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特許7016341PD-1軸結合アンタゴニスト及びTIGIT阻害剤を使用するがんの治療方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-27
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】PD-1軸結合アンタゴニスト及びTIGIT阻害剤を使用するがんの治療方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20220128BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220128BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20220128BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220128BHJP
【FI】
A61K39/395 N ZNA
A61K39/395 D
A61P35/00
A61P37/04
A61P43/00 121
【請求項の数】 62
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019227933
(22)【出願日】2019-12-18
(62)【分割の表示】P 2016527082の分割
【原出願日】2014-07-16
(65)【公開番号】P2020073497
(43)【公開日】2020-05-14
【審査請求日】2020-01-16
(31)【優先権主張番号】61/950,754
(32)【優先日】2014-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/846,941
(32)【優先日】2013-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/985,884
(32)【優先日】2014-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/865,582
(32)【優先日】2013-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/992,109
(32)【優先日】2014-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】グローガン, ジェーン
(72)【発明者】
【氏名】ジョンストン, ロバート ジェー.
(72)【発明者】
【氏名】アーヴィング, ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】ハックニー, ジェイソン
(72)【発明者】
【氏名】ユー, シン
(72)【発明者】
【氏名】イートン, ダン
(72)【発明者】
【氏名】ボウルズ, クリスティン
(72)【発明者】
【氏名】コンプス-アグラー, レティシア
【審査官】新熊 忠信
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/019906(WO,A1)
【文献】特表2011-523034(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00-39/44
A61P 43/00
A61P 35/00
A61P 37/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量の抗TIGITアンタゴニスト抗体又はその抗原結合断片と組合わせて個体におけるがんを治療し又はその進行を遅延させるための医薬であって、有効量の抗PD-1アンタゴニスト抗体又はその抗原結合断片を含む、医薬。
【請求項2】
有効量の抗PD-1アンタゴニスト抗体又はその抗原結合断片と組合わせて個体におけるがんを治療し又はその進行を遅延させるための医薬であって、有効量の抗TIGITアンタゴニスト抗体又はその抗原結合断片を含む、医薬。
【請求項3】
個体におけるがんを治療し又はその進行を遅延させるための医薬であって、有効量の抗PD-1アンタゴニスト抗体又はその抗原結合断片及び有効量の抗TIGITアンタゴニスト抗体又はその抗原結合断片を含む、医薬。
【請求項4】
有効量の抗TIGITアンタゴニスト抗体又はその抗原結合断片と組合わせて個体におけるがんの再発又はがんの進行を減少させ又は阻害するための医薬であって、有効量の抗PD-1アンタゴニスト抗体又はその抗原結合断片を含む、医薬。
【請求項5】
有効量の抗PD-1アンタゴニスト抗体又はその抗原結合断片と組合わせて個体におけるがんの再発又はがんの進行を減少させ又は阻害するための医薬であって、有効量の抗TIGITアンタゴニスト抗体又はその抗原結合断片を含む、医薬。
【請求項6】
個体におけるがんの再発又はがんの進行を減少させ又は阻害するための医薬であって、有効量の抗PD-1アンタゴニスト抗体又はその抗原結合断片及び有効量の抗TIGITアンタゴニスト抗体又はその抗原結合断片を含む、医薬。
【請求項7】
有効量の抗TIGITアンタゴニスト抗体又はその抗原結合断片と組合わせて個体における減少した免疫応答性により特徴付けられる免疫関連疾患を治療し又はその進行を遅延させるための医薬であって、有効量の抗PD-1アンタゴニスト抗体又はその抗原結合断片を含む、医薬。
【請求項8】
有効量の抗PD-1アンタゴニスト抗体又はその抗原結合断片と組合わせて個体における減少した免疫応答性により特徴付けられる免疫関連疾患を治療し又はその進行を遅延させるための医薬であって、有効量の抗TIGITアンタゴニスト抗体又はその抗原結合断片を含む、医薬。
【請求項9】
個体における減少した免疫応答性により特徴付けられる免疫関連疾患を治療し又はその進行を遅延させるための医薬であって、有効量の抗PD-1アンタゴニスト抗体又はその抗原結合断片及び有効量の抗TIGITアンタゴニスト抗体又はその抗原結合断片を含む、医薬。
【請求項10】
有効量の抗TIGITアンタゴニスト抗体又はその抗原結合断片と組合わせて個体における減少した免疫応答性により特徴付けられる免疫関連疾患の進行を減少させ又は阻害するための医薬であって、有効量の抗PD-1アンタゴニスト抗体又はその抗原結合断片を含む、医薬。
【請求項11】
有効量の抗PD-1アンタゴニスト抗体又はその抗原結合断片と組合わせて個体における減少した免疫応答性により特徴付けられる免疫関連疾患の進行を減少させ又は阻害するための医薬であって、有効量の抗TIGITアンタゴニスト抗体又はその抗原結合断片を含む、医薬。
【請求項12】
個体における減少した免疫応答性により特徴付けられる免疫関連疾患の進行を減少させ又は阻害するための医薬であって、有効量の抗PD-1アンタゴニスト抗体又はその抗原結合断片及び有効量の抗TIGITアンタゴニスト抗体又はその抗原結合断片を含む、医薬。
【請求項13】
減少した免疫応答性により特徴付けられる免疫関連疾患がT細胞機能不全疾患に関連する、請求項7から12の何れか一項に記載の医薬。
【請求項14】
T細胞機能不全疾患が、抗原刺激に対する応答の減少によって特徴付けられる、請求項13に記載の医薬。
【請求項15】
T細胞機能不全疾患が、T細胞アネルギー、又はサイトカインを分泌し、増殖し又は細胞溶解活性を果たす能力の減少によって特徴付けられる、請求項13に記載の医薬。
【請求項16】
T細胞機能不全疾患がT細胞消耗によって特徴付けられる、請求項13に記載の医薬。
【請求項17】
T細胞がCD4+及びCD8+T細胞である、請求項7から16の何れか一項に記載の医薬。
【請求項18】
減少した免疫応答性により特徴付けられる免疫関連疾患が、未消散急性感染症、慢性感染症、及び腫瘍細胞に対する減少した免疫応答性により特徴付けられる腫瘍免疫関連疾患からなる群から選択される、請求項7から17の何れか一項に記載の医薬。
【請求項19】
有効量の抗TIGITアンタゴニスト抗体又はその抗原結合断片と組合わせて個体における免疫応答又は機能を増加させ、亢進し又は刺激するための医薬であって、有効量の抗PD-1アンタゴニスト抗体又はその抗原結合断片を含む、医薬。
【請求項20】
有効量の抗PD-1アンタゴニスト抗体又はその抗原結合断片と組合わせて個体における免疫応答又は機能を増加させ、亢進し又は刺激するための医薬であって、有効量の抗TIGITアンタゴニスト抗体又はその抗原結合断片を含む、医薬。
【請求項21】
個体における免疫応答又は機能を増加させ、亢進し又は刺激するための医薬であって、有効量の抗PD-1アンタゴニスト抗体又はその抗原結合断片及び有効量の抗TIGITアンタゴニスト抗体又はその抗原結合断片を含む、医薬。
【請求項22】
少なくとも1種の化学療法剤が更に組み合わせて投与される、請求項1から21の何れか一項に記載の医薬。
【請求項23】
個体ががんに罹患している、請求項19から22の何れか一項に記載の医薬。
【請求項24】
個体のCD4及び/又はCD8 T細胞が、組合せの投与前と比較して、増大し又は亢進したプライミング、活性化、増殖、サイトカイン放出及び/又は細胞溶解活性を有する、請求項1から23の何れか一項に記載の医薬。
【請求項25】
CD4及び/又はCD8 T細胞の数が、組合せの投与前に対して増加している、請求項1から24の何れか一項に記載の医薬。
【請求項26】
活性化されたCD4及び/又はCD8 T細胞の数が、組合せの投与前に対して増加している、請求項1から25の何れか一項に記載の医薬。
【請求項27】
活性化されたCD4及び/又はCD8 T細胞が、γ-IFN産生CD4及び/又はCD8 T細胞及び/又は組合せの投与前と比較して亢進した細胞溶解活性によって特徴付けられる、請求項1から26の何れか一項に記載の医薬。
【請求項28】
CD4及び/又はCD8 T細胞が、組合せの投与前と比較して、IFN-γ、TNF-α及びインターロイキンからなる群から選択されるサイトカインの放出増加を示す、請求項24から27の何れか一項に記載の医薬。
【請求項29】
CD4及び/又はCD8 T細胞が、エフェクターメモリーT細胞である、請求項19から28の何れか一項に記載の医薬。
【請求項30】
CD4及び/又はCD8エフェクターメモリーT細胞が、γ-IFN産生CD4及び/又はCD8 T細胞及び/又は亢進した細胞溶解活性によって特徴付けられる、請求項29に記載の医薬。
【請求項31】
CD4及び/又はCD8エフェクターメモリーT細胞が、CD44highCD62Llowの発現を有することによって特徴付けられる、請求項29に記載の医薬。
【請求項32】
がんが、増加したレベルのT細胞浸潤を有している、請求項1から6及び22から31の何れか一項に記載の医薬。
【請求項33】
抗TIGITアンタゴニスト抗体又はその抗原結合断片が、PVR発現及び/又は活性を低減し又は阻害する、PVRとのTIGITの相互作用を阻害し及び/又はブロックする、PVRL2とのTIGITの相互作用を阻害し及び/又はブロックする、PVRL3とのTIGITの相互作用を阻害し及び/又はブロックする、PVRへのTIGITの結合によって媒介される細胞内シグナル伝達を阻害し及び/又はブロックする、PVRL2へのTIGITの結合によって媒介される細胞内シグナル伝達を阻害し及び/又はブロックする、及び/又はPVRL3へのTIGITの結合によって媒介される細胞内シグナル伝達を阻害し及び/又はブロックする、請求項1から32の何れか一項に記載の医薬。
【請求項34】
抗TIGITアンタゴニスト抗体又はその抗原結合断片が、ヒト化抗体、キメラ抗体、二重特異性抗体、ヘテロコンジュゲート抗体、及びイムノトキシンからなる群から選択される、請求項1から33の何れか一項に記載の医薬。
【請求項35】
抗PD-1アンタゴニスト抗体又はその抗原結合断片が、PD-1のPD-L1への結合を阻害する、PD-1のPD-L2への結合を阻害する、又はPD-1のPD-L1とPD-L2双方への結合を阻害する、請求項1から34の何れか一項に記載の医薬。
【請求項36】
抗PD-1アンタゴニスト抗体又はその抗原結合断片が、MDX-1106、MK-3475、CT-011、及びAMP-224からなる群から選択される、請求項1から35の何れか一項に記載の医薬。
【請求項37】
がんが、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、腎細胞がん、結腸直腸がん、卵巣がん、乳がん、膵がん、胃がん、膀胱がん、食道がん、中皮腫、メラノーマ、頭頸部がん、甲状腺がん、肉腫、前立腺がん、神経膠芽腫、子宮頸がん、胸腺がん、白血病、リンパ腫、骨髄腫、菌状息肉症、メルケル細胞がん、及び血液悪性腫瘍からなる群から選択される、請求項1から6及び22から36の何れか一項に記載の医薬。
【請求項38】
抗TIGITアンタゴニスト抗体又はその抗原結合断片が連続的に投与される、請求項1から37の何れか一項に記載の医薬。
【請求項39】
抗TIGITアンタゴニスト抗体又はその抗原結合断片が間欠的に投与される、請求項1から37の何れか一項に記載の医薬。
【請求項40】
抗TIGITアンタゴニスト抗体又はその抗原結合断片が、抗PD-1アンタゴニスト抗体又はその抗原結合断片の前に投与される、請求項1から39の何れか一項に記載の医薬。
【請求項41】
抗TIGITアンタゴニスト抗体又はその抗原結合断片が、抗PD-1アンタゴニスト抗体又はその抗原結合断片と同時に投与される、請求項1から39の何れか一項に記載の医薬。
【請求項42】
抗TIGITアンタゴニスト抗体又はその抗原結合断片が、抗PD-1アンタゴニスト抗体又はその抗原結合断片の後に投与される、請求項1から39の何れか一項に記載の医薬。
【請求項43】
有効量の抗TIGITアンタゴニスト抗体を含む、請求項1から42の何れか一項に記載の医薬。
【請求項44】
抗TIGITアンタゴニスト抗体が、IgG-1、IgG-2、IgG2A、IgG2B、IgG-3又はIgG-4サブタイプである、請求項43に記載の医薬。
【請求項45】
有効量の抗PD-1アンタゴニスト抗体を含む、請求項1から44の何れか一項に記載の医薬。
【請求項46】
抗PD-1アンタゴニスト抗体が、IgG-1、IgG-2、IgG2A、IgG2B、IgG-3又はIgG-4サブタイプである、請求項45に記載の医薬。
【請求項47】
抗TIGITアンタゴニスト抗体又はその抗原結合断片と組合わせて個体におけるがんを治療し又はその進行を遅延させるためのキットであって、抗PD-1アンタゴニスト抗体又はその抗原結合断片を含む、キット。
【請求項48】
個体におけるがんを治療し又はその進行を遅延させるためのキットであって、抗PD-1アンタゴニスト抗体若しくはその抗原結合断片及び抗TIGITアンタゴニスト抗体若しくはその抗原結合断片を含む、キット。
【請求項49】
抗PD-1アンタゴニスト抗体又はその抗原結合断片と組合わせて個体におけるがんを治療し又はその進行を遅延させるためのキットであって、抗TIGITアンタゴニスト抗体又はその抗原結合断片を含む、キット。
【請求項50】
抗TIGITアンタゴニスト抗体又はその抗原結合断片と組合わせてがんに罹患している個体の免疫機能を亢進させるためのキットであって、抗PD-1アンタゴニスト抗体又はその抗原結合断片を含む、キット。
【請求項51】
がんに罹患している個体の免疫機能を亢進させるためのキットであって、抗PD-1アンタゴニスト抗体若しくはその抗原結合断片及び抗TIGITアンタゴニスト抗体若しくはその抗原結合断片を含む、キット。
【請求項52】
抗PD-1アンタゴニスト抗体又はその抗原結合断片と組合わせてがんに罹患している個体の免疫機能を亢進させるためのキットであって、抗TIGITアンタゴニスト抗体又はその抗原結合断片を含む、キット。
【請求項53】
抗PD-1アンタゴニスト抗体又はその抗原結合断片が、MDX-1106、MK-3475、CT-011、又はAMP-224である、請求項47から52の何れか一項に記載のキット。
【請求項54】
抗TIGITアンタゴニスト抗体又はその抗原結合断片が、PVR発現及び/又は活性を低減する又は阻害する、PVRとのTIGITの相互作用を阻害し及び/又はブロックする、PVRL2とのTIGITの相互作用を阻害し及び/又はブロックする、PVRL3とのTIGITの相互作用を阻害し及び/又はブロックする、PVRへのTIGITの結合によって媒介される細胞内シグナル伝達を阻害し及び/又はブロックする、PVRL2へのTIGITの結合によって媒介される細胞内シグナル伝達を阻害し及び/又はブロックする、及びPVRL3へのTIGITの結合によって媒介される細胞内シグナル伝達を阻害し及び/又はブロックする、請求項47から53の何れか一項に記載のキット。
【請求項55】
抗TIGITアンタゴニスト抗体を含む、請求項47から54の何れか一項に記載のキット。
【請求項56】
抗TIGITアンタゴニスト抗体が、IgG-1、IgG-2、IgG2A、IgG2B、IgG-3又はIgG-4サブタイプである、請求項55に記載のキット。
【請求項57】
抗PD-1アンタゴニスト抗体を含む、請求項47から56の何れか一項に記載のキット。
【請求項58】
抗PD-1アンタゴニスト抗体が、IgG-1、IgG-2、IgG2A、IgG2B、IgG-3又はIgG-4サブタイプである、請求項57に記載のキット。
【請求項59】
パッケージで、抗TIGITアンタゴニスト抗体若しくはその抗原結合断片、抗PD-1アンタゴニスト抗体若しくはその抗原結合断片、又は抗TIGITアンタゴニスト抗体若しくはその抗原結合断片及び抗PD-1アンタゴニスト抗体若しくはその抗原結合断片の両方と、該キットが個体におけるがんを治療し又はその進行を遅延させるためのものであるか、又はがんに罹患している個体の免疫機能を亢進させるためのものであることを示す添付文書を組み合わせることを含む、請求項47から58の何れか一項に記載のキットの作製方法。
【請求項60】
個体がヒト患者である、請求項1から46の何れか一項に記載の医薬。
【請求項61】
個体がヒト患者である、請求項47から58の何れか一項に記載のキット。
【請求項62】
個体がヒト患者である、請求項59に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願とのクロスリファレンス)
この出願は、その各々の全体を出典明示によりここに援用する、2013年7月16日出願の米国仮出願第61/846941号、2013年8月13日出願の米国仮出願第61/865582号、2014年3月10日出願の米国仮出願第61/950754号、2014年4月29日出願の米国仮出願第61/985884号、及び2014年5月12日出願の米国仮出願第61/992109号の優先権を主張する。
【0002】
(ASCIIテキストファイルでの配列表の提出)
ASCIIテキストファイルでの次の提出物の内容は、その全体を出典明示によりここに援用する:コンピュータに読み込み可能な形式(CRF)の配列表(ファイル名:146392025940SEQLISTING.TXT、記録された日付:2014年7月16日、サイズ:25KB)。
【背景技術】
【0003】
T細胞への2つの別個のシグナルの提供は、抗原提示細胞(APC)による休止Tリンパ球のリンパ球活性化に対して広く受け入れられているモデルである。Lafferty等, Aust. J. Biol. Med. ScL53:27-42(1975)。このモデルは、自己と非自己の識別と免疫寛容を更にもたらす。Bretscher等、Science 169:1042-1049(1970); Bretscher, PA, PNAS USA 96:185-190(1999);Jenkins等, J. Exp. Med. 165:302-319(1987)。一次シグナル、又は抗原特異的シグナルは、主要組織適合性複合体(MHC)と関連して提示される外来抗原ペプチドの認識後にT細胞受容体(TCR)を介して伝達される。二次又は同時刺激シグナルは、抗原提示細胞(APC)上に発現された同時刺激分子によってT細胞に送達され、T細胞を誘導してクローン性増殖、サイトカイン分泌及びエフェクター機能を促進させる。Lenschow等, Ann. Rev. Immunol. 14:233(1996)。同時刺激がない場合には、T細胞は、抗原刺激に対して不応性になり得、これが外来性又は内在性抗原の何れかに対する免疫寛容原性応答を生じる。
【0004】
2シグナルモデルにおいて、T細胞は、正の同時刺激と負の同時阻害の両方のシグナルを受け取る。そのような正及び負のシグナルの調節は、免疫寛容を維持し自己免疫を防止しながら、宿主の防御免疫応答を最大にするために重要である。負のシグナルはT細胞寛容の誘導に必要なように思われる一方、正のシグナルはT細胞活性化を促進する。
【0005】
同時刺激及び同時阻害シグナルの双方が抗原曝露T細胞にもたらされ、同時刺激シグナルと同時阻害シグナルの間の相互作用が免疫応答の大きさの制御に重要である。更に、T細胞に提供されるシグナルは、感染又は免疫誘発が排除され、悪化し、又は持続すると変化し、これらの変化は応答性T細胞に強力に影響を及ぼし、免疫応答を再形成する。
【0006】
同時刺激シグナルの操作は細胞ベースの免疫応答を増強するか又は終了させる手段を提供することが示されているため、同時刺激の機序は治療上興味がある。最近、T細胞の機能不全又はアネルギーが、阻害性受容体であるプログラムドデス1ポリペプチド(PD-1)の誘導された持続的な発現と同時に起こることが発見された。その結果、PD-1及びそのシグナルがPD-1との相互作用を通してシグナル伝達する他の分子、例えばプログラムドデスリガンド1(PD-L1)及びプログラムドデスリガンド2(PD-L2)の治療標的化が、強い関心領域である。
【0007】
PD-L1は多くのがんにおいて過剰発現しており、しばしば予後不良に関連している(Okazaki T等, Intern. Immun. 2007 19(7):813)(Thompson RH等, Cancer Res 2006, 66(7):3381)。興味深いことに、Tリンパ球に浸潤する腫瘍の大部分は、正常組織のTリンパ球及び末梢血Tリンパ球とは異なり、主にPD-1を発現するが、これは、腫瘍反応性T細胞上のPD-1のアップレギュレーションが抗腫瘍免疫応答の不良に寄与しうることを示している(Blood 2009 114(8):1537)。これは、PD-1発現T細胞と相互作用するPD-L1発現腫瘍細胞によって媒介されるPD-L1シグナル伝達の利用によりT細胞活性化の減衰と免疫監視の回避がもたらされるためであろう(Sharpe等, Nat Rev 2002)(Keir ME等, 2008 Annu. Rev. Immunol. 26:677)。従って、PD-L1/PD-1相互作用の阻害が、腫瘍のCD8+T細胞媒介性殺傷を増強しうる。
【0008】
その直接のリガンド(例えば、PD-L1、PD-L2)を介してのPD-1軸シグナル伝達の阻害は、がんの治療のためのT細胞免疫(例えば、腫瘍免疫)を増強する手段として提案されている。更に、T細胞免疫への同様の増強が、結合パートナーB7-1へのPD-L1の結合を阻害することによって、観察されている。更に、腫瘍細胞において調節解除される他のシグナル伝達経路とPD-1シグナル伝達の阻害を組合せることにより、更に治療効果を高めうる。様々ながんの治療、安定化、予防、及び/又は発症遅延のための最適な治療法に対する必要性が残ったままである。
【0009】
ここに開示される全ての文献、刊行物、及び特許出願は、その全体が出典明示によりここに援用される。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、PD-1軸結合アンタゴニストとTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤とを含む併用治療を記述する。
【0011】
ここに提供されるものは、個体におけるがんを治療し又はその進行を遅延させる方法において、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストとTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤とを個体に投与することを含む方法である。
【0012】
ここに提供されるものはまた、個体におけるがんの再発又はがんの進行を減少させ又は阻害する方法において、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストとTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤とを個体に投与することを含む方法である。
【0013】
ここに提供されるものはまた、個体における免疫関連疾患を治療し又はその進行を遅延させる方法において、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストとTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤とを個体に投与することを含む方法である。
【0014】
ここに提供されるものはまた、個体における免疫関連疾患の進行を減少させ又は阻害する方法において、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストとTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤とを個体に投与することを含む方法である。
【0015】
幾つかの実施態様では、免疫関連疾患はT細胞機能不全疾患に関連している。幾つかの実施態様では、T細胞機能不全疾患は、抗原刺激に対する応答の減少によって特徴付けられる。幾つかの実施態様では、T細胞機能不全疾患は、T細胞アネルギー又はサイトカインを分泌し、増殖し又は細胞溶解活性を果たす能力の減少によって特徴付けられる。幾つかの実施態様では、T細胞機能不全疾患はT細胞消耗によって特徴付けられる。幾つかの実施態様では、T細胞はCD4+及びCD8+T細胞である。幾つかの実施態様では、免疫関連疾患は、未消散(unresolved)急性感染症、慢性感染症及び腫瘍免疫からなる群から選択される。
【0016】
ここに提供されるものはまた、個体における免疫応答又は機能を増加させ、亢進し又は刺激する方法において、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストとTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤とを個体に投与することを含む方法である。
【0017】
ここに提供されるものはまた、個体におけるがんを治療し又はその進行を遅延させる方法において、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストとCD226発現及び/又は活性を調節する薬剤とを個体に投与することを含む方法である。
【0018】
ここに提供されるものはまた、個体におけるがんの再発又はがんの進行を減少させ又は阻害する方法において、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストとCD226発現及び/又は活性を調節する薬剤とを個体に投与することを含む方法である。
【0019】
ここに提供されるものはまた、個体における免疫関連疾患を治療し又はその進行を遅延させる方法において、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストとCD226発現及び/又は活性を調節する薬剤とを個体に投与することを含む方法である。
【0020】
ここに提供されるものはまた、個体における免疫関連疾患の進行を減少させ又は阻害する方法において、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストとCD226発現及び/又は活性を調節する薬剤とを個体に投与することを含む方法である。
【0021】
幾つかの実施態様では、免疫関連疾患はT細胞機能不全疾患に関連している。幾つかの実施態様では、T細胞機能不全疾患は、抗原刺激に対する応答の減少によって特徴付けられる。幾つかの実施態様では、T細胞機能不全疾患は、T細胞アネルギー、又はサイトカインを分泌し、増殖し又は細胞溶解活性を果たす能力の減少によって特徴付けられる。幾つかの実施態様では、T細胞機能不全疾患はT細胞消耗によって特徴付けられる。幾つかの実施態様では、T細胞はCD4+及びCD8+T細胞である。幾つかの実施態様では、免疫関連疾患は、未消散急性感染症、慢性感染症及び腫瘍免疫からなる群から選択される。
【0022】
ここに提供されるものはまた、個体における免疫応答又は機能を増加させ、亢進し又は刺激する方法において、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストとCD226発現及び/又は活性を調節する薬剤とを個体に投与することを含む方法である。
【0023】
幾つかの実施態様では、CD226発現及び/又は活性を調節する薬剤は、CD226発現及び/又は活性を増加させ及び/又は刺激することができる。
【0024】
幾つかの実施態様では、CD226発現及び/又は活性を調節する薬剤は、TIGITとのCD226の相互作用を阻害し及び/又はブロックする薬剤、TIGIT発現及び/又は活性のアンタゴニスト、PVR発現及び/又は活性のアンタゴニスト、PVRとのTIGITの相互作用を阻害し及び/又はブロックする薬剤、PVRへのTIGITの結合によって媒介される細胞内シグナル伝達を阻害し及び/又はブロックする薬剤から選択される。
【0025】
幾つかの実施態様では、TIGITとのCD226の相互作用を阻害し及び/又はブロックする薬剤は、小分子阻害剤、阻害抗体又はその抗原結合断片、アプタマー、阻害核酸、及び阻害ポリペプチドである。幾つかの実施態様では、TIGITとのCD226の相互作用を阻害し及び/又はブロックする薬剤は、抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片である。
【0026】
幾つかの実施態様では、TIGIT発現及び/又は活性のアンタゴニストは、小分子阻害剤、阻害抗体又はその抗原結合断片、アプタマー、阻害核酸、及び阻害ポリペプチドである。幾つかの実施態様では、TIGIT発現及び/又は活性のアンタゴニストは、抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片である。
【0027】
幾つかの実施態様では、PVR発現及び/又は活性のアンタゴニストは、小分子阻害剤、阻害抗体又はその抗原結合断片、アプタマー、阻害核酸、及び阻害ポリペプチドである。
【0028】
幾つかの実施態様では、PVRとのTIGITの相互作用を阻害し及び/又はブロックする薬剤は、小分子阻害剤、阻害抗体又はその抗原結合断片、アプタマー、阻害核酸、及び阻害ポリペプチドである。
【0029】
幾つかの実施態様では、PVRへのTIGITの結合によって媒介される細胞内シグナル伝達を阻害し及び/又はブロックする薬剤は、小分子阻害剤、阻害抗体又はその抗原結合断片、アプタマー、阻害核酸、及び阻害ポリペプチドである。
【0030】
本発明はまたTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤と、一又は複数の更なる免疫同時阻害性受容体を減少させ又は阻害する薬剤とを含む併用治療を記載する。
【0031】
ここに提供されるものは、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する有効量の薬剤と、一又は複数の更なる免疫同時阻害性受容体を減少させ又は阻害する薬剤とを個体に投与することを含む、個体における免疫応答又は機能を増加させ、亢進し又は刺激する方法である。
【0032】
幾つかの実施態様では、一又は複数の更なる免疫同時阻害性受容体は、PD-1、CTLA-4、LAG3、TIM3、BTLA及びVISTAからなる群から選択される。幾つかの実施態様では、一又は複数の更なる免疫同時阻害性受容体は、PD-1、CTLA-4、LAG3及びTIM3の群から選択される。
【0033】
本発明はまたTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤と、一又は複数の更なる免疫同時刺激性受容体を増加させ又は活性化する薬剤とを含む併用治療を記載する。
【0034】
ここに提供されるものは、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する有効量の薬剤と、一又は複数の更なる免疫同時刺激性受容体を増加させ又は活性化する薬剤とを個体に投与することを含む、個体における免疫応答又は機能を増加させ、亢進し又は刺激する方法である。
【0035】
幾つかの実施態様では、一又は複数の更なる免疫同時刺激性受容体は、CD226、OX-40、CD28、CD27、CD137、HVEM、及びGITRの群から選択される。幾つかの実施態様では、一又は複数の更なる免疫同時刺激性受容体は、CD226、OX-40、CD27、CD137、HVEM及びGITRの群から選択される。幾つかの実施態様では、一又は複数の更なる免疫同時刺激性受容体は、OX-40及びCD27からなる群から選択される。
【0036】
幾つかの実施態様では、上記方法の何れかは少なくとも1種の化学療法剤を投与することを更に含む。
【0037】
幾つかの実施態様では、上記方法の何れかにおける個体はがんに罹患している。幾つかの実施態様では、上記方法の何れかにおける個体はヒトである。
【0038】
幾つかの実施態様では、個体のCD4及び/又はCD8 T細胞は、組合せの投与前に対して、増大し又は亢進したプライミング、活性化、増殖、サイトカイン放出及び/又は細胞溶解活性を有する。
【0039】
幾つかの実施態様では、CD4及び/又はCD8 T細胞の数は、組合せの投与前に対して増加している。幾つかの実施態様では、活性化されたCD4及び/又はCD8 T細胞の数は、組合せの投与前に対して増加している。幾つかの実施態様では、活性化されたCD4及び/又はCD8 T細胞は、γ-IFN産生CD4及び/又は組合せの投与前に対して亢進した細胞溶解活性によって特徴付けられる。幾つかの実施態様では、CD4及び/又はCD8 T細胞は、IFN-γ、TNF-α及びインターロイキンからなる群から選択されるサイトカインの放出増加を示す。
【0040】
幾つかの実施態様では、CD4及び/又はCD8 T細胞は、エフェクターメモリーT細胞である。幾つかの実施態様では、CD4及び/又はCD8エフェクターメモリーT細胞は、γ-IFN産生CD4及び/又はCD8 T細胞及び/又は亢進した細胞溶解活性によって特徴付けられる。幾つかの実施態様では、CD4及び/又はCD8エフェクターメモリーT細胞は、CD44highCD62Llowの発現を示すことによって特徴付けられる。
【0041】
幾つかの実施態様では、上記方法の何れかにおけるがんは、増加したレベルのT細胞浸潤を有している。
【0042】
幾つかの実施態様では、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤は、TIGIT発現及び/又は活性のアンタゴニスト、PVR発現及び/又は活性のアンタゴニスト、及びPVRへのTIGITの結合によって媒介される相互作用及び/又は細胞内シグナル伝達を阻害する薬剤からなる群から選択される。
【0043】
幾つかの実施態様では、TIGIT発現及び/又は活性のアンタゴニストは、小分子阻害剤、阻害抗体又はその抗原結合断片、アプタマー、阻害核酸、及び阻害ポリペプチドからなる群から選択される。
【0044】
幾つかの実施態様では、PVR発現及び/又は活性のアンタゴニストは、小分子阻害剤、阻害抗体又はその抗原結合断片、アプタマー、阻害核酸、及び阻害ポリペプチドからなる群から選択される。
【0045】
幾つかの実施態様では、PVRへのTIGITの結合によって媒介される細胞内シグナル伝達を阻害する薬剤は、小分子阻害剤、阻害抗体又はその抗原結合断片、アプタマー、阻害核酸、及び阻害ポリペプチドからなる群から選択される。
【0046】
幾つかの実施態様では、TIGIT発現及び/又は活性のアンタゴニストは、抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片である。
【0047】
幾つかの実施態様では、抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片は、アミノ酸配列:KSSQSLYYSGVKENLLA(配列番号:1)、ASIRFT(配列番号:2)、QQGINNPLT(配列番号:3)、GFTFSSFTMH(配列番号:4)、FIRSGSGIVFYADAVRG(配列番号:5)、及びRPLGHNTFDS(配列番号:6)あるいはRSSQSLVNSYGNTFLS(配列番号:7)、GISNRFS(配列番号:8)、LQGTHQPPT(配列番号:9)、GYSFTGHLMN(配列番号:10)、LIIPYNGGTSYNQKFKG(配列番号:11)、及びGLRGFYAMDY(配列番号:12)から選択されるアミノ酸配列を含む少なくとも一つのHVRを含む。
【0048】
幾つかの実施態様では、抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片は、
DIVMTQSPSSLAVSPGEKVTMTCKSSQSLYYSGVKENLLAWYQQKPGQSPKLLIYYASIRFTGVPDRFTGSGSGTDYTLTITSVQAEDMGQYFCQQGINNPLTFGDGTKLEIKR(配列番号:13)又は
DVVLTQTPLSLSVSFGDQVSISCRSSQSLVNSYGNTFLSWYLHKPGQSPQLLIFGISNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISTIKPEDLGMYYCLQGTHQPPTFGPGTKLEVK(配列番号:14)
に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0049】
幾つかの実施態様では、抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片は、
EVQLVESGGGLTQPGKSLKLSCEASGFTFSSFTMHWVRQSPGKGLEWVAFIRSGSGIVFYADAVRGRFTISRDNAKNLLFLQMNDLKSEDTAMYYCARRPLGHNTFDSWGQGTLVTVSS(配列番号:15)又は
EVQLQQSGPELVKPGTSMKISCKASGYSFTGHLMNWVKQSHGKNLEWIGLIIPYNGGTSYNQKFKGKATLTVDKSSSTAYMELLSLTSDDSAVYFCSRGLRGFYAMDYWGQGTSVTVSS(配列番号:16)
に記載のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0050】
幾つかの実施態様では、抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片は、
DIVMTQSPSSLAVSPGEKVTMTCKSSQSLYYSGVKENLLAWYQQKPGQSPKLLIYYASIRFTGVPDRFTGSGSGTDYTLTITSVQAEDMGQYFCQQGINNPLTFGDGTKLEIKR(配列番号:13)又は
DVVLTQTPLSLSVSFGDQVSISCRSSQSLVNSYGNTFLSWYLHKPGQSPQLLIFGISNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISTIKPEDLGMYYCLQGTHQPPTFGPGTKLEVK(配列番号:14)
に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖を含み、抗体重鎖は、
EVQLVESGGGLTQPGKSLKLSCEASGFTFSSFTMHWVRQSPGKGLEWVAFIRSGSGIVFYADAVRGRFTISRDNAKNLLFLQMNDLKSEDTAMYYCARRPLGHNTFDSWGQGTLVTVSS(配列番号:15)又は
EVQLQQSGPELVKPGTSMKISCKASGYSFTGHLMNWVKQSHGKNLEWIGLIIPYNGGTSYNQKFKGKATLTVDKSSSTAYMELLSLTSDDSAVYFCSRGLRGFYAMDYWGQGTSVTVSS(配列番号:16)
に記載のアミノ酸配列を含む。
【0051】
幾つかの実施態様では、抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片において、抗体は、ヒト化抗体、キメラ抗体、二重特異性抗体、ヘテロコンジュゲート抗体、及びイムノトキシンから選択される。
【0052】
幾つかの実施態様では、抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片は、KSSQSLYYSGVKENLLA(配列番号:1)、ASIRFT(配列番号:2)、QQGINNPLT(配列番号:3)、GFTFSSFTMH(配列番号:4)、FIRSGSGIVFYADAVRG(配列番号:5)、及びRPLGHNTFDS(配列番号:6)あるいはRSSQSLVNSYGNTFLS(配列番号:7)、GISNRFS(配列番号:8)、LQGTHQPPT(配列番号:9)、GYSFTGHLMN(配列番号:10)、LIIPYNGGTSYNQKFKG(配列番号:11)、及びGLRGFYAMDY(配列番号:12)の何れかに記載のHVRと少なくとも90%同一である少なくとも一つのHVRを含む。
【0053】
幾つかの実施態様では、抗TIGIT抗体又はその断片は、
DIVMTQSPSSLAVSPGEKVTMTCKSSQSLYYSGVKENLLAWYQQKPGQSPKLLIYYASIRFTGVPDRFTGSGSGTDYTLTITSVQAEDMGQYFCQQGINNPLTFGDGTKLEIKR(配列番号:13)又は
DVVLTQTPLSLSVSFGDQVSISCRSSQSLVNSYGNTFLSWYLHKPGQSPQLLIFGISNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISTIKPEDLGMYYCLQGTHQPPTFGPGTKLEVK(配列番号:14)、あるいは
EVQLVESGGGLTQPGKSLKLSCEASGFTFSSFTMHWVRQSPGKGLEWVAFIRSGSGIVFYADAVRGRFTISRDNAKNLLFLQMNDLKSEDTAMYYCARRPLGHNTFDSWGQGTLVTVSS(配列番号:15)又は
EVQLQQSGPELVKPGTSMKISCKASGYSFTGHLMNWVKQSHGKNLEWIGLIIPYNGGTSYNQKFKGKATLTVDKSSSTAYMELLSLTSDDSAVYFCSRGLRGFYAMDYWGQGTSVTVSS(配列番号:16)
にそれぞれ記載のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖及び/又は重鎖を含む。
【0054】
幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストは、PD-1結合アンタゴニスト、PD-L1結合アンタゴニスト及びPD-L2結合アンタゴニストからなる群から選択される。
【0055】
幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストはPD-1結合アンタゴニストである。幾つかの実施態様では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のそのリガンド結合パートナーへの結合を阻害する。幾つかの実施態様では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のPD-L1への結合を阻害する。幾つかの実施態様では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のPD-L2への結合を阻害する。幾つかの実施態様では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のPD-L1とPD-L2双方への結合を阻害する。幾つかの実施態様では、PD-1結合アンタゴニストは抗体である。幾つかの実施態様では、PD-1結合アンタゴニストはMDX-1106(ニボルマブ)である。幾つかの実施態様では、PD-1結合アンタゴニストはMK-3475(ランブロリズマブ)である。幾つかの実施態様では、PD-1結合アンタゴニストはCT-011(ピディリズマブ)である。幾つかの実施態様では、PD-1結合アンタゴニストはAMP-224である。
【0056】
幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストはPD-L1結合アンタゴニストである。幾つかの実施態様では、PD-L1結合アンタゴニストはPD-L1のPD-1への結合を阻害する。幾つかの実施態様では、PD-L1結合アンタゴニストはPD-L1のB7-1への結合を阻害する。幾つかの実施態様では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1のPD-1とB7-1双方への結合を阻害する。幾つかの実施態様では、PD-L1結合アンタゴニストは抗体である。
【0057】
幾つかの実施態様では、PD-L1結合アンタゴニストは、YW243.55.S70、MPDL3280A、MDX-1105、及びMEDI4736からなる群から選択される。
【0058】
幾つかの実施態様では、抗PD-L1抗体は、GFTFSDSWIH(配列番号:17)のHVR-H1配列、AWISPYGGSTYYADSVKG(配列番号:18)のHVR-H2配列、及びRHWPGGFDY(配列番号:19)のHVR-H3配列を含む重鎖と;RASQDVSTAVA(配列番号:20)のHVR-L1配列、SASFLYS(配列番号:21)のHVR-L2配列、及びQQYLYHPAT(配列番号:22)のHVR-L3配列を含む軽鎖とを含む。
【0059】
幾つかの実施態様では、抗PD-L1抗体は、
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSA(配列番号:23)のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKR(配列番号:24)のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0060】
幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストはPD-L2結合アンタゴニストである。幾つかの実施態様では、PD-L2結合アンタゴニストは抗体である。幾つかの実施態様では、PD-L2結合アンタゴニストはイムノアドヘシンである。
【0061】
幾つかの実施態様では、治療されるがんは、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、腎細胞がん、結腸直腸がん、卵巣がん、乳がん、膵がん、胃がん、膀胱がん、食道がん、中皮腫、メラノーマ、頭頸部がん、甲状腺がん、肉腫、前立腺がん、神経膠芽腫、子宮頸がん、胸腺がん、白血病、リンパ腫、骨髄腫、菌状息肉症、メルケル細胞がん、及び他の血液悪性腫瘍からなる群から選択される。
【0062】
幾つかの実施態様では、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤は連続的に投与される。幾つかの実施態様では、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤は間欠的に投与される。幾つかの実施態様では、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤は、PD-1軸結合アンタゴニストの前に投与される。幾つかの実施態様では、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤は、PD-1軸結合アンタゴニストと同時に投与される。幾つかの実施態様では、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤は、PD-1軸結合アンタゴニストの後に投与される。
【0063】
ここでまた提供されるものは、PD-1軸結合アンタゴニストと、個体におけるがんを治療し又はその進行を遅延させるためにTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤との組合せでPD-1軸結合アンタゴニストを使用するための説明書を含むパッケージ挿入物とを含むキットである。
【0064】
ここでまた提供されるものは、PD-1軸結合アンタゴニストと、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤と、個体におけるがんを治療し又はその進行を遅延させるためにPD-1軸結合アンタゴニストとTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤とを使用するための説明書を含むパッケージ挿入物とを含むキットである。
【0065】
ここでまた提供されるものは、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤と、個体におけるがんを治療し又はその進行を遅延させるためにPD-1軸結合アンタゴニストとの組合せでTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤を使用するための説明書を含むパッケージ挿入物とを含むキットである。
【0066】
ここでまた提供されるものは、PD-1軸結合アンタゴニストと、がんに罹患している個体の免疫機能を亢進させるためにTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤との組合せでPD-1軸結合アンタゴニストを使用するための説明書を含むパッケージ挿入物とを含むキットである。
【0067】
ここでまた提供されるものは、PD-1軸結合アンタゴニストと、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤と、がんに罹患している個体の免疫機能を亢進させるためにPD-1軸結合アンタゴニストとTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤とを使用するための説明書を含むパッケージ挿入物とを含むキットである。
【0068】
ここでまた提供されるものは、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤と、がんに罹患している個体の免疫機能を亢進させるためにPD-1軸結合アンタゴニストとの組合せでTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤を使用するための説明書を含むパッケージ挿入物とを含むキットである。
【0069】
ここでまた提供されるものは、PD-1軸結合アンタゴニストと、個体におけるがんを治療し又はその進行を遅延させるためにCD226発現及び/又は活性を調節する薬剤との組合せでPD-1軸結合アンタゴニストを使用するための説明書を含むパッケージ挿入物とを含むキットである。
【0070】
ここでまた提供されるものは、PD-1軸結合アンタゴニストと、CD226発現及び/又は活性を調節する薬剤と、個体におけるがんを治療し又はその進行を遅延させるためにPD-1軸結合アンタゴニストとの組合せでCD226発現及び/又は活性を調節する薬剤を使用するための説明書を含むパッケージ挿入物とを含むキットである。
【0071】
ここでまた提供されるものは、CD226発現及び/又は活性を調節する薬剤と、個体におけるがんを治療し又はその進行を遅延させるためにPD-1軸結合アンタゴニストとの組合せでCD226発現及び/又は活性を調節する薬剤を使用するための説明書を含むパッケージ挿入物とを含むキットである。
【0072】
ここでまた提供されるものは、PD-1軸結合アンタゴニストと、がんに罹患している個体の免疫機能を亢進させるためにCD226発現及び/又は活性を調節する薬剤との組合せでPD-1軸結合アンタゴニストを使用するための説明書を含むパッケージ挿入物とを含むキットである。
【0073】
ここでまた提供されるものは、PD-1軸結合アンタゴニストと、CD226発現及び/又は活性を調節する薬剤と、がんに罹患している個体の免疫機能を亢進させるためにPD-1軸結合アンタゴニストとCD226発現及び/又は活性を調節する薬剤を使用するための説明書を含むパッケージ挿入物とを含むキットである。
【0074】
ここでまた提供されるものは、CD226発現及び/又は活性を調節する薬剤と、がんに罹患している個体の免疫機能を亢進させるためにPD-1軸結合アンタゴニストとの組合せでCD226発現及び/又は活性を調節する薬剤を使用するための説明書を含むパッケージ挿入物とを含むキットである。
【0075】
幾つかの実施態様では、キットを構成するPD-1軸結合アンタゴニストは抗PD-L1抗体である。幾つかの実施態様では、キットを構成するPD-1軸結合アンタゴニストは抗PD-1抗体である。幾つかの実施態様では、キットを構成するTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤は、TIGIT発現及び/又は活性のアンタゴニスト、PVR発現及び/又は活性のアンタゴニスト、PVRへのTIGITの結合によって媒介される相互作用及び/又は細胞内シグナル伝達を阻害する薬剤からなる群から選択される。幾つかの実施態様では、キットを構成するTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤は、抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片である。
【0076】
幾つかの実施態様では、キットは、CD226発現及び/又は活性を増加させ又は刺激することができる、CD226発現及び/又は活性を調節する薬剤を含む。幾つかの実施態様では、CD226発現及び/又は活性を調節するキットを構成する薬剤は、CD226のTIGITとの相互作用を阻害し及び/又はブロックする薬剤、TIGIT発現及び/又は活性のアンタゴニスト、PVR発現及び/又は活性のアンタゴニスト、TIGITのPVRとの相互作用を阻害し及び/又はブロックする薬剤、TIGITのPVRへの結合によって媒介される細胞内シグナル伝達を阻害し及び/又はブロックする薬剤から選択される。幾つかの実施態様では、CD226のTIGITとの相互作用を阻害し及び/又はブロックするキットを構成する薬剤及び/又はTIGIT発現及び/又は活性のアンタゴニストは、抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片である。
【0077】
所定の態様では、本開示は、個体におけるがんを治療し又はその進行を遅延させる方法において、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストと、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤とを個体に投与することを含む方法を提供する。他の態様では、本開示は、個体におけるがんを治療し又はその進行を遅延させるための医薬の製造における有効量のPD-1軸結合アンタゴニストの使用を提供し、ここで、PD-1軸結合剤がTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤と組み合わせて使用される。他の態様では、本開示は、個体におけるがんを治療し又はその進行を遅延させるための医薬の製造におけるTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する有効量の薬剤の使用を提供し、ここで、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤はPD-1軸結合アンタゴニストとの組合せで使用される。他の態様では、本開示は、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤と組み合わせてがんを治療し又はその進行を遅延させるのに使用するためのPD-1軸結合アンタゴニストを含有する薬学的組成物を提供する。他の態様では、本開示は、PD-1軸結合アンタゴニストと組み合わせてがんを治療し又はその進行を遅延させるのに使用するためのTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤を含有する薬学的組成物を提供する。
