(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-28
(45)【発行日】2022-02-07
(54)【発明の名称】二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/36 20100101AFI20220131BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20220131BHJP
H01M 4/70 20060101ALI20220131BHJP
H01M 4/02 20060101ALI20220131BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20220131BHJP
H01M 8/18 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
H01M10/36 Z
H01M10/36 A
H01M10/04 Z
H01M4/70 A
H01M4/02 A
H01M4/02 Z
H01M4/58
H01M8/18
(21)【出願番号】P 2016189050
(22)【出願日】2016-09-28
【審査請求日】2019-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】899000035
【氏名又は名称】株式会社 東北テクノアーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100163212
【氏名又は名称】溝渕 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100156535
【氏名又は名称】堅田 多恵子
(72)【発明者】
【氏名】山村 朝雄
(72)【発明者】
【氏名】坂本 清志
(72)【発明者】
【氏名】吉田 茂樹
【審査官】川村 裕二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/203965(WO,A1)
【文献】特開2006-147210(JP,A)
【文献】国際公開第2011/049103(WO,A1)
【文献】特開2002-216833(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/00-10/39
H01M 4/00- 4/84
H01M 8/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、
前記支持体上に積層された、複数の歯を有する櫛形形状をなす正極集電体と、
前記正極集電体の少なくとも歯の部分の上に積層され、酸化還元反応によって、5価および4価の間で酸化数が変化するバナジウムイオンまたは5価および4価の間で酸化数が変化するバナジウムを含むイオンを含有する正極活物質および電解液を有する正極電極と、
前記支持体上に積層された、複数の歯を有する櫛形形状をなす負極集電体と、
前記負極集電体の少なくとも歯の部分の上に積層され、酸化還元反応によって、2価および3価の間で酸化数が変化するバナジウムイオンまたは2価および3価の間で酸化数が変化するバナジウムを含むイオンを含有する負極活物質および電解液を有する負極電極と、
前記正極電極および前記負極電極の両方に接し、前記正極活物質および/または前記負極活物質を含有し、前記正極電極と前記負極電極の間でバナジウムイオン以外のイオンまたはバナジウムを含むイオン以外のイオンを移動させる
固体またはゲル状の部材であるイオン伝導性部材と、を備え、
前記正極集電体と前記負極集電体が互いにその歯の部分でかみ合うように対向配置されており、
隣り合う前記正極電極と前記負極電極は離間しており、隣り合う前記正極電極と前記負極電極に亘って前記イオン伝導性部材が配置されている二次電池。
【請求項2】
前記正極電極は、前記正極集電体と同じ櫛形形状をなし、前記正極集電体上に積層されており、
前記負極電極は、前記負極集電体と同じ櫛形形状をなし、前記負極集電体上に積層されている、請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記イオン伝導性部材は、前記正極電極および前記負極電極の上に積層されている、請求項1または請求項2に記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池の一つとして、バナジウムを活物質として用いたバナジウム・レドックスフロー電池が知られている(特許文献1)。バナジウム・レドックスフロー電池は、電解質溶液中における活物質の酸化還元反応を利用して充放電を行うことのできる電池である。
【0003】
特に、活物質として2価、3価、4価、及び5価のバナジウムイオンを用いるとともに、タンクに貯蔵したバナジウムの硫酸溶液をセルとの間で循環させるバナジウム・レドックスフロー電池は、大型電力貯蔵分野で使用されている。
【0004】
