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  • 特許-歯冠補綴物のエッジ部の修正方法 図1
  • 特許-歯冠補綴物のエッジ部の修正方法 図2
  • 特許-歯冠補綴物のエッジ部の修正方法 図3
  • 特許-歯冠補綴物のエッジ部の修正方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-27
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】歯冠補綴物のエッジ部の修正方法
(51)【国際特許分類】
   A61C 5/77 20170101AFI20220128BHJP
   A61C 13/34 20060101ALI20220128BHJP
【FI】
A61C5/77
A61C13/34 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019017529
(22)【出願日】2019-02-02
(65)【公開番号】P2020124303
(43)【公開日】2020-08-20
【審査請求日】2020-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】514033297
【氏名又は名称】株式会社医科歯科ソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】100082832
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 邦章
(72)【発明者】
【氏名】藤原 芳生
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-520229(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0220691(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0142733(US,A1)
【文献】特開2008-049113(JP,A)
【文献】特開2018-042895(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0115793(US,A1)
【文献】特表2018-509213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 5/77
A61C 13/34
A61C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
虫歯や亀裂歯が削られた治療後の治療用歯がスキャンされてそのSTLデータおよび/またはCADデータ複製歯を利用する歯冠補綴物のエッジ部の修正方法であって、
上記CADデータの複製歯の支台歯に支持するためのエッジ部の棚に対してエッジ部より内側10~200ミクロンより所定量のオフセットを支台歯の延長線上に延ばし、そのオフセットに所定角の斜めのオフセット角の拡張オフセットを接続し、その拡張オフセットに上記複製歯の水平方向に対して垂直の垂直オフセットを辺縁部にCAD修正し、
この修正したCADデータにもとづいてエッジ部を修正して歯冠補綴物を成形することを特徴とする冠補綴物のエッジ部の修正方法。
【請求項2】
上記複製歯の支台歯に支持する棚を水平状に修正して、この水平状のエッジ部の棚のエッジ部より内側10~200ミクロンより100ミクロンのオフセットを支台歯の延長線上に延ばし、そのオフセットに水平状の支持棚に対して100~160度のオフセット角の斜めの拡張オフセットを接続し、その拡張オフセットの端部に上記支台歯の棚の水平方向に対して垂直の垂直オフセットを辺縁部に修正して歯冠補綴物を成形することを特徴とする請求項1に記載の冠補綴物のエッジ部の修正方法。
【請求項3】
上記複製歯の支台歯に支持する棚が斜めで、この斜めのエッジ部の棚に所定量のオフセットを平行に継ぎ足して延ばし、この継ぎ足した斜めのオフセットに斜めのオフセットに対して100~160度のオフセット角の斜めの拡張オフセットを接続し、その拡張オフセットの端部に上記複製歯の水平方向に対して垂直の垂直オフセットを辺縁部に修正して歯冠補綴物を成形することを特徴とする請求項1に記載の冠補綴物のエッジ部の修正方法。
