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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-28
(45)【発行日】2022-02-07
(54)【発明の名称】空調室外機用防音システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 1/40 20110101AFI20220131BHJP
   F24F 13/24 20060101ALI20220131BHJP
   F24F 1/56 20110101ALN20220131BHJP
【FI】
F24F1/40
F24F13/24
F24F1/56
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021006169
(22)【出願日】2021-01-19
【審査請求日】2021-01-19
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年9月9日ウェブサイト https://www.yabushita-kikai.co.jp/files/hot-news/63/#tenpo における公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年10月1日ウェブサイト https://www.yabushita-kikai.co.jp/products/search/keyword=MOVFAG における公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年11月16日ウェブサイト https://www.yabushita-kikai.co.jp/files/hot-news/64/#sound における公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年10月1日株式会社ヤブシタにおける販売の開始
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和3年1月1日空調タイムス第42面における公開
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511014116
【氏名又は名称】株式会社ヤブシタ
(74)【代理人】
【識別番号】100110766
【弁理士】
【氏名又は名称】佐川 慎悟
(74)【代理人】
【識別番号】100165515
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 清子
(74)【代理人】
【識別番号】100169340
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 陽輔
(74)【代理人】
【識別番号】100195682
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 陽子
(74)【代理人】
【識別番号】100206623
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 智行
(72)【発明者】
【氏名】森 忠裕
【審査官】石田 佳久
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-186169(JP,A)
【文献】実開昭52-076301(JP,U)
【文献】特開2007-187324(JP,A)
【文献】実開昭58-155576(JP,U)
【文献】特開2001-355880(JP,A)
【文献】特開2014-190633(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111189128(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/40
F24F 13/24
F24F 1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
横方向に空気を吹き出す吹出口を備えたサイドフロー型の空調室外機に用いられる空調室外機用防音システムであって、
前記吹出口側の側面全体を被覆可能な平面形状に形成されているとともに、その背面側に吸音材を有する防音エアガイドと、
前記吹出口側の側面から所定の間隔を隔てた位置に、前記側面と略平行な状態で前記防音エアガイドを固定する一対の固定用側板と、
