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特許7016316審美歯科修復のモックアップ及びデンタルオーバーレイデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-27
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】審美歯科修復のモックアップ及びデンタルオーバーレイデバイス
(51)【国際特許分類】
   A61C 19/00 20060101AFI20220128BHJP
【FI】
A61C19/00 Z
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2018527003
(86)(22)【出願日】2016-07-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-10-11
(86)【国際出願番号】 EP2016067636
(87)【国際公開番号】W WO2017025304
(87)【国際公開日】2017-02-16
【審査請求日】2019-06-28
(31)【優先権主張番号】1557643
(32)【優先日】2015-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(31)【優先権主張番号】1650857
(32)【優先日】2016-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518049706
【氏名又は名称】ライラ ホールディング
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ステンメール,アルマン
(72)【発明者】
【氏名】レンヌ,ジャン-バティスト
(72)【発明者】
【氏名】オハナ,ミッシェル
(72)【発明者】
【氏名】ドゥヴィル,シャルル,ルイ,マリー
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-304904(JP,A)
【文献】特開2008-113851(JP,A)
【文献】実開昭50-037398(JP,U)
【文献】特開昭46-000898(JP,A)
【文献】特開2008-054989(JP,A)
【文献】特開2013-081785(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0178045(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 19/00
A61C 13/225
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取り外し可能に着用されることを意図したデンタルオーバーレイデバイスを製造する方法において、
口内に入れられ、既存の歯列の少なくとも一部に亘って一時的に着用されるように適合化されたデンタルオーバーレイデバイスを表すデジタルデータのファイルを、前記デンタルオーバーレイデバイスを装着することになる患者の口内を直接スキャンすることにより作成するステップ(E4)と、
前記作成されたデジタルデータのファイルから前記デンタルオーバーレイデバイスを直接的に製造するステップ(E5)とを含み、
前記製造するステップ(E5)は、既存の歯の形状に少なくとも部分的に一致するように少なくとも1つのハウジングを形成し、歯の位置ずれを矯正する機能を有することなく、取り外し可能に前記既存の歯にクリップされるように、前記デンタルオーバーレイデバイスを形成することを含み、
前記ハウジングは、既存の歯に前記デンタルオーバーレイデバイスをクリップすることにより前記デンタルオーバーレイデバイスを保持可能なように、目に見える前面壁と、歯頂部を覆って延在する咬合面壁によって前記前面壁に接続される舌側の少なくとも対向壁部と、によって画定され、
前記デンタルオーバーレイデバイスは、全ての方向において可変の厚さを有する前面を有し、及び/又は互いに異なる厚さを有する複数の前面を有する、方法。
【請求項2】
請求項1において、
初期の審美的外観を有する歯列の少なくとも一部を表す初期デジタルデータを取得するステップ(E1)と、
前記初期データに基づいて、前記初期の審美的外観において、前記歯列を少なくとも部分的に仮想的に表現するステップ(E2)と、
前記歯の仮想的な審美的外観を修正し、修正された審美的外観を取得するステップ(E3)とを有する方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記修正のステップ(E3)は、歯の色、歯の形状、歯のサイズ及び歯間間隔を含む歯の特徴のグループの少なくとも一部の修正を含む方法。
【請求項4】
請求項2または3において、
前記修正のステップ(E3)は、後に前記歯にベニアを適用することによって行うことができる修正に対応する審美的修正を行うように適合化されている方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項において、
支持体として機能し、前記デンタルオーバーレイデバイスをその上にクリップできる少なくとも1つの既存の歯において、前記デンタルオーバーレイデバイスの咬合形状を表すデジタルデータを取得するサブステップ(E41)、
前記デンタルオーバーレイデバイスの前庭及び/又は舌側の歯肉端の全部又は一部を表すデジタルデータを取得するサブステップ(E42)、及び/又は
既存の歯列の咬合を判定し、前記デンタルオーバーレイデバイスが咬合に与える影響が最小限となるように、下顎歯列の歯が上顎歯列の歯の舌面に対して当接する箇所において、歯の咬合のレベルでは材料を含まない上顎歯列オーバーレイデバイスの後壁の寸法における幾何学的限界を決定するサブステップ、
マンマシンインタフェース上で、前記デンタルオーバーレイデバイスの仮想的3次元表現を行うサブステップ(E4’)を有する方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項において、
前記デンタルオーバーレイデバイスを製造するステップ(E5)は、前記デンタルオーバーレイデバイスの少なくとも一部が既存の歯肉を覆うように意図された表面を形成し、当該表面が歯肉の一部を形成するように前記デンタルオーバーレイデバイスを形成することを含む方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項において、
前記デンタルオーバーレイデバイスを製造するステップ(E5)は、前記デンタルオーバーレイデバイスに前部および後部を形成し、前記後部に接続された前記前部を含む壁の形成を含み、前記前部のみが完全である方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項において、
前記デンタルオーバーレイデバイスを製造するステップ(E5)は、リサイクル可能な材料及び/又は生体適合性材料を用いて行われる方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項において、
前記デンタルオーバーレイデバイスは、材料の付加を含む技術である3次元印刷によって製造される方法。
【請求項10】
請求項1乃至7のいずれか1項において、
前記デンタルオーバーレイデバイスは、材料の除去を含む技術である、材料ブロックの機械加工又はレーザ又はウォータージェットによるカッティングによって製造される方法。
