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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-27
(45)【発行日】2022-02-21
(54)【発明の名称】接着細胞培養基質サンプリングデバイス
(51)【国際特許分類】
   C12M 3/00 20060101AFI20220214BHJP
   C12M 1/12 20060101ALI20220214BHJP
   C12N 5/07 20100101ALI20220214BHJP
【FI】
C12M3/00 A
C12M1/12
C12N5/07
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019545395
(86)(22)【出願日】2017-11-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-21
(86)【国際出願番号】 IB2017057008
(87)【国際公開番号】W WO2018087690
(87)【国際公開日】2018-05-17
【審査請求日】2020-10-08
(31)【優先権主張番号】62/419,613
(32)【優先日】2016-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519162156
【氏名又は名称】トライゼル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】トゥルッキ, ヴェサ
(72)【発明者】
【氏名】パーカー, ナイジェル
【審査官】田中 晴絵
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05601757(US,A)
【文献】特表2004-500158(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00-3/10
C12N 1/00
C12N 5/07
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオリアクター容器外部およびバイオリアクター容器内部を画定するバイオリアクター容器壁を有するバイオリアクター容器であって、前記バイオリアクター容器内部が、液体細胞培養培地および接着細胞培養用の固体基質を無菌的に含有することができる、バイオリアクター容器
を有する接着細胞培養バイオリアクターであって、
前記バイオリアクター容器壁が、前記バイオリアクター容器外部と前記バイオリアクター容器内部の間の連通を可能にするために、バイオリアクター容器壁を通して配置されているポートを有し、
前記ポートが、サンプリングデバイス筐体外部およびサンプリングデバイス筐体内部を有するサンプリングデバイス筐体に無菌的に接続されており、前記サンプリングデバイス筐体は、前記サンプリングデバイス筐体内部が前記バイオリアクター容器内部と無菌的に連通できるように前記ポートに配置されており、
前記サンプリングデバイス筐体内部が、前記バイオリアクター容器内部に含有される接着細胞培養用の固定床から固体基質の試料を得ることができる固体基質サンプリングデバイスを無菌的に収容し、
前記固体基質サンプリングデバイスが、前記サンプリングデバイス筐体内部に配置されており、それによって、前記固体基質サンプリングデバイスが、前記バイオリアクター容器の内部に含有される接着細胞培養用の固定床から固体基質の試料を無菌的に得ることができる、接着細胞培養バイオリアクター。
【請求項2】
前記サンプリングデバイスが、ピンセット、鉗子、吸引デバイスおよびフックからなる群から選択される、請求項1に記載のバイオリアクター。
【請求項3】
前記サンプリングデバイス筐体がチューブを含み、前記サンプリングデバイスがピンセットを含む、請求項2に記載のバイオリアクター。
【請求項4】
前記サンプリングデバイス筐体がバッグを含み、前記サンプリングデバイスが異物鉗子を含む、請求項2に記載のバイオリアクター。
【請求項5】
前記サンプリングデバイス筐体の外部に配置されている磁石をさらに含み、前記磁石が、前記サンプリングデバイス筐体の内部に配置されている前記サンプリングデバイスを操作することができる、請求項1に記載のバイオリアクター。
【請求項6】
