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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-28
(45)【発行日】2022-02-07
(54)【発明の名称】撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 19/12 20210101AFI20220131BHJP
   G02B 5/22 20060101ALI20220131BHJP
   G02B 5/26 20060101ALI20220131BHJP
   G02B 5/28 20060101ALI20220131BHJP
   G03B 11/00 20210101ALI20220131BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20220131BHJP
   H04N 5/232 20060101ALI20220131BHJP
   H04N 9/09 20060101ALI20220131BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20220131BHJP
【FI】
G03B19/12
G02B5/22
G02B5/26
G02B5/28
G03B11/00
H04N5/225 400
H04N5/225 800
H04N5/232 290
H04N9/09 A
G03B15/00 S
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021003881
(22)【出願日】2021-01-14
【審査請求日】2021-04-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507200938
【氏名又は名称】株式会社タナカ技研
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 隆義
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 大刀夫
(72)【発明者】
【氏名】松本 義己
(72)【発明者】
【氏名】石井 太
(72)【発明者】
【氏名】八木 進
(72)【発明者】
【氏名】石田 芳浩
【審査官】藏田 敦之
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-085876(JP,A)
【文献】特開2007-282054(JP,A)
【文献】特開平11-289547(JP,A)
【文献】特開2007-334311(JP,A)
【文献】特開2015-108692(JP,A)
【文献】特開2002-016931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 19/12
G02B 5/22
G02B 5/26
G02B 5/28
G03B 11/00
H04N 5/225
H04N 9/09
H04N 5/232
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズと、
前記レンズを介して入射する被写体からの光を可視光を含む第1の波長成分の光と非可視光を含む第2の波長成分の光とに分光する分光体と、
前記レンズと前記分光体との間に設けられ、前記第1の波長成分の光と前記第2の波長成分の光の重複成分の光のうち少なくとも一部の光を吸収する吸収体と、
前記第1の波長成分の光を受光する第1の撮像素子と、
前記第2の波長成分の光を受光する第2の撮像素子と、を備え、
前記吸収体は、前記重複成分の光のうち少なくとも一部の光に対する吸収率が95%以上であり、
前記分光体は、前記分光体の分光面の法線と、前記レンズの光軸との角度が45度となるように設けられ、前記第1の波長成分の光及び前記第2の波長成分の光のうちの一方を透過させるとともに前記第1の波長成分の光及び前記第2の波長成分の光のうちの他方を前記光軸に対して直角方向に反射させ、
前記第1の波長成分の光は、波長750nm以下の光であり、
