(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-27
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】高分散性セラミド組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 33/10 20160101AFI20220128BHJP
A61K 8/68 20060101ALI20220128BHJP
A61K 8/65 20060101ALI20220128BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20220128BHJP
【FI】
A23L33/10
A61K8/68
A61K8/65
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2020556167
(86)(22)【出願日】2019-11-14
(86)【国際出願番号】 JP2019044702
(87)【国際公開番号】W WO2020100981
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2020-08-28
(31)【優先権主張番号】P 2018214287
(32)【優先日】2018-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】594081375
【氏名又は名称】オカヤス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】518406736
【氏名又は名称】漢馨科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100083301
【氏名又は名称】草間 攻
(72)【発明者】
【氏名】劉 景文
(72)【発明者】
【氏名】岡安 武蔵
(72)【発明者】
【氏名】小林 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】橋本 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】山上 玲
(72)【発明者】
【氏名】山川 淳子
【審査官】安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-067320(JP,A)
【文献】特開2016-124798(JP,A)
【文献】国際公開第2015/156246(WO,A1)
【文献】特開2017-042084(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 33/10
A61K 8/68
A61K 8/65
A61Q 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スフィンゴ糖脂質及びコラーゲンペプチドの両者を、重量比で、コラーゲンペプチド:スフィンゴ糖脂質=99:1~25:75の割合で溶媒中混合し、混合物を乾燥粉末状としてなることを特徴とする水中への分散性に優れたスフィンゴ糖脂質組成物の製造方法。
【請求項2】
重量比で、コラーゲンペプチド:スフィンゴ糖脂質=90:10~75:25の割合で混合してなる
請求項1に記載の水中への分散性に優れたスフィンゴ糖脂質組成物の製造方法。
【請求項3】
組成物中のスフィンゴ糖脂質含有量が、5~50重量%である
請求項1又は2に記載の水中への分散性に優れたスフィンゴ糖脂質組成物の製造方法。
【請求項4】
溶媒が、水、及び/又はエタノール、あるいはこれらの混合溶媒である、
請求項1~3のいずれかに記載の水中への分散性に優れたスフィンゴ糖脂質組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中における分散性に優れたセラミド組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミドは、スフィンゴ糖脂質の一種であり、長鎖アミノアルコールであるスフィンゴシンと脂肪酸とがアミド結合した化合物群の総称である。このセラミドは、細胞膜に高濃度で存在することが知られており、特に、皮膚の角質細胞間脂質の主成分として存在し、皮膚内部からの水分の蒸発を防止する保湿能としてのバリア機能を担っている。
しかしながら、加齢と共に角質細胞間脂質中のセラミドが減少し、保湿能が衰退することから、乾燥肌、シワ、或いは肌荒れの原因となることが報告されている。
【0003】