【請求項11】
デンタルオーバーレイデバイスを製造するための制御デバイス(2)であって、
初期の審美的外観を有する患者の歯列の少なくとも一部を表す初期デジタルデータを取得するモジュール(20)と、
前記患者の歯列の全部又は一部を、初期の審美的外観、及び前記初期の審美的外観を修正した少なくとも1つの審美的外観でそれぞれ表現する仮想モデルMOD及びMODを生成するモジュール(21)と、
請求項1乃至8のいずれか1項に記載のデンタルオーバーレイデバイスを製造する方法を実行する中央制御及び処理ユニット(UC)(26)と、
を備える制御デバイス。
【請求項12】
請求項11において、
前記初期データに基づいて、前記初期の審美的外観において、前記歯列を少なくとも部分的に仮想的に表現するモジュール(21)と、前記歯の仮想的な審美的外観を修正し、修正された審美的外観を取得するモジュールと、を備える制御デバイス。
【請求項13】
デンタルオーバーレイデバイスを製造するためのシステムであって、
歯科モックアップを製造するためのデバイス(3)と、
請求項11または12に記載の制御デバイス(2)と、
を備えるシステム。
【請求項14】
請求項13において、
撮像デバイス(1)を備えるシステム。
【請求項15】
処理ユニットによって実行されると、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の方法のステップの実行を制御するためのプログラムコード命令を含むコンピュータプログラム。
【請求項16】
取り外し可能かつ再使用可能な着用を意図したデンタルオーバーレイデバイスであって、
既存の歯の前庭面に重ね合わせられるように意図された少なくとも1つの非透明な前歯面と、
前記デンタルオーバーレイデバイスを、支持体として機能する既存の歯の少なくとも1つへの取り外し可能な取付のための手段と、を備え、
前記デンタルオーバーレイデバイスは、歯の位置ずれを矯正する機能を有することなく、取り外し可能に前記既存の歯にクリップされるように、既存の歯の形状に少なくとも部分的に一致するように構成された少なくとも1つのハウジングを有し、
前記ハウジングは、既存の歯に前記デンタルオーバーレイデバイスをクリップすることにより前記デンタルオーバーレイデバイスを保持可能なように、目に見える前面壁と、歯頂部を覆って延在する咬合面壁によって前記前面壁に接続される舌側の少なくとも対向壁部と、によって画定され、
全ての方向において可変の厚さを有する前面を有し、及び/又は互いに異なる厚さを有する複数の前面を有する、デンタルオーバーレイデバイス。
【請求項17】
請求項16において、
複数の一列の既存の歯の前面に重ね合わされるように意図された複数の前歯面を備えるデンタルオーバーレイデバイス。
【請求項18】
請求項16または17において、
既存の支持歯を収容するための少なくとも1つのハウジングを備え、
前記ハウジングは、前歯面を担う前壁と、前記前歯面よりも小さな表面積を有し、咬合への影響を最小にしながら、同じ既存の歯の舌側面の端部を覆うことが意図された反対側の後壁と、を有し、
前記2つの前壁及び後壁は、連結され、前記支持体として機能する既存の歯を挟み込み、クリッピングすることによって前記デンタルオーバーレイデバイスを前記既存の歯に取り付けることができるように設計されているデンタルオーバーレイデバイス。
【請求項19】
請求項18において、
前記ハウジングは、前記支持体として機能する既存の歯の形状に少なくとも部分的に一致するデンタルオーバーレイデバイス。
【請求項20】
請求項16乃至19のいずれか1項において、
いずれも既存の歯と直接接触するように意図され、前記既存の歯の前処理又は修正を行うことなく、いずれも既存の歯に取り外し可能に取り付けられるように意図されている前面と、必須ではない後面とを有するデンタルオーバーレイデバイス。
【請求項21】
請求項16乃至2のいずれか1項において、
一部が既存の歯肉又は既存の歯を覆うように意図された表面を形成する歯肉を模倣する部分を有するデンタルオーバーレイデバイス。
【請求項22】
請求項16乃至2のいずれか1項において、
前記デンタルオーバーレイデバイスの前記前壁のみが既存の歯の表面を完全に覆うデンタルオーバーレイデバイス。
【請求項23】
請求項16乃至2のいずれか1項において、
既存の歯の前庭面上に重ね合わされることを意図された少なくとも1つの前歯面を有し、前記既存の歯の舌側面を覆うように意図された後面を有さないデンタルオーバーレイデバイス。
【請求項24】
請求項16乃至2のいずれか1項において、
前記既存の歯の前庭面に重ね合わされることを意図された前歯面は、実際の歯の色に着色され、及び/又はデンタルオーバーレイデバイスは、生体適合性材料から製造されているデンタルオーバーレイデバイス。
【請求項25】
請求項16乃至2のいずれか1項において、
前記取り外し可能な取付のための手段は、接着剤、クリップ、固定手段及び/又は挿入手段を含むデンタルオーバーレイデバイス。
【請求項26】
請求項16乃至2のいずれか1項において、
前記デンタルオーバーレイデバイスの前記前面は、装飾要素であって、スクリーン印刷されたグラフィック表現、前記前面の全体を覆う少なくとも1つの着色層、又は蛍光性又は燐光性の塗料を含む装飾塗料を有し、又は前記デンタルオーバーレイデバイスは、蛍光性又は燐光性要素を含む装飾特性を組み込んだ材料を含むデンタルオーバーレイデバイス。
【請求項27】
請求項16乃至2のいずれか1項において、
前記デンタルオーバーレイデバイスの壁は、既存の歯を動かす力を加えないデンタルオーバーレイデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科の分野に関し、患者の審美歯科修復のモックアップ又はデンタルオーバーレイデバイス(dental overlay device)を製造するための方法及びシステムに関する。また、本発明は、患者の審美歯科修復のモックアップ又はデンタルオーバーレイデバイスを製造するための制御デバイスに関する。更に、本発明は、デンタルオーバーレイデバイス自体に関する。
【背景技術】
【0002】
患者が1つ以上の歯の審美的欠点を矯正することを望む場合、潜在的な歯科矯正治療を補完するために、セラミックベニアを使用して審美歯科修復を行う施術が広く知られている。ベニアは、所望の審美効果を得るために、目に見える歯の前面に接着剤による結合によって取り付けられる。このような取り付けでは、べニアを接着する前に、既存の歯、特に、その前面を修正して、べニアを取り付けるための、特に、べニアを取り付けても厚くなりすぎないようにするための処置が行われる。この処置は、例えば、歯の厚さを薄くして、ベニアを受け入れるための空間を形成するために目に見える歯の前面を研削することを含み、したがって、永久的かつ不可逆的である。更に、通常、2つの接触面を不可逆的に強く結合する強力な接着剤が使用されるため、これに関連するベニアの接着も永久的である。したがって、ベニアを取り外して、審美歯科修復を行う前の損傷を受けていない初期状態の歯に戻すことはできない。
【0003】
このような審美歯科処置は、高価で不可逆的である。
【0004】
審美歯科処置は、本質的に主観的であり、このような審美歯科処置を行う前に、可能な限り、予想される最終結果を視覚化して、患者にこれを承諾させる必要がある。
【0005】
