(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-28
(45)【発行日】2022-02-07
(54)【発明の名称】宅配システムと宅配方法
(51)【国際特許分類】
B65G 61/00 20060101AFI20220131BHJP
G06Q 50/28 20120101ALI20220131BHJP
【FI】
B65G61/00 550
G06Q50/28
(21)【出願番号】P 2021086489
(22)【出願日】2021-05-21
【審査請求日】2021-06-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521222349
【氏名又は名称】株式会社Nice Eze
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】松浦 学
【審査官】福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/118692(WO,A1)
【文献】特開2020-035371(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 61/00
G06Q 50/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザに商品を宅配する宅配システムであり、
前記宅配システムは、宅配ボックスおよび前記商品を格納するための複数のコンテナを含み、
前記複数のコンテナは、互いに同一の形状と大きさを有し、
前記宅配ボックスは、互いに同一の形状と大きさを有する複数のロッカーを備え、
前記複数のロッカーの各々は、前記複数のコンテナから任意に選択される一つを選択的に収容するように構成さ
れ、
前記複数のロッカーの各々は、排出制御機構を備え、
前記排出制御機構は、
前記コンテナを前記ロッカーから抜き取ることを禁止する第1のモード、または
前記コンテナを前記ロッカーから抜き取ることを許容し、かつ、前記ロッカーに前記コンテナをはめ込むことを許容する第2のモードで動作するように構成される、宅配システム。
【請求項2】
前記宅配ボックスは、
前記宅配ボックスを制御する制御部、および
前記ユーザの端末に格納され、前記宅配ボックスを操作するための認証鍵を読み取るように構成される第1のリーダをさらに備え、
前記制御部は、前記認証鍵を前記第1のリーダが読み取った際、前記認証鍵に対応する前記コンテナが前記複数のロッカーのいずれかに収容されている場合、前記排出制御機構を前記第1のモードで動作させるように構成される、請求項
1に記載の宅配システム。
【請求項3】
前記複数のコンテナの各々は、排出防止機構をさらに有し、
前記排出防止機構は、
前記排出制御機構が前記第1のモードで動作する際、前記排出制御機構と協働して前記コンテナを前記ロッカーから抜き取ることを禁止し、
前記排出制御機構が前記第2のモードで動作する際、前記コンテナを前記ロッカーから抜き取ることを許容し、かつ、前記ロッカーに前記コンテナをはめ込むことを許容するように構成される、請求項
1に記載の宅配システム。
【請求項4】
前記複数のコンテナの各々は、それぞれを特定するコンテナ識別子が格納または記載されたタグをさらに有する、請求項1に記載の宅配システム。
【請求項5】
前記複数のロッカーの各々は第2のリーダをさらに備え、
前記第2のリーダは、前記タグから前記コンテナ識別子を読み取るように構成される、請求項
4に記載の宅配システム。
【請求項6】
前記宅配ボックスは、送受信部をさらに備え、
前記制御部は、前記送受信部を介して解除信号を受信すると、前記排出制御機構を第2のモードで動作させるように構成される、請求項
2に記載の宅配システム。
【請求項7】
前記複数のコンテナの各々は、本体と前記本体に接続される蓋を有し、
前記蓋は、
前記本体に対して固定される固定部、および
ヒンジによって前記固定部に接続され、前記ヒンジを中心に回転する可動部を有し、
前記排出防止機構は、前記排出制御機構が前記第1のモードで動作する際、前記コンテナを前記ロッカーから最大限引き出した時に前記固定部の一部が前記ロッカーから露出し、前記固定部の他の一部が前記ロッカー内に位置するように構成される、請求項
3に記載の宅配システム。
【請求項8】
前記複数のコンテナの各々は、前記蓋の内側に鏡を有する、請求項
7に記載の宅配システム。
【請求項9】
宅配ボックスと商品格納用の複数のコンテナを利用する宅配方法であり、前記宅配方法は、
ユーザに宅配する商品を、前記複数のコンテナから選択される第1のコンテナに格納すること、
前記商品が格納された前記第1のコンテナを、前記宅配ボックスが有する複数のロッカーから選択される第1のロッカーにはめ込むこと、
前記商品が取り出されて前記第1のロッカーに収容された状態の前記第1のコンテナを前記第1のロッカーから抜き取ること、および
抜き取られた前記第1のコンテナに、前記商品とは異なる商品を格納することを含み、
前記複数のコンテナは、互いに同一の形状と大きさを有し、
前記複数のロッカーは、互いに同一の形状と大きさを有し、
前記複数のロッカーの各々は、前記複数のコンテナから任意に選択される一つを選択的に収容するように構成さ
れ、
前記複数のロッカーの各々には排出制御機構が設けられ、
前記排出制御機構は、
前記コンテナを前記ロッカーから抜き取ることを禁止する第1のモード、または
前記コンテナを前記ロッカーから抜き取ることを許容し、かつ、前記ロッカーに前記コンテナをはめ込むことを許容する第2のモードで動作するように構成される、宅配方法。
【請求項10】
前記商品は、前記第1のコンテナに直接または可撓性の袋に収容された状態で格納される、請求項
9に記載の宅配方法。
【請求項11】
前記商品を前記第1のコンテナから取り出すことは、前記排出制御機構が前記第1のモードで動作する際に行われる、請求項
9に記載の宅配方法。
【請求項12】
前記第1のコンテナを前記第1のロッカーにはめ込むこと、および前記第1のコンテナを前記第1のロッカーから抜き取ることは、前記排出制御機構が前記第2のモードで動作する際に行われる、請求項
9に記載の宅配方法。
【請求項13】
前記第1のコンテナを前記第1のロッカーにはめ込む前に、前記複数のコンテナから選択される空の第2のコンテナを前記第1のロッカーから抜き取ることをさらに含む、請求項
9に記載の宅配方法。
【請求項14】
前記排出制御機構が前記第2のモードで動作する状態において、前記第1のコンテナを前記第1のロッカーにはめ込む前に、前記複数のコンテナから選択され、空の第2のコンテナを前記第1のロッカーから抜き取ることをさらに含む、請求項
9に記載の宅配方法。
【請求項15】
前記ユーザの端末に、前記宅配ボックスを操作するための認証鍵を送信することをさらに含む、請求項
9に記載の宅配方法。
【請求項16】
前記宅配ボックスは、前記宅配ボックスを操作するための認証鍵を読み取るように構成される第1のリーダをさらに備え、
前記宅配方法はさらに、
前記ユーザの端末に、前記認証鍵を送信すること、および
前記認証鍵を前記第1のリーダが読み取った際、前記認証鍵に対応する前記コンテナが前記複数のロッカーのいずれかに収容されている場合に前記排出制御機構を前記第1のモードで動作させることを含む、請求項
9に記載の宅配方法。
【請求項17】
前記商品が格納された前記第1のコンテナを前記第1のロッカーにはめ込んだ後、宅配完了通知を前記宅配ボックスから直接または間接的に前記ユーザの端末に送信することをさらに含む、請求項
9に記載の宅配方法。
【請求項18】
前記第1のロッカーは、前記ユーザによって付された前記複数のロッカーに対する優先順位に従って選択される、請求項
9に記載の宅配方法。
【請求項19】
前記商品を取り出すことを前記ユーザに催促することをさらに含む、請求項
9に記載の宅配方法。
【請求項20】
前記催促は、前記複数のロッカーに収容された前記複数のコンテナの総数に対する空の前記コンテナの数が30%以下のときに行われる、請求項
19に記載の宅配方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態の一つは、商品を宅配するためのシステムと方法に関する。例えば、本発明の実施形態の一つは、宅配ボックスおよび宅配ボックス専用のコンテナを含む宅配システムと宅配方法に関する。
【背景技術】
【0002】
