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特許7016331限外ろ過膜モジュール及び限外ろ過膜モジュールを用いた超純水製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-27
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】限外ろ過膜モジュール及び限外ろ過膜モジュールを用いた超純水製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20220128BHJP
   B60J 1/00 20060101ALI20220128BHJP
   B60J 1/02 20060101ALI20220128BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20220128BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20220128BHJP
   G02B 27/01 20060101ALI20220128BHJP
【FI】
C03C27/12 Z
C03C27/12 D
B60J1/00 H
B60J1/02 M
B60K35/00 A
C08J5/18 CEZ
G02B27/01
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019076393
(22)【出願日】2019-04-12
(65)【公開番号】P2019205994
(43)【公開日】2019-12-05
【審査請求日】2019-04-12
【審判番号】
【審判請求日】2020-07-27
(31)【優先権主張番号】P 2018101634
(32)【優先日】2018-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000245531
【氏名又は名称】野村マイクロ・サイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野口 幸男
(72)【発明者】
【氏名】丹治 輝
【合議体】
【審判長】原 賢一
【審判官】三崎 仁
【審判官】金 公彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/146909(WO,A1)
【文献】特開2012-045453(JP,A)
【文献】特開2018-030065(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D63/00,63/02,61/18 C02F1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
限外ろ過膜からなる複数本の中空糸膜と、前記複数本の中空糸膜を収容する筒状ケースと、からなる限外ろ過膜モジュールであって、
前記筒状ケースは、その外周面に、前記筒状ケースの軸方向に互いに離間して配設された第1のノズル及び第2のノズルと、前記筒状ケースの両端部に配設された第3のノズル及び第4のノズルと、前記複数本の中空糸膜を、前記複数本の中空糸膜の開口端が前記筒状ケースの両端部それぞれに向くように前記筒状ケースの軸方向に沿わせて固定するとともに、前記筒状ケースの一方の端部と前記第1のノズルの間及び前記筒状ケースの他方の端部と前記第2のノズルの間の各位置で前記筒状ケースを封止する一対の固定部と、を備え、
前記第1のノズルは、被処理水を導入する被処理水導入管であり、前記第2のノズルは、前記中空糸膜を透過しない濃縮水を流出させる濃縮水流出管であり、
前記第3のノズルは、前記中空糸膜を透過した透過水を流出させる透過水流出管であり、前記第4のノズルは、前記中空糸膜を透過した排出水を流出させる排出水流出管であり、
前記排出水流出管からの流出量に対する前記透過水流出管からの流出量の比の値(透過水流出管からの流出量/排出水流出管からの流出量)を、90/10以上99/1以下とし、前記透過水流出管から流出する前記透過水のみを超純水として得る流量比調整手段を有することを特徴とする限外ろ過膜モジュール。
【請求項2】
前記透過水流出管が、前記被処理水導入管よりも前記濃縮水流出管と近接して設けられている請求項1に記載の限外ろ過膜モジュール。
【請求項3】
前記固定部は、エポキシ樹脂からなる請求項1又は2に記載の限外ろ過膜モジュール。
【請求項4】
限外ろ過膜からなる複数本の中空糸膜と、前記複数本の中空糸膜を収容する筒状ケースと、からなる限外ろ過膜モジュールであって、
前記筒状ケースは、その外周面に、前記筒状ケースの軸方向に互いに離間して配設された第1のノズル及び第2のノズルと、前記筒状ケースの両端部に配設された第3のノズル及び第4のノズルと、
前記複数本の中空糸膜を、前記複数本の中空糸膜の開口端が前記筒状ケースの両端部それぞれに向くように前記筒状ケースの軸方向に沿わせて固定するとともに、前記筒状ケースの一方の端部と前記第1のノズルの間及び前記筒状ケースの他方の端部と前記第2のノズルの間の各位置で前記筒状ケースを封止する一対の固定部と、を備えた限外ろ過モジュールにおいて、
前記第1のノズルから被処理水を前記限外ろ過膜モジュール内に導入し、前記第2のノズルから前記中空糸膜を透過しない濃縮水を流出させ、
前記筒状ケースの前記第3のノズルから前記中空糸膜を透過した透過水と、前記第4のノズルから前記中空糸膜を透過した排出水とを、前記排出水の流出量に対する前記透過水の流出量の比の値(透過水の流出量/排出水の流出量)が、90/10以上99/1以下となるように流出させ、前記透過水のみを超純水として得ることを特徴とする超純水製造方法。
【請求項5】
