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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-27
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】コイル部材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/04 20060101AFI20220128BHJP
   H01F 27/29 20060101ALI20220128BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20220128BHJP
   H01F 27/30 20060101ALI20220128BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20220128BHJP
【FI】
H01F17/04 A
H01F27/29 G
H01F27/28 K
H01F27/30 160
H01F41/04 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021510516
(86)(22)【出願日】2019-05-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-19
(86)【国際出願番号】 CN2019088177
(87)【国際公開番号】W WO2020173005
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2020-11-04
(31)【優先権主張番号】201910147607.5
(32)【優先日】2019-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】510248062
【氏名又は名称】深▲セン▼順絡電子股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Shenzhen Sunlord Electronics Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】Sunlord Guanlan Industrial Park, Dafuyuan Industrial Zone, Guanlan Street, Longhua District, Shenzhen, Guangdong 518110 CN
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】黄 敬新
(72)【発明者】
【氏名】尉 朗
(72)【発明者】
【氏名】林 藝氷
(72)【発明者】
【氏名】馮 文俊
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/178194(WO,A1)
【文献】特開2014-120730(JP,A)
【文献】特開2014-75533(JP,A)
【文献】国際公開第2017/61143(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/04
H01F 27/29
H01F 27/28
H01F 27/30
H01F 41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端にそれぞれ第1のフランジ部と第2のフランジ部とを有する巻線中心部を含む巻芯部と、
前記第1のフランジ部から前記第2のフランジ部に向かって、同じターン数で前記巻線中心部上に螺旋状に巻き付けられる第1のワイヤ及び第2のワイヤと、
それぞれ前記第1のフランジ部と前記第2のフランジ部に設けられ、それぞれ前記第1のワイヤの一端と他端に接続される第1の外部電極及び第3の外部電極と、
それぞれ前記第1のフランジ部と前記第2のフランジ部に設けられ、それぞれ前記第2のワイヤの一端と他端に接続される第2の外部電極及び第4の外部電極と、
を備え、
前記第2のワイヤは、前記第1のワイヤの隣接するターン間の凹部又は隙間に埋め込まれ、
少なくとも一つの二層巻き層の巻回領域及び/又は少なくとも一つの単層巻き層の巻回領域が存在し、一つの前記二層巻き層の巻回領域又は少なくとも一つの前記単層巻き層の巻回領域において、前記第1のワイヤと前記第2のワイヤとは、ターン数の合計が等しく、
前記二層巻き層の巻回領域及び前記単層巻き層の巻回領域において、前記巻芯部の軸線に垂直な方向に、2本のワイヤの各ターンがターン前半とターン後半とに分けられることで、半ターン巻回領域が形成され、
前記二層巻き層の巻回領域の一方の半ターン巻回領域において、前記第2のワイヤのnターン目が前記第1のワイヤのnターン目とn+1ターン目との間の凹部に埋め込まれることで、前記第1のワイヤと前記第2のワイヤとの間に+0.5ターンでずれる半ターン巻回領域が形成され、
前記二層巻き層の巻回領域の他方の半ターン巻回領域において、前記第2のワイヤのnターン目が前記第1のワイヤのn-1ターン目とnターン目との間の凹部に埋め込まれることで、前記第1のワイヤと前記第2のワイヤとの間には、-0.5ターンでずれる半ターン巻回領域が形成され、
前記単層巻き層の巻回領域の一方の半ターン巻回領域において、前記第2のワイヤのnターン目が前記第1のワイヤのnターン目とn+1ターン目との間の隙間に埋め込まれることで、前記第1のワイヤと前記第2のワイヤとの間に+1.0ターンでずれる半ターン巻回領域が形成され、
前記単層巻き層の巻回領域の他方の半ターン巻回領域において、前記第2のワイヤのnターン目が前記第1のワイヤのn-1ターン目とnターン目との間の隙間に埋め込まれることで、前記第1のワイヤと前記第2のワイヤとの間に-1.0ターンでずれる半ターン巻回領域が形成される
ことを特徴とするコイル部材。
【請求項2】
前記巻き層の巻回領域は、多段並列に巻き付けられている
請求項1に記載のコイル部材。
【請求項3】
前記第1のワイヤ及び前記第2のワイヤは、前記巻線中心部上に二重線状に巻き付けられている
請求項1に記載のコイル部材。
【請求項4】
前記第1のワイヤの各巻き層の巻回領域におけるターン数の合計と、前記第2のワイヤの各巻き層の巻回領域におけるターン数の合計とは等しい、又は1~3ターンの差がある
請求項1に記載のコイル部材。
【請求項5】
前記巻き層の巻回領域の数は3段以上であり、異なる前記巻き層の巻回領域間のターン数の合計は等しい、又はpターンの差があり、前記pは自然数である
請求項1ないし4のいずれかに記載のコイル部材。
【請求項6】
両端にそれぞれ第1のフランジ部と第2のフランジ部とを有する巻線中心部を含む巻芯部と、それぞれ前記第1のフランジ部と前記第2のフランジ部に設けられている第1の外部電極及び第3の外部電極と、それぞれ前記第1のフランジ部と前記第2のフランジ部に設けられている第2の外部電極及び第4の外部電極と、を備えるコイル部材の製造方法であって、
第1のワイヤと第2のワイヤを前記第1のフランジ部から前記第2のフランジ部に向かって同じターン数で前記巻線中心部上に螺旋状に巻き付け、前記第1の外部電極及び前記第3の外部電極をそれぞれ前記第1のワイヤの一端と他端に接続し、前記第2の外部電極及び前記第4の外部電極をそれぞれ前記第2のワイヤの一端と他端に接続することと、
前記コイル部材に少なくとも一つの二層巻き層の巻回領域及び/又は少なくとも一つの単層巻き層の巻回領域が存在するように、前記第2のワイヤを前記第1のワイヤの隣接するターン間の凹部又は隙間に埋め込み、一つの前記二層巻き層の巻回領域又は一つの前記単層巻き層の巻回領域において、前記第1のワイヤと前記第2のワイヤとは、ターン数の合計が等しい又は1~3ターンの差があるようにすることと、
前記二層巻き層の巻回領域及び前記単層巻き層の巻回領域において、前記巻芯部の軸線に垂直な方向に、2本のワイヤの各ターンをターン前半とターン後半とに分け、半ターン巻回領域を形成することと、
前記二層巻き層の巻回領域の一方の半ターン巻回領域において、前記第2のワイヤのnターン目を前記第1のワイヤのnターン目とn+1ターン目との間の凹部に埋め込むことで、前記第1のワイヤと前記第2のワイヤとの間に+0.5ターンでずれる半ターン巻回領域を形成することと、