【0078】
他の態様では、本開示は、個体におけるがんの再発又はがんの進行を減少させ又は阻害する方法において、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストと、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤とを個体に投与することを含む方法を提供する。他の態様では、本開示は、個体におけるがんの再発又はがんの進行を減少させ又は阻害するための医薬の製造における有効量のPD-1軸結合アンタゴニストの使用を提供し、ここで、PD-1軸結合剤がTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤と組み合わせて使用される。他の態様では、本開示は、個体におけるがんの再発又はがんの進行を減少させ又は阻害するための医薬の製造におけるTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する有効量の薬剤の使用を提供し、ここで、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤はPD-1軸結合アンタゴニストとの組合せで使用される。
他の態様では、本開示は、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤と組み合わせてがんの再発又はがんの進行を減少させ又は阻害するのに使用するためのPD-1軸結合アンタゴニストを含有する薬学的組成物を提供する。他の態様では、本開示は、PD-1軸結合アンタゴニストと組み合わせてがんの再発又はがんの進行を減少させ又は阻害するのに使用するためのTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤を含有する薬学的組成物を提供する。
【0079】
他の態様では、本開示は、個体における免疫関連疾患を治療し又はその進行を遅延させる方法において、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストと、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤とを個体に投与することを含む方法を提供する。他の態様では、本開示は、個体における免疫関連疾患を治療し又はその進行を遅延させるための医薬の製造における有効量のPD-1軸結合アンタゴニストの使用を提供し、ここで、PD-1軸結合剤がTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤と組み合わせて使用される。他の態様では、本開示は、個体における免疫関連疾患を治療し又はその進行を遅延させるための医薬の製造におけるTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する有効量の薬剤の使用を提供し、ここで、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤はPD-1軸結合アンタゴニストとの組合せで使用される。他の態様では、本開示は、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤と組み合わせて免疫関連疾患を治療し又はその進行を遅延させるのに使用するためのPD-1軸結合アンタゴニストを含有する薬学的組成物を提供する。他の態様では、本開示は、PD-1軸結合アンタゴニストと組み合わせて免疫関連疾患を治療し又はその進行を遅延させるのに使用するためのTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤を含有する薬学的組成物を提供する。
【0080】
他の態様では、本開示は、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストと、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤とを含む組合せを提供する。
【0081】
他の態様では、本開示は、個体における免疫関連疾患の進行を減少させ又は阻害する方法において、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストと、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤とを個体に投与することを含む方法を提供する。他の態様では、本開示は、個体における免疫関連疾患の進行を減少させ又は阻害するための医薬の製造における有効量のPD-1軸結合アンタゴニストの使用を提供し、ここで、PD-1軸結合剤がTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤と組み合わせて使用される。他の態様では、本開示は、個体における免疫関連疾患の進行を減少させ又は阻害するための医薬の製造におけるTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する有効量の薬剤の使用を提供し、ここで、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤はPD-1軸結合アンタゴニストとの組合せで使用される。他の態様では、本開示は、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤と組み合わせて免疫関連疾患の進行を減少させ又は阻害するのに使用するためのPD-1軸結合アンタゴニストを含有する薬学的組成物を提供する。他の態様では、本開示は、PD-1軸結合アンタゴニストと組み合わせて免疫関連疾患の進行を減少させ又は阻害するるのに使用するためのTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤を含有する薬学的組成物を提供する。
【0082】
先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、免疫関連疾患はT細胞機能不全疾患に関連している。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、免疫関連疾患はウイルス感染である。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、ウイルス感染は慢性ウイルス感染である。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、T細胞機能不全疾患は、抗原刺激に対する応答の減少によって特徴付けられる。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、T細胞機能不全疾患は、T細胞アネルギー又はサイトカインを分泌し、増殖し又は細胞溶解活性を果たす能力の減少によって特徴付けられる。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、T細胞機能不全疾患はT細胞消耗によって特徴付けられる。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、T細胞はCD4+及びCD8+T細胞である。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、免疫関連疾患は、未消散急性感染症、慢性感染症、及び腫瘍免疫からなる群から選択される。
【0083】
他の態様では、本開示は、個体における免疫応答又は機能を増加させ、亢進し又は刺激する方法において、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストと、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤とを個体に投与することを含む方法を提供する。他の態様では、本開示は、個体における免疫応答又は機能を亢進し又は刺激するための医薬の製造における有効量のPD-1軸結合アンタゴニストの使用を提供し、ここで、PD-1軸結合剤がTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤と組み合わせて使用される。他の態様では、本開示は、個体における免疫応答又は機能を亢進し又は刺激するための医薬の製造におけるTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する有効量の薬剤の使用を提供し、ここで、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤はPD-1軸結合アンタゴニストとの組合せで使用される。他の態様では、本開示は、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤と組み合わせて免疫応答又は機能を亢進し又は刺激するのに使用するためのPD-1軸結合アンタゴニストを含有する薬学的組成物を提供する。他の態様では、本開示は、PD-1軸結合アンタゴニストと組み合わせて免疫応答又は機能を亢進し又は刺激するためのに使用するためのTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤を含有する薬学的組成物を提供する。他の態様では、本開示は、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストとTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤とを含む組合せを提供する。
【0084】
他の態様では、本開示は、個体におけるがんを治療し又はその進行を遅延させる方法において、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストと、CD226発現及び/又は活性を調節する薬剤とを個体に投与することを含む方法を提供する。他の態様では、本開示は、個体におけるがんを治療し又はその進行を遅延させるための医薬の製造における有効量のPD-1軸結合アンタゴニストの使用を提供し、ここで、PD-1軸結合剤がCD226発現及び/又は活性を調節する薬剤と組み合わせて使用される。他の態様では、本開示は、個体におけるがんを治療し又はその進行を遅延させるための医薬の製造におけるCD226発現及び/又は活性を調節する有効量の薬剤の使用を提供し、ここで、CD226発現及び/又は活性を調節する薬剤はPD-1軸結合アンタゴニストとの組合せで使用される。他の態様では、本開示は、CD226発現及び/又は活性を調節する薬剤と組み合わせて個体におけるがんを治療し又はその進行を遅延させるのに使用するためのPD-1軸結合アンタゴニストを含有する薬学的組成物を提供する。他の態様では、本開示は、PD-1軸結合アンタゴニストと組み合わせて個体におけるがんを治療し又はその進行を遅延させるためのに使用するためのCD226発現及び/又は活性を調節する薬剤を含有する薬学的組成物を提供する。
【0085】
他の態様では、本開示は、個体におけるがんの再発又はがんの進行を減少させ又は阻害する方法において、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストと、CD226発現及び/又は活性を調節する薬剤とを個体に投与することを含む方法を提供する。他の態様では、本開示は、個体におけるがんの再発又はがんの進行を減少させ又は阻害するための医薬の製造における有効量のPD-1軸結合アンタゴニストの使用を提供し、ここで、PD-1軸結合剤がCD226発現及び/又は活性を調節する薬剤と組み合わせて使用される。他の態様では、本開示は、個体におけるがんの再発又はがんの進行を減少させ又は阻害するための医薬の製造におけるCD226発現及び/又は活性を調節する有効量の薬剤の使用を提供し、ここで、CD226発現及び/又は活性を調節する薬剤はPD-1軸結合アンタゴニストとの組合せで使用される。他の態様では、本開示は、CD226発現及び/又は活性を調節する薬剤と組み合わせてがんの再発又はがんの進行を減少させ又は阻害するのに使用するためのPD-1軸結合アンタゴニストを含有する薬学的組成物を提供する。
他の態様では、本開示は、PD-1軸結合アンタゴニストと組み合わせてがんの再発又はがんの進行を減少させ又は阻害するためのに使用するためのCD226発現及び/又は活性を調節する薬剤を含有する薬学的組成物を提供する。
【0086】
他の態様では、本開示は、個体における免疫関連疾患を治療し又はその進行を遅延させる方法において、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストと、CD226発現及び/又は活性を調節する薬剤とを個体に投与することを含む方法を提供する。他の態様では、本開示は、個体における免疫関連疾患を治療し又はその進行を遅延させるための医薬の製造における有効量のPD-1軸結合アンタゴニストの使用を提供し、ここで、PD-1軸結合剤がCD226発現及び/又は活性を調節する薬剤と組み合わせて使用される。他の態様では、本開示は、個体における免疫関連疾患を治療し又はその進行を遅延させるための医薬の製造におけるCD226発現及び/又は活性を調節する有効量の薬剤の使用を提供し、ここで、CD226発現及び/又は活性を調節する薬剤はPD-1軸結合アンタゴニストとの組合せで使用される。他の態様では、本開示は、CD226発現及び/又は活性を調節する薬剤と組み合わせて個体における免疫関連疾患を治療し又はその進行を遅延させるのに使用するためのPD-1軸結合アンタゴニストを含有する薬学的組成物を提供する。他の態様では、本開示は、PD-1軸結合アンタゴニストと組み合わせて個体における免疫関連疾患を治療し又はその進行を遅延させるのに使用するためのCD226発現及び/又は活性を調節する薬剤を含有する薬学的組成物を提供する。
【0087】
他の態様では、本開示は、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストと、CD226発現及び/又は活性を調節する薬剤とを含む組合せを提供する。
【0088】
他の態様では、本開示は、個体における免疫関連疾患の進行を減少させ又は阻害する方法において、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストと、CD226発現及び/又は活性を調節する薬剤とを個体に投与することを含む方法を提供する。他の態様では、本開示は、個体における免疫関連疾患の進行を減少させ又は阻害するための医薬の製造における有効量のPD-1軸結合アンタゴニストの使用を提供し、ここで、PD-1軸結合剤はCD226発現及び/又は活性を調節する薬剤と組み合わせて使用される。他の態様では、本開示は、個体における免疫関連疾患の進行を減少させ又は阻害するための医薬の製造におけるCD226発現及び/又は活性を調節する有効量の薬剤の使用を提供し、ここで、CD226発現及び/又は活性を調節する薬剤はPD-1軸結合アンタゴニストとの組合せで使用される。他の態様では、本開示は、CD226発現及び/又は活性を調節する薬剤と組み合わせて免疫関連疾患の進行を減少させ又は阻害するのに使用するためのPD-1軸結合アンタゴニストを含有する薬学的組成物を提供する。他の態様では、本開示は、PD-1軸結合アンタゴニストと組み合わせて免疫関連疾患の進行を減少させ又は阻害するのに使用するためのCD226発現及び/又は活性を調節する薬剤を含有する薬学的組成物を提供する。
【0089】
先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、免疫関連疾患はT細胞機能不全疾患に関連している。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、免疫関連疾患はウイルス感染である。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、ウイルス感染は慢性ウイルス感染である。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、T細胞機能不全疾患は、抗原刺激に対する応答の減少によって特徴付けられる。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、T細胞機能不全疾患は、T細胞アネルギー又はサイトカインを分泌し、増殖し又は細胞溶解活性を果たす能力の減少によって特徴付けられる。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、T細胞機能不全疾患はT細胞消耗によって特徴付けられる。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、T細胞はCD4+及びCD8+T細胞である。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、免疫関連疾患は、未消散急性感染症、慢性感染症、及び腫瘍免疫からなる群から選択される。
【0090】
他の態様では、本開示は、個体における免疫応答又は機能を増加させ、亢進し又は刺激する方法において、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストと、CD226発現及び/又は活性を調節する薬剤とを個体に投与することを含む方法を提供する。他の態様では、本開示は、個体における免疫応答又は機能を亢進し又は刺激するための医薬の製造における有効量のPD-1軸結合アンタゴニストの使用を提供し、ここで、PD-1軸結合剤はCD226発現及び/又は活性を調節する薬剤と組み合わせて使用される。他の態様では、本開示は、個体における免疫応答又は機能を亢進し又は刺激するための医薬の製造におけるCD226発現及び/又は活性を調節する有効量の薬剤の使用を提供し、ここで、CD226発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤はPD-1軸結合アンタゴニストとの組合せで使用される。他の態様では、本開示は、CD226発現及び/又は活性を調節する薬剤と組み合わせて免疫応答又は機能を亢進し又は刺激するのに使用するためのPD-1軸結合アンタゴニストを含有する薬学的組成物を提供する。他の態様では、本開示は、PD-1軸結合アンタゴニストと組み合わせて免疫応答又は機能を亢進し又は刺激するためのに使用するためのCD226発現及び/又は活性を調節する薬剤を含有する薬学的組成物を提供する。他の態様では、本開示は、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストとCD226発現及び/又は活性を調節する薬剤とを含む組合せを提供する。
【0091】
先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、CD226発現及び/又は活性を調節する薬剤は、CD226発現及び/又は活性を増加させ及び/又は刺激する薬剤である。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、CD226発現及び/又は活性を調節する薬剤は、CD226のPVRとの相互作用を増加させ及び/又は刺激する薬剤である。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、CD226発現及び/又は活性を調節する薬剤は、PVRへのCD226の結合によって媒介される細胞内シグナル伝達を増加させ及び/又は刺激する薬剤である。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、CD226発現及び/又は活性を調節する薬剤は、CD226のTIGITとの相互作用を阻害し及び/又はブロックする薬剤、TIGIT発現及び/又は活性のアンタゴニスト、PVR発現及び/又は活性のアンタゴニスト、TIGITのPVRとの相互作用を阻害し及び/又はブロックする薬剤、TIGITのPVRL2との相互作用を阻害し及び/又はブロックする薬剤、TIGITのPVRL3との相互作用を阻害し及び/又はブロックする薬剤、PVRへのTIGITの結合によって媒介される細胞内シグナル伝達を阻害し及び/又はブロックする薬剤、PVRL2へのTIGITの結合によって媒介される細胞内シグナル伝達を阻害し及び/又はブロックする薬剤、PVRL3へのTIGITの結合によって媒介される細胞内シグナル伝達を阻害し及び/又はブロックする薬剤、及びその組合せからなる群から選択される。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、CD226発現及び/又は活性を調節する薬剤は、CD226のTIGITとの相互作用を阻害し及び/又はブロックする薬剤である。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、CD226のTIGITとの相互作用を阻害し及び/又はブロックする薬剤は、小分子阻害剤、阻害抗体又はその抗原結合断片、アプタマー、阻害核酸、又は阻害ポリペプチドである。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、CD226のTIGITとの相互作用を阻害し及び/又はブロックする薬剤は抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片である。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、CD226のTIGITとの相互作用を阻害し及び/又はブロックする薬剤は、アンチセンスポリヌクレオチド、干渉RNA、触媒RNA、及びRNA-DNAキメラからなる群から選択される阻害核酸である。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、 アンチセンスポリヌクレオチドはTIGITを標的とする。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、干渉RNAはTIGITを標的とする。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、触媒RNAはTIGITを標的とする。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、RNA-DNAキメラはTIGITを標的とする。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、CD226発現及び/又は活性を調節する薬剤はTIGIT発現及び/又は活性のアンタゴニストである。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、TIGIT発現及び/又は活性のアンタゴニストは小分子阻害剤、阻害抗体又はその抗原結合断片、アプタマー、阻害核酸、及び阻害ポリペプチドである。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、TIGIT発現及び/又は活性のアンタゴニストは抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片である。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、TIGIT発現及び/又は活性のアンタゴニストは、アンチセンスポリヌクレオチド、干渉RNA、触媒RNA、及びRNA-DNAキメラからなる群から選択される阻害核酸である。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、PVR発現及び/又は活性のアンタゴニストは、小分子阻害剤、阻害抗体又はその抗原結合断片、アプタマー、阻害核酸、及び阻害ポリペプチドからなる群から選択される。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、TIGITのPVRとの相互作用を阻害し及び/又はブロックする薬剤は、小分子阻害剤、阻害抗体又はその抗原結合断片、アプタマー、阻害核酸、及び阻害ポリペプチドからなる群から選択される。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、TIGITのPVRL2との相互作用を阻害し及び/又はブロックする薬剤は、小分子阻害剤、阻害抗体又はその抗原結合断片、アプタマー、阻害核酸、及び阻害ポリペプチドからなる群から選択される。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、TIGITのPVRL3との相互作用を阻害し及び/又はブロックする薬剤は、小分子阻害剤、阻害抗体又はその抗原結合断片、アプタマー、阻害核酸、及び阻害ポリペプチドからなる群から選択される。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、PVRへのTIGITの結合によって媒介される細胞内シグナル伝達を阻害し及び/又はブロックする薬剤は、小分子阻害剤、阻害抗体又はその抗原結合断片、アプタマー、阻害核酸、及び阻害ポリペプチドからなる群から選択される。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、TIGITのPVRL2との相互作用を阻害し及び/又はブロックする薬剤は、小分子阻害剤、阻害抗体又はその抗原結合断片、アプタマー、阻害核酸、及び阻害ポリペプチドからなる群から選択される。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、TIGITのPVRL3との相互作用を阻害し及び/又はブロックする薬剤は、小分子阻害剤、阻害抗体又はその抗原結合断片、アプタマー、阻害核酸、及び阻害ポリペプチドからなる群から選択される。
【0092】
他の態様では、本開示は、個体における免疫応答又は機能を増加させ、亢進し又は刺激する方法において、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する有効量の薬剤と、一又は複数の更なる同時阻害性受容体を減少させ又は阻害する薬剤とを個体に投与することを含む方法を提供する。他の態様では、本開示は、個体における免疫応答又は機能を亢進し又は刺激するための医薬の製造におけるTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する有効量の薬剤の使用を提供し、ここで、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤は一又は複数の更なる同時阻害性受容体を減少させ又は阻害する薬剤と組み合わせて使用される。他の態様では、本開示は、個体における免疫応答又は機能を亢進し又は刺激するための医薬の製造における一又は複数の更なる同時阻害性受容体を減少させ又は阻害する有効量の薬剤の使用を提供し、ここで、一又は複数の更なる同時阻害性受容体を減少させ又は阻害する薬剤はTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤との組合せで使用される。他の態様では、本開示は、一又は複数の更なる同時阻害性受容体を減少させ又は阻害する薬剤と組み合わせて免疫応答又は機能を亢進し又は刺激するのに使用するためのTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤を含有する薬学的組成物を提供する。他の態様では、本開示は、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤と組み合わせて免疫応答又は機能を亢進し又は刺激するためのに使用するための一又は複数の更なる同時阻害性受容体を減少させ又は阻害する薬剤を含有する薬学的組成物を提供する。他の態様では、本開示は、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する有効量の薬剤と一又は複数の更なる同時阻害性受容体を減少させ又は阻害する薬剤とを含む組合せを提供する。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、一又は複数の更なる同時刺激性受容体は、PD-1、CTLA-4、LAG3、TIM3、BTLA、VISTA、B7H4、及びCD96からなる群から選択される。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、一又は複数の更なる同時刺激性受容体は、PD-1、CTLA-4、LAG3及びTIM3からなる群から選択される。
【0093】
他の態様では、本開示は、個体における免疫応答又は機能を増加させ、亢進し又は刺激する方法において、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する有効量の薬剤と、一又は複数の更なる同時刺激性受容体を増加させ又は活性化する薬剤とを個体に投与することを含む方法を提供する。他の態様では、本開示は、個体における免疫応答又は機能を亢進し又は刺激するための医薬の製造におけるTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する有効量の薬剤の使用を提供し、ここで、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤は一又は複数の更なる同時刺激性受容体を増加させ又は活性化する薬剤と組み合わせて使用される。他の態様では、本開示は、個体における免疫応答又は機能を亢進し又は刺激するための医薬の製造における一又は複数の更なる同時刺激性受容体を増加させ又は活性化する有効量の薬剤の使用を提供し、ここで、一又は複数の更なる同時刺激性受容体を増加させ又は活性化する薬剤はTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤との組合せで使用される。他の態様では、本開示は、一又は複数の更なる同時刺激性受容体を増加させ又は活性化する薬剤と組み合わせて免疫応答又は機能を亢進し又は刺激するのに使用するためのTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤を含有する薬学的組成物を提供する。他の態様では、本開示は、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤と組み合わせて免疫応答又は機能を亢進し又は刺激するのに使用するための一又は複数の更なる同時刺激性受容体を増加させ又は活性化する薬剤を含有する薬学的組成物を提供する。他の態様では、本開示は、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する有効量の薬剤と一又は複数の更なる同時刺激性受容体を増加させ又は活性化する薬剤とを含む組合せを提供する。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、一又は複数の更なる同時刺激性受容体は、CD226、OX-40、CD28、CD27、CD137、HVEM、GITR、MICA、ICOS、NKG2D、及び2B4からなる群から選択される。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、一又は複数の更なる同時刺激性受容体は、CD226、OX-40、CD27、CD137、HVEM及びGITRからなる群から選択される。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、一又は複数の更なる同時刺激性受容体は、OX-40及びCD27からなる群から選択される。
【0094】
先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、その方法は、少なくとも1種の化学療法剤を投与することを更に含む。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、個体はがんに罹患している。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、個体はヒトである。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、個体のCD4及び/又はCD8 T細胞は、組合せの投与前に対して、増大し又は亢進したプライミング、活性化、増殖、サイトカイン放出及び/又は細胞溶解活性を有する。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、CD4及び/又はCD8 T細胞の数は、組合せの投与前に対して増加している。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、活性化されたCD4及び/又はCD8 T細胞の数は、組合せの投与前に対して増加している。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、活性化されたCD4及び/又はCD8 T細胞は、γ-IFN産生CD4及び/又は組合せの投与前に対して亢進した細胞溶解活性によって特徴付けられる。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、CD4及び/又はCD8 T細胞は、IFN-γ、TNF-α及びインターロイキンからなる群から選択されるサイトカインの放出増加を示す。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、CD4及び/又はCD8 T細胞は、エフェクターメモリーT細胞である。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、CD4及び/又はCD8エフェクターメモリーT細胞は、γ-IFN産生CD4及び/又はCD8 T細胞及び/又は亢進した細胞溶解活性によって特徴付けられる。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、CD4及び/又はCD8エフェクターメモリーT細胞は、CD44highCD62Llowの発現を示すことによって特徴付けられる。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、がんは上昇したレベルのT細胞浸潤を有する。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤は、TIGIT発現及び/又は活性のアンタゴニスト、PVR発現及び/又は活性のアンタゴニスト、TIGITのPVRとの相互作用を阻害し及び/又はブロックする薬剤、TIGITのPVRL2との相互作用を阻害し及び/又はブロックする薬剤、TIGITのPVRL3との相互作用を阻害し及び/又はブロックする薬剤、PVRへのTIGITの結合によって媒介される細胞内シグナル伝達を阻害し及び/又はブロックする薬剤、PVRL2へのTIGITの結合によって媒介される細胞内シグナル伝達を阻害し及び/又はブロックする薬剤、PVRL3へのTIGITの結合によって媒介される細胞内シグナル伝達を阻害し及び/又はブロックする薬剤、及びそれらの組合せからなる群から選択される。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、TIGIT発現及び/又は活性のアンタゴニストは、小分子阻害剤、阻害抗体又はその抗原結合断片、アプタマー、阻害核酸、及び阻害ポリペプチドからなる群から選択される。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、PVR発現及び/又は活性のアンタゴニストは、小分子阻害剤、阻害抗体又はその抗原結合断片、アプタマー、阻害核酸、及び阻害ポリペプチドからなる群から選択される。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、TIGITのPVRとの相互作用を阻害し及び/又はブロックする薬剤は、小分子阻害剤、阻害抗体又はその抗原結合断片、アプタマー、阻害核酸、及び阻害ポリペプチドからなる群から選択される。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、TIGITのPVRL2との相互作用を阻害し及び/又はブロックする薬剤は、小分子阻害剤、阻害抗体又はその抗原結合断片、アプタマー、阻害核酸、及び阻害ポリペプチドからなる群から選択される。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、TIGITのPVRL3との相互作用を阻害し及び/又はブロックする薬剤は、小分子阻害剤、阻害抗体又はその抗原結合断片、アプタマー、阻害核酸、及び阻害ポリペプチドからなる群から選択される。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、PVRへのTIGITの結合によって媒介される細胞内シグナル伝達を阻害し及び/又はブロックする薬剤は、小分子阻害剤、阻害抗体又はその抗原結合断片、アプタマー、阻害核酸、及び阻害ポリペプチドからなる群から選択される。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、PVRL2へのTIGITの結合によって媒介される細胞内シグナル伝達を阻害し及び/又はブロックする薬剤は、小分子阻害剤、阻害抗体又はその抗原結合断片、アプタマー、阻害核酸、及び阻害ポリペプチドからなる群から選択される。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、PVRL3へのTIGITの結合によって媒介される細胞内シグナル伝達を阻害し及び/又はブロックする薬剤は、小分子阻害剤、阻害抗体又はその抗原結合断片、アプタマー、阻害核酸、及び阻害ポリペプチドからなる群から選択される。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、TIGIT発現及び/又は活性のアンタゴニストは、アンチセンスポリヌクレオチド、干渉RNA、触媒RNA、及びRNA-DNAキメラからなる群から選択される阻害核酸である。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、アンチセンスポリヌクレオチドはTIGITを標的とする。
【0095】
先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、干渉RNAはTIGITを標的とする。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、触媒RNAはTIGITを標的とする。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、RNA-DNAキメラはTIGITを標的とする。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、TIGIT発現及び/又は活性のアンタゴニストは抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片である。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片は、アミノ酸配列(1)KSSQSLYYSGVKENLLA(配列番号:1)、ASIRFT(配列番号:2)、QQGINNPLT(配列番号:3)、GFTFSSFTMH(配列番号:4)、FIRSGSGIVFYADAVRG(配列番号:5)、及びRPLGHNTFDS(配列番号:6);あるいは(2)RSSQSLVNSYGNTFLS(配列番号:7)、GISNRFS(配列番号:8)、LQGTHQPPT(配列番号:9)、GYSFTGHLMN(配列番号:10)、LIIPYNGGTSYNQKFKG(配列番号:11)、及びGLRGFYAMDY(配列番号:12)から選択されるアミノ酸配列を含む少なくとも一つのHVRを含む。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片において、抗体軽鎖は、
に記載のアミノ酸配列を含む。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片において、抗体重鎖は、
に記載のアミノ酸配列を含む。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片において、抗体軽鎖は、
に記載のアミノ酸配列を含み、かつ抗体重鎖は、
に記載のアミノ酸配列を含む。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片において、抗体は、ヒト化抗体、キメラ抗体、二重特異性抗体、ヘテロコンジュゲート抗体、及びイムノトキシンからなる群から選択される。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片は、(1)KSSQSLYYSGVKENLLA(配列番号:1)、ASIRFT(配列番号:2)、QQGINNPLT(配列番号:3)、GFTFSSFTMH(配列番号:4)、FIRSGSGIVFYADAVRG(配列番号:5)、及びRPLGHNTFDS(配列番号:6);あるいは(2)RSSQSLVNSYGNTFLS(配列番号:7)、GISNRFS(配列番号:8)、LQGTHQPPT(配列番号:9)、GYSFTGHLMN(配列番号:10)、LIIPYNGGTSYNQKFKG(配列番号:11)、及びGLRGFYAMDY(配列番号:12)の何れか一つに記載のHVRと少なくとも90%同一である少なくとも一つのHVRを含む。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片は、
に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖;及び/又は
に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストは、PD-1結合アンタゴニスト、PD-L1結合アンタゴニスト及びPD-L2結合アンタゴニストからなる群から選択される。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストはPD-1結合アンタゴニストである。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のそのリガンド結合パートナーへの結合を阻害する。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、PD-1結合アンタゴニストはPD-1のPD-L1への結合を阻害する。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、PD-1結合アンタゴニストはPD-1のPD-L2への結合を阻害する。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、PD-1結合アンタゴニストはPD-L1とPD-L2双方へのPD-1の結合を阻害する。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、PD-1結合アンタゴニストは抗体である。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、PD-1結合アンタゴニストはMDX-1106である。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、PD-1結合アンタゴニストはMK-3475である。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、PD-1結合アンタゴニストはCT-011である。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、PD-1結合アンタゴニストはAMP-224である。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストはPD-L1結合アンタゴニストである。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、PD-L1結合アンタゴニストはPD-L1のPD-1への結合を阻害する。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、PD-L1結合アンタゴニストはPD-L1のB7-1への結合を阻害する。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-1とB7-1双方へのPD-L1の結合を阻害する。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、PD-L1結合アンタゴニストは抗PD-L1抗体である。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、PD-L1結合アンタゴニストは、YW243.55.S70、MPDL3280A、MDX-1105、及びMEDI4736からなる群から選択される。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、抗PD-L1抗体は、GFTFSDSWIH(配列番号:17)のHVR-H1配列、AWISPYGGSTYYADSVKG(配列番号:18)のHVR-H2配列、及びRHWPGGFDY(配列番号:19)のHVR-H3配列を含む重鎖と;RASQDVSTAVA(配列番号:20)のHVR-L1配列、SASFLYS(配列番号:21)のHVR-L2配列、及びQQYLYHPAT(配列番号:22)のHVR-L3配列を含む軽鎖とを含む。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、抗PD-L1抗体は、EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSA(配列番号:23)、EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSSASTK(配列番号:40)、又はEVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSS(配列番号:41)のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKR(配列番号:24)のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストはPD-L2結合アンタゴニストである。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、PD-L2結合アンタゴニストは抗体である。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、PD-L2結合アンタゴニストはイムノアドヘシンである。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、がんは、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、腎細胞がん、結腸直腸がん、卵巣がん、乳がん、膵がん、胃がん、膀胱がん、食道がん、中皮腫、メラノーマ,頭頸部がん、甲状腺がん、肉腫、前立腺がん、神経膠芽腫、子宮頸がん、胸腺がん、白血病、リンパ腫、骨髄腫、菌状息肉症、メルケル細胞がん、及び他の血液悪性腫瘍からなる群から選択される。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤は連続的に投与される。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤は間欠的に投与される。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤はPD-1軸結合アンタゴニストの前に投与される。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤はPD-1軸結合アンタゴニストと同時に投与される。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤はPD-1軸結合アンタゴニストの後に投与される。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストはCD226発現及び/又は活性を調節する薬剤の前に投与される。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストはCD226発現及び/又は活性を調節する薬剤と同時に投与される。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストはCD226発現及び/又は活性を調節する薬剤の後に投与される。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤は、一又は複数の更なる免疫同時阻害性受容体を減少させ又は阻害する薬剤の前に投与される。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤は、一又は複数の更なる免疫同時阻害性受容体を減少させ又は阻害する薬剤と同時に投与される。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤は、一又は複数の更なる免疫同時阻害性受容体を減少させ又は阻害する薬剤の後に投与される。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤は、一又は複数の更なる免疫同時刺激性受容体を増加させ又は活性化する薬剤の前に投与される。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤は、一又は複数の更なる免疫同時刺激性受容体を増加させ又は活性化する薬剤と同時に投与される。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤は、一又は複数の更なる免疫同時刺激性受容体を増加させ又は活性化する薬剤の後に投与される。
【0096】
他の態様では、本開示は、PD-1軸結合アンタゴニストと、個体におけるがんを治療し又はその進行を遅延させるためにTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤との組合せでPD-1軸結合アンタゴニストを使用するための説明書を含むパッケージ挿入物とを含むキットを提供する。
【0097】
他の態様では、本開示は、PD-1軸結合アンタゴニストと、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤と、個体におけるがんを治療し又はその進行を遅延させるためにPD-1軸結合アンタゴニストとTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤とを使用するための説明書を含むパッケージ挿入物とを含むキットを提供する。
【0098】
他の態様では、本開示は、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤と、個体におけるがんを治療し又はその進行を遅延させるためにPD-1軸結合アンタゴニストとの組合せでTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤を使用するための説明書を含むパッケージ挿入物とを含むキットを提供する。
【0099】
他の態様では、本開示は、PD-1軸結合アンタゴニストと、がんに罹患している個体の免疫機能を亢進させるためにTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤との組合せでPD-1軸結合アンタゴニストを使用するための説明書を含むパッケージ挿入物とを含むキットを提供する。
【0100】
他の態様では、本開示は、PD-1軸結合アンタゴニストと、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤と、がんに罹患している個体の免疫機能を亢進させるためにPD-1軸結合アンタゴニストとTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤とを使用するための説明書を含むパッケージ挿入物とを含むキットを提供する。
【0101】
他の態様では、本開示は、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤と、がんに罹患している個体の免疫機能を亢進させるためにPD-1軸結合アンタゴニストとの組合せでTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤を使用するための説明書を含むパッケージ挿入物とを含むキットを提供する。
【0102】
他の態様では、本開示は、PD-1軸結合アンタゴニストと、個体におけるがんを治療し又はその進行を遅延させるためにCD226発現及び/又は活性を調節する薬剤との組合せでPD-1軸結合アンタゴニストを使用するための説明書を含むパッケージ挿入物とを含むキットを提供する。
【0103】
他の態様では、本開示は、PD-1軸結合アンタゴニストと、CD226発現及び/又は活性を調節する薬剤と、個体におけるがんを治療し又はその進行を遅延させるためにPD-1軸結合アンタゴニストとの組合せでCD226発現及び/又は活性を調節する薬剤を使用するための説明書を含むパッケージ挿入物とを含むキットを提供する。
【0104】
他の態様では、本開示は、CD226発現及び/又は活性を調節する薬剤と、個体におけるがんを治療し又はその進行を遅延させるためにPD-1軸結合アンタゴニストとの組合せでCD226発現及び/又は活性を調節する薬剤を使用するための説明書を含むパッケージ挿入物とを含むキットを提供する。
【0105】
他の態様では、本開示は、PD-1軸結合アンタゴニストと、がんに罹患している個体の免疫機能を亢進させるためにCD226発現及び/又は活性を調節する薬剤との組合せでPD-1軸結合アンタゴニストを使用するための説明書を含むパッケージ挿入物とを含むキットを提供する。
【0106】
他の態様では、本開示は、PD-1軸結合アンタゴニストと、CD226発現及び/又は活性を調節する薬剤と、がんに罹患している個体の免疫機能を亢進させるためにPD-1軸結合アンタゴニストとCD226発現及び/又は活性を調節する薬剤を使用するための説明書を含むパッケージ挿入物とを含むキットを提供する。
【0107】
他の態様では、本開示は、CD226発現及び/又は活性を調節する薬剤と、がんに罹患している個体の免疫機能を亢進させるためにPD-1軸結合アンタゴニストとの組合せでCD226発現及び/又は活性を調節する薬剤を使用するための説明書を含むパッケージ挿入物とを含むキットを提供する。
【0108】
先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストは抗PD-L1抗体である。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、抗PD-L1抗体は、YW243.55.S70、MPDL3280A、MDX-1105及びMEDI4736からなる群から選択される。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、抗PD-L1抗体は、GFTFSDSWIH(配列番号:17)のHVR-H1配列、AWISPYGGSTYYADSVKG(配列番号:18)のHVR-H2配列、及びRHWPGGFDY(配列番号:19)のHVR-H3配列を含む重鎖と;RASQDVSTAVA(配列番号:20)のHVR-L1配列、SASFLYS(配列番号:21)のHVR-L2配列、及びQQYLYHPAT(配列番号:22)のHVR-L3配列を含む軽鎖とを含む。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、抗PD-L1抗体は、
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSA(配列番号:23)、
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSSASTK(配列番号:40)、又は
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSS(配列番号:41)
のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKR(配列番号:24)
のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストは抗PD-1抗体である。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、抗PD-1抗体はMDX-1106、MK-3475、又はCT-011である。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストはAMP-224である。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストはPD-L2結合アンタゴニストである。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、PD-L2結合アンタゴニストは抗体である。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、PD-L2結合アンタゴニストはイムノアドヘシンである。
【0109】
他の態様では、本開示は、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤と、個体におけるがんを治療し又はその進行を遅延させるために一又は複数の更なる免疫同時阻害性受容体を減少させ又は阻害する薬剤との組合せでTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤を使用するための説明書を含むパッケージ挿入物とを含むキットを提供する。他の態様では、本開示は、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤と、一又は複数の更なる免疫同時阻害性受容体を減少させ又は阻害する薬剤と、個体におけるがんを治療し又はその進行を遅延させるためにTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤と一又は複数の更なる免疫同時阻害性受容体を減少させ又は阻害する薬剤とを使用するための説明書を含むパッケージ挿入物とを含むキットを提供する。他の態様では、本開示は、一又は複数の更なる免疫同時阻害性受容体を減少させ又は阻害する薬剤と、個体におけるがんを治療し又はその進行を遅延させるためにTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤との組合せで一又は複数の更なる免疫同時阻害性受容体を減少させ又は阻害する薬剤を使用するための説明書を含むパッケージ挿入物とを含むキットを提供する。他の態様では、本開示は、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤と、がんに罹患している個体の免疫機能を亢進させるために一又は複数の更なる免疫同時阻害性受容体を減少させ又は阻害する薬剤との組合せでTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤を使用するための説明書を含むパッケージ挿入物とを含むキットを提供する。他の態様では、本開示は、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤と、一又は複数の更なる免疫同時阻害性受容体を減少させ又は阻害する薬剤と、がんに罹患している個体の免疫機能を亢進させるためにTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤と一又は複数の更なる免疫同時阻害性受容体を減少させ又は阻害する薬剤を使用するための説明書を含むパッケージ挿入物とを含むキットを提供する。他の態様では、本開示は、一又は複数の更なる免疫同時阻害性受容体を減少させ又は阻害する薬剤と、がんに罹患している個体の免疫機能を亢進させるためにTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤との組合せで一又は複数の更なる免疫同時阻害性受容体を減少させ又は阻害する薬剤を使用するための説明書を含むパッケージ挿入物とを含むキットを提供する。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、一又は複数の更なる同時刺激性受容体は、PD-1、CTLA-4、LAG3、TIM3、BTLA、VISTA、B7H4、及びCD96からなる群から選択される。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、一又は複数の更なる同時刺激性受容体は、PD-1、CTLA-4、LAG3及びTIM3からなる群から選択される。
【0110】
他の態様では、本開示は、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤と、個体におけるがんを治療し又はその進行を遅延させるために一又は複数の更なる免疫同時刺激性受容体を増加させ又は活性化する薬剤との組合せでTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤を使用するための説明書を含むパッケージ挿入物とを含むキットを提供する。他の態様では、本開示は、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤と、一又は複数の更なる免疫同時刺激性受容体を増加させ又は活性化する薬剤と、個体におけるがんを治療し又はその進行を遅延させるためにTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤と一又は複数の更なる免疫同時刺激性受容体を増加させ又は活性化する薬剤とを使用するための説明書を含むパッケージ挿入物とを含むキットを提供する。他の態様では、本開示は、一又は複数の更なる免疫同時刺激性受容体を増加させ又は活性化する薬剤と、個体におけるがんを治療し又はその進行を遅延させるためにTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤との組合せで一又は複数の更なる免疫同時刺激性受容体を増加させ又は活性化する薬剤を使用するための説明書を含むパッケージ挿入物とを含むキットを提供する。他の態様では、本開示は、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤と、がんに罹患している個体の免疫機能を亢進させるために一又は複数の更なる免疫同時刺激性受容体を増加させ又は活性化する薬剤との組合せでTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤を使用するための説明書を含むパッケージ挿入物とを含むキットを提供する。他の態様では、本開示は、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤と、一又は複数の更なる免疫同時刺激性受容体を増加させ又は活性化する薬剤と、がんに罹患している個体の免疫機能を亢進させるためにTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤と一又は複数の更なる免疫同時刺激性受容体を増加させ又は活性化する薬剤を使用するための説明書を含むパッケージ挿入物とを含むキットを提供する。他の態様では、本開示は、一又は複数の更なる免疫同時刺激性受容体を増加させ又は活性化する薬剤と、がんに罹患している個体の免疫機能を亢進させるためにTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤との組合せで一又は複数の更なる免疫同時刺激性受容体を増加させ又は活性化する薬剤を使用するための説明書を含むパッケージ挿入物とを含むキットを提供する。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、一又は複数の更なる免疫同時刺激性受容体は、CD226、OX-40、CD28、CD27、CD137、HVEM、GITR、MICA、ICOS、NKG2D、及び2B4からなる群から選択される。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、一又は複数の更なる免疫同時刺激性受容体は、CD226、OX-40、CD27、CD137、HVEM及びGITRからなる群から選択される。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、一又は複数の更なる免疫同時刺激性受容体は、OX-40及びCD27からなる群から選択される。
【0111】
先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、個体はヒトである。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤は、TIGIT発現及び/又は活性のアンタゴニスト、PVR発現及び/又は活性のアンタゴニスト、TIGITのPVRとの相互作用を阻害し及び/又はブロックする薬剤、TIGITのPVRL2との相互作用を阻害し及び/又はブロックする薬剤、TIGITのPVRL3との相互作用を阻害し及び/又はブロックする薬剤、PVRへのTIGITの結合によって媒介される細胞内シグナル伝達を阻害し及び/又はブロックする薬剤、PVRL2へのTIGITの結合によって媒介される細胞内シグナル伝達を阻害し及び/又はブロックする薬剤、及びPVRL3へのTIGITの結合によって媒介される細胞内シグナル伝達を阻害し及び/又はブロックする薬剤からなる群から選択される。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、TIGIT発現及び/又は活性のアンタゴニストは抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片である。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、CD226発現及び/又は活性を調節する薬剤はCD226発現及び/又は活性を増加させ及び/又は刺激する薬剤である。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、CD226発現及び/又は活性を調節する薬剤はCD226のPVRとの相互作用を増加させ及び/又は刺激する薬剤である。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、CD226発現及び/又は活性を調節する薬剤は、PVRへのCD226の結合によって媒介される細胞内シグナル伝達を増加させ及び/又は刺激する薬剤である。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、CD226発現及び/又は活性を調節する薬剤は、CD226のTIGITとの相互作用を阻害し及び/又はブロックする薬剤、TIGIT発現及び/又は活性のアンタゴニスト、PVR発現及び/又は活性のアンタゴニスト、TIGITのPVRとの相互作用を阻害し及び/又はブロックする薬剤、TIGITのPVRL2との相互作用を阻害し及び/又はブロックする薬剤、TIGITのPVRL3との相互作用を阻害し及び/又はブロックする薬剤、PVRへのTIGITの結合によって媒介される細胞内シグナル伝達を阻害し及び/又はブロックする薬剤、PVRL2へのTIGITの結合によって媒介される細胞内シグナル伝達を阻害し及び/又はブロックする薬剤、及びPVRL3へのTIGITの結合によって媒介される細胞内シグナル伝達を阻害し及び/又はブロックする薬剤からなる群から選択される。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、CD226発現及び/又は活性を調節する薬剤はCD226のTIGITとの相互作用を阻害し及び/又はブロックする薬剤である。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、CD226のTIGITとの相互作用を阻害し及び/又はブロックする薬剤は、小分子阻害剤、阻害抗体又はその抗原結合断片、アプタマー、阻害核酸、又は阻害ポリペプチドである。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、CD226のTIGITとの相互作用を阻害し及び/又はブロックする薬剤は抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片である。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片は、アミノ酸配列(1)KSSQSLYYSGVKENLLA(配列番号:1)、ASIRFT(配列番号:2)、QQGINNPLT(配列番号:3)、GFTFSSFTMH(配列番号:4)、FIRSGSGIVFYADAVRG(配列番号:5)、及びRPLGHNTFDS(配列番号:6);あるいは(2)RSSQSLVNSYGNTFLS(配列番号:7)、GISNRFS(配列番号:8)、LQGTHQPPT(配列番号:9)、GYSFTGHLMN(配列番号:10)、LIIPYNGGTSYNQKFKG(配列番号:11)、及びGLRGFYAMDY(配列番号:12)から選択されるアミノ酸配列を含む少なくとも一つのHVRを含む。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片において、抗体軽鎖は、
に記載のアミノ酸配列を含む。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片において、抗体重鎖は、
に記載のアミノ酸配列を含む。先の実施態様の何れかと組み合わせることができる所定の実施態様では、抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片において、抗体軽鎖は、
に記載のアミノ酸配列を含み、かつ抗体重鎖は、
に記載のアミノ酸配列を含む。
【図面の簡単な説明】
【0112】
図1A-1B】図1は、TIGITが消耗したCD8+及びCD4+T細胞上に高度に発現されることを示している。図1Aは、インビトロで24~48時間、プレートに結合された抗CD3及び抗CD28で刺激されたMACS富化C57BL6/J脾臓CD8+T細胞を示す。フローサイトメトリーヒストグラムはアイソタイプ染色(灰色)に対してTIGIT発現(赤色)を表す。TIGIT MFIの定量化もまた示される。***,P<0.001。データは2回の独立した実験の代表値である;n=3。図1B-1Cにおいて、C57BL6/Jマウスにアームストロング株LCMVを感染させ、脾細胞を感染の7日後に分析した。データは2回の独立した実験の代表値である;n=5。図1Bは、ナイーブ(CD44lowCD62Lhigh)及びエフェクターメモリー(CD44highCD62Llow)CD4+及びCD8+T細胞によるTIGIT発現を表すフローサイトメトリーヒストグラムを示す。TIGIT MFIの定量化もまた示される。***,P<0.001。
図1C-1D】図1Cは、PD-1high及びPD-1lowエフェクターメモリーCD8+T細胞によるTIGIT発現を表すフローサイトメトリーヒストグラムを示す。TIGIT MFIの定量化もまた示される。***,P<0.001。図1Dは、C57BL6/JマウスがCD4+T細胞を短時間に枯渇され、クローン13株LCMVで感染されたことを示す。脾細胞を感染の42日後に分析した。フローサイトメトリーヒストグラムは、ナイーブ(CD44lowCD62Lhigh)、セントラルメモリー(CD44highCD62Lhigh)、及びエフェクターメモリー(CD44highCD62Llow)CD8+T細胞によるTIGIT発現を表す。TIGIT MFIの定量化もまた示される。***,P<0.001。データは2回の独立した実験の代表値である;n=5。エラーバーは平均の標準誤差を示す。
【0113】
図2図2はTIGITloxP/loxPマウスのデザインを示す。TIGITのエクソン1は標準的技法を使用してloxP部位と隣接させられている。
【0114】
図3図3は、TIGIT欠損CD8及びCD4T細胞が急性ウイルス感染に正常に応答することを示している。TIGITfl/flCD4cre(CKO)及びTIGITfl/fl同腹仔(WT)をアームストロング株LCMVで感染させた。感染の7日後に脾細胞を分析した。データは2回の独立した実験の代表値である;n=5。図3Aは、CD8T細胞上にゲーティングされた代表的なFACSプロットを示し、活性化(CD44high)細胞はボックスで囲まれている。活性化CD8T細胞の定量化は全CD8T細胞のパーセンテージとしてである。図3Bはインビトロでの刺激後にCD8T細胞上にゲーティングされた代表的なFACSプロットを示し、IFNγ産生細胞はボックスで囲まれている。IFNγ産生細胞の定量化は全CD8T細胞のパーセンテージとしてである。図3Cは、CD4T細胞上にゲーティングされた代表的なFACSプロットを示し、活性化(CD44high)細胞はボックスで囲まれている。活性化CD4T細胞の定量化は全CD4T細胞のパーセンテージとしてである。図3Dは、インビトロでの刺激後にCD4T細胞上にゲーティングされた代表的なFACSプロットを示し、IFNγ産生細胞はボックスで囲まれている。IFNγ産生細胞の定量化は全CD4T細胞のパーセンテージとしてである。エラーバーは平均の標準誤差を示す。
【0115】
図4A-4D】図4は、TIGITとPD-1がインビボで消耗T細胞のエフェクター機能を相乗的に調節することを示している。図4A-4Eでは、TIGITfl/flCD4-cre-(WT)及びTIGITfl/flCD4-cre+(CKO)マウスを、短時間でCD4+T細胞を枯渇させ、クローン13株LCMVで感染させた。脾細胞及び肝臓ウイルス価を感染の42日後に分析した。データは2回の独立した実験の代表値であり、1群当たり、n=6-9である。図4Aは、CD8+T細胞上にゲーティングされた代表的なFACSプロットを表し、活性化細胞(CD44highCD62Llow)はボックスで囲まれている。活性化細胞の定量化は全CD8+T細胞のパーセンテージとしてである。図4Bは、インビトロでの刺激後にCD8+T細胞上にゲーティングされた代表的なFACSプロットを示し、IFNγ+細胞はボックスで囲まれている。IFNγ産生細胞の定量化はCD8+T細胞のパーセンテージとしてである。図4Cは、CD4+T細胞上にゲーティングされた代表的なFACSプロットを示し、活性化された細胞(CD44highCD62Llow)はボックスで囲まれている。活性化細胞の定量化は全CD4+T細胞のパーセンテージとしてである。図4Dは、インビトロでの刺激後にCD4+T細胞上にゲーティングされた代表的なFACSプロットを示し、IFNγ+細胞はボックスで囲まれている。IFNγ産生細胞の定量化は全CD4+T細胞のパーセンテージとしてである。
図4E-4F】図4Eは肝臓LCMV価の定量化を示している。***,P<0.0001。図4F~4Hにおいて、C57BL6/Jマウスを、短時間でCD4+T細胞を枯渇させ、クローン13株LCMVで感染させた。マウスを、感染の28日後に開始して、アイソタイプ一致コントロール、抗PD-L1、抗TIGIT、又は抗PD-L1+抗TIGIT抗体で処置した。脾細胞及び肝臓ウイルス価を感染の42日後に分析した。データは2回の独立した実験の代表値である;n=10。図4Fは、CD8+T細胞上にゲーティングされた代表的なFACSプロットを表し、活性化細胞(CD44highCD62Llow)はボックスで囲まれている。活性化細胞の定量化は全CD8+T細胞のパーセンテージとしてである。***,P<0.0001。
図4G-4H】図4Gは、インビトロでの刺激後に活性化されたCD8+T細胞上にゲーティングされた代表的なFACSプロットを表し、IFNγ+細胞はボックスで囲まれている。IFNγ産生細胞の定量化は活性化CD8+T細胞のパーセンテージとしてである。*,P=0.0352。**,P=0.0047。図4Hは肝臓LCMV価の定量化を示している。*,P=0.0106。**,P=0.0047。エラーバーは平均の標準誤差を表す。
【0116】
図5図5は、TIGIT/PD-L1共遮断が慢性ウイルス感染中にCD4+T細胞エフェクター機能を亢進させることを示している。C57BL6/Jマウスを、CD4+T細胞を枯渇させ、クローン13株LCMVで感染させた。マウスを、感染の28日後からアイソタイプコントロール、抗PD-L1、抗TIGIT、又は抗PD-L1+抗TIGIT抗体で処置した。脾細胞及び肝臓ウイルス価感染の42日後に分析した。データは2回の独立した実験の代表値である;n=10。図5Aは、CD4+T細胞上にゲーティングされた代表的なFACSプロットを示し、活性化細胞(CD44highCD62Llow)はボックスで囲まれている。活性化CD4+T細胞の定量化は全CD4+T細胞のパーセンテージとしてである。図5Bは、インビトロでの刺激後にCD4+T細胞上にゲーティングされた代表的なFACSプロットを表し、IFNγ+細胞はボックスで囲まれている。IFNγ産生細胞の定量化は全CD4+T細胞のパーセンテージとしてである。*,P=0.019。エラーバーは平均の標準誤差を示す。
【0117】
図6A-6B】図6は、TIGIT発現がヒト乳がんにおいて上昇し、CD8及び阻害性共受容体の発現と相関することを示している。Cancer Gene Atlas Networkによって作成された乳がん遺伝子発現マイクロアレイデータを分析した。遺伝子発現データを正規化し、相対比(log2)として表す。図6Aは、正常及び全乳腺腫瘍試料(左)及び乳腺腫瘍サブタイプ(右)におけるTIGIT発現を示す。***,P=6×10-12。箱及びひげプロットを示す。図6Bは、TIGITとCD3ε発現の相関を示す。R2=0.61。
図6C-6D】図6Cは、TIGITとCD8α(左,R2=0.80)又はCD4(右,R2=0.42)の相関を示す。図6Dは、TIGITとPD-1(左,R=0.87)、LAG3(中央,R=0.80)、及びCTLA4(右,R=0.76)の相関を示す。
【0118】
図7A-7C】図7は、TIGITとPD-1が抗腫瘍T細胞応答を阻害することを示している。図7A-7Bにおいて、BALB/CマウスにCT26結腸直腸がん細胞を接種した。脾細胞及び腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を接種の14日後に分析し、そのとき腫瘍はおよそ200mmのサイズに達していた。データは1回の実験の代表値である;n=6。図7Aは、脾臓及び腫瘍浸潤CD8+T細胞によるTIGIT発現を表すフローサイトメトリーヒストグラムを示す。TIGIT MFIの定量化もまた示される。**,P=0.0023。図7Bは、脾臓及び腫瘍浸潤CD4+T細胞によるTIGIT発現を表すフローサイトメトリーヒストグラムを示す。TIGIT MFIの定量化もまた示される。***,P=0.0002。図7C-7Eにおいて、BALB/CマウスにCT26結腸直腸がん細胞を接種した。腫瘍がおよそ200mm3のサイズに達したとき、マウスをアイソタイプコントロール、抗PD-L1、抗TIGIT、又は抗PD-L1+抗TIGIT抗体で3週間、処置した。データは2回の独立した実験の代表値である;n=10-20(図7C-7D)又は7-10(図7E)。図7Cは、経時的なCT26腫瘍体積中央値を示す。
図7D図7Dはマウスの生存期間を示す。
図7E図7Eは、最初の接種のおよそ60日後に、抗TIGIT+抗PD-L1を投与された完全寛解(CR)のマウス、並びにナイーブBALB/cマウスの左胸郭側腹部にCT26細胞を接種し、その乳腺脂肪体中にEMT6乳がん細胞を接種したことを示す。CRマウス(紫色及び緑色)及びナイーブマウス(黒色及びオレンジ色)腫瘍におけるCT26(矩形)及びEMT6(三角形)の腫瘍体積中央値(左)及び個々の値(右)を示す。
図7F図7Fは、マウスにCT26腫瘍が接種され、図7Cにおけるようにして処置されたことを示す。腫瘍浸潤及び腫瘍流入領域リンパ節常在T細胞をフローサイトメトリーにより分析した。インビトロでの刺激後のCD8+TILの代表的なFACSプロットであり、IFNγ産生細胞がボックスで囲まれている。IFNγ産生CD8+TILの定量化は全CD8+TILのパーセンテージとしてである。***,P=0.0003。データは2回の独立した実験の代表値である;n=5。エラーバーは平均の標準誤差を示す。
【0119】
図8図8は、CT26腫瘍浸潤リンパ球TIGIT発現がTim-3発現と相関していることを示す。BALB/CマウスにCT26結腸直腸がん細胞を接種した。脾細胞及び腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を接種のおよそ14日後に分析したが、そのとき腫瘍はおよそ200mmのサイズに達していた。データは1回の実験の代表値である;n=6。図8Aは、脾臓及び腫瘍浸潤CD8T細胞によるTIGIT発現の代表的なヒストグラムを示す。TIGIT MFIの定量化。**,P=0.0026。図8Bは、脾臓及び腫瘍浸潤CD4T細胞によるTIGIT発現の代表的なヒストグラムを示す。TIGIT MFIの定量化。***,P<0.0001。エラーバーは平均の標準誤差を示す。
【0120】
図9図9は、MC38腫瘍浸潤リンパ球TIGIT発現がPD-1及びTim-3発現と相関していることを示す。C57BL6/JマウスにMC38結腸直腸がん細胞を接種した。脾細胞及び腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を接種のおよそ14日後に分析したが、そのとき腫瘍はおよそ200mmのサイズに達していた。データは1回の実験の代表値である;n=5。図9Aは、脾臓及び腫瘍浸潤CD8+T細胞によるTIGIT発現の代表的なヒストグラムを示す。TIGIT MFIの定量化。***,P<0.0001。図9Bは、脾臓及び腫瘍浸潤CD4+T細胞によるTIGIT発現の代表的なヒストグラムを示す。TIGIT MFIの定量化。*,P=0.0136。**,P=0.0029。エラーバーは平均の標準誤差を示す。
【0121】
図10図10は、抗PD-L1及び/又は抗TIGITで処置されたマウスにおけるCT26腫瘍増殖を示す。ナイーブBALB/cマウスにCT26腫瘍細胞を接種し、図4D-4Fに記載されたように、抗PD-L1及び/又は抗TIGITあるいはアイソタイプ一致コントロール抗体で処置した。各処置群における個々のマウスに対する経時的腫瘍体積を示す。データは2回の独立した実験の代表値である。
【0122】
図11A-11C】図11は、CD4TIL及び腫瘍流入領域リンパ節T細胞のフローサイトメトリー分析を示す。BALB/CマウスにCT26結腸直腸がん細胞を接種した。腫瘍がおよそ200mmのサイズに達したとき、マウスを7日間、アイソタイプコントロール、抗PD-L1、抗TIGIT、又は抗PD-L1+抗TIGIT抗体で処置した。腫瘍及び腫瘍流入領域リンパ節を収集した。データは2回の独立した実験の代表値である;n=5。インビトロでの刺激後に腫瘍流入領域リンパ節CD8T細胞上にゲーティングされた代表的なFACSプロットであり、IFNγ産生細胞はボックスで囲まれている。IFNγ細胞の定量化は全CD8T細胞のパーセンテージとしてである。***,P<0.001。CD8T細胞の定量化は全TILのパーセンテージとしてである。**,P=0.0065。活性化(CD44highCD62Llow)CD8T細胞の定量化は全CD8TILのパーセンテージとしてである。*,P=0.012。CD8T細胞の定量化は全腫瘍流入領域リンパ節細胞のパーセンテージとしてである。活性化CD8T細胞の定量化は腫瘍流入領域リンパ節における全CD8T細胞のパーセンテージとしてである。*,P<0.05。図11Cは、全TILのパーセンテージとしてCD4T細胞の定量化を示す。*,P=0.016。図11Aは、インビトロでの刺激後のCD4TILのパーセンテージとしてIFNγ細胞の定量化を示す。図11Bは、インビトロでの刺激後の腫瘍流入領域リンパ節におけるCD4T細胞のパーセンテージとしてIFNγ細胞の定量化を示す。エラーバーは平均の標準誤差を示す。
図11D-11F】図11Dは、全CD4TILのパーセンテージとして活性化CD4T細胞の定量化を示す。図11Eは、全腫瘍流入領域リンパ節細胞のパーセンテージとしてCD4T細胞の定量化を示す。図11Fは、腫瘍流入領域リンパ節における全CD4T細胞のパーセンテージとして活性化CD4T細胞の定量化を示す。
【0123】
図12図12は、CD8TILの更なるフローサイトメトリー分析を示す。BALB/CマウスにCT26結腸直腸がん細胞を接種し、図4に記載されているように、アイソタイプコントロール、抗PD-L1、抗TIGIT、又は抗PD-L1+抗TIGIT抗体で処置した。腫瘍を処置の7日後に収集し、フローサイトメトリーによって分析した。データは2回の独立した実験の代表値である;n=5。図12Aは、全CD8TILのパーセンテージとしてTNFα細胞の定量化を示す。**,P<0.01。図12Bは、全TILのパーセンテージとしてCD8TILの定量化を示す。**,P<0.01。図12Cは、全CD8TILのパーセンテージとして活性化(CD44highCD62Llow)CD8TILの定量化を示す。*,P<0.05。エラーバーは平均の標準誤差を示す。
【0124】
図13A図13は、腫瘍流入領域リンパ節常在CD8T細胞のフローサイトメトリー分析を示す。BALB/CマウスにCT26結腸直腸がん細胞を接種し、図4に記載されているように、アイソタイプコントロール、抗PD-L1、抗TIGIT、又は抗PD-L1+抗TIGIT抗体で処置した。腫瘍流入領域リンパ節を処置の7日後に収集し、フローサイトメトリーによって分析した。データは2回の独立した実験の代表値である;n=5。図13Aは、インビトロでの刺激後の腫瘍流入領域リンパ節常在CD8T細胞上にゲーティングされた代表的なFACSプロットを示し、IFNγ産生細胞はボックスで囲まれている。IFNγ細胞の定量化は全CD8T細胞のパーセンテージとしてである。***,P<0.001。
図13B-13D】図13Bは、腫瘍流入領域リンパ節における全細胞のパーセンテージとしてCD8T細胞の定量化を示す。図13Cは、全CD8T細胞のパーセンテージとして活性化(CD44highCD62Llow)CD8T細胞の定量化を示す。*,P<0.05。エラーバーは平均の標準誤差を示す。図13Dは、全腫瘍流入領域リンパ節CD8T細胞のパーセンテージとしてTNFα産生細胞の定量化を示す。
【0125】
図14図14は、腫瘍浸潤CD8+T細胞によるCD226とTIGITの同時発現を示す。C57BL6/JマウスにMC38結腸直腸がん細胞を接種した。接種のおよそ14日後に、脾細胞及び腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を分析したが、そのとき腫瘍はおよそ200mmのサイズに達した。脾臓B細胞(灰色)、脾臓CD8+T細胞(青色)、及びTIGIT+腫瘍浸潤CD8+T細胞(赤色)によるCD226発現の代表的なヒストグラム。データは2回の独立した実験の代表値である;n=5。
【0126】
図15図15は、トランスフェクト細胞上のCD226及びTIGITの共免疫沈降(co-IP)を示す。COS7細胞を、TIGIT-HA(5ng)又はCD226-Flag(10ng)タグ化タンパク質の何れかのcDNAを含む発現プラスミド、又はコントロールプラスミド(pRK)を用いて、同時トランスフェクトさせた。トランスフェクションに続いて、細胞を洗浄し、遠心分離し、細胞ペレットを可溶化した。得られた上清を前もって清澄化し、遠心分離した後、二つのチューブに等しく分割し、標準的な手順を使用して、抗HA又は抗flagの何れかで免疫沈降させた。免疫沈降したタンパク質をSDS-PAGEに供し、ウェスタンブロットした。ウェスタンブロットは抗Flag-HRP又は抗HA-HRPの何れかでプローブした。
【0127】
図16図16は、TIGITとCD226が一次CD8+T細胞において相互作用することを示している。MACS富化脾臓C57BL6/J CD8+T細胞を、48時間、プレート結合させた抗CD3及び抗CD28抗体及び組換えIL-2で刺激し、可溶化した。細胞可溶化物を抗TIGITで免疫沈降させ、抗CD226でプローブした。レーン:分子量ラダー(1)、インプット(2)、共免疫沈降フロースルー(3)、及び共免疫沈降物。矢印はCD226の予想された分子量を示す。
【0128】
図17図17は、TR-FRETによるTIGIT/CD226相互作用の検出を示す。図17Aは、HA-TIGITによるFlag-ST-CD226ホモ二量体の解離を示す。一定量のFlag-ST-CD226及び増加濃度のHA-TIGITを発現するCOS-7細胞上で測定されたFlag-ST-CD226間のFRET比。図17Bは、PBS(白色バー)又は抗TIGIT抗体(黒色バー)の何れかの15分のインキュベーション後に記録したFlag-ST-CD226間のFRET比を示す。図17Cは、HA-TIGITとのFlag-ST-CD226の結合を示す。Flag-ST-CD226発現に対するFlag-ST-CD226とHA-TIGITの間のFRET強度は、同じバッチのトランスフェクトCOS-7細胞上で抗Flag ELISAによって測定された。図17Dは、PBS(白色バー)又は抗TIGIT抗体(黒色バー)の15分のインキュベーション後のFlag-ST-CD226とHA-TIGITとの間のFRET変動を示す。A及びCにおけるデータは4回の独立した実験の代表値であり、各実験は三通り実施された。B及びDにおけるデータは2回の独立した実験の代表値であり、各実験は三通り実施された。
【0129】
図18図18は、Flag-ST-CD226及びHA-TIGITの細胞表面発現を示す。示されたタグ化コンストラクトを発現するインタクトCOS-7細胞上の抗Flag及び抗HA ELISA。データは3回の独立した実験の代表値であり、各実験は三通り実施された。
【0130】
図19A-19B】図19は、CD226遮断が、TIGIT/PD-L1共遮断によって誘導される亢進された抗ウイルスT細胞応答を逆転させることを示す。図19A-19Dにおいて、C57BL6/JマウスからCD4T細胞を短時間で枯渇させ、クローン13株LCMVで感染させた。マウスを、感染の28日後に開始して、アイソタイプ一致コントロール、抗CD226、抗PD-L1+抗TIGIT、又は抗PD-L1+抗TIGIT+抗CD226抗体で処置した。脾細胞及び肝臓ウイルス価を感染の42日後に分析した。図19Aは、脾細胞のパーセンテージとしてCD8T細胞の定量化を示す。図19Bは、全CD8T細胞のパーセンテージとして活性化CD8T細胞の定量化を示す。***,P<0.001。
図19C-19D】図19Cは、活性化CD8T細胞のパーセンテージとしてIFNγ産生細胞の定量化を示す。***,P<0.001。図19Dは、肝臓LCMV価の定量化を示す。***,P<0.001。エラーバーは平均の標準誤差を示す。
【0131】
図20A図20は、TIGIT発現がヒトがんにおいて上昇し、CD8及びPD-1と強く相関していることを示す。ヒトがんの遺伝子発現分析は実施例11に記載のように実施された。散布図は、ライブラリーサイズによって正規化された遺伝子当たりのカウントデータを示す。箱及びひげプロットは、TIGIT及びCD3eの分散安定化した発現比を示す。図20Aは、LUSC(灰色)及び正常な肺(黒色)におけるTIGIT及びCD3e RNA発現の相関を示す。ρ=0.86。TIGIT/CD3e発現比の定量化もまた示される。LUSC比の増加=372%。***,P=1.46×10-46
図20B図20Bは、COAD(灰色)及び正常な結腸(黒色)におけるTIGIT及びCD3e RNA発現の相関を示す。ρ=0.83。TIGIT/CD3e発現比の定量化もまた示される。COAD比の増加=116%。***,P=3.66×10-6
図20C図20Cは、UCEC(灰色)及び正常な子宮内膜(黒色)におけるTIGIT及びCD3e RNA発現の相関を示す。ρ=0.87。TIGIT/CD3e発現比の定量化もまた示される。UCEC比の増加=419%。***,P=7.41×10-5
図20D図20Dは、BRCA(灰色)及び正常な乳房(黒色)におけるTIGIT及びCD3e RNA発現の相関を示す。ρ=0.82。TIGIT/CD3e発現比の定量化もまた示される。BRCA比の増加=313%。***,P=4.6×10-44
図20E図20Eは、腎臓の腎臓明細胞がん(灰色)及び正常な腎臓(黒色)におけるTIGITとCD3eのRNA発現の相関を示す。ρ=0.94。TIGIT/CD3e発現比の定量化もまた示される。
図20F図20Fは、肺扁平上皮がん(灰色)及び正常な肺(黒色)におけるTIGITとCD8A(左)又はTIGITとCD4(右)の相関を示す。それぞれ、ρ=0.77及び0.48。
図20G-20H】図20Gは、肺扁平上皮がん(灰色)及び正常な肺(黒色)におけるTIGITとPD-1(Pdcd1)の相関を示す。ρ=0.82。図20Hは、肺扁平上皮がん(赤色)及び正常な肺(黒色)におけるTIGITとCD226の相関を示す。ρ=0.64。
【0132】
図21図21は、肺扁平上皮がん(LUSC)におけるT細胞随伴遺伝子発現の分析を示す。LUSC及び正常な組織試料中における遺伝子発現を、実施例11に記載されたようにして分析し、LUSC試料中における遺伝子サインと最も良好に相関した遺伝子のヒートマップを作成した。遺伝子及び試料を、中心化されスケール化された発現データに対してユークリッド距離行列上のWard連結を使用する階層的クラスタリングを使用して双方ともクラスター化した。
【0133】
図22A-22B】図22は、TIGITとPD-1がヒト及びマウス腫瘍浸潤リンパ球によって協調的に発現されることを示している。図22A-22Cは、新鮮に切除されたヒトNSCLC腫瘍、腫瘍が一致した末梢血、及び正常ドナーの末梢血由来のリンパ球の分析を示す。データは、2回の独立して分析された腫瘍の代表値である。図22Aは、末梢及び腫瘍浸潤CD8T細胞によるTIGIT発現を表す代表的なFACSプロットを示し、TIGIT細胞がボックスで囲まれている。図22Bは、末梢及び腫瘍浸潤CD4T細胞によるTIGIT発現を表す代表的なFACSプロットを示し、TIGIT細胞はボックスで囲まれている。
図22C-22E】図22Cは、PD-1high(赤色)及びPD-1low(青色)NSCLC浸潤CD8(左)及びCD4(右)T細胞によるTIGIT発現を表すフローサイトメトリーヒストグラムを示す。図22D-22Gにおいて、BALB/Cマウスに、同系CT26結腸直腸がん細胞を接種した。脾細胞及び腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を接種の14日後に分析したが、そのとき腫瘍はおよそ200mmのサイズに達していた。データは2回の独立した実験の代表値である;n=5-6。図22Dは、腫瘍浸潤CD8T細胞によるTIGIT発現の代表的なFACSプロットを示し、TIGIT細胞はボックスで囲まれている。図22Eは、腫瘍浸潤CD4T細胞によるTIGIT発現の代表的なFACSプロットを示し、TIGIT細胞はボックスで囲まれている。TIGITT細胞の発生頻度の定量化は全T細胞のパーセンテージとしてである。*,P=0.0134。***,P<0.0001。
図22F-22G】図22Fは、PD-1high及びPD-1low腫瘍浸潤CD8T細胞による及び脾臓CD8T細胞によるTIGIT発現を表すフローサイトメトリーヒストグラムを示す。TIGIT MFIの定量化もまた示される。**,P=0.0023。図22Gは、PD-1high及びPD-1low腫瘍浸潤CD4T細胞による及び脾臓CD4T細胞によるTIGIT発現を表すフローサイトメトリーヒストグラムを示す。TIGIT MFIの定量化もまた示される。***,P=0.0002。エラーバーは平均の標準誤差を示す。
【0134】
図23A-23C】図23は、ヒト腫瘍浸潤T細胞によるTIGIT発現の特徴付けを示す。図23A-23Bは、NSCLC腫瘍浸潤CD8+及びCD4+T細胞(図23A)による、及びドナー一致PBMCCD8+及びCD4+T細胞(図23B)によるTIGIT発現を示すFACSプロットを示し、TIGIT+細胞はボックスで囲まれている。図23Cは、CRC腫瘍浸潤CD8+及びCD4+T細胞(図23C)によるTIGIT発現を示すFACSプロットを示し、TIGIT+細胞はボックスで囲まれている。
図23D】ドナー一致PBMC CD8+及びCD4+T細胞(図23D)によるTIGIT発現を示すFACSプロットを示し、TIGIT+細胞はボックスで囲まれている。
【0135】
図24図24は、TIGIT:CD226相互作用が、TR-FRETによって検出されるPVR TIGIT:CD226及びTIGIT Q56R:CD226相互作用によって駆動されないことを示しており、Flag-ST-CD226及びHA-TIGIT又はHA-TIGIT Q56R間のFRET比が、WT及びQ56R TIGITがCD226に同じ効力で結合することを示している。データは3通り実施された3回の独立した実験の代表値である。
【0136】
図25A図25は、MC38腫瘍を持つマウスにおけるTIGIT/PD-L1抗体共遮断の効果を示す。図25A-25Cにおいて、MC38腫瘍を持つマウスは上述のようにして産生され、PD-L1(赤色)、TIGIT(青色)、TIGIT及びPD-L1(紫色)に対する阻止抗体、又はアイソタイプ一致コントロール抗体(黒色)で3週間、処置された。N=10(コントロール,抗PD-L1単独、抗TIGIT単独)又は20(抗TIGIT+抗PD-L1)。図25Aは、経時的なMC38腫瘍体積の中央値(左)及び個々の値(右)を示している。
図25B-25C】図25Bは、抗体処置の14日後のMC38腫瘍体積を示す。***,P=0.0005。**,P=0.0093。*,P=0.0433。図25Cは経時的なマウス生存率を示す。エラーバーは平均の標準誤差を示す。
【0137】
図26A-26C】図26は、マウス腫瘍浸潤T細胞によるTIGIT発現の更なる特徴付けを示す。図26Aは、脾臓C57BL6/J CD8T細胞をMACSによって富化させ、プレートに被覆した抗CD3及び抗CD28アゴニスト抗体と共に培養したことを示す。経時的なTIGIT(赤色)及びアイソタイプ一致コントロール(灰色の塗り潰し)染色の代表的なヒストグラム。TIGIT MFIの定量化。***,P<0.001。刺激された細胞はPD-1を誘導的に発現し、CD226を構成的に発現した(データは示さず)。データは、2回の独立した実験の代表値である;n=5。図26B-26Eにおいて、野生型C57BL6/Jマウスに同系MC38結腸直腸がん細胞を皮下的に接種した。腫瘍を、サイズが150-200mmに達するまで介入なしに成長させた。データは、2回の独立した実験の代表値である;n=5。図26Bは、腫瘍浸潤CD8T細胞の代表的なFACSプロットを示し、TIGIT細胞はボックスで囲まれている。TIGIT細胞の頻度の定量化は、全腫瘍浸潤又は脾臓CD8T細胞のパーセンテージとしてである。***,P<0.0001。図26Cは、腫瘍浸潤CD4T細胞の代表的なFACSプロットを示し、TIGIT細胞はボックスで囲まれている。TIGIT細胞の頻度の定量化は、全腫瘍浸潤又は脾臓CD4T細胞のパーセンテージとしてである。***,P<0.0001。
図26D-26E】図26Dは、PD-1high及びPD-1low腫瘍浸潤CD8T細胞(ぞれぞれ、赤色及び青色)による、並びに脾臓CD8T細胞(灰色)によるTIGIT発現の代表的なヒストグラムを示す。TIGIT MFIの定量化。***,P<0.0001。図26Eは、PD-1high及びPD-1low腫瘍浸潤CD4T細胞による、並びに脾臓CD4T細胞によるTIGIT発現の代表的なヒストグラムを示す。TIGIT MFIの定量化。*,P=0.0136。**,P=0.0029。エラーバーは平均の標準誤差を示す。
【0138】
図27図27は、腫瘍浸潤CD8及びCD4T細胞が高レベルのCD226発現を維持することを示す。野生型BALB/cマウスにここに記載のCT26腫瘍細胞を接種した。腫瘍がおよそ150-200mmのサイズになった後、腫瘍と脾臓をフローサイトメトリーによって分析した。図27Aは、CD226CD8T細胞、CD4T細胞、及び非T細胞の定量化を、それぞれ全CD8T細胞、CD4T細胞、及び非T細胞のパーセンテージとして示す。図27Bは、腫瘍と脾臓におけるCD226発現の代表的なヒストグラムを示す。データは、2回の独立した実験の代表値である;n=5.エラーバーは平均の標準誤差を示す。
【0139】
図28A図28は、CD8T細胞応答のTIGIT抑制がCD226に依存性であることを示す。BALB/Cマウスの右胸郭側腹部にCT26結腸直腸がん細胞を皮下的に接種した。腫瘍がおよそ200mmのサイズに達したとき、マウスをアイソタイプコントロール(黒色)、抗CD226(オレンジ色)、抗PD-L1(赤色)、抗TIGIT+抗PD-L1(紫色)、又は抗TIGIT+抗PD-L1+抗CD226(緑色)抗体で3週間処置した。データは1回の実験の代表値である;n=10(A-B)又は5(C-F)。図28Aは、経時的なCT26腫瘍体積の中央値(左)及び個々の値(右)を示す。
図28B-28F】図28Bは経時的なマウス生存率を示す。図28C-28Fにおいて、処置の7日後、腫瘍浸潤リンパ球及び腫瘍流入領域リンパ節常在リンパ球をフローサイトメトリーによって評価した。図28Cは、インビトロでの刺激後のIFNγ産生CD8TILの定量化を全CD8TILのパーセンテージとして示す。**,P<0.01。図28Dは、インビトロでの刺激後のIFNγ産生細胞の定量化を全CD8T細胞のパーセンテージとして示す。*,P<0.05。図28Eは、CD8TILの定量化を全TILのパーセンテージとして示す。**,P<0.01。図28Fは、CD8T細胞の定量化を、全腫瘍流入領域リンパ節常在リンパ球のパーセンテージとして示す。エラーバーは平均の標準誤差を示す。
【0140】
図29A-29D】図29は、TIGITがCD226ホモ二量体化を妨害することによってCD226機能を損なわせることを示す。図29Aは、CD8T細胞をTIGITfl/flCD4cre(CKO)及びTIGITfl/flCD4wt(WT)同腹仔からMACS富化させ、示されているように抗CD226又はアイソタイプ一致コントロール抗体の存在下で刺激したことを示す。H-チミジン取り込みは、抗CD3単独と共に培養された細胞に対する抗CD3+PVR-Fcと共に培養された細胞の比として示される。**,P=0.0061。***,P<0.0001。データは、2回の独立した実験の代表値である;n=5。図29Bは、野生型C57BL6/J CD8T細胞をMACS富化させ、示されているように抗TIGIT、抗CD226、及び/又はアイソタイプ一致コントロール抗体の存在下で刺激したことを示す。H-チミジン取り込みは、抗CD3単独と共に培養された細胞に対する抗CD3+PVR-Fcと共に培養された細胞の比として示される。***,対応t検定においてP<0.001。図29Cは、一次ヒトCD8T細胞を血液からMACS富化させ、ヒト組換えPVR-Fcの存在又は不存在下で最適以下レベルのプレート結合抗CD3で刺激したことを示している。抗TIGIT抗体又はアイソタイプ一致コントロール抗体を、示されたように加えた。H-チミジン取り込みの定量化。**,それぞれP=0.0071及び0.0014。図29Dは、CHO細胞を、示されているように、増加濃度のアクセプター及びドナーFLAG-ST-CD226で一過性にトランスフェクトしたことを示している。ドナー発光に対するFRET強度の定量化。データは、3回の独立した実験の代表値である;n=3。
図29E-29H】図29E-29Fにおいて、示されているように、CHO細胞を、FLAG-ST-CD226と増加濃度のHA-TIGITで一過性にトランスフェクトした。データは、2回以上の独立した実験の代表値である;n=4。データはシグナル最大値に対して正規化する。図29Eは、CD226:CD226 FRET比の定量化を示す(FRET比1)。図29Fは、TIGIT:CD226 FRET比の定量化を示す(FRET比2)。図29Gは、空のpRKベクター又はFlag-CD226とHA-TIGITの組み合わせの何れかでトランスフェクトされたCOS-7細胞から調製された抗FLAG又は抗HA免疫沈降の何れかで実施された抗FLAG(左)及び抗HA(右)免疫ブロットを示す。データは、2回の独立した実験の代表値である.図29Hは、PBS(白色)又は抗TIGIT抗体(赤色)と共にインキュベートした後のTIGIT:CD226 FRET比の定量化を示す。***,P<0.001。データは、4回の独立した実験の代表値である;n=3。エラーバーは平均の標準誤差を示す。
【0141】
図30図30は、一次ヒトT細胞を血液からMACS富化し、抗CD3及び抗CD28で刺激したことを示す。TIGIT及びTIGIT細胞を選別し、休止させ、再刺激し、示されている抗体でFRETに対して標識した。データは、2回の独立した実験の代表値である。***,P<0.001。エラーバーは平均の標準誤差を示す。
【0142】
図31図31は、TIGIT及びPD-1共遮断が、慢性ウイルス感染中に消耗CD4T細胞のエフェクター機能を回復させないことを示している。図31Aは、CD8T細胞の定量化を、全脾細胞のパーセンテージとして示す。図31Bは、GP33五量体細胞を、全脾臓CD8T細胞のパーセンテージとして示す。**,P=0.0040。図31Cは、インビトロでの刺激後にgp33五量体CD8T細胞上にゲーティングされた代表的なFACSプロットを示し、IFNガンマ細胞はボックスで囲まれている。IFNγ産生細胞の定量化は、全gp33五量体CD8T細胞のパーセンテージとしてである。*,P=0.0319。**,P=0.0030。エラーバーは平均の標準誤差を示す。
【0143】
図32A図32は、TIGIT/PD-L1共遮断効果がCD8T細胞に依存性であることを示す。図32A-32Bにおいて、野生型BALB/cマウスに、図7に記載のように、CT26腫瘍を接種した。腫瘍が100-150mmのサイズに達したとき、マウスからCD8T細胞を一時的に枯渇させ、抗TIGIT+抗PD-L1で処置した。データは1回の実験の代表値である;n=10/群。図32Aは、経時的なCT26腫瘍体積の中央値(左)及び個々の値(右)を示す。
図32B-32C】図32Bは、処置開始の17日後のCT26腫瘍体積の定量化を示す。***,P=0.0004。図32Cにおいて、野生型BALB/cマウスにCT26腫瘍を接種し、抗TIGIT+抗PD-L1で処置し、続いて、再暴露の時にCD8T細胞を一時的に枯渇させたCT26腫瘍を再暴露した。データは2回の実験の代表値である;n=5。図32Cは、経時的なCT26腫瘍体積の中央値(左)及び個々の値(右)を示す。エラーバーは平均の標準誤差を示す。
【0144】
図33図33は、腫瘍細胞上のPVR発現がTIGIT/PD-L1共遮断効果に不必要であることを示す。野生型BALB/cマウスに、記載されたようにして、野生型又はPVR欠損(PVR.KO)腫瘍を接種した。腫瘍が150-200mmのサイズに達したとき、マウスを抗TIGIT+抗PD-L1又はアイソタイプ一致コントロール抗体で処置した。データは1回の実験の代表値である;n=10/群。図33は、経時的なCT26腫瘍体積の中央値(左)及び個々の値(右)を示す。
【0145】
図34図34は、EMT6腫瘍を持つマウスにおけるTIGIT/PD-L1抗体共遮断の効果を示す。EMT6腫瘍を持つマウスを上記のようにして作製し、PD-L1(赤色)、TIGIT(青色)、TIGIT及びPD-L1(紫色)に対する阻止抗体又はアイソタイプ一致コントロール抗体(黒色)で3週間処置した。N=10(コントロール、抗PD-L1単独、抗TIGIT単独)又は20(抗TIGIT+抗PD-L1)。図34は、経時的なEMT6腫瘍体積の中央値(左)及び個々の値(右)を示す。
【0146】
図35図35は、TIGITが腫瘍浸潤CD8T細胞エフェクター機能を調節することを示す。BALB/Cマウスの右胸郭側腹部にCT26結腸直腸がん細胞を皮下的に接種し、図7に記載されているようにして、抗PD-L1、抗TIGIT、又は抗PD-L1+抗TIGITで処置した。腫瘍流入領域リンパ節(dLN)常在及び腫瘍浸潤T細胞を、処置開始の7日後にフローサイトメトリーによって分析した。データは、2回の独立した実験の代表値である;n=5。図35Aは、IFNγ/TNFα二重産生dLN常在CD8及びCD4T細胞の定量化を、それぞれ全dLN常在CD8及びCD4T細胞のパーセンテージとして示す。未刺激T細胞による二重のサイトカイン産生もまた示される。**,それぞれ、P=0.002、0.003、及び0.001。図35Bは、IFNγ/TNFα二重産生腫瘍浸潤CD8及びCD4T細胞の定量化を、それぞれ全腫瘍浸潤CD8及びCD4T細胞のパーセンテージとして示す。未刺激T細胞による二重のサイトカイン産生もまた示される。***,P<0.0001。エラーバーは平均の標準誤差を示す。
【0147】
図36図36は、切除されたヒトNSCLC腫瘍、腫瘍適合末梢血、及び正常ドナー末梢血からのリンパ球の分析を示す。データは、3回の独立して獲得された試料セットからプールされる。図36Aは、TIGIT細胞の定量化を全CD8T細胞のパーセンテージとして示す。*,P<0.05。図36Bは、TIGIT細胞の定量化を全CD4T細胞のパーセンテージとして示す。
【0148】
図37図37は、ヒト腫瘍中でのTIGIT発現の特徴付けを示す。図37Aは、サブセット一致アイソタイプ染色(灰色)に対するNSCLC腫瘍常在リンパ球(赤色,CD45FSClow)、骨髄系細胞(青色,CD45FSChigh)、及び非造血系細胞(緑色,CD45)によるTIGIT発現の代表的なフローサイトメトリーヒストグラムを示す。図37Bは、PD-1high及びPD-1lowNSCLC腫瘍浸潤CD8及びCD4T細胞に対するゲーティング方略を示す。
【発明を実施するための形態】
【0149】
I.一般的技術
ここに記載され又は参照される技術及び手順は、当業者により一般によく理解され、例えばSambrook等, Molecular Cloning: A Laboratory Manual 3版(2001) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.;Current Protocols in Molecular Biology (F.M. Ausubel等, 編, (2003));シリーズMethods in Enzymology(Academic Press, Inc.): PCR 2: A Practical Approach (M.J. MacPherson, B.D. Hames 及び G.R. Taylor編. (1995)), Harlow 及び Lane編 (1988) Antibodies, A Laboratory Manual, and Animal Cell Culture (R.I. Freshney編. (1987));Oligonucleotide Synthesis (M.J. Gait編, 1984);Methods in Molecular Biology, Humana Press; Cell Biology: A Laboratory Notebook (J.E. Cellis編, 1998) Academic Press; Animal Cell Culture (R.I. Freshney)編, 1987);Introduction to Cell and Tissue Culture (J.P. Mather 及び P.E. Roberts, 1998) Plenum Press;Cell and Tissue Culture: Laboratory Procedures (A. Doyle, J.B. Griffiths, 及びD.G. Newell編, 1993-8) J. Wiley and Sons; Handbook of Experimental Immunology (D.M. Weir 及び C.C. Blackwell編);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (J.M. Miller 及び M.P. Calos, 編, 1987);PCR: The Polymerase Chain Reaction, (Mullisら編, 1994);Current Protocols in Immunology (J.E. Coligan等編, 1991);Short Protocols in Molecular Biology (Wiley and Sons, 1999);Immunobiology (C.A. Janeway 及び P. Travers, 1997);Antibodies (P. Finch, 1997);Antibodies: A Practical Approach (D. Catty編, IRL Press, 1988-1989);Monoclonal Antibodies: A Practical Approach (P. Shepherd 及び C. Dean 編, Oxford University Press, 2000);Using Antibodies: A Laboratory Manual (E. Harlow 及び D. Lane (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1999);The Antibodies (M. Zanetti 及び J. D. Capra編, Harwood Academic Publishers, 1995);及びCancer: Principles and Practice of Oncology (V.T. DeVita等編, J.B. Lippincott Company, 1993)に記載されている広く使用されている方法のような常套的方法を使用して一般に用いられる。
