(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-28
(45)【発行日】2022-02-07
(54)【発明の名称】歩行補助具
(51)【国際特許分類】
A61H 3/00 20060101AFI20220131BHJP
A61H 1/02 20060101ALI20220131BHJP
B25J 11/00 20060101ALI20220131BHJP
【FI】
A61H3/00 B
A61H1/02 N
B25J11/00 Z
(21)【出願番号】P 2018005386
(22)【出願日】2018-01-17
【審査請求日】2020-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】507418692
【氏名又は名称】トヨフレックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076831
【氏名又は名称】伊藤 捷雄
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 直和
【審査官】今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-079132(JP,A)
【文献】特表2014-508010(JP,A)
【文献】特開2003-135542(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0119613(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 1/02-3/00
B25J 1/00-3/00
B25J 11/00
A61F 5/00-5/02
A61F 5/052
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行時の脚の運びに合わせて足のつま先を持ち上げる補助を行う歩行補助具であって、
腰部に保持される腰部ホルダーに対し大腿部に保持される大腿部ホルダーを支軸プーリを介して回転可能に支持すると共に、前記腰部ホルダーに対して前記支軸プーリを固定手段を介して固定し、前記大腿部の振り出し動作に伴う前記大腿部ホルダーの回転運動を歩行補助力として取り出す歩行補助力発生部と、
足が載置される足載置本体部を足首位置を支点として傾動可能とする足載置板と、
前記足載置本体部
の幅方向両側に駆動力を前記足載置本体部にそれぞれ伝達する第1駆動プーリと第2駆動プーリを備えた足載置板駆動ユニットをそれぞれ配置し、前記各足載置板駆動ユニットにより前記足載置本体部を傾動可能に駆動する足載置板駆動部と、
入力プーリと一体に同方向に回転駆動される第1分配プーリと第2分配プーリとを備えた歩行補助力分配部と、
前記支軸プーリと前記入力プーリとの間にクロスして掛け回されて緊張状態を保持し、前記歩行補助力発生部で取り出した歩行補助力を前記入力プーリに伝達する第1ワイヤーロープ部と、
前記第1分配プーリと前記第1駆動プーリとの間に掛け回されて緊張状態を保持し、前記入力プーリに伝達された歩行補助力を前記第1駆動プーリに伝達する第2ワイヤーロープ部と、
前記第2分配プーリと前記第2駆動プーリとの間に掛け回されて緊張状態を保持し、前記入力プーリに伝達された歩行補助力を前記第2駆動プーリに伝達する第3ワイヤーロープ部と、
を有する歩行補助具。
【請求項2】
歩行時の脚の運びに合わせて足のつま先を持ち上げる補助を行う歩行補助具であって、
腰部に保持される腰部ホルダーに対し大腿部に保持される大腿部ホルダーを支軸プーリを介して回転可能に支持すると共に、前記腰部ホルダーに対して前記支軸プーリを固定手段を介して固定し、前記大腿部の振り出し動作に伴う前記大腿部ホルダーの回転運動を歩行補助力として取り出す歩行補助力発生部と、
足が載置される足載置本体部を足首位置を支点として傾動可能とする足載置板と、
前記足載置本体部の幅方向
のいずれか一方に駆動力を前記足載置本体部に伝達する駆動プーリを備えた足載置板駆動ユニットを配置し、前記足載置板駆動ユニットにより前記足載置本体部を傾動可能に駆動する足載置板駆動部と、
前記支軸プーリと前記駆動プーリとの間にクロスして掛け回されて緊張状態を保持し、前記歩行補助力発生部で取り出した歩行補助力を前記入力プーリに伝達する第1ワイヤーロープ部と、
を有する歩行補助具。
【請求項3】
前記固定手段は、前記支軸プーリの軸部を円柱形状とする軸本体部の外周部の一部について対向する2面を平坦面に形成した平坦部を有する横断面形状とし、前記支軸プーリの軸部を軸支する前記腰部ホルダーに設けた軸受け部の内周を前記支軸プーリの前記軸本体部の前記平坦部が嵌合する平坦内面部を上下に有する形状に形成すると共に、前記腰部ホルダーに設けた軸受け部を軸中心点を通る半径方向の軸線を分割線として上下方向に2分割構造とし、2分割された上側の軸受分割部に対して下側の軸受分割部をばね部材により付勢することにより前記上下の軸受分割部を一体化して前記支軸プーリを前記腰部ホルダーに固定し、前記支軸プーリに所定の回転トルク以上の回転トルクが加わると、前記平坦部が前記平坦内周面から抜け出しながら前記下の軸受分割部の内周面を前記ばね部材のばね力に抗して押し下げ、前記腰部ホルダーに対して前記支軸プーリを空転させることを特徴とする請求項1または2に記載の歩行補助具。
【請求項4】
前記固定手段は、前記支軸プーリの軸部に径方向に沿ってスライド可能に設けられ、径方向外方に向けて互いに相反する方向にばね部材により付勢される第1可動ロック部材と第2可動ロック部材が前記支軸プーリの軸部を軸支する前記腰部ホルダーに設けた軸受け部の第1係合凹部と第2係合凹部に係合することにより前記支軸プーリを前記腰部ホルダーに固定し、前記支軸プーリに所定の回転トルク以上の回転トルクが加わると、前記第1可動ロック部材と前記第2可動ロック部材が楔効果により前記第1係合凹部と前記第2係合凹部との係合を抜け出し、前記腰部ホルダーに対して前記支軸プーリを空転させることを特徴とする請求項1または2に記載の歩行補助具。
【請求項5】
