(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-28
(45)【発行日】2022-02-07
(54)【発明の名称】ソレノイドバルブ
(51)【国際特許分類】
F16K 31/06 20060101AFI20220131BHJP
H01F 7/16 20060101ALI20220131BHJP
【FI】
F16K31/06 305E
H01F7/16 D
H01F7/16 E
H01F7/16 R
F16K31/06 305J
(21)【出願番号】P 2019530998
(86)(22)【出願日】2018-07-12
(86)【国際出願番号】 JP2018026293
(87)【国際公開番号】W WO2019017271
(87)【国際公開日】2019-01-24
【審査請求日】2021-01-19
(31)【優先権主張番号】P 2017139200
(32)【優先日】2017-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000101879
【氏名又は名称】イーグル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100163212
【氏名又は名称】溝渕 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100156535
【氏名又は名称】堅田 多恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】西村 直己
(72)【発明者】
【氏名】清水 聡
【審査官】篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-202311(JP,A)
【文献】特開2009-036328(JP,A)
【文献】特開2006-307984(JP,A)
【文献】特開2012-163130(JP,A)
【文献】特開2003-314738(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/06
H01F 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に移動可能な可動鉄心と、
前記可動鉄心の外周に配置されるソレノイド成形体と、
前記可動鉄心および前記ソレノイド成形体を収容するソレノイドケースと、
前記ソレノイド成形体の内側に配置され、前記ソレノイド成形体のコイルへの通電により前記可動鉄心との間で磁力を発生させる固定鉄心と、を具備し、
被取付部材に水平方向に取付けられるソレノイドバルブであって、
前記固定鉄心には、鉛直方向下方に磁束の形成を抑制する高磁気抵抗領域が設けられ
、
前記高磁気抵抗領域は、前記固定鉄心の鉛直方向下方に設けられる切欠き部であることを特徴とするソレノイドバルブ。
【請求項2】
前記固定鉄心は、前記可動鉄心との対向端面に環状の軸方向突出部を備え、
前記高磁気抵抗領域は、前記軸方向突出部の鉛直方向下方に設けられることを特徴とする請求項
1に記載のソレノイドバルブ。
【請求項3】
前記軸方向突出部には、前記可動鉄心の前記固定鉄心側を挿入可能な凹部が設けられることを特徴とする請求項
2に記載のソレノイドバルブ。
【請求項4】
前記高磁気抵抗領域は、前記軸方向突出部の径方向下方側に180°未満の範囲で設けられることを特徴とする請求項
2または
3に記載のソレノイドバルブ。
【請求項5】
軸方向に移動可能な可動鉄心と、
前記可動鉄心の外周に配置されるソレノイド成形体と、
前記可動鉄心および前記ソレノイド成形体を収容するソレノイドケースと、
前記ソレノイド成形体の内側に配置され、前記ソレノイド成形体のコイルへの通電により前記可動鉄心との間で磁力を発生させる固定鉄心と、を具備し、
被取付部材に水平方向に取付けられるソレノイドバルブであって、