また、皮膚の老化に限らず、アトピー性皮膚炎によって起こる肌のカサつき、肌荒れなどの要因として、セラミドが不足していることが報告されている。すなわち、アトピー性皮膚炎における乾燥肌は、もともとセラミドが少ないという特徴があり、皮膚のバリア機能の低下に伴い、皮膚内部から外部へ水分が失われやすくなり、皮膚がカサカサと乾燥して、抗原や化学物質が皮膚内部に入りやすく、その結果アレルギー反応が起こり、かゆみや炎症などの様々な症状を呈することが報告されている。
【0004】
このように、皮膚におけるセラミド含量は、皮膚の健康状態の一つの指標とされており、不足したセラミドの補充が肌の保湿効果、或いは美肌効果に有効であるとされていることから、効率よくセラミドを摂取する機能性食品として、或いは化粧品原料として、今後その需要が益々高まるものといえる。
【0005】
本発明者等も植物油脂、特に米の糠を原料とした食用こめ油の製造過程で生成される副産物に含まれる有用微量成分に着目し、検討を行い、その結果、コメセラミドの抽出製造法を確立し、天然由来のコメセラミド(スフィンゴ糖脂質)を提供してきている。
また、最近に至り、種々の果実、或いは野菜等、植物由来のセラミド成分の研究が種々検討されてきている(特許文献1)。そのなかでも、桃にはセラミドの含有量が多いとされており、本発明者らは、桃からセラミド(モモセラミド:スフィンゴ糖脂質)を効率よく抽出する技術を提案してきている(特許文献2)。
【0006】
保湿効果を目的としてセラミドを補充するためには、経口的に摂取するか、或いは化粧品として肌に適用する場合には、セラミド自体を水溶性懸濁液として適用することが考えられるが、植物由来のセラミド(スフィンゴ糖脂質)は、分子内に親水性の糖と親油性の脂質とスフィンゴイドを持つ両性物質であるが、水に対する分散性が好ましいものではない。
したがって、スフィンゴ糖脂質の均一な水懸濁液を得るには、水中への均質な分散性を得るために、生体にとって好ましくない多量の化学的に合成された界面活性剤を添加する必要があった。
【0007】
しかしながら、セラミド懸濁液を飲食品として経口的に摂取する場合、或いは敏感な肌に適用する化粧品原料として使用する場合には、化学的に合成された界面活性剤の使用を極力回避することが好ましい。
そのため、これまでにセラミドを含め、コラーゲン、或いはヒアルロン酸等を含有する組成物の懸濁水溶液を得る技術が種々提案されているが(例えば、特許文献3、特許文献4等)、いまだに満足するものが得られていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第4108069号掲載公報
【文献】特許第5986160号掲載公報
【文献】特開2016-124798号公報
【文献】特開2018-014966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の現状に鑑み、化学的に合成された界面活性剤を添加することなく、美肌効果を有する成分のみで、セラミド(スフィンゴ糖脂質)の均一で、安定な水性懸濁液用組成物、並びにその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を解決するべく本発明者らは鋭意検討した結果、セラミドとしてのスフィンゴ糖脂質とコラーゲンペプチドを、溶媒中で、特定比率で混合して製した組成物が、均一な水性懸濁状態を良好に呈することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち本発明は、一つの態様として、
(1)スフィンゴ糖脂質及びコラーゲンペプチドの両者を、重量比で、コラーゲンペプチド:スフィンゴ糖脂質=99:1~25:75の割合で含有してなる水中への分散性に優れたスフィンゴ糖脂質組成物;
(2)重量比で、コラーゲンペプチド:スフィンゴ糖脂質=90:10~75:25の割合で含有してなる上記(1)に記載の水中への分散性に優れたスフィンゴ糖脂質組成物;
(3)組成物中のスフィンゴ糖脂質の含有量が、5~50重量%である上記(1)又は(2)に記載の水中への分散性に優れたスフィンゴ糖脂質組成物;
(4)乾燥粉末状である上記(1)~(3)のいずれかに記載の水中への分散性に優れたスフィンゴ糖脂質組成物;
(5)食品として使用される上記(1)~(4)のいずれかに記載の水中への分散性に優れたスフィンゴ糖脂質組成物;
(6)化粧品として使用される上記(1)~(4)のいずれかに記載の水中への分散性に優れたスフィンゴ糖脂質組成物;
である。
【0012】
また本発明は、別の態様として、
(7)スフィンゴ糖脂質及びコラーゲンペプチドの両者を、重量比で、コラーゲンペプチド:スフィンゴ糖脂質=99:1~25:75の割合で溶媒中混合し、混合物を乾燥粉末状としてなることを特徴とする水中への分散性に優れたスフィンゴ糖脂質組成物の製造方法;
(8)重量比で、コラーゲンペプチド:スフィンゴ糖脂質=90:10~75:25の割合で混合してなる上記(7)に記載の水中への分散性に優れたスフィンゴ糖脂質組成物の製造方法;
