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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-27
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】ウエハ加熱装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20220128BHJP
   H05B 3/02 20060101ALI20220128BHJP
   H05B 3/74 20060101ALI20220128BHJP
【FI】
H01L21/02 Z
H05B3/02 B
H05B3/74
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019503066
(86)(22)【出願日】2018-02-28
(86)【国際出願番号】 JP2018007532
(87)【国際公開番号】W WO2018159687
(87)【国際公開日】2018-09-07
【審査請求日】2020-10-19
(31)【優先権主張番号】62/465,982
(32)【優先日】2017-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹林 央史
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 謙悟
(72)【発明者】
【氏名】平田 夏樹
【審査官】比嘉 貴大
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-010884(JP,A)
【文献】特開平08-274147(JP,A)
【文献】特開2004-349666(JP,A)
【文献】国際公開第2015/132563(WO,A1)
【文献】特開2016-062999(JP,A)
【文献】特開2002-025913(JP,A)
【文献】特開2004-099313(JP,A)
【文献】特開2003-158052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
H05B 3/02
H05B 3/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
片面がウエハ載置面である基体に抵抗発熱体が埋設されたウエハ加熱装置であって、
前記抵抗発熱体は、一対の端子の一方から他方まで一筆書きの要領で配線されており、
前記一対の端子は、平面視したときに前記一対の端子の全体形状が円形になるように形成され、一本の接続部材に接続されており、
前記接続部材は、前記端子のそれぞれに対応した柱状部材を絶縁材を挟んで束ねた構造を有し、平面視したときに全体形状が円形である、
ウエハ加熱装置。
【請求項2】
前記一対の端子を平面視したときに、前記一対の端子の一方は、所定の円を半分に割った一方の半円部として現れ、前記一対の端子の他方は、前記所定の円を半分に割った他方の半円部として現れる、
請求項1に記載のウエハ加熱装置。
【請求項3】
前記一対の端子を平面視したときに、前記一対の端子の一方は、所定の円を中央の円部とその円部の外側の円環部とに分けたうちの前記円部として現れ、前記一対の端子の他方は、前記円環部に沿ったC字部として現れる、
請求項1に記載のウエハ加熱装置。
【請求項4】
前記基体の前記ウエハ載置面とは反対側の面には、前記一対の端子のそれぞれに対応した形状の一対のランドが設けられている、
請求項1~3のいずれか1項に記載のウエハ加熱装置。
【請求項5】
前記基体の前記ウエハ載置面とは反対側の面に冷媒通路を内蔵する冷却板が接合され、
前記冷却板には、前記冷媒通路と干渉しない位置に前記一対のランドに対向する1つの貫通穴が設けられている、
請求項4に記載のウエハ加熱装置。
【請求項6】
前記基体は、複数のゾーンに分けられており、
前記抵抗発熱体は、前記ゾーンごとに設けられている、
請求項1~5のいずれか1項に記載のウエハ加熱装置。
【請求項7】
片面がウエハ載置面である基体に少なくとも2つの抵抗発熱体が埋設されたウエハ加熱装置であって、
各抵抗発熱体は、一対の端子の一方から他方まで一筆書きの要領で配線されており、
前記2つの抵抗発熱体の合計4つの端子は、同じ位置に集約して設けられ、平面視したときに前記4つの端子の全体形状が円形になるように形成され、一本の接続部材に接続されており
前記接続部材は、前記端子のそれぞれに対応した柱状部材を絶縁材を挟んで束ねた構造を有し、平面視したときに全体形状が円形である、
ウエハ加熱装置。
【請求項8】
前記4つの端子を平面視したときに、各端子は所定の円を互いに直交する2本の直径で4つに割った扇形部として現れる、