前記第2の波長成分の光は、波長650nm以上の光であり、
前記重複成分の光のうち少なくとも一部の光は、650nm以上800nm以下の波長範囲のうちの100nm以上の波長範囲の光を含むことを特徴とする、
撮像装置。
【請求項2】
前記分光体は、フッ化マグネシウム(MgF)、二酸化チタン(TiO)、二酸化ケイ素(SiO)、五酸化ニオブ(NbO)、五酸化タンタル(TaO)の群から選択される互いに異なる屈折率を有する誘電体を積層して形成される、
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記分光体は、スクアリリウム化合物を含む、
請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記第1の撮像素子が生成する第1の画像と前記第2の撮像素子が生成する第2の画像とを合成した合成画像を生成する生成手段をさらに備える、
請求項1からのいずれか一項に記載の撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
可視光を用いて撮影する撮像装置が利用されている。入射光を基に撮像データを生成するCharge Coupled Device(CCD)イメージセンサやComplementary Metal-Oxide-Semiconductor(CMOS)イメージセンサ等は、可視光よりも広い範囲の波長に対して感度を有する。そのため、可視光で撮影を行う撮像装置では、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサへの可視光以外の光の入射を抑止するフィルタが利用される。
【0003】
例えば、特許文献1では、レンズを介して入射した光を可視光を主に含む第1の光波長成分と非可視光を主に含む第2の光波長成分とに分光するビームスプリッタと、第1の光波長成分の光路上に配置され第1の光波長成分及び第2の光波長成分の重複成分の通過を制限するローパスフィルタと、第2の波長成分の光路上に配置され第1の波長成分及び第2の波長成分の重複成分の通過を制限するハイパスフィルタと、を備える撮像装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-108692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
可視光による撮影で取得する可視光像は被写体の色の情報を含む。そのため、可視光像によれば、色のみが異なる被写体の識別も容易に行うことができる。周囲が暗い環境では、可視光像は不鮮明な撮像になりやすいため、赤外光による撮影が行われる。赤外光で撮影することで、周囲が暗い環境において可視光像よりも鮮明な赤外光像を取得することができる。しかしながら、赤外光像は白黒画像になることから、被写体がどのような色であったのかを赤外光像から判別することは困難となる。このように、波長成分の異なる光を基に生成された画像は、夫々異なる特徴を備える。
【0006】
開示の技術の1つの側面は、2種類の異なる波長成分の光で撮影した被写体の画像の夫々を高精細に生成可能な撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示の技術の1つの側面は、次のような撮像装置によって例示される。本撮像装置は、レンズと、レンズを介して入射する被写体からの光を可視光を含む第1の波長成分の光と非可視光を含む第2の波長成分の光とに分光する分光体と、レンズと分光体との間に設けられ、第1の波長成分の光と第2の波長成分の光の重複成分の光のうち少なくとも一部の光を吸収する吸収体と、第1の波長成分の光を受光する第1の撮像素子と、第2の波長成分の光を受光する第2の撮像素子と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本撮像装置は、2種類の異なる波長成分の光で撮影した被写体の画像の夫々を高精細に生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係る撮像装置を模式的に示す図である。
図2図2は、実施形態で用いるビームスプリッタの特性を模式的に例示する図である。