前記空調室外機を所定の高さ位置に載置して前記防音エアガイドの下端部と設置面との間に空気の通り道を形成する高置架台と、
を有しており、前記空調室外機における前記吹出口側の側面以外の面を被覆しないとともに
前記高置架台は骨組構造で構成されており、
前記高置架台における前記吹出口側の側面には、当該側面全体を被覆可能な平面形状に形成されているとともに、その背面側に吸音材を有する架台用防音パネルが直接取り付けられており、前記架台用防音パネルは、前記防音エアガイドよりも前記高置架台側に所定の間隔だけ奥まった位置に設けられている、空調室外機用防音システム。
【請求項2】
横方向に空気を吹き出す吹出口を備えたサイドフロー型の空調室外機に用いられる空調室外機用防音システムであって、
前記吹出口側の側面全体を被覆可能な平面形状に形成されているとともに、その背面側に吸音材を有する防音エアガイドと、
前記吹出口側の側面から所定の間隔を隔てた位置に、前記側面と略平行な状態で前記防音エアガイドを固定する一対の固定用側板と、
前記空調室外機を所定の高さ位置に載置して前記防音エアガイドの下端部と設置面との間に空気の通り道を形成する高置架台と、
を有しており、前記空調室外機における前記吹出口側の側面以外の面を被覆しないとともに
前記空調室外機は、上下方向に並列配置された二つの前記吹出口と、前記各吹出口に対して左右方向のいずれかに隣接配置された基盤部とを有しており、
前記防音エアガイドは、上方の吹出口を被覆する上方被覆部と、下方の吹出口を被覆する下方被覆部と、前記基盤部を被覆する基盤被覆部とに分割可能に構成されている、空調室外機用防音システム。
【請求項3】
前記防音エアガイドの上端部は前記空調室外機の上端部より上方に延出されており、かつ/または、前記防音エアガイドの下端部は前記空調室外機の下端部より下方に延出されている、請求項1または請求項2に記載の空調室外機用防音システム。
【請求項4】
前記固定用側板は、前記吹出口から吹き出された空気が左右方向に流れるのを遮蔽可能な平面形状に形成されている、請求項1から請求項のいずれかに記載の空調室外機用防音システム。
【請求項5】
前記吸音材は、ポリプロピレンおよびポリエチレンからなる合成繊維の積層体である、請求項1から請求項のいずれかに記載の空調室外機用防音システム。
【請求項6】
前記吹出口側の側面と前記防音エアガイドとの間隔は250mm以上600mm以下である、請求項1から請求項のいずれかに記載の空調室外機用防音システム。
【請求項7】
前記防音エアガイドの下端部と前記設置面との間隔は600mm以上である、請求項1から請求項のいずれかに記載の空調室外機用防音システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイドフロー型の空調室外機が発する騒音を低減するのに好適な空調室外機用防音システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、横方向に空気を吹き出す吹出口を備えたサイドフロー型の空調室外機が発する騒音を低減する方法として、空調室外機の全体を箱形のカバーで覆う方法が知られている。また、多数の空調室外機が密集して配置されているエリアでは、当該エリア全体を取り囲むように多数の防音パネルを並べて設置する方法なども知られている。
【0003】
例えば、特開2016-200385号公報には、室外機に対向して配置される防音板であって、底に穴を有する椀形状の集音部と、該集音部の底穴から延びる筒状の通気路とを有する防音デバイスが複数設けられた防音板が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-200385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した箱形のカバーを用いる方法では、空調室外機の吹出口や吸込口が覆われるため、圧力損失が大きくなり、空調性能が低下してしまうという問題がある。また、吹出口から吹き出された空気が吸込口側に回り込むという、いわゆるショートサイクルが発生し易く、空調室外機の熱交換効率を低下させてしまうという問題もある。さらに、空調室外機をメンテナンスするたびに、カバーの取り外しと再設置をしなければならないというメンテナンス上の問題もある。
【0006】
