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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-28
(45)【発行日】2022-02-07
(54)【発明の名称】生産ラインの制御システム
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20220131BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2016239547
(22)【出願日】2016-12-09
(65)【公開番号】P2020024474
(43)【公開日】2020-02-13
【審査請求日】2019-10-10
【審判番号】
【審判請求日】2021-02-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000147833
【氏名又は名称】株式会社イシダ
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100180851
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼口 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100165526
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 寛
(72)【発明者】
【氏名】中川 祐治
(72)【発明者】
【氏名】川西 紀男
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 達夫
【合議体】
【審判長】見目 省二
【審判官】大山 健
【審判官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-153050(JP,A)
【文献】特開平9-66444(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の工程を含む生産ラインの制御システムであって、
前記各工程に設けられる装置からの作業要求信号を受信する受信部と、
前記受信部において受信した前記作業要求信号に基づいて、予め登録される作業者に対し、作業を指示する情報を表示装置に出力する制御部と、を備え、
前記制御部は、現時点では、前記作業要求信号で要求された作業を行うことが可能な作業者がいないと判断した場合、前記生産ラインに含まれる前記各工程に設けられる前記装置における動作を継続させたまま前記装置の単位時間当たりの生産量を、現在設定されている量よりも減少するように設定する、生産ラインの制御システム。
【請求項2】
前記表示装置は、作業者の視認できる位置に配置されて、作業指示を与えるモニタ、或いは携帯端末である、請求項1に記載の生産ラインの制御システム。
【請求項3】
前記生産ラインが、組合せ計量装置によって計量する工程と、計量された物を包装装置で包装する工程と、包装物の包装状態や異物混入の有無を検査装置で検査する工程と、を含む、請求項1に記載の生産ラインの制御システム。
【請求項4】
前記予め登録される作業者は、処理可能な作業が対応付けられており、
前記制御部は、前記作業要求信号を受信した場合、前記予め登録される作業者のうち、現在作業ができる作業者の処理可能な作業と、当該作業要求信号において要求される作業とを比較し、前記現在作業ができる作業者では前記要求される作業が処理できない場合、前記生産量を現在設定されている量よりも減少するように設定する、請求項1に記載の生産ラインの制御システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記単位時間当たりの生産量を、前記生産ラインにおける現在の生産状況に応じて、現在設定されている量よりも減少するように設定する、請求項1又は4に記載の生産ラインの制御システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記単位時間当たりの生産量を、前記作業者の作業状況に応じて、現在設定されている量よりも減少するように設定する、請求項1又は4又は5に記載の生産ラインの制御システム。
【請求項7】
前記生産ラインは複数設けられており、
