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特許7016361眼底の蛍光分析のための空間的超解像装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-27
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】眼底の蛍光分析のための空間的超解像装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20220128BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20220128BHJP
   G02B 21/06 20060101ALI20220128BHJP
   G02B 21/36 20060101ALI20220128BHJP
【FI】
A61B3/10 300
G01N21/64 E
G02B21/06
G02B21/36
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019527424
(86)(22)【出願日】2017-11-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-12-26
(86)【国際出願番号】 IB2017057284
(87)【国際公開番号】W WO2018092109
(87)【国際公開日】2018-05-24
【審査請求日】2020-09-24
(31)【優先権主張番号】102016000117339
(32)【優先日】2016-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】519175341
【氏名又は名称】クレストオプティクス ソチエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リッコ、ビンチェンツォ
(72)【発明者】
【氏名】チェッカレッリ、ライノ
(72)【発明者】
【氏名】ラティーニ、アンドレア
【審査官】高松 大
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-541742(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0123761(US,A1)
【文献】特開平04-171415(JP,A)
【文献】国際公開第2013/089258(WO,A1)
【文献】特開平10-127562(JP,A)
【文献】特開平05-317255(JP,A)
【文献】国際公開第2014/181744(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/10
G01N 21/64
G02B 21/06
G02B 21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者のサンプル眼(7)の眼底を分析するための蛍光顕微鏡装置(100、100’)であって、
- 第1の光源(1)から基本光ビームを受光して、励起光ビームを生成するように構成された生成光学ユニット(2)と、
- 前記生成光学ユニット(2)から前記励起光ビームを受光して、前記励起光ビームに、前記サンプル眼(7)の前記眼底の少なくとも一部分を走査させるように構成された走査システム(5)と、
- 前記走査システム(5)から前記励起光ビームを受光して、蛍光ビーム内の、前記サンプル眼(7)の蛍光分子の等方性放射を少なくとも部分的にコリメートするように構成された光学出射ユニット(19)であって、前記光学出射ユニット(19)は対物レンズ(6、6’)を含み、前記対物レンズ(6、6’)は、焦点距離fobj、および屈折力Kobjであって、nが媒質の屈折率であるとき、
obj=1/fobj
である屈折力Kobjを有している、光学出射ユニット(19)と、
- 前記サンプル眼(7)の角膜およびレンズ(8)が前記光学出射ユニット(19)に対面するように頭部を支持し、且つ前記サンプル眼(7)を前記対物レンズ(6、6’)から距離d離れた出射位置に位置決めするように構成された、患者の頭部支持および位置決めユニットであって、前記出射位置において、前記光学出射ユニット(19)ならびに前記サンプル眼(7)の前記角膜および前記レンズ(8)は、有効屈折力Keffを有する光出射アセンブリを形成し、前記有効屈折力Keffは、feffが前記光出射アセンブリの有効焦点距離であり、Keyeが一定の屈折力の寄与率であり、nがサンプル眼(7)と対物レンズ(6、6’)の間の媒質の屈折率であるとき、
【数1】

である、患者の頭部支持および位置決めユニットと、
- 前記光発射ユニット(19)から出射された前記蛍光ビームを検出するように構成されたセンサデバイス(11)と、
- 前記生成光学ユニット(2)から出射された前記励起光ビームを前記走査システム(5)に伝達し、また前記光学出射ユニット(19)からの前記蛍光ビームであって、前記走査システム(5)から出射された前記蛍光ビームを、前記センサデバイス(11)に伝達するように構成された1以上の光学部品(4、9)と
を有する、蛍光顕微鏡装置(100、100’)において、
前記患者の頭部支持および位置決めユニットが前記サンプル眼(7)を前記出射位置に位置決めしたとき、前記光学出射ユニット(19)ならびに前記サンプル眼(7)の前記角膜およびレンズ(8)によって形成される前記光出射アセンブリは、前記励起光ビームを前記サンプル眼(7)の前記眼底の前記少なくとも一部分に送るように構成され、また前記生成光学ユニット(2)は、励起光ビームを生成するように構成され、前記励起光ビームは、前記光出射アセンブリを通過した後、前記励起光ビームが、光伝搬軸に直交する平面(A)に対して前記サンプル眼(7)の内部でベッセルビームに合成されるように構成された位相関係を有し、