請求項7に記載のウエハ加熱装置。
【請求項9】
前記基体の前記ウエハ載置面とは反対側の面には、前記4つの端子のそれぞれに対応した形状の4つのランドが設けられている、
請求項7又は8に記載のウエハ加熱装置。
【請求項10】
前記基体の前記ウエハ載置面とは反対側の面に冷媒通路を内蔵する冷却板が接合され、
前記冷却板には、前記冷媒通路と干渉しない位置に前記4つのランドに対向する1つの貫通穴が設けられている、
請求項9に記載のウエハ加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハ加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置においては、ウエハを加熱するためのウエハ加熱装置が採用されている。こうしたウエハ加熱装置としては、表面がウエハ載置面である基体に抵抗発熱体が埋設されたものが知られている。抵抗発熱体は、一対の端子の一方から他方まで一筆書きの要領で配線されている。例えば、特許文献1には、図14に示すように、セラミック基体を中央ゾーンと外周ゾーンとに分け、抵抗発熱体を中央ゾーンと外周ゾーンのそれぞれに設けたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-152137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、こうしたウエハ加熱装置では、抵抗発熱体を平面視したとき、図15に示すように、抵抗発熱体310の一対の端子311,312は間隔を空けて配置された2つの円として現れる。そのため、この2つの円形の端子311,312を迂回するように抵抗発熱体310を不規則にレイアウトする必要がある。しかしながら、この場合、不規則にレイアウトする面積が大きくなり、しかも2つの円形の端子311,312の間には抵抗発熱体310が存在しないことから、ウエハの均熱性を高めるのが難しかった。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、従来に比べてウエハの均熱性を高めることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1のウエハ加熱装置は、
片面がウエハ載置面である基体に抵抗発熱体が埋設されたウエハ加熱装置であって、
前記抵抗発熱体は、一対の端子の一方から他方まで一筆書きの要領で配線されており、
前記一対の端子は、平面視したときに前記一対の端子の全体形状が円形になるように形成されている、
ものである。
【0007】
このウエハ加熱装置は、抵抗発熱体の一対の端子は、平面視したときに一対の端子の全体形状が円形になるように形成されている。そのため、1つの円を迂回するように抵抗発熱体をパターン設計すればよく、抵抗発熱体を不規則にレイアウトする面積が小さくなる。また、一対の端子同士の間は抵抗発熱体が存在しない領域になるが、その領域を狭くすることができるため、抵抗発熱体が存在しない領域がウエハの均熱性に与える影響を小さくなる。したがって、従来に比べてウエハの均熱性を高めることができる。
【0008】
なお、「基体」の材質としては、セラミックや樹脂などが挙げられる。
【0009】
本発明の第1のウエハ加熱装置において、前記一対の端子を平面視したときに、前記一対の端子の一方は、所定の円を半分に割った一方の半円部として現れ、前記一対の端子の他方は、前記所定の円を半分に割った他方の半円部として現れるようにしてもよい。あるいは、前記一対の端子を平面視したときに、前記一対の端子の一方は、所定の円を中央の円部とその円部の外側の円環部とに分けたうちの前記円部として現れ、前記一対の端子の他方は、前記円環部に沿ったC字部として現れるようにしてもよい。このようにすれば、平面視したときに一対の端子の全体形状を簡単に円形にすることができる。
【0010】
本発明の第1のウエハ加熱装置において、前記基体の前記ウエハ載置面とは反対側の面には、前記一対の端子のそれぞれに対応した形状の一対のランドが設けられていてもよい。その場合、前記基体の前記ウエハ載置面とは反対側の面に冷媒通路を内蔵する冷却板が接合され、前記冷却板には、前記冷媒通路と干渉しない位置に前記一対のランドに対向する1つの貫通穴が設けられていてもよい。貫通穴はウエハに温度特異点を生じさせる原因になり得るが、ここでは、抵抗発熱体の一対の端子に対して1つの貫通穴を冷却板に設ければよいため、一対の端子のそれぞれに貫通穴を設ける場合に比べて、温度特異点が少ない分、ウエハの均熱性を高めやすい。
【0011】
本発明の第1のウエハ加熱装置において、前記基体は、複数のゾーンに分けられており、前記抵抗発熱体は、前記ゾーンごとに設けられていてもよい。こうすれば、ゾーンごとに温度調整を行うことができる。
【0012】
