(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-28
(45)【発行日】2022-02-07
(54)【発明の名称】水吸収液、ドロー溶液及び正浸透水処理方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/28 20060101AFI20220131BHJP
B01D 61/00 20060101ALI20220131BHJP
B01D 53/14 20060101ALI20220131BHJP
C07C 233/05 20060101ALI20220131BHJP
【FI】
B01D53/28
B01D61/00 500
B01D53/14 220
C07C233/05
(21)【出願番号】P 2017070471
(22)【出願日】2017-03-31
【審査請求日】2019-12-02
(31)【優先権主張番号】P 2016125064
(32)【優先日】2016-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591167430
【氏名又は名称】株式会社KRI
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 淳
(72)【発明者】
【氏名】森 理恵
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-049500(JP,A)
【文献】特開2015-054292(JP,A)
【文献】特開2005-261339(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/14、22、26-28
B01D 61/00-71/82
C07C 233/05
C09K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分を含む気体と接触することにより水分を吸収して希薄溶液となり水分を吸収する能力が低下した水吸収液を、下限臨界溶液温度より高い温度に加熱することで相分離させ、液体-液体の分液により水分を分離し水吸収液を高濃度化して再生可能である水吸収液であって、前記水吸収液が
、N,N-ジプロピルアセトアミド、N,N-ジイソプロピルアセトアミド、N-プロピルプロパンアミド、N-イソプロピルプロパンアミド、N,N-ジエチルブタンアミド及びN,N-ジメチルヘキサンアミドのいずれかである水溶性化合物
、または
N,N-ジプロピルアセトアミド、N,N-ジイソプロピルアセトアミド、N-プロピルプロパンアミド、N-イソプロピルプロパンアミド、N,N-ジエチルブタンアミド及びN,N-ジメチルヘキサンアミドのいずれかである水溶性化合物と水からなることを特徴とする水吸収液。
【請求項2】
水分を含む溶液と半透膜を介して接触させるドロー溶液であって、前記ドロー溶液が請求項
1に記載の水吸収液からなることを特徴とするドロー溶液。
【請求項3】
請求項
2に記載のドロー溶液と、水分を含む供給溶液とを半透膜を介して接触させることで、供給溶液中の水分をドロー溶液に吸収させることを特徴とする正浸透水処理方法。
【請求項4】
供給溶液から水分を吸収した希薄ドロー溶液を下限臨界溶液温度より高い温度に加熱することで相分離させ、液体‐液体の分液により水分を分離しドロー溶液を高濃度化して再生することを特徴とする請求項
3に記載の正浸透水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は気体との接触によって気体中の水分を吸収する水吸収液およびその再生方法に関する。また、本発明は正浸透法におけるドロー溶液及び正浸透水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
気体中の水分を吸収する技術として、特許文献1には吸湿性液体として、ポリエチレングリコール(M=400)、トリエチレングリコールおよびテトラエチレングリコールを使用する除湿装置に関する技術が記載されている。
特許文献2には吸収液としてトリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、グリセリンなどの群から選ばれた有機系水溶液又は塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、塩化カルシウムなどの群から選ばれた無機系水溶液を使用する湿式デシカント空調機に関する技術が記載されている。