前記平面(A)は、前記サンプル眼(7)の前記レンズ(8)と、前記サンプル眼(7)の前記眼底の前記少なくとも一部分との間にあり、前記対物レンズ(6、6’)の前記焦点距離fobjは、neyeが前記サンプル眼(7)の屈折率であり、Reyeが前記サンプル眼(7)の半径であるとき、NAeff=neye・sin(Reye/feff)で与えられる前記光出射アセンブリの有効開口数NAeffが0.9以上であるという条件を満たす
蛍光顕微鏡装置。
【請求項2】
前記患者の頭部支持および位置決めユニットが前記サンプル眼(7)を前記出射位置に位置決めしたとき、前記対物レンズ(6、6’)から前記サンプル眼(7)までの距離dが、20mm以下、任意選択的に10mm以下、より任意選択的に5mm以下、さらにより任意選択的に2mm以下である、請求項1に記載の装置(100、100’)。
【請求項3】
前記励起光ビームから疑似蛍光バックグラウンドを除去するように構成された少なくとも1つの第1の狭帯域除去フィルタ(3)をさらに含む、請求項1または2に記載の装置(100、100’)。
【請求項4】
前記対物レンズ(6)が、単一または二重のアダプティブレンズであり、また任意選択的に接触式のアダプティブレンズ(6’)であり、それにより前記対物レンズ(6、6’)から前記サンプル眼(7)までの距離dがゼロである、請求項1から3までのいずれか一項に記載の装置(100、100’)。
【請求項5】
前記蛍光ビームを前記センサデバイス(11)上に集束させるように構成された撮像光学ユニット(10)をさらに有する、請求項1から4までのいずれか一項に記載の装置(100、100’)。
【請求項6】
前記センサデバイス(11)が、光電子増倍管、アバランシェダイオード、CCD、またはSCMOSを含む群から選択された複数の検知素子を含む、請求項1から5までのいずれか一項に記載の装置(100、100’)。
【請求項7】
前記センサデバイス(11)の上流に配置された複数のマイクロレンズ(13)を含み、前記マイクロレンズの各々が、前記センサデバイス(11)の前記複数の検知素子のそれぞれの素子に双方向に結合されている、請求項6に記載の装置(100、100’)。
【請求項8】
前記生成光学ユニット(2)によって生成された前記励起光ビームによって走査される前記サンプル眼(7)の前記少なくとも一部分を内部に含む前記サンプル眼(7)の少なくとも1つの追加部分を励起するように構成された追加励起光ビームを生成する第2の光源を含み、前記追加励起光ビームが前記サンプル眼(7)の眼内組織の自家蛍光を飽和させるように構成されている、請求項1から7までのいずれか一項に記載の装置(100、100’)。
【請求項9】
前記生成光学ユニット(2)が、前記光学出射ユニット(19)のフーリエ面上に配置された静的光学位相フィルタ(21、22)、任意選択的に複数の誘電体層からなる二次元格子、より任意選択的にはアキシコンレンズ(21)、さらにより任意選択的には位相マスク(22)を備えたアキシコンレンズを含む、請求項1から8までのいずれか一項に記載の装置(100、100’)。
【請求項10】
前記生成光学ユニット(2)が、空間光変調器、任意選択的に位相空間光変調器(23)、または後方にフーリエレンズ(25)を伴う振幅空間光変調器(24)を含む、請求項1から8までのいずれか一項に記載の装置(100、100’)。
【請求項11】
前記走査システム(5)が、2つの別々のモータによって独立して回転するように構成され、同期的に制御されるように構成された、第1および第2の楔形部分(27、28)を含み、前記2つの楔形部分(27、28)が、任意選択的に、少なくとも1/50度に等しい角度位置の分解能を有し、したがって走査分解能が±1°の視域において少なくとも1マイクロラジアンに等しい、請求項1から10までのいずれか一項に記載の装置(100、100’)。
【請求項12】
前記サンプル眼(7)の網膜下構造を撮像するための近赤外(NIR)で動作する広視野撮像システム(400)と、前記走査システム(5)と前記光学出射ユニット(19)の間に配置された追加の光学部品(12)とを有し、前記追加の光学部品(12)が、近赤外の放射に対して透明であり、且つ前記走査システム(5)からの前記励起光ビームを前記光学出射ユニット(19)に向けて反射するように構成され、また前記システム(400)が、
- 前記追加の光学部品(12)に送られる第1のNIR光ビームを生成するように構成された第3の光源(29)と、
- 前記サンプル眼(7)の網膜下構造によって反射され、前記追加の光学部品(12)から出射される第2の反射NIR光ビームを検出するように構成された、任意選択的にはCCDセンサまたはSCMOSセンサであるNIRセンサデバイス(18)であって、任意選択的に100フレーム/秒以上の周波数で動作するように構成されたNIRセンサデバイス(18)と、
- 前記第3の光源(29)からの前記第1のNIR光ビームを透過して前記追加の光学部品(12)に向け、前記追加の光学部品から出射される前記第2の反射NIR光ビームを透過して前記NIRセンサデバイス(18)に向けるように構成された1以上のNIR光学部品(15、16)と
をさらに有する、請求項1から11までのいずれか一項に記載の装置(100、100’)。
【請求項13】
前記システム(400)が、前記第2のNIR光ビームを前記NIRセンサデバイス(18)に集束させるように構成された撮像光学ユニット(17)をさらに含む、請求項12に記載の装置(100、100’)。
【請求項14】