前記バイオリアクター容器内部と前記サンプリングデバイス筐体内部との間に配置されている膜をさらに含む、請求項1に記載のバイオリアクター。
【請求項7】
前記サンプリングデバイス筐体を、前記ポートから無菌的に取り外すことができる、請求項1に記載のバイオリアクター。
【請求項8】
バイオリアクター容器の内部に含有される接着細胞培養用の固定床から固体基質の試料を無菌的に得るための装置であって、前記装置が、
サンプリングデバイス筐体外部およびサンプリングデバイス筐体内部を有するサンプリングデバイス筐体であって、前記サンプリングデバイス筐体内部が接着細胞培養バイオリアクターのポートを介してバイオリアクター容器内部と無菌的に連通できるように、前記ポートにおいて使い捨てされるように構成されているサンプリングデバイス筐体
を含み、
前記サンプリングデバイス筐体内部が、前記バイオリアクター容器内部に含有される接着細胞培養用の前記固定床から固体基質の試料を得ることができる固体基質サンプリングデバイスを収容し、
前記固体基質サンプリングデバイスが、前記サンプリングデバイス筐体内部に配置されており、それによって、前記固体基質サンプリングデバイスが、前記バイオリアクター容器の内部に含有される接着細胞培養用の前記固定床から固体基質の試料を無菌的に得ることができる、装置。
【請求項9】
前記サンプリングデバイスが、ピンセット、鉗子、吸引デバイスおよびフックからなる群から選択される、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記サンプリングデバイス筐体がチューブを含み、前記サンプリングデバイスがピンセットを含む、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記サンプリングデバイス筐体がバッグを含み、前記サンプリングデバイスが異物鉗子を含む、請求項9に記載のバイオリアクター。
【請求項12】
接着細胞培養基質の試料を無菌的に採取するための方法であって、
請求項1に記載のバイオリアクターを得るステップであって、前記バイオリアクター容器内部が液体細胞培養培地および接着細胞培養用の固体基質を無菌的に含有する、ステップと、次いで、
前記サンプリングデバイスを使用して、前記接着細胞培養用の前記固定床から固体基質の試料を無菌的に得るステップと
を含む方法。
【請求項13】
接着細胞培養基質の試料を無菌的に採取するための方法であって、
請求項7に記載のバイオリアクターを得るステップであって、前記バイオリアクター容器内部が液体細胞培養培地および接着細胞培養用の固体基質を無菌的に含有する、ステップと、次いで、
前記サンプリングデバイスを使用して、前記接着細胞培養用の前記固定床から固体基質の試料を無菌的に得るステップと、次いで、
前記サンプリングデバイス筐体を前記ポートから無菌的に取り外すステップと
を含む方法。
【請求項14】
細胞培養生成物を生成するための方法であって、
請求項1に記載のバイオリアクターを得るステップであって、前記バイオリアクター容器内部が液体細胞培養培地と接着細胞培養用の固体基質とを無菌的に含有する、ステップと、次いで、
前記液体細胞培養培地中で細胞培養物を培養するステップと、次いで、
前記サンプリングデバイスを使用して、前記接着細胞培養用の前記固定床から固体基質の試料を無菌的に得るステップと、次いで、
前記試料を分析して前記細胞培養生成物の存在を確認するステップと
を含む方法。
【請求項15】
細胞培養生成物を生成するための方法であって、
請求項7に記載のバイオリアクターを得るステップであって、前記バイオリアクター容器内部が液体細胞培養培地と接着細胞培養用の固体基質とを無菌的に含有する、ステップと、次いで、
前記液体細胞培養培地中で細胞培養物を培養するステップと、次いで、
前記サンプリングデバイスを使用して、前記接着細胞培養用の前記固定床から固体基質の試料を無菌的に得るステップと、次いで、
前記試料を分析して前記細胞培養生成物の存在を確認するステップと
を含む方法。
【請求項16】
前記サンプリングデバイスが、吸引デバイスを含む、請求項2に記載のバイオリアクター。
【請求項17】
前記サンプリングデバイスが、吸引デバイスを含む、請求項8に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府の利益:
なし
【0002】
関連出願
本出願は、2016年11月9日に出願された米国仮特許出願番号第62/4119613号からの優先権を主張しており、その内容は、参考として本明細書に参考として援用される。
