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特許7016353オキサレート関連障害を処置または防止するための組成物および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-27
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】オキサレート関連障害を処置または防止するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/741 20150101AFI20220128BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20220128BHJP
   A61K 9/64 20060101ALI20220128BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20220128BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20220128BHJP
   A61P 13/02 20060101ALI20220128BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20220128BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20220128BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20220128BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220128BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20220128BHJP
   A61P 13/00 20060101ALI20220128BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20220128BHJP
   A61P 13/04 20060101ALI20220128BHJP
【FI】
A61K35/741
A61K47/26
A61K9/64
A61K47/42
A61K47/36
A61P13/02
A61P7/00
A61P13/12
A61P1/00
A61P29/00
A61P9/00
A61P13/00
A61P1/04
A61P13/04
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2019517169
(86)(22)【出願日】2017-06-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-07-25
(86)【国際出願番号】 EP2017064422
(87)【国際公開番号】W WO2017216165
(87)【国際公開日】2017-12-21
【審査請求日】2020-06-11
(31)【優先権主張番号】1650828-5
(32)【優先日】2016-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】518441760
【氏名又は名称】オクセラ・インテレクチュアル・プロパティ・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100188374
【弁理士】
【氏名又は名称】一宮 維幸
(72)【発明者】
【氏名】リンドネル,エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】オーケルマン,マリア
(72)【発明者】
【氏名】スジェーグレン,アンナ
(72)【発明者】
【氏名】マカリオン,オリア
【審査官】六笠 紀子
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-531275(JP,A)
【文献】特開平08-336355(JP,A)
【文献】特開2009-196920(JP,A)
【文献】Acta Urologica Japonica,Vol. 52, No. 9,2006年,pp. 687-691
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00-35/768
C12N 1/00-7/08
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象への経口投与のための腸溶性カプセル剤であって、
(i)乾燥重量で10%から25%のOxalobacter formigenes、
(ii)乾燥重量で50%から65%のスクロース、
(iii)乾燥重量で10%から30%の1種または複数の冷凍保存剤および/または賦形剤
を含む医薬組成物を含み、
前記腸溶性カプセル剤は、前記対象の小腸および/または回腸へのOxalobacter formigenesの送達用であり、
Oxalobacter formigenesが前記腸溶性カプセル剤中に存在する場合、Oxalobacter formigenesのin vitroでのオキサレート分解活性が、100mmol/カプセル剤/19時間以上でり、
10 から10 10 CFUの量のOxalobacter formigenesを含む
前記腸溶性カプセル剤。
【請求項2】
乾燥重量で15%から25%、例えば15%から20%のOxalobacter formigenesを含む、請求項1に記載の腸溶性カプセル剤。
【請求項3】
乾燥重量で約17%から約22%のOxalobacter formigenesを含む、請求項2に記載の腸溶性カプセル剤。
【請求項4】
(iii)における賦形剤および/または冷凍保存剤が、マルトデキストリン、フラクトオリゴ糖およびアルギネートからなる群から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の腸溶性カプセル剤。
【請求項5】
乾燥重量で15%から21%のマルトデキストリンを含む、請求項4に記載の腸溶性カプセル剤。
【請求項6】
乾燥重量で約16%から約19%のマルトデキストリンを含む、請求項5に記載の腸溶性カプセル剤。
【請求項7】
i)乾燥重量で1%から5%のフラクトオリゴ糖、
ii)乾燥重量で0.5%から2%のアルギネート
を含む、請求項から6のいずれか一項に記載の腸溶性カプセル剤。
【請求項8】
前記組成物が、約1重量%から約5重量%の水、例えば約3%の水をさらに含む、請求項7に記載の腸溶性カプセル剤。
【請求項9】
乾燥重量で約0.5%から約1.5%のアルギネートを含む、請求項から8のいずれか一項に記載の腸溶性カプセル剤。
【請求項10】
前記組成物が、
乾燥重量で17%から22%のOxalobacter formigenes、
乾燥重量で52%から62%のスクロース、
乾燥重量で17%から25%の1種または複数の冷凍保存剤および/または賦形剤
を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の腸溶性カプセル剤。
【請求項11】
前記組成物が、
乾燥重量で約19%のOxalobacter formigenes、
乾燥重量で約57%のスクロース、
乾燥重量で約21%の1種または複数の冷凍保存剤および/または賦形剤、ならびに残りの水
を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の腸溶性カプセル剤。
【請求項12】
前記組成物が、1種または複数の冷凍保存剤および/または賦形剤として、乾燥重量で、約1%のアルギネート、約17%のマルトデキストリン、および約3%のフラクトオリゴ糖を含む、請求項11に記載の腸溶性カプセル剤。
【請求項13】
前記組成物が、
乾燥重量で19%±1~3%のOxalobacter formigenes、
乾燥重量で57%±1~3%のスクロース、
乾燥重量で21%±1~3%の1種または複数の冷凍保存剤および/または賦形剤
を含み、
前記組成物が、1種または複数の冷凍保存剤および/または賦形剤として、乾燥重量で、1%±1%のアルギネート、17%±1~3%のマルトデキストリン、および3%±1~3%のフラクトオリゴ糖を含んでもよい、
請求項1から12のいずれか一項に記載の腸溶性カプセル剤。
【請求項14】
前記腸溶性カプセル剤が、約1.2±0.1のpHを有し、約3.2mg/mlのペプシンを含む疑似胃酸(SGF)中、温度約37℃での1時間以内のインキュベーションにおいて本質的に崩壊を示さないが、前記カプセル剤の崩壊開始が、約6.8±0.1のpHを有し、約10mg/mlのパンクレアチンを含む疑似腸液(SIF)中、約37℃で約1時間以内に検出される、請求項1から13のいずれか一項に記載の腸溶性カプセル剤。
【請求項15】
医薬としての使用のための、請求項1から14のいずれか一項に記載の腸溶性カプセル剤。
【請求項16】
前記使用が、高シュウ酸尿症、原発性高シュウ酸尿症、続発性高シュウ酸尿症、例えば短腸症候群(SBS)、空腸/回腸切除またはRoux-en-Y法による肥満外科手術、Zellweger病、空腸/回腸切除した癌およびAspergillus nigerによる腎感染症、ならびに透析を受けている末期腎臓疾患(ESRD)患者における、高シュウ酸血症、血漿中におけるオキサレートの蓄積、慢性腎臓疾患(CKD)およびESRDに関連するシュウ酸症からなる群から選択されるオキサレート関連障害の処置および/または防止用である、請求項15に記載の腸溶性カプセル剤。
【請求項17】
前記使用が、シュウ酸カルシウム沈着関連障害、例えば高シュウ酸血症を伴うシュウ酸カルシウム沈着関連障害の処置および/または防止用である、請求項15に記載の腸溶性カプセル剤。
【請求項18】
前記使用が、腸性高シュウ酸尿症、腸または尿細管上皮における炎症、心臓伝導障害、外陰部痛、特発性シュウ酸カルシウム腎石症(尿路結石症)、炎症性腸疾患(IBS)、小腸細菌過剰繁殖(SIBS)、胃腸炎、胃炎、腸炎、小腸結腸炎、潰瘍性結腸炎、クローン病、ならびに胃腸リパーゼ阻害剤で処置された患者におけるオキサレート関連障害からなる群から選択されるオキサレート関連炎症の処置および/または防止用である、請求項15に記載の腸溶性カプセル剤。
【請求項19】
前記組成物が、シュウ酸カルシウム結晶を溶解すること、および/または尿中オキサレート排出を増加させること、ならびに対象におけるCKDの進行を遅くするかまたは止めることが可能である、請求項16に記載の腸溶性カプセル剤。
【請求項20】
前記医薬組成物が、連続期間、例えば少なくとも数カ月または数年間続く期間にわたり、それを必要とする対象に少なくとも1日2回、約10から約1010CFUの量で投与される、請求項15から19のいずれか一項に記載の腸溶性カプセル剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、オキサレート(oxalate)関連障害の分野、ならびにオキサレート関連障害を処置または防止するための医薬組成物および方法に関する。より具体的には、本開示は、シュウ酸カルシウム沈着関連障害(複数可)、例えば、高シュウ酸血症を伴うシュウ酸カルシウム沈着関連障害(複数可)、および例えば慢性腎臓疾患(CKD)の処置または防止に関連する。これは、オキサレート関連炎症の防止または処置にも関連する。
【背景技術】
【0002】
オキサレートは、ヒトには分解できない代謝の最終産物である。人体は、オキサレートに対して、2つの主要排出器官の経路、腎臓および腸を有する。いずれの経路も、尿細管上皮および腸上皮に豊富なトランスポータータンパク質によりコントロールされる。尿および腸管腔を通したオキサレートの排出を持続させることが最も重要である。
【0003】
原発性および続発性高シュウ酸尿症は、例えば、尿中のオキサレートの異常排出を特徴とする、2つの別個の臨床的発現である。原発性高シュウ酸尿症は、酵素活性に欠陥を伴う、継承される遺伝的障害である。一方、続発性高シュウ酸尿症は、食事によるオキサレートもしくはオキサレート前駆体の摂取の増加、または、オキサレートもしくは脂肪の腸内吸収もしくは排出の変化、および腸内微生物叢の変化、または腸もしくは尿細管のオキサレートトランスポータータンパク質の発現の遺伝的多様性を含む、多くの要因によって引き起こされ得る。高シュウ酸尿症は、炎症性腸疾患(IBD)の公知の合併症であり、高シュウ酸血症を伴う高シュウ酸尿症は、小腸の一部の切除、およびRoux-en-Y胃バイパス手術の一般的な結果である。これらの疾患の症状は、特有の腎臓結石、再発性腎臓結石および腎石灰化症から、慢性腎臓疾患(CKD)および末期腎臓疾患(ESRD)にまで及ぶ。
【0004】
続発性高シュウ酸尿症
続発性高シュウ酸尿症によるオキサレート関連CKDは、世界を通じての健康問題である。これは、例えば、腎臓結石を引き起こす尿中オキサレート濃度の漸進的な上昇を特徴とする。
【0005】
