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  • 特許-連結モジュール 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-27
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】連結モジュール
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/00 20060101AFI20220128BHJP
【FI】
B25J19/00 E
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019001773
(22)【出願日】2019-01-09
(65)【公開番号】P2020110854
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2019-01-11
【審判番号】
【審判請求日】2021-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】596016557
【氏名又は名称】上銀科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(72)【発明者】
【氏名】林健安
(72)【発明者】
【氏名】黄振嘉
(72)【発明者】
【氏名】劉憲正
(72)【発明者】
【氏名】謝武燈
【合議体】
【審判長】見目 省二
【審判官】刈間 宏信
【審判官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開平2-311294(JP,A)
【文献】特開平8-155880(JP,A)
【文献】特開2008-245390(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(関係式1)
1.3<Dmax/Dmin<3.2
シャフト、電気ソケットワイヤハーネスおよび伸縮性保護スリーブを備え、
前記電気ソケットは、前記シャフトの底部に連結されて前記シャフトとともに旋転および昇降することができ、
前記ワイヤハーネスは前記シャフトの軸方向に沿って並列する少なくとも二つのワイヤを有し、
前記ワイヤハーネスは、直径の異なる第一ワイヤおよび二つの第二ワイヤを有し、前記第一ワイヤは直径が前記第二ワイヤより大きく、
前記ワイヤハーネスは前記シャフトにらせん状に配置され、前記電気ソケットに連結されるため、前記電気ソケットによって動かされて前記シャフトの軸方向に沿って伸縮運動するか、前記シャフトの軸方向に向かって螺旋運動することができ、
前記ワイヤハーネスは、第一方向に沿って螺旋運動する際の直径が最大直径Dmaxであり、前記第一方向とほぼ反対の第二方向に沿って螺旋運動する際の直径が最小直径Dminであり、
前記最小直径は前記シャフトの外径より大きく、前記関係式1を満足させ、
(式1)
Dmax=(N×L)/((N-1)×π)+φ
(式2)
Dmin=(N×L)/((N+1)×π)-φ
前記最大直径Dmaxは前記式1に基づいて計算され、前記最小直径Dminは前記式2に基づいて計算され、前記式1および前記式2において、Nは前記シャフトを囲んだ前記ワイヤハーネスの有効周回数であり、Lは前記シャフトの一周を囲んだ前記ワイヤハーネスの螺旋の長さであり、φは前記ワイヤハーネス中の最大の前記第一ワイヤの直径であり、πは円周率であり、
前記伸縮性保護スリーブは前記ワイヤハーネスに被るように前記シャフトに配置され、底部が前記電気ソケットに接続され、前記ワイヤハーネスが前記第一方向に沿って螺旋運動する際、前記最大直径Dmaxは前記伸縮性保護スリーブの内径より小さいことを特徴とする、
連結モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットアームに関し、詳しくはロボットアームの末端部に位置する連結モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロボットアームは既に製造および加工工業に汎用されている。ロボットアームによれば、繰り返し作業の多い製造工程を人手で行えば製品の歩留まりが低下するという状況を抑制し、作業員の代わりに厳しい環境条件下で作業を行い、作業員の健康を危険から守ることができるだけでなく、良好な加工精度を維持することができる。
製造および加工工程において規格の異なる作業対象に加工作業を行うには、連結モジュールによって末端効果器(例えばグリッパ、吸盤またはドリル)をロボットアームの末端部に取り付けることが必要である。
【0003】
従来の配線構成においては、ワイヤをまとめて縛って外部に露出させることが一般的である。
特許文献1は複数の係止部材によってワイヤをシャフトにらせん状に固定することを開示している。該案は外部にワイヤを配線する方式を採用するため、末端部の連結モジュールの周りに比較的大きい操作空間を確保する必要があり、その一方で末端部の連結モジュールが作動する際、ワイヤと周りの物体とが相互に衝突することが原因でワイヤが絡まって断裂してしまうという問題が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開JP1998-217178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来の複雑な配線方式を簡単化し、操作空間を縮減し、ワイヤ断裂のリスクを下げることができる連結モジュールを提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(関係式1)