【0003】
先の開示
なし
【0004】
共同研究契約
該当なし
【背景技術】
【0005】
背景
当該技術分野は、懸濁細胞培養または接着細胞培養のいずれかを使用する大規模細胞培養を教示する。一般的に、Merten, Otto-Wilhelmら、Manufacturing Of Viral Vectors For Gene Therapy: Part I-Upstream Processing、2 Pharmaceutical Bioprocessing、183~203頁(2014年)を参照のこと。懸濁細胞培養は、例えば、液体細胞培養培地中で自由に浮遊している細胞を培養することを伴う。あるいは、マイクロビーズに付着した細胞を培養し、次に、培地中に自由に浮遊させる場合もある。本特許の目的のために、本発明者は、「懸濁」細胞培養という用語を、これらの細胞培養アプローチの両方を包含するものとして使用する。
【0006】
あるいは、あまりにも嵩高いかまたは密度が高いために細胞培養培地中に自由に懸濁しない固体基質に付着した細胞を培養することができる。このような基質としては、例えば、充填された合成繊維が挙げられる。あるいは、繊維の紙様シートを使用することができ、おそらくより小さな片にカットされる。
【0007】
工業的に安定した細胞培養には、分析用の細胞の試料を得るために、随時、細胞培養物をサンプリングする必要がある場合が多い。懸濁細胞培養物から試料を得ることは比較的容易である。その理由として、細胞(単独であってもマイクロビーズ上にあっても)が液体培養培地中に懸濁しており、細胞が懸濁した培養培地の試料を単に採取するだけでよいことがある。これは、ピペットを使用して、バイオリアクターのサンプリングポートを介して行うことができる。
【0008】
対照的に、細胞を非懸濁細胞培養基質に接着させて培養する場合は、ピペットを使用することによって、液体細胞培養培地の試料が得られるが、細胞が接着する基質の試料は得られない。したがって、細胞培養由来の代謝物について培養培地を評価することはできるが、培養細胞を直接調査することはできない。
【0009】
当該技術分野は、細胞培養培地にプロテアーゼを添加することによって、接着細胞の試料を得ることを教示する。このことにより、接着細胞が基質から取り除かれるため、細胞は液体培地中に自由に浮遊する。したがって、培養培地から試料を抜き出すためにピペットを使用して、細胞の試料を得ることができる。しかし、プロテアーゼは細胞培養を撹乱させる。さらに、プロテアーゼにより遊離した細胞は、例えば、固体基質に接着した際に細胞がどの程度コンフルエントであったかを含むある特定の重要な情報を提供することができない。したがって、プロテアーゼは、接着細胞の培養が終了した後に接着細胞を取り除く有効な手法をもたらすが、接着培養プロセスの間に接着細胞の試料を取り除く許容される手法ではない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【文献】Merten, Otto-Wilhelmら、Manufacturing Of Viral Vectors For Gene Therapy: Part I-Upstream Processing、2 Pharmaceutical Bioprocessing、183~203頁(2014年)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、当該技術分野は、接着細胞培養系において非懸濁基質に接着した細胞の試料を採取する手法を必要とし、この手法では、残っている(サンプリングされなかった)細胞を有意に撹乱することも変更することもなく、細胞の試料を採取することができる。
【0012】
本発明者は、簡単な解決策を開発した。これは製造も容易である。それにもかかわらず、大規模かつ商業規模の接着性バイオリアクター(adherent bioreactor)においても無菌環境が維持される。(この特許では、本発明者は、「無菌」という用語を、望ましくない微生物を含まないことを意味するものとして使用する。)
【0013】