前記限外ろ過膜モジュールの透過水中の塩化物イオン(Cl)濃度が5ng/L以下(as Cl)である請求項4に記載の超純水製造方法。
【請求項6】
前記限外ろ過膜モジュールの透過水中の塩化物イオン(Cl )濃度が1ng/L以下(as Cl)である請求項4に記載の超純水製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、限外ろ過膜モジュール及び限外ろ過膜モジュールを用いた超純水製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体や表示素子等の電子・電気部品の製造に使用される超純水は、超純水製造システムを用いて製造されている。超純水製造システムは、例えば、原水中の懸濁物質を除去して前処理水を得る前処理部と、前処理水中の全有機炭素(TOC)成分やイオン成分を、逆浸透膜装置やイオン交換装置を用いて除去して一次純水を製造する一次純水製造部と、一次純水中の極微量の不純物を除去して超純水を製造する二次純水製造部とで構成されている。原水としては、市水、井水、地下水、工業用水等が用いられる。また、原水として、超純水の使用場所(ユースポイント:POU)で回収された使用済みの超純水(以下、「回収水」と称する。)が用いられることもある。
【0003】
二次純水製造部では、紫外線酸化装置、イオン交換純水装置及び限外ろ過膜(UF)装置等により一次純水が高度に処理されて超純水が生成される。限外ろ過膜装置は、この二次純水製造部の最後段付近に配置され、イオン交換樹脂などから生じる微粒子を除去する。
【0004】
この限外ろ過膜装置は、筒状ケース内部に中空糸状の限外ろ過膜の糸束を収容した限外ろ過膜モジュールを、採水量などに応じて複数備えて構成される。限外ろ過膜モジュールとしては、中空糸膜の外側に原水を供給する外圧式のものが一般的であり、両端からろ過水を採水する両端集水型の限外ろ過膜モジュールや、一方の端から被処理水を供給して他方の端からろ過水を採水する片端集水型の限外ろ過膜モジュールがある(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0005】
限外ろ過膜モジュールでは、限外ろ過膜の製造時に使用される薬剤の成分、あるいは、限外ろ過膜をモジュールに組み込む際に使用される接着剤やポッティング剤等の成分が、使用時に溶出して透過水を汚染することがある。そのため、超純水製造に適用する前に限外ろ過膜モジュールの洗浄が行われるのが通常であり、上記のような汚染物質を容易に洗浄することを目的とした限外ろ過膜モジュールの製造方法が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。また、限外ろ過膜を接着封止するポッティング剤として、有機物の溶出の少ない材料も提案されている(例えば、特許文献4参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平7-96152号公報
【文献】国際公開2012/043679号
【文献】特開2001-129366号公報
【文献】特開2017-136548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、近年、半導体集積回路の微細化などに伴って、超純水の洗浄対象物(洗浄によって除去される物質)も多様化しており、難洗浄性の洗浄対象物も多くなってきた。そのため、半導体の洗浄においては、洗浄性の向上のために、超純水を加熱した温超純水なども使用されている。また、洗浄物の高清浄化の要望により、超純水の水質への要求もますます厳しくなっているのが現状である。このようななか、本発明者らは、超純水製造装置の二次純水製造部から供給される超純水中に、極めて微量のイオン成分(塩化物イオン(Cl)等)が残留していることを知見した。特に、二次純水製造部を通流した温超純水において、この微量イオン成分が超純水の水質向上を阻んでいることが分かった。そして、この微量イオン成分が、限外ろ過膜の製造時に使用される薬剤の成分や、限外ろ過膜をモジュールに組み込む際に使用される接着剤やポッティング剤等の成分が溶出したものであることを突き止めた。しかしながら、温超純水の製造条件(たとえば80℃)付近で、溶出物質が発生しないか、又は溶出物質がほとんど発生しない限外ろ過膜モジュールは、いまだ市場に流通するには至っていない。そのため、溶出物質の発生を低減した限外ろ過膜モジュールの開発が求められていた。
【0008】
本発明は、上記した知見に基づいてなされたものであって、超純水、特に温超純水中の微量イオン成分の濃度を著しく低減することができる限外ろ過膜モジュール、及びこれを用いた超純水製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の限外ろ過膜モジュールは、限外ろ過膜からなる複数本の中空糸膜と、前記複数本の中空糸膜を収容する筒状ケースと、からなる限外ろ過膜モジュールであって、前記筒状ケースは、その外周面に、前記筒状ケースの軸方向に互いに離間して配設された第1のノズル及び第2のノズルと、前記筒状ケースの両端部に配設された第3のノズル及び第4のノズルと、前記複数本の中空糸膜を、前記複数本の中空糸膜の開口端が前記筒状ケースの両端部それぞれに向くように前記筒状ケースの軸方向に沿わせて固定するとともに、前記筒状ケースの一方の端部と前記第1のノズルの間及び前記筒状ケースの他方の端部と前記第2のノズルとの間の各位置で前記筒状ケースを封止する一対の固定部と、を備え、前記第1のノズルは、被処理水を導入する被処理水導入管であり、前記第2のノズルは、前記中空糸膜を透過しない濃縮水を流出させる濃縮水流出管であり、前記第3のノズルは前記中空糸膜を透過した透過水を流出させる透過水流出管であり、前記第4のノズルは、前記中空糸膜を透過した排出水を流出させる排出水流出管であることを特徴とする。