バナジウム・レドックスフロー電池は、正極側の活物質である正極液を収容する正極液タンク、負極側の活物質である負極液を収容する負極液タンク、及び、充放電を行うスタックとからなる。正極液及び負極液は、ポンプによってセルとタンクの間を循環する。スタックは、正極、負極、及び、それらを仕切るイオン交換膜を備えている。正極液中及び負極液中の電池反応式は、それぞれ、以下の式(1)、(2)の通りである。
【0005】
正極:VO2+(aq)+H2O ⇔ VO2
+(aq)+e-+2H+ …(1)
【0006】
負極:V3+(aq)+e- ⇔ V2+(aq) …(2)
【0007】
上式(1)及び(2)において、「⇔」は化学平衡を示す。またイオンの隣に記載された(aq)は、そのイオンが溶液中に存在することを意味する。
【0008】
また、バナジウムを活物質として用いた電池として、液静止型バナジウムレドックス電池(特許文献2)、バナジウム固体塩電池等が知られている(特許文献3)。
【0009】
本明細書では、バナジウム、バナジウムイオン、バナジウムを含むイオン、あるいはバナジウムを含む化合物を活物質として用いるレドックス電池全般のことを、「バナジウムレドックス電池」と呼ぶ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許第4,786,567号公報
【文献】特開2002-216833号公報
【文献】国際公開WO2011/049103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
バナジウムレドックス電池等の従来の二次電池では、正極と負極はイオン交換膜によって隔てられており、正極及び負極に含まれる電解液が混合することが防止されている。しかしながら、このイオン交換膜は、電池体積の増大、電池コストの上昇など、電池を設計、製造する上で大きな制約となっていた。
【0012】
そこで、本発明は、正極及び負極を隔てるためのイオン交換膜を必要としない二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、以下の通りである。
支持体と、
前記支持体上に積層された、複数の歯を有する櫛形形状をなす正極集電体と、
前記正極集電体の少なくとも歯の部分の上に積層され、酸化還元反応によって、5価および4価の間で酸化数が変化するバナジウムイオンまたは5価および4価の間で酸化数が変化するバナジウムを含むイオンを含有する正極活物質および電解液を有する正極電極と、
前記支持体上に積層された、複数の歯を有する櫛形形状をなす負極集電体と、
前記負極集電体の少なくとも歯の部分の上に積層され、酸化還元反応によって、2価および3価の間で酸化数が変化するバナジウムイオンまたは2価および3価の間で酸化数が変化するバナジウムを含むイオンを含有する負極活物質および電解液を有する負極電極と、
前記正極電極および前記負極電極の両方に接し、前記正極活物質および/または前記負極活物質を含有し、前記正極電極と前記負極電極の間でバナジウムイオン以外のイオンまたはバナジウムを含むイオン以外のイオンを移動させる固体またはゲル状の部材であるイオン伝導性部材と、を備え、
前記正極集電体と前記負極集電体が互いにその歯の部分でかみ合うように対向配置されており、
隣り合う前記正極電極と前記負極電極は離間しており、隣り合う前記正極電極と前記負極電極に亘って前記イオン伝導性部材が配置されている、二次電池。
【0014】
前記正極電極は、前記正極集電体と同じ櫛形形状をなし、前記正極集電体上に積層されており、
前記負極電極は、前記負極集電体と同じ櫛形形状をなし、前記負極集電体上に積層されていることが好ましい。
【0015】
前記イオン伝導性部材は、前記正極電極及び前記負極電極の上に積層されていることが好ましい。
【0016】
前記イオン伝導性部材は、ゲル状電解質であることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、正極及び負極を隔てるためのイオン交換膜を必要としない二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】バナジウム固体塩電池の第1の構成例を示す平面図である。
【
図4】バナジウム固体塩電池の第2の構成例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、二次電池の一つであるバナジウムレドックス電池を例にとって本発明の実施形態について詳細に説明する。
本実施形態のバナジウムレドックス電池は、正極及び負極における活物質として、バナジウム、バナジウムイオン、あるいはバナジウムを含む化合物を用いている。バナジウム(V)は、2価、3価、4価、及び5価を含む複数の酸化状態を取り得る元素である。バナジウムは、電池に有用な程度の大きさの電位差を生じさせる元素である。
以下では、本発明をバナジウム固体塩電池に適用した例について説明する。
【0022】
本実施形態のバナジウム固体塩電池は、正極電極及び正極集電体からなる正極と、負極電極及び負極集電体からなる負極を含む。
