ、すなわち索状体を確実に制動することができる。
【0008】
また、本発明によれば、索状体を移動させてプーリ及びロータを第1方向に回転させると、弾性部材の付勢力に抗してカム溝に沿ってピンが上方向に移動する。その結果、シャフト部材及びシャフトプレートが上方向に移動し、シャフトプレートがクラッチプレートから離れてプーリが回転可能となる。これにより、非制動時には索状体を無負荷で移動させることができる。
【0009】
ここで、前記制動部は、前記上板に形成された孔に挿入され、かつ、前記シャフト部材が内部に挿入された軸受であって、前記シャフト部材と回転位相が一致した状態で前記ハウジングに対して回転可能な軸受と、中心軸が前記軸線と異なるように前記クラッチプレートの下側に設けられた略円板形状のプラネタリシャフト部と、中心軸が前記軸線と略一致するように前記プラネタリシャフト部の下側に設けられ、前記下板に軸支された軸部と、中央部に孔が形成され、当該孔に前記プラネタリシャフト部が嵌入される略円板形状のプラネタリギアと、前記下板に設けられ、前記プラネタリギアと噛み合う略円環形状のリングギアと、を有してもよい。これにより、ハウジングと軸受との間に若干の回転抵抗が発生し、軸受、シャフト部品及びシャフトプレートがプーリと一緒に回転せず、シャフトプレートとクラッチプレートとを接続し、プラネタリギアとリングギアとの間の摩擦力や駆動ロスによりシャフト部品やシャフトプレートの回転力を制動することができる。また、プラネタリギア及びリングギアが同一平面上に配置されるため、ブレーキ機構を薄型化することができる。また、プラネタリギア及びリングギアの径や歯数を変えたり、プラネタリギアの偏心量を変えたりすることで、制動力を自由に設定することができる。
【0010】
ここで、前記ハウジングの内部に設けられ、前記索状体が当接する棒状のロープガイドを2本備え、平面視において前記軸線と前記ロープガイドの中心とを結んだ線は二等辺三角形をなし、前記二等辺三角形の底辺と略平行かつ前記軸線を通る線と、前記底辺とは、平面視における位置が異なってもよい。これにより、索状体に引っ張り力が発生している状態において、索状体をプーリに強く押し付け、索状体とプーリとの摩擦力を大きくすることができる。
【0011】
ここで、前記第1筒状部の外周面には、全周にわたって、溝と、前記溝に隣接する略円環形状の2つの凸部と、が形成され、前記索状体は、前記溝に収容されてもよい。これにより、溝に索状体を収容したときに索状体と凸部とを当接させて、索状体とプーリとの摩擦力をより大きくすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、索状体の移動を確実に停止させるとともに、非制動時には索状体を無負荷で移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】索状体制動装置1の概略を示す斜視図であり、索状体制動装置1を斜め上から見た図である。
【
図2】索状体制動装置1の概略を示す斜視図であり、索状体制動装置1を斜め下から見た図である。
【
図3】索状体制動装置1の内部構成の概略を示す斜視図である。
【
図4】索状体制動装置1の内部構成の概略を示す断面斜視図である。
【
図6】シャフト部品23、シャフトプレート24及びロータ26を組み立てた状態における概略を示す側面図である。
【
図7】索状体制動装置1をxy平面と略平行な面で切断した断面図である。
【
図8】制動時における索状体制動装置1の断面図である。
【
図9】逆回転時における索状体制動装置1の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。本発明の索状体制動装置は、緊急脱出用のケーブル装置、索状体を用いて駆動する昇降装置、索状体によりブラインドを昇降させる装置等に適用することができる。
【0015】
図1、2は、索状体制動装置1の概略を示す斜視図であり、
図1は索状体制動装置1を斜め上から見た図であり、
図2は索状体制動装置1を斜め下から見た図である。索状体制動装置1は、索状体21(後に詳述)を一方向(
図1太矢印参照)へ移動させ、索状体21を反対方向へ移動させないように、索状体21を制動する装置である。
【0016】
以下、索状体制動装置1の外側における索状体21の延設方向をx方向とし、軸線axの方向をz方向とし、x方向及びz方向と直交する方向をy方向とする。また、x方向を左右方向とし、y方向を奥行き方向とし、z方向を高さ方向とする。また図では、索状体21について、索状体制動装置1の近傍に位置する部分のみを図示し、その他の部分については図示を省略している。
