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特許7016495ロボット用台車及びロボットの走行制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-28
(45)【発行日】2022-02-07
(54)【発明の名称】ロボット用台車及びロボットの走行制御方法
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20220131BHJP
【FI】
G05D1/02 J
G05D1/02 E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017179691
(22)【出願日】2017-09-20
(65)【公開番号】P2019056987
(43)【公開日】2019-04-11
【審査請求日】2020-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】517329708
【氏名又は名称】SOCIAL ROBOTICS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180080
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 幸男
(72)【発明者】
【氏名】浅野 滋
【審査官】中田 善邦
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-056629(JP,A)
【文献】特開2002-073171(JP,A)
【文献】実開平06-030805(JP,U)
【文献】特開平05-061537(JP,A)
【文献】特開昭63-298118(JP,A)
【文献】特開2013-171368(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D1/00-1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行経路に沿って走行可能なロボット用台車であって、
推進ホイールと、
前記推進ホイールを回転駆動する推進モータと、
方向転換手段と、
前記推進モータ及び前記方向転換手段を制御して当該ロボット用台車の走行を制御する制御装置と、
当該ロボット用台車の走行方向に対して直交し、かつ、走行面に臨む側に受光部を有するライン状光センサと、を備え、
複数枚の反射板が前記走行経路上に断続的に又は点在して配置され、
前記ライン状光センサが、前記反射板の幅方向における偏位量を検知し、
前記制御装置が、検知された前記偏位量に応じた制御量で前記方向転換手段を制御することにより、当該ロボット用台車の向きを修正するよう構成され、
前記走行経路の何れか1つ又は複数のチェック位置にはICタグが設けられ、
前記制御装置が、認識した当該ロボット用台車の現在位置を、前記ICタグから受信した識別情報に基づくチェック位置に較正するよう構成され
前記制御装置の記憶手段には、前記反射板の配置情報を含む経路マップが記憶され、
前記制御装置が、前記ライン状光センサにより検知される前記反射板の通過枚数をカウントすることにより当該ロボット用台車の走行距離を測定するとともに、測定した当該走行距離に基づいて前記経路マップを参照し、更に前記チェック位置に基づいて、当該ロボット用台車の現在位置を認識するよう構成されている、ロボット用台車。
【請求項2】
前記制御装置が、当該ロボット用台車が最後に通過した反射板に対し前記ライン状光センサが検知した前記偏位量を保持して、反射板がない走行経路を走行制御するよう構成されている、請求項1に記載のロボット用台車。
【請求項3】
前記制御装置が、前記ライン状光センサにより検知される前記反射板の通過枚数をカウントし、かつ、前記推進ホイールの回転量をカウントすることにより当該ロボット用台車の走行距離を測定するよう構成されている、請求項1又は2に記載のロボット用台車。
【請求項4】
前記制御装置の記憶手段には、出発位置から目標位置に到達するまでの走行プランが設定可能であり、
前記制御装置が、設定された前記走行プランに従って当該ロボット用台車の走行を制御するように構成されている、請求項1~の何れか1項に記載のロボット用台車。
【請求項5】