本発明者の装置は、バイオリアクター細胞培養槽のポートに無菌的に接続されている滅菌サンプリングチューブなどの無菌サンプリング容器または筐体を含む。この槽は、細胞培養培地および固体接着細胞培養基質を含有する。無菌の筐体は、接着細胞が付着した細胞培養基質の試料を得るためのデバイスを含有する。次いで、無菌の筐体は、密封され、細胞培養槽から取り出され、その結果、無菌の筐体が取り出された後であっても槽は無菌的に含有された状態を保つ。次いで、無菌の筐体中に含有される細胞培養基質試料上の接着細胞を分析することができる。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
バイオリアクター容器外部およびバイオリアクター容器内部を画定するバイオリアクター容器壁を有するバイオリアクター容器であって、前記バイオリアクター容器内部が、液体細胞培養培地および接着細胞培養用の固体基質を無菌的に含有することができる、バイオリアクター容器
を有する接着細胞培養バイオリアクターであって、
前記バイオリアクター容器壁が、前記バイオリアクター容器外部と前記バイオリアクター容器内部の間の連通を可能にするために、バイオリアクター容器壁を通して配置されているポートを有し、
前記ポートが、サンプリングデバイス筐体外部およびサンプリングデバイス筐体内部を有するサンプリングデバイス筐体に無菌的に接続されており、前記サンプリングデバイス筐体は、前記サンプリングデバイス筐体内部が前記バイオリアクター容器内部と無菌的に連通できるように前記ポートに配置されており、
前記サンプリングデバイス筐体内部が、前記バイオリアクター容器内部に含有される接着細胞培養用の固体基質の試料を得ることができる固体基質サンプリングデバイスを無菌的に収容し、
前記固体基質サンプリングデバイスが、前記サンプリングデバイス筐体内部に配置されており、それによって、前記固体基質サンプリングデバイスが、前記バイオリアクター容器の内部に含有される接着細胞培養用の固体基質の試料を無菌的に得ることができる、接着細胞培養バイオリアクター。
(項目2)
前記サンプリングデバイスが、ピンセット、鉗子、吸引デバイスおよびフックからなる群から選択される、項目1に記載のバイオリアクター。
(項目3)
前記サンプリングデバイス筐体がチューブを含み、前記サンプリングデバイスがピンセットを含む、項目2に記載のバイオリアクター。
(項目4)
前記サンプリングデバイス筐体がバッグを含み、前記サンプリングデバイスが異物鉗子を含む、項目2に記載のバイオリアクター。
(項目5)
前記サンプリングデバイス筐体の外部に配置されている磁石をさらに含み、前記磁石が、前記サンプリングデバイス筐体の内部に配置されている前記サンプリングデバイスを操作することができる、項目1に記載のバイオリアクター。
(項目6)
前記バイオリアクター容器内部と前記サンプリングデバイス筐体内部との間に配置されている膜をさらに含む、項目1に記載のバイオリアクター。
(項目7)
前記サンプリングデバイス筐体を、前記ポートから無菌的に取り外すことができる、項目1に記載のバイオリアクター。
(項目8)
バイオリアクター容器の内部に含有される接着細胞培養用の固体基質の試料を無菌的に得るための装置であって、前記装置が、
サンプリングデバイス筐体外部およびサンプリングデバイス筐体内部を有するサンプリングデバイス筐体であって、前記サンプリングデバイス筐体内部が接着細胞培養バイオリアクターのポートを介してバイオリアクター容器内部と無菌的に連通できるように、前記ポートにおいて使い捨てできるように構成されているサンプリングデバイス筐体
を含み、
前記サンプリングデバイス筐体内部が、前記バイオリアクター容器内部に含有される接着細胞培養用の固体基質の試料を得ることができる固体基質サンプリングデバイスを収容し、
前記固体基質サンプリングデバイスが、前記サンプリングデバイス筐体内部に配置されており、それによって、前記固体基質サンプリングデバイスが、前記バイオリアクター容器の内部に含有される接着細胞培養用の固体基質の試料を無菌的に得ることができる、装置。
(項目9)
前記サンプリングデバイスが、ピンセット、鉗子、吸引デバイスおよびフックからなる群から選択される、項目8に記載の装置。
(項目10)
前記サンプリングデバイス筐体がチューブを含み、前記サンプリングデバイスがピンセットを含む、項目9に記載の装置。
(項目11)
前記サンプリングデバイス筐体がバッグを含み、前記サンプリングデバイスが異物鉗子を含む、項目9に記載のバイオリアクター。
(項目12)
接着細胞培養基質の試料を無菌的に採取するための方法であって、
項目1に記載のバイオリアクターを得るステップであって、前記バイオリアクター容器内部が液体細胞培養培地および接着細胞培養用の固体基質を無菌的に含有する、ステップと、次いで、