本発明の第2のウエハ加熱装置は、
片面がウエハ載置面である基体に少なくとも2つの抵抗発熱体が埋設されたウエハ加熱装置であって、
各抵抗発熱体は、一対の端子の一方から他方まで一筆書きの要領で配線されており、
前記2つの抵抗発熱体の合計4つの端子は、同じ位置に集約して設けられ、平面視したときに前記4つの端子の全体形状が円形になるように形成されている、
ものである。
【0013】
このウエハ加熱装置は、2つの抵抗発熱体の合計4つの端子は、同じ位置に集約して設けられ、平面視したときに前記4つの端子の全体形状が円形になるように形成されている。そのため、1つの円を迂回するように抵抗発熱体をパターン設計すればよく、抵抗発熱体を不規則にレイアウトする面積が小さくなる。また、4つの端子同士の間は抵抗発熱体が存在しない領域になるが、その領域を狭くすることができるため、抵抗発熱体が存在しない領域がウエハの均熱性に与える影響を小さくなる。したがって、従来に比べてウエハの均熱性を高めることができる。
【0014】
本発明の第2のウエハ加熱装置において、前記4つの端子を平面視したときに、各端子は所定の円を互いに直交する2本の直径で4つに割った扇形部として現れるようにしてもよい。このようにすれば、平面視したときに4つの端子の全体形状を簡単に円形にすることができる。
【0015】
本発明の第2のウエハ加熱装置において、前記基体の前記ウエハ載置面とは反対側の面には、前記4つの端子のそれぞれに対応した形状の4つのランドが設けられていてもよい。その場合、前記基体の前記ウエハ載置面とは反対側の面に冷媒通路を内蔵する冷却板が接合され、前記冷却板には、前記冷媒通路と干渉しない位置に前記4つのランドに対向する1つの貫通穴が設けられていてもよい。貫通穴はウエハに温度特異点を生じさせる原因になり得るが、ここでは、抵抗発熱体の4つの端子に対して1つの貫通穴を冷却板に設ければよいため、4つの端子のそれぞれに貫通穴を設ける場合に比べて、温度特異点が少ない分、ウエハの均熱性を高めやすい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】セラミックヒータ10の斜視図。
図2】セラミックヒータ10の平面図(一対の端子21,22の付近の水平断面図付き)。
図3図1のA-A部分断面図。
図4】接続部材40の斜視図
図5】セラミックヒータ10の貫通穴63の付近の底面図。
図6】セラミックヒータ110の平面図(一対の端子121,122の付近の水平断面図付き)。
図7】セラミックヒータ110の部分断面図。
図8】接続部材140の斜視図
図9】セラミックヒータ110の貫通穴163の付近の底面図。
図10】セラミックヒータ210の平面図(端子221,222,251,252の付近の水平断面図付き)。
図11】セラミックヒータ210の部分断面図。
図12】接続部材240の斜視図
図13】セラミックヒータ210の貫通穴263の付近の底面図。
図14】従来のウエハ加熱装置の平面図。
図15】2つの円形の端子311,312の付近の水平断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本実施形態のセラミックヒータ10の斜視図、図2はセラミックヒータ10の平面図(一対の端子21,22の付近の水平断面図付き)、図3図1のA-A部分断面図、図4は接続部材40の斜視図、図5はセラミックヒータ10の貫通穴63の付近の底面図である。
【0018】
セラミックヒータ10は、セラミック基体12と、中央ゾーン抵抗発熱体20(図2参照)と、外周ゾーン抵抗発熱体50(図2参照)と、冷却板60とを備えている。
【0019】
セラミック基体12は、窒化アルミニウムや炭化珪素、窒化珪素、酸化アルミニウムなどに代表されるセラミック材料からなる円板状のプレートである。このセラミック基体12の厚みは、例えば0.5mm~30mmである。また、セラミック基体12の表面はウエハWを載置するウエハ載置面14となっている。ウエハ載置面14には、エンボス加工により複数の凹凸が形成されていてもよいし、複数の溝が形成されていてもよい。セラミック基体12には、中央ゾーンと外周ゾーンとがある。中央ゾーンは、セラミック基体12と同心の円である仮想境界線16(図2参照)の内側の円形領域である。外周ゾーンは、仮想境界線16の外側の環状領域である。
【0020】