続発性高シュウ酸尿症は、高シュウ酸血症が発生している場合を除き、通常、ESRDを引き起こさない。これは、小腸が切除されている患者、例えばSBS患者および肥満外科手術患者においておおむね一般的である。
【0006】
肝臓は、体における主要代謝器官であり、オキサレート産生の主な部位である。しかし、オキサレートはそれ以上代謝されず、したがって排出されなければならない。この排出は、2つの経路、腎臓の尿細管を通した排出、および腸を通した排出により発生し、いずれの排出経路も、SLC26ファミリーからの活性トランスポータータンパク質により媒介される。血漿中、ひいては尿細管流体中のオキサレートの濃度は、例えば腎排出中に、重大であり、そこでは、オキサレート濃度の増加は、遠位尿細管および連絡管(connecting duct)におけるシュウ酸カルシウム結晶の形成、それに続くシュウ酸カルシウム沈着の形成または腎臓の石灰化の危険性を生じさせる。腸管排出経路は、血漿オキサレート濃度の上昇および軟部組織の石灰化に関与する病理学的状態の防止において特に重要である。
【0007】
続発性高シュウ酸尿症は、食事によるオキサレートもしくオキサレート前駆体の摂取の増加、または、オキサレートもしくは脂肪の腸内吸収もしくは排出の変化、および腸内微生物叢の変化、または腸のオキサレートトランスポーターの遺伝的多様性を含む、多くの要因によって引き起こされ得る。高シュウ酸尿症は、炎症性腸疾患の公知の合併症である。疾患スペクトラムは、再発性腎臓結石、腎石灰化症および尿路感染症から、慢性腎臓疾患および末期腎臓疾患にわたる(Bhasin、2015年)。これは、典型的には、炎症による腸管排出の障害を伴う疾患、例えば炎症性腸疾患、外陰部痛、小腸細菌過剰繁殖(SIBS)、胃腸炎、胃炎、腸炎、小腸結腸炎、潰瘍性結腸炎、クローン病および胃腸のリパーゼ阻害剤で処置した患者におけるオキサレート関連障害に起きる。
【0008】
シュウ酸カルシウム負荷が腎臓の排出能力を超えると、シュウ酸カルシウムは、すべての体液および軟部組織において沈着を開始する。これは、小腸が切除されている患者、例えば短腸症候群(SBS)患者、一部のIBD患者、腸癌患者および肥満外科手術患者においておおむね一般的である。
【0009】
透析を受けているESRD患者も、腎不全の結果として、血漿のオキサレートが増加する傾向があり、腎臓移植では生着率に影響を与え得るシュウ酸症に悩まされることもある。
【0010】
原発性高シュウ酸尿症
原発性高シュウ酸尿症(PH)は、激しく衰弱させて生命を脅かす小児科の遺伝性疾患であり、医学的要求がまったく満たされていない。PHは、とりわけ幼児において、著しく罹患率および死亡率が高い、稀な常染色体劣性グリオキシレート代謝先天性異常(autosomal recessive inborn error of glyoxylate metabolism)である。PHは、肝臓のオキサレート産生が増加した結果として発生し、広範囲にわたるシュウ酸カルシウムの結晶化を特徴とし、高シュウ酸血症へと進行し、続いて腎機能低下を進行させる。腎臓のオキサレート排出の結果として、PH患者は、尿に高レベルのオキサレートを示す(>0.5mmol/24時間/1.73m対<健常な患者で0.5mmol/24時間/1.73m)[Hoppe、2012年]。PH患者は、幅広いオキサレートの産生を示し、若干から高度までに及ぶ範囲の高シュウ酸尿症の亢進(>0.5~4.5mmol/日、1.73m)により反映される。オキサレート過剰産生の程度は、特定の遺伝子型に部分的に関連付けられており、そのうち140種超が公知である。ESRDへの進行は、診断時の年齢(高オキサレートに対する曝露時間)、診断時の尿中オキサレート排出および腎機能のレベルと相関することが示されている[Zhaoら、2016年]。診断時に高い尿中オキサレート排出を示し、推定糸球体濾過量(eGFR)が少ない患者は、より迅速にESRDに進行する傾向がある。PH患者において、血漿オキサレートは、初期段階での1~3μモル/Lから初期ESRDでの45~50μモル/Lに徐々に増加する。血漿オキサレートがESRDおよび透析処置中に150~300μモル/Lの高さに上昇することは一般的であり、オキサレートの全身蓄積および全身シュウ酸症を引き起こす。
【0011】
PHの最初の臨床症状は、側腹痛および腎臓結石により現れる腎臓の尿細管障害であることが多い。症状は、主に、シュウ酸カルシウム結晶により媒介される尿細管上皮細胞の炎症によって引き起こされ、シュウ酸カルシウム結晶沈着物が成長すると、腎臓の石灰化を徐々に引き起こす。進行性腎臓損傷は、オキサレートに由来する尿細管毒性、腎石灰化症および結石による腎臓閉塞の組合せ、または結石除去手技によって引き起こされる[CochatおよびRumsby、2013年;Tangら、2015年]。現在、PHの処置に関して承認された医薬治療は存在しない。結局、PHタイプ1に対してのみの唯一の治癒的治療は、ESRDでの腎肝同時移植である(Cochatら、2012年)。腎臓の生存期間の中央値は、全体で、24~33年である[Lieskeら、2005年、Harambatら、2010年]。
【0012】
3つの公知のPHのタイプ(タイプ1、2および3)が存在し、タイプ1が最も重度かつ最も広範である(公知の症例の70~80%)[Hoppeら、2009年]。PHの3つのタイプは、肝臓のオキサレート産生に影響を与える様々な酵素の欠損または誤った局在化によって引き起こされる:タイプ1は、肝臓特異的ペルオキシソームアラニン-グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼの欠損により、タイプ2は、グリオキシル酸レダクターゼ-ヒドロキシピルビン酸レダクターゼの欠如により、また、タイプ3は、肝臓特異的ミトコンドリア酵素4-ヒドロキシ-2-オキソグルタル酸アルドラーゼの欠如により引き起こされる[CochatおよびRumsby、2013年、Belostotskyら、2010年]。PHタイプ1の推定発生率は、欧州では1年で新生児120,000人に1症例であり、有病率は、100万人に1から3人である[Cochatら、1995年;KoppおよびLeumann、1995年;van Woerdenら、2003年]。発生率および有病率は、過小診断のため、過小評価されていた可能性がある[LeumannおよびHoppe、2001年、Hoppら、2015年]。
【0013】
腎機能の低下は、進行性高シュウ酸血症および血漿シュウ酸カルシウム過飽和を引き起こす。血漿オキサレート濃度の上昇は、シュウ酸カルシウム沈着物を生じて、体内で増大させる。沈着物は、骨、軟部組織、動脈中膜、末梢神経、皮膚、眼および心臓に位置し得る[Beckら、2013年]。この疾患の初期段階で既に、高シュウ酸血症は心臓における細胞を損傷し、石灰化(硬化)を引き起こし、心筋において炎症を引き起こし、左心室ストレインの漸進的減少につながり、心臓不整脈および心不全につながる(Lagiesら、2013年、Lagiesら、2014年、Lagiesら、2015年)。
【0014】
生物学的分子と結晶形成との間の相互関係は、新興の研究分野である(例えばAggarwalら、2013年を参照されたい)。血漿では、オキサレートは、遊離オキサレート、二価金属結合遊離オキサレート、タンパク質および脂質関連オキサレートとして、ならびに固体二価金属オキサレート結晶として存在し得る。全オキサレートと遊離オキサレートとの間の比は、時間および疾患の進行に伴って増加する。
【0015】
肝腎同時移植の後で、新たな肝臓は、正常のレベルのオキサレートを生成し、遊離オキサレートの初期減少が観察される。しかし、飽和限界下で血漿オキサレート濃度が低下した場合、シュウ酸カルシウムは、タンパク質および脂質に付着し、血管壁および軟部組織において溶解を開始し、これにより、血漿オキサレート濃度の上昇が新たに引き起こされる。尿中および血漿オキサレートは、移植後何カ月から何年にもわたって上昇し得、新しい腎臓の劣化を再び引き起こし得る(LeumannおよびHoppe、2001年)。したがって、透析前および透析中のオキサレート増加の防止、ならびに、小腸および尿を通したオキサレート排出の向上は、PH患者に非常に有益である。腎機能が維持されている患者に対しても、シュウ酸カルシウム沈着物の蓄積を遅延させて、または止めて、腎臓の劣化を防止することは決定的に重要である。
【0016】
高シュウ酸血症を伴う続発性高シュウ酸尿症
Gregoryらは1975年に、それ以外では健常な肥満患者における空腸回腸バイパス(JIB)手術は、腎不全を引き起こすことを示した。主要な腸管排出経路の除去は、血漿オキサレート濃度を高くし、これにより、続いて、腎不全が引き起こされる。この手技は、1979年に廃止された。今日肥満外科手術で主流の手技は、空腸/回腸をより少なく切除するRoux-en-Yである。この手技は、再発性腎臓結石に関連するが、ESRDを引き起こさない。
【0017】
短腸症候群、SBSは、患者が小腸を切除されており、残りの腸が200cm未満である疾患状態と定義される。JIB患者と同様に、SBS患者は、血漿オキサレート濃度の上昇によって引き起こされる腎不全(ESRD)になる危険性が45%である。
【0018】
Zellweger病、またはZellwegerスペクトラム障害(ZDS)は、ペルオキシソーム構築の欠損によって引き起こされる、ペルオキシソーム機能の全般的な欠失を特徴とする。この疾患は、顕現および生存率に関して不均一である。原発性高シュウ酸尿症では欠損する酵素AGT(アラニン:グリオキシレートアミノトランスフェラーゼ)が正常レベルにもかかわらず、重度の高シュウ酸尿症が数名のZSD患者で報告されている(van Woerdenら、2006年)。
【0019】
Aspergillus niger感染症は、稀な真菌感染症である。A.nigerは、オキサレートを産生する生物であり、ESRDを引き起こし得るレベルの血漿オキサレートを生じ得る。
【0020】
Oxalobacter formigenes
Oxalobacter formigenesは、生存および増殖のためのエネルギーを得るための基質として、もっぱらオキサレートに依存する偏性嫌気性細菌である。これは、中性pHで作動する、オキサレートを減少させる最も効率的な酵素系であると現在考えられている。すべてのヒトが、腸管にO.formigenes集団を保有しているわけではない。例えば、空腸回腸バイパス手術を受けたヒトの糞便試料においてオキサレート分解細菌は少ないか、または完全に存在しない。O.formigenesを、それを必要とする対象に投与すると、食事によるオキサレート吸収に対して効果を有することが示されているが、血漿から腸へのオキサレートの排出に対して効果を有し、生来備わった腸のオキサレート排出経路を促進することも示されている。O.formigenesは、おそらくは、血漿から小腸へのオキサレートの流れを増加させるSLC26トランスポータータンパク質との相互反応を介して、オキサレートの積極的な排出を促進することがさらに示されている(Hatchら、2011年;HatchおよびFreel、2013年)。
【0021】
オキサレートに関連した病態を処置するために尿中および血漿オキサレートを減少させる方法に使用するためのオキサレート分解細菌、例えば、O.formigenesからなる組成物は、当技術分野では、例えばUS6,200,562、US6,355,242、WO2007075447およびWO2005123114で、以前に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
しかし、オキサレート関連障害を処置するための、特にシュウ酸カルシウム沈着関連障害、例えば、高シュウ酸血症を伴うシュウ酸カルシウム沈着関連障害(複数可)を処置または防止するための、ならびに、透析を受けているESRD患者を処置するための、改善された組成物の必要性は依然として存在する。オキサレートの排出を向上または増加させて、シュウ酸カルシウム沈着を有する患者において全身のオキサレート負荷および関連した炎症を低減し得る医薬組成物の必要性も存在する。
【課題を解決するための手段】
【0023】
開示の概要
オキサレートに関連した障害、または、より詳細には、シュウ酸カルシウム沈着関連障害、例えば、高シュウ酸血症を伴うシュウ酸カルシウム沈着関連障害の処置および防止に関係する当技術分野における問題は、医薬組成物および薬物製品を、特に前記医薬組成物を含む新たな腸溶性カプセル剤の形態で、本明細書において提供することにより、このたび克服または少なくとも軽減された。オキサレートの持続的排出は、前記障害に罹患した患者において決定的に重要である。
【0024】
驚くべきことに、本明細書で開示されている医薬組成物および薬物製品は、シュウ酸カルシウム結晶を溶解すること、および体液からのオキサレート、例えば尿中オキサレートの排出を増加させ、それにより、特に慢性腎臓疾患を有する患者における、進行性の腎機能低下を遅延させるか、または止めることが提示される。
【0025】
本開示の医薬組成物および薬物製品を包含する方法および使用も提供される。さらに、オキサレート関連炎症を処置または防止する手段が提供される。
