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特許7016321房室弁の接合を改善するインプラントおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-27
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】房室弁の接合を改善するインプラントおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20220128BHJP
【FI】
A61F2/24
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018553328
(86)(22)【出願日】2016-12-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-01-17
(86)【国際出願番号】 IB2016001819
(87)【国際公開番号】W WO2017115123
(87)【国際公開日】2017-07-06
【審査請求日】2019-10-16
(31)【優先権主張番号】14/984,456
(32)【優先日】2015-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519007086
【氏名又は名称】アブヴィー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツンク
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】モール、ヴェルナー
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/052570(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0039083(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0067054(US,A1)
【文献】特表2009-537187(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の生来の弁尖、第2の生来の弁尖、および弁輪を有する房室弁の接合を改善するインプラントと、送達デバイスとを備えるシステムであって
記インプラントは、前記弁輪または前記第1および第2の生来の弁尖の少なくとも1つに配置および固定されるように構成された支持構造体(16)を備え、前記インプラントは、前記少なくとも1つの生来の弁尖の脱出を防止するように前記支持構造体(16)に固定された保持手段(36、37)をさらに備え、
前記支持構造体(16)は、前記弁輪または前記少なくとも1つの生来の弁尖の上面に配置される上部支持要素(17)と、前記弁輪または前記少なくとも1つの生来の弁尖の下面に配置される下部支持要素(18)とを備え、前記上部および前記下部支持要素(17、18)はそれぞれ、前記上部および前記下部支持要素(17、18)を相互接続するために相互に協働しながら、前記上部支持要素(17)と前記下部支持要素(18)との間で前記弁輪または前記少なくとも1つの生来の弁尖の部分をクランプする接続手段(32、33)を備え、
少なくとも1つの接続手段(32、33)は、他方の接続手段(32、33)と接続するために、前記弁輪または前記少なくとも1つの生来の弁尖を貫くように構成された貫通部分を備え、
少なくとも1つの固定要素(39、49)が、前記保持手段を前記支持構造体(40)から離れた前記少なくとも1つの生来の弁尖に固定するために設けられ、
前記保持手段(36、37)は、前記上部支持要素(17)に接続された人工弁尖および/または複数の可撓性ワイヤ若しくは糸を備え、
前記固定要素は、前記少なくとも1つの生来の弁尖または前記弁輪の円周方向に延び、前記固定要素に対して前記ワイヤまた糸を位置決めするための複数の位置決め点を含み、前記複数の位置決め点は、前記円周方向に互いに離間し、
前記保持手段は、その一端において前記下部支持要素(18)に接続され、その他端において前記上部支持要素(17)に接続され
前記送達デバイスは、管状ハウジング(29)を含み、前記支持構造体(16)および前記保持手段(36、37)は、前記支持構造体(16)および前記保持手段(36、37)が前記管状ハウジング(29)内に配置される第1の位置から、前記支持構造体(16)が展開される第2の位置に展開でき、
前記管状ハウジング(29)は、2つのハーフシェルを備え、第1のハーフシェル(30)は前記上部支持要素(17)を収容し、第2のハーフシェル(31)は前記下部支持要素(18)を収容する、システム
【請求項2】
前記下部支持要素(18)は、前記保持手段を保持するための少なくとも1つの保持アーム(23、45)を担持する、請求項1に記載のシステム
【請求項3】
