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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-27
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】鋳造システム
(51)【国際特許分類】
   B22D 41/26 20060101AFI20220128BHJP
   B22D 43/00 20060101ALI20220128BHJP
【FI】
B22D41/26
B22D43/00 C
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2019528054
(86)(22)【出願日】2018-06-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 GB2018051633
(87)【国際公開番号】W WO2019002823
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-03-26
(31)【優先権主張番号】17275093.7
(32)【優先日】2017-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511239074
【氏名又は名称】フォセコ インターナショナル リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Foseco International Limited
【住所又は居所原語表記】1 Midland Way,Central Park,Barlborough Links,Derbyshire S43 4XA,United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】ラビナ,ダヴィド
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-34657(JP,U)
【文献】特開昭53-149824(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0075570(KR,A)
【文献】特開昭53-29230(JP,A)
【文献】特開平2-11254(JP,A)
【文献】特開平7-88627(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 33/00-47/02
B22C 5/00- 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属を鋳造するためのシステムであって、
鋳型であって、入口を有する鋳造キャビティ、および鋳型の上面と入口との間の穴を含む鋳型と、
漏斗と中空の軸とを含むシュラウドであって、漏斗は、上面に隣接して鋳型の外側に配設され、中空の軸は穴内に受け入れられてその中で移動可能である、シュラウドと、
鋳型の上面に配設される持上げ機構であって、シュラウドを取鍋ノズルに係合させるためにシュラウドの漏斗を上面から離れて持ち上げるように動作可能である、持上げ機構とを含むことを特徴とするシステム。
【請求項2】
シュラウドを鋳型に対して回転させるための回転機構をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
持上げ機構は、シュラウドを鋳型に対して回転させるようにさらに動作可能であることを特徴とする、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
持上げ機構は、シュラウドの持上げと関係なく独立して、シュラウドの回転を生じさせることを可能にすることを特徴とする、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
持上げ機構は、鋳型の表面に装着される第1部分と、シュラウドの漏斗を支持する第2部分とを含み、第2部分は第1部分に対して移動可能であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
第1部分の位置は、鋳型に対して固定されており、第2部分は、軸が鋳型の穴内に実質的に受け入れられる第1位置と、軸の一部が穴から持ち上げられる第2位置との間で移動可能であることを特徴とする、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
第1部分は、鋳型に対して移動可能であり、第1部分は軸が鋳型の穴内に実質的に受け入れられる第1位置と、軸の一部が穴から持ち上げられる第2位置との間で移動可能であることを特徴とする、請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
第1位置と第2位置との間の第1部分の移動は、軸の回転のない軸の持上げをもたらすことを特徴とする、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
持上げ機構は、第1部分と鋳型の表面との間に設けられる第3部分を含むことを特徴とする、請求項7または8に記載のシステム。
【請求項10】
持上げ機構は、油圧または空気圧アクチュエータもしくはモータを含むことを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
持上げ機構は、円筒カムを含むことを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
持上げ機構は、同心の外側カラーおよび内側カラーを含み、内側カラーおよび外側カラーの一方は、シュラウドの漏斗を支持し、鋳型の上面に装着される内側および外側カラーの他方の傾斜面上に載っているホロアを有し、内側カラーおよび外側カラーの相対的回転がシュラウドの直線運動を引き起こすことを特徴とする、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
各傾斜面が内側カラーまたは外側カラーの一部にわたって周方向に延びる、複数の傾斜面が設けられることを特徴とする、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
シュラウドは、内側カラーに取付けられ、内側カラーは、外側カラーの傾斜面に載っているホロアを有することを特徴とする、請求項12または13に記載のシステム。
【請求項15】
持上げ機構は、内側カラーおよび外側カラーの相対回転をもたらすハンドルをさらに含み、随意に、ハンドルは、ホロアに取り付けられる、またはホロアを構成することを特徴とする、請求項12~14のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項16】
シュラウドの漏斗に配設されるガスケットをさらに含むことを特徴とする、請求項1~15のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項17】
穴と鋳造キャビティの入口との間に配設される1または複数のフィルタをさらに含むことを特徴とする、請求項1~16のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項18】
1または複数のフィルタは、穴に接続され、シュラウドの端部を受け入れるハウジング内に配設されることを特徴とする、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