本明細書では、腎機能の低下を引き起こすオキサレート排出能力の進行性の低下に通常関連するシュウ酸カルシウム沈着関連障害を処置するための、改善された手段が提供される。本明細書で提示されている薬物製品に含まれる新規な組成物に起因する、全身のシュウ酸カルシウム沈着に対しての提示された溶解効果は、低下した腎機能を有する高シュウ酸血症患者に、特に有益な効果を与え、前記組成物は、体液からのオキサレートの排出を向上させる。オキサレート関連炎症を処置または防止する手段も提供される。
【0026】
したがって、当技術分野における残りの問題の一部を少なくとも軽減するために、以下にさらに記載されているような医薬組成物および腸溶性カプセル剤が、本明細書により提供される。
【0027】
一態様では、
(i)乾燥重量で約10%から約25%のOxalobacter formigenes、
(ii)乾燥重量で約50%から約65%のスクロース、ならびに
(iii)乾燥重量で約10%から約30%の1種または複数の冷凍保存剤および/または賦形剤
を含む医薬組成物が提供される。
【0028】
当然ながら、本明細書に記載されている組成物は、多少の水、例えば約3%の水を含み得る。
別の態様では、それを必要とする対象への経口投与のための、本明細書で定義されている医薬組成物を含む腸溶性カプセル剤であって、前記対象の小腸および/または回腸へのOxalobacter formigenesの標的化送達用である、腸溶性カプセル剤が提供される。
【0029】
本明細書では、対象への経口投与のための腸溶性カプセル剤であって、10から約1010CFUの量のOxalobacter formigenes、ならびに賦形剤および/または冷凍保存剤を含み、前記腸溶性カプセル剤は、前記対象の小腸および/または回腸へのOxalobacter formigenesの送達のために標的化されており、前記カプセル剤は、約1.2±0.1のpHを有し、約3.2mg/mlのペプシンを含む疑似胃酸(SGF)中、温度約37℃での1時間以内のインキュベーションにおいて本質的に崩壊を示さないが、前記カプセルの崩壊開始が、約6.8±0.1のpHを有し、約10mg/mlのパンクレアチンを含む疑似腸液(SIF)中、約37℃での約1時間のインキュベーションの後に検出される、腸溶性カプセル剤が提供される。
【0030】
医薬としての使用のための、本明細書で開示されている医薬組成物、または本明細書で開示されている医薬組成物を含む腸溶性カプセル剤も提供される。
オキサレート関連障害、またはより詳細にはシュウ酸カルシウム沈着関連障害(複数可)、例えば、高シュウ酸血症を伴うシュウ酸カルシウム沈着関連障害(複数可)を処置および/または防止するための、医薬組成物または腸溶性カプセル剤の使用であって、前記組成物が、体液からのオキサレートの排出を増加させる、使用が、本明細書中でさらに提供される。オキサレート関連炎症の処置および/または防止における、医薬組成物または腸溶性カプセル剤の使用も本明細書において提供される。
【0031】
本開示は、一般的な態様では、高シュウ酸尿症、原発性高シュウ酸尿症および続発性高シュウ酸尿症に関連するが、より詳細には、例えば、短腸症候群(SBS)、空腸/回腸切除またはRoux-en-Y法による肥満外科手術、Zellweger病、空腸/回腸切除した癌、Aspergillus nigerによる腎臓または他の感染症における、高シュウ酸血症、血漿中におけるオキサレートの蓄積、慢性腎臓疾患(CKD)および末期腎臓疾患(ESRD)に関連するシュウ酸症;透析を受けているESRD患者における高シュウ酸血症に関連し、さらに、場合によっては、オキサレート関連炎症、例えば腸性高シュウ酸尿症、腸または尿細管上皮における炎症、心臓伝導障害、外陰部痛、特発性シュウ酸カルシウム腎石症(尿路結石症(urothiliasis))、炎症性腸疾患(IBS)、小腸細菌過剰繁殖(SIBS)、胃腸炎、胃炎、腸炎、小腸結腸炎、潰瘍性結腸炎、クローン病、および胃腸のリパーゼ阻害剤で処置した患者におけるオキサレート関連障害に関連する。
【0032】
本開示による組成物は、疾患の進行、ならびにCKDに至る高シュウ酸血症およびシュウ酸カルシウム沈着の進行を遅くする、止める、または好転にすることが可能なことがある。
【0033】
本開示による組成物は、さらに、オキサレート排出、例えば尿中オキサレートの排出を増加させ、それにより全身のオキサレート沈着を減少させることが可能である。
本開示により、オキサレート関連障害、または本明細書に記載されている別の障害もしくは疾患状態を処置および/または防止するための方法であって、本明細書で定義されている医薬的有効量の医薬組成物、または医薬的有効量の医薬組成物を含む本明細書で定義されている腸溶性カプセル剤を、それを必要とする対象に投与するステップを含む、方法も提供される。
【0034】
医薬組成物を調製するための方法であって、以下の工程:
a)Oxalobacter formigenesの細胞ペーストを、賦形剤および/または冷凍保存剤、ならびに任意選択で水と混合すること、および
b)ステップa)で得られた組成物を凍結乾燥すること
を含む、前記方法がさらに提供される。
【0035】
本明細書では、本明細書において示される改善された効果を踏まえ、Oxalobacter formigenesを含む組成物の新規な医学的使用も提供される。
本明細書では、さらに、シュウ酸カルシウム沈着関連障害(複数可)、例えば、高シュウ酸血症を伴うシュウ酸カルシウム沈着関連障害(複数可)の処置および/または防止に使用するための、Oxalobacter formigenesを含む組成物であって、例えば前記使用が、慢性腎臓疾患(CKD)の処置および/または防止を目的とする、使用が提供される。
【0036】
オキサレート関連炎症の処置および/または防止に使用するための、Oxalobacter formigenesを含む組成物も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】ここで開示されている、新たな医薬組成物(OC5)および以前の組成物(OC3)の凍結乾燥状態からの回復。
図2】新たな医薬組成物(OC5)と比較した、以前の組成物(OC3)のオキサレート分解活性。効力は、CFU当たりの分解されたオキサレートの量として表される。異なるハイブリッド製剤は、いずれもスクロースを含有するが、OC3製剤は含有しない。
図3】ヒトボランティアの胃腸管における、ここで開示されている医薬組成物(OC5)カプセル剤の放出のシンチグラフィーイメージング。
【発明を実施するための形態】
【0038】
定義
本明細書で使用されるすべての語句および用語は、文脈から別の意味であることが明らかな場合を除いて、通常、当業者によりそれらに与えられる意味と同じ意味を有するとみなされるものとする。
【0039】
本明細書で言及されている「乾燥重量」という用語は、例えば乾燥プロセス(例えば凍結乾燥)により、水の大半がそれから除去された組成物の重量を意味するよう意図される。
【0040】
「冷凍保存剤」および「賦形剤」という用語は、本明細書では、ときに互換的に使用されることがある。しかし「冷凍保存剤」という用語は、本明細書では、0℃を下回る温度に冷却した場合に、細胞生存能力を保存するために使用される作用剤を指すよう意図される。凍結保存は、当技術分野で周知のプロセスである。本明細書では、組成物は、1種または複数の「賦形剤」も含み、この用語は、組成物に存在する他の原料、例えば、凍結保存ではない他の手段での組成物の安定性を保存するか、または分解を防止するために、ならびに、湿度を吸収するために、そこに添加される原料を説明するために主に使用される。賦形剤の目的は、望ましい粉体物性(例えば流動性粉末)を達成することでもあり得る。
【0041】
本明細書で定義されている「腸溶性」カプセル剤は、該剤を、その内部に存在する医薬品の腸溶性部分の腸の特異的区域への標的化送達に適するようにする、外面コーティング特性を有するカプセル剤を指す。腸溶性コーティングは、経口薬物を胃腸環境における溶解または崩壊から防止する、経口薬物に適用されるバリアとしても説明され得る。したがって、そのようなコーティングにより、薬物は、胃および十二指腸の酸性および酵素環境において存続可能となる。本明細書中、「カプセル剤」という用語は、経口投与後に対象の小腸、例えば回腸への輸送および投与に適しているようにする様式で医薬組成物をカプセル化する限り、任意の適切な形態をとってよい。本明細書中、腸溶性カプセル剤は、小腸および/または回腸に特異的に標的化される。これは、本文脈で、特に効率的であることが証明された。
【0042】
1つまたは複数の列挙された構成要素を「含む」組成物は、具体的に列挙されていない他の構成要素も含み得る。
単数形「a」および「an」は、複数も含むと解釈されるものとする。
【0043】
詳細な説明
本開示によれば、本明細書では、改善された医薬組成物;Oxalobacter formigenesを含む組成物、ならびに、オキサレート関連障害に対する、特にシュウ酸カルシウム沈着関連障害(複数可)、例えば、高シュウ酸血症を伴うシュウ酸カルシウム沈着関連障害(複数可)に対する改善された効果を有する前記医薬組成物を含む腸溶性カプセル剤の形態の薬物製品が提供される。高シュウ酸血症は、例えば、体内でシュウ酸カルシウム複合体の形成および沈着を引き起こす、血漿における高いレベルのオキサレートを特徴とする。当技術分野では、形成されたシュウ酸カルシウム沈着物自体に対して、および/または高シュウ酸血症に対して効果を有する医薬組成物を特定することが困難であることが示されている。そのような効果を得ることが可能である場合、これは、前記オキサレート沈着物の形成を遅延させる、または止めるのに役立ち得、前記オキサレート沈着物の溶解、最終的には場合により、それらに関連する障害、例えば腎機能障害の好転にも役立ち得る。本明細書では、そのような効果は、以下でさらに説明されている本開示による組成物に関して注目される。
【0044】
とりわけ、本明細書では、「オキサレート結晶沈着」、「オキサレート沈着物」、「沈着物」などという用語は、やはり本明細書で使用される「シュウ酸カルシウム沈着物」および「シュウ酸カルシウム複合体」という用語と互換可能である、または少なくとも関連する。
【0045】
したがって、本明細書では、特に、血漿オキサレートのレベル上昇、頻繁な全身のオキサレート結晶沈着および腎機能の低下を伴う障害の処置における前記医薬組成物の使用が想定される。O.formigenesを用いた処置の後に、溶解したオキサレート沈着物を排出するには時間がかかることがあるので、そのような障害に罹患した対象に対して、数カ月から数年の処置期間が想定される。
【0046】
以下でさらに提示されているように、完全な治験を行うことにより、本出願人は、尿中オキサレート排出効果増進の形態で、また、それに関連して、本明細書で定義されているO.formigenesを含む医薬組成物のより具体的な医学的使用の形態で、改善された効果を示した。さらに、腸溶性カプセル剤の形態の薬物ビヒクルは、本明細書でさらに説明されているように、前記カプセル剤が腸の特定部分を標的とする場合、前記医薬組成物を包含する最終薬物製品にさらなる利点を付与することが示された。治験に使用されるOC5と名付けられた薬物製品は、本明細書で定義される医薬組成物および腸溶性カプセル剤の代表である。したがって、以下の開示で提示されるその変形も、本開示に包含される。
【0047】
OC5に含まれ、行われた治験に使用された、改善された医薬組成物は、速い回復時間を有し、10CFU/カプセル剤以上(NLT)の最小生細胞数(例えば約10から1010CFU/カプセル剤)を有し、オキサレート約100mmol、例えば約200mmol、約300mmol、約400mmol、約500mmol/カプセル剤/19時間NLT、またはオキサレート約2mol/カプセル剤/19時間までにさえ、オキサレートを減少させる能力を有する、高度に濃縮された乾燥(例えば凍結乾燥)細菌であるO.formigenes、または同様のものを含む。医薬組成物は、特に小腸および/または回腸への標的化送達のために製剤された、経口投与用の腸溶性カプセル剤として提示される。これは、O.formigenesが作用する特に有用な部位であることが本明細書において示された。そのような組合せは、本明細書で開示されている効果を得るために特に有用であった。
【0048】
驚くべきことに、本明細書で提示される組成物OC5を用いた処置は、処置した患者における尿中オキサレート排出を減少させずに増加させ、したがって、患者におけるオキサレート沈着物の溶解が示唆され、このことは、ひいては、オキサレート沈着関連障害を処置するための、より具体的に本明細書で定義された、高度に効率的な組成物が示唆された。O.formigenesは、胃腸管に、より詳細には小腸および/または回腸に適正に送達され、組成物を受けた対象に十分忍容性であった。本明細書で論じられている分析は、組成物を得た群では、クレアチニンに対して標準化された尿中オキサレートの統計的に有意な増加を示し(表4)、よりいっそう重要なことには、尿中カルシウム排出の増加(表14)、血中尿素窒素の減少(表9)、尿容量の減少(表10)および尿中クエン酸排出の増加(示されていないデータ)も示した。これらは、いずれもシュウ酸カルシウム沈着物の排出が増加し、腎臓劣化の進行が止まったことに対するマーカである。したがって、本発明の組成物は、そのような目的のためであることが想定され、Oxalobacter formigenesを含む組成物も、新規な医学的使用のためであることが想定される。