前記足載置板駆動ユニットは、前記足載置本体部の傾動支点に軸孔を有するアーム片を挟んで両側に配置した一対の摩擦板を有し、前記一方の摩擦板に前記駆動プーリが一体的に回転可能に取り付けられ、前記駆動プーリと前記双方の摩擦板を前記軸孔を通して締付手段で締め付けて一体化し、締付力を調節可能とする摩擦クラッチ構成したことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の歩行補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行の際に脚の運びに合わせて蹴り出した足のつま先を持ち上げる動作を補助する補助力を足に伝達する歩行補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
歩行の際に、足のつま先が上がらないと、例えば僅かな段差につまずくことがある。このため、足のつま先を持ち上げる歩行補助具が提案されている(特許文献1、2)。
【0003】
特許文献1に開示の歩行補助具は、足首を挟んで、足を載せて固定する足装具部と下腿に固定される下腿装具部とを所定の回転角度範囲内に回転可能に連結し、下腿装具部に対して足装具部をつま先上がり方向にばねで付勢した構成としている。
【0004】
特許文献2に開示の歩行補助具は、モータからの動力をフレキシブルシャフトにより膝関節および足首関節に伝達して装着者の下肢部分の動きを補助する。そして、装着者の下腿部分の動きを検知し、モータの回転角およびトルクを制御することにより装着者により自然な歩行動作をもたらすようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-210351号公報
【文献】特開2009-213671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示の歩行補助具は、ばねにより足装着部を常時つま先上がり方向に付勢しているため、装着者によっては違和感を覚えるおそれがある。
【0007】
一方、特許文献2に開示の歩行補助具は、装着者の動きに合わせた歩行補助が行われるが、モータを制御回路で駆動しているため、システムが大掛かりとなり、高価になるものであった。
【0008】
本発明の目的は、装着者の歩行に合わせて蹴り出した足のつま先を持ち上げる動作を電気的なシステムを不要として補助できる歩行補助具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的を実現する歩行補助具の第1の構成は、歩行時の脚の運びに合わせて足のつま先を持ち上げる補助を行う歩行補助具であって、腰部に保持される腰部ホルダーに対し大腿部に保持される大腿部ホルダーを支軸プーリを介して回転可能に支持すると共に、前記腰部ホルダーに対して前記支軸プーリを固定手段を介して固定し、前記大腿部の振り出し動作に伴う前記大腿部ホルダーの回転運動を歩行補助力として取り出す歩行補助力発生部と、足が載置される足載置本体部を足首位置を支点として傾動可能とする足載置板と、前記足載置本体部の幅方向両側に駆動力を前記足載置本体部にそれぞれ伝達する第1駆動プーリと第2駆動プーリを備えた足載置板駆動ユニットをそれぞれ配置し、前記各足載置板駆動ユニットにより前記足載置本体部を傾動可能に駆動する足載置板駆動部と、入力プーリと一体に同方向に回転駆動される第1分配プーリと第2分配プーリとを備えた歩行補助力分配部と、前記支軸プーリと前記入力プーリとの間にクロスして掛け回されて緊張状態を保持し、前記歩行補助力発生部で取り出した歩行補助力を前記入力プーリに伝達する第1ワイヤーロープ部と、前記第1分配プーリと前記第1駆動プーリとの間に掛け回されて緊張状態を保持し、前記入力プーリに伝達された歩行補助力を前記第1駆動プーリに伝達する第2ワイヤーロープ部と、前記第2分配プーリと前記第2駆動プーリとの間に掛け回されて緊張状態を保持し、前記入力プーリに伝達された歩行補助力を前記第2駆動プーリに伝達する第3ワイヤーロープ部と、を有する。
【0010】
本発明の目的を実現する歩行補助具の第2の構成は、歩行時の脚の運びに合わせて足のつま先を持ち上げる補助を行う歩行補助具であって、腰部に保持される腰部ホルダーに対し大腿部に保持される大腿部ホルダーを支軸プーリを介して回転可能に支持すると共に、前記腰部ホルダーに対して前記支軸プーリを固定手段を介して固定し、前記大腿部の振り出し動作に伴う前記大腿部ホルダーの回転運動を歩行補助力として取り出す歩行補助力発生部と、足が載置される足載置本体部を足首位置を支点として傾動可能とする足載置板と、前記足載置本体部の幅方向のいずれか一方に駆動力を前記足載置本体部に伝達する駆動プーリを備えた足載置板駆動ユニットを配置し、前記足載置板駆動ユニットにより前記足載置本体部を傾動可能に駆動する足載置板駆動部と、前記支軸プーリと前記駆動プーリとの間にクロスして掛け回されて緊張状態を保持し、前記歩行補助力発生部で取り出した歩行補助力を前記入力プーリに伝達する第1ワイヤーロープ部と、を有する。
【0011】
本発明の目的を実現する歩行補助具の第3の構成は、上記いずれかの構成において、前記固定手段は、前記支軸プーリの軸部を円柱形状とする軸本体部の外周部の一部について対向する2面を平坦面に形成した平坦部を有する横断面形状とし、前記支軸プーリの軸部を軸支する前記腰部ホルダーに設けた軸受け部の内周を前記支軸プーリの前記軸本体部の前記平坦部が嵌合する平坦内面部を上下に有する形状に形成すると共に、前記腰部ホルダーに設けた軸受け部を軸中心点を通る半径方向の軸線を分割線として上下方向に2分割構造とし、2分割された上側の軸受分割部に対して下側の軸受分割部をばね部材により付勢することにより前記上下の軸受分割部を一体化して前記支軸プーリを前記腰部ホルダーに固定し、前記支軸プーリに所定の回転トルク以上の回転トルクが加わると、前記平坦部が前記平坦内周面から抜け出しながら前記下の軸受分割部の内周面を前記ばね部材のばね力に抗して押し下げ、前記腰部ホルダーに対して前記支軸プーリを空転させる構成とすることができる。
【0012】
本発明の目的を実現する歩行補助具の第4の構成は、上記第1または第2の構成において、前記固定手段は、前記支軸プーリの軸部に径方向に沿ってスライド可能に設けられ、径方向外方に向けて互いに相反する方向にばね部材により付勢される第1可動ロック部材と第2可動ロック部材が前記支軸プーリの軸部を軸支する前記腰部ホルダーに設けた軸受け部の第1係合凹部と第2係合凹部に係合することにより前記支軸プーリを前記腰部ホルダーに固定し、前記支軸プーリに所定の回転トルク以上の回転トルクが加わると、前記第1可動ロック部材と前記第2可動ロック部材が楔効果により前記第1係合凹部と前記第2係合凹部との係合を抜け出し、前記腰部ホルダーに対して前記支軸プーリを空転させる構成とすることができる。