請求項1~の何れか1項に記載のロボット用台車にロボット本体を搭載してなる走行ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の走行経路に沿って走行する走行ロボット、ロボットを搬送するのに適合されたロボット用台車及びそのような台車の走行を好適に制御するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、床部に敷設されたライン又は走行経路に沿って移動可能な様々なロボットが提案されている(例えば特許文献1~4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-187032号公報
【文献】特開平7-295637号公報
【文献】特開2002-73171号公報
【文献】特開2004-277062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の走行ロボットは、走行面にラインをペイントし又は磁気テープ等を連続的に敷設した走行経路上を走行するものである。そのため、走行経路の設定や、一度設定した走行経路を施設のレイアウト変え等により変更するには、ラインのペイント、貼り換え又は塗り直し等の作業が必要となり煩雑であった。
【0005】
そこで本発明は、走行ロボットの走行経路の設定や変更を容易にし、走行経路に沿って自律的にロボットを走行させることができる等の技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するため、本発明は、走行経路に沿って走行可能なロボット用台車であって、推進ホイールと、前記推進ホイールを回転駆動する推進モータと、方向転換手段と、前記推進モータ及び前記方向転換手段を制御して当該台車の走行を制御する制御装置と、当該台車の走行方向に対して直交し、かつ、走行面に臨む側に受光部を有するライン状光センサと、を備え、複数枚の反射板が前記走行経路上に配置され、前記ライン状光センサが、前記反射板の幅方向における偏位量を検知し、前記制御装置が、検知された前記偏位量に応じた制御量で前記方向転換手段を制御することにより、当該台車の向きを修正するよう構成され、前記走行経路の何れか1つ又は複数のチェック位置にはICタグが設けられ、前記制御装置が、認識した当該台車の現在位置を、前記ICタグから受信した識別情報に基づくチェック位置に較正するよう構成されている、ロボット用台車である。
【0007】
上記の構成のロボット用台車において、前記制御装置の記憶手段には、前記反射板の配置情報を含む経路マップが記憶され、前記制御装置が、測定した当該台車の走行距離に基づいて前記経路マップを参照することにより、当該台車の現在位置を認識するよう構成されていることが好ましい。
【0008】
また、上記の構成のロボット用台車において、前記制御装置が、前記ライン状光センサにより検知される前記反射板の通過枚数をカウントすることにより当該台車の走行距離を測定するよう構成されていることが好ましい。
【0009】
また、上記の構成のロボット用台車において、前記制御装置が、前記推進ホイールの回転量をカウントすることにより当該台車の走行距離を測定するよう構成されているものでもよい。
【0010】
また、上記の構成のロボット用台車において、前記制御装置の記憶手段には、出発位置から目標位置に到達するまでの走行プランが設定可能であり、前記制御装置が、設定された前記走行プランに従って当該台車の走行を制御するように構成されていることが好ましい。
【0011】
また、本発明は、上記の構成のロボット用台車にロボット本体を搭載してなる走行ロボットである。
【0012】
また、本発明は、走行経路に沿ってロボットの走行を制御する走行制御方法であって、複数枚の反射板が前記走行経路上に配置され、前記ロボットが、方向転換手段と、当該ロボットの走行方向に対して直交し、かつ、走行面に臨む側に受光部を有するライン状光センサと、制御装置とを備え、前記ライン状光センサが、前記反射板の幅方向における偏位量を検知するステップと、前記制御装置が、検知された前記偏位量に応じた制御量で前記方向転換手段を制御することにより、当該台車の向きを修正するステップと、前記制御装置が、認識した当該台車の現在位置を、走行経路の何れか1つ又は複数のチェック位置に設けたICタグから受信した識別情報に基づくチェック位置に較正するステップとを含む、ロボットの走行制御方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、走行面に反射板を配置しただけの簡単な走行経路に沿って、ロボット用台車が向きを自動修正しながら自律的に走行することができる。また、反射板の配置を変えるだけで、走行経路の変更を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】走行ロボットの概要を説明するための側面図である。