前記サンプリングデバイスを使用して、前記接着細胞培養用の固体基質の試料を無菌的に得るステップと
を含む方法。
(項目13)
接着細胞培養基質の試料を無菌的に採取するための方法であって、
項目7に記載のバイオリアクターを得るステップであって、前記バイオリアクター容器内部が液体細胞培養培地および接着細胞培養用の固体基質を無菌的に含有する、ステップと、次いで、
前記サンプリングデバイスを使用して、前記接着細胞培養用の固体基質の試料を無菌的に得るステップと、次いで、
前記サンプリングデバイス筐体を前記ポートから無菌的に取り外すステップと
を含む方法。
(項目14)
細胞培養生成物を生成するための方法であって、
項目1に記載のバイオリアクターを得るステップであって、前記バイオリアクター容器内部が液体細胞培養培地と接着細胞培養用の固体基質とを無菌的に含有する、ステップと、次いで、
前記液体細胞培養培地中で細胞培養物を培養するステップと、次いで、
前記サンプリングデバイスを使用して、前記接着細胞培養用の固体基質の試料を無菌的に得るステップと、次いで、
前記試料を分析して前記細胞培養生成物の存在を確認するステップと
を含む方法。
(項目15)
細胞培養生成物を生成するための方法であって、
項目7に記載のバイオリアクターを得るステップであって、前記バイオリアクター容器内部が液体細胞培養培地と接着細胞培養用の固体基質とを無菌的に含有する、ステップと、次いで、
前記液体細胞培養培地中で細胞培養物を培養するステップと、次いで、
前記サンプリングデバイスを使用して、前記接着細胞培養用の固体基質の試料を無菌的に得るステップと、次いで、
前記試料を分析して前記細胞培養生成物の存在を確認するステップと
を含む方法。
(項目16)
項目14のプロセスによって得られる細胞培養生成物。
(項目17)
項目15のプロセスによって得られる細胞培養生成物。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、バイオリアクターサンプリングチューブ内に無菌的に収容された本発明者のサンプリングデバイスのバージョンであるピンセットを例示し、その使用方法を例示する。
【0015】
図2図2は、滅菌サンプリングバッグ内に無菌的に収容された本発明者のサンプリングデバイスの別のバージョンである鉗子を例示する。
【0016】
図3図3は、図1でピンセットがサンプリングチューブ内に収容された場合の例の写真である。
【0017】
図4図4は、固体細胞培養基質にアクセスし、それを得るための、バイオリアクター槽に挿入されいるピンセットを示す写真である。
【0018】
図5図5は、サンプリングチューブ内に収容されたピンセットを操作者が操作するのを示す写真である。
【0019】
図6図6は、ピンセットによってバイオリアクターから一片の固体細胞培養基質が得られるのを示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
バイオリアクター、発酵槽および組織培養容器は、本明細書において、バイオリアクターと称される。バイオリアクターは、本明細書において細胞として言及される様々な培養微生物に対する適切な増殖条件を提供する。ほとんどの場合には、バイオリアクター内で特定の細胞型だけを増殖させることが望まれ、細菌などのいずれの他の細胞の増殖も非常に望ましくない。したがって、バイオリアクターと使用されるすべての溶液を、環境由来の細胞が汚染するのを免れる状態に保つために複雑な手順が適用される。
【0021】
接着細胞培養バイオリアクター槽は、液体細胞培養培地と、その液体培地中で培養細胞が接着および増殖することができる表面をもたらす固体基質とを含有する。これは、接着細胞培養に対する閉じた無菌環境を提供する。
【0022】
本技術は、培養細胞が接着することができる固体支持体を提供することができる様々な適切な固体基質を教示する。繊維は安価で均一であり、体積に対する表面積比が高いため、基質は、典型的には、繊維である。本技術は、繊維がポリマー繊維、例えば、ポリエステルまたはポリプロピレン繊維であり得ることを教示する。シリケートまたはラクテートエレクトロスパンナノファイバーなどの他の繊維も使用してよい。基質は、充填された(packed)繊維またはルーズ(loose)繊維として使用してもよい。
【0023】