【0017】
索状体制動装置1は、主として、ハウジング10と、回転駆動部20(後に詳述)と、制動部30(後に詳述)と、ロープガイド40と、を有する。回転駆動部20、制動部30、及びロープガイド40は、ハウジング10の内部に設けられる。
【0018】
ハウジング10は、箱状の部材であり、主として、下板11と、ケース部12とを有する。ケース部12の底面(上板13)が一番上側(+z側)に配置され、ケース部12の開口部12a(
図5参照)を覆うように下板11が設けられる。
【0019】
なお、
図1、2では、下板11が下側(-z側)に位置し、上板13が上側(+z側)に位置するように索状体制動装置1が配置されているが、索状体制動装置1の配置はこれに限られない。例えば、上板13が下側に位置し、下板11が上側に位置してもよいし、上板13が左側(-x側)に位置し、下板11が右側に位置してもよい。
【0020】
ケース部12の側面には、2個の開口部12aが形成される。開口部12aは、+x側及び-x側の2箇所に、左右対称に設けられる。開口部12aは、索状体21が挿通される孔であり、開口部12aの近傍にはロープガイド40が設けられる。
【0021】
上板13には、孔13a(
図5参照)が形成され、孔13aには軸受14が挿入される。軸受14は、孔13a、すなわちハウジング10に対して回転可能である。軸受14は、筒状部を有し、筒状部が孔13aに挿入され、かつ、シャフト部材23(後に詳述)が筒状部の内部に挿入される。軸受14は、固定部材19により軸方向に移動しないようにケース部12に設けられる。
【0022】
索状体21は、可撓性を有する紐状体であり、例えばロープである。なお、本実施の形態では、ロープを索状体21として用いたが、ワイヤ、ケーブル、紐、鋼線等を索状体21として用いてもよい。また、索状体21の断面形状は略円形形状に限られない。
【0023】
図3は、索状体制動装置1の内部構成の概略を示す斜視図である。
図4は、索状体制動装置1の内部構成の概略を示す断面斜視図である。
図5は、索状体制動装置1の分解斜視図である。
【0024】
回転駆動部20は、主として、プーリ22と、シャフト部品23と、シャフトプレート24と、ピン25と、ロータ26と、弾性部材27と、を有する。プーリ22、シャフト部品23、シャフトプレート24、ロータ26及び弾性部材27は、同軸上に配置されている。
【0025】
プーリ22は、索状体21の直線的な移動を回転運動に変える部品であり、ケース部12の内部に、軸線axまわりに回転可能に設けられている。プーリ22は、主として、略円筒形状の筒状部22aと、筒状部22aの上端に設けられた板状部22bと、を有する。筒状部22aの外周面には、索状体21が収容される溝22cが形成される。筒状部22aの内側の領域である中空部22dには、シャフト部品23、シャフトプレート24、ピン25、ロータ26、及び弾性部材27が設けられる。
【0026】
溝22cは、筒状部22aの外周面の全周にわたって形成される。索状体21は、筒状部22aの略半周にわたって筒状部22a(ここでは、溝22c)と接触する。溝22cの上下には、溝22cに隣接して、それぞれ略円環形状の凸部22gが設けられる。凸部22gは、索状体21の位置がずれて索状体21が溝22cから外れることを防止する。なお、溝22c及び凸部22gは必須ではない。
【0027】
また、溝22c及び凸部22gの数は、図示した形態に限られない。例えば、ブラインドを昇降させる装置に索状体制動装置1を適用する場合には、ブラインドの開閉用および上下用として、溝22cを3個設け、凸部22gを6個設けてもよい。
【0028】
板状部22bの略中央には開口部22eが形成され、開口部22eには軸受14が挿入される。また、板状部22bには、開口部22eに沿って、筒状部22aと略平行な軸部22fが形成される。
【0029】
シャフト部品23は、略棒状の部材であり、ハウジング10の内部に軸方向(z方向)に移動可能に設けられている。シャフト部品23は、他の部分より径が太い太径部23aを有し、ピン25が嵌入される穴23bが複数(ここでは3個)形成される。ピン25は、金属製の棒材であり、シャフト部品23から径方向外側に向けて突出するように設けられている。
【0030】
