(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-28
(45)【発行日】2022-02-07
(54)【発明の名称】肝臓境界の識別方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 8/14 20060101AFI20220131BHJP
A61B 6/03 20060101ALI20220131BHJP
A61B 5/055 20060101ALI20220131BHJP
【FI】
A61B8/14
A61B6/03 360J
A61B5/055 380
(21)【出願番号】P 2020090392
(22)【出願日】2020-05-25
(62)【分割の表示】P 2017512989の分割
【原出願日】2015-08-10
【審査請求日】2020-06-24
(31)【優先権主張番号】201410564295.5
(32)【優先日】2014-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517073074
【氏名又は名称】无錫海斯凱尓医学技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】WUXI HISKY MEDICAL TECHNOLOGIES CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】B401,530 Plaza,University Science Park,Taihu International Science&Technology Park Wuxi,Jiangsu 214000(CN)
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】特許業務法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】邵 金華
(72)【発明者】
【氏名】孫 錦
(72)【発明者】
【氏名】段 后利
【審査官】門 良成
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-154037(JP,A)
【文献】特開2012-055392(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0003672(US,A1)
【文献】特開2011-143062(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00
A61B 6/00
A61B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
肝臓境界の識別方法であって、
識別される肝臓組織情報を取得することと、
画像処理技術又は信号処理技術を用い、前記肝臓組織情報に対応する肝臓組織の特徴及び肝臓組織境界の特徴に基づいて、前記肝臓組織情報における肝臓組織境界を識別することと、
識別された肝臓組織境界の位置情報を出力することと、を含み、
画像処理技術又は信号処理技術を用い、前記肝臓組織情報に対応する肝臓組織の特徴及び肝臓組織境界の特徴に基づいて、前記肝臓組織情報における肝臓組織境界を識別することは、
前記肝臓組織情報を複数の領域に区画することと、
各領域内の肝臓組織情報の特徴値を計算し、各領域内の肝臓組織情報の特徴値に基づいて前記肝臓組織境界を確定することと、を含み、
前記肝臓組織情報が肝臓組織の
3次元画像であり、前記
3次元画像が肝臓組織のCT画像又は肝臓組織のMRI画像を含む場合、
画像分割方法を用いて、前記肝臓組織のCT画像又は前記肝臓組織のMRI画像から、皮膚の2値画像と骨骼の2値画像を抽出することと、
前記骨骼の2値画像の質量中心を計算し、前記皮膚の2値画像の前記質量中心に最も近い点を計算することと、
前記質量中心と前記質量中心に最も近い点に基づいて、前記肝臓組織のCT画像又は前記肝臓組織のMRI画像を4つの象限に区画することと、
肋骨フィッティング曲線を得るように、第2象限内の各肋骨点をフィッティングすることと、