前記可撓性ワイヤまたは糸(36、37)は、前記人工弁尖に埋め込まれ、または固定されている、請求項1または2に記載のシステム
【請求項4】
前記房室弁が僧帽弁であり、前記少なくとも1つの生来の弁尖が前記僧帽弁の後部弁尖または前部弁尖である、請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム
【請求項5】
前記保持アーム(45)は、調整可能な要素を備え、前記調整可能な要素は、前記固定要素(49)にワイヤまたは糸(55)のような接続手段によって接続されて、前記調節可能な要素(54)の位置を調節することにより、前記保持手段に対する前記固定要素(49)の位置がそれぞれ調整される、請求項2に記載のシステム
【請求項6】
前記調整可能な要素は、前記保持アーム(45)に案内されたスリーブ(54)である、請求項5に記載のシステム
【請求項7】
前記上部および前記下部支持要素(17、18)は、相互接続されずに別個に前記管状ハウジング(29)内に収容される、請求項1~6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記第1および第2のハーフシェル(30、31)は、展開器具の遠位端に配置される、請求項1~7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記第1および第2のハーフシェル(30、31)は、前記インプラントを展開させることを可能にするために揺動して開くように配置される、請求項1~8のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、房室弁の接合を改善するためのインプラントおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
房室弁は、収縮期の間にヒトの心臓の心室から心房への逆流を防止する膜状の襞である。それらは、弁が心房内に脱出するのを防止する腱索によって心室腔内に固定される。
【0003】
腱索は、乳頭筋に付着しており、それが張力により弁をより良好に保持させる。合わせて、乳頭筋および腱索は弁下の器官として知られている。弁下の器官の機能は、閉鎖時に弁が心房内に脱出するのを防ぐことである。弁の開閉は、弁を横切る圧力勾配によって生じる。
【0004】
ヒトの心臓は、2つの房室弁、僧帽弁および三尖弁を含む。僧帽弁は、血液が左心房から左心室に流れることを可能にするものである。三尖弁は、右心房と右心室との間に位置している。僧帽弁には、2つの弁尖があり、それぞれ数個のスカラップ部に分かれる。すなわち、前弁尖には3つのスカラップ部(A1、A2、A3)、後弁尖に3つのスカラップ部(P1、P2、P3)がある。三尖弁には3つの弁尖がある。弁尖の対応する表面を互いに係合させることは、血液が誤った方向へ流れるのを防止すべく弁の閉鎖を成すためには決定的である。閉鎖は、いわゆる接合領域を形成する。
【0005】
生来の心臓弁は、様々な病理学的原因のために機能不全になる。心室収縮中に弁尖を封止できないことは、誤接合として知られており、血液が弁を通って逆に流れる(逆流)ようにする可能性がある。誤接合は頻繁に弁輪の拡張によって引き起こされる。これは、主に、後壁の運動が保たれている左心房の拡大によるか、後壁の運動の異常が非対称的な弁輪の拡張に至ったことによる後部心筋梗塞の場合である。別の理由は、運動の制限または弁尖構造の過剰な動きである。重度の逆流の別の原因は、腱索の局所的な伸長または破裂であり、その結果、弁尖の一部が脱出する。心臓弁の逆流は、心不全、血流の低下、血圧の低下、および/または身体の組織への酸素の流れの減少をもたらし得る。僧帽弁の逆流はまた、血液を左心房から肺静脈に逆流させ、鬱血および逆行性障害を引き起こす可能性がある。
【0006】
誤接合などの房室弁のいくつかの病因により、頻繁に弁および弁下の器官の再構成ならびに拡大した弁輪の再設計が必要となる。場合によっては、生来の心臓弁を心臓弁プロテーゼで完全に外科的に置換することが必要である。人工の心臓弁には、機械式の弁および生物学的な弁という主要な2つのタイプがある。機械式心臓弁は、一方向の血流を提供するために基部構造によって支持された枢動式の機械的閉鎖を使用する。組織型弁は、基部構造によって支持され、生来のヒトの心臓弁の機能に類似した機能を果たす、流れの中に突き出している、可撓性の弁尖を有し、それらの自然な屈曲動作を模倣して互いに接合する。通常、金属材料またはポリマー材料で作られる周辺支持構造体内に、2つ以上の可撓性の弁尖が取り付けられる。経カテーテル式の植込みでは、特許文献1に開示されているように、弁輪内の支持体がステントの形態であってもよい。
【0007】
人工弁尖が適切に機能するのに十分な空間を提供するために、周辺支持体は、生来の弁を離すように、生来の弁に配置される。この目的のために、また生来の弁内の周辺支持体の適切な固定を提供するために、適切な手段によって生来の弁尖に固定する。しかし、僧帽弁などのいくつかの用途では、周辺支持体を生来の前部弁尖に固定して、その本来の位置から外れたら、流出路および大動脈弁の閉塞が生じる可能性がある。それは弁尖前部に直接隣接する左心室に位置している。
