(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-28
(45)【発行日】2022-02-07
(54)【発明の名称】略定形形状を用いたヘッダ構成
(51)【国際特許分類】
H01M 8/2483 20160101AFI20220131BHJP
H01M 8/248 20160101ALI20220131BHJP
H01M 8/0247 20160101ALI20220131BHJP
H01M 8/0267 20160101ALI20220131BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20220131BHJP
【FI】
H01M8/2483
H01M8/248
H01M8/0247
H01M8/0267
H01M8/10 101
(21)【出願番号】P 2018026981
(22)【出願日】2018-02-19
【審査請求日】2020-12-01
(32)【優先日】2017-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511095986
【氏名又は名称】ジーエム・グローバル・テクノロジー・オペレーションズ・エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100149261
【氏名又は名称】大内 秀治
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】坂野 雅章
(72)【発明者】
【氏名】シ ヤン
(72)【発明者】
【氏名】リャン シ
(72)【発明者】
【氏名】シギュアン ユ
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ エヌ.ロヴリア
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー ディー.ウィリアムス
(72)【発明者】
【氏名】苫名 佑
(72)【発明者】
【氏名】石田 堅太郎
【審査官】浅野 裕之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0197147(US,A1)
【文献】特開2009-252469(JP,A)
【文献】特表2010-540776(JP,A)
【文献】特開2006-228753(JP,A)
【文献】特開2008-243499(JP,A)
【文献】特開2018-137219(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105702968(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00~8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレートであって、
複数の反応物通路が設けられる作動面と、
前記プレートの周縁領域に配置されるヘッダ部と、
を備え、
前記ヘッダ部は、
前記ヘッダ部上に配置される複数のフランジと、
前記作動面上に配置される複数のビードと、
を備え、
前記複数のフランジは、前記プレートを貫通する複数の開口部を備え、
前記複数のフランジの各々は、前記複数の開口部を1つずつ設け、
前記複数の開口部の少なくとも1つは、前記複数の反応物通路に流体接続され、
前記複数のビードの各々は、前記複数の開口部の1つずつの周りに配置され、それにより前記複数のフランジを各々設け、
前記複数のビードの各々は、ビード角部及びビード辺部からなる
略六角形の形状を有し、
前記複数のビードの各々は、シール面を備え、前記シール面は、接触圧を受けた際に撓み、それにより実質的に漏れのないシールを提供する、
ことを特徴とするプレート。
【請求項2】
請求項1記載のプレートにおいて、
前記ビード角部は、それぞれ約50°~約70°の角度を有する、
ことを特徴とするプレート。
【請求項3】
請求項1記載のプレートにおいて、
前記ビード角部は、それぞれ約60°の角度を有する、
ことを特徴とするプレート。
【請求項4】
請求項1記載のプレートにおいて、
前記ビード角部は、それぞれ角度を有し、前記角度は、各々他の前記角度の約10°以内の角度となる、
ことを特徴とするプレート。
【請求項5】
請求項1記載のプレートにおいて、
前記ビード角部は、前記シール面に沿った接触圧のばらつきが約50%より低い、
ことを特徴とするプレート。
【請求項6】
請求項1記載のプレートにおいて、
前記ビード角部は、前記シール面に沿った接触圧のばらつきが約30%より低い、
ことを特徴とするプレート。
【請求項7】
請求項1記載のプレートにおいて、
前記ビード角部の各々は、略円弧状である、
ことを特徴とするプレート。
【請求項8】
請求項1記載のプレートにおいて、
前記ビード辺部の各々は、蛇行経路に沿う、
ことを特徴とするプレート。
【請求項9】
プレートと、
前記プレートに当接する構成部品と、
圧縮部材と、
を備えるシステムであって、
前記プレートは、
複数の反応物通路が設けられる作動面と、
前記プレートの周縁領域に配置されるヘッダ部と、
を備え、
前記ヘッダ部は、
前記ヘッダ部上に配置される複数のフランジと、
前記作動面上に配置される複数のビードと、
を備え、
前記複数のフランジは、前記プレートを貫通する複数の第1開口部を備え、前記複数のフランジの各々は、前記複数の第1開口部を1つずつ設け、前記複数の第1開口部の少なくとも1つは、前記複数の反応物通路に流体接続され、
前記複数のビードの各々は、前記複数の第1開口部の1つずつの周りに配置され、それにより前記複数のフランジを各々設け、前記複数のビードの各々は、ビード角部及びビード辺部からなる