軸受14には、穴14aが形成されている。シャフト部品23の上端部側(太径部23aの上側(+z側)の部分)の上部軸部23cは、穴14aに挿入される。つまり、上部軸部23cは、軸受14を介して、プーリ22の中空部に挿入される。
【0031】
上部軸部23cの先端部23c-1及び穴14aの奥部14a-1は、軸線axと略直交する面で切断したときの形状(以下、単に断面形状という)が略六角形形状(略六角柱形状)である。上部軸部23cが穴14aに挿入されると、先端部23c-1と奥部14a-1とが嵌合する(先端部23c-1と奥部14a-1との間に多少の隙間を有してもよい)。したがって、軸受14は、シャフト部材23と回転位相が一致した状態で、ハウジング10及びプーリ22に対して回転可能である。
【0032】
なお、本実施の形態では、先端部23c-1及び奥部14a-1が略六角柱形状であり、上部軸部23c及び穴14aのその他の部分は略円柱形状であるが、上部軸部23c及び穴14aの全体が略六角柱形状であってもよい。また、先端部23c-1及び奥部14a-1の形状は略六角柱形状に限られない。上部軸部23c及び穴14aは、上部軸部23cと穴14aの回転位相を一致させる平面をそれぞれ有していればよく、例えば、先端部23c-1及び奥部14a-1は、断面形状が略D形状であってもよいし、断面形状が略平行な2つの線を有する略小判形状であってもよい。
【0033】
また、軸受14の先端にはフランジ部14cが形成されている。フランジ部14cは、シャフト部品23が+z方向に移動した時に、太径部23aの上端面が当接する。
【0034】
シャフト部品23には、シャフトプレート24が固定される。シャフトプレート24は、シャフト部品23の太径部23aの下側(-z側)に、太径部23aに隣接して設けられている。シャフトプレート24は、略円板形状の部材であり、下板11側の面24aには、面24aと略直交する方向(下向き、-z方向)に突出する鋸歯状の突起24b(
図6参照)が複数形成されている。
【0035】
上部軸部23cの上端面には、弾性部材27が設けられる穴23dが形成される。弾性部材27は、例えばコイルバネ(ここでは圧縮コイルバネ)であり、ハウジング10(ここでは軸受14の底面14b)と穴23dの底面23eとの間に設けられている。弾性部材27は、シャフト部品23及びシャフトプレート24をクラッチプレート31(後に詳述)へ向けて、つまり下方向(-z方向)に押し出す。
【0036】
シャフト部品23のシャフトプレート24の下側の部分である下部軸部23fは、クラッチ部品32(後の詳述)の孔32cに挿入される。つまり、下部軸部23fは、クラッチ部品32を介して下板11に軸支される。
【0037】
ロータ26は、略円筒形状の部材であり、プーリ22の中空部22dに設けられる。ロータ26は、主として、略円筒形状の筒状部26aと、筒状部26aの上端に設けられた板状部26bと、を有する。板状部26bは、略円板形状であり、中央に孔26cが形成される。孔26cには、軸部22fが挿入される。板状部26bと板状部22bとは、ねじ等により固定される。
【0038】
筒状部26aの中空部26gには、フランジ部14c及び太径部23aが挿入される。ロータ26は軸受14に対して回転可能であり、シャフト部品23はロータ26に対して回転可能である。筒状部26a、すなわちロータ26の外周面には、ピン25が挿入されるカム溝26dが複数(ここでは3個)形成される。
【0039】
図6は、シャフト部品23、シャフトプレート24及びロータ26を組み立てた状態における概略を示す側面図である。カム溝26dは、長孔であり、周方向(
図6における左右方向)に対して傾いて形成されている。ピン25は、カム溝26dの下端(-z側の端)26eと、カム溝26dの上端(+z側の端)26fとの間で、カム溝26dに沿って摺動する。ピン25が下端26eに位置する時は、シャフトプレート24が下側(-z側)に位置し、シャフトプレート24がロータ26から離れている(
図6の実線参照)。ピン25が上端26fに位置する時は、シャフトプレート24が上側(+z側)に位置し、シャフトプレート24がロータ26に隣接している(
図6の点線参照)。
【0040】
シャフト部品23に固定されたピン25がカム溝26dに挿入されているため、ロータ26は、シャフト部品23に対して、カム溝26dが形成された一定の角度(例えば、略60度)の範囲内でのみ回転可能である。
【0041】
