(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-28
(45)【発行日】2022-02-07
(54)【発明の名称】ムスカリン性アセチルコリンレセプターM4のポジティブアロステリック調節因子
(51)【国際特許分類】
C07D 237/28 20060101AFI20220131BHJP
A61K 31/502 20060101ALI20220131BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20220131BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220131BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20220131BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20220131BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20220131BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20220131BHJP
A61P 25/20 20060101ALI20220131BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20220131BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20220131BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20220131BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220131BHJP
C07D 401/14 20060101ALI20220131BHJP
C07D 403/12 20060101ALI20220131BHJP
C07D 403/14 20060101ALI20220131BHJP
【FI】
C07D237/28 CSP
A61K31/502
A61K31/506
A61P25/00
A61P25/04
A61P25/14
A61P25/16
A61P25/18
A61P25/20
A61P25/22
A61P25/24
A61P25/28
A61P43/00 111
C07D401/14
C07D403/12
C07D403/14
(21)【出願番号】P 2019532081
(86)(22)【出願日】2017-12-15
(86)【国際出願番号】 US2017066608
(87)【国際公開番号】W WO2018112312
(87)【国際公開日】2018-06-21
【審査請求日】2020-12-09
(32)【優先日】2016-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502073245
【氏名又は名称】ヴァンダービルト ユニヴァーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100141195
【氏名又は名称】西澤 恵美子
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】リンズレイ,クレッグ,ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】コーン,ピー.,ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】エンジャーズ,ダレン,ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】エンジャーズ,ジュリー,エル.
(72)【発明者】
【氏名】ロング,マデリーン,エフ.
【審査官】谷尾 忍
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0209236(US,A1)
【文献】国際公開第2016/100184(WO,A1)
【文献】Jan JAKUBIK et al.,Allosteric Modulation of Muscarinic Acetylcholine Receptors,PHARMACEUTICALS,2010年08月30日,vol.3, no.9,p.2838-2860
【文献】MANETTI,D. et al.,New quinoline derivatives as nicotinic receptor modulators,European Journal of Medicinal Chemistry,2016年01月19日,Vol.110,p.246-258
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 215/16
C07D 401/12
C07D 401/14
C07D 237/28
A61K 31/4709
A61K 31/47
A61K 31/502
A61K 31/506
C07D 403/12
C07D 403/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化18】
(式中、
Xは、Nであり、
R
2は、C
1~C
4-アルキル、水素、C
1~C
4-ハロアルキル、ハロおよび-OR
aから選択され、
R
3
は、水素
であり、
R
4
は、C
3
~C
6
シクロアルキル、-(CR
b
R
c
)
n
-Y、またはフェニルもしくは1個もしくは2個の窒素原子を有する5~6員のヘテロアリールで置換されたアゼチジニルであり(ここで、前記C
3
~C
6
シクロアルキルは、非置換であるか、またはC
1
~C
4
アルキル、C
3
~C
6
シクロアルキル、C
1
~C
4
ハロアルキル、C
1
~C
4
アルコキシ、C
1
~C
4
ハロアルコキシ、ハロおよびシアノからなる群から独立して選択される1個もしくは2個の置換基で置換されており、かつ、前記フェニルまたは5~6員のヘテロアリールは、C
1
~C
4
アルキル、C
3
~C
6
シクロアルキル、C
1
~C
4
ハロアルキル、C
1
~C
4
アルコキシ、C
1
~C
4
ハロアルコキシ、ハロおよびシアノからなる群から独立して選択される1個または2個の置換基で置換されている)、
Yは、
フェニルおよびピリジルから選択され、
これらはそれぞれ、独立して、非置換であるか、またはハロ、C
1
~C
4
アルコキシおよびC
1
~C
4
ヒドロキシアルキルから独立して選択される1個もしくは2個の置換基で置換されている、
nは、1
であり、
各R
aは、独立して、水素、C
1~C
4-アルキル、C
1~C
4-ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルおよび複素環から選択され、
および
R
bおよびR
cは、それぞ
れ水素
である)
の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
R
2は、水素である、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
前記化合物は、式(Ib):
【化20】
の化合物
である、請求項1に記載の化合物
またはその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
R
4は、
シクロプロピル、シクロブチルおよびシクロペンチルから選択され、これらはそれぞれ、非置換であってもよく、またはハロである1個の置換基で置換されていてもよい、
請求項
1~3のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
R
4は、フェニル基、ピリジニル基、ピリミジニル基またはピラジニル基で置換されているアゼチジニルであり、
前記フェニル基、ピリジニル基、ピリミジニル基またはピラジニル基は、メチル、シクロプロピル、トリフルオロメチル、メトキシ、イソプロポキシ、ジフルオロメトキシ、フルオロ、クロロ、ブロモおよびシアノからなる群から独立して選択される1個または2個の置換基で置換されている、
請求項
1~3のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
化合物が、
N-[1-(5-クロロ-2-メトキシ-4-ピリジル)アゼチジン-3-イル]-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;
N-[(3-フルオロ-4-メトキシ-フェニル)メチル]-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;
N-[[4-(1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)フェニル]メチル]-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;
3,4-ジメチル-N-[1-[5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イル]アゼチジン-3-イル]シンノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-(3,4-ジフルオロフェニル)アゼチジン-3-イル]-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-(5-フルオロピリミジン-2-イル)アゼチジン-3-イル]-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-(5-イソプロポキシピリミジン-2-イル)アゼチジン-3-イル]-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;
3,4-ジメチル-N-[1-[5-(トリフルオロメチル)ピラジン-2-イル]アゼチジン-3-イル]シンノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-(5-シクロプロピルピラジン-2-イル)アゼチジン-3-イル]-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-(5-クロロ-2-ピリジル)アゼチジン-3-イル]-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-(5-フルオロ-2-ピリジル)アゼチジン-3-イル]-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-(5-シアノ-2-ピリジル)アゼチジン-3-イル]-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-ピリジル)アゼチジン-3-イル]-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-(3-クロロ-5-シクロプロピル-2-ピリジル)アゼチジン-3-イル]-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-[3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)-2-ピリジル]アゼチジン-3-イル]-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-(3-クロロ-5-シアノ-2-ピリジル)アゼチジン-3-イル]-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-(2,5-ジクロロ-4-ピリジル)アゼチジン-3-イル]-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-[6-(ジフルオロメトキシ)-3-ピリジル]アゼチジン-3-イル]-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-(6-クロロ-2-ピリジル)アゼチジン-3-イル]-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-(6-フルオロ-2-ピリジル)アゼチジン-3-イル]-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-(3-フルオロ-2-ピリジル)アゼチジン-3-イル]-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-(3-クロロ-2-ピリジル)アゼチジン-3-イル]-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-(5-クロロ-3-フルオロ-2-ピリジル)アゼチジン-3-イル]-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;
3,4-ジメチル-N-[1-[2-(トリフルオロメチル)-4-ピリジル]アゼチジン-3-イル]シンノリン-6-カルボキサミド;
3,4-ジメチル-N-[1-[6-(トリフルオロメチル)-2-ピリジル]アゼチジン-3-イル]シンノリン-6-カルボキサミド;
N-シクロプロピル-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;
N-(3-フルオロシクロブチル)-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;および
N-シクロペンチル-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド、
からなる群から選択される
化合物である、
請求項1に記載の化合物
またはその薬学的に許容される塩。
【請求項7】
治療上有効な量の請求項1~
6のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項8】
請求項1~
6のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む、医薬組成物。
【請求項9】
請求項1~
6のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む、アルツハイマー病、統合失調症、睡眠障害、疼痛性障害および認知障害から選択される障害を処置するための、医薬組成物。
【請求項10】
請求項1~
6のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む、精神病、統合失調症、行動障害、破壊的行動障害、双極性障害、不安の精神病エピソード、精神病と関連する不安、精神病性気分障害、例えば重度の大鬱病性障害;精神病性障害と関連する気分障害、急性躁病、双極性障害と関連する鬱病、統合失調症と関連する気分障害、精神遅滞の行動的発現、自閉症性障害、運動障害、トゥレット症候群、無動性硬直症候群、パーキンソン病と関連する運動障害、遅発性ジスキネジア、薬物誘発性および神経変性ベースのジスキネジア、注意欠陥多動障害、認知障害、認知症および記憶障害から選択される障害を処置するための、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年12月16日に出願された米国特許出願第62/435,426号に対する優先権の利益を主張し、この明細書の内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
政府の権利の陳述
本発明は、National Institutes of Healthにより付与された助成金番号1U19MH106839-01の下で政府支援によってなされた。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0003】
本開示は、ムスカリン性アセチルコリンレセプターの機能障害と関連する神経障害および精神障害を処置するための化合物、組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0004】
コリン作動性神経伝達は、内在性のオルソステリックアゴニストアセチルコリン(ACh)の結合によるニコチン性アセチルコリンレセプター(nAChR)またはムルカリン性アセチルコリンレセプター(mAChR)の活性化を含む。アルツハイマー病等の認知機能障害と関連する状態は、脳内でのアセチルコリン含有量の減少を伴う。これは、基底前脳のコリン作動性ニューロンの変性の結果であると考えられており、このコリン作動性ニューロンは、より高次のプロセスに決定的に関与する脳の複数の領域(例えば、連合皮質(association cortices)および海馬)を広く神経支配する。臨床データは、統合失調症に罹患している患者の認知障害の一因がコリン作動性機能低下であることを支持する。アセチルコリンレベルを上昇させようとする努力は、アセチルコリン合成の前駆体であるコリンのレベルの上昇と、アセチルコリンを代謝する酵素であるアセチルコリンエステラーゼ(AChE)の阻害とに焦点を当てている。その結果、AD患者における認知障害の緩和的ではあるが疾患修飾ではない処置での使用のために、AChの加水分解を阻害するアセチルコリンエステラーゼ(AChE)阻害剤が米国で承認されている。
【0005】
コリンまたはホスファチジルコリンの投与により、中枢コリン作動性機能を増大させようとする試みは成功していない。AChE阻害剤は、治療効果を示しているが、末梢アセチルコリン刺激に起因する頻繁なコリン作動性副作用(例えば、腹部疝痛、吐き気、嘔吐および下痢)を有することが分かっている。これらの胃腸の副作用は、処置された患者の約3分の1で観察されている。加えて、タクリン等の一部のAChE阻害剤は、約30%の患者で観察された、肝トランスアミナーゼの上昇による顕著な肝毒性を引き起こすことも分かっている。AChE阻害剤のこの副作用は、このAChE阻害剤の臨床的有用性を著しく制限している。コリン作動性機能低下を薬理学的に標的とする別のアプローチは、全身で広く発現されるmAChRの活性化である。
【0006】
mAChRは、クラスAのGタンパク質共役レセプター(GPCR)のメンバーであり、M1~M5と命名された5つのサブタイプを含む。M1サブタイプ、M3サブタイプおよびM5サブタイプは、主にGqに共役し、ホスホリパーゼCを活性化させるが、M2サブタイプおよびM4サブタイプは、主にGi/oおよび関連するエフェクター系に共役する。これらの5つの異なるmAChRサブタイプは、哺乳動物の中枢神経系で同定されており、この中枢神経系では、これらのサブタイプがよく見られかつ差次的に発現される。M1~M5は、認知機能、感覚機能、運動機能および自律機能において様々な役割を有する。そのため、特定の理論に拘束されることを望まないが、認知機能に関与するプロセスを調節するmAChRサブタイプの選択的アゴニストは、精神病、統合失調症および関連する障害の処置のための優れた治療薬であることが判明し得ると考えられている。ムスカリン性M4レセプターは、認知プロセシングにおいて主要な役割を有することが分かっており、統合失調症等の精神病性障害の病態生理において主要な役割を有すると考えられている。
【0007】
AChE阻害剤および他のコリン作動薬の最も顕著な副作用は、末梢M2およびM3 mAChRの活性化により媒介され、かつ徐脈、GI窮迫、過剰な唾液分泌および発汗を含むことがエビデンスにより示唆される。対照的に、M4は、統合失調症、認知障害および神経障害性疼痛等の精神病性障害におけるムスカリン性アセチルコリンレセプターの機能障害の影響を媒介する可能性が最も高いサブタイプと見なされている。このため、これらの障害の処置のための選択的M4アゴニストの開発に相当な努力が集中している。残念ながら、この努力は、mAChR M4に対して高度に選択的である化合物を開発できないためにほとんど失敗している。このため、臨床研究で試験されているmAChRアゴニストは、末梢mAChRの活性化により一連の副作用を誘発する。個々のmAChRサブタイプの生理学的役割を十分に理解し、かつ統合失調症、認知障害および他の障害等の精神病におけるmAChRリガンドの治療有効性をさらに探求するために、mAChR M4および他の個々のmAChRサブタイプの高度に選択的な活性化剤である化合物を開発することが重要であり得る。
【0008】
オルソステリックACh結合部位の高度の保存のために、個々のmAChRサブタイプに対して高度に選択的であるアゴニストを発見および開発しようとするこれまでの試みは失敗している。オルソステリック部位から除去され、かつあまり高度に保存されていないmAChR上のアロステリック部位で作用する化合物を開発することにより、高度に保存されたオルソステリックACh結合部位の標的化と関連する問題を回避し得ると考えられている。このアプローチは、複数のGPCRサブタイプのための選択的リガンドの開発で非常に成功していることを示している。mAChRの場合、主要な目標は、mAChR M4または他のmAChRサブタイプの活性を選択的に増加させるアロステリックリガンドを開発することである。アロステリック活性化剤として、AChの非存在下でレセプターを直接活性化させるためにオルソステリック部位から除去された部位で作用するアロステリックアゴニスト、ならびにレセプターを直接的に活性化しないが、内在性のオルソステリックアゴニストAChによるレセプターの活性化を増強するポジティブアロステリック調節因子(PAM)が挙げられ得る。また、単一の分子がアロステリック増強剤およびアロステリックアゴニスト活性の両方を有することも可能である。
【0009】
より近年では、キサノメリン等のムスカリン性アゴニストは、既知の統合失調症治療薬と類似のプロファイルを有するが、カタレプシーを引き起こさない動物モデルにおいて活性であることが分かっている(Bymaster et al.,Eur.J.Pharmacol.1998,356,109、Bymaster et al.,Life Sci.1999,64,527;Shannon et al.,J.Pharmacol.Exp.Ther.1999,290,901;Shannon et al.,Schizophrenia Res.2000,42,249)。さらに、キサノメリンは、アルツハイマー病患者における妄想、不信感、発声的爆発(vocal outburst)および幻覚等の精神病性の行動症状を軽減することが分かった(Bodick et al.,Arch.Neurol.1997,54,465)が、処置により誘発される副作用(例えば、胃腸の作用)は、この化合物の臨床的有用性を著しく制限している。
【0010】
ムスカリン性アセチルコリンレセプター研究の進歩にもかかわらず、M4 mAChRの強力であり、効果的でありかつ選択的な活性化剤であり、コリン作動性活性と関連する神経障害および精神障害ならびにムスカリン性M4レセプターが関与する疾患の処置でも有効である化合物の不足が依然として存在する。
【発明の概要】
【0011】
一態様では、開示されているのは、式(I)
【化1】
(式中、
Xは、NまたはCR
1であり、
R
1は、C
1~C
4-アルキル、C
1~C
4-ハロアルキル、ハロおよび-OR
aから選択され、
R
2は、C
1~C
4-アルキル、水素、C
1~C
4-ハロアルキル、ハロおよび-OR
aから選択され、
R
3およびR
4は、それぞれ独立して、それぞれ任意選択に置換され得る水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロアルキル、複素環および-(CR
bR
c)
n-Yから選択され、R
3およびR
4は、同時に水素ではなく、または
R
3およびR
4は、これらが付着している窒素原子と一緒に、任意選択に置換されている複素環を形成しており、
Yは、それぞれ任意選択に置換され得るハロ、-OR、-SR、-C(O)R、-C(O)OR、-S(O)R、-SO
2R、-NR
2、-C(O)NR
2、-S(O)
2NR
2、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルおよび複素環から選択され、
nは、1、2、3、4、5、6、7または8であり、
各R
aは、独立して、水素、C
1~C
4-アルキル、C
1~C
4-ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルおよび複素環から選択され、
R
bおよびR
cは、それぞれ独立して、水素、C
1~C
4-アルキル、C
1~C
4-ハロアルキルおよびハロからなる群から選択され、
各Rは、独立して、それぞれ任意選択に置換され得る水素、アルキル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、複素環、ヘテロシクロアルキル(heterocyclealkyl)、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルおよびヘテロアルキルからなる群から選択される)