【0008】
僧帽弁の逆流を治療するためのゴールドスタンダードは、弁尖および弁下の器官を含む僧帽弁の器官を修復し、僧帽弁輪を再形成することである(Carpentier法)。修復が不可能な場合、弁下の器官の諸部分を含む弁の切除が、その後の心臓弁プロテーゼの植込みによって行われる。これは、特に、弁が炎症により破壊される場合に必要である。ほとんどの場合、破壊された弁の完全な切除が必要であるが、場合によっては部分的な交換が可能である。臨床的に使用される僧帽弁修復システム(Mitrofix(登録商標))は、後部弁尖のみを、固定する後部弁尖を模倣した硬質プロテーゼで置き換え、生来の前部弁尖を接合させる。このプロテーゼはまた、弁輪の破壊された後面の位置に縫い付けられる。これには開胸手術と心停止の延長が必要である。
【0009】
最近の傾向としては、低侵襲処置に焦点を当てており、外科的外傷を最小限に抑え、経心房、経大動脈、経心尖部処置を含む経カテーテルアプローチを実施して、機能不全弁を置換または再構築し、そのようにして心肺装置および心停止の必要性を最小限に抑えたり、それらを回避したりしている。これは今日において大動脈弁の一般的な処置であるが、経皮的または経心尖的処置によって僧帽弁機能不全のごくわずかしか矯正されていない。これらのコンセプトのほとんどは、僧帽弁輪を人工的に再設計および改造し、両方の弁尖をクリップで共に固定して僧帽弁逆流を減少させることによって、接合を可能にしたり、接合を施行したりする。経皮的または経心尖的に展開された弁プロテーゼは、僧帽弁が特別な解剖学的構造であること、および大動脈流出路への前部弁尖と近傍であることのために、固定することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許出願公開第2011/0208298号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、房室弁の接合を改善し、かつ生来の弁尖の心房への脱出を防止するための改良されたインプラントを提供することである。特に、本発明の目的は、大動脈弁の狭窄のリスクを伴わないインプラントを提供することである。
【0012】
本発明のさらなる目的は、標的部位に容易に展開され得るインプラントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、概して、房室弁、特に僧帽弁における逆流の治療のための改善された医療用インプラントおよび方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、心房への脱出を防止するために、第1および第2の生来の弁尖の少なくとも1つと協働する保持手段を提供する医療用インプラントを提供する。したがって、インプラントは、損傷を受けたまたは他の機能不全の生来の弁尖の機能を補助する。しかし、損傷を受けたまたは他の機能不全の生来の弁尖は物理的に除去しない。むしろ、損傷を受けたまたは他の機能不全の生来の弁尖が弁に残る。
【0014】
インプラントは、損傷を受けたまたは他の機能不全の生来の弁尖が心房に脱出するのを防止する保持手段を提供する。保持手段は、生来の弁尖に隣接して配置された人工弁尖を含んでも、含まなくてもよい。保持手段は、脱出を防止するために、人工弁尖または生来の弁尖と協働する可撓性ネットまたは可撓性ワイヤまたは糸を含むことができる。人工弁尖が提供される場合には、損傷を受けたまたは他の機能不全の生来の弁尖が、人工弁尖またはその部分の機能をサポートすることができる。
【0015】
いくつかの実施形態では、保持手段は、生来の弁尖および/または人工弁尖がその通常の機能を果たし、他の生来の弁尖と接合することを可能にするために可撓性がある。
【0016】
いくつかの実施形態では、本発明はインプラントを提供し、インプラントは、弁輪または第1および第2の生来の第1の弁尖の少なくとも1つに配置および固定されるように構成された支持構造体を含み、インプラントは、少なくとも1つの生来の弁尖またはその部分(例えばP1、P2、P3)の脱出を防止するように支持構造体に固定された保持手段をさらに備え、支持構造体は、弁輪または少なくとも1つの生来の弁尖の上面に配置される上部支持要素と、弁輪または少なくとも1つの生来の弁尖の下面に配置される下部支持要素とを含み、上部および下部支持要素はそれぞれ、上部および下部支持要素を相互接続するために相互に協働しながら、上部支持要素と下部支持要素との間で弁輪または少なくとも1つの生来の弁尖の部分をクランプする接続手段を備え、少なくとも1つの接続手段は、他方の接続手段と接続するために、弁輪または少なくとも1つの生来の弁尖を貫くように構成された貫通部分を備える。
【0017】