前記二層巻き層の巻回領域の他方の半ターン巻回領域において、前記第2のワイヤのnターン目を前記第1のワイヤのn-1ターン目とnターン目との間の凹部に埋め込むことで、前記第1のワイヤと前記第2のワイヤとの間には、-0.5ターンでずれる半ターン巻回領域を形成することと、
前記単層巻き層の巻回領域の一方の半ターン巻回領域において、前記第2のワイヤのnターン目を前記第1のワイヤのnターン目とn+1ターン目との間の隙間に埋め込むことで、前記第1のワイヤと前記第2のワイヤとの間に+1.0ターンでずれる半ターン巻回領域を形成することと、
前記単層巻き層の巻回領域の他方の半ターン巻回領域において、前記第2のワイヤのnターン目を前記第1のワイヤのn-1ターン目とnターン目との間の隙間に埋め込むことで、前記第1のワイヤと前記第2のワイヤとの間に-1.0ターンでずれる半ターン巻回領域を形成することと、 を含む
ことを特徴とするコイル部材の製造方法。
【請求項7】
前記巻き層の巻回領域を多段並列に巻き付ける
請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記第1のワイヤと前記第2のワイヤを前記巻線中心部上に二重線状に巻き付ける
請求項6に記載の製造方法。
【請求項9】
前記第1のワイヤの各巻き層の巻回領域におけるターン数の合計と、前記第2のワイヤの各巻き層の巻回領域におけるターン数の合計とは等しい、又は1~3ターンの差があるようにする
請求項6に記載の製造方法。
【請求項10】
前記巻き層の巻回領域の数が3段以上であり、異なる前記巻き層の巻回領域間のターン数の合計が等しい又はpターンの差があり、前記pが自然数であるようにする
請求項6ないし9のいずれかに記載の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコモンモードコイル部材の技術分野に関し、特に巻芯部に2本のワイヤが巻き付けられた巻線型コイル部材の巻線構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記の巻線型コイル部材は主に高速シリアルデータ伝送信号線に用いられ、互いに磁気結合された一対のコイルによって、差動信号が伝送される2本の信号線において、コモンモードのノイズ電流を選択的に除去する。差分信号がコイル部材を流れると、2本のワイヤに反対向きの磁界が発生し、双方の磁界は互いに相殺し低い減衰を呈する。コモンモード電流がコイルを流れると、電流が同じ向きであるため、同じ向きの磁界が発生し、コイルのインダクタンスが増加し、それによってフィルタ効果が達成される。従来の巻線型コイル部材は、環状コアを用いた構造のものとドラムコアを用いた構造のものとがある。ドラムコア構造を有する巻線型コイル部材は、環状コアを有する巻線型コイル部材よりも、実効透磁率が低いため、ノイズ除去性能が低い。しかし、環状コアタイプコイルは、自動巻線が困難であるため、手動巻線に頼らなければならない。これに対して、ドラムコア型コイルは、自動巻線プロセスが可能である、特性ずれが少なく、より量産に適する。
【0003】
従来のドラムコア型コイル部材は、2本のワイヤが非対称であるため、使用中に差動信号の一部がコモンモード信号に変換され、コモンモード信号の一部が差動信号に変換されやすいので、コイル部材はノイズを放射したり干渉防止性が低減したりする。
【0004】
モード変換特性(Scd21)は、コイル部材の差分信号成分のうちコモンモードノイズに変換されて出力されるものの割合を表し、主に2本のワイヤ間の浮遊容量(即ち、分布容量)のバランスが崩れることに起因する。特許文献1である特許文献では、第1のワイヤと第2のワイヤの異なるターン間に発生した浮遊容量のバランスが崩れることが要因として考えられ、傾斜静電容量の2本のワイヤ全体でのバランスを取り、浮遊容量の回路全体への影響を減少させることで、モード変換特性を低減することが開示されている。しかしながら、製品応用側からのコイル部材のモード変換特性に対する要求が高めているため、従来のコイル部材ではもうこの要求に応えられない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】中国特許公開103887040A
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、上記の従来技術の少なくとも一つの不足を補い、コイル部材及びその製造方法を提供することである。
【0007】
上記技術課題を解決するために、本発明は以下の技術的手段を採用する。
【0008】
両端にそれぞれ第1のフランジ部と第2のフランジ部とを有する巻線中心部を含む巻芯部と、
前記巻線中心部上に前記第1のフランジ部から前記第2のフランジ部に向かって、同じターン数で前記巻線中心部上に螺旋状に巻き付けられる第1のワイヤ及び第2のワイヤと、
それぞれ前記第1のフランジ部と前記第2のフランジ部に設けられ、それぞれ前記第1のワイヤの一端と他端に接続される第1の外部電極及び第3の外部電極と、
それぞれ前記第1のフランジ部と前記第2のフランジ部に設けられ、それぞれ前記第2のワイヤの一端と他端に接続される第2の外部電極及び第4の外部電極と、
を備え、
前記第2のワイヤは、前記第1のワイヤの隣接するターン間の凹部又は隙間に埋め込まれ、
少なくとも一つの二層巻き層の巻回領域及び/又は少なくとも一つの単層巻き層の巻回領域が存在し、一つの前記二層巻き層の巻回領域又は少なくとも一つの前記単層巻き層の巻回領域において、前記第1のワイヤと前記第2のワイヤとは、ターン数の合計が等しい又は1~3ターンの差がある
前記二層巻き層の巻回領域及び前記単層巻き層の巻回領域において、前記巻芯部の軸線に垂直な方向に、2本のワイヤの各ターンがターン前半とターン後半とに分けられることで、半ターン巻回領域が形成され、
前記二層巻き層の巻回領域の一方の半ターン巻回領域において、前記第2のワイヤのnターン目が前記第1のワイヤのnターン目とn+1ターン目との間の凹部に埋め込まれることで、前記第1のワイヤと前記第2のワイヤとの間に+0.5ターンでずれる半ターン巻回領域が形成され、
前記二層巻き層の巻回領域の他方の半ターン巻回領域において、前記第2のワイヤのnターン目が前記第1のワイヤのn-1ターン目とnターン目との間の凹部に埋め込まれることで、前記第1のワイヤと前記第2のワイヤとの間には、-0.5ターンでずれる半ターン巻回領域が形成され、
前記単層巻き層の巻回領域の一方の半ターン巻回領域において、前記第2のワイヤのnターン目が前記第1のワイヤのnターン目とn+1ターン目との間の隙間に埋め込まれることで、前記第1のワイヤと前記第2のワイヤとの間に+1.0ターンでずれる半ターン巻回領域が形成され、
前記単層巻き層の巻回領域の他方の半ターン巻回領域において、前記第2のワイヤのnターン目が前記第1のワイヤのn-1ターン目とnターン目との間の隙間に埋め込まれることで、前記第1のワイヤと前記第2のワイヤとの間に-1.0ターンでずれる半ターン巻回領域が形成されるコイル部材。
【0009】
幾つかの好ましい実施形態において、前記巻き層の巻回領域は、多段並列に巻き付けられている。
【0010】
幾つかの好ましい実施形態において、前記第1のワイヤ及び前記第2のワイヤは、前記巻線中心部上に二重線状に巻き付けられている。
【0011】
幾つかの好ましい実施形態において、前記第1のワイヤの各巻き層の巻回領域におけるターン数の合計と、前記第2のワイヤの各巻き層の巻回領域におけるターン数の合計とは等しい、又は1~3ターンの差がある。
【0012】
幾つかの好ましい実施形態において、前記巻き層の巻回領域の数は3段以上であり、異なる前記巻き層の巻回領域間のターン数の合計は等しい、又はpターンの差があり、前記pは自然数である。
【0013】
一方、本発明は、両端にそれぞれ第1のフランジ部と第2のフランジ部とを有する巻線中心部を含む巻芯部と、それぞれ前記第1のフランジ部と前記第2のフランジ部に設けられている第1の外部電極及び第3の外部電極と、それぞれ前記第1のフランジ部と前記第2のフランジ部に設けられている第2の外部電極及び第4の外部電極と、を備えるコイル部材の製造方法であって、
第1のワイヤと第2のワイヤを前記第1のフランジ部から前記第2のフランジ部に向かって、同じターン数で前記巻線中心部上に螺旋状に巻き付け、前記第1の外部電極及び前記第3の外部電極をそれぞれ前記第1のワイヤの一端と他端に接続し、前記第2の外部電極及び前記第4の外部電極をそれぞれ前記第2のワイヤの一端と他端に接続することと、