図3図3は、近赤外光吸収基板の透過特性を模式的に例示する図である。
図4図4は、実施形態において、近赤外光吸収基板とビームスプリッタとを組み合わせたときの特性を模式的に示す図である。
図5図5は、画像処理回路による可視光像と赤外光像の合成を例示する図である
図6図6は、第1変形例に係る撮像装置の一例を示す図である。
図7図7は、第2変形例に係る撮像装置の一例を示す図である。
図8図8は、適用例を模式的に例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施形態>
以下に示す実施形態の構成は例示であり、開示の技術は実施形態の構成に限定されない。実施形態に係る撮像装置は、例えば、以下の構成を備える。本実施形態に係る撮像装置は、レンズと、第1の撮像素子と、第2の撮像素子と、吸収体とを備える。
【0011】
第1の撮像素子は、上記分光体によって分光された第1の波長成分の光に感度のピークを有する撮像素子である。第2の撮像素子は、上記分光体によって分光された第2の波長成分の光に感度のピークを有する撮像素子である。ここで、第1の撮像素子及び第2の撮像素子の感度分布としては、山型、台形型等の様々な感度分布を挙げることができる。また、第1の撮像素子及び第2の撮像素子の感度は、複数の波長に対してピークを有してもよい。複数のピークを有する場合、複数のピークのうちのいずれかのピークが所望の波長成分(例えば、第1の撮像素子であれば第1の波長成分)に含まれればよい。例えば、第1の波長成分の光及び第2の波長成分の光の一方は可視光を含む光であり、他方は近赤外光を含む光である。
【0012】
分光体は、例えば、プリズム式ビームスプリッタである。分光体は、レンズを介して入射する被写体からの光を可視光を含む第1の波長成分の光と非可視光を含む第2の波長成分の光とに分光する。分光体は、例えば、上記レンズを介して入射する入射光のうち、第1の波長成分の光を透過させて第1の撮像素子に入射させてもよい。また、分光体は、第2の波長成分の光を反射して第2の撮像素子に入射させてもよい。分光体によって分光された第1の波長成分の光と第2の波長成分の光とは、近赤外光の近傍の100nm程度の波長範囲の重複が生じる。
【0013】
吸収体は、上記レンズと上記分光体との間に設けられる。吸収体は、上記第1の波長成分の光と上記第2の波長成分の光の重複成分の光のうち少なくとも一部の光を吸収する。
【0014】
上記第1の撮像素子及び第2の撮像素子は、所望の波長成分以外の波長の光にも感度を有する。そのため、上記重複成分の光が第1の撮像素子及び第2の撮像素子に入射すると、第1の撮像素子及び第2の撮像素子が生成する画像の画質が低下する虞がある。本撮像装置は、上記重複成分のうち少なくとも一部の光を吸収体に吸収させることで、このような画質の低下を抑制することができる。
【0015】
上記分光体は、上記分光体の分光面の法線と、上記レンズの光軸との角度が45度となるように設けられ、上記第1の波長成分の光及び上記第2の波長成分の光のうちの一方を透過させるとともに上記第1の波長成分の光及び上記第2の波長成分の光のうちの他方を上記光軸に対して直角方向に反射させるものであってもよい。
【0016】
ここで、上記第1の波長成分の光は、波長750nm以下の光であってもよい。また、上記第2の波長成分の光は、波長650nm以上の光であってもよい。また、上記吸収体は、650nm以上800nm以下の波長範囲のうちの100nm以上の波長範囲における光の吸収率が95%以上であってもよい。換言すれば、第1の撮像素子は650nm以下の波長範囲の光(すなわち、可視光)を基に可視光像を生成し、第2の撮像素子は750nm以上の波長範囲の光(すなわち、近赤外光)を基に赤外光像を生成するものであって良い。
【0017】
上記分光体は、フッ化マグネシウム(MgF)、二酸化チタン(TiO)、二酸化ケイ素(SiO)、五酸化ニオブ(Nb)、五酸化タンタル(Ta)の群から選択される互いに異なる屈折率を有する誘電体を積層して形成されてもよい。また、上記分光体は、分光体は、スクアリリウム化合物を含んでもよい。
【0018】