【0150】
II.定義
「PD-1軸結合アンタゴニスト」なる用語は、T細胞機能(例えば、増殖、サイトカイン産生、標的細胞死滅)を回復させ又は増強するという結果を伴い、PD-1シグナル伝達軸上のシグナル伝達から生じるT細胞機能不全を除去するように、PD-1軸結合パートナーのその結合パートナーの一又は複数の何れかとの相互作用を阻害する分子である。ここで使用される場合、PD-1軸結合アンタゴニストは、PD-1結合アンタゴニスト、PD-L1結合アンタゴニスト及びPD-L2結合アンタゴニストを含む。
【0151】
「PD-1結合アンタゴニスト」なる用語は、PD-1と、その結合パートナーの一又は複数、例えばPD-L1、PD-L2との相互作用から生じるシグナル伝達を低減させ、ブロックし、阻害し、抑止し又は干渉する分子である。幾つかの実施態様では、PD-1結合アンタゴニストは、その結合パートナーへのPD-1の結合を阻害する分子である。特定の態様では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-L1及び/又はPD-L2に対するPD-1の結合を阻害する。例えば、PD-1結合アンタゴニストは、PD-L1及び/又はPD-L2とのPD-1の相互作用から生じるシグナル伝達を低減させ、ブロックし、阻害し、抑止し又は干渉する抗PD-1抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、及び他の分子を含む。一実施態様では、PD-1結合アンタゴニストは、機能不全T細胞の機能不全を低下させる(例えば、抗原認識に対するエフェクター応答を増強する)ように、PD-1を介したシグナル伝達を媒介したTリンパ球で発現される細胞表面タンパク質により又はそれを通して媒介される負の同時刺激シグナルを低減させる。幾つかの実施態様では、PD-1結合アンタゴニストは抗PD-1抗体である。特定の態様では、PD-1結合アンタゴニストはここに記載のMDX-1106である。他の特定の態様では、PD-1結合アンタゴニストはここに記載のメルク3745である。他の特定の態様では、PD-1結合アンタゴニストはここに記載のCT-011である。他の特定の態様では、PD-1結合アンタゴニストはここに記載のAMP-224である。
【0152】
「PD-L1結合アンタゴニスト」なる用語は、PD-L1と、その結合パートナーの何れか一又は複数、例えばPD-1、B7-1との相互作用から生じるシグナル伝達を低減し、ブロックし、阻害し、抑止し又は干渉する分子である。幾つかの実施態様では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1のその結合パートナーへの結合を阻害する分子である。特定の態様では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-1及び/又はB7-1へのPD-L1の結合を阻害する。幾つかの実施態様では、PD-L1結合アンタゴニストは、抗PD-L1抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、及びPD-L1と一又は複数のその結合パートナー、例えばPD-1、B7-1との相互作用から生じるシグナル伝達を低減、ブロック、阻害、抑止又は干渉する他の分子を含む。一実施態様では、PD-L1結合アンタゴニストは、機能不全T細胞の機能不全性が低下するように(例えば、抗原認識に対するエフェクター応答を増強させる)、PD-L1を介したシグナル伝達を媒介するTリンパ球において発現される細胞表面タンパク質により又はそれを通して媒介される負の同時刺激シグナルを低減させる。幾つかの実施態様では、PD-L1結合アンタゴニストは抗PD-L1抗体である。特定の態様では、抗PD-L1抗体はここに記載のYW243.55.S70である。他の特定の態様では、抗PD-L1抗体はここに記載のMDX-1105である。更に他の特定の態様では、抗PD-L1抗体はここに記載のMPDL3280Aである。他の特定の態様では、抗PD-L1抗体はここに記載のMEDI4736である。
【0153】
「PD-L2結合アンタゴニスト」なる用語は、PD-L2と、その結合パートナーの何れか一又は複数、例えばPD-1との相互作用に起因するシグナル伝達を低減し、ブロックし、阻害し、抑止し又は干渉する分子である。幾つかの実施態様では、PD-L2結合アンタゴニストは、PD-L2のその結合パートナーへの結合を阻害する分子である。特定の態様では、PD-L2結合アンタゴニストは、PD-1へのPD-L2の結合を阻害する。幾つかの実施態様では、PD-L2アンタゴニストは、抗PD-L2抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、及びPD-L2とその結合パートナーの何れか一又は複数、例えばPD-1との相互作用に起因するシグナル伝達を低減し、ブロックし、阻害し、抑止し又は干渉する他の分子を含む。一実施態様では、PD-L2結合アンタゴニストは、機能不全T細胞の機能不全性が低下するように(例えば、抗原認識に対するエフェクター応答を増強させる)、PD-L2を介したシグナル伝達を媒介するTリンパ球において発現される細胞表面タンパク質により又はそれを通して媒介される負の同時刺激シグナルを低減させる。幾つかの実施態様では、PD-L2結合アンタゴニストはイムノアドヘシンである。
【0154】
「アプタマー」なる用語は、ポリペプチドなどの標的分子に結合することができる核酸分子を指す。例えば、本発明のアプタマーは、TIGITポリペプチド、又はTIGITの発現を調節するシグナル伝達経路内の分子に特異的に結合することができる。アプタマーの生成及び治療的使用は当該分野において十分に確立されている。例えば、加齢性黄斑変性症の治療について、米国特許第5475096号及びMacugen(登録商標)(Eyetech, New York)の治療効果を参照のこと。
【0155】
「アンタゴニスト」なる用語は最も広い意味で用いられ、ここに開示された天然ポリペプチドの生物学的活性を部分的にもしくは完全に阻止し、阻害し、又は中和する任意の分子を含む。同様に「アゴニスト」なる用語は最も広い意味で用いられ、ここに開示された天然ポリペプチドの生物学的活性を模倣する任意の分子を含む。好適なアゴニスト又はアンタゴニスト分子は、特に、アゴニスト又はアンタゴニスト抗体又は抗体断片、天然ポリペプチドの断片又はアミノ酸配列変異体、ペプチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、有機小分子などを含む。ポリペプチドのアゴニスト又はアンタゴニストの同定方法は、ポリペプチドを候補アゴニスト又はアンタゴニスト分子と接触させ、ポリペプチドに正常には関連している一又は複数の生物学的活性の検出可能な変化を測定することを含みうる。
【0156】
「TIGITアンタゴニスト」及び「TIGIT活性又はTIGIT発現のアンタゴニスト」なる用語は、交換可能に用いられ、TIGITコード核酸の転写ないし翻訳を低減するか、又はTIGITポリペプチド活性を阻害ないしはブロックするか、又はその両方によって、TIGITの正常な機能を妨害する化合物を指す。TIGITアンタゴニストの例には、限定するものではないが、アンチセンスポリヌクレオチド、干渉RNA、触媒RNA、RNA-DNAキメラ、TIGIT特異的アプタマー、抗TIGIT抗体、抗TIGIT抗体のTIGIT結合断片、TIGIT結合小分子、TIGIT結合ペプチド、及びTIGITアンタゴニストとTIGITとの相互作用によりTIGITの活性又は発現の低減又は停止を生じさせるように、TIGITに特異的に結合する他のポリペプチド(限定するものではないが、場合によっては一又は複数の他のドメインと融合した、一又は複数のTIGITリガンドのTIGIT結合断片を含む)が含まれる。場合によっては、TIGITアンタゴニストが他のTIGIT活性に影響を及ぼさないで一つのTIGIT活性をアンタゴナイズしうることは、当業者に理解されるであろう。例えば、ここでの方法のあるものに使用するために望ましいTIGITアンタゴニストは、例えば他のTIGIT相互作用の何れにも影響しないか又は最小限の影響で、PVR相互作用、PVRL3相互作用、又はPVRL2相互作用のうちの一つに応答してTIGIT活性をアンタゴナイズするTIGITアンタゴニストである。
【0157】
「PVRアンタゴニスト」及び「PVR活性又はPVR発現のアンタゴニスト」なる用語は、交換可能に用いられ、PVRコード核酸の転写ないし翻訳を低減するか、又はPVRポリペプチド活性を阻害ないしはブロックするか、又はその両方によって、PVRの正常な機能を妨害する化合物を指す。PVRアンタゴニストの例には、限定するものではないが、アンチセンスポリヌクレオチド、干渉RNA、触媒RNA、RNA-DNAキメラ、PVR特異的アプタマー、抗PVR抗体、抗PVR抗体のPVR結合断片、PVR結合小分子、PVR結合ペプチド、及びPVRアンタゴニストとPVRとの相互作用によりPVRの活性又は発現の低減又は停止を生じさせるように、PVRに特異的に結合する他のポリペプチド(限定するものではないが、場合によって一又は複数の他のドメインと融合した、一又は複数のPVRリガンドのPVR結合断片を含む)が含まれる。場合によっては、PVRアンタゴニストが他のPVR活性に影響を及ぼさないで一つのPVR活性をアンタゴナイズしうることは、当業者に理解されるであろう。例えば、ここでの方法のあるものに使用するために望ましいPVRアンタゴニストは、PVR-CD96及び/又はPVR-CD226の相互作用に影響することなく、TIGIT相互作用に応答してPVR活性をアンタゴナイズするPVRアンタゴニストである。
【0158】
免疫機能不全の文脈における「機能不全」なる用語は、抗原刺激に対して免疫応答性が減少した状態を意味する。該用語は、抗原認識が生じうるが、その後の免疫応答が感染又は腫瘍増殖を制御するのに効果的ではない消耗及び/又はアネルギー両方の共通要素を含む。
【0159】
ここで使用される「機能障害性」なる用語は、抗原認識に対する難治性又は不応答性、特に、増殖、サイトカイン産生(例えば、IL-2)及び/又は標的細胞死滅のような、下流のT細胞のエフェクター機能に抗原認識を翻訳する能力の障害を含む。
【0160】
「アネルギー」なる用語は、T細胞受容体を介して送達される不完全又は不十分なシグナルから生じる抗原刺激に対する不応答の状態を言う(例えば、ras活性化の不存在下における細胞内Ca+2の増加)。また、T細胞アネルギーは、同時刺激の非存在下、抗原での刺激時に生じ得、同時刺激の文脈においてさえ、抗原による続く活性化に対して細胞が不応性になる。無応答状態は、しばしばインターロイキン-2の存在によって覆される場合がある。アネルギーT細胞は、クローン増殖を受けず、及び/又はエフェクター機能を獲得しない。
【0161】
「消耗(exhaustion)」なる用語は、多くの慢性感染症及びがんの間に生じる持続的なTCRシグナル伝達から生じるT細胞機能不全の状態としてのT細胞の消耗を意味する。それが不完全な又は不十分なシグナル伝達を通してではなく、持続的なシグナル伝達から生じるという点でアネルギーとは区別される。これは、乏しいエフェクター機能、阻害性受容体の持続的な発現、及び機能的エフェクター又はメモリーT細胞のそれとは異なる転写状態により定まる。消耗は、感染や腫瘍の最適な調節を妨げる。消耗は、外因性の負の調節経路(例えば、免疫調節サイトカイン)、並びに細胞内因性の負の調節(同時刺激)経路(PD-1、B7-H3、B7-H4など)の両方から生じうる。
【0162】
「T細胞機能の亢進」は、持続又は増幅された生物学的機能を有するようにT細胞を誘導し、強いり又は刺激し、もしくは消耗した又は不活性なT細胞を再生又は再活性化することを意味する。T細胞機能の亢進の例は、介入前のそのレベルに対しての、CD8T細胞からのγ-インターフェロンの分泌増加、増殖増加、抗原応答性増加(例えば、ウイルス、病原体、又は腫瘍クリアランス)を含む。一実施態様では、亢進のレベルは少なくとも50%、又は60%、70%、80%、90%、100%、120%、150%、200%である。この亢進を測定する方法は当業者に知られている。
【0163】
「T細胞機能不全疾患」は、抗原刺激に対する応答性の低下によって特徴付けられるT細胞の疾患又は病態である。特定の実施態様では、T細胞機能不全疾患は、PD-1を介した不適切なシグナル伝達の増加に特に関連している疾患である。別の実施態様では、T細胞機能不全疾患は、T細胞がアネルギー性であるか、又はサイトカインを分泌し、増殖し、又は細胞溶解活性を実行する能力が低下しているものである。特定の態様では、応答性の減少により、免疫原を発現する病原体又は腫瘍に対して効果のない制御となる。T細胞機能不全を特徴とするT細胞機能不全疾患の例は、未消散急性感染症、慢性感染症や腫瘍免疫を含む。
【0164】
「腫瘍免疫」は、腫瘍が免疫認識及びクリアランスを回避するプロセスを意味する。従って、治療概念として、腫瘍免疫は、このような回避が減衰されるとき「治療され」、腫瘍は、免疫系によって認識され、攻撃される。腫瘍認識の例は、腫瘍結合、腫瘍縮小及び腫瘍クリアランスを含む。
【0165】
「免疫原性」は、免疫応答を誘発する特定の物質の能力をいう。腫瘍は免疫原性であり、腫瘍免疫原性の増強が免疫応答による腫瘍細胞のクリアランスに役立つ。腫瘍免疫原性の亢進の例は、限定されないが、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば抗PD-L1抗体)及びTIGIT阻害剤(例えば抗TIGIT抗体)での処置を含む。
【0166】
「持続応答」は、処置の中止後の腫瘍増殖の低減に対する持続効果を意味する。例えば、腫瘍サイズは、投与フェーズの開始時におけるサイズと比較して同じか又は小さいままでありうる。幾つかの実施態様では、持続応答は、少なくとも治療期間と同じか、又は治療期間の少なくとも1.5×、2.0×、2.5×、又は3.0×の長さである。
【0167】
「抗体」なる用語は、モノクローナル抗体(免疫グロブリンFc領域を有する完全長抗体を含む)、多エピトープ特異性を有する抗体組成物、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体、ダイアボディ、及び単鎖分子、並びに抗体断片(例えば、Fab、F(ab')、及びFv)を含む。「免疫グロブリン」(Ig)なる用語は、ここでの「抗体」と交換可能に使用される。
【0168】
塩基性4鎖抗体単位は、2つの同一の軽(L)鎖と2つの同一の重(H)鎖からなるヘテロ四量体糖タンパク質である。IgM抗体は、J鎖と称される更なるポリペプチドと共に5つの塩基性ヘテロ四量体単位からなり、10の抗原結合部位を有する一方、IgA抗体は、重合してJ鎖と共に多価集合体を形成可能な2-5の塩基性4鎖単位を含む。IgGの場合、4鎖単位は一般的に約150000ダルトンである。各L鎖は一つの共有ジスルフィド結合によりH鎖に連結される一方、2つのH鎖はH鎖アイソタイプに応じて、一又は複数のジスルフィド結合により互いに連結される。また各H及びL鎖は、規則的に離間した鎖内ジスルフィド架橋を有している。各H鎖は、N末端に可変ドメイン(V)と、これに続いてα及びγ鎖それぞれに対して3つの定常ドメイン(C)と、μ及びεアイソタイプに対しては4つのCドメインを有する。各L鎖は、N末端に可変ドメイン(V)と、これに続いてその他端に定常ドメインを有する。VはVに整列しており、Cは重鎖の第1定常ドメイン(C1)に整列している。特定のアミノ酸残基は軽鎖と重鎖の可変ドメインの界面を形成すると考えられている。VとVは対で一緒になって、単一の抗原結合部位を形成している。異なったクラスの抗体の構造及び特性については、例えば、Basic and Clinical Immunology, 第8版, Daniel P. Stites, Abba I. Terr and Tristram G. Parslow(編), Appleton & Lange, Norwalk, CT, 1994, 71頁, 6章を参照のこと。任意の脊椎動物種由来のL鎖は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、カッパ及びラムダと称される、明確に区別される2つのタイプの一方を割り当てることができる。それらの重鎖の定常ドメイン(CH)のアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは、種々のクラス又はアイソタイプに割り当てることができる。免疫グロブリンには、それぞれ、α、δ、ε、γ及びμと命名された重鎖を有するIgA、IgD、IgE、IgG及びIgMの5つのクラスがある。γ及びαクラスは、CH配列及び機能の比較的小さな差異に基づいてサブクラスに更に分割され、例えばヒトは、次のサブクラス:IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2を発現する。
【0169】
抗体の「可変領域」又は「可変ドメイン」とは、抗体の重鎖又は軽鎖のアミノ末端ドメインを意味する。重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、それぞれ「VH」及び「VL」とも称されうる。これらのドメインは一般的に(同じクラスの他の抗体と比較して)抗体の最も可変の部分であり、抗原結合部位を含む。
【0170】
「可変」なる用語は、可変ドメインのあるセグメントが、抗体間で配列が広範に相違しているという事実を意味する。Vドメインは抗原結合を媒介し、特定の抗体のその特定の抗原への特異性を定める。しかしながら、可変性は、可変ドメインの全スパンにわたって均一に分布しているのではない。代わりに、それは、軽鎖及び重鎖の可変ドメインの両方の高頻度可変領域(HVR)と呼ばれる3つのセグメントに濃縮されている。可変ドメインのより高度に保存された部分はフレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、βシート構造に連結し、ある場合にはその一部を形成するループを形成する3つのHVRにより連結されたβシート配置を主にとる4つのFR領域をそれぞれ含んでいる。各鎖のHVRは、FR領域によって近接して保持され、他の鎖由来のHVRと共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与している(Kabat等, Sequences of Immunological Interest, 第5版, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991)を参照)。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関連しているものではないが、様々なエフェクター機能、例えば抗体依存性細胞傷害への抗体の関与を示す。
【0171】
ここで使用される「モノクローナル抗体」なる用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を意味し、すなわち、集団に含まれる個々の抗体は、少量で存在しうる自然に生じる可能性がある突然変異及び/又は翻訳後修飾(例えば、異性化、アミド化)を除いて同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原部位に対するものである。異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的には含むポリクローナル抗体調製物に対し、各モノクローナル抗体は抗原の単一の決定基に対するものである。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ培養物により合成され、他の免疫グロブリンによって汚染されていない点で有利である。「モノクローナル」との修飾詞は、実質的に均一な抗体集団から得られているという抗体の特徴を示し、抗体を何らかの特定の方法で生産する必要があると解釈されるものではない。例えば、本発明において使用されるモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法(例えば、Kohler及びMilstein., Nature, 256:495-97(1975);Hongo等, Hybridoma, 14(3):253-260(1995), Harlow等, Antibodies: A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press, 第2版1988); Hammerling等 Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas, 563-681(Elsevier, N.Y., 1981))、組換えDNA法(例えば、米国特許第4816567号を参照)、ファージディスプレイ技術(例えば、Clackson等, Nature, 352: 624-628(1991);Marks等, J. Mol. Biol., 222:581-597(1992);Sidhu等, J. Mol. Biol., 338(2):299-310(2004);Lee等, J. Mol. Biol., 340(5):1073-1093(2004);Fellouse, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 101(34):12467-12472(2004);及びLee等, J. Immunol. Methods, 284(1-2):119-132(2004)、及びヒト免疫グロブリン座位又はヒト免疫グロブリン配列をコードする遺伝子の一部又は全部を有する、ヒト又はヒト様抗体を動物において産生させるための技術(例えば、国際公開第1998/24893号;国際公開第1996/34096号;国際公開第1996/33735号;国際公開第1991/10741号;Jakobovits等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:2551(1993);Jakobovits等, Nature, 362: 255-258(1993);Bruggemann等, Year in Immunol., 7:33(1993);米国特許第5545807号;同5545806号;同5569825号;同5625126号;同5633425号;及び同5661016号;Marks等, Bio/Technology, 10: 779-783(1992);Lonberg等, Nature, 368:856-859(1994);Morrison, Nature, 368:812-813(1994);Fishwild等, Nature Biotechnol., 14:845-851(1996);Neuberger, Nature Biotechnol., 14:826(1996);及びLonberg及びHuszar, Intern. Rev. Immunol., 13:65-93(1995)を参照)を含む、様々な技術により作製されうる。
【0172】
「ネイキッド抗体」なる用語は、細胞傷害性部分又は放射標識にコンジュゲートされていない抗体を意味する。
【0173】
「完全長抗体」、「インタクト抗体」及び「全抗体」なる用語は、交換可能に使用され、抗体断片とは異なり、その実質的にインタクトな形態の抗体を意味する。特に、全抗体は、Fc領域を含む重鎖及び軽鎖を有するものを含む。定常ドメインは天然配列定常ドメイン(例えば、ヒト天然配列定常ドメイン)又はそのアミノ酸配列変異体でありうる。幾つかの場合、インタクト抗体は一又は複数のエフェクター機能を有しうる。
【0174】
「抗体断片」は、インタクト抗体の一部、好ましくはインタクト抗体の抗原結合及び/又は可変領域を含む。抗体断片の例には、Fab、Fab'、F(ab')、及びFv断片;ダイアボディ;線形抗体(米国特許第5641870号, 実施例2;Zapata等Protein Eng. 8(10): 1057-1062[1995]);単鎖抗体分子及び抗体断片から形成された多重特異性抗体が含まれる。抗体のパパイン消化は、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗体結合断片と、容易に結晶化する能力を反映した命名である残留「Fc」断片を生成する。Fab断片は、H鎖(V)の可変領域ドメイン、及び一方の重鎖の第1定常ドメイン(C1)と共に、全L鎖とからなる。各Fab断片は抗原結合に対して一価である、すなわち単一の抗原結合部位を有する。抗体のペプシン処理により、異なる抗原結合活性を有する2つのジスルフィドに連結したFab断片にほぼ相当し、抗原を尚も架橋結合できる、単一の大きなF(ab')断片を生じる。Fab'断片は、抗体ヒンジ領域からの一又は複数のシステインを含むC1ドメインのカルボキシ末端に数個の更なる残基を有することによりFab断片とは異なる。Fab'-SHは、定常ドメインのシステイン残基(群)が遊離チオール基を担持しているFab'に対するここでの命名である。F(ab')抗体断片は、間にヒンジシステインを有するFab'断片の対として産生された。抗体断片の他の化学結合もまた知られている。
【0175】
Fc断片は、ジスルフィドにより互いに保持された双方のH鎖のカルボキシ末端部分を含む。抗体のエフェクター機能は、Fc領域における配列により決定され、該領域はある種の細胞に見出されるFcレセプター(FcR)によりまた認識される。
【0176】
「Fv」は、完全な抗原認識及び結合部位を含む最小抗体断片である。この断片は、堅固な非共有結合をなした一つの重鎖及び一つの軽鎖可変領域ドメインの二量体からなる。これら2つのドメインの折り畳みから、抗原結合のためのアミノ酸残基に寄与し、抗体に抗原結合特異性を付与する6つの高頻度可変ループ(H及びL鎖からそれぞれ3つのループ)が生じる。しかしながら、単一の可変ドメイン(又は抗原に対して特異的な3つのHVRのみを含むFvの半分)でさえ、全結合部位よりも親和性が低くなるが、抗原を認識してそれに結合する能力を有している。
【0177】
「sFv」又は「scFv」とも略される「単鎖Fv」は、単一のポリペプチド鎖に連結されるV及びV抗体ドメインを含む抗体断片である。好ましくは、sFvポリペプチドは、sFvが抗原結合に望ましい構造の形成を可能にするポリペプチドリンカーをVとVドメインの間に更に含む。sFvの概説については、Pluckthun, The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg及びMoore編, Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994)を参照のこと。
【0178】
本発明の抗体の「機能的断片」は、一般にはインタクト抗体の抗原結合又は可変領域あるいはFcR結合能力を保持しているかもしくは修飾されたFcR結合能力を有している抗体のFc領域を含む、インタクト抗体の一部を含む。抗体断片の例としては、線形抗体、単鎖抗体分子及び抗体断片から形成される多重特異性抗体が含まれる。
【0179】
「ダイアボディ」なる用語は、Vドメインの鎖内ではなく鎖間ペアリングが達成され、よって二価断片、すなわち2つの抗原-結合部位を有する断片に至るように、V及びVドメイン間に、短いリンカー(約5-10残基)を有するsFv断片(前述の段落を参照)を構築することにより調製される小さい抗体断片を意味する。二重特異性ダイアボディは、2つの抗体のV及びVドメインが異なるポリペプチド鎖上に存在している2つの「クロスオーバー」sFv断片のヘテロ二量体である。ダイアボディは、例えば欧州特許第404097号;国際公開第93/11161号;及びHollinger等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 6444-6448 (1993)に更に詳細に記載されている。
【0180】
ここでのモノクローナル抗体は、重鎖及び/又は軽鎖の一部が、特定の種由来の抗体、あるいは特定の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一であるか相同であり、鎖の残りの部分が他の種由来、あるいは他の抗体クラスあるいはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一であるか相同である「キメラ」抗体(免疫グロブリン)、並びにそれが所望の生物的活性を有する限りそれら抗体の断片を特に含む(米国特許第4816567号、及びMorrison等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855(1984))。ここで関心あるキメラ抗体は、抗体の抗原結合領域が、例えば関心ある抗体を用いてマカクザルを免疫化することにより産生される抗体から誘導されたものであるPRIMATIZED(登録商標)抗体を含む。ここで使用される場合、「ヒト化抗体」は「キメラ抗体」のサブセットを使用する。
【0181】
非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」形とは、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むキメラ抗体である。一実施態様では、ヒト化抗体は、レシピエントのHVR(以下に定める)の残基が、マウス、ラット、ウサギ又は非ヒト霊長類のような所望の特異性、親和性及び/又は能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)のHVRの残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。幾つかの例において、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク(「FR」)残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見出されない残基を含みうる。これらの修飾は抗体の性能、例えば結合親和性を更に洗練するためになされうる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、全てあるいはほとんど全ての高度可変ループが非ヒト免疫グロブリン配列のものに対応し、全てあるいはほとんど全てのFR領域がヒト免疫グロブリン配列のものであるが、FR領域は、抗体の性能、例えば結合親和性、異性化、免疫原性等を改善する、一又は複数の個々のFR残基置換を含みうる。FRにおけるこれらのアミノ酸置換の数は、典型的には、H鎖においては6以下、L鎖においては3以下である。ヒト化抗体は、場合によっては、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒトの免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含む。更なる詳細は、例えばJones等, Nature 321, 522-525(1986);Reichmann等, Nature 332, 323-329(1988);及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2, 593-596(1992)を参照のこと。また、例えば、Vaswani及びHamilton, Ann. Allergy, Asthma & Immunol., 1:105-115(1998);Harris, Biochem. Soc. Transactions, 23:1035-1038(1995);Hurle 及びGross, Curr. Op. Biotech., 5:428-433(1994);及び米国特許第6982321号及び同第7087409号を参照のこと。
【0182】
「ヒト抗体」は、ヒトによって産生される抗体のものに相当するアミノ酸配列を有する抗体、及び/又はここに開示されたヒト抗体を作製するための技術の何れかを使用して作製された抗体である。ヒト抗体のこの定義は、特に非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を除く。ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリーを含む、当該分野で既知の様々な技術を使用して産生することができる。Hoogenboom及びWinter, J. Mol. Biol., 227:381(1991);Marks等, J. Mol. Biol., 222:581(1991)。また、ヒトモノクローナル抗体の調製に有用なのは、Cole等, Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R.Liss, p. 77(1985);Boerner等, J. Immunol., 147(1):86-95(1991)に記載の方法である。また、van Dijk及びvan de Winkel, Curr. Opin. Pharmacol., 5: 368-74(2001)を参照のこと。ヒト抗体は、抗原暴露に応答してこのような抗体が産生するように修飾されているが、その内在性座位が無能にされているトランスジェニック動物、例えば免疫化キセノマウスに抗原を投与することにより調製することができる(例えば、XENOMOUSETM技術に関し、米国特許第6075181号及び同6150584号を参照)。また、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術を介して産生されるヒト抗体に関しては、例えば、Li等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 103:3557-3562(2006)を参照のこと。
【0183】
ここで使用される場合、「高頻度可変領域」、「HVR」又は「HV」なる用語は、配列において高頻度可変であり、及び/又は構造的に定まったループを形成する抗体可変ドメインの領域を意味する。一般に、抗体は6つのHVRを含む;つまり、VHに3つ(H1、H2、H3)、VLに3つ(L1、L2、L3)である。天然の抗体では、H3及びL3は6つのHVRの最大の多様性を示し、特にH3は抗体に微細な特異性を付与するのに独特の役割を果たすと考えられている。例えばXu等, Immunity 13:37-45 (2000);Johnson及びWu, Methods in Molecular Biology 248:1-25 (Lo編, Human Press, Totowa, NJ, 2003)を参照。確かに、重鎖のみからなる天然に生じるラクダ抗体は、軽鎖の不存在下で機能的で安定である。例えば、Hamers-Casterman等, Nature 363:446-448 (1993);Sheriff等, Nature Struct. Biol. 3:733-736 (1996)を参照。
【0184】
多数のHVRの描写が使用され、ここで包含される。カバット相補性決定領域(CDR)は配列可変性に基づいており、最も一般的に使用されている(Kabat党, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第5版. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991))。Chothiaは、代わりに構造ループの位置を指している(Chothia及びLesk, J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987))。AbM HVRは、カバットCDRとChothia構造ループの間の妥協を表し、オックスフォード・モレキュラーのAbM抗体モデリングソフトウェアにより使用される。「接触」HVRは、利用できる複合体結晶構造の分析に基づく。これらHVRのそれぞれの残基を以下に記す。
ループ カバット AbM Chothia 接触
L1 L24-L34 L24-L34 L26-L32 L30-L36
L2 L50-L56 L50-L56 L50-L52 L46-L55
L3 L89-L97 L89-L97 L91-L96 L89-L96
H1 H31-H35B H26-H35B H26-H32 H30-H35B (カバット番号付け)
H1 H31-H35 H26-H35 H26-H32 H30-H35 (Chothia 番号付け)
H2 H50-H65 H50-H58 H53-H55 H47-H58
H3 H95-H102 H95-H102 H96-H101 H93-H101
【0185】
HVRは次の通り「拡張HVR」を含みうる:VL中の24-36又は24-34(L1)、46-56又は50-56(L2)及び89-97又は89-96(L3)と、VH中の26-35(H1)、50-65又は49-65(H2)及び93-102、94-102又は95-102(H3)。これらの定義の各々に対して上掲のKabat等に従って、可変ドメイン残基を番号付けした。
【0186】
「カバットにおける可変ドメイン残基番号付け」又は「カバットにおけるアミノ酸位置番号付け」なる表現及びその変形は、上掲のKabat等における抗体の編集の重鎖可変ドメイン又は軽鎖可変ドメインについて使用される番号付けシステムを意味する。この番号付けシステムを使用すると、実際の線形アミノ酸配列は、可変ドメインのFR又はHVRを短くするか、又はそこへの挿入に対応するより少ない又は付加的なアミノ酸を含みうる。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後に単一のアミノ酸挿入(カバットに従い残基52a)、及び重鎖FR残基82の後に挿入残基(例えば、カバットに従い残基82a、82b、及び82c等)を含む。残基のカバット番号付けは、「標準的な」カバット番号の配列と抗体配列を相同領域でアラインメントさせることにより、与えられた抗体に対して決定されうる。
【0187】
「フレームワーク」又は「FR」残基は、ここで定義されるHVR残基以外の可変ドメイン残基である。
【0188】
「ヒトコンセンサスフレームワーク」又は「アクセプターヒトフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVL又はVHフレームワーク配列の選択において、最も一般的に生じるアミノ酸残基を表すフレームワークである。一般的に、ヒト免疫グロブリンVL又はVH配列の選択は、可変ドメイン配列のサブグループからである。一般的に、配列のサブグループは、Kabat等, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第5版. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD(1991)にあるようなサブグループである。具体例には以下のものが含まれ、VLについて、サブグループは、上掲のKabat等におけるような、サブグループカッパI、カッパII、カッパIII又はカッパIVでありうる。更に、VHについて、サブグループは、上掲のKabat等におけるような、サブグループI、サブグループII、又はサブグループIIIでありうる。あるいは、ヒトコンセンサスフレームワークは、ヒトフレームワーク残基が、様々なヒトフレームワーク配列のコレクションとドナーフレームワーク配列を整列させることによって、ドナーフレームワークに対するその相同性に基づいて選択される場合のように、上記の特定の残基から誘導することができる。ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワーク「から誘導される」アクセプターヒトフレームワークは、その同じアミノ酸配列を含んでもよく、又は既存のアミノ酸配列変化を含んでいてもよい。幾つかの実施態様では、既存のアミノ酸変化の数は、10以下、又は9以下、又は8以下、又は7以下、又は6以下、又は5以下、又は4以下、又は3以下、又は2以下である。
【0189】
「VHサブグループIIIコンセンサスフレームワーク」は、上掲のKabat等の可変重サブグループIIIにおけるアミノ酸配列から得られるコンセンサス配列を含む。一実施態様では、VHサブグループIIIコンセンサスフレームワークのアミノ酸配列は、次の配列:EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAAS(HC-FR1)(配列番号:25)、WVRQAPGKGLEWV(HC-FR2)、(配列番号:26)、RFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCAR(HC-FR3、配列番号:27)、WGQGTLVTVSA(HC-FR4)(配列番号:28)のそれぞれの少なくとも一部又は全てを含む。
【0190】
「VLカッパIコンセンサスフレームワーク」は、上掲のKabat等の可変軽カッパサブグループIのアミノ酸配列から得られるコンセンサス配列を含む。一実施態様では、VHサブグループIコンセンサスフレームワークのアミノ酸配列は、次の配列:DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC(LC-FR1)(配列番号:29)、WYQQKPGKAPKLLIY(LC-FR2)(配列番号:30)、GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYC(LC-FR3)(配列番号:31)、FGQGTKVEIKR(LC-FR4)(配列番号:32)のそれぞれの少なくとも一部又は全てを含む。
【0191】
例えばFc領域での、特定の位置における「アミノ酸修飾」とは、特定の残基の置換又は欠失、又は特定の残基に隣接した少なくとも一つのアミノ酸残基の挿入を意味する。特定の残基に「隣接する」挿入とは、 その1から2残基内への挿入を意味する。挿入は、特定の残基に対してN末端又はC末端でありうる。ここでの好ましいアミノ酸修飾は置換である。
【0192】
「親和性成熟」抗体とは、その変化を有しない親抗体と比較し、抗原に対する抗体の親和性に改良を生じせしめる、その一又は複数のHVRにおける一又は複数の変化を伴うものである。一実施態様では、親和性成熟抗体は、標的抗原に対してナノモル又はピコモルさえの親和性を有する。親和性成熟抗体は、当該分野において知られている手順によって産生される。例えば、Marks等, Bio/Technology, 10:779-783(1992)は、VH及びVLドメインのシャッフリングによる親和性成熟について記載している。HVR及び/又はフレームワーク残基のランダム突然変異誘発は、例えばBarbas等, Proc Nat Acad. Sci, USA 91:3809-3813(1994);Schier等, Gene, 169:147-155(1995);Yelton等, J. Immunol.155:1994-2004(1995);Jackson等, J. Immunol.154(7):3310-9(1995);及びHawkins等, J. Mol. Biol.226:889-896(1992)によって記載されている。
【0193】
ここで使用される場合、「特異的に結合する」又は「に特異的」であるとの用語は、生体分子を含む分子の異種集団の存在下、標的の存在を決定する、標的と抗体との間の結合などの測定可能で再現性のある相互作用を意味する。例えば、標的(エピトープでありうる)に特異的に結合する抗体は、それが他の標的に結合するよりも高い親和性、結合活性、容易性、及び/又は期間で、この標的に結合する抗体である。一実施態様では、無関係な標的への抗体の結合の程度は、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)により測定された場合、標的に対する抗体の結合の約10%未満である。所定の実施態様では、標的に特異的に結合する抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、又は≦0.1nMの解離定数(Kd)を有する。所定の実施態様では、抗体は、異なる種からのタンパク質間で保存されているタンパク質上のエピトープに特異的に結合する。別の実施態様では、特異的結合は、排他的結合を含みうるが、それを必要とはしない。
【0194】
ここで用いられる場合、「イムノアドヘシン」なる用語は、異種タンパク質(「アドヘシン」)の結合特異性を免疫グロブリン定常ドメインのエフェクター機能と組合せた抗体様分子を指す。構造的には、イムノアドヘシンは、抗体の抗原認識及び結合部位以外である(即ち「異種」である)所望の結合特異性を持つアミノ酸配列と、免疫グロブリン定常ドメイン配列との融合体を含む。イムノアドヘシン分子のアドへシン部分は、典型的にはレセプター又はリガンドの結合部位を少なくとも含む隣接アミノ酸配列である。イムノアドヘシンの免疫グロブリン定常ドメイン配列は、IgG-1、IgG-2(IgG2A及びIgG2Bを含む)、IgG-3、又はIgG-4サブタイプ、IgA(IgA-1及びIgA-2を含む)、IgE、IgD又はIgM等の任意の免疫グロブリンから得ることができる。Ig融合体は、好ましくはIg分子内の少なくとも一つの可変領域に換えて、ここに記載の抗体又はポリペプチドのドメインの置換を含む。特に好ましい実施態様では、免疫グロブリン融合体は、IgG1分子のヒンジ、CH2及びCH3、又はヒンジ、CH1、CH2及びCH3領域を含む。免疫グロブリン融合体の製造については、1995年6月27日発行の米国特許第5428130号を参照のこと。例えば、ここに記載の併用療法に有用な第2の医薬として有用なイムノアドヘシンは、それぞれ、PD-L1 ECD-Fc、PD-L2 ECD-Fc、及びPD-1 ECD-Fc等、免疫グロブリン配列の定常ドメインに融合した、PD-L1又はPD-L2の細胞外又はPD-1結合部分、もしくはPD-1の細胞外又はPD-L1又はPD-L2結合部分を含むポリペプチドを含む。細胞表面レセプターのIg Fc及びECDのイムノアドヘシン組み合わせは、時々、可溶性レセプターと呼ばれる。
【0195】
「融合タンパク質」及び「融合ポリペプチド」は、その部分の各々が異なる特性を有するポリペプチドである、互いに共有結合した2つの部分を有するポリペプチドを意味する。特性は生物学的特性、例えばインビトロ又はインビボでの活性でありうる。また特性は、単に化学的又は物理学的特性、例えば標的分子への結合性、反応の触媒性等でもありうる。2つの部分は単一のペプチド結合によって、又はペプチドリンカーを介して直接連結しうるが、互いに読み枠内にある。
【0196】
「PD-1オリゴペプチド」、「PD-L1オリゴペプチド」、又は「PD-L2オリゴペプチド」は、それぞれPD-1、PD-L1又はPD-L2のネガティブ同時刺激ポリペプチドと、好ましくは特異的に、結合するオリゴペプチドであり、それぞれ、ここに記載のレセプター、リガンド又はシグナル伝達成分を含む。このようなオリゴペプチドは、既知のオリゴペプチド合成法を使用して化学的に合成することができ、あるいは組換え技術を使用して調製し精製することができる。このようなオリゴペプチドは通常、少なくとも約5アミノ酸長、あるいは少なくとも約6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、又は100アミノ酸長以上である。このようなオリゴペプチドは、よく知られている技術を用いて同定することができる。これに関して、ポリペプチド標的に特異的に結合する能力のあるオリゴペプチドについてオリゴペプチドライブラリーをスクリーニングするのための技術は、当該分野で周知であることに留意されたい(例えば、米国特許第5556762号、5750373号、4708871号、4833092号、5223409号、5403484号、5571689号、5663143号、PCT公開番号国際公開第84/03506号及び同84/03564号;Geysen等, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 81:3998-4002 (1984); Geysen等, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 82:178-182 (1985);Geysen等, Synthetic Peptides as Antigens, 130-149 (1986);Geysen等, J. Immunol. Meth., 102:259-274 (1987);Schoofs等, J. Immunol., 140:611-616 (1988), Cwirla, S. E等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:6378 (1990);Lowman, H.B等 Biochemistry, 30:10832 (1991);Clackson, T等 Nature, 352: 624 (1991);Marks, J. D等, J. Mol. Biol., 222:581 (1991);Kang, A.S.等 Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:8363 (1991)、及び Smith, G. P., Current Opin. Biotechnol., 2:668 (1991)を参照)。
【0197】
「阻止」抗体又は「アンタゴニスト」抗体は、それが結合する抗原の生物活性を抑制し又は低減するものである。幾つかの実施態様では、阻止抗体又はアンタゴニスト抗体は、抗原の生物活性を実質的に又は完全に阻害する。本発明の抗PD-L1抗体は、抗原刺激に対する機能不全状態から、T細胞による機能的応答(例えば、増殖、サイトカイン産生、標的細胞死滅化)を回復するように、PD-1を介したシグナル伝達をブロックする。
【0198】
「アゴニスト」又は活性化抗体は、それが結合する抗原によるシグナル伝達を亢進し又は開始させるものである。幾つかの実施態様では、アゴニスト抗体は、天然リガンドの存在なしでシグナル伝達を引き起こすか又は活性化させる。
【0199】
ここでの「Fc領域」なる用語は、天然配列Fc領域及び変異体Fc領域を含む、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は変化するかも知れないが、通常、ヒトIgG重鎖Fc領域はCys226の位置又はPro230からそのカルボキシル末端までの位置のアミノ酸残基から伸長すると定義される。Fc領域のC末端リジン(EU番号付けシステムによれば残基447)は、例えば抗体の産生又は精製中に、又は抗体の重鎖をコードする核酸を組換え的に操作することによって、取り除くことができる。従って、インタクト抗体の組成物は、全てのK447残基が除去された抗体群、K447残基が除去されていない抗体群、及びK447残基を有する抗体と有さない抗体の混合物を有する抗体群を含みうる。本発明の抗体に使用される適切な天然配列Fc領域は、ヒトIgG1、IgG2(IgG2A、IgG2B)、IgG3及びIgG4を含む。
【0200】
「Fcレセプター」又は「FcR」は、抗体のFc領域に結合するレセプターを記述する。好ましいFcRは天然配列ヒトFcRである。更に、好ましいFcRは、IgG抗体(ガンマレセプター)に結合し、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIサブクラスのレセプターを含むものであり、これらのレセプターの対立遺伝子変異体及び選択的スプライシング型を含み、FcγRIIレセプターは、FcγRIIA(「活性化レセプター」)及びFcγRIIB(「阻害レセプター」)を含み、それらは、その細胞質ドメインにおいて主に異なる類似のアミノ酸配列を有する。活性化レセプターFcγRIIAは、その細胞質ドメインに免疫レセプターチロシンベース活性化モチーフ(ITAM)を有する。阻害レセプターFcγRIIBは、その細胞質ドメインに免疫レセプターチロシンベース阻害モチーフ(ITIM)を有する(M. Daeron, Annu. Rev. Immunol., 15:203-234(1997)参照)。FcRはRavetch及びKinet, Annu. Rev. Immunol 9:457-92 (1991);Capel等, Immunomethods 4:25-34 (1994);及びde Haas等, J. Lab. Clin. Med. 126:330-41(1995)において概説されている。将来同定されるものも含む他のFcRが、ここにおける「FcR」なる用語に包含される。
【0201】
「Fcレセプター」又は「FcR」なる用語は、胎児への母のIgGの移動の原因となる、新生児レセプターFcRnをまた含む。Guyer等, J. Immunol. 117:587(1976)、及びKim等, J. Immunol. 24:249(1994)。FcRnへの結合性を測定する方法は既知である(例えば、Ghetie及びWard, Immunology Today,18(12):592-8(1997);Ghetie等, Nature Biotechnology, 15(7):637-40(1997);Hinton等, J. Biol. Chem.,279(8):6213-6(2004);国際公開第2004/92219号(Hinton等)を参照)。ヒトFcRn高親和性結合ポリペプチドのインビボにおけるヒトFcRnへの結合性及び血清半減期は、例えばヒトFcRnを発現するトランスジェニックマウス又はトランスフェクトされたヒト細胞株、又は変異Fc領域を有するポリペプチドが投与された霊長類においてアッセイすることができる。国際公開第2000/42072号(Presta)には、FcRへの改善された又は低下した結合性を有する抗体変異体が記載されている。また、例えばShields等, J. Biol. Chem., 9(2): 6591-6604(2001)を参照のこと。
【0202】
ここで使用される「実質的に低減された」又は「実質的に異なる」との語句は、当業者が、該値(例えばKd値)により測定される生物学的特徴の範囲内で、2つの値の間に統計的に有意な差異があるとみなすような、2つの数値(一般的に、一方は分子に関連しており、他方は参照/比較分子に関連している)の間の十分高度な差異を示す。前記2つの値の間の差異は、例えば、参照/比較分子に対する値の関数として、約10%以上、約20%以上、約30%以上、約40%以上、及び/又は約50%以上である。
【0203】
ここで使用される「実質的に類似」又は「実質的に同じ」なる用語は、当業者が、該値(例えばKd値)により測定される生物学的特徴の範囲内で、2つの値の間に、ほとんど又は全く生物学的及び/又は統計的に有意差がないとみなすような、2つの数値(例えば、一方は本発明の抗体に関連しており、他方は参照/比較抗体に関連している)の間の十分高度な類似性を示す。前記2つの値の間の差異は、例えば、参照/比較分子に対する値の関数として、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、及び/又は約10%未満である。
【0204】
ここで使用される「担体」は、用いられる用量及び濃度でそれらに暴露される細胞又は哺乳動物に対して無毒である、薬学的に許容可能な担体、賦形剤、又は安定化剤を含む。生理学的に許容可能な担体は、水性pH緩衝溶液であることが多い。生理学的に許容可能な担体の例は、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸塩のようなバッファー;アスコルビン酸を含む酸化防止剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリジン;グルコース、マンノース又はデキストリンを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;マンニトール又はソルビトール等の糖アルコール類;ナトリウム等の塩形成対イオン;及び/又は非イオン性界面活性剤、例えばTWEENTM、ポリエチレングリコール(PEG)、及びPLURONICSTMを含む。