第1の解決策は、できる限り所望の結果に近付けるために、患者の写真を修正して、歯科修復の仮想モックアップを患者に示すことである。これにより、簡単で、迅速で、安価な手法で、修復の最終結果を仮想的に視覚化して患者に示すことができる。しかしながら、現実的には、患者は、この結果を十分に理解することはできない。
【0006】
第2の解決策は、例えば、以下のステップを実施することによって、1つ以上の一時的なモックアップを作成することである。
【0007】
-例えば、アルギン酸塩又はシリコーンで患者の歯列及び顎の印象(impression)を作成する。
【0008】
-この印象を用いて、例えば、石膏によって、歯列の3次元初期モデルを鋳造する。
【0009】
-石膏モックアップ上にワックスアップ(wax up)を作成する。これは、初期の石膏モックアップにワックスを加えることによって、所望の最終的な歯列のモックアップを作成することを意味する。
【0010】
-ワックスアップの印象を取り、印象の後面を穿孔することによってシリコーンキー(silicone key)を作成する。
【0011】
-複合材料をキーに注入し、キーを口内に入れる。キーの後面の穿孔により、口内位置を確認できる。
【0012】
-複合材料が硬化した後、キーを取り外し、複合材料で作成された一時的なモックアップを歯の上に直接配置できるようにする。
【0013】
-可能であればモックアップ(又は一時的なモデル)を着色してバフ仕上げすることで、外観をより自然にすることができる。
【0014】
複合材料製のモックアップは、歯の上で直接的に所望の形状に成形される。次に、患者の既存の歯がそのまま残っている状態で、治療されていない歯の頂部をこのモックアップで覆う。これにより、患者は、予定されている審美歯科修復を、ある程度の現実感で、生体内で確認できる。この段階では、予定されている審美歯科処置を変更することができ、1又は複数の他の一時的なモックアップを作成することもできる。予定されている審美歯科処置が患者によって確認され、特に審美的及び機能的な観点から、患者が完全に満足すると、患者が視覚によって確認し、モックアップを使用して検証することができた審美的効果と同様の結果を得るために、最終的な治療が準備され、患者に適用される。
【0015】
1又は複数の一時的なモックアップを作成することは、複雑で時間がかかり、高価なプロセスである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上述の課題に鑑み、本発明の目的は、笑顔を改善(smile makeover)するためのより安価で簡単な解決策を提案することである。
【0017】
より具体的には、本発明の1つの目的は、上述した短所の全部又は一部を有さない、患者の審美歯科修復のモックアップを製造するための解決策を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この目的のために、本発明は、患者の審美歯科修復のモックアップ又はデンタルオーバーレイデバイスを製造する方法に関連し、この方法は、修復を人工的に表現し、口内に入れられ、患者の歯列の少なくとも一部に亘って一時的に着用されることが意図された歯科モックアップを表すデジタルデータのファイルを作成するステップと、作成されたデジタルデータのファイルからモックアップを直接的に製造するステップとを含む。
【0019】
方法は、以下のステップを含むことができる。
【0020】
初期の審美的外観を有する歯列の少なくとも一部を表す初期デジタルデータを取得するステップ。
【0021】
初期データに基づいて、初期の審美的外観において、歯列を少なくとも部分的に仮想的に表現するステップ。
【0022】
歯の仮想的な審美的外観を修正し、修正された審美的外観を取得するステップ。
【0023】
修正のステップは、歯の色、歯の形状、歯のサイズ及び歯間間隔を含む歯の特徴のグループの少なくとも一部の修正を含んでいてもよい。
【0024】
修正のステップは、後に歯にベニアを適用することによって行うことができる修正に対応する審美的修正を行うように意図されたものであってもよい。
【0025】
歯科モックアップは、モックアップを既存の歯にクリップできるように既存の歯の形状に少なくとも部分的に一致する少なくとも1つのハウジングを有していてもよい。
【0026】
方法は、以下のサブステップを有していてもよい。
【0027】
モックアップをクリップできる少なくとも1つの支持歯のレベルで、患者の歯列の全部又は一部を表す仮想モデルのネガを考慮することによって、モックアップの咬合形状を表すデジタルデータを取得するサブステップ。
【0028】
モックアップの前庭及び/又は舌側の歯肉端の全部又は一部を表すデジタルデータを取得するサブステップ。
【0029】
モックアップは、歯の位置ずれを修正する機能を有することなく、歯列弓上にクリップされるように設計してもよい。
【0030】
モックアップは、後部に接続された前部を含む壁を有していてもよく、前部のみが完全であってもよい。
【0031】
モックアップは、リサイクル可能な材料及び/又は生体適合性の材料から製造してもよい。
【0032】
モックアップは、付加技術を用いて、特に、3D印刷によって製造してもよい。
【0033】
モックアップは、材料の除去を含む技術、特に、材料ブロックの機械加工又はレーザ又はウォータージェットによるカッティングによって製造してもよい。
【0034】
また、本発明は、患者の審美歯科修復のモックアップを製造するためのデバイスに関連し、このデバイスは、初期の審美的外観を有する患者の歯列の少なくとも一部を表す初期デジタルデータを取得するモジュールと、患者の歯列の全部又は一部を、初期の審美的外観、及び初期の審美的外観を修正した少なくとも1つの審美的外観でそれぞれ表現する仮想モデルを生成するモジュールと、上述した患者の審美歯科修復のモックアップを製造する方法を実行する中央制御及び処理ユニット(UC)とを備える。
【0035】
このデバイスは、初期データに基づいて、初期の審美的外観において、歯列を少なくとも部分的に仮想的に表現するモジュールと、歯の仮想的な審美的外観を修正し、修正された審美的外観を取得するモジュールとを備えていてもよい。
【0036】
本発明は、更に、患者の審美歯科修復のモックアップを製造するためのシステムに関連し、このシステムは、歯科モックアップを製造するためのデバイスと、上述した制御デバイスとを備える。
【0037】
このシステムは、撮像デバイスを備えていてもよい。
【0038】
また、本発明は、処理ユニットによって実行されると、上述した方法のステップの実行を制御するためのプログラムコード命令を含むコンピュータプログラムに関連する。
【0039】
このために、本発明は、取り外し可能かつ再使用可能な着用を意図したデンタルオーバーレイデバイスであって、既存の歯の前庭面に重ね合わせられるように意図された少なくとも1つの非透明な前歯面と、デンタルオーバーレイデバイスを、支持体として機能する既存の歯の少なくとも1つへの取り外し可能な取付のための手段とを備えるデンタルオーバーレイデバイスに関連する。
【0040】
複数の一列の既存の歯の前面に重ね合わされるように意図された複数の前歯面を備えていてもよい。
【0041】
デンタルオーバーレイデバイスは、既存の支持歯を収容するための少なくとも1つのハウジング、好ましくは、少なくとも2つのハウジングを備えていてもよく、ハウジングは、前歯面を担う前壁、及び前歯面よりも小さな表面積を有し、特に、咬合への影響を最小にしながら、同じ既存の歯の舌側面の端部を覆うことが意図された反対側の後壁とを有していてもよく、2つの前壁及び後壁は、連結され、支持体として機能する既存の歯を挟み込み、クリッピングすることによってデンタルオーバーレイデバイスを既存の歯に取り付けることができるように設計されていてもよい。