1.3<Dmax/Dmin<3.2
【0007】
上述した課題を解決するための連結モジュールは、シャフト、電気ソケットおよびワイヤハーネスを備える。電気ソケットはシャフトの底部に連結されるため、シャフトとともに旋転および昇降できる。ワイヤハーネスは少なくとも二つの並列するワイヤから構成され、シャフトにらせん状に配置される。ワイヤハーネスは底部が電気ソケットに連結されるため、電気ソケットによって動かされてシャフトの軸方向に沿って伸縮運動するか、シャフトの軸方向に向かって螺旋運動することができる。第一方向に沿ってワイヤハーネスを螺旋運動させる際の直径が最大直径である。第一方向とほぼ反対の第二方向に沿ってワイヤハーネスを螺旋運動させる際の直径が最小直径である。最小直径はシャフトの外径より大きく、関係式1を満足させる。関係式1において、最大直径はDmaxである。最小直径はDminである。
【0008】
(関係式2)
Dmax/Dmin<1.3
(関係式3)
Dmax/Dmin>3.2
【0009】
状況が関係式2で表示される際、ワイヤハーネスの作動する行程が長過ぎればシャフトとそれに関連する部材の長さを増大させる必要があるため、コストが高くつく。
状況が関係式3で表示される際、ワイヤハーネスは別の部材の作動を妨害するため、作業範囲は限定される。
【0010】
上述した構造特徴により、本発明による連結モジュールはワイヤハーネスをシャフトにらせん状に配置する方式を採用するため、ワイヤハーネスは実際の状況に応じて伸びたり縮んだりするか旋転することができるだけでなく、操作空間の縮減を実現させ、ワイヤ断裂のリスクを下げることができる。
【0011】
(式1)
Dmax=(N×L)/((N-1)×π)+φ
(式2)
Dmin=(N×L)/((N+1)×π)-φ
【0012】
比較的好ましい場合、最大直径Dmaxは式1に基づいて計算される。最小直径Dminは式2に基づいて計算される。式1および式2において、Nはシャフトを囲んだワイヤハーネスの有効周回数である。Lはシャフトの一周を囲んだワイヤハーネスの螺旋の長さである。φはワイヤハーネス中の最大のワイヤの直径である。πは円周率である。作動中のワイヤハーネスの最大直径および最小直径は式1および式2によって算出されるため、ワイヤハーネスが伸びたり縮んだりする際に別の部品の作動を妨害しないことを確保することができる。
【0013】
比較的好ましい場合、本発明による連結モジュールはさらに伸縮性保護スリーブを備える。伸縮性保護スリーブはワイヤハーネスに被るようにシャフトに配置され、底部が電気ソケットに接続されるため、ワイヤハーネスは伸縮性保護スリーブ内に隠れてワイヤ断裂のリスクを減少させる。
【0014】
本発明による連結モジュールの詳細な構造、特徴、組み立てまたは使用方法について、以下の実施形態の詳細な説明を通して明確にする。
なお、以下の詳細な説明および本発明により提示された実施形態は本発明を説明するための一例に過ぎず、本発明の請求範囲を限定できないことは、本発明にかかわる領域において常識がある人ならば理解できるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態による連結モジュールを採用したロボットアームの一部分を示す断面図である。
図2】本発明の一実施形態による連結モジュールを示す斜面図である。
図3】本発明の一実施形態による連結モジュールを示す分解斜面図である。
図4】本発明の一実施形態による連結モジュール中の伸縮性保護スリーブが取り外された状態を示す平面図である。
図5】本発明の一実施形態による連結モジュールを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明による連結モジュールを図面に基づいて説明する。なお、明細書において、方向性用語は図面に示した方向に基づいて表現される。図中の同じ符号は同じ部品または類似した部品の構造特徴を示す。
【0017】
(一実施形態)
図1は本発明の一実施形態による連結モジュール10を採用した水平多関節ロボット(Selective Compliance Assembly Robot Arm,SCARA)の一部分を示す断面図である。図2および図3に示すように、本発明の一実施形態による連結モジュール10はシャフト20、電気ソケット30、伸縮性保護スリーブ40およびワイヤハーネス50を備える。
【0018】
シャフト20は、カバー12に差し込まれてカバー12内の二つのスプラインナット16と結合する。カバー12内の駆動源、例えばモーター(図中未表示)は二つのベルトリング14によって二つのスプラインナット16を駆動するため、シャフト20は二つのスプラインナット16に伴って旋転および昇降できる。本実施形態において、シャフト20はスプラインボルトであるが、これに限らず、棒状モーターのシャフトなどの別の形態でもよい。
【0019】
電気ソケット30は、シャフト接続器32によってシャフト20の底部に連結されるため、シャフト20とともに作動できる。電気ソケット30はフランジ34、電力出力部材36および二つの気圧出力部材38を有する。フランジ34は電気ソケット30の底面に配置され、実際の状況に応じて異なる末端効果器、例えばグリッパ、吸盤またはドリル(図中未表示)と結合して使用される。