特許文献3には吸湿液としてエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、及び、トリプロピレングリコールを使用する低温調湿装置に関する技術が記載されている。
【0003】
しかし、特許文献1に記載された技術では、吸湿性液体を多孔質膜に保持させ、多孔質膜の一方の面で吸湿し、他方の面を減圧することで吸湿した水分を水蒸気として除去し吸湿性液体を再生している。
特許文献2に記載された技術では、水分を吸収した吸収液を膜分離装置で水分を気化させることで除去している。
特許文献1および2の技術では、吸湿性液体または吸収液の再生に減圧を必要とし減圧装置とエネルギーを要する
特許文献3に記載された技術では、水分を吸収した吸湿液に温風を接触させて水分を蒸発させることで除去している。この技術では水分を常圧で蒸発させる必要があり、高温を必要とする。
以上のように、従来の技術は課題を有している。
【0004】
次に、正浸透法は、濃度すなわち浸透圧が異なる二種類の溶液を、半透膜を介して接触させ、これらの二種類の溶液の浸透圧差を小さくする方向に、すなわち濃度が低い溶液から濃度が高い溶液に水が移動する現象を利用するものである。ここで浸透圧が低い溶液を供給液、浸透圧が高い溶液をドロー溶液(水吸収液)と呼ぶ。
本発明者は、ドロー溶液としてグリコールエーテル系の水溶性液体化合物に関する技術を出願している(特許文献4)。
【0005】
しかし、特許文献4に記載された技術では、ドロー溶液にグリコールエーテル系の水溶性液体化合物を使用するため、長期間の使用に際し過酸化物を生じる懸念がある。
以上のように、従来の技術は課題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-350918号公報
【文献】特開2009-180433号公報
【文献】特開2015-175553号公報
【文献】特開2016-49500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、水分を吸収した希薄水吸収液を高濃度化して再生利用することが容易で、また低粘度な水吸収液を提供することである。
また、本発明の目的は、過酸化物を生じる危険の少ない非エーテル系化合物をドロー溶液として使用し、希薄ドロー溶液を高濃度化して再生利用することが容易で、また低粘度でしかも高浸透圧なドロー溶液を提供し、そのドロー溶液を用いた正浸透水処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明者は鋭意検討を行った結果、本発明を完成した。すなわち、本発明は、以下の技術的手段から構成される。
〔1〕 水分を含む気体と接触することにより水分を吸収して希薄溶液となり水分を吸収する能力が低下した水吸収液を、下限臨界溶液温度より高い温度に加熱することで相分離させ、液体-液体の分液により水分を分離し水吸収液を高濃度化して再生可能である水吸収液であって、前記水吸収液が一般式(1)で示される水溶性化合物または一般式(1)で示される水溶性化合物と水からなることを特徴とする水吸収液。
【化1】
[式中、R1
は炭素数1~6の直鎖状もしくは分岐状アルキル基、R2、R3は互いに独立して、水素原子、炭素数1~6の直鎖状もしくは分岐状アルキル
基を表し、R1、R2、R3の炭素数の和が5~7である。]
〔2〕 前記一般式(1)の水溶性化合物が、N,N-ジプロピルアセトアミド、N,N-ジイソプロピルアセトアミド、N-プロピルプロパンアミド、N-イソプロピルプロパンアミド、N,N-ジエチルブタンアミド及びN,N-ジメチルヘキサンアミドのいずれかであることを特徴とする前記〔1〕に記載の水吸収液。
〔3〕 水分を含む溶液と半透膜を介して接触させるドロー溶液であって、前記ドロー溶液が前記〔1〕又は前記〔2〕に記載の水吸収液からなることを特徴とするドロー溶液。
〔4〕 前記〔3〕に記載のドロー溶液と、水分を含む供給溶液とを半透膜を介して接触させることで、供給溶液中の水分をドロー溶液に吸収させることを特徴とする正浸透水処理方法。
〔5〕 供給溶液から水分を吸収した希薄ドロー溶液を下限臨界溶液温度より高い温度に加熱することで相分離させ、液体‐液体の分液により水分を分離しドロー溶液を高濃度化して再生することを特徴とする前記〔4〕に記載の正浸透水処理方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、水分を吸収した希薄水吸収液を高濃度化して再生利用することが容易で、また低粘度な水吸収液を提供することが可能である。