【0042】
ハウジングは、支持体として機能する既存の歯の形状に少なくとも部分的に一致してもよい。
【0043】
デンタルオーバーレイデバイスは、全ての方向において可変の厚さを有する前面を有していてもよく、及び/又は互いに異なる厚さを有する複数の前面を有していてもよい。
【0044】
デンタルオーバーレイデバイスは、いずれも既存の歯と直接接触するように意図され、既存の歯の前処理又は修正を行うことなく、いずれも既存の歯に取り外し可能に取り付けられるように意図されている前面と、必須ではない後面とを有していてもよい。
【0045】
デンタルオーバーレイデバイスの前壁のみが既存の歯の表面を完全に覆うようにしてもよい。
【0046】
デンタルオーバーレイデバイスは、既存の歯の前庭面上に重ね合わされることを意図された少なくとも1つの前歯面を有し、既存の歯の舌側面を覆うように意図された後面を有さなくてもよい。
【0047】
既存の歯の前庭面に重ね合わされることを意図された前歯面は、実際の歯の色に着色してもよく、及び/又はデンタルオーバーレイデバイスは、生体適合性材料から製造してもよい。
【0048】
取り外し可能な取付のための手段は、接着剤、クリップ、固定手段及び/又は挿入手段を含んでいてもよい。
【0049】
デンタルオーバーレイデバイスの前面は、装飾要素を有していてもよく、特に、スクリーン印刷されたグラフィック表現、前面の全体を覆う少なくとも1つの着色層、又は蛍光性又は燐光性の塗料等の装飾塗料を有していてもよく、又はデンタルオーバーレイデバイスは、蛍光性又は燐光性要素等の装飾特性を組み込んだ材料を含んでいてもよい。
【0050】
デンタルオーバーレイデバイスの壁は、既存の歯を動かす力を加えなくてもよい。
【0051】
また、本発明は、歯列の審美的外観を一時的に変更するために上述のデンタルオーバーレイデバイスを使用する使用方法に関連し、この使用は、再生可能であり、又は歯科治療の予定されている結果を視覚化し、デンタルオーバーレイデバイスは、歯科治療を施すことなく既存の歯に取り外し可能に取り付けられる。
【0052】
本発明は、特許請求の範囲によって、より詳細に定義される。
【0053】
本発明のこれらの目的、特徴及び利点は、添付図面に関連して非限定的な例として示される1つの特定の実施形態の以下の記述によって詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】本発明の例示的な一実施形態に基づく、患者用の審美歯科修復のモックアップを製造するためのシステムを示す図である。
図2】本発明の1つの特定の実施形態に基づく、患者の審美歯科修復のモックアップを製造するための方法のステップのフローチャートである。
図3】1つの特定の例示的な実施形態に基づくデンタルオーバーレイデバイスの後面からの3次元図である。
図4A】様々な特定の例示的な実施形態に基づく装飾要素を有するデンタルオーバーレイデバイスの正面図である。
図4B】様々な特定の例示的な実施形態に基づく装飾要素を有するデンタルオーバーレイデバイスの正面図である。
図4C】様々な特定の例示的な実施形態に基づく装飾要素を有するデンタルオーバーレイデバイスの正面図である。
図4D】様々な特定の例示的な実施形態に基づく装飾要素を有するデンタルオーバーレイデバイスの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本発明の方法によって、患者の審美歯科修復のモックアップを製造することができる。これは、想定される将来の審美歯科修復の人工的なプレゼンテーション又はシミュレーションを提供するモックアップの製造を含む。
【0056】
ここで「審美歯科修復」とは、歯列矯正がない、すなわち、歯に持続的な力を加えることによって歯の位置を変更し、歯の位置ずれを修正するための処置を一切行わない、審美目的の歯科治療を意味する。例えば、審美歯科修復は、セラミック(又は他の適切な材料)から形成されたべニアを1つ以上の目に見える歯の面に取り付けることによって行うことができる。審美歯科修復の審美効果は、基本的に、関連する1又は複数の歯の審美的外観を変更することである。これは、目に見える前面のみでなく、例えば、既存の完全な歯を動かしたり、クラウン又は補綴物を嵌め込むことによって欠損している既存の歯の欠損部分を再生したりするような、歯の深部に対して処置を行う非審美的歯科治療と混同されるべきではない。非審美的歯科治療は、特に咀嚼など、歯が本来の機能を果たすことを可能にすることを主な目的としている。したがって、人工補綴物は、咀嚼中に強い力に耐えるという重要な技術的問題に対処しなければならない。対照的に、本発明に基づく歯の審美歯科修復では、関連する既存の歯は、以前と同様に咀嚼機能を継続し、これらの視覚的外観のみが変更される。当然ながら、本発明の審美歯科修復は、非審美歯科治療と組み合わせてもよく、例えば、歯の全部又は一部を形成する補綴物の追加を補うためにべニアを取り付けてもよい。
【0057】
審美歯科修復の「人工的なプレゼンテーション」又は「シミュレーション」とは、後述する歯科モックアップは、将来の審美歯科修復の想定される結果を人為的に再現することを意味する。
【0058】
「歯科モックアップ(dental mockup)」又はより単純に「モックアップ」は、審美修復に関係する歯の前面、すなわち、目に見える歯の面の全体を再現し、実際の歯、すなわち既存の歯に取り付けるためのデバイスが組み込まれた歯科用器具の形態をとることができる。一実施形態では、このようなモックアップは、患者の歯の少なくとも一部にクリッピングするための1又は複数のハウジング又はキャビティを含む。このようなハウジングは、モックアップの目に見える前面壁と、歯の頂部、又は側面を覆って延在する咬合面壁によってこれに接続されている少なくとも舌側の反対壁とによって画定され、これらの相補的な壁は、組み合わせてクリッピング機能を実現する。これらの壁は、あまり厚くないことが好ましい。モックアップは、様々な異なる形態をとり、様々な異なる材料を含み、患者の歯の全部又は一部に関わることができる。ハウジングには、歯の一部のみを収容してもよく、歯の全体を収容してもよい。モックアップの保持力を向上させるために、複数のハウジングを設けてもよい。モックアップのハウジングに収容された既存の歯を「支持歯(supporting tooth or teeth)」と呼ぶ。モックアップは、上顎歯列又は下顎歯列のいずれかを意図した1つのみであってもよいが、多くの場合、1つは患者の上顎歯列用であり、もう1つは下顎歯列用である2つのモックアップを製造する。
【0059】
歯科モックアップは、患者の口内に入れられ、歯列の少なくとも一部に一時的に装着されるように設計されている。これは、歯列に一時的に取り付けられるように設計されており、歯の位置ずれを矯正する機能を発揮することはなく、換言すれば、歯科矯正機能はない。このモックアップは、患者の口内の1又は複数の歯に取り付けられても、時間の経過とともに歯を動かすような力を加えることはない。
【0060】
他の実施形態によれば、モックアップは、その最小限の形態に小型化され、目に見える歯の前面のみから構成される。この場合、これは、例えば、実際の歯への接着剤による結合等の任意の手法によって取り付けることができる。この場合、モックアップは、一時的な取り付けを想定して設計されているため、このような結合は、当然、一時的である。使用される接着剤は、永久接着剤とは異なり、限られた期間の使用を意図しており、この期間は、例えば、数日間から数ヶ月の範囲内である。すなわち、この取り付けは可逆的である。したがって、このような場合も、モックアップは、取り外し可能であると言える。