【0010】
本発明の限外ろ過膜モジュールにおいて、前記透過水流出管が、前記被処理水導入管よりも前記濃縮水流出管と近接して設けられていることが好ましい。
【0011】
本発明の限外ろ過膜モジュールにおいて、前記固定部は、エポキシ樹脂からなることが好ましい。
【0012】
本発明の限外ろ過膜モジュールにおいて、前記排出水流出管からの流出量に対する前記透過水流出管からの流出量の比の値(透過水流出管からの流出量/排出水流出管からの流出量)が、90/10以上99/1以下であることが好ましい。
【0013】
本発明の超純水製造方法は、限外ろ過膜からなる複数の中空糸膜と、前記複数本の中空糸膜を収容する筒状ケースと、からなる限外ろ過膜モジュールであって、前記筒状ケースは、その外周面に、前記筒状ケースの軸方向に互いに離間して配設された第1のノズル及び第2のノズルと、前記筒状ケースの両端部に配設された第3のノズル及び第4のノズルと、前記複数本の中空糸膜を、前記複数本の中空糸膜の開口端が前記筒状ケースの両端部それぞれに向くように前記筒状ケースの軸方向に沿わせて固定するとともに、前記筒状ケースの一方の端部と前記第1のノズルの間及び前記筒状ケースの他方の端部と前記第2のノズルの間の各位置で前記筒状ケースを封止する一対の固定部と、を備えた限外ろ過モジュールにおいて、前記第1のノズルから被処理水を前記限外ろ過膜モジュール内に導入し、前記第2のノズルから前記中空糸膜を透過しない濃縮水を流出させ、前記筒状ケースの前記第3のノズルから前記中空糸膜を透過した透過水を流出させ、前記第4のノズルから前記中空糸膜を透過した排出水を流出させて、前記透過水を超純水として得ることを特徴とする。
【0014】
本発明の超純水製造方法において、前記被処理水中の塩化物イオン(Cl)濃度が0.01μg/L以上2μg/L以下(as Cl)であることが好ましい。
【0015】
本発明の超純水製造方法において、前記被処理水中の塩化物イオン(Cl)濃度が1ng/L以下(as Cl)であることが好ましい。
【0016】
本発明の超純水製造方法において、前記限外ろ過膜モジュールの透過水中の塩化物イオン(Cl)濃度が5ng/L以下(as Cl)であることが好ましい。
【0017】
本明細書において「~」の符号はその両側の数値を含む、数値範囲を表す。
【発明の効果】
【0018】
本発明の限外ろ過膜モジュールによれば、被処理水を処理して超純水、特に温超純水を製造する場合に微量イオン成分濃度を著しく低減することができる。
本発明の超純水製造方法によれば、微量イオン成分が著しく低減された超純水、特に温超純水に好適な超純水を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1の実施形態に係る限外ろ過膜モジュールを模式的に表す断面図である。
図2】第1の実施形態に係る超純水製造システムを概略的に表すブロック図である。
図3】第1の実施形態に係る超純水製造システムの変形例を概略的に表すブロック図である。
図4】第2の実施形態に係る超純水製造システムにおける限外ろ過膜装置の概略構成を示す図である。
図5】第2の実施形態に係る超純水製造システムにおける他の限外ろ過膜装置の概略構成を示す図である。
図6】実施例1及び比較例の透過水中の塩化物イオン濃度の経時変化を表わすグラフである。
図7】実施例2における、透過水排出流量比と透過水中の塩化物イオン濃度の関係を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1に示す本実施形態の限外ろ過膜モジュール10は、複数本の中空糸膜1と、該中空糸膜1を収容する筒状ケース2と、中空糸膜1の両端部を筒状ケース内に固定する一対の固定部3a,3bとを備える。限外ろ過膜モジュール10は、筒状ケース2の両端に、それぞれノズル6a,6bを有する配管接続キャップ60a,60bを有している。配管接続キャップの筒状ケース2の端部との当接部61a,61bにはそれぞれ溝が形成され、配管接続キャップは、当該溝に配置された図示しないОリングと、配管接続キャップの一部を覆い筒状ケース2の端部に固定するナット(図示せず。)によって、筒状ケース2に装着されている。
【0021】
筒状ケース2は、その外周面に、ノズル2a,2bを備えている。ノズル2a,2bは、筒状ケース2の外周面に、該筒状ケース2の軸方向に互いに離間して配置されている。なお、図1において、ノズル6aとノズル6bは逆の配置位置でもよいが、図1に示したようにノズル6bが、ノズル2aよりもノズル2bと近接して設けられている構成が好ましい。
【0022】
中空糸膜1は、例えば、複数本の中空糸膜を一束にまとめた糸束である。または、中空糸膜1は、筒状ケース2に収容される複数本の中空糸膜の一部をまとめた小束に分割して、この小束をまとめたものでもよい。中空糸膜1の糸束又は小束は、全体がポリプロピレン製のネットや不織布等で包んだ状態としてもよい。中空糸膜を糸束にまとめて筒状ケース2内に配置することで、筒状ケース2内の、中空糸膜1と筒状ケース2内周面との間に、中空糸膜1が充填されていない部分(膜充填密度が低い部分)が形成され、これにより中空糸膜1の外側を流れる水の抵抗が小さくなり、より高いモジュール透水性能を実現することができる。
【0023】
中空糸膜1としては、限外ろ過膜が使用される。限外ろ過膜の分画分子量は、4000~6000が好ましく、有効膜面積は10m~35mが好ましく、設計運転差圧は0.1MPa~0.4MPaであることが好ましい。また限外ろ過膜の微粒子除去性能は、粒子径20nm以上の微粒子の除去率が65%以上であることが好ましい。なお、設計運転差圧は限外ろ過膜における不純物の阻止率が最大値から最大値の90%となる運転差圧(透過水の圧力と供給水圧力との差)の範囲である。設計運転差圧は、限外ろ過膜の標準運転圧力などとして製造元が公表する値でもよい。