【0010】
本発明によれば、希薄ドロー溶液からドロー溶質と水とを分離しドロー溶液を高濃度化して再生利用することが容易なドロー溶液を提供することが可能である。また、本発明によれば、低粘度でしかも高浸透圧なドロー溶液を提供することが可能である。
また、本発明の水吸収液は、長期間使用しても過酸化物を生じる懸念がないという特徴も有している。
【0011】
また、本発明によれば、低エネルギーで処理水から水分を吸収できる正浸透水処理方法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の正浸透水処理方法の処理手順の一例を示したフローチャート図である。
【
図2】
図2は、本発明の正浸透水処理方法を実施するための装置の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の水吸収液は、水との混合物が下限臨界溶液温度を有し、水分を含む気体と接触することにより水分を吸収して希薄溶液となり水分を吸収する能力が低下した水吸収液を、下限臨界溶液温度より高い温度に加熱することで相分離させ、液体‐液体の分液により水分を分離し水吸収液を高濃度化して再生可能である水吸収液であって、前記〔1〕に記載の一般式(1)で示される水溶性化合物または一般式(1)で示される水溶性化合物と水からなることを特徴とする水吸収液である。
【0014】
前記〔1〕に記載の一般式(1)において、R1、R2、R3の炭素数の和が4以下の水溶性液体化合物では任意の割合で純水と混和するが、体積比1:1の水溶液を加熱しても相分離することはなく下限臨界溶液温度を有しない。また炭素数の和が8以上では体積比1:1で純水と混和しない。
【0015】
さらに好ましい前記一般式(1)で示される水溶性液体化合物としては、N,N-ジプロピルアセトアミド、N,N-ジイソプロピルアセトアミド、N-プロピルプロパンアミド、N-イソプロピルプロパンアミド、N,N-ジエチルブタンアミド及びN,N-ジメチルヘキサンアミドを例示することができる。
【0016】
そして、前記〔1〕に記載の一般式(1)で示される水溶性液体化合物は、温度10~20℃以下において任意の割合で純水と混和し、純水と緩やかにかき混ぜた場合に、流動がおさまった後も当該混合液が均一な外観を維持する。そして、前記水溶性液体化合物と水との混合物は、下限臨界溶液温度を有する。
【0017】
本発明の水吸収液は、前記一般式(1)で示される水溶性液体化合物(以下、「」を単独で用いることができるが、前記一般式(1)で示される2種類以上の水溶性液体化合物の混合物として用いても良い。
又、前記一般式(1)で示される水溶性液体化合物又は前記混合物(以下、「本発明の水溶性化合物」と称する場合がある。)と水からなる水溶液として用いても良い。その場合、本発明の水溶性化合物と水の組成比は、気体から水分を吸収できれば制限はないが、気体からの吸水量を多くするためには、本発明の水溶性化合物の組成比はできるだけ大きいほうが好ましい。通常は、水吸収液中に50%以上の本発明の水溶性化合物を含む必要がある。
【0018】
本発明のドロー溶液は、水分を含む溶液と半透膜を介して接触させるドロー溶液であって、前記ドロー溶液は、前記〔1〕に記載の一般式(1)で示される水溶性液体化合物または前記一般式(1)で示される水溶性液体化合物と水からなる溶液である。
【0019】
本発明のドロー溶液は、前記一般式(1)で示される水溶性液体化合物を単独で用いることができるが、前記一般式(1)で示される2種類以上の水溶性液体化合物の混合物として用いても良い。
又、前記一般式(1)で示される水溶性液体化合物又は前記混合物と水からなる水溶液として用いても良い。その場合、本発明の水溶性化合物と水の組成比は、前記供給溶液よりも高い浸透圧が達成できれば制限はないが、前記供給溶液からの給水量を多くするためには、また前記供給溶液の濃縮倍率を大きくするためには、本発明の水溶性化合物の組成比はできるだけ大きいほうが好ましい。通常は、ドロー溶液中に30%以上の本発明の水溶性化合物を含む必要がある。
【0020】
続いて、本発明の正浸透水処理方法の手順について説明する。
図1は、ドロー溶液として一般式(1)で示される水溶性液体化合物と水からなるドロー溶液を用いる場合の本発明の正浸透水処理方法の処理手順を示したフローチャート図である。