(9)組成物中のスフィンゴ糖脂質含有量が、5~50重量%である上記(7)又は(8)に記載の水中への分散性に優れたスフィンゴ糖脂質組成物の製造方法;
(10)溶媒が、水、及び/又はエタノール、あるいはこれらの混合溶媒である、上記(7)~(9)のいずれかに記載の水中への分散性に優れたスフィンゴ糖脂質組成物の製造方法;
である。
【0013】
なお、本発明は具体的には上記の態様に関するものであるが、これらに限定されるものではない。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、化学的に合成された界面活性剤を使用することなく、美肌効果を有するコラーゲンペプチドのみの添加により、水に対する分散性に優れた、スフィンゴ糖脂質の均一であり安定性に優れた水性懸濁液を調製することができる組成物が提供される。
したがって、本発明が提供するスフィンゴ糖脂質を含有するセラミド組成物は、安全性に優れた組成物として、経口摂取をすることができる機能性食品用組成物、或いは化粧品用の原料組成物として使用することができる点で、極めて有用性の高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、実施例4における、コラーゲンペプチドとスフィンゴ糖脂質の配合比率の異なる組成物の分散性の評価を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、上記したとおり、その基本的態様は、スフィンゴ糖脂質及びコラーゲンペプチドの両者を、重量比率で、コラーゲンペプチド:スフィンゴ糖脂質=99:1~25:75の割合で含有してなる水中への分散性に優れたスフィンゴ糖脂質組成物である。
【0017】
本発明で使用するスフィンゴ糖脂質としては、セラミドの一種であり、特にその由来が特に限定されるものではなく、あらゆるスフィンゴ糖脂質を使用することができる。
そのなかでも、スフィンゴ糖脂質としては、植物素材由来のスフィンゴ糖脂質が好ましく、穀類(コメ、コムギ、トウモロコシ、ダイズなど)、果実(モモ、リンゴ、パイナップルなど)、イモ類(コンニャク、ジャガイモ、サツマイモなど)、根菜類(甜菜など)由来のスフィンゴ糖脂質があげられる。
【0018】
より詳細には、このような植物素材由来のスフィンゴ糖脂質、例えば、米糠、米胚芽及び/又はこれら由来のスフィンゴ糖脂質、より好ましくは、スフィンゴ糖脂質がβ-グルコシルセラミド(β-GlcCer)としては、例えば、特開2010-270104号公報に記載する、米糠、米胚芽及び/又はこれら由来の素材を有機溶媒抽出して得たスフィンゴ糖脂質含有粗製画分を、クロマトグラフィー及び/又は再結晶により分画したスフィンゴ糖脂質精製画分からなるスフィンゴ糖脂質(コメセラミド)を挙げることができる。
さらには、特許文献2に従って調製した、桃から得られたスフィンゴ糖脂質(モモセラミド)を挙げることができる。
【0019】
一方、本発明の組成物を構成するコラーゲンペプチドは、コラーゲンを酵素などで分解し、比較的低分子化したものである。
かかるコラーゲンペプチドは、肌の保湿性や弾力性を向上するなどの美肌効果や、血液流動性を改善する効果など様々な機能を有するため、近年、多くの飲料、食品、化粧品等に配合されている。
【0020】
本発明者らの検討では、スフィンゴ糖脂質に対してコラーゲンペプチドを特定に比率で混合して製した組成物が、スフィンゴ糖脂質を水中に均一に分散させたとき、安定した懸濁溶液となることを確認した。
スフィンゴ糖脂質と混合されるそのようなコラーゲンペプチドとしては、その素材は特に限定されるものではないが、例えば、市販の「ニッピペプタイドPRA」(株式会社ニッピ)、「水溶性コラーゲンペプチドSS」(協和発酵バイオ株式会社)「コラーゲンペプチドSCP」(新田ゼラチン株式会社)、「HACP」(ゼライス株式会社)などを用いることができる。
【0021】
本発明が提供するスフィンゴ糖脂質とコラーゲンペプチドとの混合物は、具体的には、スフィンゴ糖脂質及びコラーゲンペプチドの両者を、重量比で、コラーゲンペプチド:スフィンゴ糖脂質=99:1~25:75の割合で溶媒中混合し、混合物を乾燥して粉末状として調製することができる。
より好ましい混合比率としては、重量比で、コラーゲンペプチド:スフィンゴ糖脂質=90:10~75:25の割合であるのが好ましい。
【0022】
スフィンゴ糖脂質の配合量が、1%未満である場合には、懸濁液の分散性が均一なものとならず、また、75%を超える場合にも、懸濁液の分散性が均一なものとならないものであった。
なお、組成物中におけるスフィンゴ糖脂質の含有量としては、組成物の全重量を基準として、5~50重量%であるのが好ましい。
したがって、目的とする組成物の用途に応じてスフィンゴ糖脂質の含有量が選択され、それに応じて本発明の特定の比率に基づくコラーゲンペプチドの量が選択され、両者を溶媒中で均質に混合することにより、本発明の組成物が調製される。
