(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-27
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】焼却装置及び被焼却物の焼却方法
(51)【国際特許分類】
F23G 5/50 20060101AFI20220128BHJP
F23G 5/44 20060101ALI20220128BHJP
【FI】
F23G5/50 G ZAB
F23G5/50 M
F23G5/44 D
(21)【出願番号】P 2020121885
(22)【出願日】2020-07-16
【審査請求日】2020-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】520264346
【氏名又は名称】西村 博志
(73)【特許権者】
【識別番号】500258905
【氏名又は名称】株式会社レクスポート
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】西村 博志
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-038234(JP,A)
【文献】実開昭59-103027(JP,U)
【文献】特開2019-178848(JP,A)
【文献】特開2019-039644(JP,A)
【文献】特開2018-004113(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 5/50
F23G 5/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右両側壁部を有し、被焼却物を一次燃焼する一次燃焼室と、
前記一次燃焼室に仕切り壁部を介して隣接して設置され、前記一次燃焼室にて発生した排ガスを二次燃焼する二次燃焼室と、
前記一次燃焼室に入れられた前記被焼却物を前方へ押し移動させる押し手段と、
前記仕切り壁部に前記一次燃焼室と前記二次燃焼室とを連通して設けられ、前記一次燃焼室の前記排ガスが前記一次燃焼室から前記二次燃焼室へ流れる際に通過する排ガス通路と、
前記被焼却物の前端部に向けて一次燃焼用空気を噴射する散気管とを備え、
前記排ガス通路は、前記仕切り壁部における前記一次燃焼室側の壁面に開口した排ガス入口を有し、
前記散気管は、前記一次燃焼室における前記排ガス入口の内側又はその近傍から前記一次燃焼用空気を噴射する焼却装置であって、
一次燃焼室の左右両側壁部の少なくとも一方に複数の温度センサが前記一次燃焼室の前後方向に並んで設けられており、
前記各温度センサは、前記一次燃焼室における前記温度センサが設けられた位置の温度を測定するものであり
、
前記一次燃焼室は、前記被焼却物を乾燥する乾燥ゾーン、及び前記乾燥ゾーンで乾燥された前記被焼却物を一次燃焼する燃焼ゾーンを有するとともに、前記燃焼ゾーンは前記乾燥ゾーンにその前側に隣接しており、
前記押し手段は、前記被焼却物を前方へ押すことにより前記被焼却物の前端部を前記乾燥ゾーン及び前記燃焼ゾーンに順次移動させるものであり、
前記複数の温度センサは、前記左右両側壁部の前記少なくとも一方における前記乾燥ゾーンに対応する部分に設けられた少なくとも一つの乾燥ゾーン温度センサと、前記左右両側壁部の前記少なくとも一方における前記燃焼ゾーンに対応する部分に設けられた少なくとも一つの燃焼ゾーン温度センサとを含んでおり、
前記押し手段の被焼却物押し速度を、前記乾燥ゾーン温度センサの測定値と前記燃焼ゾーン温度センサの測定値とに基づいて制御するように構成されている焼却装置。
【請求項2】
前記押し手段の被焼却物押し速度を、前記乾燥ゾーン温度センサの測定値の全てが所定の第1閾値未満に且つ前記燃焼ゾーン温度センサの測定値の少なくとも一つが所定の第2閾値以上になるように制御するように構成されている請求項
1記載の焼却装置。
【請求項3】
前記複数の温度センサは、前記一次燃焼室の前後方向に千鳥状に並んでいる請求項1
又は2記載の焼却装置。
【請求項4】
左右両側壁部を有し、被焼却物を一次燃焼する一次燃焼室と、
前記一次燃焼室に仕切り壁部を介して隣接して設置され、前記一次燃焼室にて発生した排ガスを二次燃焼する二次燃焼室と、
前記一次燃焼室に入れられた前記被焼却物を前方へ押し移動させる押し手段と、
前記仕切り壁部に前記一次燃焼室と前記二次燃焼室とを連通して設けられ、前記一次燃焼室の前記排ガスが前記一次燃焼室から前記二次燃焼室へ流れる際に通過する排ガス通路と、
前記被焼却物の前端部に向けて一次燃焼用空気を噴射する散気管とを備え、
前記排ガス通路は、前記仕切り壁部における前記一次燃焼室側の壁面に開口した排ガス入口を有し、
前記散気管は、前記一次燃焼室における前記排ガス入口の内側又はその近傍から前記一次燃焼用空気を噴射する焼却装置を用いた被焼却物の焼却方法であって、
一次燃焼室の左右両側壁部の少なくとも一方に複数の温度センサが前記一次燃焼室の前後方向に並んで設けられており、
前記各温度センサは、前記一次燃焼室における前記温度センサが設けられた位置の温度を測定するものであり
、
前記一次燃焼室は、前記被焼却物を乾燥する乾燥ゾーン、及び前記乾燥ゾーンで乾燥された前記被焼却物を一次燃焼する燃焼ゾーンを有するとともに、前記燃焼ゾーンは前記乾燥ゾーンにその前側に隣接しており、
前記押し手段は、前記被焼却物を前方へ押すことにより前記被焼却物の前端部を前記乾燥ゾーン及び前記燃焼ゾーンに順次移動させるものであり、
前記複数の温度センサは、前記左右両側壁部の前記少なくとも一方における前記乾燥ゾーンに対応する部分に設けられた少なくとも一つの乾燥ゾーン温度センサと、前記左右両側壁部の前記少なくとも一方における前記燃焼ゾーンに対応する部分に設けられた少なくとも一つの燃焼ゾーン温度センサとを含んでおり、
前記乾燥ゾーン温度センサの測定値と前記燃焼ゾーン温度センサの測定値とに基づいて前記押し手段の被焼却物押し速度を調節する被焼却物の焼却方法。
【請求項5】
