(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-28
(45)【発行日】2022-02-07
(54)【発明の名称】ブラスト加工装置の研磨材加速用インペラ,及びブラスト加工装置,並びに前記インペラの製造方法
(51)【国際特許分類】
B24C 5/06 20060101AFI20220131BHJP
B24C 7/00 20060101ALI20220131BHJP
B22F 3/105 20060101ALI20220131BHJP
B22F 3/16 20060101ALI20220131BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20220131BHJP
F04D 29/30 20060101ALI20220131BHJP
【FI】
B24C5/06 A
B24C7/00 D
B22F3/105
B22F3/16
B33Y10/00
F04D29/30 D
F04D29/30 C
(21)【出願番号】P 2017084527
(22)【出願日】2017-04-21
【審査請求日】2020-04-06
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000154129
【氏名又は名称】株式会社不二製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002398
【氏名又は名称】特許業務法人小倉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】間瀬 恵二
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-218465(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2005-0005577(KR,A)
【文献】英国特許出願公告第518803(GB,A)
【文献】特開昭51-151888(JP,A)
【文献】実開昭55-26602(JP,U)
【文献】実開昭54-069491(JP,U)
【文献】特開昭62-223498(JP,A)
【文献】特開2004-216502(JP,A)
【文献】実開昭59-167656(JP,U)
【文献】特開2017-036484(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24C 1/00 - 11/00
B22F 1/00 - 8/00
B33Y 10/00
F04D 29/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の厚みを有する円盤状の外形を有し,中央に円形の開口が研磨材導入口として形成されていると共に,前記研磨材導入口に連通する入口と,外周面で開口
し,被覆体で覆われた状態から解放されたときに圧縮空気と共に研磨材を噴出する出口を有する複数の研磨材流路が,周方向に所定間隔で前記厚み内に形成されたブラスト加工装置用のインペラにおいて,
前記研磨材流路を,前記出口側の端部が前記インペラの回転方向後方側を向くように,前記インペラの半径方向に対し傾斜させて設けると共に,
前記研磨材流路の回転方向後方側の内壁の前記入口側端部と前記インペラの半径との交叉角,及び,前記研磨材流路の回転方向後方側の内壁の前記出口側端部と前記インペラの半径との交叉角が,いずれも30°以上であり,
前記インペラが,円盤状の本体と,該本体と略同径で中央に前記研磨材導入口が形成された無端環状の対向板と,前記本体と前記対向板間を架橋する,周方向に所定間隔で配置された複数枚の羽根を備え,前記羽根と羽根との間に前記研磨材流路が形成されており,
前記羽根を,長手方向における中央部が回転方向前方側に向かって膨出する湾曲形状に形成し
て前記研磨材流路内の空気の圧縮効率を高めたことを特徴とするブラスト加工装置用のインペラ。
【請求項2】
前記インペラの厚み方向における前記研磨材流路の幅を,前記入口側から前記出口側に向かって徐々に狭まる形状に形成したことを特徴とする請求項1記載のブラスト加工装置用のインペラ。
【請求項3】
前記研磨材流路の回転方向後方側の内壁に,耐摩耗性の保護材を取り付けたことを特徴とする請求項1又は2記載のブラスト加工装置用のインペラ。
【請求項4】
請求項1~3いずれか1項記載のインペラを研磨材加速手段として備え,該インペラを回転させる駆動源,前記インペラの前記研磨材導入口に研磨材を供給する研磨材供給手段,及び,前記インペラの外周をその一部を除き覆う被覆手段を備えることを特徴とするブラスト加工装置。
【請求項5】
請求項1~3いずれか1項記載のブラスト加工装置用インペラを3Dプリンタによる積層造形法によって製造することを特徴とするブラスト加工装置用インペラの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,ブラスト加工装置の研磨材加速用インペラ,及びこのインペラを研磨材加速手段として備えたブラスト加工装置,並びに前記インペラの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
砥粒等の研磨材を被加工物に向けて投射することにより被加工物の切削や研磨を行うブラスト加工装置では,研磨材を被加工物に向けて投射するための研磨材加速装置を備えている。
【0003】
このような研磨材加速装置としては,ノズルより圧縮空気と共に研磨材を噴射することにより加速する空気型加速装置,回転するインペラによって遠心力を付与することにより研磨材を加速する遠心型加速装置,回転する羽根にショットを衝突させて加速する打出型加速装置等がある。
【0004】