前記コイル部材には少なくとも一つの二層巻き層の巻回領域及び/又は少なくとも一つの単層巻き層の巻回領域が存在するように、前記第2のワイヤを前記第1のワイヤの隣接するターン間の凹部又は隙間に埋め込み、一つの前記二層巻き層の巻回領域又は一つの前記単層巻き層の巻回領域において、前記第1のワイヤと前記第2のワイヤとは、ターン数の合計が等しいようにすることと、
前記二層巻き層の巻回領域及び前記単層巻き層の巻回領域において、前記巻芯部の軸線に垂直な方向に、2本のワイヤの各ターンをターン前半とターン後半とに分け、半ターン巻回領域を形成することと、
前記二層巻き層の巻回領域の一方の半ターン巻回領域において、前記第2のワイヤのnターン目を前記第1のワイヤのnターン目とn+1ターン目との間の凹部に埋め込むことで、前記第1のワイヤと前記第2のワイヤとの間に+0.5ターンでずれる半ターン巻回領域を形成することと、
前記二層巻き層の巻回領域の他方の半ターン巻回領域において、前記第2のワイヤのnターン目を前記第1のワイヤのn-1ターン目とnターン目との間の凹部に埋め込むことで、前記第1のワイヤと前記第2のワイヤとの間には、-0.5ターンでずれる半ターン巻回領域を形成することと、
前記単層巻き層の巻回領域の一方の半ターン巻回領域において、前記第2のワイヤのnターン目を前記第1のワイヤのnターン目とn+1ターン目との間の隙間に埋め込むことで、前記第1のワイヤと前記第2のワイヤとの間に+1.0ターンでずれる半ターン巻回領域を形成することと、
前記単層巻き層の巻回領域の他方の半ターン巻回領域において、前記第2のワイヤのnターン目を前記第1のワイヤのn-1ターン目とnターン目との間の隙間に埋め込むことで、前記第1のワイヤと前記第2のワイヤとの間に-1.0ターンでずれる半ターン巻回領域を形成することと、 を含むコイル部材の製造方法をさらに提供する。
【0014】
幾つかの好ましい実施形態において、前記巻き層の巻回領域を多段並列に巻き付ける。
【0015】
幾つかの好ましい実施形態において、前記第1のワイヤと前記第2のワイヤを前記巻線中心部上に二重線状に巻き付ける。
【0016】
幾つかの好ましい実施形態において、前記第1のワイヤの各巻き層の巻回領域におけるターン数の合計と、前記第2のワイヤの各巻き層の巻回領域におけるターン数の合計とは等しい、又は1~3ターンの差があるようにする。
【0017】
幾つかの好ましい実施形態において、前記巻き層の巻回領域の数が3段以上であり、異なる前記巻き層の巻回領域間のターン数の合計が等しい、又はpターンの差があり、前記pが自然数であるようにする。
【0018】
従来技術と比べて、本発明の有益な効果は以下のとおりである。
【0019】
二層巻き層の巻回方法を採用して得られる巻回領域において、2本のワイヤは巻線中心部の周りに巻き付けられ、巻芯部の軸線に垂直な方向に、2本のワイヤの各ターンはターン前半とターン後半とに分けられる。ターン前半の巻回領域において、第2のワイヤのnターン目は、第1のワイヤのnターン目とn+1ターン目との間の凹部に埋め込まれ、このとき、第2のワイヤと第1のワイヤとは、+0.5ターンずれる。ターン後半の巻回領域において、第2のワイヤのnターン目は、第1のワイヤのn-1ターン目とnターン目との間の凹部に埋め込まれ、このとき、第2のワイヤと第1のワイヤとは、-0.5ターンずれる。+0.5ターンでずれるターン前半の巻回領域において、「+1」に数値化できる傾斜静電容量が発生する。-0.5ターンでずれるターン後半の巻回領域において、「-1」に数値化できる傾斜静電容量が発生する。2本のワイヤには、同一ターン内で、ターン前半で「+1」の傾斜静電容量、ターン後半で「-1」の傾斜静電容量が発生する。2本のワイヤの同一ターン内の傾斜静電容量が効果的に相殺することが可能で、コイル部材内の傾斜静電容量のアンバランスを最大限に低減させ、モード変換の低減及びコイル部材のより高い安定性を実現することができる。
【0020】
単層巻き層の巻回方法を採用して得られる巻回領域において、2本のワイヤは巻線中心部の周りに巻き付けられ、巻芯部の軸線に垂直な方向に、2本のワイヤの各ターンはターン前半とターン後半とに分けられる。ターン前半の巻回領域において、第2のワイヤのnターン目は、第1のワイヤのnターン目とn+1ターン目との間の隙間に埋め込まれ、このとき、第2のワイヤと第1のワイヤとは、+1.0ターンずれる。ターン後半の巻回領域において、第2のワイヤのnターン目は、第1のワイヤのn-1ターン目とnターン目との間の隙間に埋め込まれ、このとき、第2のワイヤと第1のワイヤとは-1.0ターンずれる。+1.0ターンでずれるターン前半の巻回領域において、「+2」に数値化できる傾斜静電容量が発生する。-1.0ターンでずれるターン後半の巻回領域において、「-2」に数値化できる傾斜静電容量が発生する。このように、2本のワイヤには、同一ターン内で、ターン前半で「+2」の傾斜静電容量、ターン後半で「-2」の傾斜静電容量が発生する。2本のワイヤの同一ターン内の傾斜静電容量が効果的に相殺することが可能で、コイル部材内の傾斜静電容量のアンバランスを最大限に低減させ、モード変換の低減及びコイル部材のより高い安定性を実現することができる。
【0021】
以上のことから分かるように、単層巻き層の巻線方法及び/又は二層巻き層の巻線方法を採用して得られるコイル部材では、2本のワイヤの同一ターン内の傾斜静電容量が効果的に相殺することが可能で、さらにコイル部材のモード変換特性及びノイズを低減させ、より高い安定性を持つことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は本発明の第1実施例に係るコイル部材の外観斜視図である。
図2図2図1に示すコイル部材における第1のワイヤ及び第2のワイヤの二層巻き層の巻回方法を採用した巻回状態を模式的に表す模式図である。
図3図3図2に示す第1のワイヤ及び第2のワイヤに発生する傾斜静電容量を説明する断面図である。
図4図4図3に示す第1のワイヤと第2のワイヤとの間に-0.5ターンでずれる半ターン巻回領域に発生する傾斜静電容量をさらに詳しく説明する等価回路図である。
図5図5図3に示す第1のワイヤと第2のワイヤとの間に+0.5ターンでずれる半ターン巻回領域に発生する傾斜静電容量をさらに詳しく説明する等価回路図である。
図6図6は本発明の第2実施例に係るコイル部材における第1のワイヤ及び第2のワイヤの巻回状態を模式的に表す模式図である。
図7図7は本発明の第3実施例に係るコイル部材における第1のワイヤ及び第2のワイヤの巻回状態を模式的に表す模式図である。
図8図8は本発明の第4実施例に係るコイル部材における第1のワイヤ及び第2のワイヤの巻回状態を模式的に表す模式図である。
図9図9は本発明の第5実施例に係るコイル部材における第1のワイヤ及び第2のワイヤの巻回状態を模式的に表す模式図である。
図10図10は本発明の第6実施例に係るコイル部材における第1のワイヤ及び第2のワイヤの単層巻き層の巻回方法を採用した巻回状態を模式的に表す模式図である。
図11図11図10に示す第1のワイヤ及び第2のワイヤに発生する傾斜静電容量を説明する断面図である。
図12図12図11に示す第1のワイヤと第2のワイヤとの間に-1.0ターンでずれる半ターン巻回領域に発生する傾斜静電容量をさらに詳しく説明する等価回路図である。
図13図13図11に示す第1のワイヤと第2のワイヤとの間に+1.0ターンでずれる半ターン巻回領域に発生する傾斜静電容量をさらに詳しく説明する等価回路図である。
図14図14は本発明の第7実施例に係るコイル部材における第1のワイヤ及び第2のワイヤの巻回状態を模式的に表す模式図である。
図15図15は本発明の第8実施例に係るコイル部材における第1のワイヤ及び第2のワイヤの巻回状態を模式的に表す模式図である。
図16図16は本発明の第9実施例に係るコイル部材における第1のワイヤ及び第2のワイヤの巻回状態を模式的に表す模式図である。
図17図17は本発明の第10実施例に係るコイル部材における第1のワイヤ及び第2のワイヤの巻回状態を模式的に表す模式図である。
図18図18は本発明の第11実施例に係るコイル部材における第1のワイヤ及び第2のワイヤの巻回状態を模式的に表す模式図である。
図19図19は本発明の第12実施例に係るコイル部材における第1のワイヤ及び第2のワイヤの巻回状態を模式的に表す模式図である。
図20図20は本発明の第13実施例に係るコイル部材における第1のワイヤ及び第2のワイヤの巻回状態を模式的に表す模式図である。