前記乾燥ゾーン温度センサの測定値の全てが所定の第1閾値未満に且つ前記燃焼ゾーン温度センサの測定値の少なくとも一つが所定の第2閾値以上になるように、前記押し手段の被焼却物押し速度を調節する請求項
4記載の被焼却物の焼却方法。
【請求項6】
前記複数の温度センサは、前記一次燃焼室の前後方向に千鳥状に並んでいる請求項
4又は5記載の被焼却物の焼却方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雑芥類、汚泥類、灰プラスチック類、油泥類などの被焼却物を焼却処理する焼却装置及び被焼却物の焼却方法に関する。
【0002】
ここで本明細書及び特許請求の範囲では、説明の便宜上、焼却装置の前後方向については、焼却装置の一次燃焼室から仕切り壁部に向かう方向を焼却装置の前方向とし、その反対方向を焼却装置の後方向とする。
【背景技術】
【0003】
焼却装置には様々な構成のものが知られており、その一つとして、特許文献1-3は、被焼却物を一次燃焼する一次燃焼室と、一次燃焼室に仕切り壁部を介して隣接して設置されるとともに一次燃焼室にて発生した排ガスを二次燃焼する二次燃焼室と、一次燃焼室に入れられた被焼却物を前方へ押し移動させる押し手段と、仕切り壁部に一次燃焼室と二次燃焼室とを連通して設けられるとともに一次燃焼室の排ガスが一次燃焼室から二次燃焼室へ流れる際に通過する排ガス通路と、被焼却物の前端部に向けて一次燃焼用空気を噴射する散気管とを備えた焼却装置を開示している。
【0004】
一次燃焼室は、被焼却物を乾燥する乾燥ゾーンと乾燥ゾーンで乾燥された被焼却物を一次燃焼する燃焼ゾーンとを有している。燃焼ゾーンは乾燥ゾーンにその前側に隣接している。排ガス通路は、仕切り壁部における一次燃焼室側の壁面に開口した排ガス入口と、仕切り壁部における二次燃焼室側の壁面に開口した排ガス出口とを有している。散気管は一次燃焼室における排ガス入口の内側又はその近傍から一次燃焼用空気を噴射する。押し手段としてはプッシャーなどが用いられる。一次燃焼室の前部の下方位置には被焼却物の前端部の燃焼に伴い発生した焼却灰を集める集灰室が設けられている。
【0005】
上述の焼却装置によれば、一次燃焼室において散気管から被焼却物の前端部に向けて噴射された空気は、一次燃焼室の後部側にて反転したのち燃焼排ガスを含んだ排ガスとして排ガス入口に流入する。このとき、排ガスは、散気管から噴射された新鮮な一次燃焼用空気と被焼却物の前端部の燃焼による火炎とを受けて燃焼される。これにより、排ガス中に含まれている有害物質(例:ダイオキシン類、有煙ガス成分)の量が低減する。
【0006】
特許文献4は上述の焼却装置に好適に用いられる散気管を開示している。この散気管には被焼却物の前部に向けて火炎を噴射する助燃バーナーが付設されている。
【0007】
而して、上述の焼却装置では、被焼却物の前端部が燃焼し、そのため被焼却物の前端部の温度が局部的に高くなり、また被焼却物の前端部に焼却灰が存在する。この焼却灰の多くは、押し手段により被焼却物の前端部が前方へ押されて移動することにより一次燃焼室から集灰室に落下して集められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平7-217840号公報
【文献】特開平3-194309号公報
【文献】特開平3-194311号公報
【文献】特開2003-254522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
集灰室に集められる焼却灰は、これに残存している未燃焼物の量がなるべく少ない方がよい。焼却灰中の未燃焼物の量を少なくするためには、押し手段の被焼却物押し速度はなるべく遅い方が好ましいが、押し速度が遅いと被焼却物の焼却処理に要する時間が長くかかるし、その逆に、押し速度が速すぎると焼却灰中の未燃焼物の量が多くなるという問題が発生する。したがって、焼却灰中の未燃焼物の量をなるべく少なくし且つ被焼却物の焼却処理に要する時間をなるべく短くするためには、押し手段による被焼却物押し速度を適正な速度に調節(設定)する必要がある。
【0010】
しかしながら、一般に被焼却物はその性状によって燃え易さが異なり、そのため押し速度の調節は容易ではなかった。
【0011】
本発明は上述した技術背景に鑑みてなされたものであり、その目的は、押し手段の被焼却物押し速度を適正な速度に調節することができる焼却装置及び被焼却物の焼却方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は以下の手段を提供する。
【0013】
1) 左右両側壁部を有し、被焼却物を一次燃焼する一次燃焼室と、
前記一次燃焼室に仕切り壁部を介して隣接して設置され、前記一次燃焼室にて発生した排ガスを二次燃焼する二次燃焼室と、
前記一次燃焼室に入れられた前記被焼却物を前方へ押し移動させる押し手段と、
前記仕切り壁部に前記一次燃焼室と前記二次燃焼室とを連通して設けられ、前記一次燃焼室の前記排ガスが前記一次燃焼室から前記二次燃焼室へ流れる際に通過する排ガス通路と、
前記被焼却物の前端部に向けて一次燃焼用空気を噴射する散気管とを備え、
前記排ガス通路は、前記仕切り壁部における前記一次燃焼室側の壁面に開口した排ガス入口を有し、
前記散気管は、前記一次燃焼室における前記排ガス入口の内側又はその近傍から前記一次燃焼用空気を噴射する焼却装置であって、
一次燃焼室の左右両側壁部の少なくとも一方に複数の温度センサが前記一次燃焼室の前後方向に並んで設けられており、
前記各温度センサは、前記一次燃焼室における前記温度センサが設けられた位置の温度を測定するものであり、
前記押し手段の被焼却物押し速度を前記複数の温度センサの測定値に基づいて制御するように構成されている焼却装置。
【0014】
2) 前記一次燃焼室は、前記被焼却物を乾燥する乾燥ゾーン、及び前記乾燥ゾーンで乾燥された前記被焼却物を一次燃焼する燃焼ゾーンを有するとともに、前記燃焼ゾーンは前記乾燥ゾーンにその前側に隣接しており、
前記押し手段は、前記被焼却物を前方へ押すことにより前記被焼却物の前端部を前記乾燥ゾーン及び前記燃焼ゾーンに順次移動させるものであり、