図2】ロボット用台車の概略構成を示すブロック図である。
図3】ロボット用台車の背面図である。
図4】ライン状光センサの出力値と反射板の偏位量との関係を例示する表図である。
図5】ロボット用台車に備えられる制御回路を例示するブロック図である。
図6A】一実施形態によるロボット用台車の動作を説明するための図である。
図6B図6Aに示したロボット用台車の動作を更に説明するための図である。
図7】ロボット用台車の記憶手段に記憶される経路マップを例示する図である。
図8図7の経路マップを参照してロボット用台車が自律走行する動作を説明するための図である。
図9A】他の実施形態によるロボット用台車の動作を説明するための図である。
図9B図9Aに示したロボット用台車の動作を更に説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態を、図面を参照して説明する。図1に例示される走行ロボット1は、下部走行体としてロボット用台車2と、ロボット用台車2に搭載されるロボット本体3とを備えている。ロボット本体3としては、例えば人型の案内ロボット、動物型のペットロボット、バケット型若しくはコンテナ型の運搬ロボットなど、目的や機能等に応じて様々なタイプのロボットを任意に選択することができる。ロボット本体3を搬送するロボット用台車2は、施設の床面(走行面)FSに予め任意に定めた走行経路に沿って移動が可能である。本実施形態では、ロボット用台車2が走行する際の指標として、床面FSに反射板RPを断続的に又は点在して配置することで、ロボット用台車2が走行する走行経路が設定される。反射板RPは、正方形又は長方形であり、平行な2辺が、走行経路が延びる方向に揃えて配置される。なお、走行経路の変更をし易くするために、例えば粘着等の着脱容易な手段で反射板RPが床面FSに配置されることが好ましい。
【0016】
図2は、ロボット用台車2の概略構成を示すブロック図である。ロボット用台車2は、走行駆動系として、2つの推進ホイール4、4と、各推進ホイール4を回転駆動する推進モータ5と、方向転換ホイール6と、方向転換ホイール6を旋回して操舵させる操舵モータ7とを備えている。本実施形態では、方向転換ホイール6及び操舵モータ7により、ロボット用台車2の方向転換手段が構成されている。
【0017】
推進ホイール4は、ロボット用台車2を前進又は後進させるためのホイールである。2つの推進ホイール4、4は、ホイール径が同径であり、同軸かつ互いに平行にしてロボット用台車2の側部に左右一対に設けられる。ただし、走行安定性を向上させるため、推進ホイール4に若干のキャンバ角を設定してもよい。
【0018】
推進モータ5は、例えば回転型ステッピングモータとすることができ、そのドライブ軸が推進ホイール4の軸に連結している。左右の推進ホイール4、4は、それぞれの推進モータ5、5により独立に回転駆動される。また、減速ギア(不図示)を介して推進モータ5のトルクが推進ホイール4に伝達される構成でもよい。推進ホイール4の軸には、エンコーダ11が取り付けられ、推進ホイール4の回転量がエンコーダ11により検出される。
【0019】
方向転換ホイール6は、ロボット用台車2を直進させ、また操舵角度(旋回角度)に応じて当該台車2の向きを変えるためのホイールである。方向転換ホイール6は、ロボット用台車2本体の前部中央に旋回可能に設けられる。操舵モータ7は、例えば直動型のステッピングモータとすることができ、適宜のリンク機構12を介して、方向転換ホイール6の操舵角度(旋回角度)を制御するように構成されている。
【0020】
また、ロボット用台車2は、走行に係る制御系として、マイコン等の制御装置であるコントローラ20と、ライン状光センサ30とを備えている。
【0021】
コントローラ20は、CPU、ROM、RAM及び通信インターフェース等を含むマイコンチップとともに、ロボットの走行や監視等に必要なロジック回路やドライブ回路等を基板に実装している。CPUは、ROMに予め記憶されたプログラムコードに従って演算処理を実行することで、以下説明する様々な制御機能を実現する。後述するように、コントローラ20が、外部のリモコン操作装置等により予め又はその都度設定された走行条件パラメータ等に基づいて、推進モータ5及び操舵モータ7を駆動制御する。これによりロボット用台車2の走行が自律的に制御される。
