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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-27
(45)【発行日】2022-02-21
(54)【発明の名称】携帯用軽量人工呼吸器システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/00 20060101AFI20220214BHJP
   A61M 16/20 20060101ALI20220214BHJP
【FI】
A61M16/00 355Z
A61M16/00 332A
A61M16/00 370A
A61M16/20 C
A61M16/20 F
【請求項の数】 33
(21)【出願番号】P 2018545352
(86)(22)【出願日】2017-02-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-03-14
(86)【国際出願番号】 IL2017050249
(87)【国際公開番号】W WO2017149532
(87)【国際公開日】2017-09-08
【審査請求日】2020-02-20
(31)【優先権主張番号】62/300,933
(32)【優先日】2016-02-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515124875
【氏名又は名称】イノヴィテック メディカル ソリューションズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シャハール、マーク
(72)【発明者】
【氏名】バーカイ、ニール
【審査官】小野田 達志
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-119595(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/00
A61M 16/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に呼吸支援を提供するための携帯用陽圧人工呼吸器システムであって、(A)加圧空気源を備える人工呼吸器と、(B)マニホールド組立体と、(C)前記人工呼吸器および前記患者に連結されたチュービングシステムとから構成される、人工呼吸器システムにおいて、
(ア)前記加圧空気源が前記人工呼吸器に加圧空気を供給するように作動している間常に、前記人工呼吸器が空気の連続的な流れを連続抽気開口を介して前記チュービングシステムに供給し、
(イ)前記マニホールド組立体は、前記人工呼吸器の作動構成要素を保持するマニホールドブロックを備え、前記マニホールドブロックは、
(a)内部に形成された3つのチャンバーであって、
(i)第1のチャンバーは、主吸気弁のダイヤフラムを備え、
(ii)第2のチャンバーは、前記加圧空気源からのガスが通過して前記マニホールドブロックに入るための吸気弁第1コネクタとして構成され、
(iii)第3のチャンバーは、遠位端において、前記患者につながる前記チュービングシステムに連結される吸気弁第2コネクタとして構成される、3つのチャンバーと、
(b)前記第2のチャンバーと前記第3のチャンバーとを隔てる壁と、
(c)前記壁を貫通する小径の穴と、
)前記マニホールドブロックの外面に取り付けられた吸気弁コントローラおよび呼気弁コントローラと、
)窒息防止弁の出口であって、前記マニホールドブロックの壁内に設けられた前記吸気弁コントローラおよび前記呼気弁コントローラの空気ソレノイド弁と、ソレノイド弁排気口と、呼気弁ポートと、窒息防止弁の出口とを流体連通的に連結するために必要なすべての流路のための出口と、
(f)前記第1のチャンバーから前記第2のチャンバーにつながる開口および前記第1のチャンバーから前記第3のチャンバーにつながる開口であって、2つの前記開口は、前記主吸気弁が前記吸気弁コントローラによって作動しているときに前記主吸気弁の前記ダイヤフラムによって開閉され、これにより、前記第2のチャンバーと前記第3のチャンバーとの間の前記第1のチャンバーを介した流体連通を許容または遮断する、開口とを備え、
(ウ)前記壁を貫通する前記小径の穴は、前記連続抽気開口であることを特徴とする、陽圧人工呼吸器システム。
【請求項2】
前記加圧空気源が、加圧ガス発生器、加圧ガスシリンダ、ピストンポンプ、多段ベーンポンプ、ルーツ送風機、ギヤポンプ、ボイスコイル組立体、遠心ポンプ、ダイヤフラムポンプ、ラジアル送風機、一段タービン、および多段タービンのうちの1つを備える、請求項1に記載の人工呼吸器システム。
【請求項3】
前記吸気弁コントローラおよび前記呼気弁コントローラの各々が、少なくとも1つのソレノイド弁を備える、請求項1に記載の人工呼吸器システム。
【請求項4】
流量計組立体であって、前記システム内の以下の場所:前記加圧空気源と前記マニホールドブロックとの間の人工呼吸器ハウジング内、前記マニホールドブロックと前記チュービングシステムとの間の前記人工呼吸器ハウジング内、および前記チュービングシステム上のうちの1つに配置される、流量計組立体を備える、請求項1に記載の人工呼吸器システム。
【請求項5】
前記流量計組立体が、ベンチュリ流量計、熱線風速計、インペラ流量計、超音波流量計、および光学式流量計の1つである、請求項4に記載の人工呼吸器システム。
【請求項6】
前記チュービングシステムが、一肢人工呼吸器では同じチューブである、吸入チューブおよび呼気チューブと、二肢人工呼吸器の場合、吸入チューブを呼気チューブに連結し、患者につながる接合部/コネクタとを含む、請求項1に記載の人工呼吸器システム。
【請求項7】
前記呼気チューブが呼気弁を備える、請求項6に記載の人工呼吸器システム。
【請求項8】
PEEP弁であって、前記システム内の以下の場所:呼気弁の下流、前記呼気弁の上流、前記呼気弁との組み合わせられた組立体内のうちの1つに配置される、PEEP弁を備える、請求項7に記載の人工呼吸器システム。
【請求項9】
前記人工呼吸器が:酸素供給器、窒息防止弁、安全弁、前記患者への圧力を急速に低下させるバイパスソレノイド、前記加圧空気源内に連続的な高圧がある場合に前記PEEP弁を連結解除するソレノイド、およびネブライザーシステムに連結されたソレノイドの少なくとも1つを備える、請求項1に記載の人工呼吸器システム。
【請求項10】
前記人工呼吸器が、プロセッサを備える、請求項1に記載の人工呼吸器システム。
【請求項11】
前記プロセッサが、前記人工呼吸器システムを制御して、ユーザおよび/またはアルゴリズムもしくは複数のアルゴリズムからの入力に基づいて(a)前記吸気弁コントローラおよび前記呼気弁コントローラの作動をもたらし、(b)酸素富化のレベルを設定し、また(c)一回換気量、毎分呼吸数、最大ピーク吸気圧(PIP)および終末呼気陽圧(PEEP)のレベルを設定するように構成され、前記酸素富化、前記一回換気量、前記毎分呼吸数、前記PIP、および前記PEEPのパラメータの少なくとも1つは固定される、または調整可能である、請求項10に記載の人工呼吸器システム。