ハウジングと鋳造キャビティの入口との間にランニングシステムをさらに含むことを特徴とする、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
ハウジングは、衝撃パッドを収容することを特徴とする、請求項18または19に記載のシステム。
【請求項21】
少なくとも1つの出口が、シュラウドの端部に隣接する軸に設けられ、衝撃パッドは、軸に当接する表面を有する少なくとも1つの支柱を含み、シュラウドが、支柱が出口と整列して出口を閉じ出口を通る金属の流れを妨げる位置と、出口が少なくとも部分的に開く位置との間で回転可能であることを特徴とする、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか1項に記載のシステムを提供する工程と、
溶融金属を収容する底注ぎ取鍋を、取鍋の基部のノズルがシュラウドの漏斗の略垂直方向上方に配設されるように、鋳型の上方に位置付ける工程と、
シュラウドの漏斗を鋳型の上面から持ち上げてシュラウドをノズルに係合させるように持上げ機構を操作する工程と、
ノズルを開けて、これによって溶融金属を取鍋からシュラウドに流入させる工程と、
ノズルを閉じて溶融金属の流れを止める工程と、
シュラウドの漏斗を鋳型の上面に向かって下降させてシュラウドをノズルから離脱させるように持上げ機構を操作する工程とを含むことを特徴とする溶融金属を鋳造する方法。
【請求項23】
シュラウドの漏斗を持ち上げるように持上げ機構を操作する工程は、鋳型に対するシュラウドの回転をももたらすことを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
持上げ機構を操作する工程は、鋳型に対してシュラウドを回転させることなくシュラウドの漏斗を持ち上げ、
ノズルを開けた後、シュラウドを回転させる工程をさらに含むことを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融金属を鋳造するためのシステムに関する。特に、本発明は、取鍋と鋳型内の鋳造キャビティとの間で溶融金属を搬送するためのシュラウドを含む鋳造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
金属鋳造プロセスにおける主な課題の1つは、空気の取り込みおよび表面酸化膜を回避することである。これらは気泡および酸化物バイフィルムを含む欠陥につながり得るものであり、それは鋳造品に亀裂を生じさせる。
【0003】
中および重鋼鋳物は、従来、底注ぎ取鍋から鋳造され、これはその基部に配設されるノズルを介して溶融金属を解放する。ノズルは取鍋の底部に設けられるストッパロッドまたは摺動ゲートによって動作される。取鍋は、クレーンによって、鋳型内に供給するダウンスプルーに接続される円錐状湯だまり上に持ち上げられる。取鍋作業者は、取り付けられた油圧機構によってストッパを持ち上げるまたは摺動ゲートを開けることによってノズルを開けて注湯プロセスを開始する。この鋳造方法の主な欠点は、湯だまりが大量の空気を金属内に取り込むことである。この取り込まれた空気は、ランニングシステムを介して、そして鋳物内に気泡として溶融金属とともに移動し、酸化物バイフィルムにつながる。
【0004】
さらに、金属酸化は、溶融金属がセラミックタイルから組み立てられる従来のゲーティングシステムを通過するときに生じるかもしれない。金属は重力下で加速するので、金属流が狭まり、これが真空効果を生み出し、空気を、ランニングシステムを形成するセラミックパイプの封止されていない継目を通って金属内に吸引させる。金属酸化はまた、金属しぶきと、鋳型内部の大気中の酸素と反応する乱流とに起因し得る。
【0005】
溶融金属の空気との接触は、酸化を生じるだけではなく、金属中に溶解される大気中の水分から窒素ガスおよび水素をもたらし、これが鋳鋼に非常に悪い影響を与える。金属中に閉じ込められた空気の量は、注湯プロセスに応じて変化し、そして、その空気の量が、鋳物の清浄度、機械的特性および表面品質に悪影響を及ぼす重大な非金属介在物の発生源であることが分かっている。
【0006】
空気取り込みに起因する問題に加えて、従来の鋳造プロセスのさらなる欠点は、取鍋がクレーンから吊るされ、その重心が取鍋内の金属体積に応じて変化するので、湯だまりの中央上にノズルを位置付けることが困難であるということである。他の問題は、従来方法での注湯中に、金属しぶきがすぐ近くの取鍋作業者およびスタッフに重大な危険を及ぼすことである。クレーンに保持された取鍋は、いつでも移動可能である。ノズルが湯だまり上に正確に位置付けられているか否かを判断することが困難であるので、しぶきは特にノズル開放中危険である。
【0007】
当該技術において知られている金属鋳造プロセスにおける空気取り込みの問題に対する解決手段の1つは、接触注湯である。この技術は湯だまりの使用を除去し、代わりに、取鍋ノズルが鋳型のダウンスプルーへの入口と直接接触して配置される。したがって、取鍋ノズルとダウンスプルー入口との間の位置合わせが重要である。再び、この技術の欠点は、クレーンから吊るされた取鍋を移動させ正確に配設する必要があることである。
【0008】
ハリソンスチールキャスティングスカンパニーは、注湯流内への空気取り込みによって生じる再酸化の問題に対する代替の解決手段を提案している。ハリソンプロセスは、底注ぎ取鍋のノズルの下に溶融シリカシュラウドを取付けることを含む。鋳型には、シュラウドを受けるためのサイドライザが設けられる。サイドライザの下には鋳造キャビティに注ぐ注ぎ井が設けられる。シュラウドを取り付けた状態で、取鍋を鋳型上に整列させ、次いでシュラウドをサイドライザ内に挿入するように下降させる。次いで、ストッパロッドを、取鍋内の溶融金属がノズルおよびシュラウドを介して鋳型内に流れ込むように開放位置に移動させる。一旦鋳型が満たされると、ストッパを閉じる。取鍋をシュラウドが鋳型から離れるまで持ち上げ、次いで次の鋳型上に移動してプロセスを繰り返す。
【0009】
しかしながら、接触注湯法と同様に、ハリソンプロセスの重大な欠点は、シュラウドをサイドライザ内に挿入するために、取鍋をクレーン上で操作することが困難であることである。また、作業者は大きな上昇取鍋の下で作業する必要があるので、シュラウドをノズルに装着することは作業者にとって困難であり、潜在的に危険である。
【発明の概要】
【0010】
本発明はこれらの問題を念頭において考案された。
【0011】
本発明の第1の態様に従えば、溶融金属を鋳造するためのシステムであって、
鋳型であって、入口を有する鋳造キャビティ、および鋳型の上面と入口との間の穴を含む鋳型と、
漏斗と中空の軸とを含むシュラウドであって、漏斗は、上面に隣接して鋳型の外側に配設され、中空の軸は穴内に受け入れられてその中で移動可能である、シュラウドと、
鋳型の上面に配設される持上げ機構であって、シュラウドを取鍋ノズルに係合させるためにシュラウドの漏斗を上面から離れて持ち上げるように動作可能である、持上げ機構とを含む、システムが提供される。
【0012】
シュラウドの使用は、取鍋と鋳型との間の注湯時の金属の再酸化を低減し、これによって鋳物への介在物の導入を減少させる。また、シュラウドは金属の流れの乱流を制御するとともに低減し、これは空気の取り込みおよび鋳型の摩耗の可能性を低減し、次に介在物のレベルを減少させる。介在物およびラップ欠陥のレベルを低減することは、全体的に改善された鋳物表面仕上げをもたらす。しかしながら、シュラウディングは一般的によく知られているけれども、本発明の利点は、シュラウドを鋳型自体内(すなわち鋳型の表面と鋳造キャビティとの間に延びる穴内)に配設することによって、そして取鍋に係合するように、鋳型上にシュラウドを上方に持ち上げる持上げ機構を設けることによって達成される。
