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特許7016354電気的測定回路、ガス検出器及びガス濃度を測定する方法
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  • 特許-電気的測定回路、ガス検出器及びガス濃度を測定する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-27
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】電気的測定回路、ガス検出器及びガス濃度を測定する方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/24 20060101AFI20220128BHJP
   G01N 29/036 20060101ALI20220128BHJP
【FI】
G01N29/24
G01N29/036
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019517814
(86)(22)【出願日】2017-09-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-17
(86)【国際出願番号】 FR2017052583
(87)【国際公開番号】W WO2018065696
(87)【国際公開日】2018-04-12
【審査請求日】2020-07-22
(31)【優先権主張番号】1659557
(32)【優先日】2016-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】517092787
【氏名又は名称】オネラ(オフィス ナシオナル デチュドゥ エ ドゥ ルシェルシュ アエロスパシアル)
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】レヴィ,ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】アウストゥ,ギョーム
(72)【発明者】
【氏名】ヴェールアック,ベアトリス
(72)【発明者】
【氏名】ゲラール,ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ル タロン,オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】ゴディノー,ヴァンサン
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-513744(JP,A)
【文献】特表2013-521504(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0151994(US,A1)
【文献】Mo Li,Extended Bandwidth Lorentz Force Magnetometer Based on Quadrature Frequency Modulation,JOURNAL OF MICROELECTROMECHANICAL SYSTEMS,米国,IEEE SERVICE CENTER,2015年04月,Vol.24 No.2,pp.333-342,http://dx.doi.org/10.1109/JMEMS.2014.2330055
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N29/00-G01N29/52
G01N21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス検出器であって、
電気機械的な共振器(1);
前記共振器から応答信号を受け取るために前記共振器の検出端子(1b)に接続されている入力(2a)、及び前記共振器に励振力(F)を加えるために前記共振器の励振端子(1a)に接続されている出力(2b)を有している電気的フィードバック部(2)であり、それによって、前記共振器及び当該電気的フィードバック部が、共振周波数(f)で動作する発振器(10)の少なくとも一部を形成している、電気的フィードバック部(2);
前記共振周波数(f)を測定するために前記発振器(10)に接続されている周波数測定装置(3);並びに
前記電気的フィードバック部(2)の前記出力(2b)に接続されている入力(4a)、及び外部装置(5)に変調信号を送るように適合されている変調出力(4b)を有しており、かつ前記電気的フィードバック部(2)の前記出力(2b)にある励振信号に依存する、測定部(4)を備えており、
それによって、前記外部装置(5)が、さらなる励振力(Fpa)を、前記電気的フィードバック部(2)によって加えられる励振力(F)の他に、前記共振器(1)に加えるように適合されているとき、その結果として、前記周波数測定装置(3)によって測定されておりかつ前記さらなる励振力から生じている、前記共振周波数(f)のオフセット量が、前記外部装置(5)のパラメータの測定値と同等である、電気的測定回路と、