図21図21は比較例のコイル部材における第1のワイヤ及び第2のワイヤの巻回状態を模式的に表す模式図である。
図22図22は比較例及び本発明の第1実施例のスペクトル図である。
図23図23は第2比較例のコイル部材における第1のワイヤ及び第2のワイヤの巻回状態を模式的に表す模式図である。
図24図24は第2比較例及び本発明の第1実施例のスペクトル図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図1乃至図20を参照して、本発明の実施形態を詳しく説明する。以下の説明は単なる例示であり、本発明の範囲及びその適用を制限するものではないことを強調すべきである。
【0024】
本発明の実施例は、2本のコイルにそれぞれ生じる同一ターン内で異なるターン間の容量のバランスをとることにより、モード変換特性が効果的に低減されるとともに、より高い安定性が実現されるドラムコア型コイル部材を提供する。
【0025】
図1を参照し、上記目的を達成するために、本発明の実施例に係るコイル部材は、ドラムコアの巻芯部1と、第1の外部電極21と、第2の外部電極22と、第3の外部電極23と、第4の外部電極24と、磁性蓋板4とを備える。巻芯部1は、一端に第1のフランジ部12を有し、他端に第2のフランジ部13を有する巻線中心部11を含む。第1の外部電極21と第3の外部電極23は、それぞれ第1のフランジ部12と第2のフランジ部13に設けられる。第2の外部電極21と第4の外部電極24は、それぞれ第1のフランジ部12と第2のフランジ部13に設けられる。磁性蓋板4は、エポキシ接着剤によりドラムコアの巻芯部1に接着される。
【0026】
図1に示すコイル部材における第1のワイヤ31及び第2のワイヤ32の二層巻き層の巻回状態を図2に模式的に表す。2本のワイヤ31、32の違いを明確にするために、図2及び以降の図面において、第1のワイヤ31を表す断面図にハッチングを施している。その中、巻き付けられるドラムコアの巻芯部1の周りの2本のワイヤ31、32の各部分のうち、ドラムコアの巻芯部1の手前側に位置する部分が実線で模式的に表され、遮蔽された部分が破線で模式的に表される。
【0027】
本発明の第1実施例では、図1及び図2を参照し、図2には、第1のワイヤ31と第2のワイヤ32は、上下に配列されるようにドラムコアの巻芯部1の周りに巻き付けられ、第2のワイヤ32は、その大部分が第1のワイヤ31の隣接するターン間に形成された凹部に埋め込まれるとともに、第1層の巻き層の外側に第2の層巻き層が形成されることで、二層巻き層の巻回領域が形成される。第1のワイヤ31は、始端が第2の外部電極22に接続され、巻線中心部11の表面に、隣接するターンが緊密に配列された状態で、第1のフランジ部12の側から第2のフランジ部13の側へと巻き付けされる。このとき、第1のワイヤ31の終端は第3の外部電極23に接続される。これによって、巻線中心部11の表面の周りに緊密に配列された第1層の巻き層が形成される。
【0028】
図2に示す2本のワイヤ31、32は、巻線中心部の周りに巻き付けられる。巻芯部1の軸線に垂直な方向に、2本のワイヤ31、32の各ターンは、ターン前半とターン後半とに分けられている。第2のワイヤ32の2ターン目を例にとると、第2のワイヤ32の2ターン目のターン前半は、第1のワイヤ31の2ターン目と3ターン目との間の凹部に埋め込まれる。このように、ターン前半の巻回領域が形成される。第2のワイヤ32の2ターン目の同一ターン内で、第2のワイヤ32の2ターン目のターン後半は、第1のワイヤ31の1ターン目と2ターン目との間の凹部に埋め込まれる。このように、ターン後半の巻回領域が形成される。このとき、第2のワイヤ32の始端は、第3の外部電極23に接続され、ターン前半の巻回領域において、第2のワイヤ32のnターン目が第1のワイヤ31のnターン目とn+1ターン目の凹部に埋め込まれるように、28ターン目まで巻き付けられ、ターン後半の巻回領域において、第2のワイヤ32のnターン目が第1のワイヤ31のn-1ターン目とnターン目との間の凹部に埋め込まれるように、28ターン目まで巻き付けられ、第2のワイヤ32の終端は、第4の外部電極24に接続される。
【0029】
巻線コイル部材における差分信号成分がコモンモードノイズに変換されて出力される割合、即ち、モード変換特性Scd21は、図3乃至図5における巻線コイル部材に発生する浮遊容量(即ち、分布容量)によって説明することができる。図3は、2本のワイヤ31、32の巻回状態で一部の巻回に発生する傾斜静電容量の断面図であり、ターン前半の巻回領域とターン後半の巻回領域とを含む。ターン前半の巻回領域は、+0.5ターンでずれる半ターン巻回領域である。第1のワイヤ31によって第1層の巻き層が構成される。第2のワイヤ32の1ターン目は、第1のワイヤ31の1ターン目と2ターン目との間の凹部に埋め込まれ、即ち、第2のワイヤ32のnターン目は、第1のワイヤ31のnターン目とn+1ターン目との間の凹部に埋め込まれる。ターン後半の巻回領域は、-0.5ターンでずれる半ターン巻回領域であり、2本のワイヤ31、32の相対位置は変化した。第2のワイヤ32の2ターン目は、第1のワイヤ31の1ターン目と2ターン目との間の凹部に埋め込まれ、即ち、第2のワイヤ32のnターン目は、第1のワイヤ31のn-1ターン目とnターン目との間の凹部に埋め込まれる。図3に示す2本のワイヤ31、32における各巻回領域内の各ターン間に発生する浮遊容量を図4及び図5で説明し、その中、2本のワイヤ31、32のそれぞれの一ターンは一つのインダクタ記号で表される。コイル部材における浮遊容量は、第1のワイヤ31の1ターン目と第2のワイヤ32の1ターン目との間に発生する浮遊容量、第1のワイヤ31の2ターン目と第2のワイヤ32の1ターン目との間に発生する浮遊容量、及び第1のワイヤ31の2ターン目と第2のワイヤ32の2ターン目との間に発生する浮遊容量等を含む。モード変換特性Scd21が増加する要因は、2本のワイヤ31、32間に発生する浮遊容量であり、その中、2本のワイヤ31、32間の異なるターン間の浮遊容量Cd、即ち、傾斜静電容量Cdの影響は最も大きいので、図4図5では、主に2本のワイヤ31、32間の異なるターン間に発生する浮遊容量Cdを示す。
【0030】
図4に、ターン前半の巻回領域、即ち、+0.5ターンでずれる半ターン巻回領域を示し、図4に示す傾斜静電容量Cd1は、「右斜め下」の接続方向を有し、これらの傾斜静電容量は、数値化される場合に「+」の符号が付される。図5では、ターン後半の巻回領域、即ち、-0.5ターンでずれる半ターン巻回領域を示し、図5に示す傾斜静電容量Cd2は、「右斜め上」の接続方向を有し、これらの傾斜静電容量は、数値化される場合に「-」の符号が付される。よって、傾斜静電容量Cd1の方向と傾斜静電容量Cd2の方向とは反対になる。図4及び図5に示すように、傾斜静電容量が発生する第1のワイヤ31及び第2のワイヤ32のターン数間の、巻線中心部11の軸線方向における距離が0.5D(Dはコイルワイヤの直径)である場合、傾斜静電容量の絶対値を「1」とする。図4を参照して分かるように、第2のワイヤ32の2ターン目のターン前半の巻回領域に対応する傾斜静電容量Cd1は「+1」である。図5を参照し、第2のワイヤ32の2ターン目のターン後半の巻回領域に対応する傾斜静電容量Cd2は「-1」である。このように、第2のワイヤ32の2ターン目内で、ターン前半とターン後半に対応する傾斜静電容量は、互いに相殺できる。即ち、第2のワイヤ32のnターン目の+0.5ターンでずれるターン前半の巻回領域に対応する傾斜静電容量は「+1」であり、-0.5ターンでずれるターン後半の巻回領域に対応する傾斜静電容量Cd2は「-1」であることで、第2のワイヤ32のnターン目内で、ターン前半に対応する傾斜静電容量とターン後半に対応する傾斜静電容量は、互いに相殺できる。上記の巻線方法によって得られるコイル部材は、その内部の2本のワイヤ31、32間の各ターン内の傾斜静電容量が、いずれも最大限に互いに相殺でき、さらにモード変換特性及びノイズを低減し、より高い安定性を持つことが可能である。
【0031】
上記に加えて、以下の幾つかの形態も本発明の範囲に属する。
【0032】