【0013】
これは、シュラウドを取鍋ノズルに固定し、シュラウドを鋳型に近接させるために取鍋全体を下降させる先行技術のシステムに対して多数の利点を有する。第一に、本発明は、極めて危険である、シュラウドを取鍋に取付けるために大きな上昇取鍋の下で作業者が作業する必要性を回避する。第二に、鋳造前にシュラウドを取鍋に装着したり、シュラウドを各鋳型キャビティ内に下降させ、注湯後再び持ち上げたりする時間の無駄がないので、鋳造プロセスの効率が著しく改善される。本発明の持上げ機構は、シュラウドの取鍋ノズルとの素早く安全な係合および離脱を可能にする。また、これは注湯直後に取鍋からスラグを空にすることを可能にし、よりきれいな取鍋をもたらす。第三に、各鋳型キャビティはそれ自体シュラウドを収容しており、シュラウドは取鍋ノズルと係合するために上方に持ち上げるので、本発明は、取鍋を、各鋳型内に、予め取り付けられたシュラウドとともに正確に操作する必要性を回避する。これは、注湯間の取鍋の操作性をより容易にし、また恒久的に取鍋に固定されるシュラウドの挿入および取出しによって鋳型を損傷させる危険性を低減する。
【0014】
持上げ機構は、鋳型の上面に装着され、取鍋のノズルと係合しているシュラウドの漏斗を持ち上げるように機能する。シュラウドの軸は鋳型の穴内で移動可能であるので、シュラウド全体が持上げ機構の操作によって上方に持ち上げることができる。
【0015】
いくつかの実施形態において、システムは、シュラウドを鋳型に対して回転させるための回転機構をさらに含む。回転機構は、持上げ機構と組み合わされてもよい。たとえば、持上げ機構によるシュラウドの上方は、またシュラウドの回転をもたらしてもよく、シュラウドの回転は持上げをもたらしてもよい。したがって、いくつかの実施形態において、持上げ機構は、シュラウドを鋳型に対して回転させるようにさらに動作可能である。いくつかの実施形態において、持上げ機構は、シュラウドの持上げと関係なく独立して、シュラウドを回転させるように動作可能である。
【0016】
いくつかの実施形態において、持上げは、鋳型の表面に(直接的または間接的に)装着される第1部分と、シュラウドの漏斗を支持する第2部分とを含み、第2部分は第1部分に対して移動可能である。
【0017】
いくつかの実施形態において、第1部分の位置は、鋳型に対して固定されており、第2部分の移動は、鋳型から離れ取鍋ノズルに係合する漏斗の持上げをもたらす。いくつかの実施形態において、第2部分は、軸が鋳型の穴内に実質的に受け入れられる第1位置と、軸の一部が穴から持ち上げられる第2位置との間で移動可能である。
【0018】
いくつかの実施形態において、第1部分は、鋳型に対して移動可能であり、第1部分は軸が鋳型の穴内に実質的に受け入れられる第1位置と、軸の一部が穴から持ち上げられる第2位置との間で移動可能である。いくつかの実施形態において、第1部分は、第2部分の移動なしで第1位置と第2位置との間で移動可能である。第1位置と第2位置との間の第1部分の移動は、第2部分および/または軸の回転のない軸の持上げをもたらしてもよい。
【0019】
いくつかの実施形態において、持上げ機構は、第1部分と鋳型の表面との間に設けられる第3部分をさらに含む。第3部分は、鋳型に対する第1部分の移動を容易にしてもよい。
【0020】
いくつかの実施形態において、持上げ機構の第1部分または第3部分(存在すれば)は、鋳型の上面に固定される基部を含み、またはから成り、これによって持上げ機構を鋳型に固定する。
【0021】
持上げ機構が第1部分に対する第2部分の移動、または鋳型および任意に第2および/または第3部分に対する第1部分の移動を提供するように実施可能である多数の方法があることは理解されるであろう。たとえば、持上げ機構は、ねじまたはカム式機構、ジャッキ(パンタグラフジャッキ)、または伸縮線形アクチュエータなどの機械的アクチュエータを含んでもよい。あるいは、持上げ機構は、油圧または空気圧アクチュエータもしくはピストンを含んでもよい。いくつかの実施形態において、持上げ機構はモータを含む。
【0022】
いくつかの実施形態において、基部と鋳型の上面との間にシールが設けられる。
【0023】
いくつかの実施形態において、持上げ機構の第2部分とシュラウドの漏斗との間にシールが設けられる。
【0024】
いくつかの実施形態において、持上げ機構の第1部分と、第2および/または第3部分との間に実質的に間隙はない。
【0025】
取鍋ノズルとシュラウド漏斗との間、持上げ機構と鋳型との間、持上げ機構とシュラウドの漏斗との間にシールをすることによって、そして持上げ機構の第1部分と第2および/または第3部分との間に、実質的に間隙がないか、非常に狭い間隙があることによって、金属が取鍋からシュラウドを介して鋳型内の鋳造キャビティに流れることができる実質的に閉じたシステムを提供することができる。これは、再酸化を低減し、鋳物内への介在物の形成を低下させる。しかしながら、システムを完全に気密にすることはできないことは理解されるであろう。
【0026】
いくつかの実施形態において、持上げ機構は、円筒カムを含む。当該技術において知られているように、円筒カムは、ホロアがシリンダの表面に乗るカムである。表面は傾斜しており、スパイラルまたはヘリックスを形成する。表面は、シリンダの湾曲壁または湾曲面内に形成される溝として形成されてもよく、シリンダの端部を形成してもよい。ホロアは、表面に沿って乗るとき、シリンダの長手軸に平行な並進運動を受け、それによって回転運動を直線運動に変換する。
【0027】
いくつかの実施形態において、持上げ機構は、同心の外側カラーおよび内側カラーを含み、内側カラーおよび外側カラーの一方は、シュラウドの漏斗を支持し、鋳型の上面に(直接的または間接的に)装着される内側および外側カラーの他方の傾斜面または螺旋面(すなわちカム)上に載っているホロアを有し、内側カラーおよび外側カラーの相対的回転がシュラウドの直線運動を引き起こす。
【0028】
いくつかの実施形態において、傾斜面は、内側カラーまたは外側カラーの上端部に形成される。
【0029】
いくつかの実施形態において、シュラウドは、内側カラーに取付けられ、内側カラーは、鋳型の上面に(直接的または間接的に)装着される外側カラーの傾斜面に載っているホロアを有する。いくつかの実施形態において、外側カラーは、第1部分に対応するようにみなされてもよく、内側カラーは持上げ機構の第2部分に対応するようにみなされてもよい。
【0030】
いくつかの実施形態において、外側カラーの位置は、鋳型に対して固定され、外側カラーに対する内側カラーの回転は、シュラウドの直線運動を引き起こす。このような実施形態において、シュラウドそれ自体も持ち上げられるにつれて回転することは理解されるであろう。
【0031】
いくつかの実施形態において、外側カラーは鋳型および内側カラーに対して移動可能である。これは、第1部分と鋳型の表面との間に第3部分を設けることによって促進されてもよい。このような実施形態において、外側カラーの回転は、内側カラーおよびそこに支持されるシュラウドの回転のないシュラウドの直線運動をもたらす。次いで、内側および外側カラーの両方の回転(それらの間の相対運動がない)は、直線運動のないシュラウドの回転を引き起こす。この構成は、金属の流れをよりよく制御するために使用することができる。たとえば、外側カラーの回転によるシュラウドの持ち上げは、シュラウドを通る金属の流れを可能にしてもよく、シュラウドのその後の回転は、追加の出口を開け、金属の流れを増加させるために使用されてもよい。
【0032】