【請求項4】
上記複製歯のエッジ部のオフセットがエッジ部より内側10~200ミクロンから10~300ミクロンの長さに支台歯の棚の延長線上に延長して修正することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の冠補綴物のエッジ部の修正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科分野における冠補綴物のエッジ部の修正方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従前、虫歯や亀裂が生じた歯の治療にあっては、虫歯部分等を削って所要の型取りをし、その型取りから複製品を作り、スキャンしたりして歯冠補綴物を作成して補綴している。
【0003】
しかし、型取りした複製品をスキャンすると、エッジロス現象が生じ、そのままデザインするとエッジ部が実際とは相違する形状となって、正確に適合しない不具合なものとなるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-517144号公報
【文献】特開2009-101124号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特に、スキャンによるSTLデータでは、歯冠補綴物のエッジ部を的確に表現することができなく、角がとれて丸くなるもので、エッジ部の所要の辺縁部の的確な再現をすることが課題であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記のような点に鑑みたもので、上記の課題を解決するために、虫歯や亀裂歯が削られた治療後の治療用歯がスキャンされてそのSTLデータおよび/またはCADデータを取り込んで作られた複製歯を利用する歯冠補綴物のエッジ部の修正方法であって、上記CADデータの複製歯の支台歯に支持するためのエッジ部の棚に対してエッジ部より内側10~200ミクロンより所定量のオフセットを支台歯の延長線上に延ばし、そのオフセットに所定角のオフセット角の斜めの拡張オフセットを接続し、その拡張オフセットの端部に上記複製歯の水平方向に対して垂直の垂直オフセットを辺縁部にCAD修正し、この修正したCADデータにもとづいてエッジ部を修正して歯冠補綴物を成形することを特徴とする冠補綴物のエッジ部の修正方法を提供するにある。
【0007】
また、本発明は、上記複製歯の支台歯に支持する棚を水平状に修正して、この水平状のエッジ部の棚のエッジ部より内側10~200ミクロンより100ミクロンのオフセットを支台歯の延長線上に延ばし、そのオフセットに水平状の支持棚に対して100~160度のオフセット角の斜めの拡張オフセットを接続し、その拡張オフセットの端部に上記支台歯の棚の水平方向に対して垂直の垂直オフセットを辺縁部に修正して歯冠補綴物を成形することを特徴とする冠補綴物のエッジ部の修正方法を提供するにある。
【0008】
さらに、本発明は、上記複製歯の支台歯に支持する棚が斜めで、この斜めのエッジ部の棚に所定量のオフセットを斜めに平行に継ぎ足して延ばし、この継ぎ足した斜めのオフセットに100~160度のオフセット角の斜めの拡張オフセットを接続し、その拡張オフセットの端部に上記複製歯の水平方向に対して垂直の垂直オフセットを辺縁部に修正して歯冠補綴物を成形することを特徴とする冠補綴物のエッジ部の修正方法を提供するにある。
【0009】
またさらに、本発明は、上記複製歯のエッジ部のオフセットがエッジ部より内側10~200ミクロンから10~300ミクロンの長さに支台歯の棚の延長線上に延長して修正することを特徴とする冠補綴物のエッジ部の修正方法を提供するにある。
【発明の効果】
【0010】
本発明にあっては、特許請求の範囲の請求項1のように、虫歯や亀裂歯が削られた治療後の治療用歯がスキャンされてそのSTLデータおよび/またはCADデータを取り込んで作られた複製歯を利用する歯冠補綴物のエッジ部の修正方法であって、上記CADデータの複製歯の支台歯に支持するためのエッジ部の棚に対してエッジ部より内側10~200ミクロンより所定量のオフセットを支台歯の延長線上に延ばし、そのオフセットに所定角の斜めの拡張オフセットを接続し、その拡張オフセットに上記複製歯の水平方向に対して垂直の垂直オフセットを辺縁部にCAD修正し、この修正したCADデータにもとづいてエッジ部を修正して歯冠補綴物を成形することによって、歯冠補綴物のエッジ部の辺縁部を的確に再現することができ、加工中に割れが生じなく、よい適合状態の歯冠補綴物を成形することができる。