また、上述した防音パネルを用いる方法では、広い設置スペースを必要とする上、基礎工事を行わなければならない。このため、設置に係る設計や施工に手間や時間がかかり、設置費用が高額になってしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、空調室外機における圧力損失やショートサイクルの発生を抑制するとともに、容易かつ低コストで施工でき、メンテナンスのし易さを向上することができる空調室外機用防音システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る空調室外機用防音システムは、空調室外機における圧力損失やショートサイクルの発生を抑制するとともに、容易かつ低コストで施工でき、メンテナンスのし易さを向上するという課題を解決するために、横方向に空気を吹き出す吹出口を備えたサイドフロー型の空調室外機に用いられる空調室外機用防音システムであって、前記吹出口側の側面全体を被覆可能な平面形状に形成されているとともに、その背面側に吸音材を有する防音エアガイドと、前記吹出口側の側面から所定の間隔を隔てた位置に、前記側面と略平行な状態で前記防音エアガイドを固定する一対の固定用側板と、前記空調室外機を所定の高さ位置に載置して前記防音エアガイドの下端部と設置面との間に空気の通り道を形成する高置架台と、を有する。
【0009】
また、本発明の一態様として、空気が空調室外機の下方から後方へ流れるのを阻止してショートサイクルの抑制効果を向上するとともに、空調室外機を壁面近傍に設置する場合の防音効果を向上するという課題を解決するために、前記高置架台における前記吹出口側の側面には、当該側面全体を被覆可能な平面形状に形成されているとともに、その背面側に吸音材を有する架台用防音パネルが設けられており、前記架台用防音パネルは、前記防音エアガイドよりも前記高置架台側に所定の間隔だけ奥まった位置に設けられていてもよい。
【0010】
さらに、本発明の一態様として、空調室外機の吹出口側の側面における防音効果を向上するという課題を解決するために、前記防音エアガイドの上端部は前記空調室外機の上端部より上方に延出されており、かつ/または、前記防音エアガイドの下端部は前記空調室外機の下端部より下方に延出されていてもよい。
【0011】
また、本発明の一態様として、少人数でも簡単かつ迅速に施工するという課題を解決するために、前記空調室外機は、上下方向に並列配置された二つの前記吹出口と、前記各吹出口に対して左右方向のいずれかに隣接配置された基盤部とを有しており、前記防音エアガイドは、上方の吹出口を被覆する上方被覆部と、下方の吹出口を被覆する下方被覆部と、前記基盤部を被覆する基盤被覆部とに分割可能に構成されていてもよい。
【0012】
さらに、本発明の一態様として、多数の空調室外機が横方向に並べて配置されている場合でも、ショートサイクルの発生を効果的に抑制するという課題を解決するために、前記固定用側板は、前記吹出口から吹き出された空気が左右方向に流れるのを遮蔽可能な平面形状に形成されていてもよい。
【0013】
また、本発明の一態様として、防音エアガイドを軽量化し施工性を向上するという課題を解決するために、前記吸音材は、ポリプロピレンおよびポリエチレンからなる合成繊維の積層体であってもよい。
【0014】
さらに、本発明の一態様として、適度な防音性能を保持しつつ圧力損失を抑制するという課題を解決するために、前記吹出口側の側面と前記防音エアガイドとの間隔は250mm以上600mm以下であってもよい。
【0015】
また、本発明の一態様として、吹出口から吹き出された空気をスムーズに前方へガイドするという課題を解決するために、前記防音エアガイドの下端部と前記設置面との間隔は600mm以上であってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、空調室外機における圧力損失やショートサイクルの発生を抑制するとともに、容易かつ低コストで施工でき、メンテナンスのし易さを向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る空調室外機用防音システムの一実施形態を示す斜視図である。
図2】本実施形態の空調室外機用防音システムを示す右側面図である。
図3】本実施形態の空調室外機用防音システムを示す平面図である。
図4】本実施形態において、基盤被覆部のみを取り外した状態を示す図である。
図5図2の防音エアガイドにおけるX部分の拡大端面図である。
図6】実施例1において騒音の測定位置を示す図である。
図7】実施例1において、(a)防音エアガイドの上下幅が空調室外機の上下幅と略同サイズの場合、(b)防音エアガイドの上端部のみ空調室外機の上端部より上方に延出した場合、および(c)防音エアガイドの上下端部を空調室外機の上下端部より延出した場合の測定結果を示す図である。