前記第1のNIR光ビームから疑似蛍光バックグラウンドを除去するように構成された少なくとも1つの第2の狭帯域除去フィルタ(14)を含む、請求項12または13に記載の装置(100、100’)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診断を目的とした眼底分析用の蛍光顕微鏡に関し、ベッセルビームの使用に基づく顕微鏡装置に関する。この蛍光顕微鏡装置は、眼底を励起し、眼底での蛍光信号を空間的超解像で検出することを可能にし、走査ビームの開口数を制限せず、取得画像中のノイズ、特に、タンパク質、または眼の網膜で観察される他の特定の分子を識別するために使用可能なマーカに関連した信号に対する、眼内組織の自家蛍光によるバックグラウンドノイズのレベルを大幅に低減することができ、その結果、単純、効率的、確実、且つ安価な方法で、取得画像の分解能を上げることができる。
【背景技術】
【0002】
この数十年で、暗視野顕微鏡とも呼ばれる蛍光顕微鏡は、生物学的分野における研究活動のための基本的なツールとなった。緑色蛍光タンパク質、すなわちGFPはインビボの蛍光顕微鏡検査も可能にするので、合成染料および、それに続いて、GFPを使用することによって、形態分析および機能分析の両方のために、細胞内部を高分解能で可視化できるようになった。
【0003】
共焦点技術、主に共焦点レーザ走査型顕微鏡(CLSM)およびスピニングディスク型共焦点顕微鏡(SDCM)、ならびに、減少した蛍光細胞集団に基づく構造化光学顕微鏡および構造化光学顕微鏡技術などの超解像技術、例えば、光活性化局在顕微鏡(PALM)および確率的光学再構成顕微鏡法(STORM)は、さらなる前進を可能にし、横方向分解能「x-y」(光軸に直交する平面内、x軸およびy軸はサンプルの平面内にあるものとする)および(サンプルの平面と直交する光軸に沿った)軸方向分解能「z」を改善する可能性を生み、したがって、(数十ナノメートルに達することができる分解能によって)非常に高い詳細レベルで細胞の3D再構成を行う可能性をもたらした。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、そのような共焦点技術および超解像技術にはいくつかの欠点がある。
【0005】
第一に、サンプルの濁りによる拡散効果、および焦点が合っていない面による蛍光バックグラウンドのために、試料の厚さが制限される(一般に、20マイクロメートルより厚いサンプルで測定を行うことは困難である)。
【0006】
また、両方の技術で、分解能力は信号対ノイズ比、すなわちS/N比によって制限され、信号取得装置および周辺環境のノイズと、焦点が合っていない面およびサンプルの濁りによる蛍光バックグラウンドノイズとの両方が、全体のノイズに影響する。特に、この比率は、構造化光学超解像方法で使用される逆畳み込みアルゴリズムを形成する高次の多項式の使用を制限する。
【0007】
さらに、焦点が合っていない面の蛍光信号は、励起光に対する依存性が、注目信号と同一であるため、励起強度または露光時間を増加させても、捕捉センサ、例えばCCD、またはsCMOS(科学的CMOS)センサの飽和による限界を超えて性能を改善することはできない。
【0008】
このような状況において、本発明に従って提案された解決方法が導入されると、従来技術の解決方法における前述の問題を解決することができる。
【0009】
したがって、本発明の目的は、眼球のような厚いサンプルを検査するための蛍光顕微鏡装置の焦点深度特性を高め、空間分解能を高めて、単純、効率的、確実、且つ安価な方法で、信号対ノイズ比を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の具体的な主題は、患者のサンプル眼の眼底を分析するための蛍光顕微鏡装置であって、
- 第1の光源から基本光ビームを受光し、励起光ビームを生成するように構成された生成光学ユニットと、
- 生成光学ユニットから励起光ビームを受光し、励起光ビームがサンプル眼の眼底の少なくとも一部分を走査するように構成された走査システムと、
- 走査システムから励起光ビームを受光し、蛍光ビーム内の、サンプル眼の蛍光分子の等方性放射を少なくとも部分的にコリメートするように構成された光学出射ユニットであって、焦点距離fobjおよびKobj=1/fobj(式中、nは媒質の屈折率である)に等しい屈折力Kobjを有する対物レンズを備える光学出射ユニット(19)と、
- サンプル眼の角膜およびレンズを光学出射ユニットに向けて、頭部を支持し、サンプル眼を対物レンズから距離d離れた出射位置に位置決めするように構成された、患者の頭部支持および位置決めユニットであって、出射位置において、光学出射ユニットならびにサンプル眼の角膜およびレンズは、
【数1】

(式中、feffは光出射アセンブリの有効焦点距離であり、Keyeは一定の屈折力の寄与率、nはサンプル眼と対物レンズとの間の媒質の屈折率である)に等しい有効屈折力Keffを有する光出射アセンブリを形成する、患者の頭部支持および位置決めユニットと、
- 光学出射ユニットから出射する蛍光ビームを検出するように構成されたセンサデバイスと、
- 生成光学ユニットから出射する上記励起光ビームを透過して走査システムに向け、光学出射ユニットおよび走査システムから出射する上記蛍光ビームを透過してセンサデバイスに向けるように構成された1つ以上の光学部品と
を有し、
上記患者の頭部支持および位置決めユニットがサンプル眼を出射位置に位置決めすると、光学出射ユニットならびにサンプル眼の角膜およびレンズによって形成される上記光出射アセンブリは、励起光ビームをサンプル眼の眼底の上記少なくとも一部分に送るように構成され、生成光学ユニットは、励起光ビームが光出射アセンブリを通過した後に、光伝搬軸に直交する平面に対応するサンプル眼の内部のベッセルビームに合成されるように構成された位相関係を有する励起光ビームを生成するように構成され、