前記制御部は、一の前記生産ラインにおける単位時間当たりの生産量を現在設定されている量よりも減少するように設定した場合、他の前記生産ラインにおける単位時間当たりの生産量を現在設定されている量よりも増加するように設定する、請求項1~6のいずれか一項に記載の生産ラインの制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産ラインの制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の生産ラインの制御システムとして、例えば、特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1に記載の制御システムは、装置からの作業情報を受け付けて受け付けた要求作業情報を記憶し、作業項目内容を判断する手段と各作業者の現在状況を特定の項目で判断する手段とそれを評価数字で表し記憶する評価記憶手段と、各評価項目に発生作業内容に基づいた重み付けを付加し記憶する評価記憶手段と、その評価記憶の条件結果により作業指示情報に優先順位を付け作業者へ出力する作業指示手段と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-163889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
生産ラインにおいては、装置等のメンテナンスを行う作業、生産に必要な部材(材料)を供給(補充、交換)する作業、及び、生産工程において発生したトラブルに対応する作業等が発生する。生産ラインでは、作業者の人数に対して要求される作業の数が多い場合、作業者の対応が追いつかない場合がある。この場合、作業者に対して作業を指示することができないため、作業者が作業に対応できる状況となるまで、生産ラインを停止させなければならない。そのため、生産効率が低下する。また、生産ラインにおいて生産される製品が食品である場合、生産ラインが停止すると、食品が酸化する等して劣化する。この場合、食品を廃棄しなければならない。
【0005】
本発明の一側面は、生産効率の低下を抑制しながら、生産対象物の品質を安定化できる生産ラインの制御システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る生産ラインの制御システムは、複数の工程を含む生産ラインの制御システムであって、複数の工程のうちの少なくとも一部の工程において発生した作業の対応を要求する作業要求信号を受信する受信部と、受信部において受信した作業要求信号に基づいて、予め登録される作業者に対する作業を設定し、当該作業者に作業を指示する情報を出力する制御部と、を備え、制御部は、予め登録される作業者により、作業要求信号において要求される作業の処理ができない場合、生産ラインに設定される単位時間当たりの生産量を、現在設定されている量よりも減少するように設定する。
【0007】
本発明の一側面に係る生産ラインの制御システムでは、制御部は、予め登録される作業者により、作業要求信号において要求される作業の処理ができない場合、生産ラインに設定される単位時間当たりの生産量を、現在設定されている量よりも減少するように設定する。これにより、作業を処理できる作業者がいない場合であっても、生産ラインを停止させることなく、生産ラインを稼働し続けることができる。したがって、生産効率の低下を抑制しながら、生産対象物の品質を安定化できる。また、製品が食品である場合、生産ラインが稼働し続けるため、生産ラインが完全に停止する場合に比べて、食品の劣化による食品の廃棄量を減少させることができる。その結果、生産ラインの制御システムでは、生産効率の低下を抑制しながら、生産対象物の品質を安定化できる。
【0008】
一実施形態においては、制御部は、作業要求信号において要求される作業を設定可能な作業者が存在しないと判断する場合、生産量を現在設定されている量よりも減少するように設定してもよい。この構成では、作業を処理できる作業者の有無を適切に判断できる。
【0009】
一実施形態においては、予め登録される作業者は、処理可能な作業が対応付けられており、制御部は、作業要求信号を受信した場合、予め登録される作業者のうち現在設定可能な作業者に対応する処理可能な作業と、当該作業要求信号において要求される作業とを比較し、現在設定可能な作業者では作業が処理できない場合、生産量を現在設定されている量よりも減少するように設定してもよい。この構成では、作業者に対して、当該作業者が対応することができない作業を指示しない。したがって、作業者の能力に応じた作業の指示が可能となる。
【0010】
一実施形態においては、制御部は、単位時間当たりの生産量を、生産ラインにおける現在の生産状況に応じて、現在設定されている量よりも減少するように設定してもよい。この構成では、現在の生産状況に応じて生産量が減少するように設定するため、生産ラインの状況に応じた制御が可能となる。
【0011】
一実施形態においては、制御部は、単位時間当たりの生産量を、現在設定されている量よりも一定量だけ減少するように設定してもよい。この構成では、単位時間当たりの生産量を確実に減少させることができる。
【0012】
一実施形態においては、制御部は、単位時間当たりの生産量を、作業者の作業状況に応じて、現在設定されている量よりも減少するように設定してもよい。この構成では、作業者の作業状況に応じて生産量を減少させるため、作業者の状況に応じた制御が可能となる。したがって、作業者による作業が追いつかず、生産ラインが停止するという事態を確実に回避できる。
【0013】