【0049】
以前の非盲検試験(Hoppeら、2006年)では、OC3と名付けられた代替組成物の投与により、ほぼすべての患者で、4週間にわたり、尿中オキサレート排出において統計的に有意な減少が生じ、安全性への懸念はなかった。しかし、変更した製剤、例えば本明細書で開示されている医薬組成物より低濃度のO.formigenesを含む別の代替組成物を用いた、後続のより大規模な二重盲検トライアルは、24週間で、尿中オキサレート排出に対する効果が実証されなかった[Hoppeら、2011年]。O.formigenesを含む組成物の効力を改善するために、また、低活性であり回復時間および薬物送達が長い以前の製剤での問題を克服するために、改善を行い、これにより、本明細書で提示されている医薬組成物が得られた。
【0050】
この薬物製品に含まれる改善された医薬組成物は、本明細書では、それらの効果を例証するプラセボ対照臨床トライアルの対象であり、これにより、オキサレート関連障害、またはより詳細にはシュウ酸カルシウム沈着関連障害(複数可)、例えば、高シュウ酸血症を伴うシュウ酸カルシウム沈着関連障害(複数可)に関して特に有用なことが示された。
【0051】
臨床トライアルの分析は、驚くべきことに、新規な活性製剤(薬物(OC5))で処置した群において、プラセボで処置した群に対して、尿中クレアチニン排出に標準化された尿中オキサレート排出の統計的に有意な増加を示した(表4)。
【0052】
結果のセクションで言及されるように、ベースラインeGFR(推定糸球体濾過量、腎機能の尺度)と全患者でのベースラインにおける血漿オキサレート濃度(p=0.007)との間には逆相関が存在し、これにより、eGFRが低下するにつれて、血漿オキサレートは徐々に増加することが実証される。eGFRは、臨床的に高度に意義があり、したがって血漿オキサレートはPH疾患進行の良好な指標になり得る。最近の発表では、診断時のeGFRは、PH患者においてありがちなESRDに関連することが示されている[Zhaoら、2016年]。PHの進行では、腎臓の劣化速度は、高オキサレートへの曝露時間(年)に関連し、eGFRの低下とともに加速しているように思われる。並行して、血漿オキサレートおよびシュウ酸カルシウム沈着物は、徐々に増加する。
【0053】
実験セクションでさらに説明されるサブグループ分析において、OC5で処置した患者とプラセボで処置した患者との間における最も注目すべき差は、年長の患者(≧18歳)および腎機能が低下した患者(<90mL/分/1.73m)のサブグループで観察された。これらの2つのサブグループが類似していたことは、これらがいずれも高オキサレートに長時間曝露され、結果として、腎機能の低下を引き起こすシュウ酸カルシウム沈着物が増加したことを考慮すると、驚くに当たらなかった。
【0054】
重要なことに、医薬組成物を用いた処置は、PHがより進行した患者において、より顕著な効果を有すると思われた。この差は、予想されたものと反対であった;尿中オキサレート排出が減少するのではなく、実際には、組成物の投与により、排出の増加が引き起こされた。これは、大いに関係のある知見であり、本開示による組成物を使用することにより、シュウ酸カルシウム沈着に患う高シュウ酸血症を伴うオキサレート関連障害の処置の改善のための道を開く。
【0055】
O.formigenesは、遺伝子型1または遺伝子型2のものであってよく、いずれの型も自然に存在する。OC5は、O.formigenes遺伝子型1を含む。活性群(すなわちOC5を受けた群)での血漿オキサレート濃度の変化とO.formigenes遺伝子型1の数の変化との間の統計的に有意な逆相関により、導入したO.formigenes細菌は、血漿に由来する遊離オキサレートを代謝可能であることが示唆される(表8)。ベースラインにおいて、活性およびプラセボ群において各3名の患者に存在したO.formigenes遺伝子型2は、活性群でのみ増加した。O.formigenes遺伝子型2は、プラセボ群で増加せず、このことは、薬物が過剰なオキサレートを血漿から腸に輸送する、すなわち薬物が能動輸送を活性化することを示す。これらの知見は、OC5の形態である本明細書で提示される医薬組成物が、血漿から腸へのオキサレートの能動流動を生み出していることを裏付ける。
【0056】
PH患者で血漿オキサレート濃度が増加したのと全く同じように痛風患者で血漿尿酸塩濃度が増加したという意味で、痛風患者との類似点が引き出され得る。やがて、これは関節における尿酸一ナトリウム結晶の沈着につながる。痛風の尿酸を減少させる処置は、血漿尿酸塩と尿酸塩結晶との間の平衡を乱し、次いで該結晶は3~33カ月にわたって徐々に溶解することが報告されている[PascualおよびSivera、2007年]。
【0057】
リン酸カルシウム沈着により媒介される軟部組織の石灰化は、慢性腎臓疾患患者において一般的な問題である。いくつかの手法が、カルシウムまたはリン酸塩を減少させるために利用でき、いずれの手法もリン酸カルシウム沈着物の排出および溶解の増加を首尾よく引き起こす。
【0058】
同様に、OC5で処置した患者において、O.formigenesは、能動的なオキサレートの排出を促進し、遊離オキサレートの血漿から消化管への移動を媒介する。このプロセスは、遊離血漿オキサレート、タンパク質関連オキサレートおよび堆積したシュウ酸カルシウムの間の平衡を乱す。平衡の乱れは、遊離オキサレートに向かって進み、堆積したシュウ酸カルシウム結晶の溶解を引き起こし得る。結晶の溶解は、それぞれの対イオン周囲のバルク濃度によりコントロールされるので、結晶は、飽和濃度下にて一瞬で溶解し得、パルスは、溶解の結果として血漿および尿におけるオキサレートを増加させた。
【0059】
シュウ酸カルシウム沈着物は、腎臓の機能が低下した患者ではより顕著になると予想されるので、これは、腎臓疾患がより進展した患者でOC5処置の効果がより高い理由を説明し得る(eGFR<90mL/分/1.73m)。eGFRが<90mL/分/1.73mの患者における尿カルシウム排出の増加は、シュウ酸カルシウム結晶の溶解の理論の重要性をさらに増す。
【0060】
したがって、本明細書では、シュウ酸カルシウム沈着物そのものに対する直接的効果であって、その溶解を達成する効果が提示され、それは、体内でのシュウ酸カルシウムの沈着に関連する障害を処置する際に、またさらには、そのような障害の進行を好転または少なくとも止める際に、全身のシュウ酸カルシウム沈着物の除去を向上させるための効率的なツールを提供する。
【0061】
さらなる分析から、OC5処置により、診療におけるさらなる使用の利益が得られることも指し示され;OC5群でのBUNの低下および尿排出量の減少により、腎臓劣化の顕著な特徴である腎臓の水再吸収および尿濃縮能のいずれも、これらの患者において改善していたことが示唆される(表9および表10)。Zhaoら、2016年の最近の発表は、尿容量は、一般的に、PH患者で増加し、診断時の尿容量は、eGFRと逆相関する(p=0.001)と結論付けている。著者らは、尿容量の増加は、尿細管間質損傷が確認されたPH患者の間での尿濃縮能の低下および脱水を反映すると示唆している。これらの観察は、尿容量の減少が、OC5処置の後でみられ、したがって、腎臓に対する有益な治療効果を示すという、本明細書で提示されている知見を裏付ける。血中尿素窒素(BUN)は、尿細管損傷のマーカであり、PH患者では高度に上昇する。OC5処置は、BUNを低下させ、尿容量を減少させる傾向があるという知見は、尿濃縮能の改善および脱水の減少、例えば腎臓に対する有益な治療効果を示し得る。そのような効果が、何年間も進行した腎臓劣化に対する処置のわずか8週間後に既に示されたのは驚くべきことである。
【0062】
シュウ酸カルシウム結晶は、炎症反応を引き起こすことが公知である(Worcesterら、2013年)。好酸球の有意な減少と、8週間にわたりOC5で処置した患者における白血球数およびリンパ球数の減少傾向、ならびにプラセボで処置した患者における増加傾向(結果セクションで示されている)は、O.formigenesの処置が、シュウ酸カルシウム結晶を潜在的に減少させることにより、PHに関連する炎症に対する有益な効果も有していた可能性があることを示した(表9および11)。したがって、本明細書では、続発性高シュウ酸尿症の結果であり得るオキサレート関連炎症に対する、本明細書で定義されている医薬組成物のさらなる医学的使用が提示される。
【0063】
オキサレート結晶に関連した炎症は、腎臓および心臓を含む、前記結晶に曝露されたすべての軟部組織で発生する。腎臓では、炎症は、結晶の食作用および細胞における沈着物の内在化(腎石灰化症)を引き起こす。心臓では、炎症は、心筋において沈着物の内在化を引き起こし、心臓の硬化および収縮性の低下をもたらす。
【0064】
医薬組成物を用いた処置は、消化管におけるO.formigenes細胞の数も有意に増加させ、十分忍容性であった(表5)。試験前の予想と対照的に、処置は、クレアチニン排出当たりの尿中オキサレートを有意に増加させた。
【0065】
予想は、Oxalobacterが遊離オキサレートを代謝し、したがって、体内のオキサレート負荷を低下させ、より低い排出量をもたらすというものであった。この仮説は、シュウ酸カルシウム沈着物が不溶性という仮定に依拠していた。それとは反対に、Oxalobacterは、おそらく結晶を溶解することにより、また、おそらく、腸上皮および尿細管上皮におけるトランスポータータンパク質の活性を増加させることにより、オキサレートの排出を増加させた。
【0066】
分析の結果は、O.formigenesは、血漿から回腸(腸)への能動的なオキサレートの排出を促進し、続いて、遊離血漿オキサレート、タンパク質に関連するオキサレートおよび沈着したシュウ酸カルシウムの間の平衡を撹乱した、という新たな仮説と一致していた。これは、シュウ酸カルシウム沈着物溶解の増進、続いて、(尿中)オキサレート排出の増加を引き起こす。PH患者において血漿オキサレートは徐々に増加するので、この仮説は、痛風モデルと一致して、プラセボに対する経時的な血漿オキサレート濃度の安定化または減少が、OC5処置の有効性に関する好ましい測定基準であることを示唆する。
【0067】
治験の成果の結果として、本明細書中に、Oxalobacter formigenesを含む改善された医薬組成物、ならびに前記医薬組成物を含む腸溶性カプセル剤が提示される。
【0068】
したがって、本明細書では、
(i)乾燥重量で約10%から約25%のOxalobacter formigenes、
(ii)乾燥重量で約50%から約65%のスクロース、ならびに
(iii)乾燥重量で約10%から約30%の1種または複数の冷凍保存剤および/または賦形剤
を含む医薬組成物が提供される。
【0069】
当然ながら、前記医薬組成物は、水も、例えば約1~5%、例えば約3%の量で含み得る。
医薬組成物は、上記原料、および任意選択で水からもなり得る。
【0070】
本明細書で言及される医薬組成物の内容物は、百分率および乾燥重量で記載される。この乾燥組成物は、乾燥プロセス、例えば凍結乾燥により得られ、そのような状況では、粉末組成物または凍結乾燥/フリーズドライ(粉末)組成物とも呼ばれ得る。組成物を乾燥させた場合、残った多少の水が存在することがあり、これは、一定量の水を含む組成物により例示される。
【0071】
より具体的には、医薬組成物であって、前記組成物中に、乾燥重量で約10%から約20%、約10%から約25%、約15%から約20%、約15%から約25%、約17%から約21%、約18%から約22%、または約18%から約20%、例えば約15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%または22%のOxalobacter formigenesを含む、医薬組成物が提供される。Oxalobacter formigenesの量は、若干(主により高い百分率に)変動してもよく、または、本明細書でさらに例示されているように変動してもよい。指摘されたように、本明細書中に開示された医薬組成物は、高く、適切な濃度の細菌を含む。より高い濃度の細菌は、本明細書でさらに例示されているように、組成物に改善された効果または回復速度を与える。
【0072】