前記肋骨フィッティング曲線を境界曲線として第1象限に向かって所定値移動し、前記境界曲線と前記肋骨フィッティング曲線との間の領域を肝臓組織の境界領域として確定することとを含む、肝臓境界を識別する方法。
【請求項2】
識別された肝臓組織境界の位置情報を出力することとは、
識別された肝臓組織境界の座標位置を出力すること、及び/又は
識別された肝臓組織境界の画像を表示することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
肝臓境界の識別システムであって、情報取得装置、肝臓境界識別装置及び肝臓境界表示装置を備え、
前記情報取得装置は、識別される肝臓組織情報を取得するために用いられ、
前記肝臓境界識別装置は、画像処理技術又は信号処理技術を用い、前記肝臓組織情報に対応する肝臓組織の特徴及び肝臓組織境界の特徴に基づいて、前記肝臓組織情報における肝臓組織境界を識別するために用いられ、
前記肝臓境界表示装置は、識別された肝臓組織境界の位置情報を出力するために用いられ、
前記肝臓境界識別装置は、
前記肝臓組織情報を複数の領域に区画するための領域区画ユニットと、
各領域内の肝臓組織情報の特徴値を計算し、各領域内の肝臓組織情報の特徴値に基づいて、前記肝臓組織境界を確定するための境界確定ユニットとを含み、
前記肝臓組織情報が肝臓組織の
3次元画像であり、前記
3次元画像が肝臓組織のCT画像又は肝臓組織のMRI画像を含む場合、
前記肝臓境界識別装置は、
画像分割方法を用いて、前記肝臓組織のCT画像又は前記肝臓組織のMRI画像から、皮膚の2値画像と骨骼の2値画像を抽出するための2値画像取得ユニットと、
前記骨骼の2値画像の質量中心を計算し、前記皮膚の2値画像の前記質量中心に最も近い点を計算するための特徴点確定ユニットと、
前記質量中心と前記質量中心に最も近い点に基づいて、前記肝臓組織のCT画像又は前記肝臓組織のMRI画像を4つの象限に区画するための画像区画ユニットと、
肋骨フィッティング曲線を得るように、第2象限内の各肋骨点をフィッティングするための曲線フィッティングユニットと、
前記肋骨フィッティング曲線を第1象限に向かって所定値移動して境界領域曲線とし、
前記境界領域曲線と前記肋骨フィッティング曲線との間の領域を肝臓組織の境界領域として確定するための境界領域確定ユニットとを備える、肝臓境界の識別システム。
【請求項4】
前記肝臓境界表示装置は、
識別された肝臓組織境界の座標位置を出力するための位置出力ユニットと、及び/又は
識別された肝臓組織境界の画像を表示するための画像表示ユニットとを備える、請求項3に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施例は医用画像処理技術の分野に関し、特に肝臓境界の識別方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの臨床応用では、超音波画像法、磁気共鳴画像法(MRI、Magnetic Resonance Imaging)、コンピュータ断層撮影(CT、Computed Tomography)などを含む従来の医用画像から、肝臓組織境界を識別することによって、肝臓検査領域の位置決めを実現する。例えば、肝臓弾性検出や肝臓カラードプラ超音波検査などがある。
【0003】
現在、肝臓組織の境界は主に人為的に識別される。肝臓組織の情報に基づいて、肝臓境界を人為的に手動で選択する方法は、操作者が肝臓組織の境界を正確に選択するために、肝臓組織構造と画像情報を精通することが必要であるので、操作者に対する要求が高い。同時に、識別過程では、識別が人工的に行われて、識別の時間が長いため、肝臓境界の識別効率が低い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、肝臓境界の識別効率を向上させるために、肝臓境界の識別方法及びシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様によれば、本発明は肝臓境界の識別方法を提供する。この識別方法は、
識別される肝臓組織情報を取得することと、
画像処理技術又は信号処理技術を用い、前記肝臓組織情報に対応する肝臓組織の特徴及び肝臓組織境界の特徴に基づいて、前記肝臓組織情報における肝臓組織境界を識別することと、
識別された肝臓組織境界の位置情報を出力することと、を含む。