【0015】
本発明の目的を実現する歩行補助具の第5の構成は、上記いずれかの構成において、前記足載置板駆動ユニットは、前記足載置本体部の傾動支点に軸孔を有するアーム片を挟んで両側に配置した一対の摩擦板を有し、前記一方の摩擦板に前記駆動プーリが一体的に回転可能に取り付けられ、前記駆動プーリと前記双方の摩擦板を前記軸孔を通して締付手段で締め付けて一体化し、締付力を調節可能とする摩擦クラッチ構成とした。
【発明の効果】
【0017】
請求項1、2に係る発明によれば、腰部ホルダーを腰に保持し、大腿部ホルダーを大腿部に保持するだけで、大腿部の振り出し力を歩行補助力として取り出すことができ、大腿部の振り出し力を利用して歩行時の脚の運びに合わせて足のつま先を持ち上げる補助が行える。また、駆動プーリに大きな外力が加わっても、足首に影響を及ぼすことがない。さらに、支軸プーリと入力プーリとの間に掛け回す第1ワイヤーロープ部をクロスさせ、また支軸プーリと駆動プーリとの間に掛け回す第1ワイヤーロープ部をクロスさせることにより、歩行時の足の動きに支障を与えることなくつま先の持ち上げの際に補助力を与え、スムーズな歩行を提供することができる。
【0018】
また、請求項1に係る発明によれば、足載置板本体部を確実に安定して傾動させることができ、第1駆動プーリと第2駆動プーリの2つの駆動プーリに対して効率よく駆動力を伝達することができる。
【0019】
請求項3、4に係る発明によれば、支軸プーリに所定の回転トルク以上の回転トルクが加わると、腰部ホルダーに対して前記支軸プーリが空転し、大腿部への影響が及ばない。
【0023】
請求項5に係る発明によれば、締付手段の締付力の調節で摩擦力を弱めれば、足載置本体部を手作業で角度位置を調節できる。また、安全装置の作動値の調節を行える。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明による歩行補助具の第1実施形態を示し、外側から見た分解斜視図である。
【
図2】
図1に示す歩行補助具の歩行補助力発生部を示し、内側から見た分解斜視図である。
【
図3】
図2に示す歩行補助力発生部を内側から見た正面図である。
【
図4】(a)は
図3のA-A矢視断面図、(b)は
図4(a)のプーリに対して第1ワイヤーロープ部を掛け回した状態を示す図である。
【
図6】
図1に示す歩行補助具の動作を説明する図である。
【
図7】
図1に示す歩行補助具の歩行補助力分配部を示し、内側から見た分解斜視図である。
【
図9】
図1に示す歩行補助具の足傾動部を示し、内側から見た分解斜視図である。
【
図11】
図1に示す歩行補助具の動作を示し、右足の大腿部を後方に引いた蹴り出し前の状態を示す。
【
図12】
図11に続いて、後方に引いた右足の大腿部を前方に向けて振り出し初めた初期時で、下腿が後方に位置する状態を示す。
【
図13】
図12に続いて、振り出した右足が垂直に延びた状態を示す。
【
図14】
図13に続いて、右足を蹴り出して右足の大腿部を前方に向けて振り出した状態を示す。
【
図15】
図14に続いて、右足の膝関節を中心に足を前方に蹴り出した状態を示し、つま先が上向きに持ち上がった状態を示す。
【
図16】本発明の第2実施形態を示す歩行補助力発生部の分解斜視図である。
【
図17】
図16に示す歩行補助力発生部を内側から見た正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0027】
【0028】
先ず、
図1に基づいて第1実施形態の歩行補助具1の概略構成を説明する。
【0029】
人間の歩行動作は、例えば左脚(左下腿)を真っ直ぐにして左足を地面に接地させた状態で、股関節を支点として右脚の右大腿部を後方から前方に向けて振り出し、膝関節を支点として右下腿を前方に蹴り上げる。その際、右足首を支点として右足のつま先を持ち上げるように右足を傾動させる。この右足の傾動動作が不十分であると、つま先が段差などに引っ掛かり、転倒するおそれがある。
【0030】
歩行補助具1の構成
図1に示す歩行補助具1は、右足用で、脚の付け根の関節(股関節)の動きをワイヤーロープの引っ張り力へ変換する歩行補助力発生部10と、歩行補助力分配部30と、足傾動部50と、ロープ駆動ユニットを構成する第1ワイヤーロープ部71と第2ワイヤーロープ部72と第3ワイヤーロープ部73、とを有する。なお、左足用の歩行補助具については、基本的な構成が右足用の歩行補助具1と構成が同じなので図示及び説明を省略する。
【0031】
歩行補助力発生部10の構成
図2は歩行補助力発生部10を内側から見た分解斜視図、
図3は
図2に示す歩行補助力発生部10を内側から見た正面図、
図4(a)は
図3のA-A矢視断面図、
図4(b)は
図4(a)のプーリに対して第1ワイヤーロープ部を掛け回した状態を示す図、
図5は
図4(a)のB-B矢視断面図である。
【0032】
歩行補助力発生部10は、支軸とプーリの両機能を備えた支軸プーリ20により、腰部ホルダー11と大腿部ホルダー12とを相対回転可能に連結し、股関節の動きを大腿部ホルダー11の回転運動に変換する。腰部ホルダー11は、不図示の腰部装着ベルトあるいはバンド等の腰部装着締結手段を介して右腰部に固定される。大腿部ホルダー12は、不図示の大腿部装着ベルトあるいはバンド等の大腿部装着締結手段を介して右大腿部の外側部に固定される。
【0033】
支軸プーリ20は、軸本体部200が腰部ホルダー11の第1軸受部110に固定される。大腿部ホルダー12の第2軸受部120は支軸プーリ20の軸本体部200に対して回転自在に軸支される。支軸プーリ20は軸本体部200が、
図4(a)に示すように、腰部ホルダー11の第1軸受部110に支承される第1軸部201と、大腿部ホルダー12の第2軸受部120に回転自在に支承される第2軸部202とを有する。第1軸部201の軸方向両端部には、抜け止め用のフランジ部F1、F2が形成されている。
【0034】
第1軸部201は、
