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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-28
(45)【発行日】2022-02-07
(54)【発明の名称】読取システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/08 20120101AFI20220131BHJP
   G06K 7/10 20060101ALI20220131BHJP
   G06K 17/00 20060101ALI20220131BHJP
【FI】
G06Q10/08 330
G06K7/10 252
G06K17/00 022
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017154531
(22)【出願日】2017-08-09
(65)【公開番号】P2019032764
(43)【公開日】2019-02-28
【審査請求日】2020-07-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506359288
【氏名又は名称】株式会社アスタリスク
(74)【代理人】
【識別番号】100191189
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100182121
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 紘子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 規之
【審査官】梅岡 信幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-199437(JP,A)
【文献】特開2005-008346(JP,A)
【文献】特開2005-263480(JP,A)
【文献】特開2006-323591(JP,A)
【文献】特開2001-331762(JP,A)
【文献】特開2013-250853(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0208859(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G06K 7/00-7/14
G06K 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーバと、該サーバと通信可能な一の携帯読取端末と、該サーバと通信可能な他の携帯読取端末と、を備える読取システムであって、
前記一の携帯読取端末および前記他の携帯読取端末は、
複数の物品に付された識別情報を一括して読み取る読取部と、
前記読み取った識別情報をサーバに送信する送信部と
備え、
前記一の携帯読取端末は、
前記サーバを介して、前記他の携帯読取端末の読取部によって読み取られた識別情報を受信する受信部と、
当該一の携帯読取端末の読取部が読み取った識別情報と当該一の携帯読取端末の受信部によって受信した識別情報との重複を確認する重複確認部と、
を備え、
前記他の携帯読取端末は、
前記サーバを介して、前記一の携帯読取端末の読取部によって読み取られた識別情報を受信する受信部と、
当該他の携帯読取端末の読取部によって読み取られた識別情報と当該他の携帯読取端末の受信部によって受信した識別情報との重複を確認する重複確認部と、
を備え、
前記一の携帯読取端末の送信部は、当該一の携帯読取端末の重複確認部による確認の結果、当該一の携帯読取端末の読取部が読み取った識別情報のうち、重複していない識別情報を前記サーバに送信し、
前記他の携帯読取端末の前記送信部は、当該他の携帯読取端末の重複確認部による確認の結果、当該他の携帯読取端末の読取部が読み取った識別情報のうち、重複していない識別情報を前記サーバに送信する、
ことを特徴とする読取システム。
【請求項2】
前記サーバは、
読み取るべき前記物品の識別情報を含むファイルを記憶する記憶部と、
前記一の携帯読取端末および前記他の携帯読取端末から受信した識別情報に基づいて、前記ファイルに対して該識別情報の消し込みを行う更新部と、
前記ファイルを前記一の携帯読取端末および前記他の携帯読取端末に送信する送信部と、
を備え、
前記一の携帯読取端末及び前記他の携帯読取端末は、
前記受信部が前記サーバから前記ファイルを受信し、
前記受信したファイルに基づいて算出された進捗状況をユーザへと通知する進捗通知部を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の読取システム。