【0023】
組成物の調製にあたっては、スフィンゴ糖脂質とコラーゲンペプチドの両者を溶媒中で均質に混合して製するのが良く、そのような溶媒としては、水、低級アルコール、多価アルコール、あるいはアセトンなど、またはこれらの2種以上の混合物を挙げることができる。
本発明が提供する組成物は、スフィンゴ糖脂質を経口的に摂取すること、或いは化粧品の原料として使用する点からみて、混合にあたっては毒性の無い溶媒を用いることが必要であり、従って、溶媒としては水、及び/又はエタノールであるのが好ましい。
混合にあたっては、他の溶媒を用いることも可能であるが、安全性が懸念される残留溶媒の問題があり、好ましいものではない。
【0024】
混合手段としては、スフィンゴ糖脂質及びコラーゲンペプチドの両者を溶媒中で混合する方法(以下、A法という)、或いは、スフィンゴ糖脂質並びにコラーゲンペプチドのそれぞれの溶液を調製し、スフィンゴ糖脂質の溶液をコラーゲンペプチドの溶液中へ滴下しながら混合する方法(以下、B法という)により行うことができる。
なお、混合においては、混合液の均質な混合を確保するため、超音波処理をしながら混合することもできる。
【0025】
混合の条件としては、50℃前後に加温した条件下で0.1~2時間程度混合し、混合終了後減圧下に溶媒を留去し、得られ残留物を均一に粉砕し、これを例えば減圧乾燥することにより目的をする組成物を得ることができる。
【0026】
これら、A法、或いはB法による本発明組成物の調製の詳細を記す。
ただし、以下に説明する方法は、本発明の調製法の一例を具体例として記載するものであって、種々の変法が可能であり、かかる変法も本願発明の目的達成手段として逸脱しない限り、本願発明の技術的範囲に包含されるものである。
【0027】
<A法>
HPLC含量分析値をもとに、セラミドであるスフィンゴ糖脂質の含量が10重量%となるように、米由来セラミド及び魚由来コラーゲンペプチド(ニッピペプタイド)を秤量し、ナス型フラスコヘ移す。その後、95%エタノールをセラミドとコラーゲンペプチドの総量に対して10倍量となるように添加し、50℃に設定した水浴上で20分間、加温し、混合させる。その後、エバポレーターを用い、溶媒を留去させる。残留物を、乳鉢を用いて、粉砕・均一化させた後、減圧乾燥処理(例えば、80℃、-0.1MPa)を行い、溶媒を完全に留去させることにより、本発明の組成物を調製する。
【0028】
<B法>
HPLC含量分析値をもとに、セラミドであるスフィンゴ糖脂質の含量が10重量%となるように、米由来セラミド及び魚由来コラーゲンペプチド(ニッピペプタイド)をそれぞれ別容器に秤量する。セラミドに対しては、エタノール(99.5%)を秤量値の5倍量となるように添加し、50℃に設定した水浴上で加温・超音波処理を行う。一方、コラーゲンペプチドに対しては、精製水を秤量値の5倍量となるように添加し、50℃に設定した水浴上で加温・超音波処理を行う。その後、スターラー攪拌を行いながら、セラミド溶液をコラーゲンペプチド溶液へ滴下する。滴下後、約20分間混合したのち、エバポレーターを用い、溶媒を留去させる。残留物を、乳鉢を用いて粉砕・均一化させた後、減圧乾燥処理(例えば、80℃、-0.1MPa)を行い、溶媒を完全に留去させることにより、本発明の組成物を調製する。
【0029】
かくして調製された本発明の組成物は、水中に均一に分散し、その分散懸濁状態を長時間にわたり安定して維持するものであった。
したがって、本発明が提供する組成物は、保湿効果を目的として経口的に安全に摂取することができ、また、保湿化粧品の原料として、効果的に使用できるものであった。
【実施例】
【0030】
以下に、本発明を種々の試験例等を記載することにより説明するが。本発明はこれらに限定されるものではない。
【0031】
実施例1:A法による本発明の組成物の調製方法
コメ由来スフィンゴ糖脂質(オカヤス株式会社製)2g(HPLC含量81.8%)と魚由来コラーゲンペプチド(ニッピペプタイド:株式会社ニッピ製)13gに95%エタノール150mL(10倍量)を加えて水浴上で撹拌しながら50℃に加温条件下に20分間混合した。その後、減圧下でエバポレーターにより溶媒を留去した。残留物を取り出して均一に粉砕し、これを減圧乾燥処理(80℃、-0.1MPa)し、目的とする組成物を得た。
【0032】
実施例2:B法による本発明の組成物の調製方法
コメ由来スフィンゴ糖脂質(オカヤス株式会社製)2g(HPLC含量81.8%)に95%エタノール10mL(5倍量)を加え水浴上で50℃に加温しながら超音波処理して完全に溶解した。別途、魚由来コラーゲンペプチド(ニッピペプタイド:株式会社ニッピ製)13gに精製水65mL(5倍量)を加えて水浴上で50℃に加温しながら超音波処理して溶解した。撹拌しながら50℃に加温下でスフィンゴ糖脂質のエタノール溶液をコラーゲンペプチド水溶液中に少量ずつ滴下して混合し、50℃、20分保持した。次いで、減圧下にてエバポレーターで溶媒を留去した。残留物を取り出して均一に粉砕し、これを減圧乾燥処理(80℃、-0.1MPa)して、目的物を得た。