【請求項12】
前記連続抽気開口が、小径の穴および比例ソレノイド抽気弁を備える、請求項1に記載の人工呼吸器システム。
【請求項13】
前記連続抽気開口を通る空気流の体積が、前記主吸気弁を通る空気流の体積の1%~10%の範囲である、請求項1に記載の人工呼吸器システム。
【請求項14】
前記主吸気弁の自由流れ面積に対する前記連続抽気開口の自由流れ面積の比が、2mm対400mmである、請求項1に記載の人工呼吸器システム。
【請求項15】
前記連続抽気開口が0.5から2.5mmの間の直径を有し、その結果、5から50cmHOの間の圧力に基づいて、自由流れ条件下で毎分2から20リットルの間の体積流量を生じる、請求項1に記載の人工呼吸器システム。
【請求項16】
吸気サイクル中、前記呼気弁は空気流に対して閉じられ、前記主吸気弁を通って流れる空気のストリームは、前記連続抽気開口を通って流れる空気のストリームと組み合わさり、前記組み合わせられたストリームは、前記吸入チューブを通り、前記接合部/コネクタを過ぎて前記患者まで流れる、請求項7に記載の人工呼吸器システム。
【請求項17】
呼気サイクル中、前記主吸気弁が空気流に対して閉じられ、前記連続抽気開口を通って流れる空気のストリームは、前記吸入チューブに流入し、接合/コネクタを過ぎ、前記患者から呼気チューブ内に流れる呼気空気のストリームと組み合わさり、前記組み合わせられたストリームは、前記呼気弁および前記PEEP弁を流れ抜けて、外気中に出る、請求項7に記載の人工呼吸器システム。
【請求項18】
前記マニホールドブロックが、前記加圧空気源の内側に配置される、請求項1に記載の人工呼吸器システム。
【請求項19】
前記マニホールドブロックが、15~100cmの範囲内の容積を有する、請求項1に記載の人工呼吸器システム。
【請求項20】
前記人工呼吸器の重量が、0.6~1.6kgの範囲内である、請求項1に記載の人工呼吸器システム。
【請求項21】
前記主吸気弁が、ダイヤフラムを起動させて上下に移動させて、流体通路を開閉させることによって作用する、請求項1に記載の人工呼吸器システム。
【請求項22】
患者に呼吸支援を提供するために呼吸器を備える携帯用陽圧人工呼吸器システムで使用するためのマニホールドブロックであって、前記マニホールドブロックは、
(a)内部に形成された3つのチャンバーであって、
(i)第1のチャンバーは、主吸気弁のダイヤフラムを備え、
(ii)第2のチャンバーは、前記加圧空気源からのガスが通過して前記マニホールドブロックに入るための吸気弁第1コネクタとして構成され、
(iii)第3のチャンバーは、近位端において、前記患者につながるチュービングシステムに連結される吸気弁第2コネクタとして構成される、3つのチャンバーと、
(b)前記第2のチャンバーと前記第3のチャンバーとを隔てる壁と、
(c)前記壁を貫通する小径の穴と、
(d)窒息防止弁の出口であって、前記マニホールドブロックの壁内に設けられた前記吸気弁コントローラおよび前記呼気弁コントローラの空気ソレノイド弁と、ソレノイド弁排気口と、呼気弁ポートと、窒息防止弁の出口とを流体連通的に連結するために必要なすべての流路のための出口と、
(e)前記第1のチャンバーから前記第2のチャンバーにつながる開口および前記第1のチャンバーから前記第3のチャンバーにつながる開口であって、2つの前記開口は、前記主吸気弁が前記吸気弁コントローラによって作動しているときに前記主吸気弁の前記ダイヤフラムによって開閉され、これにより、前記第2のチャンバーと前記第3のチャンバーとの間の前記第1のチャンバーを介した流体連通を許容または遮断する、開口とを備え
前記壁を貫通する前記小径の穴は、前記連続抽気開口である、マニホールドブロック。
【請求項23】
外面に取り付けられた前記吸気弁コントローラおよび呼気弁コントローラを備える、請求項22に記載のマニホールドブロック。
【請求項24】
前記連続抽気開口が、小径の穴および比例ソレノイド抽気弁を備える、請求項22に記載のマニホールドブロック。
【請求項25】
前記連続抽気開口を通る空気流の体積が、前記主吸気弁を通る空気流の体積の1%~10%の範囲である、請求項22に記載のマニホールドブロック。
【請求項26】
前記主吸気弁の自由流れ面積に対する前記連続抽気開口の自由流れ面積の比が、2mm対400mmである、請求項22に記載のマニホールドブロック。
【請求項27】
前記マニホールドブロックが、15~100cm範囲内の容積を有する、請求項22に記載のマニホールドブロック。
【請求項28】
請求項1に記載の陽圧人工呼吸器システムを作動する方法であって、前記人工呼吸器システムは、加圧空気源と、主吸気弁と、吸入チューブと、呼気チューブと、呼気弁と、連続抽気開口と、PEEP弁と、プロセッサとから構成され、
前記方法は、前記加圧空気源を起動させることと、前記人工呼吸器システム内の弁を、
a)吸気サイクル中、前記主吸気弁が空気流に対して開かれ、前記呼気弁が空気流に対して閉じられ、前記連続抽気開口が空気流に対して開かれ、それによって前記主吸気弁を通って流れる空気のストリームが前記連続抽気開口を通って流れる空気のストリームと組み合わさり、前記組み合わせられたストリームは前記吸入チューブを通って流れるように、そして
b)呼気サイクル中、前記主吸気弁が空気流に対して閉じられ、前記呼気弁が空気流に対して開かれ、前記連続抽気開口が空気流に対して開かれ、それによって前記連続抽気を通って流れる空気のストリームが前記吸入チューブ内に流れ、前記呼気チューブ内に流れる呼気空気のストリームと組み合わさり、前記組み合わせられたストリームは前記呼気弁を通って流れ、前記圧力が終末呼気陽圧(PEEP)の所定値を上回るときはいつでも、前記組み合わせられたストリームは前記PEEP弁を流れ抜けて外気中に出るように制御するように前記プロセッサを構成することとを含む、方法。
【請求項29】
前記連続抽気開口が、小径の穴および比例ソレノイド抽気弁を備える、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記連続抽気開口を通る空気流の体積が、前記主吸気弁を通る空気流の体積の1%~10%の範囲である、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記主吸気弁の自由流れ面積に対する前記連続抽気開口の自由流れ面積の比が、2mm対400mmである、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記主吸気弁が、(a)前記第2のチャンバーと、(b)前記第3のチャンバーと、(c)ダイヤフラムとを備えるダイヤフラム弁である、請求項1に記載の人工呼吸器システム。
【請求項33】