このうちの遠心型加速装置に設けられているインペラ130は,複数枚の羽根135が取り付けられた円盤であり,一例として
図9に示すように,金属製の円盤から成る本体133と,中央に研磨材導入口131となる開口が形成された無端環状の対向板134,及び,前記本体133と対向板134間を架橋する複数の羽根135を備えており,この羽根135と羽根135の間に,研磨材が内周側から外周側に向かって移動する研磨材流路132が形成されている。
【0005】
このように形成されたインペラ130は,
図6及び
図7に示すように外周の一部を残してケーシング150’やベルト150で覆った状態で回転させると共に,研磨材導入口131内に研磨材を導入すると,研磨材流路132の内周の端部である入口132aを介して研磨材流路132に導入された研磨材は,遠心力を受けて研磨材流路132内を外周側に向かって移動し,研磨材流路132の外周側端部(出口132b)がケーシング150’やベルト150によって塞がれている状態から開放されたときに投射されるように構成されている。
【0006】
このようなブラスト加工装置の遠心型加速装置に設けられるインペラ130では,前述の羽根135は,
図6に示すようにインペラ130の半径方向に放射状に配置するか(特許文献1の第2図参照),半径方向に対し傾斜した配置とする場合には,
図7に示すように羽根135の外周側の端部135bが回転方向後方側を向くように半径方向に対し傾斜させた配置とし,かつ,半径方向に対する傾斜角を,インペラの半径方向と羽根135の外周側端部135bの交叉角(出口角)において5°程度と,比較的小さな傾きとする構成が一般的である(特許文献2の
図2参照)。
【0007】
なお,従来の一般的なロータは,
図9に示したように本体133と対向板134から成る二枚の円盤を,羽根135を介してボルト留め等の方法で固定した構造のものが一般的であるが,後掲の特許文献3に示すように,樹脂等により一体形成した円盤を機械切削する等して,研磨材導入口231や,研磨材流路232を設けた,一体構造型のインペラ230も提案されている。
【0008】
このような一体構造型のインペラ230では,
図8に示すようにインペラ230の肉厚内に直接,研磨材流路232が切削形成されることから,
図6及び
図7に示したインペラ130における羽根135に対応する構成を備えていないが,形成される研磨材流路232は一定径で変化しない直線的な形状であると共に,研磨材流路232の出口232bが,インペラ230の回転方向後方を向くように,半径方向に対し僅かに(特許文献3の請求項2において出口角で12~22°)傾斜させた構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】実開昭63-116265号公報
【文献】特開2005-206748号公報
【文献】特許第3927812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1~3を例に挙げて説明したように,従来のブラスト加工装置の遠心型加速装置に設けられている研磨材加速用のインペラ130,230では,羽根135や研磨材流路232が直線的で単純な形状に形成されていると共に,羽根135,及び研磨材流路232を,半径方向に向けて配置するか,又は,半径方向に対し傾斜させた配置とする場合であっても,その傾きを比較的小さなものとしている。
【0011】
そして,このようなインペラ130,230の構造が,ブラスト加工装置用のインペラの構造として当業者に定着しており,インペラ130,230の羽根135や研磨材流路232の形状や配置等が顧みられることはされていない。
【0012】
しかし,インペラ130,230の構造を見直すことにより,インペラ130,230に与えた回転を,より効率良く研磨材の投射速度に変換することができれば,インペラ130,230の小型化や,低回転速度での回転によっても必要な研磨材の投射速度を得ることができ,ブラスト加工装置全体の小型化や,インペラ130,230を回転させるモータの小型化,省電力化を図ることができる。
【0013】
ここで,ブラスト加工装置の遠心型加速装置は,その名称にも表れているように遠心力の付与によって研磨材を加速するための装置であり,遠心型加速装置に設けるインペラ130,230も,専ら,研磨材に対する遠心力の付与という点に着目した設計が行われ,研磨材流路132,232内における空気の圧縮や,空気の流速等を考慮した設計はされていない。
【0014】
しかし,遠心型加速装置のインペラ130,230では,インペラ130,230の回転に伴う遠心力は研磨材のみならず研磨材流路132,232内の空気に対しても及んでおり,これにより研磨材流路内の空気を圧縮することができるはずであるから,前述した羽根135や研磨材流路132,232を,該流路内の空気の圧縮を効率的に行うことができる形状や構造とすることができれば,研磨材流路132,232の出口132b,232bが開放された際に,研磨材と共に圧縮空気を噴出させて,研磨材の加速に使用することができ,研磨材の加速をより一層,効率的に行うことができるものと考えられる。
【0015】
そこで本発明は,ブラスト加工装置の遠心型加速装置に設けられるインペラにおいて,従来,顧みることがされていなかった羽根や研磨材流路の形状や構造を根本的に見直すことにより,インペラに与えた回転を,より効率的に研磨材の投射速度に変換することができ,しかも,研磨材流路内の空気を遠心力によって比較的高い圧力にまで圧縮して高速で噴射できるようにすることで,この空気流による研磨材の加速をも行うことができるブラスト加工装置用のインペラ,及び前記インペラを備えたブラスト加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