図3~5の説明に戻る。クラッチプレート31は、略円板形状の部材であり、ハウジング10の内部に設けられている。クラッチプレート31は、シャフトプレート24に隣接して、シャフトプレート24と略平行に設けられる。クラッチプレート31の上板13側の面31a、すなわちシャフトプレート24と対向する面31aには、面31aと略直交する方向(上向き)に突出する鋸歯状の突起31bが複数形成されている。突起31bと突起24bとは略同一形状であり、突起31bと突起24bとは噛み合い可能である。
【0042】
弾性部材27の付勢力によりシャフトプレート24がクラッチプレート31に押圧されると、突起31bと突起24bとが当接して噛み合う。突起31bと突起24bとが当接して噛み合った状態が、シャフトプレート24とクラッチプレート31とが接続された状態であり、この状態においてプーリ22やロータ26の回転が制動部30(後に詳述)により制動される。
【0043】
制動部30は、プーリ22およびロータ26の回転、すなわち索状体21の移動に制動を掛けるための部品であり、ハウジング10の下板11とクラッチプレート31との間に設けられている。制動部30は、主として、クラッチプレート31と一体に設けられたクラッチ部品32と、プラネタリギア33と、リングギア34と、を有する。
【0044】
クラッチ部品32は、クラッチプレート31の下側に、クラッチプレート31に隣接して設けられた略円板形状のプラネタリシャフト部32aを有する。プラネタリシャフト部32aの中心は、中心軸が軸線axと異なるように偏心している。
【0045】
プラネタリシャフト部32aの下側には、軸部32bが下向きに突出している。軸部32bは、中心軸が軸線axと略一致しており、下板11に形成された孔11aに挿入される。軸部32bは、固定部材19を介して下板11に固定される。
【0046】
クラッチ部品32には、略中央に孔32cが形成されており、孔32cには下部軸部23fが挿入される。下部軸部23fは、孔32cの内部を上下方向すなわち軸方向に摺動可能であり、孔32cの内部で回転可能である。
【0047】
プラネタリギア33及びリングギア34は、摩擦力によりクラッチプレート31(クラッチ部品32)を回転不能とするブレーキ機構である。プラネタリギア33は、略円板形状の部材であり、外周面に歯33aが複数形成されている。プラネタリギア33には、中央部に孔33bが形成され、孔33bにはプラネタリシャフト部32aが嵌入される。
【0048】
リングギア34は、下板11に形成された略円環形状の部材であり、下板11からハウジング10の内側に向けて(上向きに)突出するように設けられる。リングギア34の内周面には、歯33aと噛み合う歯34aが形成される。
【0049】
プラネタリギア33及びリングギア34が同一平面上に配置されることで、ブレーキ機構を薄型化することができる。プラネタリギア33及びリングギア34の径や歯数、プラネタリギア33の偏心量は任意に設定可能である。
【0050】
シャフトプレート24とクラッチプレート31とが接続されると、シャフト部品23からブレーキ機構に伝達された回転力は、プラネタリギア33がリングギア34に沿って動こうとする際に発生する摩擦力や駆動ロスにより制動される。
【0051】
ロープガイド40は、ハウジングの内部に2本設けられる。ロープガイド40は棒状の部材であり、外周面に索状体21を収容する溝40aが形成されている。索状体21は、ロープガイド40の側面、ここでは溝40aの底面に当接する。なお、溝40aは必須ではないが、索状体21の位置ずれを防止するためには溝40aを有することが望ましい。
【0052】
図7は、索状体制動装置1をxy平面と略平行な面で切断した断面図である。平面視(z方向から見た場合)において軸線axとロープガイド40の中心ax1とを結んだ線は二等辺三角形をなす。ロープガイド40の中心ax1を結んだ線(二等辺三角形の底辺)はx方向と略平行である。
【0053】
ロープガイド40は、プーリ22と索状体21とが離れる位置における索状体21の接線の近傍に溝40aの底面が位置するように配置される。また、ロープガイド40の中心ax1を結んだ線と、x方向と略平行かつ軸線axを通る線とは、平面視における位置が異なる。つまり、ロープガイド40の中心ax1は、軸線axに対してオフセットされている。これにより、索状体21をできるだけ長く(少なくとも略半周にわたって)プーリ22に巻き付け、プーリ22と索状体21とが当接している部分のなす角度(巻き付け角度θ)を大きくし、索状体21の移動をプーリ22の回転へと伝えやすくすることができる。
【0054】
なお