【0022】
図3は、ロボット用台車2を後方から見た背面図である。台車2本体の底部に設けられるライン状光センサ30は、発光部及び受光部の対からなる複数個(実施例では8個)の光センサ素子D1~D8を有している。各光センサ素子D1~D8は、ロボット用台車2の走行方向に対して直交する方向に配列され、かつ、走行面である床面FSに臨む側に受光部を有している。このようなライン状光センサ30により、当該台車2の走行中心線に対する反射板RPの幅方向における相対位置(オフセット偏位量、又は単に「偏位量」という。)が検知可能とされている。ここで、「幅方向」とは、ロボット用台車2の走行方向(前進及び後進)に対して直交する方向をいう。
【0023】
それぞれの光センサ素子D1~D8は、発光部が下方に向けて一定強度のセンシング光を放射し、受光部で受光される反射光の強度が所定値以上であれば「H」レベルの信号を出力する(オン状態)。つまり、光の反射率の差によって床面FSと反射板RPとが識別される。したがって、反射板RPを確実に検知するためには、床面FSよりも大きな反射率を有する、例えばアルミ合金製の光沢板を反射板RPとして用いることが好ましい。
【0024】
なお、ライン状光センサ30が放射するセンシング光は、拡散光又はレーザ光の何れでもよい。また、センシング光は、可視光から赤外光までの何れの周波数の光でもよい。ただし、金属板は、非金属からなる床面FSよりも赤外光の放射率(吸収率)が顕著に小さいことが分かっており、そのため、反射板RPにアルミ合金を用いる場合には、金属と非金属との間で反射率により差が生じる赤外光センサを、ライン状光センサ30に用いることが好ましい。
【0025】
より具体的に、ライン状光センサ30は、反射板RPの左部を検知する光センサ素子群D1~D4と、反射板RPの右部を検知する光センサ素子群D5~D8とを備えて構成される。ここで、図4には、ライン状光センサ30の出力値D1~D8と、ロボット用台車2の走行方向中心に対する反射板RPの偏位量δとの関係が例示される。図3に示したように、ロボット用台車2の中心である規定位置に反射板RPがある場合には、中央の光センサ素子D4、D5のみが反射板RPの左右端部を検知して「H」レベルとなる。ロボット用台車2が、例えば反射板RPから左に外れる量が大きくなるほど(反射板RPの偏位量δが+1~+3)、反射板RPの右部を検知する光センサ素子群D5~D8が「H」レベルとなる数が増加する。逆に、ロボット用台車2が、反射板RPから右に外れる量が大きくなるほど(反射板RPの偏位量δが-1~-3)、反射板RPの左部を検知する光センサ素子群D1~D4が「H」レベルとなる数が増加する。このような特性を利用して、コントローラ20は、ライン状光センサ30の出力値(以下、デジタル値D1~D8とも記述する)に基づいて、反射板RPの偏位量、換言するとロボット用台車2が所定の走行経路から外れた量を把握することができる。
【0026】
図5のブロック図は、反射板RPが断続的に配置された走行経路に沿って、走行ロボット1の走行を自動修正制御するための回路の一例である。この制御回路は、ロボット用台車2のコントローラ20に搭載され、ライン状光センサ30により検知される反射板RPの幅方向における偏位量δを、方向転換ホイール6の操舵角度(旋回角度)θにフィードバックする閉ループ回路を構成している。
【0027】
この制御回路の構成を更に具体的に説明する。図5のブロック図において、オペアンプ201の反転入力端子(-端子)には、ライン状光センサ30により検知された反射板RPの偏位量δを示す、DAデコーダ(DAD:Didital Analog Decoder)202が出力する偏位量信号が入力される。DAデコーダ202は、ライン状光センサ30の出力値D1~D8を偏位量データにデコードし、偏位量信号として、例えば図4に示した電圧値をアナログ出力する変換回路である。
【0028】
オペアンプ201の非反転入力端子(+端子)には、目標偏位量を示す電圧値、すなわち0mVが入力される。この目標電圧値を、DAデコーダ202と同一特性のDAデコーダ203から得てもよい。その場合には、図5に示すように、DAデコーダ203のD4、D5に相当する入力を「H」レベルにし、他のD1~D3及びD6~D8に相当する入力を「L」レベルに設定するとよい。