商品をユーザへ宅配する際、ユーザが不在の場合がある。この場合、例えば商品を宅配ボックスに搬入し、商品の搬入をユーザに通知することで、ユーザは任意の時間に商品を宅配ボックスから取り出すことができる。これにより、再度宅配するための負担とコストが軽減されるとともに、ユーザも宅配のために待機する必要がなくなるため、時間的な制約から解放される。また、商品の盗難や、個人情報の流出も防止することができる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態の一つは、商品をユーザへ宅配するための新規なシステムと方法を提供することを課題の一つとする。あるいは、本発明の実施形態の一つは、宅配事業者や宅配員、ユーザの負担を低減し、低コストで商品を宅配可能なシステムと方法を提供することを課題の一つとする。あるいは、本発明の実施形態の一つは、宅配において発生するゴミを低減することで環境に対する負荷が軽減された宅配システムと宅配方法を提供することを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態の一つは、ユーザに商品を宅配する宅配システムである。この宅配システムは、宅配ボックスおよび商品を格納するための複数のコンテナを含む。複数のコンテナは、互いに同一の形状と大きさを有し、宅配ボックスは、互いに同一の形状と大きさを有する複数のロッカーを備える。複数のロッカーの各々は、複数のコンテナから任意に選択される一つを選択的に収容するように構成される。
【0006】
本発明の実施形態の一つは、宅配ボックスと商品格納用の複数のコンテナを利用する宅配方法である。この宅配方法は、ユーザに宅配する商品を、複数のコンテナから選択される第1のコンテナに格納すること、商品が格納された第1のコンテナを、宅配ボックスが有する複数のロッカーから選択される第1のロッカーにはめ込むこと、商品が取り出されて第1のロッカーに収容された状態の第1のコンテナを第1のロッカーから抜き取ること、および抜き取られた第1のコンテナに、上記商品とは異なる商品を格納することを含む。複数のコンテナは、互いに同一の形状と大きさを有し、複数のロッカーは、互いに同一の形状と大きさを有する。複数のロッカーの各々は、複数のコンテナから任意に選択される一つを選択的に収容するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態に係る宅配システムの概念図。
【
図2】本発明の実施形態に係る宅配システムの概念図。
【
図3】本発明の実施形態に係る宅配システムの宅配ボックスの模式的斜視図。
【
図4】本発明の実施形態に係る宅配システムの宅配ボックスのロッカーの模式的正面図と上面図。
【
図5】本発明の実施形態に係る宅配システムの宅配ボックスのロッカーの模式的側面図。
【
図6】本発明の実施形態に係る宅配システムの宅配ボックスの模式的上面図と側面図。
【
図7】本発明の実施形態に係る宅配システムの宅配ボックスのブロック図。
【
図8】本発明の実施形態に係る宅配システムの宅配ボックスの模式的斜視図。
【
図9】本発明の実施形態に係る宅配システムのコンテナの模式的上面図と斜視図。
【
図10】本発明の実施形態に係る宅配システムのコンテナの模式的正面図と上面図。
【
図11】本発明の実施形態に係る宅配システムの概念図。
【
図12】本発明の実施形態に係る宅配方法を説明するためのフローチャート。
【
図13】本発明の実施形態に係る宅配方法を説明するための概念図。
【
図14】本発明の実施形態に係る宅配方法を説明するための概念図。
【
図15】本発明の実施形態に係る宅配方法を説明するための模式的斜視図。
【
図16】本発明の実施形態に係る宅配方法を説明するためのフローチャート。
【
図17】本発明の実施形態に係る宅配方法を説明するための模式的斜視図。
【
図18】本発明の実施形態に係る宅配方法を説明するための概念図とフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の各実施形態について、図面などを参照しつつ説明する。ただし、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0009】
図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状などについて模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。本明細書と各図において、既出の図に関して説明したものと同様の機能を備えた要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略することがある。同一、あるいは類似する複数の構造を総じて表す際にはこの符号が用いられ、これらを個々に表す際には符号の後にハイフンと自然数が加えられる。また、一つの構造の一部を示す際には、符号の後に小文字のアルファベットを付すことがある。
【0010】
1.宅配システムの概要
図1に本発明の実施形態の一つである宅配システム100の概念図を示す。宅配システム100は、ユーザが端末102を用い、ネットワーク110を介する電子商取引における商品・サービスの提供者(以下、単に売主と呼ぶ。)104に発注した商品・サービス(以下、商品とサービスを総じて商品と記す。)を宅配ボックス120へ配送することでユーザに配達するためのシステムである。商品の発注は、ネットワーク110を介して売主104に直接行ってもよく、ユーザや売主104のために第三者(プラットフォーム提供者)から提供された電子商取引プラットフォーム(以下、単にプラットフォームと記す。)を通じて行ってもよい。前者は自社サイト型の電子商取引、後者はモール型の電子商取引と呼ばれる。以下、自社サイト型の電子商取引を主な例として説明を行うが、モール型の電子商取引においても本宅配システム100を適用することができる。ここで、ネットワーク110とはインターネットやワイドエリアネットワークなどの通信ネットワークであり、各種通信端末やサーバ間の通信を媒介する。
【0011】
商品の種類に制約はなく、後述するコンテナに格納可能な大きさであれば、任意の商品を扱うことができる。例えば、衣類、靴、書籍、文具、玩具、食品、化粧品など、多種多様な商品を宅配システム100で扱うことができる。また、商品はレンタル品(レンタルシューズ、レンタル衣装、レンタルバッグなど)でもよく、試供品(試供化粧品や試供食品など)でもよい。
【0012】
より具体的には、宅配システム100において、ユーザは端末102を操作し、ネットワーク110を介して売主104のサーバにアクセスする。これにより、ユーザは、売主104のサーバが構築するサイト上で所望の商品を選び、発注することができる。発注が確定すると、売主104は、そのサーバを介し、商品が保管されている物流倉庫106のサーバへアクセスし、注文された商品の内容と配送に関する情報を通知する。配送に関する情報には、ユーザを特定する識別子(ユーザID)、商品の発送先(住所、ユーザが指定した宅配ボックス120など)、ユーザが希望する配送日時などが含まれてもよい。
【0013】
その後、物流倉庫106のサーバ上において商品の在庫状況を確認するとともに、宅配ボックス120が有するロッカーの空き状況が確認される。宅配ボックス120は、ユーザが指定したものでもよく、ユーザの指定がない場合には、複数の宅配ボックス120からユーザにとって最も利便性の高い宅配ボックス120がユーザの住所などに基づいて物流倉庫106のサーバによって選択される。さらに、物流倉庫106のサーバにより、宅配のための車両の手配や車両の積載状況が確認される。以上の情報、すなわち、商品の在庫状況、ロッカーの空き状況、および車両の手配や積載状況を考慮し、物流倉庫106のサーバからユーザの端末102および/または売主104のサーバへ宅配情報が送信される。宅配情報には、商品の配送日時とともに、ユーザが宅配ボックス120を操作するための認証鍵が含まれる。宅配情報にはさらに、商品が搬入される宅配ボックス120を特定するための識別子(ボックスID)とロッカーを特定するための識別子(ロッカーID)が含まれてもよい。認証鍵は、二次元コードやバーコードとして端末102の表示画面上に表示できるように構成されてもよく、あるいはパスワード若しくは暗証番号であってもよい。
【0014】
その後、商品が物流倉庫106から直接、または仕分け拠点(ハブ)108を経由して宅配ボックス120へ配送される。ユーザは認証鍵を用いて宅配ボックス120を操作し、商品を受け取ることができる。
【0015】
なお、宅配ボックス120の選択やロッカーの空き状況の確認などの宅配ボックス120の管理、および車両の手配や車両の積載状況の確認を含む配送管理は、物流倉庫106を管理するサーバによって行われてもよく、それとは異なるサーバ(例えば、商品の輸送・配送を担当する事業者のサーバ)によって行われてもよい。あるいは、宅配ボックス120の管理と配送管理がそれぞれ異なるサーバによって行われてもよい。また、商品は、各売主104が管理する倉庫で管理され、当該倉庫からハブ108への輸送または宅配ボックス120への配送が行われてもよい。
【0016】
ここで、
図2に示すように、売主104や商品の種類に関わらず、商品は物流倉庫106(または各売主104が管理する倉庫。以下同じ。)内で専用コンテナ(以下、単にコンテナと呼ぶ。)170に格納される。詳細は後述するが、コンテナ170は全て同一の形状と大きさを有し、商品はコンテナ170に格納された状態で物流倉庫106から宅配ボックス120に直接またはハブ108を経由して輸送、配送される。一方、各宅配ボックス120は複数のロッカーを備え、複数のロッカーの各々は、コンテナ170が一つまたは複数収容されるように構成される。前者の場合、各ロッカーは一つのコンテナ170を選択的に、すなわち、一つのコンテナ170のみを収容するように構成され、一つのロッカーに複数のコンテナ170が収容されることはない。複数のロッカーの各々は、同一の形状と大きさを有してもよく、あるいは、一つの宅配ボックス120には、一つのロッカー内に収容できるコンテナ170の数が異なるよう、異なる大きさと形状のロッカーが複数備えられていてもよい。