一実施形態においては、生産ラインは複数設けられており、制御部は、一の生産ラインにおける単位時間当たりの生産量を現在設定されている量よりも減少するように設定した場合、他の生産ラインにおける単位時間当たりの生産量を現在設定されている量よりも増加するように設定してもよい。この構成では、一の生産ラインにおける生産量を減少させた場合であっても、他の生産ラインにおける生産量を増加させるため、全体としての生産量を維持することができる。したがって、生産ラインの制御システムでは、生産効率の低下を抑制しながら、生産対象物の品質を安定化できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一側面によれば、生産効率の低下を抑制しながら、生産対象物の品質を安定化できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、生産ラインを模式的に示す図である。
図2図2は、生産ラインの制御システムを示す図である。
図3図3は、作業者データベースに格納されているデータの一例を示す図である。
図4図4は、作業データベースに格納されているデータの一例を示す図である。
図5図5は、生産ラインの制御システムの動作を示すフローチャートである。
図6図6は、表示装置に表示される画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0017】
本実施形態に係る生産ラインの制御システム1は、図1に示される生産ライン100を制御する。本実施形態では、生産ライン100として、食品(菓子等)を生産するラインを一例として説明する。図1に示されるように、生産ライン100は、主ラインLと、主ラインLから分岐する複数(ここでは3本)の分岐ラインL1,L2,L3を有する。主ラインLには、工程Pが設けられる。工程Pにおいては、例えば、食品に処理が施される。工程Pにおいて処理された食品は、各分岐ラインL1~L3に搬送される。食品は、例えば、ベルトコンベアにより搬送される。なお、工程Pの前に更に工程があってもよい。
【0018】
本実施形態では、分岐ラインL1~L3においては、同様の工程が行われる。分岐ラインL1は、例えば、複数(ここでは6個)の工程P11~P16を有する。工程P11では、組合せ計量装置によって、食品の組合せ計量を行う。工程P12では、包装装置によって、組合せ計量装置により計量された食品を包装する。工程P13では、包装検査装置によって、包装物の包装状態を検査する。工程P14では、計量装置によって、食品の重量を検査する。工程P15では、異物検査装置によって、異物混入の有無を検査する。工程P16では、梱包装置によって、包装物を梱包する。分岐ラインL2,L3は、分岐ラインL1と同様に、複数の工程P21~P26,P31~P36を有する。
【0019】
生産ライン100においては、各工程に設けられる装置等のメンテナンスを行う作業、生産に必要な部材(材料)を供給(補充、交換)する作業、及び、生産工程において発生したトラブルに対応する作業等が発生する。例えば、工程P2では、食品を包装するフィルムを交換する作業が発生する。各工程P,P11~P16,P21~P26,P31~P36設けられる装置は、作業が発生した場合、発生した作業の対応を要求する作業要求信号を生成し、作業要求信号を後述の受信部3に送信する。作業要求信号には、対応が必要な作業を特定する情報、作業が発生した工程(装置)を特定する情報、及び、作業(トラブル等)が発生した時間等が含まれ得る。各工程P,P11~P16,P21~P26,P31~P36設けられる装置は、作業要求信号を生成する生成部(図示省略)と、作業要求信号を送信する送信部(図示省略)と、を備える。
【0020】
図2に示されるように、生産ラインの制御システム1は、受信部3と、制御装置(制御部)5と、表示装置7と、を備える。
【0021】
受信部3は、複数の工程P,P11~P16,P21~P26,P31~P36のうちの少なくとも一部の工程において発生した作業の対応を要求する作業要求信号を受信する。受信部3は、ケーブル等による有線で作業要求信号を受信してもよいし、無線で作業要求信号を受信してもよい。受信部3による受信を無線で行う場合、伝送媒体としては、電波、赤外線又は光を採用してもよい。受信部3は、受信した作業要求信号を制御装置5に出力する。
【0022】
制御装置5は、生産ライン100を統括的に制御する。制御装置5は、生産ライン100に設けられる各種装置のステータス情報及び稼働情報を管理する。制御装置5は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等で構成される。制御装置5は、制御システム1における各種制御処理を実行する概念的な部分を有する。概念的な部分は、例えばROMに格納されるプログラムがRAM上にロードされてCPUで実行されるソフトウェアとして構成することができる。
【0023】