前記可動鉄心の軸心は、前記固定鉄心の軸心よりも上方に配置されていることを特徴とするソレノイドバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば油圧回路の油圧制御に用いられるソレノイドバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の油圧制御用のソレノイドバルブとしては、磁性体から構成されるソレノイドケースの内部に収容されコイルを有するソレノイド成形体と、ソレノイド成形体の内部に配置される円筒状の固定磁極(固定鉄心)および円柱状の可動磁極(可動鉄心)と、を具備し、コイルへの通電によりソレノイドケース、固定磁極、可動磁極により磁気回路が形成され、固定磁極と可動磁極との間に磁力(吸引力)を発生させ、可動磁極を固定磁極側に向けて軸方向に移動させるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、このようなソレノイドバルブにおいては、可動磁極の軸方向の移動を円滑にするために、可動磁極と可動磁極が挿入されるソレノイドケースの対向部との間において径方向のクリアランスが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-233790号公報(第7頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1にあっては、油圧制御ユニット(被取付部材)に対して水平方向に取付けられるソレノイドバルブにおいては、可動磁極はソレノイドケースの対向部内において径方向のクリアランス分だけその自重により鉛直方向下方に片寄って配置されるため、コイルへの通電により磁気回路が形成された際に可動磁極には上方側よりも下方側に作用する磁力が大きくなる。そのため、可動磁極の下方側には上方側よりも固定磁極側に向けて軸方向に強い引っ張り力が作用し、可動磁極の移動方向後退側を下方に押し付ける力が作用し、可動磁極の移動時の摺動摩擦力が大きくなり可動磁極の作動性を低下させてしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、可動鉄心の作動性を高めることができるソレノイドバルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明のソレノイドバルブは、
軸方向に移動可能な可動鉄心と、
前記可動鉄心の外周に配置されるソレノイド成形体と、
前記可動鉄心および前記ソレノイド成形体を収容するソレノイドケースと、
前記ソレノイド成形体の内側に配置され、前記ソレノイド成形体のコイルへの通電により前記可動鉄心との間で磁力を発生させる固定鉄心と、を具備し、
被取付部材に水平方向に取付けられるソレノイドバルブであって、
前記固定鉄心には、鉛直方向下方に磁束の形成を抑制する高磁気抵抗領域が設けられることを特徴としている。
この特徴によれば、固定鉄心には、鉛直方向下方に高磁気抵抗領域が設けられることにより、ソレノイド成形体のコイルへの通電により磁気回路が形成された際に可動鉄心の上方側よりも下方側に形成される磁束が疎となり、可動鉄心の上方側よりも下方側に作用する磁力を小さくすることができるため、被取付部材に水平方向に取付けられるソレノイドバルブにおいて、可動鉄心が自重により鉛直方向下方に片寄って配置されていても、可動鉄心の上方側と下方側に作用する磁力の偏りを小さくして可動鉄心の前進側または後退側を下方に押し付ける力の発生を抑え、摺動摩擦力を小さくして可動鉄心の作動性を高めることができる。
【0008】
前記高磁気抵抗領域は、前記固定鉄心の鉛直方向下方に設けられる切欠き部であることを特徴としてもよい。
これによれば、固定鉄心の鉛直方向下方に切欠き部が設けられることにより、切欠き部における可動鉄心と固定鉄心との相対距離を大きくすることができるため、可動鉄心の上方側よりも下方側に作用する磁力を小さくすることができるとともに、ソレノイドバルブの外部からソレノイド成形体の内部に侵入するコンタミネーションが切欠き部を通して外部へ排出されやすくなるため、可動鉄心の作動性を高めることができる。
【0009】
前記固定鉄心は、前記可動鉄心との対向端面に環状の軸方向突出部を備え、
前記高磁気抵抗領域は、前記軸方向突出部の鉛直方向下方に設けられることを特徴としてもよい。
これによれば、固定鉄心の環状の軸方向突出部の鉛直方向下方に高磁気抵抗領域が設けられることにより、可動鉄心が固定鉄心の軸方向突出部に近接した状態において、可動鉄心の上方側と下方側とで固定鉄心の軸方向突出部との間で作用する磁力を調整しやすい。
【0010】
前記軸方向突出部には、前記可動鉄心の前記固定鉄心側を挿入可能な凹部が設けられることを特徴としてもよい。
これによれば、可動鉄心の固定鉄心側が固定鉄心の軸方向突出部に設けられる凹部に挿入されることにより、可動鉄心の外周面と軸方向突出部の内周面との径方向の距離が近くなるため、軸方向突出部の鉛直方向下方に高磁気抵抗領域を設けることにより、可動鉄心の上方側と下方側に作用する磁力の調整代を大きくすることができる。