したがって、支持構造体は、生来の弁輪に、または第1および第2の生来の弁尖の少なくとも1つに固定される。好ましくは、支持構造体は、第1の生来の弁尖または第2の生来の弁尖にのみ固定される。僧帽弁用に構成されたインプラントの場合、第1の生来の弁尖は僧帽弁の後部弁尖であり、第2の生来の弁尖は僧帽弁の前部弁尖である。保持手段が人工弁尖を含む場合、人工弁尖は、好ましくは、人工後部弁尖として構成され、生来の後部弁尖の機能を置き換えおよび/または支持する。人工後部弁尖は、好ましくは、生来の前部弁尖の接合を改善するような形状であり、画像化技術によって得られた患者特異的画像データに基づいて個別に調整してもよい。
【0018】
三尖弁用に構成されたインプラントの場合、第1の生来の弁尖は三尖弁の前部弁尖であり、第2の生来の弁尖は三尖弁の後部弁尖であり、第3の弁尖は、三尖弁の中隔尖である。保持手段が人工弁尖を含む場合、人工弁尖は、生来の前部弁尖または後部弁尖の機能を置き換えるように構成される。人工の前部または後部の弁尖またはその両方の組み合わせは、好ましくは、生来の前部弁尖および後部弁尖との接合を改善するような形状である。
【0019】
支持構造体は、好ましくは、第1または第2弁尖の一方の弁尖にのみ、または第1または第2の弁尖が出現する弁輪の当該部分領域にのみ固定される。さらに、保持手段は、支持構造体が固定されている弁尖のみと協働し、その脱出を防止するように構成されている。
【0020】
支持構造体は、保持手段を担持し、保持手段を、少なくとも1つの生来の弁尖を保持して生来の第2の弁尖と接合することができる位置に保持するように、構成される。
【0021】
インプラントを弁輪または生来の弁尖に関連付けるために、支持構造体は、不適切な弁周囲の漏出および逆流を回避するために、弁輪の一部またはそれらの間の生来の弁尖を圧迫するように構成された上部支持要素および下部支持要素を含む。
【0022】
上部支持要素は、好ましくは実質的にC字形、U字形、半円形または円形にし、弁輪の形状または弁輪の一部に一致するようにする。上部支持要素を安定化させるために、上部支持要素は、好ましくは、弁輪および隣接する心房壁を横切る半径方向の締付け力を加えるための締付け手段を含む。締付け力は、上部支持要素を弁輪に対してしっかりと保持するように、弁輪を広げるように作用する。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態では、上部支持要素は、弁輪のセグメントにわたってのみ延びている。
【0024】
上部および下部支持要素は、好ましくは折り畳み可能な構造を備えているので、折り畳まれた状態で弁に前進することができる。好ましくは、上部および下部支持要素は、ニチノールなどの形状記憶合金で作られた湾曲したワイヤを含む。好ましくは、湾曲したワイヤは、中央支持体から外側に延びる少なくとも2つのウィングの形状である。
【0025】
いくつかの実施形態では、インプラントは、管状ハウジングをさらに含み、支持構造体および保持手段は、支持構造体および保持手段が管状ハウジング内に配置される第1の位置から、支持構造体が展開される第2の位置に展開できる。このようにすると、インプラントは、最小侵襲手術または血管内アプローチによって心臓に容易に展開することができる。特に、管状ハウジングは、好ましくは、カテーテルまたは展開器具によって経心房、経中隔、経大腿または経心尖に、心臓内に前進させる。
【0026】
好ましくは、支持構造体および保持手段は、折り畳まれた状態または巻き上げられた状態から拡張された状態に展開されるように構成される。折り畳まれた状態または巻き上げられた状態では、構造体は、経カテーテルまたは経心尖に、心臓に容易に前進することができる。
【0027】
好ましくは、管状ハウジングは、2つのハーフシェルを備え、第1のハーフシェルは上部支持要素を収容し、第2のハーフシェルは下部支持要素を収容する。あるいは、管状ハウジングは、管状ハウジングの円形断面のセグメント上にそれぞれ延在し、一緒になって管状ハウジングを形成する3つ以上のシェルを備えてもよい。
【0028】
2つ以上のシェルを有する管状ハウジングの構成により、対応する数のインプラントの要素を選択的に展開することが可能になる。インプラントの要素を展開する好ましい方法は、シェル、特に第1および第2のハーフシェルを揺動して開くように配置することによって達成する。シェルを揺動して開くことで、インプラントの展開を可能にするために管状ハウジングを開くことが可能になる。
【0029】
好ましくは、インプラントの上部および下部支持要素は、相互接続されずに別個に管状ハウジング内に収容される。したがって、好ましくは管状ハウジングのそれぞれのシェル内に配置された上部および下部支持要素は、別々に容易に展開でき、後で互いの接続を可能にする正しい位置に別個にもたらされ得る。
【0030】