電力出力部材36および二つの気圧出力部材38は電気ソケット30の外周面に配置される。電力出力部材36は末端効果器に電力を出力する。一つの気圧出力部材38は末端効果器に気体を送り込む。一つの気圧出力部材38は末端効果器から気体を排出する。
【0020】
伸縮性保護スリーブ40は、先端部が電気ソケット30の上方に位置するベース42に連結され、末端部がボールベアリング44に連結される。ボールベアリング44はC字型嵌合部材46によって電気ソケット30に装着されるため、電気ソケット30が旋転する際、伸縮性保護スリーブ40は電気ソケット30とともに旋転することがない。電気ソケット30が昇降する際、伸縮性保護スリーブ40は電気ソケット30の作動に伴って伸びたり縮んだりする。
【0021】
ワイヤハーネス50は、少なくとも二つの並列するワイヤから構成される。本実施形態において、ワイヤハーネス50は第一ワイヤ52および二つの第二ワイヤ54を有する。第一ワイヤ52および二つの第二ワイヤ54は直径が異なるが、これに限らず、実際の状況に応じて直径が同じであるように設計されてもよい。
第一ワイヤ52の直径は第二ワイヤ54の直径より大きい。第一ワイヤ52および二つの第二ワイヤ54はシャフト20に沿って螺旋状に配置され、伸縮性保護スリーブ40で覆われる。第一ワイヤ52および二つの第二ワイヤ54は先端部が係止部材56によってベース42に固定され、末端部がプラグ58によって電気ソケット30に固定されるため、第一ワイヤ52と電力出力部材36は相互に連結されて電力出力回線を構成する。二つの第二ワイヤ54と二つの気圧出力部材38は相互に連結されて給気配線および排気配線を構成する。
上述した構造特徴により、ワイヤハーネス50は電気ソケット30とともに作動できる。つまり、電気ソケット30が旋転する際、ワイヤハーネス50はシャフト20の軸方向に向かって螺旋運動する。電気ソケット30が昇降する際、ワイヤハーネス50はシャフト20の軸方向に沿って伸縮運動する。
【0022】
(式1)
Dmax=(N×L)/((N-1)×π)+φ
(式2)
Dmin=(N×L)/((N+1)×π)-φ
【0023】
ワイヤハーネス50において、第一ワイヤ52および二つの第二ワイヤ54には弾力性があり、かつシャフト20に沿って螺旋状に配置され、電気ソケット30に連結されるため、シャフト20の駆動力によって旋転する電気ソケット30に伴って旋転し、径方向に伸びたり縮んだりすることができる。
またワイヤハーネス50が伸びたり縮んだりする際に別の部品の作動を妨害しないことを確保するには、ワイヤハーネス50のサイズを一定に限定する必要がある。詳しく言えば、ワイヤハーネス50が第一方向D1(図4中の矢印)に沿って螺旋運動して径方向に伸びる際の直径が最大直径Dmaxである。最大直径Dmaxは式1に基づいて計算される。
ワイヤハーネス50が第一方向D1とほぼ反対の第二方向D2(図4中の矢印)に沿って螺旋運動して径方向に縮む際の直径が最小直径Dminである。最小直径Dminは式2を満足させる。
式1および式2において、Nはシャフト20を囲んだワイヤハーネス50の有効周回数である。Lはシャフト20の一周を囲んだワイヤハーネス50の螺旋の長さである。φはワイヤハーネス50中の最大のワイヤ、即ち第一ワイヤ52の直径である。πは円周率である。
【0024】
(関係式1)
1.3<Dmax/Dmin<3.2
(関係式2)
Dmax/Dmin<1.3
(関係式3)
Dmax/Dmin>3.2
【0025】
図5に示すように、径方向に伸びるワイヤハーネス50と伸縮性保護スリーブ40が相互に干渉することを避けるためにはワイヤハーネス50の最大直径Dmaxは伸縮性保護スリーブ40の内径Dsより小さくする。径方向に縮むワイヤハーネス50とシャフト20が相互に干渉することを避けるためにはワイヤハーネス50の最小直径Dminはシャフト20の外径Dbより大きくする。上述した構造特徴により、ワイヤハーネス50はロボットアームの作動に対応して電力を正常に維持して出力することができる。
最大直径Dmaxおよび最小直径Dminの関係は関係式1を満足させる。しかしながら、最大直径Dmaxおよび最小直径Dminの関係が関係式2で表示される際、ワイヤハーネス50の作動する行程が長過ぎればシャフト20とそれに関連する部材の長さを増大させる必要があるため、コストが高くつく。
最大直径Dmaxおよび最小直径Dminの関係が関係式3で表示される際、ワイヤハーネス50は別の部材(例えば端末効果器または別のアーム)の作動を妨害するため、作業範囲は限定される。
【0026】
上述をまとめると、本発明による連結モジュール10において、ワイヤハーネス50はシャフト20に沿って螺旋状に配置され、サイズが特別に設計されるため、実際の状況に応じて伸びたり縮んだりするか旋転することができる。従って本発明による連結モジュール10は操作空間を縮減し、ワイヤ断裂のリスクを下げることができる。
【符号の説明】
【0027】
10 連結モジュール
12 カバー
14 ベルトリング
16 スプラインナット
20 シャフト
30 電気ソケット
32 シャフト接続器
34 フランジ
36 電力出力部材
38 気圧出力部材
40 伸縮性保護スリーブ
42 ベース
44 ボールベアリング
46 C字型嵌合部材
50 ワイヤハーネス
52 第一ワイヤ
54 第二ワイヤ
56 係止部材
58 プラグ
Ds 伸縮性保護スリーブの内径
Db シャフトの外径
D1 第一方向
D2 第二方向
図1
図2
図3
図4
図5