【0011】
前記高磁気抵抗領域は、前記軸方向突出部の径方向下方側に180°未満の範囲で設けられることを特徴としてもよい。
これによれば、高磁気抵抗領域は、軸方向突出部の径方向下方側に180°未満の範囲で設けられるため、可動鉄心が固定鉄心の軸方向突出部に設けられる凹部に挿入された状態から下方側に脱落しないようにすることができる。
【0012】
前記課題を解決するために、本発明のソレノイドバルブは、
軸方向に移動可能な可動鉄心と、
前記可動鉄心の外周に配置されるソレノイド成形体と、
前記可動鉄心および前記ソレノイド成形体を収容するソレノイドケースと、
前記ソレノイド成形体の内側に配置され、前記ソレノイド成形体のコイルへの通電により前記可動鉄心との間で磁力を発生させる固定鉄心と、を具備し、
被取付部材に水平方向に取付けられるソレノイドバルブであって、
前記可動鉄心の軸心は、前記固定鉄心の軸心よりも上方に配置されていることを特徴としている。
この特徴によれば、可動鉄心の軸心は、固定鉄心の軸心よりも上方に配置されていることにより、ソレノイド成形体のコイルへの通電により磁気回路が形成された際に可動鉄心の上方側よりも下方側に形成される磁束が疎となり、可動鉄心の上方側よりも下方側に作用する磁力を小さくすることができるため、被取付部材に水平方向に取付けられるソレノイドバルブにおいて、可動鉄心が自重により鉛直方向下方に片寄って配置されていても、可動鉄心の上方側と下方側に作用する磁力の偏りを小さくして可動鉄心の前進側または後退側を下方に押し付ける力の発生を抑え、摺動摩擦力を小さくして可動鉄心の作動性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施例1におけるソレノイドバルブのオフ状態を示す一部切欠断面図であり、拡大部分は磁束を模式した説明図である。
【
図3】コイルへの通電によりプランジャがステータ側に移動するソレノイドバルブのオン状態を示す一部切欠断面図である。
【
図4】実施例2におけるソレノイドバルブの構造を示す一部切欠断面図である。
【
図5】実施例3におけるソレノイドバルブの構造を示す一部切欠断面図である。
【
図6】実施例4におけるソレノイドバルブの構造を示す一部切欠断面図である。
【
図7】実施例5におけるソレノイドバルブの構造を示す一部切欠断面図である。
【0014】
本発明に係るソレノイドバルブを実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0015】
実施例1に係るソレノイドバルブにつき、
図1から
図3を参照して説明する。以下、
図1の紙面左側をソレノイドバルブの上方側、
図1の紙面右側をソレノイドバルブの下方側として説明する。
【0016】
ソレノイドバルブ1は、スプールタイプのソレノイドバルブであって、例えば車両の自動変速機等の油圧により制御される装置に用いられるものである。尚、ソレノイドバルブ1は、図示しないバルブハウジング等の被取付部材に水平方向に取付けられる。
【0017】
図1に示されるように、ソレノイドバルブ1は、バルブとして流体の流量を調整するバルブ部2が電磁駆動部としてのソレノイド部3に一体に取り付けられて構成されている。尚、
図1は、ソレノイド成形体31のコイル34に通電されていないソレノイドバルブ1のオフ状態を示すものである。
【0018】
図1に示されるように、バルブ部2は、外周に図示しないバルブハウジング内に設けられた流路と接続される図示しない入力ポートや出力ポート等の開口が設けられたスリーブ21と、スリーブ21の貫通孔21aに液密に収容され図示しない複数のランドを有するスプール22と、スプール22を軸方向左方に付勢する図示しないコイル状のスプリングと、スプリングを保持するリテーナ23と、から構成されている。この構成はスプールバルブとして良く知られた構成であるため詳細な説明は省略する。尚、スリーブ21、スプール22、リテーナ23は、アルミ、鉄、ステンレス、樹脂等の材料により形成されている。
【0019】
ソレノイド部3は、鉄等の磁性を有する金属材料から形成されるソレノイドケース30と、ソレノイドケース30に収容されるソレノイド成形体31と、ソレノイド成形体31の内側に配置される固定鉄心32と、ソレノイドケース30の円筒部30aの軸方向左端部にカシメ固定されるエンドプレート33と、から主に構成されている。
【0020】
ソレノイド成形体31は、コイル34とロアプレート35を樹脂36によりモールド成形することにより一体に形成され、ソレノイドケース30の外部に延び出ているコネクタ部36aのコネクタから制御電圧がコイル34へ供給されるようになっている。