【0011】
また、請求項2のように、上記複製歯の支台歯に支持する棚を水平状に修正して、この水平状のエッジ部の棚のエッジ部より内側10~200ミクロンより100ミクロンのオフセットを支台歯の延長線上に延ばし、そのオフセットに水平状の支持棚に対して100~160度のオフセット角の斜めの拡張オフセットを接続し、その拡張オフセットの端部に上記支台歯の棚の水平方向に対して垂直の垂直オフセットを辺縁部に修正して歯冠補綴物を成形することによって、ADデータに取り込んで所要のオセットを設けたエッジ部の辺縁部に容易に修正できて、よい適合状態の歯冠補綴物を成形することができる。
【0012】
さらに、請求項3のように、上記複製歯の支台歯に支持するを斜め状に修正して、この斜め状のエッジ部の棚に所定量のオフセットの斜め部を継ぎ足しこのオフセット修正して継ぎ足した斜め部に100~160度の斜めの拡張オフセットを設け、その拡張オフセットの端部に上記複製歯の水平方向に対して垂直の垂直オフセットを辺縁部に修正して歯冠補綴物を成形することによって、所定量のオフセットを設け、斜めの拡張オフセット、垂直の垂直オフセットのエッジ部の的確な辺縁部に修正できて、エッジ部の辺縁部を的確に作成できて、よい適合状態の歯冠補綴物を成形することができる。
【0013】
またさらに、請求項4のように、上記複製歯のエッジ部のオフセットがエッジ部より内側10~200ミクロンから10~300ミクロンの長さに支台歯の棚の延長線上に延長して修正することによって、加工中に割れが生じなく、臨床的に十分なものとでき、上記したように歯冠補綴物のエッジ部の辺縁部に的確に表現することができ、よい適合状態の歯冠補綴物とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施例の歯冠補綴物作成の概要フロー図、
図2】同上のスキャンのSTLデータからCADデータに取り込んだ状態の説明用図、
図3】同上のスキャンのSTLデータからCADデータに取り込み、CADによるエッジ部修正の説明用拡大図、
図4】同上の支台歯の棚が斜め状態時のCADによるエッジ部修正の説明用拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の冠補綴物のエッジ部の修正方法は、虫歯や亀裂歯が削られた治療後の治療用歯がスキャンされてそのSTLデータおよび/またはCADデータを取り込んで作られた複製歯を利用する歯冠補綴物のエッジ部の修正方法であって、上記CADデータの複製歯の支台歯に支持するためのエッジ部の棚に対してエッジ部より内側10~200ミクロンより所定量のオフセットを支台歯の延長線上に延ばし、そのオフセットに所定角の斜めの拡張オフセットを接続し、その拡張オフセットに上記複製歯の水平方向に対して垂直の垂直オフセットを辺縁部にCAD修正し、この修正したCADデータにもとづいてエッジ部を修正して歯冠補綴物を成形することを特徴としている。
【0016】
エッジ部を修正する歯冠補綴物1は、先ず図1のフローチャートのように患者の虫歯や亀裂歯等の治療用歯について、その所要部分を削って、その歯冠補綴物用型取りされる。
【0017】
そして、その型取りにもとづいてエッジ部の修正の歯冠補綴物用の複製歯を作成し、その複製歯をインハウス型等のスキャナーでスキャンしてSTLデータとして取得するとともに、所要のCAD装置にCADデータとして取り込む。
【0018】
スキャナーよるSTLデータでは、図2のように歯冠補綴物1の周部のエッジ部を的確に表現することができなく、角がとれて丸くなり、エッジ部の所要の辺縁部に的確に再現ができないので、これを修正して、あたかも角が再現できているように歯冠補綴物1を作ることにある。
【0019】
デフォルトのマージン設定では、図3のように周部のエッジ部の角がとれてしまっている部分で再現してしまう。そこで、図3のように歯冠補綴物1の支台歯の棚に対して水平または所定の傾斜角度のオフセットA、オフセット角100~160度の斜めの拡張オフセットB、垂直の垂直オフセットCのエッジの辺縁部として所要の修正をして所要の歯冠補綴物1を作ることができる。なお、上記オフセット角度はオフセットAに対して時計回りの角度、図3のオフセット角は上記角度の補角として示している。