の化合物またはその薬学的に許容される塩である。
【0012】
また、開示されているのは、この化合物を含む医薬組成物、この化合物を製造する方法、この化合物を含むキット、ならびにこの化合物を使用する方法、哺乳動物におけるムスカリン性アセチルコリンレセプターの機能障害と関連する障害、例えば、神経障害および/または精神障害の処置のための組成物およびキットである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】オルソステリック部位およびアロステリック部位を含む、ムスカリン性アセチルコリンレセプター中のリガンド結合部位の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
詳細な説明
本明細書で開示されているのは、ムスカリン性アセチルコリンレセプターM4(mAChR M4)のポジティブアロステリック調節因子(即ち増強剤)、この調節因子を製造する方法、この調節因子を含む医薬組成物、ならびにこの調節因子を使用して、ムスカリン性アセチルコリンレセプターの機能障害と関連する精神学的障害および精神医学的障害を処置する方法である。この化合物として、2,4-ジメチルキノリン-6-カルボキサミド化合物および3,4-ジメチルシンノリン-6-カルボキサミド化合物が挙げられる。
【0015】
ヒトムスカリン性アセチルコリンレセプターM
4(mAChR M
4)は、CHRM4遺伝子によりコードされる479個のアミノ酸のタンパク質である。この非グリコシル化タンパク質の分子量は、約54kDaであり、この非グリコシル化タンパク質は、膜貫通GPCRである。上記で説明したように、mAChR M
4は、7個の膜貫通セグメント等のロドプシンに類似の構造的特徴を特徴とするGPCR クラスAファミリーまたはロドプシン様GPCRのメンバーである。このムスカリン性アセチルコリンレセプターは、膜の細胞外表面へと配向付けられたN末端と、細胞質表面上に位置するC末端とを有する。mAChR M
4の構造の概略図を
図1に示し、この
図1では、膜貫通セグメントを円筒形(細胞膜の脂質二重層に及ぶ)で示す。mAChRに対する天然のリガンドであるアセチルコリンに対するオルソステリック結合は、
図1に示す膜貫通セグメント中に位置するポケット内である。
【0016】
オルソステリックACh結合部位の高度の保存のために、個々のmAChRサブタイプに対して高度に選択的であるアゴニストを発見および開発しようとするこれまでの試みは失敗している。オルソステリック部位から除去され、かつあまり高度に保存されていないmAChR上のアロステリック部位で作用する化合物を開発することにより、高度に保存されたオルソステリックACh結合部位の標的化と関連する問題を回避し得ると考えられている。特定の理論に拘束されることを望まないが、本開示の化合物および本開示の方法の生成物は、オルソステリック結合部位と異なるアロステリック部位に結合すると考えられている。例えば、開示の化合物は、
図1に示す結合部位で結合し得る。
【0017】
1.定義
別途定義されない限り、本明細書で使用されている全ての技術用語および科学用語は、当業者に一般に理解されているのと同じ意味を有する。矛盾する場合、定義を含む本明細書が優先される。好ましい方法および材料が下記で説明されているが、本明細書で開示されているものと類似のまたは均等な方法および材料を本発明の実施または試験で使用し得る。本明細書で言及されている全ての刊行物、特許出願、特許および他の参考文献は、その全体が参照により組み込まれる。本明細書で開示されている材料、方法および例は、例示にすぎず、限定することを意図するものではない。
【0018】
用語「含む」、「包含する」、「有している」、「有する」、「することができる」、「含有する」およびそれらの変形は、本明細書で使用される場合、追加の行為または構造の可能性を排除しないオープンエンド型の移行句、用語または単語であることを意図している。単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、別途文脈が明確に指示しない限り複数の参照を含む。本開示は、明示的に示されているか否かにかかわらず、本明細書で示された実施形態または構成要素「を含む」、「からなる」および「から本質的になる」他の実施形態も企図する。
【0019】
ある量に関連して使用される修飾語句「約」は、言及された値を含みかつ文脈により指示される意味を有する(例えば、特定の量の測定と関連する誤差の程度を少なくとも含む)。修飾語句「約」は、2個の端点の絶対値により定義される範囲を開示するとも見なされるべきである。例えば、語句「約2~約4」は、範囲「2~4」も開示する。用語「約」は、示された数のプラスマイナス10%を指す場合もある。例えば、「約10%」は、9%~11%の範囲を示す場合もあり、「約1」は、0.9~1.1を意味する場合もある。「約」の他の意味は、四捨五入等の文脈から明らかな場合もあり、そのため、例えば「約1」は、0.5~1.4を意味する場合もある。
【0020】
特定の官能基および化学用語の定義を下記でより詳細に説明する。本開示の目的のために、化学元素は、Periodic Table of the Elements,CAS version,Handbook of Chemistry and Physics,75th Ed.,inside coverに従って同定されており、特定の官能基は、この参考文献で説明されているように一般的に定義される。加えて、有機化学の一般的原理ならびに特定の官能部分および反応性は、Organic Chemistry,Thomas Sorrell,University Science Books,Sausalito,1999;Smith and March March’s Advanced Organic Chemistry,5th Edition,John Wiley&Sons,Inc.,New York,2001;Larock,Comprehensive Organic Transformations,VCH Publishers,Inc.,New York,1989;Carruthers,Some Modern Methods of Organic Synthesis,3rd Edition,Cambridge University Press,Cambridge,1987で説明されており、これらのそれぞれの内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0021】
用語「アルコキシ」は、本明細書で使用される場合、酸素原子を介して親分子部分に付加される、本明細書で定義されたアルキル基を指す。アルコキシの代表例として、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、2-プロポキシ、ブトキシおよびtert-ブトキシが挙げられるがvこれらに限定されない。
【0022】
用語「アルキル」は、本明細書で使用される場合、1~10個の炭素原子を含む直鎖または分枝鎖の飽和炭化水素鎖を意味する。用語「低級アルキル」または「C1~C6-アルキル」は、1~6個の炭素原子を含む直鎖または分枝鎖の炭化水素を意味する。用語「C1~C3-アルキル」は、1~3個の炭素原子を含む直鎖または分枝鎖の炭化水素を意味する。アルキルの代表例として、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、3-メチルヘキシル、2,2-ジメチルペンチル、2,3-ジメチルペンチル、4,4-ジメチルペンタン-2-イル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニルおよびn-デシルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
用語「アルケニル」は、本明細書で使用される場合、少なくとも1個の炭素-炭素二重結合と1~10個の炭素原子とを含む直鎖のまたは分枝した炭化水素鎖を意味する。
【0024】
用語「アルコキシアルキル」は、本明細書で使用される場合、本明細書で定義されたアルキル基を介して親分子部分に付加される、本明細書で定義されたアルコキシ基を指す。
【0025】
用語「アルコキシフルオロアルキル」は、本明細書で使用される場合、本明細書で定義されたフルオロアルキル基を介して親分子部分に付加される、本明細書で定義されたアルコキシ基を指す。
【0026】
用語「アルキレン」は、本明細書で使用される場合、1~10個の炭素原子(例えば、2~5個の炭素原子)の直鎖または分岐鎖の炭化水素に由来する二価の基を指す。アルキレンの代表例として、-CH2CH2-、-CH2CH2CH2-、-CH2CH(CH3)CH2-、-CH2CH2CH2CH2-、-CH2CH(CH3)CH2CH2-および-CH2CH2CH2CH2CH2-が挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
用語「アルキルアミノ」は、本明細書で使用される場合、本明細書で定義されたアミノ基を介して親分子部分に付加される、本明細書で定義された少なくとも1個のアルキル基を意味する。
【0028】
用語「アミド」は、本明細書で使用される場合、-C(O)NR-または-NRC(O)-を意味し、式中、Rは、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、複素環、アルケニルまたはヘテロアルキルであり得る。
【0029】
用語「アミノアルキル」は、本明細書で使用される場合、本明細書で定義されたアルキレン基を介して親分子部分に付加される、本明細書で定義された少なくとも1個のアミノ基を意味する。
【0030】
用語「アミノ」は、本明細書で使用される場合、-NRxRyを意味し、式中、RxおよびRyは、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、複素環、アルケニルまたはヘテロアルキルであり得る。アミノアルキル基の場合、またはアミノが2個の他の部分を互いに付加する任意の他の部分の場合、アミノは、-NRx-であり得、式中、Rxは、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、複素環、アルケニルまたはヘテロアルキルであり得る。
【0031】
用語「アリール」は、本明細書で使用される場合、フェニル基または二環式縮合環系を指す。二環式縮合環系は、親分子部分に付加され、かつ本明細書で定義されたシクロアルキル基、フェニル基、本明細書で定義されたヘテロアリール基または本明細書で定義された複素環に縮合したフェニル基で例示される。アリールの代表例として、インドリル、ナフチル、フェニルおよびテトラヒドロキノリニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
用語「シアノアルキル」は、本明細書で使用される場合、本明細書で定義されたアルキレン基を介して親分子部分に付加される少なくとも1個の-CN基を意味する。
【0033】
用語「シアノフルオロアルキル」は、本明細書で使用される場合、本明細書で定義されたフルオロアルキル基を介して親分子部分に付加される少なくとも1個の-CN基を意味する。
【0034】
用語「シアノアルコキシ」は、本明細書で使用される場合、酸素原子を介して親分子部分に付加される、本明細書で定義されたシアノアルキル基を指す。
【0035】
用語「シクロアルキル」は、本明細書で使用される場合、3~10個の炭素原子、0個のヘテロ原子および0個の二重結合を含む炭素環系を指す。シクロアルキルは、単環式であってもよく、二環式であってもよく、架橋されていてもよく、融合していてもよく、スピロ環式であってもよい。シクロアルキルの代表例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、アダマンチル、および二環式シクロアルキル(例えば、ビシクロ[1.1.1]ペンタニル)が挙げられるが、これらに限定されない。「シクロアルキル」は、シクロアルキル基が親分子部分に付加され、かつ本明細書で定義されたアリール基(例えば、フェニル基)、本明細書で定義されたヘテロアリール基または本明細書で定義された複素環に縮合している炭素環系も含む。そのようなシクロアルキル基の代表例として、2,3-ジヒドロ-1H-インデニル(例えば、2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イルおよび2,3-ジヒドロ-1H-インデン-2-イル)、6,7-ジヒドロ-5H-シクロペンタ[b]ピリジニル(例えば、6,7-ジヒドロ-5H-シクロペンタ[b]ピリジン-6-イル)、オキサスピロ[3.3]ヘプタニル(例えば、2-オキサスピロ[3.3]ヘプタン-6-イル)ならびに5,6,7,8-テトラヒドロキノリニル(例えば、5,6,7,8-テトラヒドロキノリン-5-イル)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
用語「シクロアルケニル」は、本明細書で使用される場合、少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を含み、かつ好ましくは1個の環当たり5~10個の炭素原子を有する非芳香族の単環式環系または多環式環系を意味する。例示的な単環式シクロアルケニル環として、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニルおよびビシクロ[2.2.1]ヘプテニル(例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-5-エン-2-イル)が挙げられる。
【0037】
用語「フルオロアルキル」は、本明細書で使用される場合、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個または8個の水素原子がフッ素に置き換えられている、本明細書で定義されたアルキル基を意味する。フルオロアルキルの代表例として、2-フルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、ペンタフルオロエチルおよびトリフルオロプロピル(例えば、3,3,3-トリフルオロプロピル)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
用語「フルオロアルコキシ」は、本明細書で使用される場合、酸素原子を介して親分子部分に付加される、本明細書で定義された少なくとも1個のフルオロアルキル基を意味する。フルオロアルコキシの代表例として、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシおよび2,2,2-トリフルオロエトキシが挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
用語「ハロゲン」または「ハロ」は、本明細書で使用される場合、Cl、Br、IまたはFを意味する。
【0040】
用語「ハロアルキル」は、本明細書で使用される場合、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個または8個の水素原子がハロゲンに置き換えられている、本明細書で定義されたアルキル基を意味する。
【0041】
用語「ハロアルコキシ」は、本明細書で使用される場合、酸素原子を介して親分子部分に付加される、本明細書で定義された少なくとも1個のハロアルキル基を意味する。
【0042】
用語「ハロシクロアルキル」は、本明細書で使用される場合、1個または複数の水素原子がハロゲンに置き換えられている、本明細書で定義されたシクロアルキル基を意味する。
【0043】
用語「ヘテロアルキル」は、本明細書で使用される場合、炭素原子の1個または複数が、S、O、PおよびNから独立して選択されるヘテロ原子に置き換えられている、本明細書で定義されたアルキル基を意味する。ヘテロアルキルの代表例として、アルキルエーテル、第二級および第三級のアルキルアミン、アミド、ならびにアルキルスルフィドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
用語「ヘテロアリール」は、本明細書で使用される場合、芳香族単環式環または芳香族二環式環系を指す。芳香族単環式環は、N、OおよびSからなる群から独立して選択される少なくとも1個のヘテロ原子(例えば、O、SおよびNから独立して選択される1個、2個、3個または4個のヘテロ原子)を含む5員または6員の環である。5員の芳香族単環式環は、2個の二重結合を有し、6員の6員芳香族単環式環は、3個の二重結合を有する。二環式ヘテロアリール基は、親分子部分に付加され、かつ本明細書で定義された単環式シクロアルキル基、本明細書で定義された単環式アリール基、本明細書で定義された単環式ヘテロアリール基または本明細書で定義された単環式複素環に縮合した単環式ヘテロアリール環で例示される。ヘテロアリールの代表例として下記が挙げられるが、これらに限定されない:インドリル、ピリジニル(例えば、ピリジン-2-イル、ピリジン-3-イル、ピリジン-4-イル)、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、ピラゾリル、ピロリル、ベンゾピラゾリル、1,2,3-トリアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、1,2,4-チアジアゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、1,2,4-オキサジアゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チエニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾキサゾリル、ベンゾキサジアゾリル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、フラニル、オキサゾリル、イソキサゾリル、プリニル、イソインドリル、キノキサリニル、インダゾリル、キナゾリニル、1,2,4-トリアジニル、1,3,5-トリアジニル、イソキノリニル、キノリニル、6,7-ジヒドロ-1,3-ベンゾチアゾリル、6,7-ジヒドロ-5H-シクロペンタ[b]ピリジニル、イミダゾ[1,2-a]ピリジニル、ナフチリジニル、ピリドイミダゾリル、チアゾロ[5,4-b]ピリジン-2-イル、チアゾロ[5,4-d]ピリミジン-2-イル。
【0045】
用語「複素環(heterocycle)」または「複素環(heterocyclic)」は、本明細書で使用される場合、単環式複素環、二環式複素環または三環式複素環を意味する。単環式複素環は、O、NおよびSからなる群から独立して選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む3員、4員、5員、6員、7員または8員の環である。3員環または4員環は、0個または1個の二重結合と、O、NおよびSからなる群から選択される1個のヘテロ原子とを含む。5員環は、0個または1個の二重結合と、O、NおよびSからなる群から独立して選択される1個、2個または3個のヘテロ原子とを含む。6員環は、0個、1個または2個の二重結合と、O、NおよびSからなる群から独立して選択される1個、2個または3個のヘテロ原子とを含む。7員環および8員環は、0個、1個、2個または3個の二重結合と、O、NおよびSからなる群から独立して選択される1個、2個または3個のヘテロ原子とを含む。単環式複素環の代表例として下記が挙げられるが、これらに限定されない:アゼチジニル、アゼパニル、アジリジニル、ジアゼパニル、1,3-ジオキサニル、1,3-ジオキソラニル、1,3-ジチオラニル、1,3-ジチアニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、イソチアゾリニル、イソチアゾリジニル、イソキサゾリニル、イソキサゾリジニル、モルホリニル、2-オキソ-3-ピペリジニル、2-オキソアゼパン-3-イル、オキサジアゾリニル、オキサジアゾリジニル、オキサゾリニル、オキサゾリジニル、オキセタニル、オキセパニル、オキソカニル(oxocanyl)、ピペラジニル、ピペリジニル、ピラニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、ピロリニル、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロピリジニル、テトラヒドロチエニル、チアジアゾリニル、チアジアゾリジニル、1,2-チアジナニル、1,3-チアジナニル、チアゾリニル、チアゾリジニル、チオモルホリニル、1,1-ジオキシドチオモルホリニル(dioxidothiomorpholinyl)(チオモルホリンスルホン)、チオピラニルおよびトリチアニル(trithianyl)。二環式複素環は、フェニル基に縮合した単環式複素環、または単環式シクロアルキルに縮合した単環式複素環、または単環式シクロアルケニルに縮合した単環式複素環、または単環式複素環に縮合した単環式複素環、またはスピロ複素環基、または架橋単環式複素環系であって、この環の2個の非隣接原子が1個、2個、3個もしくは4個の炭素原子のアルキレン架橋または2個、3個もしくは4個の炭素原子のアルケニレン架橋により連結されている、架橋単環式複素環系である。二環式複素環の代表例として下記が挙げられるが、これらに限定されない:ベンゾピラニル、ベンゾチオピラニル、クロマニル、2,3-ジヒドロベンゾフラニル、2,3-ジヒドロベンゾチエニル、2,3-ジヒドロイソキノリン、2-アザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル、2-オキサスピロ[3.3]ヘプタン-6-イル、2-オキサ-6-アザスピロ[3.3]ヘプタン-6-イル、アザビシクロ[2.2.1]ヘプチル(例えば、2-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-イル)、アザビシクロ[3.1.0]ヘキサニル(例えば、3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン-3-イル)、2,3-ジヒドロ-1H-インドリル、イソインドリニル、オクタヒドロシクロペンタ[c]ピロリル、オクタヒドロピロロピリジニルおよびテトラヒドロイソキノリニル。三環式複素環は、フェニル基に縮合した二環式複素環、または単環式シクロアルキルに縮合した二環式複素環、または単環式シクロアルケニルに縮合した二環式複素環、または単環式複素環に縮合した二環式複素環、または二環式複素環であって、この二環式環の2個の非隣接原子が1個、2個、3個もしくは4個の炭素原子のアルキレン架橋または2個、3個もしくは4個の炭素原子のアルケニレン架橋により連結されている、二環式複素環で例示される。三環式複素環の例として下記が挙げられるが、これらに限定されない:オクタヒドロ-2,5-エポキシペンタレン、ヘキサヒドロ-2H-2,5-メタノシクロペンタ[b]フラン、ヘキサヒドロ-1H-1,4-メタノシクロペンタ[c]フラン、アザ-アダマンタン(1-アザトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン)およびオキサ-アダマンタン(2-オキサトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン)。単環式複素環、二環式複素環および三環式複素環は、これらの環に含まれる任意の炭素原子または任意の窒素原子を介して親分子部分に接続され、かつ非置換であり得るかまたは置換され得る。
【0046】
用語「ヒドロキシル」または「ヒドロキシ」は、本明細書で使用される場合、-OH基を意味する。
【0047】
用語「ヒドロキシアルキル」は、本明細書で使用される場合、本明細書で定義されたアルキレン基を介して親分子部分に付加される少なくとも1個の-OH基を意味する。
【0048】
用語「ヒドロキシフルオロアルキル」は、本明細書で使用される場合、本明細書で定義されたフルオロアルキル基を介して親分子部分に付加される少なくとも1個の-OH基を意味する。
【0049】
場合により、ヒドロカルビル置換基(例えば、アルキルまたはシクロアルキル)中の炭素原子の数は、接頭辞「Cx~Cy-」で示され、ここで、xは、この置換基中の炭素原子の最小数であり、yは、この置換基中の炭素原子の最大数である。そのため、例えば「C1~C3-アルキル」は、1~3個の炭素原子を含むアルキル置換基を指す。
【0050】
用語「スルホンアミド」は、本明細書で使用される場合、-S(O)2NRd-または-NRdS(O)-を意味し、式中、Rdは、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、複素環、アルケニルまたはヘテロアルキルであり得る。
【0051】
用語「置換基」は、アリール基、ヘテロアリール基、フェニル基またはピリジニル基上の、この基の任意の原子で「置換されている」基を指す。任意の原子を置換し得る。
【0052】