前記外部装置(5)を構成している変調可能なレーザであり、前記測定部(4)の前記変調出力(4b)が、前記変調可能なレーザの変調入力に接続されており、ここで、前記変調可能なレーザの波長に対応する吸収線を有しているであろう、かつ前記変調可能なレーザから生じる放射ビーム(FX)を受け取るであろうガスは、音響波を生成し、当該音響波は共振器(1)に対してさらなる励振力(F pa )を生成するように、変調可能なレーザは配向されている、変調可能なレーザとを備えており、それによって、前記共振周波数(f )のオフセット量によって測定される前記パラメータは、前記変調可能なレーザの前記波長において吸収線を有しているガスの濃度であり、
前記電気的測定回路の前記測定部(4)は、前記測定部の入力(4a)と前記変調出力(4b)との間に配置されている調整可能な移相器(41)を備えており、それによって、前記さらなる励振力が電気的フィードバック部によって加えられる励振力(F)に対して直角位相であるように、前記外部装置(5)によって前記共振器(1)に加えられる前記さらなる励振力(Fpa)の移相を整調可能であることを特徴とする、
ガス検出器
【請求項2】
前記電気的測定回路の前記共振器(1)は振動石英素子タイプ又は振動シリコン素子タイプである、請求項1に記載のガス検出器
【請求項3】
前記電気的測定回路の前記電気的フィードバック部(2)は、直列に連結されている増幅器(21)及び移相器(22)を備えている、又は位相同期ループアセンブリを備えている、請求項に記載のガス検出器
【請求項4】
前記電気的測定回路の前記測定部(4)は、前記調整可能な移相器(41)によって調整可能な前記移相の他に、180°のさらなる移相を、可逆的に適用するように適合されており、それによって、前記外部装置(5)の前記パラメータの前記測定値を構成する前記共振周波数(f)のオフセット量は、piに等しい前記さらなる移相のあり及びなしのそれぞれのとき、前記共振周波数(f)について測定される2値の間の差の半分に等しい、請求項に記載のガス検出器
【請求項5】
前記電気的測定回路は、さらに、
電気機械的な基準共振器;並びに
前記基準共振器から応答信号を受け取るために前記基準共振器の検出端子に接続されている入力、及び前記基準共振器に別の励振力を加えるために前記基準共振器の励振端子に接続されている出力を有している、別の電気的フィードバック部であり、それによって、前記基準共振器及び当該別の電気的フィードバック部が、基準周波数(fref)と呼ばれる別の共振周波数で動作する基準発振器(10ref)を、前記測定部(4)に接続されている前記発振器(10)と独立して形成している別の電気的フィードバック部を、さらに備えており;
前記電気的測定回路は、前記測定部(4)に接続されている前記発振器(10)の前記共振周波数(f)から切り離して、前記基準周波数(fref)を測定するように、さらに適合されており、それによって、前記外部装置(5)の前記パラメータの前記測定値を構成する共振周波数(f)のオフセット量は、前記測定部に接続されている前記発振器について測定される前記共振周波数(f)と基準周波数との間の差に一致する、請求項に記載のガス検出器
【請求項6】
前記変調可能なレーザは、前記変調可能なレーザから生じる放射ビーム(FX)にとっての波長又は放射出力において変調可能である、請求項に記載のガス検出器。
【請求項7】
前記共振器(1)は音叉を備えており、前記変調可能なレーザから生じる前記放射ビーム(FX)は、前記音叉の2つの歯に対して直角をなし、かつ前記音叉の対称面において前記音叉の2つの歯の間を通過するか、又は前記音叉の2つの歯のうち他方の歯と反対にある一方の歯の一側面上を通過するように配向されている、請求項に記載のガス検出器。
【請求項8】
ガスの濃度の測定のための方法であって、
/1/前記変調可能なレーザの波長が前記ガスの吸収線と一致し、かつ請求項1~7のいずれか1項にしたがうガス検出器を、選択するステップ;
/2/前記変調可能なレーザから生じる前記放射ビーム(FX)が、一定量の前記ガスを収容できる区域を通過するように、前記ガス検出器を配置するステップ;
/3/前記外部装置(5)によって前記共振器(1)に加えられる前記さらなる励振力(Fpa)が、前記電気的フィードバック部(2)によって加えられる前記励振力(F)に対して直角位相になるように、前記測定部(4)の前記調整可能な移相器(41)を調整するステップ;
/4/前記さらなる励振力(Fpa)から生じる前記発振器(10)の前記共振周波数(f)の、オフセット量を測定するステップ;及び
/5/前記共振周波数(f)の、測定された前記オフセット量から、前記ガス濃度の値を推定するステップを含んでいる、方法。
【請求項9】
前記ガス濃度の前記値は、式:
gas=[3・Q・N・V/(4・β・f)]・Δf
(ここで、Q及びfはそれぞれ、前記電気機械的な共振器(1)の品質係数及び振動共振周波数であり、Nは、前記電気機械的な共振器の圧電換算係数であり、Vは、前記電気機械的な共振器の励振電圧振幅であり、βは、前記ガスの前記濃度に無関係な定数である)を用いて、ステップ/5/において前記共振周波数(f)のオフセット量から推定される、請求項に記載の方法。
【請求項10】
ステップ/3/は、
前記ガス検出器の動作中に前記発振器(10)の周波数をリアルタイムに測定するサブステップ;及び
前記測定部(4)の前記調整可能な移相器(41)を、前記発振器の、測定されているときの前記周波数が最大であるように、設定するサブステップ
を含んでいる、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記共振器が音叉を備えており、前記調整可能な移相器(41)は、ステップ/3/において、
【数1】
(ここで、