【0006】
別の態様によれば、本発明は肝臓境界の識別システムを提供する。このシステムは、情報取得装置、肝臓境界識別装置及び肝臓境界表示装置を備え、前記情報取得装置は、識別される肝臓組織情報を取得するために用いられ、前記肝臓境界識別装置は、画像処理技術又は信号処理技術を用い、前記肝臓組織情報に対応する肝臓組織の特徴及び肝臓組織境界の特徴に基づいて、前記肝臓組織情報における肝臓組織境界を識別するために用いられ、前記肝臓境界表示装置は、識別された肝臓組織境界の位置情報を出力するために用いられる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施例による肝臓境界の識別方法及びシステムは、肝臓境界領域を効率的に識別することができる。本発明の実施例による肝臓境界の識別方法は、識別される肝臓組織情報を取得した後、画像処理技術又は信号処理技術を用い、前記肝臓組織及び境界の信号特徴に基づいて、前記肝臓組織境界を識別する。この方法により、肝臓組織境界を自動的に識別することができ、肝臓組織境界の識別効率を向上させることもできる。
【0008】
ここで説明される図面は、本発明の実施例をさらに理解させるために、本発明の実施例の一部を構成するためのものであり、本発明の実施例を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施例による肝臓境界の識別方法の実現フローチャートである。
【
図2】本発明の第2実施例による肝臓境界の識別方法の実現フローチャートである。
【
図3】本発明の第2実施例における肝臓組織のMモード超音波信号に基づく境界識別の効果図である。
【
図4】本発明の第3実施例による肝臓境界の識別方法の実現フローチャートである。
【
図5】本発明の第3実施例における肝臓組織のBモード超音波画像に基づく境界識別の効果図である。
【
図6】本発明の第4実施例による肝臓境界の識別方法の実現フローチャートである。
【
図7】本発明の第4実施例による肝臓組織のCT画像に基づく境界識別の効果図である。
【
図8】本発明の第5実施例による肝臓境界の識別システムの構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面及び具体的な実施例を参照しながら、本発明の実施例をより詳細かつ完全に説明する。ここで記述する具体的な実施例は、本発明の実施例を説明するために用いられ、本発明の実施例を限定するものではないことを理解するべきである。なお、説明を簡単にするために、図面では、本発明の実施例に関連する内容の全部でなく一部のみが示されている。
〈第1実施例〉
【0011】
図1は、本発明の第1実施例による肝臓境界の識別方法の実現フローチャートである。この方法は、肝臓境界の識別システムにより実行することができる。
図1に示されるように、該実現フローチャートはステップ11~ステップ13を含む。
【0012】
ステップ11では、識別される肝臓組織情報を取得する。
【0013】
ここで、前記肝臓組織情報は、肝臓組織のAモード超音波信号、肝臓組織のMモード超音波信号、肝臓組織のBモード超音波画像、肝臓組織のCT画像又は肝臓組織のMRI画像とすることができる。
【0014】
肝臓組織情報に基づいて、肝臓組織情報の種類を取得することができる。即ち、肝臓組織情報の種類は、超音波信号例えば肝臓組織のAモード超音波信号や肝臓組織のMモード超音波信号であってもよく、2次元超音波画像例えば肝臓組織のBモード超音波画像であってもよく、さらに、3次元画像例えば肝臓組織のCT画像や肝臓組織のMRI画像であってもよい。
【0015】
ステップ12では、画像処理技術又は信号処理技術を用い、前記肝臓組織情報に対応する肝臓組織の特徴及び肝臓組織境界の特徴に基づいて、前記肝臓組織情報における肝臓組織境界を識別する。
【0016】
前記肝臓組織情報が肝臓組織の超音波信号である場合、信号処理技術を用い、前記肝臓組織の超音波信号に対応する肝臓組織の特徴及び肝臓組織境界の特徴に基づいて、前記肝臓組織境界を識別する。前記肝臓組織情報が2次元超音波画像又は3次元画像である場合、画像処理技術を用い、前記肝臓組織の2次元超音波画像又は3次元超音波画像に対応する肝臓組織の特徴及び肝臓組織境界の特徴に基づいて、前記肝臓組織境界を識別する。