図8】実施例2において、(a)空調室外機を壁面から離れた開放位置に設置した場合、(b)空調室外機を壁面近傍に設置した場合における測定結果を示す図である。
図9】実施例3において、(a)開口を有する固定用側板によって防音エアガイドを取り付けた空調室外機、(b)開口のない平板形状の固定用側板によって防音エアガイドを取り付けた空調室外機を示す側面図である。
図10】実施例3において、(a)開口を有する固定用側板を用いた場合の気流とその温度を示す平面図および側面図、(b)開口のない平板形状の固定用側板を用いた場合の気流とその温度を示す平面図および側面図である。
図11】サイドフロー型の空調室外機を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る空調室外機用防音システムの一実施形態について図面を用いて説明する。
【0019】
本実施形態の空調室外機用防音システム1は、図11に示すように、横方向に空気を吹き出す吹出口11を備えたサイドフロー型の空調室外機10に用いられるものである。本実施形態の空調室外機用防音システム1は、図1から図3に示すように、主として、吹出口11から吹き出された空気の流れをガイドしつつ防音する防音エアガイド2と、この防音エアガイド2を空調室外機10に固定する一対の固定用側板3,3と、空調室外機10を所定の高さ位置に載置する高置架台4と、この高置架台4に設けられる架台用防音パネル5と、を有している。以下、各構成について説明する。
【0020】
防音エアガイド2は、空調室外機10が発する騒音を低減するとともに、吹出口11から吹き出された空気をガイドしその流れる向きを調整するものである。本実施形態において、空調室外機10は、図11に示すように、上下方向に並列配置された二つの吹出口11,11と、各吹出口11に対して正面視右側に隣接配置された基盤部12とを有している。そして、これらから生じる騒音の発生源をカバーするように、防音エアガイド2は、上方の吹出口11を被覆する上方被覆部21と、下方の吹出口11を被覆する下方被覆部22と、基盤部12を被覆する基盤被覆部23とから構成されており、それぞれ分割可能に取り付けられている。
【0021】
このため、防音エアガイド2は、施工の際に少人数でも簡単かつ迅速に設置しうるとともに、空調室外機10のメンテナンスを行う際には、図4に示すように、基盤被覆部23のみを取り外して基盤部12への作業がし易くなっている。なお、防音エアガイド2は上記構成に限定されるものではなく、吹出口11側の側面全体を被覆可能な平面形状に形成されていればよい。また、空調室外機10は上記構成に限定されるものではなく、吹出口11に対して左右方向のいずれかに基盤部12が隣接配置されていてもよい。
【0022】
また、防音エアガイド2の背面側には、図5に示すように、騒音を吸音可能な吸音材24が設けられている。本実施形態では、吸音材24として、吸音可能な周波数帯をコントロール可能なポリプロピレンおよびポリエチレンからなる合成繊維の積層体が用いられている。他の吸音材24としては、グラスウール等を用いることもできるが、安全性の観点から完全に被覆する必要がある。これに対し、危険性のない本実施形態の吸音材24によれば、図5に示すように、防音エアガイド2の上下端部に設けられた折り返し部25に嵌め込むだけでよいため、防音エアガイド2が軽量化され施工性が向上する。
【0023】
さらに、本実施形態では、図2に示すように、防音エアガイド2の上端部は空調室外機10の上端部よりも上方に延出されているとともに、防音エアガイド2の下端部は空調室外機10の下端部よりも下方に延出されている。これにより、実施例1で後述するように、空調室外機10の上下幅と略同サイズの防音エアガイド2と比較して、空調室外機10の吹出口11側の側面における防音効果が向上する。
【0024】
なお、本実施形態において、防音エアガイド2の上端部は、空調室外機10の上端部より150mm上方に延出され、防音エアガイド2の下端部は、空調室外機10の下端部より150mm下方に延出されている。しかしながら、この寸法に限定されるものではなく、100mm以上200mm以下の範囲内であることが好ましい。100mm以上であれば、防音効果の向上度合を担保でき、200mm以下であればメンテナンス性を悪化させない程度に重量が抑制される。また、本実施形態では、防音エアガイド2の上端部および下端部の双方が延出されているが、いずれか一方のみが延出されていても防音効果が向上する。さらに、本実施形態では、防音エアガイド2の下端部に、防音エアガイド2の重みによって空調室外機10が倒れるのを防止するため一対の支持脚26,26を有しているが、重心位置によっては設ける必要はない。