あるいは、基質はシートであってもよい。基質シートは一体型(monolithic)であってもよい。シートは繊維から作製することができ、同様に、紙のシートはセルロース繊維から作製される。様々な接着細胞培養基質と「固定床」担体が当技術分野で公知である。本発明者の発明では、これらは主として互換的な均等物である。
【0024】
細胞の計数および分析のためのバイオリアクターのサンプリングは、バイオプロセシングにおいて最も重要である。固定床バイオリアクターにおける細胞(またはその上部で細胞が増殖する担体)の無菌的サンプリングは、今日まで、困難であるかまたは不可能であることが一般的に知られてきた。Mertenら(2014年)、上掲を参照のこと。したがって、バイオマスプローブを使用することによって、または液体培養培地中の栄養消費または液体培養培地中に溶解した代謝副産物を測定することによって、細胞増殖が追跡され、推定されてきた。しかし、基質担体における細胞分布は未知変数のままであった。したがって、細胞コンフルエンス、および実際に接着細胞それ自体は、さらに分析することができなかった。
【0025】
これは、ある特定の種類の細胞培養に対して重要な問題である。例えば、プラスミドトランスフェクションでは、局所的細胞密度またはコンフルエンスがトランスフェクションの有効性および効率の主要な決定因子である。実際のコンフルエンスの観察の代わりに、本技術は、算出した平均細胞数を使用することを教示する。しかし、平均の数は、細胞の実際の増殖パターンを正確に説明することができない。局所的に、細胞は、1つの領域において密な凝集塊中で増殖することができるが、一方、均等に広がることはなく、別の領域には全く存在しない。
【0026】
したがって、当該技術では、細胞が接着する担体の固体基質をサンプリングする手法に対する需要が存在する。これは、より効率的なプロセス最適化を可能とすることになる。例えば、トランスフェクション混合物がどれ程よく細胞によって内部移行されたか、およびトランスフェクション混合物が細胞によってどこに内部移行されたかを示すことによって、トランスフェクション効率の正確な分析を可能とすることになる。また、これにより、プロテオミクス分析および遺伝子発現分析のようないくつかの細胞ベースのアッセイの使用が可能となる。したがって、固定床バイオリアクターからの細胞サンプリング選択肢の欠如は、工業規模のバイオプロセシングにおいて重大な欠点であった。
【0027】
本発明者は、簡単で、費用効果があり、かつ正確である解決策を見出した。本発明者の発明は、おそらく、図1を見ることによって最も容易に理解できる。
【0028】
図1は、本発明者の発明の一例の構造および経時的操作を例示する。図1は、液体細胞培養培地で充たされた接着培養バイオリアクター槽[1]を示す。この液体中では、培地は固体細胞培養基質[2]である(図1は、繊維シートの細長片を示す)。バイオリアクター槽[1]は、1つまたは複数の無菌ポート[3]を有する。市販のバイオリアクターは、典型的には、新鮮な培地の投入、使用した培地の排出、新鮮な酸素または他のガスの投入などを可能とするいくつかのポートを有する。
【0029】
少なくとも1つのポートは、サンプリングデバイス筐体[4]に無菌的に接続されている。図1に例示するように、サンプリングデバイス筐体は可撓性チューブである。あるいは、図2に示す通り滅菌バッグを使用してもよく、滅菌バッグは、サンプリングデバイス[5]、例えば、鉗子をバッグ中にロードし、次いで、バッグ[4]を無菌的に密封することができる密封可能な末端[8]を有する。あるいは、例えば、硬質プラスチックチューブまたはガラスチューブを使用してもよい。
【0030】
サンプリングデバイス筐体[4]は、接着細胞培養用の固体基質[2]の試料を得ることができる固体基質サンプリングデバイス[5]を含有する。例えば、図1はピンセットを例示する。あるいは、図2は鉗子を例示する。あるいは、末端に釣り針タイプのフックを有する棒を使用してもよい。あるいは、接着細胞培養用の固体基質の試料を得ることができる吸引デバイスを使用することができる。
【0031】
ピンセットまたは鉗子が使用される場合、本発明者は、操作者が筐体[4]を操作することによって、ピンセットまたは鉗子を簡単に手動で操作することを可能とするのに十分可撓性である筐体を好む。固体基質サンプリングデバイス[5]は鉄金属である場合、筐体[4]内のサンプリングデバイス[5]を動かすために磁石[7]を使用することができる。
【0032】