【請求項3】
前記一の携帯読取端末および前記他の携帯読取端末は、
前記確認の結果、各々の前記読取部が読み取った識別情報が重複していない場合に、ユーザに対して通知を行う読取通知部を備える、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の読取システム。
【請求項4】
前記一の携帯読取端末および前記他の携帯読取端末は、位置情報を取得する位置情報取得部を備え、
前記一の携帯読取端末の送信部および前記他の携帯読取端末の送信部は、前記重複していない識別情報と共に前記位置情報を前記サーバに送信する、
ことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の読取システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品に付された識別情報を読み取る読取システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大型のショッピングモールや店舗などが登場しており、取り扱われる商品も多種多様なものとなっている。これに伴って、顧客(消費者)に対する各商品のアピール力を高めるために、商品の陳列態様(見せ方や並べ方)が工夫されている。ここで、店舗における業務の一つに商品の在庫管理があり、大型の店舗などでは、在庫管理を行うための棚卸を効率的に行うことが課題となっている。
【0003】
そこで、特許文献1の無線タグシステムでは、複数の無線タグリーダを用いて効率的に棚卸を行うことが提案されている。当該無線タグリーダには、商品に付された無線タグの一括読取を行う第1通信モードと、無線タグの個別読取を行う第2通信モードと、が組み込まれており、各通信モードで読み取られた識別情報がサーバに送信される仕組みとなっている。
【0004】
このような特許文献1の技術によれば、複数の作業者が無線タグの一括読取を行いながら店内を巡回することができるので、作業人数が多いほど作業時間を短縮することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-177778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、当該読取作業の開始当初は、作業者はそれぞれ異なったルートで店内を巡回するが、商品の陳列態様は必ずしも規則的なものではなく、特に大型店舗では上記の通り様々な商品の陳列態様が採用されているため、作業者の巡回ルートが不規則となって、各作業者の巡回ルートが重複する可能性が高くなっている。巡回ルートが重複した場合には、当該作業者の各無線タグリーダは同一の商品から識別情報を読み取る、いわゆる無線タグリーダ間での重複読取が生じてしまう。
【0007】
重複読取が生じた場合の対策としては、サーバの処理において重複した識別情報を排除する重複排除処理が挙げられるが、当該重複排除処理は作業人数が多ければ多いほど、また商品数が多ければ多いほど負荷が増大するため、複数の無線タグリーダを用いて棚卸を行う場合には、サーバの処理待ち状態が生じるおそれがある。
【0008】
上記した課題に鑑み、本発明は、複数の作業者による読み取りを行いつつ、サーバにおける重複排除処理の負担を軽減しうる読取システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本願発明は、サーバと、該サーバと通信可能な複数の携帯読取端末と、を備える読取システムであって、
前記複数の携帯読取端末は、複数の物品に付された識別情報を一括して読み取る読取部と、前記読み取った識別情報をサーバに送信する送信部と、前記サーバを介して、前記読み取られた識別情報を相互に受信する受信部と、各々の前記読取部が読み取った識別情報と前記受信した識別情報との重複を確認する重複確認部と、を備え、
前記送信部は、前記確認の結果、各々の前記読取部が読み取った識別情報のうち、重複していない識別情報を前記サーバに送信することを特徴とする。
【0010】
また、前記サーバは、読み取るべき前記物品の識別情報を含むファイルを記憶する記憶部と、前記複数の携帯読取端末から受信した識別情報に基づいて、前記ファイルに対して該識別情報の消し込みを行う更新部と、前記ファイルを各携帯読取端末に送信する送信部と、を備え
前記複数の携帯読取端末は、前記受信部が前記サーバから前記ファイルを受信し、前記受信したファイルに基づいて算出された進捗状況をユーザへと通知する進捗通知部を備えることを特徴とする。
【0011】
また、前記複数の携帯読取端末は、前記確認の結果、各々の前記読取部が読み取った識別情報が重複していない場合に、ユーザに対して通知を行う読取通知部を備えることを特徴とする。