好ましくは、第1および第2のハーフシェルは、操縦可能な器具またはカテーテルのような展開器具の遠位端に配置される。この器具は、心臓内に経心尖、経大動脈、または経心房に前進でき、その遠位端に管状ハウジングを担持するカテーテル様チューブを有してもよい。外科医または介在術者によって保持される展開器具の近位端は、好ましくは、管状ハウジングのシェルおよび上部および下部支持構造体と協働して、シェルを揺動しながら開くこと、および支持要素の変位、展開および伸長を制御する作動手段を備えることができる。
【0031】
いくつかの実施形態では、保持手段は、上部支持要素に配置された人工弁尖を含む。これに代えて、または加えて、保持手段は、可撓性ネットまたは複数の可撓性ワイヤまたは糸または織物を備える。可撓性ネットまたは複数の可撓性ワイヤまたは糸は、保持手段によって保持される生来の弁尖および/または人工弁尖の領域に実質的に対応する領域をカバーする。いくつかの実施形態で、可撓性ネット、ワイヤまたは糸は、人工弁尖に埋め込まれても、固定されてもよい。
【0032】
好ましくは、少なくとも1つの固定要素が、保持手段、特に可撓性ネット、ワイヤまたは糸を、支持構造体から離れた位置で生来の弁尖に固定するために設けられる。特に、固定要素は、生来の弁の接合部分と自由な部分との間のヒンジ点で、生来の弁尖上に保持手段を固定するように構成される。好ましくは、複数のワイヤまたは糸は、互いに間隔をおいて配置された固定要素の目を通して案内される。好ましくは、少なくとも1つの固定要素は、少なくとも1つの生来の弁尖の上面に配置される上部固定要素と、少なくとも1つの生来の弁尖の下面に配置される下部固定要素とを備え、上部および下部固定要素の各々は、上部および下部固定要素を相互接続するために相互に協働しながら、上部固定要素と下部固定要素との間で少なくとも1つの生来の弁尖の部分をクランプする接続手段を備え、少なくとも1つの接続手段は、他方の接続手段と接続するために、少なくとも1つの生来の弁尖を貫くように構成された貫通部分を好ましくは備える。固定要素、特に上部固定要素は、弁尖または弁輪の円周方向に延び、固定要素に対してワイヤまたは糸または人工弁尖を位置決めするための複数の位置決め点を含み、前述の複数の位置決め点は前述の周方向に互いに離間して配置されている。
【0033】
好ましくは、固定要素は、ワイヤまたは糸の長さ方向に摺動可能に配置され、調整された位置に固定可能である。
【0034】
人工弁尖は、ポリエチレンまたはポリウレタン、ポリフルオレン(Goretex(登録商標))のような生体適合性材料、または異種心膜のような生来の組織から作製され得る。
【0035】
好ましい実施形態では、人工ネットまたは弁尖構造体は、生来の(脱出)弁尖部分との接合線で、脱出する弁尖のヒンジ点に第2固定機構で固定される。
【0036】
保持手段を支持構造体上に固定するために、好ましい実施形態は、下部支持要素が保持手段を保持するための少なくとも1つの保持アームを担持することを提供する。保持アームは、フックの形態で構成されても、その自由端にフックを備えてもよい。アームの自由端は、保持手段のワイヤまたは糸を引き込む目を担持することが好ましい。好ましくは、保持アームは、互いに離間した少なくとも2つの目を保持し、各々の目は、保持手段のワイヤまたは糸を保持するように構成されている。
【0037】
好ましくは、アームは、アームの長さを調整するように伸張可能な部分を含む。好ましくは、アームは、アームを曲げるために形状変化特性を備えている。形状の変化は、好ましくは電磁的または機械的要素を移動させるために、温度および/または電流を加えることによって開始することができる。
【0038】
好ましくは、保持手段は、その一端に下部支持構造体が接続され、他端に上部支持構造体が接続される。その両端の間の領域において、保持手段は脱出を防止するために生来の弁尖と協働する。
【0039】
好ましくは、保持アームまたはフックは、適用上いくらか可撓性があるようにすべく、長さが調整可能であるように構成されている。
【0040】
さらなる態様によれば、本発明は、房室弁の接合を改善する方法であって、房室弁が弁輪、第1の生来の弁尖および第2の生来の弁尖を有し、
-支持構造体と、支持構造体に固定された保持手段とを含むインプラントを準備すること、ここで支持構造体は、上部支持要素および下部支持要素を含み、インプラントは、管状ハウジング内に上部および下部支持構造体が折り畳まれた状態で配置され、管状ハウジングは第1および第2のハーフシェルを含み、第1のハーフシェルが上部支持要素を収容し、第2のハーフシェルが下部支持要素を収容する、
-管状ハウジングを心臓内に前進させること、
-ハーフシェルを揺動して開くこと、
-第1または第2の生来の弁尖が第1および第2のハーフシェルの間に配置されるようにインプラントとともに管状ハウジングを前進させること、
-上部および下部支持構造体を開くこと、
-上部および下部支持構造体を弁輪または第1または第2の生来の弁尖に固定すること、ただし固定ステップは、上部および下部支持要素の接続手段を相互接続し、これにより弁輪または第1または第2の生来の弁尖の部分を上部支持要素と下部支持要素との間にクランプし、少なくとも1つの接続手段が、他の接続手段と接続されたときに、弁輪または第1または第2の生来の弁尖を貫く貫通部分を含む、