【0024】
中空糸膜の材質は、用途に応じて適宜選択すればよく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、セルロースアセテート及びポリアクリロニトリルのなかから選択できる。
【0025】
中空糸膜の内径は0.50~1.0mmであることが好ましく、0.70mm~0.85mmであることが特に好ましい。
【0026】
筒状ケース2は、両端に開口を有する円筒状の部材からなる。筒状ケース2は、固定部3a,3bの界面Fa,Fb付近に設けられたノズル2a,2bを有する。固定部の界面とは、固定部の、筒状ケース2内の中空糸膜1の収容された側の面を意味する。筒状ケース2の材質は、金属及びプラスチック類のなかから用途に応じて適宜選択することができる。加工の容易性及び軽量化の点から、筒状ケース2はプラスチック類で形成されたものが好ましい。筒状ケース2の材料は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフッ化ビニリデン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)、塩化ビニル樹脂等が挙げられる。なお、界面Fa,Fb付近にそれぞれ設けるノズルは、必ずしも1個ずつでなくてもよく、界面Fa,Fb付近に複数個のノズルをそれぞれ設けることもできる。
【0027】
筒状ケース2の大きさは、被処理水の量にもより適宜選択でき、一例として、外径が140~200mmであり、かつ、長さが700~1400mmであることが好ましく、外径160~180mmであり、かつ、長さが800~1200mmであることが特に好ましい。この範囲の大きさの筒状ケース2を使用したときに高いモジュール透水量及び最も高いモジュール透水性能を実現することができる。また、上記の大きさであれば、限外ろ過膜モジュール10を、1人で持つことも可能な重量にできるので、ハンドリング性が格段に良いという利点がある。なお、筒状ケース2の「外径」とは、限外ろ過膜モジュール10の中央のろ過領域における円筒の外径を意味する。筒状ケース2の「長さ」とは、中空糸膜の両端面間の距離を意味する。
【0028】
固定部3a,3bは、筒状ケース2内の中空糸膜1の両端部において、中空糸膜1の外面同士及び当該外面と筒状ケース2の内面との隙間を封止する。固定部3a,3bが中空糸膜1を筒状ケース2の軸方向(長手方向)に沿わせて、固定することにより、中空糸膜1の各中空部の開口端が筒状ケース2の両端部側にそれぞれ露出する。水処理時には、この開口端から透過水が流出することとなる。
【0029】
固定部3a,3bの材料としては、エポキシ樹脂やウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂が使用される。固定部3a,3bの材料としては、溶出が少ないことから、エポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂、ビスフェノールF型のエポキシ樹脂、ビフェニル型のエポキシ樹脂、ナフタレン型のエポキシ樹脂、フェノールノボラック型のエポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型のエポキシ樹脂、トリスヒドロキシメタン型のエポキシ樹脂、テトラフェノールエタン型のエポキシ樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン型のエポキシ樹脂、アミノフェノール型のエポキシ樹脂、アニリン型のエポキシ樹脂、ベンジルアミン型のエポキシ樹脂、キシレンジアミン型のエポキシ樹脂などが挙げられる。
【0030】
固定部3a,3bの材料は、中空糸膜1の材料、中空糸膜1との密着性、中空糸膜1の強度などに応じて選択される。固定部3a,3bの材料としては溶出成分の少ないものが好ましい。具体的には、この材料の一例として、中空糸膜1の有効膜面積が34m程度、モジュールの外径160~180mm、かつ、長さが800~1200mmの中空糸膜モジュールに使用された状態で、70~80℃程度の温純水と接触した場合に、全透過水中に溶出する塩化物イオンの溶出量が、10ng/L以下、好ましくは、6ng/L以下となる材料であることが好ましい。なお、固定部3a,3bの材料として有機物成分の溶出の抑制された材料を用いることで、有機物成分の溶出量を抑制することができる。
【0031】
本実施形態の限外ろ過膜モジュール10は、固定部3a,3bの界面Fa,Fbの位置からモジュール10の中央の方向に向けてそれぞれ延在した一対の整流筒を有していてもよい。固定部3a,3b、中空糸膜1の両端部をそれぞれ囲う整流筒を設置すれば、界面Fa,Fb付近における中空糸膜の破損を効果的に防止できる。
【0032】
本実施形態の限外ろ過膜モジュール10の、ノズル2a,2b、ノズル6a,6bに配管が接続され、被処理水の供給、透過水の採水及び濃縮水の排出が行われる。限外ろ過膜モジュール10においては、例えば、ノズル2aを被処理水導入管(第1のノズル)とし、ノズル2bを濃縮水流出管(第2のノズル)とする。また、ノズル6aを排出水流出管(第4のノズル)とし、ノズル6bを透過水流出管(第3のノズル)とする。例えばノズル2b(濃縮水流出管)には、開度可変のバルブV1が介装された濃縮水管101が接続され、ノズル6a(排出水流出管)には開度可変のバルブV2が介装された排出水管102が接続される。また、ノズル2a(被処理水導入管)には被処理水管103が、ノズル6b(透過水流出管)には透過水管104がそれぞれ接続される。
【0033】
被処理水はノズル2aから限外ろ過膜モジュール10内に導入され、中空糸膜の外側から内側に通流する過程でろ過処理されて、濃縮水がノズル2bから、透過水が透過水流出管であるノズル6bから流出する。また、透過水の一部が、排出水として、排出水流出管であるノズル6aから流出する。