いくつかの実施形態において、複数の傾斜面が設けられる。各傾斜面は、カラーの一部に周方向にわたって延びてもよい。いくつかの実施形態において、2つ、3つまたは4つの傾斜面が設けられる。たとえば、3つの傾斜面が設けられてもよく、それぞれ周方向に約120°の角度にわたって延びてもよい。
【0033】
いくつかの実施形態において、持上げ機構は、内側カラーおよび/または外側カラーの相対回転をもたらすハンドルをさらに含む。いくつかの実施形態において、ハンドルは、ホロアに取り付けられる、またはホロアを構成する。
【0034】
持上げ機構は、任意の適切な材料から成っていてもよい。いくつかの実施形態において、持上げ機構の少なくとも一部は、鋼などの金属から成る。
【0035】
シュラウドの漏斗は、形状が部分的に球状(凹状)である内面を有してもよい。これは、取鍋ノズルとのボールソケット様係合を可能にする。これは、たとえ取鍋ノズルおよびシュラウド、ならびに/またはシュラウドおよび鋳型が完全に整列していなくても、取鍋ノズルとの安全な接続を提供する。
【0036】
いくつかの実施形態において、システムは、シュラウドの漏斗に配設されるガスケットをさらに含む。ガスケットは、シュラウドとノズルとの間の接続を封止することを確保するのに役立つ。
【0037】
シュラウドは、溶融鉄および鋼などの高温の溶融金属に耐えることが可能な任意の耐火材料から製造されてもよい。適切な耐火材料は、溶融シリカ、プレキャストコンクリート、および等静圧圧縮炭素結合耐火物を含む。いくつかの実施形態において、シュラウドは、溶融シリカから成る。
【0038】
適切な熱および物理的特性を有することに加えて、シュラウドは、高い寸法精度で作られなければならず、これは特定の製造方法(たとえば、シュラウドを形成する材料がストリッピングおよび焼成の前に鋳型内で部分的に硬化され養生されるスリップキャスティング)が他のものよりもより適切であることを意味する。
【0039】
シュラウドの中空の軸が移動可能に受け入れられる鋳型の穴は、鋳型の上面と鋳造キャビティの入口との間に延びる。「間に延びる」ことによって、穴は鋳型の上面と鋳造キャビティの入口との間の全距離にわたって延びてもよく、穴はその距離の一部だけ延びていてもよい。
【0040】
シュラウドの軸は、ほんの少しの間隙をあけて穴内に受け入れられる。いくつかの実施形態において、シュラウドの軸は穴の全長にわたって延びる。シュラウドを密着させ、実質的に全長にわたって延びる軸を有することによって、金属の流れを効果的に制御し、しぶきをなくし、再酸化を減少させることができる。シュラウドと穴との間の間隙に存在する空気は、金属の流れと直接接触せず、したがって空気の取り込みがない。この狭い空隙は、金属が鋳型に入るときにランニングシステムの換気も可能にする。
【0041】
いくつかの実施形態において、鋳造システムはフィルタをさらに含む。フィルタは、穴と鋳造キャビティの入口との間に配設されてもよい。フィルタは、溶融金属から任意の介在物を取り除くように機能する。フィルタは、フローモディファイアとしても作用し、溶融金属が鋳造キャビティに流れ込む前に、溶融金属の乱流を減少させる。フィルタは、当業者に知られた任意の適切な材料から成ってもよい。いくつかの実施形態において、フィルタはジルコニアから成る。
【0042】
いくつかの実施形態において、フィルタは、ハウジング内に配設される。ハウジングは、穴に(直接的または間接的に)接続されてもよい。いくつかの実施形態において、ハウジングは、シュラウドの軸の端部(すなわち漏斗とは反対側の端部)を受け入れる。これらの実施形態において、溶融金属は、穴内に受け入れられるシュラウドを通り、ハウジング内に、鋳造キャビティ内に入る前にフィルタを通って流れる。
【0043】
ハウジングは、断面が正方形状、長方形状、三角形状、六角形状、八角形状または円形状であってもよい。したがって、いくつかの実施形態において、ハウジングは、3つ、4つ、6つまたは8つの側壁を有する。1以上の側壁は、そこに溶融金属が鋳造キャビティまで流れる出口を有してもよい。フィルタは各出口に隣接して配設されてもよい。したがって、ハウジングおよびフィルタ構造は、鋳造キャビティの特定の要件に従って選択可能である。
【0044】
ハウジングは、溶融シリカ、プレキャストコンクリート、耐火粘土および化学結合砂を含む任意の適切な耐火材料から製造されてもよい。いくつかの実施形態において、ハウジングは溶融シリカから成る。
【0045】
いくつかの実施形態において、ハウジングは、耐火衝撃パッドを収容する。これは、溶融金属がシュラウドの端部から流出するときに、溶融金属による鋳型の腐食を防ぐ。
【0046】
シュラウドの(漏斗とは反対側の)端部は、完全に開いていてもよい。あるいは、端部には、溶融金属が通過して流れる開口を有する基部または端部キャップが設けられてもよい。使用時に、基部または端部キャップは、シュラウドが持ち上がる前に、衝撃パッドに取付けられる。
【0047】
衝撃パッドは、溶融シリカ、プレキャストコンクリート、耐火粘土および化学結合砂を含む、溶融金属の熱衝撃および物理的衝撃に耐えることができる任意の適切な耐火材料から製造されてもよい。いくつかの実施形態において、衝撃パッドは、溶融シリカから成る。
【0048】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの出口が、シュラウドの端部に隣接する軸に設けられる。少なくとも2つ、3つまたは4つの出口が設けられてもよい。出口はシュラウドの軸まわりに規則的に離間していてもよい。これらの「水平方向」出口は、シュラウドの端部の開口に加えて、溶融金属がシュラウドを出るためのさらなる流路を提供し、したがって全ての出口が開いているときにより大きな流量を可能にする。
【0049】
軸内の出口を通る金属の流れを制御するための流れ制御手段が設けられてもよい。シュラウドは、各出口が整列し流れ制御手段によって閉鎖され、これによって出口を通る金属の流れを妨げる位置と、各出口が開き(そしてもはや流れ制御手段と整列しない)、これによって金属が出口を通って流れるのを可能にする位置との間で回転可能であってもよい。開放位置と閉鎖位置との間に、出口が部分的に開放している一連の(たとえば連続する)位置があってもよいことは理解されるであろう。このような実施形態において、シュラウドの回転は、金属の鋳物への流量を制御するために有利に使用することができる。
【0050】
いくつかの実施形態において、流れ制御手段は、衝撃パッドによって提供される。
【0051】
いくつかの実施形態において、衝撃パッドは、シュラウドの軸に当接する表面であって、その高さおよび幅が出口を完全に覆うのに十分である表面を有する少なくとも1つの支柱または壁を含んでもよい。支柱または壁の高さは、軸が持上げ機構によって持ち上げられるときに表面が出口を完全に覆うように選択されなければならないことは理解されるであろう。
【0052】
いくつかの実施形態において、シュラウドは、出口を閉鎖しそこを通って流れる金属を妨げるように(各)支柱が出口(またはその各出口)と整列する位置と、その(または各)出口が少なくとも部分的に開放している位置との間で回転可能である。好ましくは、支柱の数は、出口の数に対応する。いくつかの実施形態において、軸は4つの出口を含み、衝撃パッドは4つの支柱を含む。
【0053】
いくつかの実施形態において、衝撃パッドは、シュラウドの軸まわりに延びる壁(すなわちリングを形成する)を含む。壁は、シュラウドの軸において出口と少なくとも部分的に整列可能なように位置付けられる1以上の孔を含む。このような実施形態において、シュラウドは、出口を閉鎖しそこを通る金属の流れを妨げるように出口が壁によって覆われる位置と、その(または各)出口が壁の孔(またはその各孔)と少なくとも部分的に整列し、したがって少なくとも部分的に開放する位置との間で回転可能であり、これによって金属を出口および孔を介してシュラウドから流出させる。
