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特許7016415注射用カバジタキセル組成物およびその調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-27
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】注射用カバジタキセル組成物およびその調製方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/337 20060101AFI20220128BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220128BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20220128BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20220128BHJP
   A61K 47/40 20060101ALI20220128BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20220128BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20220128BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20220128BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20220128BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20220128BHJP
【FI】
A61K31/337
A61P35/00
A61K9/08
A61K47/32
A61K47/40
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/04
A61K9/19
A61K47/18
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020528900
(86)(22)【出願日】2018-03-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-04-15
(86)【国際出願番号】 CN2018078567
(87)【国際公開番号】W WO2019136817
(87)【国際公開日】2019-07-18
【審査請求日】2020-07-08
(31)【優先権主張番号】201810025193.4
(32)【優先日】2018-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520165571
【氏名又は名称】ビカ バイオテクノロジー (グアンジョウ) カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】トン クーチン
(72)【発明者】
【氏名】チェン ジンラン
【審査官】伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-508138(JP,A)
【文献】特表2009-538294(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリソルベートおよびエタノールを含まずに、重量部で以下の成分:1部のカバジタキセル、1~100部のシクロデキストリン、10~200部の可溶化剤、1~60部のポリビドン(PVP)、0.02~1.0部の添加剤を含む、注射用カバジタキセル組成物であって、
シクロデキストリンが、スルホブチルエーテルベータシクロデキストリン(SBE-β-CD)、ヒドロキシプロピルベータシクロデキストリン(HP-β-CD)、および/またはヒドロキシプロピルスルホブチルエーテルベータシクロデキストリン(HP-SBE-β-CD)からなる群より選択され、
可溶化剤がポリエチレングリコール(PEG)である、
前記組成物
【請求項2】
ポリソルベートおよびエタノールを含まずに、重量部で以下の成分:1部のカバジタキセル、10~30部のシクロデキストリン、30~150部の可溶化剤、1~15部のポリビドン(PVP)、0.05~0.8部の添加剤を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
ポリソルベートおよびエタノールを含まずに、重量部で以下の成分:1部のカバジタキセル、25~29部のシクロデキストリン、50~90部の可溶化剤、7~15部のポリビドン(PVP)、0.05~0.8部の添加剤を含む、請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
ポリソルベートおよびエタノールを含まずに、重量部で以下の成分:1部のカバジタキセル、26~29部のシクロデキストリン、60~80部の可溶化剤、7~10部のポリビドン(PVP)、0.1~0.7部の添加剤を含む、請求項1~3のいずれか一項記載の組成物。
【請求項5】
シクロデキストリンが、SBE-β-CDを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
ポリエチレングリコール(PEG)が、PEG200、PEG300、PEG400、PEG600、PEG800、PEG1000、PEG1500、およびPEG2000より選択される1つまたは複数である、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
ポリエチレングリコール(PEG)が、PEG300および/またはPEG400である、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
ポリビドン(PVP)が、PVPK12、PVPK15、PVPK17、PVPK25、PVPK30、PVPK45、PVPK60、PVPK70、PVPK80、PVPK85、PVPK90、PVPK100、PVPK110、PVPK120、およびPVPK150より選択される1つまたは複数である、請求項1~7のいずれか一項記載の組成物。
【請求項9】
ポリビドン(PVP)が、PVPK12および/またはPVPK17である、請求項8記載の組成物。
【請求項10】
添加剤が、クエン酸および/または酒石酸;および/または酢酸;および/または塩酸;および/またはリン酸;および/または乳酸;および/またはアスコルビン酸;および/またはL-システイン;および/または亜硫酸水素ナトリウム;および/またはピロ亜硫酸ナトリウム;および/またはエデト酸二ナトリウムを含む、請求項1~9のいずれか一項記載の組成物。