さらに、本明細書の医薬組成物は、乾燥重量で約50%から約65%のスクロース、例えば約52%から約62%、約54%から約60%、または約56%から約58%、例えば約54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%または65%のスクロースを含み得る。この量は、若干変動してもよく、または本明細書でさらに例示されているように変動してもよい。医薬組成物におけるスクロースの使用は、それが組成物の安定性の向上をもたらすことから、他の二糖に対する良好な代用物を提供することが証明された。高濃度のOxalobacter formigenesおよび医薬組成物の主要な賦形剤としてのスクロースの組合せは、本明細書で提示される改善された医学的効果を達成するのに成功した組合せであると証明された。主要な賦形剤としてスクロースを含む組成物の改善された回復およびオキサレート分解活性は、図2にも示されている。ハイブリッド組成物は、様々な百分率のスクロース含有量を表し、改善された組成物を例示する。ハイブリッド1:1は、最大量のスクロース(ハイブリッド:細胞ペースト:スクロースを含む賦形剤溶液)を含む。
【0073】
1種または複数の冷凍保存剤および/または賦形剤の量(複数可)は、乾燥重量で約10%から約30%、例えば約15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%または30%の1種または複数の冷凍保存剤および/または賦形剤であってよい。
【0074】
とりわけ、本明細書で言及されるすべての%量は、一般的に、少なくとも、医薬組成物の調製に使用される正確な製造プロセスおよび細胞密度に応じて約1~3%、すなわち±1~3%変動し得る。組成物は、溶液中で細胞ペーストおよび賦形剤から調製され、次いで、当技術分野で公知の手順により冷凍および凍結乾燥される。
【0075】
本明細書で提示されている医薬組成物では、(iii)における賦形剤および/または冷凍保存剤は、マルトデキストリン、フラクトオリゴ糖およびアルギネートからなる群から選択され得る。他の、等しい機能の、および構造的に類似した作用剤も使用してよい。
【0076】
本明細書で開示されている医薬組成物では、乾燥重量で約15%から約21%、例えば約16%から約19%、例えば約15%、16%、17%、18%または19%のマルトデキストリンが使用され得る。
【0077】
本明細書では、
i)乾燥重量で約1%から約5%のフラクトオリゴ糖、および
ii)乾燥重量で約0.5%から約2%のアルギネート
を含む医薬組成物がさらに提供される。前記医薬組成物は、水も、例えば前記組成物の重量に対して約1%から約5%の量で含み得る。
【0078】
本明細書で提示されている医薬組成物は、乾燥重量で約0.5%から約1.5%、例えば約1%のアルギネート、またはアルギネートと同様の作用剤も含み得る。フラクトオリゴ糖は、乾燥重量で約1%、2%、3%、4%または5%であってよい。
【0079】
本明細書では、
乾燥重量で約17%から約22%のOxalobacter formigenes、
乾燥重量で約52%から約62%のスクロース、
乾燥重量で約17%から約25%の1種または複数の冷凍保存剤および/または賦形剤
を含む医薬組成物がさらに提供される。
【0080】
さらに、
乾燥重量で約19%のOxalobacter formigenes、
乾燥重量で約57%のスクロース、
乾燥重量で約21%の1種または複数の冷凍保存剤および/または賦形剤、ならびに残りの水
を含む医薬組成物が提供される。冷凍保存剤および/または賦形剤は、アルギネート、マルトデキストリンおよび/またはフラクトオリゴ糖であってよく、乾燥重量で約1%のアルギネート、約17%のマルトデキストリンおよび約3%のフラクトオリゴ糖の量で存在し得る。
【0081】
本開示の別の態様は、それを必要とする対象への経口投与のための腸溶性カプセル剤であって、本明細書で定義されている医薬組成物を含む、腸溶性カプセル剤を提供する。Oxalobacter formigenesの送達を、前記対象の小腸、またはより詳細には小腸および/または回腸に標的化するための、構造的なコーティング特性を含むカプセル剤がさらに提供される。有利な医学的効果は、Oxalobacter formigenesの送達を、小腸のこれらの部分に標的化することにより示された。
【0082】
使用される腸溶性カプセル剤の構造的特性は、例えば、体の胃腸部分における条件を模擬したin vitro条件において崩壊に耐える能力に言及することにより、機能的様式で説明され得る。本明細書では、このカプセル剤は、胃環境において崩壊に耐えるその能力に関して、また、腸の環境においても限定された期間にわたり崩壊に耐えるその能力に関しての両方で記載される。したがって、本明細書では、腸溶性カプセル剤の特性は、主に、「模擬胃液」(SGF)および「模擬腸液」(SIF)中でのインキュベーションの間に崩壊に耐えるその能力に関係して説明される。
【0083】
「模擬胃液」(SGF)は、胃酸を表すよう意図される人工溶解媒体である。これは、塩酸中に、塩化ナトリウムを溶解し、続いて、精製したペプシン(例えばブタの胃粘膜に由来し、タンパク質1mg当たり約800から2500単位の活性を有する)を添加することにより調製され得る。試験溶液は、約1.2±0.1のpHを有する。SGFの温度は、約37℃で保持され、液中の酵素濃度は約3.2mg/mlである。
【0084】
「模擬腸液」(SIF)は、腸液を表すよう意図される人工溶解媒体である。これは、リン酸カリウムを水中に溶解し、水酸化ナトリウムを添加し、pHをpH6.8±0.1に調整し、続いて、精製したパンクレアチンを添加することにより調製され得る。SIFの温度は、約37℃で保持され、液中の酵素濃度は約10mg/mlである。
【0085】
6つのカプセル剤を、同時にテストしてもよい。完全な崩壊は、テスト装置のスクリーンに留まるか、またはディスクの下面に接着する、不溶性コーティングまたはカプセル剤シェルの断片を除き、当該単位のいかなる残渣も、明白に硬い核を有さない柔らかい塊である状態と定義される。SGFの許容基準は、6つのカプセル剤が、内容物の漏出を可能にする崩壊または破裂の証拠をいずれも示さない場合に満たされる。SIFの許容基準は、6つのカプセル剤が、いずれも60分以内に分解を開始した証拠を示す場合に満たされる。錠剤およびカプセル剤の崩壊手順は、European Pharmacopoeia 5.0,2.9.1(Test A)にも記載されている。
【0086】
それによれば、腸溶性カプセル剤は、約1.2±0.1のpHを有し、約3.2mg/mlのペプシンを含む疑似胃酸(SGF)中、温度約37℃での1時間以内のインキュベーションにおいて本質的に崩壊を示さないが、前記カプセル剤の崩壊開始が、約6.8±0.1のpHを有し、約10mg/mlのパンクレアチンを含む疑似腸液(SIF)中、約37℃で約1時間以内に検出されると定義され得る。腸溶性カプセル剤のこれらの特性は、カプセル剤が、胃中の酸性環境で存続し、腸内環境でもしばらく続き、それにより、Oxalobacterの送達を小腸および/または回腸に効率的に標的化することを説明する。これは、この医薬組成物の送達および放出の開始に最も効率的な標的であることが示された。本明細書では、in vitroでの崩壊の定義は、臨床対象における小腸での、および/または大腸の上部までの、in vivo崩壊に、実際に相当することも示される。これは、例えば図3において視覚化される。
【0087】
とりわけ、約6.8±0.1のpHを有し、約10mg/mlのパンクレアチンを含む、約37℃の疑似腸液(SIF)中で約1時間以内に崩壊を開始する特性を有する本明細書におけるカプセル剤は、特に有用と証明された。したがって、これは、カプセル剤が、腸管にかなり長い間留まり、医薬組成物の緩徐な放出をもたらすことを意味する。これは、他のカプセル剤と比較した相違点であり、例えば完全な崩壊(または破壊)が、約6.8±0.1のpHを有し、約10mg/mlのパンクレアチンを含む疑似腸液(SIF)中、約37℃で約1時間以内に見られる。本明細書で先に言及されたように、カプセル剤は、ゼラチンカプセル剤、例えばハードゼラチンカプセル剤、または類似した特性を提供し、したがって好ましい薬物放出プロファイルをもたらす、別の類似したカプセル剤であってよい。
【0088】
上で定義した限度の範囲内で崩壊に耐える、本開示による医薬組成物を含むカプセル剤のためのコーティングの調製に使用され得るポリマーコーティングの例は、例えば、Eudragit(登録商標)のコーティングにより得られるような、メタクリル酸コポリマーおよびアニオン性メタクリル酸コポリマーを含むメタクリル酸ポリマーである。これらは、例えば、Evonik Industries(http://eudragit.evonik.com)から購入してよく、さらに任意選択で、当業者に利用できるさらなる利用できる情報、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciencesを考慮に入れて、当業者によっても調製されてもよい。カプセル剤を生成またはコーティングする適切なポリマーの選択は、カプセル剤の小腸および/または回腸への標的化に関して本明細書で提示されている項目を考慮に入れることで、当業者により行われ得る。
【0089】
カプセル剤は、ゼラチンカプセル剤、例えばハードゼラチンカプセル剤、または、類似した特性を提供する別の類似したカプセル剤であってよい。
本明細書で開示されている腸溶性カプセル剤であって、Oxalobacter formigenesを、約10から約1010CFU(コロニー形成単位)の量で含む、腸溶性カプセル剤も提供される。Oxalobacter formigenesの量は、より多くてもよいが、カプセル剤当たりの言及された量は、本発明の組成物に関連した効果に関して、本発明の組成物との関連で、特に良く機能することが示されており、該組成物の調製をより効率的にもする。カプセル剤当たりのより多い量の例は、1011、1012、1013、1014および1015CFU/カプセル剤である。
【0090】
腸溶性カプセル剤であって、Oxalobacter formigeneが前記腸溶性カプセル剤中に存在する場合、Oxalobacter formigenesのin vitroでのオキサレート分解活性が、本明細書で以前に言及されたように、約100mmol、例えば約200mmol、約300mmol、約400mmol、約500mmol/カプセル剤/19時間以上(NLT)、または最大約2モル/カプセル剤/19時間でさえある、腸溶性カプセル剤も提供される。カプセル剤当たりではなく、用量当たりと言われることもある。これは、医薬組成物を調製するために選択される細菌の活性を定義し、すなわち、これにより、組成物を調製する際により活性が低い細胞を含有し得る、特定のバッチの細胞を無視できる。本明細書において、そのようなオキサレート分解活性を有する細菌を使用することにより、非常に効率的に医薬生成物を得ることが可能であることが示された。そのような特性を有する細菌の同定は、実験セクションに例示されるように、オキサレート分解活性を測定するアッセイで行われ得る。
【0091】
新たな医薬組成物の効力(オキサレート分解活性)は、図1にも例示されており、新規な組成物が以前使用された製剤よりもはるかに速く複製(replicating)を開始することを示す。これは、本発明の組成物の改善された特性を例示する。
【0092】
本明細書では、対象への経口投与のための腸溶性カプセル剤であって、約10から約1010CFUの量のOxalobacter formigenes、ならびに賦形剤および/または冷凍保存剤を含み、前記対象の小腸および/または回腸へのOxalobacter formigenesの送達のために標的化されている、腸溶性カプセル剤がさらに提供される。約1.2±0.1のpHを有し、約3.2mg/mlのペプシンを含む疑似胃酸(SGF)中、温度約37℃での1時間以内のインキュベーションにおいて本質的に崩壊を示さないが、カプセル剤の崩壊開始が、約6.8±0.1のpHを有し、約10mg/mlのパンクレアチンを含む疑似腸液(SIF)中、約37℃で約1時間以内に検出される場合の、このカプセル剤がさらに提供される。Oxalobacter formigenesが前記カプセル剤中に存在する場合、Oxalobacter formigenesのin vitroでのオキサレート分解活性は、約100mmol/カプセル剤/19時間以上(NLT)、または本明細書で以前に定義した通りであってよい。カプセル剤およびポリマーコーティングの例は、本明細書で示されている。
【0093】
医薬としての使用のための、本明細書で定義されている医薬組成物、または腸溶性カプセル剤がさらに提供される。前記使用は、オキサレート関連障害、またはより詳細にはシュウ酸カルシウム沈着関連障害(複数可)、例えば、高シュウ酸血症を伴うシュウ酸カルシウム沈着関連障害(複数可)の処置および/または防止のためであり得る。
【0094】
本明細書において、前記医薬組成物または前記腸溶性カプセル剤の医学的使用に言及する場合は常に、これは、本明細書で言及される医学的状態を処置または防止するための医薬の製造におけるその使用に言及することも意図される。
【0095】
オキサレート関連障害の処置および/または防止における使用のための医薬組成物または腸溶性カプセル剤であって、前記障害が、高シュウ酸尿症、原発性高シュウ酸尿症および続発性高シュウ酸尿症からなる群から選択される、医薬組成物または腸溶性カプセル剤も提供される。
【0096】