【0054】
いくつかの実施形態において、衝撃パッドの表面は、シュラウドの基部と形状が相補的である領域を含む。この領域は、シュラウドの基部と表面との間の嵌合が衝撃パッドに対するシュラウドの特定の向きにおいてのみ可能であるように形成されてもよい。たとえば、軸の出口が流れ制御手段と整列するときにだけ、基部と表面との間の嵌合が可能であってもよい。したがって、基部と衝撃パッドとの間の相補性は、軸の出口が閉鎖されるときに決定する有用な手段を提供する。支柱または壁は、衝撃パッドの表面から上方に向かって延びてもよい。
【0055】
いくつかの実施形態において、システムは、ハウジングと鋳造キャビティの入口との間にランニングシステムをさらに含む。
【0056】
いくつかの実施形態において、システムは、鋳造キャビティに流体連通するライザをさらに含む。ライザは、鋳型に形成されるキャビティを含む天然砂ライザであってもよく、または一般にフィーダまたは押湯スリーブと呼ばれる補助ライザであってもよい。押湯スリーブは、典型的には、化学結合耐火物形状であり、絶縁性および/または発熱性であってもよい。ライザは、鋳造キャビティと鋳型の上面との間に延びてもよい。ライザまたは押湯スリーブは開放し、大気に露出していてもよく、または天井または蓋を有して閉鎖されていてもよい。いくつかの実施形態において、鋳型は複数のライザを含む。
【0057】
いくつかの実施形態において、システムは、サイドライザを含む。サイドライザは鋳造キャビティに隣接して位置してもよい。サイドライザは、鋳型の下部、すなわち鋳型の上面に対して離れて位置してもよい。シュラウドの軸の端部は、サイドライザに、鋳造キャビティと流体連通して配設されてもよい。
【0058】
いくつかの実施形態において、鋳造キャビティは底部供給される。「底部供給されることによって」、鋳造キャビティは、ランニングシステムから鋳造キャビティの底部に入る溶融金属によって上方に向かって充填される。
【0059】
いくつかの実施形態において、ランニングシステムは、鋳型内の1以上の導管またはランナを含み、各導管は、ハウジングまたはサイドライザの出口と鋳造キャビティとの間に延びる。
【0060】
本発明の鋳造システムは、任意のノズル付き底注ぎ取鍋に適用可能であってもよい。いくつかの実施形態において、取鍋のノズルは形状が部分球状(凸状)または上面が平らなドーム状である。
【0061】
さらに、単一の万能ノズル直径がありとあらゆる鋳造のために使用されてもよい。
【0062】
底注ぎ取鍋から注湯可能な金属の割合または量は、使用されているノズルの直径によって制限される。シュラウドが取り付けられると、次いで金属の流れはシュラウドの軸の内径または穴にさらに応じて制限されてもよい。
【0063】
シュラウドが取鍋に固定され、次いで複数の鋳型を鋳造するために使用される従来の用途では、金属流量は各鋳造に対して同じである。著しく異なるサイズの鋳物が同じ取鍋から鋳造されようとする場合、流量が特定の大きいまたは小さい鋳造サイズには不適当であり、最適化されていない鋳型充填および増加する鋳造欠陥または不良品をもたらす可能性がある。これは、金属の各取鍋に対して、同様のサイズの鋳物が同じ必要ノズルサイズおよび単一のシュラウド直径を用いて製造されなければならないことを意味する。
【0064】
本発明の鋳造システムでは、鋳造毎に新しいシュラウドが使用され、これによって、様々な異なるサイズおよび寸法の鋳物を単一のラン(取鍋)から製造することが有利に可能になる。なぜなら各鋳型はそれ自体のシュラウドを収容し、そのサイズおよび穴直径は鋳物サイズに応じて選択可能であるからである。したがって、使用されるシュラウドのタイプは、取鍋またはノズルタイプ(直径)によって決定されるのではなく、個々の鋳造に最適化されている。たとえば、80mmの穴直径を有するシュラウドと、40mmの穴直径を有するシュラウドとは、ともにそれらを単一のノズルに取付けることが可能な同じ漏斗寸法を有しており、したがって、万能ノズルが取り付けられた同じ取鍋から鋳造するように使用することができる。
【0065】
したがって、本発明のシステムは、より多くの可撓性を有し、現在使用されている典型的なシステムよりも短い鋳造ランに適用可能である。さらなる利点は、清浄なシュラウドが鋳造毎に使用され、したがって介在物の存在をさらに減少させる。
【0066】
したがって、いくつかの実施形態において、システムは、複数の鋳型を含む。各鋳型のシュラウドは、同一の長さおよび/または直径であってもよい。あるいは、異なる鋳型が異なる長さおよび/または直径のシュラウドを収容してもよい。
【0067】
したがって、シュラウドの長さおよび直径は、鋳造のタイプに応じて選択されることは理解されるであろう。たとえば、小形鋳物は30mmの内部穴直径を有するシュラウドを用いて鋳造されてもよいが、大形鋳物は70mmの穴直径を有するシュラウドを必要としてもよい。異なる穴径の異なるシュラウドは、万能ノズルとともに使用可能である。
【0068】
いくつかの実施形態において、シュラウドの穴直径は、20mm~100mm、30mm~80mm、または40~70mmである。
【0069】
シュラウドを鋳型自体内に含め、個々の鋳物に応じてシュラウドを選択することによって、使用されるシュラウドの長さに関して制限がなくなる。いくつかの実施形態において、シュラウドの長さは、1~3メートル、または1.5~2メートルである。
【0070】
鋳型は、金属鋳造において一般的に使用されるような従来の砂型であってもよい。したがって、本発明の鋳造システムは、任意の適切な鋳造鋳物砂システムを用いることによって調製可能である。
【0071】
鋳物砂は、2つの主なカテゴリに分類可能である:化学結合(有機または無機結合剤に基づく)または粘土結合。化学結合鋳物砂結合剤は、典型的には、結合剤および化学硬化剤が砂と混合され、結合剤および硬化剤は直ちに反応し始めるが、砂をパターンプレートのまわりに形作られるのを可能にするのに十分にゆっくりであり、次いで取外しおよび鋳造のために十分に硬化させる、自己硬化システムである。粘土結合造型システムは、結合剤として粘土および水を用い、「生」すなわち未乾燥状態で使用可能であり、一般に生砂と呼ばれる。生砂混合物は、圧縮力下のみにおいては、すぐに流れず、または容易に移動しないので、パターンの周りに生砂を詰め込み、鋳型に十分な強度特性を与えるために、ジョルティング(jolting)、バイブレーティング(vibrating)、スクイージング(squeezing)およびラミング(ramming)の様々な組み合わせが、高い生産性で一様な強度の鋳型を製造するのに適用される。
【0072】
化学結合鋳物砂は、小容量ならびに/または中および大サイズの鉄鋼鋳物の製造に最適であり、典型的には、生砂システムと比較してより高い強度を有する。
【0073】
鋳造練習はよく知れており、たとえばFoseco Ferrous Foundryman’s Handbook (ISBN 075064284 X)の第12章および第13章に記載されている。ノーベークまたは常温効果プロセスとして知られている典型的なプロセスは、砂を、液体樹脂またはケイ酸塩結合剤と適切な触媒とともに、通常、連続ミキサで混合することである。次いで混合砂がバイブレーションおよびラミングの組み合わせによってパターンの周りに詰め込まれ、次いで放置され、その間に触媒が結合剤と反応し始め、砂混合物の硬化をもたらす。鋳型が取扱い可能な強度に達すると、鋳型がパターンから取り外され、化学反応が完了するまで硬化し続ける。押湯スリーブが採用される場合、押湯スリーブはパターンプレート上に配置され、押湯スリーブの周りに混合砂が塗布荒れてもよく、または押湯スリーブは、パターンからの取外し後、鋳型のキャビティ内に挿入されてもよい。同様に、フィルタハウジングおよびフィルタが、適所に取り付けられてもよく、または後で挿入されてもよい。