【請求項11】
添加剤が、クエン酸および/または亜硫酸水素ナトリウムを含む、請求項10記載の組成物。
【請求項12】
保存に適した固形凍結乾燥物または水溶液の形態である、請求項1~11のいずれか一項記載の組成物。
【請求項13】
以下の工程:
(1)シクロデキストリンを秤量し、可溶化剤および水を加え、撹拌して溶解した後にポリビドンおよび添加剤を加え、撹拌して溶解し、次いで、カバジタキセルを加え、保護のために不活性ガスを充填し、撹拌して溶解した後に30~240分撹拌を続け、均一な混合溶液を得る工程;
(2)試料を採取してpH値および濃度を測定し、品質認定後に、0.2μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜を通して濾過し、バイアル中にサブパッキングし、半打栓し、凍結乾燥器中で凍結乾燥させ、窒素ガスを充填し、打栓し、密封し、ラベル表示する工程
を含む、
請求項1~12のいずれか一項記載の注射用カバジタキセル組成物を調製するための方法。
【請求項14】
工程(1)で、均一な混合溶液のpH値が2.0~6.0である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
以下の工程:
(1)シクロデキストリンを秤量し、可溶化剤および水を加え、撹拌して溶解した後にポリビドンおよび添加剤を加え、撹拌して溶解し、次いで、カバジタキセルを加え、保護のために不活性ガスを充填し、撹拌して溶解した後に30~240分撹拌を続け、均一な混合溶液を得る工程;
(2)試料を採取してpH値および濃度を測定し、適格であることが証明された後に、0.2μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜を通して濾過し、バイアル中にサブパッキングし、窒素を充填し、打栓し、密封し、ラベル表示する工程
を含む
請求項1~12のいずれか一項記載の注射用カバジタキセル組成物を調製するための方法。
【請求項16】
工程(1)で、均一な混合溶液のpH値が2.0~6.0である、請求項15記載の方法。
【請求項17】
患者における腫瘍を治療するための、請求項1~12のいずれか一項記載の組成物。
【請求項18】
腫瘍が前立腺癌である、請求項17記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互作用
本出願は、2018年1月11日に出願された中国特許出願第201810025193.4号の恩恵を主張し、これは、その内容全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
技術分野
本発明は、薬学的調製物の分野に関し、より詳細には、注射用カバジタキセル組成物およびその調製方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景技術
カバジタキセルは白色または灰白色の粉末であり、ほとんど水に不溶性であり、エタノールに可溶性であり、アルカリ条件下で不安定である。その化学名は、(1S,2S,3R,4S,7R,9S,10S,12R,15S)-4-アセチルオキシ-15-{[(2R,3S)-3-{[(tertブトキシ)カルボニルアミノ]}-2-ヒドロキシ-3-フェニルプロパノイル]オキシ}-1-ヒドロキシ-9,12-ジメトキシ-10,14,17,17-テトラメチル-11-オキソ-6-オキサテトラシクロ[11.3.1.03;10.04;7]ヘプタデカ-13-エン-2-イル安息香酸である。その分子式はC45H57N14であり、その分子量は835.93であり、その構造は以下のように示される。
【0004】
カバジタキセルは新世代のタキサン抗腫瘍薬であり、これは、イチイから抽出された前駆物質の半合成によって調製することができ、これは、抗癌機構および特性がドセタキセルと似ており、抗微小管薬に属する。カバジタキセルは、チューブリンと結合することによって、微小管へのその集合を促進する。同時に、これは、集合した微小管の崩壊を防止することができ、微小管を安定化することができ、次いで、細胞の有糸分裂および間期細胞の機能を阻害することができる。タキソールおよびドセタキセルと比較して、カバジタキセルはより強い腫瘍細胞増殖阻害能力を有し、ドセタキセル抵抗性腫瘍を有する患者に有効である。2010年に、米国のFDAは、ホルモン不応性の転移性前立腺癌を有する患者の治療のために、Sanofi-aventisによって開発されたカバジタキセル調製物JEVTANA(登録商標)を承認した。これは、ドセタキセルに抵抗性の前立腺癌のための、FDAが承認した最初の治療薬であり、進行性前立腺癌を有する患者の生存を有意に延ばすことができる。
【0005】
カバジタキセルは強い親油性を有し、ほとんど水に不溶性である。その市販調製物JEVTANA(登録商標)は、可溶化剤として界面活性剤ポリソルベート80(Tween 80)を、および希釈剤としてエタノールを用いる。調製包装物には以下の2つのバイアルが含まれる:(a)1.5mLのポリソルベート80に60mgのカバジタキセルが入った、JEVTANA(登録商標)注射剤;(b)約5.7mLの13%(w/w)エタノール溶液である、希釈剤。この調製物は、患者に投与される前に以下の2工程の調製プロセスを必要とする:第1の工程において、(a)JEVTANA(登録商標)注射剤を(b)希釈剤と混合して、約10mg/mLの濃度の混合液を形成し;第2の工程において、注射用に、0.9%塩化ナトリウム溶液または5%デキストロース溶液を含む250mL容器(非PVC)中に、第1の工程で調製した混合液を希釈する。最終注入溶液中のカバジタキセルの濃度は、0.1mg/mL~0.26mg/mLであるべきである。
【0006】
ポリソルベート(Tween)は非イオン性界面活性剤である。これは腐敗臭があり、温かく、少し苦い。これは、ポリオキシエチレンソルビタンの一連の部分的脂肪酸エステルである。これは、乳化剤および油用可溶化剤として広く使用されている。ポリソルベートは、一般に、無毒の非刺激性材料であると考えられている。これは、注射用難溶性薬物のための可溶化賦形剤として使用されることが多いが、注射投与によるTweenの副作用のために、例えば、低濃度(0.01~2.0%)で溶血が起こる可能性があり、局所および筋肉内投与中にアレルギー反応が起こり、重症例では、全身性の発疹/紅斑、低血圧および/もしくは気管支痙攣、または非常にまれな致死的アレルギー反応もしくは死亡さえも起こるであろう。ポリソルベートの副作用を低減させるために、臨床的に、抗ヒスタミン剤、コルチコステロイド、およびH2アンタゴニストを投与することが患者にとって必要であり、これは、臨床的使用のコンプライアンスを大きく低減させる。