【0025】
固定用側板3は、防音エアガイド2を空調室外機10に固定するものである。本実施形態において、固定用側板3は左右一対で構成されており、吹出口11から吹き出された空気が左右方向に流れるのを遮蔽可能な平面形状に形成されている。また、各固定用側板3は、防音エアガイド2の上方被覆部21と下方被覆部22のそれぞれに対応して上下に二分割されて取り付けられており、施工性が向上されている。
【0026】
各固定用側板3は、図2に示すように、後端辺を空調室外機10に固定するとともに、前端辺を防音エアガイド2を固定することにより、吹出口11側の側面から所定の間隔を隔てた位置に、当該側面と略平行な状態で防音エアガイド2を固定する。本実施形態では、吹出口11側の側面と防音エアガイド2との間隔が250mm以上600mm以下となるように、固定用側板3,3の前後幅が設定されている。上記間隔が250mm以上の場合、圧力損失の増大が抑制され、上記間隔が600mm以下の場合、高い防音性能が保持される。
【0027】
高置架台4は、空調室外機10を所定の高さ位置に載置するものである。本実施形態において、高置架台4は、図1および図2に示すように、フレーム構造で構成されており、防音エアガイド2の下端部と地面等の設置面との間に空気の通り道を形成する。また、高置架台4に空調室外機10を載置した際、防音エアガイド2の下端部と設置面との間隔が600mm以上となるように高置架台4の上下高さが設定されており、吹出口11から吹き出された空気をスムーズに前方へガイドするようになっている。
【0028】
架台用防音パネル5は、高置架台4に設けられ、防音効果を向上するものである。本実施形態において、架台用防音パネル5は、図1および図2に示すように、高置架台4における吹出口11側の側面に設けられ、当該側面全体を被覆可能な平面形状に形成されている。また、架台用防音パネル5は、防音エアガイド2よりも高置架台4側に所定の間隔だけ奥まった位置に設けられ、空気が空調室外機10の下方から後方へ流れるのを阻止してショートサイクルの抑制効果を向上するようになっている。
【0029】
また、本実施形態において、架台用防音パネル5の背面側には、防音エアガイド2と同様、吸音材24が設けられている。吸音材24としては、上述したポリプロピレンおよびポリエチレンからなる合成繊維の積層体が用いられており、架台用防音パネル5が軽量化されるとともに施工性が向上されている。
【0030】
つぎに、本実施形態の空調室外機用防音システム1の作用について説明する。
【0031】
本実施形態の空調室外機用防音システム1を用いて空調室外機10の騒音を低減する場合、まず、高置架台4上に空調室外機10を固定する。これにより、吹出口11の前方に取り付けられる防音エアガイド2の下方にも、空気の通り道が形成される。このため、空調室外機10における圧力損失やショートサイクルの発生が抑制される。また、降雪地域では、吹出口11や吸込口(図示せず)が雪に埋もれるのを防止する。
【0032】
つぎに、高置架台4における吹出口11側の側面(前面)に架台用防音パネル5を取り付ける。これにより、架台用防音パネル5は、防音エアガイド2よりも高置架台4側に所定の間隔だけ奥まった位置に設けられ、空気が空調室外機10の下方から後方へ流れるのを阻止するため、ショートサイクルの抑制効果が向上する。また、実施例2で後述するとおり、空調室外機10を建築物の壁面近傍に設置する場合の防音効果が向上する。なお、空調室外機10を壁面から離れた位置に設置する場合には、架台用防音パネル5を取り付けなくてもよい。
【0033】
つづいて、空調室外機10の吹出口11側の側面(前面)に防音エアガイド2を取り付ける。このとき、一対の固定用側板3,3を空調室外機10に固定し、当該各固定用側板3,3の前端部に防音エアガイド2を固定するだけで取り付けられるため、容易かつ低コストで施工される。また、防音エアガイド2を取り外さなくても空調室外機10と防音エアガイド2の隙間から確認作業が行えるため、メンテナンスもし易い。さらに、各固定用側板3,3の前後幅に応じて空調室外機10と防音エアガイド2との間に隙間が確保されるため、圧力損失が抑制される。
【0034】
また、本実施形態において、防音エアガイド2は、上方被覆部21と下方被覆部22と基盤被覆部23とに分割可能に構成されているため、少人数でも簡単かつ迅速に設置できる。また、メンテナンスを行う際には、図4に示すように、基盤被覆部23のみを取り外すこともできるため、基盤部12へのメンテナンス作業がし易い。