略六角形の形状を有し、前記複数のビードの各々は、シール面を有し、前記シール面は、接触圧を受けた際に撓み、それにより実質的に漏れのないシールを提供し、
前記構成部品は、前記構成部品を貫通する複数の第2開口部を含み、前記複数の第2開口部の各々は、前記複数の第1開口部の各々と一列に並び、
前記圧縮部材は、前記プレートに圧縮力を加えることにより前記接触圧を生じさせる、ことを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項
9記載のシステムにおいて、
前記構成部品は、さらに、
複数の第2ビードが配置される第2作動面を含み、前記複数の第2ビードの各々は、前記複数の第2開口部の1つずつの周りに配置され、前記複数の第2ビードの各々は、前記形状を有する、
ことを特徴とするシステム。
【請求項11】
請求項
10記載のシステムにおいて、
前記第2作動面は、前記作動面に近接して配置され、
前記複数の第2ビードの各々は、第2シール面を含み、
前記構成部品は、前記第2シール面が前記シール面と接触した際に前記プレートに当接し、前記第2シール面と前記シール面との間に前記接触圧を生じさせる、
ことを特徴とするシステム。
【請求項12】
請求項
9記載のシステムにおいて、
前記プレートは、さらに、前記作動面の反対側に第1背面を有し、
前記構成部品は、さらに、前記第1背面に結合される第2背面を有し、
前記第1背面及び前記第2背面は、前記プレートと前記構成部品との間に複数の冷媒通路を設け、前記複数の冷媒通路は、前記複数の第1開口部のうち少なくとも別の1つに流体接続される、
ことを特徴とするシステム。
【請求項13】
請求項
9記載のシステムにおいて、
前記ビード角部は、それぞれ約50°~約70°の角度を有する、
ことを特徴とするシステム。
【請求項14】
請求項
9記載のシステムにおいて、
前記ビード角部は、前記シール面に沿った接触圧のばらつきが約30%より低い、
ことを特徴とするシステム。
【請求項15】
請求項
9記載のシステムにおいて、
前記構成部品は、一体型電極構造体である、
ことを特徴とするシステム。
【請求項16】
第1プレートと、
第2プレートと、
前記第1プレートと前記第2プレートとの間に配置される一体型電極構造体と、
圧縮部材と、
を備える燃料電池スタックであって、
前記第1プレートは、
複数の第1反応物通路が設けられる第1作動面と、
前記第1プレートの周縁領域に配置される第1ヘッダ部と、
を備え、
前記第1ヘッダ部は、
前記第1ヘッダ部上に配置される複数の第1フランジと、
前記第1作動面上に配置される複数の第1ビードと、
を備え、
前記複数の第1フランジは、前記第1プレートを貫通する複数の第1開口部を備え、前記複数の第1フランジの各々は、前記複数の第1開口部を1つずつ設け、前記複数の第1開口部の少なくとも1つは、前記複数の第1反応物通路に流体接続され、
前記複数の第1ビードの各々は、前記複数の第1開口部の1つずつの周りに配置され、それにより前記複数の第1フランジを各々設け、前記複数の第1ビードの各々は、ビード角部及びビード辺部からなる
略六角形の形状を有し、前記複数の第1ビードの各々は、第1シール面を有し、前記第1シール面は、接触圧を受けた際に撓み、それにより実質的に漏れのないシールを提供し、
前記第2プレートは、
複数の第2反応物通路が設けられる第2作動面と、
前記第2プレートの周縁領域に配置される第2ヘッダ部と、
を備え、
前記第2ヘッダ部は、
前記第2ヘッダ部上に配置される複数の第2フランジと、
前記第2作動面上に配置される複数の第2ビードと、
を備え、
前記複数の第2フランジは、前記第2プレートを貫通する複数の第2開口部を備え、前記複数の第2フランジの各々は、前記複数の第2開口部を1つずつ設け、前記複数の第2開口部の少なくとも1つは、前記複数の第2反応物通路に流体接続され、
前記複数の第2ビードの各々は、前記複数の第2開口部の1つずつの周りに配置され、それにより前記複数の第2フランジを各々設け、前記複数の第2ビードの各々は、ビード角部及びビード辺部からなる
略六角形の前記形状を有し、前記複数の第2ビードの各々は、第2シール面を有し、前記第2シール面は、前記接触圧を受けた際に撓み、それにより実質的に漏れのないシールを提供し、
前記一体型電極構造体は、前記複数の第1反応物通路と接触する第1側面と、前記複数の第2反応物通路と接触する第2側面と、を備え、
前記圧縮部材は、前記第1プレートと、前記第2プレートと、前記一体型電極構造体と、に圧縮力を加え、前記圧縮力は、前記複数の第1ビードと、前記複数の第2ビードと、に前記接触圧を与える、
ことを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項17】
請求項
16記載の燃料電池スタックにおいて、
前記ビード角部は、それぞれ約50°~約70°の角度を有する、
ことを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項18】
請求項
16記載の燃料電池スタックにおいて、
前記ビード角部は、それぞれ約60°の角度を有する、
ことを特徴とする燃料電池スタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池の分野に関し、詳細には、略定形形状を用いたヘッダ部に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムは、電気エネルギを供給する多種多様な用途で電源として用いられることが可能である。生成された電気エネルギは、電気モータのような装置を作動させるために直ちに用いられることが可能である。追加的又は代替的に、生成された電気エネルギは、例えばバッテリを利用することにより後の使用のために保存することが可能である。