制御装置5は、受信部3において受信した作業要求信号に基づいて、予め登録される作業者に対する作業を設定し、当該作業者に作業を指示する情報を出力する。制御装置5は、受信部3から出力された作業要求信号を受け取ると、作業要求信号に基づいて、対応が必要な作業等を取得する。制御装置5は、作業に必要な作業者を設定する。作業者は、作業者DB(データベース)9に予め登録される。具体的には、図3に示されるように、作業者DB9には、No(ナンバー)と、作業者と、勤務状態と、作業状態と、が対応付けられて格納される。勤務状態は、例えば、作業者が出勤している(作業対応が可能な状態である)場合には「1」、作業者が出勤していない(作業対応が不可能な状態である)場合には「0」で示される。作業状態は、例えば、作業者が作業に対応している場合には「作業中」、作業者が作業に対応していない場合には「待機」で示される。
【0024】
制御装置5は、作業者DB9に予め登録される作業者のうち、作業の対応が可能な作業者がいるか否かを判断する。制御装置5は、作業者DB9を参照し、作業者の出勤状態が「1」であり、且つ、作業状態が「待機」である作業者がいる場合には、作業の対応が可能な作業者がいると判断する。制御装置5は、作業者DB9を参照し、作業者の出勤状態が「1」であり、且つ、作業状態が「作業中」である作業者のみである場合には、作業の対応が可能な作業者がいないと判断する。
【0025】
制御装置5は、作業の対応が可能な作業者がいると判断した場合には、作業者に作業の対応を指示する指示情報を生成する。指示情報には、作業が発生した工程、作業内容、及び、作業者を示す情報等が含まれる。制御装置5は、生成した指示情報を表示装置7に出力する。
【0026】
制御装置5は、作業の対応に可能な作業者がいないと判断した場合には、生産ライン100に設定される単位時間当たりの生産量を、現在設定されている量よりも減少するように設定する。生産ライン100の単位時間当たりの生産量は、例えば、作業者(責任者)によって任意に設定される。制御装置5は、単位時間当たりの生産量を、生産ライン100における現在の生産状況に応じて、現在設定されている量よりも減少するように設定する。例えば、制御装置5は、現時点での生産ライン100の生産量が予定の生産量よりも多い場合には、位時間当たりの生産量を基準量よりも多く減少させる。制御装置5は、現時点での生産ライン100の生産量が予定の生産量よりも少ない場合には、位時間当たりの生産量を基準量よりも少なく減少させる。基準量は、予め設定される値であり、作業者により設定されてもよいし、自動で設定されてもよい。
【0027】
本実施形態では、制御装置5は、作業が分岐ラインL1~L3のいずれかにおいて発生した場合には、作業が発生した分岐ラインL1~L3において設定される単位時間当たりの生産量を、現在設定されている量よりも減少するように設定する。制御装置5は、一の分岐ラインにおける単位時間当たりの生産量を現在設定されている量よりも減少するように設定した場合、他の分岐ラインにおける単位時間当たりの生産量を現在設定されている量よりも増加するように設定する。例えば、制御装置5は、分岐ラインL1における単位時間当たりの生産量を減少させる場合には、分岐ラインL2,L3における単位時間当たりの生産量を増加させる。
【0028】
制御装置5は、作業の対応に可能な作業者がいないと判断した場合には、現在行われている作業の進捗状況を取得する。具体的には、本実施形態では、制御装置5は、作業者が対応している作業に要する作業時間を取得する。作業時間は、作業DB11に予め登録されている。具体的には、図4に示されるように、作業DB11には、「工程」と、工程において発生し得る「作業」と、当該作業の「作業時間」と、が対応付けられて格納される。作業時間は、例えば、過去の作業実績に基づいて設定される。
【0029】
制御装置5は、作業DB11を参照し、作業に応じた作業時間を取得する。なお、制御装置5は、作業者の習熟度(経験年数等)に基づいて、作業時間を設定してもよい。詳細には、制御装置5は、例えば、作業DB11から取得した作業時間が「15min」である場合において、現在作業を行っている作業者の習熟度が高い場合には、作業時間を「10min」に設定する。すなわち、制御装置5は、作業者の習熟度が高い場合には、作業に要する作業時間を短くする。また、制御装置5は、作業者の習熟度が低い場合には、作業時間を長くしてもよい。習熟度は、例えば、作業者毎に予め設定される。
【0030】
制御装置5は、作業時間を取得すると、作業者が作業を開始した時間に基づいて、作業の進捗状況を取得する。作業者が作業を開始した時間は、種々の方法により取得し得る。例えば、作業を開始した時間は、作業者が装置において作業を開始したときに装置から自動的に送信されてもよいし、作業者の操作により送信されてもよい。
【0031】
制御装置5は、作業時間及び作業開始時間に基づいて、作業の残り時間を算出する。具体的には、制御装置5は、以下の式に基づいて、作業の残り時間を算出する。
作業の残り時間=作業時間-(現在の時間-作業開始時間)