【0035】
空調室外機10を運転させると、吹出口11や基盤部12から主に低周波や中周波の騒音が発生するが、防音エアガイド2に設けられた吸音材24が当該騒音を低減する。また、防音エアガイド2の下端部と設置面との間に形成された空気の通り道が、吹出口11から吹き出された空気を空調室外機10の前方へと導いて流すため、ショートサイクルの発生が抑制される。
【0036】
また、空調室外機10を壁面近傍に設置した場合、当該壁面で反射された騒音が空調室外機10の上下左右から伝わる場合も多い。このような場合には、架台用防音パネル5に設けられた吸音材24が、空調室外機10の下方から前方へ抜けようとする騒音を低減する。
【0037】
さらに、本実施形態では、防音エアガイド2の上下端部が空調室外機10の上下端部よりも上下方向に延出されているため、空調室外機10の上下幅と略同サイズの防音エアガイド2と比較して、空調室外機10の吹出口11側の側面における防音効果がさらに向上する。
【0038】
また、本実施形態では、平板形状に形成された固定用側板3が、吹出口11から吹き出された空気が左右方向に流れるのを遮蔽する。このため、実施例3で後述するとおり、多数の空調室外機10が横方向に並べて配置されている場合でも、吸込口側に吸い込まれる空気の温度上昇を抑制し、ショートサイクルの発生を効果的に抑制する。
【0039】
以上のような本発明に係る空調室外機用防音システム1によれば、以下のような効果を奏する。
1.空調室外機10における圧力損失やショートサイクルの発生を抑制するとともに、容易かつ低コストで施工でき、メンテナンスのし易さを向上することができる。
2.空気が空調室外機10の下方から後方へ流れるのを阻止してショートサイクルの抑制効果を向上することができる。
3.空調室外機10の吹出口11側の側面における防音効果を向上することができる。
4.少人数でも簡単かつ迅速に施工することができる。
5.多数の空調室外機10が横方向に並べて配置されている場合でも、ショートサイクルの発生を効果的に抑制することができる。
6.防音エアガイド2を軽量化し施工性を向上することができる。
7.適度な防音性能を保持しつつ圧力損失を抑制することができる。
8.吹出口11から吹き出された空気をスムーズに前方へガイドすることができる。
【0040】
つぎに、本発明に係る空調室外機用防音システム1の具体的な実施例について説明する。なお、本発明の技術的範囲は、以下の実施例によって示される特徴に限定されるものではない。
【実施例1】
【0041】
本実施例1では、防音エアガイド2の上下幅が防音効果に及ぼす影響を確認する実験を行った。具体的には、本発明に係る空調室外機用防音システム1を取り付けた空調室外機10を壁面近傍および壁面から離れた開放位置に設置し、空調室外機10の吹出口11側の側面のうち、図6に示す測定点A1~A5のそれぞれにおいて騒音を測定した。その結果を図7に示す。なお、本実施例1では、高置架台4に架台用防音パネル5を取り付けて実験を行った。
【0042】
図7(a)は、防音エアガイド2の上下幅が空調室外機10の上下幅と略同サイズの場合であり、図7(b)は、防音エアガイド2の上端部のみ、空調室外機10の上端部より150mm上方に延出した場合であり、図7(c)は、防音エアガイド2の上端部を空調室外機10の上端部より150mm上方に延出し、防音エアガイド2の下端部を空調室外機10の下端部より150mm下方に延出した場合である。
【0043】
図7(b)に示すように、上端部のみを延出した防音エアガイド2によれば、空調室外機10を壁面近傍に設置した場合、測定点A1~A3において図7(a)と比較して5db以上の高い騒音低減効果が得られた。また、空調室外機10を壁面から離れた開放位置に設置した場合には、測定点A1,A2において5db以上の高い騒音低減効果が得られた。
【0044】
また、図7(c)に示すように、上下端部を延出した防音エアガイド2によれば、空調室外機10を壁面近傍に設置した場合、および壁面から離れた開放位置に設置した場合のいずれの場合にも、測定点A1~A3において図7(a)と比較して5db以上の高い騒音低減効果が得られた。
【0045】
以上の本実施例1によれば、防音エアガイド2の上端部または下端部のいずれか一方を空調室外機10の上下端部より延出した場合に防音効果が向上することが示された。また、防音エアガイド2の上端部および下端部の双方を空調室外機10の上下端部より延出した場合には、さらに防音効果が向上し、騒音の広がりが抑制されることが確認された。
【実施例2】