以下に,課題を解決するための手段を,発明を実施するための形態で使用する符号と共に記載する。この符号は,特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態の記載との対応を明らかにするためのものであり,言うまでもなく,本願発明の技術的範囲の解釈に制限的に用いられるものではない。
【0017】
上記目的を達成するために,本発明のブラスト加工装置用のインペラは,
所定の厚みを有する円盤状の外形を有し,中央に円形の開口が研磨材導入口31として形成されていると共に,前記研磨材導入口31に連通する入口32aと,外周面で開口し,被覆体で覆われた状態から解放されたときに圧縮空気と共に研磨材を噴出する出口32bを有する複数の研磨材流路32が,周方向に所定間隔で前記厚み内に形成されたブラスト加工装置用のインペラ30において,
前記研磨材流路32を,前記出口32b側の端部が前記インペラ30の回転方向後方側を向くように,前記インペラ30の半径方向に対し傾斜させて設けると共に,前記研磨材流路32の回転方向後方側の内壁の前記入口32a側端部(羽根35の内周側端部35a)と前記インペラ30の半径との交叉角(入口角β1),及び,前記研磨材流路32の回転方向後方側の内壁の前記出口32b側端部(羽根35の外周側端部35b)と前記インペラ30の半径との交叉角(出口角β2)が,いずれも30°以上であり,
前記インペラ30は,円盤状の本体33と,該本体33と略同径で中央に前記研磨材導入口31が形成された無端環状の対向板34と,前記本体33と前記対向板34間を架橋する,周方向に所定間隔で配置された複数枚の羽根35を備え,前記羽根35と羽根35との間に前記研磨材流路32が形成されており,
前記羽根35を,長手方向における中央部が回転方向前方側に向かって膨出する湾曲形状に形成して前記研磨材流路内の空気の圧縮効率を高めたことを特徴とする(請求項1)。
【0019】
更に,前記インペラ30の厚み方向における前記研磨材流路32の幅(
図4参照)を,前記入口32a側から前記出口32b側に向かって徐々に狭まる形状に形成することが好ましい(請求項
2)。
【0020】
また,前記研磨材流路32の回転方向後方側の内壁(羽根35の凸面)には,耐摩耗性の保護材36を取り付けることが好ましい(請求項3)。
【0021】
また,本発明のブラスト加工装置1は,上記いずれかの構成のインペラ30を研磨材加速手段として備え,該インペラ30を回転させるモータ等の駆動源(図示せず),前記インペラ30の前記研磨材導入口31に研磨材を供給する研磨材供給手段40,及び,前記インペラ30の外周をその一部を除き覆うケーシングやベルト等の被覆手段50を備えることを特徴とする(請求項4)。
【0022】
なお,上記構成のインペラは,3Dプリンタによる積層造形法によって製造することができる(請求項5)。
【発明の効果】
【0023】
以上で説明した本発明の構成により,本発明のインペラ30を研磨材加速手段として備えたブラスト加工装置1では,以下の顕著な効果を得ることができた。
【0024】
インペラ30に設けた研磨材流路32を,出口32b側(外周側)の端部がインペラ30の回転方向後方側を向くようにインペラ30の半径方向に対し傾斜して形成すると共に,研磨材流路32の傾きを,入口角β1,出口角β2共に30°以上と比較的大きな角度で傾斜させて配置(寝かせた状態で配置)した構成を採用したことで,回転時の抵抗を減少して効率良く研磨材の加速と空気の圧縮を行うことができ,遠心力と圧縮空気との相乗効果によって研磨材を加速することができた。
【0025】
更に,研磨材流路32を画成する羽根35を長手方向の中央が回転方向前方側に膨出する湾曲形状としたことで,入口角β1を同じ角度とした直線状の羽根を設ける場合に比較して,出口角β2を大きくとることができ,回転時の抵抗を更に低減することにより効率的な研磨材の加速と空気の圧縮を行うことができた。
【0026】
また,前述したように,研磨材流路32(羽根35)の傾きを大きく取ったこと,また,羽根35を湾曲形状としたことで,本発明のインペラ30の構造では,研磨材流路32(羽根35)の傾きを小さく取った場合,羽根35を直線形状に形成した場合に比較して,研磨材流路32内の空気をより高圧に圧縮することが可能となり,このようにして圧縮され,研磨材流路32より吐出する圧縮空気についても,研磨材の加速に好適に利用することができた。
【0027】
更に,インペラ30の厚み方向における前記研磨材流路32の幅を,前記入口32a側から出口32b側に向かって徐々に狭まる形状に形成した構成(
図4参照)では,研磨材流路32の入口32aから出口32bに向かう空気流の流速が増加し、またインペラの回転による遠心力により研磨材導入口31より高い圧力を持って出口32bより流出するため,インペラ30の回転に伴って研磨材流路32内で生じた空気流による研磨材の加速作用をより一層向上させることができた。
【0028】
更に,前記研磨材流路32の回転方向後方側の内壁(羽根35の凹面)に,耐摩耗性の保護材36を取り付けた構成のインペラ30では,研磨材との接触によって生じる摩耗を防止することができ,インペラ30の寿命を増大させることができ,また,摩耗が生じた場合,保護材36のみの交換によってインペラ30を再生することができ,ランニングコストを抑えることができた。
【0029】
また,保護材36によって摩耗を防止することで,インペラ30の本体部分についてはこれを例えば樹脂材料等で製造することも可能となり,インペラ30の軽量化に伴う省電力化をも図ることができた。
【0030】
更に,3Dプリンタによる積層造形法によって前記インペラを製造することで,複雑な形状のインペラであっても一体的に製造することができ,これによりインペラの強度を高めることができた。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図2】研磨材供給手段の変型例を示した本発明のブラスト加工装置の説明図。