【0007】
JEVTANA(登録商標)中にポリソルベート80が存在することによって、重度の副作用が引き起こされる可能性があり、そのような反応は、全身性の発疹/紅斑、低血圧および/もしくは気管支痙攣、または非常にまれな致死的アレルギー反応を特徴とする患者で報告されている。ポリソルベート80によって誘導される副作用を低減させるために、JEVTANA(登録商標)の静脈内投与30分前に、抗ヒスタミン剤、コルチコステロイド、およびH2アンタゴニストを投与しなくてはならない。同時に、臨床的使用の前に以下の2工程でJEVTANA(登録商標)を希釈する必要がある:最初に、13%(w/w)エタノール溶液で希釈し、次いで、投与前に0.9%塩化ナトリウム溶液または5%グルコース溶液で希釈する。そのような使用工程は複雑であり、薬物適用において潜在的な危険性がある。さらに、JEVTANA(登録商標)は希釈剤として13%(w/w)エタノール溶液を使用するが、注射によって投与される場合に、エタノールによって、かなりの刺激および嗜癖などの副作用が引き起こされる可能性がある。
【0008】
したがって、副作用が少なく、先行薬剤の投与を必要とせず、簡単で、安全で、便利に使用できる、新規のカバジタキセル調製物が臨床適用において必要である。
【0009】
薬学的賦形剤であるシクロデキストリンは、中空の疎水性で立体的なキラル内部空洞を有し、「内部疎水性、外部親水性」というその構造特性のために、これは、非共有結合性ホスト-ゲスト錯体(包接錯体)を形成するのに適した空間サイズを有する様々な有機小分子(基質)をカプセル化することができる。その最も重要な薬学的機能は、難溶性薬物の水溶性を高めること、および薬物の安定性を向上させることである。例えば、Valery Alakhovらによる発明出願第CA2900508A1号(US20150325321A1)(特許文献1)は、1:30~1:1000の重量比でカバジタキセルおよびスルホブチルエーテルベータシクロデキストリン(SBE-β-CD)を含む組成物を開示した。実験結果は、40%SBE-β-CD水溶液中のカバジタキセルの溶解度が4.17mg/mLであることを示す。しかし、本発明の発明者らが、カバジタキセルに対するSBE-β-CDの可溶化効果を実験的に研究した場合、40%SBE-β-CD水溶液中のカバジタキセルの溶解度は約1mg/mLであることが分かり、これは、発明出願第CA2900508A1号(特許文献1)に記載されている4.17mg/mLに達することができない。たとえそのような濃度に達することができるとしても、市販調製物の濃度仕様を満たすカバジタキセル注射剤を調製することは難しい。例えば、JEVTANA(登録商標)の仕様は60mg/1.5mLであり、40%SBE-β-CD水溶液中のカバジタキセルの溶解度は約1mg/mLであり、60mgのカバジタキセルは、溶解するのに60mLのそのような溶液を必要とする。カバジタキセルの溶解度が4.17mg/mLである場合、60mgのカバジタキセルは、溶解するのに15mLのそのような溶液を必要とし、これは、JEVTANA(登録商標)キットのバイアルあたり1.5mLとはかなり異なり、調製プロセス、費用、包装、輸送および保存などの観点から工業化することは難しい。同時に、0.9%塩化ナトリウム溶液または5%グルコース溶液などの注入溶液で注入濃度範囲に希釈する場合に、カバジタキセル注射剤が、安定であるかどうか、結晶または沈殿物を沈殿させないかどうかを考慮することが必要である。
【0010】
ポリソルベートとエタノールを含む市販調製物JEVTANA(登録商標)、および高比率(1:30を越える)のシクロデキストリンを含むCA2900508A1(US20150325321A1)(特許文献1)の調製物の技術的教示に基づくと、ポリソルベートを含む調製物を置換するために、シクロデキストリンの比率を連続的に高める、および/またはエタノールの量を増大させることは当業者に明らかである。しかし、本発明者らがこれを試みた結果として、たとえシクロデキストリンの含量を増大させようが、エタノールの量を増大させようが、臨床医学の要求を満たすようにはカバジタキセルの溶解度を向上させることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】発明出願第CA2900508A1号(US20150325321A1)
【発明の概要】
【0012】
先行技術の様々な欠点を考慮して、本出願の発明者は、先行技術の先入観を打破し、既存の知識に対して逆実験を行い、シクロデキストリンの量を低減させ、溶媒としての強い刺激を有するエタノール、および副作用を有するTween 80の使用をやめる。特に、本出願の発明者は、注射用添加剤、例えば、クエン酸、亜硫酸水素ナトリウム、およびエデト酸二ナトリウムなどを、700mg/mlのPEG300、290mg/mlのSBE-β-CD、80mg/mlのPVPK12、および適切な量の水(約100mg)を含む溶液系に加え、次いで、適切な量の窒素を充填し、これは、結果的に、得られた組成物が≧40mg/mLのカバジタキセルの溶解度を生じることができるだけでなく、本系においてカバジタキセルの安定性を大きく向上させることもできることになる。
【0013】
換言すれば、本出願の発明者が行った逆実験に基づくと、明白でない結果、または予想外の結果さえも得られる:カバジタキセル、シクロデキストリン、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルケトン(PVP)、および注射用添加剤からなる新規の組成物が得られ、この組成物は、ポリソルベートおよびエタノールを含まず、カバジタキセル調製物の特質を有意に向上させることができ、カバジタキセルの溶解度および安定性を効果的に高めることができる。
【0014】
研究によって、ポリソルベートおよびエタノールを有さない、カバジタキセル、シクロデキストリン、PEG、およびPVPからなる組成物は、ポリソルベートを含む既存の市販調製物によって引き起こされる副作用を克服することができるだけでなく、調製物の注射刺激および嗜癖を大きく低減させること、ならびにカバジタキセル調製物の安定性を大きく向上させることもできることが示される。本技術的解決法は、大量のシクロデキストリンが使用されるが、カバジタキセルの溶解度は有意に向上されず、カバジタキセルの溶解度は4.17mg/mLまでしか高めることができないという、特許第CA2900508A1号に存在する欠点を克服する。さらに、本技術的解決法は、CA2900508A1のカバジタキセル組成物はあまり安定でなく、かつ臨床的使用の実際的な問題を満たすのが難しいという問題を克服する。