【0046】
本実施例2では、架台用防音パネル5が防音効果に及ぼす影響を確認する実験を行った。具体的には、防音エアガイド2とともに架台用防音パネル5を取り付けた空調室外機10と、防音エアガイド2のみを取り付け、架台用防音パネル5を取り付けていない空調室外機10のそれぞれを壁面近傍および壁面から離れた開放位置に設置し、空調室外機10の吹出口11側の側面のうち、図6に示す測定点A1~A5のそれぞれにおいて騒音を測定した。その結果を図8に示す。
【0047】
図8(a)に示すように、空調室外機10を壁面から離れた開放位置に設置した場合、架台用防音パネル5の有無によって、騒音の低減効果に大きな違いは見られなかった。一方、図8(b)に示すように、空調室外機10を壁面近傍に設置した場合には、測定点A3およびA4において、架台用防音パネル5がない場合よりも、架台用防音パネル5を取り付けた場合の方が1.2dbも高い騒音低減効果が得られた。
【0048】
以上の本実施例2によれば、高置架台4に架台用防音パネル5を取り付けた場合、空調室外機10を壁面近傍に設置する場合の防音効果が向上することが示された。
【実施例3】
【0049】
本実施例3では、固定用側板3が、吹出口11から吹き出された空気の気流に与える影響を解析した。具体的には、図9(a)に示すように、開口を有する固定用側板3によって防音エアガイド2を取り付けた空調室外機10と、図9(b)に示すように、開口のない平板形状の固定用側板3によって防音エアガイド2を取り付けた空調室外機10のそれぞれを横方向に六台並べて設置した場合における、気流の流れおよび温度をシミュレーションソフトによって解析した。その結果を図10に示す。なお、本実施例3では、高置架台4に架台用防音パネル5を取り付けた状態で解析を行った。
【0050】
図10(a)に示すように、開口を有する固定用側板3を用いた場合、互いに隣接する空調室外機10間において、吹出口11から吹き出された暖かい空気が混じり合い、高い温度を保持したまま吸込口へと流れており(最高吸い込み温度:59.8℃)、ショートサイクルの発生が確認された。一方、図10(b)に示すように、開口のない平板形状の固定用側板3を用いた場合、吹出口11から吹き出された暖かい空気は、他の空調室外機10から吹き出された空気と混じり合うことなく独立して防音エアガイド2の上下から流れ出し、50℃未満に冷却された状態で吸込口へと流れており(最高吸い込み温度:49.2℃)、ショートサイクルの発生が抑制されていた。
【0051】
以上の本実施例3によれば、開口のない平板形状の固定用側板3を用いた場合、多数の空調室外機10が横方向に並べて配置されている場合でも、吸込口側に吸い込まれる空気の温度上昇を抑制し、ショートサイクルの発生を効果的に抑制することが示された。
【0052】
なお、本発明に係る空調室外機用防音システム1は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
【0053】
例えば、上述した本実施形態では、吹出口11が二つある空調室外機10に対応させた空調室外機用防音システム1について説明したが、この構成に限定されるものではなく、吹出口11が一つしかない空調室外機10や、吹出口11が三つ以上ある空調室外機10にも対応可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 空調室外機用防音システム
2 防音エアガイド
3 固定用側板
4 高置架台
5 架台用防音パネル
10 空調室外機
11 吹出口
12 基盤部
21 上方被覆部
22 下方被覆部
23 基盤被覆部
24 吸音材
25 折り返し部
26 支持脚
【要約】
【課題】 空調室外機における圧力損失やショートサイクルの発生を抑制するとともに、容易かつ低コストで施工でき、メンテナンスのし易さを向上することができる空調室外機用防音システムを提供する。
【解決手段】 吹出口11側の側面全体を被覆可能な平面形状に形成されているとともに、その背面側に吸音材24を有する防音エアガイド2と、吹出口11側の側面から所定の間隔を隔てた位置に、当該側面と略平行な状態で防音エアガイド2を固定する一対の固定用側板3と、空調室外機10を所定の高さ位置に載置して防音エアガイド2の下端部と設置面との間に空気の通り道を形成する高置架台4と、を有する。
【選択図】 図1
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図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11