【0003】
ある用途において、燃料電池は、定置構造体に組み込まれ、建築物、住宅等に電力を供給する。また、他の用途において、燃料電池は、スマートフォン、ビデオカメラ、コンピュータ等に組み込まれる。さらに、他の用途において、燃料電池は、車両に組み込まれ、動力を供給又は補助する。
【0004】
燃料電池システムは、一般的に、燃料電池スタック内に配置される燃料電池を含む。100枚を超えるプレートを含むことが可能な燃料電池スタックは、燃料電池スタックの近接する構成部品間のシール部に接触圧を付与するために圧縮され、そこを通過する流体の漏れを防止する。例えば、冷媒と反応物の混合又は燃料電池のアクティブ領域から離れた場所での反応物の混合は、燃料電池スタックの効率を低下させる。構成部品が多数あることから、シール部に沿った接触圧分布にわずかな差があってもスタックにわたって増幅され、流体漏れのないシール部の形成を妨げてしまう。
【0005】
従って、燃料電池スタックのシール部にわたって均等に接触圧を分布させることは有益である。
【発明の概要】
【0006】
本発明の態様によれば、プレートは、作動面及びヘッダ部を含む。前記作動面上には、複数の反応物通路が設けられる。前記ヘッダ部は、前記プレートの周縁領域に配置され、複数のフランジ及び複数のビードを備える。前記複数のフランジは、前記ヘッダ部上に配置される。前記複数のフランジは、前記プレートを貫通する複数の開口部を備える。前記複数のフランジの各々には、前記複数の開口部が1つずつ設けられる。前記複数の開口部の少なくとも1つは、前記複数の反応物通路に流体接続される。前記複数のビードは、前記作動面上に配置される。前記複数のビードの各々は、前記複数の開口部の1つずつの周りに配置され、それにより前記複数のフランジを各々設ける。前記複数のビードの各々は、ビード角部及びビード辺部からなる略六角形の形状を有する。前記複数のビードの各々は、シール面を備える。前記シール面は、接触圧を受けた際に撓み、それにより実質的に漏れのないシールを提供する。
【0008】
本発明の更なる態様において、前記ビード角部は、それぞれ約50°~約70°の角度を有する。
【0009】
本発明の更なる態様において、前記ビード角部は、それぞれ約60°の角度を有する。
【0010】
本発明の更なる態様において、前記ビード角部は、それぞれ角度を有し、前記角度は、各々他の前記角度の約10°以内の角度となる。
【0011】
本発明の更なる態様において、前記ビード角部は、前記シール面に沿った接触圧のばらつきが約50%より低い。
【0012】
本発明の更なる態様において、前記ビード角部は、前記シール面に沿った接触圧のばらつきが約30%より低い。
【0013】
本発明の更なる態様において、前記ビード角部の各々は、略円弧状である。
【0014】
本発明の更なる態様において、前記ビード辺部の各々は、蛇行経路に沿う。
【0015】
本発明の態様において、システムは、プレートと、構成部品と、圧縮部材と、を備える。前記プレートは、作動面及びヘッダ部を含む。前記作動面上には、複数の反応物通路が設けられる。前記ヘッダ部は、前記プレートの周縁領域に配置される。前記ヘッダ部は、複数のフランジ及び複数のビードを備える。前記複数のフランジは、前記作動面上に配置される。前記複数のフランジは、前記プレートを貫通する複数の第1開口部を備える。前記複数のフランジの各々は、前記複数の第1開口部が1つずつ設けられる。前記複数の第1開口部の少なくとも1つは、前記複数の反応物通路に流体接続される。前記複数のビードは、前記作動面上に配置される。前記複数のビードの各々は、前記複数の第1開口部の1つずつの周りに配置され、それにより前記複数のフランジを各々設ける。前記複数のビードの各々は、ある形状を有する。その形状は、ビード角部及びビード辺部からなる略六角形の形状を有する。前記複数のビードの各々は、シール面を備える。前記シール面は、接触圧を受けた際に撓み、それにより実質的に漏れのないシールを提供する。前記構成部品が前記プレートに当接する。前記構成部品は、前記構成部品を貫通する複数の第2開口部を備える。前記複数の第2開口部の各々は、前記複数の第1開口部の各々と一列に並ぶ。前記圧縮部材は、前記プレートに圧縮力を加えることにより前記接触圧を生じさせる。
【0016】
本発明の更なる態様によれば、前記構成部品は、さらに第2作動面を備える。前記第2作動面上には、複数の第2ビードが配置される。前記複数の第2ビードの各々は、前記複数の第2開口部の1つずつの周りに配置される。前記複数の第2ビードの各々は、前記形状を有する。
【0017】
本発明の更なる態様によれば、前記第2作動面は、前記作動面に近接して配置され、前記複数の第2ビードの各々は、第2シール面を含み、前記構成部品は、前記第2シール面が前記シール面と接触した際に前記プレートに当接し、前記第2シール面と前記シール面との間に前記接触圧を生じさせる。
【0018】
本発明の更なる態様によれば、前記プレートは、さらに、前記作動面の反対側に第1背面を有し、前記構成部品は、さらに、第2背面を有する。前記第2背面は、前記第1背面に結合される。前記第1背面及び前記第2背面は、前記プレートと前記構成部品との間に複数の冷媒通路を設ける。前記複数の冷媒通路は、前記複数の第1開口部のうち少なくとも別の1つに流体接続される。
【0019】
本発明の更なる態様によれば、前記ビード角部は、それぞれ約50°~約70°の角度を有する。
【0020】
本発明の更なる態様によれば、前記ビード角部は、前記シール面に沿った接触圧のばらつきが約30%より低い。
【0021】
本発明の更なる態様によれば、前記構成部品は、一体型電極構造体である。