上記平面は、サンプル眼のレンズとサンプル眼の眼底の上記少なくとも一部分との間にあり、対物レンズの焦点距離fobjは、NAeff=neye・sin(Reye/feff)(式中、neyeはサンプル眼の屈折率、Reyeはサンプル眼の半径である)で与えられる上記光出射アセンブリの有効開口数NAeffが0.9以上の条件を満たす、
蛍光顕微鏡装置である。
【0011】
本発明の追加の観点によれば、上記患者の頭部支持および位置決めユニットがサンプル眼を出射位置に位置決めするとき、対物レンズからサンプル眼までの距離dは、20mm以下、任意選択的に10mm以下、より任意選択的に5mm以下、さらにより任意選択的に2mm以下である。
【0012】
本発明の別の観点によれば、上記蛍光顕微鏡装置は、励起光ビームから疑似蛍光バックグラウンドを除去するように構成された少なくとも1つの第1の狭帯域除去フィルタを含むことができる。
【0013】
本発明のさらなる観点によれば、上記対物レンズは、単一または二重のアダプティブレンズ、任意選択的に接触式のアダプティブレンズであり、対物レンズからサンプル眼までの距離dはゼロである。
【0014】
本発明の追加の観点によれば、上記蛍光顕微鏡装置は、上記蛍光ビームをセンサデバイス上に集束させるように構成された撮像光学ユニットを含むことができる。
【0015】
本発明の別の観点によれば、上記センサデバイスは、光電子増倍管、アバランシェダイオード、CCD、またはSCMOSを含む群から選択される複数の検知素子を含むことができる。
【0016】
本発明のさらなる観点によれば、上記蛍光顕微鏡装置は、センサデバイスの上流に配置された複数のマイクロレンズを含むことができ、各マイクロレンズは、センサデバイスの複数の検知素子のそれぞれの素子に双方向に(biunivocally)結合されている。
【0017】
本発明の追加の観点によれば、上記蛍光顕微鏡装置は、生成光学ユニットによって生成された励起光ビームによって走査されるサンプル眼の少なくとも一部分を内部に含む、サンプル眼の少なくとも1つの追加部分を励起するように構成された追加の励起光ビームを生成する第2の光源を含むことができ、上記追加の励起光ビームは、サンプル眼の眼内組織の自家蛍光を飽和させるように構成されている。
【0018】
本発明の別の観点によれば、上記生成光学ユニットは、光学出射ユニットのフーリエ面上に配置された静的光学位相フィルタ、任意選択的に複数の誘電体層からなる二次元格子、より任意選択的には位相マスクを備えたアキシコンレンズを含むことができる。
【0019】
本発明のさらなる観点によれば、上記生成光学ユニットは、空間光変調器、任意選択的に位相空間光変調器、またはフーリエレンズを伴う振幅空間光変調器を含むことができる。
【0020】
本発明の追加の観点によれば、上記走査システムは、2つの別々のモータによって独立して回転するように構成され、同期的に制御されるように構成された、第1および第2の楔形部分(wedge)を含むことができ、2つの楔形部分は、任意選択的に、少なくとも1/50度に等しい角度位置の分解能を有し、走査分解能は±1°の視野上で少なくとも1マイクロラジアンに等しい。
【0021】
本発明の別の観点によれば、上記蛍光顕微鏡装置は、サンプル眼の網膜下構造を撮像するための近赤外(NIR)で動作する広視野撮像システムと、走査システムと光学出射ユニットとの間に配置された追加の光学部品とを備えることができ、上記追加の光学部品は、近赤外の放射に対して透明であり、且つ走査システムからの励起光ビームを光学出射ユニットに向かって、光学出射ユニットからの蛍光光ビームを走査システムに向けて反射するように構成され、上記システムは、
- 上記追加の光学部品に送られる第1のNIR光ビームを生成するように構成された第3の光源と、
- サンプル眼の網膜下構造によって反射され、追加の光学部品から出射される第2の反射NIR光ビームを検出するように構成された、任意選択的にはCCDセンサまたはSCMOSセンサであるNIRセンサデバイス、任意選択的に100フレーム/秒以上の周波数で動作するように構成されたNIRセンサデバイスと、
- 第3の光源からの上記第1のNIR光ビームを透過して上記追加の光学部品に向け、上記追加の光学部品から出射される上記第2の反射NIR光ビームを透過してNIRセンサデバイスに向けるように構成された1つ以上のNIR光学部品と
を有する。
【0022】
本発明のさらなる観点によれば、上記撮像システムは、第2のNIR光ビームをNIRセンサデバイス上に集束させるように構成された撮像光学ユニットを含むことができる。
【0023】
本発明の追加の観点によれば、上記装置は、上記第1のNIR光ビームから疑似蛍光バックグラウンドを除去するように構成された少なくとも1つの第2の狭帯域除去フィルタを含むことができる。
【0024】
本発明は、対物レンズの後ろに配置され、蛍光顕微鏡の全焦点距離を短くすることによって「対物レンズ-角膜-レンズ」アセンブリの開口数を増加させるように構成された、ベッセルビームを生成するための光学機器の使用に基づく。
【0025】
ベッセルビームの基本的な特性は、発散せずに伝搬すること(少なくとも人間の眼の内側の経路が約24mmに等しい場合)、ビーム径をλ/2(λは、ビーム波長)に制限できること(ビームを生成する光学システムの開口数に依存)、濁った流体中に存在するものなどの、散乱要素によってもたらされ得るあらゆる干渉を受けても再生できることである。これにより、従来技術に対して大きな利点を達成することを可能にし、例えば、本発明の装置が、眼底を走査することができ、蛍光領域の存在を角度的に分解することができる、高い角度空間分解能を有することを可能にする。本発明のさらなる利点は、蛍光領域のマッピング、蛍光領域がベッセルビームの直径よりも大きい場合における上記蛍光領域のサイズの測定、または、上記蛍光領域をサブ回折、すなわちビーム直径以下として定義することを達成できることである。本発明のさらに別の利点は、眼底全体または中心窩の2~3倍に等しい領域の角度走査を可能にすることである。