【0023】
正極電極は、正極活物質を含む。正極活物質は、還元酸化反応によって5価及び4価の間で酸化数が変化するバナジウムを含む。または、正極活物質は、還元酸化反応によって5価及び4価の間で酸化数が変化するバナジウムイオンを含む。または、正極活物質は、酸化還元反応によって5価及び4価の間で酸化数が変化するバナジウムを含有するイオン(陽イオン又は陰イオン)を含む。または、正極活物質は、還元酸化反応によって5価及び4価の間で酸化数が変化するバナジウムを含む固体バナジウム塩を含む。または、正極活物質は、還元酸化反応によって5価及び4価の間で酸化数が変化するバナジウムを含む錯塩を含む。
【0024】
負極電極は、負極活物質を含む。負極活物質は、酸化還元反応によって2価及び3価の間で酸化数が変化するバナジウムを含む。または、負極活物質は、酸化還元反応によって2価及び3価の間で酸化数が変化するバナジウムイオンを含む。または、負極活物質は、酸化還元反応によって2価及び3価の間で酸化数が変化するバナジウムを含有するイオン(陽イオン又は陰イオン)を含む。または、負極活物質は、酸化還元反応によって2価及び3価の間で酸化数が変化するバナジウムを含む固体バナジウム塩を含む。または、負極活物質は、酸化還元反応によって2価及び3価の間で酸化数が変化するバナジウムを含む錯塩を含む。
【0025】
バナジウム固体塩電池は、正極及び負極の活物質として固体物質を用いるため、液漏れなどの心配が少ない。また、バナジウム固体塩電池は、正極及び負極の活物質として固体物質を用いるため、安全性に優れ、かつ、高いエネルギー密度を有する。なお、バナジウム固体塩電池においては、活物質が全て固体状態で存在しているとは限らず、活物質が固体と液体の両方の状態で共存していることもある。
【0026】
バナジウム固体塩電池に用いることのできる負極活物質の例として、硫酸バナジウム(II)・n水和物、及び、硫酸バナジウム(III)・n水和物等が挙げられる。負極活物質は、硫酸水溶液などの電解液に加えられてもよい。
【0027】
バナジウム固体塩電池に用いることのできる正極活物質の例として、オキシ硫酸バナジウム(IV)・n水和物、及び、ジオキシ硫酸バナジウム(V)・n水和物等が挙げられる。正極活物質は、硫酸水溶液などの電解液に加えられてもよい。
【0028】
バナジウム固体塩電池の充放電時における正極活物質の反応式は、例えば、以下の式(3)に示す通りである。
【0029】
正極:VOX2・nH2O(s)⇔ VO2X・mH2O(s)+HX+H++e- …(3)
【0030】
バナジウム固体塩電池の充放電時における負極活物質の反応式は、例えば、以下の式(4)に示す通りである。
【0031】
負極:VX3・nH2O(s)+e- ⇔ 2VX2・mH2O(s)+X- …(4)
【0032】
上記式(3)及び(4)において、Xは1価の陰イオンを表す。
上記式(3)及び(4)において、nは様々な値をとりうる。たとえば、オキシ硫酸バナジウム(IV)・n水和物とジオキシ硫酸バナジウム(V)・n水和物は、必ずしも同じ個数の水和水を持っているとは限らない。以下に登場する化学反応式や物質名においても同様である。
【0033】
<第1の構成例>
図1は、バナジウム固体塩電池の第1の構成例を示す平面図である。
図2は、
図1のA-A線断面図である。
図3は、
図1のB-B線断面図である。
図1~
図3に示すように、バナジウム固体塩電池10は、基板12と、基板12の上に互いに向かい合うように配置された正極20及び負極40を備えている。
【0034】
基板12は、その上に正極20及び負極40を配置することのできる絶縁性の部材であればよく、特に制限されるものではないが、ロール状に巻き取ることが可能なシート状の部材であることが好ましい。基板12がシート状の部材である場合、基板12に対してロールtoロール方式で正極20及び負極40を印刷することができるため、量産性に優れた安価な電池を実現することができる。例えば、基板12は、絶縁性のプラスチックシートや多孔質シートによって構成されることが好ましい。基板12が、本発明の「支持体」に対応する。
【0035】
正極20は、基板12の上に積層された、複数の歯22aを有する櫛形形状をなす正極集電体22と、正極集電体22の少なくとも歯22aの部分の上に積層された正極電極24とからなる。
【0036】
正極集電体22は、炭素材料によって形成されている。炭素材料としては、例えば、カーボンブラック、炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラッシーカーボン(登録商標)の粉末、黒鉛粉末、多孔質カーボン粉末、活性炭、及び/又は、炭素フェルトを用いることができる。これらの炭素材料の中では、カーボンブラックが特に好ましい。
【0037】