【0017】
商品が格納されたコンテナ(例えば、
図2におけるコンテナ170-1)は、宅配ボックス120のロッカーにはめ込まれ、これにより、商品の配送が完了する。ユーザは、認証鍵を用いて商品が格納されたコンテナ170-1が収容されたロッカーを開き、コンテナ170-1内の商品を取り出す。この時、空になったコンテナ170-1は、ユーザが一時的または恒久的に引き取ることなく、ロッカーに戻される。コンテナ170-1の配送時にロッカーに収容されている別の空のコンテナ(例えば、
図2におけるコンテナ170-2)は、コンテナ170-1の配送時、配送員によって引き取られ、物流倉庫106へ回収される。また、商品が取り出されて空になったコンテナ170-1は、他のコンテナ170が配送される際、配送員によって回収される。回収されたコンテナ170は、他の商品の輸送や配送に再利用される。
【0018】
このように、宅配システム100には、宅配ボックス120と複数のコンテナ170が含まれる。宅配システム100には、売主104のサーバや、物流倉庫106を管理するサーバがさらに含まれてもよい。また、宅配システム100には、コンテナ170を輸送・配送する事業者によって管理されるサーバが含まれてもよい。さらに、コンテナ170を輸送・配送する事業者によって管理されるサーバとともに、宅配ボックスを管理するサーバが宅配システム100に含まれてもよい。
【0019】
なお、宅配システム100では、商品の配送地域を限定してもよい。例えば、大都市のみ、または主要都市のみを配送地域に指定し、他の地域では宅配システム100を適用しなくてもよい。ユーザの大部分は大都市とその近郊への商品配送を希望している現実を踏まえると、このように宅配システム100の適用地域を限定しても、十分な顧客満足度を得ることができる。
【0020】
以下に詳述するように、宅配システム100では、商品はコンテナ170に直接、または可撓性の袋に収容された状態で格納され、ユーザはコンテナ170内に格納された商品のみ、または袋に収容された状態の商品を取り出す。このため、商品の宅配に頻繁に用いられる段ボールなどの梱包材を用いる必要がない。また、梱包材の中で大きな体積を占める緩衝材を用いる必要性が無くなる、または大きく低下する。したがって、梱包材や緩衝材を折り畳んだり廃棄したりする負担が消失または軽減されるだけでなく、梱包材や緩衝材に由来するゴミの量を大幅に削減することができる。このことは、環境汚染の防止や脱炭素社会の確立に寄与すると言える。
【0021】
宅配システム100では、コンテナ170はユーザに直接配送されず、宅配ボックス120のロッカーに配送される。また、各コンテナ170には識別子(コンテナID)が付され、コンテナIDはボックスIDやロッカーIDと関連付けられるため、ユーザは認証鍵を用いるだけで発注した商品が格納されたコンテナ170にアクセスすることができる。このため、再配送に必要な人的資源やコストが削減され、ユーザも配送による時間的制約を受けない。また、配送先の個人情報(住所や氏名)などが記載されたラベルをコンテナ170に貼り付ける必要がないことから、宅配システム100は、宅配事業者の負担軽減による配送コストの削減だけでなく、個人情報の漏洩防止にも貢献する。
【0022】
以下、宅配システム100を構成する宅配ボックス120とコンテナ170について、詳細に説明する。
【0023】
2.宅配ボックス
2-1.構成
宅配ボックス120の模式的斜視図を
図3に示す。宅配ボックス120の全体的な形状に制約はなく、設置場所の環境、予想されるユーザ数などによって任意に決定すればよい。宅配ボックス120は、基本的な構成として、コンテナ170を収容する空間に相当するロッカー124を提供する筐体122、ロッカー124の扉126、モニター128、および第1のリーダ130を備える。宅配ボックス120はさらに、任意の構成として、音声出力部140を備えてもよい。上述したように、各ロッカー124には、同一の形状と大きさを備えるコンテナ170を一つ収容することができる。この場合、各ロッカー124の大きさも同一であり、形状も同一とすることができるので、ロッカー124と扉126の数は、筐体122とコンテナ170の大きさと形状によって決定すればよい。なお、以下の説明では、各ロッカー124に一つのコンテナ170が選択的に収容される場合について説明するが、一つのロッカー124に複数のコンテナ170が収容できるように宅配ボックス120を構成してもよい。
【0024】
宅配ボックス120の設置場所も任意である。例えば、マンションなどの集合住宅内やその付近、コンビニエンスストアやスーパー、大型ショッピングセンター、百貨店などの商業施設内やその近辺、鉄道の駅舎内やバス停などの公共交通機関関連の施設内やその付近、駐車場、スポーツ競技場や映画館、動物園、テーマパークなどの娯楽施設内やその付近などに宅配ボックス120を設置すればよい。
【0025】
モニター128は、筐体122に組み込まれ、ユーザや配送員に対する出力デバイスとして機能する。モニター128は、例えば液晶表示装置や電界発光表示装置などで構成される。モニター128は入力部を備えてもよく、入力部としては、例えばモニター128上に設けられるタッチパネル(図示しない)などが挙げられる。図示しないが、入力部としてキーボード、テンキーなどを筐体122に組み込んでもよい。
【0026】
第1のリーダ130は、二次元コードやバーコードを読み取ることができる光学式のスキャナでもよく、あるいは短距離無線通信を利用するリーダ(RFリーダ)でもよい。
【0027】
図4(A)と
図4(B)に一つのロッカー124の模式的正面図と上面図を示す。これらの図では、扉126が開かれた状態が示されている。各ロッカー124は、一つのコンテナ170が収容される形状を備える。このため、コンテナ170が収容された状態では、各ロッカー124内の空間のほぼ全て(例えば、この空間の75%以上100%以下、80%以上100%以下、90%以上100%以下、または95%以上100%以下)がコンテナ170によって占められ、コンテナ170とその内部空間を除き、商品を収容するための十分な空間を持たない。ロッカー124には、任意の構成として、ロック136、ガイド138、第2のリーダ132、センサースイッチ142、排出制御機構134などが設けられていてもよい。
【0028】
扉126は、各ロッカー124の間口を開閉するための部材であり、ヒンジによって筐体122に取り付けられる。扉126は、全体が非透明でもよく、一部が透明でもよい。扉126の少なくとも一部を透明にすることで、ロッカー124の内部を目視で確認することができる。ロック136は扉126を機械的に施錠・解錠するための機構であり、扉126を閉めることで自動的に施錠されるオートロック機能を備えてもよい。ロック136を用いることで商品や商品が格納されたコンテナ170の盗難を防止することができる。本明細書では、透明とは、可視光の少なくとも一部を透過する性質または状態を指し、非透明とは、可視光を通過しない性質または状態を指す。
【0029】
ガイド138は、コンテナ170の底面やロッカー124の上面を保護するとともに、コンテナ170のロッカー124内での位置を固定するために設けられる。ガイド138は、ロッカー124の奥行き方向(図中、y方向)に延伸する凸部であり、ガイド138は一つまたは複数設けられてもよい。後述するコンテナ170にガイド138と重なるトレンチ186を噛み合わせることにより、コンテナ170のロッカー124内での位置が固定される。図示しないが、ガイド138に替え、コンテナ170の位置を固定するための他の機構を設けてもよい。例えば、ロッカー124の側面に一対のレールを設け、コンテナ170の側面にレール内をスライドするための機構(ベアリング、車輪など)を設けてもよい。
【0030】
センサースイッチ142は、コンテナ170がロッカー124の所定の位置まで差し込まれたか否かを判断するためのスイッチであり、センサースイッチ142を用いることで、コンテナ170の存否や、正常な位置に収容されたかどうかを判断することができる。例えば
図5の模式的側面図に示すように、ロッカー124にコンテナ170をはめ込み、y方向に押すと、センサースイッチ142が倒れて筐体122内に押し込まれる。この動きを感知することで、コンテナ170の有無や、コンテナ170が正常に収容されたか否かを判断することができる。なお、センサースイッチ142の構成にはこれに限られない。上述した構造とは異なる構造を有する機械的スイッチを用いてもよく、あるいは光センサを用いてもよい。
【0031】
第2のリーダ132は、コンテナ170に設けられるタグ(後述)に格納および/または記載された、コンテナIDを読み取るために設けられ、例えばRFリーダ、バーコードスキャナ、あるいは二次元コードスキャナなどを第2のリーダ132として用いることができる。第2のリーダ132の位置は、コンテナ170上のタグの位置によって適宜設定すればよい。