図6を参照し、本発明の第2実施例に係るコイル部材について説明する。2本のワイヤ31、32は、巻線中心部11の周りに巻き付けられる。巻芯部1の軸線に垂直な方向におけるターン前半の巻回領域において、第2のワイヤ32の2ターン目は、第1のワイヤ31の1ターン目と2ターン目との間の凹部に埋め込まれ、即ち、第2のワイヤ32のnターン目は、第1のワイヤ31のn-1ターン目とnターン目との間の凹部に埋め込まれ、-0.5ターンでずれる半ターン巻回領域が形成される。ターン後半の巻回領域において、第2のワイヤ32の1ターン目は、第1のワイヤ31の1ターン目と2ターン目との間の凹部に埋め込まれ、即ち、第2のワイヤ32のnターン目は、第1のワイヤ31のnターン目とn+1ターン目との間の凹部に埋め込まれ、+0.5ターンでずれる半ターン巻回領域が形成される。第2のワイヤ32の2ターン目を例にとると、第2のワイヤ32の2ターン目のターン前半は、-0.5ターンでずれるターン前半の巻回領域に対応する傾斜静電容量が「-1」である。第2のワイヤ32の2ターン目のターン後半は、+0.5ターンでずれるターン後半の巻回領域に対応する傾斜静電容量が「+1」である。このように、第2のワイヤ32の2ターン目のターン全体において、対応する傾斜静電容量は互いに相殺する。このようにして、第2のワイヤ32のnターン目内で、ターン前半に対応する傾斜静電容量とターン後半に対応する傾斜静電容量は、互いに相殺できる。上記の巻線方法によって得られるコイル部材は、2本のワイヤ31、32間の各ターン内の傾斜静電容量が、いずれも最大限に互いに相殺でき、さらにモード変換特性及びノイズを低減させ、より高い安定性を持つことが可能である。
【0033】
図7を参照し、本発明の第3実施例に係るコイル部材について説明する。2本のワイヤ31、32は、巻線中心部11の周りに巻き付けられる。巻芯部1の軸線方向において、巻回領域Aと巻回領域Bとに分けられるとともに、巻芯部1の軸線に垂直な方向において、同様に前半の巻回領域と後半の巻回領域とに分けられる。巻回領域Aにおいて、-0.5ターンでずれるターン前半の巻回領域において、第2のワイヤ32の2ターン目は、第1のワイヤ31の1ターン目と2ターン目との間の凹部に埋め込まれ、即ち、第2のワイヤ32のnターン目は、第1のワイヤ31のn-1ターン目とnターン目との間の凹部に埋め込まれる。巻回領域Aにおいて、+0.5ターンでずれるターン後半の巻回領域において、第2のワイヤ32の1ターン目は、第1のワイヤ31の1ターン目と2ターン目との間の凹部に埋め込まれ、即ち、第2のワイヤ32のnターン目は、第1のワイヤ31のnターン目とn+1ターン目との間の凹部に埋め込まれる。上記の巻回方法によって、2本のワイヤ31、32は、巻回領域Aにおいて、14ターン目まで巻き付けられる。巻回領域Bにおいて、-0.5ターンでずれるターン前半の巻回領域において、第2のワイヤの16ターン目は、第1のワイヤ31の15ターン目と16ターン目との間の凹部に埋め込まれ、即ち、第2のワイヤ32のnターン目は、第1のワイヤ31のn-1ターン目とnターン目との間の凹部に埋め込まれる。巻回領域Bにおいて、+0.5ターンでずれるターン後半の巻回領域において、第2のワイヤ32の15ターン目は、第1のワイヤ31の15ターン目と16ターン目との間の凹部に埋め込まれ、即ち、第2のワイヤ32のnターン目は、第1のワイヤ31のnターン目とn+1ターン目との間の凹部に埋め込まれる。上記の巻回方法によって、2本のワイヤ31、32は、巻回領域Bにおいて、28ターン目まで巻き付けられる。本発明の上記実施例と同様に、巻回領域Aと巻回領域Bにおいて、第2のワイヤ32のnターン目内で、ターン前半に対応する傾斜静電容量とターン後半に対応する傾斜静電容量は、互いに相殺できる。当該巻線方法によって得られるコイル部材は、2本のワイヤ31、32間の各ターン内の傾斜静電容量が、いずれも最大限に互い
に相殺でき、さらにモード変換特性及びノイズを低減させ、より高い安定性を持つことが可能である。
【0034】
注意すべきなのは、本発明の実施例では、巻回領域Aにおいて、2本のワイヤ31、32の総ターン数は同じであり、巻回領域Bにおいて、2本のワイヤ31、32の総ターン数は同じであるが、巻回領域Aと巻回領域Bとにおいて配置された第1のワイヤ31のターン数が等しくなく、巻回領域Aと巻回領域Bとにおいて配置された第2のワイヤ32のターン数が等しくない形態も、本発明の範囲に属する。
【0035】
図8を参照し、本発明の第4実施例に係るコイル部材について説明する。2本のワイヤ31、32は、巻線中心部11の周りに巻き付けられる。巻芯部1の軸線方向において、巻回領域Aと巻回領域Bとに分けられるとともに、巻芯部1の軸線に垂直な方向において、同様に前半の巻回領域と後半の巻回領域とに分けられる。巻回領域Aにおいて、ターン前半の巻回領域は、+0.5ターンでずれる半ターン巻回領域であり、ターン後半の巻回領域は、-0.5ターンでずれる半ターン巻回領域である。巻回領域Bにおいて、ターン前半の巻回領域は、+0.5ターンでずれる半ターン巻回領域であり、ターン後半の巻回領域は、-0.5ターンでずれる半ターン巻回領域である。このような巻線方法によって得られるコイル部材は、その2本のワイヤ31、32間の各ターン内で傾斜静電容量が、いずれも最大限に互いに相殺でき、さらにモード変換特性及びノイズを低減させ、より高い安定性を持つことが可能である。なお、巻回領域Aと巻回領域Bとにおいて配置された第1のワイヤ31のターン数が等しくなく、巻回領域Aと巻回領域Bとにおいて配置された第2のワイヤ32のターン数が等しくない形態も、本発明の範囲に属する。
【0036】
図9を参照して、本発明の第5実施例に係るコイル部材について説明する。2本のワイヤ31、32は、巻線中心部11の周りに巻き付けられる。巻芯部1の軸線方向において、巻回領域Aと巻回領域Bとに分けられるとともに、巻芯部1の軸線に垂直な方向において、同様に前半の巻回領域と後半の巻回領域とに分けられる。巻回領域Aにおいて、ターン前半の巻回領域は、+0.5ターンでずれる半ターン巻回領域であり、ターン後半の巻回領域は、-0.5ターンでずれる半ターン巻回領域である。巻回領域Bにおいて、ターン前半の巻回領域は、-0.5ターンでずれる半ターン巻回領域であり、ターン後半の巻回領域は、+0.5ターンでずれる半ターン巻回領域である。このような巻線方法によって得られるコイル部材は、その2本のワイヤ31、32間の各ターン内で傾斜静電容量が、いずれも最大限に互いに相殺でき、さらにモード変換特性及びノイズを低減させ、より高い安定性を持つことが可能である。なお、巻回領域Aと巻回領域Bとにおいて配置された第1のワイヤ31のターン数が等しくなく、巻回領域Aと巻回領域Bとにおいて配置された第2のワイヤ32のターン数が等しくない形態も、本発明の範囲に属する。
【0037】
本発明の第3~5実施例に係るコイル部材によれば、多段の巻回領域の組み合わせを有するその他のコイル部材をさらに派生することができる。例えば、巻回領域の数は三段以上であってもよい。これらの巻回領域を組み合わせて得られるコイル部材は、いずれも本発明の範囲に属する。
【0038】
図10乃至図13を参照し、本発明の第6実施例を詳しく説明する。図10に示すコイル部材における第1のワイヤ31と第2のワイヤ32の単層巻き層の巻回状態を図11に模式的に表す。2本のワイヤ31、32の違いを明確にするために、図10及び以降の図面において、第1のワイヤ31を表す断面図にハッチングを施している。その中、巻き付けられるドラムコアの巻芯部1の周りの2本のワイヤ31、32の各部分のうち、ドラムコアの巻芯部1の手前側に位置する部分が実線で模式的に表され、遮蔽された部分が破線で模式的に表される。
【0039】
本発明の第6実施例では、図11では、2本のワイヤ31、32は、ドラムコアの巻芯部1の周りに配列されて巻き付けられる。第2のワイヤ32が第1のワイヤ31の隣接するターン間に形成された隙間に埋め込まれることで、単層巻き層の巻回領域が形成される。第1のワイヤ31は、始端が第2の外部電極22に接続され、巻線中心部11の表面に第1のフランジ部12の側から第2のフランジ部13の側へと巻き付けされ、第1のワイヤ31の終端は、第3の外部電極23に接続される。これによって、巻線中心部11の表面に第1のワイヤ31の隙間配列が形成される。図11に示す2本のワイヤ31、32は、巻線中心部11の周りに巻き付けられ、巻芯部1の軸線に垂直な方向に、2本のワイヤ31、32の各ターンは、ターン前半とターン後半とに分けられている。第2のワイヤ32の2ターン目を例にとると、第2のワイヤ32の2ターン目のターン前半は第1のワイヤ31の2ターン目と3ターン目との間の隙間に埋め込まれる。第2のワイヤ32の2ターン目の同一ターン内で、第2のワイヤ32の2ターン目のターン後半は第1のワイヤ31の1ターン目と2ターン目との間の隙間に埋め込まれる。第2のワイヤ32の始端は、第3の外部電極23に接続され、ターン前半の巻回領域において、第2のワイヤ32のnターン目は、第1のワイヤ31のnターン目とn+1ターン目の隙間に埋め込まれ、28ターン目まで巻き付けられる。ターン後半の巻回領域において、第2のワイヤ32のnターン目は、第1のワイヤ31のn-1ターン目とnターン目との間の隙間に埋め込まれ、28ターン目まで巻き付けられる。第2のワイヤ32の終端は、第4の外部電極24に接続される。