本撮像装置は、上記第1の撮像素子が生成する第1の画像と上記第2の撮像素子が生成する第2の画像とを合成した合成画像を生成する生成手段をさらに備えてもよい。第1の撮像素子と第2の撮像素子は、画像生成に用いる波長成分が異なる。そのため、第1の撮像素子が生成する画像と第2の撮像素子が生成する画像とは、異なる特徴を有する。このような特徴の異なる画像を合成することで、様々な用途に活用可能な新たな画像を生成することができる。例えば、可視光像は被写体の色を示す情報を含む一方で、周囲が暗い環境では不鮮明になりやすい。赤外光像は、周囲が暗い環境でも撮像が鮮明である一方で、被写体の色の情報は白黒に変換されてしまう。生成手段は、可視光像と赤外光像とを合成することで、周囲が暗い環境でも鮮明な、また、被写体の色の情報を含む合成画像を生成することができる。
【0019】
以下、図面を参照して上記撮像装置の実施形態についてさらに説明する。図1は、実施形態に係る撮像装置を模式的に示す図である。図1に例示される撮像装置100は、レンズユニット1、ビームスプリッタ2、可視光センサ3、赤外光センサ4、画像処理回路5及び近赤外光吸収基板6を備える。
【0020】
レンズユニット1は、鏡筒12内に1または複数のレンズ11を収容するユニットである。撮像装置100では、ビームスプリッタ2、可視光センサ3がレンズ11の光軸L上に設けられる。レンズユニット1やレンズ11は、「レンズ」の一例である。
【0021】
可視光センサ3は、例えば、入射した可視光を基に可視光像を生成する撮像素子である。可視光センサ3は、例えば、波長650nm以下の光に感度のピークを有する。可視光センサ3は、例えば、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサである。CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサは、可視光以外の光(例えば、赤外光)にも感度を有する。そのため、可視光センサ3とレンズユニット1との間には、レンズ11を介して入射する光から可視光以外の光が可視光センサ3に入射することを抑止するフィルタが設けられる。可視光センサ3は、「第1の撮像素子」の一例である。可視光は、「第1の波長成分の光」の一例である。
【0022】
ビームスプリッタ2は、レンズ11を介して入射した被写体光を可視光と赤外光とに分離する立方体形状のプリズムである。ビームスプリッタ2は、レンズ11の後方(撮像装置100において、レンズ11よりも可視光センサ3や赤外光センサ4側)に配置される。ビームスプリッタ2は、被写体光のうち可視光を含む光を透過して可視光センサ3に入射させ、被写体光のうち赤外光を含む光を反射して赤外光センサ4に入射させる。すなわち、ビームスプリッタ2は、可視光以外の光が可視光センサ3に入射することを抑止するフィルタということができる。
【0023】
ビームスプリッタ2は、側面が四角形に形成され、底面が直角三角形に形成された三角プリズム24a、24bを含む。ビームスプリッタ2の作製は、例えば、以下のように行われる。三角プリズム24bの側面のうちのひとつに、近赤外線反射体21が設けられる。三角プリズム24aの側面のひとつと、三角プリズム24bにおいて近赤外線反射体21が設けられた側面とが張り合わされることで、ビームスプリッタ2は作製される。このように作製されたビームスプリッタ2は、撮像装置100において、近赤外線反射体21が光軸Lに対して斜めになるように(例えば、近赤外線反射体21が設けられた側面の法線Nと光軸Lとの角度Dが45度となるように)配置される。なお、角度Dは、反射した赤外光を赤外光センサ4に入射させ、透過させた可視光を可視光センサ3に入射させることができれば、45度以外の角度であってもよい。
【0024】
ビームスプリッタ2は、所定の波長帯域の光(例えば、近赤外光)を反射するとともに他の波長帯域の光(例えば、可視光)を透過する。ビームスプリッタ2は、例えば、互いに屈折率が異なる誘電体を積層して作製される。ビームスプリッタ2の作製に用いる誘電体としては、例えば、フッ化マグネシウム(MgF)、二酸化チタン(TiO)、二酸化ケイ素(SiO)、五酸化ニオブ(Nb)、五酸化タンタル(Ta)等を挙げることができる。ビームスプリッタ2が反射させる光の波長は、積層する誘電体それぞれの厚みや素材によって適宜設定可能である。ビームスプリッタ2は、「分光体」の一例である。近赤外線反射体21が設けられた側面は、「分光面」の一例である。