【0012】
また、前記複数の携帯読取端末は、位置情報を取得する位置情報取得部を備え、前記送信部は、前記重複していない識別情報と共に前記位置情報を前記サーバに送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数の携帯読取端末は、サーバを介して、読み取った識別情報を相互に受信することができる。そして、重複確認部によって、各々が読み取った識別情報と受信した識別情報との重複が確認される。その結果、重複していない識別情報のみがサーバに送られるので、サーバにおける重複排除処理の負担を軽減することができる。このため、読取に使用される携帯読取端末の数や読み取るべき物品の数が増加したとしても、サーバにおける重複排除処理を極めて抑えることができるので、サーバの処理待ち状態となるおそれがない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態に係る読取システムの概念図
図2】上記読取システムのモバイルリーダのブロック図
図3】上記読取システムのシステム構成を示す図
図4】(a)読取ユニットのメモリ内の領域、(b)サーバのメモリ内の既読ファイルを示す図
図5】携帯情報端末および読取ユニットの組み合わせを説明する図
図6】上記モバイルリーダのフロー図
図7】上記サーバのフロー図
図8】第2実施形態に係る読取システムのフロー図
図9】変形例に係る読取システムのフロー図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る読取システムの実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
[第1実施形態]
【0017】
図1に示すように、本実施形態の読取システム10は、店舗などに陳列された多数の商品から識別情報を読み取るシステムであって、複数の携帯読取端末(以下、「モバイルリーダ12a~12c」という。)およびサーバ14を備えている。複数のモバイルリーダ12a~12cおよびサーバ14は、店舗内に設けられたLAN(Local Area Network)等のネットワークNに接続されており、互いに通信可能となっている。
【0018】
商品の各々には、図2に示すように、ICチップ16とアンテナ18を備えるRFタグ20が付されている。ICチップ16には、アンテナ18に接続された送受信回路22と、送受信回路22を制御してモバイルリーダ12a~12cと通信を行うCPU24(制御部)と、CPU24によって情報が読み書きされるメモリ26(記憶部)と、が内蔵されている。ここで、本実施形態のメモリ26には、各商品を互いに識別するための識別情報が予め記憶されている。このような商品が、顧客に対する見せ方や並べ方が工夫されて陳列されている。
【0019】
陳列された各商品から識別情報を読み取り、店舗内の商品点数を把握するために、複数の作業者がモバイルリーダ12a~12cを商品にかざしながら店舗内を巡回する。モバイルリーダ12a~12cは、図1に示すように、携帯情報端末28に読取ユニット30が組み合わされた構成となっている。
【0020】
読取ユニット30は、アンチコリジョン機能により複数のRFタグ20から識別情報を一括して読み取るユニットであって、ガン型の筐体の先端にアンテナ32が取り付けられている。
【0021】
筐体内には、図2に示すように、アンテナ32に電気的に接続された読取回路34が設けられている。読取回路34は、搬送波を生成する発振回路(不図示)と、発振回路により生成された搬送波にコマンドを重畳して変調する変調回路(不図示)と、コマンドが重畳された搬送波をアンテナ32に送信するための送信回路(不図示)と、アンテナ32を経由して入ってくるRFタグ20からの信号を受信するための受信回路(不図示)と、RFタグ20からの信号を復調する復調回路(不図示)と、から構成されている。このような読取回路34は、同じく筐体内に設けられたCPU36に電気的に接続されている。CPU36は、メモリ38に予め記憶されたプログラムを実行することで、読取回路34を制御し、RFタグ20から識別情報を読み取る。このように、CPU36、読取回路34、及びアンテナ32はRFタグ20から識別情報を読み取る読取部40(図3)として機能する。
【0022】
メモリ38には、上記プログラムに加えて、RFタグ20から読み取った識別情報を文字列形式の読取情報として一時的に記憶する読取領域(図4)と、一度読み取った識別情報を文字列形式の既読情報として蓄積する既読領域(図4)と、が設けられている。このようにメモリ38は識別情報(読取情報および既読情報)を記憶する第1記憶部42(図3)として機能する。読取情報と既読情報は、上記プログラムを実行するCPU36によって、重複の有無が確認される。このようにCPU36は識別情報(読取情報および既読情報)の重複を確認する第1重複確認部44(図3)として機能する。