前記主吸気弁が、(a)前記第2のチャンバーと、(b)前記第3のチャンバーと、(c)ダイヤフラムとを備えるダイヤフラム弁である、請求項22に記載のマニホールドブロック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療装置の分野からものである。特に、本発明は、急性呼吸不全または重度の外傷の場合に呼吸支援を提供するための人工呼吸器システムを対象とする。
【背景技術】
【0002】
陽圧式人工呼吸器は、駆動機構を通して空気を押し込むことによって作用し、それによって患者の気道内の圧力を大気圧に対して上昇させ、結果として肺を膨張させる。このような呼吸支援を提供するのに適した、現在知られている人工呼吸器は、通常大きく、重いものであり(約3.5~10キログラム程度)、装置の空気作動のために別個の酸素シリンダを必要とすることがあり、これは、全体的な輸送重量を増加させる。さらに、克服しなければならない多くの技術的問題があり、これに対する適切な解決策はまだ見出されていない。例えば、各呼気の終わりに、終末呼気陽圧(PEEP)として知られている最小限の圧力を患者の肺内に供給することが必要である。知られている人工呼吸器は、PEEPを様々な方法で制御し、例えば人工呼吸器の内部に設置された外部パイロット操作弁またはその複数の弁を制御して患者の肺内のガスを放出する、または患者回路呼気肢(または一肢回路)に取り付けられたパイロット操作弁を比例制御することによって呼気圧を制御するなどがある。加えて、知られているタービン操作式人工呼吸器では、(トリガード呼吸または自発呼吸とも呼ばれる)迅速に自発的に開始する呼吸を患者に支援することは難しいが、これは、例えば急速呼吸が必要とされる場合に重要になり得る。
【0003】
VanDijkらの米国特許出願公開第2011/0232640号明細書は、弁組立体を有する送風機駆動人工呼吸器、ならびに呼吸中に弁組立体を制御するためのシステムおよび方法を教示している。しかし、そこに開示された弁組立体は、空気を患者に「戻す」ことを基本とする特定のPEEP制御機構を提供しているが、これは、中央の処理装置(CPU)リソースにより、タービンの加速、故にエネルギー資源を浪費を伴う非常に小さい漏れに対する補償の必要性により、またはハウジングと、タービンからの流れが患者の方向にそこを通って押し込まれるオリフィスとの間に、非常に小さな隙間を開かなければならないことにより、PEEPを制御するための最適な方法とならないことがある。さらに、そこに開示されている弁組立体は、弁組立体自体内で外気との連結を必要とし、その結果、漏れ補償のための送風機ロータの加速が必要となることがあり、および/またはCOが蓄積する可能性がある。
【0004】
DeVries他の米国特許公開第8,118,024号明細書は、吸気の開始時に呼気弁の閉鎖を容易にし、PEEPを調整するためのバイアス弁を有する携帯用人工呼吸器を開示している。この場合、バイアス弁は、ROOTS(商標登録)送風機によって生み出された脈動空気を減衰するために使用される。この弁の動的応答は、ヒステリシスカーブを引き起こす予荷重の力に基づいて作動し、すなわち、バイアス圧力が4cmHOに設定された場合、流量は、4リットル毎分(lpm)になるようにされる。このシステムは、いくつかの欠点を有することがあり、例えば、流れおよび/または圧力の変動、高速応答制御システムの必要性(10msec応答時間の程度)、および直動式アクチュエータによる比較的高い電力消費を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第2011/0232640号明細書
【文献】米国特許公開第8,118,024号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、最小のエネルギー消費でPEEPおよび吸気速度を最適に制御することができる軽量の携帯用人工呼吸器を提供することである。
【0007】
本発明のさらなる目的および利点は、説明が進むにつれて明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様では、本発明は、患者に呼吸支援を提供するための陽圧人工呼吸器システムである。人工呼吸器システムは、(a)加圧空気源と、マニホールドブロックと、連続抽気開口とを備える人工呼吸器と、(b)人工呼吸器および患者に連結されたチュービングシステムとから構成される。人工呼吸器システムは、加圧空気源が人工呼吸器に加圧空気を供給するように作動している間常に、人工呼吸器が空気の連続的な流れを連続抽気開口を介してチュービングシステムに供給することを特徴とする。
【0009】
人工呼吸器システムの実施形態では、加圧空気源は、加圧ガス発生器、加圧ガスシリンダ、ピストンポンプ、多段ベーンポンプ、ルーツ送風機、ギヤポンプ、ボイスコイル組立体、遠心ポンプ、ダイヤフラムポンプ、ラジアル送風機、一段タービン、および多段タービンの1つを備える。
【0010】
人工呼吸器システムの実施形態では、マニホールドブロックは、人工呼吸器の主要作動構成要素を保持する。マニホールドブロックは、その内部に、主吸気弁と、連続抽気開口と、人工呼吸器の主要作動構成要素を流体的に連結し、作動させるために必要とされるチューブおよびワイヤの少なくともほとんどとを備え、その外面には、吸気弁コントローラおよび呼気弁コントローラが取り付けられている。
【0011】
人工呼吸器システムの実施形態では、吸気弁コントローラおよび呼気弁コントローラの各々は、少なくとも1つのソレノイド弁を備える。
【0012】
人工呼吸器システムの実施形態は、システム内の以下の場所:加圧空気源とマニホールドブロックとの間の人工呼吸器ハウジング内、マニホールドブロックとチュービングシステムとの間の人工呼吸器ハウジング内、およびチュービングシステム上のうちの1つに配置された流量計組立体を備える。流量計組立体は、ベンチュリ流量計、熱線風速計、インペラ流量計、超音波流量計、および光学式流量計の1つとすることができる。
【0013】
人工呼吸器システムの実施形態では、チュービングシステムは、一肢人工呼吸器では同じチューブである吸入チューブおよび呼気チューブと、二肢人工呼吸器の場合は、吸入チューブを呼気チューブに連結し、患者につながる接合部/コネクタとを含む。人工呼吸器システムの実施形態では、呼気チューブは呼気弁を備える。
【0014】
人工呼吸器システムの実施形態は、システム内の以下の場所:呼気弁の下流、呼気弁の上流、呼気弁との組み合わせられた組立体内のうちの1つに配置されたPEEP弁を備える。
【0015】
人工呼吸器システムの実施形態では、人工呼吸器は、酸素供給器、窒息防止弁、安全弁、患者への圧力を急速に低下させるバイパスソレノイド、加圧空気源内に連続的な高圧がある場合にPEEP弁を連結解除するソレノイド、およびネブライザーシステムに連結されたソレノイドの少なくとも1つを備える。
【0016】