上記した炭素材料及びバインダーを混練した後、この混練物を基板12の上に塗布あるいは印刷等によって積層する。これにより、基板12の上にシート状に積層された正極集電体22を得ることができる。炭素材料と混練するバインダーとしては、例えば、PTFE、PVDF、フッ素系バインダー、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ゴム系バインダー、アクリル系バインダー、塩素系バインダー、及び/又は、無機系バインダーを用いることができる。
【0038】
正極電極24を形成するためには、正極活物質であるオキシ硫酸バナジウム(IV)・n水和物と、電解液である硫酸水溶液と、カーボンとを混合した後、この混合物を正極集電体22の歯22aの上に塗布あるいは印刷等によって積層する。これにより、正極集電体22の歯22aの上に積層された薄膜状の正極電極24を得ることができる。なお、正極電極24はカーボンを含むことが好ましいが、正極活物質によって形状を保持できる場合は、正極電極24はカーボンを含まなくてもよい。
【0039】
負極40は、基板12の上に積層された、複数の歯42aを有する櫛形形状をなす負極集電体42と、負極集電体42の少なくとも歯42aの部分の上に積層された負極電極44とからなる。
【0040】
負極集電体42は、炭素材料によって形成されている。炭素材料としては、例えば、カーボンブラック、炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラッシーカーボン(登録商標)の粉末、黒鉛粉末、多孔質カーボン粉末、活性炭、及び/又は、炭素フェルトを用いることができる。これらの炭素材料の中では、カーボンブラックが特に好ましい。
【0041】
上記した炭素材料及びバインダーを混練した後、この混練物を基板12の上に塗布あるいは印刷等によって積層する。これにより、基板12の上にシート状に積層された負極集電体42を得ることができる。炭素材料と混練するバインダーとしては、例えば、PTFE、PVDF、フッ素系バインダー、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ゴム系バインダー、アクリル系バインダー、塩素系バインダー、及び/又は、無機系バインダーを用いることができる。
【0042】
負極電極44を形成するためには、負極活物質である硫酸バナジウム(III)・n水和物と、電解液である硫酸水溶液と、カーボンとを混合した後、この混合物を負極集電体42の歯42aの上に塗布あるいは印刷等によって積層する。これにより、負極集電体42の歯42aの上に積層された薄膜状の負極電極44を得ることができる。なお、負極電極44はカーボンを含むことが好ましいが、負極活物質によって形状を保持できる場合は、負極電極44はカーボンを含まなくてもよい。
【0043】
正極集電体22の端部には、正極リード線26が接続されており、負極集電体42の端部には、負極リード線46が接続されている。正極リード線26と負極リード線46との間に適当な大きさの電気抵抗を接続することによって、電池10を放電させることができる。正極リード線26と負極リード線46との間に十分な大きさの電圧を印加することによって、電池10の充電を行うことができる。
【0044】
図1~
図3に示すように、正極電極24と負極電極44の間には、イオン伝導性部材50が配置されている。イオン伝導性部材50は、その内部をイオン(例えば、水素イオン、硫酸イオン等)が移動することのできる部材である。イオン伝導性部材50は、電解質を含むことが好ましい。電解質としては、例えば、硫酸を用いることができる。なお、
図1では、イオン伝導性部材50の外周の輪郭のみを点線で示している。
【0045】
イオン伝導性部材50は、正極電極24及び負極電極44の間でバナジウムイオン以外のイオン(例えば、水素イオン、硫酸イオン等)を移動させることのできる部材であることが好ましい。イオン伝導性部材50は、基板12の上でその形状を保持できる部材であることが好ましく、固体または、ゲル状の部材であることが好ましい。
【0046】
ゲル状のイオン伝導性部材50は、例えば、電解質である硫酸水溶液と、寒天を混合した後、この混合物を型枠に流し込むことによって製造することができる。硫酸水溶液の濃度、量、及び、混合する寒天の量を調整することによって、ゲル化した後のイオン伝導性部材50の固さや電気伝導度を調整することができる。なお、電解質溶液をゲル化するためには、寒天以外のゲル化剤を用いることも可能である。
【0047】
図2、
図3に示すように、イオン伝導性部材50は、正極電極24及び負極電極44の上面を覆うように積層されていることが好ましいが、互いに隣接する正極電極24及び負極電極44の間にのみ積層されてもよい。すなわち、イオン伝導性部材50は、正極電極24及び負極電極44の両方に接していればよく、正極電極24及び負極電極44の上面を覆っていなくてもよい。
【0048】
図1に示すように、櫛形形状の正極集電体22と、櫛形形状の負極集電体42は、互いにその歯22a、42aの部分で噛み合うように対向配置(互いに向かい合うように配置)されている。また、櫛形形状の正極集電体22と、櫛形形状の負極集電体42は、互いに所定の距離だけ離間した状態で配置されている。正極集電体22と負極集電体42をこのように配置することによって、高容量でかつ高出力のバナジウム固体塩電池10を実現することができる。