【0029】
これにより、オペアンプ201は、反射板RPの偏位量δに比例し、かつ、方向転換ホイール6を逆向きに操舵する制御量θの制御信号を操舵モータ7に出力することができる。なお、本走行修正制御回路の閉ループゲインを決定する入力抵抗R1及び帰還抵抗R2の値は、反射板RPの間隔及びロボット用台車2の速度等に応じて、走行状態が振動的にならないように適宜設定される。
【0030】
このような走行修正制御回路によれば、ロボット用台車2の走行中心線に対する反射板RPの偏位量δがゼロとなるように、方向転換ホイール6の操舵角度θがフィードバック制御される。したがって、外部からリモコン等で操縦しなくても、例えば図6Aに示すように、反射板RPがある走行経路に沿って、ロボット用台車2を自律的に走行させることができる。また、仮にロボット用台車2が走行経路から外れてしまった場合でも、図6Bに示すように、反射板RPを通過するときにその向きを修正しながら、正しい走行経路に沿って進むことができる。
【0031】
また、この制御回路は、ライン状光センサ30により検知される反射板RPの通過枚数をカウントすることにより、ロボット用台車2の走行距離を測定する機能を備えている。例えば図5のブロック図において、ライン状光センサ30の出力値D1~D8が、ローアクティブのAND回路204に入力される。この構成によれば、ライン状光センサ30が反射板RPを検知する位置では、センサ出力値D1~D8の何れかが「H」レベルとなるから、AND回路204は「L」レベルの信号を出力する。他方、ライン状光センサ30が2枚の反射板RPの間にある位置では、センサ出力値D1~D8が全て「L」レベルとなるから、AND回路204は「H」レベルの信号を出力する。したがって、コントローラ20は、AND回路204の出力変化をカウンタ24によりカウントすれば、ロボット用台車2が通過した反射板RPの枚数を把握することができる。そして、コントローラ20は、反射板RPが配置される間隔と反射板RPの経路方向における寸法とを合計した長さに、通過した反射板RPの枚数を乗じることで、ロボット用台車2が走行した距離を測定することができる。
【0032】
なお、コントローラ20は、推進ホイール4に取り付けたエンコーダ11を介してカウントされる、推進ホイール4の回転積算量からロボット用台車2の走行距離を測定してもよい。また、通過した反射板RPの枚数に、推進ホイール4の回転量を加味して、ロボット用台車2の走行距離を測定してもよい。
【0033】
更にコントローラ20の記憶手段(EPROM、SRAM、スマートメディア等を含む)には、例えば図7に示すような経路マップのデータが記憶されてもよい。この経路マップには、走行経路C、反射板RPの配置座標等が記述されている。コントローラ20は、上述した方法で測定したロボット用台車2の走行距離に基づいて、例えば反射板RPを通過する毎に経路マップを逐一参照することにより、当該台車2の現在位置を認識することができる。
【0034】
また、走行経路C上の1つ又は複数の地点をチェック位置として任意に定め、そのチェック位置又はそのチェック位置にある反射板RPにICタグCPを設けてもよい。例えば走行ロボット1が頻繁に行き来する位置を、チェック位置として定めておくことが好ましい。ICタグCPには、チェック位置の座標を示す識別情報(位置情報)が記録されている。走行ロボット1がチェック位置に到達した時には、コントローラ20は、その位置で、ICタグCPから識別情報(チェック位置の位置情報)を受信する。そして、コントローラ20は、反射板RPの通過数及び/又はエンコーダ11のカウント値から認識した当該台車2の現在位置を、ICタグCPから受信した識別情報に基づくチェック位置に較正することができる。
【0035】
ロボット用台車2が、反射板RPがない経路を走行する際には、ライン状光センサ30の出力値D1~D8が全て「L」レベルとなり、フィードバック制御を行うことができない。ただし、その際には、最後に通過した反射板RPの偏位量を示すセンサ出力値D1~D8が保持されていることが、円滑な走行を維持する上で好ましい。そのために、図5に例示した制御回路は、DAデコーダ202の入力側に、直近のセンサ出力値D1~D8を保持するDフリップフロップ205が設けられている。すなわち、この回路によれば、ライン状光センサ30が反射板RPのエッジを検知し、センサ出力値D1~D8が全て「L」レベルになると、AND回路204の出力によりゲート回路206がオフし、Dフリップフロップ205へのタイミング信号CKの供給が停止される。これにより、直近のセンサ出力値D1~D8がDフリップフロップ205に保持される。