人工呼吸器システムの実施形態では、人工呼吸器はプロセッサを備える。これらの実施形態では、プロセッサは、ユーザおよび/またはアルゴリズムもしくは複数のアルゴリズムからの入力に基づいて、吸気弁コントローラ、呼気弁コントローラおよびそれらの組み合わせの作動をもたらすように構成され、また、酸素富化、一回換気量、毎分呼吸数、最大ピーク吸気圧(PIP)および終末呼気陽圧(PEEP)のレベルを設定するようにも構成され、これらのパラメータの少なくとも1つは固定されてもよく、または調整可能であってもよい。
【0017】
人工呼吸器システムの実施形態では、連続抽気開口は、小径の穴および比例ソレノイド抽気弁の一方または両方を備える。
【0018】
人工呼吸器システムの実施形態では、連続抽気開口を通る空気流の体積は、主吸気弁を通る空気流の体積の1%~10%の範囲である。
【0019】
人工呼吸器システムの実施形態では、主吸気弁の自由流れ面積に対する連続抽気開口の自由流れ面積の比は、2mm対400mmである。
【0020】
人工呼吸器システムの実施形態では、連続抽気開口は、0.5から2.5mmの間の直径を有し、その結果、5から50mHO間の圧力に基づいて、自由流れ条件下で、毎分2から20リットルの間の体積流量を生じる。
【0021】
人工呼吸器システムの実施形態では、吸気サイクル中、呼気弁は空気流に対して開かれ、主吸気弁を通って流れる空気のストリームは、連続抽気開口を通って流れる空気のストリームと組み合わさり、組み合わせられたストリームは、吸入チューブを通り、接合部/コネクタを過ぎて患者まで流れる。
【0022】
人工呼吸器システムの実施形態では、呼気サイクル中、主吸気弁は、空気流に対して閉じられ、連続抽気開口を通って流れる空気のストリームは、吸入チューブ内に流れて接合部/コネクタを過ぎ、患者から呼気チューブ内に流れる呼気空気のストリームと組み合わさり、組み合わせられたストリームは、呼気弁およびPEEP弁を流れ抜けて、外気中に出る。
【0023】
人工呼吸器システムの実施形態では、マニホールドブロックは、加圧空気源の内側に配置される。
【0024】
人工呼吸器システムの実施形態では、マニホールドブロックは、15cm~100cmの範囲内の容積を有する。
【0025】
人工呼吸器システムの実施形態では、人工呼吸器の重量は、0.6~1.6kgの範囲内である。
【0026】
人工呼吸器システムの実施形態では、主吸気弁は、ダイヤフラムを起動させて上下に移動させて、流体通路を開閉させることによって作用する。
【0027】
第2の態様では、本発明は、患者に呼吸支援を提供するための陽圧人工呼吸器システムで使用するためのマニホールドブロックである。マニホールドブロックは、その内部に、主吸気弁と、連続抽気開口と、人工呼吸器の主要作動構成要素を連結し、作動させるために必要とされるチューブおよびワイヤの少なくともほとんどとを備える。
【0028】
マニホールドブロックの実施形態は、その外面に取り付けられた吸気弁コントローラおよび呼気弁コントローラを備える。
【0029】
マニホールドブロックの実施形態では、連続抽気開口は、小径の穴および比例ソレノイド抽気弁の一方または両方を備える。
【0030】
マニホールドブロックの実施形態では、連続抽気開口を通る空気流の体積は、主吸気弁を通る空気流の体積の1%~10%の範囲である。
【0031】
マニホールドブロックの実施形態では、主吸気弁の自由流れ面積に対する連続抽気開口の自由流れ面積の比は、2mm対400mmである。
【0032】
マニホールドブロックの実施形態は、15~100cm内の範囲内の容積を有する。
【0033】
第3の態様では、本発明は、陽圧人工呼吸器システムに連結された患者の呼吸通路内で終末呼気陽圧(PEEP)の所定の値を維持する方法である。人工呼吸器システムは、加圧空気源と、主吸気弁と、吸入チューブと、呼気チューブと、呼気弁と、PEEP弁と、プロセッサと、連続抽気開口とから構成される。方法は、加圧空気源を起動させることと、人工呼吸器システム内の弁を、
a)吸気サイクル中、主吸気弁が空気流に対して開かれ、呼気弁が空気流に対して閉じられ、連続抽気開口が空気流に対して開かれ、それによって主吸気弁を流れる空気のストリームが連続抽気開口を通って流れる空気のストリームと組み合わさり、組み合わせられたストリームは吸入チューブを通って患者まで流れるように、そして
b)呼気サイクル中、主吸気弁が空気流に対して閉じられ、呼気弁が空気流に対して開かれ、連続抽気開口が空気流に対して開かれ、それによって連続抽気開口を通って流れる空気のストリームが吸入チューブ内に流れ、患者から呼気チューブ内に流れる呼気空気のストリームと組み合わさり、組み合わせられたストリームは呼気弁を通って流れ、
圧力がPEEPの所定値を上回るときはいつでも、組み合わせられたストリームはPEEP弁を流れ抜けて外気中に出るように制御するようにプロセッサを構成することとを含む。
【0034】
方法の実施形態では、連続抽気開口は、小径の穴および比例ソレノイド抽気弁の一方または両方を備える。
【0035】
方法の実施形態では、連続抽気開口を通る空気流の体積は、主吸気弁を通る空気流の体積の1%~10%の範囲である。
【0036】
方法の実施形態では、主吸気弁の自由流れ面積に対する連続抽気開口の自由流れ面積の比は、2mm対400mmである。
【0037】
方法の実施形態では、主吸気弁の自由流れ面積に対する連続抽気開口の自由流れ面積の比は、2mm対400mmである。
【0038】
本発明の上記および他の特徴および利点は、添付の図面を参照しながら、その実施形態の以下の説明的および非限定的な説明を通してさらに理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1A】人工呼吸器システムの実施形態の概略ブロック図である。
図1B】人工呼吸器システムの実施形態の概略ブロック図である。
図2A】吸気サイクル中の空気の流れをさらに示す、図1Aの概略ブロック図である。
図2B】吸気サイクル中の空気の流れをさらに示す、図1Bの概略ブロック図である。
図3A】呼気サイクル中の空気の流れをさらに示す図1Aの概略ブロック図である。
図3B】呼気サイクル中の空気の流れをさらに示す図1Bの概略ブロック図である。
図4】異なる視角から示す、図1Bの人工呼吸器に取り付けられた流量計組立体を備えた、マニホールドブロック組立体の概略斜視図である。
図5】異なる視角から示す、図1Bの人工呼吸器に取り付けられた流量計組立体を備えた、マニホールドブロック組立体の概略斜視図である。
図6図4のマニホールドブロックの概略断面図である。
図7図5のマニホールドブロックの概略断面図である。
図8図1のシステムの気圧回路図である。
図9A】主吸気弁の一実施形態を示す概略的な部分切断図である。
図9B】主吸気弁の一実施形態における、ダイヤフラムを定位置に保持するために使用されるスペーサの一部分の概略斜視図である。
図10】流量計に連結されていないマニホールドブロックの一実施形態の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下の詳細な説明では、本発明の完全な理解を提供するために、多くの具体的な詳細が述べられている。当業者であれば、これらの特定の詳細なしに本発明の実施形態を実施することができることを理解するであろう。他の例では、本発明を不明瞭にしないために、周知の方法、手順、構成要素および構造を詳細に説明していないことがある。