中央ゾーン抵抗発熱体20は、セラミック基体12の中央ゾーンに埋設されている。図2に示すように、中央ゾーン抵抗発熱体20は、一対の端子21,22の一方の端子21から他方の端子22まで中央ゾーンの全域にわたって一筆書きの要領で配線されたコイルである。中央ゾーン抵抗発熱体20の配線パターンとしては、特に限定するものではないが、例えば図14に示した中央ゾーンの抵抗発熱体の配線パターンが挙げられる。コイルの材質は、例えば、Cu,Al,SUS,Fe,W,Tiなどが挙げられる。一対の端子21,22は、平面視したときに一対の端子21,22の全体形状が所定の円X(図2で2点鎖線の円)になるように形成されている。ここでは、一対の端子21,22を平面視したときに、端子21は、円Xを半分に割った一方の半円部として現れ、端子22は、円Xを半分に割った他方の半円部として現れるように形成されている。セラミック基体12の裏面(ウエハ載置面14とは反対側の面)には、図3に示すように、一対のランド31,32が設けられている。一対のランド31,32は、図5に示すように、一対の端子21,22のそれぞれに対応した半円板形状に形成されている。図3に示すように、端子21とランド31とは、セラミック基体12に埋設された導電部材23を介して接続されている。端子22とランド32も、同様の導電部材24を介して接続されている。なお、ランド31とランド32との隙間には、絶縁材を充填してもよい。
【0021】
ランド31,32は、円柱状の接続部材40を介して、中央ゾーン抵抗発熱体20用の図示しない電源に接続されている。接続部材40は、図4に示すように、半円を底面に持つ柱状の第1部材41と、同じく半円を底面に持つ柱状の第2部材42とを、長方形部分が互いに向かい合うようにして絶縁材43を挟んで全体形状が円柱となるように形成されている。第1部材41と絶縁材43、第2部材42と絶縁材43は、エポキシ樹脂などの耐熱接着剤で接着されている。第1及び第2部材41,42は例えば銅製としてもよく、絶縁材43は例えばセラミック製としてもよい。接続部材40のうち少なくともランド31,32と接合する面は、第1及び第2部材41,42及び絶縁材43が同一面になるように研削されている。第1部材41は図示しない電源の一方の極に接続され、第2部材42は電源の他方の極に接続される。
【0022】
外周ゾーン抵抗発熱体50は、セラミック基体12の外周ゾーンに埋設されている。外周ゾーン抵抗発熱体50は、図示しない一対の端子の一方から他方まで外周ゾーンの全域にわたって一筆書きの要領で配線されたコイルである。外周ゾーン抵抗発熱体50の配線パターンとしては、特に限定するものではないが、例えば図14に示した外周ゾーンの抵抗発熱体の配線パターンが挙げられる。外周ゾーン抵抗発熱体50の一対の端子も、中央ゾーン抵抗発熱体20の一対の端子21,22と同様の形状で同様に配置されており、一対のランド31,32と同様のランド及び接続部材40と同様の接続部材を介して外周ゾーン抵抗発熱体50用の電源に接続されている。
【0023】
冷却板60は、図3に示すように、セラミック基体12の裏面にボンディングシート18を介して接合されている。この冷却板60は、金属製(例えばAl製とかAl合金製)の円板であり、冷媒(例えば水)が通過可能な冷媒通路62を内蔵している。この冷媒通路62は、セラミック基体12の全面にわたって冷媒が通過するように形成されている。冷媒通路62には、冷媒の供給口と排出口(いずれも図示せず)が設けられている。冷却板60のうち冷媒通路62と干渉しない位置に、中央ゾーン抵抗発熱体20の一対のランド31,32に対向する1つの貫通穴63が設けられている。貫通穴63の直径は、円Xの直径や接続部材40の直径よりもわずかに大きい。貫通穴63の内壁は、絶縁膜で被覆されていることが好ましい。接続部材40はこの貫通穴63に挿入されている。また、図示しないが、冷却板60のうち冷媒通路62と干渉しない位置に、外周ゾーン抵抗発熱体50の一対のランドに対向する1つの貫通穴が貫通穴63と同様に設けられている。
【0024】
こうしたセラミックヒータ10は、例えば特許第3897563号公報に記載された製造方法に準じて製造することができる。そのため、ここではセラミックヒータ10の製造方法については説明を省略する。
【0025】
次に、セラミックヒータ10の使用例について説明する。ここでは、セラミックヒータ10を用いてプラズマCVDによりウエハに半導体薄膜を形成する工程について説明する。セラミックヒータ10は、図示しない半導体製造装置の密閉されたチャンバ内部に配置される。チャンバには、シランガスなどの原料ガスを供給するガス供給ポートやチャンバ内の気体を排気する真空ポートなどが装備されている。
【0026】
プラズマCVDでは、まず、目標温度に設定し、図示しないコントローラによるセラミック基体12の温度制御を行う。コントローラは、図示しない熱電対からセラミック基体12の中央ゾーン及び外周ゾーンの温度を入力し、各温度が各目標温度になるように中央ゾーン抵抗発熱体20及び外周ゾーン抵抗発熱体50への供給電力を調節することにより、セラミック基体12の温度制御を行う。また、チャンバ内を真空にすると共にチャンバ内に原料ガスを供給する。そして、セラミック基体12の中央ゾーン及び外周ゾーンの温度が目標温度と略一致した後、セラミック基体12の温度制御を継続したまま、セラミック基体12のウエハ載置面14にウエハを載置する。ウエハを載置した直後は、ウエハ自身の温度が目標温度よりも低いため、測定温度は数℃低下するが、コントローラによる温度制御により再び目標温度まで上昇する。この状態でプラズマを発生させてウエハ上に原料ガスから半導体薄膜を形成する。