【0015】
したがって、本発明の目的は、ポリソルベートおよびエタノールを含まず、単一バイアルですぐに使え、2工程の希釈を必要としない、注射用カバジタキセルを開発することであり、注射用カバジタキセルは安定であり、臨床的薬物適用、安全性、および有効性の要件を満たす。
[本発明1001]
ポリソルベートおよびエタノールを含まずに、重量部で以下の成分:1部のカバジタキセル、1~100部のシクロデキストリン、10~200部の可溶化剤、1~60部のポリビドン(PVP)、0.02~1.0部の添加剤を含む、注射用カバジタキセル組成物。
[本発明1002]
ポリソルベートおよびエタノールを含まずに、重量部で以下の成分:1部のカバジタキセル、10~30部のシクロデキストリン、30~150部の可溶化剤、1~15部のポリビドン(PVP)、0.05~0.8部の添加剤を含む、本発明1001の組成物。
[本発明1003]
ポリソルベートおよびエタノールを含まずに、重量部で以下の成分:1部のカバジタキセル、25~29部のシクロデキストリン、50~90部の可溶化剤、7~15部のポリビドン(PVP)、0.05~0.8部の添加剤を含み;
好ましくは、ポリソルベートおよびエタノールを含まずに、重量部で以下の成分:1部のカバジタキセル、26~29部のシクロデキストリン、60~80部の可溶化剤、7~10部のポリビドン(PVP)、0.1~0.7部の添加剤を含む、
本発明1001または1002の組成物。
[本発明1004]
シクロデキストリンが、限定されないが、スルホブチルエーテルベータシクロデキストリン(SBE-β-CD)、ヒドロキシプロピルベータシクロデキストリン(HP-β-CD)、および/またはヒドロキシプロピルスルホブチルエーテルベータシクロデキストリン(HP-SBE-β-CD);好ましくはSBE-β-CDを含む、本発明1001~1003のいずれかの組成物。
[本発明1005]
可溶化剤が、限定されないが、ポリエチレングリコール(PEG)、プロピレングリコール、およびグリセリンより選択される1つまたは複数、好ましくは、ポリエチレングリコール(PEG)であり;
好ましくは、ポリエチレングリコール(PEG)が、限定されないが、PEG200、PEG300、PEG400、PEG600、PEG800、PEG1000、PEG1500、およびPEG2000より選択される1つまたは複数、好ましくは、PEG300および/またはPEG400である、
本発明1001~1004のいずれかの組成物。
[本発明1006]
ポリビドン(PVP)が、限定されないが、PVPK12、PVPK15、PVPK17、PVPK25、PVPK30、PVPK45、PVPK60、PVPK70、PVPK80、PVPK85、PVPK90、PVPK100、PVPK110、PVPK120、およびPVPK150より選択される1つまたは複数、好ましくは、PVPK12および/またはPVPK17である、本発明1001~1005のいずれかの組成物。
[本発明1007]
添加剤が、限定されないが、クエン酸および/または酒石酸;および/または酢酸;および/または塩酸;および/またはリン酸;および/または乳酸;および/またはアスコルビン酸;および/またはL-システイン;および/または亜硫酸水素ナトリウム;および/またはピロ亜硫酸ナトリウム;および/またはエデト酸二ナトリウム、好ましくはクエン酸および/または亜硫酸水素ナトリウムを含む、本発明1001~1006のいずれかの組成物。
[本発明1008]
保存に適した固形凍結乾燥物または水溶液の形態である、本発明1001~1007のいずれかの組成物。
[本発明1009]
以下の工程:
(1)シクロデキストリンを秤量し、可溶化剤および水を加え、撹拌して溶解した後にポリビドンおよび添加剤を加え、撹拌して溶解し、次いで、カバジタキセルを加え、保護のために不活性ガス(例えば窒素)を充填し、撹拌して溶解した後に30~240分撹拌を続け、均一な混合溶液を得る工程;
(2)試料を採取してpH値および濃度を測定し、品質認定後に、0.2μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜を通して濾過し、バイアル中にサブパッキングし、半打栓し、凍結乾燥器中で凍結乾燥させ、窒素ガスを充填し、打栓し、密封し、ラベル表示する工程
を含み、
好ましくは、工程(1)では、均一な混合溶液のpH値が2.0~6.0である、
注射用カバジタキセル組成物を調製するための方法。
[本発明1010]
以下の工程:
(1)シクロデキストリンを秤量し、可溶化剤および水を加え、撹拌して溶解した後にポリビドンおよび添加剤を加え、撹拌して溶解し、次いで、カバジタキセルを加え、保護のために不活性ガスを充填し、撹拌して溶解した後に30~240分撹拌を続け、均一な混合溶液を得る工程;
(2)試料を採取してpH値および濃度を測定し、適格であることが証明された後に、0.2μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜を通して濾過し、バイアル中にサブパッキングし、窒素を充填し、打栓し、密封し、ラベル表示する工程
を含み、
好ましくは、工程(1)では、均一な混合溶液のpH値が2.0~6.0である、
注射用カバジタキセル組成物を調製するための方法。
[本発明1011]
本発明1001~1008のいずれかの組成物または本発明1009もしくは1010の方法によって調製された組成物を、必要とする患者に投与する工程を含み、
好ましくは、腫瘍が前立腺癌である、
腫瘍を治療するための方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
定義
単一バイアルですぐに使えるとは、2工程の希釈の必要なく、臨床適用濃度範囲に注入溶液で希釈または溶解した後に、患者に静脈内投与することができる、単一バイアル中の無菌の液体または凍結乾燥物を指す。
【0017】
注入溶液は、通常、袋または瓶に保存され、注射のために調製物を希釈または溶解した後に患者に投与することができる、無菌の等張液、例えば、0.9%塩化ナトリウム溶液または5%グルコース溶液を指す。
【0018】
技術的解決法
上記の目的を達成するために、本発明は以下の技術的解決法を採用する。
【0019】
一局面では、本発明は、ポリソルベート(例えばTween 80)およびエタノールを含まずに、重量部で以下の成分:1部のカバジタキセル、1~100部のシクロデキストリン、10~200部の可溶化剤、1~60部のポリビドン(PVP)、0.02~1.0部の添加剤を含む、注射用カバジタキセル組成物を提供する。
【0020】