図5に示すように、円柱形状の軸本体部200の外周部の一部を対向する2面で平坦面に形成したいわゆる2面幅の平坦部203を有する。第1軸受部110の内周は、2面幅の平坦部203が嵌合する平坦内面部111が対向して形成されている。第1軸受部110は、軸中心点を通る半径方向の軸線を分割線として上下方向に2分割構造に形成され、上側の軸受分割部を本体部110A、下側の軸受分割部を可動体部110Bとしている。本体部110Aと可動体部110Bの内周面に、平坦内面部111が対向して形成されている。
【0035】
可動体部110Bは、左右方向両端部に上下方向に貫通形成したねじ挿通孔112に調節ねじ113が挿通され、更に挿通端部が本体部110Aのねじ孔114にねじ込まれる。調節ねじ113は、頭部とねじ挿通孔の座面との間に圧縮コイルばね115と、ゴム製の防塵ブーツ116が挿通されている。防塵ブーツ116は、圧縮コイルばね115と調節ねじ113との間に泥などが入り込むのを防止する。
【0036】
調節ねじ113のねじ込み量を多くすると、圧縮コイルばね115の縮み量が増えてばね力が強まるので、可動体部110Bを本体部110Aに対して離れる方向に移動させるために、より大きな力を要する。
【0037】
すなわち、支軸プーリ20に加わる回転トルクが所定の安全値を超えると、第1軸部201の円弧形状の外周と平坦部203とが交わる角部が第1軸受部110の平坦内面部111との当接により、可動体部110Bを圧縮コイルばね115のばね力に抗して下動する。このため、支軸プーリ20が回転し、過負荷時における駆動側安全装置として機能する。支軸プーリ20に加わる外力(回転トルク)が所定の安全値以下(過負荷以下)の場合、平坦部203と平坦内面部111は、支軸プーリ20を腰部ホルダー11に固定する固定手段をなしている。
【0038】
腰部ホルダー11は、本体部110Aの内側に装着者の右腰部を包み込むように当接する横長形状の内側に向けて凹形状に湾曲した腰部ホルダー本体部13が設けられている。そして、不図示の腰部装着締結手段が腰部ホルダー本体部13を腰部に固定する。
【0039】
次に、第2軸部202は、外周部に第1ワイヤーロープ部71が掛け回されるV字溝204が周方向に沿って形成される。第1ワイヤーロープ部71は、支軸プーリ20のV字溝204と歩行補助力分配部30の後述する入力プーリ32のV字溝39Aとの間に掛け回される2本の第1ワイヤーロープ71Aと、2本の第1ワイヤーロープ71Aを支軸プーリ20と入力プーリ32との間で緊張状態を保持する可撓性を備えた第1アウターチューブ71Bとを有する。
【0040】
図4(b)は、支軸プーリ20に第1ワイヤーロープ部71を掛け回した状態を示している。第1ワイヤーロープ部71を構成する2本の第1ワイヤーロープ71Aは、第1アウターチューブ71Bの各挿通孔内に各第1ワイヤーロープ71Aをそれぞれ挿通し、第1アウターチューブ71Bの両端部から外部に出ている各第1ワイヤーロープ71Aの露出する部分の端部を金属製の端子部材71Cでカシメ固定する。端子部材71Cは、支軸プーリ20の側面に設けた係止溝71Dに係止固定されている。
【0041】
なお、第2ワイヤーロープ部72、第3ワイヤーロープ部73についても同様に構成され、第2ワイヤーロープ部72は2本の第2ワイヤーロープ72Aと第2アウターチューブ部72Bで構成され、第3ワイヤーロープ部73は2本の第3ワイヤーロープ73Aと第3アウターチューブ部73Bで構成される。
【0042】
また、
図4(a)に示すように、第2軸部202には、大腿ホルダー12の抜け止め防止用のフランジ部205が周方向に沿って形成されている。
【0043】
図2および
図3に戻り、大腿部ホルダー12の第2軸受部120は、軸中心点を通る左右方向の軸線を分割線として上下方向に2分割構造に形成され、下側の軸受分割部を本体部120A、上側の軸受分割部を上分割部120Bとしている。本体部120Aと上分割部120Bの内周面に、フランジ部205が軸回りに回転可能で、軸方向に沿ってガタなく嵌合する周溝120Cが形成されている。
【0044】
上分割部120Bは、左右方向両端部に上下方向に貫通形成したねじ挿通孔121に取り付けねじ122が挿通され、更に挿通端部が本体部120Aのねじ孔123にねじ込まれる。
【0045】
大腿部ホルダー12は、本体部120Aの内側に装着者の右大腿部の外側を包み込むように当接する横長形状の内側に向けて凹形状に湾曲した大腿部ホルダー本体部14が設けられている。そして、大腿部ホルダー12の本体部120Aは、不図示の大腿部装着ベルトあるいはバンド等の大腿部装着締結手段を介して右大腿部の外側部に固定される。
【0046】
大腿部ホルダー12の本体部120Aには、周溝120Cに連通するロープ通し孔120Dが上下方向に沿って貫通形成される。第1ワイヤーロープ部71の第1アウターチューブ部71Bの上端部は本体部120Aの下端部に固定され、第1ワイヤーロープ71Aがロープ通し孔120Dを貫通して支軸プーリ20に掛け回されて固定される。
【0047】
図6を参照して
図1に示す歩行補助具1の動作を説明する。
【0048】
本実施形態において、第1ワイヤーロープ部71は、2本の第1ワイヤーロープ71Aをクロス(8の字)して、支軸プーリ20と入力プーリ32との間に掛け渡されている。
図6において、一方の第1ワイヤーロープ71Aを第1ロープW1とし、他方の第1ワイヤーロープ71Aを第2ロープW2として説明する。第1ワイヤーロープ部71のアウターチューブ71Bの第1ロープW1を通すアウターチューブと第2ロープW2を通すアウターチューブをクロスさせることで、第1ロープW1と第2ロープW2をクロスさせている。
【0049】
大腿部ホルダー12は支軸プーリ20を回転支軸として軸回りに回転自在である。大腿部を垂直位置から前方に振り出すと、大腿部ホルダー12が支軸プーリ20を支点として矢印で示す反時計回り方向に回転する。すなわち、支軸プーリ20は、大腿部ホルダー12に対して相対回転するため、第1ロープW1が引かれることになる。つまり、大腿部ホルダー12が反時計回り方向に回転することで、第1ロープW1側のアウターチューブ71Bが押され、第1ロープW1が引っ張られる。このため、引かれた第1ロープW1が歩行補助力分配部30の入力プーリ32を反時計回り方向に回転させる。入力プーリ32が反時計回り方向に回転駆動されると、歩行補助力分配部30の第1分配プーリ33と第2分配プーリ34が第2ワイヤーロープ72A、第3ワイヤーロープ73Aを介して足傾動部50の第1駆動プーリ531、第2駆動プーリ532をそれぞれ反時計回り方向に回転させ、足載置板52を反時計回り方向に傾動し、つま先側を持ち上げる。