【0021】
まず、一般式(1)で示される水溶性液体と水と混合しドロー溶液を調製する第一ステップ(S01)を実施する。なお、この第一ステップ(S01)は、ドロー溶液として一般式(1)で示される水溶性液体化合物と水からなるドロー溶液を用いる場合は省略することができる。次いで、ドロー溶液と供給溶液とを半透膜を介して接触させ、供給溶液の水分をドロー溶液に吸収させる第二ステップ(S02)を実施する。続いて、水分を吸収した希薄ドロー溶液を下限臨界溶液温度(LCST)より高い温度に加熱し、密度に応じて上層と下層に水溶性液体層と水層とに相分離させる第三ステップ(S03)を実施する。さらに続いて、下層または上層の水層を清澄水として回収し、同時に上層または下層の高濃度化した水溶性液体層を回収する第四ステップ(S04)を実施する。
【0022】
第一ステップ(S01)では、水溶性液体と水分とを所定の組成比で混合しドロー溶液を調製する。水は使用せず水溶性液体をそのままドロー溶液とすることもできる。第一ステップはドロー液調製容器で行ってもよいし、後述のドロー液/水分離システム内で行ってもよい。またドロー溶質として水と任意の割合で混和する水溶性液体化合物を用いることで、高濃度ドロー溶液を調製することができる。
【0023】
第二ステップ(S02)では、ドロー溶液と供給溶液とを半透膜を介して接触させさせることで、供給溶液中の水分をドロー溶液に吸収させる。
前記の供給溶液は、供給溶液中の水分を除去して他の成分を濃縮させる必要があるものであれば特に限定されないが、例示すると、海水、各種排水、嗜好飲料、果汁、有用物質含有希薄溶液などを挙げることができる。
また、前記半透膜としては、とくに限定はされず、通常は市販の半透膜を使用することができる。
【0024】
前記のようにドロー溶液は高浸透圧なので、供給溶液から効率良く水分を吸収することができる。浸透圧の低い供給溶液から浸透圧の高いドロー溶液への水分の吸収は正浸透という現象で自然に起こるので、第二ステップ(S02)では、供給溶液から低エネルギーで水分を吸収することができる。本発明の正浸透水処理方法を供給溶液濃縮の目的で使用する場合は、第二ステップで水分を吸収され濃縮された供給溶液が目的物となる。第二ステップは水分吸収システム内で実施される。
【0025】
第三ステップ(S03)では、水分を吸収した希薄ドロー溶液を下限臨界溶液温度(LCST)より高い温度に加熱する。下限臨界溶液温度(LCST)より高い温度に加熱することで、希薄ドロー溶液は溶質である水溶性液体と水とに相分離する。水溶性液体の密度が1.00よりも小さい場合は、下層が水層、上層が水溶性液体層になり、水溶性液体の密度が1.00よりも大きい場合は、下層が水溶性液体層、上層が水層になる。第三ステップはドロー液/水分離システム内で実施される。
【0026】
第四ステップ(S04)では、下層または上層の水層と上層または下層の高濃度水溶性液体層を分離する。ドロー溶質は液体なので、この分離には濾過システムは必要なく、分液により容易に分離を行うことができる。第四ステップで分離した高濃度水溶性液体はそのまま第一ステップ(S01)のドロー溶液として用いることができる。
【0027】
第四ステップで分離した水層は清澄水として回収する。本発明の正浸透水処理方法で得られる清澄水には、ドロー溶質が混入している可能性があり、清澄水は用途に応じて更なる精製工程を経る。例えば蒸溜や逆浸透膜による純水の獲得である。本発明の清澄水の不純物はドロー溶質のみであり、供給溶液から直接蒸溜や逆浸透膜により純水の獲得する場合よりも装置への負荷が小さくなる。たとえば、蒸溜の際の不純物の混入が非常に小さい、装置の腐食がない、蒸溜残渣を生じない、逆浸透膜のファウリングや劣化が非常に小さい、などの利点がある。
【0028】
図2は、本発明の正浸透水処理方法を実施するための装置の一例を示す模式図である。
【実施例】
【0029】
[合成実施例1]
ジイソプロピルアミン46gおよびトリエチルアミン51gをジクロロメタン200mLに溶解した。この溶液を氷浴で冷却しながら塩化アセチル22gをジクロロメタン100mLに溶解した溶液を滴下した。反応液を室温で3時間攪拌した。反応液に水200mLを加え有機相を分離した。有機相を2mol/Lの塩酸100mLで2回、次いで飽和炭酸水素ナトリウムで1回洗浄した。得られた溶液を無水硫酸マグネシウムで脱水した後、溶媒を減圧溜去し油状のN,N-ジイソプロピルアセトアミド31gを得た。