オキサレート関連炎症を処置および/または防止するための医薬組成物または腸溶性カプセル剤の使用も本明細書において提供される。
本開示は、高シュウ酸尿症、原発性高シュウ酸尿症および続発性高シュウ酸尿症に関連する。さらなる状況では、これは、例えば、短腸症候群(SBS)、空腸/回腸切除またはRoux-en-Y法による肥満外科手術、Zellweger病、空腸/回腸切除した癌、Aspergillus nigerによる腎感染症、および透析を受けている末期腎臓疾患(ESRD)患者における、高シュウ酸血症、血漿中におけるオキサレートの蓄積、慢性腎臓疾患(CKD)およびESRDに関連するシュウ酸症を対象とする。これは、腸性高シュウ酸尿症、腸または尿細管上皮における炎症、心臓伝導障害、外陰部痛、特発性シュウ酸カルシウム腎石症(尿路結石症)、炎症性腸疾患(IBS)、小腸細菌過剰繁殖(SIBS)、胃腸炎、胃炎、腸炎、小腸結腸炎、潰瘍性結腸炎、クローン病、および胃腸のリパーゼ阻害剤で処置した患者におけるオキサレート関連障害をさらに対象とする。
【0097】
さらなる態様では、本明細書では、オキサレート関連炎症の処置および/または防止に使用するためのOxalobacter formigenesも提供される。
本明細書で定義される医薬組成物または腸溶性カプセル剤は、約10から約1010CFUのO.formigenesを含有する量で、連続期間、例えば少なくとも数カ月または数年続く期間にわたり、少なくとも1日2回、それを必要とする対象に投与され得る。そのような期間は、血漿オキサレートレベル上昇の進行が、遅くなるか、止まるか、または低減され、かつより健常な、より低いレベル、例えば1~3μmol/Lで維持されるまで、1、2、3、4、5、6、もしくは12カ月まで、1、2、3、4もしくは5年、またはさらにそれ以上の年数、続いてよい。
【0098】
本明細書で以前に言及されたように、本発明の組成物は、高シュウ酸血症を伴うオキサレート関連障害、および全身のシュウ酸カルシウム沈着物の形成の処置および/または防止に特に有用である。
【0099】
オキサレート関連炎症の処置および/または防止における医薬組成物または腸溶性カプセル剤の使用も本明細書において提供される。
オキサレート関連障害、または、より詳細にはシュウ酸カルシウム沈着関連障害(複数可)、例えば、高シュウ酸血症を伴うシュウ酸カルシウム沈着関連障害(複数可)を処置および/または防止するための方法であって、本明細書で定義されている医薬的有効量の医薬組成物、または、本明細書で定義されている医薬的有効量の医薬組成物を含む本明細書で定義されている腸溶性カプセル剤を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法がさらに提供される。
【0100】
前記対象は、哺乳動物、例えばヒトであってよい。
前記方法は、高シュウ酸血症を伴う高シュウ酸尿症、原発性高シュウ酸尿症および続発性高シュウ酸尿症を処置および/または防止することを含む。前記方法は、例えば、短腸症候群(SBS)、空腸/回腸切除またはRoux-en-Y法による肥満外科手術、Zellweger病、空腸/回腸切除した癌、Aspergillus nigerによる腎感染症、透析を受けている末期腎臓疾患(ESRD)患者における、高シュウ酸血症、血漿中におけるオキサレートの蓄積、慢性腎臓疾患(CKD)およびESRDに関連するシュウ酸症の処置および/または防止にさらに関する。この方法は、オキサレート関連炎症、より詳細には、高シュウ酸尿症に由来する腸炎症、腸または尿細管上皮における炎症、心臓伝導障害、外陰部痛、特発性シュウ酸カルシウム腎石症(尿路結石症)、炎症性腸疾患(IBS)、小腸細菌過剰繁殖(SIBS)、胃腸炎、胃炎、腸炎、小腸結腸炎、潰瘍性結腸炎、クローン病、および胃腸リパーゼ阻害剤で処置された患者におけるオキサレート関連障害の処置および/または防止にさらに関連する。
【0101】
前記方法は、前記組成物が、それを必要とする対象に投与された場合に、全身のオキサレート排出をさらに増加させることも対象とする。それを必要とする対象は、本明細書において、本開示の障害の1つまたは複数を患うものとして同定される。
【0102】
前記医薬的有効量が、連続期間、例えば少なくとも数カ月または数年間続く期間にわたる、それを必要とする対象への、少なくとも1日2回の、約10から約1010CFUの量のOxalobacter formigenesを含む方法も提供される。そのような期間は、血漿オキサレートのレベルが低下し、かつより健常な、より低いレベル、例えば1~3μmol/Lで維持されるまで、1、2、3、4、5、6、もしくは12カ月まで、1、2、3、4もしくは5年、またはさらにそれ以上の年数、続いてもよい。
【0103】
本明細書で定義されている医薬組成物を調製するための方法であって、以下の工程:
a)Oxalobacter formigenesの細胞ペーストを、賦形剤および/または冷凍保存剤、ならびに任意選択で水と混合すること、および
b)ステップa)で得られた組成物を凍結乾燥すること
を含む、前記方法も提供される。
【0104】
他の態様では、本明細書において以下が提供される:
Aspergillus nigerによる腎感染症の処置および/または防止に使用するためのOxalobacter formigenesも提供される。
【0105】
本明細書では、シュウ酸カルシウム沈着関連障害(複数可)、例えば、より詳細には、本明細書において、他の文脈で定義されるように、高シュウ酸血症を伴うシュウ酸カルシウム沈着関連障害(複数可)の処置および/または防止に使用するためのOxalobacter formigenesも提供される。
【0106】
本明細書では、慢性腎臓疾患(CKD)の処置および/または防止に使用するためのOxalobacter formigenesも提供される。
本明細書では、本明細書中に他の文脈においてより具体的に定義されるように、オキサレート関連炎症の処置および/または防止に使用するためのOxalobacter formigenesも提供される。
【0107】
Oxalobacter formigenesは、本明細書で例示されているように、その治療有効量で、医薬組成物として提供される。
本開示は、ここで、以下の実験セクションにより例示されるが、それらに限定されることを意図するものではない。
【実施例
【0108】
実験セクション
新規な製剤の内容物、活性および崩壊
オキサレート分解活性
O.formigenesの効力、すなわちオキサレート分解活性のテストは、オキサレートを含有する培地(60mMオキサレート「OxB」媒体、Allisonら、1985年、Medium B)における細胞の培養中に、オキサレート分解活性に由来して生成されたホルメート(formate)の量を測定することにより間接的に行う。試料を、37℃でのインキュベーション後に、採取し、濾過する。ホルメートの濃度は、ホルメート検量線に対して、カチオン交換カラムを使用して高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により決定する。化学量論的に、消費されるオキサレートの各モルに対して1モルのホルメートが生成される(Stewardら、2004年):
オキサレート→オキサリル-CoA→ホルミル-CoA+CO→ホルメート
本製剤、例えばOC5のアッセイは、蓄積したオキサレートの分解を、試料の希釈液の間で線形性が観察され、細胞が対数期に達した時点である約19時間目に測定する。
【0109】
この経路により、アッセイは、背景の代謝活性から、能動的なオキサレート分解活性の判別を可能にする。
図1のグラフは、本発明の医薬組成物が、以前に使用された材料よりもはるかに速く複製を始めることを明らかにする。O.formigenes細胞は、カプセル剤が崩壊すると、回復してin vivoでのオキサレートの分解を開始するための時間は限定されているので、細胞の回復時間が短いことは重要である。回復が十分に迅速でなければ、細胞は、効果を発揮する機会を得る前に胃腸管を通過することになる。したがって、改善された医薬製剤を得るために、本明細書で開示されている特定の増殖速度およびオキサレート分解活性を有する材料を使用することが好ましい。
【0110】
したがって、改善された医薬製剤は、i)上記のin vitroオキサレート分解活性測定により定義されているように、以前の生成物の凍結乾燥粉末と比較して、(OC5の)凍結乾燥粉末のより速い回復、およびii)より高い生細胞数濃度をもたらした。生成物の用量当たりのオキサレート分解活性は、本発明の組成物では、およそ100倍高い。
【0111】
本製剤は、(本明細書で提示されているように)以前の物質より濃縮されてもいる。したがって、全細胞数および生細胞数のいずれも、材料1グラム当たりで、より多い。
【0112】
【表1】
【0113】
上の表で一覧表示された含有量は、概算であり、本明細書で例示される範囲内で変動させてもよい。古い製剤と新たな製剤との間の相違点の1つは、賦形剤のスクロースである。図2における回復の軌道は、スクロースを含有する様々な製剤の回復速度を示すが、OC3製剤はそれを含有しない(すなわち図2は、OC3と比較したハイブリッド製剤の改善された回復およびオキサレート分解を示す)。
【0114】
ポリマーでコーティングしたOC5カプセル剤の崩壊
本明細書で提示され、OC5により例示される医薬組成物を放出するための標的部位は、小腸内であり、腸管腔へのオキサレートの流れのための身体部位は、回腸内、ならびに、盲腸および遠位結腸内に存在すると見出されたので(HatchおよびFreel、2008年、2013年)、詳細には、製剤中のOxalobacter放出の好ましい開始は、十二指腸後、空腸または回腸まで、を標的とする。
【0115】
OC5凍結乾燥粉末は、速い増殖特性を有するO.formigenes細胞を含有する。OC5の開発において、以下で提示される項目を有する、細菌の標的化放出のための、腸溶性カプセル剤の使用を決定した。OC5カプセル剤は、EudragitポリマーFS30DおよびL30D55のコーティングを含み得るが、本明細書で提示されている組成物は、それに限定されない。
【0116】
【表2】
【0117】
in vivoでのポリマーでコーティングしたOC5カプセル剤の評価
目的は、小腸において崩壊するように製剤された腸溶性カプセル剤のin vivo挙動を評価することであった。カプセル剤は、ポリマーでコーティングされており、疑似胃酸(SGF)中で1時間耐え、カプセル剤が疑似腸液(SIF)中で1時間以内に破砕する兆候を示すよう設計された。
【0118】
カプセル剤の崩壊プロセスおよび胃腸管の通過は、シンチグラフィー法の使用により特徴付けられる。ガンマシンチグラフィーの技術は、医薬品剤形のin vivo性能を評価する際に、ますます有用になりつつあるツールである。シンチグラフィーは、非侵襲的であり、製剤の沈着、分散および移動についての情報を提供する。放射線量は最小限であり、いずれの手順も十分に確立されており、一般的に安全と考えられている。
【0119】
ヒト男性ボランティアにおける標的化腸溶性カプセル剤のin vivo挙動を評価するシンチグラフィーの試験を行った。SIF中で1時間以内に崩壊するよう設計されたカプセル剤は、in vivoで、胃内容排出後、91.6±30.6分の平均時間で崩壊を開始した。得られたシンチグラフィー画像、および胃腸通過時間の評価に基づき、カプセル剤の大多数は、小腸、具体的には回腸において、放出を開始したと要約できる。したがって、Oxalobacterを回腸において放出することが可能である生成物が、本明細書で初めて開発された。
【0120】
図3は、試験で得られた結果の代表的な画像を示し、すなわち、カプセル剤の胃腸通過で発生する重要な事象を例示する。
図3(a)~(d)で例示される重要な事象は、対象006におけるOC5カプセル剤の、経口摂取後の様々な時間における胃腸通過の前方シンチグラフィー画像である:(a)t=0分で、経口摂取後に、カプセル剤は無傷であり、カプセル剤の明瞭な形跡で示されているように、胃に位置する。(b)t=100分で、カプセル剤の胃内容排出、すなわち、カプセル剤は胃から出たことが確認される。カプセル剤の形跡は、やはり明瞭である。(c)t=170分で、カプセル剤周囲のより大きい形跡により視覚化されるように、小腸において崩壊が開始し、カプセル剤内容物が放出される。(d)t=260分で、形跡のより大きい広がりが証拠となっているように、上行結腸において完全に崩壊し、カプセル剤内容物が放出される。画像(a)~(d)のそれぞれに描かれた白い矢印は、放射性カプセル剤の形跡を指す。胃および大腸の輪郭は、視覚化の目的のためのみに描かれている。胃の左に位置した白丸は、位置マーカとして使用される。
【0121】
新規な製剤を使用した臨床二重盲検試験
試験デザイン
OC5の試験は、ランダム化プラセボ対照二重盲検試験(OC5-DB-01)であり、ドイツ、英国およびフランスで実行した。
【0122】