【0022】
本発明の更なる態様によれば、燃料電池スタックは、第1プレートと、第2プレートと、一体型電極構造体と、圧縮部材とを備える。前記第1プレートは、第1作動面及び第1ヘッダ部を含む。前記第1作動面上には、複数の第1反応物通路が設けられる。前記第1ヘッダ部は、前記第1プレートの周縁領域に配置される。前記第1ヘッダ部は、複数の第1フランジ及び複数の第1ビードを備える。前記複数の第1フランジは、前記ヘッダ部上に配置される。前記複数の第1フランジは、前記第1プレートを貫通する複数の第1開口部を備える。前記複数の第1フランジの各々は、前記複数の第1開口部を1つずつ設ける。前記複数の第1開口部の少なくとも1つは、前記複数の第1反応物通路に流体接続される。前記複数の第1ビードは、前記第1作動面上に配置される。前記複数の第1ビードの各々は、前記複数の第1開口部の1つずつの周りに配置され、それにより前記複数の第1フランジを各々設ける。前記複数の第1ビードの各々は、ある形状を有する。その形状は、ビード角部及びビード辺部からなる略六角形の形状を有する。前記複数の第1ビードの各々は、第1シール面を備える。前記第1シール面は、接触圧を受けた際に撓み、それにより実質的に漏れのないシールを提供する。前記第2プレートは、第2作動面及び第2ヘッダ部を含む。前記第2作動面上には、複数の第2反応物通路が設けられる。前記第2ヘッダ部は、前記第2プレートの周縁領域に配置される。前記第2ヘッダ部は、複数の第2フランジ及び複数の第2ビードを備える。前記複数の第2フランジは、前記第2ヘッダ部上に配置される。前記複数の第2フランジは、前記第2プレートを貫通する複数の第2開口部を備える。前記複数の第2フランジの各々は、前記複数の第2開口部を1つずつ設ける。前記複数の第2開口部の少なくとも1つは、前記複数の第2反応物通路に流体接続される。前記複数の第2ビードは、前記第2作動面上に配置される。前記複数の第2ビードの各々は、前記複数の第2開口部の1つずつの周りに配置され、それにより前記複数の第2フランジを各々設ける。前記複数の第2ビードの各々は、前記形状を有する。その形状は、ビード角部及びビード辺部からなる略六角形の形状を有する。前記複数の第2ビードの各々は、第2シール面を有する。前記第2シール面は、接触圧を受けた際に撓み、それにより実質的に漏れのないシールを提供する。前記一体型電極構造体は、前記第1プレートと前記第2プレートとの間に配置される。前記一体型電極構造体は、前記複数の第1反応物通路と接触する第1側面と、前記複数の第2反応物通路と接触する第2側面と、を備える。前記圧縮部材は、前記第1プレートと、前記第2プレートと、前記一体型電極構造体と、に圧縮力を加えるようになっている。前記圧縮力は、前記複数の第1ビードと、前記複数の第2ビードと、に前記接触圧を与えるようになっている。
【0023】
本発明の更なる態様によれば、前記ビード角部は、それぞれ約50°~約70°の角度を有する。
【0024】
本発明の更なる態様によれば、前記ビード角部は、それぞれ約60°の角度を有する。
【0026】
本発明に係る上記の特徴及び効果並びに別の特徴及び効果は、添付の図面と共に以下の詳細な説明を考慮することにより容易に明らかとなるであろう。
【0027】
図面は、説明のために添付されるが、請求項によって規定される発明の主題を限定することを意図しない。例示的な態様が以下の詳細な説明で論じられ、添付の図面に示される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、本発明の態様に係る燃料電池スタックの模式的分解図である。
【
図2】
図2は、本発明の態様に係る
図1の燃料電池スタックのモノポーラプレートを示す模式的上面図である。
【
図4】
図4は、本発明の態様に係るバイポーラプレートの一部断面を示す模式的部分立体図である。
【
図5】
図5は、本発明の態様に係る略定形形状を用いたヘッダ部の例を示す模式的上面図である。
【
図6】
図6は、本発明の態様に係る略定形形状を用いたヘッダ部の他の例を示す模式的上面図である。
【
図7】
図7は、略定形形状を用いたヘッダ部と不定形形状を用いたヘッダ部とにおける接触圧の確率分布を比較するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、燃料電池スタック10の分解図である。燃料電池スタック10は、複数のプレート12と、少なくとも1つの一体型電極構造体14と、圧縮部材16と、を含む。複数のプレート12は、プレート12を好適に組み合わせてよい。例えば、複数のプレート12は、エンドプレート18、モノポーラプレート20(
図2に、より詳細に示す)、及び/又はバイポーラプレート22(
図4に、より詳細に示す)を含んでもよい。本発明のある態様によれば、複数のプレート12、少なくとも1つの一体型電極構造体14、及び圧縮部材16の間の何れか又は全てのシール部は、本明細書に記載される定形形状のヘッダ部40によって、該シール部にわたって接触圧を均等に分布させることが可能となる。
【0030】
エンドプレート18は、燃料電池スタック10の上面及び底面に配置される。エンドプレート18には、燃料入口24aと、燃料出口24cと、酸化剤入口26aと、酸化剤出口26cと、冷媒入口28aと、冷媒出口28cと、が配置される。本明細書で用いられる「流体」は、文脈に応じて燃料、酸化剤、冷媒、又はその組み合わせを指してもよく、「反応物」は、文脈に応じて燃料、酸化剤、又はその両方を指してもよい。例えば、「流体入口24a、26a、28a」は、文脈に応じて燃料入口24a、酸化剤入口26a、又は冷媒入口28aの何れか又はその全てを指してもよく、「反応物通路24b、26b」は、文脈に応じて燃料通路24b、酸化剤通路26bの何れか又はその両方を指してもよい。流体入口24a、26a、28a及び流体出口24c、26c、28cの何れかは、1つのエンドプレート18上に配置され、残余の流体入口24a、26a、28a及び流体出口24c、26c、28cは、反対側のエンドプレート18に配置されることが考えられる。