【0061】
本発明は、患者の口に入れることによって患者が一時的に着用できる、例えば、プラスチック製の歯科モックアップを製造することを可能にする速やかで低コストの手法を提供する。
【0062】
すなわち、このモックアップは、歯科医院で患者に装着することができ、患者は、予定されている最終結果を生体内で直ちに確認でき、提案された審美歯科処置について、明確な判断材料に基づいて判断を下すことができる。
【0063】
予定されている歯科修復のモックアップを製造する方法は、以下の要素を含むシステムによって実施される。
【0064】
-撮像デバイス1、
-制御デバイス2、及び
-製造デバイス3
製造方法は、患者の歯列の全部又は一部に関する初期デジタルデータを取得する第1のステップE1を含む。歯列は、初期の審美的外観又は形態、又は審美的形相を有する。「審美的外観」とは、患者の歯の形態及び/又は審美的形相を意味する。審美的外観は、様々な審美的特徴、例えば、歯の色、歯の形状及び大きさ、並びに歯間間隔を含む。審美的外観には、歯科用べニアを用いて隠すことができる少量の歯の重なりも含まれる。いずれの場合も、患者の歯の審美的外観を決定するこれらの審美的特性は、歯に取り付けられるベニアに基づく歯科治療(又は「審美歯科修復」)によって変更できる特性である。
【0065】
ステップE1は、撮像デバイス1が、歯列の全体又は一部の初期の外観のデジタル画像IM(捕捉される画像の総数をNとして、i=1,2,…,N)を捕捉する画像捕捉サブステップE10を含む。取得される画像は、歯の特性を含み、特に、形状、色、歯間間隔、位置(特に、小さな重なりを隠すため)といった属性の全部又は一部に関連する特性を含む。これらの属性は、関連する歯の審美的外観を表す。撮像デバイス1は、患者の口内の画像を直接的に撮像することが意図された口腔内カメラ(intra-buccal camera)であることが望ましい。これに代えて、既知の手法で、患者の歯列の全部又は一部の3次元モデルを歯列の印象から鋳造することによって予め作製してもよく、撮像デバイスを使用して、このモデルのデジタル画像を撮影してもよい。
【0066】
画像データIM(i=1,2,…,N)は、患者の歯列の全部又は一部の初期の外観を表す。これらは、送信サブステップE11において、制御デバイス2に送信され、制御デバイス2によって受信される。
【0067】
歯列をデジタル化して初期デジタルデータIMを送信するステップE1に続いて、受信した初期画像データ(すなわち、画像データIM)に基づいて、患者の歯列の全部又は一部を仮想3Dで表現するステップE2を行う。制御デバイス2の1つのコンポーネントは、受信した画像データIMを処理し、初期仮想3DモデルMODを表す初期デジタルデータセットを生成する。このモデルMODは、患者の歯の全部又は一部の初期の外観(特に、形状、色、歯間間隔、位置に関して)を仮想的に表現する。例えば、モデルMODは、制御デバイス2の画面上に表示されることにより、仮想的に表現され、これにより、オペレータは、これを仮想的に視覚化し、操作できるようになる。
【0068】
表現ステップE2に続いて、(完全に又は部分的に)モデル化された歯列を仮想的に修正するステップE3を行う。この修正ステップにより、モデル化された歯の審美的外観を修正できる。これは、モデル化された実際の歯列に審美的な修正を加えるように設計されている。これらの修正は、後に歯科用べニアを1つ以上の歯に適合させることによって行うことができる修正に対応する。修正可能な歯の特徴は、形態的特徴及び/又は審美的特徴であってもよい。これらは、例えば、以下の審美的特徴の少なくとも1つに関係する。
【0069】
-歯の色
-歯の形状及び/又はサイズ(又は寸法)、例えば、磨耗した歯、壊れた歯、短すぎる歯、又はこのタイプの他の欠陥を有する歯
-歯間間隔
また、修正ステップE3では、少量の重なりといった、歯の小さな位置ずれを隠すこともできる。
【0070】
1又は複数のモデル化された歯を修正し又は仮想的に修正することにより、歯列の審美的外観を修正できる。この審美的外観の修正は、個人の笑顔を改善し、美しくすることを意図している。これにより、特に、理想的な、矯正された歯列の前庭面が決定される。したがって、ステップE3では、初期の審美的外観から修正された審美的外観を有する患者の歯列の少なくとも一部の3次元仮想モデルMODが生成される。このモデルMODは、データセットDATAによって定義される。また、このモデルは、潜在的に、既存の歯に修正又は治療を施すことなく、少なくとも1つの既存の歯に着脱可能に取り付けられる機能を実現するために適したハウジング又は形状を記述する。
【0071】
ステップE2及びE3は、制御デバイス2のソフトウェアコンポーネントによって実行される。この場合、制御デバイス2のマンマシンインタフェース手段25を用いて、オペレータが1又は複数のモデル化された歯を操作することによって、歯の修正された外観が仮想的に取得される。なお、ここでは、審美歯科用べニアを定義できる従来技術の任意の如何なる手法を行ってもよい。したがって、このステップは、完全に又は部分的に自動化できる。このステップの結果、患者の歯列の矯正された審美的外観の仮想モデルを表すデジタルデータセットが得られる。
【0072】
この方法は、ステップE3で得られた修正された外観に基づいて、患者の歯列に適した歯科モックアップGを仮想的に表現し、予定される審美歯科修復を人工的に再現するデジタルデータファイルFを作成するステップE4に進む。「患者の歯列に適した」とは、モックアップが患者の既存の歯の少なくとも幾つかの形状に適合するように設計されていることを意味する。モックアップをクリッピング又は嵌め込みにより取り付けることができる実施形態では、モックアップは、患者の1つ以上の支持歯の形状に一致するように設計された表面を含み、デジタルデータは、これらの表面の3次元の幾何学的形状の定義を含む。
【0073】
したがって、歯科モックアップGを表すデジタルファイルFは、モックアップの構造を定義するデジタルデータセットと、可能な場合、モックアップGを構築する際に使用されるデータとを含む。これは、ステップE3で得られた修正された審美的外観を有する患者の歯列の全部又は一部の仮想モデルMODに基づいて、換言すれば、デジタルデータセットDATAに基づいて、自動的に決定される。したがって、モックアップGのデジタルファイルFは、特に、製造デバイス3による歯科モックアップGの製造を制御する命令データを含んでいてもよい。
【0074】
モックアップGは、患者の将来の審美歯科修復のモックアップを構成し、ここでは、この修復作業は、1又は複数の患者の目に見える歯の前面に1つ以上の歯科用べニアを取り付けることによって行われることが意図されている。
【0075】
一実施形態によれば、モックアップGは、互いに結合された前部及び後部を含み、支持歯を受け入れるためのハウジングを画定する。これは、支持歯の形状に適合するように設計されており、したがって、患者の口内に入れ、歯列の少なくとも一部に一時的に装着できる。前方部分は、患者の1つ以上の目に見える歯の前面を完全に覆うように意図された壁を含む。この前壁は、歯科用べニアを使用して審美歯科修復の予定されている最終結果を、特に、目に見える外面のレベルで人工的に再現する。これは、ステップE3の間に定義された修正された特性、特に、歯の形状、色、大きさ及び歯間間隔に関連する特性を反映させている。後部は、1又は複数の支持歯の後部を完全に又は部分的に覆うように設計された壁を有していてもよい。この壁は、透かし加工領域(openwork regions)を有していてもよい。1つの有利な実施形態では、モックアップの前部のみを完全にする(これは、モックアップに収容される支持歯の前面を完全に覆うことを意味する)。