OC5の1用量は、19時間で読み取って、用量(カプセル剤)当たり100mmol以上を代謝する能力を有する10以上のコロニー形成単位(CFU)のO.formigenesを含有する1個のカプセル剤からなる。プラセボ生成物は、活性生成物と同一の外観および放出性を有し、微結晶セルロースで満たしたサイズ4の腸溶性カプセル剤からなっていた。処置期間中、患者は、処置の2、4、6、8および(必要な場合)10週目に24時間尿試料を提出した。糞便試料および血漿試料を処置の4および8週目に収集した。処置期間の終わりに、適格な尿採取があることを確実にするために、8週目の処置における尿採取が不適格とみなされた場合、処置を10週間に延長して、追加の採取を行った。
【0123】
組み入れ基準
適格な男性または女性患者は、年齢≧2歳(英国では≧5歳)であり、PHタイプ1、2または3と診断され(標準的な診断方法により判定された)、ベースライン中(処置開始前のベースライン第1~4週目)に行った少なくとも3回の適格な尿採取に基づいた、平均尿中オキサレート(Uox)排出が≧1.0mmol/24時間/1.73mであった。患者は、試験に組み入れられるためには、ベースラインの推定糸球体濾過量(eGFR)≧40mL/分/1.73m、またはクレアチニンクリアランス≧40mL/分/1.73mを有することが必要であった。
【0124】
ビタミンB6(ピリドキシン)を摂った患者は、スクリーニングの前に、少なくとも3カ月にわたり安定な用量を摂らなければならず、試験中に用量を変化させないようにしなければならなかった。試験登録時にビタミンB6を受けていない患者は、試験期間にわたりピリドキシンの開始を控える必要があった。
【0125】
統計的方法
以下の固定効果:処置群、ベースラインの尿中オキサレート値、来診および来診×処置の交互作用、を含む、共分散の混合モデル反復測定(MMRM)分析により、主要評価項目(尿中オキサレート排出の、ベースラインから処置8週目までの変化)の統計的分析を行った。この変化を、処置の8週間後のOC5とプラセボとの間で比較した。ベースラインから処置の終わりまでの変化に基づくすべての副次的評価項目(対象のサブセットにおける尿中オキサレートレベルの変化、血漿オキサレートレベルの変化、糞便中のO.formigenesの数の変化)は、主要評価項目に対するものと同一の方法論を使用して分析した。ベースラインから処置8週目の糞便中のO.formigenesの数の変化は、記述統計を使用して評価した。
【0126】
すべての効力分析は、少なくとも1用量の試験薬物を受け、OC5/プラセボでの処置中に尿中オキサレートの少なくとも1回の適格な測定を施された、ランダム化した患者に対して行った。
【0127】
結果
試験母集団
44名の患者をスクリーニングした。スクリーニングに失敗する主要な理由は、ベースライン中に、尿中オキサレート排出が1mmol/24時間/1.73mを下回ることであった。28名の患者をランダム化した;14名の患者はOC5を受け、14名の患者はプラセボを受け、全患者が試験を完了した。
【0128】
患者の年齢と腎機能との間には明確な関係が存在し、疾患の進行と一致していた。両方の群を通じて、年齢18歳未満の患者の大多数(19名中15名)が、正常な腎機能(eGFR≧90mL/分/1.73m)を有していた一方、≧18歳の年齢の患者9名のうち3名しか正常な腎機能を有していなかった。
【0129】
群構成における差は、OC5群が、プラセボ群(123.11mL/分/1.73m)より低い平均eGFR(97.47mL/分/1.73m)を有していたことを示した。
【0130】
腎臓および泌尿器障害の病歴は、OC5群(患者11名、79%)で、プラセボ群(患者8名、57%)より多く、これは、ベースラインにおける群間の腎臓機能の差により説明できた。
【0131】
【表3】
【0132】
尿中オキサレート排出の変化
以下の結果においてプラセボ群対処置群を試験した場合、以前のOC3製剤と比較して、OC5医薬組成物により、改善された効果が得られたことがわかる。
【0133】
OC5処置群は、プラセボ群より尿中クレアチニン当たりの尿中オキサレートを減少させると予想された。しかしOC5群は、それどころか、尿中クレアチニン排出当たりの尿中オキサレート排出を増加させた一方、プラセボ群は減少させた。処置の8週目に、OC5群とプラセボ群との間の差は、統計的有意性(p=0.030)に達し。OC5群における驚くべき増加は、以前のOC3製剤を用いた試験では発生しなかったオキサレート排出の向上およびオキサレート沈着物の可動化(表4)を示す。沈着物の可動化は、血漿中の遊離オキサレート濃度の低下が、PH患者におけるオキサレートの平衡を沈着物の可動化にシフトさせるという、一連の事象の一部も形成した。これは、腎機能が低い(低eGFR)PH患者で特に明白である。
【0134】
【表4】
【0135】
表は、尿中クレアチニン排出に対する尿中オキサレート排出の比の、OC5とプラセボとの間の差が、ベースラインから経時的に増大し、OC5-DB-01試験における処置の8週目で、OC5について統計的に有意であった(p=0.030、反復測定分析を使用した)ことを示す。OC3に関しては、OC3-DB-02試験における処置の8週目のベースラインからの、尿中クレアチニン排出に対する尿中オキサレート排出の比の、比での変化の、OC3とプラセボとの間の差は、統計的に有意ではなかった(p=0.607、Wilcoxon-Mann-Whitney分析を使用した)。
【0136】
Oxalobacter数の変化
Oxalobacter formigenesは、天然に存在するタイプの細菌である。2つの公知の遺伝子型のOxalobacter、タイプ1およびタイプ2が存在する。OC5における株HC-1は、Oxalobacter formigenes遺伝子型1のものである。両方の遺伝子型のOxalobacter formigenesの数は、定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応法を使用して測定した。患者1名のみ(OC5処置群であった)が、試験の開始時に、検出可能なO.formigenes遺伝子型1を有していた。処置の8週目に、OC5群における患者14名中13名が、かなりのレベルのO.formigenes遺伝子型1の数を示した。しかし、処置の8週目に、O.formigenesタイプ1に増加がみられない患者は、処置の4週目にレベルが上昇した。遺伝子型1の細菌は、プラセボ群におけるいずれの患者でも、試験中のいかなる時点でも、検出されなかった。
【0137】
OC5群における患者3名およびプラセボ群における患者3名は、ベースライン中に、検出可能なレベルのO.formigenes遺伝子型2を有していた。O.formigenes遺伝子型2は、OC5群において増殖を開始したが、プラセボ群では開始せず、これは、OC5が血漿から腸への過剰なオキサレートの移動を媒介し、それにより、遺伝子型2のO.formigenesを養いもすることを示した。
【0138】
ベースラインから8週目までの糞便中のO.formigenes数の変化の、最小二乗法(LS)平均の差は、OC5群において、プラセボ群(95%CI:4.79×106~2.07×107;p<0.0002)におけるよりも細胞1.27×10個/g高かった(表5)。
【0139】
【表5】
【0140】
血漿オキサレート濃度の変化および腎機能との相関
ベースラインにおける血漿オキサレートと腎機能との間の相関は、統計的に高度に有意であった(表6)。
【0141】
【表6】
【0142】
試験母集団全員では、ベースラインの血漿オキサレートとeGFRとの間に逆相関が存在していた(r=-0.508、p<0.007)。試験母集団全員での平均血漿オキサレート濃度は、14.7μmol/Lであった。eGFR>90mL/分/1.73mの患者は、10.2μmol/Lの平均血漿オキサレート濃度を有していた一方、eGFR<90mL/分/1.73mの患者は、23.7μmol/Lの平均血漿オキサレート濃度を有していた。OC5-DB-01試験では、疾患が進展したプラセボ群(eGFR<95mL/分/1.73m)は、血漿オキサレート濃度を8週間で+2.95μmol/L上昇させた一方、OC5群は、8週間後には既に同一程度まで上昇させなかった。血漿オキサレート濃度は、腎機能と逆相関している(上の表6)。腎機能の低下はPH進行を示すので、血漿オキサレートの変化は、疾患進展の尺度でもある。血漿オキサレートの蓄積、続いて、シュウ酸カルシウムの結晶化は、最終的に疾患の原動力となる。血漿オキサレート濃度における上昇に経時的に影響を及ぼすことにより、OC5は、疾患の進行を遅延させるか、または止めることができる(表7)。
【0143】
【表7】
【0144】
血漿オキサレート濃度の変化およびOxalobacter数との相関
Oxalobacter遺伝子型1の数が増加するにつれて、血漿オキサレート濃度が低下した、というように、血漿オキサレート濃度の変化とO.formigenes遺伝子型1の変化との間に逆相関が存在した。この相関は、処置4週目に統計的有意性を達成した(最大r=0.624;p=0.040)(表8)。この知見は、導入されたO.formigenes細菌が、血漿を起源とする遊離オキサレートを代謝可能であることを示唆する。
【0145】
【表8】
【0146】
腎機能に対する影響
ベースラインeGFR<90mL/分/1.73mの患者では、血中尿素窒素(BUN)濃度について、OC5群においてベースラインから低下し、プラセボ群において増加する傾向があった(8週間後におけるベースラインからのLS平均差、OC5:-3.95mg/dL;プラセボ:5.24mg/dL;p=0.085)(表9)。
【0147】
【表9】
【0148】
処置2週目における、OC5群とプラセボ群との間の尿排出容量の、ベースラインからの最小二乗法平均の差は、OC5群では-235.2mLであり、プラセボ群では+242.3mLであった;この差は、統計的有意性(p=0.039)を達成した。処置6週目に、OC5群とプラセボ群との間の尿排出量の、ベースラインからのLS平均の差は、OC5群では-453.7mLであり、プラセボ群では+375.4mLであり、これも、統計的有意性(p=0.001)を達成した(表10)。処置8週目に、この差は目立った傾向であったが、統計的有意性に達しなかった(p=0.141)。すべての患者、試験において活性(OC5)で処置した患者およびプラセボで処置した患者の両方が、水分摂取に関する同一の指示を受けた。
【0149】
【表10】
【0150】
これらの事後分析は、OC5処置が臨床的利益を有する可能性があることを示した。OC5群におけるBUNの低下および尿排出量の減少は、腎臓の水再吸収および尿濃縮能がこれらの患者で改善しつつあったことを示唆する。Zhaoら、2016年の最近の発表は、尿容量が、一般的に、PH患者で増加し、診断時の尿容量はeGFRと逆相関する(p=0.001)と結論付けている。より高い容量は、PH患者に水分摂取を増やすよう推奨したことを反映しているかもしれない一方、著者らは、尿容量の増加が、尿細管間質損傷が確認されたPH患者の尿濃縮能の低下を反映するという別の解釈を示唆する。我々の知見は、これらの観察を裏付けており、OC5処置は、腎臓の水再吸収能力に対する有益な処置効果を示す。血中尿素窒素(BUN)は、尿細管損傷のマーカであり、PH患者で高度に上昇する。OC5処置がBUNを低下させる傾向があったという知見も、腎臓に対する有益な処置効果を示し得る。
【0151】
炎症マーカに対する影響
シュウ酸カルシウム結晶は、炎症反応を引き起こすことが知られている[Worcesterら、2013年;Andersら、2013年]。合計の白血球数について、ベースラインから、OC5で処置した患者では減少し、プラセボで処置した患者では増加する傾向(処置8週目にp=0.067)があった。ベースラインからの好酸球の変化の差は、処置の8週目で統計的に有意であった(p=0.044)。リンパ球数について、OC5で処置した患者では減少し、プラセボで処置した患者では増加する傾向もあった(表11)。好酸球の有意な減少、ならびに、OC5で処置した患者では白血球およびリンパ球数が減少し、プラセボで処置した患者では増加するという、8週間にわたる傾向は、O.formigenes処置が、PH関連炎症に対して効果を有することを示した。しかし、2つの製剤OC3およびOC5の効果を比較すると、OC5が処置の8週間後に既に、改善された効果を示すことは、明らかである。さらに、表11に示されているように、OC3では好ましい傾向はなかった。
【0152】
【表11】
【0153】
新規な製剤を使用した非盲検治験
OC5の臨床的開発プランは、原発性高シュウ酸尿症を有し、透析を受けている対象において血漿オキサレートを減少させるOC5の効力を評価する、第2相の非盲検多施設試験も含む。患者は、治験薬で6週間処置され、試験薬物の開始前に4週間ベースライン測定を受け、薬物投与後に4週間測定される。その後、毎年処置の延長が続く。
【0154】