【0026】
ここで、本発明は、好ましい実施形態に従って、特に添付の図面を参照することによって、限定ではなく例示として説明される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明による眼底分析用の蛍光顕微鏡装置の第1の実施形態の図を示す。
図2】本発明による眼底分析用の蛍光顕微鏡装置の第2の実施形態の図を示す。
図3】従来技術の装置(図3aおよび図3c)の異なるビーム集束モードと、本発明による装置(図3a)との比較を示す図である。
図4】本発明による眼底分析用の蛍光顕微鏡装置の第3の実施形態の図を示す。
図5】本発明による眼底分析用の蛍光顕微鏡装置の第4の実施形態の図を示す。
図6A】本発明による眼底分析用の蛍光装置顕微鏡の1つの実施形態の生成光学ユニットの図を示す。
図6B】本発明による眼底分析用の蛍光装置顕微鏡の他の1つの実施形態の生成光学ユニットの図を示す。
図7A】本発明による眼底分析用の蛍光装置顕微鏡の他の1つの実施形態の生成光学ユニットの図を示す。
図7B】本発明による眼底分析用の蛍光装置顕微鏡の他の1つの実施形態の生成光学ユニットの図を示す。
図8A】本発明による眼底分析用の蛍光顕微鏡装置の1つの実施形態の角度走査システムの図を示す。
図8B】本発明による眼底分析用の蛍光顕微鏡装置の他の1つの実施形態の角度走査システムの図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図面において、同様の要素には同一の参照番号が使用される。
【0029】
図1は、本発明による眼底分析用の蛍光顕微鏡装置の第1の実施形態を概略的に示し、全体が参照番号100で示される。蛍光顕微鏡装置100は、サンプル眼7の眼底に存在する任意の蛍光分子を励起するような波長λを有する第1のレーザ光源1を備える。そのような第1の光源1は、空気または光ファイバを介して、基本光ビームを、蛍光励起光ビームを生成するように構成された生成光学ユニット2に送る。上記蛍光励起光ビームは、適切な光学出射ユニット19を通過することによって、サンプル眼7のレンズ8を通過後数ミリメートルで、(少なくとも、サンプル眼7の眼底を含む、光軸に沿った空間範囲内で)ベッセルビーム、すなわち、回析および拡散なく伝搬し、サンプル眼7の濁った流体中で遭遇する可能性があるような散乱要素の干渉後に自己再生する特性を有するビームに合成されるような、位相関係を有する。特に、励起光ビームは、少なくとも10・zよりも長いビーム伝搬軸(z軸)に沿った距離にわたって、ベッセルビームに合成される。式中、zはシステムの開口数(NA)に反比例するレイリー長であり、z∝λ/(π・NA)である。
【0030】
励起光ビームは、励起光ビームから、他の光源による波長、およびレーザ光が、交差する光学部品(光ファイバ、光学レンズなど)を通過するときにレーザ光によって生成される可能性がある疑似蛍光バックグラウンドを除去するように構成された第1の狭帯域除去フィルタ3を(少なくとも)通過し、その後、励起光ビームを、励起光ビームの光伝搬軸(z軸)に直交する「x-y」平面上の励起光ビームの位置を変えるように構成された走査システム5に向けて反射するように構成された第1のダイクロイックフィルタ4に入射し、それによってサンプル眼(7)の眼底の平面の走査を実行する。
【0031】
励起光ビームは走査システム5から出射して、光学収差を最小にするように構成された、1つ以上の光学部品を有する対物レンズを含む光学出射ユニット19を通過する。本発明による装置の動作中、すなわち本発明による装置がサンプル眼7に適用されるとき、光学出射ユニット19は、サンプル眼7の角膜およびレンズ8と共に、光出射アセンブリを形成する。好ましい実施形態では、対物レンズは、単一レンズまたは二重レンズ(図1の参照番号6によって示されるものなど)であり得るアダプティブレンズであり、任意選択的に、サンプル眼7と接触するアダプティブレンズ(図2の参照番号6’で示されるものなど)である。上記光学出射ユニット19は、レンズ8とサンプル眼7の眼底との間に配置され、任意選択的にサンプル眼7の眼底に配置された、光軸「z」に直交する平面「x-y」に平行な平面Aに対応して、サンプル眼7の内部で、ベッセルビームに励起光ビームを合成するように構成されている。
【0032】
眼は通常、約20ミリメートルに等しい焦点距離feye(feye=20mm)および約6ミリメートルに等しい半径Reye(Reye=6mm)を有するレンズと同等に作用するため、眼は通常、レンズの半径と焦点距離の比で求められ、このレンズでは約0.3に等しい(NAeye≒0.3)開口数NAeyeを有する。実際には、人間の眼球は、約0.2に等しい(NAeye≒0.2)、より低い開口数値も有し得る。光学出射ユニット19の存在を無視すると、眼に入射するベッセルビームの横方向寸法tは、
t=λ/(2×NAeye) [1]
で表される。式中、λは第1の光源1の波長であり、サンプル眼7の開口数NAeyeの値によって、λ/2に近いベッセルビームの横方向分解能は得られないだろう。このため、その対物レンズ6(または6’)は、サンプル眼7の角膜およびレンズ8に近い距離dに配置される。
【0033】
このベッセルビームの横方向分解能を改善するために、対物レンズ6(または6’)は、眼の近傍に配置され、出射グループおよびサンプル眼7によって形成されるシステム全体の有効開口数NAeffを、前述のように約0.2に等しい(NAeye≒0.2)眼の開口数NAeyeの値から、0.9より大きい値(NAeye>0.9)まで増加させるように構成されている。実際、そのような有効開口数NAeyeは、