【0023】
CPU36の入力には、トリガースイッチ46が電気的に接続されている。トリガースイッチ46は、商品の読取を行う作業者によって操作されるスイッチであって、図1に示すように、ガン型の筐体に形成されたグリップ部48に設けられている。
【0024】
読取ユニット30の筐体は、上記したグリップ部48に加えて、当該グリップ部48の上端から水平に延びる銃身部50を備えている。図5に示すように、この銃身部50の上面には、携帯情報端末28を載置するための台座部52が形成されている。台座部52の上面には携帯情報端末28のコネクタパターン54と接続するためのコネクタ端子56が露出して設けられている。当該コネクタ端子56は、携帯情報端末28との通信処理を行うコントローラ(不図示)などを介してCPU36(図2)に接続されている。なお、台座部52内には携帯情報端末28を保持するための磁石58が内蔵されている。
【0025】
図1および図5に示すように、携帯情報端末28は、スマートホンやタブレット型コンピュータに代表されるスマートデバイスであって、その側面や背面を覆うケース60が装着されている。このような携帯情報端末28は、その背面(ケース60の背面)が上記した台座部52に接するように載置される。ケース60の背面には、コネクタパターン54が露出して設けられており、コネクタパターン54が上記した台座部52のコネクタ端子56と接続される。コネクタパターン54の各々は、ケース60内に配された配線(不図示)を通じて、携帯情報端末28の外部機器接続コネクタ(不図示)へと接続されている。外部機器接続コネクタは通信処理を行うコントローラ(不図示)などを介してCPU62(図2)に接続されている。このように、携帯情報端末28と読取ユニット30は、コネクタパターン54、コネクタ端子56、及び配線などにより構成される電路を介して電気的に接続されている。また、ケース60の背面内方には、磁石64が設けられており、当該磁石64と台座部52の磁石58とが互いに吸着することで、携帯情報端末28が読取ユニット30に保持される。
【0026】
図2に示すように、携帯情報端末28は、上記したCPU62に加えて、メモリ66、無線モジュール68、ディスプレイ78、及びタッチパネル80を備えている。メモリ66には、上記の各構成を送信部70(図3)、第2重複確認部76(図3)、受信部72(図3)、及び第2記憶部74(図3)として機能させるプログラムが格納されている。具体的には、無線モジュール68は、ネットワークNに接続するための公知のモジュールであって、CPU62に制御されることで、情報をサーバ14に送信する送信部70、及び情報をサーバ14から受信する受信部72として機能する。メモリ66は、読取ユニット30やサーバ14から受信した情報を記憶する第2記憶部74として機能する。CPU62は、読取ユニット30から受信した識別情報(読取情報)が重複しているか否かを確認する第2重複確認部76として機能する。ディスプレイ78は、携帯情報端末28の正面側に配置されており、CPU62に制御されることで、進捗状況を作業者に対して通知する進捗通知部92として機能する。タッチパネル80は、ディスプレイ78上に配置されており、作業者によりタッチされた位置の座標をCPU62に入力する入力部(不図示)として機能する。また、プログラムには、各モバイルリーダ12a~12cを識別するためのリーダ識別情報(例えばreader01,reader02,reader03)が定められている。
【0027】
モバイルリーダ12a~12cと通信可能なサーバ14は、不図示のCPU、メモリ、及びネットワークモジュールを備えている。メモリには、後述する処理を定めたプログラムが記憶されており、CPUが当該プログラムを実行することで、図3に示すように、上記の各構成が送信部82、受信部84、記憶部86、更新部88として機能する。具体的には、ネットワークモジュールは、ネットワークNに接続するための公知のモジュールであり、CPUに制御されることで、各モバイルリーダ12a~12cから情報を受信する受信部84、及び各モバイルリーダ12a~12cに情報を送信する送信部82として機能する。CPUは、各モバイルリーダ12a~12cから受信した識別情報に基づいて登録ファイルを更新する更新部88として機能する。ここで、登録ファイルとは、各モバイルリーダ12a~12cから受信した識別情報が重複しないようにリスト化されたファイルである。メモリは、上記プログラムに加えて、図4に示すように、各モバイルリーダ12a~12cから受信した識別情報(読取情報)を文字列形式の既読情報として記憶する既読ファイル、及び登録ファイルを記憶する記憶部86(図3)として機能する。なお、本実施形態では、各モバイルリーダ12a~12cのリーダ識別情報に対応するように既読ファイルが設けられている。