【
図3】本発明のブラスト加工装置用のインペラの正面図。
【
図6】従来のブラスト加工装置用インペラの説明図(特許文献1に対応)。
【
図7】従来のブラスト加工装置用インペラの説明図(特許文献2に対応)。
【
図8】従来のブラスト加工装置用インペラの説明図(特許文献3に対応)。
【
図9】従来のブラスト加工装置用インペラの分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
次に,本発明の実施形態につき添付図面を参照しながら以下説明する。
【0033】
〔ブラスト加工装置の全体構造〕
図1に,本発明のブラスト加工装置1の全体構成を示す。
このブラスト加工装置1は,研磨材や切削粉等の飛散による作業環境の汚染を防止し得るよう,キャビネット10内に形成された加工室11内で被加工物20に対し研磨材を投射するように構成したもので,キャビネット10の側壁には,加工室11内に被加工物20を出し入れするための出入口(図示せず)が開閉可能な状態で設けられている。
【0034】
この加工室11内には,研磨材加速手段であるインペラ30と,このインペラに対し研磨材を供給する研磨材供給手段40,及び,前記インペラ30の外周をその一部を除き覆う被覆手段50を備え,図示せざるモータ等の駆動源によってインペラ30を回転させることにより,該インペラ30の回転に伴う遠心力によって研磨材を被加工物20に向けて投射することができるように構成されている。
【0035】
〔インペラ〕
研磨材の加速手段である前述のインペラ30は,
図3及び
図4に示すように,所定の厚みを有する円盤状の外形を有し,中央部に研磨材導入口31が形成されていると共に,前記研磨材導入口31に連通する入口32aと,インペラ30の外周面において開口する出口32bを備えた複数の研磨材流路32が,周方向に所定間隔でインペラ30の厚み内に形成されている。
【0036】
図示の実施形態において,このインペラ30は,中央に支軸を挿入するためのボス付きの軸孔33aが形成された略円盤状の本体33と,前記本体33と略同径で,中央に前記研磨材導入口31が形成された無端環状の対向板34,及び,前記本体33と対向板34間を架橋する複数枚の羽根35によって構成されており,この羽根35と羽根35との間に,前述した研磨材流路32が形成されている。
【0037】
この研磨材流路32を画成する前述の羽根35は,図示の実施形態では一定厚の板状に形成されており,
図1及び
図2に示すように,この羽根35の外周側の端部35bがインペラ30の回転方向後方側を向くように傾斜して設けられており,このような羽根35の配置により,羽根35と羽根35との間に形成される研磨材流路32の出口32bも同様に,インペラ30の回転方向後方側に向かって開口するように形成されている。
【0038】
この研磨材流路32は,好ましくは研磨材流路32の回転方向後方側の内壁の内周側端部(羽根35の内周側端部35a)と,インペラ30の半径との交差角である入口角β1と,研磨材流路32の回転方向後方側の内壁の外周側端部(羽根35の外周側端部35b)と,インペラ30の半径との交差角である出口角β2が,いずれも30°以上の角度となるように傾斜させる。
【0039】
好ましくは,研磨材流路32を画成する前述の羽根35を,その長手方向の中央側が回転方向前方側に向かって膨出する湾曲形状に形成する。
【0040】
このように形成することで,入口角β1を同じくする直線的な形状の羽根35を設ける場合に比較して,羽根35の出口角β2をより大きな角度(羽根35を寝かせた状態)とすることができるように構成した。
【0041】
図示の実施形態では,研磨材流路の入口角β1は約60°,出口角β2は約45°であり,この入口角β1と出口角β2となるような形状に羽根35を湾曲生成している。
【0042】
この羽根35は,周方向に一定間隔で10~40枚設けることが好ましく,より好ましくは,この羽根35の枚数は研磨材流路32の出口32bの幅が10~80mmの範囲となるように調整する。
【0043】
一実施形態では,直径200mmのインペラ30に20枚の羽根35を設け,出口幅32bが30mmの研磨材流路32を形成した。
【0044】
なお,
図3は同じく直径200mmのインペラ30に,上記の例の半分の10枚の羽根35を設け,出口32bの幅が60mmの研磨材流路32を形成した例である。
【0045】
また,隣接する2枚の羽根35間に,羽根35よりも短尺の補助羽根35’を設けて出口32b側を分割するものとしても良い(
図3の変型例参照)。
【0046】
図示の例では,各研磨材流路32に1枚の補助羽根35’を設け,研磨材流路32の出口32b側を二分割する構成を示したが,補助羽根35’は1つの研磨材流路32に複数枚設けるものとしても良い。
【0047】
このように,羽根35と羽根35との間に形成された研磨材流路32は,
図3の正面図に示すように,入口32a側から出口32b側に向かって徐々に幅を広げる形状となることから,インペラ30の厚み方向における研磨材流路32の幅を一定とする場合,研磨材流路32は,入口32a側から出口32b側に向かって外周側に行くほど流路面積が広がることとなる。
【0048】
ここで,管内を流れる空気流は,流路面積が拡大すると流速は低下するため,研磨材流路32が内周側から外周側に向かって流路面積を広げる形状となっていると,研磨材流路32内を流れる空気流の流速は,出口32b側に向かうに従い低下する。
【0049】
そこで,本発明のインペラ30では,
図4に示すようにインペラ30の厚み方向における研磨材流路32の幅が入口32a側から出口32b側に向かって徐々に狭まるテーパ形状となるように形成し,研磨材流路32が