【0032】
排出制御機構134は、一定の条件下においてコンテナ170が完全にロッカー124から抜き取られる(排出される)ことを防止することでコンテナ170を部分的に引き出すことを許容するとともに、別の条件下では、コンテナ170をロッカー124から抜き取り、ロッカー124に差し込むことを許容するインターロックである。すなわち、排出制御機構134は二つのモードで動作することができ、一方のモード(第1のモード)ではコンテナ170が完全にロッカー124から抜き取られることを禁止し、他方のモード(第2のモード)ではロッカー124に対してコンテナ170を可逆的に排出・挿入することを許容する。
【0033】
排出制御機構134の構成は任意であり、上述した機能が発現できれば、どのような構成を採用してもよい。例えば、
図6(A)と
図6(B)の模式的上面図と側面図でそれぞれ示されるように、第1のモードにおいて、コンテナ170に排出防止機能として設けられるストッパ180(後述)がy方向において重なり、第2のモードにおいてストッパ180とy方向において重ならないように回転(
図6(B)中の矢印参照。)または移動可能な構造を有してもよい。
【0034】
音声出力部140はスピーカーであり、ユーザや配送員へ情報を提供するための音声や警告音、モニター128上に映し出される映像と調和した音声や音楽などを出力するために設けられる。
【0035】
図7に宅配ボックス120の機能ブロック図を示す。宅配ボックス120は、筐体122内に配置される制御部144を備え、さらにモニター128、第1のリーダ130、第2のリーダ132、排出制御機構134、ロック136、音声出力部140、送受信部150、メモリ部146、およびセンサースイッチ142などを含む。制御部144によって上記各構成要素が制御されることで、宅配ボックス120が制御される。制御部144にはバッテリ148が接続されていてもよい。
【0036】
制御部144は中央演算ユニット(CPU)などのプロセッサを備え、メモリ部146に格納されるソフトウェアを動作させ、宅配ボックス120の全体の機能を制御する。制御部144は、ソフトウェアの命令に従い、モニター128、第1のリーダ130、第2のリーダ132、排出制御機構134、ロック136、音声出力部140、センサースイッチ142、送受信部150などを制御する。
【0037】
メモリ部146は、フラッシュメモリやソリッドステートドライブなどの半導体メモリ、あるいはハードディスクドライブなどの磁気メモリでもよい。メモリ部146には、上記ソフトウェアだけでなく、ロッカー124の使用状況が適宜格納されてもよく、配送されるコンテナ170のコンテナIDやそれに関連付けられたボックスIDやロッカーIDが随時格納されてもよい。送受信部150は、ネットワーク110を介して売主104のサーバや物流倉庫106を管理するサーバ、ユーザの端末102などと通信する機能を有するユニットである。例えば、宅配ボックス120の制御部144は、センサースイッチ142からの信号に基づいて定期的にロッカー124の空き情報を取得し、得られた情報を送受信部150を介して物流管理サーバ107へ送信するように構成されもよい。バッテリ148は、リチウムイオン電池などの充放電可能な二次電池であり、外部商用電源と接続できるように構成される。バッテリ148は、外部商用電源が利用できない環境下においても制御部144へ電源を供給し、宅配ボックス120の機能を維持する機能を有する。
【0038】
2-2.変形例
宅配ボックス120の構成は上述した構成に限られない。例えば
図8の模式的斜視図に示すように、移動可能なように宅配ボックス120を構成してもよい。具体的には、車輪154を有する台座152上に配置され、牽引治具156を介してトラックや乗用車などの輸送手段によって牽引できるように宅配ボックス120を構成してもよい。あるいは、図示しないが、車輪154を駆動するための原動機を筐体122内または台座152上に配置し、原動機から供給される動力を用いて宅配ボックス120を自走させてもよい。移動機能を付与することにより、多くのユーザが一時的に集中する大型商用施設や娯楽施設(例えば、競技場やコンサート会場、テーマパークなど)内やその付近に適時に宅配ボックス120を搬送することができる。このため、娯楽施設などで購入した土産品の発送など、ユーザのニーズに対して柔軟に適時に対応することができる。
【0039】
あるいは、コンテナ170またはロッカー124内の環境(温度や湿度)を一定に保つための換気扇158を設けてもよい。この場合には、図示しない温度計や湿度計を筐体122内に配置し、温度や湿度の変化に適宜応じて換気扇158を作動するように宅配ボックス120を構成してもよい。図示しないが、筐体内122に冷却装置をさらに設けてコンテナ170を冷却してもよい。冷却装置を設けることで、例えば生鮮食品や冷凍食品、その他低温で管理する必要のある商品も扱うことが可能となる。
【0040】
あるいは、宅配ボックス120は、宅配ボックス120を動作させるための電力の全てまたは一部を生成するための太陽電池160を備えてもよい。図示しないが、太陽電池160の方向や角度を制御するためのステージを設け、その上に太陽電池160を搭載してもよい。
【0041】
3.コンテナ
図9(A)と
図9(B)は、それぞれコンテナ170の模式的上面図と斜視図であり、
図10(A)と
図10(B)は、コンテナ170がロッカー124に収容された状態の模式的正面図と上面図である。これらの図に示されるように、コンテナ170は、本体172を基本的な構成として備え、さらに蓋174、把手176、トレンチ186、ストッパ180、ミラー168、ロック178、凸部184などを有することができる。
【0042】
本体172は、商品を格納するための空間を提供し、底板172a、および底板172aに接続される前板172b、一対の側板172c、先板172dによって構成される。底板172a、前板172b、側板172c、および先板172dは、これらによって形成される空間が直方体となるように構成・配置することが好ましい。底板172a、前板172b、側板172c、および先板172dから選択される少なくとも二つは、互いに一体化されていてもよい。本体172は、全体または一部が透明でもよい。例えば、前板172bが透明であり、内部を観察できるように構成されていてもよい。扉126の全体または一部が透明であり、前板172bの全体または一部も透明であるように宅配ボックス120とコンテナ170を構成することで、扉126が閉じた状態でもコンテナ170内に商品が存在しているか否かを目視で確認することができる。
【0043】
コンテナ170の大きさに制約はないが、例えば、内寸のy方向における長さは、150mm以上600mm以下、200mm以上500mm以下、または200mm以上400mm以下であり、典型的にはA4サイズに対応する長さ(297mm)である。間口の幅方向(x方向)における内寸の長さは、100mm以上500mm以下、150mm以上400mm以下、または200mm以上300mm以下であり、典型的にはA4サイズに対応する幅(210mm)である。内寸の高さは、50mm以上20mm以下、75mm以上150mm以下、あるいは90mm以上125mm以下であり、典型的には100mmである。大部分のユーザが売主104で発注する商品の大きさは、上述した範囲以下であるため、上記パラメータを満足するようにコンテナ170を構成することで、宅配される商品のほとんどをコンテナ170を用いて輸送・配送することができる。
【0044】
図示しないが、底板172a、前板172b、側板172c、および先板172dの内表面には、商品を衝撃から保護するための緩衝材を設けてもよい。例えばフェルトなどの動物繊維を含むシート、ウレタンフォームや発泡スチロールなどのスポンジ、(エア)クッション、ポリシロキサンやポリエチレンなどの人工高分子を含むシートなどが緩衝材として挙げられる。
【0045】
任意構成である蓋174は、本体172が形成する空間を閉じる機能を有し、これにより、コンテナ170の輸送・配送中に商品がコンテナ170から落下することが防止される。蓋174は、本体172に固定されずに本体172から取り外しできるように構成してもよく、あるいはヒンジ190などを介して本体172と接続されてもよい。ヒンジ190の軸は、
図9(B)に示すように一対の側板172cの法線と平行な方向と平行でもよく、図示しないが、軸が一対の側板172cの法線と垂直になるようにヒンジ190と蓋174を配置してもよい。蓋174がヒンジ190を介して先板172dに接続される場合、
図9(A)と
図9(B)に示すように、蓋174は、先板172dおよび/または一対の側板172cと固定される固定部174b、およびヒンジ190を介して固定部174bに接続される可動部174aによって構成されてもよい。この場合、ヒンジ190は、前板172bよりも先板172dにより近くなるように配置することが好ましい。可動部174aと固定部174bを設けることで、コンテナ170が部分的にロッカー124から排出された状態でも可動部174aをロッカー124から完全に露出させることができるため(