-第1または第2の生来の弁尖の脱出を防止するように保持手段を位置決めすること、
-管状ハウジングを心臓から引き抜くこと
を示す。
【0041】
好ましくは、管状ハウジングは経心房、すなわち心臓の左心房を通って、経中隔、すなわち心臓の中隔を通って、経大腿または経心尖に、すなわち心臓または大動脈の心尖を通って、心臓内に前進させる。位置決めは、管状ハウジングを操縦するための操縦可能な案内要素によって容易にされる。
【0042】
好ましくは、支持構造体を固定するステップは、上部支持要素を弁輪または生来の弁尖の上面に位置決めし、下部支持要素を弁輪または生来の弁尖の下面に位置決めすることを含む。
【0043】
好ましくは、前述の固定ステップは、接続手段を相互接続する前に、接続手段の少なくとも1つを他の接続手段に対して動かすことによって接続手段を軸方向に互いに整列させることを含む。
【0044】
好ましくは、接続手段を相互接続する前述のステップが、ハーフシェルの閉鎖動作によって接続手段を互いの方へ動かすことを含む。
【0045】
好ましくは、接続手段を互いに接続するステップは、弁輪または第1または第2の生来の弁尖を貫くことを含む。この貫通は、少なくとも1つの接続手段の貫通部分の機械的な力によって、または熱または電流によって達成され得る。
【0046】
接続手段の相互の接続は、接続手段の間に形状適合を設けることによって達成され得る。前述の形状適合は、好ましくは、形状記憶材料の形状変化を開始することによって達成され得、形状変化は、接続手段に電流を印加することによって開始され得る。あるいは、接続手段間の接続は溶接によって達成されてもよく、溶接は接続手段を介して電流を印加することによって実現されてもよい。
【0047】
好ましくは、保持手段を位置決めする前述のステップは、下部支持構造体に接続されるその一端と、上部支持構造体に接続されるその他端との間の前述の保持手段の長さを調整することを含む。
【0048】
好ましくは、生来の第1の弁尖は僧帽弁の後部弁尖であり、第2の生来の弁尖は僧帽弁の前部弁尖である。
【0049】
好ましい実施形態では、保持手段を使用することができ、そのサイズは、生来の弁の脱出領域の測定によって個々の患者に適合するように選択される。特に、支持構造体のサイズおよび/または保持手段のサイズは、患者の脱出している生来の弁尖部分のサイズから計算することができる。
【0050】
さらに、支持構造体の2つのアームの長さは、弁の脱出領域の個々の測定値の関数として選択することができる。
【0051】
さらに、保持手段は、後者の接合線で生来の脱出している弁尖に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】ヒトの心臓の概略図である。
図2】僧帽弁インプラントの上面図である。
図3図2の僧帽弁インプラントの側面図である。
図4図2の僧帽弁インプラントの正面図である。
図5】ヒトの心臓に僧帽弁インプラントを展開する展開器具の斜視図である。
図6】展開器具に配置された折り畳まれた僧帽弁インプラントの斜視図である。
図7図5の断面図を示す。
図8】僧帽弁に僧帽弁インプラントを展開して固定する連続的なステップの概略図である。
図9】僧帽弁に僧帽弁インプラントを展開して固定する連続的なステップの概略図である。
図10】僧帽弁に僧帽弁インプラントを展開して固定する連続的なステップの概略図である。
図11】僧帽弁に僧帽弁インプラントを展開して固定する連続的なステップの概略図である。
図12】僧帽弁に僧帽弁インプラントを展開して固定する連続的なステップの概略図である。
図13】僧帽弁に僧帽弁インプラントを展開して固定する連続的なステップの概略図である。
図14】僧帽弁インプラントの代替実施形態である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本発明の態様は、本発明の特定の実施形態を対象とする以下の説明および関連する図面に開示される。当業者であれば、特許請求の範囲の精神または範囲から脱出することなく代替の実施形態を考案することができることを認識するであろう。さらに、本発明の例示的な実施形態の周知の要素は、本発明の関連する詳細を不明瞭にしないように、詳細には説明せず、さもなければ省略する。
【0054】
記載された実施形態は、必ずしも他の実施形態よりも好ましい、または有利であると解釈すべきではないことを理解されたい。さらに、「本発明の実施形態」、「実施形態(複数)」または「発明」という用語は、本発明のすべての実施形態が、論じられた特徴、利点または動作様式を含むことを必要としない。
【0055】
図1には、右心室2、右心房3、左心室4および左心房5を含むヒト心臓1の概略図がある。中隔6が、右と左のセクションで心臓1を分割している。僧帽弁7は、血液を左心房5から左心室4に流入させる。三尖弁8は、右心房3と右心室2の間に位置する。上行大動脈9は大動脈弁10のオリフィスが起始である。僧帽弁7は、弁7が左心房5内に脱出するのを防止する腱索11によって左室腔内に固定される、前部弁尖および後部弁尖を含む。