【0049】
イオン伝導性部材50は、正極活物質および/または負極活物質を含有していることが好ましい。
イオン伝導性部材50が正極活物質および/または負極活物質を含有している場合、イオン伝導性部材50に含まれる活物質の濃度と、正極電極24および/または負極電極44に含まれる活物質の濃度との差を小さくすることができる。その結果、正極電極24および/または負極電極44に含まれる活物質がイオン伝導性部材50に移動することを防止できるため、活物質の減少によって電池の容量が時間の経過とともに低下することを防止することができる。
【0050】
<第2の構成例>
図4は、バナジウム固体塩電池の第2の構成例を示す平面図である。
図5は、
図4のC-C線断面図である。
図6は、
図4のD-D線断面図である。
図4~
図6において、第1の構成例に係るバナジウム固体塩電池10と同様の部分には、同一の符号を付している。
【0051】
図4~
図6に示すように、第2の構成例に係るバナジウム固体塩電池60において、正極集電体22は櫛形形状に形成されており、正極電極24は正極集電体22とほぼ同一の櫛形形状に形成されている。正極電極24を形成するためには、正極活物質であるオキシ硫酸バナジウム(IV)・n水和物と、電解液である硫酸水溶液と、カーボンとを混合した後、この混合物を正極集電体22の上に塗布あるいは印刷等によって積層する。これにより、櫛形形状の正極集電体22の上に積層された、櫛形形状でかつ薄膜状の正極電極24を得ることができる。
【0052】
第2の構成例に係るバナジウム固体塩電池60において、負極集電体42は櫛形形状に形成されており、負極電極44は負極集電体42とほぼ同一の櫛形形状に形成されている。負極電極44を形成するためには、負極活物質である硫酸バナジウム(III)・n水和物と、電解液である硫酸水溶液と、カーボンとを混合した後、この混合物を負極集電体42の上に塗布あるいは印刷等によって積層する。これにより、櫛形形状の負極集電体42の上に積層された、櫛形形状でかつ薄膜状の負極電極44を得ることができる。
【0053】
図4~
図6に示すように、正極電極24と負極電極44の間には、イオン伝導性部材50が配置されている。イオン伝導性部材50は、その内部をイオン(例えば、水素イオン、硫酸イオン等)が移動することのできる部材である。イオン伝導性部材50は、電解質を含むことが好ましい。電解質としては、例えば、硫酸を用いることができる。なお、
図4では、イオン伝導性部材50の外周の輪郭のみを点線で示している。
【0054】
イオン伝導性部材50は、正極電極24及び負極電極44の間でバナジウムイオン以外のイオン(例えば、水素イオン、硫酸イオン等)を移動させることのできる部材であることが好ましい。イオン伝導性部材50は、基板12の上でその形状を保持できる部材であることが好ましく、固体または、ゲル状の部材であることが好ましい。
【0055】
ゲル状のイオン伝導性部材50は、例えば、電解質である硫酸水溶液と、寒天を混合した後、この混合物を型枠に流し込むことによって製造することができる。硫酸水溶液の濃度、量、及び、混合する寒天の量を調整することによって、ゲル化した後のイオン伝導性部材50の固さや電気伝導度を調整することができる。なお、電解質溶液をゲル化するためには、寒天以外のゲル化剤を用いることも可能である。
【0056】
第2の構成例に係るバナジウム固体塩電池60において、イオン伝導性部材50は、櫛形形状に形成された正極電極24及び負極電極44の歯の部分だけでなく、正極電極24及び負極電極44の基部24a、44aを含めた全部を覆うように積層されている。
【0057】
第2の構成例に係るバナジウム固体塩電池60によれば、正極集電体22が櫛形形状に形成されており、正極電極24が正極集電体22とほぼ同一の櫛形形状に形成されている。また、負極集電体42が櫛形形状に形成されており、負極電極44が負極集電体42とほぼ同一の櫛形形状に形成されている。これにより、正極電極24及び負極電極44のイオン伝導性部材50との接触面積を大きくすることができるため、バナジウム固体塩電池60の出力をより高めることができる。
【0058】
また、第2の構成例に係るバナジウム固体塩電池60によれば、イオン伝導性部材50が正極電極24及び負極電極44の全部を覆うように積層されているため、バナジウム固体塩電池60の出力をより一層高めることができる。
【0059】
以上説明したように、本実施形態のバナジウム固体塩電池によれば、正極及び負極を隔てるためのイオン交換膜を必要としない二次電池を実現することができる。
【符号の説明】
【0061】
10、60 バナジウム固体塩電池
12 基板
20 正極
22 正極集電体
24 正極電極
26 正極リード線
40 負極
42 負極集電体
44 負極電極
46 負極リード線
50 イオン伝導性部材