【0074】
鋳型は、典型的には2つの部分で形成され、次いで鋳造前に組み立てられる。より大きくより複雑な鋳造のためではあるけれども、鋳型はともに組み立てられる3以上の部分を含んでもよい。鋳型は、典型的には、水平方向に分割されるが、いくつかの鋳物形状のために垂直方向に分割されてもよい。
【0075】
砂型は、金属枠内で製造されてもよい。これは鋳型に対する支持を提供する。枠にはハンドルが設けられてもよい。ハンドルは、2つの鋳型部分を持ち上げ、完全鋳型を組立て操作するために使用可能である。
【0076】
本発明の鋳造システムは、鋼鋳物の製造に特に適しているけれども、ねずみ鋳鉄、青銅、銅、亜鉛、マグネシウム、アルミニウムおよびアルミニウム合金などの他の金属を鋳造するためにも使用可能である。
【0077】
いくつかの実施形態において、鋳型は、永久鋳型または金型であってもよい。永久鋳型または金型は、鋳鉄、鋼または当業者に知られている任意の他の適切な材料から成っていてもよい。これらの実施形態は、アルミニウムおよびアルミニウム合金鋳物の製造に適している。
【0078】
本発明のさらなる態様に従えば、第1の態様のシステムを用いた鋳造方法が提供される。
【0079】
方法は、
本発明の第1の態様のシステムを提供する工程と、
溶融金属を収容する底注ぎ取鍋を、取鍋の基部のノズルがシュラウドの漏斗の略垂直方向上方に配設されるように、鋳型の上方に位置付ける工程と、
シュラウドの漏斗を鋳型の上面から持ち上げてシュラウドをノズルに係合させるように持上げ機構を操作する工程と、
ノズルを開けて、これによって溶融金属を取鍋からシュラウドに流入させる工程と、
ノズルを閉じて溶融金属の流れを止める工程と、
シュラウドの漏斗を鋳型の上面に向かって下降させてシュラウドをノズルから離脱させるように持上げ機構を操作する工程とを含んでもよい。
【0080】
いくつかの実施形態において、シュラウドの漏斗を持ち上げるように持上げ機構を操作する工程は、鋳型に対するシュラウドの回転をももたらす。
【0081】
代替実施形態において、持上げ機構を操作する工程は、鋳型に対してシュラウドを回転させることなくシュラウドの漏斗を持ち上げる。このような実施形態において、方法は、ノズルを開けた後、シュラウドを回転させる工程をさらに含んでもよい。
【0082】
いくつかの実施形態において、方法は、鋳型をアルゴンなどの不活性ガスで洗浄することをさらに含む。不活性ガスを保持するために、鋳型は、注湯前に換気を防ぐように閉じられなければならない。たとえば、いくつかの実施形態において、単にシートまたは紙またはカードを通気口の上に配置することによって、任意の開いているライザまたは通気口を閉じる必要があるかもしれない。アルゴンは空気よりも重いので、一旦鋳型が閉じられると、アルゴンは注湯前に漏出することがない。
【0083】
本明細書に記載されたいずれかの実施形態は、そうでないことが述べられていない限り、任意の他の実施形態と適宜組み合わされてもよい。
【0084】
本発明の実施形態が、添付の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0085】
図1】シュラウドの漏斗が取鍋ノズルと係合していない、本発明の第1の態様に従う鋳造システムの斜視図である。
図2】個々の構成要素を示す、図1のハウジングの分解斜視図である。
図3図3aおよび図3bは、図1の持上げ機構を含む2つの構成要素の斜視図である。
図4】シュラウドの漏斗が取鍋ノズルと係合している、図1の鋳造システムの斜視図である。
図5図5aおよび図5bは、鋳型と取鍋との間でずれがある状況における、図1の取鍋ノズルとシュラウドとの間の接続を示す断面図である。
図6】本発明の代替実施形態における3部品持上げ機構の第3構成要素の斜視図である。
図7a】本発明の代替実施形態における、3部品持上げ機構およびそれによって支持されるシュラウドの漏斗の断面図である。
図7b】異なる回転段階における図7aの持上げ機構の斜視図であり、回転前の機構を示す。
図7c】異なる回転段階における図7aの持上げ機構の斜視図であり、回転後の機構を示す。
図8a】本発明の実施形態に従うシュラウドの端部の斜視図である。
図8b図8aのシュラウドで使用される衝撃パッドの斜視図である。
図8c】ハウジングおよび図8bの衝撃パッドと組み立てられた、部分的に開いた位置と完全に開いた位置との間の遷移を示す、図8aのシュラウドの斜視図であり、部分的に開いた位置を示す。
図8d】ハウジングおよび図8bの衝撃パッドと組み立てられた、部分的に開いた位置と完全に開いた位置との間の遷移を示す、図8aのシュラウドの斜視図であり、完全に開いた位置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0086】
図1を参照して、本発明に従う鋳造システム10の実施形態は、鋳造キャビティ14が形成される鋳型12を含む。鋳型は、分割線13において水平方向に接合される、上部12aおよび下部12bから成る。鋳造キャビティ14は、2つの入口16を介して底部供給される。溶融金属は、シュラウド20を通って鋳物キャビティ14に供給され、金属を大気から保護することによって金属の再酸化を防ぐ。シュラウド20は、溶融金属が注がれる漏斗22と、金属を鋳造キャビティ14内に供給する長尺の中空の軸24とを含む。漏斗22は鋳型12の外側に配設されるので、使用時に取鍋(図示せず)のノズル26と係合することができる。シュラウド20の軸24は、鋳型12の上面32に形成される穴30内に受け入れられ、そこに実質的に垂直に延びる。穴30は、シュラウド20の直線運動を依然として可能にしながら、実質的に間隙がないように、シュラウド20を受け入れるような大きさにされる。鋳造キャビティ14と鋳型12の上面32との間に延びる、開放した押湯スリーブ15が、鋳造キャビティ14と流体連通する。
【0087】
穴30は、上面32と、鋳型12内に配設されるハウジング34との間に延びる。ハウジング34は形が直方体であり、互いに固定される4つのプリズム形状部分を含み、上壁36と下壁38と4つの側壁40とを有する。ハウジング34は、溶融シリカなどの適切な耐火材料から成っていてもよい。シュラウド20の軸24は、漏斗22とは反対側のシュラウド20の端部44がハウジング34内に受け入れられるように、上壁36の開口部42を通過する。4つの側壁40のうちの2つは、出口46を有する。フィルタ(図示せず)は、溶融金属がハウジング34から出ていくとき、溶融金属がフィルタを通過するように、各出口46に隣接して配設されてもよい。
【0088】
一対の導管50を含むランニングシステム48は、1つの導管50が各出口46から通じた状態でフィルタハウジング34から側方に延びる。導管50は、上方に曲がって鋳造キャビティ14の入口に接合し、各導管50は別々の入口16に入る。したがって、シュラウド20の漏斗22および軸24を下方に向かって通り、フィルタハウジング34内に入り、フィルタを通ってフィルタハウジングから出て出口46を通って、導管50を通り、上方に向かって鋳造キャビティ14に入る溶融金属の経路が提供される。
【0089】
上述のように、シュラウド20は、取鍋ノズル26との係合のために上方に向かって持ち上げ可能なように、穴30内で直線運動可能である。シュラウド20は、鋳型12の上面32に配設される持上げ機構52によって持ち上げられる。
【0090】