【0028】
上記のような複数のモバイルリーダ12a~12cとサーバ14と、を備える読取システム10の動作フローについて、主に図6及び図7を参照しながら説明する。なお、各モバイルリーダ12a~12cは同様に動作するため、ここではモバイルリーダ12aについて説明する。
【0029】
先ず、モバイルリーダ12aは初期化処理(s100)を実行する。初期化処理(s100)では、携帯情報端末28のCPU62および読取ユニット30のCPU36が各々のメモリ66,38に設けられた情報の記憶領域をクリアする。
【0030】
次いで、モバイルリーダ12a~12caは読取処理(s101)を実行する。読取処理(s101)では、携帯情報端末28のCPU62が読取開始コマンドを読取ユニット30に対して送信する。読取ユニット30のCPU36は、読取開始コマンドを受信すると、トリガースイッチ46からの入力を定期的に確認する。CPU36は、トリガースイッチ46の入力を検出すると、読取回路34を制御してアンテナ32を通じてRFタグ20との通信を確立させ、複数のRFタグ20からの識別情報を読み取る。ここで、識別情報を読み取る際には、公知のタイムスロット方式やビットコリジョン方式によるアンチコリジョン機能が用いられ、複数のRFタグ20から一括して識別情報が読み取られる。読み取られた識別情報(以下、「読取情報」という。)は、図4に示すように読取領域に文字列として一時的に記憶される。
【0031】
次いで、モバイルリーダ12aは第1重複確認処理(s102)を実行する。第1重複確認処理(s102)では、読取ユニット30のCPU36が、上記の読取情報を既読領域内の既読情報と照らし合わせて重複の有無を確認する。重複の有無の確認は、例えば、文字列として記憶されている読取情報と既読情報を比較(ストリングコンペア)することにより行われ、比較した結果、重複(一致)した読取情報は読取領域からクリアされる。なお、読取作業の開始直後に初めて実行される第1重複確認処理(s102)においては、上記の初期化処理(s100)によって既読領域がクリアされた状態となっている。
【0032】
重複の有無を確認した結果、一括読取を行った読取情報の全てが既読情報と重複している場合(全ての読取情報がクリアされた場合)(s103:Yes)には、これまでの処理が繰り返し行われる。一方、図4に示すように、重複していない読取情報“00A0000C~00A00012”がある場合(s103:No)には、当該重複していない読取情報が、既読領域に文字列として追加登録(s104)されるとともに、電路を通じて携帯情報端末28に送信される。このように一度読み取られた読取情報は既読情報として読取ユニット30にて蓄積される。
【0033】
次いで、モバイルリーダ12aは取得処理(s105)を実行する。取得処理(s105)では、携帯情報端末28のCPU62が、サーバ14から他のモバイルリーダ12b,12cの既読情報をダウンロードする。具体的には、携帯情報端末28のCPU62は、当該モバイルリーダ12aに付与されたリーダ識別情報“reader01”を送るとともに、既読ファイルの送信をリクエストする。
【0034】
サーバ14のCPUは、当該リクエストを受信すると(s200:Yes)、受信したリーダ識別情報“reader01”とは異なるリーダ識別情報“reader02”,“reader03”に対応する既読ファイルを送信する(s201)。携帯情報端末28のCPU62は、既読ファイルをダウンロードすると、メモリ66に設けられた他リーダ既読情報記憶領域に記憶させる。
【0035】
次いで、モバイルリーダ12aは第2重複確認処理(s106)を実行する。第2重複確認処理(s106)では、携帯情報端末28のCPU62が、読取ユニット30から受信した読取情報を既読ファイルと照らし合わせて、重複の有無を確認する。重複の有無は、上記第1重複確認処理(s102)と同様に文字列を比較することにより行われ、重複している読取情報はクリアされる。その結果、既読ファイル内の情報と重複していない読取情報“00A00011”,“00A00012”は、新規読取情報として、リーダ識別情報と共にサーバ14に送信される(s107)。
【0036】
その後、携帯情報端末28および読取ユニット30のCPU62,36は、メモリ66,38内の読取情報をクリアして(s108)、上記説明した読取処理(s101)から読取情報のクリア処理(s108)までの一連の処理を繰り返し実行する。そして、上記説明したモバイルリーダ12aの処理が他のモバイルリーダ12b,12cにおいても同様に実行される。