【0040】
図11及び図13によって、単層巻き層のコイル部材の浮遊容量(即ち、分布容量)のモード変換特性Scd21への影響を検討する。図11は、2本のワイヤ31、32の巻回状態で一部のコイルに傾斜静電容量が発生した断面図であり、ターン前半の巻回領域とターン後半の巻回領域とを含む。ターン前半の巻回領域は、+1.0ターンでずれる半ターン巻回領域であり、2本のワイヤ31、32によって単層巻き層が構成される。具体的には、第2のワイヤ32の1ターン目は、第1のワイヤ31の1ターン目と2ターン目との間の隙間に埋め込まれ、即ち、第2のワイヤ32のnターン目は、第1のワイヤ31のnターン目とn+1ターン目との間の隙間に埋め込まれる。ターン後半の巻回領域は、-1.0ターンでずれる半ターン巻回領域であり、具体的には、2本のワイヤ31、32の相対位置は変化した。第2のワイヤ32の2ターン目は、第1のワイヤ31の1ターン目と2ターン目との間の隙間に埋め込まれ、即ち、第2のワイヤ32のnターン目は、第1のワイヤ31のn-1ターン目とnターン目との間の隙間に埋め込まれる。図12には、+1.0ターンでずれるターン前半の巻回領域を示す。図12に示す傾斜静電容量Cd4は、「右斜め下」の接続方向を有し、これらの傾斜静電容量は、数値化される場合に「+」の符号が付される。図13には、-1.0ターンでずれるターン後半の巻回領域を示す。図13に示す傾斜静電容量Cd3は、「右斜め上」の接続方向を有し、これらの傾斜静電容量は、数値化される場合に「-」の符号が付される。図12及び図13に示すように、傾斜静電容量が発生した第1のワイヤ31及び第2のワイヤ32のターン数間の、巻線中心部11の軸線方向における距離が1.0D(Dはコイルワイヤの直径)である場合、傾斜静電容量の絶対値を「2」とする。図12を参照して分かるように、第2のワイヤ32の2ターン目のターン前半の巻回領域に対応する傾斜静電容量Cd4は「+2」である。図13を参照し、第2のワイヤ32の2ターン目のターン後半の巻回領域に対応する傾斜静電容量Cd3は「-2」である。このように、第2のワイヤ32のnターン目内で、ターン前半に対応する傾斜静電容量とターン後半に対応する傾斜静電容量は、互いに相殺できる。上記の巻線方法によって得られるコイル部材は、その内部の2本のワイヤ31、32間の各ターン内で、傾斜静電容量も最大限に互いに相殺し、同様に、より安定したモード変換特性及びノイズ低減性能を有する。
【0041】
図14を参照し、本発明の第7実施例に係る単層巻き層のコイル部材について説明する。2本のワイヤ31、32は、巻線中心部11の周りに巻き付けられる。巻芯部1の軸線に垂直な方向におけるターン前半の巻回領域において、第2のワイヤ32の2ターン目は、第1のワイヤ31の1ターン目と2ターン目との間の隙間に埋め込まれ、即ち、第2のワイヤ32のnターン目は、第1のワイヤ31のn-1ターン目とnターン目との間の凹部に埋め込まれ、-1.0ターンでずれる半ターン巻回領域が形成される。ターン後半の巻回領域において、第2のワイヤ32の1ターン目は、第1のワイヤ31の1ターン目と2ターン目との間の隙間に埋め込まれ、即ち、第2のワイヤ32のnターン目は、第1のワイヤ31のnターン目とn+1ターン目との間の隙間に埋め込まれ、+1.0ターンでずれる半ターン巻回領域が形成される。第2のワイヤ32の2ターン目を例にとると、第2のワイヤ32の2ターン目の-1.0ターンでずれるターン前半の巻回領域に対応する傾斜静電容量は「-2」であり、第2のワイヤ32の2ターン目の+1.0ターンでずれるターン後半の巻回領域の傾斜静電容量は「+2」である。このように、第2のワイヤ32の2ターン目のターン全体において、対応する傾斜静電容量は互いに相殺する。このようにして、第2のワイヤ32のnターン目内で、ターン前半に対応する傾斜静電容量とターン後半に対応する傾斜静電容量は、互いに相殺できる。上記の巻線方法によって得られる単層巻き層のコイル部材は、その2本のワイヤ31、32間の各ターン内で、傾斜静電容量が同様に、いずれも最大限に互いに相殺でき、より安定したモード変換特性及びノイズ低減性能を有する。
【0042】
図15を参照し、本発明の第8実施例に係る単層巻き層のコイル部材について説明する。2本のワイヤ31、32は、巻線中心部11の周りに巻き付けられ、巻芯部の軸線方向において、巻回領域Aと巻回領域Bとに分けられるとともに、巻芯部1の軸線に垂直な方向において、同様に前半の巻回領域と後半の巻回領域とに分けられる。巻回領域Aにおいて、-1.0ターンでずれるターン前半の巻回領域において、第2のワイヤ32の2ターン目は、第1のワイヤ31の1ターン目と2ターン目との間の隙間に埋め込まれ、即ち、第2のワイヤ32のnターン目は、第1のワイヤ31のn-1ターン目とnターン目との間の隙間に埋め込まれる。巻回領域Aにおいて、+1.0ターンでずれるターン後半の巻回領域において、第2のワイヤ32の1ターン目は、第1のワイヤ31の1ターン目と2ターン目との間の隙間に埋め込まれ、即ち、第2のワイヤ32のnターン目は、第1のワイヤ31のnターン目とn+1ターン目との間の隙間に埋め込まれる。上記の巻回方法によって、巻回領域Aにおいて、2本のワイヤ31、32は、14ターン目まで巻き付けられる。巻回領域Bにおいて、+1.0ターンでずれるターン前半の巻回領域において、第2のワイヤの23ターン目は、第1のワイヤ31の23ターン目と24ターン目との間の隙間に埋め込まれ、即ち、第2のワイヤ32のnターン目は、第1のワイヤ31のnターン目とn+1ターン目との間の隙間に埋め込まれる。巻回領域Bにおいて、-1.0ターンでずれるターン後半の巻回領域において、第2のワイヤ32の23ターン目は、第1のワイヤ31の22ターン目と23ターン目との間の隙間に埋め込まれ、即ち、第2のワイヤ32のnターン目は、第1のワイヤ31のn-1ターン目とnターン目との間の隙間に埋め込まれる。上記の巻回方法によって、巻回領域Bにおいて、2本のワイヤ31、32は、28ターン目まで巻き付けられる。本発明の上記実施例と同様に、巻回領域AとBにおいて、第2のワイヤ32のnターン目内で、ターン前半に対応する傾斜静電容量とターン後半
に対応する傾斜静電容量は、いずれも互いに相殺できる。このような巻線方法によって得られるコイル部材は、その2本のワイヤ31、32間の各ターン内で、傾斜静電容量は同様に、最大限に互いに相殺し、より安定したモード変換特性及びノイズ低減性能が実現される。
【0043】
注意すべきなのは、本発明の実施例では、巻回領域Aにおいて、2本のワイヤ31、32の総ターン数は同じであり、巻回領域Bにおいて、2本のワイヤ31、32の総ターン数は同じであるが、巻回領域Aと巻回領域Bとにおいて配置された第1のワイヤ31のターン数が等しくなく、巻回領域Aと巻回領域Bとにおいて配置された第2のワイヤ32のターン数が等しくない形態も、本発明の範囲に属する。なお、多段の巻回領域を有するコイル部材をさらに派生することができる。例えば、巻回領域の数は三段以上であってもよい。これらの形態は、いずれも本発明の範囲に属する。
【0044】