図3に示す正面視において入口32a側から出口32b側に向かって幅を広げる形状となっているにも拘わらず,研磨材流路32の流路面積が入口32a側から出口32b側に向かって過度に広がることがないようにし,場合によっては,入口32a側から出口32b側に向かって流路面積が一定となり,又は狭まるように調整し,研磨材流路32の出口32bが開放された際に研磨材流路32内を流れる空気流の出口32b付近での流速を維持し,場合によっては流速を高めることで,この空気流によって研磨材の投射速度を向上させることができるように構成している。
【0050】
なお,
図4に示す例では,本体33と対向板34のうち,対向板34側を内周側から外周側に向かって本体側に近づくように傾斜させた形状に形成しているが,流路幅の減少は,本体33側を傾斜させることにより,又は,本体33側と対向板34側の双方を傾斜させることにより形成するものとしても良い。
【0051】
なお,図示の実施形態において,本体33の軸孔33a周辺は,対向板34に設けた研磨材導入口31側に向かって裁頭円錐状に膨出させて,研磨材導入口31を介して導入された研磨材と空気の流れを,いずれも円滑に研磨材流路32の入口32aに向かう流れに変換できるように構成した。
【0052】
以上のように構成されたインペラ30を回転させつつ,研磨材導入口31に研磨材を導入すると,導入された研磨材は遠心力受けて各研磨材流路32の回転方向後方側の内壁(羽根35の凸面)に沿って内周側から外周側に向かって相対移動することから,この部分は,研磨材との接触によって摩耗し易くなっている。
【0053】
そこで,本発明のインペラ30では,
図3及び
図5に示すようにこの部分(羽根35の凸面)に耐摩耗性を有する保護材36を着脱可能に取り付け,羽根35が摩耗することを防止すると共に,摩耗が生じた場合には,保護材36の付け替えによってインペラ30を簡単に再生することができるようにすることで,インペラ30全体を交換する場合に比較してランニングコストを低減できるようにすると共に,保護材36以外の部分を例えば樹脂製として軽量化することで,インペラの回転に伴う電力消費の低減を図っている。
【0054】
本実施形態では,この保護材36を
図5に示すようにコ字状の断面形状を有するチャンネル材によって構成し,羽根35の摩耗のみならず,羽根35との境界付近における本体33と対向板34の内壁面についても研磨材との接触による摩耗から保護している。
【0055】
この保護材36としては耐摩耗性を有するものであれば各種材質のものを使用することができ,一例としてセラミックス(アルミナ,ジルコニア,炭化ケイ素等),金属(鉄―炭素合金,マンガン鋼,チタン合金,アルミ合金等),樹脂(デルリン,超高分子量エチレン等)を使用することができる。
【0056】
この保護材36の取り付けは,インペラ30の回転に伴う遠心力によっても保護材36の飛び出しを防止し得るものであれば特に限定されず,各種の取り付け方法を採用可能であるが,好ましくはこの保護材36は,容易に着脱できるように取り付ける。
【0057】
図示の実施形態では,この保護材36の取り付けを行う部分の本体33と対向板34の内壁に掘り込み37,37を設け,この掘り込み37,37内に保護材36を挿入すると共に,保護材の外周側端部を固定することで飛び出しを防止しているが,保護材36の飛び出しを防止し得るものであれば,保護材36は接着剤による接着や,ボルト止め等の,既知の各種の方法で固定可能である。
【0058】
以上のように構成された本発明のインペラ30は,例えば前述した本体33や対向板34,羽根35,及び保護材36をそれぞれ別々に製造しておき,その後,これらを接着や固着等して組み合わせることにより製造するものとしても良いが,より高強度のインペラ30を得るべく,前述の本体33,対向板34及び羽根35はこれらを一体構造として製造することが好ましい。
【0059】
このようにインペラ30を一体的に製造する方法としては,一例として光造形法,粉末法,熱溶解積層法(FDM法),シート積層法,インクジェット法等の既存の3Dプリンタ技術を使用することができ,これにより湾曲した形状の羽根35や研磨材流路32を有するために切削加工等が難しい本願のインペラであっても樹脂や金属,これらの複合体によって容易に一体形成することができる。
【0060】
一例として光造形は,液体の光硬化性樹脂に紫外線レーザを照射して硬化させることにより造形する技術であり,この光造形では3D-CADを使用してコンピュータ上で入力された3次元形状に対応して成型が行われることから,切削工具等を用いずに高精度な3次元立体物を作成することができ,また,
図3に示したように,湾曲する形状の羽根35を備えたインペラ30であっても比較的容易に一体成型が可能である。
【0061】
光硬化性樹脂は,光重合性オリゴマー(広義の単重量体を含む重合主剤),反応性希釈剤,光重合開始剤を含み,これらに必要に応じて光重合助剤,添加剤,着色剤が配合されている。
【0062】
使用する光重合オリゴマー(広義の単重量体を含む重合主剤)の種類によって,光造形用紫外線硬化樹脂の種類はウレタンアクリレート系,エポキシ系,エポキシアクリレート系,アクリレート系等があり,本発明のインペラ30の製造には,これらのいずれも使用し得るが,好ましくはウレタンアクリレート系,エポキシ系を使用する。
【0063】
また,粉末法,熱溶解積層法(FDM法),シート積層法,インクジェット法等で製造する場合には,熱可塑性樹脂を使用することも可能であり,ABS樹脂,ポリカーボネート樹脂,PC/ABSアロイ・PPSF/PPSU樹脂,ULTEM樹脂(ポリエーテルイミド:PEI)などの種々の熱可塑性のエンジニアリングプラスチックについても使用することができる。
【0064】