筐体[4]は、筐体をバイオリアクターから分離するために密封することができる。そうであれば、本発明者は、操作者がその開口部からピンセットを動かすことが可能となるように、容易に開くことができる、バイオリアクターに接続されている筐体の末端におけるシールを好む。筐体[4]が、切開用鉗子などの大きなツールの操作のためにスペースの拡大を可能とするバッグを含むことができることも注目に値する(図2)。
【0033】
本発明者のデバイスを作製するために、筐体[4]を組み立て、その中にサンプリングデバイス[5]を設置し、そのアセンブリーを密封し、次いで、例えば、オートクレーブまたは放射線照射によってそのアセンブリーを滅菌することができる。次いで、サンプリングデバイス[5]を有する、滅菌され、密封された筐体[4]を、バイオリアクターポート[3]に無菌的に取り付けることができる。これは、バイオリアクターの標準的な市販バージョンに設けられる標準的なポートであり得る。あるいは、基質サンプリングに特異的な新たなポート(単数または複数)をバイオリアクターに付加することができる。そうすることによって、操作者が、培養培地の投入および排出、ガスの投入などのように、意図した用途のために既存の標準的なポートを使用し続けることが可能となる。本発明者は、いくつかのポートを提供することを好み、その理由として、このことにより、ポートを使用後に持続的に密封することが可能となり、汚染のリスクが最小限にする。あるいは、同一のポート[3]を数回再利用することができる。
【0034】
図1はまた、固体基質の試料を採取する方法を例示する。基質試料を採取するために、ポート[A]に取り付けられた筐体[4]から始める。次いで、ポート[B]を開き(必要な場合)、次いで、サンプリングデバイスを、開いたポート[B]を通して、固体細胞培養基質[2]を含有するバイオリアクターの内部にアクセスする。この操作は、磁石[7]の補助によってなされてもよい。次いで、サンプリングデバイス[5]を使用して固体細胞培養基質[2]の試料を得て;可撓性チューブ内のピンセットが使用される場合、ピンセットを操作するために可撓性チューブを圧縮することによってこれを簡単に行うことができる。次いで、固体細胞培養基質[2]試料を保持するサンプリングデバイス[5]は、例えば、磁石を使用するかまたは筐体を操作することによって、開口ポート[C]を介して筐体中に戻される。次いで、筐体は、バイオリアクターから密封される[6]。次いで、バイオリアクター[1]を汚染することなく、サンプリングデバイス[5]を筐体[4]から取り除かれ得る。
【0035】
生物安全性(biosafety)は、この発明の重要な態様である。筐体[4]がバイオリアクター[1]から密封されると[6]、サンプリングデバイス[5]および試料[2]を含有する筐体[4]の部分をポート[3]から完全に取り外すことができ、ラミナーフローフードに輸送し、そこで開放し、試料[2]の無菌的な取り出しが可能となる。したがって、サンプリングされた材料は、実験室において、開放的には取り扱われない。このことにより、サンプリングされた材料の開放的な取り扱いと、それに伴う汚染のリスクを回避する。さらに、試料の開放的な取り扱いは、バイオリアクター中の材料が操作者に健康上のリスクをもたらす場合には許容されない。
【0036】
バイオリアクターがヒトへの使用のための生物学的製品を作製する臨床上の製造実行中に、細胞培養培地中では抗生物質を使用することができず、バイオリアクターケースにおいてハッチ(hatch)は許可されず、良好な製造実践ではバイオリアクターの開放が禁じられる。したがって、本発明者の発明は、本発明者の直面するこれらの制約から開始し、意図しない汚染を防ぐために、バイオリアクターの開放を可能とせずに、または培地において抗生物質を使用せずに、バイオリアクター内の接着細胞培養において起こっていることに、どのようにしてより良好な洞察を得るかを理解しようとした。したがって、本発明者は、市販のバイオリアクターケースにおいて既存のポートを使用して、滅菌方式でリアクターの基質をサンプリングするという考えで、このことに取り組み始めた。しかしながら、これらの同一の原理は、基質サンプリングのために使用することを具体的に意図したさらなるポート(単数または複数)を有するカスタムメイドのバイオリアクターにあてはまる。本発明者の考えは、一般的に、細胞培養全体の生存能を撹乱することなく、固体細胞培養基質の試料を無菌的に採取する機序を提供することである。