1H-NMR/CDCl3 δ/ppm:3.90(1H、m)、3.53(1H、m)、2.07(3H、s)、1.37(6H、d)、1.21(6H、d)
【0030】
[合成実施例2]
n-プロピルアミン18gおよびトリエチルアミン44gをジクロロメタン200mLに溶解した。この溶液を氷浴で冷却しながら塩化プロパノイル21gをジクロロメタン100mLに溶解した溶液を滴下した。反応液を室温で3時間攪拌した。反応液に水200mLを加え有機相を分離した。有機相を2mol/Lの塩酸100mLで2回、次いで飽和炭酸水素ナトリウムで1回洗浄した。得られた溶液を無水硫酸マグネシウムで脱水した後、溶媒を減圧溜去し油状のN-プロピルプロパンアミド22gを得た。
1H-NMR/CDCl3 δ/ppm:6.68(1H、brs)、3.19(2H、q)、2.23(2H、q)、1.51(2H、m)、1.15(3H、t)、0.92(3H、t)
【0031】
[合成実施例3]
イソプロピルアミン41gをジクロロメタン200mLに溶解した。この溶液を氷浴で冷却しながら塩化プロパノイル24gをジクロロメタン100mLに溶解した溶液を滴下した。反応液を室温で3時間攪拌した。反応液に水200mLを加え有機相を分離した。有機相を2mol/Lの塩酸100mLで2回、次いで飽和炭酸水素ナトリウムで1回洗浄した。得られた溶液を無水硫酸マグネシウムで脱水した後、溶媒を減圧溜去し固体状のN-イソプロピルプロパンアミド24gを得た。
1H-NMR/CDCl3 δ/ppm:5.55(1H,brs)、4.07(1H、m)、2.15(2H、q)、1.14(6H+3H、m)
【0032】
[合成実施例4]
ジエチルアミン77gをジクロロメタン200mLに溶解した。この溶液を氷浴で冷却しながら塩化ブタノイル51gをジクロロメタン100mLに溶解した溶液を滴下した。反応液を室温で3時間攪拌した。反応液に水200mLを加え有機相を分離した。有機相を2mol/Lの塩酸100mLで2回、次いで飽和炭酸水素ナトリウムで1回洗浄した。得られた溶液を無水硫酸マグネシウムで脱水した後、溶媒を減圧溜去し油状のN,N-ジエチルブタンアミド53gを得た。
1H-NMR/CDCl3 δ/ppm:3.38(3H、q)、3.31(3H、q)、2.27(2H、t)、1.67(2H、m)、1.17(3H、t)、1.11(3H、t)、0.96(3H、t)
【0033】
[合成実施例5]
ジプロピルアミン32gおよびトリエチルアミン36gをジクロロメタン100mLに溶解した。この溶液を氷浴で冷却しながら塩化アセチル22gを滴下した。反応液を室温で3時間攪拌した。反応液に水200mLを加え有機相を分離した。有機相を2mol/Lの塩酸100mLで2回、次いで飽和炭酸水素ナトリウムで1回洗浄した。得られた溶液を無水硫酸マグネシウムで脱水した後、溶媒を減圧溜去し油状のN,N-ジプロピルアセトアミド36gを得た。
1H-NMR/CDCl3 δ/ppm:3.17(4H,t)、2.07(3H、s)、1.49(4H、m)、0.92(6H、d)
【0034】
[合成実施例6]
2mol/Lのジメチルアミンテトラヒドロフラン溶液100mLおよびトリエチルアミン22gを混合した。この溶液を氷浴で冷却しながら塩化ヘキサノイル20gを滴下した。反応液を室温で3時間攪拌した。反応液に水200mLを加え有機相を分離した。有機相を2mol/Lの塩酸100mLで2回、次いで飽和炭酸水素ナトリウムで1回洗浄した。得られた溶液を無水硫酸マグネシウムで脱水した後、溶媒を減圧溜去し油状のN,N-ジメチルヘキサンアミド18gを得た。
1H-NMR/CDCl3 δ/ppm:3.01(3H,s)、2.94(3H,s)、2.31(2H,t)、1.63(2H,m)、1.33(4H,m)、0.90(3H、t)
【0035】
[合成比較例1]
ジエチルアミン49gをジクロロメタン200mLに溶解した。この溶液を氷浴で冷却しながら塩化ヘキサノイル29gをジクロロメタン100mLに溶解した溶液を滴下した。反応液を室温で3時間攪拌した。反応液に水200mLを加え有機相を分離した。有機相を2mol/Lの塩酸100mLで2回、次いで飽和炭酸水素ナトリウムで1回洗浄した。えられた溶液を無水硫酸マグネシウムで脱水した後、溶媒を減圧溜去し油状のN,N-ジエチルヘキサンアミド33gを得た。
1H-NMR/CDCl3 δ/ppm:3.31(3H、q)、3.24(3H、q)、2.21(2H、t)、1.57(2H、m)、1.25(4H、m)、1.11(3H、t)、1.14(3H、t)、0.83(3H、t)