【0050】
逆に、大腿部を垂直位置から後方に振ると、大腿部ホルダー12が垂直位置から時計回り方向に回転する。すなわち、支軸プーリ20は、大腿部ホルダー12に対して相対回転するため、第2ロープW2が引かれることになる。つまり、大腿部ホルダー12が時計回り方向に回転することで、第2ロープW2側のアウターチューブ71Bが押され、第2ロープW2が引っ張られる。このため、引かれた第2ロープW2が歩行補助力分配部30の入力プーリ32を時計回り方向に回転駆動する。その結果、大腿部ホルダー12が反時計回り方向に回転した場合とは逆に、第1駆動プーリ531、第2駆動プーリ532をそれぞれ時計回り方向に回転させ、足載置板52を時計回り方向に傾動させたてつま先側を下げる。
【0051】
歩行補助力分配部30の構成
続いて、歩行補助力分配部30の構成を
図7および
図8を参照して説明する。
【0052】
図7は
図1に示す歩行補助具の歩行補助力分配部を示し、内側から見た分解斜視図、
図8は
図7のC-C矢視の分解断面図である。
【0053】
歩行補助力分配部30は、入力プーリ32と、第1分配プーリ33と、第2分配プーリ34を有し、それぞれ入力軸受35、第1分配軸受36、第2分配軸受37に回転自在に軸支されている。入力プーリ32と第2分配プーリ34は第1分配プーリ33の軸方向両側に配置されている。歩行補助力分配部30は、第1ワイヤーロープ部71と、第2ワイヤーロープ部72および第3ワイヤーロープ部73に支持されて、歩行補助力発生部10と足傾動部50との間に浮遊保持される。
【0054】
入力プーリ32の中心部に形成された軸孔32Aと、第2分配プーリ34の軸孔34Aの内周面はスプライン溝が形成されている。第1分配プーリ33の軸方向両側には、外周部にスプライン溝が形成されたスプライン軸部33A、33Bが軸方向に沿って形成されている。スプライン軸部33Aに入力プーリ32の軸孔32Aがスプライン結合し、スプライン軸部33Bに第2分配プーリ34の軸孔34Aがスプライン結合し、入力プーリ32と第1分配プーリ33と第2分配プーリ34が軸回り方向に一体的に連結されている。
【0055】
入力プーリ32が回転すると、第1分配プーリ33と第2分配プーリ34は一体的に同方向に回転し、入力プーリ32の回転トルクが第1分配プーリ33と第2分配プーリ34にそれぞれ伝達される。なお、入力プーリ32と第1分配プーリ33と第2分配プーリ34の一体的連結は、スプライン結合に限定されることはなく、角軸と角孔との結合等であっても良い。
【0056】
入力プーリ32と第1分配プーリ33と第2分配プーリ34の外周面は同構造に形成され、軸方向の抜け止め用のフランジ部38A、38B、38Cとワイヤーロープが掛け回されるV字溝39A、39B、39Cが軸方向に沿って並設されている。
【0057】
入力軸受35と第1分配軸受36と第2分配軸受37は基本的に同一構造に形成されている。入力軸受35と第1分配軸受36と第2分配軸受37は、軸中心点を通る半径方向の軸線を分割線として上下方向に2分割構造に形成され、上側の分割部を上半分軸受部35A、36A、37Aとし、下側の分割部を下半分軸受部35B、36B、37Bとしている。
【0058】
入力軸受35と第1分配軸受36と第2分配軸受37の内周面には、抜け止め用のフランジ部38A、38B、38Cが回転可能で軸方向にガタなく嵌合する嵌合溝40A、40B、40Cが周方向に沿って形成されている。また、入力軸受35の上半分軸受部35Aに入力プーリ32のV字溝39Aに臨むロープ通し孔41Aが形成されている。第1分配軸受36の下半分軸受部36Bと第2分配軸受37の下半分軸受部37Bに、第1分配プーリ33のV字溝39Bと第2分配プーリ34のV字溝39Cに臨むロープ通し孔41B、41Cが形成されている。
【0059】
入力軸受35のロープ通し孔41Aに第1ワイヤーロープ71Aが通され、第1分配軸受36のロープ通し孔41Bに第2ワイヤーロープ72Aが通され、第2分配軸受37のロープ通し孔41Cに第3ワイヤーロープ73が通される。
【0060】
下半分軸受部35B、36B、37Bの幅方向両側に上下方向に貫通するねじ通し孔42A、42B、42Cが形成され、上半分軸受部35A、36A、37Aの幅方向両側に上下方向に貫通するねじ孔43A、43B、43Cが形成されている。各ねじ通し孔42A、42B、42Cにねじ44A、44B、44Cを通し、各ねじ孔43A、43B、43Cにねじ込むことで、上半分軸受部35A、36A、37Aと下半分軸受部35B、36B、37Bがそれぞれ一体化される、
一方、入力軸受35の上半分軸受部35Aの幅方向両端部にねじ孔45Aが軸方向に沿って形成され、第1分配軸受36と第2分配軸受37の上半分軸受部36A、37Aの幅方向両端部に軸方向に沿ってねじ通し孔45B、45Cが形成されている。また、入力軸受35の下半分軸受部35Bの幅方向両端部にねじ孔46Aが軸方向に沿って形成され、第1分配軸受36と第2分配軸受37の下半分軸受部36B、37Bの幅方向両端部に軸方向に沿ってねじ通し孔46B、46Cが形成されている。
【0061】
上取り付けねじ47を第2分配軸受37のねじ通し孔45Cから第1分配軸受36のねじ通し孔45Bを通して入力軸受35のねじ孔45Aにねじ込む。また、下取り付けねじ48を第2分配軸受37のねじ通し孔46Cから第1分配軸受36のねじ通し孔46Bを通して入力軸受35のねじ孔46Aにねじ込む。これにより、入力軸受35と第1分配軸受36と第2分配軸受37が一体化する。
【0062】
入力プーリ32が第1ワイヤーロープ71Aにより、反時計回り方向(第1方向)に回転駆動されると、後述する足傾動部50の第1駆動プーリ531と第1分配プーリ33の間に掛け回された第2ワイヤーロープ72Aを介して、第1駆動プーリ531を第1方向に回転駆動する。また、第2分配プーリ37と第2駆動プーリ532との間に掛け回された第3ワイヤーロープ73Aを介して、第2駆動プーリ532を第1方向に回転駆動する。入力プーリ32が時計回り方向(第2方向)に回転駆動されると、第1駆動プーリ531と第2駆動プーリ532も第2方向に回転する。
【0063】
足傾動部50の構成
次に、足傾動部50の構成を
図9および
図10を参照して説明する。