好ましくは、組成物は、ポリソルベートおよびエタノールを含まずに、重量部で以下の成分:1部のカバジタキセル、10~30部のシクロデキストリン、30~150部の可溶化剤、1~15部のポリビドン(PVP)、0.05~0.8部の添加剤を含む。
【0021】
より好ましくは、組成物は、ポリソルベートおよびエタノールを含まずに、重量部で以下の成分:1部のカバジタキセル、25~29部のシクロデキストリン、50~90部の可溶化剤、7~15部のポリビドン(PVP)、0.05~0.8部の添加剤を含む。
【0022】
さらに好ましくは、組成物は、ポリソルベートおよびエタノールを含まずに、重量部で以下の成分:1部のカバジタキセル、26~29部のシクロデキストリン、60~80部の可溶化剤、7~10部のポリビドン(PVP)、0.1~0.7部の添加剤を含む。
【0023】
好ましくは、シクロデキストリンは、限定されないが、スルホブチルエーテルベータシクロデキストリン(SBE-β-CD)、ヒドロキシプロピルベータシクロデキストリン(HP-β-CD)、および/またはヒドロキシプロピルスルホブチルエーテルベータシクロデキストリン(HP-SBE-β-CD);好ましくはSBE-β-CDを含む。
【0024】
好ましくは、可溶化剤は、限定されないが、ポリエチレングリコール(PEG)、プロピレングリコール、およびグリセリンより選択される1つまたは複数、好ましくは、ポリエチレングリコール(PEG)である。
【0025】
好ましくは、ポリエチレングリコール(PEG)は、限定されないが、PEG200、PEG300、PEG400、PEG600、PEG800、PEG1000、PEG1500、およびPEG2000より選択される1つまたは複数、好ましくは、PEG300および/またはPEG400である。
【0026】
好ましくは、ポリビドン(PVP)は、限定されないが、PVPK12、PVPK15、PVPK17、PVPK25、PVPK30、PVPK45、PVPK60、PVPK70、PVPK80、PVPK85、PVPK90、PVPK100、PVPK110、PVPK120、およびPVPK150より選択される1つまたは複数、好ましくは、PVPK12および/またはPVPK17である。
【0027】
好ましくは、添加剤は、限定されないが、クエン酸および/または酒石酸;および/または酢酸;および/または塩酸;および/またはリン酸;および/または乳酸;および/またはアスコルビン酸;および/またはL-システイン;および/または亜硫酸水素ナトリウム;および/またはピロ亜硫酸ナトリウム;および/またはエデト酸二ナトリウム、好ましくはクエン酸および/または亜硫酸水素ナトリウムを含む。
【0028】
好ましくは、組成物は保存に適した固形凍結乾燥物または水溶液の形態である。
【0029】
別の局面では、本発明は、以下の工程:
(1)シクロデキストリンを秤量し、可溶化剤および水を加え、撹拌して溶解した後にポリビドンおよび添加剤を加え、撹拌して溶解し、次いで、カバジタキセルを加え、保護のために不活性ガス(例えば窒素)を充填し、撹拌して溶解した後に30~240分撹拌を続け、均一な混合溶液を得る工程;
(2)試料を採取してpH値および濃度を測定し、品質認定後に、0.2μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜を通して濾過し、バイアル中にサブパッキングし、半打栓し、凍結乾燥器中で凍結乾燥させ、窒素ガスを充填し、打栓し、密封し、ラベル表示する工程
を含む、上記の注射用カバジタキセル組成物(注射用カバジタキセル固形凍結乾燥物)を調製するための方法を提供する。
【0030】
好ましくは、工程(1)では、均一な混合溶液のpH値は2.0~6.0である。
【0031】
さらなる局面では、本発明は、以下の工程:
(1)シクロデキストリンを秤量し、可溶化剤および水を加え、撹拌して溶解した後にポリビドンおよび添加剤を加え、撹拌して溶解し、次いで、カバジタキセルを加え、保護のために不活性ガス(例えば窒素)を充填し、撹拌して溶解した後に30~240分撹拌を続け、均一な混合溶液を得る工程;
(2)試料を採取してpH値および濃度を測定し、品質認定後に、0.2μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜を通して濾過し、バイアル中にサブパッキングし、窒素を充填し、打栓し、密封し、ラベル表示する工程
を含む、上記の注射用カバジタキセル組成物(注射用カバジタキセル固形凍結乾燥物)を調製するための別の方法を提供する。
【0032】
好ましくは、工程(1)では、均一な混合溶液のpH値は2.0~6.0である。
【0033】
さらに別の局面では、本発明は、上記組成物または上記方法によって調製された組成物を、必要とする患者に投与する工程を含む、腫瘍を治療するための方法を提供し、好ましくは、腫瘍は前立腺癌であり、これは、ホルモン不応性転移性前立腺癌またはドセタキセルに抵抗性の前立腺癌であり、この方法は、進行性前立腺癌を有する患者の生存時間を有意に延ばすことができる。上記の技術的解決法によって調製された注射用カバジタキセルの安定性、関連物質、および再溶解後の安定時間は、上記の技術的解決法を採用することによって、既存の市販調製物のものよりも優れており、これは、可溶化剤の溶解、シクロデキストリンの包含および可溶化、ならびにポリビドンの結晶化および成長の防止、添加剤によって調整された適切なpH、ならびに低濃度金属イオンおよび窒素によって形成される低酸素または低酸素に近い環境の相乗効果が理由である。
【0034】
したがって、本発明の組成物はポリソルベート(例えば、Tween 80)およびエタノールを含まず、ヒスタミン放出が低く、投与前に、抗ヒスタミン薬、コルチコステロイド、およびH2アンタゴニストを使用する必要がない。この組成物は、単一バイアルですぐに使え、新規調製物であり、これは、2工程の希釈を必要としない。この調製物は以下の特色を有する:カバジタキセルの高い溶解度、高い安定性、および再溶解後の長い安定時間、および臨床適用にとっての利便性。アレルギー、刺激、および嗜癖などの副作用は、ポリソルベートおよびエタノールがないので、低減される。その一方で、本発明は、注射用カバジタキセル組成物を調製するための方法も提供する。
【0035】
実施形態の詳細な説明
本発明は、特定の実施例と組み合わせてさらに詳しく説明され、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【実施例
【0036】
実施例1
カバジタキセル:1.0g
SBE-β-CD:29g
PEG300:70g
PVPK12:8.0g
水:10g
クエン酸:300mg
亜硫酸水素ナトリウム:400mg
100個のバイアルに中に調製した