【0036】
[相分離実施例1]
合成実施例1で得られたN,N-ジイソプロピルアセトアミド10mLと水10mLとを30mLのスクリュー管に入れ、20℃において手で振り混ぜ混合した。この混合液は流動がおさまった後も均一な外観を維持した。この混合液を加熱しながら外観の変化を観察した。混合溶液が均一な外観を示さなくなる下限臨界溶液温度は、49℃であった。60℃における水溶性液体層の体積率は55%、含水量は20%であった。
【0037】
[相分離実施例2]
合成実施例2で得られたN-プロピルプロパンアミド10mLと水10mLとを30mLのスクリュー管に入れ、20℃において手で振り混ぜ混合した。この混合液は流動がおさまった後二層に分離したが、15℃以下に冷却すると均一な外観を維持した。この混合溶液が均一な外観を示さなくなる下限臨界溶液温度は、15℃であった。60℃における水溶性液体層の体積率は53%、含水量は15%であった。
【0038】
[相分離実施例3]
合成実施例3で得られたN-イソプロピルプロパンアミド10mLと水10mLとを30mLのスクリュー管に入れ、20℃において手で振り混ぜ混合した。この混合液は流動がおさまった後も均一な外観を維持した。この混合液を加熱しながら外観の変化を観察した。混合溶液が均一な外観を示さなくなる下限臨界溶液温度は、37℃であった。60℃における水溶性液体層の体積率は53%、含水量は13%であった。
【0039】
[相分離実施例4]
合成実施例4で得られたN,N-ジエチルブタンアミド10mLと水10mLとを30mLのスクリュー管に入れ、20℃において手で振り混ぜ混合した。この混合液は流動がおさまった後も均一な外観を維持した。この混合液を加熱しながら外観の変化を観察した。混合溶液が均一な外観を示さなくなる下限臨界溶液温度は、39℃であった。60℃における水溶性液体層の体積率は54%、含水量は17%であった。
【0040】
[相分離実施例5]
合成実施例5で得られたN,N-ジプロピルアセトアミド10mLと水10mLとを30mLのスクリュー管に入れ、20℃において手で振り混ぜ混合した。この混合液は流動がおさまった後も均一な外観を維持した。この混合液を加熱しながら外観の変化を観察した。混合溶液が均一な外観を示さなくなる下限臨界溶液温度は、59℃であった。65℃における水溶性液体層の体積率は53%、含水量は15%であった。
【0041】
[相分離実施例6]
合成実施例6で得られたN,N-ジメチルヘキサンアミド10gと水10gとを30mLのスクリュー管に入れ、20℃において手で振り混ぜ混合した。この混合液は流動がおさまった後も均一な外観を維持した。この混合液を加熱しながら外観の変化を観察した。混合溶液が均一な外観を示さなくなる下限臨界溶液温度は、42℃であった。60℃における上層のN,N-ジメチルヘキサンアミドの濃度は71%、下層のN,N-ジメチルヘキサンアミドの濃度は18%であった。
【0042】
[相分離比較例1]
合成比較例1で得られたN,N-ジエチルヘキサンアミド10mLと水10mLとを30mLのスクリュー管に入れ、20℃において手で振り混ぜ混合した。この混合液は流動がおさまった後も均一の溶液にならず二層に分離した。この混合液を15℃に冷却しても均一の溶液にならず二層に分離したままであった。
【0043】
[相分離比較例2]
市販のN,N-ジメチルプロピオンアミド(東京化成製)10mLと水10mLとを30mLのスクリュー管に入れ、20℃において手で振り混ぜ混合した。この混合液は流動がおさまった後も均一な外観を維持した。この混合液を15℃に冷却しても均一な外観を維持したままであった。この混合液を加熱しながら外観の変化を観察した。80℃まで加熱しても均一な溶液のままであった。
【0044】
[吸水実施例1]
合成実施例1で得られたN,N-ジイソプロピルアセトアミドの70%水溶液2gを底面積8cm2のシャーレに入れた。水10mLを底面積8cm2のシャーレに入れた。二つのシャーレを同じ密閉容器内に入れ、室温で17時間放置した。N,N-ジイソプロピルアセトアミド水溶液は2.4gになった。
【0045】
[吸水実施例2]
合成実施例3で得られたN-プロピルプロパンアミドの70%水溶液2gを底面積8cm2のシャーレに入れた。水10mLを底面積8cm2のシャーレに入れた。二つのシャーレを同じ密閉容器内に入れ、室温で17時間放置した。N-プロピルプロパンアミド水溶液は2.5gになった。