前記複数の温度センサは、前記左右両側壁部の前記少なくとも一方における前記乾燥ゾーンに対応する部分に設けられた少なくとも一つの乾燥ゾーン温度センサと、前記左右両側壁部の前記少なくとも一方における前記燃焼ゾーンに対応する部分に設けられた少なくとも一つの燃焼ゾーン温度センサとを含んでおり、
前記押し手段の被焼却物押し速度を、前記乾燥ゾーン温度センサの測定値と前記燃焼ゾーン温度センサの測定値とに基づいて制御するように構成されている前項1記載の焼却装置。
【0015】
3) 前記押し手段の被焼却物押し速度を、前記乾燥ゾーン温度センサの測定値の全てが所定の第1閾値未満に且つ前記燃焼ゾーン温度センサの測定値の少なくとも一つが所定の第2閾値以上になるように制御するように構成されている前項2記載の焼却装置。
【0016】
4) 前記複数の温度センサは、前記一次燃焼室の前後方向に千鳥状に並んでいる前項1~3のいずれかに記載の焼却装置。
【0017】
5) 左右両側壁部を有し、被焼却物を一次燃焼する一次燃焼室と、
前記一次燃焼室に仕切り壁部を介して隣接して設置され、前記一次燃焼室にて発生した排ガスを二次燃焼する二次燃焼室と、
前記一次燃焼室に入れられた前記被焼却物を前方へ押し移動させる押し手段と、
前記仕切り壁部に前記一次燃焼室と前記二次燃焼室とを連通して設けられ、前記一次燃焼室の前記排ガスが前記一次燃焼室から前記二次燃焼室へ流れる際に通過する排ガス通路と、
前記被焼却物の前端部に向けて一次燃焼用空気を噴射する散気管とを備え、
前記排ガス通路は、前記仕切り壁部における前記一次燃焼室側の壁面に開口した排ガス入口を有し、
前記散気管は、前記一次燃焼室における前記排ガス入口の内側又はその近傍から前記一次燃焼用空気を噴射する焼却装置を用いた被焼却物の焼却方法であって、
一次燃焼室の左右両側壁部の少なくとも一方に複数の温度センサが前記一次燃焼室の前後方向に並んで設けられており、
前記各温度センサは、前記一次燃焼室における前記温度センサが設けられた位置の温度を測定するものであり、
前記複数の温度センサの測定値に基づいて前記押し手段の被焼却物押し速度を調節する被焼却物の焼却方法。
【0018】
6) 前記一次燃焼室は、前記被焼却物を乾燥する乾燥ゾーン、及び前記乾燥ゾーンで乾燥された前記被焼却物を一次燃焼する燃焼ゾーンを有するとともに、前記燃焼ゾーンは前記乾燥ゾーンにその前側に隣接しており、
前記押し手段は、前記被焼却物を前方へ押すことにより前記被焼却物の前端部を前記乾燥ゾーン及び前記燃焼ゾーンに順次移動させるものであり、
前記複数の温度センサは、前記左右両側壁部の前記少なくとも一方における前記乾燥ゾーンに対応する部分に設けられた少なくとも一つの乾燥ゾーン温度センサと、前記左右両側壁部の前記少なくとも一方における前記燃焼ゾーンに対応する部分に設けられた少なくとも一つの燃焼ゾーン温度センサとを含んでおり、
前記乾燥ゾーン温度センサの測定値と前記燃焼ゾーン温度センサの測定値とに基づいて前記押し手段の被焼却物押し速度を調節する前項5記載の被焼却物の焼却方法。
【0019】
7) 前記乾燥ゾーン温度センサの測定値の全てが所定の第1閾値未満に且つ前記燃焼ゾーン温度センサの測定値の少なくとも一つが所定の第2閾値以上になるように、前記押し手段の被焼却物押し速度を調節する前項6記載の被焼却物の焼却方法。
【0020】
8) 前記複数の温度センサは、前記一次燃焼室の前後方向に千鳥状に並んでいる前項5~7のいずれかに記載の被焼却物の焼却方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明は以下の効果を奏する。
【0022】
前項1では、一次燃焼室の左右両側壁部の少なくとも一方に、複数の温度センサが一次燃焼室の前後方向に並んで設けられるとともに、複数の温度センサは一次燃焼室における温度センサが設けられた位置の温度を測定するものであることにより、一次燃焼室の前後方向における被焼却物の前端部の位置を複数の温度センサの測定値によって検出することができる。さらに、押し手段の被焼却物押し速度が複数の温度センサの測定値に基づいて制御されることにより、押し手段の被焼却物押し速度を適正な速度に調節することができる。
【0023】
前項2では、乾燥ゾーン温度センサの測定値と燃焼ゾーン温度センサの測定値とに基づいて押し手段の被焼却物押し速度が制御されることにより、押し手段の被焼却物押し速度を適正な速度に確実に調節することができる。
【0024】
前項3では、乾燥ゾーン温度センサの測定値の全てが所定の第1閾値未満に且つ前記燃焼ゾーン温度センサの測定値の少なくとも一つが所定の第2閾値以上になるように、押し手段の被焼却物押し速度が制御されることにより、押し手段の被焼却物押し速度を適正な速度に確実に調節することができる。
【0025】
前項4では、複数の温度センサが一次燃焼室の前後方向に千鳥状に並んでいることにより、一次燃焼室の前後方向における被焼却物の前端部の位置を複数の温度センサの測定値によって確実に検出することができ、そのため押し手段の被焼却物押し速度を適正な速度に確実に調節することができる。
【0026】
前項5~8はそれぞれ前項1~4の上述した効果と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は本発明の一実施形態に係る焼却装置の概略縦断面図である。
【
図7】
図7は、同焼却装置の一次燃焼室の側壁部における温度センサが設けられた部分及びその近傍の概略拡大断面図である。
【
図8】
図8は、同焼却装置の一次燃焼室の側壁部における温度センサが設けられた位置を説明するための同焼却装置の概略縦断面図である。
【
図9】
図9は、同焼却装置のプッシャーの被焼却物押し速度が適正な速度である場合の同焼却装置の概略縦断面図である。
【
図10】
図10は、同プッシャーの被焼却物押し速度が適正な速度よりも遅い場合の同焼却装置の概略縦断面図である。
【
図11】
図11は、同プッシャーの被焼却物押し速度が適正な速度よりも速い場合の同焼却装置の概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の一実施形態について図面を参照して以下に説明する。