患者のうち1名は、ベースライン血漿オキサレートが非常に高い59歳の男性である。試験を延長した最初の1年のうちは、全体と可溶性血漿オキサレートとの間の比は、2.5から1.9に減少した。遊離血漿オキサレートの量は、シュウ酸カルシウムの飽和限界付近、50~60μmol/Lで数回頭打ちになり、そのたびに、次の測定では、合計血漿オキサレート濃度が上昇した(すなわち4週から5週、16~20週から24週、32週から36週および40週から44週(表12)。これらの知見は、様々な区画のオキサレート組織沈着物が溶解すると、オキサレートは、最初に血漿タンパク質を飽和させ、次いで、遊離血漿オキサレートに移行することを示唆する。Oxalobacterは、遊離血漿オキサレートを腸へと引き込むので、より多くのオキサレートが血漿タンパク質から放出される。
【0155】
【表12】
【0156】
以前の治験の分析、ならびに、以前の医薬製剤および本医薬製剤を使用した試験の統合分析
以前のOC3製剤を使用した血漿オキサレート濃度の変化
OC3を用いた以前の試験では、24週間にわたるプラセボ群に対する血漿オキサレートの自然な進行は、eGFR<90mL/分/1.73mのベースラインを有する患者で+3.25μmol/Lであったことが示された。
【0157】
OC3処置群は、血漿オキサレート濃度が安定していたか、または低下しつつあり、疾患のより緩徐な進行または疾患の進行の停止を示した。(表13)。
【0158】
【表13】
【0159】
行われたすべての二重盲検試験の統合分析でのカルシウム排出の変化
OC5群では尿中クレアチニン排出当たりの尿中オキサレート排出が増加した一方、プラセボ群では低下し、また、OC5が、血漿オキサレート濃度の蓄積速度に対して経時的に影響を及ぼし得るという、予想外の知見に関して、統合分析を、Oxalobacter formigenesの処置を用いた二重盲検試験すべてに対して行った。プラセボに対してOC3およびOC5を用いた我々の二重盲検試験の統合分析におけるデータは、腎機能が低い患者、すなわち、オキサレート沈着物を蓄積しやすい患者(eGFR<90mL/分/1.73m)において、尿中カルシウム排出が経時的に増加したことを示す。この知見は、統計的に有意である(p=0.007)(表14)。
【0160】
【表14】
【0161】
理論に束縛されることを望むものではないが、Oxalobacter処置は、遊離オキサレートを血漿から除去する機構により、シュウ酸カルシウム沈着物を可動化すると仮定される。オキサレート排出およびカルシウム排出が治験において増加するという知見は、この仮説を裏付ける。
【0162】
炎症マーカに対する影響
OC5処置に対する知見と同様に、OC3処置は、炎症マーカに影響を及ぼす。OC3-DB-02試験(表15)では、24週間の処置後に、OC3で処置したアームで白血球の有意な減少があった。プラセボとの差は、処置停止の4週間後にもやはり有意であった。しかし、2つの製剤、OC3およびOC5の効果を比較すると、OC5は、処置の8週間後に既に、改善された効果を有することが明らかである。
【0163】
【表15】
【0164】
参考文献
【0165】
【表16-1】
【0166】
【表16-2】
【0167】
【表16-3】
発明の態様
[態様1](i)乾燥重量で約10%から約25%のOxalobacter formigenes、
(ii)乾燥重量で約50%から約65%のスクロース、
(iii)乾燥重量で約10%から約30%の1種または複数の冷凍保存剤および/または賦形剤
を含む、医薬組成物。
[態様2]乾燥重量で約15%から約25%、例えば約15%から20%のOxalobacter formigenesを含む、態様1に記載の医薬組成物。
[態様3]乾燥重量で約17%から約22%のOxalobacter formigenesを含む、態様2に記載の医薬組成物。
[態様4](iii)における賦形剤および/または冷凍保存剤が、マルトデキストリン、フラクトオリゴ糖およびアルギネートからなる群から選択される、態様1から3のいずれかに記載の医薬組成物。
[態様5]乾燥重量で約15%から約21%のマルトデキストリンを含む、態様1から4のいずれかに記載の医薬組成物。
[態様6]乾燥重量で約16%から約19%のマルトデキストリンを含む、態様5に記載の医薬組成物。
[態様7]i)乾燥重量で約1%から約5%のフラクトオリゴ糖、
ii)乾燥重量で約0.5%から約2%のアルギネート
を含む、態様1から6のいずれかに記載の医薬組成物。
[態様8]約1重量%から約5重量%の水、例えば約3%の水をさらに含む、態様7に記載の医薬組成物。
[態様9]乾燥重量で約0.5%から約1.5%のアルギネートを含む、態様1から8のいずれかに記載の医薬組成物。
[態様10]乾燥重量で約17%から約22%のOxalobacter formigenes、
乾燥重量で約52%から約62%のスクロース、
乾燥重量で約17%から約25%の1種または複数の冷凍保存剤および/または賦形剤
を含む、態様1から9のいずれかに記載の医薬組成物。
[態様11]乾燥重量で約19%のOxalobacter formigenes、
乾燥重量で約57%のスクロース、
乾燥重量で約21%の1種または複数の冷凍保存剤および/または賦形剤、ならびに残りの水
を含む、態様1から10のいずれかに記載の医薬組成物。
[態様12]乾燥重量で、約1%のアルギネート、約17%のマルトデキストリン、および約3%のフラクトオリゴ糖をさらに含む、態様11に記載の医薬組成物。
[態様13]態様1から12のいずれかに記載の医薬組成物を含む、それを必要とする対象への経口投与のための腸溶性カプセル剤であって、前記対象の小腸および/または回腸へのOxalobacter formigenesの送達用である、前記腸溶性カプセル剤。
[態様14]前記腸溶性カプセル剤が、約1.2±0.1のpHを有し、約3.2mg/mlのペプシンを含む疑似胃酸(SGF)中、温度約37℃での1時間以内のインキュベーションにおいて本質的に崩壊を示さないが、前記カプセル剤の崩壊開始が、約6.8±0.1のpHを有し、約10mg/mlのパンクレアチンを含む疑似腸液(SIF)中、約37℃で約1時間以内に検出される、態様13に記載の腸溶性カプセル剤。
[態様15]約10から約1010CFUの量のOxalobacter formigenesを含む、態様13または14に記載の腸溶性ゼラチンカプセル剤。
[態様16]Oxalobacter formigenesが前記腸溶性ゼラチンカプセル剤中に存在する場合、Oxalobacter formigenesのin vitroでのオキサレート分解活性が、約100mmol/カプセル剤/約19時間未満(NLT)である、態様12から15のいずれかに記載の腸溶性ゼラチンカプセル剤。
[態様17]対象への経口投与のための腸溶性カプセル剤であって、約10から約1010CFUの量のOxalobacter formigenes、ならびに賦形剤および/または冷凍保存剤を含み、前記腸溶性カプセル剤は、前記対象の小腸および/または回腸へのOxalobacter formigenesの送達用であり、前記カプセル剤は、約1.2±0.1のpHを有し、約3.2mg/mlのペプシンを含む疑似胃酸(SGF)中、温度約37℃での1時間以内のインキュベーションにおいて本質的に崩壊を示さないが、前記カプセル剤の崩壊開始が、約6.8±0.1のpHを有し、約10mg/mlのパンクレアチンを含む疑似腸液(SIF)中、約37℃で約1時間以内に検出される、前記腸溶性カプセル剤。
[態様18]Oxalobacter formigenesが前記カプセル剤中に存在する場合、Oxalobacter formigenesのin vitroでのオキサレート分解活性が、100mmol/カプセル剤/約19時間以上(NLT)である、態様17に記載の腸溶性ゼラチンカプセル剤。
[態様19]医薬としての使用のための、態様1から12のいずれかに記載の医薬組成物、または態様13から18のいずれかに記載の腸溶性カプセル剤。
[態様20]前記使用が、オキサレート関連障害の処置および/または防止用である、態様19に記載の使用のための医薬組成物または腸溶性カプセル剤。
[態様21]前記使用が、シュウ酸カルシウム沈着関連障害、例えば高シュウ酸血症を伴うシュウ酸カルシウム沈着関連障害の処置および/または防止用である、態様19に記載の使用のための医薬組成物または腸溶性カプセル剤。
[態様22]前記使用が、オキサレート関連炎症の処置および/または防止用である、態様19に記載の使用のための医薬組成物または腸溶性カプセル剤。
[態様23]前記障害が、高シュウ酸尿症、原発性高シュウ酸尿症および続発性高シュウ酸尿症からなる群から選択される、態様20または21に記載の使用のための医薬組成物または腸溶性カプセル剤。
[態様24]前記障害が、例えば短腸症候群(SBS)、空腸/回腸切除またはRoux-en-Y法による肥満外科手術、Zellweger病、空腸/回腸切除した癌およびAspergillus nigerによる腎感染症、ならびに透析を受けている末期腎臓疾患(ESRD)患者における、高シュウ酸血症、血漿中におけるオキサレートの蓄積、慢性腎臓疾患(CKD)およびESRDに関連するシュウ酸症からなる群から選択される、態様20または21に記載の使用のための医薬組成物または腸溶性カプセル剤。
[態様25]前記組成物が、シュウ酸カルシウム結晶を溶解すること、および/または尿中オキサレート排出を増加させること、ならびに対象におけるCKDの進行を遅くするかまたは止めることが可能である、態様24に記載の使用のための医薬組成物または腸溶性カプセル剤。
[態様26]前記障害が、腸性高シュウ酸尿症、腸または尿細管上皮における炎症、心臓伝導障害、外陰部痛、特発性シュウ酸カルシウム腎石症(尿路結石症)、炎症性腸疾患(IBS)、小腸細菌過剰繁殖(SIBS)、胃腸炎、胃炎、腸炎、小腸結腸炎、潰瘍性結腸炎、クローン病、ならびに胃腸リパーゼ阻害剤で処置された患者におけるオキサレート関連障害からなる群から選択される、態様20または22に記載の使用のための医薬組成物または腸溶性カプセル剤。
[態様27]前記医薬組成物が、連続期間、例えば少なくとも数カ月または数年間続く期間にわたり、それを必要とする対象に少なくとも1日2回、約10から約1010CFUの量で投与される、態様19から26のいずれかに記載の使用のための医薬組成物または腸溶性カプセル剤。
[態様28]態様1から12のいずれかに記載の医薬組成物を調製するための方法であって、以下の工程:
a)Oxalobacter formigenesの細胞ペーストを、賦形剤および/または冷凍保存剤、ならびに任意選択で水と混合すること、および
b)ステップa)で得られた組成物を凍結乾燥すること
を含む、前記方法。
[態様29]シュウ酸カルシウム沈着関連障害、例えば、高シュウ酸血症を伴うシュウ酸カルシウム沈着関連障害の処置および/または防止に使用するための、Oxalobacter formigenesを含む組成物。
[態様30]オキサレート関連炎症の処置および/または防止に使用するための、Oxalobacter formigenesを含む組成物。
[態様31]オキサレート関連障害を処置または防止するための方法であって、医薬的有効量の態様1から18のいずれかに記載の医薬組成物または腸溶性コーティングカプセル剤を、それを必要とする対象に投与するステップを含む、方法。
[態様32]前記オキサレート関連障害が、シュウ酸カルシウム沈着関連障害(複数可)、例えば高シュウ酸血症を伴うシュウ酸カルシウム沈着関連障害(複数可)を含む、態様31に記載の方法。
[態様33]高シュウ酸血症を伴う高シュウ酸尿症、原発性高シュウ酸尿症および続発性高シュウ酸尿症を処置または防止するステップを含む、態様31または32に記載の方法。
[態様34]例えば、短腸症候群(SBS)、空腸/回腸切除またはRoux-en-Y法による肥満外科手術、Zellweger病、空腸/回腸切除した癌、Aspergillus nigerによる腎感染症、透析を受けている末期腎臓疾患(ESRD)患者における、高シュウ酸血症、血漿中におけるオキサレートの蓄積、慢性腎臓疾患(CKD)およびESRDに関連するシュウ酸症の処置および/または防止にさらに関する、態様31から33のいずれかに記載の方法。
[態様35]前記オキサレート関連障害が、オキサレート関連炎症、例えば高シュウ酸尿症に由来する腸炎症、腸または尿細管上皮における炎症、心臓伝導障害、外陰部痛、特発性シュウ酸カルシウム腎石症(尿路結石症)、炎症性腸疾患(IBS)、小腸細菌過剰繁殖(SIBS)、胃腸炎、胃炎、腸炎、小腸結腸炎、潰瘍性結腸炎、クローン病および胃腸リパーゼ阻害剤で処置された患者におけるオキサレート関連障害である、態様31または32に記載の方法。
[態様36]前記組成物がそれを必要とする前記対象に投与される場合、全身のオキサレート排出が、前記対象において増加する、態様31から35のいずれかに記載の方法。
[態様37]医薬としての前記有効量が、連続期間にわたり少なくとも1日2回、約10から約1010CFUの量のOxalobacter formigenesを含む、態様31から36のいずれかに記載の方法。
[態様38]前記期間が、数カ月もしくは数年、例えば1、2、3、4、5、6もしくは12カ月まで、または1、2、3、4もしくは5年、またはさらに多くの年数、あるいは血漿オキサレートのレベルが低下し、より健常な、より低いレベル、例えば約1~3μmol/Lで維持されるまで続く、態様37に記載の方法。
図1
図2
図3