【0027】
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態のセラミックヒータ10が本発明の第1のウエハ加熱装置に相当し、セラミック基体12が基体に相当し、中央ゾーン抵抗発熱体20及び外周ゾーン抵抗発熱体50が抵抗発熱体に相当する。
【0028】
以上説明したセラミックヒータ10では、中央ゾーン抵抗発熱体20の一対の端子21,22は、平面視したときに一対の端子21,22の全体形状が円Xになるように形成されている。そのため、図2に示すように、1つの円Xを迂回するように中央ゾーン抵抗発熱体20をパターン設計すればよく、抵抗発熱体を不規則にレイアウトする面積は2つの円を迂回する図15に比べて小さくなる。また、一対の端子21,22同士の間は抵抗発熱体が存在しない領域になるが、その領域を図15に比べて狭くすることができる。そのため、抵抗発熱体が存在しない領域がウエハWの均熱性に与える影響を小さくなる。外周ゾーン抵抗発熱体50の図示しない一対の端子も、中央ゾーン抵抗発熱体20の一対の端子21,22と同様の構成、同様の配置であるため、これと同様の効果が得られる。したがって、従来に比べてウエハWの均熱性を高めることができる。
【0029】
また、セラミックヒータ10において、セラミック基体12の裏面には、一対の端子21,22のそれぞれに対応した形状の一対のランド31,32が設けられている。そして、冷却板60には、冷媒通路62と干渉しない位置に一対のランド31,32に対向する1つの貫通穴63が設けられている。貫通穴63はウエハWに温度特異点を生じさせる原因になり得るが、ここでは、中央ゾーン抵抗発熱体20の一対の端子21,22に対して1つの貫通穴63が冷却板60に設けられている。この点は、外周ゾーン抵抗発熱体50についても同様であり、外周ゾーン抵抗発熱体50の一対の端子に対して1つの貫通穴が冷却板60に設けられている。そのため、端子のそれぞれに応じて貫通穴を設ける場合に比べて、ウエハWの均熱性を高めやすい。
【0030】
更に、セラミック基体12は、複数(2つ)のゾーンに分けられており、中央ゾーン抵抗発熱体20は中央ゾーンに設けられ、外周ゾーン抵抗発熱体50は外周ゾーンに設けられている。そのため、各ゾーンごとに温度調整を行うことができる。
【0031】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0032】
例えば、上述した実施形態において、中央ゾーン抵抗発熱体20の一対の端子21,22を平面視したときに、端子21,22はそれぞれ半円部として現れるように形成したが、端子21,22が全体として円形として現れるのであれば端子21,22をどのような形状にしてもよい。例えば、図6に示すセラミックヒータ110のように、一方の端子121を、所定の円Xを中央の円部とその円部の外側の円環(リング)部とに分けたうちの円部として現れるようにし、他方の端子122は、円環部に沿ったC字部として現れるようにしてもよい。その場合、図7及び図9に示すように、セラミック基体12の裏面に設けられたランド131は一方の端子121に対応した円形に形成され、ランド132は他方の端子122に対応した円環状に形成される。なお、ランド132は端子122と同じC字状にしてもよい。また、接続部材140は、図8に示すように、底面がランド131と同じ円形の円柱部材141と底面がランド132と同じ円環状の中空筒部材142との間に絶縁筒143を挿入して接着することにより、全体形状が円柱となるように形成されている。冷却板60には、一対の端子121,122に対して1つの貫通穴163が設けられている。この貫通穴163には接続部材140が挿入されている。外周ゾーン抵抗発熱体50の一対の端子についても、一対の端子121,122と同様の構成、同様の配置を採用する。なお、図6図9では、上述した実施形態と同じ構成要素は同じ符号を付した。このようにしても、上述した実施形態と同様の効果が得られる。
【0033】