図16を参照し、本発明の第9実施例に係る二層巻き層の巻回領域と単層巻き層の巻回領域が同時に存在するコイル部材について説明する。2本のワイヤ31、32は、巻線中心部11の周りに巻き付けられ、巻芯部1の軸線方向において、巻回領域Aと巻回領域Bとに分けられている。巻回領域Aは二層巻き層の巻回方法を採用し、巻回領域Bは単層巻き層の巻回方法を採用し、また、巻芯部1の軸線に垂直な方向において、同様に前半の巻回領域と後半の巻回領域とに分けられる。巻回領域Aにおいて、-0.5ターンでずれるターン前半の巻回領域において、第2のワイヤ32の2ターン目は、第1のワイヤ31の1ターン目と2ターン目との間の凹部に埋め込まれ、即ち、第2のワイヤ32のnターン目は、第1のワイヤ31のn-1ターン目とnターン目との間の凹部に埋め込まれる。巻回領域Aにおいて、+0.5ターンでずれるターン後半の巻回領域において、第2のワイヤ32の1ターン目は、第1のワイヤ31の1ターン目と2ターン目との間の凹部に埋め込まれ、即ち、第2のワイヤ32のnターン目は、第1のワイヤ31のnターン目とn+1ターン目との間の凹部に埋め込まれる。上記の巻回方法によって、2本のワイヤ31、32は、巻回領域Aにおいて、14ターン目まで巻き付けられる。巻回領域Bにおいて、-1.0ターンでずれるターン前半の巻回領域において、第2のワイヤの16ターン目は、第1のワイヤ31の15ターン目と16ターン目との間の隙間に埋め込まれ、即ち、第2のワイヤ32のnターン目は、第1のワイヤ31のn-1ターン目とnターン目との間の隙間に埋め込まれる。巻回領域Bにおいて、+1.0ターンでずれるターン後半の巻回領域において、第2のワイヤ32の15ターン目は、第1のワイヤ31の15ターン目と16ターン目との間の隙間に埋め込まれ、即ち、第2のワイヤ32のnターン目は、第1のワイヤ31のnターン目とn+1ターン目との間の隙間に埋め込まれる。上記の巻回方法によって、2本のワイヤ31、32は、巻回領域Bにおいて、28ターン目まで巻き付けられる。本発明の上記実施例と同様に、巻回領域Aと巻回領域Bにおいて、第2のワイヤ32のnターン目内で、ターン前半に対応する傾斜静電容量とターン後半に対応する傾斜静電容量は、互いに相殺できる。このような巻線方法によって得られるコイル部材は、その2本のワイヤ31、32間の各ターン内で、傾斜静電容量は同様に、最大限に互いに相殺し、より安定したモード変換特性及びノイズ低減性能が実現される。
【0045】
二層巻き層の巻回領域と単層巻き層の巻回領域が同時に存在するコイル部材について、二層巻き層の巻回領域において、第1のワイヤ31と第2のワイヤ32は、ターン数の合計が等しく、それぞれm1ターンで二層巻き付けられる。単層巻き層の巻回領域において、第1のワイヤと第2のワイヤは、ターン数の合計が等しく、それぞれm2ターンで単層巻き付けられる。その中、m1、m2は自然数である。m1とm2とは、必ずしも関連性があるとは限らない。
【0046】
注意すべきなのは、本発明の実施例では、二層巻き層巻回方法を採用した巻回領域Aにおいて、2本のワイヤ31、32の総ターン数は同じであり、単層巻き層巻回方法を採用した巻回領域Bにおいて、2本のワイヤ31、32の総ターン数は同じであるが、巻回領域Aと巻回領域Bとにおいて配置された第1のワイヤ31のターン数が等しくなく、巻回領域Aと巻回領域Bとにおいて配置された第2のワイヤ32のターン数が等しくない形態も、本発明の範囲に属する。
【0047】
図17を参照し、本発明の第10実施例に係る二層巻き層の巻回領域と単層巻き層の巻回領域が同時に存在するコイル部材について説明する。2本のワイヤ31、32は、巻線中心部11の周りに巻き付けられ、巻芯部1の軸線方向において、巻回領域Aと巻回領域Bとに分けられている。巻回領域Aは二層巻き層の巻回方法を採用し、巻回領域Bは単層巻き層の巻回方法を採用し、また、巻芯部1の軸線に垂直な方向において、同様に前半の巻回領域と後半の巻回領域とに分けられる。巻回領域Aにおいて、-0.5ターンでずれるターン前半の巻回領域において、第2のワイヤ32の2ターン目は、第1のワイヤ31の1ターン目と2ターン目との間の凹部に埋め込まれ、即ち、第2のワイヤ32のnターン目は、第1のワイヤ31のn-1ターン目とnターン目との間の凹部に埋め込まれる。巻回領域Aにおいて、+0.5ターンでずれるターン後半の巻回領域において、第2のワイヤ32の1ターン目は、第1のワイヤ31の1ターン目と2ターン目との間の凹部に埋め込まれ、即ち、第2のワイヤ32のnターン目は、第1のワイヤ31のnターン目とn+1ターン目との間の凹部に埋め込まれる。上記の巻回方法によって、2本のワイヤ31、32は、巻回領域Aにおいて、14ターン目まで巻き付けられる。巻回領域Bにおいて、+1.0ターンでずれるターン前半の巻回領域において、第2のワイヤの15ターン目は、第1のワイヤ31の15ターン目と16ターン目との間の隙間に埋め込まれ、即ち、第2のワイヤ32のnターン目は、第1のワイヤ31のnターン目とn+1ターン目との間の隙間に埋め込まれる。巻回領域Bにおいて、-1.0ターンでずれるターン後半の巻回領域において、第2のワイヤ32の16ターン目は、第1のワイヤ31の15ターン目と16ターン目との間の隙間に埋め込まれ、即ち、第2のワイヤ32のnターン目は、第1のワイヤ31のn-1ターン目とnターン目との間の隙間に埋め込まれる。上記の巻回方法によって、2本のワイヤ31、32は、巻回領域Bにおいて、28ターン目まで巻き付けられる。本発明の上記実施例と同様に、巻回領域Aと巻回領域Bにおいて、第2のワイヤ32のnターン目内で、ターン前半に対応する傾斜静電容量とターン後半に対応する傾斜静電容量は、互いに相殺できる。このような巻線方法によって得られるコイル部材は、その2本のワイヤ31、32間の各ターン内で、傾斜静電容量は同様に、最大限に互いに相殺し、より安定したモード変換特性及びノイズ低減性能が実現される。
【0048】
注意すべきなのは、本発明の実施例では、巻回領域Aにおいて、2本のワイヤ31、32の総ターン数は同じであり、巻回領域Bにおいて、2本のワイヤ31、32の総ターン数は同じであるが、巻回領域Aと巻回領域Bとにおいて配置された第1のワイヤ31のターン数が等しくなく、巻回領域Aと巻回領域Bとにおいて配置された第2のワイヤ32のターン数が等しくない形態も、本発明の範囲に属する。
【0049】
図18を参照し、本発明の第11実施例に係る二層巻き層の巻回領域と単層巻き層の巻回領域が同時に存在するコイル部材について説明する。2本のワイヤ31、32は、巻線中心部11の周りに巻き付けられ、巻芯部1の軸線方向において、巻回領域Aと巻回領域Bとに分けられている。巻回領域Aは二層巻き層の巻回方法を採用している。巻回領域Bは単層巻き層の巻回方法を採用している。巻芯部1の軸線に垂直な方向において、同様に前半の巻回領域と後半の巻回領域とに分けられる。巻回領域Aにおいて、+0.5ターンでずれるターン前半の巻回領域において、第2のワイヤ32の1ターン目は、第1のワイヤ31の1ターン目と2ターン目との間の凹部に埋め込まれ、即ち、第2のワイヤ32のnターン目は、第1のワイヤ31のnターン目とn+1ターン目との間の凹部に埋め込まれる。巻回領域Aにおいて、-0.5ターンでずれるターン後半の巻回領域において、第2のワイヤ32の2ターン目は、第1のワイヤ31の1ターン目と2ターン目との間の凹部に埋め込まれ、即ち、第2のワイヤ32のnターン目は、第1のワイヤ31のn-1ターン目とnターン目との間の凹部に埋め込まれる。上記の巻回方法によって、2本のワイヤ31、32は、巻回領域Aにおいて、14ターン目まで巻き付けられる。巻回領域Bにおいて、-1.0ターンでずれるターン前半の巻回領域において、第2のワイヤの16ターン目は、第1のワイヤ31の15ターン目と16ターン目との間の隙間に埋め込まれ、即ち、第2のワイヤ32のnターン目は、第1のワイヤ31のn-1ターン目とnターン目との間の隙間に埋め込まれる。巻回領域Bにおいて、+1.0ターンでずれるターン後半の巻回領域において、第2のワイヤ32の15ターン目は、第1のワイヤ31の15ターン目と16ターン目との間の隙間に埋め込まれ、即ち、第2のワイヤ32のnターン目は、第1のワイヤ31のnターン目とn+1ターン目との間の隙間に埋め込まれる。上記の巻回方法によって、2本のワイヤ31、32は、巻回領域Bにおいて、28ターン目まで巻き付けられる。本発明の上記実施例と同様に、巻回領域Aと巻回領域Bにおいて、第2のワイヤ32のnターン目内で、ターン前半に対応する傾斜静電容量とターン後半に対応する傾斜静電容量は、互いに相殺できる。このような巻線方法によって得られるコイル部材は、その2本のワイヤ31、32間の各ターン内で、傾斜静電容量は同様に、最大限に互いに相殺し、より安定したモード変換特性及びノイズ低減性能を実現する。
【0050】
注意すべきなのは、本発明の実施例では、巻回領域Aにおいて、2本のワイヤ31、32の総ターン数は同じであり、巻回領域Bにおいて、2本のワイヤ31、32の総ターン数は同じであるが、巻回領域Aと巻回領域Bとにおいて配置された第1のワイヤ31のターン数が等しくなく、巻回領域Aと巻回領域Bとにおいて配置された第2のワイヤ32のターン数が等しくない形態も、本発明の範囲に属する。