用語「置換される」は、1個または複数の非水素置換基でさらに置換され得る基を指す。置換基として下記が挙げられるが、これらに限定されない:ハロゲン、=O(オキソ)、=S(チオキソ)、シアノ、イソシアノ、ニトロ、フルオロアルキル、アルコキシフルオロアルキル、フルオロアルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルコキシ、ヘテロアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、複素環、シクロアルキルアルキル、ヘテロアリールアルキル、アリールアルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルキレン、アリールオキシ、フェノキシ、ベンジルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、アシルアミノ、アミノアルキル、アリールアミノ、スルホニルアミノ、スルフィニルアミノ、スルファニル、スルホニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アミノスルホニル、スルフィニル、-COOH、ケトン、アミド、カルバメートおよびアシル。例えば、ある基(例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロアルキル、複素環またはR基等の他の基)が「任意選択に置換されている」と説明されている場合、この基は、下記から独立して選択される0個、1個、2個、3個、4個または5個の置換基を有し得る:ハロゲン、=O(オキソ)、=S(チオキソ)、シアノ、ニトロ、フルオロアルキル、アルコキシフルオロアルキル、フルオロアルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルコキシ、ヘテロアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、複素環、シクロアルキルアルキル、ヘテロアリールアルキル、アリールアルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルキレン、アリールオキシ、フェノキシ、ベンジルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、アシルアミノ、アミノアルキル、アリールアミノ、スルホニルアミノ、スルフィニルアミノ、スルホニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アミノスルホニル、スルフィニル、-COOH、ケトン、アミド、カルバメートおよびアシル。
【0053】
用語
【化2】
は、単結合(-)または二重結合(=)を指定する。
【0054】
本明細書で説明されている化合物に関して、その基および置換基は、原子および置換基の許容される原子価に従って選択され得、その結果、選択および置換により、例えば転位、環化、脱離等による変換を自発的に受けない安定した化合物が生じる。
【0055】
用語「アロステリック部位」は、本明細書で使用される場合、オルソステリック結合部位と組織分布的に異なるリガンド結合部位を指す。
【0056】
用語「調節因子」は、本明細書で使用される場合、標的レセプタータンパク質の活性を調節する分子実体(例えば、限定されないが、リガンドおよび開示の化合物)を指す。
【0057】
用語「リガンド」は、本明細書で使用される場合、レセプターに会合または結合して複合体を形成し、生物学的効果を媒介、予防または変更し得る天然または合成の分子実体を指す。そのため、用語「リガンド」は、アロステリック調節因子、阻害剤、活性化剤、アゴニスト、アンタゴニスト、天然基質および天然基質の類似体を包含する。
【0058】
用語「天然リガンド」および「内在性リガンド」は、本明細書で使用される場合、互換的に使用され、かつレセプターに結合する、自然界で見出される天然に存在するリガンドを指す。
【0059】
用語「オルソステリック部位」は、本明細書で使用される場合、レセプター上の主要結合部位であって、そのレセプターの内在性リガンドまたはアゴニストにより認識される主要結合部位を指す。例えば、mAChR M4レセプター中のオルソステリック部位は、アセチルコリンが結合する部位である。
【0060】
用語「mAChR M4レセプターポジティブアロステリック調節因子」は、本明細書で使用される場合、動物(特に哺乳動物(例えば、ヒト))においてアセチルコリンまたは別のアゴニストの存在下または非存在下でmAChR M4レセプターの活性を直接的または間接的に増強する任意の体外から投与される化合物または薬剤を指す。例えば、mAChR M4レセプターポジティブアロステリック調節因子は、細胞外アセチルコリンの存在下で細胞中のmAChR M4レセプターの活性を増加させ得る。この細胞は、ヒトmAChR M4でトランスフェクトされたチャイニーズハムスター卵巣(CHO-K1)細胞であり得る。この細胞は、ラットmAChR M4レセプターでトランスフェクトされたチャイニーズハムスター卵巣(CHO-K1)細胞であり得る。この細胞は、哺乳動物mAChR M4でトランスフェクトされたチャイニーズハムスター卵巣(CHO-K1)細胞であり得る。用語「mAChR M4レセプターポジティブアロステリック調節因子」は、「mAChR M4レセプターアロステリック増強剤」または「mAChR M4レセプターアロステリックアゴニスト」である化合物、ならびに「mAChR M4レセプターアロステリック増強剤」および「mAChR M4レセプターアロステリックアゴニスト」の両方の薬理を含む混合活性を有する化合物を含む。用語「mAChR M4レセプターポジティブアロステリック調節因子」は、「mAChR M4レセプターポジティブアロステリックエンハンサー」である化合物も含む。
【0061】
用語「mAChR M4レセプターアロステリック増強剤」は、本明細書で使用される場合、動物(特に哺乳動物(例えば、ヒト))において内在性リガンドがmAChR M4レセプターのオルソステリック部位に結合する際にこの内在性リガンド(例えば、アセチルコリン)により生じる応答を直接的または間接的に増強する任意の体外から投与される化合物または薬剤を指す。mAChR M4レセプターアロステリック増強剤は、オルソステリック部位以外の部位(即ちアロステリック部位)に結合し、アゴニストまたは内在性リガンドに対するレセプターの応答を積極的に増強する。一部の実施形態では、アロステリック増強剤は、レセプターの脱感作を誘導せず、mAChR M4レセプターアロステリック増強剤としての化合物の活性は、純粋なmAChR M4レセプターオルソステリックアゴニストの使用を上回る利点をもたらす。そのような利点として、例えば、安全マージンの増加、より高い忍容性、乱用の可能性の低下および毒性の低下が挙げられる得る。
【0062】
用語「mAChR M4レセプターアロステリックエンハンサー」は、本明細書で使用される場合、動物(特に哺乳動物(例えば、ヒト))において内在性リガンド(例えば、アセチルコリン)により生じる応答を直接的または間接的に増強する任意の体外から投与される化合物または薬剤を指す。一部の実施形態では、このアロステリックエンハンサーは、オルソステリック部位に対する天然のリガンドまたはアゴニストの親和性を増加させる。一部の実施形態では、アロステリックエンハンサーは、アゴニスト効力を増加させる。mAChR M4レセプターアロステリックエンハンサーは、オルソステリック部位以外の部位(即ちアロステリック部位)に結合し、アゴニストまたは内在性リガンドに対するレセプターの応答を積極的に増強する。アロステリックエンハンサーは、それ自体でレセプターに影響を及ぼさず、レセプター効果を実現するためにアゴニストまたは天然リガンドの存在を必要とする。
【0063】
用語「mAChR M4レセプターアロステリックアゴニスト」は、本明細書で使用される場合、動物(特に哺乳動物(例えば、ヒト))において内在性リガンド(例えば、アセチルコリン)の非存在下でmAChR M4レセプターの活性を直接的に活性化させる任意の体外から投与される化合物または薬剤を指す。mAChR M4レセプターアロステリックアゴニストは、mAChR M4レセプターのオルソステリックなアセチルコリン部位と異なる部位に結合する。内在性リガンドの存在が必要とされないことから、mAChR M4レセプターアロステリックアゴニストとしての化合物の活性は、所与のシナプスでのコリン作動性トーン(cholinergic tone)が低い場合に利点をもたらす。
【0064】
用語「mAChR M4レセプター中性アロステリックリガンド」は、本明細書で使用される場合、動物(特に哺乳動物(例えば、ヒト))においてオルソステリック部位でのアゴニストまたは天然リガンドの結合または機能に影響を及ぼすことなくアロステリック部位に結合する任意の体外から投与される化合物または薬剤を指す。しかしながら、中性アロステリックリガンドは、同一の部位を介して作用する他のアロステリック調節因子の作用をブロックし得る。
【0065】
本明細書での数値範囲の列挙に関して、同程度の正確さでその間に存在する各数値が明確に考慮される。例えば、6~9の範囲の場合、6および9に加えて数値7および8が考慮され、範囲6.0~7.0の場合、数値6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9および7.0が明確に考慮される。
【0066】
2.化合物
一態様では、開示されているのは、式(I):
【化3】
(式中、
Xは、NまたはCR
1であり、
R
1は、C
1~C
4-アルキル、C
1~C
4-ハロアルキル、ハロおよび-OR
aから選択され、
R
2は、C
1~C
4-アルキル、水素、C
1~C
4-ハロアルキル、ハロおよび-OR
aから選択され、
R
3およびR
4は、それぞれ独立して、それぞれ任意選択に置換され得る水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロアルキル、複素環および-(CR
bR
c)
n-Yから選択され、R
3およびR
4は、同時に水素ではなく、または
R
3およびR
4は、これらが付着している窒素原子と一緒に、任意選択に置換されている複素環を形成しており、
Yは、それぞれ任意選択に置換され得るハロ、-OR、-SR、-C(O)R、-C(O)OR、-S(O)R、-SO
2R、-NR
2、-C(O)NR
2、-S(O)
2NR
2、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルおよび複素環から選択され、
nは、1、2、3、4、5、6、7または8であり、
各R
aは、独立して、水素、C
1~C
4-アルキル、C
1~C
4-ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルおよび複素環から選択され、
R
bおよびR
cは、それぞれ独立して、水素、C
1~C
4-アルキル、C
1~C
4-ハロアルキルおよびハロからなる群から選択され、
各Rは、独立して、それぞれ任意選択に置換され得る水素、アルキル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、複素環、ヘテロシクロアルキル(heterocyclealkyl)、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルおよびヘテロアルキルからなる群から選択される)
の化合物またはその薬学的に許容される塩である。
【0067】
一部の実施形態では、Xは、CR1である。一部の実施形態では、R1は、C1~C4アルキルである。一部の実施形態では、R1は、メチルである。
【0068】
一部の実施形態では、Xは、Nである。
【0069】
一部の実施形態では、R2は、水素である。
【0070】
一部の実施形態では、この化合物は、式(Ia):
【化4】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である。
【0071】
一部の実施形態では、この化合物は、式(Ib):
【化5】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である。
【0072】
一部の実施形態では、R3は、水素であり、R4は、本明細書で説明された実施形態のいずれかで定義されたとおりである。
【0073】
一部の実施形態では、R3は、水素であり、R4は、それぞれ任意選択に置換され得るアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロアルキル、複素環および-(CRbRc)n-Yからなる群から選択される。
【0074】
一部の実施形態では、R3は、水素であり;R4は、3~6員の複素環であって、NおよびOから選択される1個のヘテロ原子を有する3~6員の複素環、C3~C6シクロアルキルならびに-(CRbRc)n-Yからなる群から選択され;nは、1または2であり;RbおよびRcは、それぞれ水素であり;Yは、アリール、ならびに5~6員のヘテロアリールであって、N、OおよびSから独立して選択される1個または2個のヘテロ原子を有する5~6員のヘテロアリールからなる群から選択され;各アリール、シクロアルキル、ヘテロアリールおよび複素環は、独立して、非置換であるか、またはC1~C4アルキル、C1~C4ハロアルキル、C1~C4アルコキシ、C1~C4ハロアルコキシ、ハロ、ヒドロキシ、アリール、C3~C6シクロアルキル、3~6員の複素環であって、NおよびOから選択される1個のヘテロ原子を有する3~6員の複素環、ならびに5~6員のヘテロアリールであって、N、OおよびSから独立して選択される1個または2個のヘテロ原子を有する5~6員のヘテロアリールからなる群から独立して選択される1個もしくは2個の置換基で置換されている。
【0075】
一部の実施形態では、R3は、水素であり;R4は、3~6員の複素環であって、NおよびOから選択される1個のヘテロ原子を有する3~6員の複素環、ならびに-(CRbRc)n-Yからなる群から選択され;nは、1または2であり;RbおよびRcは、それぞれ水素であり;Yは、アリール、ならびに5~6員のヘテロアリールであって、N、OおよびSから独立して選択される1個または2個のヘテロ原子を有する5~6員のヘテロアリールからなる群から選択され;各アリール、ヘテロアリールおよび複素環は、独立して、非置換であるか、またはC1~C4アルキル、C1~C4ハロアルキル、C1~C4アルコキシ、C1~C4ハロアルコキシ、ハロ、ヒドロキシ、アリール、C3~C6シクロアルキル、3~6員の複素環であって、NおよびOから選択される1個のヘテロ原子を有する3~6員の複素環、ならびに5~6員のヘテロアリールであって、N、OおよびSから独立して選択される1個または2個のヘテロ原子を有する5~6員のヘテロアリールからなる群から独立して選択される1個もしくは2個の置換基で置換されている。
【0076】
一部の実施形態では、R4は、C3~C6シクロアルキルであって、非置換であるか、またはC1~C4アルキル、C3~C6シクロアルキル、C1~C4ハロアルキル、C1~C4アルコキシ、C1~C4ハロアルコキシ、ハロおよびシアノからなる群から独立して選択される1個もしくは2個の置換基で置換されているC3~C6シクロアルキルである。一部の実施形態では、R4は、シクロプロピル、シクロブチルおよびシクロペンチルから選択され、これらはそれぞれ、非置換であってもよく、ハロ(例えば、フルオロ)である1個の置換基で置換されていてもよい。
【0077】
一部の実施形態では、R4は、フェニルまたは5~6員のヘテロアリールであって、1個もしくは2個の窒素原子を有する5~6員のヘテロアリールで置換されたアゼチジニルであり、このフェニルまたはヘテロアリールは、C1~C4アルキル、C3~C6シクロアルキル、C1~C4ハロアルキル、C1~C4アルコキシ、C1~C4ハロアルコキシ、ハロおよびシアノからなる群から独立して選択される1個または2個の置換基で置換されている。
【0078】
一部の実施形態では、R4は、5~6員のヘテロアリールであって、1個または2個の窒素原子を有する5~6員のヘテロアリールで置換されたアゼチジニルであり、このヘテロアリールは、C1~C4アルキル、C1~C4ハロアルキル、C1~C4アルコキシ、C1~C4ハロアルコキシおよびハロからなる群から独立して選択される1個または2個の置換基で置換されている。
【0079】
一部の実施形態では、R4は、フェニル基、ピリジニル基、ピリミジニル基またはピラジニル基で置換されたアゼチジニルであり、このフェニル基、ピリジニル基、ピリミジニル基またはピラジニル基は、メチル、シクロプロピル、トリフルオロメチル、メトキシ、イソプロポキシ、ジフルオロメトキシ、フルオロ、クロロ、ブロモおよびシアノからなる群から独立して選択される1個または2個の置換基で置換されている。
【0080】
一部の実施形態では、R4は、ピリジニル基またはピリミジニル基で置換されたアゼチジニルであり、このピリジニル基またはピリミジニル基は、メチル、メトキシ、イソプロポキシ、ジフルオロメトキシ、フルオロ、クロロおよびブロモからなる群から独立して選択される1個または2個の置換基で置換されている。
【0081】
一部の実施形態では、R4は、ピリミジニル基で置換されたアゼチジニルであり、このピリミジニル基は、ハロ、C1~C4ハロアルキルおよびC1~C4アルコキシから選択される1個の置換基で置換されている。一部の実施形態では、R4は、ピリミジニル基で置換されたアゼチジニルであり、このピリミジニル基は、フルオロ、トリフルオロメチルおよびイソプロポキシから選択される1個の置換基で置換されている。
【0082】
一部の実施形態では、R4は、ピリミジニル基で置換されたアゼチジニルであり、このピリミジニル基は、C1~C4ハロアルキルおよびC1~C4アルコキシから選択される1個の置換基で置換されている。一部の実施形態では、R4は、ピリミジニル基で置換されたアゼチジニルであり、このピリミジニル基は、トリフルオロメチルおよびイソプロポキシから選択される1個の置換基で置換されている。
【0083】
一部の実施形態では、R4は、ピリジニル基で置換されたアゼチジニルであり、このピリジニル基は、C1~C4アルキル、C3~C6シクロアルキル、C1~C4ハロアルキル、C1~C4アルコキシ、C1~C4ハロアルコキシ、ハロおよびシアノからなる群から独立して選択される1個または2個の置換基で置換されている。一部の実施形態では、R4は、ピリジニル基で置換されたアゼチジニルであり、このピリジニル基は、メチル、シクロプロピル、トリフルオロメチル、メトキシ、イソプロポキシ、ジフルオロメトキシ、フルオロ、クロロ、ブロモおよびシアノからなる群から独立して選択される1個または2個の置換基で置換されている。
【0084】
一部の実施形態では、R4は、ピリジニル基で置換されたアゼチジニルであり、このピリジニル基は、C1~C4アルキル、C1~C4ハロアルキル、C1~C4アルコキシ、C1~C4ハロアルコキシおよびハロからなる群から独立して選択される1個または2個の置換基で置換されている。一部の実施形態では、R4は、ピリジニル基で置換されたアゼチジニルであり、このピリジニル基は、メチル、メトキシ、ジフルオロメトキシ、フルオロ、クロロおよびブロモからなる群から独立して選択される1個または2個の置換基で置換されている。
【0085】
一部の実施形態では、R4は、フェニル基で置換されたアゼチジニルであり、このフェニル基は、ハロから独立して選択される1個または2個の置換基で置換されている。一部の実施形態では、R4は、フェニル基で置換されたアゼチジニルであり、このフェニル基は、2個のフルオロ置換基で置換されている。
【0086】
一部の実施形態では、R4は、ピラジニル基で置換されたアゼチジニルであり、このピラジニル基は、C3~C6シクロアルキルおよびC1~C4ハロアルキルからなる群から選択される1個の置換基で置換されている。一部の実施形態では、R4は、ピラジニル基で置換されたアゼチジニルであり、このピラジニル基は、シクロプロピルおよびトリフルオロメチルからなる群から選択される1個の置換基で置換されている。
【0087】
一部の実施形態では、R4は、-(CRbRc)n-Yであり;nは、1であり;RbおよびRcは、それぞれ水素であり;Yは、アリール、ならびに5~6員のヘテロアリールであって、N、OおよびSから選択される1個または2個のヘテロ原子を有する5~6員のヘテロアリールからなる群から選択され;各アリールおよびヘテロアリールは、それぞれ独立して、非置換であるか、またはC1~C4アルキル、C1~C4ハロアルキル、C1~C4ヒドロキシアルキル、C1~C4アルコキシ、C1~C4ハロアルコキシ、ハロおよびヒドロキシから独立して選択される1個もしくは2個の置換基で置換されている。一部の実施形態では、Yは、フェニルおよびピリジルから選択され、これらはそれぞれ、独立して、非置換であるか、またはハロ、C1~C4アルコキシおよびC1~C4ヒドロキシアルキルから独立して選択される1個もしくは2個の置換基で置換されている。一部の実施形態では、Yは、フェニルであって、ハロ(例えば、フルオロ)、C1~C4アルコキシ(例えば、メトキシ)およびC1~C4ヒドロキシアルキル(例えば、ヒドロキシイソプロピル)から独立して選択される1個または2個の置換基で置換されているフェニルである。
【0088】
一部の実施形態では、R4は、-(CRbRc)n-Yであり;nは、1であり;RbおよびRcは、それぞれ水素であり;Yは、アリール、ならびに5~6員のヘテロアリールであって、N、OおよびSから選択される1個または2個のヘテロ原子を有する5~6員のヘテロアリールからなる群から選択され、各アリールおよびヘテロアリールは、それぞれ独立して、非置換であるか、またはC1~C4アルキル、C1~C4ハロアルキル、C1~C4アルコキシ、C1~C4ハロアルコキシ、ハロおよびヒドロキシから独立して選択される1個もしくは2個の置換基で置換されている。一部の実施形態では、Yは、フェニルおよびピリジルから選択され、これらはそれぞれ、独立して、非置換であるか、またはハロおよびC1~C4アルコキシから独立して選択される1個もしくは2個の置換基で置換されている。一部の実施形態では、Yは、フェニルであって、ハロおよびC1~C4アルコキシ(例えば、フルオロおよびメトキシ)から独立して選択される1個または2個の置換基で置換されているフェニルである。一部の実施形態では、Yは、非置換ピリジニルである。
【0089】
一部の実施形態では、R3およびR4は、これらが付着している窒素原子と一緒に、アゼチジニル基、ピロリジニル基、ピペリジニル基またはピペラジニル基を形成し、これらの基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロアルキル、複素環、オキソおよび-(CRbRc)p-Y(式中、pは、0、1、2、3、4、5、6、7または8である)からなる群から独立して選択される1個、2個または3個の置換基で任意選択に置換され得る。
【0090】
一部の実施形態では、基-NR
3R
4は、
【化6】
から選択される。
【0091】
代表的な式(I)の化合物として下記が挙げられるが、これらに限定されない:
N-[(3-フルオロ-4-メトキシ-フェニル)メチル]-2,4-ジメチル-キノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-(5-クロロ-2-メトキシ-4-ピリジル)アゼチジン-3-イル]-2,4-ジメチル-キノリン-6-カルボキサミド;
2,4-ジメチル-N-[1-[5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イル]アゼチジン-3-イル]キノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-(5-イソプロポキシピリミジン-2-イル)アゼチジン-3-イル]-2,4-ジメチル-キノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-(2,5-ジクロロ-4-ピリジル)アゼチジン-3-イル]-2,4-ジメチル-キノリン-6-カルボキサミド;
2,4-ジメチル-N-(4-ピリジルメチル)キノリン-6-カルボキサミド;
2,4-ジメチル-N-(3-ピリジルメチル)キノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-[2-(ジフルオロメトキシ)-6-メチル-4-ピリジル]アゼチジン-3-イル]-2,4-ジメチル-キノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-(2,6-ジクロロ-4-ピリジル)アゼチジン-3-イル]-2,4-ジメチル-キノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-[2-(ジフルオロメトキシ)-4-ピリジル]アゼチジン-3-イル]-2,4-ジメチル-キノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-(4-ブロモ-3-クロロ-2-ピリジル)アゼチジン-3-イル]-2,4-ジメチル-キノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-(2,3-ジフルオロ-4-ピリジル)アゼチジン-3-イル]-2,4-ジメチル-キノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-(4-ブロモ-3-フルオロ-2-ピリジル)アゼチジン-3-イル]-2,4-ジメチル-キノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-(5-クロロ-2-メトキシ-4-ピリジル)アゼチジン-3-イル]-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;