処方量のSBE-β-CDを秤量し、処方量のPEG300および水を加え、23~25℃で撹拌して溶解し、処方量のPVPK12およびクエン酸を加え、撹拌して溶解した後に処方量の亜硫酸水素ナトリウムおよびカバジタキセルを加え、撹拌を2時間維持して、撹拌して溶解した後に均一な溶液を形成した。試料を採取して、pH値および濃度を測定し、品質認定後に、0.2μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜を通して溶液を濾過し、バイアル中にサブパッキングし、窒素を充填し、打栓し、蓋をし、ラベル表示した。
【0037】
実施例2
カバジタキセル:1.0g
SBE-β-CD:29g
PEG300:70g
PVPK12:8.0g
水:10g
クエン酸:300mg
100個のバイアル中に調製した
処方量のSBE-β-CDを秤量し、処方量のPEG300および水を加え、22~25℃で撹拌して溶解し、処方量のPVPK12およびクエン酸を加え、撹拌して溶解した後に処方量のカバジタキセルを加え、撹拌を2時間維持して、撹拌して溶解した後に均一な溶液を形成した。試料を採取して、pH値および濃度を測定し、品質認定後に、0.2μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜を通して溶液を濾過し、バイアル中にサブパッキングし、窒素を充填し、打栓し、蓋をし、ラベル表示した。
【0038】
実施例3
カバジタキセル:1.0g
SBE-β-CD:40g
PEG300:50g
PVPK12:8.0g
水:12g
クエン酸:300mg
100個のバイアル中に調製した
処方量のSBE-β-CDを秤量し、処方量のPEG300および水を加え、18~20℃で撹拌して溶解し、処方量のPVPK12およびクエン酸を加え、撹拌して溶解した後に処方量のカバジタキセルを加え、撹拌を100分間維持して、撹拌して溶解した後に均一な溶液を形成した。試料を採取して、pH値および濃度を測定し、品質認定後に、0.2μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜を通して溶液を濾過し、バイアル中にサブパッキングし、窒素を充填し、打栓し、蓋をし、ラベル表示した。
【0039】
実施例4
カバジタキセル:1.0g
SBE-β-CD:40g
PEG300:50g
PVPK12:8.0g
水:12g
クエン酸:300mg
100個のバイアル中に調製した
処方量のSBE-β-CDを秤量し、処方量のPEG300および水を加え、20~22℃で撹拌して溶解し、処方量のPVPK12およびクエン酸を加え、撹拌して溶解した後に処方量のカバジタキセルを加え、撹拌を240分間維持して、撹拌して溶解した後に均一な溶液を形成した。試料を採取して、pH値および濃度を測定し、品質認定後に、0.2μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜を通して溶液を濾過し、バイアル中にサブパッキングし、窒素を充填し、半打栓し、凍結乾燥器中で凍結乾燥させ、打栓し、蓋をし、ラベル表示した。
【0040】
実施例5
カバジタキセル:1.0g
SBE-β-CD:29g
PEG400:70g
PVPK12:8.0g
水:10g
クエン酸:300mg
亜硫酸水素ナトリウム:400mg
100個のバイアル中に調製した
処方量のSBE-β-CDを秤量し、処方量のPEG400および水を加え、21~23℃で撹拌して溶解し、処方量のPVPK12およびクエン酸を加え、撹拌して溶解した後に処方量のカバジタキセルを加え、撹拌を30分間維持して、撹拌して溶解した後に均一な溶液を形成した。試料を採取して、pH値および濃度を測定し、品質認定後に、0.2μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜を通して溶液を濾過し、バイアル中にサブパッキングし、窒素を充填し、打栓し、蓋をし、ラベル表示した。
【0041】
実施例6
カバジタキセル:1.0g
SBE-β-CD:29g
PEG400:70g
PVPK12:8.0g
水:10g
クエン酸:300mg
100個のバイアル中に調製した
処方量のSBE-β-CDを秤量し、処方量のPEG400および水を加え、19~22℃で撹拌して溶解し、処方量のPVPK12およびクエン酸を加え、撹拌して溶解した後に処方量のカバジタキセルを加え、撹拌を2時間維持して、撹拌して溶解した後に均一な溶液を形成した。試料を採取して、pH値および濃度を測定し、品質認定後に、0.2μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜を通して溶液を濾過し、バイアル中にサブパッキングし、窒素を充填し、打栓し、蓋をし、ラベル表示した。
【0042】
実施例7
カバジタキセル:1.0g
HP-β-CD:40g
PEG300:57g
PVPK12:8.0g
水:12g
クエン酸:300mg
100個のバイアル中に調製した
処方量のHP-β-CDを秤量し、処方量のPEG300および水を加え、18~20℃で撹拌して溶解し、処方量のPVPK12およびクエン酸を加え、撹拌して溶解した後に処方量のカバジタキセルを加え、撹拌を180分間維持して、撹拌して溶解した後に均一な溶液を形成した。試料を採取して、pH値および濃度を測定し、品質認定後に、0.2μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜を通して溶液を濾過し、バイアル中にサブパッキングし、窒素を充填し、打栓し、蓋をし、ラベル表示した。
【0043】
実施例8
カバジタキセル:1.0g
HP-β-CD:40g
PEG300:57g
PVPK12:8.0g
水:12g
クエン酸:300mg
亜硫酸水素ナトリウム:400mg
100個のバイアル中に調製した
処方量のHP-β-CDを秤量し、処方量のPEG300および水を加え、18~20℃で撹拌して溶解し、処方量のPVPK12およびクエン酸を加え、撹拌して溶解した後に処方量の亜硫酸水素ナトリウムおよびカバジタキセルを加え、撹拌を2時間維持して、撹拌して溶解した後に均一な溶液を形成した。試料を採取して、pH値および濃度を測定し、品質認定後に、0.2μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜を通して溶液を濾過し、バイアル中にサブパッキングし、窒素を充填し、打栓し、蓋をし、ラベル表示した。
【0044】
実施例9
カバジタキセル:1.0g
HP-SBE-β-CD:45g
PEG300:49g
PVPK12:8.0g
水:15g
クエン酸:300mg
100個のバイアル中に調製した