【0034】
被処理水としては、原水からイオン交換処理、脱気処理、紫外線酸化処理、限外ろ過、精密ろ過等によってイオン成分、非イオン成分、溶存気体及び微粒子を除去した水が使用できる。このような被処理水としては、一般に一次純水又は純水と呼ばれるものであり、TOC(全有機炭素)濃度が5μgC/L以下、比抵抗率が17MΩ・cm以上の水が挙げられる。また、被処理水中のイオン成分量は、例えば塩化物イオン(Cl)濃度が0.01μg/L~2μg/L(as Cl、以下同じ。)であり、0.01μg/L~0.1μg/Lであることが好ましい。
【0035】
被処理水の温度は、10℃以上90℃以下であることが好ましく、20℃以上80℃以下であることがより好ましい。被処理水として、温度が高い温水を使用すると、固定部3a,3bからの溶出物が多くなる傾向があるため、上記温度範囲とすることで、溶出物の抑制における多大な効果を得やすい。
【0036】
上記実施形態の限外ろ過膜モジュール10によればノズル6bから、イオン成分が著しく低減された透過水が得られる。これは、次のような理由によると考えられる。両端集水方式の限外ろ過膜モジュールでは、限外ろ過膜モジュール内で生成した透過水は、筒状ケース両端付近に設けられた固定部3a,3bとの接触を経て、ノズル6a,6bから流出する。この透過水と固定部3a,3bとの接触時に、固定部3a,3bの材料からの溶出成分が、透過水に混入して汚染が生じると推定される。この溶出成分は具体的には、有機物成分や塩化物イオン(Cl)などのイオン成分である。水温が高いほど溶出成分は増大する傾向である。
【0037】
これに対し、本実施形態の限外ろ過膜モジュール10では、限外ろ過膜モジュール内で生成した透過水の一部は、ノズル6bから流出して超純水として使用される。この際、透過水は、筒状ケース2の一方の端部付近に設けられた、固定部3bに接触する。固定部3bの材料からの溶出成分の量は、理想的には、固定部3a,3bの材料からの溶出成分の半分の量になる。限外ろ過膜モジュール内で生成した透過水の残部はノズル6aから、超純水として使用されない排出水として流出される。これにより、透過水中への溶出成分の混入が低減されるのである。
【0038】
実際には、ノズル6aとノズル6bからの流出量を等しくしても、双方から流出する排出水及び透過水中の溶出成分の量は必ずしも等しくなるわけではない。例えば、被処理水の流量や、水回収率のほか、限外ろ過膜モジュール10の大きさなどに応じて、排出水管102に介装されたバルブV2の開度を調節して、ノズル6aとノズル6bからの流出量の比率を調節することで、固定部3a,3bの材料からの溶出成分の透過水中への移行量を低減することが可能である。上記構成の限外ろ過膜モジュール10によれば、例えば、温度が70℃~80℃の被処理水を通水した場合も塩化物イオン(Cl-)濃度が5ng/L以下、より好ましくは1ng/L以下の透過水をノズル6bから超純水として得ることができる。また、透過水中の塩化物イオン濃度は、測定機器の定量下限値にもよるが、0.1ng/L程度まで低減されると考えられる。
【0039】
例えば、ノズル6a(排出水流出管)とノズル6b(透過水流出管)からの流出量は、ノズル6aからの流出量L(cm/h)に対するノズル6bからの流出量L(cm/h)の比の値L/Lとして、90/10~99/1が好ましく、95/5~98/2がより好ましい。流出量の比の値L/Lは、バルブV2の開度の調節により行うことができる。また、排出水流出管の内径を、透過水流出管の内径よりも小さくすることで流出量の比の値L/Lを調節してもよい。L/Lが上記した範囲であると、透過水中の溶出イオン成分の量を低減しやすい。
【0040】
本実施形態の限外ろ過膜モジュール10において、水回収率は、90%以上が好ましく、95%以上がより好ましい。限外ろ過膜モジュール10における運転差圧は0.1MPa~0.4MPaであることが好ましい。これにより、限外ろ過膜モジュール内での水の滞留を低減できるため、溶出成分の透過水中への移行量を低減することが可能である。
【0041】
次に、上記の実施形態の限外ろ過膜モジュールを用いた超純水製造システム100について図2を参照して説明する。
【0042】
図2に示す超純水製造システム100は、前処理部11、一次純水製造部12及び二次純水製造部13を有している。一次純水製造部12と二次純水製造部13の間には、タンク14が接続されている。
【0043】
前処理部11は、原水中の懸濁物質を除去して、前処理水を生成し、この前処理水を一次純水製造部12に供給する。前処理部11は例えば、原水中の懸濁物質を除去するための砂ろ過装置、精密ろ過装置等を適宜選択して構成され、さらに必要に応じて原水の温度調節を行う熱交換器等を備えて構成される。なお、原水の水質によっては、前処理部11は省略してもよい。
【0044】
原水は、例えば、市水、井水、地下水、工業用水、半導体製造工場などで使用され、回収されて前処理された水(回収水)である。
【0045】
一次純水製造部12は、逆浸透膜装置、脱気装置(脱炭酸等、真空脱気装置、脱気膜装置等)、イオン交換装置(陽イオン交換樹脂装置、陰イオン交換樹脂装置、混床式イオン交換樹脂装置等、電気脱イオン装置等)、紫外線酸化装置のうち1つ以上を適宜組み合わせて構成される。一次純水製造部12は、前処理水中のイオン成分及び非イオン成分、溶存ガスを除去して一次純水を製造し、この一次純水をタンク14に供給する。一次純水は例えば、全有機炭素(TOC)濃度が5μgC/L以下、抵抗率が17MΩ・cm以である。
【0046】
一次純水製造部としては、例えば、強塩基性陰イオン交換樹脂装置、2B3T型装置(強酸性陽イオン交換樹脂装置、脱炭酸塔、塩基性陰イオン交換装置)、逆浸透膜装置、紫外線酸化装置、混床式イオン交換樹脂装置及び脱気膜装置を順に備えた構成が使用可能である。