【0025】
赤外光センサ4は、例えば、赤外光を基に赤外光像を生成する撮像素子である。赤外光センサ4は、例えば、波長750nm以上の光に感度のピークを有する。赤外光センサ4は、例えば、赤外光に対する感度を有するCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサである。赤外光センサ4は、「第2の撮像素子」の一例である。赤外光は、「第2の波長成分の光」の一例である。
【0026】
画像処理回路5は、可視光センサ3から取得した可視光像及び赤外光センサ4から取得した赤外光像を合成した合成像を生成する回路である。画像処理回路5は、Field-Programmable Gate Array(FPGA)等によって形成された専用回路によって実現されてもよいし、プロセッサとメモリとの組み合わせによって実現されてもよい。画像処理回路5は、「生成手段」の一例である。
【0027】
近赤外光吸収基板6は、光軸L上において、レンズ11とビームスプリッタ2との間に配置される。近赤外光吸収基板6は、可視光を透過させるとともに、近赤外光を吸収する。近赤外光吸収基板6は、近赤外線吸収色素を含む。近赤外線吸収色素としては、例えば、有機色素や有機無機複合色素を挙げることができる。近赤外線吸収色素は、例えば、スクアリリウム化合物を挙げることができる。近赤外光吸収基板6は、さらに、紫外線吸収色素を含んでもよい。近赤外光吸収基板6が吸収する光の波長は、近赤外線吸収色素や紫外線吸収色素の素材の選択によって適宜調整可能である。近赤外光吸収基板6としては、例えば、特開2019-49586に記載の光選択フィルターを採用することができる。
【0028】
<ビームスプリッタ2の特性>
図2は、実施形態で用いるビームスプリッタの特性を模式的に例示する図である。図2において、実線はビームスプリッタ2を透過する透過率(%)を例示する。また、点線はビームスプリッタ2で反射される反射率(%)を例示する。図2の横軸は、ビームスプリッタ2に入射する光の波長(nm)を例示する。図2において、実線のグラフはビームスプリッタ2の透過率を例示する。また、図2において、点線のグラフはビームスプリッタ2の反射率を例示する。図2を参照すると理解できるように、ビームスプリッタ2は、波長700nm以下の光を5%以上の透過率でさせるとともに、波長650nm以上の光を5%以上の反射率で反射させる。波長750nm以下の波長範囲の光は、「第1の波長成
分の光」の一例である。波長650nm以上の波長範囲の光は、「第2の波長成分の光」の一例である。
【0029】
ここで、ビームスプリッタ2は、波長650nmから750nmの光に対する反射率及び透過率が50%となっている。以下、本明細書において、波長650nmから750nmの範囲を「重複波長領域」とも称する。撮像装置100が近赤外光吸収基板6を備えない場合、重複波長領域の光は、ビームスプリッタ2を透過する光と、ビームスプリッタ2によって反射される光とが混在することになる。すなわち、重複波長領域の光は、ビームスプリッタ2を透過して可視光センサ3に入射するとともに、ビームスプリッタ2によって反射されて赤外光センサ4にも入射する。波長650nmから750nmの光は、「重複成分の光のうち少なくとも一部の光」の一例である。
【0030】
可視光センサ3に重複波長領域の光が入射すると、可視光センサ3によって生成される可視光像の画質が低下する虞がある。また、赤外光センサ4に重複波長領域の光が入射すると、赤外光センサ4によって生成される赤外光像の画質が低下する虞がある。本実施形態に係る撮像装置100は、このような画質の低下を抑制するため、近赤外光吸収基板6を採用する。
【0031】
<近赤外光吸収基板6の特性>
図3は、近赤外光吸収基板の透過特性を模式的に例示する図である。図3の縦軸は、近赤外光吸収基板6を透過する光の透過率(%)を例示する。図3の横軸は、近赤外光吸収基板6に入射する光の波長(nm)を例示する。
【0032】