制御装置5は、作業の残り時間を算出することにより、作業の進捗状況を取得する。制御装置5は、作業の進捗状況に基づいて、作業の終了時間を算出する。なお、作業の終了時間には、作業者が、表示装置7において次の作業の指示を確認し得る位置まで移動する時間も含まれる。移動時間は、作業を行っていた位置から表示装置7が配置される位置までの平均的な移動時間に基づいて設定されてよいし、作業者の位置を特定し得る情報(GPS情報、RFIDによる情報等)に基づいて設定されてもよい。
【0032】
制御装置5は、作業の終了時間を算出すると、生産ライン100の生産量を再設定する。制御装置5は、作業の終了時間となった場合に、減少するように設定されている生産ライン100の単位時間当たりの生産量を再設定する。具体的には、制御装置5は、例えば、生産ライン100に設定されている単位時間当たりの生産量を、元の生産量(生産開始時の生産量等)に設定する。なお、制御装置5は、生産ライン100に設定されている単位時間当たりの生産量を、元の生産量よりも増加させてもよい。なお、作業の終了時間は、他の方法により得られてもよい。例えば、作業の終了時間は、作業が終了したときに装置から自動で送信されてもよいし、作業者の操作により送信されてもよい。
【0033】
制御装置5は、作業の終了時間を算出すると、作業が終了する作業者に作業の対応を指示する指示情報を生成する。制御装置5は、生成した指示情報を表示装置7に出力する。
【0034】
表示装置7は、制御装置5から出力された指示情報に基づく表示を行う。表示装置7は、例えば、ディスプレイ(モニタ)である。表示装置7は、生産ライン100において一又は複数設けられる。表示装置7は、作業者が視認可能な位置に配置される。
【0035】
続いて、生産ラインの制御システム1の動作について、図5を参照して説明する。各ラインL,L1~L3の各工程P,P11~P15,P21~P25,P31~P35は、作業が発生した場合、作業の対応を要求する作業要求信号を送信する。
【0036】
図5に示されるように、受信部3は、工程P,P11~P15,P21~P25,P31~P35から送信された作業要求信号を受信する(ステップS01)。次に、制御装置5は、作業者要求信号に基づいて作業を取得する(ステップS02)。続いて、制御装置5は、作業を行うことが可能な作業者がいるか否かを判断する(ステップS03)。制御装置5は、作業を行うことが可能な作業者がいると判断した場合(ステップS03:YES)には、ステップS04に進む。制御装置5は、作業を行うことが可能な作業者がいないと判断した場合(ステップS03:NO)には、ステップS07に進む。
【0037】
ステップS04では、制御装置5は、作業を行う作業者を決定する。制御装置5は、作業者を決定すると、当該作業者に作業を指示する指示情報を生成し、指示情報を表示装置7に出力する(ステップS05)。表示装置7は、制御装置5から出力された指示情報を受け取ると、作業指示を表示する(ステップS06)。
【0038】
図6に示されるように、表示装置7には、例えば、「ラインの状態」と、「作業」と、が表示される。ラインの状態には、例えば、「ラインNo」と、ラインの「状態」と、「作業発生までの時間」と、「作業有無」と、が対応して表示される。図6に示される例では、「ラインNo」において、主ラインLは「1」、分岐ラインL1は「2」、分岐ラインL2は「3」、分岐ラインL3は「4」で示される。図6では、ラインNo2(分岐ラインL1)において作業が発生していることを示している。
【0039】
作業には、「ラインNo」と、「作業」と、「作業者」と、が対応して表示される。図6に示す例では、ラインNo2においてフィルム交換の作業が発生しており、作業者「0003」に作業の対応を指示することを示している。作業者を示す数字は、作業者DB9において作業者と対応付けられている数字に対応する。なお、表示装置7における「作業」の欄には、作業の優先度に基づいて、作業が発生していないラインに発生する作業が表示されてもよい。作業の優先度は、作業発生までの時間に基づいて設定される。
【0040】
図5に示されるように、ステップS07では、制御装置5は、生産量を設定する。制御装置5は、生産ライン100に設定される単位時間当たりの生産量を、現在設定されている量よりも減少するように設定する。続いて、制御装置5は、作業の進捗状況を取得する(ステップS08)。制御装置5は、作業の進捗状況に基づいて作業の終了時間を取得し、終了時間に合わせて生産量を再設定する(ステップS09)。その後、制御装置5は、作業者を決定し(ステップS04)、指示情報を出力する(ステップS05)。
【0041】
以上説明したように、本実施形態係る生産ラインの制御システム1では、制御装置5は、予め登録される作業者により、作業要求信号において要求される作業の処理ができない場合、生産ライン100に設定される単位時間当たりの生産量を、現在設定されている量よりも減少するように設定する。これにより、作業を処理できる作業者がいない場合であっても、生産ライン100を停止させることなく、生産ライン100を稼働し続けることができる。したがって、生産効率の低下を抑制しながら、生産対象物の品質を安定化できる。また、本実施形態のように、生産ライン100において生産される製品が食品である場合、生産ライン100が稼働し続けるため、生産ライン100が完全に停止する場合に比べて、食品の劣化による食品の廃棄量を減少させることができる。その結果、生産ラインの制御システム1では、生産効率の低下を抑制しながら、生産対象物の品質を安定化できる。