【0037】
サーバ14では、各モバイルリーダ12a~12cから新規読取情報を受信すると(s202:Yes)、受信処理(s203)および登録処理(s204)が実行される。受信処理(s203)では、サーバ14のCPUが、モバイルリーダ12aから新規読取情報を受信する。登録処理(s204)では、当該CPUが、受信した読取情報を既読情報として、リーダ識別情報に対応する既読ファイルに追加登録する。
【0038】
サーバ14のCPUは、各モバイルリーダ12a~12cからの新規読取情報を受信しない状態が一定時間経過すると(s205:Yes)、更新処理(s206)を実行する。更新処理(s206)では、サーバ14のCPUが、各既読ファイルに記憶されている既読情報を読み出し、これらを重複しないようにリスト化する。
【0039】
上記説明した本実施形態の読取システム10によれば、各モバイルリーダ12a~12cは、サーバ14を介して読み取った識別情報を相互に受信することとなる。そして、各モバイルリーダ12a~12cでは、第1重複確認部44が自己の既読情報との重複を確認する(第1重複確認処理s102)だけでなく、第2重複確認部74が他のモバイルリーダの既読情報との重複を確認する(第2重複確認処理s106)ため、各モバイルリーダ12a~12cからサーバ14に送信される識別情報は、重複する可能性が極めて低くなり、サーバ14における重複排除処理の負担が軽減される。
【0040】
[第2実施形態]
【0041】
第2実施形態の読取システムは、第1実施形態と同様のハードウェア構成を備えるが、各モバイルリーダ12a~12cが、登録ファイルをサーバ14から受信し、当該登録ファイルに基づいて第3重複確認処理を実行している点で第1実施形態とは異なっている。以下、図8に基づいて、本実施形態の読取システムの動作フローについて説明する。なお、第1実施形態と同様の構成や処理については同一の符号を付して説明を適宜省略し、第1実施形態と異なる構成や処理を中心に説明することとする。
【0042】
モバイルリーダ12a~12cは、初期化処理(s100)を実行した後、登録ファイルをサーバ14から取得する(s109)。具体的には、携帯情報端末28のCPU62が、無線モジュール68を制御することで、ネットワークNを介したサーバ14との通信を確立し、サーバ14に対して登録ファイルの送信をリクエストする。サーバ14は、当該リクエストを受信すると、メモリに記憶されている登録ファイルを読み込んで当該携帯情報端末28に対して送信する(s207)。なお、読取作業の開始直後においては、登録ファイルの内容はクリアされた(空の)状態となっている。
【0043】
次いで、モバイルリーダ12a~12cでは、読取ユニット30が読取処理(s101)、第1重複確認処理(s102)、及び既読領域への登録処理(s104)を実行し、既読領域内の既読情報と重複しない読取情報を携帯情報端末28に送信する。
【0044】
読取ユニット30から読取情報を受信すると、携帯情報端末28は第3重複確認処理(s110)を実行する。第3重複確認処理(s110)では、携帯情報端末28のCPU62が、読取ユニット30から受信した読取情報をサーバ14から取得した登録ファイル内の情報と照らし合わせて、重複の有無を確認する。その結果、携帯情報端末28のCPU62は、登録ファイル内の情報と重複していない読取情報を新規読取情報としてサーバ14に送信する(s107)。その後、携帯情報端末28および読取ユニット30のCPU62,36は、メモリ66,38内の読取情報をクリアする(s108)。そして、上記説明した登録ファイルの取得処理(s109)から読取情報のクリア処理(s108)までの一連の処理が各モバイルリーダ12a~12cにおいて繰り返し実行される。
【0045】
サーバ14は、受信処理(s203)により新規読取情報を受信する度に、更新処理(s208)を実行する。更新処理(s208)では、サーバ14のCPUが、各モバイルリーダ12a~12cから受信した新規読取情報を既読情報として登録ファイルに追加登録する。そして、サーバ14は、上記説明した登録ファイルの送信処理(s207)から更新処理(s208)までの一連の処理が繰り返し実行される。
【0046】
本実施形態の読取システムは、各モバイルリーダ12a~12cがサーバ14から取得した登録ファイル内の既読情報と読取情報の重複を確認して、重複していない読取情報のみをサーバ14に送信する。サーバ14では、各モバイルリーダ12a~12cから新規読取情報を受信する度に上記の登録ファイルが更新される。このように、都度更新される登録ファイルに基づいて、各モバイルリーダ12a~12c内で重複確認処理が実行されるので、サーバ14に送信される新規読取情報の重複が低減され、サーバ14おける重複排除処理の負荷が軽減されることとなる。