図3を参照すると、近赤外光吸収基板6は、波長が680nmから750nmの範囲の光に対しては透過率が低く(例えば、5%以下)、波長が450nmから600nmの光に対しては透過率が高い(例えば、平均透過率80%以上)ことが理解できる。また、近赤外光吸収基板6は、波長が780nm以上の光に対する透過率が高いことも理解できる。なお、近赤外光吸収基板6の透過特性は被写体光の入射角には依存しない。そのため、近赤外光吸収基板6は、光軸Lに対して直交するように配置されてもよいし、光軸Lに対して斜めに配置されてもよい。なお、図3では、波長が680nmから750nmの範囲の光に対する透過率が5%以下(吸収率が95%以上)となる近赤外光吸収基板6の特性が説明されたが、近赤外光吸収基板6の特性はこれに限定されず、例えば、波長が650nmから800nmの範囲の光に対する透過率が5%以下であってもよい。近赤外光吸収基板6の特性としては、重複波長領域の範囲内の光に対する透過率が低い(例えば、5%以下、換言すれば吸収率95%以上)ものが好ましい。例えば、近赤外光吸収基板6は、重複波長領域のうちの100nm以上の波長範囲における光の吸収率が95%以上であることが好ましい。近赤外光吸収基板6は、「吸収体」の一例である。
【0033】
<近赤外光吸収基板6とビームスプリッタ2とを組み合わせた特性>
図4は、実施形態において、近赤外光吸収基板とビームスプリッタとを組み合わせたときの特性を模式的に示す図である。図4では、レンズ11の光軸L上において、ビームスプリッタ2とレンズ11との間に近赤外光吸収基板6を配置した場合(図1参照)を例示する。図4において、実線は近赤外光吸収基板6及びビームスプリッタ2を透過する透過率(%)を例示する。また、点線は近赤外光吸収基板6を透過してビームスプリッタ2で反射される反射率(%)を例示する。図4の横軸は、光の波長(nm)を例示する。
【0034】
図4を参照すると、近赤外光吸収基板6をレンズ11とビームスプリッタ2との間に配置したことで、重複波長領域の光について反射も透過も抑制されることが理解できる。すなわち、近赤外光吸収基板6をレンズ11とビームスプリッタ2との間に配置したことで、重複波長領域の光の入射が、可視光センサ3及び赤外光センサ4のいずれに対しても抑
制されることが理解できる。可視光センサ3に対する重複波長領域の光の入射が抑制されることで、可視光センサ3が生成する可視光像の画質の低下が抑制される。また、赤外光センサ4に対する重複波長領域の光の入射が抑制されることで、赤外光センサ4が生成する赤外光像の画質の低下が抑制される。
【0035】
(画像処理回路5による可視光像と赤外光像の合成)
夜間や照明の無い室内等の周囲が暗い環境において、可視光による撮影で鮮明な可視光像を得ることは困難である。そのため、周囲が暗い環境においては赤外光による撮影が行われることが多い。しかしながら、赤外光による撮影では被写体の色の情報を取得できないため、被写体が白黒で表現された白黒の撮像となる。撮像装置100では、可視光による可視光像を可視光センサ3が生成し、赤外光による赤外光像を赤外光センサ4によって生成する。そして、画像処理回路5では、可視光像と赤外光像とを合成することで、周囲が暗い環境においてもより鮮明な合成像を生成することができる。
【0036】
図5は、画像処理回路による可視光像と赤外光像の合成を例示する図である。図5では、可視光センサ3が生成した可視光像P1と赤外光センサ4が生成した赤外光像P2とが例示される。可視光像P1と赤外光像P2には、被写体P11、P12が映っている。図5では、撮像における被写体P11、P12の色の情報の有無を被写体P11、P12内のパターンの有無によって例示する。また、図5では、被写体P11、P12がはっきり映っているか否かを被写体P11、P12の境界線の色の濃さで例示する。
【0037】
可視光像P1では、被写体P11、P12の色の情報が取得されている一方で、被写体がはっきりとは映っていないことが理解できる。赤外光像P2では、被写体がはっきりと映っている一方で、被写体P11、P12の色の情報は取得できていないことが理解できる。画像処理回路5では、このような可視光像P1と赤外光像P2とを合成することで、色の情報を含むとともに、被写体P11、P12がはっきりと映った合成像P3を生成する。