図7では、巻き付け角度θは略180度であるが、2本のロープガイド40間のx方向の距離を近くすることで、巻き付け角度θを略180度以上とすることができる。
【0055】
次に、このように構成された索状体制動装置1の動作及び機能について説明する。
図8は、制動時(通常状態)における索状体制動装置1の断面図である。
図9は、逆回転時における索状体制動装置1の断面図である。
【0056】
図8に示す制動時には、弾性部材27の反発力により、シャフトプレート24がクラッチプレート31に密着され、シャフトプレート24とクラッチプレート31とが接続されており、プーリ22の回転駆動力が制動部30に伝達される。制動部30は、プラネタリギア33が回転する際の摩擦抵抗や、プラネタリギア33とリングギア34とが噛み合う部分における摩擦抵抗により制動され、その結果プーリ22の回転に制動がかかる。これにより、索状体21の移動が制動される。
【0057】
ハウジング10に対して軸受14は回転可能であり、軸受14に対してプーリ22は回転可能である。また、先端部23c-1と奥部14a-1とを嵌合させて、シャフト部品23と軸受14の回転位相を一致させているため、ハウジング10と軸受14との間に若干の回転抵抗が発生する。この回転抵抗により、軸受14、シャフト部品23及びシャフトプレート24がプーリ22と一緒に回転せず、シャフトプレート24とクラッチプレート31を接続することができる。
【0058】
図9に示す逆回転時は、索状体制動装置1の外にある索状体21が-x方向に引っ張られている状態である。
図8に示す状態から、索状体制動装置1の外にある索状体21が-x方向に引っ張られると、プーリ22及びロータ26が+z方向からみて時計回り(
図9矢印参照)に回転する。その結果、弾性部材27の付勢力に抗して、カム溝26dに沿ってピン25が上方向に(下端26eから上端26fに向けて)移動し、シャフト部品23及びシャフトプレート24が上方向に移動する。
【0059】
先端部23c-1と奥部14a-1とが嵌合しており、シャフト部品23と共に軸受14が回転するため、シャフト部品23が軸方向に移動して弾性部材27が変形するときに弾性部材27に回転方向の力がかからず、弾性部材27の破損が防止される。
【0060】
シャフトプレート24が上方向に移動すると、シャフトプレート24とクラッチプレート31とが離れ、回転駆動部20が制動部30から切断されて、プーリ22の回転、すなわち索状体21の移動に制動がかからない状態となる。
【0061】
図9に示す状態において、索状体21の移動が停止されると、弾性部材27の付勢力により、カム溝26dに沿ってピン25が下方向に(上端26fから下端26eに向けて)移動し、シャフトプレート24が下方向に移動する。シャフトプレート24が下方向に移動すると、弾性部材27の付勢力によりシャフトプレート24がクラッチプレート31に向けて押圧され、突起24bと突起31bとが噛み合い、シャフトプレート24とクラッチプレート31とが接続された
図8の状態に戻る。
【0062】
本実施の形態によれば、プーリ22を一方向のみ回転させ、他方向に回転させないようにすることで、プーリ22に巻回された索状体21の一方向への移動を防止するように索状体21を確実に制動することができる。特に、プーリ22の内部にシャフトプレート24やロータ26を設けることでプーリ22を大径化し、これにより索状体21とプーリ22との接触長を確保し、索状体21とプーリ22との摩擦を大きくすることができる。その結果、索状体21がプーリ22に対して滑らないようにし(スリップロスをなくし)、プーリ22、すなわち索状体21を確実に制動することができる。また、プーリ22の内部にシャフトプレート24やロータ26を設けることで、索状体制動装置1を小型化することができる。
【0063】
また、本実施の形態によれば、索状体21が当接するロープガイド40が2本設けられているため、索状体21が引っ張られることで索状体21がプーリ22に強く押し付けられる。これにより、索状体21とプーリ22との摩擦力が大きくなり、索状体21を移動させることでプーリ22を効率よく回転させたり、索状体21を確実に制動したりすることができる。
【0064】
また、本実施の形態によれば、溝22cの上下に略円環形状の凸部22gを設けることで、溝22cに索状体21を収容したときに索状体21と凸部22gとを当接させて、索状体21とプーリ22との摩擦力をより大きくすることができる。
【0065】