また,前述した粉末法では電子ビーム,レーザ,アーク放電等を熱源として金属粉末を焼結させることにより,金属製のインペラを製造することもでき,このような金属材料としては,鉄基合金(Fe-Cr-Ni-Mo,Fe-Cr-Ni-Cu,Fe-Ni-Mo-Co-Al-Ti),ニッケル基合金(Ni-Cr-Fe-Mo-Co-W,Ni-Cr-Mo-Nb),コバルト基合金(Co-Cr-Mo),チタン基合金,アルミニウム基合金,銅基合金等を用いることができる。
【0065】
インペラ30の表面は,研磨材や空気の流れに対する抵抗が小さくなるよう,平滑に仕上げることが好ましく,特に,前述の3Dプリンタで成型したインペラの表面は粗く,一例としてSUS粉末の焼結によって製造したインペラ表面は,算術平均粗さRa(JIS B 0601-1994)で10~5μmの表面粗さがあり,この粗さのため,研磨材や空気の搬送と噴射を行うに際しエネルギーのロスが生じる。
【0066】
そのため,インペラ30の表面は,所定の表面粗さに調整されていることが好ましく,本実施形態にあっては,インペラ30の表面粗さを算術平均粗さRaにおいて2.0μm以下,好ましくは1.0μm以下となるように研磨した。
【0067】
このようなインペラ30の研磨には,弾性体に砥粒を練り込むことにより,又は弾性体の表面に砥粒を付着させることにより,弾性体に砥粒を担持させてなる弾性研磨材をインペラの表面に投射,好ましくは斜めに投射して,インペラ表面で弾性研磨材を滑走させることにより所定の表面粗さに研磨するようにしても良く,例えば,担持する砥粒の粒径が小さくなるように段階的に使用する研磨材を変更することで,目的とする表面粗さに研磨するようにしても良い。
【0068】
本実施形態では,粒度♯220の炭化ケイ素系砥粒を担持した弾性研磨材(不二製作所製「シリウス」♯220)を投射して粗研磨した後,粒度♯3000の炭化ケイ素系砥粒を担持した弾性研磨材(不二製作所製「シリウスZ」♯3000)を投射して仕上研磨を行い,Ra1.0μm以下の表面粗さを実現した。
【0069】
〔研磨材供給手段〕
以上のように構成されたインペラ30は,本体33の中央に設けた軸孔33aに支軸(図示せず)を挿入し,
図1及び
図2に示すようにキャビネット10内の加工室11内に垂直方向に回転可能に軸支され,このようにして配置されたインペラ30を回転させると共に,インペラ30の中央に設けた研磨材導入口31内に研磨材を導入することで,研磨材の投射が行われる。
【0070】
このようにインペラ30の研磨材導入口31に対し研磨材を導入する研磨材供給手段40として,
図1に示すブラスト加工装置1では,キャビネット10の上部に設けた研磨材タンク41と,この研磨材タンク41の底部とインペラ30の研磨材導入口31間を連通するシューター42によって構成されており,研磨材タンク41内に研磨材を投入すると,研磨材タンク41より落下した研磨材がシューター42に案内されてインペラ30の研磨材導入口31内に導入されるように構成されている。
【0071】
なお,研磨材導入口31内に挿入されるシューター42の下端部には,ディストリビュータやコントロールゲージを設ける等,既知の遠心型加速装置の構成を採用可能である(JIS B 6614 1989)。
【0072】
図1に示した実施形態では,キャビネット10の下部を逆角錐状としてホッパ14を設け,キャビネット10の加工室11内で被加工物20に向かって投射された研磨材は,被加工物20を研磨した後,研磨によって生じた粉塵等と共にホッパ14内に回収できるように構成した。
【0073】
そして,前述の研磨材タンク41を,サイクロンとしての機能を備えたものとして形成し,前記ホッパ14の下端と,研磨材タンク41の入口をダクト61によって連通すると共に,研磨材タンク41に設けた排気口を,ダストコレクタを備えた排風機62に連通した構成としている。
【0074】
この構成により,
図1に示すブラスト加工装置1では,排風機62を作動させて研磨材タンク41内の排気を行うと,研磨材タンク41内が負圧となってホッパ14内に回収された研磨材と粉塵とがダクト61を介して研磨材タンク41内に導入され,研磨材タンク41内で研磨材と粉塵の分級が行われて研磨材は研磨材タンク41の底部に回収される一方,粉塵は排気口を介して排気されて排風機62に設けたダストコレクタで回収できるように構成されている。
【0075】
従って,
図1に示すブラスト加工装置1の構成では,前述のダクト61と排風機62によって,加工室11の底部に溜まった研磨材を研磨材タンク41まで搬送する,研磨材搬送手段60が構成されている。
【0076】
なお,
図1に示すブラスト加工装置1では,一旦投射された研磨材を,研磨材と粉塵とに分級して研磨材のみを再度,インペラ30に対し導入できるように構成した。
【0077】
これに対し,
図2に示すブラスト加工装置1では,一旦投射された研磨材を,粉塵等と研磨材とに分級することなく,いずれともにインペラ30の研磨材導入口31に導入するように構成したもので,上端を開口すると共に下端をインペラ30の研磨材導入口31に連通したシューター42と,加工室11の底部に溜まった研磨材を持ち上げて前記シューター42の上端開口内に投入する,バケットコンベア63を備えている。
【0078】
従って,
図2に示すブラスト加工装置1の構成では,前述のシューター42がインペラ30の研磨材導入口31に研磨材を導入する研磨材供給手段40を成すと共に,バケットコンベア63が,加工室11の底部に溜まった研磨材を研磨供給手段40まで搬送する,研磨材搬送手段60となる。
【0079】
このバケットコンベア63は,チェーンベルト63aに所定間隔でバケット63bが取り付けられており,チェーンベルト63aを回転させると,バケット63bが加工室11の底部に溜まった研磨材を抄い上げて,シューター42の上端開口内に投入することができるように構成されている。
【0080】