【数2】
(ここで、は、複数の歯の基部に1つの起点を有している前記音叉の前記複数の歯の長手方向と平行な軸であり、Hは、前記音叉の前記複数の歯の前記基部と前記変調可能なレーザから生じる放射ビーム(FX)の中心との間の、z軸と平行な、測定された第1距離であり、Lは、前記放射ビームの前記中心と前記音叉との間にある、軸と直角をなして測定された第2距離であり、eは、前記音叉の前記複数の歯の、第2距離Lと平行に測定された厚さであり、cは、前記ガス中の音の伝播速度であり、fは、前記電気機械的な共振器の前記振動共振周波数であり、τV-Tは、前記ガスの緩和時間であり、J及びYはそれぞれ、第1種一次ベッセル関数及び第2種一次ベッセル関数である))に等しい移相を生成するように設定される、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的測定回路、ガス検出器及びガス濃度を測定する方法に関する。特に、本発明は、光音響効果を用いるガス濃度の測定のための、ガス検出器及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光音響効果は、電磁放射(例えばレーザによって生成され得る)を吸収し、かつこうして吸収されたエネルギーを熱として放散する、ガスの能力に基づく。電磁放射の吸収が断続的かつ周期的である場合、熱放射は、その強度がガス濃度を表す音響波をもたらす。
【0003】
そのため、ガス中の電磁放射の経路近傍に配置されている、この音響波に対して鋭敏な電気機械的な共振器を用いることによって、音響波の強度を検出することが知られている。この目的のために一般に使用される、電気機械的な共振器は、例えば、その複数の歯の少なくとも1つによって音響波を受け取るために構成されている石英水晶音叉である。そのとき、電磁放射の出力が、電気機械的な共振器の振動共振周波数に、外部変調信号によって変調されるか、そうでなければ、米国特許第7,245,380号に記載されているように、電磁放射の波長が、共振器の振動共振周波数の半値に、外部変調信号によって変調される。その共振振動モードの1つにおいてこのようにして引き起こされる、共振器の励振のために、共振器の振動の振幅による音響波の強度の検出は、高い感度を有する。最後に、共振器からの応答信号と電磁放射の外部変調信号との間の同期検波を使用することによって、共振器の振動振幅が測定される。図5は、従来技術に基づいて知られているこのようなガス検出器の構造を示している。ガス検出器は、外部変調信号によって入力に供給される開ループ構造を含んでおり、開ループ構造当該は、MOD.と記されている変調器51と、ガスに向けられている電磁放射ビームFXを生成するためのレーザユニット52と、音響波に鋭敏な、当該音響波の強度を表す応答信号を生成する電気機械的な共振器1とを、この順に備えている。SYNCH DETECTと記されている同期検波器30は、外部変調信号及び応答信号を同時に受信し、連続的な測定信号(その振幅が、ビームFXからに基づく放射を吸収するガスの濃度を表す)を生成する。
【0004】
しかし、この原理を用いてガスの濃度を測定するには、測定のための対象になる取得時間は、振動が共振器において始まるために必要な時間より長くなければならない(ここで、後者の時間はQ/fに等しく、Q及びfはそれぞれ、共振器の品質係数及び振動共振振動数である)。それゆえ、高い検出感度を得るには、高いQ品質係数を有しており、低いその振動共振周波数fを有している共振器が選択される。したがって、測定のための取得時間は長い。さらに、共振器の励振はその振動共振周波数に従属しないし、当該励振は、外部条件(例えば、周囲の圧力及び温度)に依存して変化するので、外部変調信号の周波数が共振器の振動共振周波数と一致するまで、外部変調信号の周波数を変化させつつ数回の取得を、1回の測定のために、繰り返す必要がある。このように、測定時間は実行される取得の数によって乗じられ、1測定の期間の総計を、数十秒以上のオーダーにし得る。このような期間は、特に周囲の圧力及び温度が急速に変化し得るとき、又は用途(例えば有毒ガスの存在を検出するため)が、迅速な検出を必要とするとき、又は検出器がいくつかの異なるガスのために周期的に使用されるときにも、実用上の要件と相容れ得ない。
【0005】
さらに、電気機械的な共振器(例えば発振器に組み込まれている振動梁)を用いて磁界を測定することも知られている。このようにして、共振器の励振周波数は、発振器の共振周波数に従う。共振器は、この共振器に流れている電流を用いて測定される磁界との相互作用から生じるローレンツ力にさらに影響される。この電流は、固定された移相及び可能な増幅を加えることによって、共振器の励振信号から得られる。このような磁界測定の原理は、Li, M., Sonmezoglu, S.及びHorsley, Dによる文献“Extended bandwidth Lorentz force magnetometer based on quadrature frequency modulation,” Journal of Microelectromechanical Systems, 2015, 24(2),pp. 333-342に記載されている。それから、磁界の値は、発振器の共振周波数のオフセット量(ローレンツ力によって生成される)から推定される。共振周波数のこのオフセット量が、磁界の印加直後に現れることを考えると、測定の時間は、同期検波による振動振幅の測定の、前の場合より大幅に短くなる。しかし、そのような磁力計の電気的測定回路は、測定されるべきパラメータと、共振器(当該測定されるべきパラメータの非ゼロ値から生じ、かつ共振器に加えられるさらなる励振力において、未知の値の移相を生成する)との間の相互作用には、適していない。