図2は、互いに嵌合してハウジング34を形成する4つの個別セグメント35a,35bを示す。2つのセグメント35aは、側壁40に出口46を有し、他の2つ35bには出口はない。各セグメント35a,35bは、三角形基部39と、側壁40と、1/4円(すなわち90°)切欠き43を有する、三角形状天井部37とを有する。各片が互いに嵌合すると、4つの天井セグメントがハウジングの上壁36を形成し、切欠き43が、シュラウド20の軸24が通過する円形開口部42を形成する。同様に、4つの三角形基部39は互いに嵌合してハウジングの下壁38を形成する。2つのハウジングセグメント35aは、セラミック発泡フィルタ47を適所に保持する隆起形状フレーム45を側壁40の内面40aに一体化し、フィルタ47の中心が側壁の出口を覆って位置決めされる。使用時には、セグメント35a,35bは、ハウジング34の4つの側壁40の周りに金属バンド(図示せず)を結び付け締め付けることによって互いに固定される。
【0091】
図3aおよび図3bをさらに参照して、持上げ機構52は、外側カラー56内に同心状に着座する内側カラー54を含む。内側カラー54は、円形リム60によって囲まれる環状シート58を含む。使用時には、シュラウド20の漏斗22は、シュラウド20の軸24がシート58の中央孔62を通過した状態で、環状シート58に支持される。円形リム60の外表面63には、2つのペグ64が設けられ、ペグ64およびハンドル66から離間して設けられる。
【0092】
外側カラー56は、環状基部70によって囲まれる円筒壁68を含む。基部70は、使用時に、鋳型12の上面に取付けられる。鋳型12の作成中、外側カラー56は適所に配置され、鋳物砂が養生し硬化するとき適所に保持される。円筒壁68の上端69の部分は、3つの傾斜面または螺旋面72を提供するように切り取られる。図示された実施形態において、各螺旋面72は、円筒壁68の円周の約120°の周りに延びる。
【0093】
持上げ機構52が組み立てられると、内側カラー54のペグ64およびハンドル66は、外側カラー56の螺旋面72に載る。内側カラー54をハンドル66を用いて回転させると、ペグ64およびハンドル66が螺旋面72に沿って移動し、内側カラー54、したがって内側カラー54によって支持されるシュラウド20を上方に持ち上げることがわかる。したがって、内側および外側カラー54,56は、円筒カムとして機能し、ペグ64およびハンドル66はホロアを構成する。
【0094】
図1において、持上げ機構52の内側カラー54は第1位置にあり、ペグおよびハンドルは螺旋面72の最低点にある。この位置において、シュラウド20は、軸24がハウジング34のほぼ底面まで延び、漏斗は取鍋ノズルと係合しないように下降される。約90°の角度にわたる内側カラー54の反時計回りの回転は、ペグおよびハンドルを外側カラー56の螺旋面72に沿って上方に移動させ、これによって、持上げ機構52を図4に示されるような第2位置まで移動させることがわかる。第2位置において、内側カラー54およびそこに配置される漏斗22は、鋳型12の上面32から離間して上方に持ち上げられ、漏斗22は取鍋ノズル26と係合する。漏斗22とは反対側のシュラウド20の端部44は、ハウジング34の下壁38から離間して持ち上げられるが、ハウジング34内に残る。したがって、内側カラー54が回転する角度は、漏斗22をノズル26に接触させるために必要な、内側カラー54およびシュラウド20の垂直運動の程度に依存し、鋳型12の高さおよび取鍋の位置決めに応じて変化してもよいことは理解されるであろう。持上げ機構52は、ハンドル66が螺旋面72に沿って下方に移動することを防ぐように、作業者がハンドル66を保持することによって、注湯中、第2位置に手動で保持されてもよい。しかしながら、いくつかの実施形態において、持上げ機構52を第2位置に保持するためのロックが設けられてもよいことは理解されるであろう。
【0095】
図5aおよび図5bを参照して、取鍋と鋳型12との間の完全な整列は、垂直方向のずれがあるように、常に達成されていなくてもよい。図5aに示される実施形態において、取鍋ノズル26の長手軸線Lは、シュラウド20の長手軸線(L)から5°だけずれている。図5bにより明確に示されているように、取鍋ノズル26の先端74は、形状が部分的に球状または上面が平らなドーム状である。シュラウド20の漏斗22は、形状が部分的に球状でもあり、平らな底面78と湾曲した側面80とを有する内面76を有する。漏斗22の内面76は、ガスケット82で裏打ちされている。ノズル26、漏斗22およびガスケット82の部分的球状は、たとえ取鍋と鋳型12との間のずれが生じても、接続が気密に封止されることを確保する。
【0096】
上述の本発明の実施形態において、持上げ機構52の内側カラー54の外側カラー56(鋳型12に対して固定されたまま)に対する回転によって、シュラウド20の同時回転とともに取鍋ノズル26との係合のためにシュラウド20を持ち上げる。しかしながら、代替実施形態において、シュラウドは、内側カラーおよびシュラウドが持上げ中に回転しないように、外側カラーの回転によって持ち上げられてもよい。これを容易にするために、3部品持上げ機構を提供するために、第3構成要素が設けられてもよい。図6は、円形リム94によって囲まれる環状基部92を含む第3構成要素または取付けリング90を示す。図示される実施形態において、円形リム94の上面96は、リム94の全高を通して下方に延びる一連の孔98を有する。孔98は、取付けリング90を鋳型の表面112に固定するための爪または金属ピン99を受け入れる。使用時には、持上げ機構の内側および外側カラーは、取付けリング90の中および上に同心状に嵌合する。
【0097】
図7aを参照して、3構成要素持上げ機構152は、外側カラー156内に同心状に着座する内側カラー154を含む。次に、外側カラーは、鋳型(図示せず)の上面に固定される取付けリング190の円形リム194内に同心状に着座する。したがって、図3の実施形態とは異なり、外側カラー156は鋳型の上面に固定されていないが、上面に対して回転可能であり、取付けリング190に対しても回転可能である。
【0098】
図7bは、回転前の持上げ機構152を示す。外側カラー156の時計回りの回転は、図7cに示される位置への、内側カラー154の回転のない内側カラー154の垂直運動をもたらす。したがって、内側カラー154によって支持されるシュラウドは、シュラウドの回転なしで簡単に持ち上げられる。その後、内側カラー154と外側カラー156との両方を一緒に回転させると、シュラウドが回転する。3部品持上げ機構は、図3の2部品持上げ機構と同様に、すなわち内側カラー154とその内部に支持されるシュラウドとを同時に持ち上げながら内側カラー154を反時計回りに回転させるように操作されてもよいことは理解されるであろう。
【0099】
図8aは、図7の持上げ機構152と共に使用されてもよい、シュラウド120の下端部144(すなわちノズルとは反対側)を示す。シュラウド120の穴は、内部に中央開口部126を有する基部122によって閉鎖される。4つの水平方向出口128が、基部122に隣接するシュラウド120の軸124に設けられる。基部122は、中央開口部126から基部122が軸124と交わる箇所の周辺部まで放射状に広がる4つの花弁状の窪みを有して成形される。
【0100】