【0051】
図19を参照し、本発明の第12実施例に係る二層巻き層の巻回領域と単層巻き層の巻回領域が同時に存在するコイル部材について説明する。2本のワイヤ31、32は、巻線中心部11の周りに巻き付けられる。巻芯部1の軸線方向において、巻回領域Aと巻回領域Bとに分けられている。巻回領域Aは二層巻き層の巻回方法を採用している。巻回領域Bは単層巻き層の巻回方法を採用している。巻芯部1の軸線に垂直な方向において、同様に前半の巻回領域と後半の巻回領域とに分けられる。巻回領域Aにおいて、+0.5ターンでずれるターン前半の巻回領域において、第2のワイヤ32の1ターン目は、第1のワイヤ31の1ターン目と2ターン目との間の凹部に埋め込まれ、即ち、第2のワイヤ32のnターン目は、第1のワイヤ31のnターン目とn+1ターン目との間の凹部に埋め込まれる。巻回領域Aにおいて、-0.5ターンでずれるターン後半の巻回領域において、第2のワイヤ32の2ターン目は、第1のワイヤ31の1ターン目と2ターン目との間の凹部に埋め込まれ、即ち、第2のワイヤ32のnターン目は、第1のワイヤ31のn-1ターン目とnターン目との間の凹部に埋め込まれる。上記の巻回方法によって、2本のワイヤ31、32は、巻回領域Aにおいて、14ターン目まで巻き付けられる。巻回領域Bにおいて、+1.0でずれるターン前半の巻回領域において、第2のワイヤの15ターン目は、第1のワイヤ31の15ターン目と16ターン目との間の隙間に埋め込ま
れ、即ち、第2のワイヤ32のnターン目は、第1のワイヤ31のnターン目とn+1ターン目との間の隙間に埋め込まれる。巻回領域Bにおいて、-1.0ターンでずれるターン後半の巻回領域において、第2のワイヤ32の16ターン目は、第1のワイヤ31の15ターン目と16ターン目との間の隙間に埋め込まれ、即ち、第2のワイヤ32のnターン目は、第1のワイヤ31のn-1ターン目とnターン目との間の隙間に埋め込まれる。上記の巻回方法によって、2本のワイヤ31、32は、巻回領域Bにおいて、28ターン目まで巻き付けられる。本発明の上記実施例と同様に、巻回領域Aと巻回領域Bにおいて、第2のワイヤ32のnターン目内で、ターン前半に対応する傾斜静電容量とターン後半に対応する傾斜静電容量は、互いに相殺できる。このような巻線方法によって得られるコイル部材は、その2本のワイヤ31、32間の各ターン内で、傾斜静電容量は同様に、最大限に互いに相殺し、より安定したモード変換特性及びノイズ低減性能を実現する。
【0052】
注意すべきなのは、本発明の実施例では、巻回領域Aにおいて、2本のワイヤ31、32の総ターン数は同じであり、巻回領域Bにおいて、2本のワイヤ31、32の総ターン数は同じであるが、巻回領域Aと巻回領域Bとにおいて配置された第1のワイヤ31のターン数が等しくなく、巻回領域Aと巻回領域Bとにおいて配置された第2のワイヤ32のターン数が等しくない形態も、本発明の範囲に属する。
【0053】
図20を参照し、本発明の第13実施例に係る二層巻き層の巻回領域と単層巻き層の巻回領域が同時に存在するコイル部材について説明する。2本のワイヤ31、32は、巻線中心部11の周りに巻き付けられる。巻芯部1の軸線方向において、巻回領域Aと、巻回領域Bと、巻回領域Cとの三つの巻回領域に分けられている。巻回領域Aと巻回領域Cは二層巻き層の巻回方法を採用している。巻回領域Bは単層巻き層の巻回方法を採用している。巻芯部1の軸線に垂直な方向において、同様に前半の巻回領域と後半の巻回領域とに分けられる。本発明の第13の実施例では、2本のワイヤ31、32間の各ターン内で、傾斜静電容量は同様に、最大限に互いに相殺でき、より安定したモード変換特性及びノイズ低減性能を実現する。
【0054】
本発明の第9~13実施例に係るコイル部材によれば、多段の巻回領域の組み合わせを有するその他のコイル部材をさらに派生することができる。例えば、巻回領域の数は三段以上であってもよい。これらの形態は、いずれも本発明の範囲に属する。
【0055】
以下、実験に基づいて本発明を説明する。
【0056】
図21に示すコイル部材を比較例として、図2に示す第1実施例に係るコイル部材と比較する。比較例と第1実施例との違いは、以下を含む。上述したように、第1実施例は、ターン前半の巻回領域と、ターン後半の巻回領域とを含み、ターン前半の巻回領域は、+0.5ターンでずれる半ターン巻回領域であり、ターン後半の巻回領域は、-0.5ターンでずれる半ターン巻回領域である。それに対して、比較例では、ターン前半とターン後半を区別せず、巻回領域全体の第1のワイヤと第2のワイヤとは、+0.5ターンでずれる。実験では、比較例と第1実施例のコイル部材に0.1MHzから1000MHzまでの同じ周波数の信号を入力し、測定機器により信号損失を測定する。図22では、破線は比較例の実験結果を表し、実線は第1実施例の実験結果を表す。実験結果から分かるように、10MHzから1000MHzまでの範囲で、第1実施例の信号損失は、比較例によりも明らかに低く、即ち、第1実施例のモード変換特性Scd21は、より低い。その中、第1実施例の信号損失は、-70dBから-35dBまでである。特に、10MHzから200MHzまでの範囲では、第1実施例の信号損失は、比較例によりも低いことはより明確になる。これは、第1実施例の2本のワイヤの同一ターン内の傾斜静電容量が効果的に相殺でき、コイル部材内の傾斜静電容量のアンバランスが最大限に低減されたからである。
【0057】
図23に示すコイル部材を第2比較例として、図2に示す第1実施例に係るコイル部材と比較する。第2比較例と第1実施例との違いは、以下を含む。上述したように、第1実施例は、ターン前半の巻回領域と、ターン後半の巻回領域とを含み、ターン前半の巻回領域は、+0.5ターンでずれる半ターン巻回領域であり、ターン後半の巻回領域は、-0.5ターンでずれる半ターン巻回領域である。第2比較例は、四つの巻回領域(巻回領域A、B、C、D)を含み、巻回領域Aは、-0.5ターンでずれる領域であり、巻回領域Bは、+1.5ターンでずれる領域であり、巻回領域Cは、-1.5ターンでずれる領域であり、巻回領域Dは、+0.5ターンでずれる領域である。巻回領域Aと巻回領域Bとの間に、ワイヤを転移させるための切替領域Eが存在し、巻回領域Bと巻回領域Cとの間に、ワイヤを転移させるための切替領域Fが存在し、巻回領域Cと巻回領域Dとの間に、ワイヤを転移させるための切替領域Gが存在する。巻回領域Aと巻回領域Dの傾斜静電容量は、互いに相殺する。巻回領域Bと巻回領域Cの傾斜静電容量は、互いに相殺する。実験では、第2比較例と第1実施例のコイル部材に0.1MHzから1000MHzまでの同じ周波数の信号を入力し、測定機器により信号損失を測定する。図24では、破線は、第2比較例の実験結果を表し、実線は第1実施例の実験結果を表す。実験結果から分かるように、10MHzから600MHzまでの範囲では、第1実施例の信号損失は、第2比較例よりも明らかに低く即ち、第1実施例のモード変換特性Scd21は、より低い。その中、第1実施例の信号損失は-70dBから-40dBまでである。これは、第1実施例の2本のワイヤの同一ターン内の傾斜静電容量が効果的に相殺でき、コイル部材内の傾斜静電容量のアンバランスが最大限に低減されたからである。
【0058】
本発明のその他の実施例と、比較例及び第2比較例との比較結果は、上記とは一致するので、ここでは説明を省略している。
【0059】
しかしながら、本発明の実施形態は、上述した実施の形態に限定されるものではない。上述した構成は、図示される実施の形態に含まれる構成であり、ターン方向が逆である構成は、本質的には同じ構成と言えるので、関連図示を省略する。
【0060】
以上、具体的な/好ましい実施形態に基づいて本発明をより詳細に説明したが、本発明の具体的な実施形態はこれらの説明に限定されるものではない。当業者にとって、本発明の概念から逸脱することなく、以上で説明された実施形態に対して、いくつかの置換又は変更を行うことが可能であり、これらの置換又は変更は、本発明の範囲に属する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
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図19
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図21
図22
図23
図24