【0029】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る焼却装置1は、仮想線(二点鎖線)で示した被焼却物90を焼却処理する焼却炉2を具備している。なお
図2及び3では被焼却物90は図示省略されている。
【0030】
被焼却物90の種類は限定されるものではなく、雑芥類、汚泥類、灰プラスチック類、油泥類などが挙げられる。
【0031】
焼却炉2(焼却装置1)は、被焼却物90を一次燃焼する一次燃焼室10と、一次燃焼室10にて被焼却物90の燃焼に伴い発生した排ガス81を二次燃焼する二次燃焼室40とを備えており、更に熾火燃焼室30、集塵機45などを備えている。
【0032】
二次燃焼室40は一次燃焼室10にその前側に仕切り壁部3を介して隣接して設置されている。すなわち、一次燃焼室10と二次燃焼室40は仕切り壁部3で仕切られている。
【0033】
一次燃焼室10は、後壁部11と左右両側壁部12、12と天壁部13と床壁部19とを有している。両側壁部12、12は互いに左右に略平行状に離間して配置されている(
図2参照)。
図4に示すように天壁部13は横断面略円弧状であり、両側壁部12、12間の上端部に配置されている。床壁部19は両側壁部12、12間の下端部に略水平状に配置されており、また床壁部19は、
図1に示すように被焼却物90をその下側から受ける受け底板15と受け底板15の下側に受け底板15に対して離間して略水平状に配置された底壁部14とを有している。
【0034】
底壁部14上には前後方向に延びた複数(本実施形態では3つ)の支持桁16が左右方向に互いに離間して載置されている(
図2参照)。受け底板15はこれらの支持桁16上に略水平状に載置支持されている。これにより、受け底板15が底壁部14の上側に底壁部14に対して離間して略水平状に配置されるとともに、一次燃焼室10における受け底板15の下側に、受け底板15と底壁部14との間の隙間からなる第1空気通路17が受け底板15の前端から後方向に延びて形成されている。
【0035】
第1空気通路17はその前側が開口しており且つ受け底板15の前端から後方向に連続的に延びている。第1空気通路17には後述する散気管20から噴射された一次燃焼用空気80の一部80aが通過する。
【0036】
さらに、一次燃焼室10は、
図1に示すように、受け底板15(床壁部19)上の被焼却物90を乾燥する乾燥ゾーン10aと、乾燥ゾーン10aで乾燥された受け底板15上の被焼却物90を一次燃焼する燃焼ゾーン10bとを有している。
【0037】
燃焼ゾーン10bは乾燥ゾーン10aにその前側に隣接している。具体的には、乾燥ゾーン10aは一次燃焼室10の後部側に位置しており、燃焼ゾーン10bは一次燃焼室10の前部側に位置している。
【0038】
一次燃焼室10の後壁部11の下部には被焼却物入口11aが設けられている。被焼却物90はこの被焼却物入口11aから一次燃焼室10に入れられる。一次燃焼室10の天壁部13には一次燃焼室10における天壁部13付近の温度を測定する天壁部温度センサ13bが設けられている。天壁部温度センサ13bは、例えば、先端部に感温部(測温接点)が設けられた保護管付き熱電対(シース熱電対を含む)からなる。
【0039】
さらに、焼却装置1(焼却炉2)は、一次燃焼室10の受け底板15上の被焼却物90をその後側から前方へ押し移動させる押し手段50としてのプッシャー51と、受け底板15上の被焼却物90の前端部91に向けて一次燃焼用空気80を噴射する散気管20とを備えている。
【0040】
プッシャー51は、被焼却物90をその後側から前方へ押す押し体52と、押し体52を前進及び後退させる駆動源としてのアクチュエータ53とを有している。アクチュエータ53は油圧シリンダなどを有している。プッシャー51の被焼却物押し速度は、制御手段としての制御器70により制御される。
【0041】
なお、プッシャー51の被焼却物押し速度とは、プッシャー51が被焼却物90を押す速度のことであり、すなわちプッシャー51の押し体52の前進速度のことである。被焼却物90はこの押し速度(押し体52の前進速度)で受け底板15上を一次燃焼室10の前方向へ移動される。したがって、プッシャー51の被焼却物押し速度とは被焼却物90の前方移動速度を意味する。
【0042】
図3及び5に示すように、一次燃焼室10の左右両側壁部12、12にはそれぞれ複数の温度センサ(F1~F3、G1~G3)が設けられている。各側壁部12におけるこれらの温度センサ(F1~F3、G1~G3)が設けられた位置について
図8を参照して以下に説明する。
【0043】
各側壁部12に設けられたこれらの温度センサ(F1~F3、G1~G3)は、一次燃焼室10の前後方向に千鳥状に複数列(本実施形態では2列)に並んでいる。一方の側壁部12に設けられたこれらの温度センサ(F1~F3、G1~G3)の位置と他方の側壁部12に設けられたこれらの温度センサ(F1~F3、G1~G3)の位置は互いに同じであり、すなわち、両側壁部12、12に設けられた温度センサの位置は、一次燃焼室10の前後方向に連続する一次燃焼室10の鉛直中心面に対して互いに面対称な位置である。
【0044】
さらに、これらの温度センサ(F1~F3、G1~G3)は、側壁部12における乾燥ゾーン10aに対応する部分Fに設けられた少なくとも一つの乾燥ゾーン温度センサF1~F3と、側壁部12における燃焼ゾーン10bに対応する部分G(二点鎖線で四角形状に包囲された部分)に設けられた少なくとも一つの燃焼ゾーン温度センサG1~G3とを有している。本実施形態では、乾燥ゾーン温度センサF1~F3の数は複数であり具体的には3つである。また燃焼ゾーン温度センサG1~G3の数は複数であり具体的には3つである。
【0045】
これらの温度センサ(F1~F3、G1~G3)は互いに同一の構成のものである。具体的には、
図7に示すように各温度センサ(同図では温度センサF3)は、先端部に感温部(測温接点)71が設けられた保護管付き熱電対(シース熱電対を含む)からなるものである。なお符号72は保護管内に配置された一対の熱電対素線である。