【0031】
一体型電極構造体14は、拡散媒体32間に配置される燃料電池30を含む。燃料電池30は、例えば、カソードとアノードとの間に配置される膜を含む電解質膜・電極構造体であってもよい。例えば、膜は、プロトン交換膜であってもよい。例えば、カソード及びアノードは、カーボン粒子上に担持されイオノマーと混合された微細化触媒を含んでもよい。ある態様において、触媒は白金である。
【0032】
拡散媒体32は、反応物が燃料電池30へ供給されることを促進する多孔質層である。反応物は、燃料及び酸化剤の好適な組み合わせであってもよい。例えば、燃料は水素であってもよく、酸化剤は酸素であってもよい。燃料電池30において、水素と酸素が反応して発電が行われ、副産物として熱と水が生成される。例えば、他の燃料として天然ガス、メタノール、ガソリン、及び石炭系合成燃料等が用いられてもよい。ある態様において、拡散媒体32は、積層、接着、又は他の好適な方法を用いて燃料電池30の表面に取り付けてもよい。ある態様において、拡散媒体32は、燃料電池30の表面に当接するが、接着しない。例えば、拡散媒体32は、燃料電池30の表面に対して配置され、保持部材34によって保持されてもよい。例えば、保持部材34は、ガスケットであってもよい。
【0033】
圧縮部材16は、積層方向に沿って燃料電池スタック10へ圧縮力を与える。圧縮力は、近接する部品間の接触圧を通じてプレート12及び燃料電池30を位置決めし、締め付ける。ある態様において、圧縮部材16は、エンドプレート18上の構造に係合する複数のねじ付きロッドを含む。ねじ付きロッドを締めることにより、積層方向に沿った圧縮力が所望のレベルまで増加し、近接する構成部品間のシールに沿って接触圧が分布することになる。ある態様において圧縮部材16は、燃料電池スタック10全体より少ない枚数で係合する。例えば、圧縮部材16は、2つの近接するプレート12と係合し当該2つのプレート12に圧縮力を付与してもよく、又は、ある枚数の近接するプレート12と係合しその数の近接するプレート12に圧縮力を付与してもよい。
【0034】
図2は、燃料電池スタック10の例示されたモノポーラプレート20を示す上面図である。モノポーラプレート20は、作動面36、作動面36と反対側の背面38、ヘッダ部40、及びビード42を有する略平面状シートである。図示されるモノポーラプレート20は、ある構造を備える金属シートである。該構造は、金属シートに型押し加工(プレス成形)で形成される。モノポーラプレート20を形成するために、カーボンファイバ等の他の材質並びに成型及び付加製造(additive manufacturing)等の他の形成方法が考えられる。
【0035】
反応物通路24b、26bは、モノポーラプレート20の作動面36上に設けられる。特にモノポーラプレート20の反応物通路24b、26bは、燃料通路24b又は酸化剤通路26bである。反応物通路24b、26bは、近接する一体型電極構造体14又は燃料電池30の面にわたって流体を流通させる。例えば、燃料通路24bは、燃料電池30のアノードに水素を供給し、酸化剤通路26bは、燃料電池30のカソードに酸素を供給する。
【0036】
ヘッダ部40は、モノポーラプレート20の周縁領域に配置され、モノポーラプレート20を貫通する複数の開口部44を備える。開口部44は、モノポーラプレート20の一方の側面から他方の側面へ流体を流通させる。
【0037】
ビード42は、モノポーラプレート20の作動面36から延在する。少なくとも1つのビード42が、モノポーラプレート20の作動面36の周縁部に沿って配置され、例えば、反応物通路24b、26bからモノポーラプレート20の外部への流体の漏れ(例えば、周囲又は燃料電池スタック10への漏れ)を防ぐ。さらなるビード42が各開口部44に近接して囲む様に配置される。各開口部44を囲むビード42は、その開口部44からモノポーラプレート20の流体通路24b、26b、28bへ流体が漏れることを防止する。例えば、冷媒が流通する開口部44を囲むビード42は、その冷媒がモノポーラプレート20の反応物通路24b、26b内に漏れて、流通する反応物と混合してしまうことを防止する。ビード42は、複数の開口部44を囲んでもよいことが諒解される。
【0038】
選択的に、冷媒通路28bがモノポーラプレート20の背面38上に設けられてもよい。冷媒通路28bは、モノポーラプレート20の背面38にわたって冷媒を流通させ、化学反応の際に生じた熱を除去する。さらに、冷媒通路28bは、例えば、低温運転状況において、燃料電池30に熱を伝達し、化学反応を促進するために用いることが可能である。ビード42及び他の特徴は、モノポーラプレート20の背面38から延在してもよいことが諒解される。
【0039】
図3は、モノポーラプレート20のビード42の、3-3線に沿った断面図である。ビード42は、略弧状である。ビード42は、作動面36上にシール面46を備える。シール面46は、モノポーラプレート20の作動面36に近接する構成部品に接触するように設けられる。シール面46は、ビード42上の全ての地点における接触圧がある閾値を超えた場合に、近接する構成部品に対し流体を密封するシール(流体シール)を形成する。
【0040】