なお,本発明のブラスト加工装置に設ける研磨材供給手段40は,
図1及び
図2に示す構成のものに限定されず,インペラの導入口に対し研磨材を導入可能なものであれば各種構成のものが採用可能である。
【0081】
〔被覆手段〕
キャビネット10の加工室11内に配置された前述のインペラ30は,外周を,その一部を除き被覆する,被覆手段50によって覆われており,これにより,被覆手段50によって覆われていない位置まで回転移動した研磨材流路32の出口32bのみから研磨材が投射されるようにすることで,研磨材を所定の向き,及び所定の範囲に投射することができるように構成している。
【0082】
図1及び
図2に示す実施形態では,インペラ30の外周を被覆する被覆手段50をベルトとしたが,インペラ30の外周を被覆する被覆手段50は,このようなベルトに限定されず,例えば
図6を参照して説明した従来のインペラのように,ケーシングやカバーで覆うものとしても良い。
【0083】
図1に示すように,インペラ30の外周の一部にベルト50を巻掛けることによってインペラ30の外周を被覆した構成では,このベルト50に,インペラ30に対し回転駆動力を伝達するための動力伝達手段としての機構も持たせている。
【0084】
このように,ベルト50によるインペラ30外周の被覆と動力伝達を可能とするために,図示の実施形態では,インペラ30の外周側に,インペラ30を取り囲むように4つのプーリ51~54を設け,4つのプーリ51~54の外周を囲むように取り付けた無端ベルト50を,インペラ30の前方側に配置した2つのプーリ51,52間において後方に引き出してインペラ30の外周に巻き掛けている。
【0085】
そして,前述したプーリ51~54のうちのいずれか1つ(例えばプーリ53)に,駆動手段である図示せざるモータの出力軸を連結して駆動プーリとし,この駆動プーリ53を回転させると,この駆動プーリ53の回転駆動力が無端ベルト50を介して従動プーリ51,52,54とインペラ30に伝達されるように構成されている。
【0086】
なお,本実施形態では,前述したようにプーリ51~54の1つをモータ等の駆動源と連結して回転させるものとして説明したが,インペラ30に直接モータを連結して回転可能に構成するものとしても良い。
【0087】
〔駆動手段〕
前述のインペラ30を回転させる駆動源は,本実施形態では前述したようにモータ(図示せず)であり,設定した所定の目標回転速度でモータの回転速度,従ってインペラ30の回転速度を制御することができるよう,好ましくは,インバータ制御されたモータを駆動源として設ける。
【0088】
〔その他〕
なお,インペラ30の回転によって射出された研磨材は,直接,被加工物20に投射するものとしても良いが,インペラ30より射出された研磨材は,一例として
図1及び
図2に示すような誘導板70に案内させて被加工物20に向けて投射することで,研磨材の投射範囲を制御できるようにしても良い。
【0089】
この誘導板70は,幅方向の断面を下向きに開口するコ字状やU字状に形成して,垂直方向のみならず,水平方向への研磨材の投射範囲を制御できるようにしても良い。
【0090】
また,誘導板70と平行にエアノズル(図示せず)を設け,このエアノズルより噴出する圧縮空気によって研磨材の移動方向と同方向の空気流を発生させて,研磨材の投射速度の低下を抑制し,又は,該空気流による加速を行うものとしても良い。
【0091】
更に,図示は省略するが,インペラ30より射出された研磨材,又はインペラより射出されて誘導板70により誘導された研磨材を,管状の誘導管内に導入し研磨材の飛翔方向の変更等を行った後に被加工物20に衝突させるものとしても良い。
【0092】
このような誘導管を設ける場合,誘導管の入口側に設けたノズルより圧縮空気を噴射する等して,誘導管内に入口側から出口側に向かう空気流を発生させることで,誘導管内に導入された研磨材を更に加速することができるように構成するものとしても良い。
【0093】
〔作用等〕
以上のように構成された本発明のブラスト加工装置1において,図示せざるモータによりインペラ30を回転(
図1及び
図2の例では反時計回り方向に回転)させると共に,シューター42を介してインペラ30の研磨材導入口31に研磨材を導入すると,この研磨材導入口31と連通する入口32aから研磨材流路32内に入った研磨材は,インペラ30の回転に伴う遠心力を受けて研磨材流路32内を出口32b側に向かって移動する。
【0094】
インペラ30の外周,従って,研磨材流路32の出口32bは,その一部を除き被覆部材であるベルト50によって塞がれており,このベルト50により塞がれている出口32bはインペラ30の回転によってプーリ51の配置位置まで移動すると,ベルト50による被覆が解かれて開放される。
【0095】
その結果,研磨材流路32内で遠心力を受けて加速された研磨材と,遠心力による圧縮によって圧力が上昇した研磨材流路32内の空気は,ベルト50によって塞がれていた出口32bが開放されることで,研磨材流路の出口より噴射され,
図1及び
図2に矢印で示すように被加工物20に向かって飛翔する。
【0096】
ここで,本発明のインペラ30に設けた研磨材流路32は,前述したようにその出口32b(羽根35の外周側端部35b)がインペラ30の回転方向後方側を向くように形成されていると共に,入口角β1,出口角β2のいずれ共に30°以上となるように羽根35を大きな傾きで配置したことにより,インペラの回転時の抵抗を減少して効率良く研磨材の加速と空気の圧縮を行うことができる。
【0097】
特に,長手方向の中央側が回転方向前方側に膨出するように湾曲した形状に羽根35を設けて,入口角β1を同じ角度に形成した場合であっても,直線状に形成した羽根を設けた場合と比較して出口角β2を大きく取ることができ,より一層の回転抵抗が低減されることで効率的に研磨材の加速を行うことができた。