【0046】
温度センサF3は、側壁部12にその厚さ方向に貫通して穿設された温度センサ挿入孔12cに側壁部12の外側から挿入されることで側壁部12に設けられており、また温度センサF3の先端部の感温部71は側壁部12における一次燃焼室10側の壁面(即ち側壁部12の内壁面)12dと略同一の位置に配置されている。これにより、各温度センサは、一次燃焼室10における温度センサが設けられた位置の温度(詳述すると側壁部12の内壁面12dにおける温度センサが設けられた位置の温度)を測定しうるようになっている。
【0047】
各温度センサにより測定された測定値(即ち測定温度)は、温度センサの基端部から外側へ延びた出力信号線75から出力されるとともに、出力信号線75が制御器70に接続されている。これにより、これらの温度センサー(F1~F3、G1~G3)の測定値が制御器70に送信されるようになっている。
【0048】
制御器70は、これらの温度センサ(F1~F3、G1~G3)の測定値に基づいてプッシャー51の被焼却物押し速度を制御するものであり、プログラム可能なプロセッサを搭載している。具体的には、制御器70は、乾燥ゾーン温度センサF1~F3の測定値の全てが所定の第1閾値Th1未満に且つ燃焼ゾーン温度センサG1~G3の測定値の少なくとも一つが所定の第2閾値Th2以上になるように、プッシャー51の被焼却物押し速度を制御する。
【0049】
第1閾値Th1と第2閾値Th2は、それぞれ被焼却物90の性状(例:燃え易さ、燃焼温度)などによって決定されるものであり、具体的には一般にそれぞれ600℃~900℃の範囲の一温度に設定される。さらに、第1閾値Th1と第2閾値Th2は互いに同じ値(即ちTh1=Th2)であってもよいし互いに相異する値(即ちTh1≠Th2)であってもよく、通常は互いに同じ値に設定される。
【0050】
制御器70は、制御器70に送信されてきたこれらの温度センサ(F1~F3、G1~G3)の測定値に基づいてプッシャー51の被焼却物押し速度を決定し、プッシャー51の被焼却物押し速度がこの決定された押し速度になるようにプッシャー51のアクチュエータ53を動作させる。これにより、プッシャー51の被焼却物押し速度が調節される。
【0051】
図1~3に示すように、仕切り壁部3の下端部の左右方向中間部には、一次燃焼室10と二次燃焼室40とを連通した排ガス通路4が仕切り壁部3をその前後方向に貫通して設けられている。一次燃焼室10にて発生した排ガス81は一次燃焼室10から二次燃焼室40へ流れる際にこの排ガス通路4を通過する。
【0052】
図3に示すように、排ガス通路4は、仕切り壁部3における一次燃焼室10側の壁面3a(即ち仕切り壁部3の後壁面3a)の下端部の左右方向中間部に開口した排ガス入口4aと、仕切り壁部3における二次燃焼室40側の壁面3b(即ち仕切り壁部3の前壁面3b)の下端部の左右方向中間部に開口した排ガス出口4bとを有している。排ガス通路4の断面形状は略四角形状であり、排ガス入口4a及び排ガス出口4bの断面形状もそれぞれ略四角形状である。
【0053】
一次燃焼室10の排ガス81は排ガス通路4にその排ガス入口4aから流入して排ガス通路4を通過する。そして排ガス81は排ガス通路4の排ガス出口4bから二次燃焼室40へ流出する。
【0054】
散気管20は、
図1に示すように、一次燃焼室10における排ガス入口4aの内側の位置から一次燃焼用空気80を受け底板15上の被焼却物90の前端部91に向けて噴射するものである。散気管20は、一次燃焼室10の天壁部13に設けられた散気管挿入孔13aから一次燃焼室10に下向きに挿入されるとともに、仕切り壁部3における一次燃焼室10側の壁面3a(即ち仕切り壁部3の後壁面3a)に半埋没状態に取り外し可能に取り付けられている。散気管20の横断面形状は略円形状である(
図2参照)。
【0055】
図6に示すように、散気管20の下部20aは、排ガス通路4の排ガス入口4aの内側における左右方向中央位置にて略鉛直に配置されている。さらに、散気管20の下部20aにおける被焼却物90側に向いた外面部には、一次燃焼用空気80が噴射される複数の噴射孔21が穿設されている(
図2参照)。
【0056】
図1に示すように、散気管20の上端部は一次燃焼室10の外側に位置しており、この上端部に散気管20内に一次燃焼用空気80を送り込むブロワー22が接続されている。ブロワー22は一次燃焼室10の外側に設置されている。ブロワー22からの一次燃焼用空気80は散気管20内をその上端部から下部20aに向かって流れて噴射孔21から噴射される。
【0057】
なお本発明では、散気管20は一次燃焼室10における排ガス入口4aの内側の位置から一次燃焼用空気80を噴射するものであることに限定されるものではなく、その他に例えば、一次燃焼室10における排ガス入口4aの内側の近傍位置から一次燃焼用空気80を噴射するものであってもよい。
【0058】
また、一次燃焼室10における散気管20の近傍には助燃バーナー(図示せず)が設置されている。助燃バーナーは受け底板15上の被焼却物90の前端部91に向けて火炎を噴射することにより被焼却物90の助燃を行うものである。
【0059】
助燃バーナーは散気管20に付設されていてもよいし、その他に例えば、散気管20の近傍であって且つ仕切り壁部3における一次燃焼室10側の壁面3a(即ち仕切り壁部3の後壁面3a)に設けられてもよい。
【0060】
図2~4に示すように、一次燃焼室10の乾燥ゾーン10aの左右両外側にはそれぞれ隔壁部12bを介して上下方向に延びた第2空気通路18が設けられている。すなわち、一次燃焼室10の左右両側壁部12、12における乾燥ゾーン10aの後端部に対応する壁部12a、12a(詳述すると一次燃焼室10の左右両側壁部12、12の後端部)はそれぞれ局部的に外側方に突出した状態に形成されている。第2空気通路18は、この突出した壁部12aの内側に形成されるとともに、隔壁部12bによって一次燃焼室10に対して仕切られている。
【0061】