ビード42は、圧力が加えられた際に撓む(変形する、deflect)弾性構造を形成する。撓むことにより、近接する構成部品と接触するシール面46の部分が増加する。図示されたビード42は、断面略弧状であるが、他の形状も使用可能であることが諒解される。ある限定されない実施例において、ビード42の断面形状は、略長方形、略台形、略直線状の側壁とその間の弧状部、又はそれらの組み合わせ等となる。さらに、図示されたビード42は略対称であるが、非対称のビード42も使用可能であることが諒解される。
【0041】
図4は、バイポーラプレート22の部分的断面を示す立体図である。バイポーラプレート22は、様々な方法で形成することが可能である。例えば、2つのモノポーラプレート20の背面38を合わせて配置して接合し、接合されたモノポーラプレート20でバイポーラプレート22を形成することが可能である。例えば、接合の方法は、溶接又は接着剤を用いてもよい。
【0042】
バイポーラプレート22は、第1作動面36aと、第1作動面36aと反対側の第2作動面36bと、を含む。各作動面36は、反応物通路24b、26bを備える。例えば、第1作動面36aは、燃料通路24bを備え、第2作動面36bは、酸化剤通路26bを備える。2つのモノポーラプレート20の背面38を合わせて配置すると、
図4に示される通り、冷媒通路28bが2つのモノポーラプレート20間の空間に設けられる。
【0043】
バイポーラプレート22は、3Dプリンティングのような様々な方法でも形成されることが可能である。ある態様において、バイポーラプレート22は、その間に冷媒通路28bを設けずに、反応物通路24b、26bを単一のシートの両面に型押し加工することにより形成される。
【0044】
燃料電池スタック10が組み立てられると、各プレート12のヘッダ部40の開口部44は、隣接するプレート12又は一体型電極構造体14の開口部44とそれぞれ一列に並び、複数の入口マニホールド(図示せず)と複数の出口マニホールド(図示せず)を形成する。各構成部品のビード42は、近接する構成部品のビード42に対して押圧され、複数の流体流路24、26、28を設けるための流体シールが形成される。燃料流路24は、燃料入口24a、燃料入口マニホールド(図示せず)、各プレート12の燃料通路24b、燃料出口マニホールド(図示せず)、及び燃料出口24cによって設けられる。同様に、酸化剤流路26は、酸化剤入口26a、酸化剤入口マニホールド(図示せず)、酸化剤通路26b、酸化剤出口マニホールド(図示せず)、及び酸化剤出口26cによって設けられる。冷媒流路28は、冷媒入口28a、冷媒入口マニホールド(図示せず)、冷媒通路28b、冷媒出口マニホールド(図示せず)、及び冷媒出口28cによって設けられる。
【0045】
稼動時には、少なくとも2種類の流体が、別々の流体流路24、26、28中を流通して燃料電池スタック10を通過する。ある例示的な燃料電池スタック10において、流体は、流体入口24a、26a、28aに入り、燃料電池スタック10の周縁側に沿って各マニホールドを流通し、流体通路24b、26b、28bを介して横方向に構成部品を通過し、燃料電池スタック10の反対の周縁側に沿って各マニホールドを流通し、流体出口24c、26c、28cを介して燃料電池スタック10から出る。ある実施例において、少なくとも2種類の流体が対向流で流通する。
【0046】
実質的に漏れのないシールが燃料電池スタック10の構成部品間に形成され、燃料電池スタック10を流通する流体の不要な混合を防ぐ。これら実質的に漏れのないシールがシール面46に接触圧を加えることにより形成される。ビード42のシール面46に沿った接触圧の違いが漏れにつながると考えられる。また、ビード42のシール面46に沿って接触圧を均等に分布させることが燃料電池スタック10の特性に有益な影響を与えると思われる。例えば、本発明によるシステム及び構成部品は、プレート12のヘッダ部40にわたる接触圧を均等に分布させることによりシール効果を増加することが可能である。さらに、本発明によるシステム及び構成部品は、スタック中に適切な接触圧を維持するために必要な圧縮力を低減することにより、製造部品のコスト削減が可能である。またさらに、本発明によるシステム及び構成部品は、構成部品に加えられる最大接触圧を低下させることにより、燃料電池スタックの寿命によい影響を与えることが可能である。
【0047】
シール面46に加えられる接触圧は、燃料電池スタック10に加えられる圧縮力によるものであり、実質的に漏れのないシールを維持するための閾値レベルを超えるように維持されることが必要である。燃料電池スタック10が相当数の構成部品を含むことが可能なため、燃料電池スタック10の構成部品が組み立てられた際に、ビード42に沿った接触圧の分布における僅かなばらつきが大幅に増幅されることがある。
【0048】
有益なことに、ビード42のシール面46に沿った接触圧の分布は、ヘッダ部40に略定形形状を使用することにより均等に分布させることが可能となる。ヘッダ部40にわたって略一様な幾何学的特徴(例えば、角部の角度)を設けることにより、そのような定形形状の使用がシール面46に沿った均等な接触圧の分布を生成すると考えられる。
【0049】
図5は、略定形形状を用いたヘッダ部40aを有するプレート12の模式的上面図である。プレート12は、作動面36と、複数の反応物通路24b、26bと、ヘッダ部40aと、プレート12の略周縁部に配置されるビード42と、を含む。
【0050】