【0021】
固定鉄心32は、ソレノイド成形体31の内側に設けられ、エンドプレート33側から順に、径方向に延びるフランジが形成された環状のサイドリング37と、段付き円筒状のステータ38と、から構成されている。尚、サイドリング37の内周側には環状のスペーサ37aが固定されている。
【0022】
固定鉄心32の内側の空間には、プランジャ4(可動鉄心)とロッド5が軸方向移動可能に配置されている。プランジャ4は、円柱状に形成され、その外周面がサイドリング37の内周側に配置される環状のスペーサ37aの内周面に案内されて軸方向移動可能となっている。尚、プランジャ4の外周面とスペーサ37aの内周面との間には、径方向のクリアランスが設けられており、プランジャ4は軸方向に円滑に移動できるようなっている。ロッド5は、プランジャ4と略同軸すなわち径方向の中心の延長線上に配置され、ステータ38の径方向の中心に設けられる貫通孔38cの内部を軸方向移動可能となっている。また、プランジャ4とロッド5とは、円板状の連結部材40を介して一体的に移動可能になっており、ロッド5の軸方向右側(バルブ部2側)の先端はスプール22の軸方向左側(ソレノイド部3側)の環状面部22aから軸方向左方に突出する突出部22bに当接している。尚、ロッド5の軸方向右側の先端とスプール22の突出部22bとは固定されていてもよい。
【0023】
次いで、固定鉄心32を構成するステータ38の構造について説明する。
図1および
図2に示されるように、ステータ38は、段付き円筒状に形成され、軸方向左側の太径部38aと、軸方向右側の小径部38bと、径方向の中心にロッド5を挿通可能な貫通孔38cと、を備え、太径部38aには、太径部38aよりも小径に形成され軸方向左方へ突出する下向きC字状の軸方向突出部38dが設けられている。詳しくは、軸方向突出部38dには、内径側にプランジャ4よりも大径に形成され軸方向右方に凹む凹部38eが設けられるとともに、鉛直方向下方を所定範囲切欠かれることにより高磁気抵抗領域としての切欠き部38fが設けられている。尚、切欠き部38fは形状を意味するのであって切欠いて形成するもののみを意味しない。
【0024】
また、ステータ38は、小径部38bがソレノイド成形体31を構成するロアプレート35に挿通された状態で軸方向右端部をスリーブ21の開口21bに挿嵌されることにより、相対移動不可に固定されている。尚、
図1に示されるように、ソレノイドバルブ1のオフ状態においては、ステータ38は、小径部38bの軸方向右側の開口端部38gがスリーブ21に収容されるスプール22の軸方向左側の環状面部22aと当接することにより、スプール22の軸方向左方への移動を規制している。
【0025】
次いで、ソレノイドバルブ1の動作について説明する。
図1に示されるソレノイドバルブ1のオフ状態において、コイル34への通電によりソレノイドケース30、固定鉄心32、プランジャ4により磁気回路を形成し、ステータ38とプランジャ4との間に磁力を発生させることにより、
図3に示されるように、プランジャ4をステータ38側に向けて軸方向右方へ移動させることができる。このとき、プランジャ4の駆動力を利用してロッド5を一体的に軸方向右方へ移動させることにより、ロッド5の軸方向右側の先端がスプール22の突出部22bを押し、スプール22を図示しないスプリングの付勢力に抗して軸方向右方に移動させることにより、スリーブ21の図示しない入力ポートから出力ポートへ流れる制御流体の量を変化させることができる。
【0026】
また、コイル34への通電が遮断され、ステータ38とプランジャ4との間に発生していた磁力が相対的に弱まると、図示しないスプリングの付勢力によりスプール22が軸方向左方へ移動し、スプール22の軸方向左側の環状面部22aがステータ38の軸方向右側の開口端部38gに当接しスプール22の移動が規制され、プランジャ4およびロッド5が軸方向左側(エンドプレート33側)の
図1に示される所定の位置まで移動する。
【0027】
次に、ソレノイドバルブ1のオン状態においてステータ38とプランジャ4との間で発生する磁力について
図1を参照して詳しく説明する。
図1に示されるように、ステータ38の軸方向突出部38dは、鉛直方向下方が所定範囲切欠かれ高磁気抵抗領域としての切欠き部38fが設けられることにより、切欠き部38fにおけるステータ38とプランジャ4との間の相対距離が大きくなるため、切欠き部38fが設けられる軸方向突出部38dの鉛直方向下方において磁束の形成が抑制される。これによれば、コイル34への通電により磁気回路が形成された際に、