処方量のHP-SBE-β-CDを秤量し、処方量のPEG300および水を加え、23~25℃で撹拌して溶解し、処方量のPVPK12およびクエン酸を加え、撹拌して溶解した後に処方量のカバジタキセルを加え、撹拌を2時間維持して、撹拌して溶解した後に均一な溶液を形成した。試料を採取して、pH値および濃度を測定し、品質認定後に、0.2μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜を通して溶液を濾過し、バイアル中にサブパッキングし、窒素を充填し、打栓し、蓋をし、ラベル表示した。
【0045】
実施例10
カバジタキセル:1.0g
HP-SBE-β-CD:45g
PEG300:49g
PVPK12:8.0g
水:15g
クエン酸:300mg
100個のバイアル中に調製した
処方量のHP-SBE-β-CDを秤量し、処方量のPEG300および水を加え、23~25℃で撹拌して溶解し、処方量のPVPK12およびクエン酸を加え、撹拌して溶解した後に処方量のカバジタキセルを加え、撹拌を2時間維持して、撹拌して溶解した後に均一な溶液を形成した。試料を採取して、pH値および濃度を測定し、品質認定後に、0.2μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜を通して溶液を濾過し、バイアル中にサブパッキングし、窒素を充填し、半打栓し、凍結乾燥器中で凍結乾燥させ、打栓し、蓋をし、ラベル表示した。
【0046】
実施例11
カバジタキセル:1.0g
SBE-β-CD:19g
PEG300:75g
PVPK12:8.0g
水:15g
クエン酸:300mg
亜硫酸水素ナトリウム:400mg
100個のバイアル中に調製した
処方量のSBE-β-CDを秤量し、処方量のPEG300および水を加え、23~25℃で撹拌して溶解し、処方量のPVPK12およびクエン酸を加え、撹拌して溶解した後に処方量の亜硫酸水素ナトリウムおよびカバジタキセルを加え、撹拌を2時間維持して、撹拌して溶解した後に均一な溶液を形成した。試料を採取して、pH値および濃度を測定し、品質認定後に、0.2μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜を通して溶液を濾過し、バイアル中にサブパッキングし、窒素を充填し、打栓し、蓋をし、ラベル表示した。
【0047】
実施例12
カバジタキセル:1.0g
SBE-β-CD:10g
PEG300:70
PVPK12:8.0g
水:16g
クエン酸:300mg
亜硫酸水素ナトリウム:400mg
100個のバイアル中に調製した
処方量のSBE-β-CDを秤量し、処方量のPEG300および水を加え、23~25℃で撹拌して溶解し、処方量のPVPK12およびクエン酸を加え、撹拌して溶解した後に処方量の亜硫酸水素ナトリウムおよびカバジタキセルを加え、撹拌を2時間維持して、撹拌して溶解した後に均一な溶液を形成した。試料を採取して、pH値および濃度を測定し、品質認定後に、0.2μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜を通して溶液を濾過し、バイアル中にサブパッキングし、窒素を充填し、打栓し、蓋をし、ラベル表示した。
【0048】
実施例13
カバジタキセル:1.0g
SBE-β-CD:29g
プロピレングリコール:70g
PVPK12:8.0g
水:10g
クエン酸:300mg
亜硫酸水素ナトリウム:400mg
100個のバイアル中に調製した
処方量のSBE-β-CDを秤量し、処方量のプロピレングリコールおよび水を加え、23~25℃で撹拌して溶解し、処方量のPVPK12およびクエン酸を加え、撹拌して溶解した後に処方量の亜硫酸水素ナトリウムおよびカバジタキセルを加え、撹拌を2時間維持して、撹拌して溶解した後に均一な溶液を形成した。試料を採取して、pH値および濃度を測定し、品質認定後に、0.2μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜を通して溶液を濾過し、バイアル中にサブパッキングし、窒素を充填し、打栓し、蓋をし、ラベル表示した。
【0049】
実施例14
カバジタキセル:1.0g
SBE-β-CD:29g
グリセロール:70g
PVPK12:8.0g
水:10g
クエン酸:300mg
亜硫酸水素ナトリウム:400mg
100個のバイアル中に調製した
処方量のSBE-β-CDを秤量し、処方量のプロピレングリコールおよび水を加え、23~25℃で撹拌して溶解し、処方量のPVPK12およびクエン酸を加え、撹拌して溶解した後に処方量の亜硫酸水素ナトリウムおよびカバジタキセルを加え、撹拌を2時間維持して、撹拌して溶解した後に均一な溶液を形成した。試料を採取して、pH値および濃度を測定し、品質認定後に、0.2μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜を通して溶液を濾過し、バイアル中にサブパッキングし、窒素を充填し、打栓し、蓋をし、ラベル表示した。
【0050】
実施例15
カバジタキセル:1.0g
SBE-β-CD:29g
PEG300:70g
PVPK12:4.0g
水:10g
クエン酸:300mg
亜硫酸水素ナトリウム:400mg
100個のバイアル中に調製した
処方量のSBE-β-CDを秤量し、処方量のPEG300および水を加え、23~25℃で撹拌して溶解し、処方量のPVPK12およびクエン酸を加え、撹拌して溶解した後に処方量の亜硫酸水素ナトリウムおよびカバジタキセルを加え、撹拌を2時間維持して、撹拌して溶解した後に均一な溶液を形成した。試料を採取して、pH値および濃度を測定し、品質認定後に、0.2μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜を通して溶液を濾過し、バイアル中にサブパッキングし、窒素を充填し、打栓し、蓋をし、ラベル表示した。
【0051】
実施例16
カバジタキセル:1.0g
SBE-β-CD:29g
PEG300:70g
PVPK12:20g
水:10g
クエン酸:300mg
亜硫酸水素ナトリウム:400mg
100個のバイアル中に調製した
処方量のSBE-β-CDを秤量し、処方量のPEG300および水を加え、23~25℃で撹拌して溶解し、処方量のPVPK12およびクエン酸を加え、撹拌して溶解した後に処方量の亜硫酸水素ナトリウムおよびカバジタキセルを加え、撹拌を2時間維持して、撹拌して溶解した後に均一な溶液を形成した。試料を採取して、pH値および濃度を測定し、品質認定後に、0.2μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜を通して溶液を濾過し、バイアル中にサブパッキングし、窒素を充填し、打栓し、蓋をし、ラベル表示した。