N-[(3-フルオロ-4-メトキシ-フェニル)メチル]-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;
N-[[4-(1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)フェニル]メチル]-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;
3,4-ジメチル-N-[1-[5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イル]アゼチジン-3-イル]シンノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-(3,4-ジフルオロフェニル)アゼチジン-3-イル]-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-(5-フルオロピリミジン-2-イル)アゼチジン-3-イル]-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-(5-イソプロポキシピリミジン-2-イル)アゼチジン-3-イル]-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;
3,4-ジメチル-N-[1-[5-(トリフルオロメチル)ピラジン-2-イル]アゼチジン-3-イル]シンノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-(5-シクロプロピルピラジン-2-イル)アゼチジン-3-イル]-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-(5-クロロ-2-ピリジル)アゼチジン-3-イル]-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-(5-フルオロ-2-ピリジル)アゼチジン-3-イル]-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-(5-シアノ-2-ピリジル)アゼチジン-3-イル]-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-ピリジル)アゼチジン-3-イル]-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-(3-クロロ-5-シクロプロピル-2-ピリジル)アゼチジン-3-イル]-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-[3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)-2-ピリジル]アゼチジン-3-イル]-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-(3-クロロ-5-シアノ-2-ピリジル)アゼチジン-3-イル]-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-(2,5-ジクロロ-4-ピリジル)アゼチジン-3-イル]-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-[6-(ジフルオロメトキシ)-3-ピリジル]アゼチジン-3-イル]-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-(6-クロロ-2-ピリジル)アゼチジン-3-イル]-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-(6-フルオロ-2-ピリジル)アゼチジン-3-イル]-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-(3-フルオロ-2-ピリジル)アゼチジン-3-イル]-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-(3-クロロ-2-ピリジル)アゼチジン-3-イル]-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-(5-クロロ-3-フルオロ-2-ピリジル)アゼチジン-3-イル]-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;
3,4-ジメチル-N-[1-[2-(トリフルオロメチル)-4-ピリジル]アゼチジン-3-イル]シンノリン-6-カルボキサミド;
3,4-ジメチル-N-[1-[6-(トリフルオロメチル)-2-ピリジル]アゼチジン-3-イル]シンノリン-6-カルボキサミド;
N-シクロプロピル-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;
N-(3-フルオロシクロブチル)-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;および
N-シクロペンチル-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド、
またはそれらの薬学的に許容される塩。
【0092】
化合物名は、CHEMDRAW(登録商標)ULTRA v.12.0の一部としてStruct=Name命名アルゴリズムを使用して割り当てられている。
【0093】
本化合物は、不斉中心またはキラル中心が存在する立体異性体として存在し得る。この立体異性体は、キラル炭素原子の周囲での置換基の立体配置に応じて「R」または「S」である。本明細書で使用される用語「R」および「S」は、IUPAC 1974 Recommendations for Section E,Fundamental Stereochemistry,in Pure Appl.Chem.,1976,45:13-30で定義されたような立体配置である。本開示は、様々な立体異性体およびそれらの混合物を意図しており、これらは、本発明の範囲に具体的に含まれる。立体異性体として、エナンチオマーおよびジアステレオマー、ならびにエナンチオマーまたはジアステレオマーの混合物が挙げられる。本化合物の個々の立体異性体を、不斉中心またはキラル中心を含む市販の出発物質から合成により調製し得るか、またはラセミ混合物の調製後の当業者に公知の分割方法により調製し得る。この分割方法の例は、下記である:(1)Furniss,Hannaford,Smith,and Tatchell,“Vogel’s Textbook of Practical Organic Chemistry,”5th edition(1989),Longman Scientific&Technical,Essex CM20 2JE,Englandで説明されているような、エナンチオマーの混合物のキラル補助剤への付着、得られたジアステレオマーの混合物の再結晶化もしくはクロマトグラフィーによる分離、およびこの補助剤からの光学的に純粋な生成物の光学的な遊離、または(2)キラルクロマトグラフィーカラムによる光学エナンチオマーの混合物の直接分離、または(3)分別再結晶化法。
【0094】
本化合物は、互変異性型および幾何異性体を有し得ること、およびこれらも本開示の実施形態を構成することを理解すべきである。
【0095】
本開示は、式(I)で列挙されているものと同一であるが、1個または複数の原子が、自然界で通常見出される原子質量または質量数と異なる原子質量または質量数を有する原子に置き換えられている同位体標識化合物も含む。本発明の化合物での包含に適した同位体の例は、水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、フッ素および塩素であり、例えば、限定されないが、それぞれ2H、3H、13C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18Fおよび36Clである。重水素(即ち2H)等の重い同位体による置換は、より大きい代謝安定性(例えば、インビボでの半減期の増加または必要投薬量の減少)から生じるいくつかの治療上の利点をもたらし得、従って状況次第で好ましい場合がある。本化合物は、レセプターの分布を決定するための医用撮像研究およびポジトロン放出断層撮影(PET)研究のためにポジトロン放出同位体を組み込み得る。式(I)の化合物に組み込まれ得る適切なポジトロン放出同位体は、11C、13N、15Oおよび18Fである。当業者に既知の従来の技術により、または非同位体標識試薬の代わりに適切な同位体標識試薬を使用して、添付の実施例で説明されているものと類似の方法により、式(I)の同位体標識化合物を概して調製し得る。
【0096】
例えば、一部の実施形態では、式(I)の化合物は同位体標識され得る。一部の実施形態では、式(I)の化合物のうちの1個または複数個の水素原子は重水素である。一部の実施形態では、R2は重水素である。
【0097】
a.薬学的に許容される塩
本開示の化合物は、薬学的に許容される塩として存在し得る。用語「薬学的に許容される塩」は、水溶性、油溶性または分散性であり、過度の毒性、刺激作用およびアレルギー反応を伴うことなく障害の処置に適しており、妥当なベネフィット/リスク比と釣り合っており、かつその意図された使用に有効である、この化合物の塩または双性イオンを指す。この塩は、この化合物の最終的な単離および精製中に調製され得るか、またはこの化合物のアミノ基と適切な酸とを反応させることにより別々に調製され得る。例えば、化合物を適切な溶媒(例えば、限定されないが、メタノールおよび水)に溶解させ、塩酸のような酸の少なくとも1当量で処理し得る。生じた塩が沈殿し、ろ過により単離されて減圧下で乾燥され得る。代わりに、溶媒および過剰な酸を減圧下で除去して塩が得られ得る。代表的な塩として下記が挙げられる:酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、クエン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、ジグルコン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ギ酸塩、イセチオン酸塩、フマル酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフチレンスルホ酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩(pectinate)、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、トリクロロ酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、グルタミン酸塩、パラ-トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸および同類のもの。この化合物のアミノ基はまた、塩化アルキル、臭化アルキルおよびヨウ化アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ラウリル、ミリスチル、ステアリルおよび同類のもの)で四級化され得る。
【0098】
塩基付加塩は、カルボキシ基と、適切な塩基(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムもしくはアルミニウム等の金属カチオンの水酸化物、炭酸塩もしくは重炭酸塩、または有機第一級、第二級もしくは第三級のアミン)との反応により、本開示の化合物の最終的な単離および精製中に調製され得る。第四級アミン塩(例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、エチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、N,N-ジメチルアニリン、N-メチルピペリジン、N-メチルモルホリン、ジシクロヘキシルアミン、プロカイン、ジベンジルアミン、N,N-ジベンジルフェネチルアミン、1-エフェナミンおよびN,N’-ジベンジルエチレンジアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペリジン、ピペラジンおよび同類ものに由来するもの)が調製され得る。
【0099】
b.概括的な合成
式(I)の化合物を、合成プロセスまたは代謝プロセスにより調製し得る。代謝プロセスによるこの化合物の調製として、ヒトもしくは動物の体内(インビボ)で起こるものまたはインビトロで起こるプロセスが挙げられる。
【0100】
下記のスキームの説明で使用される略語は、下記である:atmは、雰囲気であり、DIEAは、N,N-ジイソプロピルエチルアミンであり、DMFは、N,N-ジメチルホルムアミドであり、DMSOは、ジメチルスルホキシドであり、dppfは、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンであり、dtbbpyは、4,4’-ジ-tert-ブチル-2,2’-ビピリジンであり、Et3Nは、トリエチルアミンであり、HATUは、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスフェートであり、MeOHは、メタノールであり、ppyは、(2-ピリジニル)フェニルであり、rtは、室温であり、TsOHは、p-トルエンスルホン酸である。
【0101】
式(I)の化合物(具体的には式(Ia)の化合物)を、スキーム1に示すように合成し得る。
【化7】
【0102】
スキーム1に示すように、Ir触媒およびp-トルエンスルホン酸の存在下で、6-ブロモ-2-メチルキノリンと、エチル-2-メルカプトプロピオネートとを反応させることにより、6-ブロモ-2,4-メチルキノリンを調製し得る。この6-ブロモ-2,4-メチルキノリンを、メタノール中でパラジウム触媒カルボニル化に供して、メチル2,4-ジメチルキノリン-6-カルボキシレートを生成し得る。このメチルエステルの加水分解により、2,4-ジメチルキノリン-6-カルボン酸が得られ、続いて適切なアミンとのカップリングにより、式(Ia)の化合物を得ることができる。一部の実施形態では、カルボン酸をアミン前駆体化合物とカップリングさせ得、さらに誘導体化させて式(Ia)の化合物を形成し得る。
【0103】
式(I)の化合物(具体的には式(Ib)の化合物)を、スキーム2に示すように合成し得る。
【化8】
【0104】
スキーム2に示すように、3,4-ジメチルシンノリン-6-カルボン酸(市販、CAS No.1176775-00-0)を適切なアミンと化プリングさせて、式(Ib)の化合物を得ることができる。
【0105】
スキーム1および2では、多様なアミンHNR3R4を使用し得る。そのようなアミンは市販されていてもよく、または当業者に既知の方法を使用して合成されてもよい。
【0106】
これらの化合物および中間体を、有機合成の当業者に公知の方法により単離精製し得る。化合物を単離精製するための従来の方法の例として下記が挙げられ得るが、これらに限定されない:例えば、Furniss,Hannaford,Smith,and Tatchell,pub.Longman Scientific&Technical,Essex CM20 2JE,Englandによる”Vogel’s Textbook of Practical Organic Chemistry”,5th edition(1989)で説明されているような、活性炭による任意選択の前処理による高温または低温での再結晶化よってアルキルシラン基で誘導体化された固体担体(例えば、シリカゲル、アルミナまたはシリカ)でのクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、様々な圧力での蒸留、真空下での昇華および研和。
【0107】
開示の化合物は、少なくとも1個の塩基性窒素を有し得、それにより、この化合物を酸で処理して所望の塩を形成し得る。例えば、化合物を室温以上において酸で処理して所望の塩(この塩は沈殿する)を得て、冷却後にろ過により回収し得る。この反応に適した酸の例として下記が挙げられるが、これらに限定されない:マンデル酸、アトロ乳酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、炭酸、フマル酸、マレイン酸、グルコン酸、酢酸、プロピオン酸、サリチル酸、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、クエン酸、ヒドロキシ酪酸、カンファスルホン酸、リンゴ酸、フェニル酢酸、アスパラギン酸またはグルタミン酸および同類のものに加えて、酒石酸、乳酸、コハク酸。
【0108】
各個々の工程の反応条件および反応時間は、用いられる特定の反応物および使用される反応物中に存在する置換基に応じて変化し得る。具体的な手順を実施例セクションに記載する。反応物を、従来の方法で(例えば、残留物から溶媒を除去することにより)後処理し、当技術分野で一般に既知の方法論(例えば、限定されないが、結晶化、蒸留、抽出、研和およびクロマトグラフィー)に従ってさらに精製し得る。別途説明されない限り、出発物質および試薬は、市販されているか、または化学文献で説明されている方法を使用して市販の材料から当業者により調製され得る。出発物質は、市販されていない場合、標準的な有機化学技術、既知の構造的に類似の化合物の合成に類似する技術、または上記のスキームもしくは合成例セクションで説明されている手順に類似する技術から選択される手順により調製され得る。
【0109】
通常の実験(例えば、反応条件の適切な操作、試薬および合成経路の順序、反応条件に適合し得ない任意の化学官能基の保護、ならびに方法の反応順序における適切な時点での脱保護)は、本発明の範囲に含まれる。適切な保護基ならびにそのような適切な保護基を使用する様々な置換基の保護および脱保護の方法は、当業者に公知であり、それらの例をPGM Wuts and TW Greene,in Greene’s book titled Protective Groups in Organic Synthesis(4th ed.),John Wiley&Sons,NY(2006)中に見出し得、この文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本発明の化合物の合成は、本明細書において上記で説明された合成スキームで説明されているものおよび具体例で説明されているものに類似の方法により達成され得る。
【0110】
開示の化合物の光学的に活性な形態が必要とされる場合、この光学的に活性な形態を、光学的に活性な出発物質(例えば、適切な反応工程の不斉誘導による調製される)を使用して、本明細書で説明された手順の1つを実行することにより得ることができるか、または標準的な手順(例えば、クロマトグラフィー分離、再結晶化もしくは酵素的分割)を使用した、この化合物もしくは中間体の立体異性体の混合物の分割により得ることができる。
【0111】
同様に、化合物の純粋な幾何異性体が必要とされる場合、この純粋な幾何異性体を、出発物質として純粋な幾何異性体を使用して上記の手順の1つを実行することにより得ることができるか、またはクロマトグラフィー分離等の標準的な手順を使用した、この化合物もしくは中間体の幾何異性体の混合物の分割により得ることができる。
【0112】
説明した合成スキームおよび具体例は、例示的なものであり、添付の特許請求の範囲で定義されている本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことが認識され得る。合成方法および具体例の全ての代替形態、変更形態および均等物は、本特許請求の範囲に含まれる。
【0113】
c.ムスカリン性アセチルコリンレセプターM4活性
一部の実施形態では、本開示の化合物は、mAChR M4のアゴニスト応答(例えば、アセチルコリン)を増強する。一部の実施形態では、本開示の化合物は、化合物の存在下でのアゴニストの非最大濃度に対するmAChR M4応答を、化合物の非存在下でのアゴニストに対するこの応答と比較して増加させる。mAChR M4活性の増強を、当技術分野の既知の方法により実証し得る。例えば、mAChR M4活性の活性化を、Ca2+-感受性蛍光色素(例えば、Fluo-4)を負荷した細胞中でのアゴニスト(例えば、アセチルコリン)に応答したカルシウム流およびキメラまたは無差別なGタンパク質の共発現の測定により決定し得る。一部の実施形態では、このカルシウム流を蛍光静的比(fluorescent static ratio)の増加として測定した。一部の実施形態では、ポジティブアロステリック調節因子活性をEC20アセチルコリン応答(即ち最大応答の20%を生じるアセチルコリンの濃度でのmAChR M4の応答)の濃度依存的な増加として分析した。
【0114】
一部の実施形態では、本開示の化合物は、この化合物の存在下でのmAChR M4トランスフェクトCHO-K1細胞中でのカルシウム蛍光の、この化合物の非存在下での均等なCHO-K1細胞の応答と比較した増加としてmAChR M4応答を活性化させる。一部の実施形態では、開示の化合物は、約10μM未満、約5μM未満、約1μM未満、約500nM未満、約100nM未満または約50nM未満のEC50でmAChR M4応答を活性化させる。一部の実施形態では、このmAChR M4トランスフェクトCHO-K1細胞は、ヒトmAChR M4でトランスフェクトされている。一部の実施形態では、このmAChR M4トランスフェクトCHO-K1細胞は、ラットmAChR M4でトランスフェクトされている。
【0115】
本開示の化合物は、この化合物の存在下でのmAChR M4でトランスフェクトされたCHO-K1細胞中におけるアセチルコリンの非最大濃度に応答した、この化合物の非存在下でのアセチルコリンに対する応答と比較した増加として、アセチルコリンに対するmAChR M4応答のポジティブアロステリック調節を示し得る。一部の実施形態では、本開示の化合物は、約10μM未満、約5μM未満、約1μM未満、約500nM未満または約100nM未満のEC50でアセチルコリンに対するmAChR M4応答のポジティブアロステリック調節を示す。一部の実施形態では、ポジティブアロステリック調節に関するEC50を、mAChR M4でトランスフェクトされているCHO-K1細胞中で決定する。一部の実施形態では、トランスフェクトされたmAChR M4は、ヒトmAChR M4である。一部の実施形態では、トランスフェクトされたmAChR M4は、ラットmAChR M4である。
【0116】
本開示の化合物は、mAChR M1、M2、M3またはM5トランスフェクトCHO-K1細胞の1種または複数に関するEC50未満のEC50において、mAChR M4トランスフェクトCHO-K1細胞中でmAChR M4応答を活性化させ得る。即ち、開示の化合物は、mAChR M1、M2、M3またはM5レセプターの1種または複数と比較してmAChR M4レセプターに対する選択性を有し得る。例えば、一部の実施形態では、開示の化合物は、mAChR M1の場合と比べて約5倍低い、約10倍低い、約20倍低い、約30倍低い、約50倍低い、約100倍低い、約200倍低い、約300倍低い、約400倍低いまたは約500倍超低いEC50でmAChR M4応答を活性化させ得る。一部の実施形態では、開示の化合物は、mAChR M2の場合と比べて約5倍低い、約10倍低い、約20倍低い、約30倍低い、約50倍低い、約100倍低い、約200倍低い、約300倍低い、約400倍低いまたは約500倍超低いEC50でmAChR M4応答を活性化させ得る。一部の実施形態では、開示の化合物は、mAChR M3の場合と比べて約5倍低い、約10倍低い、約20倍低い、約30倍低い、約50倍低い、約100倍低い、約200倍低い、約300倍低い、約400倍低いまたは約500倍超低いEC50でmAChR M4応答を活性化させ得る。一部の実施形態では、開示の化合物は、mAChR M5の場合と比べて約5倍低い、約10倍低い、約20倍低い、約30倍低い、約50倍低い、約100倍低い、約200倍低い、約300倍低い、約400倍低いまたは約500倍超低いEC50でmAChR M4応答を活性化させ得る。一部の実施形態では、開示の化合物は、M2~M5レセプターの場合と比べて5倍低い、約10倍低い、約20倍低い、約30倍低い、mAChR M1、M2、M3またはM5レセプターの場合と比べて約50倍低い、約100倍低い、約200倍低い、約300倍低い、約400倍低いまたは約500倍超低いEC50でmAChR M4応答を活性化させ得る。
【0117】