【0006】
文献WO2009/109897は、測定される物理的パラメータが移相(測定部が発振器に与える摂動効果による)である場合の光音響効果ガス検出器に関する。光音響効果を生じさせるために使用されるレーザビームと、電気機械共振器を構成する音叉との間の配置を調整することが示されている。
【0007】
最後に、文献US2011/0179872は、物理量に対するセンサ(例えば角速度センサ)に組み込まれることを目的とする振幅検出電気回路に関する。
【発明の概要】
【0008】
この状況に起因して、本発明の目的は、複数の測定(特に、個々の測定時間が短い、ガスの濃度の複数の測定)を実施することにある。
【0009】
本発明の別の目的は、外部条件(例えば周囲の圧力及び温度)に、無関係な測定結果又はわずかに依存する測定結果を得ることにある。
【0010】
最後に、本発明のさらなる目的は、低コストな小型のガス検出器を提供することにある。
【0011】
これらの目的又はそれ以外の目的の少なくとも1つを達成するために、本発明の第1の態様は、電気的測定回路を提案する。当該電気的測定回路は、
-電気機械的な共振器;
-この共振器から応答信号を受け取るために前記共振器の検出端子に接続されている入力、及び前記共振器に励振力を加えるために前記共振器の励振端子に接続されている出力を有している電気的フィードバック部であり、それによって、前記共振器及び当該電気的フィードバック部が、共振周波数で動作する発振器の少なくとも一部を形成している、電気的フィードバック部;
-前記共振周波数を測定するために前記共振器に接続されている周波数測定装置;並びに
-前記電気的フィードバック部の前記出力に接続されている入力、及び外部装置に変調信号を送るように適合されている変調出力を有しており、かつ前記電気的フィードバック部の前記出力にある励振信号に依存する、測定部を備えている。
【0012】
このようにして、前記外部装置が、さらなる励振力を、前記電気的フィードバック部によって加えられる励振力の他に、前記共振器に加えるように適合されているとき、その結果として、前記周波数測定装置によって測定されておりかつ前記さらなる励振力から生じている、前記共振周波数のオフセット量が、前記外部装置のパラメータの測定値と同等である。
【0013】
本発明によれば、前記測定部(4)は、前記測定部の入力(4a)と前記変調出力(4b)との間に配置されている調整可能な移相器(41)を備えている。それによって、前記外部装置(5)によって前記共振器(1)に加えられる前記さらなる励振力(Fpa)の移相を整調可能である。このようにして、前記さらなる励振力が電気的フィードバック部によって供給される励振力(F)に対して直角位相に置かれている。
【0014】
調整可能な移相器を使用することによって、本発明の電気的測定回路は、外部装置の測定されるパラメータと共振器のパラメータとの間の相互作用によってもたらされる任意の移相に対して適合されている。実際、移相器を用いて、電気的測定回路は、測定されるパラメータと共振器との間の相互作用をもたらす各外部装置に対して、個々に適合され得る。
【0015】
さらに、本発明の電気的測定回路は、二重フィードバックループ構造(電気的フィードバックループが、共振器とともに第1ループを形成しており、測定部が、外部装置及び共振器とともに第2ループを形成している)を有している。このような構造は、変調信号の周波数が発振器の共振周波数にしたがうことを保証する。このようにして、前記回路を組み込んでいる検出器の応答は、共振周波数のオフセット量であり、オフセット量は、測定されるパラメータの変化を瞬時又はほぼ瞬時に再現する。本発明の電気的測定回路を用いれば、複数の測定は、非常に短い個々の取得時間を有して、なされ得る。その結果として、前記検出器は、迅速な測定を必要とする用途(例えば、外部若しくは周囲の条件が変化し得る用途、又は有毒ガスの検出及び濃度測定のための用途、又は次から次へと周期的に実施される複数の測定に供されるいくつかの異なるガスに関連する用途も)に適合されている。
【0016】
最後に、本発明に係る電気的測定回路は、集積回路として大量生産される構成要素と、微小電気機械システム(頭字語MEMSによって表される)とを使用することによって、低コストに実現され得る。特に、共振器は、振動石英素子タイプ(例えば石英音叉タイプ)、又は振動シリコン素子タイプ(例えばシリコン音叉タイプ)であり得る。
【0017】
本発明の代替的な実施形態において、電気的フィードバック部は、直列に連結されている増幅器及び移相器、又は位相固定ループアセンブリを備え得る。
【0018】
好ましくは、測定部は、調整可能な位相器によって調整可能な移相の他に、180°のさらなる移相を、可逆的に加えるために適合されている。したがって、外部装置のパラメータの測定値と同等な共振周波数のオフセット量は、180°に等しいさらなる移相のあり及びなしのそれぞれのとき、共振周波数について測定される2値の間の差の半値に等しくあり得る。このようにして、測定結果に対する外部条件(例えば周囲の圧力及び温度)の影響が、まず第一に排除される。
【0019】