【0033】
実施例3:セラミド含量を変化させた本発明の組成物の調製
スフィンゴ糖脂質の含有比率を1,5,25,50,75%の組成物に関しても、セラミドとコラーゲンペプチドの配合比を変えて、同様の方法(A、Bの両法)により、目的とする組成物を調製した。
【0034】
実施例4:組成物の分散性の評価
上記した各実施例で得られた組成物の水中での分散性を評価した。
<方法>
蓋付きの瓶に被検物質が7.50%(w/v)となるように、被験物質に精製水を加える。試料を約1分間、強く振り混ぜ、混合させる。混合後の試料をすばやく測定セルへ移し、静置後における紫外可視分光光度計により、波長660nmにおける透過度を測定する。
測定時間は、静置後0、1、3、5、10、20、30分とし、透過度の変動により分散性を評価した。
【0035】
<結果>
スフィンゴ糖脂質濃度(セラミド濃度)と分散性について、下記表1にその結果を示した。
【0036】
表1:本発明品のスフィンゴ糖脂質濃度と分散性(透過度:660nm)
【0037】
【0038】
透過度は、スフィンゴ糖脂質が増加するにつれて低下し、25%で最低値を示し、さらに濃度が増加するにつれて増加していた。
すなわち、透過度の値が低いほど均一な分散性が維持されていることを示している。
静置10分後の、各濃度における透過度(660nm)を
図1に示した。
【0039】
表1の結果から判断すると、懸濁液の好ましい均一分散性を維持するスフィンゴ糖脂質濃度は、5~75%であることが判明する(静置10分後の透過度:5%以下、20分後の透過度:10%以下、30分後の透過度:10%以下)。
より好ましくは、スフィンゴ糖脂質濃度が10~25%であった(静置10~30分後の透過度:1%以下)。
【0040】
実施例5:透過度の比較検討
上記したように、スフィンゴ糖脂質を含有する組成物の水中での分散性については、溶液として均一性を確保するためには、透過度が低ければ低いほど、溶液の分散性が維持されていることとなる。
そこで、スフィンゴ糖脂質とペプチドコラーゲンの混合物について、本発明により調製した組成物と、単純な両者の混合組成物(単純混合物)との間での透過度の比較を行った。
その結果を、下記表2に示した。
【0041】
表2:スフィンゴ糖脂質+コラーゲン混合物と本発明品の水中での分散性の比較
【0042】
【0043】
注:A法、B法:スフィンゴ糖脂質濃度はいずれも10重量%である。
【0044】
表中に示したに示した結果からも判明するように、スフィンゴ糖脂質とコラーゲンペプチドは、単純な混合による組成物であっても、溶液の分散性はある程度確保されるものの、本発明の組成物(A法、B法により調製した組成物)においては、格段に分散性が改善されていることがわかる。この時、表1及び表2から、セラミド1%、コラーゲン99%であっても、単純混合物よりも分散性が良好であることが判明した。
以上の事実から、本発明の組成物の優位性が理解できるものであった。
【0045】
本発明が提供する組成物は、その使用目的に悪影響を与えない限り、さらに追加的な成分を含んでもよい。そのような成分は、例えば、ビタミン類、ミネラル類、栄養成分、香料、酸化防止剤、色素類、保存料、調味料、甘味料、酸味料、pH調整剤、安定剤、等張化剤、乳化剤、緩衝剤、栄養強化剤、防腐剤を挙げることができる。
【0046】
また、本発明が提供する組成物は、スフィンゴ糖脂質及びコラーゲンペプチドに由来する優れた美肌効果を期待できるため、例えば、肌荒れ防止や皮膚の保湿、皮膚の保護、肌のたるみ改善等のために用いられる。
したがって、乾燥肌や肌荒れ、肌のたるみの対象等にとって極めて有用である。
【0047】
かかる目的のために、本発明が提供する組成物は、飲食品として経口的に摂取することもでき、また、化粧品の原料として提供することができる。
本発明の組成物を飲食品として提供する場合、その形態は、機能性表示食品、特定保健用食品(トクホ)、サプリメント、ドリンク剤(溶液剤及び懸濁液剤が含まれる)等の健康食品の形態で提供することも、また、清涼飲料、茶飲料、乳酸菌飲料等の形態で提供することも可能であるが、これらに限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上のとおり本発明により、化学的に合成された界面活性剤を使用することなく、水に対する分散性に優れたスフィンゴ糖脂質の均一な水性懸濁液を調製することができるスフィンゴ糖脂質含有組成物が提供される。
したがって、本発明が提供するスフィンゴ糖脂質含有組成物は、安全性に優れた組成物として、食品用、或いは化粧品用として使用することができる点で、極めて有用性の高いものであり、その産業上に利用性は多大なものである。