【0038】
<実施形態の作用効果>
実施形態に係る撮像装置100では、レンズユニット1を介して入射した被写体光がビームスプリッタ2によって可視光と赤外光とに分離される。ビームスプリッタ2によって被写体光から分離された可視光は可視光センサ3に入射される。また、ビームスプリッタ2によって被写体光から分離された赤外光は赤外光センサ4に入射される。このような構成を採用することで、実施形態に係る撮像装置100は、複数のレンズユニット1を用いることなく、被写体の可視光像と赤外光像とを一度の撮影で取得することができる。
【0039】
可視光センサ3は、色の情報を含む可視光像を生成できる一方で、周囲が暗い環境で鮮明な撮像を生成することは難しい。また、赤外光センサ4は、周囲が暗い環境でも鮮明な撮像を生成できる一方で、生成する撮像は白黒となる。実施形態に係る撮像装置100は、可視光センサ3が生成する可視光像と赤外光センサ4が生成する赤外光像とを合成することで、周囲が暗い環境においても、より鮮明で色の情報を含む合成像を生成することができる。
【0040】
実施形態に係る撮像装置100では、ビームスプリッタ2は、レンズ11の光軸Lに対して斜めになるように設けられる。そのため、ビームスプリッタ2が反射した光は、レンズ11に逆入射することはない。そのため、実施形態に係る撮像装置100は、レンズ11に逆入射する迷光がなく、可視光センサ3及び赤外光センサ4が生成する撮像の画質低下を抑制できる。
【0041】
実施形態に係る撮像装置100は、レンズ11とビームスプリッタ2との間に近赤外光
吸収基板6が配置される。そのため、可視光センサ3及び赤外光センサ4のいずれに対しても重複波長領域の光の入射が抑制される。そのため、実施形態に係る撮像装置100は、可視光センサ3が生成する可視光像の画質の低下を抑制することができるとともに、赤外光センサ4が生成する赤外光像の画質の低下を抑制することができる。
【0042】
本実施形態では、上記の通り、可視光センサ3及び赤外光センサ4への重複波長領域の光の入射を近赤外光吸収基板6によって抑制した。そのため、可視光センサ3への重複波長領域の光の入射抑制にローパスフィルターを採用し、赤外光センサ4への重複波長領域の入射抑制にハイパスフィルターを採用する特許文献1に記載の技術と比較して、本実施形態に係る撮像装置は、光学系設計の容易さ、組立の容易さ、生産効率の高さ、製造コストの低さ等のメリットがある。
【0043】
(第1変形例)
図6は、第1変形例に係る撮像装置の一例を示す図である。図6に例示される撮像装置100aは、ビームスプリッタ2に代えてビームスプリッタ2aを備える点で、実施形態に係るに係る撮像装置100とは異なる。
【0044】
ビームスプリッタ2aは、ビームスプリッタ2aを形成するプリズムの各面のうち、赤外光センサ4と対向する面に光路長補正フィルタ23が設けられる。光路長補正フィルタ23は、入射した光を屈折させることで光路長を補正するフィルタである。光路長補正フィルタ23によって赤外光センサ4に入射させる赤外光の光路長を赤外光センサ4での撮像に好適な長さに補正することができる。
【0045】
(第2変形例)
図7は、第2変形例に係る撮像装置の一例を示す図である。図7に例示される撮像装置100bは、赤外光センサ4に代えて赤外光センサ4aを備える点で、実施形態に係る撮像装置100とは異なる。
【0046】
赤外光センサ4aは、赤外光センサ4よりも赤外光を検出する検出面が小さく形成された小型のセンサである。赤外線は可視光線よりも波長が長いことから、遠い被写体の撮影には可視光線よりも適していると考えられる。遠い被写体の撮影には画角は狭くてもよい。そのため、可視光線で近くの被写体を撮影し、赤外線で遠くの被写体を撮影する場合には、小型の赤外光センサ4aを採用可能である。また、赤外光センサ4aを採用することで、撮像装置100bの小型化も容易となる。
【0047】
(その他の変形例)