NAeff=neye・sin(Reye/feff) [2]
と定義される。式中、nは媒質(すなわちサンプル眼7)の屈折率であり、Reyeはサンプル眼7の半径であり、feffは光学出射ユニット19ならびにサンプル眼7の角膜およびレンズ8によって形成される出射アセンブリの有効焦点距離である。
【0034】
そのような有効開口数NAeffの定義は、対物レンズ6(または6’)に入射する励起光ビームの半径rがサンプル眼7の半径Reyeよりも短くない、有利な使用モードを考慮に入れている。しかしながら、対物レンズ6(または6’)に入射する励起光ビームの半径rがサンプル眼7の半径Reyeより短い場合、有効開口数はneye・sin(r/feff)に等しいことに留意されたい。
【0035】
知られているように、互いに距離d離れて配置された、屈折力KobjおよびKeyeをそれぞれ有する2つの薄いレンズを含むシステムの有効屈折力Keffは、
【数2】

に等しい。式中、
eff=1/feff [4]
obj=1/fobj [5]
eye=1/feye [6]
であり、nは、眼のサンプル7と対物レンズ6(または6’)との間の媒質の屈折率であり、特に、空気の場合には、nは1に等しいと推定することができ、一方、図2に示されるサンプル眼7と接触しているアダプティブレンズ6’の場合には、nは、レンズ6’とサンプル眼7との間に介在する液体の屈折率に等しくなり得る(しかしながら、この場合、距離dはゼロ、すなわちd=0であると推定することができ、寄与率d・Kobj・Keye/nもゼロである)。
【0036】
特に、サンプル眼に関するすべての光学特性、すなわち焦点距離feye、半径Reye、屈折率neye、および結果として開口数NAeye、および屈折力Keyeは、例えば、母集団の平均値または制限値に等しい定数と考えることができる。
【0037】
したがって、式[2]によって与えられる有効開口数NAeffを0.9よりも高い値とするために、本発明による装置は、焦点距離fobj、および結果として屈折力Kobjを有する対物レンズを、サンプル眼7から(すなわちサンプル眼7の角膜から)距離d離れた位置に位置決めし、それによって、距離d(またはその範囲)が与えられると、対物レンズの焦点距離fobjの値は、式[3]によって決定される。
【0038】
この目的のために、本発明による装置は、患者のサンプル眼7の角膜およびレンズ8が光学出射ユニット19の対物レンズ6(または6’)に対面するように、頭部を支持するように構成され、患者のサンプル眼7を、サンプル眼7(すなわち、その角膜)が光学出射ユニット19の対物レンズ6(または6’)から距離d離れた発射位置に位置決めするように構成された、従来の患者の頭部支持および位置決めユニット(図示せず)を含み、このようにして、光学出射ユニット19ならびにサンプル眼7の角膜およびレンズ8は、式[2]によって与えられる有効開口数NAeffを有する光出射アセンブリを形成する。サンプル眼7が出射位置にあるとき、光学出射ユニット19の対物レンズ6(または6’)からサンプル眼7までの距離dは、20mm以下、任意選択的に10mm以下、より任意選択的に5mm以下、さらにより任意選択的に2mm以下(例えば、図2の場合、距離dはゼロ、すなわちd=0)であることが有利である。限定ではなく例として、患者の頭部支持および位置決めユニットは、顎支持部および/または患者の前頭部支持部を含むことができ、任意選択的に、1つまたは複数のセンサ、例えば、光検出器および近接センサなどの、近接センサおよび接触センサを含む、またはそれらからなる群から選択されるセンサが、患者の頭部が動作位置(動作位置で、患者のサンプル眼7は出射位置にある)にあるか否かを示してもよい。
【0039】
このような、光学出射ユニット19の対物レンズ6(または6’)ならびにサンプル眼7の角膜およびレンズ8によって形成される出射アセンブリの構成は、励起光ビームの直径に依存する、システムの空間分解能を高めることを可能にし、λを第1の光源1の波長としたとき、サンプル眼7の眼底でλ/2に等しい分解能を提供し得る。提供し得る分解能は、任意選択的に、走査のオーバーサンプリング技術を使用し、オーバーサンプリングに適用されるデコンボリューションアルゴリズムなどのアルゴリズムを使用すると、λ/4に等しい。実際、上述のように、ベッセルビームは、その非回折性のおかげで、伝搬方向に関して約λ/(2・NA)に等しい横方向寸法を有し、NA=1では約λ/2の直径が与えられる。ベッセルビームは発散することなく伝搬し、λ/2に等しい直径に到達することを可能にするため、そのような値は、サンプル眼7の眼底の平面を走査することができる、平面「x-y」における角度分解能α/βでもある。
【0040】
図3は、従来技術の装置における異なる複数のモードの集束ビームと、本発明による装置における集束ビームとの比較を示す。図3aは、従来技術の装置における(非ベッセル)励起ビームの集束の概略図を示し、ビームは、光学システムの集束面A上に配置された、サンプル眼の網膜上に集束され、網膜上の励起スポットのサイズは、(光が瞳孔全体を満たすと仮定して)サンプル眼の瞳孔サイズおよび焦点距離に依存する。
【0041】
図3bは、本発明による装置における励起ビームの集束の概略図を示し、光出射アセンブリは、瞳孔と網膜との間の平面A上に励起ビームを集束させるように、光学出射ユニット19の対物レンズ6(または6’)ならびにサンプル眼7の角膜およびレンズ8によって形成される。励起ビームは、眼の内部にベッセルビームを形成するように生成され、ベッセルビームは、発散することなく、平面Aから網膜までλ/(2×NAeff)に等しい直径(および横方向分解能t)で伝搬する。上述のように、条件NAeff>0.9、および対物レンズ6(または6’)とサンプル眼7(すなわち、サンプル眼7の角膜)との間の距離dは、対物レンズ6(または6’)の特性、特に使用される対物レンズの焦点距離fobjを一義的に決定する。この距離dは、アダプティブレンズ6’がサンプル眼7に接触している場合はゼロに等しく、単一または二重のアダプティブレンズ6の場合はいずれの場合も小さい。