代替的に、外部条件又は周囲条件の、測定結果に対する影響をより的確に排除するために、電気的測定回路は、
-電気機械的な基準共振器;並びに
-前記基準共振器から応答信号を受け取るために前記基準共振器の検出端子に接続されている入力、及び前記基準共振器に別の励振力を加えるために前記基準共振器の励振端子に接続されている出力を有している、別の電気的フィードバック部であり、それによって、前記基準共振器及び当該別の電気的フィードバック部が、基準周波数(fref)と呼ばれる別の共振周波数で動作する基準発振器(10ref)を、前記測定部(4)に接続されている前記発振器(10)と独立して形成している別の電気的フィードバック部を、さらに備えている。
【0020】
この場合、測定電気回路は、測定部に接続されている発振器の共振周波数から切り離して基準周波数を測定するようにさらに適合されている。そして、その結果として、外部装置のパラメータの測定値と同等である共振周波数のオフセット量は、測定部に接続されている発振器について測定された共振周波数と、基準周波数との間の差に一致する。
【0021】
本発明の第2の態様は、ガス検出器を提案する。当該ガス検出器は、
-以上に示されている改良点を有し得る、本発明の第1の態様にしたがう電気的測定回路;並びに
-前記外部装置を構成している変調可能なレーザであり、前記測定部の前記変調出力が、前記変調可能なレーザの変調入力に接続されており、ここで、前記変調可能なレーザの波長に対応する吸収線を有しているであろう、かつ前記変調可能なレーザから生じる放射ビームを受け取るであろうガスは、音響波を生成し、当該音響波は共振器に対してさらなる励振力を生成するように、変調可能なレーザは配向されている、変調可能なレーザ
を備えている。
【0022】
このようなガス検出器について、共振周波数のオフセット量を介して測定されるパラメータは、変調可能なレーザの波長に吸収線を有しているガスの、濃度である。
【0023】
本発明に係るこのようなガス検出器では、変調可能なレーザは、この変調可能なレーザから生じる放射ビームにとっての波長又は放射出力において変調可能であり得る。
【0024】
また、本発明に係るガス検出器では、共振器は音叉を備え得、かつ変調可能なレーザは、変調可能なレーザから生じる放射ビームは音叉の2つの歯に対して直角をなすように、配向され得る。したがって、放射ビームは、音叉の対称面において当該音叉の2つの歯の間を通過するか、又は当該音叉の2つの歯のうち他方の歯と反対にある一方の歯の一側面上を通過する。
【0025】
最後に、本発明の第3の態様は、ガスの濃度の測定のための方法を提案する。当該方法は、
/1/前記変調可能なレーザの波長が前記ガスの吸収線と一致し、かつ本発明の第1の態様にしたがうガス検出器を、選択するステップ;
/2/前記変調可能なレーザから生じる前記放射ビームが、一定量の前記ガスを収容できる区域を通過するように、前記ガス検出器を配置するステップ;
/3/前記外部装置によって前記共振器に加えられる前記さらなる励振力が、前記電気的フィードバック部によって加えられる前記励振力に対して直角位相になるように、前記測定部の前記調整可能な移相器を調整するステップ;
/4/前記さらなる励振力から生じる前記発振器の前記共振周波数の、オフセット量を測定するステップ;及び
/5/前記共振周波数の、測定された前記オフセット量から、前記ガス濃度の値を推定するステップを含んでいる。
【0026】
ガス濃度の値は、式:
gas=[3・Q・N・V/(4・β・f)]・Δf
を用いることによって、ステップ/5/において、共振周波数のオフセット量から推定され得る。
【0027】
上記式において、Q及びfはそれぞれ、前記電気機械的な共振器の品質係数及び振動共振周波数であり、Nは、この電気機械的な共振器の圧電換算係数であり、Vは、前記電気機械的な共振器の励振電圧振幅であり、βは、前記ガスの前記濃度に無関係な定数である。
【0028】
本発明の方法の特定の実施において、ステップ/3/は、以下のサブステップ:
-前記ガス検出器の動作中に前記発振器の周波数をリアルタイムに測定するサブステップ;及び
-前記測定部の前記調整可能な移相器を、前記発振器の、測定されているときのこの周波数が最大であるように、設定するサブステップを含み得る。
【0029】
最後に、共振器が音叉を備えているとき、調整可能な移相器は、ステップ/3/において、
【0030】
【数1】
【0031】
(ここで、
【0032】
【数2】
【0033】
(ここで、Ozは、複数の歯の基部に1つの起点を有している前記音叉の前記複数の歯の長手方向と平行な軸であり、Hは、前記音叉の前記複数の歯の前記基部と前記変調可能なレーザから生じる放射ビーム(FX)の中心との間にある、軸Ozと平行に測定された第1距離であり、Lは、前記放射ビームの前記中心と前記音叉との間にある、Oz軸と直角をなして測定された第2距離であり、eは、前記音叉の前記複数の歯の、第2距離Lと平行に測定された厚さであり、cは、前記ガス中の音の伝播速度であり、fは、ここでも、前記電気機械的な共振器の前記振動共振周波数であり、τV-Tは、前記ガスの緩和時間であり、J及びYはそれぞれ、第1種一次ベッセル関数及び第2種一次ベッセル関数である))
に等しい移相を生成するように設定され得る。
【0034】
本発明の他の詳細及び利点は、添付の図面を参照しながら非限定的な実施例の以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は、本発明に係るガス検出器の全体図である。