【0076】
歯にクリッピングされるモックアップの場合に実施されるステップE4は、以下のように、モックアップの輪郭を自動的に決定する幾つかのサブステップを含むことができる。
【0077】
-サブステップE41において、ステップE3で得られた患者の歯列の全部又は一部を表現する仮想モデルMODのネガを構築することにより、支持歯のレベルでモックアップの咬合形態を表現するデジタルデータを取得する。
【0078】
-モックアップは、口が閉位置にあるとき、干渉が生じないように又はできる限り干渉が生じないように、上下2つの歯列弓が接触する際、これらの咬合に最も適合するように設計される。より具体的には、上顎歯列弓を意図したモックアップの後面は、好ましくは歯肉の限界までは延びていない。これらは、歯の咬合のレベルでは、すなわち、下顎歯列の歯が上顎歯列の歯の舌側面に当接する箇所では、如何なる材料も含まない。この咬合は、個人の既存の歯列の仮想再生によって自動的に検出され、上顎歯列オーバレイデバイスの後壁の寸法の限界を画定する。
【0079】
-他のサブステップE42では、口腔前庭及び/又は舌側における、モックアップの1又は歯肉端を表現するデジタルデータを取得する。第1の手法では、ステップE3で得られた患者の修復された歯列の全部又は一部を表現する仮想モデルMODのデジタルデータを考慮し、仮想モデルによって与えられた終了点に基づいて歯肉端を画定する。第2の手法では、特定のカテゴリの歯について、平均歯高を電子メモリに事前に保存し、これらの平均値及び関連する歯のタイプの知識に基づいて、歯肉端を計算する。モックアップの歯肉端は、実際の歯列と実際の歯肉との間の実際の境界に対応するように算出される。この計算により、モックアップの目に見える前面の高さを最適に調整できる。
【0080】
変形例では、モックアップは、歯肉の一部も再生する。したがって、このモックアップは、既存の歯肉又は既存の歯を覆うことができる表面を含む。この変形例では、不規則な歯肉線に起因する審美上の不具合、具体的には、歯肉の後退によって歯の見栄えが悪くなる不具合を修正できる。この変形例により、連続的かつ審美的に満足できる歯肉線を再定義でき、同時に、モックアップの最適な歯肉端を画定できる。
【0081】
次に、この方法は、歯科モックアップGを製造するステップE5に進む。この製造は、製造デバイス3によって行われる。ここでは、3D印刷等の付加製造技術(additive manufacturing technique)を使用できる。これに代えて、材料の除去による製造技術を用いてもよい。この場合、歯科モックアップは、例えば、材料のブロックからの機械加工、又はレーザ又はウォータージェットによるカッティングによって製造される。いずれの場合も、製造方法は、例えば、樹脂又はセラミックタイプの生体適合性材料、又は金属を使用する。
【0082】
製造ステップE5では、製造デバイス3は、製造される歯科モックアップに対応するデジタルファイルに基づいて制御され、駆動される。この特定の例では、制御デバイス2は、製造デバイス3に製造制御命令(例えば、使用される技術に応じて、3D印刷を制御する命令又は機械加工を制御する命令)を送信する。これに代えて、制御デバイス2は、ファイルFを製造デバイスに送信してもよい。この場合、製造制御命令は、製造デバイスによってファイルFから直接的に生成される。
【0083】
歯科モックアップの製造に使用される材料は、生体適合性材料であってもよい。これは、リサイクル可能であることが望ましい。これは、使用済みの(最終的に、殆ど使用されていない)モックアップをリサイクルして新しいモックアップを製造できることを意味する。
【0084】
モックアップを構築するためのデジタルファイルを作成することにより、患者の歯列の実際の3Dモデルを生成する中間ステップを必要とすることなく、このモックアップを直接的に製造できる。この結果、歯科医院において、モックアップを速やかに製造できる。患者が歯科医院に一回来院するだけで、患者の歯列(の全部又は一部)を表す初期データを取得し、モックアップを製造し、患者に試着させることもできる。
【0085】
もちろん、複数のデジタルファイルF、F…を作成して、複数の歯科モックアップG、G…を製造してもよく、これにより、患者は、代替となる複数の審美歯科修復を試すことができる。
【0086】
これに代えて、方法は、オペレータが、例えば、画面上のマンマシンインタフェースを使用して、個人の既存の歯列の仮想表現上に仮想的に置かれたモックアップを視覚化する中間ステップE4’を含んでいてもよい。この仮想表現は、3次元であり、オペレータは、実現される審美的結果を検証するため、モックアップの前面のみでなく、取り付け機能を確認するために、後面を視覚化することもできる。
【0087】
モックアップの製造を駆動する制御デバイス2は、以下のモジュールを含む。
【0088】
-この例では、画像データIMである初期外観を有する歯列の全部又は一部を表す初期デジタルデータを取得するモジュール20
-患者の歯列の全部又は一部を、初期の審美的外観、及びこの初期の審美的外観を修正した少なくとも1つの審美的外観でそれぞれ表現する仮想モデルMOD及びMODを生成するモジュール21
-モジュール21によって生成された初期の外観を修正した外観に対応する、患者の歯列に適した歯科モックアップGを表す少なくともデジタルデータファイルFを作成することができる作成モジュール22
-製造デバイス3に接続するための接続インタフェース23
-デジタルデータファイルFに基づいてモックアップ製造デバイスを駆動することができるドライバモジュール24
-マンマシンインタフェース手段25
-中央制御及び処理ユニット(UC)26
モジュール20は、撮像デバイス1との接続のための接続インタフェースと、撮像デバイス1によって捕捉されて送信された画像データIMを含む初期デジタルデータを受信し、仮想モデルを生成するモジュール21にこれらの初期データを供給する手段とを備える。受信された画像データは、撮像デバイス1を用いた患者の歯列の全部又は一部の画像捕捉によって取得されたものである。モジュール20は、ステップE11(受信)を実施することを意図している。
【0089】
モデル生成モジュール21は、以下のことを可能にするソフトウェア要素を組み込んでいる。
【0090】
-初期の外観を有する患者の歯列の全部又は一部を表す第1の3次元仮想モデルMODを生成する。
【0091】
-歯の審美的特徴(特に形状、色、大きさ、歯間間隔)を変更することによって修正された外観を有する患者の歯列の全部又は一部を表す少なくとも1つの第2の3次元仮想モデルMODを生成する。
【0092】
-デバイス2の画面上で、生成された又は生成中の仮想モデルの表示を管理する。
【0093】
生成モジュール21は、ステップE2及びステップE3を実装するように設計されている。
【0094】
作成モジュール22は、歯科用器具に関するデジタルファイルFを作成することを意図している。デジタルファイルは、患者の歯列に適したモックアップを表現し、初期の歯の構成に対して、少なくとも歯列の前面の外観を変更する審美歯科修復を再現する。作成モジュール22は、ステップE4を実施するように設計されている。