【0056】
本発明の僧帽弁インプラントは、心臓に対して経カテーテルに展開されるように構成される。特にインプラントは、経心房に、すなわち心臓の左心房を通って、経中隔に、すなわち線12によって示されるように心臓の中隔6を通って、経心尖に、すなわち線13によって示されるように心臓の心尖を通って、または線14によって示されるように上行大動脈9を通って、カテーテルによって心臓に送達することができる。
【0057】
インプラント処置の間、バルーン15は僧帽弁7のオリフィス内に配置され、収縮期に膨張させ、拡張期の間に収縮させて逆流液量の流れを最小にし、肺静脈への深刻な流入を防止する。
【0058】
図2図3および図4に示すように、インプラントは、弁輪または僧帽弁の第1および第2の生来の第1の弁尖の少なくとも1つに配置され固定されるように構成された支持構造体16を備える。支持構造体16は、弁輪または少なくとも1つの生来の弁尖の上面に配置される上部支持要素17と、弁輪または少なくとも1つの生来の弁尖の下面に配置される下部支持要素18とを含む。上部支持要素17および下部支持要素18はそれぞれ、ニチノールのような形状記憶合金製の湾曲したワイヤ19、20を含む。好ましくは、湾曲したワイヤは、中央支持体21、22から外側に延びる少なくとも2つのウィングの形状である。このインプラントは、下部支持要素18に固定されたアーム23をさらに含み、アームの自由端が下部支持要素18から遠ざかるように湾曲部24を有する。自由端は、ネットまたは可撓性ワイヤまたは糸のような保持手段の一端を保持するための目25を担持する。図2図3および図4に示す例示的な実施形態では、保持手段は、それぞれウィング19から目25まで延びる複数の糸36を備える。糸36は、ウィング19の長さに沿って均等に分配された態様でウィング19に固定されている。また、糸36と交差する方向に延びる糸37が設けられている。糸37は、例えば、接着(glue、bond)または溶接によって各交差点で糸36に接続して、ネット状の構造を維持し、その場合糸36が互いから距離を保っている。糸36の機能は、少なくとも1つの生来の弁尖の脱出を防止することである。
【0059】
糸36を生来の弁尖に固定することができるように、固定要素39が、自由弁表面と接合部との間のヒンジ点にある、中央に位置する糸36に設けられる。より大きな脱出の場合、この保持機構の機構は二倍または倍増することができる。
【0060】
インプラントをヒトの心臓に配置するための展開器具を図5に示す。器具26は、ハンドピース27と可撓性シャフト28とを備え、その遠位自由端は管状ハウジング29として設計され、2つのハーフシェルを含み、第1のハーフシェル30は上部支持要素17を収容し、第2のハーフシェル31は下部支持要素18を収容する。ウィング19および20は、管状ハウジング29の内部に設けられた限られた空間に収まるように折り畳まれた状態で配置されている。
【0061】
図6に示す図解および図7に示す断面図から分かるように、上部支持要素17および下部支持要素18は、長手方向にオフセットして互いに離間するように管状ハウジング内に配置される。上部および下部支持要素17および18は、それぞれ、上部および下部支持要素17および18を相互接続するために相互に協働しながら、上部支持要素17と下部支持要素18との間で弁輪または少なくとも1つの生来の弁尖の部分をクランプする接続手段32および33を備え、下部支持要素18の接続手段33は、上部支持要素17の接続手段32と接続するために、弁輪または少なくとも1つの生来の弁尖を貫くように構成された貫通部分、特に凹状ピン33として構成される。接続手段32はボアとして構成され、スナップ機構によってピン33を浸漬位置に浸漬して固定することができる。
【0062】
第1のハーフシェル30および第2のハーフシェル31は、ヒンジ34および35によって揺動して開くことができる(図7)。
【0063】
図8図13は、僧帽弁インプラントをヒトの僧帽弁7に展開して固定する連続的なステップの概略図である。第1のステップでは、可撓性シャフト28は、管状ハウジング29とともに、ヒトの心臓1の左心室4に、経中隔、経心尖、または上行大動脈9を通って前進させる。さらに、管状ハウジング29は、左心房4から僧帽弁7に向かって前進し、僧帽弁の弁尖のすぐ近くに配置される。
【0064】
この位置では、図9に見られるように、管状ハウジング29のハーフシェル30および31が揺動して開き、管状ハウジング29がさらに前進して、僧帽弁7の弁尖が上部シェル30と下部シェル31の間に配置される。
【0065】
図10に示すように、管状ハウジング29を備えたシャフト28は、経中隔に左心房4に前進することができる。あるいは、図11に示すように、管状ハウジング29を備えたシャフト28は、上行大動脈9および大動脈弁10を通って左心房4内に前進することができる。