図2図2は、ガス検出器の一部の代替的な実施について図1に対応する。
図3a図3aは、図1のガス検出器の一部である外部装置及び電気機械共振器の代替的な構成を表している。
図3b図3bは、図3bは、図1のガス検出器の一部である外部装置及び電気機械共振器の代替的な構成を表している。
図4図4は、本発明の改良点にしたがうガス検出器の全体図である。
図5】既に説明されている図5は、例えば本発明以前に公知の、ガス検出器の全体図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
いくつかの図に示される同一の符号は、同一の要素、又は同一の機能を有する要素を示している。さらに、明確さのために、図3a及び3bに示されている複数の要素の寸法又は複数の部分の寸法は、実際の寸法にも、複数の要素の、実際の寸法比にも一致しない。
【0037】
図1を参照すると、発振器10は、RESON.と記述されている電気機械的な共振器1及びREACTIONと記述されている電気的フィードバック部2を備えている。この目的のために、電気的フィードバック部2の入力2aは、共振器1の検出端子1bに、そこから応答信号を受信するために、接続されており、電気的フィードバック部2の出力2bは、共振器1に励振力Fを加えるために、共振器1の励振端子1aに接続されている。共振器1の励振端子1a及び検出端子1bは、当業者に知られておりかつこの共振器の種類及び型に依存する様式において、共振器1に対して配置されている。より正確には、電気的フィードバック部2は、励振信号が共振器1の励振端子1aに加えられているとき、励振力Fを生じる励振信号を、その出力2bにおいて生成する。
【0038】
電気的フィードバック部2は、直列に接続されているAMPL.と記述されている増幅器21及びDEPH.と記述されている移相器22によって構成され得る。電気的フィードバック部2のこのような実施形態によれば、いずれも、共振周波数fにおける発振のためのバルクハウゼン基準が、共振器1の特性に応じて満たされ得る。
【0039】
図2に示す代替的な実施によれば、電気的フィードバック部2は、位相同期ループによって構成され得る。このようなループは、信号の送信順に、COMP. PAHSEと記述されている位相比較器23、低域通過フィルタ24、PIと記述されている比例積分コントローラ25、及びVCOと記述されている電圧制御発振器26を備えている。位相比較器23は、電圧制御発振器26からの発振信号と同時に、共振器1からの応答信号の入力を受ける。したがって、電圧制御発振器26の発振周波数は、発振器10の共振周波数fと同一である。
【0040】
図1に戻ると、符号3は、リアルタイムで共振周波数fを測定するように配列されている、FREQ MEAASと記述されている周波数測定装置を示す。例えば、装置3は、励振信号の周波数を測定するために、電気的フィードバック部2の出力2bに接続され得る。周波数測定装置3のいくつかの実施形態は、当業者によく知られているので、本明細書に改めて説明される必要はない。
【0041】
MESUREと記述されている測定部4は、EXT.と記述されている外部装置5と共に、共振器1のためのさらなる励振部を形成している。当該さらなる励振部は、電気的フィードバック部2によって共振器1に対して直接に加えられる励振と並列に作用する。この目的のために、測定部4の入力4aは、フィードバック部2によって生成される励振信号を受ケ取るために接続されている。測定部4の出力4bにおいて、この測定部4は、前記励振信号に基づく変調信号を生成し、この変調信号は外部装置5に送られる。最後に、外部装置5は、励振力Fの他に共振器1に対して加えられる、さらなる励振力Fpaを生成する。前記電気的測定回路のこの構造のために、さらなる励振力Fpaは、フィードバック部2によって生成される励振信号の周波数で変調される。換言すれば、測定部4によって生成される前記変調信号の周波数は、測定部4及び外部装置5と組み合わされている発振器10の共振周波数に従属する。本明細書に後述するように、励振力Fの他に共振器1に作用するさらなる励振力Fpaは、装置3によって測定される通りの、共振周波数fのオフセット量を引き起こす。そのとき、共振周波数fのこのオフセット量は、外部装置5のパラメータの特性であり、このパラメータの定量的な測定値と同等である。
【0042】
ガス検出器におけるこのような測定電気回路の使用のために、外部装置5は、光音響効果ガス検出セルであり得る。本発明以前に知られているこのような検出セルの動作は、本明細書の冒頭に概説されている。このような外部装置は、変調器51、及び変調可能なレーザと一緒に形成するために配列されているレーザユニット52を備える。これは、図3a及び3bに示されており、かつ放射の放射出力又は波長で変調され得る電磁放射ビームFXを生成する。波長が変調されると、前記変調信号は、前記励振信号の周波数を2で割ることによって電気的フィードバック部2によって生成される当該励振信号から得られる。次に、ビームFXは、共振器1の近傍を通過するように方向付けられ、ガスがビームFXの経路上にありかつこのガスがビームFXの波長の放射を吸収すると、音響波が生成される。次に、当該音響波は、ガスによる電磁放射の吸収位置から、音響過剰圧力に鋭敏な共振器1の表面まで伝播した後に、共振器1に対するさらなる励振力Fpaを生成する。図3a及び図3bの実施形態では、共振器1は石英音叉である。図3aによれば、レーザビームFXは、音叉の対称面における、音叉の2つの歯の間に、向けられており、その結果として、レーザビームFXは、2つの歯の各々から等しい距離Lをおいて通過する。当該音響波は、このようにして音叉の両方の歯に対して同時かつ対称に、より大きな相互作用効率をともなって、力Fpaを及ぼす。図3bの場合、レーザビームFXは、2つの歯の一方から距離Lをおいて音叉の外側を通過する。そのとき、音響波は、実質的に、この一方の歯を介して音叉と相互作用するのみである。いずれの場合も、Lは、共振器1に到達するための、音響波の伝搬距離である。この伝搬距離は、さらなる励振力Fpaにとっての、変調信号に匹敵する位相遅延を生成する。