【0047】
タンク14は、一次純水を貯留する。ポンプPが、その必要量を二次純水製造部13に供給する。
【0048】
二次純水製造部13は、一次純水中の微量不純物を除去して超純水を製造する。図2に示すように、二次純水製造部13は、限外ろ過膜装置30の上流側に、熱交換器(HEX)34、紫外線酸化装置(TOC-UV)35、過酸化水素除去装置(H除去装置)36、脱気膜装置(MDG)37、非再生型混床式イオン交換樹脂装置(Polisher)38を備えて構成される。なお、二次純水製造部13は、上記装置を必ずしも備える必要はなく、上記装置を必要に応じて組み合わせて採用すればよい。
【0049】
ポンプPは、タンク14から供給された一次純水を加圧して熱交換器(HEX)34に供給する。熱交換器34は、必要に応じてタンク14から供給された一次純水の温度調節を行う。熱交換器34で温度調節された一次純水の温度は好ましくは20℃以上30℃以下であり、より好ましくは22℃以上25℃以下である。
【0050】
紫外線酸化装置(TOC-UV)35は、熱交換器34で温度調節された一次純水に紫外線を照射して、水中の微量有機物を分解除去する。紫外線酸化装置35は、例えば、紫外線ランプを有し、波長185nm付近の紫外線を発生する。紫外線酸化装置35は、さらに波長254nm付近の紫外線を発生してもよい。紫外線酸化装置35内で水に紫外線を照射すると紫外線が水を分解してOHラジカルを生成し、このOHラジカルが、水中の有機物を酸化分解する。下流の限外ろ過膜装置30の有する限外ろ過膜の劣化を抑制するために、紫外線酸化装置35における紫外線照射量は、0.05~0.2kWh/mであることが好ましい。
【0051】
過酸化水素除去装置(H除去装置)36は、水中の過酸化水素を分解除去する装置であり、例えば、パラジウム(Pd)担持樹脂によって過酸化水素を分解除去するパラジウム担持樹脂装置や、表面に亜硫酸基及び/又は亜硫酸水素基を有する還元性樹脂を充填した還元性樹脂装置等である。過酸化水素除去装置36を設けることで、水中の過酸化水素を低減することができるので、限外ろ過膜装置30及び後述する第2の限外ろ過膜装置40の劣化を抑制することができる。
【0052】
脱気膜装置(MDG)37は、気体透過性の膜の二次側を減圧して、一次側を通流する水中の溶存ガスのみを二次側に透過させて除去する装置である。脱気膜装置37として具体的には、3M社製のX-50、X40、DIC社製のSeparelなどの市販品を用いることができる。脱気膜装置37は、過酸化水素除去装置36の処理水中の溶存酸素を除去して例えば、溶存酸素濃度(DO)が1μg/L以下の処理水を生成する。
【0053】
非再生型混床式イオン交換樹脂装置(Polisher)38は、陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂が混合された混床式イオン交換樹脂を有し、脱気膜装置37の処理水中の微量の陽イオン成分及び陰イオン成分を吸着除去する。
【0054】
非再生型混床式イオン交換樹脂装置38の有する、陽イオン交換樹脂として、強酸性陽イオン交換樹脂や弱酸性陽イオン交換樹脂が、陰イオン交換樹脂として、強塩基性陰イオン交換樹脂や弱塩基性陰イオン交換樹脂が挙げられる。混床式イオン交換樹脂の市販品としては、例えば、野村マイクロ・サイエンス製 N-Lite MBSP、MBGPなどを用いることができる。
【0055】
限外ろ過膜装置30は、上記実施形態の限外ろ過膜モジュール10を備えている。限外ろ過膜装置30は、非再生型混床式イオン交換樹脂装置38の処理水を処理して、透過水と濃縮水及び排出水とを生成する。限外ろ過膜装置30は、粒子径20nm以上の微粒子の除去率が99.8%以上であることが好ましく、99.95%以上であることがより好ましく、99.99%以上であることがさらに好ましい。これにより限外ろ過膜装置30によって、超純水の水質悪化の原因となる微粒子のほとんどを除去し、例えば、粒子径50nm以上の微粒子数が500pcs./L以下、さらには200pcs./L以下の透過水を得ることができる。限外ろ過膜装置30において生成した透過水は超純水の使用場所(ユースポイント:POU)50に供給される。濃縮水は系外に排出されるか、超純水製造システム100の前段に循環されて再処理される。
【0056】
本実施形態の超純水製造システムにおいては、非再生型混床式イオン交換樹脂装置38によって塩素が吸着除去されているため、限外ろ過膜装置30への供給水中の塩化物イオン濃度は、例えば5ng/L以下とすることができる。
【0057】
以上説明した超純水製造システム100によれば、二次純水製造部13のもっとも下流に本実施形態の限外ろ過膜モジュール10を備えた限外ろ過膜装置30が配設されるため、限外ろ過膜モジュールからの汚染物質の溶出が著しく抑制される。そのため、塩化物イオンなどのイオン成分を著しく低減した超純水を得ることができる。
【0058】
また、図3に示すように、図2に示す超純水製造システム100の限外ろ過膜装置30の後段にさらに、第2の熱交換器(HEX2)41及び上記実施形態の限外ろ過膜モジュール10を備えた第2の限外ろ過膜装置(UF2)40を順に配置してもよい。この場合、例えば、限外ろ過膜装置30の透過水流出管に分岐配管を接続し、当該分岐配管の経路に第2の熱交換器41及び第2の限外ろ過膜装置40を配置して、限外ろ過膜装置30で得られた透過水(超純水)の一部を第2の熱交換器41と第2の限外ろ過膜装置(UF2)40に順に通流させることができる。
【0059】