【0036】
図2に示したように、ロボット用台車2は、コントローラ20がロボット本体3との間で通信する制御信号の入出力や、衝突回避等のためオプショナルに設けられる障害物センサや人検出センサ等からの信号入力を行うためのI/Oポート21を設けてもよい。また、外部のリモコン操作装置からの信号を受信するためのリモコン受信部22や、所定のチェック位置に配置されるICタグからの位置情報を受信するためのRF受信部23等も任意に設けることができる。
【0037】
また、ロボット用台車2は、コントローラ20の制御により、出発位置から目標位置に到達するまでの走行プランに従って無人で走行することができる。例えば利用者がリモコン操作装置を使って、走行ロボット1を到着させたい目標位置の位置番号や座標情報を入力すると、コントローラ20は、記憶手段に記憶されている経路マップを参照し、例えば現在位置を出発位置とし、そこから目標位置までの走行プランを自動的に作成することができる。例えば、図8の例では、走行ロボット1(ロボット用台車2)の出発位置(X2Y26)から目標位置(X32Y29)までの走行プランとして、下記のようなプログラムコードがコントローラ20により作成される。
YP8;TL90;XP30;TL90;YN5:
ここで、「YP8」は、台車2をYP方向に8コマ移動させるコマンドを意味し、「TL90」は、台車2を90度左旋回させるコマンドを意味し、「XP30」は、台車2をXP方向に30コマ移動させるコマンドを意味し、「YN5」は、台車2をYN方向に5コマ前進させるコマンドを意味する。なお、ここでいう「コマ」とは、通過する反射板RPの枚数を数える際の数詞である。
そして、コントローラ20は、作成したプログラムコードに従ってロボット用台車2を走行させることで、走行ロボット1を出発位置から目標位置まで、所定の走行経路Cに沿って正確に移動させることができる。
【0038】
なお、走行ロボット1を移動させる先の目標位置は、到達する順番に複数設定されてもよいし、ロボットが2個所の目標位置を往復するような設定がされてもよい。また、それぞれの位置での出発時刻(又は到達時刻)や、走行速度等のパラメータを、リモコンによる操作入力又はコントローラ20の記憶装置に直接書き込む等の方法で設定することができる。
【0039】
このように、ロボット用台車2を走行体として有する走行ロボット1は、走行経路C上の目標位置まで自律的かつ確実に移動することができる。また、反射板RPを床面FSに配置するだけで、簡単に走行経路を設定することができる。また、走行ロボット1が稼働する施設のレイアウト変更等に合わせて走行経路を容易に変更することもできる。
【0040】
なお、ロボット用台車2は、例えば図9A、9Bに示すように、2軸の推進ホイール4、4の回転速度差Δωにより、方向転換及びその場での180度旋回ができる方向転換手段を備えるものでもよい。その場合、ロボット用台車2のコントローラ20は、ライン状光センサ30により検知された反射板RPの偏位量δに応じた、左右の推進ホイール4、4の回転速度差Δωとなるように、各推進モータ5をフィードバック制御する。これにより、上述の実施形態と同様に、ロボット用台車2は、反射板RPを通過するときに、その向きを自動的に修正しながら、走行経路に沿って走行することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 走行ロボット
2 ロボット用台車
3 ロボット本体
4 推進ホイール
5 推進モータ
6 方向転換ホイール
7 操舵モータ
11 エンコーダ
12 リンク機構
20 コントローラ
21 I/Oポート
22 リモコン受信部
23 RF受信部
24 カウンタ
30 ライン状光センサ
201 オペアンプ
202、203 DAデコーダ
204 AND回路
205 Dフリップフロップ
206 ゲート回路
C 走行経路
RP 反射板
FS 床面
CP ICタグ
δ 反射板の偏位量
θ 方向転換ホイールの操舵角度(旋回角度)
Δω 推進ホイールの回転速度差
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9A
図9B