【0041】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、以下の説明に記載されるか、または図面に示される構成要素の構造および配置の詳細に限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であるか、または様々な方法で実施または実行することができる。また、本明細書で使用される表現および用語は、説明のためのものであり、限定的であるとみなされるべきではないことを理解されたい。
【0042】
次に、本発明の実施形態による人工呼吸器システムの一実施形態の概略ブロック図である図1Aを参照する。人工呼吸器システム100は、人工呼吸器10と人工呼吸器10を患者に連結するためのチュービングシステム90とを含む。人工呼吸器10は、簡略化のために、本明細書ではタービン22と呼ばれる、加圧ガス、例えば空気を患者に供給するための供給源を含むが、当業者であれば、代替的に、加圧ガスを任意の加圧ガス発生器/供給源によって供給することができることを理解するであろう。適切な「タービン」の例は、それだけに限定されないが、加圧ガスシリンダ、ピストンポンプ、多段ベーンポンプ、ルーツ送風機、ギヤポンプ、ボイスコイル組立体、遠心ポンプ、ダイヤフラムポンプ、ラジアル送風機、一段タービン、多段タービン、または当業界で一般的に知られている任意の他の送風機を含む。タービン22は、マニホールド組立体40に連結されている。マニホールド組立体40は、主吸気弁42および連続抽気開口47を備える。主吸気弁42は、吸気弁コントローラ43、例えばソレノイド弁によって制御される。いくつかの実施形態では、吸気弁コントローラ43は、1つまたは複数の吸気弁コントローラを含む。
【0043】
図1に示す実施形態では、マニホールド組立体40は、チュービング組立体90上の人工呼吸器10の外側に配置された流量計組立体70に連結される。流量計組立体70は、人工呼吸器の出口を通る流量を測定し、感知チューブ200を介して、プロセッサ65(例えばCPU)に接続されたセンサに圧力差を報告する。この流量は、次いで、算出/補償され、この算出に基づいて、人工呼吸器は所定の/所望の体積のガスを患者に供給する。
【0044】
チュービングシステム90は、吸入チューブ92および呼気チューブ94を含む。二肢人工呼吸器の場合、チュービングシステムは、吸入チューブ92を呼気チューブ94に連結し、患者につながる接合部/コネクタ96を含む。呼気チューブ94は、さらに、呼気弁80と、呼気弁80の下流にある外部PEEP弁88とを含む。他の実施形態では、外部PEEP弁88は、呼気弁80の上流にあり、あるいはPEEP弁88は呼気弁80との組立体とすることができる。
【0045】
マニホールド組立体40はまた、呼気弁80の開閉を制御する呼気弁コントローラ84を備える。いくつかの実施形態では、呼気弁コントローラ84は、1つ以上の呼気弁コントローラを含む。呼気弁80は、呼気弁制御チューブ81を介して呼気弁コントローラ84に接続される。マニホールド組立体40内に示すすべての流路すなわち空気ソレノイド弁に圧力を供給するための導管204、抽気導管49、および呼気弁制御チューブ81は、チューブではなく、本明細書の以下で説明するように、マニホールドの壁内に作り出されるトンネルであることが留意される。
【0046】
酸素供給器26は、任意選択により、人工呼吸器10内に含まれ、必要なときに、タービン22に供給された空気に加えて酸素源から酸素を供給する。プロセッサ/CPU65は、人工呼吸器10内に含まれ、ユーザおよび/またはアルゴリズムまたは複数のアルゴリズムから入力に基づいて、吸気弁コントローラ43、呼気弁コントローラ84、およびその組み合わせの作動をもたらす。プロセッサ65は、酸素富化レベル(必要な場合)、1回換気量、毎分呼吸数、最大ピーク吸気圧(PIP)、および終末呼気陽圧(PEEP)のレベルを設定することもできる。これらのパラメータのいずれかまたはすべては、固定されてよく、または調整可能であってもよい。
【0047】
任意選択により、人工呼吸器10は、さらに、タービンが適切に機能しなくなった場合に呼吸を可能にするために、タービンをバイパスする窒息防止弁85(図9を参照)を含む。人工呼吸器システム100内に他の特徴、例えば安全弁99(図9を参照)、患者への圧力を急速に低下させるバイパスソレノイド、タービンに連続的な高圧がある場合にPEEP弁を連結解除する追加のソレノイド、および患者へのエアロゾル療法を可能にするネブライザーシステムに連結することができる追加のソレノイドなどが含まれてよいことが容易に明らかであるはずである。簡略化のために、これらの後の要素は、本図には含まれていない。
【0048】
図1Bは、本発明の実施形態による人工呼吸器システムの別の実施形態の概略ブロック図である。人工呼吸器システム100’は、図1Aの人工呼吸器システム100のすべての構成要素を備える。2つの実施形態間の相違は、人工呼吸器システム100’では、流量計組立体70は、チュービング組立体90ではなく人工呼吸器10のハウジング内に配置されることである。
【0049】
図示しない別の実施形態では、流量計組立体70は、タービン22とマニホールド組立体40との間に配置される。流量計組立体70の位置に関係なく、吸気中、加圧ガス(例えば、空気)が、タービン22を介してマニホールド組立体40を通ってチュービングシステム90内に送られる。
【0050】
人工呼吸器システムのいくつかの実施形態では、マニホールド組立体40が、タービン22に組み込まれてもよい。
【0051】
次に、吸気サイクル中の空気の流れをそれぞれ示す図1Aおよび図1Bのブロック図である図2Aおよび図2B、ならびに呼気サイクル中の空気の流れをそれぞれ示す図1Aおよび図1Bのブロック図である、図3Aおよび図3Bを参照する。呼吸サイクルの両段階において、外気がタービン22に導入される。図2Aおよび図2Bにおいて矢印110によって示す吸気サイクル中、タービン22からの加圧空気は、吸気弁コントローラ43の作動を介して空気流に対して開いている主吸気弁42内、およびいくつかの実施形態では抽気導管49を介して空気流に対して常に開いている小径の穴である連続抽気開口47内の両方に流れる。他の実施形態では、必要に応じて穴のサイズを縮小または増加させるために使用される比例ソレノイド抽気弁が使用される。本発明の実施形態では、連続抽気開口47は、小径の穴および比例ソレノイド弁の両方を備えることができる。この人工呼吸器の実施形態は、PEEPに関与する内部比例弁を備え、本明細書に説明する人工呼吸器のように外部PEEP弁を備えない。この場合、ソレノイド抽気弁は、時に閉じられてよい。
【0052】