【0017】
ここで、前記肝臓組織情報が肝臓組織の1次元超音波信号、肝臓組織の2次元超音波画像又は肝臓組織の3次元超音波画像である場合、画像処理技術又は信号処理技術を用い、前記肝臓組織情報に対応する肝臓組織の特徴及び肝臓組織境界の特徴に基づいて、前記肝臓組織情報における肝臓組織境界を識別することは、具体的に、前記肝臓組織情報を複数の検出サブ領域に区画することと、各検出サブ領域内の肝臓組織情報の特徴値を計算し、検出サブ領域内の肝臓組織情報の特徴値に基づいて、前記肝臓組織境界を確定することと、を含む。
【0018】
ステップ13では、識別された肝臓組織境界の位置情報を出力する。
【0019】
識別された肝臓組織境界の位置情報を出力することとは、識別された肝臓組織境界の座標位置を出力することと、及び/又は、識別された肝臓組織境界の画像を表示することと、を含む。即ち、識別された肝臓組織境界の位置情報を出力するとき、単に肝臓組織境界の座標位置を出力してもよく、単に肝臓組織境界の画像を表示してもよく、肝臓組織境界の座標位置を出力するとともに、肝臓組織境界の画像を表示してもよい。
【0020】
本発明の第1実施例による肝臓組織境界の識別方法は、肝臓組織情報に対応する肝臓組織の特徴及び肝臓組織境界の特徴に基づいて、前記肝臓組織境界を自動的且つ効率的に識別することができる。ここで、前記肝臓組織情報は、肝臓組織の1次元構造の情報を反映するAモード超音波信号又は組織の1次元構造の動的情報を反映するMモード超音波信号であってもよく、肝臓組織の2次元構造を反映するBモード超音波画像であってもよく、肝臓組織の3次元構造を反映するCT又はMRI画像であってもよい。
〈第2実施例〉
【0021】
第2実施例は、本発明の第1実施例のステップ12を具体的に最適化するものである。この方法は肝臓組織の1次元超音波信号に適する。
図2は本発明の第2実施例による肝臓境界の識別方法の実現フローチャートであり、
図3は本発明の第2実施例における肝臓組織のMモード超音波信号に基づく境界識別の効果図である。
図2と
図3から、この方法はステップ21~ステップ23を含む。
【0022】
ステップ21では、肝臓組織の1次元超音波信号を複数の検出サブ領域Siに区画する。
【0023】
前記肝臓組織の1次元超音波信号は、肝臓組織のAモード超音波信号又は肝臓組織のMモード超音波信号とすることができる。1つの超音波信号がn個のサンプリング点を含み、これに対応する肝臓組織の超音波信号の走査深さがd(単位がmm)であると仮定すると、深さ1mmあたりn/d個の点を含む。n個のサンプリング点を多段の検出サブ領域Siに区画し、検出サブ領域Siに対応する走査深さはdiであり、iが整数である。走査深さdiは、検出サブ領域Siの深さの平均値又は端値とすることができ、ここでは端値にされる。
【0024】
例えば、zを間隔距離としてn個のサンプリング点を多段の検出サブ領域Siに区画する。超音波画像法において、画像の最底部(走査深さの最も深いところに対応する)には一般的に検出対象が含まれないため、画像の最底部の情報は無視されてもよい。このとき、i=1,2,…,[d/z]-1であり、zが検出サブ領域の区間の長さ(単位がmm)であり、[]は整数に切り上げる計算である。各段の検出サブ領域にはそれぞれ[zn/d]個のサンプリング点が含まれている。例えば、超音波信号の走査深さdが20mmとなり、間隔距離zが3mmにされる場合、n個のサンプリング点は[d/z]-1=6段の検出サブ領域S1~S6に区画される。S1が0~3mm区間に対応し、S2が3~6mm区間に対応し、…、S6が15~18mm区間に対応する。一般的に検出対象が含まれないため、画像の最底部(18~20mm区間に対応する)は無視される。
【0025】
ステップ22では、各検出サブ領域Si内の肝臓組織の超音波信号RiのNakagami分布値miを計算する。
【0026】
Nakagami統計モデルは、超音波組織性状診断技術の1つである。具体的に、以下の式に基づいて、各検出サブ領域S
i内の肝臓組織の画像に対応する超音波信号R
iのNakagami分布値m
iを計算する。
Nakagami分布の確率密度関数は、
である。E(.)が平均値関数、Г(.)がガンマ関数、Ω=E(r