【0043】
図1に戻ると、測定部4は、DEPH. AJUST.と記述されている、調整可能な移相器41、及び任意に、交互に駆動又は抑制されるように接続されている、πと記述されている、さらなる移相器42を備えている。さらなる移相器42が抑制されると、調整可能な移相器41のみが、励振信号に対する変調信号にとって有効である。さらなる移相器42が駆動されると、励振信号に対する変調信号の移相は、調整可能な移相器41及びさらなる移相器42の移相寄与のそれぞれの、総和から生じる。そのとき、さらなる移相器42の寄与は、180°に等しい。
【0044】
T.L.Cottrel et J. McCoubreyによるハンドブック(タイトル“Molecular Energy Transfer in Gases”, Butterworths, London (1961), p. 64)によれば、光音響効果に特有の移相はΦpa=arctan(2π・f・τV-Tである。この式において、fは、変調可能なレーザの変調周波数(測定部4及び外部装置5を備えている発振器10の共振周波数に等しい)を示し、τV-Tは、このガスの分子又は原子の振動及び変化によるガスの緩和時間であり、arctanは正接関数の逆数を示す。
【0045】
さらに、さらなる移相は、ガスによるビームFXの電磁放射の吸収部位と共振器1との間における音響波の伝播から生じる。図3a及び図3bの両方の実施形態について、このさらなる移相は、放射ビームFXと複数の音叉の感知表面Sとの間における音響波の伝播から生じる。それは次のようになる。Φac
【0046】
【数3】
【0047】
(ここで、
【0048】
【数4】
【0049】
(ここで、Ozは、複数の歯の基部にある起点を有している複数の音叉の歯の長手方向に平行な軸であり、Hは、音叉の複数の歯の基部と放射ビームFXの中心との間にある、軸Ozに対して平行に測定された距離であり、Lは、放射ビームFXの中心と放射ビームFXに最も近い音叉の複数の感知表面Sの各々との間にある、Oz軸と直角をなして測定された距離であり、eは、距離Lと平行に測定された音叉の歯の厚さであり、cは、ガス内の音の伝播速度であり、fは、再度、電気機械共振器の振動共振周波数であり、τV-Tは、ここでもガスの緩和時間であり、J及びYはそれぞれ、第1種一次ベッセル関数及び第2種一次ベッセル関数である))。
【0050】
共振器1に対して同時に加えられる2つの励振力FとFpaとの間の移相は、
Φtotal=φel+Φpa+Φac
(ここで、φelは、変調信号を生成するために、測定部4によって励振信号に適用される位相遅延である)である。
【0051】
したがって、2つの励振力F及び励振力Fpaは、Φtotal=±π/2のとき、φel+Φpa+Φac=±π/2を意味する直角位相である。特に、図3aに基づく音叉の実施形態について、F及びFpaは、
φel
【0052】
【数5】
【0053】
(ここで、
【0054】
【数6】
【0055】
)のとき、直角位相である。
【0056】
次に、2つの励振力F及び励振力Fpaが直交位相にあるとき、2つの励振力F、及びFpa(励振力Fに比例する)の総和の移相はθ=Arctan(Fpa/F)である。しかし、一般に、さらなる励振力Fpaは、励振力Fより十分に小さく、θ=Fpa/Fになる。
【0057】
さらに、さらなる励振力Fpaは、励振力Fより十分に小さいので、さらなる励振力Fpaによって生じる共振周波数fのオフセット量Δfは小さく、かつ発振器摂動理論にしたがってθ・f/(2・Q)に等しい。その結果、それはΔf=[f/(2・Q)]・Fpa/Fにしたがう。主に、fは、ガスの非存在における発振器10の共振周波数、又はそうでなければ、共振器1の振動共振周波数である。
【0058】
したがって、共振周波数において、それはF=K・│x│/Qである(ここで、│x│は共振器1の振動振幅を表わし、Kは共振器1の剛性である)。その結果、Δf=[f/(2・K・│x)]・Fpaにしたがう。音響波は、共振器1を形成する音叉の複数の歯の一方又は両方において、さらなる励振力Fpaを生させると仮定すると、共振周波数のオフセット量についての前述の式は、Δf=[4・f/(3・K・│x│)]・Fpaになる。
【0059】
共振周波数において、励振信号の電圧振幅Vは、K・│x│/(N・Q)=F/Nに等しい(ここで、Nは、共振器1の圧電変換係数である)。このとき、Δf=[4・f/(3・N・Q・V)]・Fpa
【0060】
ここで、音響波によって共振器1に及ぼされるさらなる励振力Fpaは、検出されるガスの濃度に比例する(Fpa=β・Cgas)(ここで、Cgasは、ガスの濃度であり、βは、ガスの濃度とは無関係な、特に、共振器1に対する、音響波の実効作用面及びビームFXの出力に依存する数である。このとき、それは、Cgas=[3・Q・N・V/(4・β・f)]・Δfにしたがう。