受け底板15を支持した上述の各支持桁16の後端部には空気通過用切除部16aが形成されており(
図1及び2参照)、また左右各第2空気通路18の下端部に第1空気通路17側に開口した空気流入口18bが形成されている(
図4参照)。第1空気通路17の後端部は切除部16a及び空気流入口18bを介して第2空気通路18の下端部に連通しており、これにより、第1空気通路17を受け底板15の前側から後方向に流れた一次燃焼用空気80aが第1空気通路17の後端部から切除部16a及び空気流入口18bを通って第2空気通路18の下端部に流入しうるようになっている。
【0062】
また、第2空気通路18の上端部に一次燃焼室10側に開口した吹出し口18cが形成されている。吹出し口18cは、
図5に示すように乾燥ゾーン10aに位置している被焼却物90の上面よりも高い位置に配置されている。第1空気通路17の後端部から第2空気通路18の下端部に流入した一次燃焼用空気80aは、第2空気通路18をその下端部から上方向に流れてこの吹出し口18cから乾燥ゾーン10aに位置している被焼却物90の上面側(詳述すると被焼却物90の上面)に向けて吹き出される。
【0063】
図1に示すように、熾火燃焼室30では、被焼却物90の前端部91の燃焼に伴い発生した焼却灰95が熾火状態に燃焼される。熾火燃焼室30は一次燃焼室10の前部(詳述すると一次燃焼室10の前端部)の下方位置に設置されている。具体的には、一次燃焼室10の底壁部14(床壁部19)における受け底板15の前端位置よりも前側の部分に焼却灰排出口14aが設けられるとともに、この焼却灰排出口14aを介してその下方位置に熾火燃焼室30が設置されている。受け底板15上の被焼却物90の焼却灰95が受け底板15上から落下すると、焼却灰94がこの焼却灰排出口14aを通って熾火燃焼室30に集められる。
【0064】
さらに、焼却装置1(焼却炉2)は、熾火燃焼室30に集められた焼却灰95に、焼却灰95が熾火燃焼室30にて熾火状態に燃焼するように熾火燃焼用空気83を供給する熾火燃焼用空気供給手段35を備えている。
【0065】
空気供給手段35は複数の熾火燃焼用空気噴出管36と、これらの空気噴出管36に熾火燃焼用空気83を送り込むブロワー37とを有している。ブロワー37は一次燃焼室10及び熾火燃焼室30の外側に設置されている。
【0066】
これらの空気噴出管36は、ブロワー37からの熾火燃焼用空気83を熾火燃焼室30に下向き(斜め下向きを含む)に噴出して焼却灰95に供給するものである。詳述すると、これらの空気噴出管36は、熾火燃焼室30の周壁部30aの前壁部及び後壁部をそれぞれ熾火燃焼室30の外側から熾火燃焼室30に向かって貫通した状態で且つ互いに離間して斜め下向きに配置されており、各空気噴出管36の先端に設けられた噴出口36aから熾火燃焼用空気83が熾火燃焼室30に斜め下向きに噴出される。
【0067】
さらに、空気噴出管36の噴出口36aは熾火燃焼室30に集められた焼却灰95の上面よりも下側に位置しており、これにより、噴出口36aから熾火燃焼用空気83が熾火燃焼室30に焼却灰95の上面よりも下側の位置にて噴出されるようになっている。
【0068】
図6に示すように、熾火燃焼室30の底部31は水平方向に対して斜め下側に傾斜しており、熾火燃焼室30の最底部31aに焼却灰95が吐出される焼却灰吐出口32が設けられている。さらに、焼却灰吐出口32に焼却灰95を冷却する水冷式冷却ジャケット33を介してコンベヤとしてのスクリューコンベヤ34が設置されている。スクリューコンベヤ34は焼却灰95を熾火燃焼室30外へ連続的に搬出するものである。なお、符号34aはスクリューコンベヤ34のスクリューシャフトである。
【0069】
二次燃焼室40では、排ガス81中に含まれている有害物質(例:ダイオキシン類、有煙ガス成分)の量の低減が図られる。具体的には、
図1及び3に示すように、排ガス通路4を通過してその排ガス出口4bから二次燃焼室40に流出した排ガス81を二次燃焼室40に備えられた二次燃焼用バーナー(図示せず)によって二次燃焼し、これにより排ガス81中の有害物質の量の低減が図られる。符号41は、二次燃焼室40の排ガス81が集塵機45へ排出される排ガス排出口である。
【0070】
図1に示すように、集塵機45は、排ガス81中に含まれている飛灰などの煤塵を捕集することで排ガス81から煤塵を除去するものである。本実施形態では、集塵機45として複数(具体的には2つ)のサイクロン式集塵機が用いられている(
図3参照)。なお本発明では、サイクロン式集塵機の数は2つであることに限定されるものではなく被焼却物90の量に応じて増減されるものである。
【0071】
集塵機45の上端部に煙突47が立設されるとともに、煙突47にエジェクタブロワー48が接続されている。集塵機45により煤塵が捕集除去された排ガス81はエジェクタブロワー48によって煙突47内を強制的に上昇されて排出される。なお本発明では、エジェクタブロワー48の代わりに誘引排風機を用いてもよい。
【0072】
次に、焼却装置1の動作について以下に説明する。
【0073】
焼却装置1(焼却炉2)の一次燃焼室10の被焼却物入口11aの外側に被焼却物90を配置し、そしてプッシャー51をその押し体52が前進するように動作させることにより被焼却物90をその後側から押し体52で前方へ押し、これにより被焼却物90を被焼却物入口11aから一次燃焼室10に押し入れていく。
【0074】
一次燃焼室10に押し入れられた被焼却物90は、
図1に示すように受け底板15で受けられるとともに、プッシャー51による押し体52の前進動作に伴い被焼却物90が所定の被焼却物押し速度で受け底板15上を乾燥ゾーン10a及び燃焼ゾーン10bに順次移動する。
【0075】
被焼却物90の前端部91が燃焼ゾーン10bに到達したとき、助燃バーナーから火炎を被焼却物90の前端部91に向けて噴射するとともに、散気管20から一次燃焼用空気80を被焼却物90の前端部91に向けて噴射する。これにより燃焼ゾーン10bにて被焼却物90の前端部91がその上面側から燃焼する。
【0076】