連続抽気開口47を通る空気流の体積は、主吸気弁42を通る空気流の体積に比べて小さい。いくつかの実施形態では、連続抽気開口47を通る空気流の体積は、主吸気弁42を通る空気流の体積の1%から10%の範囲である。2つの弁の自由流れ面積の典型的な(しかし限定されない)比は、2mm対400mmである。これら2つの空気のストリームは、次いで、組み合わさり、吸入チューブ92を抜け、接合部/コネクタ96を過ぎて、患者まで流れる。このサイクル中、呼気弁80は、呼気弁コントローラ84の作動により空気流に対して閉じられる。吸気弁コントローラ43および呼気弁コントローラ84の両方が、主吸気弁42および呼気弁80の開閉が良好に調整されるようにプロセッサ65によって起動されることは容易に明らかであるはずである。
【0053】
図3Aおよび図3Bに矢印120で示すような呼気サイクル中、タービン22からの加圧空気は、吸気弁コントローラ43の作動により主吸気弁42を通って流れるのが阻止されるが、抽気導管206を介して空気流に対して開いている連続抽気開口47を通って流れる。連続抽気開口47を通る空気流の体積は比較的小さい。例えば、連続抽気開口47は、0.5から2.5mmの間の直径を有する穴であってよく、その結果、5~50cmHOの間の圧力に基づき、自由流れ条件下で2~20リットル毎分(lpm)の間の体積を生じさせる。空気は、連続抽気開口47から吸入チューブ92内に流れ、接合部/コネクタ96を過ぎ、患者から呼気チューブ94内に流れる呼気空気と組み合わせられる。このサイクルの間、呼気弁80は、呼気弁コントローラ84によって空気流に対して開かれる。患者および連続抽気開口47から流れる空気は、呼気弁80を流れ抜け、PEEP弁88に入り、外気中に出る。吸気弁コントローラ43および呼気弁コントローラ84の両方が、主吸気弁42および呼気弁80の開閉が良好に調整されるようにプロセッサ65によって起動されることは容易に明らかであるはずである。
【0054】
連続抽気開口47が、タービンが運転されている間、常に連続的な空気の流れを供給することが、本発明の特徴である。連続的な空気流のこの設計は、知られている人工呼吸器システムを上回るいくつかの利点を提供する。知られているシステムでは、より多くの空気が患者に必要とされる場合、タービンの毎分回転(RPM)は、追加の体積流量に対応するために増大されなければならない。これは、エネルギー消費量の増加を招き、その結果、全体的な動力およびサイズの要件が大きくなる。
【0055】
本発明では、呼気弁が開いているので、0~30cmHOの範囲内とすることができ、たいていの場合は5cmHOである、予め設定されたPEEP値よりも患者回路および患者の肺の背圧が高い限り、空気は、呼気段階中にPEEP弁を連続的に通過する。PEEP弁は、呼気段階中、予め設定された圧力を維持し、抽気開口47を使用することにより、(例えば、フェイスマスク、気管内チューブ、チューブコネクタからの)小さな漏れの感知、算出または評価の必要性が排除される。従来の技術では、これらの流れの漏れは、タービンのRPMを増大させることによって、または呼気弁を部分的に閉じることによって補償される。これらの作用は、多量のエネルギーおよび追加の計算力の両方を必要とする。
【0056】
さらに、肺虚脱を防止し、酸素拡散を増加させるためにPEEP圧力を供給しなければならないことが知られている。すなわち、患者の肺には常に最小の空気圧が必要である。知られている人工呼吸器システムでは、タービン操作式人工呼吸器内のPEEP圧力は、いくつかの可能な方法によってもたらされる:A)一定PEEP弁を使用し、様々な呼吸サイクル中にタービンを加速および減速する。B)要求された呼吸サイクル(吸気/呼気)ごとの高速の圧力増減を可能にするために、タービン出口に連結された比例弁または絞り弁によって圧力ラインを制御し、タービンの出口と入口との間に空気バイパスを形成する。C)タービンから患者への吸気経路を直接遮断し、それによって呼気サイクルおよび吸気サイクルを作り出す。
【0057】
タービンのRPMが一定であるほど、人工呼吸器は電気的に効率性が良くなり、したがって、漏れ補償または患者への流れの突然の増加によるRPM変動を防止する上で大きな利点がある。図1Aおよび図1Bの人工呼吸器システム100および100’では、連続抽気開口47は、一定のPEEPをもたらしながら、患者回路からのガスの小さく制御可能な抽気をもたらすことによってRPMの変動を防止する。
【0058】
本明細書で使用する場合、用語「患者回路」は、例えば患者との間でガスを移動させる回路を指す。
【0059】
呼気段階の初めに、流れの迅速な通過が存在し(通常、吸気段階中の流量の2倍、例えば40lpmに対して80lpm、より大きい流量)、それによって、患者が吐くことを可能にする圧力に急な低下を作り出す。呼気段階の後、人工呼吸器100は、呼気弁80を閉じることによってPEEPを回復する。これが起こると、圧力が数100ミリ秒で急激に低下する可能性がある(例えば、20cmHO)。これが起こると、患者の肺および患者回路は数cmHOだけ低下した圧力値を示すことがあり、時に、一定であり通常は5cmHOの程度であるPEEP値以下まで降下する可能性がある。圧力は、連続抽気開口47および主弁42の閉鎖を制御することによって回復され得る。
【0060】
最後に、連続抽気開口47の使用は、デッドスペースの連続的な希釈があるので、COの蓄積を防止する。さらに、外部PEEP弁の使用は、これが安全弁として働き、人工呼吸器内の圧力がどのようなものであっても、空気が人工呼吸器を流れ抜ける間、PEEP弁は5cmHOで立ち上がるようにだけ開くため、圧力を気道内で一定に保つことに役立つ。
【0061】
次に、異なる角度から示されたマニホールド組立体40および流量計組立体70の斜視図である図4および図5を参照する。本発明の特徴とするところは、マニホールド組立体40がマニホールドブロック24であって、主吸気弁42と、連続抽気開口47と、マニホールドブロック24内の、マニホールド組立体40を作動させるために必要とされるチューブおよびワイヤの大部分またはすべてとを含む人工呼吸器10の主要作動構成要素を保持するように構成される、マニホールドブロック24と、マニホールドブロック24の外面に取り付けられた吸気弁コントローラ43および呼気弁コントローラ84とを備えることである。
【0062】
マニホールドブロック24は、15~100cmの範囲内の容積を有するコンパクトユニットである。1つの実施形態では、マニホールドブロックは、約40mm×35mm×30mmの寸法を有する。マニホールドブロック24の使用は、人工呼吸器10の全体的なサイズおよび重量を大きく最小化することを可能にする。典型的な実施形態では、人工呼吸器10の重量は、例えば、現在知られている、はるかに大きく、通常は4.5kgを下回らない重量のものである携帯用タービン操作式人工呼吸器よりも著しく改善された0.6~1.6kgの範囲内である。さらに、マニホールドブロック24の使用は、空気制御要素のすべてを送風機22の近くに集中させることができ、したがって、チューブ、導管およびチャネルの必要性を、マニホールドブロックの壁内にこれらを形成することによって排除する。