本開示の化合物は、約10μM未満のEC50においてM4トランスフェクトCHO-K1細胞中でmAChR M4応答を活性化させ得、かつmAChR M1、M2、M3またはM5レセプターの1種または複数と比較してM4レセプターに対する選択性を示す。例えば、一部の実施形態では、この化合物は、約10μM未満、約5μM未満、約1μM未満、約500nM未満、約100nM未満または約50nM未満のEC50を有し得、かつこの化合物はまた、mAChR M1の場合と比べて約5倍低い、10倍低い、20倍低い、30倍低い、50倍低い、100倍低い、200倍低い、300倍低い、400倍低いまたは訳500倍超低いEC50においてmAChR M4応答を活性化させ得る。一部の実施形態では、この化合物は、約10μM未満、約5μM未満、約1μM未満、約500nM未満、約100nM未満または約50nM未満のEC50を有し得、かつこの化合物はまた、mAChR M2の場合と比べて約5倍低い、約10倍低い、約20倍低い、約30倍低い、約50倍低い、約100倍低い、約200倍低い、約300倍低い、約400倍低いまたは約500倍超低いEC50においてmAChR M4応答を活性化させ得る。一部の実施形態では、この化合物は、約10μM未満、約5μM未満、約1μM未満、約500nM未満、約100nM未満または約50nM未満のEC50を有し得、かつこの化合物はまた、mAChR M3の場合と比べて約5倍低い、約10倍低い、約20倍低い、約30倍低い、約50倍低い、約100倍低い、約200倍低い、約300倍低い、約400倍低いまたは約500倍超低いEC50においてmAChR M4応答を活性化させ得る。一部の実施形態では、この化合物は、約10μM未満、約5μM未満、約1μM未満、約500nM未満、約100nM未満または約50nM未満のEC50を有し得、かつこの化合物はまた、mAChR M5の場合と比べて約5倍低い、約10倍低い、約20倍低い、約30倍低い、約50倍低い、約100倍低い、約200倍低い、約300倍低い、約400倍低いまたは約500倍超低いEC50においてmAChR M4応答を活性化させ得る。一部の実施形態では、この化合物は、約10μM未満、約5μM未満、約1μM未満、約500nM未満、約100nM未満または約50nM未満のEC50を有し得、かつこの化合物はまた、M2~M5レセプターの場合と比べて5倍低い、約10倍低い、約20倍低い、約30倍低いEC50において;mAChR M1、M2、M3またはM5レセプターの場合と比べて約50倍低い、約100倍低い、約200倍低い、約300倍低い、約400倍低い、M2、M3もしくはM5レセプター、または約500倍超低いEC50においてmAChR M4応答を活性化し得る。
【0118】
開示の化合物のインビボでの効力を、既知の臨床的に有用な統合失調症治療薬が同様の肯定的反応を示す多くの前臨床ラット行動モデルで測定し得る。例えば、開示の化合物は、1~100mg/kg p.o.の範囲の用量で雄のSprague-Dawleyラットにおけるアンフェタミン誘導性過自発運動を反転させ得る。
【0119】
3.医薬組成物および製剤
本開示の化合物は、対象(例えば、ヒトであってもよく、または非ヒトであってもよい患者)への投与に適した医薬組成物に組み込まれ得る。本開示の化合物は、噴霧乾燥分散製剤等の製剤としても提供され得る。
【0120】
本医薬組成物および本製剤は、薬剤の「治療上有効な量」または「予防上有効な量」を含み得る。「治療上有効な量」は、所望の治療結果を達成するのに(必要な投薬量でのおよび時間にわたる)有効な量を指す。この組成物の治療上有効な量は、当業者により決定され得、かつ因子(例えば、個体の病状、年齢、性別および体重、ならびにこの組成物の、個体中で所望の応答を誘発する能力)に従って変動し得る。治療上有効な量は、本発明の化合物(例えば、式(I)の化合物)の任意の毒性または有害な効果を治療上有益な効果が上回る量でもある。「予防上有効な量」は、所望の予防結果を達成するのに(必要な投薬量でのおよび時間にわたる)有効な量を指す。典型的には、予防的な用量は疾患前または疾患の初期段階の対象で使用されることから、予防上有効な量は、治療上有効な量と比べて少ないであろう。
【0121】
例えば、式(I)の治療上有効な量は、約1mg/kg~約1000mg/kg、約5mg/kg~約950mg/kg、約10mg/kg~約900mg/kg、約15mg/kg~約850mg/kg、約20mg/kg~約800mg/kg、約25mg/kg~約750mg/kg、約30mg/kg~約700mg/kg、約35mg/kg~約650mg/kg、約40mg/kg~約600mg/kg、約45mg/kg~約550mg/kg、約50mg/kg~約500mg/kg、約55mg/kg~約450mg/kg、約60mg/kg~約400mg/kg、約65mg/kg~約350mg/kg、約70mg/kg~約300mg/kg、約75mg/kg~約250mg/kg、約80mg/kg~約200mg/kg、約85mg/kg~約150mg/kgおよび約90mg/kg~約100mg/kgであり得る。
【0122】
本医薬組成物および本製剤は、薬学的に許容される担体を含み得る。用語「薬学的に許容される担体」は、本明細書で使用される場合、任意の種類の非毒性の不活性な固体、半固体または液体の賦形剤、希釈剤、カプセル封入材料または製剤助剤を意味する。薬学的に許容される担体としての役割を果たし得る物質の一部の例は、糖、例えば、限定されないが、ラクトース、グルコースおよびスクロース;デンプン、例えば、限定されないが、コーンスターチおよびジャガイモデンプン;セルロースおよびその誘導体、例えば、限定されないが、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロース;トラガント末;麦芽;ゼラチン;タルク;添加剤、例えば、限定されないが、ココアバターおよび座薬ワックス;油、例えば、限定されないが、落花生油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油および大豆油;グリコール、例えばプロピレングリコール;エステル、例えば、限定されないが、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル;寒天;緩衝剤、例えば、限定されないが、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム;アルギン酸;ピロゲンフリー水;等張生理食塩水;リンゲル溶液;エチルアルコール、およびリン酸緩衝溶液、ならびに他の非毒性の適合性潤滑剤、例えば、限定されないが、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムであり、着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味料、香味料および香料、保存料および酸化防止剤も同様に、製造業者の判断に従って本組成物中に存在し得る。
【0123】
そのため、本化合物およびその薬学的に許容される塩を、例えば固体投与による、点眼による、局所油系製剤での、注射による、(口もしくは鼻のいずれかを介した)吸入による、移植による、経口投与による、頬側投与による、非経口投与または直腸投与による投与のために製剤化し得る。技術および製剤は、概して“Remington’s Pharmaceutical Sciences,”(Meade Publishing Co.,Easton,Pa.)中に見出され得る。治療用組成物は、典型的には、製造および貯蔵の条件下で無菌でありかつ安定でなければならない。
【0124】
使用される担体の種類は、本開示の化合物が投与される経路および本組成物の形態により決まるであろう。本組成物は、例えば、全身投与(例えば、経口、直腸、鼻、舌下、頬側、移植もしくは非経口)または局所投与(例えば、皮膚、肺、鼻、耳、眼、リポソーム送達系もしくはイオン泳動)に適した様々な形態であり得る。
【0125】
全身投与用の担体として、典型的には希釈剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤、着色剤、香味料、甘味料、酸化防止剤、保存料、滑剤、溶媒、懸濁剤、湿潤剤、界面活性剤、それらの組み合わせ等の少なくとも1種が挙げられる。本組成物では、全ての担体が任意選択である。
【0126】
適切な希釈剤として、糖、例えばグルコース、ラクトース、デキストロースおよびスクロース;ジオール、例えばプロピレングリコール;炭酸カルシウム;炭酸ナトリウム;糖アルコール、例えばグリセリン;マンニトール;ならびにソルビトールが挙げられる。全身用組成物中または局所用組成物中の希釈剤の量は、典型的には約50~約90%である。
【0127】
適切な潤滑剤として、シリカ、タルク、ステアリン酸ならびにそのマグネシウム塩およびカルシウム塩、硫酸カルシウム;ならびに液体潤滑剤、例えばポリエチレングリコールならびに植物油、例えば落花生油、綿実油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油およびテオブロマの油が挙げられる。全身用組成物中または局所用組成物中の潤滑剤の量は、典型的には約5~約10%である。
【0128】
適切な結合剤として、ポリビニルピロリドン;ケイ酸アルミニウムマグネシウム;デンプン、例えばコーンスターチおよびジャガイモデンプン;ゼラチン;トラガント;ならびにセルロースおよびその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、メチルセルロース、微結晶性セルロースおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムが挙げられる。全身用組成物中の結合剤の量は、典型的には約5~約50%である。
【0129】
適切な崩壊剤として、寒天、アルギン酸およびそのナトリウム塩、発泡性混合物、クロスカルメロース、クロスポビドン、ナトリウムカルボキシメチルデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、粘土およびイオン交換樹脂が挙げられる。全身用組成物中または局所用組成物中の崩壊剤の量は、典型的には約0.1~約10%である。
【0130】
適切な着色剤として、FD&C色素等の着色剤が挙げられる。使用される場合、全身用組成物中または局所用組成物中の着色剤の量は、典型的には約0.005~約0.1%である。
【0131】
適切な香味料として、メントール、ペパーミントおよびフルーツフレーバーが挙げられる。使用される場合、全身用組成物中または局所用組成物中の香味料の量は、典型的には約0.1~約1.0%である。
【0132】
適切な甘味料として、アスパルテームおよびサッカリンが挙げられる。全身用組成物中または局所用組成物中の甘味料の量は、典型的には約0.001~約1%である。
【0133】
適切な酸化防止剤として、ブチルヒドロキシアニソール(「BHA」)、ブチルヒドロキシトルエン(「BHT」)およびビタミンEが挙げられる。全身用組成物中または局所用組成物中の酸化防止剤の量は、典型的には約0.1~約5%である。
【0134】
適切な保存料として、塩化ベンザルコニウム、メチルパラベンおよび安息香酸ナトリウムが挙げられる。全身用組成物中または局所用組成物中の保存料の量は、典型的には約0.01~約5%である。
【0135】
適切な滑剤として二酸化ケイ素が挙げられる。全身用組成物中または局所用組成物中の滑剤の量は、典型的には約1~約5%である。
【0136】
適切な溶媒として、水、等張生理食塩水、オレイン酸エチル、グリセリン、ヒドロキシル化ヒマシ油、アルコール(例えば、エタノール)およびリン酸緩衝溶液が挙げられる。全身用組成物中または局所用組成物中の溶媒の量は、典型的には約0~約100%である。
【0137】
適切な懸濁剤として、AVICEL RC-591(FMC Corporation of Philadelphia,PA)およびアルギン酸ナトリウムが挙げられる。全身用組成物中または局所用組成物中の懸濁剤の量は、典型的には約1~約8%である。
【0138】
適切な界面活性剤として、レシチン、Polysorbate 80およびラウリル硫酸ナトリウム、およびAtlas Powder Company of Wilmington,DelawareのTWEENSが挙げられる。適切な界面活性剤として、C.T.F.A.Cosmetic Ingredient Handbook,1992,pp.587-592;Remington’s Pharmaceutical Sciences,15th Ed.1975,pp.335-337;およびMcCutcheon’s Volume 1,Emulsifiers&Detergents,1994,North American Edition,pp.236-239で開示されているものが挙げられる。全身用組成物中または局所用組成物中の界面活性剤の量は、典型的には約0.1%~約5%である。
【0139】
全身用組成物中の成分の量は、調製される全身用組成物の種類に応じて変動し得るが、一般に、全身用組成物は、0.01~50%の活性化合物(例えば、式(I)の化合物)と、50~99.99%の1種または複数の担体とを含む。非経口投与用の組成物は、典型的には、0.1%~10%の活性物質と、90%~99.9%の担体(例えば、希釈剤および溶媒)とを含む。
【0140】
経口投与用の組成物は、様々な剤形を有し得る。例えば、固体形態として、錠剤、カプセル剤、顆粒剤およびバルク散剤が挙げられる。この経口剤形は、安全かつ有効な量の活性物質を含み、通常、少なくとも約5%の活性物質を含み、より具体的には約25%~約50%の活性物質を含む。この経口投薬用組成物は、約50%~約95%の担体を含み、より具体的には約50%~約75%を含む。
【0141】
錠剤を圧縮し得るか、錠剤を粉砕し得るか、腸溶性コーティングし得るか、糖コーティングし得るか、フィルコーティングし得るか、または多重圧縮し得る。錠剤は、典型的には、活性成分と、希釈剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤、着色剤、香味料、甘味料、滑剤およびそれらの組み合わせから選択される成分を含む担体とを含む。具体的な希釈剤として、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、マンニトール、ラクトースおよびセルロースが挙げられる。具体的な結合剤として、デンプン、ゼラチンおよびスクロースが挙げられる。具体的な崩壊剤として、アルギン酸およびクロスカルメロースが挙げられる。具体的な潤滑剤として、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸およびタルクが挙げられる。具体的な着色剤は、FD&C色素であり、このFD&C色素は、外観のために添加され得る。チュアブル錠剤は、好ましくは、甘味料(例えば、アスパルテームおよびサッカリン)もしくは香味料(例えば、メントール、ペパーミントおよびフルーツフレーバー)またはそれらの組み合わせを含む。
【0142】
カプセル剤(例えば、移植片、徐放(time release)製剤および徐放(sustained release)製剤)は、典型的には、ゼラチンを含むカプセル中において、活性化合物(例えば、式(I)の化合物)と、上記で開示された1種または複数の希釈剤等の担体とを含む。顆粒剤は、典型的には、開示の化合物と、好ましくは流動特性を改善するための滑剤(例えば、二酸化ケイ素)とを含む。移植片は、生分解型または非生分解型であり得る。
【0143】
経口用組成物のための担体中の成分の選択は、本発明の目的にとって重要ではない、味覚、コストおよび保存安定性のような二次的考察に依存する。
【0144】
固体組成物を、開示の化合物が所望の適用の近傍でまたは所望の作用を延長するために様々な時点および時間で消化管中において放出されるように、従来の方法により(典型的にはpH依存性または時間依存性のコーティングにより)コーティングし得る。このコーティングは、典型的には、酢酸フタル酸セルロース、酢酸フタル酸ポリビニル、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、エチルセルロース、EUDRAGIT(登録商標)コーティング(Germany、EssenのEvonik Industriesから入手可能)、ワックスおよびシェラックからなるから選択される1種または複数の成分を含む。
【0145】
経口投与用の組成物は、液体形態を有し得る。例えば、適切な液体形態として、水溶液、乳濁液、懸濁液、非発泡性顆粒から再構成された溶液、非発泡性顆粒から再構成された懸濁液、発泡性顆粒から再構成された発泡性調製物、エリキシル剤、チンキ剤、シロップ剤および同類のものが挙げられる。経口投与用液体組成物は、典型的には、開示の化合物と、担体(即ち希釈剤、着色剤、香味料、甘味料、保存料、溶媒、懸濁剤および界面活性剤から選択される担体)とを含む。経口液体組成物は、着色剤、香味料および甘味料から選択される1種または複数の成分を好ましくは含む。
【0146】
主題の化合物の全身送達の達成に有用な他の組成物として、舌下投薬形態、頬側投薬形態および経鼻投薬形態が挙げられる。そのような組成物は、典型的には、可溶性充填物質、例えばスクロース、ソルビトールおよびマンニトール等の希釈剤;ならびに結合剤、例えばアカシア、微結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースの1種または複数を含む。そのような組成物は、潤滑剤、着色剤、香味料、甘味料、酸化防止剤および滑剤をさらに含み得る。
【0147】
本開示の化合物を局所的に投与し得る。皮膚に局所的に塗布され得る局所用組成物は、任意の形態(例えば、固体、溶液、オイル、クリーム、軟膏、ゲル、ローション、シャンプー、リーブオンおよびリンスアウトのヘアーコンディショナ、ミルク、クレンザー、モイスチャライザ、スプレー、皮膚パッチおよび同類のもの)であり得る。局所用組成物は、開示の化合物(例えば、式(I)の化合物)と担体とを含む。この局所用組成物の担体は、この化合物の皮膚への浸透を好ましくは促進する。この担体は、1種または複数の任意選択の成分をさらに含み得る。
【0148】
開示の化合物と共に用いられ得る担体の量は、この化合物の単位用量での投与のための組成物の実際の量をもたらすのに十分である。本発明の方法で有用な剤形を製造するための技術および組成物は、下記の参考文献で説明されている:Modern Pharmaceutics,Chapters 9 and 10,Banker&Rhodes,eds.(1979);Lieberman et al.,Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets(1981);およびAnsel,Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms,2nd Ed.,(1976)。
【0149】
担体は、単一の成分または2種以上の成分の組み合わせを含み得る。本局所用組成物では、この担体は、局所用担体を含む。適切な局所用担体として、リン酸緩衝生理食塩水、等張水、脱イオン水、単官能アルコール、対称性アルコール(symmetrical alcohols)、アロエベラゲル、アラントイン、グリセリン、ビタミンAおよびE油、鉱物油、プロピレングリコール、PEG-2ミリスチルプロピオネート、ジメチルイソソルビド、ヒマシ油、それらの組み合わせおよび同類のものから選択される1種または複数の成分が挙げられる。より具体的には、皮膚塗布用の担体として、プロピレングリコール、ジメチルイソソルビドおよび水が挙げられ、さらにより具体的には、リン酸緩衝生理食塩水、等張水、脱イオン水、単官能アルコールおよび対称性アルコールが挙げられる。
【0150】
局所用組成物の担体は、皮膚軟化剤、噴霧剤、溶媒、湿潤剤、増粘剤、粉末、香料、顔料および保存料から選択される1種または複数の成分をさらに含み得、これらは全て任意選択である。
【0151】
適切な皮膚軟化剤として下記が挙げられる:ステアリルアルコール、グリセリルモノリシノラート、ステアリン酸グリセリル、プロパン-1,2-ジオール、ブタン-1,3-ジオール、ミンク油、セチルアルコール、イソステアリン酸イソプロピル、ステアリン酸、パルミチン酸イソブチル、ステアリン酸イソセチル、オレイルアルコール、ラウリン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、オレイン酸デシル、オクタデカン-2-オール、イソセチルアルコール、パルミチン酸セチル、ジ-n-ブチルセバケート、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ポリエチレングリコール、トリエチレングリコール、ラノリン、ゴマ油、ヤシ油、落花生油、ヒマシ油、アセチル化ラノリンアルコール、石油、鉱物油、ミリスチン酸ブチル、イソステアリン酸、パルミチン酸、リノール酸イソプロピル、乳酸ラウリル、乳酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ミリスチン酸ミリスチル、およびそれらの組み合わせ。皮膚用の具体的な皮膚軟化剤として、ステアリルアルコールおよびポリジメチルシロキサンが挙げられる。皮膚ベースの局所用組成物中の皮膚軟化剤の量は、典型的には約5%~約95%である。
【0152】
適切な噴霧剤として、プロパン、ブタン、イソブタン、ジメチルエーテル、二酸化炭素、亜酸化窒素およびそれらの組み合わせが挙げられる。局所用組成物中の噴霧剤の量は、典型的には約0%~約95%である。
【0153】
適切な溶媒として下記が挙げられる:水、エチルアルコール、塩化メチレン、イソプロパノール、ヒマシ油、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフランおよびそれらの組み合わせ。具体的な溶媒として、エチルアルコールおよびホモトピックアルコール(homotopic alcohol)が挙げられる。局所用組成物中の溶媒の量は、典型的には約0%~約95%である。
【0154】
適切な湿潤剤として、グリセリン、ソルビトール、2-ピロリドン-5-カルボン酸ナトリウム、可溶性コラーゲン、フタル酸ジブチル、ゼラチンおよびそれらの組み合わせが挙げられる。具体的な湿潤剤としてグリセリンが挙げられる。局所用組成物中の湿潤剤の量は、典型的には0%~95%である。
【0155】
局所用組成物中の増粘剤の量は、典型的には約0%~約95%である。
【0156】
適切な粉末として下記が挙げられる:ベータ-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルシクロデキストリン、チョーク、タルク、フラー土、カオリン、デンプン、ガム、コロイド状二酸化ケイ素、ポリアクリル酸ナトリウム、テトラアルキルアンモニウムスメクタイト、トリアルキルアリールアンモニウムスメクタイト、化学的に変性されたケイ酸アルミニウムマグネシウム、有機的に変性されたモンモリロナイト粘土、水和ケイ酸アルミニウム、ヒュームドシリカ、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、モノステアリン酸エチレングリコールおよびそれらの組み合わせ。局所用組成物中の粉末の量は、典型的には0%~95%である。
【0157】
局所用組成物中の香料の量は、典型的には約0%~約0.5%であり、具体的には約0.001%~約0.1%である。
【0158】
適切なpH調整用添加剤として、局所用医薬組成物のpHを調整するのに十分な量のHClまたはNaOHが挙げられる。
【0159】
本医薬組成物または本製剤は、約10μM未満、約5μM未満、約1μM未満、約500nM未満または約100nM未満のEC50でmAChR M4のポジティブアロステリック調節を示し得る。本医薬組成物または本製剤は、約10μM~約1nM、約1μM~約1nM、約100nM~約1nMまたは10nM~約1nMのEC50でmAChR M4のポジティブアロステリック調節を示し得る。
【0160】
a.噴霧乾燥分散製剤
本開示の化合物を、噴霧乾燥分散体(SDD)として製剤化し得る。SDDは、ポリマーマトリックス中の薬物の単相の非晶質分子分散体である。この非晶質分子分散体は、固体マトリックス中に本化合物が分子的に「溶解」した固溶体である。薬物およびポリマーを有機溶媒に溶解させ、次いでこの溶液を噴霧乾燥することにより、SDDが得られる。薬学的応用のための噴霧乾燥の使用により、Biopharmaceutics Classification System(BCS)のクラスII(高浸透性、低溶解性)薬物およびクラスIV(低浸透性、低溶解性)薬物の溶解性が増加した非晶質分散体が生じ得る。製剤化およびプロセスの条件は、液滴から溶媒が迅速に蒸発し、そのため、相分離および結晶化には時間が不十分になるように選択される。SDDは、長期の安定性および製造性を示している。例えば、SDDでは、2年超の貯蔵寿命が示されている。SDDの利点として下記が挙げられるが、これらに限定されない:難水溶性化合物の経口生物学的利用能の増強、伝統的な固体剤形(例えば、錠剤およびカプセル剤)を使用する送達、再現可能であり、制御可能でありかつスケーラブルな製造プロセス、および幅広い物理的特性を有する構造的に多様な不溶性化合物への広い適用性。