【0095】
接続インタフェース23により、制御デバイス2は、モックアップの製造のための外部デバイス3、例えば、3Dプリンタに接続できる。
【0096】
ドライバモジュール24は、モジュール22によって作成されたデジタルファイルに基づいて、製造デバイス3の動作を駆動するように設計されている。これは、歯科矯正器具(orthodontic appliance)の製造を駆動するために、製造デバイス3に制御命令を送信することを意図している。ドライバモジュール24は、作成されたデジタルファイルに基づいて、製造ステップE5の実行を直接的に制御するように意図されている。
【0097】
モジュール21、22、24は、これらのモジュールが処理ユニット26によって実行されると、対応する方法ステップを実行するためのソフトウェア命令を含むソフトウェアモジュールである。
【0098】
マンマシンインタフェース25は、表示画面及び/又はその他のデータフィードバック手段、キーボード及び/又はその他のデータ及び/又は制御入力手段、及びグラフィックインタフェースGUI(グラフィカルユーザインタフェース)を備える。
【0099】
最後に、制御デバイス2は、ここではマイクロプロセッサを含む中央処理ユニット26を備え、中央処理ユニット26は、全ての要素20~25に接続され、これらの動作を制御する。
【0100】
本発明は、撮像デバイス1、制御デバイス2及び製造デバイス3を含むシステムにも関連する。このシステムの3つのコンポーネント1、2及び3は、ここでは別個である。撮像デバイス1及び製造デバイス3は、有線接続又は無線接続によって制御デバイスに接続してもよい。これに代えて、撮像デバイス1及び/又は製造デバイス3を制御デバイス2に組み込んでもよい。
【0101】
また、本発明は、プログラムが実行されると、処理ユニット、この例ではユニット26が上述した方法のステップを実行するためのプログラムコード命令を含むコンピュータプログラムに関する。
【0102】
変形例では、歯科モックアップは、以下のステップを実施することによって、従来と同様の手法で製造してもよい。
【0103】
-例えば、アルギン酸塩又はシリコーンで患者の歯列及び顎の印象を作成する。
【0104】
-作成された印象を型として使用して鋳造を行うことにより、例えば、石膏で、歯列の3次元モデルを作成する。
【0105】
-熱成形によって、3次元モデルから歯科モックアップを成形する。
【0106】
-可能であれば、モックアップの加工(着色、バフ仕上げ又は他の審美的処理)を行う。
【0107】
変形例として、モックアップを長時間着用できるように設計してもよく、更に、半永久的又は永久な審美歯科修復を形成してもよい。この場合、非常に良好に機能し、安定して信頼性がある歯列弓へのクリッピングが選択される。この場合も、モックアップは、取り外し可能である。このような変形例では、モックアップは、デンタルオーバーレイデバイス(dental overlay device)となる。このようなデンタルオーバーレイデバイスは、着脱可能かつ再使用可能に着用されることを意図して作成してもよい。
【0108】
したがって、本発明は、例えば、勤務時間又はパーティーの間、ユーザの笑顔を一時的に改善するために、ユーザによって取り外し可能かつ再使用可能に着用されることを意図したデンタルオーバーレイデバイスも提供する。ユーザは、使用後、特に、夜間、デンタルオーバーレイデバイスを取り外すことができる。これは、再使用することができ、複数回着用できる。図3は、このようなデンタルオーバーレイデバイスの例を示している。
【0109】
「デンタルオーバーレイ(dental overlay)」又は「デンタルフェイシング(dental facing)」デバイスとは、ユーザの既存の歯の1つ以上の歯の前庭面(すなわち、口の外側を向いた面)を覆い、ユーザの笑顔、換言すれば、ユーザの既存の歯列の少なくとも一部の目に見える審美的外観を改善することを意図したデンタルデバイス又は器具を意味する。
【0110】
このデバイスは、歯列矯正治療機能、特に歯の位置ずれを矯正する機能を有していない。すなわち、このデバイスは、歯を動かような力を歯に加えることはない。更に、このデバイスは、歯の前処理を必要とすることなく、既存の歯に適合するように設計される。
【0111】
デンタルオーバーレイデバイスは、再使用可能な、換言すれば、その使用を更新できる歯科用器具の形態をとることができ、これは、ユーザの笑顔、すなわち、ユーザが笑ったときの目に見える歯の面の審美的外観を向上させるために、既存の歯の前庭面に重なるように意図されている1つ以上の非透明な前歯面を有する。デンタルオーバーレイデバイスは、1又は複数の既存の歯に着脱可能な手段を組み込んでおり、ここでは、これらの1又は複数の既存の歯を、支持体として機能する歯又は「支持歯」と呼ぶ。このデバイスは、ユーザ自身が口に入れるものであってもよい。
【0112】
一実施形態によれば、取付手段は、支持歯を収容し、この支持歯に取り付けるための1又は好ましくは複数のハウジング又はキャビティを含む。これらのハウジングは、支持歯を収容し、これらの支持歯を挟み込むことによってクリップされるように構成され、又は支持歯を単にハウジングに嵌め込むのみで取り付けることができ、これによって、デンタルオーバーレイデバイスが歯に取り付けられる。したがって、デンタルオーバーレイデバイスは、クリッピングタイプ又は嵌め込みタイプの取り外し可能な取付手段を備える。支持歯のためのハウジングは、この支持歯の形状に少なくとも部分的に適合する。ハウジングは、既存の歯の少なくとも前庭面の形状及び舌側面の一部に適合する。このようなデンタルオーバーレイデバイスの後面は、可能な限り既存の歯の自然な咬合に適合する。上顎歯列弓のためのデンタルオーバーレイデバイスの場合、この後面は、既存の歯の舌側面の咬合のレベルでは材料を含まず、したがって、この咬合に影響を与えない。このデバイスは、前庭側とは異なり、舌側では、歯肉の限界までは延びていない。したがって、上記のハウジングは、歯の周面の一部のみに適合する。
【0113】
換言すれば、支持歯を収容するハウジングは、前壁と、舌側に向けられるように意図された反対側の後壁とによって画定される。前壁は、審美機能を果たすために目に見える前歯面を担い又はこれを形成する。後部形状は、支持歯の舌側面の一部のみ、例えば、支持歯の上部(歯の歯肉端とは反対側の端部)のみを覆うように寸法決めされている。したがって、前壁のみが完全であり、支持歯の前庭面の全体を隠す。デンタルオーバーレイデバイスのこれらの2つの前壁及び後壁は、支持歯の上部を越えて延びる咬合壁によって互いに連結されている。支持歯を収容し、支持歯に固定するためのハウジングの前壁、後壁及び咬合壁は、クリッピング機能を実現することによって、すなわち、歯を挟み込むことによって、又は歯を単に嵌め込むことによって、デンタルオーバーレイデバイスが支持歯に取り付けられるように設計されている。したがって、デンタルオーバーレイデバイスは、取り付けられると、少量の力を加えることで嵌め込まれた歯によって支持される。このように、デンタルオーバーレイデバイスの様々な面は、これらが覆う既存の歯の表面と直接的に接触し、この間に空間はなく、したがって、ここに物が入り込んで挟まることもない。
【0114】