【0063】
マニホールドブロック24は、送風機22に連結された送風機入力チューブ36を有するマニホールドブロック近位端28と、この実施形態では流量計組立体70の出口18を介して吸入チューブ92に連結されたマニホールドブロック遠位端30と、マニホールドブロック前部分32と、マニホールドブロック後部分34と、マニホールドブロック上部分33と、マニホールドブロック下部分35とを有する。これらの記号表示は、マニホールドブロック24内の要素間の幾何学的関係を理解することができるように説明するためのものであり、限定としてみなされるべきではない。
【0064】
送風機入力チューブ36は、例えば送風機出力を受け入れるための円形または他の任意の適切な形状を有するコネクタであってよい。空気流は、送風機22からマニホールドブロック近位端28にある送風機入力チューブ36を通って供給され、マニホールド組立体遠位端30まで続き、出口18を出て患者に至る。マニホールドブロック24の外側に取り付けられて示すのは、この場合は2つのソレノイド44および46から構成された吸気弁コントローラ43と、呼気弁コントローラ84である。さらに図に見られるのは、流量計組立体70、窒息防止弁の出口86、ソレノイド弁排気口45、呼気弁ポート82、および流量計ポート72および74である。
【0065】
次に、マニホールドブロック近位端28から流量計組立体の出口18へ空気流が進むにつれて空気が通過するマニホールド組立体40および流量計組立体70を示すマニホールドブロック24の断面図である図6および図7を参照する。図6は、マニホールドブロック近位端28から出口18までの長手方向切断を横切って後方から見た断面を示す。図7は、マニホールドブロック近位端28から出口18までの長手方向切断を横切って前方から見た断面を示す。マニホールド組立体40は、主吸気コントローラ43によって制御される主吸気弁42を含む。主吸気コントローラ43は、例えば、1つまたは複数のソレノイドを備えることができる。本明細書に示す実施形態では、主吸気コントローラ43は、図4、5、および7に見られるような第1のソレノイド44および第2のソレノイド46を含む。主吸気弁42は、呼吸サイクルの吸気部分中開かれ(オフにされ)、呼吸サイクルの呼気部分中に閉じられる(オンされる)ように構成されている。主吸気コントローラ43は、さらに、エネルギーの損失を最小限に抑えるために送風機入力チューブ36に連結され得る(図4および図5に示す)弁排気口45を含む。弁排気口45は、酸素が人工呼吸器10に放出されないことを保証するために、主吸気弁42内の内部圧力の通気をもたらす。弁排気口45は、人工呼吸器内の所定の酸素濃度を超えないように入口に連結される。
【0066】
第1のソレノイド44および第2のソレノイド46のような2つ以上のコントローラの使用は、主吸気弁42の開閉の速度および持続時間のための多種多様な制御オプションを提供する。本明細書に示す例では、2つのソレノイドが使用され、各ソレノイドは別々のタイミング機構でプログラムされていてもよく、例えば、一方のソレノイドは急速に開くことができ、他方のソレノイドはゆっくりと開くことができる。したがって、異なる速度でこのようなソレノイドを2つ使用すると、3つの速度オプションが得られる。例えば、ソレノイド44が第1の速度を有し、第2のソレノイド46が第2の速度を有する場合、第1のソレノイド44のみを用いて第1の速度で、第2のソレノイド46のみを用いて第2の速度で、または第1および第2のソレノイド44および46の両方を用いて第3の速度で吸気が起こり得る。可能な速度の数は、主吸気コントローラ43に追加のソレノイドを追加することによってさらに増加され得る。様々なオプションは、離散制御ではなく、比例制御を有するソレノイドの1つまたは複数によって増加することがきる。この構成の1つの特定の使用は、突然の吸入が必要とされる場合である。したがって、ソレノイドの1つは、そのような場合に非常に速い速度を有するようにプログラムすることができる。複数の弁の使用は、呼吸の開始中、圧力曲線のスロープに対する制御をもたらす。非限定的な例において、呼吸は、圧力変化(吸気の試みは、患者の肺に形成された負圧によって特徴付けられる)、流れ変化または患者の筋肉内で検出された電気信号によっても特徴付けられる。検出時間は、(方法に応じて)1から50ミリ秒の間の範囲とすることができ、ソレノイド起動(流れの開始)は、1から50m秒の間で変動し得る。流れの発生が呼吸努力の検出後50msec以内に始まる場合、高速応答と考えられる。
【0067】
送風機22と流体連通している送風機入力チューブ36は、送風機入力チューブ近位端37および送風機入力チューブ遠位端38を有する。送風機入力チューブ遠位端38において、吸気弁の第1のコネクタ50が送風機入力チューブ36および主吸気弁42に連結される。吸気弁の第1のコネクタ50は、送風機入力チューブ36に対して実質的に垂直に配置され、それにより、空気は、近位から遠位の方向に送風機入力チューブ36から吸気弁の第1のコネクタ50内に、および下から上の方向に吸気弁の第1のコネクタ50から主吸気弁42に流れる。加えて、吸気弁の第1のコネクタ50は、それ上に、連続抽気導管49内につながる連続抽気開口47を含む。連続抽気開口47は、呼吸サイクルの吸気部分中および呼吸サイクルの呼気部分中、吸気弁の第1のコネクタ50から連続抽気導管49まで連続的に少量の空気流を供給する開口部である。本発明の実施形態では、主吸気弁42は、連続抽気導管49および送風機入力チューブ36の上方の位置に配置される。他の位置も可能であることが容易に明らかであるはずである。主吸気弁42および連続抽気導管49の両方は、吸気弁の第2のコネクタ58を介して吸気空気チューブ52と流体連通する。吸気弁の第1のコネクタ50と同様に、吸気弁の第2のコネクタ58は、吸気空気チューブ52に対して実質的に垂直に配置され、それにより、空気は、上から下の方向に主吸気弁42から吸気弁の第2のコネクタ58まで、および近位から遠位の方向に吸気弁の第2のコネクタ58から吸気空気チューブ52に流れる。加えて、吸気弁の第2のコネクタ58は、それ上に、連続抽気導管49から吸気空気チューブ52内につながる第2の連続抽気開口51を含む。
【0068】
吸気空気チューブ52は、吸気空気チューブの近位端54と吸気空気チューブの遠位端56とを有している。開いたとき(すなわち吸気段階中)に、空気は、主吸気弁42から吸気弁の第2のコネクタ58を通って吸気空気チューブの近位端54において吸気空気チューブ52に流れる。空気はまた、空気が送風機22を介して送風機入力チューブ36に供給される間は、連続抽気導管49から、吸気弁の第2のコネクタ58を介して吸気空気チューブの近位端54において吸気空気チューブ52内に流れる。すなわち、連続抽気導管49を通る空気の流れは、サイクルの段階に応じるものではなく、したがって、吸気段階および呼気段階中に起こる。連続抽気導管49の直径は、通常は、0.5~2.5mmの範囲であり、それにより、連続抽気は、相対的に少量のものである。吸気サイクル中、空気が主吸気弁42から吸気空気チューブ52内に流れているとき、連続抽気導管49から流れる空気は、主吸気弁42からの空気と組み合わさり、空気流の総量に対して無視できるものである。呼気サイクル中、空気が主吸気弁42から吸気空気チューブ52内に流れていないとき、連続抽気導管49から流れる空気は、流路のみに沿って継続する。吸気空気チューブの遠位端56は出口18までつながり、それにより、その中を流れる空気は患者に供給され、これは本明細書の以下においてさらに説明される。