【0046】
[吸水実施例3]
合成実施例3で得られたN-イソプロピルプロパンアミドの75%水溶液2gを底面積8cm2のシャーレに入れた。水10mLを底面積8cm2のシャーレに入れた。二つのシャーレを同じ密閉容器内に入れ、室温で17時間放置した。N-イソプロピルプロパンアミド水溶液は2.9gになった。
【0047】
[吸水実施例4]
合成実施例4で得られたN,N-ジエチルブタンアミドの80%水溶液2gを底面積8cm2のシャーレに入れた。水10mLを底面積8cm2のシャーレに入れた。二つのシャーレを同じ密閉容器内に入れ、室温で17時間放置した。N,N-ジエチルブタンアミド水溶液は2.8gになった。
【0048】
[吸水実施例5]
合成実施例5で得られたN,N-ジプロピルアセトアミドの75%水溶液2gを底面積8cm2のシャーレに入れた。水10mLを底面積8cm2のシャーレに入れた。二つのシャーレを同じ密閉容器内に入れ、室温で17時間放置した。N,N-ジプロピルアセトアミド水溶液は2.6gになった。
【0049】
[吸水実施例6]
合成実施例6で得られたN,N-ジメチルヘキサンアミドの70%水溶液2gを底面積8cm2のシャーレに入れた。水10mLを底面積8cm2のシャーレに入れた。二つのシャーレを同じ密閉容器内に入れ、室温で17時間放置した。N,N-ジメチルヘキサンアミド水溶液は2.5gになった。
【0050】
[正浸透吸水実施例1]
合成実施例1で得られたN,N-ジイソプロピルアセトアミドの70%水溶液(計算浸透圧11.5MPa)30mLと3.5%食塩水(計算浸透圧2.9MPa)30mLとを、面積28cm2のホリアキ株式会社製 セロファンシート『ラップインセロパック』を介して接触させ静置した。17時間後、N,N-ジイソプロピルアセトアミド層は50mLに、食塩水層は10mLになった。
【0051】
[正浸透吸水実施例2]
合成実施例2で得られたN-プロピルプロパンアミドの70%水溶液(計算浸透圧14.3MPa)30mLと3.5%食塩水(計算浸透圧2.9MPa)30mLとを、面積28cm2のホリアキ株式会社製 セロファンシート 『ラップインセロパック』を介して接触させ静置した。17時間後、N-プロピルプロパンアミド層は50mLに、食塩水層は10mLになった。
【0052】
[正浸透吸水実施例3]
合成実施例3で得られたN-イソプロピルプロパンアミドの75%水溶液(計算浸透圧15.3MPa)30mLと3.5%食塩水(計算浸透圧2.9MPa)30mLとを、面積28cm2のホリアキ株式会社製 セロファンシート 『ラップインセロパック』を介して接触させ静置した。17時間後、N-イソプロピルプロパンアミド層は48mLに、食塩水層は12mLになった。
【0053】
[正浸透吸水実施例4]
合成実施例4で得られたN,N-ジエチルブタンアミドと純水との体積比80:20の混合溶液(計算浸透圧13.9MPa)50mLと3.5%食塩水(計算浸透圧2.9MPa)50mLとを、面積28cm2のホリアキ株式会社製 セロファンシート 『ラップインセロパック』を介して接触させ静置した。17時間後、N,N-ジエチルブタンアミド層は75mLに、食塩水層は25mLになった。
【0054】
[正浸透吸水実施例5]
合成実施例5で得られたN,N-ジプロピルアセトアミドの70%水溶液(計算浸透圧11.5MPa)30mLと3.5%食塩水(計算浸透圧2.9MPa)30mLとを、面積28cm2のホリアキ株式会社製 セロファンシート 『ラップインセロパック』を介して接触させ静置した。17時間後、N,N-ジプロピルアセトアミド層は46mLに、食塩水層は14mLになった。
【0055】
[正浸透吸水実施例6]
合成実施例6で得られたN,N-ジメチルヘキサンアミドの70%水溶液(計算浸透圧11.5MPa)30mLと3.5%食塩水(計算浸透圧2.9MPa)30mLとを、面積28cm2のホリアキ株式会社製 セロファンシート 『ラップインセロパック』を介して接触させ静置した。17時間後、N,N-ジメチルヘキサンアミド層は47mLに、食塩水層は13mLになった。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の水吸収液は、空調装置、除湿装置、などに用いられる。
本発明のドロー溶液を用いた及び正浸透水処理方法は、海水または排水からの飲料水・工業用水または農業用水の回収、排水の体積低減、正浸透発電、嗜好飲料の濃縮、果汁の濃縮、有用物質含有希薄溶液の濃縮、などに用いられる。