【0042】
図3cは、従来技術の装置における(非ベッセル)励起ビームの集束の概略図を示し、励起ビームは瞳孔と網膜との間の平面A上に集束されている。網膜の照射範囲は、本発明による装置に対して明らかに大きく、その結果として分解能が低下することは明白である。
【0043】
例えばクルクミン(本明細書で単に例として参照される)などの蛍光分子で標識された、タンパク質などの、眼底に含まれる光源の存在下では、蛍光分子は、光学ユニット19を部分的に通過し光学ユニットから蛍光光ビームとして出射する励起光ビームの放射光よりも長い波長で、等方的に放射する。蛍光光ビームは励起光ビームと実質的に平行であり、眼の照射および励起蛍光ビームは同一の方向に沿って行われ、その際、本発明による装置は後方散乱システムに基づき、照射および検出は同一の長手方向軸に沿って行われる。第1のダイクロイックフィルタ4は、蛍光光ビームを透過し、干渉除去フィルタ9に向けるように構成されている。干渉除去フィルタ9は、眼内組織の自家蛍光に対する特定のマーカによる蛍光の波長、および励起光ビームの散乱および/または反射による残留バックグラウンドに対して、装置の感度を最大にすることを可能にする。
【0044】
干渉除去フィルタ9を通過後、蛍光ビームは、光学ユニット19の効果を補償し、且つセンサデバイス11上に、蛍光ビームを集束するように構成された撮像光学ユニット10(単純化のため単一レンズとして図1図2および図4に示される)を通過する。センサデバイス11は、励起光ビームが走査システム5から出射する各角度位置α/βであって、サンプル眼7の網膜上の位置x/yに対応する各角度位置α/βについて蛍光ビーム強度を検出するように構成されている。その後、走査システム5の、各々の個別位置で得られた信号を合成することによって、画像が得られ、したがってそれは数値計算された画像である(網膜の位置x/yに応じた各位置α/βについて、蛍光強度信号が読まれ、その後、二次元画像を再構成するために、x/y位置と、強度とのマッピングが実行される)。このようなセンサデバイス11は、例えば単一の光電子増倍管もしくは単一のアバランシェダイオードなどの単一の検知素子、あるいは例えば複数の光電子増倍管もしくは複数のアバランシェダイオードなどの複数の検知素子を含むことができ、検知素子は、「x-y」平面における分解能を改善することができる蛍光ビームの空間分布に関する情報を得て、共焦点顕微鏡法から借用したアルゴリズムを使用して、蛍光を発した分子の長手方向位置(「z」軸)を定義するように構成されている。
【0045】
図4は、本発明による蛍光顕微鏡装置の第3の実施形態を概略的に示しており、撮像センサ11は、複数の検知素子を含み、各々が、空間フィルタリングマスクを構成する複数の13個のマイクロレンズのうち、1つのマイクロレンズに双方向に結合される。任意選択的に、図4に概略的に表される第3の実施形態の撮像センサ11は、CCDまたはSCMOSタイプのアレイセンサを使用することによって作製される。上記第3の実施形態は、「z」軸の特定の位置に対応してサンプル眼7内に配置されたマーカによって発せられる蛍光信号を検出するように構成されている。複数のマイクロレンズによって遮断されたフーリエ面内またはフーリエ面と焦点面(すなわち像面)との間の中間面内の光照射野の分布は、個々のセンサの信号強度またはCCDもしくはSCMOSアレイの画素を互いに関連づける、空間周波数のフーリエ解析または他のアルゴリズムによって、蛍光強度情報だけでなく、光源の「z」位置に関連する情報も取得可能にし、それによって、本発明の装置が蛍光分子の3Dマッピングを再構成することを可能にする。
【0046】
任意選択的に、前述の実施形態は、第1の光源1と平行な第2の光源(図示せず)を有してもよく、第2の光源は、ベッセルビームに合成された励起光ビームによって走査される部分よりも大きく(例えば100×100倍大きい)、そのように走査される部分を含む、サンプル眼7の追加部分を励起するように構成された追加励起光ビームを生成して、眼内組織の自家蛍光を飽和させる。実際、眼内組織の自家蛍光は、タンパク質、または網膜で観察される他の特定の分子の識別に使用可能なマーカの蛍光の減衰と比較して、非常に急速に減衰し、それによって、より広い視野での最初の露光を使用して、決定された走査部分の自家蛍光を飽和させ、次にその部分をベッセル励起ビームで分析して超解像マッピング(すなわちλ/2、任意選択的にλ/4)を作成することができる。換言すると、一旦励起されると、自家蛍光は飽和し、マーカの減衰時間よりもはるかに長い再生時間を必要とし、それによって、単一の非集束光パルスで一部分を励起し、次にベッセルビームで自家蛍光しない飽和部分を走査することができる。本発明の好ましい実施形態では、第1の光源1と平行な第2の光源は、眼内組織の自家蛍光の減衰時間に等しい周期を有する単一パルスで周期的に起動される。
【0047】