【0069】
本発明の実施形態では、流量計組立体70が吸気空気チューブ52内に含まれる。流量計組立体70の位置は、本明細書に示され記載された位置に限定されず、吸気空気流路に沿った他の戦略的な場所に置かれてよいことが容易に明らかであるはずである。本明細書に示す実施形態では、流量計組立体は、第1の流量計ポート72および第2の流量計ポート74を含む。第1の流量計ポート72と第2の流量計ポート74との間に、吸気空気チューブ52は、狭小にされた空気チューブ部分76を有する。狭小にされた空気チューブ部分76は、3~8mmの間の直径を有し、これは14mmの範囲である吸気空気チューブ52の他の部分にある直径よりはるかに小さい。こうして狭小であることにより、圧力増大、すなわちオリフィスの2つの側間の圧力差を引き起こし、これは、狭小チャネルを通過する体積流量を引き出し、算出するために使用される。本明細書に示す実施形態における流量計組立体70は、ベンチュリ流量計であり、例えば、米国特許第6,802,225号明細書に説明されるような流量計であってよい。このタイプの流量計は、非常に小さく正確である。しかし、流量計組立体70は、例えば、熱線風速計、インペラ流量計、超音波、光学式、または人工呼吸器システム内の空気の流れを測定するように適切に適合され得る当技術分野で知られている任意の他のタイプの流量計などの任意の適切な流量計であってよい。
【0070】
マニホールドブロック24は、さらに、呼気弁ポート82(図4および図5に示す)に連結された呼気弁コントローラ84を含む。呼気弁ポート82は、呼気弁80につながる呼気チューブ81につながり、これらはいずれも人工呼吸器10の外側に配置され、例えば図1に概略的に示される。図4および図5に示すように、呼気弁コントローラ84および呼気弁ポート82は、マニホールドブロック24上の第1および第2のソレノイド44および46の遠位に配置されている。呼気弁コントローラ84および呼気弁ポート82の位置は、本明細書に示すものに限定されない。呼気弁コントローラ84は、例えば、ソレノイドであってもよく、いくつかの実施形態では、本明細書の上記で示したように比例制御を有することもできる。呼気弁コントローラ84は、サイクルの呼気段階中に呼気弁80を開き、サイクルの吸気段階中に呼気弁80を閉じるように構成される。
【0071】
マニホールドブロック24は、さらに、送風機22が動作を停止する状況で患者が呼吸することを可能にする窒息防止弁85を含む。図4に示すように、窒息防止弁の出口86は、マニホールドブロック24の前部分32に配置される。しかし、窒息防止弁85の他の位置が可能であることは容易に明らかであるはずである。マニホールドブロック24は、さらに、気圧外傷および他の肺損傷を防止するために、安全(すなわち高圧)弁99(図8を参照)を含むことができる。本発明の実施形態では、安全弁99は、送風機内に発生する圧力を限定するために使用されるハードウェア保護機構(例えばRPM、圧力、または他のソフトウェア実装の制限など)であってよい。図7では、マニホールドブロック24の前部分を覆う取り外し可能な上部プレート89が見られる。
【0072】
次に、呼吸サイクルの吸気段階および呼気段階中の空気流路を示す、システム100の気圧回路図である図8を参照する。タービン22は、空気O入口18を介して、外気、および任意選択により、含酸素空気を受け取るように構成される。タービン22は、送風機入力チューブ36に空気を供給する。第1のソレノイド44および第2のソレノイド46の一方または両方が開いている場合、空気は、開いたソレノイド(または両方の開いたソレノイド)を通って主吸気弁42まで流れ、患者につながる吸入チューブ内に入る。いずれの場合も、第1または第2のソレノイド44または46が開いているかどうかに関わらず、少量の空気が連続抽気開口47を通って流れ、患者につながる吸入チューブ内に入る。主吸気弁42から流出したガスは、タービン22に送り返され得る。呼気段階中、呼気弁コントローラ84は、制御ライン内の圧力を調整して、呼気チューブ上に配置された呼気弁80を開く。呼気弁コントローラ84から流出するガスは、送風機22に送り返され得る。
【0073】
次に、マニホールド24内の主吸気弁42の実施形態を示す部分切断断面図である図9A、およびダイヤフラムおよび主吸気弁42のカバーの上方に配置されたスペーサ62の斜視図である図9Bを参照する。
【0074】
主吸気弁42は、ダイヤフラム60の開閉を介して機能する。ダイヤフラム60は、可撓性材料、例えばシリコーンからなり、吸気弁の第1のコネクタ50内につながる開口部53の上に配置される。ダイヤフラム60は、上から下の方向に移動するように構成され、上の位置では、開口部53は、空気の流れに対して開き、下の位置では、ダイヤフラム60は、開口部53を覆い、したがって吸気空気チューブ52に入る空気流を遮る。ダイヤフラム60が上または下の位置になる動き(すなわち主吸気弁42の開閉)は、ダイヤフラム60の上方に見られる開口部98を有するチャネルを介して、第1および第2のソレノイド44および46の一方または両方によって制御される。図では、空気式ソレノイド弁に圧力を供給するための導管204につながる入口およびソレノイド弁排気口45が見られる。
【0075】
本発明のいくつかの実施形態では、ダイヤフラム60は、スペーサ62の下に配置され、ダイヤフラム60が上方向に動くことができる程度を制限する。スペーサ62は、ダイヤフラム60との間のガスの通過を可能にする通気窓97を有することができる。図9Bに示すスペーサ62は、開口部53を覆う適所にダイヤフラムを保持するために使用できる多くの可能な方法のうちの1つにすぎない。
【0076】
図10は、流量計に連結されていないマニホールドブロック24’の一実施形態の斜視図を概略的に示す。この実施形態では、流量計は、人工呼吸器の外側のチュービングシステムに組み込まれる。これにより、図4~7のようにマニホールドブロックに取り付けられた流量計を備えた人工呼吸器と比較して、人工呼吸器の重量およびサイズの低減を可能にする。
【0077】
本発明の実施形態を例示として説明してきたが、本発明は、特許請求の範囲を超えることなく、多くの変形、改変、および適合を伴って実施され得ることが理解されよう。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10