【0161】
従って、一実施形態では、本開示は、式(I)の化合物を含む噴霧乾燥分散製剤を提供し得る。
【0162】
4.使用方法
本開示の化合物、医薬組成物および製剤は、ムスカリン性アセチルコリンレセプターの機能障害と関連する障害、例えば精神学的障害および/または精神医学的障害の処置の方法で使用され得る。本開示の化合物および医薬組成物は、哺乳動物におけるムスカリン性アセチルコリンレセプター活性の増強方法および哺乳動物における認知の増強方法でも使用され得る。これらの方法は、認知療法または行動療法との関連において処置結果を改善するための共治療方法をさらに含む。本明細書で説明されている使用方法では、追加の治療薬を本開示の化合物および組成物と同時にまたは逐次的に投与し得る。
【0163】
a.障害の処置
本開示の化合物、医薬組成物および製剤は、ムスカリン性アセチルコリンレセプターの機能障害と関連する障害、例えば精神学的障害および/または精神医学的障害の処置の方法で使用され得る。この処置の方法は、そのような処置を必要とする対象に、治療上有効な量の式(I)の化合物または治療上有効な量の式(I)の化合物を含む医薬組成物を投与することを含み得る。
【0164】
一部の実施形態では、本開示は、哺乳動物において認知を増強する方法であって、この哺乳動物に、治療上有効な量の式(I)の化合、または治療上有効な量の式(I)の化合物を含む医薬組成物を投与する工程を含む方法を提供する。
【0165】
本明細書で開示された化合物および組成物は、選択的なmAChR M4レセプター活性化と関連する様々な障害の処置、予防、寛解、制御およびこの障害のリスクの低減に有用であり得る。例えば、処置は、コリン作動性活性に影響を及ぼすのに有効な程度までの選択的なmAChR M4レセプター活性化を含み得る。障害は、コリン作動性活性(例えば、コリン作動性の機能低下)と関連し得る。そのため、提供されるのは、対象の障害を処置または予防する方法であって、この対象に、少なくとも1種の本開示の化合物または少なくとも1種の本医薬組成物をこの対象の障害を処置するのに有効な量で投与する工程を含む方法である。
【0166】
同様に提供されるのは、対象におけるmAChR M4レセプター活性と関連する1種または複数の障害の処置の方法であって、この対象に、治療上有効な量の式(I)の化合物または治療上有効な量の式(I)の化合物を含む医薬組成物を投与する工程を含む方法である。
【0167】
一部の実施形態では、本開示は、哺乳動物におけるムスカリン性アセチルコリンレセプターの機能障害と関連する障害の処置の方法であって、この哺乳動物に、有効な量の少なくとも1種の開示の化合物もしくはその薬学的に許容される塩、または少なくとも1種の開示の化合物もしくはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を投与する工程を含む方法を提供する。
【0168】
一部の実施形態では、本開示の化合物または組成物は、mAChR M4レセプターと関連する様々な精神学的障害、精神医学的障害および認知障害の処置で有用性を有し、これらの障害として、下記の状態または疾患の1種または複数が挙げられる:統合失調症、精神病性障害NOS、短期精神病性障害、統合失調症様障害、統合失調感情性障害、妄想性障害、共有精神病性障害、破局的な統合失調症、産後精神病、精神病性鬱病、精神病的破壊(psychotic break)、遅発性精神病、粘液水腫性精神病、職業性精神病、月経性精神病、2次精神病性障害、精神病的特徴と有する双極性I型障害、および物質誘発性精神病的障害。一部の実施形態では、精神病性障害は、下記から選択される病気と関連する精神病である:大鬱病性障害、情動障害、双極性障害、電解質障害、アルツハイマー病、精神学的障害、低血糖症、AIDS、ループスおよび心的外傷後ストレス障害。
【0169】
一部の実施形態では、障害は、下記から選択される精神学的障害である:脳腫瘍、レビー小体型認知症、多発性硬化症、サルコイドーシス、ライム病、梅毒、アルツハイマー病、パーキンソン病および抗NMDA受容体脳炎。
【0170】
一部の実施形態では、障害は、統合失調症、短期精神病性障害、統合失調症様障害、統合失調感情性障害、妄想性障害および共有精神病性障害から選択される精神病性障害である。一部の実施形態では、統合失調症は、破局的な統合失調症、緊張型統合失調症、妄想型統合失調症、残遺型統合失調症、解体型統合失調症および未分化型統合失調から選択される。一部の実施形態では、障害は、スキゾイドパーソナリティ障害、統合失調型パーソナリティ障害および妄想性パーソナリティ障害から選択される。一部の実施形態では、精神病性障害は、一般的な医学的状態に起因しており、かつ物質誘発性または薬物誘発性(フェンシクリジン、ケタミンおよび他の解離性麻酔薬、アンフェタミンおよび他の精神刺激薬、ならびにコカイン)である。
【0171】
一部の実施形態では、本開示は、認知障害を処置する方法であって、それを必要とする患者に有効な量の本開示の化合物または組成物を投与することを含む方法を提供する。一部の実施形態では、認知障害として下記が挙げられる:認知症(アルツハイマー病、虚血、多発脳梗塞性認知症、精神的外傷、血管の問題または脳卒中、HIV病、パーキンソン病、ハンチントン病、ピック病、クロイツフェルト-ヤコブ病、周生期低酸素症、他の一般的な医学的状態または薬物乱用と関連する)、せん妄、健忘障害、物質誘発性の持続性せん妄、HIV病に起因する認知症、ハンチントン病に起因する認知症、パーキンソン病に起因する認知症、パーキンソン病様-ALS認知症複合(Parkinsonian-ALS demential complex)、アルツハイマー型の認知症、加齢性の認知機能低下および軽度認知障害。
【0172】
Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disordersの第4版のテキスト改定版(DSM-IV-TR)(2000,American psychiatric Association,Washington DC)は、認知障害(例えば、認知症、せん妄、健忘障害および加齢性の認知機能低下)を含む診断ツールを提供する。Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disordersmpの第5版(DSM-5)(2013,American psychiatric Association,Washington DC)は、せん妄を含み、続いて主要な神経認知障害(NCD)、軽度のNCDおよびそれらの病原学的サブタイプの症候群を含むNCDの診断ツールを提供する。主要なまたは軽度のNCDのサブタイプとして下記が挙げられる:アルツハイマー病に起因するNCD、血管型NCD、レビー小体を伴うNCD、パーキンソン病に起因するNCD、前頭側頭型NCD、外傷性脳損傷に起因するNCD、HIV感染に起因するNCD、物質/薬物誘発性のNCD、ハンチントン病に起因するNCD、プリオン病に起因するNCD、別の医学的状態に起因するNCD、複数の病因に起因するNCD、および不特定のNCD。DSM-5のNCDカテゴリーは、認知機能中に原発性の臨床的欠損が存在し、かつ発生よりもむしろ獲得される障害の群を包含する。本明細書で使用される場合、用語「認知障害」は、DSM-IV-TRまたはDSM-5で説明されているこれらの認知障害および神経認知障害の処置を含む。精神障害の別の命名法、疾病分類および分類システムが存在すること、ならびにこれらのシステムが医学および科学の進歩と共に進化することを当業者は認識するであろう。そのため、用語「認知障害」は、他の診断源で説明されている同様の障害を含むことを意図している。
【0173】
一部の実施形態では、本開示は、統合失調症または精神病を処置する方法であって、それを必要とする患者に有効な量の本開示の化合物または組成物を投与することを含む方法を提供する。特定の統合失調症または精神病の病状は、妄想型、無秩序型、緊張型または未分化型の統合失調症および物質誘発性の精神病性障害である。DSM-IV-TRには、妄想型、無秩序型、緊張型、未分化型または残遺型の統合失調症および物質誘発性の精神病性障害を含む診断ツールが記載されている。DSM-5では、統合失調症のサブタイプが排除され、代わりに、統合失調症の中核症状の重症度を評価する、精神病性障害を有する個体中で現れている症状の種類および重症度の不均一性を捕捉する次元アプローチが含まれる。本明細書で使用される場合、用語「統合失調症または精神病」は、DSM-IV-TRまたはDSM-5で説明されているこれらの精神障害の処置を含む。精神障害の別の命名法、疾病分類および分類システムが存在すること、ならびにこれらのシステムが医学および科学の進歩と共に進化することを当業者は認識するであろう。そのため、用語「統合失調症または精神病」は、他の診断源で説明されている同様の障害を含むことを意図している。
【0174】
一部の実施形態では、本開示は、疼痛を処置する方法であって、それを必要とする患者に有効な量の本開示の化合物または組成物を投与することを含む方法を提供する。特定の疼痛の実施形態は、骨および関節の疼痛(骨関節炎)、反復性の運動痛、歯痛、癌性疼痛、筋膜の疼痛(筋損傷、線維筋痛)、手術前後の疼痛(一般外科、婦人科)、慢性疼痛および神経障害性の疼痛である。
【0175】
本化合物および本組成物は、本明細書で述べた疾患、障害および状態の予防、処置、制御、寛解またはこれらのリスクの低減の方法においてさらに有用であり得る。本化合物および本組成物は、他の薬剤との組み合わせで、上述の疾患、障害および状態の予防、処置、制御、寛解またはこれらのリスクの低減の方法においてさらに有用であり得る。
【0176】
mAChR M4の活性化を必要とする状態の処置では、適切な投薬量レベルは、1日当たり患者の体重1kg当たり約0.01~500mgであり得、この投薬量レベルを単一または複数の用量で投与し得る。この投薬量レベルは、約0.1~約250mg/kg/日または約0.5~約100mg/kg/日であり得る。適切な投薬量レベルは、約0.01~250mg/kg/日、約0.05~100mg/kg/日または約0.1~50mg/kg/日であり得る。この範囲内で、この投薬量は、0.05~0.5、0.5~5または5~50mg/kg/日であり得る。経口投与の場合、本組成物を、1.0~1000ミリグラムの活性成分を含み、特に処置する患者への投薬量の対症調節のために1.0、5.0、10、15、20、25、50、75、100、150、200、250、300、400、500、600、750、800、900または1000ミリグラムの活性成分を含む錠剤の形態で提供し得る。本化合物を1日当たり1~4回のレジメンで投与し得、好ましくは1日当たり1回または2回のレジメンで投与し得る。この投薬レジメンを調整して最適な治療反応を生じさせ得る。しかしながら、任意の特定の患者のための具体的な用量レベルおよび投薬の頻度は、変更され得、かつ様々な因子(例えば、用いられる具体的な化合物の活性、この化合物の代謝安定性および作用の長さ、年齢、体重、全体的な健康、性別、食事、投与の様式および時間、排出速度、薬物の組み合わせ、特定の状態の重症度、ならびに治療を受けている宿主)に依存するであろうことが理解されるであろう。
【0177】
そのため、一部の実施形態では、本開示は、少なくとも1個の細胞中でmAChR M4レセプター活性を活性化させる方法であって、この少なくとも1個の細胞と、この少なくとも1種の細胞中でmAChR M4を活性化させるのに有効な量で少なくとも1種の開示の化合物または開示の方法の少なくとも1種の生成物とを接触させる工程を含む方法に関する。一部の実施形態では、この細胞は、哺乳動物であり、例えばヒトである。一部の実施形態では、この細胞は、この接触させる工程前に対象から単離されている。一部の実施形態では、接触させることは、対象への投与による。
【0178】
一部の実施形態では、本発明は、対象中でmAChR M4活性を活性化させる方法であって、この対象に、この対象中でmAChR M4活性を活性化させるのに有効な投薬および量で少なくとも1種の開示の化合物または開示の方法の少なくとも1種の生成物を投与する工程を含む方法に関する。一部の実施形態では、この対象は、哺乳動物であり、例えばヒトである。一部の実施形態では、この哺乳動物は、この投与する工程前にmAChR M4アゴニズムが必要であると診断されている。一部の実施形態では、この哺乳動物は、この投与する工程前にmAChR M4活性化が必要であると診断されている。一部の実施形態では、この方法は、mAChR M4アゴニズムが必要である対象を同定する工程をさらに含む。
【0179】
一部の実施形態では、本発明は、哺乳動物における選択的なmAChR M4活性化と関連する障害、例えばコリン作動性活性と関連する障害の処置の方法であって、この哺乳動物に、この哺乳動物の障害を処置するのに有効な投薬および量で少なくとも1種の開示の化合物または開示の方法の少なくとも1種の生成物を投与する工程を含む方法に関する。一部の実施形態では、この哺乳動物は、ヒトである。一部の実施形態では、この哺乳動物は、この投与する工程前にこの障害を処置する必要があると診断されている。一部の実施形態では、この方法は、この障害の処置の必要がある対象を同定する工程をさらに含む。
【0180】
一部の実施形態では、この障害は、下記から選択され得る:精神病、統合失調症、行動障害、破壊的行動障害、双極性障害、不安の精神病エピソード、精神病と関連する不安、精神病性気分障害、例えば重度の大鬱病性障害;精神病性障害と関連する気分障害、急性躁病、双極性障害と関連する鬱病、統合失調症と関連する気分障害、精神遅滞の行動的発現、自閉症性障害、運動障害、トゥレット症候群、無動性硬直症候群(akinetic-rigid syndrome)、パーキンソン病と関連する運動障害、遅発性ジスキネジア、薬物誘発性および神経変性ベースのジスキネジア、注意欠陥多動障害、認知障害、認知症および記憶障害。
【0181】
一部の実施形態では、この障害は、アルツハイマー病である。
【0182】
b.ムスカリン性アセチルコリンレセプター活性の増強
一部の実施形態では、本開示は、哺乳動物におけるムスカリン性アセチルコリンレセプター活性の増強の方法であって、この哺乳動物に、有効な量の少なくとも1種の開示の化合物もしくはその薬学的に許容される塩、または少なくとも1種の開示の化合物もしくはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を投与する工程を含む方法に関する。
【0183】
一部の実施形態では、ムスカリン性アセチルコリンレセプター活性の増強によりムスカリン性アセチルコリンレセプター活性が増加する。一部の実施形態では、ムスカリン性アセチルコリンレセプター活性の増強は、ムスカリン性アセチルコリンレセプターの部分的アゴニズムである。一部の実施形態では、ムスカリン性アセチルコリンレセプター活性の増強は、ムスカリン性アセチルコリンレセプターのポジティブアロステリック調節である。
【0184】
一部の実施形態では、投与された化合物は、約10μM未満、約5μM未満、約1μM未満、約500nM未満または約100nM未満のEC50でmAChR M4の増強を示す。一部の実施形態では、投与された化合物は、約10μM~約1nM、約1μM~約1nM、約100nM~約1nMまたは約10nM~約1nMのEC50でmAChR M4の増強を示す。
【0185】
一部の実施形態では、この哺乳動物は、ヒトである。一部の実施形態では、この哺乳動物は、この投与する工程前にムスカリン性アセチルコリンレセプター活性の増強を必要とする診断されている。一部の実施形態では、この方法は、ムスカリン性アセチルコリンレセプター活性の増強を必要とする哺乳動物を同定する工程をさらに含む。一部の実施形態では、このムスカリン性アセチルコリンレセプター活性の増強により、この哺乳動物においてムスカリン性アセチルコリンレセプター活性と関連する障害が処置される。一部の実施形態では、このムスカリン性アセチルコリンレセプターは、mAChR M4である。
【0186】
一部の実施形態では、哺乳動物におけるムスカリン性アセチルコリンレセプター活性の増強は、ムスカリン性レセプターの機能障害と関連する精神学的障害および/または精神医学的障害、例えば本明細書で開示された精神学的障害または精神医学的障害の処置と関連する。一部の実施形態では、このムスカリン性レセプターは、mAChR M4である。
【0187】
一部の実施形態では、本開示は、細胞中でのムスカリン性アセチルコリンレセプター活性の増強の方法であって、この細胞と、有効な量の少なくとも1種の開示の化合物またはその薬学的に許容される塩とを接触させる工程を含む方法を提供する。一部の実施形態では、この細胞は、哺乳動物(例えば、ヒト)である。一部の実施形態では、この細胞は、この接触させる工程前に哺乳動物から単離されている。一部の実施形態では、接触させることは、哺乳動物への投与による。
【0188】
c.認知の増強
一部の実施形態では、本発明は、哺乳動物において認知を増強する方法であって、この哺乳動物に、有効な量の少なくとも1種の開示の化合物またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物もしくは多形を投与する工程を含む方法に関する。
【0189】
一部の実施形態では、この哺乳動物は、ヒトである。一部の実施形態では、この哺乳動物は、この投与する工程前に認知の増強を必要とすると診断されている。一部の実施形態では、この方法は、認知の増強を必要とする哺乳動物を同定する工程をさらに含む。一部の実施形態では、認知の増強の必要性は、ムスカリン性レセプターの機能障害と関連している。一部の実施形態では、このムスカリン性レセプターは、mAChR M4である。
【0190】
一部の実施形態では、この認知の増強は、Novel Object Recognitionでの統計的に有意な増加である。一部の実施形態では、この認知の増強は、Wisconsin Card Sorting Testの成績での統計的に有意な増加である。
【0191】
d.共治療方法
本発明は、認知療法または行動療法との関連において処置結果を改善するための選択的なmAChR M4活性化剤の投与をさらに対象とする。換言すると、一部の実施形態では、本発明は、哺乳動物に有効な量および投薬の少なくとも1種の開示の化合物またはその薬学的に許容される塩を投与する工程を含む共治療方法に関する。
【0192】
一部の実施形態では、投与により、認知療法または行動療法との関連において処置結果が改善される。認知療法または行動療法に関連する投与は、連続的または間欠的であり得る。投与は、療法と同時である必要はなく、療法前、その間および/またはその後であり得る。例えば、認知療法または行動療法を本化合物の投与の1、2、3、4、5、6、7日前または後に行い得る。さらなる例として、認知療法または行動療法を本化合物の投与の1、2、3または4週間前または後に行い得る。さらなる例として、認知療法または行動療法を、投与した化合物の1、2、3、4、5、6、7、8、9または10半減期の期間内で投与の前または後に行い得る。
【0193】
本開示の共治療方法を本開示の化合物、組成物、キットおよび使用と関連して使用し得ることが理解される。
【0194】
e.併用療法
本明細書で説明された使用方法では、追加の治療薬を本開示の化合物および組成物と同時にまたは逐次的に投与し得る。逐次投与として、本開示の化合物および組成物の前または後の投与が挙げられる。一部の実施形態では、この追加の治療薬を本開示の化合物と同一の組成で投与し得る。他の実施形態では、追加の治療薬の投与と本開示の化合物の投与との間に時間間隔が存在し得る。一部の実施形態では、開示の化合物との追加の治療薬の投与により、この他の治療薬のより低い用量および/またはより少ない頻度での投与を可能にし得る。1種または複数の他の活性成分と組み合わせて使用される場合、本発明の化合物およびこの他の活性成分をそれぞれ単独で使用される場合と比べて低い用量で使用し得る。従って、本発明の医薬組成物として、式(I)の化合物に加えて1種または複数の他の活性成分を含むものが挙げられる。上記の組み合わせには、本発明の化合物と1種の他の活性化合物との組み合わせだけでなく、本発明の化合物と2種以上の他の活性化合物との組み合わせも含まれる。
【0195】
本開示の化合物を、この化合物または1種もしくは複数の他の薬物が有用性を有する上述した疾患、障害および状態の処置、予防、制御、寛解またはこれらのリスクの低減において、単一の薬剤としてまたはこの他の薬物との組み合わせで使用し得、この薬物の組み合わせは、いずれかの薬物のみと比べて安全であるかまたは効果的である。従って、この他の薬物を開示の化合物と同時にまたは逐次的に、通常使用される経路および量で投与し得る。開示の化合物が1種または複数の他の薬物と同時に使用される場合、そのような薬物および本開示の化合物を含む単位剤形の医薬組成物を使用し得る。しかしながら、この併用療法を重複するスケジュールで施すことも可能である。1種または複数の活性成分と開示の化合物との組み合わせは、単一の薬剤としてのいずれかと比べて効果的であり得ることも想定される。そのため、1種または複数の他の活性成分と組み合わせて使用される場合、本開示の化合物およびこの他の活性成分をそれぞれ単独で使用される場合と比べて低い用量で使用し得る。
【0196】
本発明の医薬組成物および方法は、上述した病理学的状態の処置で通常適用される、本明細書に記載された他の治療的に活性な化合物をさらに含み得る。
【0197】
上記の組み合わせには、開示の化合物と1種の他の活性化合物との組み合わせだけでなく、本発明の化合物と2種以上の他の活性化合物との組み合わせも含まれる。同様に、開示の化合物を、開示の化合物が有用である疾患または状態の予防、処置、制御、寛解またはこれらのリスクの低減で使用される他の薬物と組み合わせて使用し得る。従って、そのような他の薬物を本発明の化合物と同時にまたは逐次的に、通常使用される経路および量で投与し得る。本発明の化合物が1種または複数の他の薬物と同時に使用される場合、開示の化合物に加えてそのような他の薬物を含む医薬組成物が好ましい。従って、この医薬組成物として、本発明の化合物に加えて1種または複数の他の活性成分も含むものが挙げられる。
【0198】
開示の化合物と第2の活性成分との重量比は、変更され得、各成分の有効用量に依存するであろう。一般に、それぞれの有効用量が使用される。そのため、例えば、本発明の化合物が別の薬剤と組み合わされる場合、開示の化合物とこの他の薬剤との重量比は、一般に約1000:1~約1:1000の範囲であり、好ましくは約200:1~約1:200の範囲である。本発明の化合物と他の活性成分との組み合わせは、一般に上述した範囲内でもあるが、いずれの場合にも各活性成分の有効用量を使用すべきである。
【0199】
そのような組み合わせでは、開示の化合物および他の活性剤を別々にまたは同時に投与し得る。加えて、1つの要素の投与は、他の薬剤の投与前、それと同時またはその後であり得る。
【0200】
従って、本開示の化合物を単独で使用し得るか、または主題の適応症で有益であることが知られている他の薬剤と組み合わせて使用し得るか、または本開示の化合物の効力、安全性、利便性を増加させるか、または望ましくない副作用もしくは毒性を低減させるレセプターまたは酵素に影響を及ぼす他の薬剤と組み合わせて使用し得る。本主題の化合物および他の薬剤を同時療法または固定の組み合わせのいずれかで共投与し得る。
【0201】
一部の実施形態では、本化合物を抗アルツハイマー剤、ベータ-セクレターゼ阻害剤、コリン作動薬、ガンマ-セクレターゼ阻害剤、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤、M1アロステリックアゴニスト、M1ポジティブアロステリック調節因子、イブプロフェン等のNASID、ビタミンEおよび抗アミロイド抗体と組み合わせて用い得る。別の実施形態では、本主題の化合物をアジナゾラム、アロバルビタール、アロニミド、アルプラゾラム、アミスルピリド、アミトリプチリン、アモバルビタール、アモキサピン、アリピプラゾール、ベンタゼパム、ベンゾクタミン、ブロチゾラム、ブプロピオン、ブスピロン、ブタバルビタール、ブタルビタール、カプリド、カルボクロラール、クロラールベタイン、抱水クロラール、クロミプラミン、クロナゼパム、クロペリドン、クロラゼプ酸、クロルジアゼポキシド、クロルエテート、クロルプロマジン、クロザピン、シプラゼパム、デシプラミン、デクスクラモル、ジアゼパム、ジクロラルフェナゾン、ジバルプロエクス、ジフェンヒドラミン、ドキセピン、エスタゾラム、エトクロルビノール、エトミデート、フェノバム、フルニトラゼパム、フルペンチキソール、フルフェナジン、フルラゼパム、フルボキサミン、フルオキセチン、フォサゼパム、グルテチミド、ハラゼパム、ハロペリドール、ヒドロキシジン、イミプラミン、リチウム、ロラゼパム、ロルメタゼパム、マプロチリン、メクロカロン、メラトニン、メホバルビタール、メプロバメート、メタカロン、ミダフルール、ミダゾラム、ネファゾドン、ニソバメート、ニトラゼパム、ノルトリプチリン、オランザピン、オキサゼパム、パラアルデヒド、パロキセチン、ペントバルビタール、ペルラピン、ペルフェナジン、フェネルジン、フェノバルビタール、プラゼパム、プロメタジン、プロポフォール、プロトリプチリン、クアゼパム、クエチアピン、レクラゼパム、リスペリドン、ロレタミド、セコバルビタール、セルトラリン、スプロクロン、テマゼパム、チオリダジン、チオチキセン、トラカゾレート、トラニルシプロミン、トラゾドン、トリアゾラム、トレピパム、トリセタミド、トリクロホス、トリフロペラジン、トリメトジン、トリミプラミン、ウルダゼパム、ベンラファキシン、ザレプロン、ジプラシドン、ゾラゼパム、ゾルピデムおよびそれらの塩、およびそれらの組み合わせ、ならびに同類のもの等の鎮静剤、催眠剤、精神安定剤、統合失調症治療薬(定型および非定型)、抗不安薬、シクロピロロン、イミダゾピリジン、ピラゾロピリミジン、弱トランキライザー、メラトニンアゴニストおよびメラトニンアンタゴニスト、メラトナジック剤(melatonergic agent)、ベンゾジアゼピン、バルビツレート、5HT-2アンタゴニストおよび同類のものと組み合わせて用い得るか、または本主題の化合物を光療法もしくは電気刺激等の物理的方法の使用と共に投与し得る。