ヘッダ部40aは、プレート12の端部に配置される。ヘッダ部40aは、複数のビード42及びプレート12を貫通する複数の開口部44を設ける複数のビード42及び複数のフランジ50を含む。各フランジ50は、ビード42と各開口部44との間に設けられ、プレート12を貫通する開口部44を設けるフランジ縁104を備える。各開口部44は流体を流通させ、各ヘッダ部40a内の少なくとも1つの開口部44が反応物通路24b、26bに流体接続される。使用の際には、プレート12の一端部における1つ又は複数の接続された開口部44を流通した反応物が反応物通路24b、26bに入り、反応物通路24b、26bによって設けられた流路を横切り、プレート12の他端部における1つ又は複数の接続された開口部44を通ってプレート12から出るように、各開口部44を流通する。プレート12の略周縁部に配置されたビード42は、外側ビード42と称してもよく、フランジ50の周りに配置されるビード42は内側ビード42と称してもよい。
【0051】
ビード42は、燃料電池スタック10のプレート12と近接する構成部品との間に実質的に漏れのないシールを提供する。内側ビード42の各々は、開口部44の1つずつの周りに配置され、フランジ50を各々設ける。
【0052】
各ビード42は、ある形状を有する。例えば、その形状は、ビード辺部106及びビード角部108からなる多角形であってもよい。その多角形は、例えば、
図5の正六角形によって図示される略六角形のような、如何なる数のビード辺部106及びビード角部108を有してもよい。ビード角部108は、それぞれの角度αを設ける。角度αは、1つのビード辺部106に垂直に延在する第1線と、他のビード辺部106に垂直に延在する第2線によって規定される。第1線は、ビード角部108と1つのビード辺部106との間の移行部から始まり、第2線は、ビード角部108と他のビード辺部106との間の移行部から始まる。ある態様において、各ビード角部は、約50°~約70°の角度αを有する。ある態様において、各ビード角部は、約60°の角度αを有する。図示された多角形は、略六角形であるが、他の多角形形状が用いられてもよいことが諒解される。ある態様において、その形状は6つを超えるビード角部108を含み、各ビード角部108は、他の角度αと比べて約10°以内となる角度αを有する。
【0053】
ヘッダ部40aには、如何なる数のフランジ50を含んでもよいことが諒解される。例えば、2種類の反応物及び冷媒によって稼動するプレート12は、冷媒用の1つのフランジ50と、第1反応物用の1つのフランジ50と、第2反応物用の1つのフランジ50と、を含んでもよい。さもなくば、2種類の反応物及び冷媒によって稼動する他のプレート12は、冷媒用の1つのフランジ50と、第1反応物用の2つのフランジ50と、第2反応物用の1つのフランジ50と、を含んでもよい。
【0054】
ある態様においてビード辺部106は略直線状で、ビード角部108は、略円弧状(radiused)である。ビード角部108が略円弧状であっても、その略円弧状のビード角部108が依然としてある角度を規定することを、当業者は容易に理解されよう。ある態様において、ビード辺部106は、略蛇行経路に沿って延在する補強構造すなわち「波状部(wiggles)」を含む。これらの補強構造は、燃料電池スタック10内でプレート12が圧縮された際、ビード42の過度の変形を防ぐことで、ビード42の直線部分に沿って強度の弱い箇所が生じることを防ぐようになっている。蛇行経路に沿いつつ、ビード辺部106は、略直線状である。特に、蛇行経路に沿った「波状部」は、フランジ50側(内側)に半径を有する円弧状となる第1部分と、該第1部分間に介在しフランジ50の外側に半径を有する円弧状となる第2部分とで特定の半径を共有する。
【0055】
図6は、略定形形状を用いたヘッダ部40bを有するプレート12の模式的上面図である。
図5と同様に、プレート12は、作動面36と、複数の反応物通路24b、26bと、ヘッダ部40bと、プレート12の略周縁部に配置されるビード42と、を含む。
【0056】
図5と同様に、
図6に示されるヘッダ部40bは、プレート12の端部に配置され、各ビード42は、ビード辺部106及びビード角部108からなる多角形のようなある形状を有する。
図6に示される多角形は、不規則(irregular)六角形である。これら不規則多角形によって、
図5に示された3つのフランジ50と略同じ領域を占める、
図6に示される5つのフランジ50のようなフランジ50のさらに近接したグループを設けることが可能である。さらに、フランジ50は、フランジ50のより近接したグループを設けるために互い違いに配置されてもよい。
【0057】
驚くべきことに、定形形状を用いたヘッダ部40は、フランジ50周囲の内側ビード42及び当該内側ビード42に近接する外側ビード42を含む、ヘッダ部40の全てのビード42に付与される接触圧を平均化する。ある態様において、定形形状は、約60°の角度となる角部を有し、様々な半径を有する角部に付与される接触圧を平均化する。
【0058】
様々なヘッダ部40の構成を比較するために、様々なビード構成がモデル化可能である。例えば、ビード42と開口部44との間における色々なビード角部の角度、色々なビード角部の半径(コーナ半径)、及び色々な特徴、を有するヘッダ部40を比較し、その様々な構成のばね定数(spring constants)を比較し最適化する。該ばね定数は、ビード角部の角度が減少するにつれて、一般的に小さくなると考えられる。例えば、ビード角部の角度が60°であるビード42のばね定数は、ビード角部の角度が120°であるビード42のばね定数よりも一般的に小さいであろう。さらに、ばね定数は、ビード角部の半径が増加するにつれ、一般的に小さくなると考えられる。例えば、ビード角部の半径が15mmのビード42のばね定数は、ビード角部の半径が6mmのビード42のばね定数より一般的に小さいであろう。さらに、ビード42と開口部44との間に、ある特徴(例えばさらなるビード42)を有するビード42のばね定数は、ビード42と開口部44との間にそのような特徴が無いビード42のばね定数より一般的に小さいと考えられる。例えば、二重ビード42の外側のビード42(すなわち、モデル化されたフランジ50に近接する2つのビード42のうちの外側のビード42)のばね定数は、同様なビード角部の半径及びビード角部の角度を有する単一ビードのばね定数よりも一般的に小さいであろう。