【0052】
比較実施例1
カバジタキセル:1.0g
SBE-β-CD:29g
PVPK12:8.0g
水:80g
クエン酸:300mg
亜硫酸水素ナトリウム:400mg
100個のバイアル中に調製した
処方量のSBE-β-CDを秤量し、処方量の水を加え、23~25℃で撹拌して溶解し、処方量のPVPK12、クエン酸、および亜硫酸水素ナトリウムを加え、撹拌して溶解した後に処方量のカバジタキセルを加え、撹拌したが、カバジタキセルは完全には溶解されなかった。
【0053】
比較実施例2
カバジタキセル:1.0g
SBE-β-CD:29g
PEG300:70g
水:18g
クエン酸:300mg
亜硫酸水素ナトリウム:400mg
100個のバイアル中に調製した
処方量のSBE-β-CDを秤量し、処方量のPEG300および水を加え、23~25℃で撹拌して溶解し、処方量のクエン酸を加え、撹拌して溶解した後に処方量の亜硫酸水素ナトリウムおよびカバジタキセルを加え、撹拌を2時間維持して、撹拌して溶解した後に均一な溶液を形成した。試料を採取して、pH値および濃度を測定し、品質認定後に、0.2μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜を通して溶液を濾過し、バイアル中にサブパッキングし、窒素を充填し、打栓し、蓋をし、ラベル表示した。
【0054】
比較実施例3
カバジタキセル:1.0g
SBE-β-CD:29g
水:88g
クエン酸:300mg
亜硫酸水素ナトリウム:400mg
100個のバイアル中に調製した
処方量のSBE-β-CDを秤量し、処方量の水を加え、23~25℃で撹拌して溶解し、処方量のクエン酸および亜硫酸水素ナトリウムを加え、撹拌して溶解した後に処方量のカバジタキセルを加え、撹拌したが、カバジタキセルは完全には溶解されなかった。
【0055】
比較実施例4
カバジタキセル:1.0g
PEG300:70g
PVPK12:8.0g
水::39g
クエン酸:300mg
亜硫酸水素ナトリウム:400mg
100個のバイアル中に調製した
処方量のPEG300および水を加え、23~25℃で撹拌して溶解し、処方量のPVPK12およびクエン酸を加え、撹拌して溶解した後に処方量の亜硫酸水素ナトリウムおよびカバジタキセルを加え、撹拌を2時間維持して、撹拌して溶解した後に均一な溶液を形成した。試料を採取して、pH値および濃度を測定し、品質認定後に、0.2μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜を通して溶液を濾過し、バイアル中にサブパッキングし、窒素を充填し、打栓し、蓋をし、ラベル表示した。
【0056】
比較実施例5
カバジタキセル:1.0g
SBE-β-CD:29g
PEG300:205g
PVPK12:8.0g
水:10g
クエン酸:300mg
亜硫酸水素ナトリウム:400mg
100個のバイアル中に調製した
処方量のSBE-β-CDを秤量し、処方量のPEG300および水を加え、23~25℃で撹拌して溶解し、材料は完全には溶解せず、処方量のPVPK12およびクエン酸を加え、撹拌し、処方量の亜硫酸水素ナトリウムおよびカバジタキセルを加え、撹拌を2時間維持した。0.2μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜を通して溶液を濾過し、バイアル中にサブパッキングし、窒素を充填し、打栓し、蓋をし、ラベル表示した。
【0057】
比較実施例6
カバジタキセル:1.0g
SBE-β-CD:29g
PEG300:70g
PVPK12:70g
水:10g
クエン酸:300mg
亜硫酸水素ナトリウム:400mg
100個のバイアル中に調製した
処方量のSBE-β-CDを秤量し、処方量のPEG300および水を加え、23~25℃で撹拌して溶解し、処方量のPVPK12およびクエン酸を加え、材料は完全には溶解せず、処方量の亜硫酸水素ナトリウムおよびカバジタキセルを加え、撹拌を2時間維持した。試料を採取して、pH値および濃度を測定し、品質認定後に、0.2μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜を通して溶液を濾過し、バイアル中にサブパッキングし、窒素を充填し、打栓し、蓋をし、ラベル表示した。
【0058】
実験実施例
1. 溶解度および再溶解実験
それぞれの実施例における各物質の比率に従って、API(カバジタキセル)を含まないブランク調製物を調製し、次いで、それぞれ過剰量のAPIを加え、室温、暗所で12時間撹拌し、濾過し、希釈し、次いで、溶解度を測定し、同時に、実施例および比較実施例による調製物の再溶解を調べた。溶解度および再溶解の結果は、以下のとおりである:
【0059】
2. シクロデキストリンの量に関する研究
上記の表の「実施例1と比較実施例4」の結果の比較および「実施例1と実施例12」の結果の比較から、シクロデキストリンの量が本発明の好ましい範囲内(例えば、実施例1における29gのSBE-β-CD)である場合、調製物は透明であり、再溶解後に透明な溶液を形成することができ、安定時間は約8時間であり、次いで、結晶が沈殿すること;調製物が、シクロデキストリンを含まない(比較実施例4では、いかなるシクロデキストリンもない)、または本発明の好ましい範囲よりも低い量のシクロデキストリンを含む(実施例12における、10gのSBE-β-CD)場合、形成された調製物が、再溶解時に約1時間で結晶を沈殿させることを理解することができる。
【0060】
実施例2と実施例3の結果の比較から、シクロデキストリンの量が本発明の好ましい範囲内である(実施例2における、29gのSBE-β-CD)場合、およびシクロデキストリンの量が本発明の好ましい範囲を超える(実施例3における、40gのSBE-β-CD)場合、得られた調製物は透明であり、かつ再溶解後に透明な溶液であり、安定時間は約8時間であり、次いで、結晶が沈殿し、2つの処方間で明白な違いはないことを理解することができる。しかし、薬学的調製物の安全性を考慮すれば、薬用賦形剤または添加剤の量はできるだけ少なくすべきであり、シクロデキストリンの量が好ましい範囲内にある処方とシクロデキストリンの量が好ましい範囲より高い処方とが同じ効果を示す場合、または増量による明白な効果がない場合、好ましい範囲内にあるシクロデキストリンの量を選択するほうがよい。
【0061】
結論として、低い量のシクロデキストリンを含む調製物に対する再溶解後の安定時間はかなり短く、一方で、高い量のシクロデキストリンを含む調製物について明白な効果の向上がないので、好ましい範囲内にある量がより適切である。