【0202】
一部の実施形態では、本化合物をレボドパ(カルビドパまたはベンセラジド等の選択的な脳外デカルボキシラーゼ阻害剤と共にまたはこの阻害剤なしで)、ビペリデン(任意選択でその塩酸塩また乳酸塩として)およびトリヘキシフェニジル(ベンズヘキソール)塩酸塩等の抗コリン作動薬、エンタカポン等のCOMT阻害剤、MOA-B阻害剤、抗酸化剤、A2aアデノシンレセプターアンタゴニスト、コリン作動性アゴニスト、NMDAレセプターアンタゴニスト、セロトニンレセプターアンタゴニスト、ならびにドーパミンレセプターアゴニスト、例えばアレンテモール、ブロモクリプチン、フェノルドパム、リスリド、ナキサゴリド、ペルゴリドおよびプラミペキソールと組み合わせて用い得る。ドーパミンアゴニストは、薬学的に許容される塩の形態(例えば、アレンテモール臭化水素酸塩、ブロモクリプチンメシル酸塩、フェノルドパムメシル酸塩、ナキサゴリド塩酸塩およびペルゴリドメシル酸塩)であり得ることが認識されるであろう。ルシリドおよびプラミペキソールは、通常、非塩の形態で使用される。
【0203】
一部の実施形態では、本化合物を神経遮断薬のフェノチアジン、チオキサンテン、複素環ジベンザゼピン、ブチロフェノン、ジフェニルブチルピペリジンおよびインドロンのクラスからの化合物と組み合わせて用い得る。フェノチアジンの適切な例として、クロルプロマジン、メソリダジン、チオリダジン、アセトフェナジン、フルフェナジン、ペルフェナジンおよびトリフルオペラジンが挙げられる。チオキサンテンの適切な例として、クロルプロチキセンおよびチオチキセンが挙げられる。ジベンザゼピンの例は、クロザピンである。ブチロフェノンの例は、ハロペリドールである。ジフェニルブチルピペリジンの例は、ピモジドである。インドロンの例は、モリンドロンである。他の神経遮断薬として、ロキサピン、スルピリドおよびリスペリドンが挙げられる。これらの神経遮断薬は、本主題の化合物と組み合わされて使用される場合に薬学的に許容される塩の形態であり得、例えばクロルプロマジン塩酸塩、メソリダジンベシル酸塩、チオリダジン塩酸塩、アセトフェナジンマレイン酸塩、フルフェナジン塩酸塩、フルフェナジンエナント酸塩、フルフェナジンデカン酸塩、トリフルオペラジン塩酸塩、チオチキセン塩酸塩、ハロペリドールデカン酸塩、ロキサピンコハク酸塩およびモリンドン塩酸塩の形態であり得ることが認識されるであろう。ペルフェナジン、クロルプロチキセン、クロザピン、ハロペリドール、ピモジドおよびリスペリドンは、通常、非塩の形態で使用される。そのため、本主題の化合物をアセトフェナジン、アレンテモール、アリピプラゾール、アミスルプリド、ベンズヘキソール、ブロモクリプチン、ビペリデン、クロルプロマジン、クロルプロチキセン、クロザピン、ジアゼパム、フェノルドパム、フルフェナジン、ハロペリドール、レボドパ、ベンセラジドとのレボドパ、カルビドパとのレボドパ、リスリド、ロキサピン、メソリダジン、モリンドロン、ナキサゴリド、オランザピン、ペルゴリド、ペルフェナジン、ピモザイド、プラミペキソール、ケチアピン、リスペリドン、スルピリド、テトラベナジン、トリヘキシフェニジル、チオリダジン、チオチキセチン、トリフルオペラジンまたはジプラシドンと組み合わせて用い得る。
【0204】
一部の実施形態では、本化合物を抗鬱薬または抗不安薬と組み合わせて用い得、例えばノルエピネフリン再取り込み阻害剤(例えば、第三級アミン三環および第二級アミン三環)、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、モノアミンオキシダーゼ阻害剤(MOAI)、モノアミンオキシダーゼの可逆的阻害剤(RIMA)、セロトニンおよびノルアドレナリンの再取り込み阻害剤(SNRI)、副腎皮質刺激ホルモン放出因子(CRF)アンタゴニスト、α-アドレノセプターアンタゴニスト、ニューロキン-1レセプターアンタゴニスト、非定型抗鬱薬、ベンゾジアゼピン、5-HT1Aアゴニストまたはアンタゴニスト、特に5-HT1A部分アゴニスト、ならびに副腎皮質刺激ホルモン放出因子(CRF)アンタゴニストと組み合わせて用い得る。具体的な薬剤として下記が挙げられる:アミトリプチリン、クロミプラミン、ドキセピン、イミプラミンおよびトリミプラミン;アモキサピン、デシプラミン、マプロチリン、ノルトリプチリンおよびプロトリプチリン;フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチンおよびセルトラリン;イソカルボキサジド、フェネルジン、トラニルシプロミンおよびセレギリン;モクロベミド;ベンラファキシン;デュロキセチン;アプレピタント;ブプロピオン、リチウム、ネファゾドン、トラゾドンおよびビロキサジン;アルプラゾラム、クロルジアゼポキシド、クロナゼパム、クロラゼペート、ジアゼパム、ハラゼパム、ロラゼパム、オキサゼパムおよびパラゼパム;ブスピロン、フレシノキサン、ゲピロンおよびイプサピロン、ならびにそれらの薬学的に許容される塩。
【0205】
一部の実施形態では、本化合物をオルソステリックムスカリンアゴニスト、ムスカリン増強剤またはコリンエステラーゼ阻害剤と共投与し得る。一部の実施形態では、本化合物をGlyT1阻害剤および同類のもの(例えば、限定されないが、リスペリドン、クロザピン、ハロペリドール、フルオキセチン、プラゼパム、キサノメリン、リチウム、フェノバルビトールおよびそれらの塩ならびにそれらの組み合わせ)と共投与し得る。
【0206】
f.投与の様式
処置方法は、開示の組成物を投与するいくつもの様式を含み得る。投与の様式として下記が挙げられ得る:錠剤、丸薬、糖衣錠、硬質および軟質のゲルカプセル剤、顆粒剤、ペレット剤、水性、脂質、油性または他の溶液、水中油型乳濁液等の乳濁液、リポソーム、水性または油性の懸濁液、シロップ剤、エリキシル剤、固体乳濁液、固体分散体または分散性粉末。経口投与用の医薬組成物の調製の場合、本薬剤を一般に知られておりかつ使用されているアジュバントおよび添加剤と混合し得、例えばアラビアゴム、タルク、デンプン、糖(例えば、マンニトース(mannitose)、メチルセルロース、ラクトース)、ゼラチン、界面活性剤、ステアリン酸マグネシウム、水性または非水性の溶媒、パラフィン誘導体、架橋剤、分散剤、乳化剤、潤滑剤、保護剤、香味料(例えば、エーテル油)、溶解性増強剤(例えば、安息香酸ベンジルもしくはベンジルアルコール)または生物学的利用能増強剤(例えば、GelucireTM)と混合し得る。本医薬組成物では、本薬剤は、微粒子中に分散されていてもよく、例えばナノ粒子組成物であってもよい。
【0207】
非経口投与の場合、本薬剤を生理学的に許容される希釈剤(例えば、水、緩衝液、可溶化剤を含むかもしくは含まない油、界面活性剤、分散剤または乳化剤)に溶解または懸濁させ得る。油として、例えば、限定されないが、オリーブ油、落花生油、綿実油、ダイズ油、ヒマシ油およびゴマ油を使用し得る。より一般的には、非経口投与の場合、本薬剤は、水性、脂質、油性もしくは他の種類の溶液もしくは懸濁液の形態であり得るか、またはリポソームもしくはナノ懸濁液の形態で投与され得る。
【0208】
用語「非経口的に」は、本明細書で使用される場合、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸骨内、皮下および関節内の注射および注入を含む投与の様式を指す。
【0209】
5.キット
一態様では、本開示は、少なくとも1種の開示の化合物またはその薬学的に許容される塩と、
(a)mAChR M4活性を増加させることが知られている少なくとも1種の薬剤、
(b)mAChR M4活性を低下させることが知られている少なくとも1種の薬剤、
(c)コリン作動性活性と関連する障害を処置することが知られている少なくとも1種の薬剤、
(d)コリン作動性活性と関連する障害を処置するための説明書、
(e)M4レセプター活性と関連する障害を処置するための説明書
または
(f)認知療法もしくは行動療法に関連してこの化合物を投与するための説明書
の1つまたは複数とを含むキットを提供する。
【0210】
一部の実施形態では、少なくとも1種の開示の化合物および少なくとも1種の薬剤は、共製剤化される。一部の実施形態では、少なくとも1種の開示の化合物および少なくとも1種の薬剤は、共パッケージされる。このキットは、他の成分と共パッケージされ、共製剤化され、かつ/または共送達される化合物および/または生成物も含み得る。例えば、薬物製造業者、薬物再販売業者、医師、調剤店または薬剤師は、開示の化合物および/または生成物と、患者への送達のための別の成分とを含むキットを提供し得る。
【0211】
そのため、本開示のキットを開示の使用方法に関連して用い得る。
【0212】
このキットは、このキットの使用により哺乳動物(特にヒト)の医学的状態の処置がもたされる情報、説明または両方をさらに含み得る。この情報および説明は、言語、画像または両方および同類のものの形態であり得る。加えてまたは代わりに、このキットは、本化合物、組成物または両方と、好ましくは哺乳動物(例えば、ヒト)の医学的状態の処置または予防の利益を有する化合物または組成物の適用方法に関する情報、説明または両方とを含み得る。
【0213】
本発明の化合物および方法は、本発明の範囲の例示として意図されており、限定を意図するものではない下記の実施例を参照することにより、よりよく理解されるであろう。
【実施例】
【0214】
全てのNMRスペクトルを400MHz AMX Bruker NMR分光計で記録した。1H化学シフトを、内部標準としての重水素化溶媒によるppm低磁場でのδ値で報告する。データを下記の通りに報告する:化学シフト、多重度(s=一重項、bs=幅広い一重項、d=二重項、t=三重項、q=四重項、dd=二重項の二重項、m=多重項、ABq=AB四重項)、結合定数、積分。下記のパラメータにより、脱ガス装置を備えたバイナリポンプ、高性能オートサンプラー、サーモスタット付きカラムコンパートメント、C18カラム、ダイオードアレイ検出器(DAD)およびAgilent 6150 MSDで構成されたAgilent 1200システムを使用して、逆相LCMS分析を実施した。勾配条件は、1.4分にわたる水中の水相0.1%TFAを含む5%から95%へのアセトニトリルであった。試料を0.5mL/分においてWaters Acquity UPLC BEH C18カラム(1.7μm、1.0×50mm)で分離し、カラムおよび溶媒の温度を55℃で維持した。DADを、190~300nmを走査するように設置し、使用する信号は、220nmおよび254nm(両方とも4nmのバンド幅を有する)であった。MS検出器は、エレクトロスプレーイオン源で構成されており、低分解能マススペクトルを、0.13サイクル/秒での0.2AMUのステップサイズおよび0.008分のピーク幅で140~700AMUを走査することにより取得した。乾燥ガス流を300℃で1分当たり13リットルに設定し、ネブライザ圧を30psiに設定した。キャピラリニードル電圧を3000Vに設定し、フラグメンター電圧を100Vに設定した。Agilent Chemstation and Analytical Studio Reviewerソフトウェアでデータ取得を実施した。
【0215】
下記の実施例で使用されている略語として、下記が挙げられる:BINAPは、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチルであり;Bocは、tert-ブチルオキシカルボニルであり;dbaは、ジベンジリデンアセトンであり;DCMは、ジクロロメタンであり;DIEAは、N,N-ジイソプロピルエチルアミンであり;DMFは、N,N-ジメチルホルムアミドであり;DMSOは、ジメチルスルホキシドであり;dppfは、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンであり;dtbbpyは、4,4’-ジ-tert-ブチル-2,2’-ビピリジンであり;Et3Nは、トリエチルアミンであり;EtOAcは、酢酸エチルであり;HATUは、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスフェートであり;iPAは、イソプロピルアルコールであり;LEDは、発光ダイオードであり;MeCNは、アセトニトリルであり;MeOHは、メタノールであり;ppyは、(2-ピリジニル)フェニルであり;r.t.は、室温であり;RTは、保持時間であり;TFAは、トリフルオロ酢酸であり;THFは、テトラヒドロフランであり;TsOHは、p-トルエンスルホン酸であり;Xantphosは、4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテンである。
【0216】
実施例1.概括的なアミン合成
下記は、本明細書で開示されている化合物を調製するために使用されるアミンのうちの2種の例示的合成である。
【化9】
【0217】
4-(2-ヒドロキシプロパン-2-イル)ベンゾニトリル。4-ヨードベンゾニトリル(10.0g、43.7mmol、1.0eq.)のTHF(218mL)溶液に、-70℃未満の温度を維持するように-78℃でn-ブチルリチウム(ヘキサン中に2.5M、22.7mL、56.8mmol、1.3eq.)を滴下した。1時間後、-70℃未満の温度を維持しつつアセトン(32.0mL、436.6mmol、10.0eq.)を添加した。ドライアイス浴を取り外した。RTで16時間後、NH4Clの飽和溶液(100mL)を添加し、続いてEtOAc(250mL)を添加した。層を分離した。水層をEtOAc(2回×200mL)で抽出した。まとめた有機層をブラインで洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、ろ過し、次いで濃縮した。残留物をシリカゲル(0~60%EtOAc/ヘキサン)でのフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製し、表題の化合物を粘性油状物(4.88、69%収率)として得た。ES-MS[M+1]+:162.4;1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ 7.76(dd,J=10,2Hz,2H),7.66(dd,J=8.6,2Hz,2H),5.28(s,1H),1.43(s,6H).
【0218】
2-(4-(アミノメチル)フェニル)プロパン-2-オール(X1)。4-(2-ヒドロキシプロパン-2-イル)ベンゾニトリル(4.88g、30.3mmol、1.0eq.)のTHF(200mL)溶液に0℃で水素化リチウムアルミニウムの溶液(THF中に2.0M、45.4mL、90.8mmol)を滴下した。0℃で30分後、氷浴を取り外し、この反応物を加熱して還流させた。30分後、クリーム状ペーストが生じた。熱源を取り外した。0℃でロッシェル塩の飽和溶液(50mL)を緩やかに添加し、続いてMeOH(50mL)を添加した。この混合物を1時間にわたりRTで撹拌し、セライトのパッドに通してろ過し、このパッドをDCM中の15%MeOHでさらにすすいだ。集めたろ液を乾燥させ(MgSO
4)、ろ過し、次いで濃縮した。残留物を、共溶媒としてのDCMと共にDCM/MeOH/NH
4OH(89:10:1)の溶液を使用するシリカゲルでのフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製し、表題の化合物を白色結晶性固体(4.25g、85%収率)として得た。ES-MS[M+1]
+:166.3;
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6)δ 7.38(d,J=8.3Hz,2H),7.24(d,J=8.4Hz,2H),4.93(bs,1H),3.68(s,2H),1.41(s,6H);
13C NMR(100MHz,DMSO-d
6)δ 148.9,142.1,126.9,124.7,71,45.9,32.5.
【化10】
【0219】
反応バイアル中で、tert-ブチル3-アミノアゼチジン-1-カルボキシレート(CAS No.217806-26-3)(938mg、4.49mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(206mg、0.22mmol)、BINAP(210mg、0.34mmol)、炭酸セシウム(2.21g、6.74mmol)、4-ブロモ-5-クロロ-2-メトキシピリジン(CAS No.1211534-25-6)(500.mg、2.25mmol)および1,4-ジオキサン(18mL)を添加した。このバイアルに蓋をし、窒素でパージした。次いで、この反応バイアルを4時間にわたり100℃まで加熱した。この混合物をセライトのパッドに通してろ過し、このパッドをEtOAc/DCM(1:1、2回×100mL)で洗浄した。ろ液を濃縮した。シリカゲル(80Gカラム、0~50%EtOAc/ヘキサン)でのフラッシュカラムクロマトグラフィーを使用する精製により、Bos-アミンをオフホワイトの粉末(570mg)として得た。この物質を1,4-ジオキサン(11mL)に溶解させ、塩酸(1,4-ジオキサン中に4M)(3mL、12mmol)を添加した。この混合物を、脱保護が完了するまでr.t.で撹拌した。溶媒を除去して、所望の生成物を、ビスHCl塩の白色粉末(555mg、2段階全体で86%収率)を得た。ES-MS[M+1]+:214.2.
【0220】
実施例2.N-[(3-フルオロ-4-メトキシ-フェニル)メチル]-2,4-ジメチル-キノリン-6-カルボキサミド(化合物1)
【化11】
6-ブロモ-2,4-ジメチルキノリン(A)。Teflon隔壁および磁気撹拌子を備えた40mLの反応バイアルに、6-ブロモ-2-メチルキノリン(555.2mg、2.5mmol、1.0eq.)、Ir触媒(22.9mg、0.030mmol)、p-トルエンスルホン酸一水和物(951mg、5.0mmol、2.0eq.)、DMSO(10.0mL、0.25M)およびメタノール(20.0mL、0.50M)を詰めた。この混合物を、出口針で10分にわたり窒素を通すことにより脱気した。エチル-2-メルカプトプロプロピオネート(16.3uL、0.130mmol、0.05eq.)を添加した。この混合物を、小型ファン下で室温にて青色LEDで照射した。5日後に、エチル-2-メルカプトプロピオネート(16.3uL、0.130mmol、0.05eq.)をさらに3回添加し、所望の生成物への変換を完了させた。1M NaOH溶液(10.0mL)およびDCM(100.0mL)を添加した。有機層を分離し、ブラインで洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、ろ過し、次いで濃縮した。粗物質を、シリカゲル(0~20%EtOAc/ヘキサン)でのフラッシュクロマトグラフィーを使用して精製して、表題の化合物(513mg、87%収率)を白色結晶性固体として得た。
1H NMR(400MHz,CDCl
3):δ 8.11(s,1H),7.90(d,J=8.9Hz,1H),7.75(d,J=8.9Hz,1H),7.18(s,1H),2.70(s,3H),2.65(s,3H);ES-MS[M+1]
+:236.4.
【0221】
【化12】
メチル2,4-ジメチルキノリン-6-カルボキシレート(B)。6-ブロモ-2,4-ジメチルキノリン(A)(513mg、2.17mmol、1.0eq)のDMF(13.74mL、0.08M)およびメタノール(13.74mL、0.08M)溶液に、トリエチルアミン(1.33mL、9.78mmol、4.5eq.)を添加し、続いて[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(318.8mg、0.43mmol、0.2eq.)および酢酸パラジウム(II)(48.8mg、0.22mmol、0.10eq.)を添加した。この反応混合物をCOで飽和させ、次いで16時間にわたりCOatm(風船)下で80℃にて撹拌した。室温まで冷却した後、この混合物をセライトプラグに通してろ過し、EtOACで溶出した。ろ液を減圧下で濃縮した。粗物質を、逆相HPLCシステムを使用して精製し、表題の化合物(386mg、83%収率)を淡黄色固体して得た。
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6):δ 8.66(s,1H),8.17(d,J=8.7Hz,1H),7.75(d,J=8.7Hz,1H),7.40(s,1H),3.94(s,3H),2.71(s,3H),2.65(s,3H);ES-MS[M+1]
+:216.4.
【化13】
【0222】
2,4-ジメチルキノリン-6-カルボン酸(C)。メチル2,4-ジメチルキノリン-6-カルボキシレート(B)(386mg、1.79mmol、1.0eq.)のTHF(9.0mL、0.2M)溶液に、水酸化リチウムの溶液(1M、8.97mL、8.97mmol、5.0eq.)を添加した。この反応混合物を16時間にわたり室温で撹拌し、水で希釈した。2M HCl溶液を添加して、pHを約3~4に調整した。この混合物をiPA/CHCl
3(1:3)(3回)で抽出した。まとめた抽出物をろ過し、次いで濃縮して、表題の化合物(340mg、94%収率)をオフホワイト固体として得て、さらに精製することなく次の工程に用いた。
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6):δ 8.67(s,1H),8.22(d,J=8.6Hz,1H),8.03(d,J=8.6Hz,1H),7.48(s,1H),2.75(s,3H),2.69(s,3H);ES-MS[M+1]
+:202.4.
【化14】
【0223】
N-[(3-フルオロ-4-メトキシ-フェニル)メチル]-2,4-ジメチル-キノリン-6-カルボキサミド(化合物1)。2,4-ジメチルキノリン-6-カルボン酸(C)(7.0mg、0.03mmol、1.0eq.)のDMF(1.0mL、0.05M)溶液に、HATU(24.0mg、0.06mmol、2.1eq.)およびDIEA(26uL、0.15mmol、5.0eq.)を添加し、5分にわたりr.t.で撹拌した後、3-フルオロ-4-メトキシベンジルアミン(7.0mg、0.045mmol、1.5eq.)を添加した。20分にわたり撹拌した後、この混合物をシリンジフィルタに通してろ過し、逆相HPLCを使用して精製して、表題の化合物(3.7mg、36.45%収率)を得た。ES-MS[M+1]+:339.3.
【0224】
実施例3.N-[1-(5-クロロ-2-メトキシ-4-ピリジル)アゼチジン-3-イル]-2,4-ジメチル-キノリン-6-カルボキサミド(化合物2)
【化15】
N-(アゼチジン-3-イル)-2,4-ジメチルキノリン-6-カルボキサミド(D)。2,4-ジメチルキノリン-6-カルボン酸(C)(185.9mg、0.924mmol、1.0eq.)のDMF(5.0mL、0.185M)溶液に、HATU(738mg、1.94mmol、2.1eq.)およびDIEA(0.804mL、4.62mmol、5.0eq.)を添加した。5分にわたり撹拌した後、1-Boc-3-(アミノ)アゼチジン(398mg、2.31mmol、2.5eq.)を添加した。この反応混合物を1時間にわたり撹拌した。この粗物質を、逆相HPLC(MeCN/H
2O/0.1%TFA)を使用して精製し、Boc保護化合物を得た。所望の画分を、50℃で空気濃縮器を使用して濃縮した。この物質を濃縮乾固させると、完全なBoc脱保護を伴う所望の生成物が明らかであった。この粗物質を、HF結合Elut-SCXカートリッジを使用して精製し、MeOH中のNH
3溶液(7N)で抽出して、表題の化合物(235mg、99%収率)を白色固体として得た。
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6):δ 9.16(d,J=6.5Hz,1H),8.56(s,1H),8.14(d,J=8.7Hz,1H),7.96(d,J=8.7Hz,1H),7.36(s,1H),4.82-4.76(m,1H),3.77-3.73(m,4H),2.72(s,3H),2.63(s,3H);ES-MS[M+1]
+:256.4.