図1の拡大部分に矢印で示されるように、プランジャ4の上方側よりも下方側に形成される磁束が疎となり、ステータ38との間においてプランジャ4の上方側よりも下方側に作用する磁力を小さくすることができる。
【0028】
以上説明したように、本実施例のソレノイドバルブ1は、プランジャ4の軸方向右端部が外嵌されるステータ38の軸方向突出部38dの鉛直方向下方に高磁気抵抗領域としての切欠き部38fが設けられ、コイル34への通電により磁気回路が形成された際に、ステータ38との間においてプランジャ4の上方側よりも下方側に作用する磁力を小さくすることができるため、バルブハウジングに水平方向に取付けられるソレノイドバルブ1において、プランジャ4が自重により鉛直方向下方に片寄って配置されていても、プランジャ4の上方側と下方側に作用する磁力の偏りを小さくしてプランジャ4の前進側または後退側を下方に押し付ける力の発生を抑え、プランジャ4の移動時の摺動摩擦力を小さくしてプランジャ4の作動性を高めることができる。
【0029】
また、ステータ38の軸方向突出部38dの鉛直方向下方に切欠き部38fが設けられることにより、プランジャ4の軸方向右端部が軸方向突出部38dに近接した状態において、プランジャ4の上方側と下方側とでステータ38の軸方向突出部38dとの間において作用する磁力を調整しやすい。
【0030】
さらに、プランジャ4の軸方向右端部がステータ38の凹部38eに挿入され、プランジャ4の軸方向右端部が軸方向突出部38dにより外嵌されることにより、プランジャ4の外周面との軸方向突出部38dの内周面との径方向の距離を近くすることができるため、軸方向突出部38dの鉛直方向下方に高磁気抵抗領域としての切欠き部38fを設けることにより、プランジャ4の上方側と下方側に作用する磁力の調整代を大きくすることができる。
【0031】
また、高磁気抵抗領域としての切欠き部38fは、軸方向突出部38dの径方向下方側に180°未満の範囲で設けられるため、プランジャ4がステータ38の凹部38eに挿入された状態で軸方向突出部38dにより下方側に脱落しないようにすることができる。
【0032】
また、高磁気抵抗領域がステータ38の軸方向突出部38dの鉛直方向下方に設けられる切欠き部38fであることにより、切欠き部38fにおけるプランジャ4とステータ38との相対距離を大きくすることができるため、プランジャ4の上方側よりも下方側に作用する磁力を小さくすることができるだけでなく、ソレノイドバルブ1の外部からソレノイド成形体31および固定鉄心32の内部に侵入するコンタミネーションがステータ38の軸方向突出部38dに設けられる切欠き部38fを通して外部へ排出されやすくなるため、プランジャ4の作動性を高めることができる。尚、高磁気抵抗領域は、磁束の形成を抑制することができるものであれば、例えば軸方向突出部38dの鉛直方向下方の所定範囲が磁気抵抗の大きい金属や樹脂等の材料から構成されるものや、プランジャ4の外周面との径方向の相対距離が大きくなるように薄肉に構成されるものであってもよい。
【実施例2】
【0033】
次に、実施例2に係るソレノイドバルブにつき、
図4を参照して説明する。尚、前記実施例に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0034】
図4に示されるように、実施例2におけるソレノイドバルブ101は、ステータ138の鉛直方向下方に設けられる切欠き部138fが軸方向突出部138dから凹部138eの底面までの範囲を切欠かれることにより形成されている。
【0035】
そのため、ソレノイドバルブ101において、ステータ138の鉛直方向下方に設けられる切欠き部138fによりプランジャ4の軸方向右端部に対するステータ138の径方向下方側の空間を大きく開放させることができるため、切欠き部138fにより軸方向突出部138dの鉛直方向下方における磁束の形成が抑制される。これによれば、コイル34への通電により磁気回路が形成された際に、ステータ138との間においてプランジャ4の上方側よりも下方側に作用する磁力を小さくすることができる。
【実施例3】
【0036】
次に、実施例3に係るソレノイドバルブにつき、
図5を参照して説明する。尚、前記実施例に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0037】