また、本実施の形態によれば、プーリ22及びロータ26を回転させ、ピン25をカム溝26dに沿って移動させることで、シャフトプレート24とクラッチプレート31との接続、非接続の切り替えを行うため、動作が滑らかになる。また、シャフトプレート24とクラッチプレート31との接続、非接続を容易にかつ確実に切り替ることができ、これにより制動力のON/OFFの切り替えを確実に行うことができる。
【0066】
また、本実施の形態によれば、逆回転時(
図9参照)には、シャフトプレート24とクラッチプレート31とが離れ、回転駆動部20が制動部30から切断されているため、無負荷で索状体21を移動させることができる。
【0067】
また、本実施の形態によれば、ピン25以外の構造部品を樹脂で形成することが出来るため、容易にかつ低コストで製造することができる。
【0068】
また、本実施の形態によれば、同一平面上に配置された板状のプラネタリギア33及びリングギア34を用いたブレーキ機構を採用することで、ブレーキ機構を薄型化することができる。また、プラネタリギア33及びリングギア34の径や歯数を変えたり、プラネタリギア33の偏心量を変えたりすることで、制動力を自由に設定することができる。そのため、索状体制動装置1を様々な装置に適用することができる。
【0069】
なお、本実施の形態では、プラネタリギア33及びリングギア34を用いたブレーキ機構を採用したが、ブレーキ機構はこれに限られない。例えば、プラネタリギア33に変えてロータを設け、リングギア34に変えてリブを設け、リブの内側の空間に粘性流体(例えばシリコンオイル)を充填させ、シリコンオイル内でロータを回転させることで制動力を発揮させるブレーキ機構を用いてもよい。また例えば、クラッチプレート31と下板11との間に複数の歯車を設け、減速比を大きくすることで制動力を発揮させるブレーキ機構を用いてもよい。また例えば、クラッチプレート31に偏心ウエイトを取り付け、回転エネルギーを意図的に分散させて制動力を発揮させるブレーキ機構を用いてもよい。また例えば、クラッチプレート31と下板11との間に磁石や電磁石を設け、磁力により制動力を発揮させるブレーキ機構を用いてもよい。また例えば、クラッチプレート31と下板11との間に設けた摩擦板をブレーキ機構としてもよい。
【0070】
また、本実施の形態では、索状体21がロープガイド40に略90度にわたって当接し、索状体制動装置1の外側において索状体21がx方向に延設されていたが、索状体21の延設方向はx方向に限られない。例えば、索状体21がロープガイド40に略180度にわたって当接すれば、索状体制動装置1の外側において索状体21がy方向に延設される。
【0071】
以上、この発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0072】
また、本発明において、「略」とは、厳密に同一である場合のみでなく、同一性を失わない程度の誤差や変形を含む概念である。例えば、略平行、略直交とは、厳密に平行、直交の場合には限られない。また、例えば、単に平行、直交等と表現する場合においても、厳密に平行、直交等の場合のみでなく、略平行、略直交等の場合を含むものとする。また、本発明において「近傍」とは、例えばAの近傍であるときに、Aの近くであって、Aを含んでも含まなくてもよいことを示す概念である。
【符号の説明】
【0073】
1 :索状体制動装置
10 :ハウジング
11 :下板
11a :孔
12 :ケース部
12a :開口部
13 :上板
13a :孔
14 :軸受
14a :穴
14b :底面
14c :フランジ部
19 :固定部材
20 :回転駆動部
21 :索状体
22 :プーリ
22a :筒状部
22b :板状部
22c :溝
22d :中空部
22e :開口部
22f :軸部
22g :凸部
23 :シャフト部品
23a :太径部
23b :穴
23c :上部軸部
23d :穴
23e :底面
23f :下部軸部
24 :シャフトプレート
24a :面
24b :突起
25 :ピン
26 :ロータ
26a :筒状部
26b :板状部
26c :孔
26d :カム溝
26e :下端
26f :上端
26g :中空部
27 :弾性部材
30 :制動部
31 :クラッチプレート
31a :面
31b :突起
32 :クラッチ部品
32a :プラネタリシャフト部
32b :軸部
32c :孔
33 :プラネタリギア
33a :歯
33b :孔
34 :リングギア
34a :歯
40 :ロープガイド
40a :溝