図5は、本発明による蛍光顕微鏡装置の第4の実施形態を概略的に示しており、装置100’は、サンプル眼7の網膜下構造を撮像するための近赤外(NIR)で動作する広視野撮像システム400を備え、広視野撮像システム400は、視神経の位置またはサンプル眼7の識別可能な血管構造の位置などのマーキング点に対する励起光ビームの位置を参照しながら、走査システム5の空間基準を取得するように構成されている。本発明の上記第4の実施形態では、走査システム5から出射する励起光ビームは、その後、第2のダイクロイックフィルタ12に入る。ダイクロイックフィルタ12は、励起光ビームを光学出射ユニット19に向けて反射し、光学出射ユニット19から出射する蛍光光ビームを走査システム5に向けて反射するように構成されている。第2のダイクロイックフィルタ12はまた、システム400から出射する第1のNIR光ビーム(すなわち、0.78~3マイクロメートルの範囲の波長を有する近赤外帯域内の)を透過し、光学出射ユニット19を通って、サンプル眼7に向かうようにし、サンプル眼7の網膜下構造によって反射され、光学出射ユニット19を通過する第2のNIR光ビームを透過し、システム400に向けるように構成されている。
【0048】
近赤外で動作する広視野撮像システム400は、第2の除去フィルタ14を通過し、その後第3のダイクロイックフィルタ15に入る第1のNIR光ビームを生成する第3の光源29を含み、第3のダイクロイックフィルタ15は、第1のNIR光ビームを反射し、第2のダイクロイックフィルタ12および光学出射ユニット19を通過してサンプル眼7に向かわせるように構成されている。サンプル眼7の網膜下構造はNIR光を反射し、その結果、第2の反射NIR光ビームは、光学出射ユニット19を通過して第2のダイクロイックフィルタ12に向かって後方に戻り、第2のダイクロイックフィルタ12は第2の反射NIR光ビームを透過して第3のダイクロイックフィルタ15に向け、次に、第3のダイクロイックフィルタ15は、上記第2の反射NIR光ビームを透過して第2の干渉除去フィルタ16に向けるように構成されており、第2の干渉除去フィルタ16は、第2の反射NIR光ビームの波長に対して、装置の感度を最大にすることを可能にする。第2の干渉除去フィルタ16を通過後、第2の反射NIR光ビームは、撮像用の第3のレンズ17を通過する。撮像用の第3のレンズ17は、第2の反射NIR光ビームを、任意選択的にはCCDセンサまたはSCMOSセンサである撮像用のNIRセンサデバイス18に集束させる。
【0049】
任意選択的に、NIRセンサデバイス18は、眼の位置の変動を数値で表示し、それによって一連の画像から、観察領域の追跡を計算して、励起光ビームの角度位置データを補償するために、少なくとも100フレーム/秒の撮像周波数で作動される。
【0050】
本発明による装置のベッセルビーム生成光学ユニット2は、有利には、図6Aおよび図6Bにそれぞれ概略的に示されるように、複数の誘電体層からなる二次元格子などの、光学出射ユニット19のフーリエ面上に配置された静的光学位相フィルタ、任意選択的にアキシコンレンズ21、さらに任意選択に位相マスク22を備えたアキシコンレンズを含むことができる。
【0051】
あるいは、本発明による装置のベッセルビーム生成光学ユニット2は、有利には、空間光変調器(SLM)などの、光学出射ユニット19のフーリエ面上に配置された動的光学フィルタを含むことができる。空間光変調器(SLM)は、図7Aおよび図7Bにそれぞれ概略的に示されるように、第1の光源1によって出射されたビームのための位相SLM変調器23であってもよいし、第1の光源1によって出射されたビームのための振幅SLM変調器24であって、後方に、SLM変調器24から出射する光ビームの領域のフーリエ変換を可能にするフーリエレンズ25を伴う、振幅SLM変調器24であってもよい。
【0052】
図6および図7は、レンズ8とサンプル眼7の眼底との間に配置され、任意選択的にはサンプル眼7の眼底上に配置された平面Aに対応するベッセルビーム内への、励起光ビームの合成を概略的に示し、平面Aは、励起光ビームの方向と直交している(すなわち、z軸としても示される光軸に対して直交している)。
【0053】
本発明による装置の走査システム5は、例えばガルバノミラー26を有する走査システムなどの、標準タイプのものとすることができ、図8Aはその一例を概略的に示す。好ましい実施形態では、図8Bに概略的に示されるベッセルビーム走査システム5は、回転の往復変位によってサンプル眼7の異なる走査形状が得られるように、独立して回転するように構成された、第1および第2の楔形部分(参照番号27、28で示される楔形フィルタ)を含む。特に、走査システム5の2つの楔形部分27、28の独立して回転する性質は、それらの相互位置、および回転速度に任意の差を(連続的または段階的に)生じさせ、同心のらせん形または擬似ランダムな円形などの、異なる走査形状を形成することを可能にする。好ましい実施形態では、2つの楔形部分27、28の動きは、2つの楔形部分27、28の、少なくとも1/50度に等しい角度位置の分解能と同期して制御される2つの別個のモータによって発生し、したがって走査分解能は、±1°の視域(視野)において少なくとも1マイクロラジアンである。この走査システム5は、生成光学システム2の開口数を制限することなく、ベッセルビーム生成光学システム2とサンプル眼7の外面(すなわち角膜の外面)との間の距離を最小にすることを可能にし、特に、走査が、楔形部分27、28の角度、使用されるガラスの屈折率、および回転角度に依存するため、小さい角度に対して極めて正確な走査を行うことを可能にし、最終的には、(ガルバノミラーを有する走査システムには存在する)往復運動が無いために、走査の結果として得られる画像の品質および精度を低下させ得る振動が排除される。
【0054】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明し、いくつかの変形形態を提案したが、当業者であれば、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の保護範囲から逸脱することなく、他の変形形態および変更形態をなし得ることを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B