実施形態及び第1及び第2変形例では、光軸L上にビームスプリッタ及び可視光センサ3が配置された。そして、ビームスプリッタを透過した可視光が可視光センサ3に入射し、ビームスプリッタによって反射された近赤外光が赤外光センサ4に入射した。しかしながら、開示の技術はこのような構成に限定されない。開示の技術では、例えば、近赤外線反射するビームスプリッタに代えて可視光を反射するビームスプリッタを配置するとともに、可視光センサ3と赤外光センサ4の位置を入れ替えてもよい。すなわち、光軸L上に可視光を反射するビームスプリッタと赤外光センサ4が配置されてもよい。そして、可視光を反射するビームスプリッタを透過した近赤外光が赤外光センサ4に入射し、可視光を反射するビームスプリッタによって反射された可視光が可視光センサ3に入射してもよい。
【0048】
<適用例>
以上で説明した実施形態や各変形例に係る撮像装置は、様々なシステムに適用可能である。図8は、適用例を模式的に例示する図である。以下に説明する適用例では、第2変形
例に係る撮像装置100bを車両800の監視カメラとして採用する。図8の例では、2台の撮像装置100bが、車両800の進行方向を撮影するように設けられている。
【0049】
適用例では、可視光センサ3が可視光を用いて監視領域W1を撮影し、赤外光センサ4aが赤外光を用いて監視領域W1よりも遠方の監視領域W2を撮影する。上述の通り、赤外光は可視光よりも遠方の撮影に適しているため、適用例によれば、監視領域W1と監視領域W1よりも遠方の監視領域W2とを好適に監視することができる。
【0050】
図8では、車両800の車外の監視カメラとして撮像装置100bを採用したが、車両800の車内の監視に撮像装置100bを採用してもよい。例えば、車両800において、後部座席等の広い画角で撮影することが好ましい領域を撮像装置100bの可視光センサ3で撮影し、運転席のように狭い画角で撮影可能な領域を撮像装置100bの赤外光センサ4aで撮影することが考えられる。
【0051】
図8を参照して説明した適用例では、監視カメラとして第2変形例に係る撮像装置100bを採用したが、実施形態に係る撮像装置100及び第1変形例に係る撮像装置100aのいずれも監視カメラとして採用可能である。
【0052】
また、実施形態や各変形例に係る撮像装置では、周囲が暗い環境でも鮮明な赤外光像と色の情報を含む可視光像とを基に、暗い環境でも鮮明で色の情報を有する合成像を画像処理回路5が生成する。そのため、実施形態や各変形例に係る撮像装置を車両800の監視カメラとして採用することで、従来の赤外線カメラでは困難であった道路上の白線と黄色線との識別を高精度で実行できるようになる。
【0053】
(その他の適用例)
実施形態や各変形例に係る撮像装置は、暗い環境でも鮮明で色の情報を有する合成像を生成できる。そのため、老人の徘徊監視、線路内への侵入の監視、野生動物の撮影、山等で遭難した人物の探索等にも好適である。また、実施形態や各変形例に係る撮像装置をロボット掃除機に採用することで、暗い室内における掃除の精度を高めることもできる。さらに、実施形態や各変形例に係る撮像装置を顔認証用のカメラに採用することで、暗い環境でも高精度で顔認証を行うことができる。
【0054】
以上で開示した実施形態、変形例及び適用例はそれぞれ組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0055】
100、100a、100b・・・撮像装置
1・・・レンズユニット
11・・・レンズ
2、2a・・・ビームスプリッタ
21・・・近赤外線反射体
23・・・光路長補正フィルタ
3・・・可視光センサ
4、4a・・・赤外光センサ
5・・・画像処理回路
6・・・近赤外光吸収基板
【要約】
【課題】2種類の異なる波長範囲の光で撮影した被写体の画像の夫々を高精細に生成可能な撮像装置を提供する。
【解決手段】本撮像装置は、レンズと、レンズを介して入射する被写体からの光を可視光を含む第1の波長成分の光と非可視光を含む第2波長成分の光とに分光する分光体と、レンズと分光体との間に設けられ、第1の波長成分の光と第2波長成分の光の重複成分の光のうち少なくとも一部の光を吸収する吸収体と、第1の波長成分の光を受光する第1の撮像素子と、第2の波長成分の光を受光する第2の撮像素子と、を備えることを特徴とする。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8