【0205】
「パッケージ挿入物」は、適応症、使用法、用量、投与法、禁忌、包装された製品と組合せられる他の医薬、及び/又はこのような医薬の使用に関する注意等についての情報を含む、医薬の市販パッケージに常套的に含まれる指示についての情報を含む、医薬の市販パッケージに常套的に含まれる指示を意味する。
【0206】
ここで使用される場合、「治療」なる用語は、臨床病理の経過中に処置される個体又は細胞の自然経過を変化させるために設計された臨床的介入を意味する。治療の望ましい効果には、疾患の進行速度を低下させること、疾患状態を緩和又は改善すること、及び寛解又は改善された予後が挙げられる。例えば、これに限定されるものではないが、がん細胞の増殖を減少させ(又は破壊する)、疾患に起因する症状を低減させ、疾患に罹患した者の生活の質を向上させ、疾患を治療するために必要な他の薬の用量を減少させ、疾患の進行を遅延させ、及び/又は個体の生存を延長することを含み、がんに関連する一又は複数の症状が軽減又は除去されたならば、個体は成功裏に「治療」されている。
【0207】
ここで使用される場合、「疾患進行の遅延化」は、疾患(例えばがん)の発症を先送りし、妨げ、遅くし、阻止し、安定化させ、及び/又は延期させることを意味する。この遅延化は、処置される疾患及び/又は個体の病歴に応じて、様々な時間になる可能性がある。当業者には明らかであるように、十分又は有意な遅延化は、個体が疾患を発症しない点で、事実上、予防を包含しうる。例えば、転移の発生などの後期がんは、遅延化されうる。
【0208】
ここで使用される場合、「がんの再発を減少させ又は阻害する」とは、腫瘍又はがんの再発あるいは腫瘍又はがんの進行を減少させ又は阻害することを意味する。
【0209】
ここで使用される場合、「がん」及び「がん性」という用語は、典型的には調節されない細胞増殖を特徴とする哺乳動物における生理学的状態を指すか又は記述する。この定義には良性及び悪性がん、並びに休止状態の腫瘍又は微小転移巣である。がんの例には、限定されるものではないが、がん腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、及び白血病が含まれる。このようながんのより特定の例には、扁平細胞がん、肺がん(小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺の腺がん、及び肺の扁平上皮がんを含む)、腹膜のがん、肝細胞がん、胃(gastric)又は腹部(stomach)がん(胃腸がんを含む)、膵がん、神経膠芽腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝がん、膀胱がん、肝細胞がん、乳がん、結腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜又は子宮がん、唾液腺がん、腎臓(kidney)又は腎(renal)がん、肝がん、前立腺がん、外陰がん、甲状腺がん、肝がん及び様々なタイプの頭頸部がん、並びにB細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL);小リンパ球(SL)NHL;中悪性度/濾胞性NHL;中悪性度びまん性NHL;高悪性度免疫芽細胞性NHL;高悪性度リンパ芽球性NHL;高悪性度小非分割細胞NHL;バルキー疾患NHL;外套細胞リンパ腫;エイズ関連リンパ腫;及びワルデンストロームのマクログロブリン病を含む);慢性リンパ性白血病(CLL);急性リンパ芽球白血病(ALL);ヘアリー細胞白血病;慢性骨髄芽球性白血病;及び移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)、並びに母斑症に関連した異常な血管増殖、浮腫(例えば脳腫瘍に関連したもの)、メイグス症候群を含む。
【0210】
ここで使用される場合、「転移」は、その原発部位から体の他の場所へのがんの広がりを意味する。がん細胞は原発性腫瘍から離れ、リンパ及び血管中に浸透し、血流を通して循環し、体の他の場所の正常組織における遠位の病巣で増殖(転移)しうる。転移は局所的又は遠位でありうる。転移は、原発性腫瘍から別れ、血流を移動し、遠位の部位で止まる腫瘍細胞に付随する逐次的な過程である。新しい部位で、細胞は血液供給を樹立し、増殖して命を脅かす塊を形成しうる。腫瘍細胞内の刺激性及び阻害性分子経路の双方がこの挙動を調節し、遠位部位での腫瘍細胞と宿主細胞の間の相互作用がまた顕著である。
【0211】
「有効量」は、少なくとも、特定の疾患の測定可能な改善又は予防に効果を発揮するのに必要な最小濃度である。ここで有効量は、疾患状態、年齢、性別、及び患者の体重、及び個体において所望の応答を誘発する抗体の能力などの要因に応じて変化し得る。有効量はまた、治療的に有益な効果が、処置の任意の毒性又は有害作用を上回る量である。予防的使用では、有益又は所望の結果には、疾患の生化学的、組織学的及び/又は行動上の症状、疾患の発症中に提示される合併症及び中間的な病理学的表現型を含む、リスクを排除又は低減し、重症度を軽減し、又は疾患の発症を遅延化させるような結果が含まれる。治療的使用では、有益又は所望の結果には、疾患に起因する一又は複数の症状を減少させ、疾患に罹患している者の生活の質を向上させ、疾患を処置するために必要な他の薬の用量を減少させ、ターゲティングを介して他の医薬の効果を増強させ、疾患の進行を遅延させ、及び/又は生存を延長すること等の臨床結果が含まれる。がん又は腫瘍の場合、薬剤の有効量は、がん細胞数の低減;腫瘍サイズの低減;周辺器官へのがん細胞の浸潤の阻害(すなわち、ある程度までの遅延化又は望ましくは停止);腫瘍転移の阻害(すなわち、ある程度までの遅延化又は望ましくは停止);腫瘍成長のある程度までの阻害;及び/又は疾患に関連する一又は複数の徴候のある程度までの軽減の効果を有しうる。有効量は、1又は複数回の投与で投与することができる。この発明の目的のために、薬剤、化合物、又は薬学的組成物の有効量は、直接的又は間接的に予防的又は治療的処置を達成するのに十分な量である。臨床的文脈において理解されるように、薬剤、化合物、又は薬学的組成物の有効量は、別の薬剤、化合物、又は薬学的組成物と併せて達成されてもされなくてもよい。従って、「有効量」は、一又は複数の治療剤を投与する状況で考慮することができ、単一の薬剤は、一又は複数の他の薬剤と組合せて、望ましい結果が達成される可能性があるか又は達成されるならば、有効量で付与されていると考えてよい。
【0212】
ここで使用される場合、「と組合せて」は、別の処置様式に加えての、一つの処置様式の投与を意味する。而して、「と組合せて」とは、個体への他の処置様式の投与の前、間及び後に、一つの投与様式を投与することを意味する。
【0213】
ここで使用される場合、「対象」とは、限定しないが、ヒト又は非ヒト哺乳動物、例えばウシ、ウマ、イヌ、ヒツジ、又はネコを含む哺乳動物を意味する。好ましくは、対象はヒトである。患者はまたここでの対象である。
【0214】
ここで使用される場合、「完全寛解」又は「CR」とは、全ての標的病変の消失を意味し、「部分寛解」又は「PR」とは、ベースラインSLDを参照とし、標的病変の最長径(SLD)の合計の少なくとも30%の減少を意味し;「安定疾患」又は「SD」は、治療が開始されてからの最小SLDを参照とし、PRを認定するのに十分な標的病変の収縮も、またPDを認定するのに十分な増加もないことを意味する。
【0215】
ここで使用される場合、「進行性疾患」又は「PD」は、処置開始以来、又は一又は複数の新規の病変の存在下で記録された最小のSLDを参照とし、標的病変のSLDにおいて、少なくとも20%増加がみられるものを意味する。
【0216】
ここで使用される場合、「無増悪生存期間」(PFS)は、処置される疾患(例えば、がん)が悪化しない、治療中及び治療後の時間の長さを意味する。無増悪生存期間は、患者が完全寛解又は部分寛解を受けている時間の長さ、並びに患者が安定した疾患を経験している時間の長さを含みうる。
【0217】
ここで使用される場合、「奏効率」(ORR)は、完全寛解(CR)率及び部分寛解(PR)率の合計を意味する。
【0218】
ここで使用される場合、「全生存率」は特定の期間の後に生きている可能性がある群内の個体の割合を意味する。
【0219】
「化学療法剤」はがんの処置に有用な化合物である。化学療法剤の例には、アルキル化剤、例えばチオテパ及びシクロホスファミド(CYTOXAN(登録商標));スルホン酸アルキル、例えばブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファン;アジリジン類、例えばベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ、及びウレドーパ;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド及びトリメチロールメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミン類及びメチラメラミン類;アセトゲニン(特にブラタシン及びブラタシノン);デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノール、MARINOL(登録商標));ベータ-ラパコン;ラパコール;コルヒチン;ベツリン酸;カンプトセシン(合成類似体トポテカン(HYCAMTIN(登録商標))、CPT-11(イリノテカン、CAMPTOSAR(登録商標)、アセチルカンプトセシン、スコポレクチン(scopolectin)、及び9-アミノカンプトセシンを含む);ブリオスタチン;ペメトレキセド;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン(carzelesin)及びビゼレシン(bizelesin)合成類似体を含む);ポドシロトキシン;ポドフィリン酸;テニポシド;クリプトフィシン(cryptophycin)(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体、KW-2189及びCBI-TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン(pancratistatin);TLK-286;CDP323、経口用アルファ-4インテグリンインヒビター;サルコジクチイン;スポンジスタチン(spongistatin);ナイトロジェンマスタード、例えばクロランブシル、クロルナファジン(chlornaphazine)、チョロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン(prednimustine)、トロフォスファミド(trofosfamide)、ウラシルマスタード;ニトロス尿素(nitrosureas)、例えばカルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、及びラニムスチン;抗生物質、例えばエンジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン、特にカリケアマイシンガンマ1I、カリケアマイシンオメガI1(例えば、Nicolaou等, Angew Chem. Intl. Ed. Engl. 33:183-186(1994)を参照);ダイネミシンAを含むダイネミシン;エスペラマイシン;並びにネオカルジノスタチン発色団及び関連色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アントラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン(chromomycinis)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(ADRIAMYCIN(登録商標)、モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、ドキソルビシンHClリポソーム注射剤(DOXIL(登録商標))及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダラルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、例えばマイトマイシンC、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメックス、ジノスタチン、ゾルビシン;代謝拮抗剤、例えばメトトレキセート、ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標))、テガフール(UFTORAL(登録商標))、カペシタビン(XELODA(登録商標))、エポチロン、及び5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸類似体、例えばデノプテリン、メトトレキセート、プテロプテリン、トリメトレキセート;プリン類似体、例えばフルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジン類似体、例えばアンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、及びイマチニブ(2-フェニルアミノピリミジン誘導体)、並びに他のc-kit阻害剤;抗副腎薬、例えばアミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸リプレニッシャー、例えばフロリン酸;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキセート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジコン;エフロルニチン(elfornithine);酢酸エリプチニウム;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダイニン;メイタンシノイド、例えばメイタンシン及びアンサミトシン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール(mopidanmol);ニトラエリン(nitraerine);ペントスタチン;フェナメト;ピラルビシン;ロソキサントロン;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖複合体(JHS Natural Products, Eugene, OR);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2”-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特に、T-2毒素、ベラクリンA、ロリジンA及びアングイジン);ウレタン;ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標));ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);チオテパ;タキソイド、例えば、パクリタキセル(TAXOL(登録商標))、パクリタキセルのアルブミン操作ナノ粒子製剤(ABRAXANETM)、及びドセタキセル(TAXOTERE(登録商標));クロランブシル;6-チオグアニン、メルカプトプリン、メトトレキセート;シスプラチン及びカルボプラチンのような白金類似体;ビンブラスチン(VELBANR(登録商標));白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン(ONCOVIN(登録商標));オキサリプラチン;ロイコボリン;ビノレルビン(NAVELBINE(登録商標));ノバントロン;エダトレキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン;イバンドロネート;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸などのレチノイド;上述した任意のものの薬学的に許容可能な塩、酸又は誘導体;並びにシクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、及びプレドニゾロンの併用療法の略称であるCHOP、及び5-FU及びロイコボリンと組合せてオキサリプラチン(ELOXATINTM)を用いた治療法の略称であるFOLFOX等の上述の2又はそれ以上の組合せが含まれる。
【0220】
この定義にまた含まれるものは、がんの増殖を促進可能なホルモンの効果を調整し、低減させ、ブロックし又は抑制するように作用する抗ホルモン剤であり、多くの場合は組織的又は全身処置の形態である。それらはホルモンそれ自体であってもよい。具体例には、抗エストロゲン及び選択的エストロゲンレセプターモジュレーター(SERM)など、例えばタモキシフェン(NOLVADEX(登録商標)タモキシフェンを含む)、ラロキシフェン(EVISTA(登録商標))、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、及びトレミフェン(FARESTON(登録商標));抗プロゲステロン;エストロゲンレセプターダウンレギュレーター(ERD);エストロゲンレセプターアンタゴニスト、例えばフルベストラント(FASLODEX(登録商標));卵巣を抑制又は活動停止させるように機能する薬剤、例えば黄体化(leutinizing)ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニスト、例えば酢酸ロイプロリド(LUPRON(登録商標)及びELIGARD(登録商標))、酢酸ゴセレリン、酢酸ブセレリン及びトリプテレリン(tripterelin);他の抗アンドロゲン、例えばフルタミド、ニルタミド及びビカルタミド;及び副腎でのエストロゲン産生を調節する、酵素アロマターゼを阻害するアロマターゼ阻害剤、例えば4(5)-イミダゾール類、アミノグルテチミド、酢酸メゲストロール(MEGASE(登録商標))、エキセメスタン(AROMASIN(登録商標))、ホルメスタン(formestanie)、ファドロゾール、ボロゾール(RIVISOR(登録商標))、レトロゾール(FEMARA(登録商標))、及びアナストロゾール(ARIMIDEX(登録商標))が含まれる。また、化学治療剤のこのような定義には、ビスホスホネート、例えばクロドロネート(例えば、BONEFOS(登録商標)又はOSTAC(登録商標))、エチドロネート(DIDROCAL(登録商標))、NE-58095、ゾレドロン酸/ゾレドロネート(ZOMETA(登録商標))、アレンドロネート(FOSAMAX(登録商標))、パミドロネート(AREDIA(登録商標))、チルドロネート(SKELID(登録商標))、又はリゼドロネート(ACTONEL(登録商標));並びにトロキサシタビン(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に付粘着性細胞増殖に関係するシグナル伝達経路における遺伝子の発現を抑制するもの、例えばPKC-アルファ、Raf、H-Ras、及び上皮増殖因子レセプター(EGF-R);ワクチン、例えばTHERATOPE(登録商標)ワクチン及び遺伝子治療用ワクチン、例えばALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチン及びVAXID(登録商標)ワクチン;トポイソメラーゼ1阻害剤(例えば、LURTOTECAN(登録商標));フルベストラントなどの抗エストロゲン;イマチニブ又はEXEL-0862(チロシンキナーゼ阻害剤)等のKit阻害剤;EGFR阻害剤、例えばエルロチニブ又はセツキシマブ;抗VEGF阻害剤、例えばベバシズマブ;アリノテカン;rmRH(例えば、ABARELIX(登録商標));ラパチニブ及びラパチニブジトシレート(GW572016としても知られるErbB-2及びEGFR二重チロシンキナーゼ小分子阻害剤);17AAG(熱ショックタンパク質(HSP)90毒であるゲルダナマイシン誘導体)、及び上述の何れかの薬学的に許容可能な塩、酸、又は誘導体が含まれる。
【0221】
ここで使用される場合、「サイトカイン」という用語は、一つの細胞集団から放出されるタンパク質であって、他の細胞に対して細胞間メディエータとして作用するか、又はタンパク質生成細胞に対して自己分泌作用を有するものを一般的に意味する。このようなサイトカインの例には、リンホカイン、モノカイン、;PROLEUKIN(登録商標)rIL-2を含む、IL-1、IL-1α、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17A-F、IL-18からIL-29(例えばIL-23)、IL-31等のインターロイキン(「IL」);腫瘍壊死因子、例えばTNF-α又はTNF-β、TGF-β1-3;及び白血病抑制因子(「LIF」)、毛様体神経栄養因子(「CNTF」)、CNTF様サイトカイン(「CLC」)、カルジオトロフィン(「CT」)、及びキットリガンド(「KL」)を含む他のポリペプチド因子が含まれる。
【0222】
ここで使用される場合、「ケモカイン」なる用語は、白血球の走化性及び活性化を選択的に誘導する能力を有する可溶性因子(例えば、サイトカイン)を意味する。それらはまた血管新生、炎症、創傷治癒、及び腫瘍形成のプロセスを惹起させる。ケモカインの例には、マウスケラチノサイト誘引物質(KC)のヒト相同体であるIL-8が含まれる。
【0223】
明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「又は」及び「the」は、文脈が明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。
【0224】
「約」に関して、ここでの値又はパラメータは、値又はパラメータそれ自体を対象とした変動を含む(又は記載する)。例えば、「約X」に言及した記述は、「X」の記述を含む。
【0225】
ここで使用される「薬学的に許容可能な塩」なる語句は、本発明の化合物の薬学的に許容可能な有機又は無機塩を意味する。例示的な塩には、限定されるものではないが、硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸ホスフェート、イソニコチン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、酸シトレート、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、糖酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩「メシル酸塩」、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、パモ酸塩(つまり、1,1’-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエート))塩、アルカリ金属(例えば、ナトリウム及びカリウム)塩、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)塩、及びアンモニウム塩が含まれる。薬学的に許容可能な塩は、アセテートイオン、スクシネートイオン又は他の対イオンのような他の分子の包接を含みうる。対イオンは親化合物上の電荷を安定化する任意の有機又は無機部分でありうる。更に、薬学的に許容可能な塩は、その構造中に一を越える荷電原子を有しうる。複数の荷電原子が薬学的に許容可能な塩の一部である場合は、複数の対イオンを有しうる。よって、薬学的に許容可能な塩は一又は複数の荷電原子及び/又は一又は複数の対イオンを有しうる。
【0226】
本発明の化合物が塩基である場合、所望される薬学的に許容可能な塩は、当該分野で利用できる任意の適切な方法、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、メタンスルホン酸、リン酸等のような無機酸で、又は例えば酢酸、マレイン酸、コハク酸、マンデル酸、フマル酸、マロン酸、ピルビン酸、シュウ酸、グリコール酸、サリチル酸、ピラノシジル酸、例えばグルクロン酸又はガラクツロン酸、αヒドロキシ酸、例えばクエン酸又は酒石酸、アミノ酸、例えばアスパラギン酸又はグルタミン酸、芳香族酸、例えば安息香酸又はケイ皮酸、スルホン酸、例えばp-トルエンスルホン酸又はエタンスルホン酸等のような有機酸での遊離塩基の処理によって調製することができる。
【0227】
本発明の化合物が酸である場合、所望される薬学的に許容可能な塩は、任意の適切な方法、例えば無機又は有機塩基、例えばアミン(第1級、第2級又は第3級)、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物等での遊離酸の処理によって調製することができる。適切な塩を例証する例には、限定されないが、アミノ酸、例えばグリシン及びアルギニン、アンモニア、第1級、第2級、及び第3級アミン、及び環状アミン、例えばピペリジン、モルホリン及びピペラジンから誘導される有機塩基、及びナトリウム、カルシウム、カリウム、マグネシウム、マンガン、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム及びリチウムから誘導される無機塩が含まれる。
【0228】
「薬学的に許容可能な」なる語句は、物質又は組成物が、製剤を構成する他の成分、及び/又はそれで治療されている哺乳動物と、化学的及び/又は毒物学的に適合性でなければならないことを示している。
【0229】
ここに記載の本発明の態様及び変形例には、態様及び変形例「からなる」及び/又は「から本質的になる」が含まれると理解される。
【0230】
III.方法
一態様では、ここに提供されるものは、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤との組合せで有効量のPD-1軸結合アンタゴニストを個体に投与することを含む、個体におけるがん治療し又はその進行を遅延させるための方法である。
【0231】
他の態様では、ここに提供されるものは、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤との組合せで有効量のPD-1軸結合アンタゴニストを個体に投与することを含む、個体におけるがんの再発又はがんの進行を減少させ又は阻害するための方法である。ここに開示される場合、がんの再発及び/又はがんの進行は、限定しないが、がん転移を含む。
【0232】
他の態様では、ここに提供されるものは、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤との組合せで有効量のPD-1軸結合アンタゴニストを個体に投与することを含む、個体における免疫関連疾患を治療し又はその進行を遅延させるための方法である。
【0233】
他の態様では、ここに提供されるものは、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤との組合せで有効量のPD-1軸結合アンタゴニストを個体に投与することを含む、個体における免疫関連疾患の進行を減少させ又は阻害するための方法である。
【0234】
幾つかの実施態様では、免疫関連疾患はT細胞機能不全疾患に関連する。幾つかの実施態様では、免疫関連疾患はウイルス感染である。所定の実施態様では、ウイルス感染は慢性ウイルス感染である。幾つかの実施態様では、T細胞機能不全疾患は、抗原刺激に対する応答の減少によって特徴付けられる。幾つかの実施態様では、T細胞機能不全疾患は、T細胞アネルギー又はサイトカインを分泌し、増殖し又は細胞溶解活性を果たす能力の減少によって特徴付けられる。幾つかの実施態様では、T細胞機能不全疾患はT細胞消耗によって特徴付けられる。幾つかの実施態様では、T細胞はCD4+及びCD8+T細胞である。幾つかの実施態様では、T細胞機能不全疾患は、未消散急性感染症、慢性感染症、及び腫瘍免疫を含む。
【0235】
他の態様では、ここに提供されるものは、個体における免疫応答又は機能を増加させ、亢進し又は刺激する方法において、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤との組合せで有効量のPD-1軸結合アンタゴニストを個体に投与することを含む方法である。
【0236】
他の態様では、ここに提供されるものは、個体におけるがんを治療し又はその進行を遅延させる方法において、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストと、CD226発現及び/又は活性を調節する薬剤とを個体に投与することを含む方法である。
【0237】
他の態様では、ここに提供されるものは、個体におけるがんの再発又はがんの進行を減少させ又は阻害する方法において、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストと、CD226発現及び/又は活性を調節する薬剤とを個体に投与することを含む方法である。
【0238】
他の態様では、ここに提供されるものは、個体における免疫関連疾患を治療し又はその進行を遅延させる方法において、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストと、CD226発現及び/又は活性を調節する薬剤とを個体に投与することを含む方法である。
【0239】
他の態様では、ここに提供されるものは、個体における免疫関連疾患の進行を減少させ又は阻害する方法において、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストと、CD226発現及び/又は活性を調節する薬剤とを個体に投与することを含む方法である。
【0240】
幾つかの実施態様では、免疫関連疾患はT細胞機能不全疾患に関連する。幾つかの実施態様では、免疫関連疾患はウイルス感染である。所定の実施態様では、ウイルス感染は慢性ウイルス感染である。幾つかの実施態様では、T細胞機能不全疾患は、抗原刺激に対する応答の減少によって特徴付けられる。幾つかの実施態様では、T細胞機能不全疾患は、T細胞アネルギー、又はサイトカインを分泌し、増殖し又は細胞溶解活性を果たす能力の減少によって特徴付けられる。幾つかの実施態様では、T細胞機能不全疾患はT細胞消耗によって特徴付けられる。幾つかの実施態様では、T細胞はCD4+及びCD8+T細胞である。幾つかの実施態様では、免疫関連疾患は、未消散急性感染症、慢性感染症、及び腫瘍免疫からなる群から選択される。
【0241】
他の態様では、ここに提供されるものは、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストと、CD226発現及び/又は活性を調節する薬剤とを個体に投与することによって、個体における免疫応答又は機能を増加させ、亢進し又は刺激する方法である。
【0242】
幾つかの実施態様では、CD226発現及び/又は活性を調節する薬剤は、CD226発現及び/又は活性を増加させ及び/又は刺激し;CD226のPVR、PVRL2、及び/又はPVRL3との相互作用を増加させ及び/又は刺激し;及びPVR、PVRL2、及び/又はPVRL3へのCD226の結合によって媒介される細胞内シグナル伝達を増加させ及び/又は刺激することができる。ここで使用される場合、CD226発現及び/又は活性を増加させ及び/又は刺激することができる薬剤は、限定しないが、CD226発現及び/又は活性を増加させ及び/又は刺激する薬剤を含む。ここで使用される場合、CD226のPVR、PVRL2、及び/又はPVRL3との相互作用を増加させ及び/又は刺激することができる薬剤は、限定しないが、CD226のPVR、PVRL2、及び/又はPVRL3との相互作用を増加させ及び/又は刺激する薬剤を含む。ここで使用される場合、PVR、PVRL2、及び/又はPVRL3へのCD226の結合によって媒介される細胞内シグナル伝達を増加させ及び/又は刺激することができる薬剤は、限定しないが、PVR、PVRL2、及び/又はPVRL3へのCD226の結合によって媒介される細胞内シグナル伝達を増加させ及び/又は刺激する薬剤を含む。
【0243】
幾つかの実施態様では、CD226 発現及び/又は活性を調節する薬剤は、CD226のTIGITとの相互作用を阻害し及び/又はブロックする薬剤、TIGIT発現及び/又は活性のアンタゴニスト、PVR発現及び/又は活性のアンタゴニスト、TIGITのPVRとの相互作用を阻害し及び/又はブロックする薬剤、TIGITのPVRL2との相互作用を阻害し及び/又はブロックする薬剤、TIGITのPVRL3との相互作用を阻害し及び/又はブロックする薬剤、PVRへのTIGITの結合によって媒介される細胞内シグナル伝達を阻害し及び/又はブロックする薬剤、PVRL2へのTIGITの結合によって媒介される細胞内シグナル伝達を阻害し及び/又はブロックする薬剤、PVRL3へのTIGITの結合によって媒介される細胞内シグナル伝達を阻害し及び/又はブロックする薬剤、及びそれらの組合せから選択される。
【0244】
幾つかの実施態様では、CD226のTIGITとの相互作用を阻害し及び/又はブロックする薬剤は、小分子阻害剤、阻害抗体又はその抗原結合断片、アプタマー、阻害核酸、及び阻害ポリペプチドである。幾つかの実施態様では、CD226のTIGITとの相互作用を阻害し及び/又はブロックする薬剤は抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片である。幾つかの実施態様では、CD226のTIGITとの相互作用を阻害し及び/又はブロックする薬剤は、アンチセンスポリヌクレオチド、干渉RNA、触媒RNA、及びRNA-DNAキメラから選択される阻害核酸である。
【0245】
幾つかの実施態様では、TIGIT発現及び/又は活性のアンタゴニストは小分子阻害剤、阻害抗体又はその抗原結合断片、アプタマー、阻害核酸、及び阻害ポリペプチドである。幾つかの実施態様では、TIGIT発現及び/又は活性のアンタゴニストは抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片である。幾つかの実施態様では、TIGIT発現及び/又は活性のアンタゴニストは、アンチセンスポリヌクレオチド、干渉RNA、触媒RNA、及びRNA-DNAキメラから選択される阻害核酸である。
【0246】
幾つかの実施態様では、PVR発現及び/又は活性のアンタゴニストは、小分子阻害剤、阻害抗体又はその抗原結合断片、アプタマー、阻害核酸、及び阻害ポリペプチドである。幾つかの実施態様では、PVR発現及び/又は活性のアンタゴニストは、小分子阻害剤、阻害抗体又はその抗原結合断片、アプタマー、阻害核酸、及び阻害ポリペプチドから選択される。
【0247】
幾つかの実施態様では、TIGITのPVRとの相互作用を阻害し及び/又はブロックする薬剤は小分子阻害剤、阻害抗体又はその抗原結合断片、アプタマー、阻害核酸、及び阻害ポリペプチドである。幾つかの実施態様では、TIGITのPVRとの相互作用を阻害し及び/又はブロックする薬剤は、小分子阻害剤、阻害抗体又はその抗原結合断片、アプタマー、阻害核酸、及び阻害ポリペプチドから選択される。
【0248】
幾つかの実施態様では、TIGITのPVRL2との相互作用を阻害し及び/又はブロックする薬剤は、小分子阻害剤、阻害抗体又はその抗原結合断片、アプタマー、阻害核酸、及び阻害ポリペプチドから選択される。
【0249】
幾つかの実施態様では、TIGITのPVRL3との相互作用を阻害し及び/又はブロックする薬剤は、小分子阻害剤、阻害抗体又はその抗原結合断片、アプタマー、阻害核酸、及び阻害ポリペプチドから選択される。
【0250】
幾つかの実施態様では、PVRへのTIGITの結合によって媒介される細胞内シグナル伝達を阻害し及び/又はブロックする薬剤は、小分子阻害剤、阻害抗体又はその抗原結合断片、アプタマー、阻害核酸、及び阻害ポリペプチドである。幾つかの実施態様では、PVRへのTIGITの結合によって媒介される細胞内シグナル伝達を阻害し及び/又はブロックする薬剤は、小分子阻害剤、阻害抗体又はその抗原結合断片、アプタマー、阻害核酸、及び阻害ポリペプチドから選択される。
【0251】
幾つかの実施態様では、PVRL2へのTIGITの結合によって媒介される細胞内シグナル伝達を阻害し及び/又はブロックする薬剤は、小分子阻害剤、阻害抗体又はその抗原結合断片、アプタマー、阻害核酸、及び阻害ポリペプチドから選択される。
【0252】
幾つかの実施態様では、PVRL3へのTIGITの結合によって媒介される細胞内シグナル伝達を阻害し及び/又はブロックする薬剤は、小分子阻害剤、阻害抗体又はその抗原結合断片、アプタマー、阻害核酸、及び阻害ポリペプチドから選択される。
【0253】
他の態様では、ここに提供されるものは、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する有効量の薬剤と、一又は複数の更なる免疫同時阻害性受容体の発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤とを個体に投与することによって、個体における免疫応答又は機能を増加させ、亢進し又は刺激する方法である。幾つかの実施態様では、一又は複数の更なる免疫同時阻害性受容体は、PD-1、CTLA-4、LAG3、TIM3、BTLA、VISTA、B7H4、及びCD96から選択される。幾つかの実施態様では、一又は複数の更なる免疫同時阻害性受容体は、PD-1、CTLA-4、LAG3及びTIM3から選択される。
【0254】
他の態様では、ここに提供されるものは、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する有効量の薬剤と、一又は複数の更なる免疫同時刺激性受容体の発現及び/又は活性を増加させ又は活性化する薬剤とを個体に投与することによって、個体における免疫応答又は機能を増加させ、亢進し又は刺激する方法である。幾つかの実施態様では、一又は複数の更なる免疫同時刺激性受容体は、CD226、OX-40、CD28、CD27、CD137、HVEM、GITR、MICA、ICOS、NKG2D、及び2B4から選択される。幾つかの実施態様では、一又は複数の更なる免疫同時刺激性受容体は、CD226、OX-40、CD28、CD27、CD137、HVEM、及びGITRから選択される。幾つかの実施態様では、一又は複数の更なる免疫同時刺激性受容体はOX-40及びCD27から選択される。
【0255】
この発明の方法は、がん又はT細胞機能不全疾患の治療のための腫瘍免疫原性の増加のような免疫原性の増強が望まれる病態の治療に用途を見出すことができる。
【0256】
様々ながんを治療することができ、又はその進行を遅延させることができる。
【0257】
幾つかの実施態様では、個体は非小細胞肺がんに罹患している。非小細胞肺がんは初期又は後期でありうる。幾つかの実施態様では、個体は小細胞肺がんに罹患している。小細胞肺がんは初期又は後期でありうる。幾つかの実施態様では、個体は腎細胞がんに罹患している。腎細胞がん初期又は後期でありうる。幾つかの実施態様では、個体は結腸直腸がんに罹患している。結腸直腸がんは初期又は後期でありうる。幾つかの実施態様では、個体は卵巣がんに罹患している。卵巣がんは初期又は後期でありうる。幾つかの実施態様では、個体は乳がんに罹患している。乳がんは初期又は後期でありうる。幾つかの実施態様では、個体は膵がんに罹患している。膵がんは初期又は後期でありうる。幾つかの実施態様では、個体は胃がんに罹患している。胃がんは初期又は後期でありうる。幾つかの実施態様では、個体は膀胱がんに罹患している。膀胱がんは初期又は後期でありうる。幾つかの実施態様では、個体は食道がんに罹患している。食道がんは初期又は後期でありうる。幾つかの実施態様では、個体は中皮腫に罹患している。中皮腫は初期又は後期でありうる。幾つかの実施態様では、個体はメラノーマに罹患している。メラノーマは初期又は後期でありうる。幾つかの実施態様では、個体は頭頸部がんに罹患している。頭頸部がんは初期又は後期でありうる。幾つかの実施態様では、個体は甲状腺がんに罹患している。甲状腺がんは初期又は後期でありうる。幾つかの実施態様では、個体は肉腫に罹患している。肉腫は初期又は後期でありうる。幾つかの実施態様では、個体は前立腺がんに罹患している。前立腺がんは初期又は後期でありうる。幾つかの実施態様では、個体は神経膠芽腫に罹患している。神経膠芽腫は初期又は後期でありうる。幾つかの実施態様では、個体は子宮頸がんに罹患している。子宮頸がんは初期又は後期でありうる。幾つかの実施態様では、個体は胸腺がんに罹患している。胸腺がんは初期又は後期でありうる。幾つかの実施態様では、個体は白血病に罹患している。白血病は初期又は後期でありうる。幾つかの実施態様では、個体はリンパ腫に罹患している。リンパ腫は初期又は後期でありうる。幾つかの実施態様では、個体は骨髄腫に罹患している。骨髄腫は初期又は後期でありうる。幾つかの実施態様では、個体は菌状息肉症に罹患している。菌状息肉症は初期又は後期でありうる。幾つかの実施態様では、個体はメルケル細胞がんに罹患している。メルケル細胞がんは初期又は後期でありうる。幾つかの実施態様では、個体は血液悪性腫瘍に罹患している。血液悪性腫瘍は初期又は後期でありうる。幾つかの実施態様では、個体はヒトである。
【0258】
この発明の方法の幾つかの実施態様では、個体におけるCD4及び/又はCD8 T細胞は、組合せの投与前に対して、増大又は亢進したプライミング、活性化、増殖、サイトカイン放出及び/又は細胞溶解活性を有する。
【0259】
この発明の方法の幾つかの実施態様では、CD4及び/又はCD8 T細胞の数は、組合せの投与前に対して増加している。この発明の方法の幾つかの実施態様では、活性化されたCD4及び/又はCD8 T細胞の数は、組合せの投与前に対して増加している。
【0260】
この発明の方法の幾つかの実施態様では、活性化されたCD4及び/又はCD8 T細胞は、γ-IFN産生CD4及び/又は組合せの投与前に対して亢進した細胞溶解活性によって特徴付けられる。
【0261】
この発明の方法の幾つかの実施態様では、CD4及び/又はCD8 T細胞は、IFN-γ、TNF-α及びインターロイキンからなる群から選択されるサイトカインの放出増加を示す。
【0262】
この発明の方法の幾つかの実施態様では、CD4及び/又はCD8 T細胞は、エフェクターメモリーT細胞である。この発明の方法の幾つかの実施態様では、CD4及び/又はCD8エフェクターメモリーT細胞は、γ-IFN産生CD4及び/又はCD8 T細胞及び/又は亢進した細胞溶解活性によって特徴付けられる。この発明の方法の幾つかの実施態様では、CD4及び/又はCD8エフェクターメモリーT細胞は、CD44highCD62Llowの発現を示すことによって特徴付けられる。
【0263】
この発明の方法の幾つかの実施態様では、がんは、増加したレベルのT細胞浸潤を有している。
【0264】
幾つかの実施態様では、本発明の方法は付加療法を施すことを更に含みうる。付加療法は、放射線療法、外科手術、化学療法、遺伝子治療、DNA治療、ウイルス性治療、RNA治療、免疫療法、骨髄移植、ナノ療法、モノクローナル抗体療法、又は前記の組合せでありうる。付加療法は、アジュバント又はネオアジュバント療法の形態であってもよい。幾つかの実施態様では、付加療法は、副作用制限剤(例えば、治療の副作用の発生及び/又は重症度を軽減することを意図した薬剤、例えば鎮吐薬等)の投与である。幾つかの実施態様では、付加療法は放射線療法である。幾つかの実施態様では、付加療法は手術である。幾つかの実施態様では、付加療法は、上述した化学療法剤の一又は複数であってもよい。
【0265】
以下に記載されるPD-1軸結合アンタゴニストとTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤の任意のものを本発明の方法において使用することができる。
【0266】
幾つかの実施態様では、ここに記載の標的(例えばPD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、LAG3、TIM3、BTLA、VISTA、B7H4、CD96、B7-1、TIGIT、CD226、OX-40、CD28、CD27、CD137、HVEM、GITR、MICA、ICOS、NKG2D、2B4等)の何れかはヒトタンパク質である。
【0267】
PD-1軸結合アンタゴニスト
ここに提供されるものは、個体におけるがんを治療し又はその進行を遅延させる方法において、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストを、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤との組合せで、個体に投与することを含む方法である。ここに提供されるものはまた、個体におけるがんの再発又はがんの進行を減少させ又は阻害する方法において、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストを、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤との組合せで、個体に投与することを含む方法である。ここに提供されるものはまた、個体における免疫関連疾患を治療し又はその進行を遅延させる方法において、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストを、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤との組合せで、個体に投与することを含む方法である。ここに提供されるものはまた、個体における免疫関連疾患の進行を減少させ又は阻害する方法において、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストを、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤との組合せで、個体に投与することを含む方法である。ここに提供されるものはまた、個体における免疫応答又は機能を増加させ、亢進し又は刺激する方法において、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストを、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤との組合せで、個体に投与することを含む方法である。
【0268】
例えば、PD-1軸結合アンタゴニストは、PD-1結合アンタゴニスト、PD-L1結合アンタゴニスト及びPD-L2結合アンタゴニストを含む。
【0269】
幾つかの実施態様では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のそのリガンド結合パートナーへの結合を阻害する分子である。特定の態様では、PD-1リガンド結合パートナーはPD-L1及び/又はPD-L2である。他の実施態様では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1のその結合パートナーへの結合を阻害する分子である。特定の態様では、PD-L1結合パートナーはPD-1及び/又はB7-1である。他の実施態様では、PD-L2結合アンタゴニストは、PD-L2のその結合パートナーへの結合を阻害する分子である。特定の態様では、PD-L2結合パートナーはPD-1である。アンタゴニストは抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、又はオリゴペプチドでありうる。
【0270】
幾つかの実施態様では、PD-1結合アンタゴニストは、MDX-1106(ニボルマブ)、メルク3745(ランブロリズマブ)、CT-011(ピディリズマブ)、及びAMP-224から選択される。幾つかの実施態様では、PD-L1結合アンタゴニストは、YW243.55.S70、MPDL3280A、MDX-1105、及びMEDI4736から選択される。幾つかの実施態様では、PD-L2結合アンタゴニストはAMP-224である。幾つかの実施態様では、PD-1結合アンタゴニストはAMP-224である。MDX-1105は、BMS-936559としても知られ、国際公開第2007/005874号に記載された抗PD-L1抗体である。抗体YW243.55.S70(配列番号20)は、出典明示によりここに援用される国際公開第2010/077634A1号及び米国特許第8217149号に記載された抗PD-L1である。MDX-1106は、MDX-1106-04、ONO-4538、BMS-936558、又はニボルマブとしても知られ、国際公開第2006/121168号に記載された抗PD-1抗体である。メルク3745は、MK3475、MK-3475、SCH-900475、又はランブロリズマブとしても知られ、国際公開第2009/114335号に記載された抗PD-1抗体である。CT-011は、hBAT、hBAT-1、又はピディリズマブとしても知られ、国際公開第2009/101611号に記載された抗PD-1抗体である。AMP-224は、B7-DCIgとしても知られ、国際公開第2010/027827号及び国際公開第2011/066342号に記載されたPD-L2-Fc融合可溶性受容体である。
【0271】
この発明の方法に有用な抗PD-L1抗体とその作製方法の例は、出典明示によりここに援用されるPCT特許出願の国際公開第2010/077634A1号、及び米国特許第8217149号に記載されている。
【0272】
幾つかの実施態様では、PD-1軸結合アンタゴニストは抗PD-L1抗体である。幾つかの実施態様では、抗PD-L1抗体は、PD-L1とPD-1の間及び/又はPD-L1とB7-1の間の結合を阻害することができる。幾つかの実施態様では、抗PD-L1抗体はモノクローナル抗体である。幾つかの実施態様では、抗PD-L1抗体は、Fab、Fab’-SH、Fv、scFv、及び(Fab’)断片からなる群から選択される抗体断片である。幾つかの実施態様では、抗PD-L1抗体はヒト化抗体である。幾つかの実施態様では、抗PD-L1抗体はヒト抗体である。
【0273】
この発明において有用な抗PD-L1抗体は、国際公開第2010/077634A1号及び米国特許第8217149号に記載されているもののような、そのような抗体を含む組成物を含め、がん又は免疫関連疾患(例えばT細胞機能不全疾患、ウイルス感染、慢性ウイルス感染等)を治療するために、何らかの付加療法(例えば化学療法)を伴い又は伴わず、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤と組合せて使用することができる。
【0274】
一実施態様では、抗PD-L1抗体は、HVR-H1、HVR-H2及びHVR-H3配列を含む重鎖可変領域ポリペプチドを含み、ここで、
(a)HVR-H1配列はGFTFSXSWIH(配列番号:33)であり;
(b)HVR-H2配列はAWIXPYGGSXYYADSVKG(配列番号:34)であり;
(c)HVR-H3配列はRHWPGGFDY(配列番号:19)であり;
更にここで、XはD又はGであり;XはS又はLであり;XはT又はSである。
【0275】
特定の一態様では、XはDであり;XはSであり、XはTである。他の態様では、ポリペプチドは、次式に従ってHVR間に並置された可変領域重鎖フレームワーク配列を更に含む:(HC-FR1)-(HVR-H1)-(HC-FR2)-(HVR-H2)-(HC-FR3)-(HVR-H3)-(HC-FR4)。更に別の態様では、フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列由来である。更なる態様では、フレームワーク配列はVHサブグループIIIコンセンサスフレームワークである。また更なる態様では、フレームワーク配列の少なくとも一つは次のものである:
HC-FR1はEVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAAS(配列番号:25)であり、
HC-FR2はWVRQAPGKGLEWV(配列番号:26)であり、
HC-FR3はRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCAR(配列番号:27)であり、
HC-FR4はWGQGTLVTVSA(配列番号:28)である。
【0276】
また更なる態様では、重鎖ポリペプチドは、HVR-L1、HVR-L2及びHVR-L3を含む可変領域軽鎖と更に組み合わされ、ここで、
(a)HVR-L1配列はRASQXTXA(配列番号:35)であり;
(b)HVR-L2配列はSASXLX10S(配列番号:36)であり;
(c)HVR-L3配列はQQX11121314PX15T(配列番号:37)であり;
更にここで、XはD又はVであり;XはV又はIであり;XはS又はNであり;XはA又はFであり;XはV又はLであり;XはF又はTであり;X10はY又はAであり;X11はY、G、F、又はSであり;X12はL、Y、F又はWであり;X13はY、N、A、T、G、F又はIであり;X14はH、V、P、T又はIであり;X15はA、W、R、P又はTである。
【0277】
また更なる態様では、X4はDであり;X5はVであり;X6はSであり;X7はAであり;X8はVであり;X9はFであり;X10はYであり;X11はYであり;X12はLであり;X13はYであり;X14はHであり;X15はAである。また更なる態様では、軽鎖は、式(LC-FR1)-(HVR-L1)-(LC-FR2)-(HVR-L2)-(LC-FR3)-(HVR-L3)-(LC-FR4)に従って、HVR間に並置された可変領域軽鎖フレームワーク配列を更に含む。また更なる態様では、フレームワーク配列はヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来する。また更なる態様では、フレームワーク配列は、VLカッパIコンセンサスフレームワークである。また更なる態様では、フレームワーク配列の少なくとも一つは次の通りである:
LC-FR1はDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC(配列番号:29)であり、
LC-FR2はWYQQKPGKAPKLLIY(配列番号:30)であり、
LC-FR3はGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYC(配列番号:31)であり、
LC-FR4はFGQGTKVEIKR(配列番号:32)である。
【0278】
他の実施態様では、重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む単離された抗PD-L1抗体又は抗原結合断片が提供され、ここで、
(a)重鎖は、HVR-H1、HVR-H2及びHVR-H3を含み、ここで更に、
(i)HVR-H1配列はGFTFSXSWIH(配列番号:33)であり
(ii)HVR-H2配列はAWIXPYGGSXYYADSVKG(配列番号:34)であり
(iii)HVR-H3配列はRHWPGGFDY(配列番号:19)であり
(b)軽鎖は、HVR-L1、HVR-L2及びHVR-L3を含み、ここで更に、
(i)HVR-L1配列はRASQXTXA(配列番号:35)であり
(ii)HVR-L2配列はSASXLX10S(配列番号:36)であり
(iii)HVR-L3配列はQQX11121314PX15T(配列番号:37)であり
更にここで:XはD又はGであり;XはS又はLであり;XはT又はSであり;XはD又はVであり;XはV又はIであり;XはS又はNであり;XはA又はFであり;XはV又はLであり;XはF又はTであり;X10はY又はAであり;X11は、Y、G、F又はSであり;X12は、L、Y、F又はWであり;X13は、Y、N、A、T、G、F又はIであり;X14は、H、V、P、T又はIであり;X15は、A、W、R、P又はTである。
【0279】
特定の態様では、XはDであり;XはSであり、かつXはTである。別の態様では、XはDであり;XはVであり;XはSであり;XはAであり;XはVであり;XはFであり;X10はYであり;X11はYであり;X12はLであり;X13はYであり;X14はHであり;X15はAである。更に別の態様では、XはDであり;XはSであり、かつXはTであり、XはDであり;XはVであり;XはSであり;XはAであり;XはVであり;XはFであり;X10はYであり;X11はYであり;X12はLであり;X13はYであり;X14はHであり、かつX15はAである。
【0280】