【0064】
図9は
図1に示す歩行補助具の足傾動部を示し、内側から見た分解斜視図、
図10は
図9のD-D矢視断面図である。なお、
図9に示す足傾動部50は、
図1に示す足傾動部50を時計回り方向に90度回転させてつま先側から見た図である。
【0065】
足傾動部50は、足首ホルダー51と、足載置板52と、足載置板駆動部53とを有する。足載置板52は、矩形平板状の足載置本体部521の長辺側両側縁に対向して第1アーム片522Aと第2アーム片522Bを上方に向けて垂直に支出した形状に形成されている。足載置本体部521の上面に足が載せられ、踵に近い位置に第1アーム片522Aと第2アーム片522Bが配置される。
【0066】
足首ホルダー51は、第1アーム片522A側に設けた第1足首ホルダー部51Aと、第2アーム片522B側に設けた第2足首ホルダー部51Bを対向して配置されている。第1足首ホルダー部51Aと第2足首ホルダー部51Bは対称形状に形成されている。
【0067】
足載置板駆動部53は、同一構成の摩擦クラッチをなす第1足載置板駆動ユニット53Aと第2足載置板駆動ユニット53Bを有する。第1足載置板駆動ユニット53Aは第1アーム片522Aに設けられ、第1足首ホルダー部51Aに対して第1アーム片522Aを傾動させる。第2足載置板駆動ユニット53Bは第2アーム片522Bに設けられ、第2足首ホルダー部51Bに対して第2アーム片522Bを傾動させる。第1アーム片522Aと、第2アーム片522Bには、第1軸孔54A、第2軸孔54Bが左右方向に延びる同一軸線上に形成されている。
【0068】
第1足首ホルダー部51Aと第2足首ホルダー部51Bは同一構造であるため、第1足首ホルダー部51Aの構成について説明し、第2足首ホルダー部51Bの構成についての説明を省略する。なお、第2足首ホルダー部51Bを構成する部材について、第1足首ホルダー部51Aを構成する部材と同じ部材には同じ符号を付してその説明は省略する。ただし、符号の末尾にBを付す。また、同様に第2足載置板駆動ユニット53Bについては説明を省略し、第1足載置板駆動ユニット53Aについて説明する。ただし、符号の末尾にBを付す。
【0069】
第1足首ホルダー部51Aは、第1足首軸受55Aと、第1足首軸受55Aの上方に設けられ、足首の内側(親指側)にあてがわれる内側に凹状に湾曲した第1ホルダー本体部56Aを一体的に設けた構成としている。第1足首軸受55Aは、第1駆動プーリ531を回転自在に軸支する。第1駆動プーリ531は、外周部に抜け止め用のフランジ部5311Aと第2ワイヤーロープ72Aが掛け回されるV字溝5312Aが形成される。第1ホルダー本体部56Aは、不図示の締結ベルトまたはバンドにより足首に装着される。
【0070】
第1足首軸受55Aは、軸中心点を通る左右方向の軸線を分割線として上下方向に2分割構造に形成され、上側の軸受分割部を本体部551A、下側の軸受分割部を下分割軸受部552Aとしている。下分割軸受部552Aは本体部551Aにねじ57Aによりねじ止めされている。本体部551Aと下分割軸受部552Aの内周面に、フランジ部5311Aが軸回りに回転可能で、軸方向に沿ってガタなく嵌合する周溝553Aが形成されている。本体部551Aの内側に第1ホルダー本体部56Aが設けられる。本体部551A内に上下方向に沿って貫通するロープ通し孔554AがV字溝5312Aに臨むように形成される。
【0071】
第1足載置板駆動ユニット53Aは、第1駆動プーリ531と、第1摩擦板58Aと、皿ばね59Aと、第2摩擦板60Aと、調節ダイヤル61Aと、締付ねじ62A、締付ナット63Aとにより構成している。第1駆動プーリ531と、第1摩擦板58Aと、皿ばね59Aと、第2摩擦板60Aと、調節ダイヤル61Aには、締付ねじ62Aが挿通される挿通孔64Aが形成されている。
【0072】
第1アーム片522Aを挟んで内側に第1摩擦板58Aが配置され、外側に第2摩擦板60Aが配置される。第1アーム片522Aと第1摩擦板58Aとの間に皿ばね59Aが配置される。第1摩擦板58Aの内側に第1駆動プーリ531が配置される。第2摩擦板60Aの外側に調節ダイヤル61Aが配置される。
【0073】
調節ダイヤル61Aの外端部には、挿通孔64Aの回りに締付ねじ62Aの多角形に形成された頭部が回転不能に嵌合する嵌合穴部611Aが形成されている。調節ダイヤル61Aの内端部には、第2摩擦板60Aが回転不能に嵌合する嵌合凹部612Aが形成され、調節ダイヤル61Aと一体に第2摩擦板60Aが回転可能としている。第2摩擦板60Aの内端面は、調節ダイヤル61Aの内端面よりも内側に突出し、第1アーム片522Aの外面と摩擦接触する。
【0074】
第1摩擦板58Aの外端面には、皿ばね59Aが嵌合する嵌合穴部581Aが形成される。皿ばね59Aは第1アーム片522Aの内面に対して第1摩擦板58Aを軸方向内側に向けて付勢する。皿ばね59Aは、嵌合穴部581A内に押し込まれた位置と嵌合穴部581Aから外方に突出した位置を伸縮可能としている。第1駆動プーリ531の外端部には、第1摩擦板58Aが回転不能に嵌合する嵌合凹部5313Aが形成され、第1駆動プーリ531と第1摩擦板58Aは軸回り方向で一体に結合されている。
【0075】
締付ねじ62Aを調節ダイヤル61A側から第2摩擦板60A、第1アーム片522Aの第1軸孔64Aを通し、さらに第1摩擦板58Aを経て第1駆動プーリ531の第1軸孔54Aを通し、締付ナット63Aに螺合する。締付ナット63Aは第1駆動プーリ531の内端部に回転不能に固定されている。
【0076】
調節ダイヤル61Aを手動操作で例えば右回りに回転すると、第1摩擦板58Aと第2摩擦板60Aが皿ばね59Aのばね力に抗して互いに向かい合う方向に引き寄せられ、第1アーム片522Aの内面と外面に摩擦接触する。締付ねじ62Aの締付力を増すと、第1アーム片522Aに対する第1摩擦板58Aと第2摩擦板60Aの摩擦力が増大する。逆に、調節ダイヤル61を左回りに回転すると、第1摩擦板58Aと第2摩擦板60Aは、皿ばね59Aの付勢力で第1アーム片522Aから離れる方向に移動し、第1アーム片522Aに対する第1摩擦板58Aと第2摩擦板60Aの摩擦力が減少する。
【0077】
第1アーム片522Aに対する第1摩擦板58Aと第2摩擦板60Aの摩擦力が大きいと、第1駆動プーリ531と足載置板52は、第1アーム片522Aと第2アーム片522Bを介して一体化し、第1駆動プーリ531と一体に足載置本体部521が傾動する。