第2の熱交換器41及び第2の限外ろ過膜装置40を用いる場合、第2の熱交換器41は、限外ろ過膜装置30の処理水を70~90℃に加熱して、第2の限外ろ過膜装置40に供給することが好ましい。第2の限外ろ過膜装置40としては上記限外ろ過膜装置30と同様の仕様の装置を用いてもよいし、異なる仕様の装置を用いてもよい。これにより例えば70~90℃に加熱された温超純水を得ることができる。第2の限外ろ過膜装置40において生成した透過水は温超純水の使用場所(ユースポイント:POU)51に供給される。この場合には、本発明の方法を用いないと、温超純水によって限外ろ過膜モジュールからの溶出成分(汚染物質)量が多くなりやすいが、実施形態の限外ろ過膜モジュールを用いているため、塩化物イオンなどのイオン成分を著しく低減した超純水を得ることができるという多大な効果が得られる。なお、第2の限外ろ過膜装置40を配置する場合、第2の限外ろ過膜装置40に上記実施形態の限外ろ過膜モジュールを用いれば、第1の限外ろ過膜装置30は上記実施形態の限外ろ過膜モジュールを用いてもよいし、従来の両端集水型の限外ろ過膜モジュールを用いてもよい。
【0060】
限外ろ過膜装置40の透過水(超純水)中の塩化物イオン濃度は、限外ろ過膜装置40に温純水を通水することによる増加量を抑制することによって、例えば5ng/L以下、より好ましくは1ng以下を維持することができる。また、限外ろ過膜装置40の透過水中の粒子径50nm以上の微粒子数は例えば、200pcs./L以下、好ましくは50pcs./L以下である。
【0061】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
この第2の実施形態に係る限外ろ過膜装置及び超純水製造方法は、基本的に、第1の実施形態で説明した限外ろ過膜モジュールを用いる点で同一の構成を有するが、限外ろ過膜装置30に用いる限外ろ過モジュールとして、限外ろ過膜モジュールの2つを接続した2段構成となっている点のみが異なる。すなわち、図4に示したように、第1の限外ろ過膜モジュール30aと第2の限外ろ過膜モジュール10とを接続した構成としたり、図5に示したように、第1の限外ろ過膜モジュール及び第2の限外ろ過膜モジュールとしていずれも本実施形態の限外ろ過膜モジュール10を用い、これらを接続した構成としたり、できる。
【0062】
図4に示した、第1の限外ろ過膜モジュール30aは、従来公知の限外ろ過膜モジュールを特に制限なく使用できるが、ここでは、従来の両端集水型の限外ろ過膜モジュールを用いた場合を例示している。この限外ろ過膜モジュール30aは、ノズル32a,32bと、ノズル36a,36bとを有し、内部に限外ろ過膜からなる中空糸膜が収容されている。限外ろ過膜装置30に供給される被処理水を通流する被処理水導入管113と接続したノズル32aから限外ろ過膜モジュール30aに被処理水が導入され、限外ろ過膜を透過しない濃縮水をノズル32bと接続された濃縮水流出管111から流出させる。一方、限外ろ過膜を透過した透過水は、両端に設けられたノズル36bに接続された透過水流出管114から流出させ、その全てを合流させた後、第2の限外ろ過膜モジュール10の被処理水として被処理水管103と接続されたノズル2aから第2の限外ろ過膜モジュール10内へ導入させる。
第2の限外ろ過膜モジュールでの処理は、第1の実施形態で説明した通りである。なお、この第2の限外ろ過膜モジュールにおいては、濃縮水を流出させてもよいが、バルブV1を閉じて、全量ろ過とすることも可能である。
【0063】
また、図5には、本実施形態の限外ろ過膜モジュールを2つ用いた場合を例示している。ここでは、第1の限外ろ過膜モジュール10Aも第2の限外ろ過膜モジュール10Bも、上記本実施形態の限外ろ過膜モジュール10であり、その被処理水の流れはいずれも上記で説明した通り、被処理水管103A,103Bから被処理水が導入され、濃縮水管101A,101Bから濃縮水が流出され、排出水管102A、102Bから排出水が流出され、透過水管104A,104Bから透過水が流出される。なお、本実施形態では、第1の限外ろ過膜モジュール10Aの限外ろ過膜を透過した透過水は、ノズル6bに接続された透過水管104Aから流出させ、そのまま第2の限外ろ過膜モジュール10Bの被処理水として被処理水管103Bと接続されたノズル2aから第2の限外ろ過膜モジュール内へ導入させる。そして、上記図4で説明したように、この図5の構成においても、第2の限外ろ過膜モジュールでの処理は、濃縮水を流出させてもよいが、バルブV1を閉じて、全量ろ過とすることも可能である。
【0064】
この図4及び図5のような構成とすることで、第1の限外ろ過膜モジュールで大部分の微粒子が除去され、第2の限外ろ過膜モジュールでの微粒子負荷はほとんどなくなるため、全量ろ過で運転することができる。全量ろ過とすることで、回収率を向上させることができ、さらに、限外ろ過膜モジュール内に収容された中空糸膜の糸切れを抑制することもできる。
また、この実施形態では、限外ろ過膜モジュールを上記のように2段構成としつつ、第2の限外ろ過膜モジュールが上記第1の実施形態で説明した限外ろ過膜モジュールであるため、塩化物イオンなどのイオン成分を著しく低減した超純水を得ることができるという多大な効果が得られる。
【0065】
なお、図4及び図5において、第2の限外ろ過モジュールとして用いる本実施形態の限外ろ過膜モジュール10を、ノズル6a側を鉛直方向(下方)にして直立させて用いることもできる。
この場合、被処理水が第2の限外モジュール10の下方の導入管であるノズル2aから導入され、中空糸膜を透過した透過水を鉛直方向(上方)のノズル6bから取得し、中空糸膜を透過して排出水を鉛直方向(下方)のノズル6aから流出させる。中空糸膜を透過しない濃縮水はノズル2bから流出させてもよいが、上記のように流出させずに全量ろ過することも可能である。
【0066】