更なる態様では、重鎖可変領域は、(HC-FR1)-(HVR-H1)-(HC-FR2)-(HVR-H2)-(HC-FR3)-(HVR-H3)-(HC-FR4)のように、HVR間に並置された一又は複数のフレームワーク配列を含み、軽鎖可変領域は、(LC-FR1)-(HVR-L1)-(LC-FR2)-(HVR-L2)-(LC-FR3)-(HVR-L3)-(LC-FR4)のように、HVR間に並置された一又は複数のフレームワーク配列を含む。また更なる態様では、フレームワーク配列はヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来する。また更なる態様では、重鎖フレームワーク配列は、カバットサブグループI、II又はIII配列に由来する。また更なる態様では、重鎖フレームワーク配列はVHサブグループIIIコンセンサスフレームワークである。また更なる態様では、一又は複数の重鎖フレームワーク配列は、次の通りである:
HC-FR1 EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAAS(配列番号:25)
HC-FR2 WVRQAPGKGLEWV(配列番号:26)
HC-FR3 RFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCAR(配列番号:27)
HC-FR4 WGQGTLVTVSA(配列番号:28)。
【0281】
また更なる態様では、軽鎖フレームワーク配列は、カバットカッパI、II、II又はIVサブグループ配列に由来する。また更なる態様では、軽鎖フレームワーク配列はVLカッパIコンセンサスフレームワークである。また更なる態様では、一又は複数の軽鎖フレームワーク配列は次の通りである:
LC-FR1 DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC(配列番号:29)
LC-FR2 WYQQKPGKAPKLLIY(配列番号:30)
LC-FR3 GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYC (配列番号:31)
LC-FR4 FGQGTKVEIKR(配列番号:32)。
【0282】
更に別の特定の態様では、抗体はヒト又はマウス定常領域を更に含む。また更なる態様では、ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG2、IgG3、IgG4からなる群から選択される。更に別の特定の態様では、ヒト定常領域はIgG1である。また更なる態様では、マウス定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3からなる群から選択される。また更なる態様では、マウス定常領域はIgG2Aである。更に別の特定の態様では、抗体は、低減した又は最小のエフェクター機能を有する。更に別の特定の態様では、最小のエフェクター機能は、「エフェクターレスFc変異」又は非グリコシル化に起因する。別の更なる実施態様では、エフェクターレスFc変異は、定常領域中のN297A又はD265A/N297A置換である。
【0283】
更に他の実施態様では、重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む抗PD-L1抗体が提供され、ここで、
(a)重鎖は、それぞれGFTFSDSWIH(配列番号:17)、AWISPYGGSTYYADSVKG(配列番号:18)及びRHWPGGFDY(配列番号:19)に対して、少なくとも85%の配列同一性を有するHVR-H1、HVR-H2及びHVR-H3配列を更に含み、又は
(b)軽鎖は、それぞれRASQDVSTAVA(配列番号:20)、SASFLYS(配列番号:21)及びQQYLYHPAT(配列番号:22)に対して、少なくとも85%の配列同一性を有するHVR-L1、HVR-L2及びHVR-L3配列を更に含む。
(c)特定の態様では、配列同一性は、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%である。他の態様では、重鎖可変領域は、(HC-FR1)-(HVR-H1)-(HC-FR2)-(HVR-H2)-(HC-FR3)-(HVR-H3)-(HC-FR4)のように、HVR間に並置された一又は複数のフレームワーク配列を含み、軽鎖可変領域は、(LC-FR1)-(HVR-L1)-(LC-FR2)-(HVR-L2)-(LC-FR3)-(HVR-L3)-(LC-FR4)のように、HVR間に並置された一又は複数のフレームワーク配列を含む。更に他の態様では、フレームワーク配列はヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来する。また更なる態様では、重鎖フレームワーク配列は、カバットサブグループI、II、又はIII配列に由来する。また更なる態様では、重鎖フレームワーク配列はVHサブグループIIIコンセンサスフレームワークである。また更なる態様では、一又は複数の重鎖フレームワーク配列は次の通りである:
HC-FR1 EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAAS(配列番号:25)
HC-FR2 WVRQAPGKGLEWV(配列番号:26)
HC-FR3 RFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCAR(配列番号:27)
HC-FR4 WGQGTLVTVSA(配列番号:28)。
【0284】
また更なる態様では、軽鎖フレームワーク配列は、カバットカッパI、II、II又はIVサブグループ配列に由来する。また更なる態様では、軽鎖フレームワーク配列はVLカッパIコンセンサスフレームワークである。また更なる態様では、一又は複数の軽鎖フレームワーク配列は次の通りである:
LC-FR1 DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC(配列番号:29)
LC-FR2 WYQQKPGKAPKLLIY(配列番号:30)
LC-FR3 GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYC(配列番号:31)
LC-FR4 FGQGTKVEIKR(配列番号:32)。
【0285】
更に別の特定の態様では、抗体はヒト又はマウス定常領域を更に含む。また更なる態様では、ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG2、IgG3、IgG4からなる群から選択される。更に別の特定の態様では、ヒト定常領域はIgG1である。また更なる態様では、マウス定常領域はIgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3からなる群から選択される。また更なる態様では、マウス定常領域はIgG2Aである。更に別の特定の態様では、抗体は、低減した又は最小のエフェクター機能を有する。更に別の特定の態様では、最小のエフェクター機能は、「エフェクターレスFc変異」又は非グリコシル化に起因する。別の更なる実施態様では、エフェクターレスFc変異は、定常領域中のN297A又はD265A/N297A置換である。
【0286】
別の更なる実施態様では、重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む単離された抗PD-L1抗体が提供され、ここで、
(a)重鎖配列は、重鎖配列:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSA(配列番号:23)、EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSSASTK(配列番号:40)、又はEVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSS(配列番号:41)
に対して、少なくとも85%の配列同一性を有し、あるいは
(b)軽鎖配列は、軽鎖配列:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKR(配列番号:24)に対して、少なくとも85%の配列同一性を有する。
【0287】
特定の態様では、配列同一性は、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%である。他の態様では、重鎖可変領域は、(HC-FR1)-(HVR-H1)-(HC-FR2)-(HVR-H2)-(HC-FR3)-(HVR-H3)-(HC-FR4)のように、HVR間に並置された一又は複数のフレームワーク配列を含み、軽鎖可変領域は、(LC-FR1)-(HVR-L1)-(LC-FR2)-(HVR-L2)-(LC-FR3)-(HVR-L3)-(LC-FR4)のように、HVR間に並置された一又は複数のフレームワーク配列を含む。更に別の態様では、フレームワーク配列はヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来する。更なる態様では、重鎖フレームワーク配列は、カバットサブグループI、II、又はIII配列に由来する。また更なる態様では、重鎖フレームワーク配列はVHサブグループIIIコンセンサスフレームワークである。また更なる態様では、一又は複数の重鎖フレームワーク配列は、次の通りである:
HC-FR1 EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAAS(配列番号:25)
HC-FR2 WVRQAPGKGLEWV(配列番号:26)
HC-FR3 RFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCAR(配列番号:27)
HC-FR4 WGQGTLVTVSA(配列番号:28)。
【0288】
また更なる態様では、軽鎖フレームワーク配列は、カバットカッパI、II、II又はIVサブグループ配列に由来する。また更なる態様では、軽鎖フレームワーク配列はVLカッパIコンセンサスフレームワークである。また更なる態様では、一又は複数の軽鎖フレームワーク配列は次の通りである:
LC-FR1 DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC(配列番号:29)
LC-FR2 WYQQKPGKAPKLLIY(配列番号:30)
LC-FR3 GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYC(配列番号:31)
LC-FR4 FGQGTKVEIKR(配列番号:32)。
【0289】
更に別の特定の態様では、抗体はヒト又はマウス定常領域を更に含む。また更なる態様では、ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG2、IgG3、IgG4からなる群から選択される。更に別の特定の態様では、ヒト定常領域はIgG1である。また更なる態様では、マウス定常領域はIgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3からなる群から選択される。また更なる態様では、マウス定常領域はIgG2Aである。更に別の特定の態様では、抗体は、低減した又は最小のエフェクター機能を有する。更に別の特定の態様では、最小のエフェクター機能は原核細胞における産生に起因する。更に別の特定の態様では、最小のエフェクター機能は「エフェクターレスFc変異」又は非グリコシル化に起因する。別の更なる実施態様では、エフェクターレスFc変異は、定常領域中のN297A又はD265A/N297A置換である。
【0290】
別の更なる実施態様では、本発明は、少なくとも一種の薬学的に許容可能な担体との組合せで上述の抗PD-L1抗体の何れかを含有する組成物を提供する。
【0291】
別の更なる実施態様では、抗PD-L1抗体の軽鎖又は重鎖可変領域配列をコードする単離された核酸が提供され、ここで、
(a)重鎖は、それぞれGFTFSDSWIH(配列番号:17)、AWISPYGGSTYYADSVKG(配列番号:18)及びRHWPGGFDY(配列番号:19)に対して、少なくとも85%の配列同一性を有するHVR-H1、HVR-H2及びHVR-H3配列を更に含み、かつ
(b)軽鎖は、それぞれRASQDVSTAVA(配列番号:20)、SASFLYS (配列番号:21)及びQQYLYHPAT(配列番号:22)に対して、少なくとも85%の配列同一性を有するHVR-L1、HVR-L2及びHVR-L3配列を更に含む。
【0292】
特定の態様では、配列同一性は、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%である。ある態様では、重鎖可変領域は、(HC-FR1)-(HVR-H1)-(HC-FR2)-(HVR-H2)-(HC-FR3)-(HVR-H3)-(HC-FR4)のように、HVR間に並置された一又は複数のフレームワーク配列を含み、軽鎖可変領域は、(LC-FR1)-(HVR-L1)-(LC-FR2)-(HVR-L2)-(LC-FR3)-(HVR-L3)-(LC-FR4)のように、HVR間に並置された一又は複数のフレームワーク配列を含む。更なる他の態様では、フレームワーク配列はヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来する。更なる態様では、重鎖フレームワーク配列は、カバットサブグループI、II、又はIII配列に由来する。また更なる態様では、重鎖フレームワーク配列はVHサブグループIIIコンセンサスフレームワークである。また更なる態様では、一又は複数の重鎖フレームワーク配列は次の通りである:
HC-FR1 EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAAS(配列番号:25)
HC-FR2 WVRQAPGKGLEWV(配列番号:26)
HC-FR3 RFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCAR(配列番号:27)
HC-FR4 WGQGTLVTVSA(配列番号:28)。
【0293】
また更なる態様では、軽鎖フレームワーク配列は、カバットカッパI、II、II又はIVサブグループ配列に由来する。また更なる態様では、軽鎖フレームワーク配列はVLカッパIコンセンサスフレームワークである。また更なる態様では、一又は複数の軽鎖フレームワーク配列は次の通りである:
LC-FR1 DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC(配列番号:29)
LC-FR2 WYQQKPGKAPKLLIY(配列番号:30)
LC-FR3 GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYC(配列番号:31)
LC-FR4 FGQGTKVEIKR(配列番号:32)。
【0294】
更に別の特定の態様では、抗体はヒト又はマウス定常領域を更に含む。また更なる態様では、ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG2、IgG3、IgG4からなる群から選択される。更に別の特定の態様では、ヒト定常領域はIgG1である。また更なる態様では、マウス定常領域はIgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3からなる群から選択される。また更なる態様では、マウス定常領域はIgG2Aである。別の更なる特定の態様では、抗体は、低減された又は最小のエフェクター機能を有する。更に別の特定の態様では、最小のエフェクター機能は原核細胞における産生に起因する。更に別の特定の態様では、最小のエフェクター機能は「エフェクターレスFc変異」又は非グリコシル化に起因する。別の更なる実施態様では、エフェクターレスFc変異は、定常領域中のN297A又はD265A/N297A置換である。
【0295】
別の更なる実施態様では、提供されるものは、重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む単離された抗PDL1抗体であり、ここで、
(a)重鎖配列は、重鎖配列:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSS(配列番号:41)に対して少なくとも85%の配列同一性を有し、又は
(b)軽鎖配列は、軽鎖配列:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKR(配列番号:24)に対して少なくとも85%の配列同一性を有する。
【0296】
特定の態様では、配列同一性は、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%である。他の態様では、重鎖可変領域は、(HC-FR1)-(HVR-H1)-(HC-FR2)-(HVR-H2)-(HC-FR3)-(HVR-H3)-(HC-FR4)のように、HVR間に並置された一又は複数のフレームワーク配列を含み、軽鎖可変領域は、(LC-FR1)-(HVR-L1)-(LC-FR2)-(HVR-L2)-(LC-FR3)-(HVR-L3)-(LC-FR4)のように、HVR間に並置された一又は複数のフレームワーク配列を含む。更なる他の態様では、フレームワーク配列はヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来する。更なる態様では、重鎖フレームワーク配列は、カバットサブグループI、II、又はIII配列に由来する。また更なる態様では、重鎖フレームワーク配列はVHサブグループIIIコンセンサスフレームワークである。また更なる態様では、一又は複数の重鎖フレームワーク配列は次の通りである:
HC-FR1 EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAAS(配列番号:25)
HC-FR2 WVRQAPGKGLEWV(配列番号:26)
HC-FR3 RFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCAR(配列番号:27)
HC-FR4 WGQGTLVTVSS(配列番号:42)。
【0297】
また更なる態様では、軽鎖フレームワーク配列は、カバットカッパI、II、II又はIVサブグループ配列に由来する。また更なる態様では、軽鎖フレームワーク配列はVLカッパIコンセンサスフレームワークである。また更なる態様では、一又は複数の軽鎖フレームワーク配列は次の通りである:
LC-FR1 DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC(配列番号:29)
LC-FR2 WYQQKPGKAPKLLIY(配列番号:30)
LC-FR3 GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYC(配列番号:31)
LC-FR4 FGQGTKVEIKR(配列番号:32)。
【0298】
更に別の特定の態様では、抗体はヒト又はマウス定常領域を更に含む。また更なる態様では、ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG2、IgG3、IgG4からなる群から選択される。更に別の特定の態様では、ヒト定常領域はIgG1である。また更なる態様では、マウス定常領域はIgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3からなる群から選択される。また更なる態様では、マウス定常領域はIgG2Aである。更に別の特定の態様では、抗体は、低減された又は最小のエフェクター機能を有する。更に別の特定の態様では、最小のエフェクター機能は原核細胞における産生に起因する。更に別の特定の態様では、最小のエフェクター機能は「エフェクターレスFc変異」又は非グリコシル化に起因する。別の更なる実施態様では、エフェクターレスFc変異は、定常領域中のN297A又はD265A/N297A置換である。
【0299】
更なる態様では、重鎖可変領域は、(HC-FR1)-(HVR-H1)-(HC-FR2)-(HVR-H2)-(HC-FR3)-(HVR-H3)-(HC-FR4)のように、HVR間に並置された一又は複数のフレームワーク配列を含み、軽鎖可変領域は、(LC-FR1)-(HVR-L1)-(LC-FR2)-(HVR-L2)-(LC-FR3)-(HVR-L3)-(LC-FR4)のように、HVR間に並置された一又は複数のフレームワーク配列を含む。また更なる態様では、フレームワーク配列はヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来する。また更なる態様では、重鎖フレームワーク配列は、カバットサブグループI、II、又はIII配列に由来する。また更なる態様では、重鎖フレームワーク配列はVHサブグループIIIコンセンサスフレームワークである。また更なる態様では、一又は複数の重鎖フレームワーク配列は次の通りである:
HC-FR1 EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFS(配列番号:43)
HC-FR2 WVRQAPGKGLEWVA(配列番号:44)
HC-FR3 RFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCAR(配列番号:27)
HC-FR4 WGQGTLVTVSS(配列番号:45)。
【0300】
また更なる態様では、軽鎖フレームワーク配列は、カバットカッパI、II、II又はIVサブグループ配列に由来する。また更なる態様では、軽鎖フレームワーク配列はVLカッパIコンセンサスフレームワークである。また更なる態様では、一又は複数の軽鎖フレームワーク配列は次の通りである:
LC-FR1 DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC(配列番号:29)
LC-FR2 WYQQKPGKAPKLLIY(配列番号:30)
LC-FR3 GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYC (配列番号:31)
LC-FR4 FGQGTKVEIK(配列番号:46)。
【0301】
更に別の特定の態様では、抗体はヒト又はマウス定常領域を更に含む。また更なる態様では、ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG2、IgG3、IgG4からなる群から選択される。更に別の特定の態様では、ヒト定常領域はIgG1である。また更なる態様では、マウス定常領域はIgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3からなる群から選択される。また更なる態様では、マウス定常領域はIgG2Aである。更に別の特定の態様では、抗体は、低減された又は最小のエフェクター機能を有する。更に別の特定の態様では、最小のエフェクター機能は「エフェクターレスFc変異」又は非グリコシル化に起因する。別の更なる実施態様では、エフェクターレスFc変異は、定常領域中のN297A又はD265A/N297A置換である。
【0302】
更に別の実施態様では、提供されるものは、重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む抗PDL1抗体であり、ここで、
(d)重鎖は、それぞれGFTFSDSWIH(配列番号:17)、AWISPYGGSTYYADSVKG(配列番号:18)及びRHWPGGFDY(配列番号:19)に対して、少なくとも85%の配列同一性を有するHVR-H1、HVR-H2及びHVR-H3配列を更に含み、あるいは
(e)軽鎖は、それぞれRASQDVSTAVA(配列番号:20)、SASFLYS(配列番号:21)及びQQYLYHPAT(配列番号:22)に対して、少なくとも85%の配列同一性を有するHVR-L1、HVR-L2及びHVR-L3配列を更に含む。
【0303】
特定の態様では、配列同一性は、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%である。ある態様では、重鎖可変領域は、(HC-FR1)-(HVR-H1)-(HC-FR2)-(HVR-H2)-(HC-FR3)-(HVR-H3)-(HC-FR4)のように、HVR間に並置された一又は複数のフレームワーク配列を含み、軽鎖可変領域は、(LC-FR1)-(HVR-L1)-(LC-FR2)-(HVR-L2)-(LC-FR3)-(HVR-L3)-(LC-FR4)のように、HVR間に並置された一又は複数のフレームワーク配列を含む。更なる他の態様では、フレームワーク配列はヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来する。また更なる態様では、重鎖フレームワーク配列は、カバットサブグループI、II、又はIII配列に由来する。また更なる態様では、重鎖フレームワーク配列はVHサブグループIIIコンセンサスフレームワークである。また更なる態様では、一又は複数の重鎖フレームワーク配列は次の通りである:
HC-FR1 EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAAS(配列番号:25)
HC-FR2 WVRQAPGKGLEWV(配列番号:26)
HC-FR3 RFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCAR(配列番号:27)
HC-FR4 WGQGTLVTVSSASTK(配列番号:47)。
【0304】
また更なる態様では、軽鎖フレームワーク配列は、カバットカッパI、II、II又はIVサブグループ配列に由来する。また更なる態様では、軽鎖フレームワーク配列はVLカッパIコンセンサスフレームワークである。また更なる態様では、一又は複数の軽鎖フレームワーク配列は次の通りである:
LC-FR1 DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC(配列番号:29)
LC-FR2 WYQQKPGKAPKLLIY(配列番号:30)
LC-FR3 GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYC(配列番号:31)
LC-FR4 FGQGTKVEIKR(配列番号:32)。
【0305】
更に別の特定の態様では、抗体はヒト又はマウス定常領域を更に含む。また更なる態様では、ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG2、IgG3、IgG4からなる群から選択される。更に別の特定の態様では、ヒト定常領域はIgG1である。また更なる態様では、マウス定常領域はIgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3からなる群から選択される。また更なる態様では、マウス定常領域はIgG2Aである。更に別の特定の態様では、抗体は、低減された又は最小のエフェクター機能を有する。更に別の特定の態様では、最小のエフェクター機能は「エフェクターレスFc変異」又は非グリコシル化に起因する。別の更なる実施態様では、エフェクターレスFc変異は、定常領域中のN297A又はD265A/N297A置換である。
【0306】
別の更なる実施態様では、提供されるものは、重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む単離された抗PDL1抗体であり、ここで、
(a)重鎖配列は、重鎖配列:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSSASTK(配列番号:40)に対して、少なくとも85%の配列同一性を有し、あるいは
(b)軽鎖配列は、軽鎖配列:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKR(配列番号:24)に対して、少なくとも85%の配列同一性を有する。
【0307】
幾つかの実施態様では、提供されるものは、重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む単離された抗PDL1抗体であり、ここで、軽鎖可変領域配列は、配列番号:24のアミノ酸配列に対して、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する。幾つかの実施態様では、提供されるものは、重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む単離された抗PDL1抗体であり、ここで、重鎖可変領域配列は、配列番号:40のアミノ酸配列に対して、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する。幾つかの実施態様では、重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む単離された抗PDL1抗体であり、ここで、軽鎖可変領域配列は、配列番号:24のアミノ酸配列に対して、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有し、かつ重鎖可変領域配列は、配列番号:40のアミノ酸配列に対して、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する。
【0308】
別の更なる実施態様では、提供されるものは、重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む単離された抗PDL1抗体であり、ここで、
(a)重鎖配列は、重鎖配列:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYASTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号:48)に対して少なくとも85%の配列同一性を有し、又は
(b)軽鎖配列は、軽鎖配列:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号:49)に対して少なくとも85%の配列同一性を有する。
【0309】
幾つかの実施態様では、提供されるものは、重鎖及び軽鎖配列を含む単離された抗PDL1抗体であり、ここで、軽鎖配列は、配列番号:49のアミノ酸配列に対して、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する。幾つかの実施態様では、提供されるものは、重鎖及び軽鎖配列を含む単離された抗PDL1抗体であり、ここで、重鎖配列は、配列番号:48のアミノ酸配列に対して、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する。幾つかの実施態様では、提供されるものは、重鎖及び軽鎖配列を含む単離された抗PDL1抗体であり、ここで、軽鎖配列は、配列番号:49のアミノ酸配列に対して、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有し、かつ重鎖配列は、配列番号:48のアミノ酸配列に対して、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する。
【0310】
また更なる態様では、核酸は、先に記載した抗PD-L1抗体の何れかをコードする核酸の発現に適したベクターを更に含む。更に別の特定の態様では、ベクターは、核酸の発現に適した宿主細胞を更に含む。更に別の特定の態様では、宿主細胞は真核細胞又は原核細胞である。更に別の特定の態様では、真核細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)などの哺乳動物細胞である。
【0311】
抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片は、例えば、先に記載した抗PD-L1抗体又は抗原結合断片の何れかをコードする核酸を含む宿主細胞を、発現に適した形態で、そのような抗体又は断片を産生するのに適した条件下で培養し、抗体又は断片を回収することを含む方法によって、当該技術分野で既知の方法を使用して作製することができる。
【0312】
別の更なる実施態様では、本発明は、ここに提供される抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片と少なくとも一種の薬学的に許容可能な担体とを含有する組成物を提供する。
【0313】
TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤
ここに提供されるものは、個体におけるがんを治療し又はその進行を遅延させる方法において、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストを、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤と組み合わせて個体に投与することを含む方法である。ここに提供されるものはまた、個体におけるがんの再発又はがんの進行を減少させ又は阻害する方法において、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストを、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤と組み合わせて個体に投与することを含む方法である。ここに提供されるものはまた、個体における免疫関連疾患を治療し又はその進行を遅延させる方法において、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストを、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤と組み合わせて個体に投与することを含む方法である。ここに提供されるものはまた、個体における免疫関連疾患の進行を減少させ又は阻害する方法において、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストを、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤と組み合わせて個体に投与することを含む方法である。ここに提供されるものはまた、個体における免疫応答又は機能を増加させ、亢進し又は刺激する方法において、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストを、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤と組み合わせて個体に投与することを含む方法である。
ここに提供されるものはまた、個体における免疫応答又は機能を増加させ、亢進し又は刺激する方法において、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する有効量の薬剤と、一又は複数の更なる免疫同時阻害性受容体を減少させ又は阻害する薬剤とを個体に投与することを含む方法である。ここに提供されるものはまた、個体における免疫応答又は機能を増加させ、亢進し又は刺激する方法において、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する有効量の薬剤と、一又は複数の更なる免疫同時刺激性受容体を増加させ又は活性化する薬剤とを個体に投与することを含む方法である。例えば、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤は、TIGIT発現及び/又は活性のアンタゴニスト、PVR発現及び/又は活性のアンタゴニスト、TIGITのPVRとの相互作用を阻害し及び/又はブロックする薬剤、TIGITのPVRL2との相互作用を阻害し及び/又はブロックする薬剤、TIGITのPVRL3との相互作用を阻害し及び/又はブロックする薬剤、PVRへのTIGITの結合によって媒介される細胞内シグナル伝達を阻害し及び/又はブロックする薬剤、PVRL2へのTIGITの結合によって媒介される細胞内シグナル伝達を阻害し及び/又はブロックする薬剤、PVRL3へのTIGITの結合によって媒介される細胞内シグナル伝達を阻害し及び/又はブロックする薬剤、及びそれらの組合せを含む。
【0314】
幾つかの実施態様では、TIGIT発現及び/又は活性のアンタゴニストは、小分子阻害剤、阻害抗体又はその抗原結合断片、アプタマー、阻害核酸、及び阻害ポリペプチドを含む。
【0315】
幾つかの実施態様では、PVR発現及び/又は活性のアンタゴニストは、小分子阻害剤、阻害抗体又はその抗原結合断片、アプタマー、阻害核酸、及び阻害ポリペプチドを含む。
【0316】
幾つかの実施態様では、TIGITのPVRとの相互作用を阻害し及び/又はブロックする薬剤は、小分子阻害剤、阻害抗体又はその抗原結合断片、アプタマー、阻害核酸、及び阻害ポリペプチドを含む。
【0317】
幾つかの実施態様では、TIGITのPVRL2との相互作用を阻害し及び/又はブロックする薬剤は、小分子阻害剤、阻害抗体又はその抗原結合断片、アプタマー、阻害核酸、及び阻害ポリペプチドを含む。
【0318】
幾つかの実施態様では、TIGITのPVRL3との相互作用を阻害し及び/又はブロックする薬剤は、小分子阻害剤、阻害抗体又はその抗原結合断片、アプタマー、阻害核酸、及び阻害ポリペプチドを含む。
【0319】
幾つかの実施態様では、PVRへのTIGITの結合によって媒介される細胞内シグナル伝達を阻害し及び/又はブロックする薬剤は、小分子阻害剤、阻害抗体又はその抗原結合断片、アプタマー、阻害核酸、及び阻害ポリペプチドを含む。
【0320】
幾つかの実施態様では、PVRL2へのTIGITの結合によって媒介される細胞内シグナル伝達を阻害し及び/又はブロックする薬剤は、小分子阻害剤、阻害抗体又はその抗原結合断片、アプタマー、阻害核酸、及び阻害ポリペプチドを含む。
【0321】
幾つかの実施態様では、PVRL3へのTIGITの結合によって媒介される細胞内シグナル伝達を阻害し及び/又はブロックする薬剤は、小分子阻害剤、阻害抗体又はその抗原結合断片、アプタマー、阻害核酸、及び阻害ポリペプチドを含む。
【0322】
幾つかの実施態様では、TIGIT発現及び/又は活性のアンタゴニストは、アンチセンスポリヌクレオチド、干渉RNA、触媒RNA、及びRNA-DNAキメラから選択される阻害核酸である。
【0323】
幾つかの実施態様では、TIGIT発現及び/又は活性のアンタゴニストは抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片である。
【0324】
この発明において有用な抗TIGIT抗体は、国際公開第2009/126688号に記載されているもののような、そのような抗体を含む組成物を含め、PD-1軸結合アンタゴニストとの組合せで使用されうる。
【0325】
抗TIGIT抗体
本発明は抗TIGIT抗体を提供する。例示的な抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、ヒト化、二重特異性、及びヘテロコンジュゲート抗体を含む。本発明はまた他のポリペプチドに対する抗体(すなわち、抗PVR抗体)を提供し、抗TIGIT抗体の作成方法、生産、変種、使用又は他の側面に特に関係するここでの記載の何れも他の非TIGITポリペプチドに特異的な抗体にもまた適用可能であろうことは当業者によって理解されるであろう。
【0326】
ポリクローナル抗体
抗TIGIT抗体はポリクローナル抗体を含みうる。ポリクローナル抗体の調製方法は当業者に知られている。ポリクローナル抗体は、哺乳動物において、例えば免疫化剤と、所望されればアジュバントを、一又は複数回注射することによって産生させることができる。典型的には、免疫化剤及び/又はアジュバントを複数回の皮下又は腹腔内注射により、哺乳動物に注射する。免疫化剤は、TIGITポリペプチド又はその融合タンパク質を含みうる。免疫化されている哺乳動物において免疫原性であることが知られているタンパク質に免疫化剤をコンジュゲートさせるのが有用な場合がある。そのような免疫原タンパク質の例には、これらに限定されないが、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン、及び大豆トリプシン阻害剤が含まれる。用いられうるアジュバントの例には、フロイント完全アジュバント及びMPL-TDMアジュバント(モノホスホリル脂質A、合成トレハロースジコリノミコレート)が含まれる。免疫化プロトコールは、過度の実験なく当業者により選択されうる。
【0327】
モノクローナル抗体
抗TIGIT抗体は、別にはモノクローナル抗体であってもよい。モノクローナル抗体は、Kohler及びMilstein, Nature, 256:495 (1975)に記載されているもののような、ハイブリドーマ法を使用して調製することができる。ハイブリドーマ法では、マウス、ハムスター、又は他の適切な宿主動物を、典型的には免疫化剤により免疫化することで、免疫化剤に特異的に結合する抗体を生成するかあるいは生成可能なリンパ球を誘発する。あるいは、リンパ球をインビトロで免疫化することもできる。
【0328】
免疫化剤は、典型的には対象とするTIGITポリペプチド又はその融合タンパク質を含む。一般に、ヒト由来の細胞が望まれる場合には末梢血リンパ球(「PBL」)が使用され、あるいは非ヒト哺乳動物源が望まれる場合は、脾臓細胞又はリンパ節細胞が使用される。ついで、ポリエチレングリコール等の適当な融合剤を使用してリンパ球を不死化細胞株と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成する[Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, Academic Press, (1986) pp.59-103]。不死化細胞株は、通常は、形質転換された哺乳動物細胞、特に齧歯動物、ウシ、及びヒト由来の骨髄腫細胞である。通常、ラット又はマウスの骨髄腫細胞株が用いられる。ハイブリドーマ細胞は、好ましくは、未融合の不死化細胞の生存又は増殖を阻害する一又は複数の物質を含む適切な培地で培養されうる。例えば、親細胞が、酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠いていると、ハイブリドーマの培地は、典型的には、ヒポキサチン、アミノプテリン、及びチミジンを含み(「HAT培地」)、この物質がHGPRT欠損細胞の増殖を防ぐ。
【0329】
好ましい不死化細胞株は、効率的に融合し、選択された抗体生成細胞による安定した高レベルの抗体発現を支援し、HAT培地のような培地に対して感受性であるものである。より好ましい不死化細胞株はマウス骨髄腫株であり、これは例えばカリフォルニア州サンディエゴのSalk Institute Cell Distribution Centerやバージニア州マナッサスのアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションより入手することができる。ヒトモノクローナル抗体を生成するためのヒト骨髄腫及びマウス-ヒトヘテロ骨髄腫細胞株もまた開示されている[Kozbor, J. Immunol., 133:3001 (1984);Brodeur等, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, Marcel Dekker, Inc., New York, (1987) pp.51-63]。
【0330】
ついで、ハイブリドーマ細胞が培養される培地を、ポリペプチドに対するモノクローナル抗体の存在についてアッセイすることができる。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって生成されたモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降又はインビトロ結合アッセイ、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)又は酵素結合免疫測定法(ELISA)によって決定される。そのような技術及びアッセイは当該分野において知られている。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、Munson及びPollard, Anal. Biochem., 107:220 (1980)のスキャッチャード分析法によって測定することができる。
【0331】
所望のハイブリドーマ細胞が同定された後、クローンを限界希釈手順によりサブクローニングし、標準的な方法によって増殖させることができる[上掲のGoding]。この目的のための適当な培地には、例えば、ダルベッコの改変イーグル培地及びRPMI-1640倍地が含まれる。あるいは、ハイブリドーマ細胞は哺乳動物において腹水としてインビボで成長させることもできる。
【0332】
サブクローンによって分泌されるモノクローナル抗体は、例えばプロテインA-セファロース法、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー法、ゲル電気泳動法、透析法、又はアフィニティークロマトグラフィー等の一般的な免疫グロブリン精製手順によって培地又は腹水液から単離又は精製されうる。
【0333】
また、モノクローナル抗体は、例えば米国特許第4816567号に記載されたもののような、組換えDNA法により作製することができる。本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは、一般的な手順を使用して(例えば、マウス抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用して)、容易に単離し配列決定することができる。本発明のハイブリドーマ細胞はそのようなDNAの好ましい供給源となる。ひとたび単離されたら、DNAは発現ベクター内に配することができ、これがついで宿主細胞、例えばサルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、あるいは免疫グロブリンタンパク質を生成等しない骨髄腫細胞内に形質移入され、組換え宿主細胞内でモノクローナル抗体の合成をなすことができる。また、DNAは、例えば相同マウス配列に換えてヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのコード配列を置換することにより[米国特許第4816567号;Morrison等, 上掲]、又は免疫グロブリンコード配列に非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全部又は一部を共有結合させることにより、修飾することができる。このような非免疫グロブリンポリペプチドは、本発明の抗体の定常ドメインに置換でき、あるいは本発明の抗体の一つの抗原結合部位の可変ドメインに置換でき、キメラ性二価抗体を生成する。
【0334】
抗体は一価抗体であってもよい。一価抗体の調製方法は当該分野においてよく知られてる。例えば、一つの方法は、免疫グロブリン軽鎖と修飾重鎖の組換え発現を含む。重鎖は、重鎖の架橋を防止するように一般にFc領域の任意の点で切断される。あるいは、関連するシステイン残基を他のアミノ酸残基で置換するか又は欠失させて、架橋を防止する。
【0335】
一価抗体の調製にはインビトロ法がまた適している。抗体の消化によるその断片、特にFab断片の生成は、当該分野において知られている慣用的技術を使用して達成できる。
【0336】
ヒト及びヒト化抗体
本発明の抗TIGIT抗体はヒト化抗体又はヒト抗体を更に含みうる。非ヒト(例えばマウス)抗体のヒト化型とは、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖又はその断片(例えばFv、Fab、Fab'、F(ab')あるいは抗体の他の抗原結合サブ配列)であって、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むものである。ヒト化抗体はレシピエントの相補性決定領域(CDR)由来の残基が、マウス、ラット又はウサギのような所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)のCDR由来の残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)を含む。幾つかの例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基によって置換されている。また、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移入されたCDRもしくはフレームワーク配列にも見出されない残基を含んでいてもよい。一般に、ヒト化抗体は、全てあるいは殆ど全てのCDR領域が非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、全てあるいは殆ど全てのFR領域がヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである少なくとも一つ、典型的には二つの可変ドメインの実質的に全てを含む。場合によっては、ヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含むであろう[Jones等, Nature, 321:522-525 (1986);Riechmann等, Nature, 332:323-329 (1988);及びPresta, Curr. Op Struct. Biol., 2:593-596 (1992)]。
【0337】
非ヒト抗体をヒト化する方法は当該分野でよく知られている。一般的に、ヒト化抗体は、非ヒトである供給源からそこに導入された一又は複数のアミノ酸残基を有している。これら非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、典型的には「移入」可変ドメインから得られる「移入」残基と称される。ヒト化は、ウィンター(Winter)と共同研究者[Jones等, Nature, 321:522-525 (1986);Riechmann等, Nature, 332:323-327 (1988);Verhoeyen等, Science, 239:1534-1536 (1988)]の方法に従って、齧歯類CDR又はCDR配列をヒト抗体の対応する配列に置換することにより本質的に実施することができる。従って、このような「ヒト化」抗体は、インタクトなヒト可変ドメインより実質的に少ない分が非ヒト種由来の対応する配列で置換されたキメラ抗体(米国特許第4816567号)である。実際には、ヒト化抗体は典型的には幾つかのCDR残基と場合によっては幾つかのFR残基が齧歯類抗体の類似する部位からの残基によって置換されたヒト抗体である。
【0338】
また、ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリー[Hoogenboom及びWinter, J. Mol. Biol., 227:381 (1991);Marks等, J. Mol. Biol., 222:581 (1991)]を含む当該分野で知られた様々な方法を使用して産生することもできる。Cole等及びBoerner等の技術もまたヒトモノクローナル抗体の調製に利用することができる(Cole等, Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss. p.77(1985)及びBoerner等, J. Immunol., 147(1):86-95(1991)]。同様に、ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン座位をトランスジェニック動物、例えば内在性免疫グロブリン遺伝子が部分的又は完全に不活化されたマウスに導入することにより、作製することができる。誘発の際に、遺伝子再配列、組立、及び抗体レパートリーを含むあらゆる観点においてヒトに見られるものに非常に類似しているヒト抗体の生産が観察される。このアプローチは、例えば米国特許第5545807号;同5545806号;同5569825号;同5625126号;同5633425号;同5661016号、及び次の科学文献:Marks等, Bio/Technology 10, 779-783 (1992); Lonberg等, Nature 368 856-859 (1994); Morrison, Nature 368, 812-13 (1994);Fishwild等, Nature Biotechnology 14, 845-51 (1996); Neuberger, Nature Biotechnology 14, 826 (1996);Lonberg及びHuszar, Intern. Rev. Immunol. 13 65-93 (1995)に記載されている。
【0339】
また、抗体は、上述のような既知の選択及び/又は突然変異誘発法を利用して親和性成熟させうる。好ましい親和性成熟抗体は、5倍、より好ましくは10倍、更により好ましくは20又は30倍も成熟抗体の調製の元である出発抗体(一般的には、マウス、ヒト化又はヒト)より高い親和性を有する。
【0340】
二重特異性抗体
二重特異性抗体は、少なくとも二つの異なる抗原に対して結合特異性を有するモノクローナル抗体、好ましくはヒトもしくはヒト化抗体である。本発明の場合において、結合特異性の一方はTIGITに対してであり、他方は任意の他の抗原、好ましくは細胞表面タンパク質又はレセプター又はレセプターサブユニットに対してである。
【0341】
二重特異性抗体を作製する方法は当該分野において知られている。伝統的には、二重特異性抗体の組換え生産は、二つの重鎖が異なる特異性を持つ二つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対の同時発現に基づく[Milstein及びCuello, Nature, 305:537-539 (1983)]。免疫グロブリンの重鎖と軽鎖を無作為に取り揃えるため、これらハイブリドーマ(クアドローマ)は10種の異なる抗体分子の潜在的混合物を生成し、その内の一種のみが正しい二重特異性構造を有する。正しい分子の精製は、アフィニティークロマトグラフィー工程によって通常達成される。同様の手順が1993年5月13日公開の国際公開第93/08829号、及びTraunecker等, EMBO J.,10:3655-3656 (1991)に開示されている。
【0342】
所望の結合特異性(抗体-抗原結合部位)を有する抗体可変ドメインを免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合できる。融合は、好ましくは少なくともヒンジ部、CH2及びCH3領域の一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとのものである。少なくとも一つの融合には軽鎖結合に必要な部位を含む第一の重鎖定常領域(CH1)が存在することが好ましい。免疫グロブリン重鎖融合をコードするDNAと、所望されれば免疫グロブリン軽鎖を、別々の発現ベクターに挿入し、適当な宿主生物に同時形質移入する。二重特異性抗体を作製するための更なる詳細については、例えばSuresh等, Methods in Enzymology, 121:210 (1986)を参照のこと。
【0343】
国際公開第96/27011号に記載された他の方法によれば、一対の抗体分子間の界面を操作して、組換え細胞培養から回収されるヘテロ二量体の割合を最大にすることができる。好適な界面は抗体定常ドメインのCH3領域の少なくとも一部を含む。この方法では、第一抗体分子の界面からの一又は複数の小さいアミノ酸側鎖がより大きな側鎖(例えばチロシン又はトリプトファン)と置き換えられる。大きな側鎖と同じ又は類似のサイズの相補的「キャビティ」を、大きなアミノ酸側鎖を小さいもの(例えばアラニン又はスレオニン)と置き換えることにより第二の抗体分子の界面に作り出す。これにより、ホモ二量体のような不要の他の最終産物に対してヘテロ二量体の収量を増大させるメカニズムが提供される。
【0344】