【化16】
【0225】
N-(1-(5-クロロ-2-メトキシピリジン-4-イル)アゼチジン-3-イル)-2,4-ジメチルキノリン-6-カルボキサミド(化合物2)。反応バイアル中に、N-(アゼチジン-3-イル)-2,4-ジメチル-キノリン-6-カルボキサミド(D)(15mg、0.060mmol、1.0eq.)、Pd2(dba)3(5.4mg、0.010mmol、0.1eq.)、XantPhos(5.1mg、0.010mmol、0.009eq.)、Cs2CO3(40.45mg、0.12mmol、2.1eq.)、4-ブロモ-5-クロロ-2-メトキシピリジン(15.68mg、0.070mmol、1.2eq.)および1,4-ジオキサン(0.294mL)を詰めた。排気してN2でパージした後、この反応バイアルを100℃で一晩撹拌した。次いで、この反応物をシリンジろ過し、DMSOで希釈し、逆相HPLCを使用して精製し、表題の化合物(3.6mg、15%収率)を得た。1H NMR(400MHz,DMSO-d6):δ 9.34(d,J=7.0Hz,1H),8.65(s,1H),8.22(d,J=8.8Hz,1H),8.03(d,J=8.6Hz,1H),7.90(s,1H),7.42(s,1H),5.93(s,1H),4.92-4.89(m,1H),4.60(dd,J=8.2,8.2Hz,2H),4.24(dd,J=7.5,6.2Hz,2H),3.84(s,3H),2.78(s,3H),2.69(s,3H);ES-MS[M+1]+:397.3
【0226】
表1に示す化合物を、適切な出発物質により、上記で説明したものと類似の方法で調製した。
【0227】
【0228】
【0229】
実施例4.N-[1-(5-クロロ-2-メトキシ-4-ピリジル)アゼチジン-3-イル]-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド(化合物14)
【化17】
3,4-ジメチルシンノリン-6-カルボン酸(市販、CAS No.1176775-00-0)(6.0mg、0.03mmol、1.0eq.)のDMF(1.0mL、0.05M)溶液に、HATU(16.9mg、0.045mmol、1.5eq.)およびDIEA(31uL、0.178mmol、6.0eq.)を添加した。10分にわたりr.t.で撹拌した後、1-(5-クロロ-2-メトキシ-4-ピリジル)アゼチジン-3-アミンジヒドロクロリド(12.76mg、0.044mmol、1.5eq.)を添加した。20分にわたり撹拌した後、この混合物をシリンジフィルタに通してろ過し、逆相HPLCを使用して精製し、表題の化合物(7.9mg、67%収率)を得た。
1H NMR(400MHz,DMSO-d6):δ 9.46(d,J=6.8Hz,1H),8.72(d,J=1.4Hz,1H),8.45(d,J=8.9Hz,1H),8.24(dd,J=8.9,1.7Hz,1H),7.48(s,1H),5.88(s,1H),4.89-4.83(m,1H),4.55(dd,J=8.2,8.2Hz,2H),4.19(dd,J=8.6,5.5Hz,2H),3.78(s,3H),2.90(s,3H),2.72(s,3H);ES-MS[M+1]
+:398.3.
【0230】
表2に示す化合物を、適切な出発物質により、化合物14と類似の方法で調製した。
【0231】
【0232】
【0233】
【0234】
【0235】
実施例5.生物学的活性
A.ムスカリン性アセチルコリンレセプターを発現する細胞株
American Type Culture Collectionから購入したチャイニーズハムスター卵巣(CHO-K1)細胞に、Lipofectamine2000を使用してヒトのM4 cDNAをキメラGタンパク質Gqi5と一緒にトランスフェクトした。hM4-Gqi5細胞を、10%熱不活性化ウシ胎仔血清(FBS)、20mM HEPES、50μg/mL G418硫酸塩および500μg/mL Hygromycin Bを含むHam’s F-12培地中で増殖させた。rM4-Gqi5細胞を、10%熱不活性化FBS、20mM HEPES、400μg/mL G418硫酸塩および500μg/mL Hygromycin Bを含むDMEM中で増殖させた。
【0236】
B.ムスカリン性アセチルコリンレセプター活性の細胞ベース機能アッセイ
細胞内カルシウムのアゴニスト誘発性増加の高スループット測定のために、細胞内カルシウムのアゴニスト誘発性増加の高スループット測定のために、Greiner 384ウェルの、黒色の壁で囲まれ、組織培養(TC)処理された、底が透明のプレート(VWR)中において、ムスカリン性レセプターを安定的に発現するCHO-K1細胞を、15,000個の細胞/20μL/ウェルで、G418およびハイグロマイシンを欠く増殖培地に蒔いた。細胞を、37℃および5%CO2で一晩インキュベートした。翌日、細胞を、アッセイ緩衝液によりELX 405(BioTek)を使用して洗浄し、次いで最終体積を20μLまで吸引した。次に、DMSO中の2.3mMストックとして調製し、1:1の比で10%(重量/体積)Pluronic F-127と混合し、次いでアッセイ緩衝液で希釈したFluo-4/アセトキシメチルエステル(Invitrogen,Carlsbad,CA)の2.3μMストック 20μLをこの細胞に添加し、この細胞プレートを37℃および5%CO2において50分にわたりインキュベートした。ELX 405による洗浄で色素を除去し、最終体積を20μLまで吸引した。化合物マスタープレートを、BRAVO液体ハンドラ(Agilent)を使用して、10mMの出発濃度での100%DMSO中の11点濃度-応答曲線(CRC)フォーマット(1:3希釈)でフォーマットした。次いで、Echo超音波プレートリフォーマッター(Labcyte,Sunnyvale,CA)を使用して試験化合物CRCを娘プレート(240nL)に移し、次いでThermo Fisher Combi(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA)を使用して2×ストックまでアッセイ緩衝液(40μ)に希釈した。
【0237】
Functional Drug Screening System(FDSS)6000または7000(Hamamatsu Corporation,東京,日本)を使用して、カルシウム流を蛍光静的比の増加として測定した。プロトコルに2~4秒でFDSSの自動化システムを使用して、化合物を細胞に適用し(20μL、2回)、1Hzでデータを収集した。144秒でEC20濃度のムスカリン性レセプターアゴニストアセチルコイン10μLを添加し(5回)、続いて230秒の時点でEC80濃度のアセチルコリン12μLを添加した(5回)。アゴニスト活性を化合物添加時のカルシウム動員の濃度依存的増加として分析した。ポジティブアロステリック調節因子活性をEC20アセチルコリン応答の濃度依存的増加として分析した。アセチルコリンEC20セットをベースラインとして、試験化合物EC50を、試験化合物により誘発されたアセチルコリン応答の最大増加の50%のベースラインを超える増加を生じる濃度として決定する。アンタゴニスト活性をEC80アセチルコリン応答の濃度依存的増加として分析した。Excel(Microsoft,Redmond,WA)またはPrism(GraphPad Software,Inc.,San Diego,CA)用のXLFit曲線フィッティングソフトウェア(IDBS,Bridgewater,NJ)において4パラメータロジスティック方程式を使用して、濃度応答曲線を作成した。
【0238】
上記で説明したアッセイを、約3秒にわたる蛍光ベースラインの確立後に適切な固定濃度の本化合物を細胞に添加する第2のモードでも操作し、細胞中での応答を測定した。140秒後、適切な濃度のアゴニストを添加し、カルシウム応答(最大局所最小応答)を測定した。試験化合物の存在下でのアゴニストのEC50値を非線形曲線フィッティングにより決定した。本化合物の濃度の増加を伴うアゴニストのEC50値の減少(アゴニスト濃度応答曲線の左方向へのシフト)は、本化合物の所与の濃度でのムスカリン性ポジティブアロステリック調節の程度の指標である。本化合物の濃度の増加を伴うアゴニストのEC50値の増加(アゴニスト濃度応答曲線の右方向へのシフト)は、本化合物の所与の濃度でのムスカリン性アンタゴニズムの程度の指標である。この第2のモードは、本化合物はアゴニストに対するムスカリン性レセプターの最大応答にも影響を及ぼすかどうかも示す。
【0239】
C.mAChR M4細胞ベースアッセイでの化合物の活性
上記で説明したように化合物を合成した。上記で説明したmAChR M4細胞ベース機能アッセイにおいて活性(EC50およびEmax)を測定し、データを表3に示す。化合物番号は、実施例2~4ならびに表1および2で使用した化合物番号に対応する。
【0240】
【0241】
上述の詳細な説明および添付の実施例は、単なる例示にすぎず、添付の特許請求の範囲およびその均等物によってのみ定義される本発明の範囲に対する限定と見なすべきではないことが理解される。
【0242】
本開示の実施形態に対する様々な変更形態および改変形態が当業者に明らかであろう。そのような変更形態および改変形態(本発明の化学構造、置換基、誘導体、中間体、合成物、組成物、製剤または使用方法に関するものが挙げられるが、これらに限定されない)は、その趣旨および範囲から逸脱することなくなされ得る。
本発明は以下の態様を含み得る。
[1]
式(I)
【化18】
(式中、
Xは、NまたはCR
1
であり、
R
1
は、C
1
~C
4
-アルキル、C
1
~C
4
-ハロアルキル、ハロおよび-OR
a
から選択され、
R
2
は、C
1
~C
4
-アルキル、水素、C
1
~C
4
-ハロアルキル、ハロおよび-OR
a
から選択され、
R
3
およびR
4
は、それぞれ独立して、それぞれ任意選択に置換され得る水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロアルキル、複素環および-(CR
b
R
c
)
n
-Yから選択され、R
3
およびR
4
は、同時に水素ではなく、または
R
3
およびR
4
は、これらが付着している窒素原子と一緒に、任意選択に置換されている複素環を形成しており、
Yは、それぞれ任意選択に置換され得るハロ、-OR、-SR、-C(O)R、-C(O)OR、-S(O)R、-SO
2
R、-NR
2
、-C(O)NR
2
、-S(O)
2
NR
2
、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルおよび複素環から選択され、
nは、1、2、3、4、5、6、7または8であり、
各R
a
は、独立して、水素、C
1
~C
4
-アルキル、C
1
~C
4
-ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルおよび複素環から選択され、
R
b
およびR
c
は、それぞれ独立して、水素、C
1
~C
4
-アルキル、C
1
~C
4
-ハロアルキルおよびハロからなる群から選択され、
各Rは、独立して、それぞれ任意選択に置換され得る水素、アルキル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、複素環、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルおよびヘテロアルキルからなる群から選択される)
の化合物またはその薬学的に許容される塩。
[2]
Xは、Nである、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
[3]
Xは、CR
1
である、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
[4]
R
1
は、C
1
~C
4
アルキルである、請求項3に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
[5]
R
1
は、メチルである、請求項4に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
[6]
R
2
は、水素である、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
[7]
前記化合物は、式(Ia):
【化19】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の化合物。
[8]
前記化合物は、式(Ib):
【化20】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の化合物。
[9]
R
3
は、水素であり、
R
4
は、それぞれ任意選択に置換され得るアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロアルキル、複素環および-(CR
b
R
c
)
n
-Yからなる群から選択される、
請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
[10]
R
4
は、3~6員の複素環であって、N、およびOから選択される1個のヘテロ原子を有する3~6員の複素環、C
3
~C
6
シクロアルキルならびに-(CR
b
R
c
)
n
-Yからなる群から選択され、
nは、1または2であり、
R
b
およびR
c
は、それぞれ水素であり、
Yは、アリール、および5~6員のヘテロアリールであって、N、OおよびSから独立して選択される1個または2個のヘテロ原子を有する5~6員のヘテロアリールからなる群から選択され、
各アリール、シクロアルキル、ヘテロアリールおよび複素環は、独立して、非置換であるか、またはC
1
~C
4
アルキル、C
1
~C
4
ハロアルキル、C
1
~C
4
アルコキシ、C
1
~C
4
ハロアルコキシ、ハロ、ヒドロキシ、アリール、C
3
~C
6
シクロアルキル、3~6員の複素環であって、NおよびOから選択される1個のヘテロ原子を有する3~6員の複素環、ならびに5~6員のヘテロアリールであって、N、OおよびSから独立して選択される1個もしくは2個のヘテロ原子を有する5~6員のヘテロアリールからなる群から独立して選択される1個もしくは2個の置換基で置換されている、
請求項9に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
[11]
R
4
は、フェニルまたは1個もしくは2個の窒素原子を有する5~6員のヘテロアリールで置換されているアゼチジニルであり、
前記ヘテロアリールは、C
1
~C
4
アルキル、C
3
~C
6
シクロアルキル、C
1
~C
4
ハロアルキル、C
1
~C
4
アルコキシ、C
1
~C
4
ハロアルコキシ、ハロおよびシアノからなる群から独立して選択される1個または2個の置換基で置換されている、
請求項10に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
[12]
R
4
は、フェニル基、ピリジニル基、ピリミジニル基またはピラジニル基で置換されているアゼチジニルであり、
前記フェニル基、ピリジニル基、ピリミジニル基またはピラジニル基は、メチル、シクロプロピル、トリフルオロメチル、メトキシ、イソプロポキシ、ジフルオロメトキシ、フルオロ、クロロ、ブロモおよびシアノからなる群から独立して選択される1個または2個の置換基で置換されている、
請求項11に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
[13]
R
4
は、-(CR
b
R
c
)
n
-Yであり、
nは、1であり、
R
b
およびR
c
は、それぞれ水素であり、
Yは、アリール、ならびに5~6員のヘテロアリールであって、N、OおよびSから独立して選択される1個または2個のヘテロ原子を有する5~6員のヘテロアリールから選択され、
各前記アリールおよびヘテロアリールは、それぞれ独立して、非置換であるか、またはC
1
~C
4
アルキル、C
1
~C
4
ハロアルキル、C
1
~C
4
ヒドロキシアルキル、C
1
~C
4
アルコキシ、C
1
~C
4
ハロアルコキシ、ハロおよびヒドロキシから独立して選択される1個もしくは2個の置換基で置換されている、
請求項10に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
[14]
Yは、フェニルおよびピリジルから選択され、これらはそれぞれ、独立して、非置換であるか、またはハロ、C
1
~C
4
アルコキシおよびC
1
~C
4
ヒドロキシアルキルから独立して選択される1個もしくは2個の置換基で置換されている、
請求項13に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
[15]
R
3
およびR
4
は、それらが付着している窒素原子と一緒に、アゼチジニル基、ピロリジニル基、ピペリジニル基またはピペラジニル基を形成し、これらは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロアルキル、複素環、オキソおよび-(CR
b
R
c
)
p
-Y(式中、pは、0、1、2、3、4、5、6、7または8である)からなる群から独立して選択される1個、2個または3個の置換基で任意選択に置換され得る、
請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
[16]
N-[(3-フルオロ-4-メトキシ-フェニル)メチル]-2,4-ジメチル-キノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-(5-クロロ-2-メトキシ-4-ピリジル)アゼチジン-3-イル]-2,4-ジメチル-キノリン-6-カルボキサミド;
2,4-ジメチル-N-[1-[5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イル]アゼチジン-3-イル]キノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-(5-イソプロポキシピリミジン-2-イル)アゼチジン-3-イル]-2,4-ジメチル-キノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-(2,5-ジクロロ-4-ピリジル)アゼチジン-3-イル]-2,4-ジメチル-キノリン-6-カルボキサミド;
2,4-ジメチル-N-(4-ピリジルメチル)キノリン-6-カルボキサミド;
2,4-ジメチル-N-(3-ピリジルメチル)キノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-[2-(ジフルオロメトキシ)-6-メチル-4-ピリジル]アゼチジン-3-イル]-2,4-ジメチル-キノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-(2,6-ジクロロ-4-ピリジル)アゼチジン-3-イル]-2,4-ジメチル-キノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-[2-(ジフルオロメトキシ)-4-ピリジル]アゼチジン-3-イル]-2,4-ジメチル-キノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-(4-ブロモ-3-クロロ-2-ピリジル)アゼチジン-3-イル]-2,4-ジメチル-キノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-(2,3-ジフルオロ-4-ピリジル)アゼチジン-3-イル]-2,4-ジメチル-キノリン-6-カルボキサミド;および
N-[1-(4-ブロモ-3-フルオロ-2-ピリジル)アゼチジン-3-イル]-2,4-ジメチル-キノリン-6-カルボキサミド
N-[1-(5-クロロ-2-メトキシ-4-ピリジル)アゼチジン-3-イル]-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;
N-[(3-フルオロ-4-メトキシ-フェニル)メチル]-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;
N-[[4-(1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)フェニル]メチル]-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;
3,4-ジメチル-N-[1-[5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イル]アゼチジン-3-イル]シンノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-(3,4-ジフルオロフェニル)アゼチジン-3-イル]-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-(5-フルオロピリミジン-2-イル)アゼチジン-3-イル]-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-(5-イソプロポキシピリミジン-2-イル)アゼチジン-3-イル]-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;
3,4-ジメチル-N-[1-[5-(トリフルオロメチル)ピラジン-2-イル]アゼチジン-3-イル]シンノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-(5-シクロプロピルピラジン-2-イル)アゼチジン-3-イル]-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-(5-クロロ-2-ピリジル)アゼチジン-3-イル]-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-(5-フルオロ-2-ピリジル)アゼチジン-3-イル]-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-(5-シアノ-2-ピリジル)アゼチジン-3-イル]-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-ピリジル)アゼチジン-3-イル]-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-(3-クロロ-5-シクロプロピル-2-ピリジル)アゼチジン-3-イル]-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-[3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)-2-ピリジル]アゼチジン-3-イル]-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-(3-クロロ-5-シアノ-2-ピリジル)アゼチジン-3-イル]-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-(2,5-ジクロロ-4-ピリジル)アゼチジン-3-イル]-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-[6-(ジフルオロメトキシ)-3-ピリジル]アゼチジン-3-イル]-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-(6-クロロ-2-ピリジル)アゼチジン-3-イル]-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-(6-フルオロ-2-ピリジル)アゼチジン-3-イル]-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-(3-フルオロ-2-ピリジル)アゼチジン-3-イル]-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-(3-クロロ-2-ピリジル)アゼチジン-3-イル]-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;
N-[1-(5-クロロ-3-フルオロ-2-ピリジル)アゼチジン-3-イル]-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;
3,4-ジメチル-N-[1-[2-(トリフルオロメチル)-4-ピリジル]アゼチジン-3-イル]シンノリン-6-カルボキサミド;
3,4-ジメチル-N-[1-[6-(トリフルオロメチル)-2-ピリジル]アゼチジン-3-イル]シンノリン-6-カルボキサミド;
N-シクロプロピル-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;
N-(3-フルオロシクロブチル)-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド;および
N-シクロペンチル-3,4-ジメチル-シンノリン-6-カルボキサミド、
またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される
請求項1に記載の化合物。
[17]
前記化合物は同位体標識されている、請求項1~16のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
[18]
R
2
は重水素である、請求項17に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
[19]
治療上有効な量の請求項1~18のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
[20]
哺乳動物におけるムスカリン性アセチルコリンレセプターの機能障害と関連する神経障害および/または精神障害を処置する方法であって、前記哺乳動物に、治療上有効な量の請求項1~18のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩を投与する工程を含む方法。
[21]
前記障害は、mAChR M
4
の機能障害と関連する、請求項20に記載の方法。
[22]
前記障害は、mAChR M
4
の機能障害と関連する神経障害および/または精神障害である、請求項20に記載の方法。
[23]
前記障害は、アルツハイマー病、統合失調症、睡眠障害、疼痛性障害および認知障害から選択される、請求項20に記載の方法。
[24]
前記障害は、アルツハイマー病である、請求項23に記載の方法。
[25]
前記障害は、精神病、統合失調症、行動障害、破壊的行動障害、双極性障害、不安の精神病エピソード、精神病と関連する不安、精神病性気分障害、例えば重度の大鬱病性障害;精神病性障害と関連する気分障害、急性躁病、双極性障害と関連する鬱病、統合失調症と関連する気分障害、精神遅滞の行動的発現、自閉症性障害、運動障害、トゥレット症候群、無動性硬直症候群、パーキンソン病と関連する運動障害、遅発性ジスキネジア、薬物誘発性および神経変性ベースのジスキネジア、注意欠陥多動障害、認知障害、認知症および記憶障害から選択される、請求項20に記載の方法。
[26]
請求項1~18のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩と、(a)mAChR M
4
活性を増加させることが知られている少なくとも1種の薬剤、(b)mAChR M
4
活性を低下させることが知られている少なくとも1種の薬剤、(c)コリン作動性活性と関連する障害を処置することが知られている少なくとも1種の薬剤、(d)コリン作動性活性と関連する障害を処置するための説明書、(e)mAChR M
4
レセプター活性と関連する障害を処置するための説明書および(f)認知療法または行動療法に関連して前記化合物を投与するための説明書の1つまたは複数とを含むキット。