2)、U(.)が単位ステップ関数、mがNakagami分布値、rが確率分布関数f(r)の従属変数であり、r≧0、m≧0。各検出サブ領域S
iにとっては、m
iがS
i領域内のm値であり、R
iが超音波信号のエンベロープ値である。
【0027】
m値が(0,1)範囲内にある場合、肝臓組織の超音波信号はプレレイリー(pre-Rayleigh)分布に従う。m値が1に等しい場合、超音波エコー信号はレイリー(Rayleigh)分布に従う。m値が1より大きい場合、超音波エコー信号はポストレイリー(post-Rayleigh)分布に従う。
【0028】
ステップ23では、以下の式に基づいて各検出サブ領域S
iの重みW
iを計算し、最大重み値に対応する検出サブ領域を肝臓組織の境界領域として確定する。
d
iは、検出サブ領域S
iに対応する走査深さであり、検出サブ領域S
iの深さの平均値又は端値にすることもできる。各検出サブ領域の重みW
iをトラバーサルして、最大重み値に対応する検出サブ領域を選択し、肝臓組織の境界領域とすると、肝臓組織境界の自動的な位置決めを完了する。
【0029】
本発明の第2実施例による肝臓境界の識別方法は、肝臓組織のAモード超音波又はMモード超音波の超音波信号により、肝臓組織境界をリアルタイムかつ自動的に位置決めすることができる。また、本算出法は、複雑度が低いため、より高い肝臓組織境界の識別効率を有することにより、肝臓組織境界をリアルタイムかつ自動的に位置決めすることができる。
〈第3実施例〉
【0030】
第3実施例は、本発明の第1実施例のステップ12を具体的に最適化するものである。この方法は肝臓組織の2次元超音波信号に適する。
図4は本発明の第3実施例による肝臓境界の識別方法の実現フローチャートであり、
図5は本発明の第3実施例における肝臓組織のBモード超音波画像に基づく境界識別の効果図である。
図4と
図5から、この方法はステップ31~ステップ32を含む。
【0031】
ステップ31では、前記肝臓組織の2次元超音波画像を複数の矩形の検出サブ領域Rijに区画し、i、jが自然数であり、それぞれ各検出サブ領域の行、列の順序番号を示すために用いられる。
【0032】
前記肝臓組織の2次元超音波画像は、肝臓組織のBモード超音波画像であってもよい。Bモード超音波画像のサイズはw*hであり、wが肝臓組織の2次元超音波画像の幅、hが肝臓組織の2次元超音波画像の高さ(wとhの単位がいずれも画素である)、対応する走査深さがd(単位がmm)であると仮定すると、深さ方向への走査線において、1mm深さにはh/d個の画素点が含まれる。サイズがw*hであるBモード超音波画像は、複数の矩形の検出サブ領域Rijに区画される。
【0033】
例えば、サイズがw*hであるBモード超音波画像は、zを辺長として複数の正方形の検出サブ領域R
ijに区画される。第1実施例と同様に、超音波画像法において、画像の最底部(走査深さの最も深いところに対応する)及び幅方向の最も端には一般的に検出対象が含まれないため、画像の最底部及び幅方向の最も端における情報が無視されてもよい。このとき、
であり、zが正方形の検出サブ領域の辺長(単位がmm)である。[]は、整数に切り上げる計算である。このとき、各正方形の検出サブ領域R
ijの幅と高さはいずれも[zh/d]個の画素である。
【0034】
ステップ32では、各検出サブ領域R
ijの重みW
ijを計算し、最大重み値に対応する検出サブ領域を肝臓組織の境界領域として確定する。ここで、計算量を減少するために、半数の検出サブ領域の重み値のみを計算してもよい。例えば、2次元超音波画像を中線に沿って両分し、中線以上の半画面の2次元超音波画像における各検出サブ領域R
kjの重みW
kj(k=i
max/2)のみを計算して中線以上の境界サブ領域を求める。そして、この境界サブ領域を幅方向(側方向)に沿って伸ばすと、全境界領域を得ることができる。重みW
kjは、以下の式に基づいて計算することができる。
ここで、M
kjが検出サブ領域R
kj内の肝臓組織の2次元超音波画像のグレースケール平均値であり、SD
kjが検出サブ領域R
kj内の肝臓組織の2次元超音波画像のグレースケール標準偏差であり、d
kjが検出サブ領域R
kjに対応する走査深さである。k=i
max/2によれば,辺長がzである矩形の領域に肝臓組織の2次元超音波画像を区画する場合,