【0059】
限定しない実施例において、6mmの半径を有する単一内側ビード42のばね定数のモデルは、ビード角度が約120°のとき約200N/mm2のばね定数となり、ビード角度が約60°のとき約135N/mm2のばね定数となる。限定しない実施例において、6mmの半径を有する二重ビード42の外側のビード42のばね定数のモデルは、ビード角度が約120°のとき約180N/mm2のばね定数となり、ビード角度が約60°のとき約95N/mm2のばね定数となる。限定しない実施例において、10mmの半径を有する単一内側ビード42のばね定数のモデルは、ビード角度が約120°のとき約120N/mm2のばね定数となり、ビード角度が約60°のとき約90N/mm2のばね定数となる。限定しない実施例において、10mmの半径を有する二重ビード42の外側のビード42のばね定数のモデルは、ビード角度が約120°のとき約160N/mm2のばね定数となり、ビード角度が約60°のとき約90N/mm2のばね定数となる。限定しない実施例において、15mmの半径を有する単一内側ビード42のばね定数のモデルは、ビード角度が約120°のとき約90N/mm2のばね定数となり、ビード角度が約60°のとき約80N/mm2のばね定数となる。限定しない実施例において、15mmの半径を有する二重ビード42の外側のビード42のばね定数のモデルは、ビード角度が約120°のとき約130N/mm2のばね定数となり、ビード角度が約60°のとき約90N/mm2のばね定数となる。
【0060】
モデル例から、様々な半径及びビードの種類を有するビード42のばね定数が、より大きなビード角部の角度から60°に近づくにつれて収束し始めることが諒解可能である。特に、様々な半径及び構成を有する60°のビード42のばね定数のばらつきは、120°のビード42のばね定数のばらつきよりもずっと小さい。例えば、モデル化され上述されたビード42のばね定数は、120°において約200N/mm2から約90N/mm2まで変化するが、60°においては、約135N/mm2から約80N/mm2まで変化する。特に、モデル化され上述されたビード42の一部、すなわち、半径6mmの単一ビード、半径6mmの二重ビード、半径10mmの二重ビード、半径15mmの二重ビード、のばね定数の各範囲は、約10N/mm2以内である。ばね定数の範囲がこのように一般的に狭いことで、ビード42のシール面46に沿った接触圧分布によい影響を及ぼす。有益なのは、50°~70°のビード角部であるビード42を備えるフランジ50は、略湾曲する境界を有するビードを備えるフランジよりも、フランジ50を反応物通路24b、26bへ接続するトンネルをより多く形成することを可能にする。
【0061】
近似線(trend lines)が異なる傾きを有し、その近似線が互いに離間し始めるので、ばね定数の差は、0でないある最小値より小さくすることが不可能である、ということが諒解されよう。さらに、ビード角部の角度が狭くなると、例えば反応物通路24b、26bに各フランジ50から反応物を移送するトンネルの周囲長及びフランジ50の配置といった設計上の制約が、例えば50°~70°という大きなビード角部の角度の場合に比べてより厳しいものとなる。
【0062】
図7は、線802によって示される不定形形状を用いたヘッダ部における接触圧の確率分布と、線804によって示される略定形形状を用いたヘッダ部における接触圧の確率分布と、を比較するグラフである。接触圧のビン(横軸の値)はMPaで与えられ、各ビンを占めるビードのパーセントは、各線の高さで示されている。線806は、不定形形状を用いたヘッダ部の接触圧分布を示し、線808は、定形形状を用いたヘッダ部の接触圧分布を示す。定形形状を用いたヘッダ部の接触圧分布808は、不定形形状を用いたヘッダ部の接触圧分布806よりもかなり狭いことが視認可能である。さらに、シール面46に沿って中央値から離れた値の接触圧(例えば、2.8MPaを下回り、5.2MPaを上回る)を受ける地点の確率は、かなり低いことが諒解されよう。この狭い分布及び低い確率値により、燃料電池スタック10に対する所定の圧縮力でのシール面46に沿った漏れが減少する。なぜなら、シール閾値を下回る接触圧を受けるビード42の箇所がより少ないからである。
【0063】
ある態様において、ビード角部は、シール面に沿って約50%より低い接触圧のばらつきとなる。ある態様において、ビード角部は、シール面に沿って約30%より低い接触圧のばらつきとなる。ある態様において、ビード角部は、シール面に沿って約15%より低い接触圧のばらつきとなる。
【0064】
一般的にプレート12の略周縁部に配置されるビード42(外側ビード42ともいう)は、ヘッダ部40内の複数のフランジ50のビード42間に介在する経路を設けてもよいと考えられる。例えば、第1フランジ50とプレート12の外縁との間の空間、第1フランジ50と第2フランジ50との間の空間、第2フランジ50と反応物通路24b、26bとの間の空間、第2フランジ50と第3フランジ50との間の空間、第3フランジ50とプレート12の外縁との間の空間に、フランジ50の一部を蛇行して囲むように外側ビード42が配置されてもよい。この蛇行する経路も、ビード42のシール面46に沿って接触圧を均等に分布することによい影響を及ぼすと考えられる。
【0065】
本発明の開示内容を実施するために最良の態様が詳細に説明されたが、本発明の当業者は、添付の請求項の範囲内において本発明を実施するための様々な代替的構成及び態様が存在することを理解するであろう。