全量ろ過をすることの効果は上記と同様であり、糸切れを抑制できるが、さらに次のような効果も奏する。第2の限外ろ過モジュール10を直立した構成としたとき、仮に中空糸膜の糸切れが発生した場合であっても、その糸切れは、被処理水が導入されるノズル2a側の固定部の界面Faで生じる可能性が高い。この場合、糸切れの発生が下方、すなわち、排出水の流出側で発生することとなる。そのため、問題となる被処理水は第2の限外ろ過膜モジュールの鉛直方向(下方)のノズル6aから流出することとなり、鉛直方向(上方)のノズル6bから流出する処理水への影響は生じることがなく、処理水の水質を安定して確保できる。
【実施例
【0067】
次に、実施例について説明する。本発明は以下の実施例に限定されない。
【0068】
(温純水の製造)
外圧式両端集水型の限外ろ過膜モジュール(旭化成社製のOLT-6036VA)を用いて以下のように水処理を行った。なお、本例で使用した外圧式両端集水型の限外ろ過膜モジュールは、図1と同様の立体構造であり、ノズル2aから被処理水が導入され、ノズル2bから濃縮水が流出されるが、ノズル6a及びノズル6bの両方から透過水を集水するように設計されている。
【0069】
また、旭化成社製のOLT-6036VAの仕様は以下のとおりである。
中空糸膜の内径0.6mm
有効膜面積34m
モジュール(筒状ケース)の内径172mm
モジュール(筒状ケース)の長さ1177mm
限外ろ過膜の公称分画分子量6000
最高膜内外面差圧300kPa(25℃)
【0070】
図3に示す超純水製造システムと同様の二次純水製造部13を有する超純水製造システムを使用した。この二次純水製造部は一次純水を貯留するタンクの下流に、第1の熱交換器、紫外線酸化装置(日本フォトサイエンス社製、JPW-2)、パラジウム(Pd)担持樹脂装置(LANXESS社製、Lewatit K7333)、脱気膜装置(3M社製、X40 G451H)、非再生型混床式イオン交換装置(野村マイクロ・サイエンス製 N-Lite MBSPを200L充填)、上記の限外ろ過膜装置(旭化成社製、OLT-6036VA)を備え、さらに第2の熱交換器を順に備えている。第1の熱交換器において、一次純水の温度を23±3℃に調節し、第2の熱交換器において、限外ろ過膜装置の透過水を80℃に加熱した。なお、温純水の製造で使用した限外ろ過膜装置に配置される限外ろ過膜モジュールにおいては、両端集水方式で透過水を集水した。得られた温純水の水質は、比抵抗率17MΩ・cm以上、TOC濃度は5μgC/L以下、粒子径50μm以上の微粒子数が200pcs./L程度、塩化物イオン濃度が25ng/Lであった。
【0071】
(実施例1)
上記外圧式両端集水型の限外ろ過膜モジュールと基本的に同一構造であるが、ノズル6bから透過水を、ノズル6aから排出水を流出させ、片側から集水する限外ろ過膜モジュールを用い、その筒状ケース側面に配置されたノズル2aから、上記で得られた温純水(80℃に加温した純水)を限外ろ過膜モジュール内に導入して外圧式でろ過処理した。バルブV1の開度を、ノズル2aから供給された一次純水の流量(m/h)に対して、ノズル2bから流出する濃縮水流出量が3%となるように設定した。また、限外ろ過膜を透過した水のうち、ノズル6a及びノズル6bから流出する合計流量に対して、ノズル6aから排出水として流出させる流量を2%、ノズル6bから集水する透過水量を98%となるようにバルブV2の開度を設定した。
【0072】
限外ろ過膜モジュールはノズル6a側を鉛直方向(下方)にして直立させて用いた。限外ろ過膜モジュール内への温純水の供給開始からの時間に対する、透過水中の塩化物イオン濃度(as Cl)を測定した。結果を表1に示す。なお、塩化物イオン濃度は、イオンクロマトグラフィ(Thermo Fisher Scientific製、Dionex ICS―5000)を用いて測定した。
【0073】
(比較例)
上記外圧式両端集水型の限外ろ過膜モジュールを用い、実施例1と同様にノズル2aから上記で得られた温純水(80℃に加温した純水)を限外ろ過膜モジュール内に導入した。ただし、濃縮水はノズル2bから実施例1と同流量(供給された一次純水の流量に対して濃縮水流出量3%)で流出させ、限外ろ過膜モジュールの両端に配置されたノズル6a及び6bの両方から透過水を集水した。実施例1と同様に、限外ろ過膜モジュール内への温純水の供給開始からの日数に対する、透過水中の塩化物イオン濃度(as Cl)の経時変化を測定した。結果を表1に示す。また、実施例1及び比較例の塩化物イオン濃度の経時変化を図6のグラフに示す。
【0074】
【表1】
【0075】
(実施例2)
実施例1において、バルブV2の開度の設定により、ノズル6a及びノズル6bから流出する合計流量に対して、ノズル6aから排出水として流出させる流量を表2のように0%~10%の範囲で変更して、ノズル6bから透過水を集水した。限外ろ過膜モジュールへの温純水の通水開始から55日後に、得られた透過水中の塩化物イオン濃度(as Cl)を測定した。結果を表2に示す。また、実施例2における、透過水排水流量比と透過水中の塩化物イオン濃度の関係を、図7のグラフに示す。
【0076】
【表2】
【符号の説明】
【0077】
1…中空糸膜、2…筒状ケース、2a,2b…ノズル、3a,3b…固定部、4…熱交換器(HEX)、6a,6b…ノズル、60a,60b…配管接続キャップ、61a,61b…当接部、101…濃縮水管、102…排出水管、103…被処理水管、104…透過水管、V1,V2…バルブ、11…前処理部、12…一次純水製造部、13…二次純水製造部、14…タンク、34,41…熱交換器(HEX)、35…紫外線酸化装置(TOC-UV)、36…過酸化水素除去装置(H除去装置)、37…脱気膜装置、38…非再生型混床式イオン交換樹脂、30,40…限外ろ過膜装置、50,51…ユースポイント(POU)、100…超純水製造システム、P…ポンプ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7