、且つkが整数にされ、i
maxがi値範囲内の最大値である。
【0035】
肝臓被膜領域がBモード超音波画像において均一のハイエコーであるため、肝臓境界領域のグレースケール平均値が大きい。また、肝臓被膜領域がBモード超音波画像において均一性を有するため、グレースケール標準偏差が小さい。コンベックスアレイプローブが走査する際の扇形のBモード超音波画像の両側の黒い背景領域を回避するために、Bモード超音波画像の中線での検出サブ領域に捜索を行う。一連の検出サブ領域Rkjの中に検出サブ領域Rk1が最大の重みを有するものとなると、該検出サブ領域Rk1を肝臓組織の境界として確定する。
【0036】
第3実施例による肝臓境界の識別方法は、肝臓組織のBモード超音波の画像により、肝臓組織境界をリアルタイムかつ自動的に位置決めすることができる。本算出法は、複雑度が低いため、より高い肝臓組織境界の識別効率を有することにより、肝臓組織境界をリアルタイムかつ自動的に位置決めすることができる。
〈第4実施例〉
【0037】
第4実施例は、本発明の第1実施例のステップ12を具体的に最適化するものである。この方法は肝臓組織の3次元超音波信号に適する。
図6は本発明の第4実施例による肝臓境界の識別方法の実現フローチャートであり、
図7は本発明の第4実施例における肝臓組織のCT画像に基づく境界識別の効果図である。
図6と
図7から、この方法はステップ41~ステップ45を含む。
【0038】
ステップ41では、画像分割方法を用いて、前記肝臓組織のCT画像又は前記肝臓組織のMRI画像から、皮膚の2値画像と骨骼の2値画像を抽出する。
【0039】
まず、皮膚の2値画像を抽出する。画像座標が(0,0)である画素をシード点として、画像分割方法(例えば、領域成長分割法)を用いて、皮膚の2値画像を抽出する。ここで、空気のCT値に対応する領域成長の基準が[-1024、-500]HU(Hounsfield unit、ハウンスフィールド単位)である。
【0040】
次に、脊椎骨の2値画像と肋骨の2値画像を含む骨骼の2値画像を抽出する。画像全体に対して、閾値範囲が[350、1024]HUである閾値分割を実行して、骨骼の2値画像を抽出する。
【0041】
ステップ42では、前記骨骼の2値画像の質量中心を計算し、前記皮膚の2値画像の前記質量中心に最も近い点を計算する。
【0042】
骨骼の2値画像の質量中心PCを計算する。一般的に肋骨が脊椎骨に沿って左右対称であり、且つ脊椎骨の骨骼画像に占める比率が大きいため、骨骼画像の質量中心は脊椎骨の質量中心PCとなる。
【0043】
脊椎骨の質量中心PCを起点として、皮膚の2値画像の前記質量中心PCに最も近い点を検索して、PNと記録する。
【0044】
ステップ43では、前記質量中心及び前記質量中心に最も近い点に基づいて、前記肝臓組織の画像を4つの象限に区画する。
【0045】
質量中心PCと質量中心に最も近い点PNによりCT画像を4つの象限に区画し、即ち、質量中心PCと質量中心に最も近い点PNの両点が位置する直線を縦方向座標軸とし、質量中心PCを通過し且つ縦方向座標軸に直交する直線を横方向座標軸とする。肝臓領域の大部分は第2象限内に位置する。
【0046】
ステップ44では、肋骨フィッティング曲線を得るように、第2象限内の各肋骨点をフィッティングする。
【0047】
Bスプライン曲線又は皮膚曲線により第2象限内の肋骨の各点をフィッティングして、肋骨フィッティング曲線を得る。
【0048】
ステップ45では、前記肋骨フィッティング曲線を第1象限に向かって所定値移動して境界曲線とし、前記境界曲線と前記肋骨フィッティング曲線との間の領域を肝臓組織の境界領域として確定する。
【0049】
肋骨曲線が肝臓被膜に近接するため、肋骨曲線を内向きに所定値移動して境界曲線とし、境界曲線と肋骨フィッティング曲線との間の領域を肝臓組織の境界領域として確定する。
【0050】
ここで、前記所定値は5mmであってもよい。
【0051】
本発明の第4実施例による肝臓境界の識別方法は、肝臓組織のCT画像又はMRI画像により、肝臓組織境界をリアルタイムかつ自動的に位置決めすることができる。また、本算出法は、複雑度が低いため、より高い肝臓組織境界の識別効率を有することにより、肝臓組織境界をリアルタイムかつ自動的に位置決めすることができる。