図6(A)参照。)、この状態でも蓋174を開けて商品を取り出すことができる。
【0046】
なお、蓋174の構造は上述した構造に限られない。例えば、前板172b、側板172c、または先板172dが開閉できるように本体172を構成し、開閉可能な前板172b、側板172c、または先板172dを蓋として機能させてもよい。この場合、本体172に底板172aに対向する天板を設けてもよい。
【0047】
把手176は前板172bに設けられる。把手176を設けることで、コンテナ170を容易に運搬することができるとともに、コンテナ170の引き出し、抜き取り、はめ込みが容易になる。ロック178は、意図せず蓋174が開くことを防止するための機構であり、その構成も適宜決定される。なお、ロック178は鍵を用いなくても施錠、解錠できる構造を有することが好ましい。例えば、本体172と噛み合う回転式のピンやプレートでもよい。鍵を用いずに施錠、解錠できるようにロック178を構成することで、ユーザに対して鍵の所持を要求する必要がなくなり、容易に商品を取り出すことが可能となる。
【0048】
トレンチ186は、ロッカー124にコンテナ170を配置した際にロッカー124に設けられるガイド138と鉛直方向(図中、z方向)において重なり、ガイド138の少なくとも一部を収容するように設けられる(
図10(A)参照。)。トレンチ186を設けることにより、トレンチ186とガイド138が噛み合うため、ロッカー124内でのコンテナ170の位置を固定することができるだけでなく、ロッカー124とコンテナ170間の摩擦が低減されるため、より容易にコンテナ170を引き出し、はめ込み、抜き取ることができる。
【0049】
凸部184は、蓋174の上面に設けられ、y方向に延伸する。好ましくは、トレンチ186を設け、凸部184がトレンチ186と重なり、かつトレンチ186と平行になるように凸部184を構成する。このようにトレンチ186と凸部184を同時に設けることにより、コンテナ170を複数重ねた場合にコンテナ170間でx方向のずれが防止され、荷崩れが防止される。このことは、配送員の安全確保に寄与する。
【0050】
ストッパ180は、第1のモードにおいてコンテナ170が完全にロッカー124から抜き取られることを防ぐための排出防止機構である。このため、コンテナ170がロッカー124に収容された状態で排出制御機構134が第1のモードで動作する際、ストッパ180が排出制御機構134とy方向において重なるようにストッパ180を設ければよい(
図10(A)、
図10(B)参照。)。なお、排出制御機構134と同様、排出防止機構の構造や仕組みに制約はない。したがって、ストッパ180に替え、第1のモードにおいて排出制御機構134と協働してコンテナ170がロッカー124から抜き取られることを禁止し、第2のモードにおいてコンテナ170を可逆的に排出・挿入できる他の機構も用いることができる。あるいは、排出制御機構134単独で上記機能が発現できるのであれば、ストッパ180などの排出防止機構を設けなくてもよい。
【0051】
ミラー168は蓋174の内側に配置される。ミラー168を設けることで、本体172の内部を直接目視できない場合でも、ミラー168に反射した本体172内部を確認することができるため、取り残した商品の有無を確認することができる。
【0052】
図示しないが、本体172の内部または蓋174の内側に、商品の有無を判断するためのセンサまたはカメラを設けてもよい。センサとしては、例えばレーザ光を用いる反射型センサが挙げられる。カメラとしては、電荷結合素子(CCD)カメラや相補型金属酸化物半導体(CMOS)センサなどが挙げられる。センサからの信号により、またはカメラで取得した画像を解析することで商品の有無が判断され、商品の取り忘れを防止することができる。
【0053】
なお、上述したコンテナの構成はあくまで一例であり、商品を格納し、かつ、ロッカー124に収容可能な構成を備えていれば、任意の構成を採用することができる。
【0054】
4.宅配方法
4-1.BtoCモデル
以下、上述した宅配システム100を利用する宅配方法について説明する。ここでは、売主104が商品を提供する企業であり、プラットフォームを経由せずにユーザが売主104に商品を発注するBtoCモデルを例に用いて説明する。ただし、プラットフォームを経由して商品を発注するケースにおいても、本宅配方法を適宜変更して適用することができる。また、以下の説明では、物流倉庫106から直接商品が宅配ボックス120に配送される例を取り扱うが、ハブ108を介して商品を輸送するケースに対しても、本宅配方法を適宜変更して適用することができる。
【0055】
図11に、宅配システム100を簡略化した模式図を示す。この宅配システム100では、売主104はサーバ(以下、売主サーバと記す。)105を有し、物流倉庫106を管理するとともにコンテナ170の輸送の管理や宅配ボックス120を管理するサーバとして物流管理サーバ107が宅配システム100に含まれる。また、各配送員が操作する情報端末118が宅配システム100に直接、または物流管理サーバ107の構成の一つとして含まれてもよい。なお、売主サーバ105と物流管理サーバ107は、互いに独立したサーバでもよく、両者が一つのサーバに統合されていてもよい。図示しないが、プラットフォームを経由して商品を発注する場合には、プラットフォーム提供者のサーバ(以下、プラットフォームサーバと記す。)が宅配システム100に含まれる。
【0056】
また、上述した物流管理サーバ107は、コンテナ170の輸送管理や宅配ボックス120の管理を行わず、コンテナ170の輸送管理と宅配ボックス120の管理を行う独立したサーバが物流管理サーバ107から独立したシステムとして宅配システム100に含まれてもよい。さらに、コンテナ170の輸送管理と宅配ボックス120の管理も互いに独立した異なるサーバで行われてもよい。このような態様は、物流管理サーバ107は物流倉庫106を管理する事業者が管理するサーバとして働き、当該事業者がコンテナ170の輸送と宅配ボックス120の管理を一つまたは複数の事業者に外部委託するビジネス形態などにおいて現れることがある。
【0057】
(1)発注から出荷まで
図12(A)は、ユーザが商品を発注してから商品を出荷するまでの段階のフローの一例を示す。まず、ユーザは、端末102を用い、売主サーバ105にアクセスし、売主サーバ105上のサイトで希望する商品を選択し、発注する(S100)。端末102は、ユーザが操作可能な通信機能を備える端末であり、据え付け型(デスクトップ型)コンピュータ、ノート型コンピュータ、あるいは携帯電話やタブレット、スマートフォンなどの携帯通信端末などが例示される。この時、ユーザは商品が配送される宅配ボックス120や、その宅配ボックス120のロッカー124を指定してもよい。宅配ボックス120の指定時には、複数の宅配ボックス120を選択し、同時に優先順位を付与してもよい。
【0058】
商品を受注すると、売主サーバ105は、物流管理サーバ107にアクセスし、商品とその数、およびユーザに関する情報(以下、ユーザ情報。)を送信する(S102)。ユーザ情報には、例えば、ユーザID、ユーザの住所、ユーザが指定する宅配ボックス120のボックスID、ロッカーID、ロッカー124の優先順位、ユーザの希望配送日時などが含まれてもよい。これらの情報を受け取った物流管理サーバ107は、在庫状況を確認するとともに、ユーザの住所などに基づいて最適な宅配ボックス120を選択し、選択された宅配ボックス120から定期的に送信されるロッカー124の空き情報を参照して空のロッカー124、または空のコンテナ170が収容されているロッカー124を選択する。なお、ユーザが宅配ボックス120を指定した場合には、物流管理サーバ107は、指定された宅配ボックス120のロッカー124を選択する。宅配ボックス120の選択に優先順位が付されている場合には、その優先順位に従って宅配ボックス120を選択すればよい。
【0059】
ここで、選択された宅配ボックス120において空のロッカー124、または空のコンテナ170が収容されているロッカー124が少ない状況(例えば、空のロッカー124または空のコンテナ170が収容されているロッカー124がロッカー124の総数の10%以下、20%以下、または30%以下である時など)が考えられる。このような状況は、他のユーザが商品を未取得なため、その商品が格納されているコンテナ170が宅配ボックス120の内に長期間収容されている場合に生じ得る。このような状況が発生した場合には、物流管理サーバ107は、商品未取得のユーザの端末102または売主サーバ105に対し、商品の引き取りを促すための信号を送信してもよい。
【0060】
その後、物流管理サーバ107は、配送するコンテナ170の数、コンテナ170の配送先である宅配ボックス120のボックスID、希望配送日時に基づき、道路状況や車両の積載状況を考慮して配送に用いる車両、配送コースを選定する。
【0061】