【0078】
すなわち、第1ホルダー本体部56Aと第1足首軸受55Aは一体的に設けられているので、第1駆動プーリ531の回転で足載置板52の足載置本体部521が傾動する。また、大腿部ホルダー12の振り出し角度に同期して足載置本体部521が傾動するため、装着者の個人差で足載置本体部521の傾動角度が異なる。このため、第1アーム片522Aに対する第1摩擦板58Aと第2摩擦板60Aの摩擦力が減少するように調節ダイヤル61Aの操作で締付ねじ62Aを緩めると、第1駆動プーリ531に対する足載置本体部521の角度位置の調節が行え、個々の装着者に合わせた足載置本体部521のつま先持ち上げ動作の調節を可能とする。なお、各プーリの直径比を適宜に設定することで、大腿部の振り幅に応じて足載置本体部521の傾動範囲を調節することができる。
【0079】
また、大腿部ホルダー12側から加わった過負荷が第1アーム片522Aに対する第1摩擦板58Aと第2摩擦板60Aの摩擦力を越えると、第1駆動プーリ531が空転する安全装置が動作し、足首が保護される。
【0080】
上記した実施形態による歩行補助具1のつま先持ち上げ動作を
図11~
図15を参照して以下に説明する。
【0081】
図11~
図15は、歩行補助具1の装着者Pの歩行姿勢に従って右足の大腿部R1の動きにより、歩行補助具1による足R2の動きを示す。なお、矢印はワイヤーロープの引っ張り方向を示す。
【0082】
先ず、
図11は右足の大腿部R1を後方に引いた蹴り出し前の状態を示す。この場合、大腿部ホルダー12は支軸プーリ20を支点として時計回り方向に回転し、
図6を参照して説明したように、大腿部ホルダー12に押されて第1ワイヤーロープ71Aが反時計回り方向に引っ張られる。第1ワイヤーロープ71Aはクロスして歩行補助力分配部30の入力プーリ32に掛け回されているので、第1分配プーリ33と第2分配プーリ34を時計回り方向に回転させる。
【0083】
装着者Pの足首に装着された第1ホルダー本体部56Aに対して、足載置本体部521はつま先を下げる方向に若干傾動する。
【0084】
次に、
図12に示すように、
図11に続き後方に引いた右足の大腿部R1を前方に向けて振り出し初めた初期時でも、大腿部ホルダー12に押されて第1ワイヤーロープ71Aが反時計回り方向に引っ張られ、第1ホルダー本体部56Aに対して足載置本体部521がつま先を下げる方向に向いた状態は維持される。ただし、
図11の場合に比べて足載置本体部521はつま先側を下向きに傾動した状態が若干緩和される。
【0085】
さらに、
図13に示すように、
図12に続いて、振り出した右足の大腿部が垂直に延びると、第1ワイヤーロープ71Aには入力プーリ32を回転駆動する引っ張り力は発生しない。このため、足傾動部50の足載置本体部521は水平姿勢に保持される。
【0086】
続いて、
図14に示すように、
図13に続いて、装着者Pが前向きに歩行するために、右足の大腿部R1を前方に振り出すと、大腿部ホルダー12が反時計回り方向に回転し、第1ワイヤーロープ71Aが反時計回り方向に引っ張られる。このため、歩行補助力分配部30の入力プーリ32が反時計回り方向に回転駆動され、第1分配プーリ33と第2分配プーリ34と、足傾動部50の第1駆動プーリ531、第2駆動プーリ532との間に掛け渡された第2ワイヤーロープ72Aと第2ワイヤーロープ73Aがそれぞれ反時計回り方向に引っ張られ、第1駆動プーリ531、第2駆動プーリ532が反時計回り方向に回転駆動される。
【0087】
したがって、足傾動部50の足載置本体部521は、つま先側が上に持ち上げられた状態に傾動され、装着者Pの足R2はつま先が持ち上げられる。
【0088】
最後に、
図15に示すように、
図14に続いて右足の大腿部R1をさらに前方に振り出すと、傾動部50の足載置本体部521は、つま先側がさらに上に持ち上げられた状態に傾動され、装着者Pの足R2はつま先がより持ち上げられる。
【0089】
本実施形態によれば、歩行補助具1を装着した装着者が歩行する際に大腿部の動作をロープ駆動ユニットで足傾動部50に伝達する。すなわち、大腿部の振り出し動作をワイヤーロープの引っ張り動作に変換して足傾動部50の第1駆動プーリ531と第2駆動プーリ532を同方向に回転駆動し、第1足首ホルダー部51A、第2足首ホルダー51Bに対して足を載せた足載置本体部521を傾動させ、つま先側を上に持ち上げる。このため、通常の歩行動作で行われる足の傾動動作に合わせて足載置本体部521をワイヤーロープとプーリを利用して自然な状態に傾動させることができる。
【0090】
特に、歩行補助具1は足の筋力低下によりすり足歩行の傾向がある人や、歩幅に個人差があっても、各人の歩幅に合わせて足先の持ち上げ歩行を実現できる。各プーリの直径比を調節することで、少ない歩幅でも足載置本体部521の傾動角度を調節することができる。
【0091】
また、歩行補助力発生部10と、足傾動部50にそれぞれ過負荷時の安全装置を設けているので、歩行時あるいは装着したまま座った場合等に大きな外力が歩行補助具1に加わっても、装着者の大腿部や足首へは影響が及ばない。
【0092】
本実施形態では、第1駆動プーリ531と第2駆動プーリ532で足載置本体部521を傾動させているが、第1駆動プーリ531または第2駆動プーリ532のいずれか一方で駆動するようにしても良い。この場合、歩行補助力分配部30は不要であり、支軸プーリ20と、例えば第1駆動プーリ531との間に第1ワイヤーロープ部71を設け、第1ワイヤーロープ71Aをクロス配索すれば良い。
【0093】
【0094】
図16は本発明の第2実施形態を示す歩行補助力発生部の分解斜視図、
図17は
図16に示す歩行補助力発生部を内側から見た正面図、
図18は
図17のE-E矢視断面図である。なお、
図2~
図4に示す部材と同じ部材には同じ符号を付してその説明を省略する。
【0095】
第1実施形態の歩行補助力発生部10は、
図4および
図5に示すように、第1軸受部110との協働で支軸プーリ20に過負荷時に支軸プーリ20を空転させる安全装置の機能を付加している。
【0096】
第2実施形態は安全装置の他の実施形態を示し、本実施形態と第1実施形態とは腰部ホルダー11の第1軸受部110と、支軸プーリ20の第1軸部201の構成が異なる。