図5に示されるように、実施例3におけるソレノイドバルブ201は、ステータ238の鉛直方向下方に設けられる切欠き部138fが凹部238eの底面から貫通孔238cの軸方向中央付近までの範囲を切欠かれることにより形成されている。
【0038】
そのため、ソレノイドバルブ201において、ステータ238の鉛直方向下方に設けられる切欠き部238fによりプランジャ4の軸方向右端部の下方側に対するステータ238の軸方向の相対距離を大きくすることができるため、切欠き部238fによりプランジャ4の下方側における磁束の形成が抑制される。これによれば、コイル34への通電により磁気回路が形成された際に、ステータ238との間においてプランジャ4の上方側よりも下方側に作用する磁力を小さくすることができる。
【実施例4】
【0039】
次に、実施例4に係るソレノイドバルブにつき、
図6を参照して説明する。尚、前記実施例に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0040】
図6に示されるように、実施例4におけるソレノイドバルブ301は、ステータ338は切欠き部を有しておらず周方向に対称形状に構成されるとともに、サイドリング337の軸方向右端側の鉛直方向下方が切欠かれることにより切欠き部337bが形成されている。
【0041】
そのため、ソレノイドバルブ301において、プランジャ4の外周側に配置されるサイドリング337の軸方向右端部の鉛直方向下方に切欠き部337bが設けられることにより、プランジャ4の軸方向右端部の下方側を外嵌する固定鉄心32としてのサイドリング337の鉛直方向下方の空間を開放させることができるため、切欠き部337bによりプランジャ4の下方側における磁束の形成が抑制される。これによれば、コイル34への通電により磁気回路が形成された際に、ステータ338との間においてプランジャ4の上方側よりも下方側に作用する磁力を小さくすることができる。
【実施例5】
【0042】
次に、実施例5に係るソレノイドバルブにつき、
図7を参照して説明する。尚、前記実施例に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0043】
図7に示されるように、実施例5におけるソレノイドバルブ401は、ステータ438は切欠き部を有しておらず周方向に対称形状に構成されるとともに、プランジャ4の軸心A1がステータ438の軸心A2よりもΔdだけ上方に配置されている。
【0044】
そのため、プランジャ4の軸心A1は、ステータ438の軸心A2よりもΔdだけ上方に配置されていることにより、コイル34への通電により磁気回路が形成された際に、ステータ438との間においてプランジャ4の上方側よりも下方側に作用する磁力を小さくすることができるため、バルブハウジングに水平方向に取付けられるソレノイドバルブ1において、プランジャ4が自重により鉛直方向下方に片寄って配置されていても、プランジャ4の上方側と下方側に作用する磁力の偏りを小さくしてプランジャ4の前進側または後退側を下方に押し付ける力の発生を抑え、プランジャ4の移動時の摺動摩擦力を小さくしてプランジャ4の作動性を高めることができる。
【0045】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0046】
例えば、前記実施例では、固定鉄心32を構成するサイドリング37,337およびスペーサ37a,337aと、ステータ38,138,238,338とが別体に設けられるものとして説明したが、これに限らず、固定鉄心は、サイドリング、スペーサ、ステータが一体に構成されるものであってもよい。
【0047】
また、実施例4で説明したサイドリング337およびスペーサ337aを実施例1~3において用いてもよく、さらに、実施例1~3で説明したステータ38,138,238を実施例4において用いてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 ソレノイドバルブ
2 バルブ部
3 ソレノイド部
4 プランジャ(可動鉄心)
5 ロッド
21 スリーブ
22 スプール
30 ソレノイドケース
31 ソレノイド成形体
32 固定鉄心
33 エンドプレート
34 コイル
35 ロアプレート
37 サイドリング(固定鉄心)
37a スペーサ
38 ステータ(固定鉄心)
38a 太径部
38b 小径部
38c 貫通孔
38d 軸方向突出部
38e 凹部
38f 切欠き部(高磁気抵抗領域)
38g 開口端部