図8bは、図8aのシュラウド120とともに使用される衝撃パッド132を示す。衝撃パッド132は、上面136を有する略正方形状ブロック134を含む。上面136は、形がシュラウド120の基部122の形に相補的である中央領域138を有する。4つの支柱140が、上面136から上方に向かって垂直に延び、1つの支柱140が衝撃パッド132の各角部にある。支柱140は、断面が略三角形であり、各三角形の頂点は、正方形状ブロック134の角部にほぼ整列する。各支柱の内側に面する表面142はわずかに湾曲し、曲率の程度はシュラウド120の軸124の曲率に一致するように選択される。支柱140の高さおよび間隔、ならびに内側に面する表面142の幅は、支柱140が組み立てられたシステムにおいてシュラウド120の水平方向出口128を完全に覆うことができるように選択される。シュラウド120の基部122および衝撃パッド132の上面136の中央領域138の成形は、水平方向出口128および支柱140間の正確な整列を容易にする。シュラウド120と衝撃パッド132との間の嵌め合いは、支柱140および出口128が整列する(シュラウドが昇降される)ときに、支柱140が水平方向出口128を通る金属の流れを妨げることができるが、シュラウド120が依然として衝撃パッド132に対して回転可能であるようなものでなければならないことは理解されるであろう。
【0101】
図8cおよび図8dは、衝撃パッド132およびフィルタハウジング146の2つのセグメント(簡略化のために他の2つのセグメントは図示せず)と組み立てられたシュラウド120の下端部を示す。一方のセグメントは適切な位置にフィルタ147とともに示され、他方のセグメントはハウジング出口148が見えるようにフィルタなしで示されるが、フィルタは使用時には存在してもよいことは理解されるであろう。持上げ機構(図示せず)の操作時における中間部分開放位置(図8c)から完全開放位置(図8d)への遷移が示される。
【0102】
図7および図8を参照して、使用時には、持上げ機構152によるシュラウド120の持上げ前に、シュラウド120の基部122は、衝撃パッド132の上面136の相補的な中央領域138と噛み合うので、基部122の中央開口部126は閉鎖される。軸124の水平方向出口128はまた、支柱140と整列して閉鎖され、これによってシュラウド120からの金属の流れを妨げることを確保する。
【0103】
持上げ機構142の外側カラー156が回転すると、内側カラー154およびその内部に支持されるシュラウド120は上方に持ち上げられる。したがって、シュラウド120の基部122は、もはや衝撃バッド132の上面には接触せず、これによって中央開口部126を通る金属の流れを可能にする。しかしながら、シュラウド120の回転は生じないので、水平方向出口128は支柱140によって閉鎖されたままである。鋳造時、底注ぎ取鍋のストッパは開放され、金属はノズルを通ってシュラウド120内に流れ込む。金属は、基部122の中央出口126を介してシュラウド120を出て、シュラウド120と衝撃パッド132との間の間隙を通って流れ、フィルタハウジングに存在するフィルタ(図示せず)をプライミングし、その後、ランニングシステム(図示せず)内に流れ込み始める。
【0104】
内側カラー154および外側カラー156は、その後、取付けリング190および鋳型に対して一緒に回転する。これは、鋳型(または取鍋ノズル)に対してその垂直方向位置を変化させることなく、シュラウド120を回転させる。回転前、シュラウド120は、水平方向出口128が衝撃パッドの支柱140によって塞がれる。シュラウド120の回転時、水平方向出口128は、支柱140との整列から外れて移動し、部分的に開放し(図8c)、その後完全に開放し(図8d)、これによって、フィルタハウジング146、鋳型内のランニングシステムおよび鋳造キャビティ内への金属の流れを着実に増加させる。
【0105】
シュラウドの回転が、衝撃パッドに対する回転によって開放および閉鎖可能なシュラウドの水平方向出口の提供とともに、持上げとは独立して行うことができる持上げ機構を使用すると、金属の流れをより大きく制御するという利点が与えられる。まず、鋳型キャビティが空であり、背圧がないときには、シュラウドの基部の中央出口だけを開放することによって低流量を使用することができる。その後、鋳型キャビティ内の金属レベルが水平方向出口を開放することによって上昇するにつれて、流量を増加させることができる。これは、注湯中、システム全体内の金属圧力を保持し制御する。また、金属が最初にフィルタハウジングに入るときの流れを制御することは、フィルタに対する衝撃および金属圧力を減少させ、したがってフィルタ破損およびフィルタ背後の乱流の可能性を低減させる。本発明は、シュラウドを加圧したままこれらの利点を達成することを可能にし、これは典型的には取鍋ノズルを完全に開放したままにすることによって行われる。
【0106】
実施例
試験は、建設業車両用大型鋼鋳物を製造するヨーロッパの鋼鋳物工場で行われた。
【0107】
比較例1
750kgの鋳造重量を有する従来の注型鋼鋳物が、鋳造キャビティの周囲に等間隔に配置され、ダウンスプルーの基部に3つのランナによって接続された3つの等しい大きさの接線方向インゲートを介して底部供給された。3つの開口発熱ライザ(フィーダ)が、鋳造キャビティの頂部の上方にかつ直接流体連通して位置付けられた。水平分割鋳型が、酸硬化フラン樹脂結合再生クロマイト砂から造型され、鋳造前にアルゴンでパージされた。鋳物は、鋳型の注湯カップおよびダウンスプルーの上方に位置付けられたノズルが鋳型の表面の上方300mm未満であるように、鋳型の上方に配置された従来の底注ぎ取鍋から注湯された。液体金属は、1555℃の注湯温度で底注ぎ取鍋から注湯された。
【0108】
実施例1
比較例1のランニングシステムは、長さ1250mm、外径80mm、内(穴)径40mmの寸法を有する溶融シリカシュラウドを収容するように修正された。シュラウドの漏斗は、図3に従う、鋳型の頂部に嵌め込まれた持上げ機構内に配置された。ダウンスプルーの基部に、3つの側壁を有する三角柱状溶融シリカハウジングが配設された。これらの壁のそれぞれは出口を有し、STELEX Zrブランドでフォセコによって製造販売されている100mm×100mm×25mmのジルコニア系1ppi発泡フィルタが出口近傍に配設された。出口は、比較例1のインゲートと同様に、鋳造キャビティの底部に接続された。鋳型はアルゴンでパージされ、シュラウドは、持上げ機構を用いて、シュラウドの漏斗が、底注ぎ取鍋の基部に取付けられる、商標VAPEXでフォセコによって販売される等圧粘土グラファイトノズルと係合するように、持上げ機構を用いて持上げた。シュラウドの漏斗とノズルの端部とは、黒鉛化ガスケットによって封止された。液体金属は、1555℃の注湯温度で底注ぎ取鍋から注湯された。注湯時間は、取鍋開口部のストッパから閉まるまでの28秒であった。
【0109】
実施例1のシステムによって製造された鋳物は、比較例1のシステムによって製造された鋳物よりもかなりきれいであるように見えたので、ショットブラスト処理の直後かつ熱処理および研削の前に最初の磁気検査を行うことができた。実施例1の鋳物表面の磁気粒子検査(MPI)は、たとえ熱処理および研削の後であっても、比較例よりも著しくきれいであることを示した。さらに、鋼鋳物は、エンドユーザの顧客に出荷される前に、磁気検査によって検出された介在物および表面欠陥を除去するために、一連の溶接サイクルを行わなければならない。従来の注湯によって製造された比較例の鋳物に対して、典型的には、鋳物は少なくとも5回の溶接サイクルを経なければならなかった。これに対して、本発明(実施例1)の鋳造システムによって製造された鋳物は、焼入れおよび出荷準備前のDC磁気制御の前の数個のスポット欠陥の単一溶接サイクルを必要とするだけであり、これは30時間(鋳造当たり)を超える溶接時間の短縮に相当し、鋳造工場にかなりのコスト削減とエンドユーザの顧客への納期の大幅な短縮をもたらした。
図1
図2
図3a
図3b
図4
図5a
図5b
図6
図7a
図7b
図7c
図8a
図8b
図8c
図8d