なお、宅配ボックス120がロッカー124の空き情報を定期的に取得しない、または当該情報を定期的に送信しない場合には、ユーザ情報を受け取った物流管理サーバ107は、選択された宅配ボックス120のロッカー124の空き情報を要求する命令を当該宅配ボックス120に送信してもよい(S104)。この命令を受け取った宅配ボックス120の制御部144は、空のロッカー124または空のコンテナ170が収容されているロッカー124を選択し、選択されたロッカー124のロッカーIDを物流管理サーバ107へ送信すればよい(S106)。
【0062】
その後、物流管理サーバ107は、端末102に対して直接、または売主サーバ105を介し、宅配情報を送信する(S108)。上述したように、宅配情報には、商品の配送日時とともに、ボックスID、ロッカーIDが含まれ、さらに、物流管理サーバ107が発行する認証鍵が含まれる。宅配情報の一部は、ユーザのための文字情報として送信され、他の一部(例えば、認証鍵)は宅配ボックス120の第1のリーダ130が読み取ることができる形式で送信されてもよい。
【0063】
一方、物流倉庫106内では、発注内容に応じて商品166がピッキングされ、コンテナ170に格納される(
図13)。商品166のそれぞれは、予め、あるいは格納時に重量が測定され、さらに3Dスキャナによって形状が計測される。このため、即座に必要なコンテナ170の数を決定することができる。商品166は、直接コンテナ170に格納してもよく、
図13に示すように、可撓性の袋(例えば、ポリエチレンやナイロン、セロファンなどの人工高分子製の袋、紙製の封筒など)162に収容された状態で格納されてもよい。袋162は、透明でも非透明でもよい。一つのコンテナ170に格納される商品166が複数の場合には、袋162を用いることで、ユーザはより簡便に商品166を取り出すことができる。さらに、袋162を用いることで商品166のコンテナ170内で動きが規制されるため、エアクッションや更紙、発泡スチロールなどの緩衝材を商品166と同梱する必要性が大幅に低減される。したがって、商品配送に伴うゴミの消費を大幅に抑制することが可能となり、このことは、本配送方法が地球環境に対する負荷を低減することができる配送方法であることを意味している。
【0064】
商品166の格納時には、各商品166に付され、商品166を特定する情報がスキャナ116によって読み込まれる(
図13参照。)。さらに、格納に用いたコンテナ170のタグ182に含まれるコンテナIDもスキャナ116(あるいは他のスキャナ)によって読み取られる。これにより、物流倉庫106において商品166管理が徹底されるとともに、格納された商品166とコンテナ170のコンテナIDが関連付けられる。また、スキャナ116で読み取られた情報は物流管理サーバ107へ送信されるため、商品166、コンテナID、ユーザID、および配送先である宅配ボックス120のボックスIDとそのロッカーIDが関連付けられる。したがって、各コンテナ170にユーザの個人情報が記載されたラベルなどを貼り付ける必要がない。このことは、ラベル貼り付けのための人的資源の節約やコスト低減を可能にするだけでなく、ゴミの発生や個人情報流出の防止をも可能にする。
【0065】
格納されたコンテナ170は、発送時間ごと、宅配ボックス120ごと、または発送方面ごとに仕分けされる。上述したように、本配送方法で用いるコンテナ170は、全て同一の形状と大きさを有する。したがって、複数のコンテナ170を三次元状に積み重ねても、空き空間が無く、占有面積と体積が小さくなる。特に、上述したトレンチ186と凸部184をコンテナ170に設けることで、上下に積み上げられたコンテナ170の間で、水平方向(またはx方向)のずれが生じないため、コンテナ170を高く、かつ安全に積み上げることができる。このことは、作業の安全性の向上だけでなく、コンテナ170の仕分け時における省スペースにも寄与する。
【0066】
格納が完了したコンテナ170は、発送時間ごと、宅配ボックス120ごと、発送方面ごと、配送ルートごと、積み下ろし順などの要素を考慮し、カゴ車と呼ばれる搬送台車164に搭載され(
図14)、その後、コンテナ170が搬送台車164ごと輸送・配送される。コンテナ170の仕分け時と同様、コンテナ170は全て同一の大きさと形状を有するため、無駄な空間を生み出すことなく多くのコンテナ170を整然と搬送台車164に搭載することができる(
図14参照。)。したがって、少ない搬送台車164を用いて大量のコンテナ170を効率よくかつ安全に輸送・配送することができる。このことは、配送のための車両の削減にも寄与し、作業の安全性向上とともに、輸送・配送コストが削減される。
【0067】
搬送台車164にコンテナ170を搭載する時、情報端末118を用いてタグ182に含まれる情報が読み取られ、この情報が物流管理サーバ107へ送信される(S110)。これにより、コンテナ170が所定の配送員によって管理され、商品166の出荷が完了して輸送・配送が開始されたことを把握することができる。同時に、情報端末118から上記情報を受信した物流管理サーバ107は、情報端末118に対し、各コンテナ170に対応するボックスIDとロッカーIDを送信してもよい(S112)。これにより、配送員は、情報端末118を介して各コンテナ170が収容されるべき宅配ボックス120とロッカー124を把握することができる。
【0068】
(2)宅配ボックスへの収容
出荷された商品166が格納されたコンテナ170を宅配ボックス120に収容する段階のフローの一例を
図12(B)に示す。
【0069】
コンテナ170が宅配ボックス120まで配送されると、配送員は、情報端末118が受信した情報に基づき、その宅配ボックス120に収容するコンテナ170を搬送台車164から降ろし、コンテナ170に付されたタグ182に含まれるコンテナIDを宅配ボックス120に転送する(S120)。例えば、コンテナIDを情報端末118を用いて読み取り、その表示面に表示されるコンテナIDを宅配ボックス120の第1のリーダ130に読み取らせる。第1のリーダ130がRFリーダである場合には、情報端末118を介する無線通信によってコンテナIDを転送してもよい。
【0070】
宅配ボックス120の制御部144は、情報端末118から読み取ったまたは転送されたコンテナIDに対応するボックスIDとロッカーIDを要求する命令を送受信部150を介して物流管理サーバ107へ送信する(S122)。この命令を受け取った物流管理サーバ107は、対応するボックスIDとロッカーIDを宅配ボックス120に送信する(S124)。
【0071】
その後、制御部144は、物流管理サーバ107から受け取ったボックスIDとロッカーIDが自己の宅配ボックス120のボックスIDとロッカーIDであるか否かを判断する。これらのうち少なくとも一つが一致しない場合には、制御部144は音声出力部140やモニター128を制御し、配送先に誤りがあることを配送員に知らせるための音声や表示を出力する。これに対し、物流管理サーバ107から受け取ったボックスIDとロッカーIDが自己の宅配ボックス120のボックスIDとロッカーIDとそれぞれ一致した場合、制御部144は、排出制御機構134を第2のモードで動作させつつ、該当するロッカー124のロック136を解錠する。
【0072】
配送員は、商品166が格納されたコンテナ170をロッカー124に差し込む(
図15)。当該ロッカー124に空のコンテナ170が収容されている場合には、空のコンテナ170を引き抜いて回収した後に、商品166が格納されたコンテナ170をロッカー124に差し込み、その後、扉126を閉める。制御部144は、扉126が閉じられ、ロック136が施錠されたことを確認した後、第2のリーダ132を制御し、収容されたコンテナ170のコンテナIDが、情報端末118から転送されたコンテナIDと一致するかどうかを判定する。これらのコンテナIDが一致しない場合には、再度ロック136を解錠し、音声出力部140やモニター128を制御し、これらのコンテナIDが一致していないことを配送員に知らせるための音声や表示を出力する。
【0073】
一方、これらのコンテナIDが一致する場合には、コンテナ170が適切に収容されたことを知らせるための音声と映像をそれぞれ音声出力部140とモニター128を用いて出力してもよい。その後、制御部144は、第1のモードで動作するように排出制御機構134を制御するとともに、送受信部150を介し、商品166が格納されたコンテナ170が該当するロッカー124に収容されたことを通知する信号(配送完了通知信号)を物流管理サーバ107へ送信する(S126)。この通知を受領した物流管理サーバ107は、商品166の発送が完了したことを通知するための信号を売主サーバ105へ送信する(S128)。売主サーバ105は、当該通知を受領すると、商品166の発送が完了したことをユーザに通知するための信号をユーザの端末102へ送信する(S130)。これにより、ユーザは商品166の発送完了を知ることができる。なお、配送完了通知信号は、宅配ボックス120から端末102や売主サーバ105に直接送信してもよい。
【0074】
(3)商品の取出し
ユーザが商品166を取り出す段階のフローの一例を