【0037】
本発明者の基本的な考えについて考慮すると、他の均等なバージョンを容易に作製することができる。例えば、返しの部分が繊維基質試料を捕捉かつ保持する、ピンセットの代わりに返しのついた金属棒をしようすることができるであろう。返しの部分は、外部の磁石によって上昇および下降させることができる。あるいは、筐体は、操作者が所望の通りに棒を操作しながら、プラスチックを介して棒の遠位端を手動で保持することができる可撓性プラスチックシートまたはバッグであってもよい。
【0038】
ある特定のバイオリアクターでは、担体がドーナツ型のバスケットの内側に固定されている。担体の層の上部には、メッシュと、担体の塊をバスケット中に圧縮する上部のグリッドが存在する。しかし、バスケット壁と上部のグリッドの間には開口部が存在し、そこから、担体の床は、上述のピンセットまたはワイヤーアプローチを使用してサンプリングすることができる。このような開口部が利用不可能である場合、切開用ピンセットを使用して、担体サンプリング用の開口部を創出することができる。この用途では、サンプリングデバイス筐体が、図2に記載したチューブおよびバッグからなるバッグアセンブリーである場合、特に実践的である。
【実施例
【0039】
(実施例1)
本発明者の装置を試験するために、標準的なiCELLis(商標)500単回使用バイオリアクターにおいて評価した。図3~6としてこの研究の写真を提供する。サンプリングの準備期中、サンプリングデバイス(この例ではピンセット)が挿入され、最初に、サンプリングチップがバイオリアクターのポートに対応する直径を有するサンプリングデバイス筐体の第1の末端に挿入される。これを図3に示す。3/4インチのガス排出ポートに適合する3/4インチのチューブを使用した。この例では、チューブの第1の末端に設置したアダプター(MPXアダプター)を使用した。チューブの第2の末端を密封してもよく、またはアダプターを第2の末端に設置してもよい。次いで、アダプターに対する適切なキャップ(この場合には、MPXアダプターに適合するMPXキャップ)を有するこのサンプリング装置をオートクレーブした。装置をオートクレーブした後、ラミナーフローフード内で、無菌的方式で、MPXキャップを使用して筐体を閉じた。
【0040】
サンプリングの際に、サンプリングの期間、リアクターへのガス流を停止した。次いで、サンプリングデバイス筐体の第2の末端をガス排出ポートに接合した。次いで、サンプリングデバイスを、チューブを通してポートへと下方に摺動させる。これを図4に示す。iCELLis(商標)500バイオリアクターに関して、次いで、サンプリングデバイスを、固定床バスケットとバイオリアクターの上部のグリッドの間の開口部を通して導くことができ、その結果、サンプリングデバイスは、固定床から、担体、またはいくつかの担体をつかみ取ることができる。このプロセスを補助するために、強力な磁石を使用してもよい。このプロセスに有害であると思われなければ、グリースまたはエタノールを担体容器に噴霧して、摩擦を低減してもよい。サンプリングデバイスの容器に薄くて可撓性材料を使用することにより、操作者が容器内のピンセットを手動で操作することが可能になる。これを図5に示す。接着細胞培養基質の一片を上手く得ることが図6で実証される。
【0041】
次いで、サンプリングデバイスを、サンプリングデバイスが保持している担体/基質と一緒に、合わせて取り出し、その結果、サンプリングされた材料とサンプリングデバイスをバイオリアクターから筐体へと取り出した。この例では、元のチューブの後方に接合するのに十分長いチューブを有する筐体を提供した。基本的には、サンプリングデバイスを元のサンプリングデバイス筐体を戻して退却することが有益である。次いで、チューブを密封し、および/または新たなチューブをガス排出ラインに接合させる。
【0042】
最終結果として、ピンセットとサンプリングされた担体を、無菌的方式で、サンプリングデバイスホルダーチューブ内に閉じるかまたは密封することができる。本発明者の装置の構造によって、操作者への生物安全性のリスクを伴うことなく、またはリアクターを汚染するリスクも伴うことなくこのことを行うことが可能となる。
【0043】
次いで、サンプリングデバイス筐体チューブを輸送して、担体試料の調製および分析用にラミナーフローフード内で開くことができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6