被焼却物90の前端部91が自燃可能な温度に到達すると、助燃バーナーによる火炎の噴射を停止する。これ以降は、散気管20から一次燃焼用空気80を噴射させた状態のままで被焼却物90を燃焼(自燃)させる。
【0077】
散気管20から噴射された一次燃焼用空気80の多くは、受け底板15上の被焼却物90の前端部91の上面側に向けて吹き出されるとともに被焼却物90の前端部91の燃焼熱で加熱される。そして、この加熱された空気80が一次燃焼室10の後部側に流れて乾燥ゾーン10aに位置している被焼却物90をその上面側から乾燥ゾーン10aにて加熱乾燥させ、そののち反転して天壁部13に沿って流れ、最終的に排ガス81として排ガス通路4にその排ガス入口4aから流入する。
【0078】
なお排ガス81は、被焼却物90の前端部91の燃焼により生じた燃焼排ガスだけではなく被焼却物90の乾燥により生じた乾燥排ガスも含んでいる。
【0079】
排ガス81は排ガス通路4に流入する直前で散気管20から噴射された新鮮な一次燃焼用空気80と被焼却物90の前端部91の燃焼による火炎とを受けて燃焼され、これにより排ガス81中に含まれている有害物質の量が低減されるとともに、排ガス81の温度が上昇する。
【0080】
また、散気管20から噴射された一次燃焼用空気80の一部80aは、
図1及び2に示すように第1空気通路17を受け底板15の前側から後方向に流れたのち第1空気通路17の後端部から切除部16a及び空気流入口18bを通って左右各第2空気通路18の下端部に流入する(
図4参照)。そして、流入した空気80aは、第2空気通路18をその下端部から上方向に流れて吹出し口18cから乾燥ゾーン10aに位置している被焼却物90の上面側に向けて吹き出される。その後、
図3に示すように、吹き出された空気80aは上述の排ガス81として排ガス通路4にその排ガス入口4aから流入する。
【0081】
第1空気通路17を流れる一次燃焼用空気80aは、第1空気通路17に流入する際に被焼却物90の前端部91の燃焼熱で加熱され、この加熱された空気80aが第1空気通路17を後方向へ流れる際に受け底板15を加熱する。そして、この加熱された空気80aが乾燥ゾーン10aに位置している被焼却物90の上面側に向けて吹き出されることにより、吹き出された空気80aの熱と受け底板15の熱とで被焼却物90がその上下両側から加熱されて迅速に且つ確実に乾燥される。そのため、被焼却物90の焼却効率を向上させることができる。
【0082】
一次燃焼室10において被焼却物90の燃焼は被焼却物90の前端部91で生じるため、被焼却物90の前端部91の温度が局部的に高くなる。また、被焼却物90の前端部91の燃焼に伴い発生した焼却灰95は被焼却物90の前端部91に存在しており、特に前端部91の上面に多く存在している。
【0083】
この焼却灰95の多くは、
図1に示すように、プッシャー51による押し体52の前進動作によって被焼却物90の前端部91が所定の被焼却物押し速度で前方へ移動することにより受け底板15上から落下する。また、焼却灰95の一部は、散気管20からの一次燃焼用空気80の噴射圧によって被焼却物90の前端部91の上面から吹き飛ばされて除去される。そのため、被焼却物90の前端部91の上面の傾斜形状は、散気管20から被焼却物90の前端部91までの距離、散気管20からの一次燃焼用空気80の噴射圧の強さ、焼却灰95の性状などによって相異する。
【0084】
受け底板15上から落下した焼却灰95は焼却灰排出口14aを通って熾火燃焼室30に集められる。そして、空気噴出管36の噴出口36aから熾火燃焼用空気83が熾火燃焼室30に焼却灰95の上面よりも下側の位置にて下向き(詳述すると斜め下向き)に噴出されて焼却灰95に供給されることにより、焼却灰95が熾火燃焼室30にて熾火状態に燃焼される。これにより、焼却灰95中に残存している未燃焼物を確実に燃焼させて焼却灰95中の未燃焼物の量を確実に低減することができる。
【0085】
また、空気噴出管36の噴出口36aから熾火燃焼用空気83が熾火燃焼室30に下向き(詳述すると斜め下向き)に噴出されるので、熾火燃焼室30への空気83の噴出圧による焼却灰95の舞い上がりを抑制できるし、空気噴出管36の噴出口36aが焼却灰95で詰まるのを抑制できる。
【0086】
複数の空気噴出管36から噴出する熾火燃焼用空気83の総噴出量は限定されるものではないが、上述した効果を確実に発揮しうるようにするためには、熾火燃焼用空気83の温度が10℃~30℃の範囲である場合、総噴出量は焼却灰1kg及び1分間当たり0.7リットル~1.4リットルの範囲に設定されることが特に好ましい。
【0087】
また、熾火燃焼室30の焼却灰95は焼却灰吐出口32からスクリューコンベヤ34へ吐出される際に冷却ジャケット33により冷却されてその温度が低下する。そのため、低温状態の焼却灰95をスクリューコンベヤ34により搬出することができる。
【0088】
排ガス通路4にその排ガス入口4aから流入した排ガス81は、排ガス通路4を通過してその排ガス出口4bから二次燃焼室40に流出する。そして、排ガス81が二次燃焼室40にて二次燃焼用バーナーにより二次燃焼され、これにより排ガス81中の有害物質の量が更に低減される。
【0089】
そして、排ガス81が二次燃焼室40から排ガス排出口41を通過して集塵機45に排出され、排ガス81中の煤塵が集塵機45により捕集されて排ガス81から除去される。その後、排ガス81が煙突47内をエジェクタブロワー48により強制的に上昇されて排出される。
【0090】
次に、制御器70によるプッシャー51の被焼却物押し速度の幾つかの調節例について
図9~11を参照して以下に説明する。なお以下の説明文では、押し速度の調節例を理解し易くするため、同図に示された三つの乾燥ゾーン温度センサF1~F3を単に符号「F1」、「F2」及び「F3」で記載し、三つの燃焼ゾーン温度センサG1~G3を単に符号「G1」、「G3」及び「G3」で記載する。
【0091】
プッシャー51の被焼却物押し速度が適正な速度である場合、
図9に示すように被焼却物90の前端部91は一次燃焼室10の燃焼ゾーン10bに位置する。この状態では、全ての温度センサ(F1~F3、G1~G3)のうちF1~F3の感温部(71、