【0042】
本実施形態に係る生産ラインの制御システム1では、制御装置5は、位時間当たりの生産量を、生産ライン100における現在の生産状況に応じて、現在設定されている量よりも減少するように設定する。この構成では、現在の生産状況に応じて生産量が減少するように設定するため、生産ライン100の状況に応じた制御が可能となる。
【0043】
本実施形態に係る生産ラインの制御システム1では、生産ライン100には、複数の分岐ラインL1~L3が設けられている。制御装置5は、一の分岐ラインにおける単位時間当たりの生産量を現在設定されている量よりも減少するように設定した場合、他の分岐ラインにおける単位時間当たりの生産量を現在設定されている量よりも増加するように設定する。この構成では、一の分岐ラインにおける生産量を減少させた場合であっても、他の分岐ラインにおける生産量を増加させるため、全体としての生産量を維持することができる。したがって、生産ラインの制御システム1では、生産効率の低下を抑制しながら、生産対象物の品質を安定化できる。
【0044】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0045】
上記実施形態では、生産ライン100が複数のラインL,L1~L3を有する形態を一例に説明した。しかし、生産ラインの形態はこれに限定されない。例えば、生産ラインは、1本であってもよい。
【0046】
上記実施形態では、受信部3及び制御装置5を別個に備える形態を一例に説明した。しかし、受信部3及び制御装置5は、1つの装置により構成されていてもよい。
【0047】
上記実施形態では、表示装置7がディスプレイである形態を一例に説明した。しかし、表示装置7は、例えば、携帯端末等であってもよい。
【0048】
上記実施形態では、作業者DB9及び作業DB11を有する形態を一例に説明した。しかし、作業者DB9及び作業DB11は1つのデータベースにより構成されていてもよい。また、作業者DB9及び作業DB11は、制御装置5が有する構成であってもよい。
【0049】
上記実施形態では、制御装置5が、単位時間当たりの生産量を、生産ライン100における現在の生産状況に応じて、現在設定されている量よりも減少するように設定する形態を一例に説明した。しかし、制御装置5は、単位時間当たりの生産量を、現在設定されている量よりも一定量だけ減少するように設定してもよい。一定量は、任意に設定される。この構成では、単位時間当たりの生産量を確実に減少させることができる。
【0050】
また、制御装置5は、単位時間当たりの生産量を、作業者の作業状況に応じて、現在設定されている量よりも減少するように設定してもよい。詳細には、制御装置5は、例えば、作業者の進捗状況において作業の残り時間が長い場合には、単位時間当たりの生産量を基準量よりも多く減少させる。制御装置5は、例えば、作業者の進捗状況において作業の残り時間が短い場合には、単位時間当たりの生産量を基準量よりも少なく減少させる。この構成では、作業者の作業状況に応じて生産量を減少させるため、作業者の状況に応じた制御が可能となる。したがって、作業者による作業が追いつかず、生産ライン100が停止するという事態を確実に回避できる。
【0051】
上記実施形態では、生産ライン100が、主ラインL及び主ラインLから分岐する複数の分岐ラインL1~L3が設けられている形態を一例に説明した。しかし、生産ラインは、独立する複数ラインが設けられていてもよい。
【0052】
上記実施形態では、作業者DB9には、No(ナンバー)と、作業者と、勤務状態と、作業状態と、が対応付けられて格納される形態を一例に説明した。しかし、作業者DBには、処理可能な作業が更に対応付けられて格納されていてもよい。つまり、作業者の能力において処理することができる作業が対応付けられていてもよい。この構成の場合、制御装置5は、作業者DB9を参照し、作業者の出勤状態が「1」であり、且つ作業状態が「待機」である作業者を抽出する。制御装置5は、作業者DB9を参照し、抽出した現在設定可能な作業者が処理可能な作業と、作業要求信号において要求される作業とを比較する。制御装置5は、現在設定可能な作業者が作業要求信号において要求される作業を処理可能である場合には、作業の対応が可能な作業者がいると判断する。制御装置5は、現在設定可能な作業者が作業要求信号において要求される作業を処理できない場合には、作業の対応が可能な作業者がいない判断する。この構成では、作業者に対して、当該作業者が対応することができない作業を指示しない。したがって、作業者の能力に応じた作業の指示が可能となる。
【符号の説明】
【0053】
1…生産システムの制御システム、3…受信部、5…制御装置(制御部)、100…生産ライン。
図1
図2
図3
図4
図5
図6