【0047】
また、各モバイルリーダ12a~12cが、受信した登録ファイルの内容を携帯情報端末28のディスプレイ78に表示させることで、読取作業の進捗を把握できるといった利点もある。
【0048】
[第3実施形態]
【0049】
第3実施形態の読取システムは、第1実施形態や第2実施形態と同様のハードウェア構成であるが、サーバ14が登録ファイルに代えて消込ファイルを有し、各モバイルリーダ12a~12cが消込ファイルに基づいて第3重複確認処理を実行している点で異なっている。以下、第1実施形態や第2実施形態と同様の構成や処理については同一の符号を付して説明を適宜省略し、異なる構成や処理を中心に説明することとする。
【0050】
消込ファイルは、店舗内で管理されている商品がリスト化されたファイルであって、商品情報ごとに識別情報が対応付けられた複数のレコードにより構成されている。商品情報は、商品の名称や型番などに代表される商品の情報である。このような消込ファイルは、読取作業が開始される前にサーバ14の記憶部86に格納される。
【0051】
ここで、第3実施形態では、サーバ14が、各モバイルリーダ12a~12cから受信した識別情報(新規読取情報)に対応するレコードに読取フラグをセットすることで、読取済みの商品をリストから消し込むこととしている。以下、具体的な動作フローについて、図8に基づいて説明する。
【0052】
サーバ14は、モバイルリーダ12a~12cのファイルの送信リクエスト(s109)に応じて、消込ファイルをモバイルリーダ12a~12cに対して送信する(s207)。
【0053】
モバイルリーダ12a~12cでは、消込ファイルを取得したあと(s109)、読取処理(s101)、第1重複確認処理(s102)、及び既読領域への登録処理(s104)が実行される。そして、既読領域内の既読情報と重複しない読取情報が携帯情報端末28へと送信される。
【0054】
次に、モバイルリーダ12a~12cでは、取得した消込ファイルに基づいて第3重複確認処理が実行される(s110)。本実施形態の第3重複確認処理(s110)では、携帯情報端末28のCPU62が、読取フラグが未セットとなっているレコードを消込ファイルから抽出し、抽出されたレコードに含まれる識別情報と読取ユニットから受信した読取情報とを照らし合わせて、重複の有無を確認する。その結果、重複していない読取情報がある場合には、当該読取情報を新規読取情報としてサーバ14に送信する(s107)。そして、モバイルリーダ12a~12cでは読取情報のクリア(s108)が実行され、ファイルの取得処理(s109)が実行されることとなる。
【0055】
サーバ14は、受信処理(s203)によって新規読取情報を受信する度に、更新処理(s208)を実行する。本実施形態の更新処理(s208)では、サーバ14のCPUが、受信した新規読取情報をキーとした検索を消込ファイルに対して行い、検索された識別情報に対応するレコードに読取済みを指標する読取フラグをセットする。読取フラグがセットされることで、消込ファイル内の識別情報が消し込まれることとなる。そして、サーバ14では、上記説明したファイルの送信処理(s207)から更新処理(s208)までの一連の処理が繰り返し実行される。
【0056】
また、本実施形態では、モバイルリーダ12a~12cが読取作業の進捗を通知する通知処理を実行することとしている。通知処理は、モバイルリーダ12a~12cの携帯情報端末28がサーバ14から消込ファイルを受信する度に実行されることが好ましい。具体的には、携帯情報端末28のCPU62は、消込ファイルを受信すると、当該消込ファイルに含まれるレコードにおいて読取フラグが未セットのレコード数をカウントし、カウント結果をディスプレイ78に表示させる。これにより、モバイルリーダ12a~12cを使用するユーザに対して、読み取るべき商品の残数を知らせることが可能となる。
【0057】
他の通知態様としては、CPU62は、消込ファイルの総レコード数の逆数に、読取フラグがセット済となっているレコード数を乗じて、読み取った商品数の割合を求め、当該割合をディスプレイ78に表示させる。これにより、ユーザに対して読み取った商品数の割合を通知することができる。このように、携帯情報端末28のCPU62及びディスプレイは読取作業の進捗状況をユーザに通知する進捗通知部92(図3)として機能している。
【0058】
以上、本発明に係る読取システムを実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は、上記した形態に限らないことは勿論であり、例えば、以下のような形態で実施されても構わない。
【0059】