【0097】
本実施形態の腰部ホルダー11は、第1軸受部210と、腰部ホルダー本体部13により構成している。第1軸受部210は、上下方向に延びる平板状の軸受本体部211の上端部に腰部ホルダー本体部13が一体に設けられている。軸受本体部211の下端部に、支軸プーリ230を軸支する第1軸受部210の内周部が形成されている。
【0098】
支軸プーリ230は、軸本体部200の内側端部に両端が開口したガイド溝231が直径方向に形成れている。また、第1軸受部210に対応する第1軸部201において、V字溝204側に抜け止めフランジ232が形成されている。抜け止めフランジ232は、軸受本体部211に設けた位置決めフランジF3に当接し、内側への移動が規制される。ガイド溝231には、径方向中央部に圧縮コイルばね233が配置され、さらに圧縮コイルばね233の両端部に第1可動ロック部材234と第2可動ロック部材235が配置されている。第1可動ロック部材234と第2可動ロック部材235はガイド溝231内を径方向に沿ってスライド可能に配置されている。第1可動ロック部材234と第2可動ロック部材235は、圧縮コイルばね233のばね力で径方向外方に向けて付勢されている。
【0099】
第1可動ロック部材234と第2可動ロック部材235は横断面が略二等辺三角形形状に形成され、底辺部側の両側に第1係合段部236が形成されている。ガイド溝231の径方向両端部には、第1可動ロック部材234と第2可動ロック部材235の第1係合段部236に係合する第2係合段部237が形成されている。
【0100】
第1可動ロック部材234と第2可動ロック部材235は、圧縮コイルばね233のばね力で第1係合段部236が第2係合段部237に係合した状態において、第1可動ロック部材234と第2可動ロック部材235の先端部が第1軸受部210の内周面に形成した第1係合凹部212と第2係合凹部213に係合し、支軸プーリ230が第1軸受部210に回転不能に固定される。
【0101】
なお、支軸プーリ230を第1軸受210に装入後、支軸プーリ230の内端に、第1軸受部210の内径よりも大径の円盤形状に形成された不図示の抜け止め板をねじ等により固定し、腰部ホルダー11から支軸プーリ230が抜けないようにしている。
【0102】
第1係合凹部212と第2係合凹部213は、第1可動ロック部材234と第2可動ロック部材235の先端部の二等辺三角形形状に合致した形状に形成されている。このため、支軸プーリ230に過負荷による回転トルクが加わると、第1可動ロック部材234と第2可動ロック部材235は楔効果により、圧縮コイルばね233のばね力に抗してガイド溝231内を径方向内側に向けてスライド移動し、第1係合凹部212と第2係合凹部213内から抜け出る。このため、支軸プーリ230が空転し、装着者の大腿部に過負荷が及ぶことがない。
【0103】
本実施形態によれば、第1軸受部210が分割構造としないため、構成が簡単となる。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明の歩行補助具は、すり足歩行でつま先が段差などに引っ掛かる人に装着することで、安全歩行に供する。
【符号の説明】
【0105】
1…歩行補助具
10…歩行補助力発生部
11…腰部ホルダー
110…第1軸受部 120…第2軸受部
111…平坦内面部 110A…本体部 110B…可動体部
112…ねじ挿通孔 113…調節ねじ 114…ねじ孔
115…圧縮コイルばね 116…防塵ブーツ
12…大腿部ホルダー
120A…本体部 120B…上分割部
120C…周溝 120D…ロープ通し孔
121…ねじ挿通孔 122…取り付けねじ 123…ねじ孔
13…腰部ホルダー本体部
14…大腿部ホルダー本体部
20…支軸プーリ
200…軸本体部 201…第1軸部 202…第2軸部
203…平坦部 204…V字溝 205…フランジ部
F1、F2…フランジ部 F3…位置決めフランジ
30…歩行補助力分配部
32…入力プーリ
32A…軸孔
33…第1分配プーリ
33A、33B…スプライン軸部
34…第2分配プーリ
34A…軸孔
35…入力軸受 36…第1分配軸受 37…第2分配軸受
35A、36A、37A…上半分軸受部
35B、36B、37B…下半分軸受部
38A、38B、38C…フランジ部
39A、39B、39C…V字溝
40A、40B、40C…嵌合溝
41A、41B、41C…ロープ通し孔
42A、42B、42C…ねじ通し孔
43A、43B、43C…ねじ孔
44A、44B、44C…ねじ
45A…ねじ孔 45B、45C…ねじ通し孔
46A…ねじ孔 46B、46C…ねじ通し孔
47…上取り付けねじ 48…下取り付けねじ
50…足傾動部
51…足首ホルダー
51A…第1足首ホルダー部 51B…第2足首ホルダー部
52…足載置板
521…足載置本体部
522A…第1アーム片 522B…第2アーム片
53…足載置板駆動部
53A…第1足載置板駆動ユニット 53B…第2足載置板駆動ユニット
531…第1駆動プーリ 532…第2駆動プーリ
5311A、5311B…フランジ部
5312A、5312B…V字溝
5313A、5313B…嵌合凹部
54A…第1軸孔 54B…第2軸孔
55A…第1足首軸受 55B…第2足首軸受
551A、551B…本体部
552A、552B…下分割軸受部
553A、553B…周溝
554A、554B…ロープ通し孔
56A、56B…第1ホルダー本体部
57A、57B…ねじ
58A、58B…第1摩擦板 59A、59B…皿ばね
60A、60B…第2摩擦板
581A、581B…嵌合穴部
61A、61B…調節ダイヤル 62A、62B…締付ねじ
63A、63B…締付ナット 64A、64B…挿通孔
611A、611B…嵌合穴部
612A、612B…嵌合凹部
71…第1ワイヤーロープ部
71A…第1ワイヤーロープ 71B…第1アウターチューブ
71C…端子部材 71D…係止溝
72…第2ワイヤーロープ部 73…第3ワイヤーロープ部
W1…第1ロープ W2…第2ロープ
P…装着者 R1…大腿部 R2…足
210…第1軸受部
211…軸受本体部 212…第1係合凹部 213…第2係合凹部
230…支軸プーリ
231…ガイド溝 232…抜け止めフランジ
233…圧縮コイルばね 234…第1可動ロック部材
235…第2可動ロック部材 236…第1係合段部
237…第2係合段部