【0061】
Oz軸に沿って測定されたとき3.8mmの長さである石英音叉(0.600mmに等しい複数の歯の厚さe、厚さe及び軸Ozと直交して測定されたとき0.340mmに等しい複数の歯の幅、並びに0.310mmの複数の歯の間にある隔たりを有している)について、品質係数Qは、15,400に等しくあり得、振動共振周波数fは32,762Hz(ヘルツ)に等しくあり得、圧電変換係数Nは9×10-6C/m(クーロン パー メートル)に等しくあり得る。変調可能なレーザは、17mWに等しい平均出力を有し、純粋に正弦波的に、周波数fに振幅変調される。このとき、その波長は固定されており、波数値6490.05cm-1に一致し得る。二酸化炭素(CO)が、15%濃度の水蒸気と組み合わされている大気圧において検出される気体であるとき、音響伝播速度は260m・s-1であり、二酸化炭素吸着ピークの波数は6490.05cm-1である。図3aに係る音叉の実施について、励振信号Vの電圧振幅は10mVに等しくあり得、緩和時間τV-Tは0.1μsに等しくあり得、数βは8.1×10-13N・mol-1・mに等しくあり得る。
【0062】
さらなる位相器42が抑制されているとき、調整可能な位相器41は、移相:
【0063】
【数7】
【0064】
(ここで、
【0065】
【数8】
【0066】

を生成するように設定される。
【0067】
この設定は、位相移動の値を数値的に計算する(共振器1の振動共振周波数f、緩和時間τV-T、距離L及び音響波長λ(振動共振周波数fで割った音の伝播速度に等しい)についての既知の値をその式に代入することを意味する)ことによって、実施され得る。このようにして計算された移相値は、次に、調整可能な移相器41に適用される。例えば、音叉の振動共振周波数fは、ここでも32,762Hzに等しくあり得、緩和時間τV-Tは0.1μs(マイクロ秒)に等しくあり得、音響波長は0.8cmに等しくあり得、音叉の複数の歯の間にある距離Lは0.155mmに等しあり得る。これらの数値について、調整可能な移相器41に適用される0.67ラジアンに等しい移相が、得られる。
【0068】
代替的に、発振器の周波数は、例えば周波数計カウンタを使用して測定することができる。このとき、調整可能な移相器41は、発振器の周波数が最大になるように経験的に設定され得る。
【0069】
調整可能な移相器41のこの設定に基づいて、さらなる移相器42が駆動されているとき、測定部4によって挿入される移相は、φel
【0070】
【数9】

【0071】
(ここで、
【0072】
【数10】
【0073】
)。
【0074】
さらなる励振力Fpaは、ここでも、励振力Fと直角位相であることに留意されたい。さらなる移相器42によって加えられる180°の移相は、さらなる励振力Fpaの符号を逆転させる働きをし、したがって、励振力Fに匹敵する、2つの励振力F及び励振力Fpaの総和の移相θの符号も逆転される。言い換えれば、測定部4及び外部装置5と組み合わされた発振器10において生じる実効移相は、さらなる位相器42が抑制されているときに存在する実効移相と、反対である。よって、同一のガス濃度に対して、さらなる移相器42の駆動は、オフセット量Δfをその逆の-Δfに変化させる。したがって、さらなる移相器42を抑制するとき及び駆動させるときのそれぞれにおいて、装置3によって測定される2つの共振周波数fの差の半値を計算することによって、オフセット量Δfの数値が得られる。この方法によって、共振周波数fに適用される固定値に対して算出される見かけ上のオフセット量Δfにおける、外部状態の変動(周囲の圧力及び温度の変動)に起因する付加的な寄生寄与を克服することができる。
【0075】
図4は、得られるガス濃度結果について、外部条件(例えば周囲の圧力及び温度)の変動を克服するための別の方法を示す。図4の右側部分は、さらなる移相器42なしの、図1に基づくアッセンブリを、まったく同じに繰り返している。発振器10は、基準発振器10refを形成するために、同じく複製されている。この基準発振器10refは、装置3と同一であり得る周波数測定装置3’と関連付けられている。したがって、装置3は、ガスの存在によって補正された共振周波数fの測定値をもたらし、装置3’は、ガスの存在に影響されない共振周波数の測定値をもたらす。後者は、frefと記述されており、本明細書の一部では基準周波数と呼ばれている。そして、相殺器31で測定又は算出される差Δf=f-frefは、式Cgas=[3・Q・N・V/(4・β・f)]・Δfに代入され、外部状態の変動による誤差のない気体濃度値をもたらす。
【0076】
本発明は、示されている通りの詳細な説明と比較して、その副次的な態様を修正又は適応させることによって再現され得ることが理解される。しかし、本発明以前に知られている、光音響効果も使用しているガス検出器と比べて、本発明に係るガス検出器は、励振力Fを加えるために共振器1に導く電気的フィードバック部2を、さらに有することを想い起すべきである。本発明に係るガス検出器は、電気的フィードバック部2によって生成された励振信号を入力に供給される測定部4を、さらに有する。このようなガス検出器構造の場合、本発明は、さらなる励振力Fpaを励振力Fに対して直角位相に同調させるために、測定部4に調整可能な位相器41を導入する。
図1
図2
図3a
図3b
図4
図5