あるいは、図10に示すセラミックヒータ210のように、中央ゾーン抵抗発熱体20の一対の端子221,222と外周ゾーン抵抗発熱体50の一対の端子251,252とを同じ位置に集約して設け、平面視したときにこれら4つの端子221,222,251,252の全体形状が所定の円Xになるように形成してもよい。図10では、4つの端子221,222,251,252は、平面視したときに、所定の円Xを互いに直交する2本の直径で4つに割った扇形部として現れる。その場合、図11及び図13に示すように、セラミック基体12の裏面には、4つのランド231~234が設けられている。各ランド231~234は、各端子221,222,251,252に対応した扇形に形成され、各端子221,222,251,252とセラミック基体12に埋設された各導電部材により接続されている。また、接続部材240は、図12に示すように、底面がランド231~234と同じ扇形で金属製の柱状部材241~244を、それらの間に絶縁材245を挟んで接着することにより、全体形状が円柱となるように形成されている。冷却板60には、4つのランド231~234に対して1つの貫通穴263が設けられている。この貫通穴263には接続部材240が挿入されている。中央ゾーン抵抗発熱体20のランド231~232は、接続部材240の柱状部材241,242を介して、中央ゾーン抵抗発熱体20用の図示しない電源に接続されている。外周ゾーン抵抗発熱体50のランド233~234は、接続部材240の柱状部材243,244を介して、外周ゾーン抵抗発熱体50用の図示しない電源に接続されている。なお、図10図13では、上述した実施形態と同じ構成要素は同じ符号を付した。セラミックヒータ210は、本発明の第2のウエハ加熱装置の一例であるが、この場合も上述した実施形態と同様の効果が得られる。特に、ここでは、4つの端子の全体形状が円形になるようにしたため、抵抗発熱体を不規則にレイアウトする面積はより小さくなり、冷却板60に設ける貫通穴263の数もより少なくなる。
【0034】
上述した実施形態では、セラミック基体12に各抵抗発熱体20,50が埋設されたセラミックヒータ10を例示したが、セラミック基体12の代わりに円板状の耐熱性樹脂シート(例えばポリイミド樹脂製や液晶ポリマー製)を用いてもよい。その場合、ランド31,32に接続部材40を接合するには、まずランド31,32にクリームはんだを印刷し、次にランド31に第1部材41が対向しランド32に第2部材42が対向するように接続部材40をセットし、その後リフローにてはんだ付けを行えばよい。はんだは、樹脂シートにはじかれて選択的にランド31,32に集まるため、ランド31,32の間にブリッジが形成されにくい。この点は、セラミックヒータ110,210でも同様である。
【0035】
上述した実施形態では、セラミック基体12に中央ゾーン抵抗発熱体20と外周ゾーン抵抗発熱体50とを内蔵したが、セラミック基体12に抵抗発熱体を一つだけ内蔵してもよいし、セラミック基体12を3つ以上のゾーンに分けてゾーンごとに抵抗発熱体を内蔵してもよい。3つ以上のゾーンに分ける場合、円形の中央ゾーンと、その中央ゾーンの外側に同心円状に設けられた径の異なる複数の円環ゾーンに分けてもよいし、円を複数の扇形ゾーンに分けてもよい。いずれの抵抗発熱体も、一対の端子が上述した実施形態の一対の端子21,22(あるいは一対の端子121,122)と同様の構成、同様の配置になるように形成すればよい。
【0036】
上述した実施形態では、中央ゾーン抵抗発熱体20や外周ゾーン抵抗発熱体50をコイルとしたが、これに限定されるものではなく、例えば、メッシュ(網状)であってもよいし、平板であってもよい。
【0037】
上述した実施形態において、セラミック基体12に更に静電チャック用の静電電極やプラズマ発生用の高周波電極を埋設してもよい。
【0038】
本出願は、2017年3月2日に出願された米国仮出願第62/465,982号を優先権主張の基礎としており、引用によりその内容の全てが本明細書に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、半導体製造装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0040】
10 セラミックヒータ、12 セラミック基体、14 ウエハ載置面、16 仮想境界線、18 ボンディングシート、20 中央ゾーン抵抗発熱体、21,22 端子、23,24 導電部材、31,32 ランド、40 接続部材、41 第1部材、42 第2部材、43 絶縁材、50 外周ゾーン抵抗発熱体、60 冷却板、62 冷媒通路、63 貫通穴、110 セラミックヒータ、121,122 端子、131,132 ランド、140 接続部材、141 円柱部材、142 中空筒部材、143 絶縁筒、163 貫通穴、210 セラミックヒータ、221,222,251,252 端子、231~234 ランド、240 接続部材、241~244 柱状部材、245 絶縁材、263 貫通穴、310 抵抗発熱体、311,312 端子。
図1
図2
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図10
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