図16に示す。
【0075】
ユーザが商品166を受け取る際には、ユーザは、端末102へ送信された宅配情報に含まれる認証鍵を端末102上に表示する。認証鍵は、例えばバーコードや二次元コードとして表現される。端末102が携帯通信端末でない場合、当該宅配情報をユーザが所有する携帯通信端末へ転送し、その携帯通信端末の表示部に認証鍵を表示してもよい。その後、認証鍵を第1のリーダ130を介して宅配ボックス120に取得させる(S140)。認証鍵がパスワードや暗証番号として表現される場合には、モニター128上のタッチパネル、または別途設けられるテンキーやキーボードを用いて入力操作を行ってもよい。
【0076】
認証鍵が宅配ボックス120に取得されると、制御部144は、認証鍵を物流管理サーバ107へ送信する(S142)。物流管理サーバ107は、送信された認証鍵が、物流管理サーバ107がユーザに送信した認証鍵であるか否かを判断する。両者が一致しない場合は、商品166が配送された宅配ボックス120がユーザが操作している宅配ボックス120ではないことを意味している。この場合、ユーザが操作している宅配ボックス120に対し、商品が実際に配送された宅配ボックス120を案内するための情報を送信してもよい。さらに、当該宅配ボックス120の制御部144は、音声出力部140やモニター128を制御し、認証鍵が承認されないことや、商品が実際に配送された宅配ボックス120を案内するための情報を出力、表示してもよい。
【0077】
一方、宅配ボックス120から物流管理サーバ107へ送信された認証鍵が、物流管理サーバ107によってユーザに送信された認証鍵と一致することは、認証鍵に対応するコンテナ170がロッカー124のいずれかに収容されていることを意味する。この場合、物流管理サーバ107は該当するロッカーIDを宅配ボックス120へ送信する(S144)。ロッカーIDを受け取った後、制御部144は、排出制御機構134を第1のモードで動作させ、ロッカーIDに対応するロッカー124のロック136を解除する。これにより、ユーザはロッカー124からコンテナ170を引き出すことができる(
図17)。この時、音声出力部140やモニター128を用い、コンテナ170を引き出すことができることをユーザに通知してもよい。
【0078】
ユーザは、コンテナ170を引き出し、蓋174または蓋174の可動部174aを開けることで、商品166を取り出すことができる。コンテナ170が収容されるロッカー124が比較的高い位置にあり、本体172内部を直接視認できない場合には、ミラー168(
図9(B)参照)を利用すれば本体172を間接的に視認できるため、商品166の取り残しも防止することができる。なお、排出制御機構134が第1のモードで動作するため、コンテナ170はロッカー124から完全に引き抜かれない。このため、コンテナ170の盗難を防止することができる。
【0079】
商品を取り出した後、コンテナ170をロッカー124が内へ押し込む。この時、制御部144は、センサースイッチ142からの信号に基づき、コンテナ170が完全にロッカー124内に収容されたか否かを判断することができる。コンテナ170が完全にロッカー124内に収容されていないと判断された場合には、音声出力部140やモニター128を用い、コンテナ170をさらに奥に押し込むよう、ユーザを促してもよい。その後、扉126を閉めることで、ロック136が施錠される。
【0080】
ロック136が施錠された後、制御部144は、送受信部150を介し、商品166がユーザによって取り出されたことを通知するための信号(受領通知信号)を物流管理サーバ107へ送信する(S146)。この受領通知信号を受信した物流管理サーバ107は、さらに当該信号、または同様の内容を含む信号を売主サーバ105へ送信する(S148)。これにより、売主104は、商品がユーザによって受領されたことを確認することができる。なお、商品の有無を判断するためのセンサまたはカメラを本体172の内部または蓋174の内側に設け、これらのセンサまたはカメラから得られる情報に基づいて商品166がユーザによって取り出されたことを確認してもよい。
【0081】
上述したフローは、いずれも一つの例であり、適宜変更してもよい。例えば、商品166が格納されたコンテナ170が配送される前に、予めコンテナID、およびそれに関連付けられるボックスIDやロッカーIDを宅配ボックス120に送信してもよい。同様に、物流管理サーバ107が生成する認証鍵を予め宅配ボックス120に送信し、認証鍵の認証を宅配ボックス120内で行ってもよい。
【0082】
あるいは、商品166が格納されたコンテナ170をロッカー124に収容する際、宅配ボックス120の筐体122またはモニター128上に表示されるボックスIDを含む情報を情報端末118で読み取り、この情報を含む信号(認証要求信号)を情報端末118から物流管理サーバ107に送信するプロセスを含んでもよい。この場合には、認証要求信号を受け取った物流管理サーバ107は、コンテナIDに関連付けられた宅配ボックス120のボックスIDと認証要求信号に含まれるボックスIDを用いて認証作業を行う。認証に成功した場合、宅配ボックス120に対しロッカーIDが送信され、ロッカーIDに対応するロッカー124のロック136が制御部144によって順次解錠される。これと同時に、当該ロッカー124に該当するコンテナ170のコンテナIDをモニター128上に表示し、差し込むべきコンテナ170を配送員に通知してもよい。
【0083】
4-2.CtoCモデル
本発明の実施形態の一つに係る宅配システムは、上述したBtoCモデルとは異なる顧客-顧客間の取引(個人間取引、CtoCモデル)にも適用することができる。以下、宅配システム100を利用するCtoCモデルの宅配方法方について説明する。なお、BtoCモデルの宅配方法と同様または類似する点については説明を割愛することがある。
【0084】
図18(A)にCtoCモデルに適用した場合の宅配システム100の模式図を示す。ここでは、第1の端末102-1と第2の端末102-2をそれぞれ利用する第1のユーザと第2のユーザの間で取引が行われ、第1のユーザが売主、第2のユーザが買主であるとする。この宅配システム100は、第1のユーザと第2のユーザがそれぞれ利用する第1の宅配ボックス120-1、第2の宅配ボックス120-2とともに、プラットフォーム提供者112のプラットフォームサーバ113、および物流管理サーバ107を含む。また、各配送員が操作する情報端末118が宅配システム100に直接、または物流管理サーバ107の構成の一つとして含まれてもよい。
【0085】
(1)発注から出荷まで
CtoCモデルにおける本宅配方法のフローの一例を
図18(B)に示す。第1のユーザが商品166を出品するフローは割愛するが、第1のユーザは、出品時に商品166の発送のための宅配ボックス120やロッカー124を予め指定してもよい。この時、複数のロッカー124を選択し、同時に優先順位を付与してもよい。
【0086】
第2のユーザは、第2の端末102-2を用いてプラットフォームサーバ113にアクセスし、プラットフォーム上で商品166を発注する(S150)。この時、第2のユーザは、発送希望日に加え、商品166が配送される第2の宅配ボックス120-2や、そのロッカー124を指定してもよい。さらに、複数のロッカー124を選択し、同時に優先順位を付与してもよい。発注が確定すると、発注が確定したことを通知するための信号がプラットフォームサーバ113から第1の端末102-1と第2の端末102-2にそれぞれ送信される(S152、S154)。
【0087】
発注が確定すると、プラットフォームサーバ113は、取引の内容を含む通知を物流管理サーバ107に送信する(S156)。取引の内容には、第1のユーザと第2のユーザのユーザIDや住所、商品の内容と数量、第1または第2のユーザの希望発送日などが含まれてもよい。この通知を受信した物流管理サーバ107は、一つまたは複数の宅配ボックス120から定期的に送信されるロッカー124の空き情報や希望発送日などを参照し、空のコンテナ170が収容されているロッカー124を保有する宅配ボックス120に関する情報を第1の端末102-1に提供する(S158)。第1のユーザは、これらの情報に基づいて宅配ボックス120とロッカー124を選択するための信号を物流管理サーバ107に送信すればよい(S160)。なお、第1のユーザがロッカー124の優先順位を指定している場合には、優先順位に従って物流管理サーバ107によってロッカー124を選択してもよい。
【0088】
商品166の発送に用いる宅配ボックス120(すなわち、第1の宅配ボックス120-1)とそのロッカー124が決定されると、第1の宅配ボックス120-1を操作するための認証鍵を含む通知を第1の端末102-1に直接またはプラットフォームサーバ113を介して送信する(S162)。この通知には、第1の宅配ボックス120-1のボックスIDとそのロッカー124のロッカーIDが含まれてもよい。これらの操作とともに、物流管理サーバ107は、商品166が格納されるコンテナ170の一時保管に必要な物流倉庫106の状況の確認を行うとともに、配車状況や車両の積載状況を考慮して商品166を回収するための車両を選定する。また、物流管理サーバ107は、第2のユーザの第2の端末102-2に対し、直接またはプラットフォームサーバ113を介して宅配情報を送信する(S164)。宅配情報には、第2のユーザが商品を回収する際に用いる認証鍵が含まれてもよい。