〈第5実施例〉
【0052】
図8は、本発明の第5実施例による肝臓境界の識別システムの構造模式図である。
図8に示されるように、本実施例に記載の肝臓境界の識別システムは、情報取得装置51、肝臓境界識別装置52及び肝臓境界表示装置53を備えることができる。前記情報取得装置51は、識別される肝臓組織情報を取得するために用いられる。前記肝臓境界識別装置52は、画像処理技術又は信号処理技術を用い、前記肝臓組織情報に対応する肝臓組織の特徴及び肝臓組織境界の特徴に基づいて、前記肝臓組織情報における肝臓組織境界を識別するために用いられる。前記肝臓境界表示装置53は、識別された肝臓組織境界の位置情報を出力するために用いられる。
【0053】
ここで、前記肝臓組織情報が肝臓組織の1次元超音波信号、肝臓組織の2次元超音波画像又は肝臓組織の3次元超音波画像である場合に、前記肝臓境界識別装置52は、前記肝臓組織情報を複数の検出サブ領域に区画するための領域区画ユニットと、各検出サブ領域内の肝臓組織情報の特徴値を計算し、検出サブ領域内の肝臓組織情報の特徴値に基づいて、前記肝臓組織境界を確定するための境界確定ユニットとを含むことができる。
【0054】
ここで、前記肝臓組織情報が肝臓組織の1次元超音波信号である場合、前記境界確定ユニットは、各検出サブ領域S
i内の肝臓組織の1次元超音波信号R
iのNakagami分布値m
iを計算するための第1特徴値計算サブユニットと、以下の式に基づいて各検出サブ領域S
iの重みW
iを計算し、最大重み値に対応する検出サブ領域を肝臓組織の境界領域として確定するための第1境界確定サブユニットとを含むことができる。
d
iが検出サブ領域S
iに対応する走査深さである。
【0055】
ここで、前記肝臓組織情報が肝臓組織の2次元超音波画像である場合、前記領域区画ユニットは具体的に、前記肝臓組織の2次元超音波画像を複数の矩形の検出サブ領域R
ijに区画するために用いられることができる。前記境界確定ユニットは具体的に、以下の式に基づいて各検出サブ領域R
kjの重みW
kjを計算し、最大重み値に対応する検出サブ領域を肝臓組織の境界領域として確定するために用いられることができる。
M
kjが検出サブ領域R
kj内の肝臓組織の2次元超音波画像のグレースケール平均値であり、SD
kjが検出サブ領域R
kj内の肝臓組織の2次元超音波画像のグレースケール標準偏差であり、d
kjが検出サブ領域R
kjに対応する走査深さであり、k=i
max/2。
【0056】
ここで、前記肝臓組織情報が肝臓組織のCT画像又は肝臓組織のMRI画像である場合、前記肝臓境界識別装置52は具体的に、画像分割方法を用いて、前記肝臓組織のCT画像又は前記肝臓組織のMRI画像から、皮膚の2値画像と骨骼の2値画像を抽出するための2値画像取得ユニットと、前記骨骼の2値画像の質量中心を計算し、前記皮膚の2値画像の前記質量中心に最も近い点を計算するための特徴点確定ユニットと、前記質量中心と前記質量中心に最も近い点に基づいて、前記肝臓組織の画像を4つの象限に区画するための画像区画ユニットと、肋骨フィッティング曲線を得るように、第2象限内の各肋骨点をフィッティングするための曲線フィッティングユニットと、前記肋骨フィッティング曲線を第1象限に向かって所定値移動して境界領域曲線とし、前記境界領域曲線と前記肋骨フィッティング曲線との間の領域を肝臓組織の境界領域として確定するための境界領域確定ユニットとを備える。
【0057】
本発明の第5実施例による肝臓境界の識別システムは、肝臓組織情報に対応する肝臓組織境界の特徴に基づいて、前記肝臓組織境界を自動的且つ効率的に識別することができる。ここで、前記肝臓組織情報は、肝臓組織の1次元構造の情報を反映するAモード超音波信号又は組織の1次元構造の動的情報を反映するM型超音波画像又はMモード超音波信号であってもよく、組織の2次元構造を反映するBモード超音波画像であってもよく、肝臓組織の3次元構造を反映するCT又はMRI画像であってもよい。
【0058】
上述は、単に本発明の好ましい実施形態であり、本発明の実施形態を限定するものではなく、種々の変形及び変更が当業者になされ得る。本発明の実施形態の精神と原則内で行われるすべての修正、同等置換、改善などは、いずれも本発明の実施形態の保護範囲内に含まれるべきである。