【0098】
しかも,本発明のインペラの構成では,インペラ30の径方向に対し研磨材流路32が大きく傾斜しており研磨材流路32が長くなっていると共に,使用時,研磨材流路32の出口32bはその一部を除きベルト50によって塞がれた状態で回転するため,インペラ30の回転に伴う遠心力を受けた研磨材流路32内の空気は,遠心力によって圧縮されるのみならずベルト50と羽根32の出口側端部35bの交点部分に形成されるエッジeに向かって羽根35の凸面に沿って
図3中に破線の矢印で示した方向に移動する際の体積収縮によっても効率的に圧縮される。
【0099】
特に,羽根35を湾曲した形状に形成した構成では,研磨材流路32が長くなると共に,エッジeがより鋭角となることから,直線状で短い研磨材流路を形成する場合に比較して,研磨材流路32内の空気をより高圧に圧縮することが可能となっている。
【0100】
更に,本発明のインペラ30では,
図4に示すようにインペラ30の厚み方向における研磨材流路32の幅が,入口32a側から出口32b側に向かって徐々に狭まるテーパ状に形成されている。
【0101】
この構成により,研磨材流路32の流路面積は,入口32a側から出口32b側に向かって過度に拡大しないように調整,一定に維持されるように調整,又は,流路面積が出口32bに向かうに従い狭まるように調整されている。
【0102】
その結果,研磨材流路内を入口側から出口側に流れる空気流は,流路面積が過度に拡大することで生じる流速の低下が抑制され,あるいは流路面積が減少する場合には流速が高められるようになっている。
【0103】
そのため,本発明のインペラ30では,研磨材流路32の出口より高圧,高速の圧縮空気を噴射することができ,この空気流に乗って射出される研磨材の投射速度を高めることができるようになっている。
【0104】
このようにして,高速の空気流に乗って投射された研磨材は,これを直接,又は
図1及び2に示した誘導板70によって誘導して被加工物20に対し投射され,被加工物20の切削や研磨が行われる。
【0105】
本発明のインペラ30では,前述したようにインペラ30の回転によって研磨材を遠心力によって加速するのみならず,研磨材を高速の空気流に乗せて投射できるように構成したことで,
図1及び
図2に示すいような誘導板70によって研磨材を誘導した場合であっても,研磨材の飛翔方向の制御が容易であると共に,減速を生じさせ難いものとなっている。
【0106】
その結果,先に誘導板70の構成として説明したように,誘導板70と平行に配置されたエアノズル(図示せず)を設けて研磨材の減速を防止する等の措置を取らなくとも,本発明のブラスト加工装置1では高い研磨材の投射速度を維持したまま被加工物20に衝突させることができる。
【0107】
このようにした被加工物20の研磨に使用された研磨材は,キャビネット10の加工室11の底部に落下して溜まり,加工室11の底部に溜まった研磨材は,
図1の構成では排風機62によって研磨材タンク41内を吸引することで,ダクト61を介して加工室11の底部から研磨材タンク41に搬送されることで,
図2に記載の構成ではバケットコンベア63によって加工室11の底部からシューター42の入口に搬送されることで,研磨材はシューター42を介して再度,回転するインペラ30の研磨材導入口31内に導入されて,投射される。
【0108】
このように,本発明のブラスト加工装置1では,既存のインペラとは一線を画する斬新な構造のインペラ30を採用することで,研磨材の投射速度を向上させるのみならず,研磨材流路32内の空気を効率的に圧縮すると共に研磨材と共に吐出される空気の流速を高めることができるものとなっている。
【0109】
そのため,本発明のインペラ30の構造を採用することで,インペラ30の直径,及び/又は回転速度を減少させた場合であっても,従来のインペラと同等以上の投射速度で研磨材を投射することができ,装置の小型・軽量化が可能であると共に,インペラ30を回転させるモータの消費電力を低減することができる。
【0110】
なお,前述したように研磨材流路32内の研磨材は,研磨材流路32の内壁のうち,回転方向後方側の内壁(羽根35の凸面)に沿ってインペラ30の内周側から外周に向かう相対速度を有することから,この研磨材との接触により研磨材流路32の回転方向後方側の内壁(羽根35の凸面)が他の部分に比較して顕著に摩耗する。
【0111】
しかし,この部分に耐摩耗性の保護材36を着脱可能に取り付ける構成を採用することで,研磨材との接触によって摩耗が生じた場合であっても,保護材36のみを交換することで容易にインペラ30を再生することが可能である。
【符号の説明】
【0112】
1 ブラスト加工装置
10 キャビネット
11 加工室
14 ホッパ
20 被加工物
30 インペラ
31 研磨材導入口
32 研磨材流路
32a 入口(研磨材流路32の)
32b 出口(研磨材流路32の)
33 本体
33a 軸孔
34 対向板
35 羽根
35a 内周側端部(羽根35の)
35b 外周側端部(羽根35の)
35’ 補助羽根
36 保護材
37 掘り込み
40 研磨材供給手段
41 研磨材タンク
42 シューター
50 被覆手段(ベルト)
51,52,53,54 プーリ
60 研磨材搬送手段
61 ダクト
62 排風機
63 バケットコンベア
63a チェーンベルト
63b バケット
70 誘導板
130,230 インペラ
131,231 研磨材導入口
132,232 研磨材流路
132a,232a 入口(研磨材流路132,232の)
132b,232b 出口(研磨材流路132,232の)
133 本体
134 対向板
135 羽根
135a 内周側端部(羽根135の)
135b 外周側端部(羽根135の)
150 ベルト
150’ ケーシング