【0066】
図12に示すさらなるステップでは、ウィング19を含む上部支持要素17が上部ハーフシェル30から展開され、ウィング20およびアーム23を含む下部支持要素18が管状ハウジング29の下部ハーフシェル31から展開されている。糸36は、ウィング19とアーム23との間に延びている。特に、糸36は、ウィング19から、僧帽弁7の弁尖の上面(左心房5に面する表面)に沿って、弁尖の内縁の周りに、アーム23の自由端に配置された目25まで延びる。
【0067】
さらなるステップにおいて、上部支持要素17および下部支持要素18は、弁輪または僧帽弁7の第1または第2の生来の弁尖に固定される。固定ステップは、上部ハーフシェル30および下部ハーフシェル31を互いの方へ揺動させることによって、上部支持要素17と下部支持要素18との間に僧帽弁7がある場合に、弁輪または第1または第2の生来の弁尖の部分をクランプすることを含む。クランプするステップの間、上部および下部支持要素17、18の接続手段が互いに接続され、下部支持要素18のピン33が、弁輪または僧帽弁7の第1または第2の生来の弁尖を貫き、上部支持要素17のボア32に導入され、そこでスナップ動作によって固定される。
【0068】
図13は、僧帽弁7に固定されたその位置のインプラントを示す。インプラントの糸36は、僧帽弁の弁尖が左心房5内に脱出するのを防止する。インプラントを僧帽弁7に固定した後、39の接合区域の領域で生来の弁尖に糸36を固定した後、シャフト28は管状ハウジング29とともに矢印38に沿って後退する。
【0069】
図14は、僧帽弁インプラントの別の実施形態を示す。インプラントは、房室弁、好ましくは僧帽弁の第1および第2の生来の第1の弁尖の少なくとも1つに配置され、固定されるように構成された支持構造体40を含む。支持構造体40は、少なくとも1つの生来の弁尖の上面に配置される上部支持要素41と、少なくとも1つの生来の弁尖の下面に配置される下部支持要素42とを備える。上部支持要素41および下部支持要素42はそれぞれ、ニチノールなどの形状記憶合金で作られたワイヤを含む。好ましくは、上部支持要素41は、複数の目44を含むわずかに湾曲したワイヤを含む。好ましくは、下部支持要素42のワイヤは、中央支持体43から外側に延びる少なくとも2つのウィングの形状である。インプラントはさらに、下部支持要素42に固定されかつ自由端46を有する保持アーム45を含む。自由端46は、ネットや可撓性ワイヤや糸などの保持手段の一端を保持するための少なくとも1つの目、好ましくは2つの目47を担持している。図14に示す例示的な実施形態では、保持手段は、それぞれが上部支持要素41の目44から目46に延びる複数の糸48を含む。糸48は、上部支持要素41の長さに沿って均等に分配された態様で上部支持要素41に固定される。さらに、糸48と交差する方向に延びる上部固定要素49が設けられている。糸48は、糸48を互いから離れて保持するように、各交差点で上部固定要素49の目50を通るように案内される。糸48の機能は、少なくとも1つの生来の弁尖の脱出を防止することである。上部固定要素は、下部固定要素52に設けられた受け入れ要素53に嵌合する接続ピン51を備える。
【0070】
さらに、図14は、アーム45が、スリーブ54の位置が調整可能となるようにアーム45に案内されるスリーブ54を備えることを示す。上部固定要素49の端部に固定された糸55はスリーブ54に接続され、アーム45のスリーブ54の位置を調節することにより、糸48に対する固定要素49の位置がそれぞれ調整される。このようにして、保持手段の幅を患者の個々の要求に適合させることができる。
【0071】
前述の説明および添付の図面は、本発明の原理、好ましい実施形態および動作様式を例示している。しかし、本発明は、上述した特定の実施形態に限定されると解釈すべきではない。上述の実施形態のさらなる変形形態を、当業者は理解するであろう。例えば、人工ネットワークまたは弁構造体の接合する部位(ヒンジ点)における生来の弁尖の第2の貫通部は、心房に面した弁尖構造を固定し、接合部前面から分離する。この二次固定点は、個別に測定することができ、個人化された罹患した弁に対して解釈することができる。
【0072】
したがって、上記の実施形態は、限定的ではなく例示的なものとみなすべきである。したがって、以下の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から脱出することなく、これらの実施形態に対する変形が当業者によってなされ得ることを理解されたい。
図1
図2
図3
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図6
図7
図8
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図10
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