二重特異性抗体は、完全長抗体又は抗体断片(例えば、F(ab’)二重特異性抗体)として調製できる。抗体断片から二重特異性抗体を産生する技術もまた文献に記載されている。例えば、化学結合を使用して二重特異性抗体を調製することができる。Brennan等, Science, 229:81 (1985) はインタクト抗体をタンパク分解性に切断してF(ab’)断片を産生する手順を記述している。これらの断片は、ジチオール錯体形成剤亜砒酸ナトリウムの存在下で還元して近接ジチオールを安定化させ、分子間ジスルフィド形成を防止する。産生されたFab’断片はついでチオニトロベンゾエート(TNB)誘導体に転換される。Fab’-TNB誘導体の一つをついでメルカプトエチルアミンでの還元によりFab’-チオールに再転換し、他のFab’-TNB誘導体の等モル量と混合して二重特異性抗体を形成する。作られた二重特異性抗体は酵素の選択的固定化用の薬剤として使用することができる。
【0345】
Fab’断片は大腸菌から直接回収でき、化学的にカップリングさせて二重特異性抗体を形成することができる。Shalaby等, J. Exp. Med., 175:217-225 (1992)は、完全にヒト化された二重特異性抗体F(ab’)分子の製造を記述している。各Fab’断片が大腸菌から別個に分泌され、インビトロで定方向化学カップリングに供されて二重特異性抗体が形成される。このようにして形成された二重特異性抗体は、ErbB2レセプターを過剰発現する細胞と正常なヒトT細胞に結合し、またヒト乳房腫瘍標的に対するヒト細胞傷害性リンパ球の細胞溶解活性を惹起することができる。
【0346】
組換え細胞培養から直接的に二重特異性抗体断片を作製し分離する様々な技術がまた記述されている。例えば、二重特異性抗体はロイシンジッパーを使用して産生されている。Kostelny等, J.Immunol. 148(5):1547-1553 (1992)。Fos及びJunタンパク質からのロイシンジッパーペプチドを遺伝子融合により二つの異なった抗体のFab’部分に結合させている。抗体ホモ二量体をヒンジ領域で還元して単量体を形成し、ついで再酸化して抗体ヘテロ二量体を形成する。この方法はまた抗体ホモ二量体の生産に対して利用することもできる。Hollinger等, Proc.Natl.Acad.Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)によって記載された「ダイアボディ」技術は二重特異性抗体断片を作製するための別のメカニズムを提供した。断片は、同一鎖上の二つのドメイン間の対形成を可能にするには短すぎるリンカーにより軽鎖可変ドメイン(V)に重鎖可変ドメイン(V)を結合してなる。従って、一つの断片のV及びVドメインは他の断片の相補的V及びVドメインと強制的に対形成させられ、二つの抗原結合部位を形成する。単鎖Fv(sFv)二量体の使用により二重特異性抗体断片を製造する他の方策もまた報告されている。Gruber等, J.Immunol. 152:5368 (1994)を参照のこと。
【0347】
二価より多い抗体も考えられる。非限定的な一例として、三重特異性抗体を調製することができる。例えばTutt等, J.Immunol. 147:60 (1991)を参照のこと。
【0348】
例示的な二重特異性抗体は、ここに与えられたTIGITポリペプチドの二つの異なるエピトープに結合しうる。あるいは、抗TIGITポリペプチドのアームは、特定のTIGITポリペプチドを発現する細胞に細胞防御メカニズムを集中させるように、T細胞レセプター分子(例えばCD2、CD3、CD28、又はB7)等の白血球上のトリガー分子又はFcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)及びFcγRIII(CD16)等のIgG(FcγR)に対するFcレセプターに結合するアームと結合されうる。また、二重特異性抗体は、特定のTIGITポリペプチドを発現する細胞に細胞傷害性薬を局在化させるためにも使用されうる。これらの抗体はTIGIT結合アームと細胞傷害性薬又は放射性核種キレート剤、例えばEOTUBE、DPTA、DOTA、又はTETAと結合するアームを有する。興味のある他の二重特異性抗体はTIGITポリペプチドに結合し、更に組織因子(TF)に結合する。
【0349】
ヘテロコンジュゲート抗体
ヘテロコンジュゲート抗体もまた本発明の範囲に入る。ヘテロコンジュゲート抗体は、二つの共有結合した抗体からなる。このような抗体は、例えば、免疫系細胞を不要な細胞に対してターゲティングさせるため[米国特許第4676980号]及びHIV感染の治療のために[国際公開第91/00360号;国際公開第92/200373号;欧州特許第03089号]提案されている。この抗体は、架橋剤に関連したものを含む合成タンパク化学における既知の方法を使用して、インビトロで調製することができると考えられる。例えば、ジスルフィド交換反応を使用するか又はチオエーテル結合を形成することにより、イムノトキシンを構築することができる。この目的に対して好適な試薬の例には、イミノチオレート及びメチル-4-メルカプトブチルイミデート、及び例えば米国特許第4676980号に開示されたものが含まれる。
【0350】
エフェクター機能の加工
本発明の抗体をエフェクター機能について改変し、例えばがん治療における抗体の有効性を向上させることが望ましい場合がある。例えば、システイン残基をFc領域に導入し、それにより、この領域に鎖間ジスルフィド結合を形成するようにしてもよい。そのようにして生成されたホモ二量体抗体は、改善された内部移行能力及び/又は増加した補体媒介細胞殺傷及び抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)を有する場合がある。Caron等, J. Exp. Med. 176: 1191-1195 (1992)及びShopes, J. Immunol. 148: 2918-2922 (1992)を参照のこと。また、向上した抗腫瘍活性を持つホモ二量体抗体は、Wolff等, Cancer research 53: 2560-2565 (1993)に記載されているヘテロ二官能性架橋剤を使用して調製することができる。あるいは、抗体は、二つのFc領域を有するように操作して、それにより補体溶解及びADCC能力を向上させることもできる。Stevenson等, Anti-Cancer Drug Design 3: 219-230 (1989)を参照のこと。
【0351】
幾つかの実施態様では、ハムスター抗マウス抗体である抗TIGIT抗体が作製された。二つの抗体10A7と1F4がまたヒトTIGITに特異的に結合した。10A7抗体の軽鎖及び重鎖のアミノ酸配列は、標準的な技術を使用して決定された。この抗体の軽鎖配列は、
DIVMTQSPSSLAVSPGEKVTMTCKSSQSLYYSGVKENLLAWYQQKPGQSPKLLIYYASIRFTGVPDRFTGSGSGTDYTLTITSVQAEDMGQYFCQQGINNPLTFGDGTKLEIKR(配列番号:13)であり、この抗体の重鎖配列は
EVQLVESGGGLTQPGKSLKLSCEASGFTFSSFTMHWVRQSPGKGLEWVAFIRSGSGIVFYADAVRGRFTISRDNAKNLLFLQMNDLKSEDTAMYYCARRPLGHNTFDSWGQGTLVTVSS(配列番号:15)であり、ここで、各鎖の相補性決定領域(CDR)は太字テキストによって表される。よって、10A7軽鎖のCDR1は配列KSSQSLYYSGVKENLLA(配列番号:1)を有し、10A7軽鎖のCDR2は配列ASIRFT(配列番号:2)を有し、10A7軽鎖のCDR3は配列QQGINNPLT(配列番号:3)を有する。10A7重鎖のCDR1は配列GFTFSSFTMH(配列番号:4)を有し、10A7重鎖のCDR2は配列FIRSGSGIVFYADAVRG(配列番号:5)を有し、10A7重鎖のCDR3は配列RPLGHNTFDS(配列番号:6)を有する。
【0352】
1F4抗体の軽鎖及び重鎖のアミノ酸配列もまた決定された。この抗体の軽鎖配列は、
DVVLTQTPLSLSVSFGDQVSISCRSSQSLVNSYGNTFLSWYLHKPGQSPQLLIFGISNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISTIKPEDLGMYYCLQGTHQPPTFGPGTKLEVK(配列番号:14)であり、この抗体の重鎖配列は、
EVQLQQSGPELVKPGTSMKISCKASGYSFTGHLMNWVKQSHGKNLEWIGLIIPYNGGTSYNQKFKGKATLTVDKSSSTAYMELLSLTSDDSAVYFCSRGLRGFYAMDYWGQGTSVTVSS(配列番号:16)であり、ここで、各鎖の相補性決定領域(CDR)は太字テキストによって表される。よって、1F4軽鎖のCDR1は配列RSSQSLVNSYGNTFLS(配列番号:7)を有し、1F4軽鎖のCDR2は配列GISNRFS(配列番号:8)を有し、1F4軽鎖のCDR3は配列LQGTHQPPT(配列番号:9)を有する。1F4重鎖のCDR1は配列GYSFTGHLMN(配列番号:10)を有し、1F4重鎖のCDR2は配列LIIPYNGGTSYNQKFKG(配列番号:11)を有し、1F4重鎖のCDR3は配列GLRGFYAMDY(配列番号:12)を有する。
【0353】
1F4軽鎖をコードするヌクレオチド配列は、
GATGTTGTGTTGACTCAAACTCCACTCTCCCTGTCTGTCAGCTTTGGAGATCAAGTTTCTATCTCTTGCAGGTCTAGTCAGAGTCTTGTAAACAGTTATGGGAACACCTTTTTGTCTTGGTACCTGCACAAGCCTGGCCAGTCTCCACAGCTCCTCATCTTTGGGATTTCCAACAGATTTTCTGGGGTGCCAGACAGGTTCAGTGGCAGTGGTTCAGGGACAGATTTCACACTCAAGATCAGCACAATAAAGCCTGAGGACTTGGGAATGTATTACTGCTTACAAGGTACGCATCAGCCTCCCACGTTCGGTCCTGGGACCAAGCTGGAGGTGAAA(配列番号:38)であると決定され、1F4重鎖をコードするヌクレオチド配列は、
GAGGTCCAGCTGCAACAGTCTGGACCTGAGCTGGTGAAGCCTGGAACTTCAATGAAGATATCCTGCAAGGCTTCTGGTTACTCATTCACTGGCCATCTTATGAACTGGGTGAAGCAGAGCCATGGAAAGAACCTTGAGTGGATTGGACTTATTATTCCTTACAATGGTGGTACAAGCTATAACCAGAAGTTCAAGGGCAAGGCCACATTGACTGTAGACAAGTCATCCAGCACAGCCTACATGGAGCTCCTCAGTCTGACTTCTGATGACTCTGCAGTCTATTTCTGTTCAAGAGGCCTTAGGGGCTTCTATGCTATGGACTACTGGGGTCAAGGAACCTCAGTCACCGTCTCCTCA(配列番号:39)であると決定された。
【0354】
幾つかの実施態様では、抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片は、(1)KSSQSLYYSGVKENLLA(配列番号:1)、ASIRFT(配列番号:2)、QQGINNPLT(配列番号:3)、GFTFSSFTMH(配列番号:4)、FIRSGSGIVFYADAVRG(配列番号:5)、及びRPLGHNTFDS(配列番号:6)、あるいは(2)RSSQSLVNSYGNTFLS(配列番号:7)、GISNRFS(配列番号:8)、LQGTHQPPT(配列番号:9)、GYSFTGHLMN(配列番号:10)、LIIPYNGGTSYNQKFKG(配列番号:11)、及びGLRGFYAMDY(配列番号:12)に記載のアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列を含む少なくとも一つのHVRを含む。
【0355】
幾つかの実施態様では、抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片において、抗体軽鎖は、
DIVMTQSPSSLAVSPGEKVTMTCKSSQSLYYSGVKENLLAWYQQKPGQSPKLLIYYASIRFTGVPDRFTGSGSGTDYTLTITSVQAEDMGQYFCQQGINNPLTFGDGTKLEIKR(配列番号:13)又は
DVVLTQTPLSLSVSFGDQVSISCRSSQSLVNSYGNTFLSWYLHKPGQSPQLLIFGISNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISTIKPEDLGMYYCLQGTHQPPTFGPGTKLEVK(配列番号:14)に記載のアミノ酸配列を含む。
【0356】
幾つかの実施態様では、抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片において、抗体重鎖は、EVQLVESGGGLTQPGKSLKLSCEASGFTFSSFTMHWVRQSPGKGLEWVAFIRSGSGIVFYADAVRGRFTISRDNAKNLLFLQMNDLKSEDTAMYYCARRPLGHNTFDSWGQGTLVTVSS(配列番号:15)又は
EVQLQQSGPELVKPGTSMKISCKASGYSFTGHLMNWVKQSHGKNLEWIGLIIPYNGGTSYNQKFKGKATLTVDKSSSTAYMELLSLTSDDSAVYFCSRGLRGFYAMDYWGQGTSVTVSS(配列番号:16)に記載のアミノ酸配列を含む。
【0357】
幾つかの実施態様では、抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片において、抗体軽鎖は、
DIVMTQSPSSLAVSPGEKVTMTCKSSQSLYYSGVKENLLAWYQQKPGQSPKLLIYYASIRFTGVPDRFTGSGSGTDYTLTITSVQAEDMGQYFCQQGINNPLTFGDGTKLEIKR(配列番号:13)又は
DVVLTQTPLSLSVSFGDQVSISCRSSQSLVNSYGNTFLSWYLHKPGQSPQLLIFGISNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISTIKPEDLGMYYCLQGTHQPPTFGPGTKLEVK(配列番号:14)に記載のアミノ酸配列を含み、かつ抗体重鎖は
EVQLVESGGGLTQPGKSLKLSCEASGFTFSSFTMHWVRQSPGKGLEWVAFIRSGSGIVFYADAVRGRFTISRDNAKNLLFLQMNDLKSEDTAMYYCARRPLGHNTFDSWGQGTLVTVSS(配列番号:15)又は
EVQLQQSGPELVKPGTSMKISCKASGYSFTGHLMNWVKQSHGKNLEWIGLIIPYNGGTSYNQKFKGKATLTVDKSSSTAYMELLSLTSDDSAVYFCSRGLRGFYAMDYWGQGTSVTVSS(配列番号:16)に記載のアミノ酸配列を含む。
【0358】
幾つかの実施態様では、抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片において、抗体はヒト化抗体、キメラ抗体、二重特異性抗体、ヘテロコンジュゲート抗体、及びイムノトキシンから選択される。
【0359】
幾つかの実施態様では、抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片は、(1)KSSQSLYYSGVKENLLA(配列番号:1)、ASIRFT(配列番号:2)、QQGINNPLT(配列番号:3)、GFTFSSFTMH(配列番号:4)、FIRSGSGIVFYADAVRG(配列番号:5)、及びRPLGHNTFDS(配列番号:6)、あるいは(2)RSSQSLVNSYGNTFLS(配列番号:7)、GISNRFS(配列番号:8)、LQGTHQPPT(配列番号:9)、GYSFTGHLMN(配列番号:10)、LIIPYNGGTSYNQKFKG(配列番号:11)、及びGLRGFYAMDY(配列番号:12)の何れかに記載のHVRと少なくとも90%同一である少なくとも一つのHVRを含む。
【0360】
幾つかの実施態様では、抗TIGIT抗体又はその断片は、それぞれ
DIVMTQSPSSLAVSPGEKVTMTCKSSQSLYYSGVKENLLAWYQQKPGQSPKLLIYYASIRFTGVPDRFTGSGSGTDYTLTITSVQAEDMGQYFCQQGINNPLTFGDGTKLEIKR(配列番号:13)又は
DVVLTQTPLSLSVSFGDQVSISCRSSQSLVNSYGNTFLSWYLHKPGQSPQLLIFGISNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISTIKPEDLGMYYCLQGTHQPPTFGPGTKLEVK(配列番号:14)、又は
EVQLVESGGGLTQPGKSLKLSCEASGFTFSSFTMHWVRQSPGKGLEWVAFIRSGSGIVFYADAVRGRFTISRDNAKNLLFLQMNDLKSEDTAMYYCARRPLGHNTFDSWGQGTLVTVSS(配列番号:15)又は
EVQLQQSGPELVKPGTSMKISCKASGYSFTGHLMNWVKQSHGKNLEWIGLIIPYNGGTSYNQKFKGKATLTVDKSSSTAYMELLSLTSDDSAVYFCSRGLRGFYAMDYWGQGTSVTVSS(配列番号:16)に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖及び/又は重鎖を含む。
【0361】
CD226発現及び/又は活性を調節する薬剤
ここに提供されるものは、個体におけるがんを治療し又はその進行を遅延させる方法において、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストとCD226発現及び/又は活性を調節する薬剤とを個体に投与することを含む方法である。ここに提供されるものはまた、個体におけるがんの再発又はがんの進行を減少させ又は阻害する方法において、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストとCD226発現及び/又は活性を調節する薬剤とを個体に投与することを含む方法である。ここに提供されるものはまた、個体における免疫関連疾患を治療し又はその進行を遅延させる方法において、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストとCD226発現及び/又は活性を調節する薬剤とを個体に投与することを含む方法である。ここに提供されるものはまた、個体における免疫関連疾患の進行を減少させ又は阻害する方法において、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストとCD226発現及び/又は活性を調節する薬剤とを個体に投与することを含む方法である。ここに提供されるものはまた、個体における免疫応答又は機能を増加させ、亢進し又は刺激する方法において、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストとCD226発現及び/又は活性を調節する薬剤とを個体に投与することを含む方法である。
【0362】
例えば、CD226発現及び/又は活性を調節する薬剤は、CD226発現及び/又は活性を増加させ及び/又は刺激し、PVR、PVRL2、及び/又はPVRL3とのCD226の相互作用を増加させ及び/又は刺激し、及びPVR、PVRL2、及び/又はPVRL3へのCD226の結合によって媒介される細胞内シグナル伝達を増加させ及び/又は刺激することができる薬剤である。幾つかの実施態様では、CD226発現及び/又は活性を増加させ及び/又は刺激することができる薬剤は、CD226発現及び/又は活性を増加させ及び/又は刺激する薬剤である。幾つかの実施態様では、PVR、PVRL2、及び/又はPVRL3とのCD226の相互作用を増加させ及び/又は刺激することができる薬剤は、PVR、PVRL2、及び/又はPVRL3とのCD226の相互作用を増加させ及び/又は刺激する薬剤である。幾つかの実施態様では、PVR、PVRL2、及び/又はPVRL3へのCD226の結合によって媒介される細胞内シグナル伝達を増加させ及び/又は刺激することができる薬剤は、PVR、PVRL2、及び/又はPVRL3へのCD226の結合によって媒介される細胞内シグナル伝達を増加させ及び/又は刺激する薬剤である。
【0363】
幾つかの実施態様では、CD226発現及び/又は活性を調節する薬剤は、CD226のTIGITとの相互作用を阻害し及び/又はブロックする薬剤、TIGIT発現及び/又は活性のアンタゴニスト、PVR発現及び/又は活性のアンタゴニスト、TIGITのPVRとの相互作用を阻害し及び/又はブロックする薬剤、TIGITのPVRL2との相互作用を阻害し及び/又はブロックする薬剤、TIGITのPVRL3との相互作用を阻害し及び/又はブロックする薬剤、PVRへのTIGITの結合によって媒介される細胞内シグナル伝達を阻害し及び/又はブロックする薬剤、PVRL2へのTIGITの結合によって媒介される細胞内シグナル伝達を阻害し及び/又はブロックする薬剤、PVRL3へのTIGITの結合によって媒介される細胞内シグナル伝達を阻害し及び/又はブロックする薬剤、及びそれらの組合せから選択される。幾つかの実施態様では、CD226のTIGITとの相互作用を阻害し及び/又はブロックする薬剤は、小分子阻害剤、阻害抗体又はその抗原結合断片、アプタマー、阻害核酸、及び阻害ポリペプチドから選択される。幾つかの実施態様では、CD226のTIGITとの相互作用を阻害し及び/又はブロックする薬剤は抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片である。幾つかの実施態様では、CD226のTIGITとの相互作用を阻害し及び/又はブロックする薬剤は、アンチセンスポリヌクレオチド、干渉RNA、触媒RNA、及びRNA-DNAキメラから選択される阻害核酸である。
【0364】
幾つかの実施態様では、TIGIT発現及び/又は活性のアンタゴニストは、小分子阻害剤、阻害抗体又はその抗原結合断片、アプタマー、阻害核酸、及び阻害ポリペプチドである。幾つかの実施態様では、TIGIT発現及び/又は活性のアンタゴニストは抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片である。幾つかの実施態様では、TIGIT発現及び/又は活性のアンタゴニストは、アンチセンスポリヌクレオチド、干渉RNA、触媒RNA、及びRNA-DNAキメラから選択される阻害核酸である。幾つかの実施態様では、PVR発現及び/又は活性のアンタゴニストは、小分子阻害剤、阻害抗体又はその抗原結合断片、アプタマー、阻害核酸、及び阻害ポリペプチドである。幾つかの実施態様では、TIGITのPVRとの相互作用を阻害し及び/又はブロックする薬剤は、小分子阻害剤、阻害抗体又はその抗原結合断片、アプタマー、阻害核酸、及び阻害ポリペプチドである。幾つかの実施態様では、TIGITのPVRL2との相互作用を阻害し及び/又はブロックする薬剤は、小分子阻害剤、阻害抗体又はその抗原結合断片、アプタマー、阻害核酸、及び阻害ポリペプチドである。幾つかの実施態様では、TIGITのPVRL3との相互作用を阻害し及び/又はブロックする薬剤は、小分子阻害剤、阻害抗体又はその抗原結合断片、アプタマー、阻害核酸、及び阻害ポリペプチドである。幾つかの実施態様では、PVRへのTIGITの結合によって媒介される細胞内シグナル伝達を阻害し及び/又はブロックする薬剤は、小分子阻害剤、阻害抗体又はその抗原結合断片、アプタマー、阻害核酸、及び阻害ポリペプチドである。幾つかの実施態様では、PVRL2へのTIGITの結合によって媒介される細胞内シグナル伝達を阻害し及び/又はブロックする薬剤は、小分子阻害剤、阻害抗体又はその抗原結合断片、アプタマー、阻害核酸、及び阻害ポリペプチドである。幾つかの実施態様では、PVRL3へのTIGITの結合によって媒介される細胞内シグナル伝達を阻害し及び/又はブロックする薬剤は、小分子阻害剤、阻害抗体又はその抗原結合断片、アプタマー、阻害核酸、及び阻害ポリペプチドである。
【0365】
幾つかの実施態様では、TIGIT発現及び/又は活性のアンタゴニストは、小分子阻害剤、阻害抗体又はその抗原結合断片、アプタマー、阻害核酸、及び阻害ポリペプチドを含む。幾つかの実施態様では、PVR発現及び/又は活性のアンタゴニストは、小分子阻害剤、阻害抗体又はその抗原結合断片、アプタマー、阻害核酸、及び阻害ポリペプチドを含む。幾つかの実施態様では、PVRへのTIGITの結合によって媒介される細胞内シグナル伝達を阻害する薬剤は、小分子阻害剤、阻害抗体又はその抗原結合断片、アプタマー、阻害核酸、及び阻害ポリペプチドからなる群から選択される。幾つかの実施態様では、TIGIT発現及び/又は活性のアンタゴニストは、抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片である。幾つかの実施態様では、TIGIT発現及び/又は活性のアンタゴニストは、アンチセンスポリヌクレオチド、干渉RNA、触媒RNA、及びRNA-DNAキメラから選択される阻害核酸である。
【0366】
免疫調節性抗体療法のためのT細胞標的の組合せ
TCRを通しての特異的抗原認識に加えて、T細胞活性化は、同時刺激性受容体によって与えられる正と負のシグナルのバランスを通して調節される。これらの表面タンパク質は典型的にはTNF受容体又はB7スーパーファミリーの何れかのメンバーである。活性化同時刺激性受容体は、CD226、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27、HVEM、MICA、ICOS、NKG2D、及び2B4を含む。阻害性同時刺激性受容体は、CTLA-4、PD-1、TIM-3、BTLA、VISTA、LAG-3、B7H4、及びCD96を含む。活性化同時刺激性分子に対するアゴニスト抗体と負の同時刺激性分子に対する阻止抗体はT細胞刺激を亢進して腫瘍破壊を促進しうる。
【0367】
ここに提供されるものは、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する有効量の薬剤と一又は複数の更なる免疫同時阻害性受容体を減少させ又は阻害する薬剤とを個体に投与することにより、個体における免疫応答又は機能を増加させ、亢進し又は刺激する方法である。幾つかの実施態様では、一又は複数の更なる同時阻害性受容体は、PD-1、CTLA-4、LAG3、TIM3、BTLA、VISTA、B7H4、及びCD96から選択される。幾つかの実施態様では、一又は複数の更なる同時阻害性受容体は、PD-1、CTLA-4、LAG3及びTIM3から選択される。
【0368】
ここに提供されるものはまた、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する有効量の薬剤と一又は複数の更なる免疫同時刺激性受容体を増加させ又は活性化する薬剤とを個体に投与することにより、個体における免疫応答又は機能を増加させ、亢進し又は刺激する方法である。幾つかの実施態様では、一又は複数の更なる同時刺激性受容体は、CD226、OX-40、CD28、CD27、CD137、HVEM、GITR、MICA、ICOS、NKG2D、及び2B46から選択される。幾つかの実施態様では、一又は複数の更なる同時刺激性受容体は、CD226、OX-40、CD27、CD137、HVEM及びGITRから選択される。幾つかの実施態様では、一又は複数の更なる同時刺激性受容体はOX-40及びCD27から選択される。
【0369】
IV キット
他の態様では、提供されるものは、PD-1軸結合アンタゴニストと、個体におけるがんを治療し又はその進行を遅延させるため、あるいはがんに罹患している個体の免疫機能を亢進するために、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤との組合せでPD-1軸結合アンタゴニストを使用するための説明書を含むパッケージ挿入物とを含むキットである。ここに記載のPD-1軸結合アンタゴニスト、及び/又はTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤の任意のものを該キットに含めることができる。
【0370】
他の態様では、提供されるものは、PD-1軸結合アンタゴニストと、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤と、個体におけるがんを治療し又はその進行を遅延させるため、あるいはがんに罹患している個体の免疫機能を亢進するために、PD-1軸結合アンタゴニストとTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤とを使用するための説明書を含むパッケージ挿入物とを含むキットである。ここに記載のPD-1軸結合アンタゴニスト、及び/又はTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤の任意のものを該キットに含めることができる。
【0371】
他の態様では、提供されるものは、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤と、個体におけるがんを治療し又はその進行を遅延させるため、あるいはがんに罹患している個体の免疫機能を亢進するために、PD-1軸結合アンタゴニストとの組合せでTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤を使用するための説明書を含むパッケージ挿入物とを含むキットである。ここに記載のPD-1軸結合アンタゴニスト、及び/又はTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤の任意のものを該キットに含めることができる。
【0372】
他の態様では、提供されるものは、PD-1軸結合アンタゴニストと、個体におけるがんを治療し又はその進行を遅延させるためにCD226発現及び/又は活性を調節する薬剤との組合せでPD-1軸結合アンタゴニストを使用するための説明書を含むパッケージ挿入物とを含むキットである。ここに記載のPD-1軸結合アンタゴニスト、及び/又はCD226発現及び/又は活性を調節する薬剤の任意のものを該キットに含めることができる。
【0373】
他の態様では、提供されるものは、PD-1軸結合アンタゴニストと、CD226発現及び/又は活性を調節する薬剤と、個体におけるがんを治療し又はその進行を遅延させるためにPD-1軸結合アンタゴニストとの組合せでCD226発現及び/又は活性を調節する薬剤を使用するための説明書を含むパッケージ挿入物とを含むキットである。ここに記載のPD-1軸結合アンタゴニスト、及び/又はCD226発現及び/又は活性を調節する薬剤の任意のものを該キットに含めることができる。
【0374】
他の態様では、提供されるものは、CD226発現及び/又は活性を調節する薬剤と、個体におけるがんを治療し又はその進行を遅延させるためにPD-1軸結合アンタゴニストとの組合せでCD226発現及び/又は活性を調節する薬剤を使用するための説明書を含むパッケージ挿入物とを含むキットである。ここに記載のPD-1軸結合アンタゴニスト、及び/又はCD226発現及び/又は活性を調節する薬剤の任意のものを該キットに含めることができる。
【0375】
他の態様では、提供されるものは、PD-1軸結合アンタゴニストと、がんに罹患している個体の免疫機能を亢進させるために、CD226発現及び/又は活性を調節する薬剤との組合せで、PD-1軸結合アンタゴニストを使用するための説明書を含むパッケージ挿入物とを含むキットである。ここに記載のPD-1軸結合アンタゴニスト、及び/又はCD226発現及び/又は活性を調節する薬剤の任意のものを該キットに含めることができる。
【0376】
他の態様では、提供されるものは、PD-1軸結合アンタゴニストと、CD226発現及び/又は活性を調節する薬剤と、がんに罹患している個体の免疫機能を亢進させるために、PD-1軸結合アンタゴニストとCD226発現及び/又は活性を調節する薬剤とを使用するための説明書を含むパッケージ挿入物とを含むキットである。ここに記載のPD-1軸結合アンタゴニスト、及び/又はCD226発現及び/又は活性を調節する薬剤の任意のものを該キットに含めることができる。
【0377】
他の態様では、提供されるものは、CD226発現及び/又は活性を調節する薬剤と、がんに罹患している個体の免疫機能を亢進させるために、PD-1軸結合アンタゴニストとの組合せでCD226発現及び/又は活性を調節する薬剤を使用するための説明書を含むパッケージ挿入物とを含むキットである。ここに記載のPD-1軸結合アンタゴニスト、及び/又はCD226発現及び/又は活性を調節する薬剤の任意のものを該キットに含めることができる。
【0378】
他の態様では、提供されるものは、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤と、個体におけるがんを治療し又はその進行を遅延させ、あるいはがんに罹患している個体の免疫機能を亢進させるために、一又は複数の更なる免疫同時阻害性受容体を減少させ又は阻害する薬剤との組合せで、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤を使用するための説明書を含むパッケージ挿入物とを含むキットである。
ここに記載のTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤、及び/又は一又は複数の更なる免疫同時阻害性受容体を減少させ又は阻害する薬剤の任意のものを該キットに含めることができる。
【0379】
他の態様では、提供されるものは、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤と、一又は複数の更なる免疫同時阻害性受容体を減少させ又は阻害する薬剤と、個体におけるがんを治療し又はその進行を遅延させ、あるいはがんに罹患している個体の免疫機能を亢進させるために、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤と一又は複数の更なる免疫同時阻害性受容体を減少させ又は阻害する薬剤とを使用するための説明書を含むパッケージ挿入物とを含むキットである。ここに記載のTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤、及び/又は一又は複数の更なる免疫同時阻害性受容体を減少させ又は阻害する薬剤の任意のものを該キットに含めることができる。
【0380】
他の態様では、提供されるものは、一又は複数の更なる免疫同時阻害性受容体を減少させ又は阻害する薬剤と、個体におけるがんを治療し又はその進行を遅延させ、あるいはがんに罹患している個体の免疫機能を亢進させるために、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤との組合せで、一又は複数の更なる免疫同時阻害性受容体を減少させ又は阻害する薬剤を使用するための説明書を含むパッケージ挿入物とを含むキットである。ここに記載のTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤、及び/又は一又は複数の更なる免疫同時阻害性受容体を減少させ又は阻害する薬剤の任意のものを該キットに含めることができる。
【0381】
他の態様では、提供されるものは、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤と、個体におけるがんを治療し又はその進行を遅延させ、あるいはがんに罹患している個体の免疫機能を亢進させるために、一又は複数の更なる免疫同時刺激性受容体を増加させ又は活性化する薬剤との組合せで、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤を使用するための説明書を含むパッケージ挿入物とを含むキットである。
ここに記載のTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤、及び/又は一又は複数の更なる免疫同時刺激性受容体を増加させ又は活性化する薬剤の任意のものを該キットに含めることができる。
【0382】
他の態様では、提供されるものは、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤と、一又は複数の更なる免疫同時刺激性受容体を増加させ又は活性化する薬剤と、個体におけるがんを治療し又はその進行を遅延させ、あるいはがんに罹患している個体の免疫機能を亢進させるために、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤と一又は複数の更なる免疫同時刺激性受容体を増加させ又は活性化する薬剤とを使用するための説明書を含むパッケージ挿入物とを含むキットである。ここに記載のTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤、及び/又は一又は複数の更なる免疫同時刺激性受容体を増加させ又は活性化する薬剤の任意のものを該キットに含めることができる。
【0383】
他の態様では、提供されるものは、一又は複数の更なる免疫同時刺激性受容体を増加させ又は活性化する薬剤と、個体におけるがんを治療し又はその進行を遅延させ、あるいはがんに罹患している個体の免疫機能を亢進させるために、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤との組合せで、一又は複数の更なる免疫同時刺激性受容体を増加させ又は活性化する薬剤を使用するための説明書を含むパッケージ挿入物とを含むキットである。ここに記載のTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤、及び/又は一又は複数の更なる免疫同時刺激性受容体を増加させ又は活性化する薬剤の任意のものを該キットに含めることができる。
【0384】
幾つかの実施態様では、キットは、ここに記載の一又は複数のPD-1軸結合アンタゴニストと、TIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する薬剤を収容する容器を含む。幾つかの実施態様では、キットは、ここに記載の一又は複数のPD-1軸結合アンタゴニストと、CD226発現及び/又は活性を調節する薬剤を収容する容器を含む。幾つかの実施態様では、キットは、ここに記載のTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する一又は複数の薬剤と、一又は複数の更なる免疫同時阻害性受容体を減少させ又は阻害する薬剤を収容する容器を含む。幾つかの実施態様では、キットは、ここに記載のTIGIT発現及び/又は活性を減少させ又は阻害する一又は複数の薬剤と、一又は複数の更なる免疫同時刺激性受容体を増加させ又は活性化する薬剤を収容する容器を含む。好適な容器は、例えばボトル、バイアル(例えば、二重チャンバーバイアル)、シリンジ(例えば、シングル又は二重チャンバーシリンジなど)、及び試験管を含む。容器は、ガラス又はプラスチックなどの様々な材料から形成することができる。幾つかの実施態様では、キットは、ラべル(例えば、容器上又は容器に付随)又はパッケージ挿入物を含みうる。ラベル又はパッケージ挿入物は、その中に含まれる化合物が、個体におけるがんを治療し又はその進行を遅延させるために、あるいはがんに罹患している個体の免疫機能を亢進させるのに有用でありうるか、又はそれを意図しているものであることを示しうる。キットは、他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、針、及びシリンジを含む、商業的及び使用者の見地から望ましい他の材料を更に含みうる。
【実施例
【0385】
本発明は、例示のために提供され、限定することを意図するものではない以下の実施例を参照することによって更に理解することができる。
【0386】
実施例1: TIGITは消耗したCD8及びCD4T細胞上に高度に発現され、PD-1発現と相関する。
CD8T細胞がインビトロでの刺激後にTIGITを発現する能力があることを確認するために、MACS富化C57BL6/J脾臓CD8T細胞を、インビトロで24~48時間、プレート結合させた抗CD3及び抗CD28で刺激した。フローサイトメトリーを使用してTIGIT発現を測定した。CD4T細胞によるTIGITの発現(Yu, X.等 The surface protein TIGIT suppresses T cell activation by promoting the generation of mature immunoregulatory dendritic cells. Nature immunology 10, 48-57 (2009))と一致して、マウスCD8T細胞は、インビトロでの刺激から48時間以内にTIGITを発現した(図1A)。
【0387】
インビボでの活性化CD8T細胞によるTIGIT発現を評価するために、C57BL6/Jマウスをアームストロング株リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)で感染させ、感染から7日後に脾細胞を分析した。簡潔に述べると、急性感染では、マウスを2×10プラーク形成単位(PFU)のアームストロング株LCMVで静脈内感染させた。フローサイトメトリーを使用して、ナイーブ(CD44lowCD62Lhigh)及びエフェクターメモリー(CD44highCD62Llow)CD8及びCD4T細胞によるTIGIT発現を測定した。LCMV T細胞応答のピークで、CD4エフェクターメモリーT細胞(TEM)のサブセットとほぼ全てのCD8EM細胞がTIGITを強く発現した(図1B)。フローサイトメトリーを使用して、PD-1high及びPD-1lowエフェクターメモリーCD8T細胞によるTIGIT発現を測定した。興味深いことに、TIGIT発現はPD-1発現とほぼ完全に相関していた(図1C)。
【0388】
PD-1はT細胞消耗に関連しているので、慢性的に刺激されたT細胞についてTIGIT発現を調べた。簡潔に述べると、慢性感染では、C57BL6/Jマウスを2×10PFUのクローン13株LCMVで静脈内感染させ、感染の3日前と感染の4日後にそれぞれ500ug及び250ugの枯渇抗CD4抗体(クローンGK1.5)で処置した。示されている場合、クローン13株LCMVで感染させられたマウスは、感染後28日から42日まで毎週3回、200ugのアイソタイプコントロール抗体、200ugの抗PD-L1抗体、及び/又は500ugの抗TIGIT抗体の腹腔内注射を受けた。感染から42日後に脾細胞を分析した。フローサイトメトリーを使用して、ナイーブ(CD44lowCD62Lhigh)、セントラルメモリー(CD44highCD62Lhigh)、及びエフェクターメモリー(CD44highCD62Llow)CD8T細胞によるTIGIT発現を測定した。確かに、クローン13株LCMVで慢性的に感染させられたマウスにおいて、TIGITは主にPD-1highT細胞上に高度に発現されたが、ナイーブ細胞、PD-1lowEM細胞、又はセントラルメモリーT細胞ではなかった(図1D)。
【0389】
実施例2: TIGIT欠損マウスにおけるT細胞消耗でのTIGITの役割
T細胞消耗におけるTIGITの役割を特徴付けるために、TIGITがT細胞において条件的に欠失されたマウスを作製した(TIGITfl/flCD4-cre(CKO),図2)。簡潔に述べると、CD4creマウスとTIGITloxP/loxPマウスを、標準的技術を用いてC57BL/6Jバックグラウンドで作製し、交雑させた。品質が試験されたES細胞株(Art B6/3.6(遺伝的背景:C57BL/6 NTac)を、白血病抑制因子及びウシ胎仔血清を含むES細胞培地中、マウス胎仔線維芽細胞からなる有糸分裂的に不活化された支持細胞層で増殖させた。Taconic Artemisの標準作業手順に従って、直線化DNA標的化ベクターを用いて細胞を電気穿孔した。G418及びガンシクロビル選択を、相同組換えクローンの富化メカニズムとして使用した。明確な形態を持つ耐性ES細胞コロニー(ESクローン)を感染の8日後に単離し、一次スクリーニングにおいてサザンブロット法及び/又はPCRによって分析した。相同組換えES細胞クローンを増殖させ、詳細な分子検証後に液体窒素中で凍結させた。Bl/6雌アルビノドナー中へのマイクロインジェクション前にflpEリコンビナーゼによりネオカセットを除去した。キメラ子孫をつくり、尾部を生殖細胞系伝達のためにPCRによりスクリーニングした。TIGIT発現は、TIGITloxP/loxPCD4creマウスにおいてT細胞から96%の効率で消えた。
【0390】
そのT細胞がTIGITを欠いているマウスは、野生型マウスと同様であった、急性アームストロング株LCMV感染に対するCD4及びCD8T細胞応答を開始した(図3)。
【0391】
慢性感染設定における効果を評価するために、TIGITfl/flCD4-cre(WT)及びTIGITfl/flCD4-cre(CKO)マウスから手短にCD4T細胞を枯渇させ、クローン13株LCMVで感染させた。脾細胞及び肝臓ウイルス価を感染から42日後に分析した。クローン13株LCMVでの慢性感染後に、野生型同腹仔マウス(TIGITfl/flCD4-cre(WT))由来のT細胞よりも有意に多いTIGITfl/flCD4-cre(CKO)マウス由来のCD8及びCD4T細胞がインターフェロンγ(IFNγ)を産生する能力を持っていた(82-86%増,P<0.01,図4A-4D)。更に、ウイルス量は慢性的に感染させられたTIGITfl/flCD4-cre(CKO)マウスにおいて有意に減少していた(68%減,P<0.0001,図4E)。
【0392】
これらの結果は、TIGITが慢性ウイルス感染中のような慢性免疫応答中におけるT細胞活性及び応答の調節に重要な役割を果たしており、TIGITが慢性的に刺激され又は消耗されたCD8及びCD4T細胞のエフェクター機能、特にIFNγ及びTNFαのようなエフェクターサイトカインを作り出す能力を調節することができることを示唆している。
【0393】
実施例3: TIGITとPD-1はインビボで消耗T細胞のエフェクター機能を相乗的に調節する
TIGIT発現は、急性及び慢性ウイルス感染中、特にCD8T細胞において、PD-1発現と密接に相関していたので(図1)、TIGITとPD-1を組み合わせてブロックすると、何れかの共受容体を単独にブロックすることによって得られるよりも大きなレベルまでT細胞エフェクター機能を回復しうる。
【0394】
この仮説を試験するために、C57BL6/Jマウスから手短にCD4T細胞を枯渇させ、クローン13株LCMVで感染させた。慢性感染では、マウスを2×10PFUのクローン13株LCMVで静脈内感染させ、感染の3日前と感染の4日後にそれぞれ500ug及び250ugの枯渇抗CD4抗体(クローンGK1.5)で処置した。示されている場合、クローン13株LCMVで感染させられたマウスは、感染後28日から42日まで毎週3回、200ugのアイソタイプコントロール抗体、200ugの抗PD-L1抗体、及び/又は500ugの抗TIGIT抗体の腹腔内注射を受けた。処置は感染から28日後に開始したが、これは、この慢性ウイルス感染モデルにおいてこの時点でT細胞応答が大きく消耗しているためである(Wherry等, Molecular Signature of CD8+ T cell Exhaustion During Chronic Viral Infection, Immunity. 2007 Oct;27(4):670-84)。脾細胞及び肝臓ウイルス価を感染の42日後に分析した。
【0395】
これらのマウスにおいて、過去に報告されたように(Barber, D.L.等 Restoring function in exhausted CD8 T cells during chronic viral infection. Nature 439, 682-687 (2006))、抗PD-L1処置は、一致したアイソタイプコントロール抗体を用いた処置よりもより強いCD8T細胞活性化を誘導した(88%増,P<0.0001,図4F)。抗TIGIT処置は、それだけで又は抗PD-L1との組合せでCD8T細胞活性化に対して明らかな効果はなかった(図4F)。同様に、PD-1単独の遮断はCD8T細胞サイトカイン能力を中程度に増加させた一方、TIGIT単独の遮断は効果がなかった(図4G)。しかしながら、IFNγ産生CD8T細胞の出現頻度は、抗TIGITと抗PD-L1双方で処置されたマウスにおいて劇的に増加し、抗PD-L1単独で処置されたマウスに見られるよりもかなり大なる度合いまで増加した(図4G 93%増,P=0.0050)。同様の効果がCD4T細胞で観察された(図5)。図31にまた示されるように、TIGIT/PD-L1共遮断は、抗PD-L1単独で処置されたマウスと比較したマウスにおいてCD8T細胞エフェクター機能を有意に亢進させたが、CD4T細胞エフェクター機能は否であった。LCMV gp33抗原特異的T細胞において、同様の効果がT細胞増殖及びエフェクター機能についてまた観察された(図31)。これらの結果は、消耗CD8T細胞上でのPD-1とTIGITの間の強い相乗効果を裏付けており、TIGITがCD8T細胞サイトカイン能力及びエフェクター機能を特異的に調節することを示している。
【0396】
これらの結果と一致して、LCMVウイルス量は、抗PD-L1単独で処置されたマウスにおいて中程度に減少し、抗TIGIT単独で処置されたマウスでは減少せず、抗TIGITと抗PD-L1双方で処置されたマウスにおいて大幅に減少した(抗PD-L1処置で68%のウイルス価低減,P=0.0004。抗TIGIT+抗PD-L1処置で92%のウイルス価低減,P<0.0001,図4H)。これらのデータは、PD-1とTIGITの阻害効果間の強い相乗効果を裏付けており、PD-1と異なり、TIGITはエフェクターT細胞活性化の広範な阻害剤ではなく、むしろT細胞サイトカイン能力及びエフェクター機能の制限において限られた役割を有していることを示唆している。
【0397】
実施例4: TIGIT発現はヒト乳がんにおいて上昇し、CD8及び阻害性共受容体の発現と相関している
T細胞消耗はまたがんの主要な免疫学的特徴であり、多くの腫瘍浸潤リンパ球(TIL)が高レベルの阻害性共受容体を発現し、エフェクターサイトカインを産生する能力を欠いている(Wherry, E.J. T cell exhaustion. Nature immunology 12, 492-499 (2011);Rabinovich, G.A., Gabrilovich, D. & Sotomayor, E.M. Immunosuppressive strategies that are mediated by tumor cells. Annual review of immunology 25, 267-296 (2007))。
【0398】
TIGITがTILエフェクター機能を阻害するかどうかを決定するために、Cancer Genome Atlas Network(CGAN)によって作成された乳がん遺伝子発現マイクロアレイデータを分析した(Network, C.G.A. Comprehensive molecular portraits of human breast tumours. Nature 490, 61-70 (2012))。
【0399】
TIGIT発現は、乳腺腫瘍全体(正常試料に対して135%の増加,P=6×10-12図6A)と乳がんの4つの主要な分子サブタイプにわたって(図6A)、有意に上昇していた(Perou, C.M.等 Molecular portraits of human breast tumours. Nature 406, 747-752 (2000);Sorlie, T.等 Gene expression patterns of breast carcinomas distinguish tumor subclasses with clinical implications. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 98, 10869-10874 (2001))。TIGITの発現は、TILによるその発現と一致して、CD3εの発現と高度に相関していた(R=0.61,図6B)。興味深いことに、TIGIT発現は、CD8αと高度に相関していたが、CD4とでは相関していないか、又はCD4と中程度にのみ相関しており、TIGITが主としてCD8TIL機能を調節するのかもしれないことを示唆している(CD8α,R=0.80。CD4,R=0.42。図6C)。
【0400】
慢性ウイルス感染中のTIGITとPD-1の同時発現が与えられたので、我々はまた乳がんにおけるPD-1と、TIGITとの他の阻害性共受容体との相関を評価した。TIGITと、PD-1、CTLA4、及びLAG3との間の相関は非常に強かった(PD-1,R=0.87。CTLA4,R=0.76。LAG3,R=0.80。図6D)。まとめると、これらのデータは、TIGITがTILによって、特にCD8T細胞によって発現され、それがその機能を抑制するかもしれないことを示唆している。
【0401】
実施例5: TIGITとPD-1が抗腫瘍T細胞応答を阻害する
マウスにおけるTILによるTIGITをより良好に特徴付けるため、BALB/CマウスにCT26結腸直腸がん細胞を接種した。簡潔に述べると、マトリゲル(BD Biosciences)中に懸濁させた1×10のCT26結腸がん細胞を、BALB/cマウスの右片側胸郭側腹部中に皮下的に接種した。2週間後、およそ200mmの腫瘍を有するマウスを、3週間の間、週3回の腹腔内注射によって35mg/kgのアイソタイプコントロール抗体、抗PD-L1抗体、及び/又は抗TIGIT抗体を投与される処置群に無作為に補充した。腫瘍をノギスによって週2回測定した。腫瘍が潰瘍性/壊死性になったか又は2000mmより大きくなった動物を安楽死させた。脾細胞及び腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を接種の14日後に分析し、そのとき腫瘍はおよそ200mmのサイズに達していた。
【0402】
ヒト腫瘍中でのTIGIT発現(図6)と一致して、CD8及びCD4CT26TILは双方とも高レベルのTIGITを発現した(図7A-7B)。更に、慢性ウイルス感染研究と一致して、TILでのTIGIT発現は、PD-1(図7A-7B)及びTim-3(図8)を含む他の阻害性共受容体の発現と密接に相関していた。TIGIT発現の同様のパターンがMC38結腸がん腫瘍に見出された(図9)。
【0403】
抗腫瘍免疫応答との関係での生理的関連性を試験するために、樹立CT26腫瘍(およそ200mmのサイズ)を持つBALB/Cマウスを、200ugのアイソタイプコントロール、200ugの抗PD-L1、500ugの抗TIGIT、又は200ugの抗PD-L1+500ugの抗TIGIT抗体で3週間、処置した。
【0404】
CT26腫瘍増殖は、抗TIGIT又は抗PD-L1単独での処置によって僅かだけ遅くなり、双方とも、僅か3日の生存期間中央値の増加であった(図7C-7D)。しかしながら、抗PD-L1と抗TIGITの双方での併用療法は、腫瘍増殖を劇的に減少させた(16日目までに腫瘍体積中央値が75%減少,P<0.0001,図7C及び図10)。更に、抗TIGITと抗PD-L1の双方を投与されたマウスの70%が、更なる抗体処置がない場合でさえ、完全で長い腫瘍寛解を経験し、研究期間中、生存した(図7C-7D)。これらの効果は、TIGIT及びPD-1に対する阻止抗体の組合せで処置された担腫瘍マウスにおいても観察された。
【0405】
CT26腫瘍細胞に対するこれらの生存マウスの免疫を試験するために、最初の接種からおよそ60日後に、抗TIGIT+抗PD-L1が投与された完全寛解(CR)のマウス、並びにナイーブBALB/cマウスの左(前に接種されていない)の片側胸郭側腹部にCT26細胞を再接種した。これらのマウスの第4乳腺脂肪体中に、マトリゲル中1×10のEMT6乳がん細胞をまた接種した。腫瘍を1週間に2回測定した。腫瘍が潰瘍性/壊死性になったか又はその全腫瘍量が2000mmを越えた動物を安楽死させた。
【0406】
図7Eに示されるように、双方の腫瘍はナイーブのコントロールマウスにおいて直ぐに増殖したが、EMT6腫瘍だけが、CT26腫瘍を過去に排除したマウスにおいて増殖した。これらの結果は、腫瘍形成中のTIGITとPD-1の共遮断がCT26腫瘍細胞に対する特異的免疫の状態を樹立したことを示している。
【0407】