歯に取り付ける機能を有さず、既存の歯を収容又は収納することのみを意図した特定のハウジングを設けてもよい。デンタルオーバーレイデバイスは、歯の前庭面を覆うことが意図された前面のみを有する部分、したがって、取付機能を有さず、審美的機能のみを実現する部分を備えていてもよい。これらの前面は、デバイスの連続性を保証するために、横方向に互いに連結される。この手法により、デンタルオーバーレイデバイスを可能な最も単純な幾何形状にすることができ、十分な取り付けを達成するために必要とされる厳密な最小限まで、取付ハウジングの数を最小化できる。
【0115】
ここで、デンタルオーバーレイデバイスがユーザのN個の歯に影響を及ぼすととする。第1の実施形態では、デンタルオーバーレイデバイスは、それぞれN個の歯を受け入れるためのN個のハウジングを備え、N個のハウジングの全てがN個の支持歯を構成するN個の歯への取付機能を有するように設計される。有利な第2の実施形態では、このデバイスは、N個の歯をそれぞれ受け入れるためのN個のハウジングを備え、これらのN個のハウジングの一部のみであるn個のハウジングがn個の支持歯への取付機能を有するように設計される(ここで、nは、必ずNより小さく、好ましくは、2以上である)。第3の実施形態では、デンタルオーバーレイデバイスは、p個の歯を受け入れるためのp個のハウジングを含み、後壁に連結されていないN-p個の前壁を含む(pは、必ずNよりも小さく、好ましくは、2以上である)。したがって、これらのN-p個の壁は、前壁に限定され、あるいは、咬合壁の全部又は一部を含むことができ、更に(2つの歯の間の)中間壁の全部又は一部であってもよいが、後壁は含まない。p個ハウジングは、完全に又は部分的に、支持歯に取り付けられるよう構成してもよい。
【0116】
デンタルオーバーレイデバイスの壁は、あまり厚くなく、特に、後壁は、取付機能のみを果たす程度の厚さであることが好ましい。潜在的な取付機能に加えて、審美的機能を果たす前壁は、既存の歯の前庭面の欠点を補うために厚さが変化してもよく、この厚さは、必要に応じて厚くしてもよい。この厚さは、0.3mm以上であってもよく、実際の上限はない。但し、所望の審美効果は、通常、0.3~3mmの範囲内で変化する厚さで得られる。既存の歯の審美上の欠点を補うために、これらの厚さは、以下の解決法の全部又は一部に基づいて変化させることができる。
【0117】
-デンタルオーバーレイデバイスの前面の所与の高さ(この高さは、歯肉限界から歯肉の反対側に延びる方向に選択される。)について、前壁の厚さを変化させてもよく(すなわち、左右方向に変化させてもよく)、及び/又は
-この厚さは、歯肉限界から反対の限界まで変化させてもよく、及び/又は
-デバイスの様々な前面が異なる厚さを有するようにしてもよい。
【0118】
要約すると、本発明に基づくデンタルオーバーレイデバイスの前壁の厚さは、同一の前面及び/又は前面の集合体の全方向において変化させることができる。
【0119】
更に、前壁は、非透明である。これらは歯の色に着色される。後壁及び咬合壁は、透明であっても非透明であってもよく、例えば、歯の色に着色してもよい。最後に、デバイスは、異なる形状を有していてもよく、異なる材料を含んでいてもよく、ユーザの歯の全部又は一部に適用してもよい。
【0120】
デンタルオーバーレイデバイスは、上顎歯列又は下顎歯列のうちの1つに適用してもよい。上顎歯列用と下顎歯列用の2つのデバイスを計画してもよい。各デバイスは、上述したモックアップと同様に、任意の数の一列の歯に亘って、好ましくは、少なくとも一方の犬歯から他方の犬歯までを覆うように形成してもよい。デンタルオーバーレイデバイスは、中間平面に関して対称であることが望ましく、すなわち、右側部分は、左側部分と対称であることが望ましい。
【0121】
デンタルオーバーレイデバイスは、口内に入れられ、着脱可能かつ再使用可能に着用されるように設計されている。このデバイスは、歯の位置ずれを矯正する機能を働かせることなく、すなわち、歯科矯正機能又は他の歯科治療を伴うことなく、既存の歯列に一時的に着用されるように設計することが望ましい。このデバイスは、ユーザの口内の1又は複数の歯に取り付けられても、時間の経過とともに歯を動かすような力を加えることはない。このデバイスは、ユーザの笑顔を改善する審美的機能を有する。このデバイスは、問題なく何時間も着用でき、例えば、勤務時間中及び/又は夕方からのパーティの間に着用でき、特に、夜間には取り外すことができる。このデバイスは、再使用可能であり、何度も着用できるように設計されている。
【0122】
他の実施形態では、デンタルオーバーレイデバイスは、最小限の形態に小型化され、目に見える歯の前面のみからなる。この場合、このデバイスは、これらの歯に事前の処置を施すことなく、クリッピング以外の手法で、例えば、既存の歯に直接的に接合することによって取り付けられる。この実施形態では、デンタルオーバーレイデバイスを少なくとも1つの既存の歯に着脱可能に取り付ける手法は、接着剤による結合であるが、これは、永久的結合ではなく可逆的である。
【0123】
また、デンタルオーバーレイデバイスは、ユーザの口内の既存の歯以外の付属物に取り付けられるように設計してもよい。これは、インプラントであってもよく、インプラント上のアバットメントであってもよく、他の如何なる歯科修復であってもよい。このために、デバイスは、例えば、これらの構成要素へのクリッピングを可能にする取り外し可能な取付手段を備える。これに代えて、この取り外し可能な取付手段は、特に歯肉に垂直な動き方向で、これらの構成要素上に固定できるようにしてもよい。
【0124】
デンタルオーバーレイデバイスは、ユーザの歯の1つ(又は複数)が欠けている状況にも適応させることができる。このような場合、デンタルオーバーレイデバイスは、欠けている歯の容積と同等の容積のブロックを含むことができ、これを既存の2つの隣接する歯の間に挟み込み、欠けた歯によって生じる隙間を埋めるようにしてもよい。このブロックは、当然、欠けている歯の選択された審美的外観を再現する前面を有する。
【0125】
本発明のデンタルオーバーレイデバイスは、ユーザの歯列の審美的外観を一時的に変更するために使用してもよく、このデバイスの使用は、再生可能である。また、このデバイスは、ユーザについて予定されている歯科治療の予想される結果を視覚化するために使用することもできる。このユーザは、デンタルオーバーレイデバイスを数時間、又は1日中着用できるので、ユーザの歯列に対する歯科修復処置の予想される結果を最適に理解できる。
【0126】
図4A図4Dに示すように、他の実施形態では、デンタルオーバーレイデバイスの1つ以上の前面は、装飾要素を有し、例えば、絵又は他のグラフィック表現(例えば、ミッキーマウスの頭、旗、ダイヤモンド)を前面にスクリーン印刷してもよく、装飾着色層を有していてもよく、複数の並置された着色層(例えば、青/白/赤の層)で前面の全体を覆ってもよい。この装飾は、例えば、特定の塗装によって、蛍光又は燐光効果を生じるように施してもよい。これに代えて、装飾効果は、例えば、デンタルオーバーレイデバイス自体の材料に蛍光体又は燐光性要素を組み込むことによって得ることもできる。
【0127】
より包括的に言えば、デンタルオーバーレイデバイスに関連して上述した特徴は、前述のモックアップに適用してもよく、逆にモックアップに関して上述した特徴をデンタルオーバーレイデバイスに適用してもよい。更に、本発明は、ユーザのためのデンタルオーバーレイデバイスの製造方法にも関連し、これは、上述した患者の審美歯科修復のモックアップの製造方法と同様である。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D