<変形例>
(1)上記の各実施形態では、読取ユニット30のCPU36が第1重複確認処理(s102)を実行することで第1重複確認部44として機能していたが、携帯情報端末28のCPU62が第1重複確認処理を実行することで第1重複確認部として機能しても構わない。即ち、携帯情報端末28のCPU62が、第1~第3確認処理を実行することで重複確認部として機能しても構わない。
【0060】
(2)上記の各実施形態における第1重複確認処理(s102)は必須ではなく、第2重複確認処理(s106)や第3重複確認処理(s110)のみを実行してもよい。つまり、第2重複確認処理(s106)や第3重複確認処理(s110)を実行することで、各モバイルリーダ12a~12cで読み取った識別情報の重複を確認することができるため、サーバ14における重複排除処理を軽減することができる。
【0061】
(3)また、第1実施形態において、第3重複確認処理(s110)を加えても構わない。すなわち、図9に示すように、モバイルリーダ12a~12cは、初期化処理(s100)を実行した後、ファイルの取得処理(s109)、読取処理(s101)、第1重複確認処理(s102,s103a)、既読領域への登録処理(s104)、既読ファイルの取得処理(s105)、第2重複確認処理(s106,s103b)、第3重複確認処理(s110)、新規読取情報の送信処理(s107)、及び読取情報のクリア処理(s108)を繰り返し実行してもよい。また、サーバ14は、ファイルの送信処理(s207)、既読ファイルの送信処理(s201)、受信処理(s203)、登録処理(s204)、及び更新処理(s208)を繰り返し実行しても良い。
【0062】
(4)モバイルリーダ12a~12cは、CPU62によって駆動制御されるバイブレータ90を携帯情報端末28内に備え、CPU62は、読取ユニット30から重複していない読取情報を受信した場合に、バイブレータ90を駆動させてもよい。また、CPU62は、第2重複確認処理(s106)や第3重複確認処理(s110)において重複を確認した結果、重複していない読取情報がある場合に、バイブレータ90を駆動させてもよい。また、モバイルリーダ12a~12cは、CPU62によって制御されるスピーカを携帯情報端末28内に備え、重複していない読取情報を受信した場合や確認した場合に、スピーカから音を出力してもよい。他には、CPU62は、重複していない読取情報を受信した場合や確認した場合に、ディスプレイ78に当該読取情報を表示させてもよい。すなわち、モバイルリーダ12a~12cは、重複していない読取情報を検出したことを作業者(ユーザ)に対して通知する読取通知部(不図示)を備えても良い。
【0063】
(5)登録ファイルの既読情報には、読取を行った位置を指標する位置情報が対応付けられても良い。具体的には、モバイルリーダ12a~12cの携帯情報端末28は、GPSに代表される位置取得部を備え、読取ユニット30から読取情報を受信したときに、CPU62が、当該携帯情報端末28の位置情報を取得する。その後、CPU62は、新規読取情報とともに当該位置情報をサーバ14へ送信する。サーバ14では、CPUが新規読取情報を既読情報として登録ファイルに登録するとともに、受信した位置情報を対応付けて登録する。これにより、商品の陳列場所を管理することができる。なお、位置情報はGPSにより取得される情報に限られない。例えば、商品の各陳列エリアや店舗の階層毎に、位置情報を記憶したRFタグ20を配置し、読取ユニット30を通じて当該RFタグ20を読み取ることによって取得しても構わない。また、当該位置情報は商品情報や当該商品の識別情報に対応付けて消込ファイルのレコードに格納しても構わない。
【0064】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々なる改良、修正、又は変形を加えた態様でも実施できる。また、同一の作用又は効果が生じる範囲内で、何れかの発明特定事項を他の技術に置換した形態で実施しても良い。
【0065】
例えば、本発明の読取システムにより読み取られる対象物は、商品に付されたRFタグに限られず、図書館において管理されている書物に付されたRFタグであってもよい。すなわち、RFタグによって管理されている物品であればよい。
【符号の説明】
【0066】
14 … サーバ
12a~12c … 携帯読取端末(モバイルリーダ)
10 … 読取システム
40 … 読取部
72 … 携帯読取端末の受信部
70 … 携帯読取端末の送信部
84 … サーバの受信部
82 … サーバの送信部
44 … 第1重複確認部
76 … 第2重複確認部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9