TIGIT/PD-L1共遮断の効果がCD8T細胞によって媒介されたのかを決定するために、CT26腫瘍を持つマウスに、抗TIGIT及び抗PDL1での処置の開始時に枯渇抗体を使用してCD8T細胞アブレーションを施した。抗TIGIT及び抗PD-L1抗体で処置されたマウスは、処置開始時にCD8T細胞を枯渇されたときにCT26腫瘍を拒絶することができなかった(処置17日目後に平均腫瘍体積が1532%増加,P=0.0004,図32A-32B)。また、CD8T細胞枯渇は、再接種CT26腫瘍を規制する過去に処置されたCRマウスの能力を損なわせた(図32C)。まとめると、これらの結果は、抗TIGITと抗PD-L1がCD8T細胞を通して作用して、効果的な一次及び二次抗腫瘍免疫応答を誘発したことを裏付けている。
【0408】
腫瘍細胞のPVR発現がTIGIT/PD-L1共遮断効果に不要であるかどうかを決定するために、野生型BALB/cマウスに野生型CT26腫瘍(PVRを発現する)又はPVR欠損CT26腫瘍を接種した。簡潔に述べると、野生型CT26腫瘍細胞に、PVRの発現を低減させた核酸を一過性にトランスフェクトした。トランスフェクションのおよそ2週間後、CT26細胞を、フローサイトメトリー及びqPCRによるPVR発現の消失に基づいてサブクローニングした。腫瘍が150~200mmのサイズに達したとき、マウスを抗TIGIT及び抗PD-L1抗体、あるいはアイソタイプ一致コントロール抗体で処置した。抗TIGIT及び抗PD-L1抗体で処置されたマウスは、コントロール抗体で処置された腫瘍接種マウスと比較して、野生型及びPVR欠損腫瘍の双方を拒絶することができた(図33)。これらの結果は、抗TIGIT及び抗PD-L1が腫瘍発現PVRとは独立して作用することを裏付けている。
【0409】
MC38腫瘍モデルにおけるTIGIT/PD-L1共遮断の効果をまた試験し、確認した。野生型C57BL6/Jマウスに同系MC38結腸直腸がん細胞を皮下的に接種し、前のように、樹立腫瘍をTIGIT及びPD-L1阻止抗体の組合せで処置した。CT26モデルとは異なり、抗PD-L1単独での処置が、幾匹かのマウスにおいて完全寛解を誘導するのに十分であった(図25)。しかしながら、CT26モデルにおけるように、MC38腫瘍を持つマウスを抗TIGITと抗PD-L1双方で処置すると、腫瘍増殖を相乗的に逆転させ、殆どのマウスにおいて腫瘍排除を誘導した(図26)。これらの効果は、同系EMT6乳がん細胞を接種したマウスにおいてもまた観察された(図34)。
【0410】
これらの結果は、TIGIT及びPD-1の共遮断が持続性で抗原特異的な抗腫瘍免疫応答を誘発することができたことを裏付けている。これらの結果は、適応抗腫瘍応答が充分に機能的に存在し、治療処置されたマウスにおいて再賦活化されたことをまた裏付けている。
【0411】
腫瘍浸潤リンパ球自体に対するTIGIT及びPD-1遮断の機能的効果を評価するために、マウスにCT26腫瘍細胞を接種し、前のように、抗TIGIT及び/又は抗PD-L1で処置した。処置開始の7日後に、フローサイトメトリーによる分析のために腫瘍及び腫瘍流入領域リンパ節を集めた。
【0412】
腫瘍浸潤及び腫瘍流入領域リンパ節常在CD4T細胞は殆どIFNγを産生せず、TIGIT/PD-1遮断時には更に産生しなかった(図11)。しかしながら、抗TIGIT又は抗PD-L1単独で処置されたマウス由来のものではなく、抗TIGIT及び抗PD-L1の双方で処置されたマウス由来の腫瘍浸潤CD8T細胞は、インビトロでの刺激時に、より有意なIFNγ産生能があった(コントロールに対して174%の増加,P=0.0001,図13D)。同様な結果がTNFαのCD8TIL産生に対して観察された(図12)。
【0413】
興味深いことに、抗TIGIT又は抗PD-L1単独の何れか又は双方で処置されたマウスでは全て腫瘍流入領域リンパ節常在CD8T細胞の増加したサイトカイン能力が見られ(75~113%の増加,P<0.001,図13)、リンパ節常在CD8+T細胞がその腫瘍浸潤対応物よりも少ない抑制度合い下にあったことを示唆している。腫瘍浸潤及び腫瘍流入領域リンパ節常在CD8+T細胞及びCD4+T細胞の蓄積及び表現型活性化は変わらず、それぞれ単一抗体処置及び二重抗体及び二重抗体処置によって弱く亢進された(図12-13)。腫瘍及び腫瘍流入領域リンパ節におけるIFNγ/TNFα二重産生CD8T細胞の出現頻度は類似のパターンに従った(図35A-35B)。
【0414】
従って、TIGIT又はPD-L1の何れかの遮断だけで腫瘍流入領域リンパ節におけるCD8T細胞エフェクター機能を亢進させるのに十分であったが、腫瘍微小環境が高度に免疫抑制性であるという考えに一致して、双方の受容体の遮断が、腫瘍自体内の消耗CD8T細胞の機能を回復させるのに必要であった。
【0415】
実施例6: 腫瘍浸潤CD8+T細胞上でのCD226とのTIGITの同時発現
TIGITは、ポリオウイルス受容体(PVR)への結合に対して同時刺激性受容体CD226と競合する(Yu, X.等 The surface protein TIGIT suppresses T cell activation by promoting the generation of mature immunoregulatory dendritic cells. Nature immunology 10, 48-57 (2009))。CD226欠損が慢性ウイルス感染中のT細胞消耗を亢進しうるとのことなので(Cella, M.等 Loss of DNAM-1 contributes to CD8+ T-cell exhaustion in chronic HIV-1 infection. European Journal of Immunology 40(4), 949-954 (2010);Welch, M.等 CD8 T cell defect of TNA-a and IL-2 in DNAM-1 deficient mice delays clearance in vivo of a persistent virus infection. Virology 429(2) 163-170 (2012))、TIGITがCD226活性を妨害することによって部分的にT細胞応答を阻害しうることは可能である。
【0416】
T細胞応答の阻害においてCD226とTIGITの間に関係があるかどうかを評価するために、TIGITとCD226の発現を腫瘍浸潤CD8+T細胞で測定した。
【0417】
図14に示されるように、C57BL6/JマウスにMC38結腸直腸がん細胞を接種した。脾細胞及び腫瘍浸潤リンパ球(TIL)をFACs分析によって分析した。接種のおよそ14日後、腫瘍がおよそ200mm3のサイズに達した。脾臓B細胞(灰色)、脾臓CD8+T細胞(青色)、及びTIGIT+腫瘍浸潤CD8+T細胞(赤色)によるCD226発現の代表的ヒストグラム。データは2回の独立した実験;n=5の代表値である。図14は、脾臓CD8+T細胞が高度にCD226を発現することを、更に腫瘍浸潤TIGIT+CD8+T細胞がまた高度にCD226を発現したことを示している。データは、TIGITとCD226がマウス腫瘍浸潤CD8T細胞上で協調的に発現され、CD8T細胞上のお互いの機能を調節する場合があることを裏付けている。この知見は、TIGITとCD226をまた同時発現する賦活化CD4T細胞及びNK細胞におけるものと類似している。
【0418】
実施例7: トランスフェクト細胞上でのTIGIT及びCD226の共免疫沈降
TIGITが細胞表面でCD226と相互作用するかどうかを決定するために、細胞をヒトTIGIT及びヒトCD226で同時トランスフェクトし、免疫沈降に供した。簡潔に述べると、15cmプレートのCOS7細胞を、TIGIT-HA(5ng)又はCD226-Flag(10ng)タグタンパク質の何れかに対するcDNAを含む発現プラスミド、あるいはコントロールプラスミド(pRK)で同時トランスフェクトした。トランスフェクションの23時間後に、細胞をPBSで洗浄し、4mlの氷冷PBS中に収集し、300×gで5分間遠心分離させ、細胞ペレットを4℃で2mlの溶解バッファー中に再懸濁させた。細胞を15分毎にボルテックスして50分かけて溶解し、ついで4Cで15分間、10,00×gで遠心分離した。得られた上清を、4℃で30分回転させることによって160μlのCL6Bセファローススラリーを用いて事前に清澄化し、3000×gで2分間遠心分離した。上清を二つのチューブに等しく分け、標準的な手順を使用して抗HA又は抗flagの何れかで免疫沈降させた。免疫沈降したタンパク質をSDS-PAGEに供し、ウェスタンブロットした。ウェスタンブロットは抗Flag-HRP又は抗HA-HRPの何れかでプローブした。
【0419】
図15に示されるように、抗TIGITはCD226をプルダウンし、抗CD226はTIGITをプルダウンし、TIGITとCD226が細胞表面で物理的接触状態にあることを裏付けている。
【0420】
実施例8: TIGITとCD226は一次CD8+T細胞中で相互作用する
トランスフェクト細胞中でCD226とTIGITが相互作用する能力を証明することに加えて、一次CD8+T細胞中でのCD226とTIGITの相互作用をまた評価した。簡潔に述べると、MACS富化脾臓C57BL6/JCD8+T細胞を、プレートに結合させた抗CD3及び抗CD28抗体及び組換えIL-2で48時間刺激し、溶解した。細胞可溶化物を抗TIGITで免疫沈降させ、抗CD226でプローブした。図16は、共免疫沈降において双方が検出可能であるように活性化された一次CD8+細胞においてTIGITとCD226が相互作用することを例証している。このデータは、CD226とTIGITがまた一次細胞上で互いに相互作用することを裏付けている。
【0421】
実施例9: TR-FRET(時間分解蛍光共鳴エネルギー移動)を使用するトランスフェクト細胞上でのTIGIT/CD226相互作用
TIGITとCD226の間に何らかの分子相互作用が存在するかどうかを評価するために、TR-FRET法を用いた。FRET(蛍光共鳴エネルギー移動)は、近接した供与体受容体の二つのフルオロフォア間のエネルギー移動に基づく。生体分子間の分子相互作用は、各パートナーを蛍光標識とカップリングさせ、エネルギー移動のレベルを検出することによって評価することができる。二つの実体がが互いに十分に近接すると、エネルギー源による供与体の励起が受容体に向けてのエネルギー移動を惹起し、ついでこれが、与えられた波長で特異的蛍光を発する。これらのスペクトル特性のため、供与体-受容体複合体は、未結合パートナーからの物理的分離を必要とすることなく検出することができる。FRETの時間分解(TR)測定の組合せは、シグナルからバックグラウンド蛍光を消すことを可能にする。これは、典型的には、システム励起と蛍光測定の間に時間遅延を導入し、シグナルからあらゆる非特異的な短命の発光を消すことによってなされる。
【0422】
TR-FRETを使用し、ここで我々は、TIGITとCD226が同じ細胞で発現されるとFRETを誘導し、これら二分子の分子相互作用を示すことを証明する。簡潔に述べると、COS-7細胞を、リポフェクタミン2000(Life Technologies)を使用してSNAPタグ(ST)CD226及びHA-TIGITでトランスフェクトし、1ウェル当たり100000細胞で白色の96ウェルプレート(Costar)に播種した。24時間後、細胞を、37℃、5%CO2中で1時間、DMEM 10% FCS中に希釈した100nMのドナー共役ベンジル-グアニンSNAP-Lumi-4Tb(Cisbio)及び1μMのドナー共役ベンジル-グアニンSNAP-A647(New England Biolabs)で標識した。PBSで3回洗浄後、Safire2プレートリーダー(Tecan)を使用して、343nmでのレーザ励起後の60μsの遅延後に400μsの間665nmでFRETシグナルを記録した。抗TIGIT抗体を試験したとき、FRETシグナルもまた15分のインキュベーション後に記録した。ついで、FRET比を、620nmでのドナー発光により割ったFRET強度として計算した。FRET強度は次の通りである:(SNAP-ドナー及びアクセプターで標識された細胞からの665nmでのシグナ)-(SNAP-ドナーだけで標識されたトランスフェクト細胞の同じバッチからの665nmでのシグナル)。
【0423】
図17に示されるように、TIGITはCD226ホモ二量体を直接破壊し、その解離を生じさせることができた。図17Aに示されるように、Flag-ST-CD226ホモ二量体の解離は、一定量のFlag-ST-CD226と増加濃度のHA-TIGITを発現するCOS-7細胞で測定されたFlag-ST-CD226間のFRET比の減少によって例証されるHA-TIGITの濃度増加で観察された。しかしながら、図17Bに示されるように、抗TIGIT抗体が細胞培養物に添加されると、これが、TIGITとCD226が結合する能力をブロックした。これは、Flag-ST-CD226ホモ二量体のFRET強度減少の欠如によって例証される。これは、CD226とTIGITが複合体として結合しているが、抗TIGIT抗体はこれらの相互作用を破壊することができることを裏付けている(図17A及び17B)。
【0424】
TR-FRETを使用して、CD226と結合するTIGITの能力をまた証明し、図17C及び17Dに示した。簡潔に述べると、1μMのドナーがコンジュゲートされたベンジル-グアニンSNAP-A647(上記参照)を使用するSNAP-タグ標識後、細胞をPBSで3回洗浄し、PBS+0.2%BSA中に希釈した2nMの抗HAドナーコンジュゲートLumi-4Tb(Cisbio)と共に室温で2時間、インキュベートした。ついで、FRETシグナルを記録した。その場合、FRET強度は次の通りである:(SNAP-アクセプター及び抗HAドナーで標識された細胞からの665nmでのシグナ)-(SNAP-アクセプター及び抗HAドナーで標識された偽トランスフェクト細胞からの665nmでのシグナル)。
【0425】
図17Cに示されるように、一定量のFlag-ST-CD226と増加濃度のHA-TIGITを発現するCOS-7細胞で測定されるFlag-ST-CD226とHA-TIGITとの間の増加するFRET強度によって示されるように、Flag-ST-CD226のHA-TIGITとの結合が観察された。抗TIGIT抗体が添加されると、FRET強度は、図17Dに示されるように、Flag-ST-CD226とHA-TIGITとの間で減少しており、これは、TIGITのCD226との相互作用が抗TIGIT阻止抗体によってブロックされうることを示唆している。
【0426】
FRET実験におけるFlag-ST-CD226とHA-TIGITの細胞表面での発現を確認するために、示されたタグを付けられたコンストラクトを発現するインタクトCOS-7細胞で抗Flag及び抗HA ELISAを実施した。簡潔に述べると、COS7細胞を4%のパラホルムアルデヒドで固定し、2回洗浄し、リン酸緩衝生理食塩水+1%ウシ胎仔血清(FCS)中でブロックした。ついで、細胞を、何れも西洋ワサビペルオキシダーゼとコンジュゲートさせた抗HAモノクローナル抗体(クローン3F10, Roche applied science)又は抗Flag-M2モノクローナル抗体(Sigma)と共にインキュベートした。洗浄後、細胞をSuperSignal ELISA基質(Pierce)と共にインキュベートし、Safire2プレートリーダー(Tecan)で化学発光を検出した。特異的シグナルを、偽トランスフェクト細胞で記録したシグナルを減算することによって計算した。図18に示されるように、CD226とTIGITの双方による細胞表面発現がELISAアッセイで確認された。
【0427】
TIGIT:CD226相互作用がPVR結合によって駆動されないことを確認するために、Stengel等, (2012) PNAS 109(14):5399-5904に記載されているようにして、Flag-ST-CD226及びHA-TIGIT(WT)又はHA-TIGIT Q56Rを作製し、記載されているようにしてFRET比を決定した。図24に示されるように、WT TIGITとQ56R TIGITは同じ効力でCD226に結合する。
【0428】
このデータは、CD226とTIGITが複合体として結合するばかりでなく、抗TIGIT抗体がこれらの相互作用を破壊しうることと、TIGIT:CD226相互作用がPVR結合によっては駆動されないことを証明している。該データは、T細胞のCD226媒介性活性化の制限におけるTIGITの役割と、CD226活性との干渉が、TIGITがT細胞応答及び活性を阻害する重要な作用機序でありうることを裏付けている。
【0429】
実施例10: CD226遮断がインビボでのTIGIT/PD-L1遮断のエフェクターを逆転させる
CD226とTIGITの相互作用の生理的な関連性を試験するために、マウスをクローン13LCMVで慢性的に感染させ、ついで抗CD226阻止抗体の不在下又は存在下で抗TIGIT+抗PD-L1で処置した。簡潔に述べると、C57BL6/JマウスからCD4T細胞を手短に枯渇させ、クローン13株LCMVで感染させた。慢性感染では、マウスを2×10PFUのクローン13株LCMVで静脈内感染させ、感染の3日前と感染の4日後にそれぞれ500ug及び250ugの枯渇抗CD4抗体(クローンGK1.5)で処置した。示されている場合、クローン13株LCMVで感染させられたマウスは、感染後28日から42日まで毎週3回、200ugのアイソタイプコントロール抗体、500ugの抗CD226抗体、200ugの抗PD-L1抗体+500ugの抗TIGIT抗体、又は500ugの抗CD226抗体+200ugの抗PD-L1抗体+500ugの抗TIGIT抗体の腹腔内注射を受けた。T細胞はこの慢性ウイルス感染モデルにおいてこの時点で大きく消耗しているので、処置は感染後28日目に開始した(Wherry等, Molecular Signature of CD8+ T cell Exhaustion During Chronic Viral Infection, Immunity. 2007 Oct;27(4):670-84)。脾細胞及び肝臓ウイルス価を感染後42日目に分析した。
【0430】
これらのマウスにおいて、抗CD226単独の処置では、CD8T細胞の出現頻度、活性化、又はサイトカイン能力に対して限られた効果しかなかった(図19A-19C)。しかしながら、抗CD226処置は、抗PD-L1+抗TIGITで処置されたマウスに見られるCD8T細胞活性化及びIFNγ産生の増加を強力に逆転させた(それぞれ、59%及び58%の減少,P<0.001。図19B-19D)。
【0431】
これらの結果と一致して、LCMVウイルス量は、抗PD-L1+抗TIGITだけで処置されたマウスにおけるよりも抗CD226+抗PD-L1+抗TIGITで処置されたマウスにおいて有意に高かった(272%の増加,P<0.001,図19D)。
【0432】
このデータは、TIGITが慢性的T細胞応答を制限する主要な機序がCD226媒介性同時刺激の障害であることを示唆している。該データは、CD226と相互作用し、それを破壊し、CD8T細胞における重要な同時刺激性シグナルの減少又は消失を生じる点におけるTIGITのこれまで知られていない役割を特定する。該データは、CD226媒介性T細胞同時刺激の障害が、がん又は慢性ウイルス感染中におけるようにTIGITが慢性T細胞応答を制限する主要な機序でありうることを証明している。該データはまたCD226と相互作用するTIGITの能力及び/又はCD226二量体化を破壊するTIGITの能力を妨害することによって、慢性的に刺激され又は消耗したCD8又はCD4T細胞のエフェクター機能を回復させることを意図した抗TIGIT抗体の本質的なパラメーターを定める。
【0433】
材料と方法
マウス。 C57BL/6J及びBALB/cマウスをジャクソン研究所及びチャールスリバー研究所から購入した。CD4creマウス及びTIGITloxP/loxPマウスは、標準的な技法を用いてC57BL/6Jバックグラウンドで産生し、交配させた。TIGIT発現はTIGITloxP/loxPCD4creマウスにおいてT細胞から96%の効率で消えた。
【0434】
フローサイトメトリー。 脾臓、リンパ節、及び腫瘍の単個細胞浮遊液を、穏やかな機械的破砕を用いて調製した。表面染色をCD4、CD8、CD44、CD62L、PD-1(eBiosciences)及びCD226(Biolegend)に対する市販の抗体で実施した。TIGIT抗体を、以前に記載されたようにして(Yu, X.等 The surface protein TIGIT suppresses T cell activation by promoting the generation of mature immunoregulatory dendritic cells. Nature immunology 10, 48-57 (2009))ジェネンテックで作製し、製造者(Molecular Probes)の指示書に従ってAlexa Fluor647にコンジュゲートさせた。
【0435】
細胞内サイトカイン染色(ICS)では、3μg/mLのブレフェルジンA(eBiosciences)の存在下で20ng/mLのホルボール12-ミリステート13-アセテート(PMA, Sigma)及び1μMのイオノマイシン(Sigma)を用いて、細胞を4時間、刺激した。刺激後、細胞を、記載されたようにして表面マーカーについて染色し、固定し、製造者の指示書に従ってeBioscienceのFoxP3固定バッファーを用いて透過処理した。固定した細胞をIFNγ及びTNFαに対する抗体(eBiosciences)を用いて染色した。
【0436】
阻止抗体。 阻止抗TIGIT IgG2aモノクローナル抗体(マウス及びヒトTIGITの双方に対して反応性であるクローン10A7)を先に記載されたようにして産生し、マウスIgG2a骨格上へクローニングした。阻止抗PD-L1 IgG2aモノクローナル抗体(クローン25A1)は、Pdl1-/-マウスをPD-1-Fc融合タンパク質で免疫化することによって産生し、マウスIgG2a骨格上にクローニングした。クローン25A1を、Fcγ受容体への結合を消失させる先に記載された変異を用いて修飾した。阻止抗CD226IgG2aモノクローナル抗体(クローン37F6)を、組換えマウスCD226でのハムスターの免疫化によって産生させ、マウスIgG2a骨格上にクローニングした。これらの抗体をまたここに記載の他の実施例に記載された試験において使用した。
【0437】
ウイルス感染。 急性感染では、マウスを2×10プラーク形成単位(PFU)のアームストロング株LCMVで静脈内感染させた。慢性感染では、マウスを2×10PFUのクローン13株LCMVで静脈内感染させ、それぞれ感染の3日前と4日後に500ug及び250ugの枯渇抗CD4抗体(クローンGK1.5)で処置した。示されている場合、クローン13株LCMVで感染させられたマウスは、感染後28日から42日まで毎週3回、200ugのアイソタイプコントロール抗体、200ugの抗PD-L1抗体、及び/又は500ugの抗TIGIT抗体の腹腔内注射を受けた。
【0438】
ウイルス価アッセイ。 MC57細胞単層を、1%のメチルセルロースをオーバーレイさせて培養し、LCMV感染マウス由来の段階希釈された肝臓ホモジネートを用いて感染させた。感染の72時間後に、細胞を4%のパラホルムアルデヒドで固定し、0.5%のトリトンXで透過処理した。ウイルスプラークを抗LCMV NP(クローンVL-4)及びHRPコンジュゲート抗ラットIgGで染色し、O-フェニレンジアミン(OPD, Sigma)で可視化させた。
【0439】
バイオインフォマティックス。 乳がん遺伝子発現データマイクロアレイデータを Cancer Gene Atlas Network(Network, T.C.G.A. Comprehensive genomic characterization of squamous cell lung cancers. Nature 489, 519-525 (2012))から得た。マイクロアレイデータの処理及び正規化を、Rプログラミング言語(http://r-project.org)及びBioconductorのlimmaパッケージ(http://bioconductor.org)を使用して実施した。各チャンネルからのマイクロアレイ強度値を、以前に記載されたようにして22、正規+指数背景修正法を使用して前処理した。ついで、修正された強度値を、以前に記載されたようにして23、分位数正規化法を使用して正規化した。正規化された対数比データを、各アレイに対して試験チャンネルから参照チャンネルを減算することによって計算した。データを、以前に記載されたような24、非特異的フィルターを使用し、既知遺伝子にマップしないプローブを除去し、データセットを1遺伝子当たり1プローブまで減少させて更にフィルター処理した。差次的遺伝子発現では、以前に記載されたようにして(Smyth, G.K. Linear models and empirical bayes methods for assessing differential expression in microarray experiments. Statistical applications in genetics and molecular biology 3, Article3 (2004))、モデレート(moderated)t-統計をlimmaパッケージを用いて計算した。相関を評価するために、ピアソン相関係数を使用した。
【0440】
CT26結腸がん。 BALB/cの右の片側胸郭側腹部中に、マトリゲル(BD Biosciences)に懸濁させた1×10のCT26結腸がん細胞を皮下的に接種した。2週間後、およそ200mmの腫瘍を持つマウスを、週3回3週間の間、腹腔内注射によって35mg/kgのアイソタイプコントロール抗体、抗PD-L1抗体、及び/又は抗TIGIT抗体が投与される処置群に無作為に補充した。腫瘍をノギスによって週2回測定した。その腫瘍が潰瘍性/壊死性になったか又は2000mmより大きくなった動物を安楽死させた。
【0441】
EMT6乳がん。 BALB/cマウスの第4乳腺脂肪体中に、マトリゲル(BD Biosciences)中1×10の同系EMT6乳がん細胞を皮下的に接種した。2週間後、150-200mmの腫瘍を持つマウスを、週3回3週間の間、腹腔内注射によって35mg/kgのアイソタイプコントロール抗体、抗PD-L1抗体、及び/又は抗TIGIT抗体が投与される処置群に無作為に補充した。腫瘍をノギスによって週2回測定し、腫瘍体積を、修正楕円体計算式1/2×(長さ×幅)を使用して計算した。その腫瘍が32mm又はそれ以下に縮んだ動物が完全寛解(CR)であると考えられた。その腫瘍が2000mmより大きくなった動物は進行したと考え、安楽死させた。その腫瘍が進行又は完全寛解前に潰瘍性になった動物は安楽死させ、研究から除外した。
【0442】
CT26再曝露。 示されている場合、上述のようにしてCT26結腸がん細胞が先に接種されたBALB/cマウスの左の(先に接種されていない)片側胸郭側腹部に、CT26細胞を再接種した。これらのマウスの第4乳腺脂肪体中に、マトリゲル中の1×10のEMT6乳がん細胞をまた接種した。腫瘍を1週間に2回測定した。その腫瘍が潰瘍性/壊死性になったか又はその全腫瘍量が2000mmを越えた動物を安楽死させた。
【0443】
統計。 統計検定を、独立(特定されている場合はペアード)両側ステューデントt検定を使用して実施した。エラーバーは平均の標準誤差を表す。
【0444】
動物実験監視。 全ての動物実験は、ジェネンテックの企業内動物ケア及び使用委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)によって承認された。
【0445】
実施例11: TIGIT発現はヒトがんにおいて上昇し、CD8及びPD-1の発現とCD8+T細胞浸潤に相関する
材料と方法
バイオインフォマティックス。 RNA-配列決定データの処理と解析を、Bioconductorプロジェクトからの幾つかのパッケージ(http://www.bioconductor.org)と共にRプログラミング言語(http://www.r-project.org)を使用して実施した。がん及び一致した正常な試料のRNA-配列決定データは、5種の異なった徴候に対してTCGAから得た:乳がん(Network, C.G.A. Comprehensive molecular portraits of human breast tumours. Nature 490, 61-70 (2012))、結腸腺がん(Network, T.C.G.A. Comprehensive molecular characterization of human colon and rectal cancer. Nature 487, 330-337 (2012))、腎明細胞がん(Network, C.G.A. Comprehensive molecular characterization of clear cell renal cell carcinoma. Nature 499, 43-49 (2013))、 肺扁平上皮がん(Network, T.C.G.A. Comprehensive genomic characterization of squamous cell lung cancers. Nature 489, 519-525 (2012))、及び子宮内膜がん(Network, T.C.G.A. Integrated genomic characterization of endometrial carcinoma. Nature 497, 67-73 (2012))。
【0446】
生のRNA-seq読み取りデータを、HTSeqGenie Bioconductorパッケージを使用して処理した。簡潔に述べると、読み取りデータを、GSNAPアルゴリズム(Wu, T.D.及びNacu, S. Fast and SNP-tolerant detection of complex variants and splicing in short reads. Bioinformatics (Oxford, England) 26, 873-881 (2010))を使用して、ヒトゲノム(NCBIビルド37)にアラインさせた。エキソン内に入った独特にアラインされた読み取り対を計数して、個々の遺伝子に対する遺伝子発現レベルの推定値を得た。我々はedgeRパッケージ(Robinson, M.D., McCarthy, D.J. & Smyth, G.K. edgeR: a Bioconductor package for differential expression analysis of digital gene expression data. Bioinformatics (Oxford, England) 26, 139-140 (2010))からのライブラリーサイズ推定値を使用し、その各シークエンシング深さに対して異なった試料にわたって正規化した。
【0447】
T細胞特異的遺伝子サインを導き出すために、我々は、IRISプロジェクトによって同定されたT細胞遺伝子を手作業で管理し、細胞周期過程に関連する遺伝子、他の組織において高度に発現される遺伝子、及び既知の同時活性化及び同時阻害性受容体を除去した。これにより、T細胞に特異的な15-遺伝子サインを得た。肺扁平上皮がんデータにおけるT細胞遺伝子発現サインを計算するために、我々は、limma Bioconductorパッケージからのvoom関数を使用して生のカウントデータで分散安定化変換を最初に実施した。ついで、我々は、15-遺伝子T細胞サインからの中心にしスケール化した分散安定化データの最初の固有ベクトルを計算した。このアプローチ法は、相対的なT細胞存在量の強い試料当たりの推定値をもたらす。ついで、T細胞サインスコアを含む線形モデルを、limmaパッケージを再び使用して、各遺伝子に対して適合させた。ついで、我々は、我々の線形モデルにおけるT細胞サインとのその相関によって遺伝子をランク付けし、T細胞サインとポジティブに相関した遺伝子のみを選択した。T細胞随伴遺伝子をヒートマップとして可視化するために、我々は分散安定化データを中心にし、単位分散にスケール化し、異なった平均の発現レベルを持つ遺伝子の比較を可能にした。
【0448】
TIGITと他の遺伝子の発現間の相関を判定するために、我々は、edgeR Bioconductorパッケージからの方法(Robinson, M.D., McCarthy, D.J. & Smyth, G.K. edgeR: a Bioconductor package for differential expression analysis of digital gene expression data. Bioinformatics (Oxford, England) 26, 139-140 (2010))を使用して、ライブラリーサイズの差を説明するためにRNA-シークエンシングカウントデータを正規化した。ついで、我々は、正規化されたカウントについてスピアマンの順位相関係数を計算した。我々は、ρ>0.75が強い相関を示し、ρ≦0.75でρ>0.5が中程度の相関を示し、ρ≦0.5でρ>0.25が弱い相関を示すと考える。
【0449】
各表示にわたるTIGIT/CD3ε比の計算に対しては、我々は各RNA-シークエンシングデータセットに対して分散安定化データを最初に計算した。ついで、我々は、TIGITとCD3εに対する分散安定化データのlog2比を計算した。腫瘍及び正常試料間の差を計算するために、我々は、標準的なR関数を使用して標準的な線形モデル解析を実施した。我々は腫瘍と正常との間の有意差の証拠として<0.01のp値を受け入れた。
【0450】
腫瘍浸潤T細胞に関連する遺伝子を同定するために、我々は、Cancer Genome Atlas(TCGA)肺扁平上皮がん(LUSC)コレクションからの遺伝子発現データを調べるために遺伝子サインベースのアプローチ法を使用した(Network, T.C.G.A. Comprehensive genomic characterization of squamous cell lung cancers. Nature 489, 519-525 (2012))。免疫応答インシリコプロジェクト(Abbas, A.R.等 Immune response in silico (IRIS): immune-specific genes identified from a compendium of microarray expression data. Genes and immunity 6, 319-331 (2005))によって定義された免疫細胞特異的遺伝子セットと、上述の方法を使用して、我々は高度に特異的な15遺伝子サインを開発した。T細胞サインに最も高度に関連している遺伝子を調べて、我々は、腫瘍におけるT細胞機能不全にこれまで関連していた幾つかの同時阻害性受容体、特にPD-1を同定した(図21)。LUSCにおいて、TIGIT及びCD3εの発現は、あるスペアマンの順位相関係数(0.82のρ(図20A))で、高度に相関していた。確かに、TIGIT及びCD3εの発現はまた、結腸腺がん(COAD)、子宮体部類内膜がん(UCEC)、乳がん(BRCA)、及び腎臓の腎臓明細胞がん(KIRC)を含む多くの更なるTCGA腫瘍遺伝子発現データセットにおいて高度に相関しており、ρは0.83から0.94の範囲であった(図20B-20E)。更に、TIGITの発現は、多くの腫瘍試料においてCD3εの発現に対して上昇しており、匹敵する正常組織と比較してLUSC、COAC、UCEC、及びBRCA腫瘍試料においてTIGIT/CD3ε比は増加した(116%-419%の増加,図20A-20D)。KIRC試料におけるCD3εに対するTIGITの発現比は、TIGITとCD3ε双方の発現が正常な組織試料においてよりもKIRC試料において更に高かったけれども、変化しなかった(図20E)。これらのデータは、TIGIT発現が広範な固形腫瘍において腫瘍浸潤リンパ球(TIL)によってアップレギュレートされたことを示している。
【0451】
TIGITは、CD4+T細胞プライミングの阻害剤として過去に記載されており、CD8+T細胞における既知の機能はなかった。しかしながら、LUSC試料におけるTIGIT発現はCD8Aと高度に相関しており、CD4とはほんの弱く相関している(それぞれ、ρ=0.77及び0.48,図20F)。TIGITの発現はまたその相補的同時刺激性受容体CD226の発現、並びに腫瘍における及び他の慢性免疫応答中におけるT細胞抑制の重要なメディエーターのPD-1の発現とまた相関していた(それぞれ、ρ=0.64及び0.82,図20G-20H)。これらの遺伝子の幾つかの非リンパ球細胞源が腫瘍中に存在するが、これらのデータは、腫瘍浸潤T細胞、特に「消耗した」CD8T細胞が高レベルのTIGITを発現させたことを強く示唆している。
【0452】
実施例12: TIGITとPD-1はヒト及びマウス腫瘍浸潤リンパ球によって協調的に発現される
材料と方法
ヒト腫瘍及びPBMC試料。 適合した全血及び新鮮な手術で摘出された腫瘍組織はConversant Biosciences又はFoundation Bioから得た。全ての検体は同意書と共に得られ、Hartford Hospital Institutional Review Board(IRB)(NSCLC患者1,図22に示す)又はWestern IRB(NSCLC患者2及びCRC患者1,図23及び図37に示す)によって承認されたプロトコルを使用して集めた。正常な成人の全血は健常者から得た。PBMCはFicoll勾配遠心分離によって全血から精製した。腫瘍組織は小片に切断し、コラゲナーゼ及びデオキシリボヌクレアーゼ(Roche)と共にインキュベートし、gentleMACS Disassociator(Miltenyi)を使用して解離させた。
【0453】
フローサイトメトリー。 マウス脾臓、リンパ節、及び腫瘍の単個細胞浮遊液を、穏やかな機械的破砕で調製した。表面染色を、CD4、CD8、CD44、CD62L、PD-1(eBiosciences)及びCD226(Biolegend)に対する市販の抗体を用いて実施した。TIGIT抗体をジェネンテックで産生させ、製造者の指示書(Molecular Probes)に従ってAlexa Fluor647にコンジュゲートさせた。
【0454】
細胞内サイトカイン染色(ICS)では、細胞を、3μg/mLのブレフェルジンA(eBiosciences)の存在下、20ng/mLのホルボール12-ミリステート13-アセテート(PMA, Sigma)及び1μMのイオノマイシン(Sigma)を用いて4時間刺激した。刺激後、記載のようにして表面マーカーのために細胞を染色し、固定させ、製造者の指示書に従ってeBioscience FoxP3固定化バッファーを用いて透過処理した。固定した細胞を、IFNγ及びTNFαに対する抗体(eBiosciences)を用いて染色した。
【0455】
ヒト腫瘍及びPBMC試料を、上記のようにして調製した。表面染色を、生細胞染料(Molecular Probes)、CD45(eBiosciences)、CD3、CD4、CD8、PD-1(BD Biosciences)に対する市販の抗体、及び上述のようにして調製された抗TIGIT抗体を用いて実施した。
【0456】
全ての試料はLSR-II又はLSR-Fortessa機器(BD Biosciences)で獲得し、FlowJoソフトウェア(Treestar)を使用して分析した。
【0457】
腫瘍浸潤T細胞によるTIGITのアップレギュレーションを確認するために、我々は、ヒト非小細胞肺がん腫瘍浸潤T細胞、適合した末梢T細胞、及び正常なドナー末梢T細胞上でのTIGITタンパク質の発現を評価した。細胞表面TIGITはNSCLC浸潤CD8及びCD4T細胞のサブセットによって発現された(それぞれ、51%及び39%y,図22A-22B)。図36は、細胞表面TIGITが多くの割合のNSCLC浸潤CD8及びCD4T細胞によって発現されたことを更に証明する(それぞれ、58%及び28%TIGIT図36A-36B)。興味深いことに、NSCLC腫瘍ドナー由来の末梢CD8及びCD4T細胞はまた健康なドナー由来の細胞よりも高レベルのTIGITを発現した(図22A-22B及び図36A-36B)。同様の結果が、適合NSCLC及びPBMC試料の第二セットと適合結腸直腸がん(CRC)及びPBMC試料のセットで得られた(図23及び図37)。高レベルのTIGITを発現するほぼ全ての腫瘍浸潤T細胞は、図1に記載されたTIGITとPD-1の発現間の相関と一致してPD-1を同時発現した(図22C)。
【0458】
ヒトでの知見を前臨床がんモデルに拡張するために、我々は、野生型BALB/cマウス及びC57BL6/JマウスそれぞれにおいてT細胞浸潤皮下CT26及びMC38結腸直腸腫瘍によるTIGIT発現を特徴付けした。接種の2週間後、CT26及びMC38腫瘍が樹立され、150-200mmのサイズになったとき、TIGITが、およそ50%の腫瘍浸潤CD8T細胞及び25%の腫瘍浸潤CD4T細胞によって発現され、インビトロで刺激された一次CD8T細胞のものと同様のレベルであった(図22D-22E及び図26)。CD8及びCD4双方のマウスTILにおいて、CD226は構成的に発現され、TIGIT及びPD-1発現はまた密接に相関していた(図22F-22G)。
【0459】
これらの結果は、TIGITが腫瘍浸潤T細胞によって高度に発現されたこと、及びTIGITの発現が他の同時阻害性受容体、中でも注目すべきはPD-1の発現と並行して起こったこと裏付ける。
【0460】
実施例13: CD8+T細胞応答のTIGIT抑制はCD226に依存性である
PD-1又はCTLA-4と異なり、シスのTIGITによって開始されるT細胞阻害性シグナル伝達カスケードの直接的な生化学的証拠はない。しかしながら、同時阻害性受容体は、相補的同時刺激性受容体の活性を制限することにより、例えばCTLA-4によるCD28シグナル伝達の抑制で、また機能しうる。TIGITを腫瘍浸潤及び抗ウイルスCD8T細胞の負の制御因子として樹立したので、我々は、TIGITが、末梢及び腫瘍浸潤CD8T細胞によって高度に発現されるその相補的同時刺激性受容体CD226の抑制を介して間接的にT細胞消耗を誘導したのかどうかを問うた(図27)。
【0461】
150-200mmのCT26腫瘍を持つ野生型BALB/cマウスを、阻止抗CD226抗体の存在又は不存在下、抗PD-L1及び抗TIGIT抗体の組合せ、又は抗CD226単独を用いて処置した。抗CD226単独での処置は、コントロールマウスに対して、僅かに腫瘍増殖を加速させ、2日の減少した生存期間中央値となった(抗CD226単独対コントロール,P=0.0118,図28A-28B)。際だったことに、抗TIGIT及び抗PD-L1共遮断で処置したマウスに対する抗CD226阻止抗体の添加は、腫瘍増殖を大きく亢進させ、腫瘍退縮及び生存に対するTIGIT/PD-L1共遮断の効果を完全に逆転させた(図28A-28B)。同様の効果が、抗TIGIT、抗PD-L1、及び/又は抗CD226で処置された慢性的に感染させられたマウスにおいてLCMV価で観察された(図19D)。これらのデータは、CD226が抗腫瘍及び他の慢性T細胞応答に寄与し、TIGITが少なくとも部分的にCD226の抑制によりこれらの応答を抑制したことを示している。
【0462】
TIGIT及びCD226活性が抗腫瘍T細胞応答に如何に影響したかをより十分に理解するために、我々は、CD226が単独で及びTIGITと協働して、如何にT細胞活性化、腫瘍浸潤、及びエフェクター機能に影響を及ぼしたかを試験した。我々は、7日間、上述のように処置されたCT26腫瘍を持つマウス由来の腫瘍及び腫瘍流入領域リンパ節を分析した。前のように、PD-L1とTIGITの共遮断は、腫瘍浸潤及び腫瘍流入領域リンパ節常在CD8T細胞双方のIFNγ産生を亢進した(それぞれ、130%及び99%の増加,P<0.001,図28C-28D)。CD226単独の遮断は、腫瘍浸潤及び腫瘍流入領域リンパ節常在CD8T細胞によるIFNγ産生に効果はなく、CD226同時刺激の効果は消耗したT細胞に既に限られていたことを示唆している(図28C-28E)。しかしながら、CD226遮断は、抗TIGITと抗PD-L1の組合せで処置されたマウスにおいて腫瘍浸潤CD8T細胞の発生頻度とエフェクター機能の双方を損なった(57%の減少,P=0.0015,図28D)。抗CD226での処置は、腫瘍流入領域リンパ節に存在するCD8T細胞に対してそのような効果を有していなかったが、抗PD-L1単独ではCD8T細胞エフェクター機能を亢進しており、CD226の不存在下においてさえCD8T細胞エフェクター機能を亢進させるのに十分であったことを示唆している。CD226遮断はまた腫瘍浸潤CD8T細胞の発生頻度減少を生じさせた(53%の減少,P=0.0044,図28E-28F)。併せると、これらのデータは、腫瘍浸潤CD8T細胞の蓄積とエフェクター機能の双方を支援するように機能し、TIGITが後者に対抗することを示唆している。
【0463】
実施例14: TIGITはCD226ホモ二量体化を直接妨害することによりCD226機能を損なう
TIGITがシスでCD226活性をアンタゴナイズしうるかどうかを試験するために、インビトロでのCD226同時刺激に対するTIGITの効果を試験した。最適以下のレベルの抗CD3で刺激されたTIGIT欠損CD8T細胞は、野生型同腹仔CD8T細胞よりもPVR同時刺激に対してより強く応答し、この亢進された応答はCD226に依存性であった(46%の増殖増加,P=0.0061,図29A)。これらのデータと一致して、最適以下の抗CD3及びPVRで刺激された野生型CD8T細胞は、アイソタイプ一致コントロール抗体の存在下においてなされたよりも抗TIGIT抗体の存在下でより強力に増殖し、この効果もまたCD226に依存性であった(105%の増殖増加,P=0.0010,図29B)。
【0464】
一次ヒトCD8T細胞に対するTIGITの関連性を試験するために、我々は、健康なドナーの血液由来のCD8T細胞を精製し、最適以下のレベルのプレートに結合した抗CD3及び組換えヒトPVR-Fc融合タンパク質でそれらを刺激した。アイソタイプ一致コントロール抗体の存在下で、PVR同時刺激は、T細胞刺激及び増殖を中程度に亢進させた。更に、阻止抗TIGIT抗体の添加は、一次マウスCD8T細胞へのTIGITの効果と一致して、PVR同時刺激の効果を有意に亢進させた(69%の増殖増加,P=0.0071,図29C)。これらのデータは、一次マウス及びヒトCD8T細胞でのCD226機能のTIGIT阻害に対する細胞に本来的な役割を裏付けている。
【0465】
TR-FRET(時間分解蛍光共鳴エネルギー移動)を使用して、TIGITがCD226活性を損なわせた分子機序を決定した。最初に、我々はヒトST-CD226を発現させ、非透過性ドナー及びアクセプターフルオロフォアで標識した。これらの細胞は強いFRETシグナルを生じ、ホモ二量体化するCD226の能力を確信させる(図29D)。細胞表面におけるCD226及びTIGIT相互作用をモニターするために、我々は、SNAP-タグ基質及び抗HA抗体でそれぞれ標識したヒトHA-TIGITの不存在下又は存在下でST-CD226を発現させた。際だったことに、増加量のTIGITの同時発現(ELISAによりモニターされる)は、CD226/CD226FRETシグナルを減弱させ、TIGITがCD226ホモ二量体化を妨害し得たことを示している(図29E)。確かに、アクセプターCD226及びドナーTIGITはまた有意なFRETシグナルを生じ、これら二つのタンパク質間の直接の相互作用を示している(図29F)。この相互作用は共免疫沈降により更に確認された(図29G)。これらのデータは、TIGITとCD226が細胞表面で直接相互作用し、この相互作用がCD226ホモ二量体化を損ないうることを証明している。
【0466】
TIGIT-CD226相互作用に対するTIGIT抗体遮断の効果を試験するために、我々はヒトST-CD226及びHA-TIGITを、今度はヒトTIGITに対する阻止抗体の存在又は不存在下で、再び同時発現させた。細胞培養物に対する抗TIGITの添加は、TIGITとCD226が結合する能力を有意に低減させた(図29H)。これらのデータは、抗TIGIT処置がTIGITのCD226との相互作用を制限しうることを示唆しており、CD226活性の抑制が、TIGITがCD8T細胞消耗を共生する重要な作用機序であるという考えと一致する。これはまた、CD226同時刺激を亢進させる抗TIGIT抗体の能力と一致する。
【0467】
次に、我々は、内因性TIGIT及びCD226が相互作用する能力を確認した(図30)。一次ヒトT細胞を抗CD3及び抗CD28抗体でインビトロで刺激し、TIGIT発現に基づいて選別し、休止させ、再刺激し、TR-FRETと適合性があるフルオロフォアにコンジュゲートさせた内因性TIGIT及びCD226に対する抗体で標識した。ドナーコンジュゲート抗TIGIT及びアクセプターコンジュゲート抗CD226抗体で標識されたTIGIT発現T細胞は、強いFRETシグナルを生じた(図30)。これに対して、TIGITを発現しなかったか、又はドナーコンジュゲート抗TIGIT及びアクセプターコンジュゲート抗HVEM抗体で標識されたT細胞では、僅かな無視できるFRETシグナルだけが検出され(図30)、内因性TIGIT及びCD226間の検出された相互作用の特異性が確認された。
【0468】
これらの結果は、内因性TIGIT及びCD226が細胞表面で直接相互作用し得、この相互作用がCD226ホモ二量体化を損なうことを証明している。インビボでのT細胞応答の共刺激因子としてのCD226の役割が与えられたので、理論によって拘束されることを望むものではないが、CD226の抑制は、慢性ウイルス感染及びがん中にTIGITがCD8T細胞消耗を強制する重要な作用機序でありうると思われる。
【0469】
材料と方法
トランスフェクト細胞株を用いた時間分解蛍光共鳴エネルギー移動。 CHO細胞を、リポフェクタミン2000(Life Technologies)を使用してN末端SNAP標識(ST)CD226及びN末端HA-TIGITでトランスフェクトさせ、1ウェル当たり100000細胞で96ウェルプレート(Costar)に播種した。24時間後、細胞を標識してSNAP-ドナー/SNAP-アクセプター間又はSNAP-アクセプー/抗HAドナー間の何れかのTR-FRETを測定した。1)SNAP-ドナー/SNAP-アクセプター標識:細胞を、DMEM 10%FCSに希釈した100nMのドナーコンジュゲートベンジル-グアニンSNAP-Lumi-4Tb(Cisbio)及び1μMのアクセプターコンジュゲートベンジル-グアニンSNAP-A647(New England Biolabs)と共に37℃,5%COで1時間インキュベートした。ついで、細胞をPBSで3回洗浄した後、FRETシグナルを読み取った。2)SNAP-アクセプター/抗HAドナー:細胞を、DMEM 10%FCSに希釈した1μMのアクセプターコンジュゲートベンジル-グアニンSNAP-A647と共に37℃,5%COで1時間インキュベートした。PBSでの3回の洗浄後、細胞を、PBS+0.2%BSA中の2nMの抗HA Lumi-4Tb(Cisbio)と共に室温で2時間インキュベートした。ついで、FRETシグナルを、Safire2プレートリーダー(Tecan)を使用し、343nmでのレーザー励起後60μsの遅延後に400μsの間665nmで記録した。抗TIGITを最終10μg/mlで試験したとき、FRETシグナルをまた15分のインキュベーション後に記録した。Flag-ST-CD226/Flag-ST-CD226相互作用に対しては、FRET比を620nmでのドナー発光によって割ったFRET強度として計算したが、これはCD226発現に比例している。FRET強度は次の通りである:(SNAP-ドナー及びアクセプターで標識された細胞からの665nmでのシグナル)-(SNAP-ドナーのみで標識されたトランスフェクト細胞の同じバッチからの665nmでのシグナル)。Flag-ST-CD226/HA-TIGIT相互作用に対しては、FRET比は、抗Flag ELISAによって測定されるFlag-ST-CD226発現によって割られたFRET強度を表す。その場合、FRET強度=(SNAP-アクセプター及び抗HAドナーで標識された細胞からの665nmでのシグナル)-(SNAP-アクセプター及び抗HAドナーで標識された偽トランスフェクト細胞からの665nmでのシグナル)。
【0470】
ヒトT細胞を用いた時間分解蛍光共鳴エネルギー移動。 ヒト抗TIGIT(Genentechクローン1F4)、抗CD226(Santa Cruz Biotechnology)、及び抗HVEM(eBioscience)抗体にTR-FRET(Cisbio)に適合性のフルオロフォアで標識をコンジュゲートさせた。一次ヒトT細胞を血液からMACS富化させ、プレートに結合させた抗CD3及び抗CD28で72時間インビトロで刺激した。ついで、TIGIT発現及び非発現T細胞(全てCD226を発現)を選別し、72時間刺激なしで休止させ、48時間、再刺激した。ついで、各集団をTris-KREBSバッファー(20mM Tris pH7.4,118mM NaCl,5.6mM グルコース,1.2mM KH2PO4,1.2mM MgSO4,4.7mM KCl,1.8mM CaCl2)で一回洗浄し、次の条件下で3組、培養した:1)抗TIGIT Ab-Lumi4-Tb(5μg/ml)、2)抗TIGIT Ab-Lumi4-Tb(5μg/ml)+抗HVEM-d2(10μg/ml)、3)抗TIGIT Ab-Lumi4-Tb(5μg/ml)+抗CD226(10μg/ml)、4)抗TIGIT Ab-Lumi4-Tb(5μg/ml)+抗CD226(10μg/ml)+冷抗TIGIT Ab(クローン1F4)(50μg/ml)。示された濃度を最適化して最も高いFRETシグナルを確保した。細胞をローテータ上で室温で2時間インキュベートし、ついでTris-KREBSバッファーで3回洗浄した。ついで、T細胞を白色の96ウェルプレート(Costar)に400,000細胞/ウェルで播種し、TR-FRETを、PHERAstarプレートリーダー(BMG Labtech)を使用し、343nmでのレーザー励起後60μsの遅延後に400μsの間、665nmで記録した。FRET強度は、Ab-Lumi4-Tb+Ab-d2で標識された細胞からの665nmでのシグナルからAb-Lumi4-Tb単独で標識された細胞の同じバッチからの665nmでのシグナルを引いたものとして表した。非特異的FRETシグナルは、Lumi4Tb+d2+過剰の冷Abと共にインキュベートしたT細胞によって与えられた。
【0471】
共免疫沈降。 簡潔に述べると、15cmプレート中のCOS7細胞を、TIGIT-HA(5ng)又はCD226-Flag(10ng)の何れかがタグ化されたタンパク質に対するcDNAを含む発現プラスミド、又はコントロールプラスミド(pRK)を用いて同時トランスフェクトさせた。トランスフェクションの23時間後、細胞をPBSで洗浄し、4mlの氷冷PBS中に収集し、300×gで5分間遠心分離し、細胞ペレットを4℃で2mlの溶解バッファー中に再懸濁させた。細胞を、15分毎にボルテックスさせて50分かけて可溶化し、ついで4℃で10,00×gで15分間、遠心分離した。得られた上清を、4℃で30分回転させて160μlのCL6Bセファローススラリーで前もって清澄化させ、3000×gで2分間、遠心分離した。上清を二つのチューブに均等に分け、標準的な手順を使用して、抗HA又は抗flagの何れかで免疫沈降させた。免疫沈降させたタンパク質をSDS-PAGEに供し、ウェスタンブロットした。ウェスタンブロットは抗Flag-HRP又は抗HA-HRPの何れかでプローブした。
【0472】
ここで引用される全ての特許、特許出願、書類、及び文献はその全体を出典明示によりここに援用する。
図1A-1B】
図1C-1D】
図2
図3
図4A-4D】
図4E-4F】
図4G-4H】
図5
図6A-6B】
図6C-6D】
図7A-7C】
図7D
図7E
図7F
図8
図9
図10
図11A-11C】
図11D-11F】
図12
図13A
図13B-13D】
図14
図15
図16
図17
図18
図19A-19B】
図19C-19D】
図20A
図20B
図20C
図20D
図20E
図20F
図20G-20H】
図21
図22A-22B】
図22C-22E】
図22F-22G】
図23A-23C】
図23D
図24
図25A
図25B-25C】
図26A-26C】
図26D-26E】
図27
図28A
図28B-28F】
図29A-29D】
図29E-29H】
図30
図31
図32A
図32B-32C】
図33
図34
図35
図36
図37
【配列表】
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