【0089】
なお、各コンテナ170にはコンテナIDが付され、コンテナIDは第2のリーダ132によって読み取られる。このため、指定されたロッカー124内に収容されている空のコンテナID、ロッカー124のロッカーID、第1の宅配ボックス120-1の宅配ID、ユーザID、および商品166がプラットフォームサーバ113上で互いに関連付けられることになる。
【0090】
第1のユーザが商品166をコンテナ170に格納する際には、受信した認証鍵を第1の端末102-1上に表示し、第1のリーダ130を介して認証鍵を第1の宅配ボックス120-1に取得させる(S166)。認証鍵がパスワードや暗証番号として表現される場合には、モニター128上のタッチパネル、または別途設けられるテンキーやキーボードを用いて入力操作を行ってもよい。
【0091】
認証鍵が宅配ボックス120に取得されると、認証作業が行われる。この作業はBtoCモデルのそれと同じであるため、説明は割愛する。認証が成功すると、宅配ボックス120の制御部144は、排出制御機構134を第1のモードで動作させ、ロッカーIDに対応するロッカー124のロック136を解除する。これにより、第1のユーザはロッカー124からコンテナ170を引き出し、商品166を直接、あるいは可撓性の袋などに詰めた状態でコンテナ170に格納することができる(
図17参照。)。商品166を格納した後、コンテナ170をロッカー124が内へ押し込み、扉126を閉めることでロック136が施錠される。BtoCモデルと同様、制御部144は、センサースイッチ142からの信号に基づき、コンテナ170が完全にロッカー124内に収容されたか否かを判断する。本体172の内部または蓋174の内側に設けられたセンサまたはカメラから得られる情報に基づいて商品166が実際に格納されたか否かを確認してもよい。
【0092】
その後、制御部144は、送受信部150を介し、商品166が格納されたことを通知する信号(格納完了通知信号)を物流管理サーバ107へ送信する(S168)。この通知を受領した物流管理サーバ107は、ユーザが商品166を出荷したことを通知するための信号をプラットフォームサーバ113に通知してもよい(S170)。さらに物流管理サーバ107は、商品が所定のコンテナ170に格納されたことを通知するための信号を第1の端末102-1に送信してもよい(S172)。
【0093】
(2)コンテナの回収から商品の取出しまで
コンテナの回収は、様々な方法で行うことができる。例えば、BtoCモデルの宅配方法で述べたように、第1の宅配ボックス120-1へコンテナ170を収容する際、第1の宅配ボックス120-1の筐体122またはモニター128上に表示されるボックスIDを含む情報を情報端末118で読み取り、この情報を含む信号(認証要求信号)を情報端末118から物流管理サーバ107に送信する(S174)。認証要求信号を受け取った物流管理サーバ107は認証作業を行う。認証に成功した場合、商品166が格納されたコンテナ170が収容されたロッカー124のロッカーIDを第1の宅配ボックス120-1に送信する(S176)。その後、第1の宅配ボックス120-1は、制御部144の命令に従い、当該ロッカーIDに該当するロッカー124を第2のモードで動作せるとともにそのロック136を解錠する。
【0094】
あるいは、BtoCモデルの宅配方法について述べたように、第1の宅配ボックス120-1に収容すべき別のコンテナ170がある場合、このコンテナ170のコンテナIDを第1の宅配ボックス120-1に転送する(
図12(B)、S120参照。)。この時、上述したように、当該コンテナIDに対応するボックスIDとロッカーIDを要求する命令が物流管理サーバ107へ送信され(S122)、その後、ボックスIDとロッカーIDが第1の宅配ボックス120-1に送信される(S124)。これらのステップに加え、第1の宅配ボックス120-1中に回収すべきコンテナ170が収容されているか否かを物流管理サーバ107上で確認し、収容されている場合には、回収すべきコンテナ170が収容されているロッカーIDを第1の宅配ボックス120-1に送信すればよい。
【0095】
宅配員は、コンテナ170を回収する。この時、新たにコンテナ170をロッカー124に差し込んでもよい。新たに収容されるコンテナ170は、空のコンテナまたは他の商品が格納されたコンテナ170である。新たに収容されるコンテナ170のコンテナIDは第2のリーダ132によって読み取られ、物流管理サーバ107へ送信される(S178)。これにより、新たに収容された空のコンテナ170のコンテナID、第1の宅配ボックス120-1のボックスID、およびロッカーIDが物流管理サーバ107上で関連付けられる。
【0096】
回収されたコンテナ170のコンテナIDは情報端末118によって読み取られ、物流管理サーバ107へ送信される(S180)。これにより、回収されたコンテナ170が配送員によって回収され、輸送が開始されたことを物流管理サーバ107上で確認することができる。
【0097】
回収されたコンテナ170は、物流倉庫106へ輸送され、発送時間ごと、宅配ボックス120ごと、または発送方面ごとに仕分けされて保管される。BtoCモデルについて説明したように、本配送方法で用いるコンテナ170は、全て同一の形状と大きさを有するため、省スペースで仕分け・保管作業を安全に行うことができる。なお、回収されたコンテナ170は、物流倉庫106へ輸送されることなく、直接またはハブ108を介して第2の宅配ボックス120-2へ輸送されてもよい。
【0098】
回収されたコンテナ170が物流倉庫106から出荷されて第2の宅配ボックス120-2に配送されるフロー、および第2の宅配ボックス120-2において第2のユーザが商品166を取り出すフローはBtoCモデルのそれと同様であるので、説明を割愛する。
【0099】
上述したように、本発明の実施形態の一つに係る宅配システムと宅配方法では、専用のコンテナ170を用いて商品166を宅配し、コンテナ170は宅配のために再利用される。また、コンテナ170の大きさも商品に適合した大きさである。このため、段ボールなどの梱包材や同梱する緩衝材を消耗品として用いる従来の宅配システムや宅配方法と比較し、ゴミの量を大幅に低減することができる。また、コンテナ170は全て同一の形状と大きさを有するため、取り扱いが容易であり、コンパクトに積み上げることができる。このため、小型の搬送台車164や車両を用いても大量のコンテナ170を扱うことができ、宅配コストの大幅なコスト削減が可能となる。
【0100】
本発明の実施形態として上述した各実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。また、各実施形態の表示装置を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0101】
上述した各実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0102】
100:宅配システム、102:端末、102-1:第1の端末、102-2:第2の端末、104:売主、105:売主サーバ、106:物流倉庫、107:物流管理サーバ、108:ハブ、110:ネットワーク、112:プラットフォーム提供者、113:プラットフォームサーバ、116:スキャナ、118:情報端末、120:宅配ボックス、120-1:第1の宅配ボックス、120-2:第2の宅配ボックス、122:筐体、124:ロッカー、126:扉、128:モニター、130:第1のリーダ、132:第2のリーダ、134:排出制御機構、136:ロック、138:ガイド、140:音声出力部、142:センサースイッチ、144:制御部、146:メモリ部、148:バッテリ、150:送受信部、152:台座、154:車輪、156:牽引治具、158:換気扇、160:太陽電池、162:袋、164:搬送台車、166:商品、168:ミラー、170:コンテナ、170-1:コンテナ、170-2:コンテナ、172:本体、172a:底板、172b:前板、172c:側板、172d:先板、174:蓋、174a:可動部、174b:固定部、176:把手、178:ロック、180:ストッパ、182:タグ、184:凸部、186:トレンチ、190:ヒンジ
【要約】
【課題】宅配事業者や宅配員、ユーザの負担を低減することで、低コストで商品を宅配可能なシステムと方法を提供すること。
【解決手段】宅配システムは、宅配ボックスおよび商品を格納するための複数のコンテナを含む。複数のコンテナは、互いに同一の形状と大きさを有し、宅配ボックスは、互いに同一の形状と大きさを有する複数のロッカーを備える。複数のロッカーの各々は、複数のコンテナから任意に選択される一つを選択的に収容するように構成される。
【選択図】
図2