【0020】
エッジロスは、エッジより内側10~200ミクロン位のところで生じるので、その辺りを辺縁として設定し、そこから不足分の10~300ミクロン、好ましくは10~200ミクロン位を棚の延長線上でデザインによる延長とすると臨床的に十分なものとできる。
【0021】
図4のように歯冠補綴物1の支台歯の棚が斜めの場合、オフセットAを斜めとなった棚に平行状に設け、100~160度のオフセット角の所要の斜めの拡張オフセットB、垂直の垂直オフセットCのエッジの辺縁部として所要の修正をして所要の歯冠補綴物1を作ることができる。なお、上記オフセット角度はオフセットAに対して時計回りの角度、図4のオフセット角は上記角度の補角として示している。
【0022】
このように歯冠補綴物1の支台歯の棚に対して、オフセットAを自由に角度調整可能に設定しておけば、オフセットAを支台歯の棚の角度に対応することができ、エッジロスをかなりの精度に修正可能である。オフセットAの角度調整には、支台歯の棚を水平状にCAD修正して作成したりするなど適宜に行なうことができる。
【0023】
上記では、治療用歯を型取りして複製歯を作成したが、STLデータまたはCADデータを取り込んだり、口腔内スキャナーによるスキャンでSTLデータおよび/またはCADデータを取り込み、上記のように修正することもできる。
【0024】
なお、本発明は、インプラントのものについても適用できる他、上記した本発明の趣旨にもとずいて適宜の実施態様が採択できるものである。
【実施例
【0025】
図1以下は、本発明の実施例を示すものである。エッジ部を修正する歯冠補綴物1の成形には、図1のフローチャートのように患者の虫歯の治療用歯について、その所要部分が削られて、その歯冠補綴物用の型取りをし、その型取りにもとづいてエッジ部を修正する歯冠補綴物用の複製歯を作成し、その複製歯をインハウス型等のスキャナーでスキャンしてSTLデータとして取得するとともに、CAD装置にCADデータとして取り込む。
【0026】
デフォルトのマージン設定では、図2のように角がとれてしまっている部分で再現してしまう。そこで、図3のように歯冠補綴物1の支台歯の棚に対して100ミクロンのオフセットAを支台歯の延長上に延ばし、支台歯の棚に対して100ミクロンの120~150度の斜めのオフセット角の拡張オフセットB、図のように支台歯の棚に水平方向に100ミクロンの垂直の垂直オフセットCのエッジとして全周縁部を修正して所要のエッジ部を修正した歯冠補綴物1を作った。
【0027】
エッジロスは、エッジより内側10~200ミクロン位のところで生じるので、その辺りを辺縁として設定し、そこから不足分の200~300ミクロンを棚の延長線上でデザインによる延長とすると臨床的に十分なものとでき、加工中に割れが生じなくて所要の厚みの、よりよい適合状態に実現することができた。
【0028】
また、図4のように歯冠補綴物1の支台歯の棚が斜めの場合、100ミクロンのオフセットAを斜めになった棚に平行状にCAD修正して設け、図のようにオフセットA、斜めになった棚に対して100ミクロンの120~140度の斜めのオフセット角の拡張オフセットB、上記複製歯の水平方向に対して100ミクロンの垂直の垂直オフセットCのエッジとして全周縁部を修正して所要のエッジ部を修正した歯冠補綴物1を作ることができる。
【0029】
このようにエッジ部を修正する歯冠補綴物1の支台歯の棚に対して、オフセットAを自由に角度調整可能に設定しておけば、オフセットAを支台歯の棚の角度に対応することができ、エッジロスをかなりの精度に修正できる。
【0030】
上記では、治療用歯を型取りして複製歯を作成したが、口腔内スキャナーによるスキャンでSTLデータおよび/またはCADデータを取り込んだ複製歯についても、上記のように修正することもできる。本発明は、インプラントのものについても適用できる他、上記した本発明の趣旨にもとずいて適宜の実施態様を採択できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、歯科分野における歯の治療、インプラントに広く利用することかできる。
【符号の説明】
【0032】
1…歯冠補綴物 A…オフセット B…拡張オフセット C…垂直オフセット
図1
図2
図3
図4