図7参照)とG1及びG3の感温部とが被焼却物90で隠蔽され、G2の感温部が被焼却物90で隠蔽されずに一次燃焼室10に露出する。そのため、F1~F3の測定値の全てが低温値であり、G1及びG3の測定値が低温値であり、G2の測定値が高温値である。これにより、F1~F3の測定値の全てが第1閾値Th1未満になり、G1及びG3の測定値が第2閾値Th2未満になり、G2の測定値が第2閾値Th2以上になる。
【0092】
同図のように、F1~F3の測定値の全てが第1閾値Th1未満で且つG1~G3の測定値の少なくとも一つが第2閾値Th2以上である一次燃焼室10の温度分布を、以下では一次燃焼室10の「適正な温度分布」という。この適正な温度分布では、焼却灰95中に残存している未燃焼物の量は少なく、そのため熾火燃焼室30にて未燃焼物の量を確実に所定量未満に低減することができる。
【0093】
プッシャー51の被焼却物押し速度が適正な速度よりも遅い場合、
図10に示すように被焼却物90の前端部91は一次燃焼室10の乾燥ゾーン10aに位置する。この状態では、全ての温度センサ(F1~F3、G1~G3)のうちF2及びF3の感温部が被焼却物90で隠蔽され、F1の感温部とG1~G3の感温部とが被焼却物90で隠蔽されずに一次燃焼室10に露出する。そのため、F2及びF3の測定値が低温値であり、F1の測定値が高温値であり、G1~G3の測定値の全てが高温値である。これにより、F2及びF3の測定値が第1閾値Th1未満になり、F1の測定値が第1閾値Th1以上になり、G1~G3の測定値の全てが第2閾値Th2以上になる。
【0094】
同図に示した一次燃焼室10の温度分布の場合、一次燃焼室10の温度分布を適正な温度分布にするため、プッシャー51の被焼却物押し速度が速くなるように制御器70によりプッシャー51の被焼却物押し速度が制御される。これにより、プッシャー51の被焼却物押し速度を適正な速度に調節する。
【0095】
プッシャー51の被焼却物押し速度が適正な速度よりも速い場合、
図11に示すように被焼却物90の前端部91は一次燃焼室10の燃焼ゾーン10bに位置する。この状態では、全ての温度センサ(F1~F3、G1~G3)の感温部が被焼却物90及び押し体52で隠蔽される。そのため、F1~F3の測定値の全てが低温値であり、G1~G3の測定値の全てが低温値である。これにより、F1~F3の測定値の全てが第1閾値Th1未満になり、G1~G3の測定値の全てが第2閾値Th2未満になる。
【0096】
同図のように、F1~F3の測定値の全てが第1閾値Th1未満で且つG1~G3の測定値の全てが第2閾値Th2未満である一次燃焼室10の温度分布では、焼却灰95中に残存している未燃焼物の量は多く、そのため熾火燃焼室30にて未燃焼物の量を所定量未満に低減することが困難である。
【0097】
そこで、同図に示した一次燃焼室10の温度分布の場合、一次燃焼室10の温度分布を適正な温度分布にするため、プッシャー51の被焼却物押し速度が遅くなるように制御器70によりプッシャー51の被焼却物押し速度が制御される。これにより、プッシャー51の被焼却物押し速度を適正な速度に調節する。
【0098】
上述のように本実施形態の焼却装置1では、一次燃焼室10の前後方向における被焼却物90の前端部91の位置を複数の温度センサ(F1~F3、G1~G3)の測定値によって検出することができ、そのためプッシャー51の被焼却物押し速度を適正な速度に調節することができる。
【0099】
さらに、複数の温度センサ(F1~F3、G1~G3)が一次燃焼室10の前後方向に千鳥状に複数列に並んでいることから、被焼却物90(被焼却物90の前端部91)の上面の高さ位置が比較的高くても比較的低くても一次燃焼室10の前後方向における被焼却物90の前端部91の位置を複数の温度センサ(F1~F3、G1~G3)の測定値によって検出することができるし、また被焼却物90の前端部91の上面の傾斜状態が比較的なだらかでも比較的急峻でも一次燃焼室10の前後方向における被焼却物90の前端部91の位置を複数の温度センサ(F1~F3、G1~G3)の測定値によって検出することができる。したがって、一次燃焼室10の前後方向における被焼却物90の前端部91の位置を複数の温度センサ(F1~F3、G1~G3)の測定値によって確実に検出することができ、そのためプッシャー51の被焼却物押し速度を適正な速度に確実に調節することができる。
【0100】
ここで本実施形態の焼却装置1では、一次燃焼室10の一方の側壁部12に設けられた複数の温度センサ(F1~F3、G1~G3)の測定値と一次燃焼室10の他方の側壁部12に設けられた複数の温度センサ(F1~F3、G1~G3)の測定値とを比較し、互いに相異している測定値の組が存在している場合、当該相異している測定値の組のかなから選択されたいずれか一方の測定値をプッシャー51(押し手段50)の被焼却物押し速度の制御用測定値として用いてもよいし、当該相異している測定値の組についての算術平均値を制御用測定値として用いてもよい。特に算術平均値を制御用測定値として用いることが好ましい。この場合、プッシャー51の被焼却物押し速度を適正な速度に確実に調節することができる。
【0101】
以上で本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で様々に変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明は、被焼却物を焼却する焼却装置及び被焼却物の焼却方法に利用可能である。
【符号の説明】
【0103】
1:焼却装置 3:仕切り壁部
4:排ガス通路 4a:排ガス入口
10:一次燃焼室 12:側壁部
20:散気管 40:二次燃焼室
50:押し手段 51:プッシャー
52:押し体 53:アクチュエータ
70:制御器 80:一次燃焼用空気
90:被焼却物 95:焼却灰
F:側壁部の乾燥ゾーン対応部分 G:側壁部の燃焼ゾーン対応部分
F1~F3:乾燥ゾーン温度センサ G1~G3:燃焼ゾーン温度センサ